2016年3月29日号(PDF/420KB)

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2016 年 3 月 29 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
第 4 四半期 住宅価格【前年比】
今週の注目点
直近
前回
8.7%
10.7%
日付
経済指標・イベント
3 月 29 日 3 月米国消費者信頼感指数
前回
市場予測
92.2
94
金融市場・原油・為替
指数等
S&P/ASX200 指数
2016年3月25日
2016年3月18日
前週比
2015年3月25日
前年比
5,084.21
5,183.12
-1.9%
5,973.32
-14.9%
1,348.8
1,346.8
+0.1%
1,324.8
+1.8%
豪州 90 日バンクビル利回り
2.30%
2.33%
-3bps
2.26%
+4bps
豪州債券 10 年物利回り
2.57%
2.55%
+2bps
2.32%
+24bps
84.89
84.86
+0.03
93.74
-8.85
豪ドル米ドル(セント)
0.75
0.76
-0.01
0.78
-0.03
豪ドル TWI
63.5
64.3
-0.8
65.0
-1.5
S&P/ASX200 不動産投信
豪ドル円
※3 月 25 日は豪州市場が祝日のため一部取得できないものについては前日の現地終値を表示しています。
先週の主な話題
「リスクオン」に伴う株価反発の流れが先週に入って小休止を迎えました。ここ最近、株価、コモディティ価格、資源国通貨(豪ドル等)が急ピッチ
で持ち直した結果、テクニカル面で買われ過ぎの水準に達し、上値抵抗線に達する指数や資産も多く見られ、またそれと対照を成す形で、米ド
ルは売られ過ぎの状態となっていました。そのため弊社では相場の転換に備えていましたが、先週、米連邦準備制度理事会(FRB)の複数の高
官が米国の景気回復に自信を示したことや、FRB が 4 月会合での利上げも視野に入れつつ、利上げ継続の意欲を見せたことが調整を誘発し
ました。結果的に、米ドルが前週までの下落分を一部取り戻した一方、大半の株式市場、コモディティ、豪ドルは小幅反落する展開となりました。
先週一週間を通し、米国株(-0.7%)、ユーロ圏株(-1.9%)、豪州株(-1.9%)が下落した一方、日本株(+1.7%)及び中国株(+0.8%)は上昇しま
した。債券利回りはほぼ変わらずの水準で週末を迎えました。
FRB に関しては、前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)3 月の会合後、複数の FRB 高官が自身の見方を表明しました。しかし、現時点で意
見を述べたのは主に議決権を持たないメンバー数名である上、FRB 全体が急激にタカ派に傾いていることを示唆する発言内容はありませんで
した。弊社の見通しでは、4 月の利上げの可能性は依然として残ってはいるものの、6 月の利上げが妥当ではないかと考えています。米国金融
市場では 4 月の利上げの可能性は今のところ 6%とみており、6 月の利上げの可能性も過小評価されている感はありますが 38%とみています。
短期的には調整局面がしばらく続く可能性がある一方で、長期的には上昇トレンドを辿ると弊社では予想しています。(1)各種企業景況感指数
が世界的にやや改善、(2)中国に対する懸念の後退、(3)投資家の間で、「FRB は世界経済のリスクを認識しており、過度な利上げや米ドル高
圧力を再燃させる措置は行わない」という確認が高まったことが理由として挙げられます。米ドル高は、原油価格と人民元と新興国への下押し圧
力を強める要因に他なりません。
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ベルギーのブリュッセルで起きた爆破テロは改めてテロの脅威を思い起こさせる事件でした。何よりこれは人道的問題であり、被害に遭われた
方々に対し心よりお悔やみを申し上げたいと思います。しかしながらブリュッセルでのテロに対する欧州株式市場の反応をみると、昨年 11 月に
パリで起きたテロと同様、影響は軽微に留まりました。但し、次の 2 点は留意する必要があります。第 1 に、北アイルランドのアイルランド共和国
軍(IRA)や、ドイツにおけるドイツ赤軍然り、欧州というのは過去何十年にも渡り、テロと隣り合わせであったという事実を再認識すべきでしょう。
しかし時とともに、人々は日常生活を取り戻し、自分たちの生活に戻っていきます。第 2 に、2000 年代以降に発生したテロ事件では、ビルや競
