34
第 5 章 環と体
5.1
環と体の定義
参考書:
永田雅宜著、可換体論(裳華房)
• 環の定義:集合 R に和と積の二つの演算が定義されていて、次の条件を満たすとき R を環 (ring)
という。
(a) R は和に関してアーベル群である。
(b) 積について結合律が成立する: (xy)z = x(yz)
(c) 積についての単位元 1 がある: 1x = x1 = x
(d) 分配律:x(y + z) = xy + xz, (y + z)x = yx + zx
• 環の定義でさらに
(e) 積についての可換性: xy = yx
が成立するとき R は可換環 (commutative ring) であるという。
• K が可換環で条件:
(f) 0 以外の任意の元が積についての逆元を持つ
を満たすとき K を体 (field) または可換体という。
• D が可換でない環で、上記の条件 (f ) を満たすとき、D を斜体 (skew field) または非可換体 (division
field) という。
• 可換環 R の元 x について、xy = 0 となる y 6= 0 ∈ R が存在するとき、この x を零因子 (zero
divisor) であるという。零因子でない R の元を R の非零因子いう。
• 0 以外に零因子を持たないような可換環のことを整域 (integral domain) という。言い換えれば次の
性質が満たされるときである。
x 6= 0, y 6= 0 ⇒ xy 6= 0
• 体 ⇒ 整域 ⇒ 可換環
第 5 章 環と体
35
問題 5.1.1 環の定義において、加法に関する単位元は 0、乗法に関する単位元は 1 と書くのが普通であ
る。また、R の元 x の加法に関する逆元のことを −x と表す。環の定義のみから次のことを証明せよ。
(a) 0x = x0 = 0
(b) (−1)x = x(−1) = −x
(c) (−x)y = x(−y) = −(xy), (−x)(−y) = xy
問題 5.1.2 N, Z, Q, R, C のうち環となるのはどれか。また体はどれか。
問題 5.1.3 R を任意の可換環として R の要素を成分に持つ n 次正方行列の全体を Mn (R) と書く。通常
の行列の和と積を定義して Mn (R) が環となることを確かめよ。また、 Mn (R) が可換環になるときはど
のようなときか。
(この Mn (R) を R 上の完全行列環 (full matrix ring) という。)
問題 5.1.4 [Hamiton’s Quarternion]
4個の記号 1, i, j, k を基底とする実数体 R 上のベクトル空間
H = {a1 + bi + cj + dk | a, b, c, d ∈ R}
において、(a1 は a と同一視して R j H と見なし)積の規則
i2 = j 2 = k 2 = −1, ij = −ji = k, jk = −kj = i, ki = −ik = j
によって環構造を定義する。このとき H は斜体になることを示せ。(この H を Hamilton の4元数体と
いう。)
問題 5.1.5 k を体として、k の要素を係数に持つ n 変数多項式の全体を一般に k[x1 , x2 , . . . , xn ] と書く。
nX
o
k[x1 , x2 , . . . , xn ] =
ci1 i2 ···in xi11 xi22 · · · xinn | ci1 i2 ···in ∈ k, 和は有限和
k[x1 , x2 , . . . , xn ] はいつも整域であることを証明せよ。また、 n = 1 のときには k[x1 , x2 , . . . , xn ] は決し
て体にはならないことを証明せよ。
問題 5.1.6 有限個の元しか持たない整域は体であることを証明せよ。
問題 5.1.7 環 R の元 x が、ある自然数 n について xn = 0 となるとき x を巾零元であるという。x が R
の巾零元であるとき 1 − x は R の中で積に関する逆元をもつことを示せ。
問題 5.1.8 環 R の元 e が e2 = e を満たすとき e を巾等元 (idempotent) という。
(a) e が巾等元であるとき e0 = 1 − e と置くと、e0 も巾等元で ee0 = e0 e = 0 を満たすことを証明せよ。
(b) Q 上の完全行列環 M2 (Q) には無限個の巾等元が存在することを示せ。
第 5 章 環と体
5.2
36
可換環の準同型とイデアル
この節では「環」と言えば可換環のみを考えることとする。
• 環 R から環 S への写像 f が次の条件をみたすとき f を環の準同型写像という。
(a) f (x + y) = f (x) + f (y)
