気候保護とエネルギー ∼研究補助からみるドイツの環境戦略∼

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ドイツからの
環境・エネルギー
先端レポート
松田 雅央(まつだまさひろ)
気候保護とエネルギー
∼研究補助からみるドイツの環境戦略∼
研究補助金の3分の2を再生可能エネルギーへ
昨年ドイツで行なわれたハイリゲンダムサミットに引き続き
今年のサミットでも気候変動が主要な議題となる見通しで
す。ドイツは環境保全を政策の柱とし、環境分野でEU
(欧
州連合)を牽引する立場にありますから、洞爺湖サミットに向
ける関心も自ずと強くなります。今回は気候保護に大きな役
割を果たす再生可能エネルギー (*) への研究補助動向を通し
て、ドイツの環境戦略を概観してみましょう。
1996 年から2005 年の10 年間に実施されたドイツ政府の
研究補助「第 4 次エネルギー研究プロジェクト (**)(総額 8 億
4300 万ユーロ)
」の内訳を見ると約 3 分の 2 が再生可能エネ
ルギー分野に当てられ、これは日本に次ぐ世界第二位の規模
です。とりわけ中小企業への補助に重点が置かれ、補助対象
の半数を従業員50人以下の企業が占めています。
研究分野別にみると太陽エネルギー、中でも太陽光発電
が総額 55%(約 3 億ユーロ)と突出し、風力発電の増加も顕
著です(図 1)
。ただ、太陽光発電は研究開発の流れが定着し
十分な国際競争力をつけたこともあり、次の第 5 次プロジェク
トでは大きく割合を減らしています。また、風力発電も技術の
成熟に伴い割合を若干減らすことになります。
対照的に割合を倍増させるのが地熱です。火山が存在し
ないドイツでの開発条件は必ずしもよくありませんが、ポテン
シャルは大きいと考えられています。
実のところ再生可能エネルギーで生産量が最も多いのは
バイオマスですが、農林水産との関連が深く別の補助が行わ
れているため、
この図 1には登場しません。
(*)水力、風力、バイオマス、太陽光、地熱といった自然・循環型エネルギーの総称。
(**)4.Energieforschungsprogramm
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© ドイツ環境省(BUM)
L. ディカプリオ制作
「THE 11 HOUR」を
ドイチェがスポンサー支援
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省エネと再生可能エネルギー開発に重点をおき、
経済・社
会・環境の持続可能な発展を目指すのがドイツの環境戦略で
す。再生可能エネルギーの研究・開発、
設備の生産、
さらに施
工・管理まで含めた就労者数は 2005 年現在およそ17 万人、
2020 年には 30万人に達する 図2. ドイツで消費されるエネルギーの
というのがドイツ環境省の予
種類別割合
(2007)
測です。ドイツの失業者はお
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よそ約 500万人ですから十分
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しょう。ドイツの政策はCO2
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排出削減だけではなく、
新た
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な産業育成と雇用創出の点
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でも着実に実を結び始めて
出典 (2)UMWELT Nr.9/2007",BMU,2007
います。
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1966 年 盛 岡 生まれ。
カールス
ルーエ市在住ジャーナリスト。
1992 年 東 京 都 立 大 学 工 学 研
究科大学院修了、
1995 年渡独。
趣味はサイクリング。自然豊かな
農村地帯を走る爽快さが好き。
http://www.umwelt.jp/
ドイツの地熱開発
図1. 再生可能エネルギー研究援助の分野別割合
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環境コラム
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出典 (1)Entwicklung der erneuerbaren Energien in Deutschland im Jahr 2007",BMU,2007
環境分野で、新たな産業育成と雇用創出を目指す
現在、
再生可能エネルギーがドイツ国内の消費エネルギーに
占める割合は6.7%
(図 2)
。太陽光発電にいたってはわずか
0.1%に過ぎませんが、
世界的な主導権を握るためここに巨額
の研究補助を注ぎ込んでいるのです。ドイツは太陽光発電の
導入量でも他国を引き離し、
計算上は世界の半分を超える太
陽電池が設置されていることになります。
ドイチェ・アセット・マネジメント
(株)
では、
環境
保護活動家としても有名な俳優のレオナルド・
ディカプリオ氏が制作・脚本・ナレーターを務め
たドキュメンタリー
「THE 11TH HOUR」
の映画
制作会社とスポンサー契約を結びました。これ
に伴い、
2008 年6月中旬に東京・大阪・札幌で
プレミアム上映会
(無料)
を実施いたします。詳
しくは事務局までお問い合わせください。
【内容】
「The 11th hour」
とは、
“ぎりぎり瀬戸際の状態”
を意味します。映画では50人以上の著
名人がインタビュー形式で出演。人類と地球が直面している危機について問題提起すると同時に、
それらを解決する方法や取り組みも紹介しており、
今から行動することで未来を変えることができ
るというメッセージを伝えています。
「 THE 11TH HOUR プレミアム上映会」事務局
電話:03-6230-0520(10:00∼18:00 /土日祝休)
※
「THE 11TH HOUR」
は、
日本での一般公開の予定はありません。鑑賞ご希望の方は、
上記までご連絡ください。
映画紹介のため、
今月号の編集後記はお休みいたします。
表紙写真 写真家阿久沢利夫氏が撮影した花畑の写真をお届けします
長野県野辺山に、国立野辺山宇宙電
波観測所がある。巨大な電波望遠鏡で
(直径45m)
その施設に行く途中、
清里
から141号を登ってゆくと、
いろいろな花
畑が見えてくる。ポピーの花畑と一本の
木が印象的だったので撮影してみた。
投資信託営業部
0120-442-785
(受付時間:営業日の午前9時から午後5時)
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