今、プロジェクト・マネージャーに 求められるのはビジネス価値の最大化 ステークホルダーの関心を 1 つにまとめ、成功に導く 日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 アプリケーション開発事業担当 理事 内山 修一 ビジネス環境の激しい変化によって企業の投資領域が変わり、大規模かつ複雑な新しい取り組みが必要な プロジェクトが生まれている。IBM はプロジェクト・マネージャーの強化・育成に継続的に力を入れ、プロジェ クトの成功を通じて、お客様のビジネスへのさらなる貢献を目指している。 IBM のプロジェクト・マネージャーに 期待される力 お ―― 現在のお仕事および経歴に関してお聞かせください。 門を自社で持った上でサービスを提供していることから、テクノロジー お 客様からIBMに対する期待はとても高く、特に大規模なプロ ジェクト、複雑なプロジェクトを成功させるための貢献を求めら れています。また、IBMはソフトウェア、ハードウェア、研究開発部 への洞察、グローバルでの対応力、そして統合力に非常に高いレ 客様のビジネスの変革をご支援するグローバル・ビジネス・サー ベルを望まれています。IBMだからできること、IBMならではの違い ビス事業の中で、アプリケーション開発を担当する部門の責任 を見せてほしい、という要求を常に感じます。 者です。 お客様の変革の核となる重要なプロジェクトを託されているため、お 客様の経営陣と直接会話をさせていただく機会も多くあります。 私自身、アプリケーション開発、システム・インテグレーションには、 IBM が本格的にサービス事業を展開し始めた時期からかかわって したがって、IBM がプロジェクト・マネージャーに期待することは、プ おり、プロジェクト・マネージャー、プロジェクトを複数管理するプログ ロジェクト・マネージメントの中核になる高いITのスキルに加え、お ラム・マネージャーとして、製造、金融、流通、公共と幅広い分野 客様のビジネス環境を理解し、お客様がビジネスで成果を得られるこ のお客様を担当してきました。また、グローバル・ビジネス・サービス とに直接的に貢献できることです。そのためには、場合によっては、 全体の品質についての責任を持つ部門も経験しました。 お客様からの要望にそのまま応じるのでなく、お客様が達成したい ことを実現するための、より良いやり方を提案し、合意いただき、結 ―― IBMのプロジェクト・マネージャーに求められる期待にはどのよ 果に結び付けていくことも必要です。 うなことがあるのでしょうか。 お客様から、また、IBM 社内においても、1 つの事業責任者とし | 1 て、シニアマネージメントや各種関連する部門とも常に密接なコミュ ニケーションを行いお客様に最適なソリューションを提供できるように 調整していくことが必要になります。 「新しい」の意味を問う 中身もスケールも大きく変わった アプリケーション開発事業 ―― アプリケーション開発事業は、近年どのように変わってきていま すか。 お 客様はビジネスの成長や効率化のために新しい仕組みの構築 を望まれます。新しい領域の仕組み作りは過去の経験だけで は対応できず、狭い範囲で必要なスキルを持つ人材やソリューション を探そうとしても限界があります。 IBMにはグローバルで業種業界での深い知見を持ったタレントが集 まり、特定領域の高度な知識を提供する専門家チームであるCoC (Center of Competency)があります。CoCと協 業して、 先 進 的なソフトウェアを活用したサービスの提供や、新しいテクノロジーを 使った解決の道筋を見つけ、より高い価値を持つソリューションをお 客様に提供していきます。 また、アプリケーション開発への期待も従来とは内容が大きく変わっ たといえます。システム要件、予定されたコストと納期に合わせて、 1 つのシステムを完成させるということから、お客様のビジネスの価値 を高めていくための仕組み作りをどうやって実現していくのか、その さ まざまなレベルでのトレーニング・プログラムを用意しています。 最新のテクノロジーやプロジェクト・マネージメントに関する研 提案・推進能力への期待が高まっています。 修に加え、コミュニケーションやリーダーシップなどのコア・ケイパビリ お客様のビジネス環境が変化し続けていく中、状況を的確に把握し、 ティーの向上のためのトレーニングも用意されています。また、直近 お客様のビジネスの価値を最大化することに貢献するためには、適 では、シニアなプロジェクト・マネージャーに対するコーチング・プロ 切な軌道修正、場合によっては大胆な計画変更を行わなくてはなり グラムの強化を図っています。私自身も、コーチングに携わっていま ません。 