第5章 5.1 単相無停電電源装置における 電力変換器の高効率制御法 まえがき 無停電電源装置は次の 3 つの方式に大別される(5)。1)常時インバータ方式(オンライン 方式),2) 常時商用方式(オフライン方式),3)ラインインタラクティブ方式(第1章, 図 1.5 参照) 。オンライン方式は,PWM 整流器と PWM インバータで構成される。入出力 特性は良好であるという長所があるが,効率が悪い,高価であるという短所がある。オフ ライン方式は,通常,負荷には商用電源が供給されており,停電時のみ PWM インバータ が動作する方式である。効率は良く安価であるが,通常時の入出力特性が商用電源と同じ であること,停電切り換え時に電圧が瞬断することなどの欠点がある。ラインインタラク ティブ方式は,オフライン方式において電源正常時,電圧調整機能を付加した方式である。 オフライン方式と同様,通常時の効率は良い。以上が 3 方式,それぞれの長所・短所があ る。 本章では,オンライン方式とラインインタラクティブ方式の長所を兼ね備えることがで きる単相における電力変換制御方式を提案する(78)-(80)。従来方式との特性比較を表 5.1 に示 す。提案方式の主回路は,電圧型の 3 レグ変換器で構成される。これら 3 つのレグは,系 統と負荷に対して直列-並列-直列に接続されることにより,それぞれ昇圧回路,降圧回路と 高調波補償回路の役割がある。これらのレグを必要に応じて PWM の動作をさせることに より,電力流れを処理する。PWM 変換は必要最小限しか動作しないので,出力電圧制御性 を維持したままで,効率を改善できる。この直列-並列-直列補償型の電力変換方式を以下, SPSC 方式と呼ぶこととする。 今回用いた主回路,3 レグ変換器は,文献(81)および文献(73)でも単相 UPS に適用されて いる。しかし,同じ変換器を用いても SPSC 方式とこれらの文献では,第 2 章で述べたよ うにスイッチング動作が全く異なる。文献(73)では,3 レグ変換器を単相交流昇降圧チョッ パ回路として動作させ,電圧調整器に応用している。電圧調整は可能であるが高調波補償 101 はできない。文献(81)では,インバータ,整流器に相当するレグが常に高周波でスイッチン グするため,オンライン方式と同等の入出力特性が得られるが効率は改善されない。 本章では,まず提案する SPSC 方式の動作概要を説明する。次に主回路と制御回路の構 成とその動作について説明する。そして,SPSC 方式を UPS として動作させた場合の特性 と従来方式に対する効率特性を示し,提案した方式の妥当性を明らかにする。 表 5.1 UPS における電力変換方式の比較 UPS 方式 常時インバータ 出力電圧 入力電流波形 精度 および入力力率 2% 正弦波 (オンライン) 常時商用 効率 84%-88% 97%以上 10% 負荷に依存 94%-97% 10% 負荷に依存 93%-96% 2% 正弦波 91%-94% (オフライン) ライン インタラクティブ 提案方式(SPSC) (高機能ラインイン 97%以上 タラクティブ) 102 5.2 変換器の高効率制御の動作原理 図 5.1 (a)に SPSC の概念構成を示す。昇圧回路,降圧回路,高調波補償回路の 3 つで構 成されている。図 5.1 (b)は比較のため,オンライン方式の構成を示す。 SPSC 方式は下記に示すように 4 つのモードで動作する。 昇圧回路 (直列補償) 商用 電源 降圧回路 (直列補償) 負荷 高調波 補償回路 (並列補償) (a) 直列-並列-直列補償方式 有効電力(交流) 商用 電源 有効電力(交流) 有効電力 (直流) PWM 整流器 PWM インバータ (b) オンライン方式 図 5.1 UPS における変換器の構成(概念図) 103 負荷 高調波、 無効電力 モード 1(降圧動作) 商用電圧 Vin > 出力電圧 Vout の場合。 図 5.2 (a)参照。入力電圧より出力電圧を低く する場合,昇圧回路は PWM をしないで短絡状態にする。降圧回路を PWM 動作させる。 出力に非線形負荷や力率負荷が接続されている場合,高調波補償回路が,入力電流を正弦 波にし,そして,入力力率を 1 に調整する。 モード 2(昇圧動作) 商用電圧 Vin < 出力電圧 Vout の場合。 図 5.2 (b)参照。入力電圧より出力電圧を高く する場合,昇圧回路を動作させる。