技場などのいわゆるソフトターゲット(不特定多数の人が集まる比較的警備が緩やかな場所)がテロの対象となっており、長期的に経済に影響を
与えるものではありませんでした。米国の 9.11 の同時多発テロは、短期的には米国株が 12%下落し経済に大きく影響を及ぼしましたが、わず
か 1 ヶ月で回復しました。また、インドネシアのバリやスペインのマドリードで起きたテロは株価への影響はさほどありませんでしたし、2005 年の
7 月に起きたロンドンでの爆発はイギリス株式市場に影響をおよぼしましたが、翌日から市場は回復しました。つまり、テロの脅威が投資家心理
を悪化させることは事実ですが、経済や金融市場に大きく影響を及ぼすことは考えられません。
豪州では再び選挙モードに入るのでしょうか。まだ確かではありませんが、政府が 5 月 3 日に前倒しで予算案を提出する予定で、7 月 2 日の選
挙に向けて動いているようです。7 月 2 日に上下両院同時選挙を実施するには、予算案を可決させた上で、議会を解散する必要がありますが、
その期限は 5 月 11 日までとなっており、まだ十分な時間が残されています。豪州経済にとっては、選挙戦に関する不確実性がリスクとなります。
一方明るいシナリオとしては、同時解散総選挙において与党が上院の過半数議席を獲得した場合には、現政権にとり政府主導の合理的な政策
形成が可能となります。選挙が経済に与える影響を考えてみると、選挙期間中に国内の消費が減少するとの見方がありますが、選挙をめぐる不
確実性が選挙全体の経済成長に影響を及ぼしたという明確な証拠は存在しません。実際、1980 年以降選挙が行われた年の経済成長率は平
均+3.7%となっており、期間全体平均の+3.2%を上回っています。株式は選挙前、株価は横ばいで推移する傾向にありますが、選挙後 3 ヶ月
間については、1983 年以降の平均で 4.9%上昇しています。
出所:トムソン・フィナンシャル、AMP キャピタル
世界経済指標
米国の経済指標は強弱入り混じる内容となりました。2 月の耐久財受注(除輸送用機器)が予想以上に落ち込み、中古住宅販売件数も大幅に
減少しましたが、供給が抑えられていたことがその一因と考えられます。好材料としては、新築住宅販売件数が増加したほか、マークイットの 3
月の購買担当者景気指数(PMI)については、製造業とサービス業がともに上昇するなか、総合指数も 1.1 ポイント上昇の 51.1 となりました。ま
た 3 月の各地区連銀製造業指数が(前週発表分に続いて)上昇し、米国の製造業が最悪期を脱した可能性を裏付ける格好となり、一方、新規
失業保険申請件数は低水準に留まりました。2015 年 10-12 月期の GDP 確定値は個人消費や貿易の伸びが寄与する形で、前期比+1%から
+1.4%に上方修正されました。
ユーロ圏では、3 月の企業景況感指数が回復したことから、市場では、2 月の低下の要因が、ファンダメンタルズ面というよりも、株式市場の混
乱にあったとの確信が強まりました。3 月の PMI とドイツ IFO 企業景況感指数は良好な経済成長とともに上昇しました。
3 月の日本の PMI は前月から 1 ポイント下がり 49.1 ポイント、2 月のコアコア CPI は対前年比で+0.8%と低く、いずれも失望する結果となった
ことで日銀はさらなる金融緩和圧力にさらされる結果となりました。
豪州経済指標
豪州では、オーストラリア統計局(ABS)によると、昨年 10-12 月期の住宅価格指数で伸び率の鈍化が確認されました。これは、先行して発表さ
れた各種民間統計と整合的な結果です。なお、実勢をよりタイムリーに反映する住宅価格指数は、再び回復の兆しがあるものの昨年の高値か
らは未だ低い水準となっており、移民流入数の減少も大きな要因となっています。2012 年の 1.8%が最近の高い移民増加率ですが、昨年 7-9
月期は 1.3%の水準まで落ち込んでいます。これは住宅に対する潜在的な需要も若干落ち込むことを意味するかもしれませんが、人口増加率
は底堅く、移民の減少は短期的には豪ドル安を背景とする留学生の増加で相殺される可能性があります。もちろん、留学生は人口統計の対象
にはなっていませんが、彼らも住宅を必要とする存在です。
他方、豪州準備銀行(RBA)のスティーブンス総裁は講演で、(1)豪州が資源ブームの終焉に非常に上手く対応していること、(2)金融・財政政
策の両面で他の大半の国よりも大きな緩和余地を有すること、(3)豪ドル高は行き過ぎの可能性があることを指摘しました。この 3 点については、
私自身も同様の見方を取っています。豪ドル相場に関する総裁の発言は、ここ最近の豪ドル高に対する不快感を多少なりとも表していることは