(b) f (xy) = f (x)f (y)
(c) f (1) = 1
f : R → S が環の準同型であるときその像 f (R) は S の部分環となる。
• 環の準同型 f : R → S が全単射であるとき、f を同型写像と言い、このとき R と S は同型な環で
あるといい、R ∼
= S と書く。
• 可換環 R についてその部分集合 I が次の条件を満たすとき I を R のイデアル (ideal) という。
(a) x, y ∈ I
⇒ x+y ∈I
(b) x ∈ I and a ∈ R ⇒ ax ∈ I
• 可換環 R の元の集合 {x1 , x2 , . . . , xn } が与えられたとき、次の様にして与えられる I は R のイデ
アルである。
I = {a1 x1 + a2 x2 + · · · + an xn | ai ∈ R (i = 1, 2 . . . , n)}
この I を {x1 , x2 , . . . , xn } で生成されたイデアルといい、(x1 , x2 , . . . , xn ) または (x1 , x2 , . . . , xn )R
と書く。また n = 1 のときには I を単項イデアルという。
• f : R → S が可換環の準同型のとき Ker(f ) は R のイデアルである。
• I が可換環 R のイデアルであるとき、加法群としての剰余類の集合 R/I に次のようにして積を定義
して R/I を可換環とすることができる。
[x], [y] ∈ R/I (ただし [x] は x ∈ R の類を表す。)⇒ [x][y] = [xy]
• (可換環の準同型定理)f : R → S が可換環の準同型写像であるとき、次の環としての同型写像が
ある。
R/Ker(f ) ∼
= f (R)
問題 5.2.1 有理整数環 Z のイデアルは非負整数 n があって (n) という形をしていることを示せ。また、
剰余環 Z/(n) が体となるための条件を求めよ。
問題 5.2.2 k を任意の体として k 上1変数多項式環 R = k[x] を考える。この R におけるイデアルは、あ
る一つの多項式 p(x) があって (p(x)) と書けることを証明せよ。また剰余環 R/(p(x)) が体であるための
必要十分条件は p(x) が既約多項式となることである。これを証明せよ。
第 5 章 環と体
37
問題 5.2.3 環準同型写像 f : R[x] → C を f (p(x)) = p(i) と定義する。ただし i は虚数単位を表す。この
とき、Ker(f ) を求めよ。また、これに環の準同型定理を適用せよ。
問題 5.2.4 R が可換体であるとき、R のイデアルは (0) または R のみであることを示せ。逆に、可換環
R のイデアルが (0) または R のみであるとき R は体となることを示せ。
問題 5.2.5 可換環 R の二つのイデアル I, J について、
I + J = {a + b | a ∈ I, b ∈ J},
IJ = {a1 b1 + a2 b2 + · · · + ar br | r ∈ N, ai ∈ I, bi ∈ J (i = 1, 2, . . . , r)}
とおくと、I + J も IJ もまた R のイデアルとなることを示せ。(これをそれぞれイデアル I と J の和、
積という。)また I ∩ J もまた R のイデアルとなる。
問題 5.2.6 二つの整数 n, m ∈ Z について、これらで生成される Z のイデアルに対して前問の (n) + (m)
と (n) ∩ (m) を考える。問1によってこれらは単項イデアルなので、(n) + (m) = (c), (n) ∩ (m) = (`) と
なる整数 c, ` がある。この c は n と m の最大公約数、` は最小公倍数であることを示せ。
問題 5.2.7 前問と全く同様のことが体上の1変数多項式環 k[x] でも成立することを確かめよ。
問題 5.2.8 整数環上の1変数多項式環 Z[x] には単項でないイデアルが存在する。もっと詳しく言うと、
任意の自然数 n に対して生成元の個数が n 個以上必要なイデアルが存在する。これを証明せよ。
問題 5.2.9 平方因数を持たない整数 a について
√
√
Z[ a] = {x + y a | x, y ∈ Z}
√
と定義する。自然な積と和で Z[ a] が可換環になることを確かめたあと、次の環の同型があることを示せ。
√
Z[ a] ∼
= Z[x]/(x2 − a)
√
√
問題 5.2.10 可換環 Z[ −5] においてイデアル (2, 1 + −5) は単項イデアルではないことを示せ。
問題 5.2.11 剰余環 Z[x]/(x2 + 2, x4 + 4) の元の個数はいくつか?
