総合メディカルレポート 今後の精神医療の経営について コ ン サ ル タ ン ト の 視 点 か ら さらに、 「改革ビジョン」では、入院患者の早期退院 等の強化により病床数を削減してきたのに対し、日 を促進するため、精神病床から救急や認知症、社会 本の精神科病床数は、1993年をピークとして減少傾向 復帰リハビリテーション等への機能分化を促進し、患者 にはあるが、施策不十分により2008年には約35万床と の病態に応じた適切な医療を各病院の病棟・病室単 なっている。精神病床の平均在院日数は、アメリカは約 位で実施できる体制を整備する方向性を示している。 1週間、イタリアやドイツ等は約2〜3週間であるのに対 加えて地域医療についても、中核的なセンター機能を し、日本は約10カ月(2005年 OECDデータ・2008年に 持つ「救急医療施設の整備」や、精神症状が持続的 おいてもほぼ同水準)とかなりの長期入院傾向にある。 に不安定な重度障害者も地域での生活が可能となるよ 加えて、日本における入院患者の入院期間を、厚生労 うな24時間体制の訪問サービス、また短期入所、症状 働省の在院期間別患者数の推移(2008年)で見てみ 悪化時における受け入れ確保等のサービスを包括的 ると、5年以上入院している患者数は全患者数の約 に提供する事業の具体像についても検討が進められ 65%、そのうち10年以上入院している患者数は約22% ている。 を占めており、社会的入院患者が多い結果となってい その他にも、医療保護入院・措置入院等の入院形 る。なお、精 神 保 健 医 療 福 祉の改 革ビジョンでは、 態ごとに看護配置や定期病状報告等の適切な処遇の 2005年患者調査において受け入れ条件が整えば退 や内部環境を踏まえた経営戦略を策定し続ける必要 確保を行うことや医療機関の構造的施設基準に加え、 院可能な患者数は5年未満では、総患者数の約60%と がある。 第三者評価や患者・利用者の選択等による精神医療 している。 の透明性の向上を図ることで、 「入院医療中心から地 入院患者の疾患別では、主傷病名が統合失調症 域における保健医療福祉」の実現を推進していくこと の入院患者数は、2005年は全入院患者の約60%を占 を示している。 めているが、2000年度と比較すると約1.5万人減少して 今後の精神医療の経営について 総合メディカル株式会社 東日本営業統括部 コンサルティング営業グループ 課長代理 廣渡 弘美 (社団法人 日本医業経営コンサルタント協会 認定登録 医業経営コンサルタント) ■ はじめに 近年、国民総医療費は年間約39兆円(2011年度) に達し、年々増え続けており、厚生労働省の推測(予 測)によれば、2025年度には60兆円に達する見込みで 14 ■ 背景 ある。そのため、これ以上の医療費増加を抑制するた 日本の精神保健福祉は、欧米が18世紀後半から発 上述に合わせたように、2012年度診療報酬改定の中 きている。それに対し、認知症は逆に約1.5万人増加し めの施策として政府は社会保障・税の一体改革を掲げ 展しているのに比べ、20世紀前半に初めて精神障害 で精神医療分野においては「一般病床を有する病院 ている(厚生労働省 患者調査より)。 ている。この改革の中で、医療・介護分野については、 者に関する法律が制定されるほど歴史が浅い。その 等の他の医療機関受診時の入院料」や「退院支援」、 また、精神疾患の外来患者数は、2005年の約267 「地域の実情に応じた医療・介護サービスの提供体制 ため、日本は精神疾患の患者が社会復帰するための の効率化・重点化と機能強化を図る」という方針を打 施設整備が遅れている。加えて、精神疾患への認識 院促進に関する点を評価項目として挙げている。 患別で見てみるとアルツハイマー病・気分障害がそれ ち出しており、これを達成するため今回の2012年度診 不足により家族等が受け入れを拒否するなどの社会 このように、診療報酬においても「改革ビジョン」の ぞれ2005年では約14万人・89万人から2008年には20 療報酬・介護報酬同時改定では「病院・病床機能分 偏見が強い。このような背景があるため、精神病床数 方針に沿った内容に改定されており、精神保健医療福 万人・101万人へ増加傾向にある(厚生労働省 患者 化・強化と連携」 「在宅医療の充実化」 「地域包括ケ は諸外国に比べると多く、 また精神病床数の地域偏在 祉は、今後の精神医療を入院医療から在宅医療へと 調査より)。 