す。プロジェクトはその性質から唯一無二なものであるため、実証さ お客様のビジネスの変化を理解し、プロジェクトに求められる変更を れた能力を超えた本人の潜在能力の発揮を期待するストレッチ・ア どのように取り扱うのか。プロジェクト・マネージャーは、適切な判断 サインは必然になります。これがプロジェクト・マネージャーの育成の をしていくためには、お客様と高いレベルでコミュニケーションができ、 鍵にもなると考えています。これを単なる賭けにしないために、一緒 IBM社内に対してもそのための支援体制を作っていくためのコミュニ に課題解決を行いながらコーチングでの支援を行い、より高い視点、 ケーション力が必要になります。 状況や背景を包括的に理解し論理的に伝える力、また、より上位の マネージメントとの交渉能力などの獲得を支援しています。 お客様の経営陣と向かい合う プロジェクト・マネージャーへのコーチング ―― 新しい仕組み作りに取り組むプロジェクト・マネージャーにはど のようなトレーニングやサポートをしていますか。 ―― 新しいことにトライするにはどのような心掛けが必要でしょうか。 変 革のプロジェクトはお客様にとっては、何十年にもわたって積 み重ねてきたビジネスを変えるという非常に重要な取り組みで | 2 ビジネス価値を最大化することが IT 関係者の地位向上につながる ―― プロジェクト・マネージャーに高い能力が求められていますが、 その成果はどのような形で現れると考えますか。 I BMはグローバルでビジネスを展開しています。ほかの国の人々と プロジェクトをやっていて感じることの1つにIT 関係者の地位の高 さがあります。米国や欧州に比べると、日本ではIT 関係者の地位 が必ずしも高くない現状があると思います。 現在のように変化が激しい時代にお客様に新たな価値をお届けする には、お客様において具体化されたシステム要求を確実にシステム として実現する従来からの能力を超えて、新たなモデル、ケイパビ リティーが必要になると考えます。 最近グローバルでのカンファレンスなどでよく聞くキーワードとして「バ リュー・ベイスド・プロジェクト・マネージメント」という言葉があります。 従来の 3 つの目標・制約であるTime、Cost、Qualityをマネージ することに加えて、最終的なビジネス・ベネフィットを最大化すること に焦点を当て、お客様のビジネスにより直接的に貢献するためのプ ロジェクト・マネージメントの枠組みです。まさに、大きな変化の中で 果実を確実に得るための、いまの時代に求められるプロジェクト・マ ネージメントのアプローチと思います。 また、お客様の関心が大きく変化し、これまでのバックオフィスから す。お客様側でもさまざまな立場の方々が参加されます。そうしたプ 顧客接点を中心としたフロントオフィスにIT 投資の領域が移り始めて ロジェクトに携わるプロジェクト・マネージャーは、多くのステークホル います。それは、新しいタイプのプロジェクトが増えることを意味し、 ダーと前向きの協力関係を構築し、全体を率いていく力を持つ必要 現在はお客様にとって変革期であり、サービスを提供するIBMにとっ があります。そのためには、高い視点でステークホルダー全体を把 ても変革期に当たります。 握し、どのように関心を集め1 つの方向を打ち出していくのか、とい お客様のビジネスに大きなインパクトを与える大規模で新しい考え方 うことが重要になります。 が必要とされるプロジェクトが生まれています。IBMのプロジェクト・ マネージャーがそうしたプロジェクトを成功に導く活躍をすることで、 人は新しいものに対してはおびえを感じます。一方で新しい経験を お客様の成功はもちろんのこと、IT 関係者の地位も高めていくこと 楽しむということに強い欲求も持っています。この新しい経験を楽 ができると確信しています。 しむという文化を育て、共有していくことが大切だと考えています。 IBMには、多様な知識を持った多才なタレントからサポートを受けて、 新しいことにトライできる良い環境があると思います。 ※ IBM、IBM ロゴ、ibm.com は、世界の多くの国で登録された International Business Machines Corporation の商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれ IBM または各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、www.ibm.com/legal/copytrade.shtml (US) をご覧ください。 | 3
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