問題 5.2.12 次の環の同型を示せ。
Z[x]/(x2 + 1, x4 − x) ∼
= Z/(2)
問題 5.2.13 次の環の同型を示せ。
√
√
Z[ 5]/(1 + 5) ∼
= Z/(4)
問題 5.2.14 可換環の全射準同型写像 f : R → S と S のイデアル I が与えられたとき、J = f −1 (I) とお
くと、J は R のイデアルであって環の同型 R/J ∼
= S/I があることを証明せよ。
第 5 章 環と体
5.3
38
可換環の素イデアルと極大イデアル
この節でも「環」と言えば可換環のみを考えることとする。
• 可換環 R のイデアル p (ただし p 6= R)が次の条件を満たすとき p を R の素イデアルという。
a, b ∈ R について、ab ∈ p ⇒ a ∈ p or b ∈ p
• 可換環 R のイデアル m (ただし m 6= R )についてそれを含む真の R のイデアルが存在しないと
き m を R の極大イデアルであるという。
• 極大イデアル ⇒ 素イデアル
• p が R の素イデアル ⇔ R/p が整域
• m が R の極大イデアル ⇔ R/p が体
• 任意のイデアル I 6= R について、この I を含む R の極大イデアルが存在する。(ツォルンの補題)
• R の元 a が積に関する逆元を持つとき、a を R の単元 (unit) とという。これは (a) = R となるこ
とと同じ。
• R の任意のイデアルが単項生成であるとき R を単項イデアル整域 (PID) という。Z や体上の1変
数多項式環は PID である。
• 環 R の元 a が a = bc (ただし b, c は単元でない)と書けるとき、a を可約元であるという。可約
でない R の元を既約であるという。
• 環 R の元 a について、それが生成するイデアル (a) が R の素イデアルであるとき a を素元という。
整域 R においては、素元は既約元であるが逆は必ずしも成立しない。
• 可換環 R についてその素イデアル全体の集合を Spec(R) と表す。極大イデアル全体の集合を Ω(R)
と表すこともある。
• 整域 R において、0でも単元でもない元がいつでも有限個の素元の積ととして表されるとき、R を
素元分解環 (UFD) という。
問題 5.3.1 次のことを証明せよ。
(a) 任意のイデアル I 6= R に対してそれを含む極大イデアルが存在することを証明せよ。
(b) 環 R の元 a について a が単元であるための必要十分条件は a を含む R の極大イデアルが存在しな
いことである。
問題 5.3.2 R が PID であるとき、元 a ∈ R について次の3条件は同値であることを証明せよ。
(1)a は既約元である。 (2)a は素元である。(3)イデアル (a) は極大イデアルである。 問題 5.3.3 一般に R が整域のとき、R の元について「素元 ⇒ 既約元」を証明せよ。また、素元でない
既約元の例をあげよ。
第 5 章 環と体
39
問題 5.3.4 可換環 R のイデアル I に対して、
√
I = {x ∈ R | xn ∈ I for some n = 1}
√
とおく。このとき、 I は R のイデアルになることを示せ。(I の radical という。)
問題 5.3.5 可換環 R において、
p
(0) は R の全ての素イデアルの共通部分に等しいことを証明せよ。
\
p
(0) =
p
p∈Spec(R)
問題 5.3.6 可換環 R のイデアル I があるとき、集合として、Spec(R/I) と {p ∈ Spec(R) | p k I} には
全単射が存在することを証明せよ。
問題 5.3.7 可換環 R のイデアル I と素イデアル p1 , p2 があるとき、もし I j p1 ∪ p2 ならば I j p1 ま
たは I j p2 となることを証明せよ。
問題 5.3.8 可換環 R において、R の零因子全体の集合 {x ∈ R | xy = 0 for some y(6= 0) ∈ R} は必ずし
もイデアルとはならない。そのような例をあげよ。
問題 5.3.9 2変数多項式環 C[x, y] の極大イデアルはどのようなものか?