降圧回路は PWM をしないで,短絡状態にしておく。 モード 1 の時と同様に高調波補償回路は動作する。 モード 3(直送動作) 商用電圧 Vin = 出力電圧 Vout の場合。 図 5.2 (c)参照。出力電圧と入力電圧とが同じ場 合,昇圧回路,降圧回路ともに PWM をしないで,短絡状態とする。モード 1,2 の時と同 様に高調波補償回路は動作する。 モード 4(バックアップ動作) 商用電源が停電している場合。図 5.2 (d)参照。商用電源と電力変換回路を切り離すため に,昇圧回路を開放状態にする。降圧回路を短絡状態にする。高調波補償回路をインバー タとして動作させる。 従来方式との損失について 図 5.1 (b)に示すオンライン方式は整流器により交流有効電力を直流電力に変換してい る。そして,インバータにより直流電力を交流電力に再び変換している。従来の変換方式 において,有効電力は PWM 整流器と PWM インバータの 2 つの変換器を通過する。一方, 上記で説明したように SPSC 方式では,有効電力は,1 つの PWM 変換器を通過,または 全く変換器を通過しない場合がある。しがたって,提案方式は,PWM 変換器による損失が 従来方式より少なくできるので,効率が改善される。 104 有効電力 商用 電源 降圧 回路 負荷 短絡 高調波 補償回路 Vin (a) モード 1 (降圧動作): 高調波、 無効電力 Vout V in > V out 有効電力 商用 電源 負荷 昇圧 回路 短絡 高調波 補償回路 Vin Vout 高調波、 無効電力 (b) モード 2 (昇圧動作): V in < V out 有効電力 商用 電源 負荷 短絡 短絡 高調波 補償回路 Vin (c) モード 3 (直送動作): 高調波、 無効電力 V in Vout = V out 有効電力 商用 電源 Load 開放 インバータ 高調波、 無効電力 (d) モード 4 (バックアップ動作): 停電 図 5.2 SPSC 方式の動作モード 105 5.3 主回路と制御回路 図 5.3 に SPSC 方式の主回路と制御回路を示す。主回路は電圧型の 3 相変換器と同様で, 3 つのレグ,6 つのスイッチング素子 Q1~Q6 で構成される。Q1,Q2 のレグは昇圧回路, Q3,Q4 のレグは高調波補償回路,Q5,Q6 は降圧回路として動作する。変換器の入出力には スイッチングリプルを平滑するための L-C フィルタがある。電解コンデンサ CD は高調波 補償を行うために必要である。 制御回路において,従来のオンライン UPS と同様,出力電圧制御器と入力電流制御器が ある。出力電圧制御器は,出力電圧を一定および正弦波にするように動作する。入力電流 制御器は,入力の電流を正弦波および入力力率を 1 にするように動作する。高調波補償回 路としての Q3, Q4 のゲートの操作信号 vr2 は,入力電流制御器の出力信号 vrc (入力電圧操 作信号)に従い駆動される。昇圧回路としての Q1,Q2 のゲート操作信号 vr1 または降圧回路 としての Q5, Q6 のゲート操作信号 vr3 は,下記の式のように, vrc と出力電圧制御回路か らの出力信号 vri (出力電圧操作信号)との差信号 Δv を用いて駆動される。スイッチングを 休止するゲート信号は電源電圧と同期した方形波信号 vrect を選択している。 ∆v = vrc -vri (5.1) IfΔv > 0 then v r1 = v rect , v r 3 = v rect - ∆v (降圧モード) (5.2) (昇圧モード) (5.3) (直送モード) (5.4) IfΔ v < 0 then v r1 = v rect + ∆v, IfΔ v = 0 v r 3 = v rect then v r1 = v rect , v r 3 = v rect 106 107 iin vL vs 電源 vs - + - + PI PI PLL 出力電圧制御器 PID 出力電圧指令値 入力電流制御器 乗算器 Cf1 iin 昇圧回路 Lf1 - + - Q4 vrect モード切換 式(5.2)/(5.3)/(5.4) 方形波発生器 vri - + 直流電圧 指令値 Δv vdc + CD + Cf2 降圧回路 Lf2 三角波 発生器 vr 3 vr 2 vr 1 Q3 高調波 補償回路 Q6 Q5 図 5.3 SPSC 方式の主回路と制御回路 vrc vdc Q2 Q1 制御回路 vL 主回路 Q6 Q5 Q4 Q3 Q2 Q1 負荷 三角波キャリアと比較される操作信号 v r1, v r2, v r3 は図 5.3~5.5 のようになる。