アシステムの構築」等を推進する内容となっている。 や病床の機能分化が不十分となっていること等により、 転換し、強化すべき疾患の入院医療においては手厚く その改定内容の中で精神科医療については「認知 精神医療のあり方が見直されている。 していくという意図を示していると考えられる。 症の早期診断等、重度の認知症の周辺症状に対する そこで、2004年度に厚生労働省精神保健福祉対策 よって、 これから大変革が予想される精神科医療分 精神科医療の適正な評価」 「身体疾患を合併する精 本部が「改革ビジョン」を打ち出した。この改革の基本 野において選ばれる医療機関となるためには、 「改革ビ 現状の環境を把握・分析した上で、事業体としての 神疾患救急患者への対応等急性期の精神疾患に対 方針として、10年間で国民の意識変革や精神病床の ジョン」の方針を基に地域に耳を傾け、必要とされる精 経営理念を見直し、新たな戦略を立案していく必要が する医療の適切な評価」 「地域移行を推進し、地域生 機能分化・地域支援体制の強化等により「入院中心医 神科医療ニーズを把握することや地域に所属する他の ある。そこで、上述した現在の精神科医療を取り巻く 活を支えるための精神科医療の評価」が具体的な方 療から地域生活中心へ」と方針を進め、受け入れ体制 医療機関との差別化・連携を強化する等の外部環境、 環境を踏まえた上で、16ページ図1・2のようにPLC 向案として掲げられている。このように明示された方向 を整えることで退院可能な約7万人の早期退院・社会 また院内経営資源などの内部環境を考慮し、自らがど 案からもわかるように、厚生労働省は精神医療におい 復帰の実現が改革の柱として掲げられている。 のような役割を担えるのか明確化することによって目指 ても病院・病床を救急や認知症等の機能ごとに分化・ この方針の下、 「改革ビジョン」では、精神病床にお すべき理念を再構築し、それを組織内に浸透させ一丸 連携を促し、効率的な医療を提供することで病床を約 いて病床数の算定式を見直し、患者動態の実態をより となって精神医療を提供していくことが必要となる。 8万床削減するとともに、退院した患者の受け皿となる 踏まえた新たな算定式を2006年4月より施行した。入院 在宅医療の推進を図ると考えられる。 期間を1年で区分し、在院1年未満群については平均 このように、今後大きく変革すると予想される精神科 残存率24%以下、在院1年以上群については退院率 医療分野において永続的に質の高い医療を提供し続 29%以上という数値目標を設定し、10年間で基準病床 日本における精神科入院について精神病床数を ● ける医療機関となるためには、変化していく外部環境 数を約7万床削減するという目標値を掲げている。 国際比較すると、諸外国が数十年間で地域生活支援 の面で、退院時または急変時に連携を図った場合の Vol.170 「認知症治療病棟の入院料」など機能分化・連携や退 万人から2008年の約290万人と増加傾向にある。疾 ■ 外部環境分析 (Product Life Cycle)とPPM(Product Portfolio Management)分析を行った。 「医療連携」 ● 地域差はあるものの、現状では良好とはいえない医 療機関や介護施設との連携。 ■ 現状 ● 受け皿となるグループホーム等の社会復帰施設が増 加傾向にある。 2012年度の診療報酬改定と介護報酬改定それぞれ Vol.170 15 総合メディカルレポート 今後の精神医療の経営について 「社会復帰関連の精神科療法」 評価が充実化される。 各算定点数は低いが、今後、入退院件数が増加す ● ● 社会復帰を促進させるためのさまざまな精神科 ることで収益性が期待できる。 療法が診療報酬上認められている。 PLC上では「成長期初期段階」、PPM上では「問題 ● 児」とした。 査報告によると、会員病院の80%以上が精神科作業 2007年度の日本精神科病院協会医療経済実態調 療法を算定し、 また70%以上が精神科ショートケアやデ 「認知症医療」 イケア、デイナイトケアを算定している。 診療報酬上の点数が1日当たり約270〜1,000点と な取り組みだけであると医療経営は難しくなるだろう。 能となった。 よって、内部環境分析を行うことで「弱み」を洗い出 PLC・PPM上で「社会復帰関連の精神科療法」と同 し、質的な成長ができるように戦略を策定していく。特 じ「金のなる木」とした。 