問題 5.3.10 可換環 R のイデアル I に対して、R 上の1変数多項式環 R[x] のイデアル IR[x] を考える。
このとき次の環の同型があることを確かめよ。
R[x]/IR[x] ∼
= (R/I)[x]
問題 5.3.11 PID は UFD であることを証明せよ。
問題 5.3.12 k を体として、その上の n 変数多項式環 k[x1 , · · · , xn ] は UFD であることを示せ。
問題 5.3.13 UFD でない整域の例を一つあげよ。
第 5 章 環と体
5.4
40
可換環上の加群
この節でも「環」と言えば可換環のみを考えることとする。
• M が環 R 上の加群又は R 加群 (R-module) であるとは、M は加法に関してアーベル群であって、
任意の a ∈ R と x ∈ M について ax という M の元が定まり次の条件を満足する時をいう。
(a) a(x + y) = ax + ay,
(a + b)x = ax + bx
(b) a(bx) = (ab)x
(c) 1x = x
• R 加群 M の部分集合 N が M の R 部分加群 (R-submodule) であるとは、N は M の加法群とし
て部分群であって、R の作用で閉じているものをいう。すなわち、a ∈ R と x ∈ N に対して ax ∈ N
が成立するような部分アーベル群のこと。
R 加群 M の R 部分加群 N があると、その剰余加群 M/N が定義できる。
• R 加群 M から N への写像 f : M → N が R 準同型であるとは、任意の a ∈ R と x, y ∈ M に対
して f (x + y) = f (x) + f (y), f (ax) = af (x) が成立するときをいう。
さらに、R 準同型 f が全単射であるときには f を R 同型写像と言う。このとき M と N は同型な
R 加群と言って、 M ∼
= N と表す。
• R 加群 M から N への R 準同型写像の全体の集合を HomR (M, N ) と表す。f ∈ HomR (M, N ) に
対して、その像 Im(f ) は N の R 部分加群であり、その核 Ker(f ) は M の R 部分加群である。
• (準同型定理)二つの R 加群の間の R 準同型 f : M → N に対して次の自然な R 同型がある。
M/Ker(f ) ∼
= Im(f )
• R 加群 M の元の集合 x1 , x2 , . . . , xn があって、M の任意の元がこれらの元の一次結合として書
ける:
x ∈ M ⇒ x = a1 x1 + a2 x2 + . . . + an xn for some a1 , a2 , . . . , an ∈ R
とき、この x1 , x2 , . . . , xn を M の生成系、または、M は x1 , x2 , . . . , xn によって生成される R 加
群であるという。
また、このように有限個の生成系をもつ R 加群のことを有限生成 R 加群であるという。
問題 5.4.1 可換環 R のイデアル I は R 加群であることを確かめよ。また、K が体であるときには、K
加群とは K 上のベクトル空間に他ならないことを確かめよ。
問題 5.4.2 任意のアーベル群は Z 加群とみなすことができることを証明せよ。また、アーベル群として
の部分群、剰余群は Z 加群としての部分加群、剰余加群と同じことであることを確かめよ。
問題 5.4.3 K を体とする。そして、1変数多項式環 R = K[X] と K ベクトル空間 V を考える。V 上の
線形変換 f : V → V が与えられたとき、X の作用を Xv = f (v) (v ∈ V ) と定義することによって、V を
R 加群と見なすことができる。これを証明せよ。このようにして与えられた R 加群を Vf と書くことにす
ると、二つの V 上の線形変換 f, g について、Vf と Vg が R 加群として同型になるための条件は何か?
第 5 章 環と体
41
問題 5.4.4 R 加群の元 x に対して、
AnnR (x) = {a ∈ R | ax = 0}
と置く。AnnR (x) は R のイデアルとなることを証明せよ。これを x の零化イデアル (annihilator) という。
もっと一般に E が R 加群 M の部分集合であるとき、
AnnR (E) = {a ∈ R | ax = 0 for any x ∈ E}
もまた R のイデアルである。
問題 5.4.5 R が整域で M が R 加群のとき、AnnR (x) 6= (0) となる M の元 x のことをねじれ元 (torsion
element) という。M のねじれ元の全体の集合 t(M ) は M の部分加群となることを証明せよ。この t(M )
を M のねじれ部分 (torsion part) という。
Z 加群 Z/(n) について、そのねじれ部分は何か?
問題 5.4.6 1個の元からなる生成系をもつ R 加群 M については、適当な R のイデアル I をとって、
M∼
= R/I とできることを証明せよ。このような加群を単項生成加群という。
問題 5.4.7 R 加群 M が x1 , x2 , . . . , xn によって生成される R 加群であるとする。
a1 x1 + a2 x2 + . . . + an xn = 0 ⇒ a1 = a2 = . . . = an = 0
が成立するとき、この生成系 x1 , x2 , . . . , xn は線形独立であるという。線形独立であるような生成系をも
つ R 加群を自由加群という。体上の加群は全て自由加群である。
有理数体 Q を Z 加群と見たとき、これは自由加群か?
