PDFダウンロード - Accenture

Financial Services Architect Vol.25
2012年春号 金融サービス本部
成熟市場におけるリテール戦略
経済危機後の担保管理高度化
損害保険業のIT効率化に向けて
企業におけるPMO活用戦略
目次
1.成熟市場におけるリテール戦略
~ 新たな成長エンジンとしてのアナリティクスCRM
シニア・マネジャー  木原 久明
2.経済危機後の担保管理高度化
~ Clearstream Accenture共同調査結果から考える担保最適化
シニア・プリンシパル  山田 健二
3.損害保険業のIT 効率化に向けて
~ 契約管理パッケージ·ソフトウェア活用の可能性
シニア・マネジャー  藤田 秋生
4.企業におけるPMO活用戦略
~ 複雑化する企業経営を助ける次世代PMO
シニア・プリンシパル  岡本 美保
5.最近話題のプロジェクト
6.アライアンスおよびパッケージ・システム
7.弊社レポートおよび書籍紹介
8.会社概要
Financial Services Architect
Financial Services Architect (FSアーキテクト)は、
金融業界のトレンド、最新の IT情報、弊社サービス
および貴重なユーザ事例を紹介する、日本オフィス発の
ビジネス季刊誌です。
1
拝啓 陽春の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
いよいよ新年度を迎えましたが、世界経済は未だ不安定要素が散見され、安定的な
成長を確保できない状況です。
日本金融業界においても、ホールセールビジネスが低調な中、国内リテールビジネスや
海外ビジネス、さらには新たな収益源の確保が模索されていると認識しております。
国内リテールビジネスは顧客の絶対数が減少期に入る中、顧客当たりの収益を如何
に向上するか、対象顧客を如何に拡大するかが鍵となっております。
欧米の銀行ではプロダクトバンドリングという新たな手法で顧客囲い込みが進展して
おります。この様な動きは国内においても進展すると思われます。
海外ビジネスにおいては、拠点横断での事業単位もしくは商品・サービス単位での
取り組み(主に機能強化)が必要と考えます。
つまり、既存の拠点や部門を跨ぐ取り組みが不可欠となります。こういった取り組み
の推進力を向上させるには企業PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)機能の
強化が求められます。
また、安定性を確保できない時代だからこそ、コスト管理、資産管理、品質管理の
強化は欠かせません。
本号では、上記に関連する弊社の考え・アイディアを掲載しております。ぜひ、ご一読
いただき、貴社の取り組みの一助となれば幸いです。
2012年度は金融機関にとって新たな構造転換の年になると考えます。
引き続き、貴社のビジネス価値の向上に貢献する競争力のあるサービスの構築に
向け、鋭意努力させていただく所存ですので、ご検討の上ご用命いただければ幸い
に存じます。
今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具
2012年 4月吉日
アクセンチュア株式会社
金融サービス本部
統括本部長 関戸 亮司
2
成熟市場におけるリテール戦略
~新たな成長エンジンとしてのアナリティクスCRM
国内の法人向け銀行ビジネスは、貸出金を例にしても成長に陰りが見える。
各行がリテール向けビジネスに活路を見出そうとするのは当然の選択と
言えよう。
一方で、人口成熟による個人口座数(=顧客数)の減少、リテール収益を
支えた住宅ローンにおける新規貸出・貸出残高の減少や過当な金利競争
下での収益性の悪化など、従来の延長線上ではリテール向けビジネスの
将来も決して明るいものではない。
顧客基盤の「拡大」に始まり住宅ローン販売を1つのゴールとしてきた銀行
リテールビジネスは、クロスセル・アップセルによる「深耕」により顧客あたり
収益の最大化を目指すモデルへの転換を余儀なくされている。
木原 久明
2002年 アクセンチュア㈱入社
金融サービス本部
戦略グループ
シニア・マネジャー
銀行・証券・保険・ノンバンクを中心に戦略立案、
営業・マーケティング改革、
オペレーション
そうした中では、顧客を正しく理解できるかどうかが勝敗を分ける決め手
となり、高度な顧客分析(アナリティクス)の果たす役割は、今まで以上に
大きくなりつつある。
産業の空洞化や地域人口の減少などその悩みが深い地方銀行を中心に、
弊社が取り組むアナリティクスを活用した CRM(Customer Relationship
改革プロジェクトを担当
Management)についてご紹介したい。
アナリティクスCRMとは
振込、他金融機関との取引状況など
顧客を理解すれば、
販促などへの顧客
の基本情報を収集する。
の反応が予測できる。反応が予測でき
れば、顧客ターゲティングは最適化で
(2)
顧客情報収集ビジネス
弊社が考える
「広義のアナリティクスCRM」
アナリティクスCRMは、以前から多く
の金融機関で議論されており、その
きる。このような効果的かつ効率的な
・
・
・更なる顧 客 理 解に必 要な情 報 の
コンセプト自体は目新しいものでは
CRM 活動を数学的・統計学的に高度
収集を目的としたビジネス。
クレジット
ない。一方で、高度な分析を実施して
な顧客分析手法を用いて実現するこ
カードを提供すれば、購買履歴などが
も、
十分な果実に至らない事例も多い。
とをアナリティクスCRMと呼ぶ。
収集できる。ベビー用品の購入履歴
