電力変換システム用の補助電源に有用な 擬似共振形DCDCコンバータ

電力変換システム用の補助電源に有用な
擬似共振形 DCDC コンバータの損失解析と最適設計
長井真一郎*,高橋 計 (ポニー電機株式会社)
Loss analysis and design of resonance converter for auxiliary power source for power conversion system
Shinichiro Nagai, Hakaru Takahashi (Pony Electric Co.,Ltd.)
概要
MC
コンバータ
環境保護やエネルギ資源の問題から新エネルギシステム
や通信情報機器に使用される電力変換装置の高効率化が求
められている。これらの装置内の主な変換回路にはソフト
スイッチング技術などを採用した高効率化が行われている。
しかし、これらの装置内に必ず存在する補助電源(制御回路
用電源)は主変換回路が動作しない場合でも駆動すること
も多く、24時間運転することも多い。このため、補助電
源の高効率化の必要性がある。この補助電源は、負荷がフ
太陽
電池
ファン
制御回路
ゲート電源
ゲート電源
図1.電力変換装置(PCS)内の補助電源構成
Np : Ns
Ls
Vin
Di
Lp
ァンやスイッチ駆動用電源及びマイコン電源などがあるた
Sw
め、負荷が一定に近い特徴をもつ。
机上検討を行ったので報告する。
+
Vout
トランス
本報告ではこの特徴に良いと考えられる擬似共振形フラ
イバックコンバータの巻数を考慮した設計にて低損失化の
商用
系統
補助
電源
Cs
図2. 補助電源用擬似共振形フライバックコンバータ回路
(Vin=250V,Vout=12V,Cs=470nF,Lp=3mH,Ns=5)
回路構成
図1にシステムに構成された補助電源構成図、図2に擬
似共振形フライバックコンバータ回路を示す。補助電源は
システムに構成され、各種電源などに使われる。擬似共振
形フライバックコンバータは一般的なフライバックコンバ
ータに RC スナバを削除し、スナバコンデンサを付加した
図3.実験波形例(Sw 端子電圧波形)
もので部品追加がほとんどない。動作原理は電流臨界モー
表1.損失演算方法
ド制御で動作させ、励磁インダクタンスと共振コンデンサ
のリンギングを利用してソフトスイッチングを行う方式で
スイッチ導通損失
スイッチ導通電流と Id-Vds 特性から算出
ある。装置の補助電源のように負荷が大きく変化しない場
スイッチング損失
Turn-on 時の残留電圧と共振コンデンサから算出
合には有用な方式である。
トランスの鉄損
⊿B と SW 周波数及びコア損失データから算出
検討結果
トランスの銅損
巻数と導通電流及び導通電流密度から算出
図3に実験波形、表1に損失演算方法、図4に巻数と損
失の関係を示す。実験波形ではターンオフ時、ターンオン
時共にソフトスイッチングとなっていることが分かる。損
[W/div]
div]
Loss ALL
Loss SW&
SW&Di
108 turn
LossALL=
LossALL=4.5W
失は大きく表の4つに分け、それぞれ損失を求め、積算し
た。この結果、Np=108 ターンが最も高効率で最適な巻数で
あることが分かった。この算出により同じ材料にて巻数を
調整し最も低損失なコンバータに設計することができる。
この他、トランスには IEC,UL 規格に対応する必要がある
Loss Core
Switching Frequency
[20Hz
20Hz/
Hz/div]
div]
Loss winding
Loss switching
場合があり、この制約も損失に影響する。本報告書では、
ある条件における補助電源設計の一例を示した。本検討に
より装置の高効率化の提案を行いエネルギ問題に寄与でき
れば幸いである。
Primary winding Np[
Np[25turn
25turn/
turn/div]
div]
図4.巻数と損失の関係