がんになっても笑顔で育つ

がんになっても笑顔で育つ
楠木 重範
■ パートナー
楠木先生の強みは「子どもたちからの信頼」です。家族からの相談にも
田村 太郎
KUSUKI Shigenori
チャイルド・ケモ・クリニック 院長
(( 公財 ) チャイルド・ケモ・サポート基金 常務理事)
於保 加那子
のりが続きそうですが、社会からの大きな支援があれば、小児医療の新
■ 伴走者
ご自身が小児がん経験者ということもあり、いつも患児目線で行動する
(チャイルド・ケモ・ハウス アートディレクター)
木村 真敏 < 代表伴走者 >
(日本メディカルネクスト㈱ 代表取締役社長)
■ プロファイル
友田 雅明
(㈲雅ブーケ・ド・ビアンカ 代表取締役)
中学 2 年生の時にがんを発症し、3 年間の治療の後、完治。小児科医になるも、医療全体では少数派と
神野 明
なる小児医療の現場は、医療制度・環境整備が整っておらず、自身の闘病中とほとんど変わらないこと
島袋 礼菜
(横浜国立大学 2 年)
しい形を実現できると信じています。( 田村)
せいか、子供たちからの信頼が絶大な小児科医の楠木重範さん。この
チャイケモプロジェクトは、そんな楠木先生と子供たち、そして、一緒
に病気と闘ってきたご家族たちが、夢の共有を図り、決死の覚悟で行動
を起こした、
「夢の病院つくり」案件です。仲間たちの努力により、
既に、
ハウスは完成しました。あとは、楠木先生が訴える理想の小児がん治療
(武田薬品工業㈱ 医薬営業本部 企画グループマネジャー)
に対して疑問をもつ。患者家族らと協力し、家族ごと支える医療を目指し活動中。
時間を惜しまない姿勢は Children First を体現するにふさわしい人物で
す。一方、経営効率重視の今日の医療では、異端児です。まだ険しい道
モデルを構築することです。しかしながら、まだ多くのハードルが山積
しています。楠木さんの思いが多くの人たちに伝わり、社会全体でこの
問題を解決していくことが必要なのです。
(伴走者一同)
チーム楠木
■ 事業概要
診療所と NPO 法人チャイルド・ケモ・ハウスと公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金が連携し
2006 年:NPO 法人チャイルド・ケモ・ハウス設立
以下の事業を推進。
・がんのこどもが、家族と一緒に過ごしながら治療をすることができる、家族滞在型施設の運営および診療
・小児がんに関する研究会、シンポジウムなどの啓発活動
・がんのこどもや、家族の生活サポート(学習支援や、生活相談センターの設置など)
・小児がんに関わる医療者やボランティアの人材育成
活動の軌跡
がんの子どもと家族に
真正面から向き合う小児科医
2007 年:チャイルドライフスペシャリストを大阪大学医学部附属病院に導入
2008 年:小児がんの患児のケアに関わるスタッフトレーニング&エンパワーメントプロジェクト
2009 年:小児がん患児・家族と医療者のためのロールプレイを用いたコミュニケーショントレーニングプロジェクト
2010 年:一般財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金設立
2011 年:公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金として認可される
活動内容
2013 年:神戸市ポートアイランドに、小児がんの子どもと家族のための施設「チャイルド・ケモ・ハウス)が完成
日常を維持しながらの闘病生活の実現
チャイルド・ケモ・クリニック開業
「夢の病院は家です」のキャッチフレーズのもと、たくさんの方々からのご支援で、日本で初めての小児がん治
療施設「チャイルド・ケモ・ハウス」
(以下ハウス)を 2013 年 4 月に神戸市のポートアイランドに建設しまし
▶
た。私のクリニックはハウスに併設して、同年 5 月に開業しました。ハウスには、いたるところに天窓があり、
室内にいながら天気・季節を感じることができます。病院と自宅での在宅医療しかなかったこれまでの小児医療
に、家族とともに滞在しながら治療できる「ハウス」が加わって、相互に連携することが、新しい小児医療のモ
デルと考えています。
現状: 2013 年 12 月より、チャイルド・ケモ・ハウスへの患者受け入れを開始しているが、まだ利用者がいない。
現状と課題
解決したい
課題
課題: 家族滞在型施設は医療施設と認められないため、診療報酬など医療制度上の収入が得られない。
小児がんのこどもとその家族の理不尽な療養環境
医療者の人材不足
小児がんの治療は短くて 6 か月、長ければ 1 年以上の長期の入院治療が必要です。病院は闘病の場であるばか
新しい医療のかたちに対する抵抗感
りではなく、生活の場となります。子どもは日々成長していくものですが、無機質な病院では困難なことも多々
あります。また、家族(主にお母さん)は日中はパイプイスひとつで、夜間は簡易ベッドを使用して寝泊まりし、
▶
子どもに寄り添って生活します。
運悪く病気になっただけなのに、病気とは無関係のところで子どもや家族が苦労しなければならない事が多すぎ
ます。入院中の子どもの権利は軽視されているのが現状です。子どもががんになることを「不運ではあるが、不
幸ではない」世の中にしたいと私は考えています。
自分の
出発点
小児がんを患った経験をプラスに
①自らの体験:約 25 年前、中学 2 年生の時に、悪性リンパ腫というがんを経験しました。約 3 年間(入院合計
これから
・資金集め(安定的な寄付収入のシステム構築や、行政からの支援)
3年の
・日本の小児がん医療のグランドデザインとの整合性をとる
チャレンジ
・病院との協力体制の構築
約 1 年6カ月)の闘病生活の中で、思春期の私は様々なことを考えました。生きる意味は何か、幸せとは何か、
▶
仕事とは何か。残念ながら私の受けた医療は不適切なものでした。最初に受診したのが耳鼻科だったからです。
②医療制度の不備:医師になってからも、最初に受診した医師が小児がんのことを知らないために、同様の不適
切な医療を受けた子どもたちに出会い、強い憤りを感じました。患児家族や看護師らと共に研究会を立ち上げ、
新しい小児医療の形を作りたいと挑戦を始めました。
自分が描く
未来
実現する姿
Children First
■日本の小児がん医療のグランドデザインの構築
希少がんである小児がんを効率良く治療するには、治療施設を集約する
必要がある。しかし、集約された病院のみで、すべての小児がん患者を
診療することはベッド数の問題から物理的に不可能である。そこで病院
少子高齢化社会に関する問題は山積しています。優先順位を付けて解決をする必要があると思いますが、
「Children First ∼まず子どもたち、それからわたしたち∼」の理念が必要と考えます。
子どもの成長は、すべての人々を笑顔にします。子どもを社会の中心に据えることにより、高齢者や若者も幸せ
を感じることができます。病気の子ども達、児童虐待、教育格差等、こどもに関する社会問題も山積しています。
さらに多くの方々からの支援を通じて、子どもたちに「君たちは大切な存在なんだよ」というメッセージを送る
ことで、社会でみんなで子どもを育てることを誰もがあたりまえに感じる未来を切に望みます。
Lead the Self
3年後に
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とハウスが連携し、治療の内容により、病院と自宅とハウスのうち、最
適な場所を選んで治療をすることにより、課題を解決する。
■社会に与えているインパクト
・医療費は軽減されるが、患者家族の生活の質は向上。
・民によって支援された施設が、子どもを支える。
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Lead the Society