弊社は、以下の 5 つの要件を満たす
から、出産などのライフステージを予
「広義のアナリティクス CRM」こそ、
測し、学資保険の販売が可能となる。
ビジネス効果創出には必要と考えて
コンサルティングが必要な投資信託
いる。
商品・サービスの戦略的分類に
よる有機的なクロスセル
顧客分析は、インプット情報を必要と
する。顧客との取引こそ情報収集の
最大機会と考え、情報収集への寄与
度から、商品・サービスを戦略的に分
類する銀行も登場してきている。
なども、様々な情報収集機会となるた
め、
このカテゴリーに位置付けられる。
(3)
収益ビジネス
・
・
・収益規模の大きい住宅ローンなど
その考え方では、商品・サービスを3つ
がこれに該当する。こうした長期商品
のカテゴリーに分類する
(図表1)
。
もまた、顧客をロックしながら更なる
(1)
顧客基盤構築ビジネス
・
・
・顧客基盤拡大の入口および基本
情報収集のためのビジネス。預金口座
により顧客を獲得しつつ、属性や給与
3
顧客情報取得が期待でき、
クロスセル
に貢献する。
(1)
ビジネス理解に基くアナリティクス
(2)
情報取得プロセスの定義
(3)
営業活動プロセスの定義
(4)
営業マネジメントプロセスの徹底
(5)
継続的な効果検証
アナリティクスはビジネスに対する
知見と融合してこそ価値を最大化で
きる。
図表1 銀行Aにおける商品・サービスの戦略的位置付け
ビジネスの
戦略的位置付け
商品・サービスの分類
アパート
ローン
カード
目的
ローン
ローン
収益化を実現しつつ、更なる顧客情報取得
により次なるクロスセルの準備
証券・投信
保険・年金
顧客情報収集
ビジネス
• クレジットカードにより、購買履歴など
各種トランザクション情報収集
• コンサルティング商品の販売時には、
様々な情報を能動的に取得
クレジット
カード
顧客基盤
構築ビジネス
クロスセル・アップセルの流れ
収益ビジネス
住宅
ローン
主なポイント(例示)
普通預金
定期預金
預金口座を通じて基本情報取得
- 給与振込情報
- 他金融機関との取引情報 など
© 2012 Accenture  All rights reserved.
(1)ビジネス理解に基くアナリティクス
たとえば、顧客理解に役立つ情報は、
額が膨れた月には、
カードローン利用
代表的なアナリティクス手法に、多変
統合的なシステムで管理されている
の可能性が高くなることを知るから
もの、部門に閉じたツールの中で保有
こそ定義できる。
量解析や重回帰分析によるツリー分
析がある。目的変数(例:カードローン
を 1 年以内に新規利用する確率)を
顧客別に算出するために、様々な説明
変数(例:属性情報、
クレジットカード
ショッピング履歴、コンタクト履歴な
ど)を用 いて顧 客を分 類する。顧 客
セグメンテーションの結果、反応確率
の 高 い 顧 客から優 先 順 位をつけて
アプローチすることで、少ないマーケ
ティングコストでの効果を最大化する
(図表2)
。
ツリー分析では、投入した情報項目の
中から、
意味のある変数やその閾値は
自動的に識別される。だが、
ビジネス
に対する理解なく機械的に実施した
分析によるモデルに、効果は期待でき
ない。
されているもの、担当者のメモとして
のみ保存されているものなど様々で
ある。これら全ての情報を変数として
投入することは不可能であり、活用情
報の取捨選択が必要となることから、
ビジネスへの理解度により効果に大
きな違いが生じる。コールセンターに
当月のクレジットカード利用金額照会
をする顧客は、支払いに不安があり、
カードローン利用の可能性が高いと
(2)情報取得プロセスの定義
優秀な営業担当者は、重要な情報を
自ら収集・整理し、アクションにつなげ
ることができる。
「デキる」担当者の秘
訣を、全社で共有するためには、顧客
接点にて営業担当者が「取得すべき
情報」を明らかにし、
「どのタイミング
に」
「どのような話法で」聴取するのか
といったレベルまで、情報取得プロセ
知っている者のみが、
コールセンター
スを標準化することが重要である。
情報を活用すべきと判断できるので
(3)営業活動プロセスの定義
ある。
適切なターゲット顧客リストを還元し
また、変数の中には、直接活用できる
ても、営業担当者間で実際の成約率
ものもあれば、加工することで意味を
が 2 倍ほど異なることもある。営業プ
もつものもある。カードローン潜在顧
ロセスの属人化がその原因である。
客の識別に、
「 過去 1年間のクレジット
刈り取り効果最大化には、あるべき活
カード支払金額の平均に対する当月
動プロセスを定義するとともに、その
の支払金額」は有用な変数となるが、
活動を支援する必要がある。
この指標は通常よりも大幅に利用金
4
図表2 ツリー分析のイメージおよびその効果
ツリー分析イメージ
ツリー分析の効果
ツリー分析に基く
顧客優先順位で
アプローチした場合
顧客セグメンテーションの細分化
アプローチに対する
反応確率
(5%)
YY≦B
(12%)
YY>B
(7%)
ZZ<C
(4%)
ZZ≧C
(1.5%)
反応顧客数
XX≦B
(2%)
XX>A
(8%)
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
(15%)(10%)(8%) (6%)(5%) (3%) (2%) (1%)
反応確率の濃淡付け=アプローチの優先順位付け
顧客全体に
アプローチした場合
少ないコストで効果を享受
アプローチ対象顧客数
© 2012 Accenture  All rights reserved.