問題 5.4.8 一般に有限個の R 加群 M1 , M2 , . . . , Mn があるとき、アーベル群としての直和 M1 ⊕ M2 ⊕
. . . ⊕ Mn に対して、環 R の作用を a(x1 , x2 , . . . , xn ) = (ax1 , ax2 , . . . , axn ) と定義することによってこれ
を R 加群と見ることができる。これを R 加群としての直和という。
有限生成 R 加群 M が自由加群であるための必要十分条件は M が R 加群 R の有限個の直和 R⊕R⊕. . .⊕R
と同型になることである。これを証明せよ。
問題 5.4.9 R 加群 M が (0) と M 以外に部分加群を含まないとき、M を単純 R 加群という。一般に、
単純 R 加群は、R の極大イデアル m があって剰余加群 R/m と同型となることを証明せよ。
とくに、単純 Z 加群はどのようなものか?
問題 5.4.10 二つの R 加群 M, N があるとき、HomR (M, N ) に自然に R 加群の構造を定義せよ。
さらにこのとき、同型 HomR (R, N ) ∼
= N が成立することを確かめよ。
第 5 章 環と体
5.5
42
体の基礎概念
この節では「体」と言えば可換体のみを考えることとする。
• K が体であるとき、1 を n 回加えて 0 になるような自然数があるとき、そのような n の最小を K
の標数という。そのような n がないときには K の標数は 0 であるという。
• 体 K の最小の部分体を K の素体という。
• K が体 L の部分体であるとする。L の元 x が xn + c1 xn−1 + · · · + cn = 0 (ci ∈ K) を満たすとき、
x は K 上代数的であるという。また、x が K 上代数的でないとき x を K 上超越的であるという。
• K が体 L の部分体であって、L の全ての元が K 上代数的であるとき、L を K 上の代数拡大体で
あるという。代数拡大でない場合には超越拡大体という。
• L が K の代数拡大体であるとき、K ベクトル空間としての L の次元のことを [L : K] と書き、拡
大体 L/K の拡大次数という。[L : K] が有限のとき L は K の有限次代数拡大体であるという。
• 体 K の元の個数が有限のとき K を有限体であるという。
• K が L の部分体とする。L の元集合 {x1 , . . . , xn } について、K と x1 , . . . , xn を含む最小の L の部
分体のことを K(x1 , . . . , xn ) と書き、K に元 {x1 , . . . , xn } を添加した拡大体という。とくに、L が
K に唯1個の元 x を添加した拡大体 K(x) に一致するとき、拡大 L/K は単純拡大であるという。
• K 上の多項式 f (x) について、K 上の方程式 f (x) = 0 の全ての解を K に添加した体を f (x) の最
小分解体という。最小分解体は K 上の有限次代数拡大体である。
問題 5.5.1 体 K に対して次のことを証明せよ。
(a) K の標数は 0 または素数である。
(b) 標数が p であるとき、任意の x ∈ K について px = 0 である。
(c) K の標数が素数 p であるときには、K の素体は Z/pZ と同型である。
(d) K の標数が 0 であるときには、K の素体は Q と同型である。
問題 5.5.2 有限体 K の標数は素数 p であることを示せ。またその元の個数は p のべきであることを証明
せよ。
問題 5.5.3 標数 p の有限体 K においては、次の等式が成立することを証明せよ。
(a1 + a2 + · · · + ar )q = aq1 + aq2 + · · · + aqr
(ai ∈ K, q = pn )
問題 5.5.4 K ⊂ L ⊂ M が体の拡大であるとき、次の等式が成立することを示せ。
[M : K] = [M : L][L : K]
第 5 章 環と体
43
問題 5.5.5 C は R の単純代数拡大体であり [C : R] = 2 であることを示せ。また、R は Q 上超越拡大
であることを示せ。
問題 5.5.6 有理数体 Q の次の拡大体について、その Q 上での拡大次数はいくつか?