この波形 は,式(5.2)~(5.4)の理解を容易にするため,入力電圧制御器から出力される操作量 vrc と 出力電圧制御器から出力される操作量 vri と入力電圧が正弦波であり,それぞれの位相が一 100 vrc - vri 50 vr1+vrec (%) 0 -50 -100 0 100 0.005 0.01 0.015 0.02 (sec) vr2+vrec 50 -vri (%) 0 -50 -100 0 0.005 0.01 0.015 0.02 (sec) 0.01 0.015 0.02 (sec) 0.01 0.015 0.02 (sec) 100 50 vr3+vrec (%) 0 -50 -100 0 100 50 (%) 0 0.005 vri vrc -50 -100 0 図 5.4 0.005 各レッグの被変調信号波形(昇圧動作) 出力電圧操作量 vri> 入力電圧操作量 vrc 108 致している場合を示している。実際の vrc, vri は,常時インバータ方式の場合と同様に負荷の 高調波の量や入力電圧の歪み量などにより,必要に応じて位相差や歪みが発生する場合が ある。 100 50 (%) 0 vr1+vrec -50 -100 0 0.005 0.01 0.015 0.02 (sec) 100 vr2+vrec 50 -vrc (%) 0 -50 -100 0 0.005 0.01 100 0.015 0.02 (sec) vri - vrc 50 vr3+vrec (%) 0 -50 -100 0 100 50 0.005 0.01 0.015 0.02 (sec) 0.01 0.015 0.02 (sec) vrc vri (%) 0 -50 -100 0 0.005 図 5.5 各レッグの被変調信号波形(降圧動作) 出力電圧操作量 vri < 入力電圧操作量 vrc 109 高調波補償回路としての Q3,Q4 は負荷に含まれる高調波の有無に関わらず動作させて いる。この理由は,1) 出力にフィルタコンデンサ Cf2 の進み電流を補償する; 2)バックアッ プ運転に切り換えるとき,なるべく出力に過渡現象がないように高調波補償回路をインバ ータとして動作させるためである。 100 50 vr1+vrec (%) 0 -50 -100 0.005 0 0.01 0.015 0.02 (sec) 100 vr2+vrec 50 -vrc (%) 0 -50 -100 0.005 0 0.01 0.015 0.02 (sec) 0.01 0.015 0.02 (sec) 0.01 0.015 0.02 (sec) 100 vr3+vrec 50 (%) 0 -50 -100 0.005 0 vrc 100 = vri 50 (%)0 -50 -100 0 0.005 図 5.6 各レッグの被変調信号波形(直送動作) 出力電圧操作量 vri = 入力電圧操作量 vrc 110 5.4 UPS としての構成 図 5.7 に,図 5.3 で示した主回路,制御回路を用いて構成した UPS を示す。主回路にお いて,電解コンデンサ CD の電圧は,175V~200V 程度となるので,Q1~Q6 のスイッチン グ素子に,オン抵抗が比較的低いソース-ドレイン電圧 250V 系のパワーMOS-FET を使用 することができる。制御回路において,上述したように,従来のオンライン UPS と同様の 出力電圧,入力電流制御系に加え式(5.1)~(5.4)の演算を行えばよい。これらの演算および モード切換をアナログ回路で実現することは困難であるが,CPU を用いれば容易に実現で きる。さらに,式(5.1)~(5.4)の計算による演算量増加は軽微であるため汎用ワンチップマ バイパス回路 電源 単相 100V SCR 図5.3の主回路構成 MCCB 52C 昇圧回路 降圧回路 83I 充電回路 バッテリ + 出力 単相 100V 負荷へ 高調波補償 回路 制御回路 昇圧回路 シリアル通信 (a) UPS の構成 電気量検出 回路 シリアル通信 ポー ト R S 232C ワンチップ マイコン 電 力 変 換 回 路 ゲ ー ト回 路 表 示 ・操 作 S W (b) 図 5.7 制御回路のハードウェア構成 SPSC 方式を用いた UPS の構成:1kVA 実験機 111 イコン(16bit, 20MHz)を使用し,通信機能や表示機能等,UPS 周辺の機能をすべて取り込 むことができた。 