に人材育成においては資格者集団という性質上、医 療機関は離職率が高く中長期的な人材の育成が難し 「長期入院医療」 ● 精神科だけでなく医療分野全体として長期入院に いため質の低下に陥りやすい。そのため、内部環境の 「弱み」として、ほとんどの医療機関において「医師不 入院患者数に占める割合が増加傾向。 ● 認 知 症 患 者 のほとんど が 高 齢 者 のため、ADL 比較的高額であることから収益の大きな柱となっ ● 今後、市場は縮小し、収益も低下すると予想される。 だろう。そうならないように、短時間正職員制度、リフ ている。 PLC上では「衰退期」、PPM上では「負け犬」とした。 レッシュ休暇制度等の福利厚生、ロッカー・トイレ・休憩 ● ● (Activities of Daily Living)やIADL(Instrumental Activity of Daily Living)が低下している患者や身 PLC上では「成熟期段階」、PPM上では「金のなる 体合併症が認められる患者が多く、短期の退院が 木」とした。 困難で長期入院となる傾向にある。 「外来医療」 今後もさらに患者数の増加が予想される。 ● ● 2012年度診療報酬改定において「認知症医療」を 評価すると明示されている。 自主性 ツアーにするかは ● 2008年度診療報酬改定で、訪問医療における算 Omotenasi Hospital Innovation ! 図1 事業単位に分けた精神科医療におけるPLC 笑 参加者に病院をよく知ってもらい 笑顔で帰っていただく おもてなしの心で病院改革 ア 認知症医療 ツアーを参加者にアンケートで 評価してもらう いろんなスタッフを主役に 演出する 精神科療法 外来医療 自 もっと面白いツアーに、 職員のモチベーションアップ 成長期 成熟期 医療連携 FISH理論 導入期 長期入院 ブ 写真をブログや ニュースリリースで取り上げる 衰退期 図2 事業単位に分けた精神科医療におけるPPM を高めて定着率を向上し、中長期的な人材育成が可 療率等の影響はあるものの、今後の精神科医療の戦 能な組織体制を構築する必要がある。 密な連携を図っていく、または受け皿となる施設を ■ 戦略の策定 自ら設置することにより、長期入院患者のうち退院 戦略とは、経営理念達成のための羅針盤であり、戦 可能な患者をスムーズに社会復帰できるように支援 略策定手法の一つとして、 「アンゾフの成長戦略」とい し、在宅や外来医療で対応する体制を強化していく う手法がある。この戦略は、18ページ図3のように、 「市 ことが考えられる。この他、ADL等により退院が困 場」と「サービス」という2軸を用いてそれぞれ「既存」 難な患者については、認知症治療病棟で受け入れる と「新規」に分け、4つのマトリクスを作成し、各マトリク 等の施策が重要になってくる。 スに該当する戦略を設定していくものである。 そこで、 「アンゾフの成長戦略」上で今後の精神科 医療経営の戦略を検討すると、今後の精神科医療経 営では、 「改革ビジョン」で打ち出された精神科医療の 経営戦略は、外部環境分析とともに医療機関内部 方向性や変化する精神疾患等に鑑み、 「医療サービス の経営資源(人材、資金、資産、情報) における 「強み」 の開発」の方向(増加する疾病に対する医療充実化 と「弱み」を分析し、 「強み」を生かし、 「弱み」を改善 等) もしくは「多角化」 (介護事業への展開等)の方向 できるように策定する必要があるだろう。特に医業は人 へと転換することが効果的な戦略になると考える。 が人をキュアまたはケアするため、 「人材」が医療の質 参考までに、 「医療サービスの開発」や「多角化」と に直結する。また、医療機関の場合、保険で適応され いう方向性から、今後の精神科医療経営の具体的な た医療サービスを行えば、そのサービス内容とは関係な 施策を❶から❹に示す。 く、 どの医療機関でも同じ保険収入を得ることができる。 高 市場成長率 Vol.170 の競合や受け皿となる施設数、また地域における受 ■ 内部環境分析 スタッフに自分たちがブランドを作っているんだと思ってもらう 低 えるような人事制度の導入等を行うことで、職員満足度 については近隣の医療機関や社会復帰施設などと 楽しかったかアンケートを 病院のホームページに 実施 アップ 料Ⅱが約19%増と増加傾向にある。 PLC上では「成長期後期段階」、PPM上では「花形」 とした。 