√
√
√
−1 + −3
(b) Q(3 2),
(c) Q(ω) (ただし ω =
(a) Q( 2),
)
2
問題 5.5.7 体 K ⊂ L がともに有限体でその元の個数がそれぞれ q1 , q2 であるとき、n = [L : K] とおく
と、q2 = q1n が成立することを示せ。
問題 5.5.8 K が標数 p の体であるとき、q = pn について、K q = {xq | x ∈ K} は K の部分体となるこ
とを示せ。
問題 5.5.9 L が K の代数拡大体であるとき、 L の元 x について、xn + c1 xn−1 + · · · + cn = 0 (ci ∈ K)
を満たす次数が最小の多項式を x の K 上の最小多項式といい、最小多項式の次数を元 x の K 上での次
数という。L の元 x の次数はいつも体の拡大次数 [L : K] の約数であることを証明せよ。
問題 5.5.10 単純拡大ではない有限次代数拡大体のなるべく簡単な例を一つ与えよ。
問題 5.5.11 Q の任意の2次拡大は単純拡大であることを証明せよ。同様にして Q の3次拡大もまた単
純拡大であることを示せ。
問題 5.5.12 代数学の基本定理を使って、 C には(自明なもの以外に)代数拡大体が存在しないことを
示せ。
問題 5.5.13 次の各多項式について、有理数体 Q 上の最小分解体とそれぞれの Q 上での拡大次数を求
めよ。
(a) x3 − 1,
(b) x3 − 2,
(c)
x4 + 5x2 + 6,
(d) x6 − 8
第 5 章 環と体
5.6
44
分離拡大
この節でも「体」と言えば可換体を意味する。
• L が K の代数拡大体で a ∈ L とする。a の K 上での最小多項式を f (x) とする。方程式 f (x) = 0
が重根を持たないとき、a は K 上分離的であるという。これに対して、f (x) = 0 が重根を持つとき
には a は K 上非分離であるという。さらに f (x) = 0 がただ一つの解しか持たないときに、a は K
上純非分離であるという。(a ∈ K のとき a は K 上分離的かつ純非分離である。)
• L の任意の元が K 上分離的であるとき L は K の分離拡大体であるという。そうでないとき L は
非分離拡大であるという。純非分離拡大も同様に定義する。
• K のどのような代数拡大体も分離拡大であるとき K を完全体であるという。標数が 0 の体は完全
体である。また有限体は完全体であることが知られている。
問題 5.6.1 体 K 上の1変数多項式 f (x) = an xn + · · · + a1 x + a0 (ai ∈ K) について、その導関数
f 0 (x) = nan xn−1 + · · · + a1 を考える。このとき、方程式 f (x) = 0 の重根とは、f (x) = 0 と f 0 (x) = 0 の
共通根と同じであることを証明せよ。
問題 5.6.2 前問を使って標数 0 の体が完全体であることを証明せよ。
問題 5.6.3 K が標数 p > 0 の体で、その元 c ∈ K は c 6∈ K p とする。このとき、xp − c の分解体を L と
し、方程式 xp − c = 0 の L 内での根を a とする。
a が K 上純非分離であることを示し、L は K 上の純非分離拡大体であることを証明せよ。
問題 5.6.4 K を標数が p > 0 の体とする。K 上の既約多項式 f (x) が重根を持つための必要十分条件は、
f (x) が xp の多項式であることである。これを証明せよ。
問題 5.6.5 標数 p > 0 の体 K が完全体であるための必要十分条件は、任意の c ∈ K について xp − c = 0
が K 内に根を持つことである。これを証明せよ。
問題 5.6.6 問題 5.6.4 を使って、有限体が完全体であることを証明せよ。
問題 5.6.7 ここでは有限体 K の 0 以外の元の全体 K × = K − {0} が乗法に関して巡回群となることを
証明しよう。そのためにまず次のことを証明せよ。
• 有限可換群 G (ただし演算は積で表す)において、任意の素数 q について、xq = 1 が G 内に q 個
より多くの解を持たないとすると、G は巡回群である。
(有限アーベル群の基本定理より一般に G は位数が素数べきであるような有限巡回群のいくつかの
直積になる。このとき、仮定からこの直積因子がただ一つであることを示せばよい。)
• 上記のことから有限体 K の乗法群 K × が巡回群であることを証明せよ。(K は体であるから方程式
xq = 1 の K 内での解は高々 q 個であることに注意せよ。)
問題 5.6.8 30 以下の素数 p について素体 K = Z/pZ の乗法群 K × の巡回群としての生成元を求めよ。
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