実験機の定格は 1.0kVA/700W で設計した。停電時,SPSC 変換器は図 5.2(d)に示したよ うに高調波補償回路がインバータとして動作する。バッテリの電力は図 5.8 に示す回路に より 185V まで昇圧され,インバータに供給される。過負荷時,故障時は無瞬断でリレー83I をバイパス側に切り換える。 T D インバータ 直流入力へ バッテリ C Q8 図 5.8 バッテリ電圧昇圧用 DC-DC コンバータ 112 5.5 実験機の特性 5.5.1 静特性 図 5.9 にコンデンサ入力整流器負荷 100%時の入出力波形を示す。出力電圧ひずみ率 6%, 入力力率 98%となった。図 5.10(a)に負荷に対する静特性,図 5.10(b)に電源電圧に対する 静特性を示す。負荷,電源電圧に対する出力電圧変動率は 1%以内の特性が得られている。 総合効率は最大 94.1%となった。ハーフブリッジ型電力変換方式を用いたオンライン UPS の効率は 88%程度(9)なので,本方式を用いることにより全体損失を約半分にすることがで きた。 入力電圧 50V/div 入力 電流 10A/div 出力電圧 50V/div 出力 電流 10A/div 25ms/div 図 5.9 入出力電圧・電流波形:整流器負荷 100% 113 105 出力電圧 (V) 100 入力力率 (%) 95 総合効率 (%) 90 入力電圧100V 抵抗負荷 85 0 200 400 600 出力電力(W) (a) 出力電力に対する特性 105 出力電圧(V) 100 入力力率(%) 95 総合効率(%) 90 抵抗負荷700W 85 80 100 120 入力電圧(V) 140 (b) 電源電圧に対する特性 図 5.10 静特性:入力力率,総合効率,出力電圧 114 800 5.5.2 動特性 図 5.11 に負荷が 100%,急変した時の波形を示す。図 5.12 に停電/復電時の波形を示す。 出力電圧 40V/div 700W --> 0W 負荷 0W-->700W Load 40ms/div 出力電流 10A/div 図 5.11 過渡特性負荷急変時 入力電圧 100V/div 出力電圧 100V/div 250ms/div 出力電流 10A/div 図 5.12 過渡特性 停電/復電時 115 図 5.13 に入力電圧が±20V 急変したときの波形を示す。図 5.14 に電力変換器→バイパス, バイパス→電力変換器の切り換え動作時の波形を示す。どの場合も出力電圧変動率は±5% 以内となった。これらの特性はオンライン方式と同等である。 入力電圧 100V/div 出力電圧 100V/div 入力電圧 120V → 80V 40msec 入力電圧 80V → 120V 出力電流 10A/div 図 5.13 過渡特性 入力電圧急変時 入力電圧 100V/div 出力電圧 100V/div 電力変換器→バイパス バイパス→電力変換器 100ms/div 出力電流 20A/div バイパス回路電流 20A/div 図 5.14 過渡特性 116 バイパス切換 5.5.3 入力高調波除去特性 図 5.15 に,入力電圧に 5 次,7 次,9 次高調波をそれぞれ重畳させたときの出力電圧ひ ずみ率を示す。30%を重畳させても出力ひずみ率はほとんど影響を受けないことがわかる。 図 5.16(a),第 9 次,30%時の入出力電圧波形である。これにより,一周期中に昇圧/降 圧を繰り返すような高調波が入力に印加された場合でも問題なく,制御できることが確認 できる。 図 5.16(b)に,最大ピーク 260V,0.5μsec のサージをステップ的に重畳させたときの入 出力波形を示す。出力電圧の変動は±0.5%以内となっており,ステップ的な波形変化に対 しても,SPSC 方式は電圧を補償できることが確認できた。 出力電圧歪率(%) 3 2 1 10 20 30 入力電圧高調波含有率(%) 基本波のみ 7次調波を重畳 5次調波を重畳 9次調波を重畳 図 5.15 入力電圧高調波含有率に対する出力波形ひずみ率 117 入力電圧 出力電圧 100V/div (a) 入力電圧に第 9 次高調波 30%含む時(整流器負荷時) 入力電圧 入力サージ 260V 0.5us 100V/div 出力電圧 (b) 入力サージ印加時 118 5.6 直列-並列変換方式との比較 5.6.1 主回路構成 第2章,2.2 節で示した単相直列-並列型変換器(72)を図 5.17 に示す。