これらの分析から考慮すると、近隣の医療機関と 査報告によると、訪問看護指導届出件数は2006年 ブログ 今後の精神科医療分野において主要課題になる と予想 指導 各部門でどのような 各フロアごとに度に比べ2007年度では指導料Ⅰが約13%増、 ツアー写真やコメントを 足」や「看護師不足」等の資格者不足が挙げられる 室等の院内環境の整備の充実化、また評価が目に見 略としては、患者の状態に合わせて退院可能な患者 アンケート 自由裁量 され、市場における収益性は拡大が期待でき る。 おける診療報酬は減少する体系となっている。 2007年度の日本精神科病院協会医療経済実態調 ● ● 16 定要件が緩和され、算定点数や算定回数が増加可 高 花形商品 問題児 認知症医療 医療連携 金のなる木 負け犬 精神科療法 外来医療 長期入院 相対的市場占有率 低 また、それによって得られる加算の大部分は、設備等の ❶認知症医療の強化 ハード面や人員等の医療体制さえ整えてしまえば算定 「改革ビジョン」において「精神病床の機能分化」 可能であり、質的レベルが低い状態でも診療報酬で定 が掲げられており、今後、急性期や社会復帰リハ等へ められた収入を得ることができる。そのため、医療機関 の機能分化を促進していく方向にある。また2012年度 は、他の自由市場の事業体に比べて、経営資源がアン 診療報酬改定においても認知症治療に対する評価の バランス化しやすく質的成長が困難な状態に陥りやす 引き上げや新設が検討されていることなどを考慮して、 い。しかし、これからの診療報酬は、さらに医療サービ 認知症治療病棟に転換する等認知症に特化した施策 スの提供過程や成果を重視した内容にシフトすると考 を実行することは経営的には有効な手段となる。 えられるため、今までのように設備や人員をそろえるよう Vol.170 17 FISH理論 総合メディカルレポート スタッフに自分たちがブランドを作っているんだと思ってもらう 今後の精神医療の経営について 既存 再延長される「中小企業金融円滑化法」 新サービス開発 市場浸透 市場 増加する疾病に 対する医療充実化 現職:税理士法人ブレインパートナー 代表社員、 株式会社ブレインパートナー 代表取締役、 総合医業研究会 理事 資格:公認会計士・税理士 多角化 新市場開拓 新規 既存 介護事業への展開 新規 サービス 酒 谷 宜 幸氏 事務所の特色:・医療(診療所・病院)、福祉、市民活動団体、NPO法人など地域社会づく りにかかわる事業の支援を中心に取り組んでいます。特に、医業、福祉事 業の支援に関しては、総合医業研究会というネットワーク組織で、情報交 換、研修などの相互研鑽と共に、関連事業者との業務提携も進めていま す。 ・ “組織はひとづくりの場である” という考え方のもとで、 “ひとづくり” にこだわった 事務所運営とお客様の支援を心がけています。 (さかたに よしゆき) 所在地:三重県四日市市諏訪町4番5号 四日市諏訪町ビル2階 〒510-0085 ❷連携強化 ループホーム等の地域密着型サービス、有料老人ホー 「改革ビジョン」において「退院調整機能の充実」 ム、サービス付き高齢者専用住宅等の住宅型施設など が掲げられており患者の地域生活への円滑な移行を 多様な施設展開が可能であり、加えて、グループホー 促進していく方向にある。また、2012年度診療報酬改 ムへの訪問診療等の加算が診療報酬上認められてい 本稿では、平成24年1月27日に国会に提出され、再 つ円滑に行うことができるよう、必要な体制の整 定において精神科療養病棟入院料の算定基準の厳 るため、収益性の向上も期待できる。 び延長される可能性が強くなった「中小企業者等に対 備を義務付ける。 する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法 金融機関に、貸付条件の変更等の実施状況およ 律」 (以下、 「中小企業金融円滑化法」)の延長が医 び本法律に基づき整備した体制等を開示するよう 療機関に与える影響について取り上げます。 義務付ける。 (注:虚偽開示に関しては、罰則を付す 格化など長期入院に対する評価の引き下げや認知症 について、診療所や一般病院との連携による加算強化 等が検討されている。今後は長期入院患者の増加に より収益の減少が予測されるため、他の医療機関から これまで何度も述べてきたが、日本の精神科医療は の連携による患者の受け入れを強化する一方で、退院 歴史が浅く、国民の精神障害への認識不足もあったた を促進するような取り組みを進めることで収益の改善を め、欧米に比べて精神疾患の患者に対する機能分化 図ることが可能となる。 