明白で、ここ数週間における他の RBA 高官の発言内容とも呼応しています。但し足元の豪ドル相場は、追加利下げという観点では、一つの正
当化要因にはなり得るものの、直接的誘因としては不十分な水準と言えるでしょう。
今週の注目点
米国では、イエレン FRB 議長による講演が予定されていますが、最近一部の FRB 高官がタカ派的な発言を行っているだけに、利上げに関し
て何らかの手掛かりを掴めるかどうかが注目されます。一方、雇用者数及び ISM(米供給管理協会)製造業景況指数が再び焦点となり、米国経
済がまずまずの状態であることが示唆される見通しです。具体的には、3 月の雇用者数は 20 万人増と底堅さを見せ、失業率は横ばいの 4.9%、
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平均時給の伸びは若干の加速が見込まれる一方、ISM 製造業景況指数は 50.5 前後まで持ち直し(前月:49.5)、地区連銀製造業指数と整合
的な結果が予想されます。他方、2 月の PCE コア・デフレーターは前月に続き上昇し前年比+1.8%、中古住宅販売仮契約指数と S&P/ケース・
シラー住宅価格指数は揃って上昇、コンファレンスボード消費者信頼感指数も改善する見通しです。
ユーロ圏では、年初に見られた銀行株を巡る混乱が 2 月のマネーサプライと銀行融資にどう影響するかに注目が集まります。また、3 月の CPI
も引き続き低水準が予想されています。
日本は、家計調査・鉱工業生産は低調な結果が予想されますが雇用関連指標は堅調に推移する見通しです。また日銀短観も公表予定です。
中国では 3 月の各種 PMI が公表予定で若干の改善が見込まれます。
豪州では民間部門信用が前月に続き小幅に増加する見通しですが、ここ最近の豪ドル高によりオーストラリア産業グループの製造業 PMI(AIG
PMI)が落ち込むかどうかに注目が集まります。また、コアロジック RP データ・リスマークによる住宅価格が発表される予定で、3 月の豪州住宅
価格は緩やかな上昇傾向が維持される見通しです。
相場見通し
グローバル株式は、2 月の安値からの力強い回復を経て、足元では買われ過ぎの水準に達しており、調整のリスクもありますが、目先の不透明
感が解消された場合には、年内、上昇基調を辿ると弊社は見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安である
こと、世界的に金融緩和が加速していること、緩やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、世界の国債の約 25%で利回りがマイナス圏に沈んでいるように、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが
中期的に低調になる可能性が考えられます。しかし、不安定な経済成長、余剰生産能力、軟調なコモディティ価格、低インフレなどの要素を併せ
持つ市場環境において、債券に対して過度に弱気の見方を取ることは難しいと言えます。相対的に見て、豪州、米国、(恐らく)中国など、高い利
回りを提供する国の債券に妙味があると考えられます。
商業用不動産やインフラ資産は今後も、投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
豪州では、シドニーやメルボルンの住宅市場が沈静化に向かっていることから、2016 年は、主要都市の住宅用不動産価格の上昇率が+3%前
後まで鈍化すると予想されます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇すると見られます。
RBA が今後政策金利を 1.75%まで引き下げる可能性があることから、キャッシュや銀行預金のリターンは引き続き低水準に留まると考えられ
ます。
豪ドル相場については、FRB が利上げを見送り続け、豪州の経済指標が改善すれば、短期的には一段と上昇するリスクがあります。しかし、
2014 年序盤に 9%反発した時と同様に、行き過ぎの水準となる可能性は低く、長期的には下落基調を維持するでしょう。というのも、RBA は最
終的には追加利下げに踏み切るか、少なくとも口先介入を実施、FRB もいずれ利上げを再開すると見られており、それに伴ってこれまで豪ドル
高の要因となってきた豪州・米国間の金利差が縮小に向かうと予想されるほか、コモディティ価格は依然低迷しており、豪ドルがフェアバリュー
(適正価値)を下回るのも珍しいことではないためです。
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