2 直列の電解コン デンサの接続点がリアクトルを介し負荷に接続され,2 直列のスイッチング素子の接続点 が,ニュートラル線に接続されている。スイッチング素子は IGBT を用いている。負荷の 有効電力は整流器から,インバータを介さず電解コンデンサを通して供給される。従来の ものでは整流器とインバータの素子 2 つを通過していたが,図 5.17 の構成では 整流器の 素子 1 つのみの通過となるので,スイッチング損失が低減でき効率改善ができる。 負荷が 要求する高調波は,インバータで出力電圧を正弦波に制御した結果として,中間レグから 供給される。 入力力率制御および出力電圧制御について,従来のハーフブリッジ方式と同じ方法を用 いることができる。入力側の IGBT は入力電流正弦波・力率 1 の整流器として制御する。 中間の IGBT は出力電圧が正弦波となるようにインバータとして制御する。停電時は,入 力側の IGBT のスイッチングを停止し,DC-DC コンバータを動作させる。 SCR REC Q1 ノイズ フィルタ 52C INV Q3 + CDC1 L1 入力 83I L2 + CDC2 C1 C2 Q2 Q4 DC-DC 図 5.17 直列-並列補償方式による主回路構成 119 ノイズ フィルタ出力 5.6.2 実験結果 図 5.18 に整流器負荷時の入力電流,出力電圧波形を示す。従来のハーフブリッジ方式す なわち常時インバータ方式と同様の特性が得られることが確認できた。 図 5.19 は SPSC 方式,ハーフブリッジ方式,直列-並列補償方式について,定格入出力 における抵抗負荷時の効率を示している。SPSC 方式,直列-並列補償方式は,従来のハー フブリッジ方式よりもスイッチング損失を低減できるため,効率が良くなる。さらに SPSC 方式は直列-並列補償方式よりも良くなる。この理由は次の 2 点である。1) SPSC 方式では, 直列-並列補償方式に対して直流中間電圧を 1/2 にできるので,スイッチング損失を低減で きるため。2) オン抵抗の小さいパワーMOS-FET を採用することできるため,導通損失を 低減できるため。 入力電圧 100V/div 入力電流 10A/div THD=2.5% 出力電圧 100V/div THD=2.3% 入力電流 10A/div 図 5.18 整流器負荷時の入出力波形 120 100 変換 効率 (%) 90 提案(SPSC)方式 直列ー並列補償方式 ハーフブリッジ方式 80 70 0 200 400 600 800 出力電力(W) 図 5.19 変換効率の比較 (定格入出力電圧,抵抗負荷時) 121 1000 5.7 あとがき 本章では,単相 UPS において 3 レグ変換器を直列-並列-直列補償器として動作させるこ とで,オンライン方式と同等の入出力特性とラインインタラクティブ方式と同等の効率特 性が得られる電力変換方法について述べた。以下,本章で得られたことをまとめる。 1) 3 レグ変換器を用い,電源側にあるレグを昇圧,負荷側にあるレグを降圧回路と して動作させた。電圧を調整する場合,どちらか一方が動作する。中間レグは高 調波補償回路として動作させた。主電力は昇圧または降圧回路のいずれか 1 つを 通過するのでスイッチング損失を低減でることがわかった。 2) 実験結果より,入力力率 95%以上,出力電圧波形歪み率 5%以下などの特性が得 られた。さらに,定格時 94%の効率が得られ,従来のハーフブリッジ型変換器よ り 50%損失が低減できることがわかった。 3) 入力電流制御,出力電圧制御は,従来のハーフブリッジ方式で一般的に採用され ている方法を使用できる。各制御器から出力される操作量の大小比較によりモー ドを切り換えて,各レグの PWM 信号とした。 4) 操作量の比較,モード切り換えなどの制御は CPU によるディジタル制御で実現 できた。この演算量は軽微なため,本提案方法を適用した製品では通信機能や表 示機能など UPS のすべての機能を汎用ワンチップマイコンに集積することがで きた。(12)。 122
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