や社会復帰施設等の整備が遅れていたが、 「改革ビ 中小企業金融円滑化法は、リーマン・ショック 局に報告するよう義務付ける。 (注:虚偽開示に関 ジョン」を打ち出したことで、日本の精神科医療は、医 後に資金繰りに苦しむ中小企業者を金融面で支援 しては、罰則を付すこととする。) ❸精神科療法の強化 療体制の確立に向けて動きだしている。 するため、平成23年3月末までの時限措置として 行政庁は、これを取りまとめて公表する。 「改革ビジョン」において上記❷と同じように「退院調 しかし、その体制確立のために、これから精神科医 平成21年12月に施行された時限立法です。 ・さらなる支援措置 整機能の充実」が掲げられていることや、2012年度診 療分野はさらに大きく変革していくことが予想されるた 中小企業者への貸し渋り・貸し剥がしの抑制を 政府は、中小企業者に対する信用保証制度の充 療報酬改定において入院中の患者に対するデイケアへ め、精神科医療機関は今後、安定した経営体制を継 目的として、当初の構想では「強制的に借金返済 実等、必要な措置を講じるものとする。 の評価やデイケアの疾患別プログラムに対する評価を 続するには厳しい状況になることが予想される。 「改革 を猶予する」という内容でしたが、中小企業者等 これにより、従来は、事前に策定して提出した 見直すなど精神科療法に対する評価が充実化されるこ ビジョン」の方針通り、約7万人の退院促進を行うとな からの貸付条件の変更の申し出に対して、金融機 経営改善計画等を金融機関が審査してからでなけ とで、患者の社会復帰を促進し、 よりスムーズな地域生 れば、精神病床は大幅な閉鎖に追い込まれることとな 関が可能な限り応じるように要請する「努力規定」 れば貸付条件の変更等の措置に応じてもらえな 活への移行を支援することが可能になると考えられる。 るかもしれない。そういった状況の中で、各機関がどの に近い形に落ち着きましたので、実効性を補完す かったものが、最長1年以内に経営改善計画等を策 ような機能を担っていくのかという選択に迫られることに るために次のような対策の総合的パッケージとし 定する見込みがあれば、先に返済条件の変更等の ❹受け皿施設の強化 なるだろう。 て導入されました。 措置に応じてもらえ、さらに「条件変更を行って 精神疾患を持つ患者の受け皿となる施設が不足し ただし、その選択は目先のものではなく、今実際に通 ・金融機関の努力義務 も不良債権としない」という利便性の高い制度が ている地域は、いくら医療機関が退院促進機能を強化 院している患者や入院している患者にとって最も良い 金融機関は、申し込みまたは求めがあった場合 実現しました。 したところで、患者を移行できる施設が存在しない。 医療とは何か、また、所属する地域社会において不足 には、他の金融機関、政府系金融機関、信用保証協 条件変更の具体的な例としては、約定弁済額の よって、多角化事業により、医療機関自体がその施設 している医療とは何か、その中でどのような医療を実現 会等との連携を図りつつ、できる限り、貸付条件の 変更、一定期間の返済猶予、金利の減免、返済期限 を開設・運用することで1つの医療機関で入院から在 したいか、 という理念を持ち、これらを形にしていこうと 変更等の適切な措置等を取るよう努める。 の延長、債権放棄などがあります。 宅医療まで一貫した安心・安全な医療サービスの提供 いう強い思いが先を見据えた新たな戦略を導くことに ・金融機関自らの取り組み 対象となる中小企業者は、業種区分、資本金の が可能になると考えられる。受け皿となる施設としてグ なるのではないだろうか。 金融機関に、貸付条件の変更等の措置を適切か 額や常時使用する従業員数等で定められており、 Vol.170 こととする。) 「中小企業金融円滑化法」の趣旨 ・行政上の対応 金融機関に、貸付条件の変更等の実施状況を当 Vol.170 R e p o r t 18 ■ まとめ TEL:059-357-2998 FAX:059-357-2997 C o n s u l t a n t コ ン サ ル タ ン ト レ ポ ー ト 図3 アンゾフの成長戦略 19
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