たとえば、投信販売ターゲットリストを
検証には、意図的にテスト群を設ける
情報項目を限定した上で簡易なツー
配布する際には、ターゲット顧客抽出
ことも必要となる。目的ローンの DM
ルを用いた分析を実施し、②分析に
ロジック
(例:過去に購入履歴あり)
と、
を発送する際に、①低金利キャンペー
より展開された施策の効果検証を実
その顧客群ごとのセールス話法を取
ン対象顧客と、②商品案内のみ顧客
施し、③意味ある分析に必要な情報・
りまとめた「虎の巻」などの営業支援
と、③ DM を発送しない顧客に分け、
機能のみを本格的にシステム化する
ツールも同時に展開すべきである。
それぞれの成約データを蓄積する。
という考え方である。ただし、場当たり
自動車ローンでは、顧客が次に乗換
それにより、
次回キャンペーンで、
金利
的なシステム拡張は、
データモデルの
可能性の高まる車検の少し前にタイ
訴求すべき顧客、金利訴求しなくとも
乱れや開発総コストの上ブレを引き起
ムリーにアプローチすることができれ
いい顧客、キャンペーンなしでも自律
こす。
したがって、
「 小さく作り大きく
ば、次の車両に対してもローンを提供
的に商品利用する顧客が識別できる。
育てる」ことをポリシーとしながらも、
できる。このように営業タイミングを
指 定 することもまた 極 めて 重 要 で
ある。
高度な分析を支えるシステム基盤
次に、アナリティクスを実現するシス
テムに関しても弊社の考えを述べた
(4)営業マネジメントプロセスの徹底
い。残念ながら、CRMシステムを導入
担当者の活動プロセスに加え、
管理者
したが効果実感がないという声は少
のマネジメント徹底も欠かせない。
なくない。また、システムは用意した
結果指標に加え、中間指標まで管理
が、ほとんど利用されていないという
することが望ましい。担当者ごとに、
金融機関も多数存在する。
配布されたリストのどこまでアタック
したか、それぞれの顧客における進捗
状 況はどうなっているかを管 理し、
「やりきらせる」仕組みを構築する。
(5)継続的な効果検証
分析結果に基く施策効果についても、
継続的に検証すべきである。効果の
5
弊社では、全商品・サービスを対象と
し、多数の既存システムと連携した大
規模システムを、当初から構築するこ
とを推奨しない。パイロットを経ること
で、
ビジネスに必要十分なシステムを
段階的に開発すべきと考えている。
①エリア・支店、商品・サービス、活用
将来形を見すえた「あるべきデータ
モデル」を予め設計するよう留意する
必要がある。
経済危機後の担保管理高度化
~Clearstream
Accenture共同調査結果から考える担保最適化
リーマンショックがもたらした経済危機後の各国金融当局による規制強化
は、金融機関におけるリスク管理高度化を促し、様々な業務領域に影響を
与えている。本邦金融機関においても様々な取り組みが行われているが、
「規制対応」の域を出ておらず、これを「改革」への足がかりと位置づける
金融機関は少数派と思われる。昨年弊社が実施した「担保管理」に関する
調査に基づき、グローバルプレイヤー金融機関における当該領域の課題認
識を紹介し、本邦金融機関に対する示唆を考察したい。
山田 健二
1996 年 アクセンチュア(株)入社
テクノロジー コンサルティング本部 シニア・プリンシパル 銀行・証券業を中心にコアトレーディング・
セトルメントサービス担当
弊社は2011年に欧州の国際証券保管
「重要」ではあるが、決して「鍵」とな
また、現在の規制動向では、Tier1資本
機関であるClearstreamと、
グローバ
るとは言えない領域と考えられてい
の充実を求める方向であり、担保利用
ル展開を行う16 の巨大金融機関に
た。また、担保最適化・管理高度化は、
による信用コストおよびカウンター
対しCollateral Management (担保
内部業務プロセスや組織に起因する
パーティエクスポージャを削減する
課題や、金融機関が利用するカスト
ことは、金融機関にとって非常に重要
ディ・ブローカーが多数あることから
な意味をもっており、
これまでのよう
管理)
について共同調査を実施した。
現 在 の 世 界における担 保 資 産 規 模
は、10.2 兆ユーロであり2010 年ベー
スの米国 GDPとほぼ同額と推計され
ている
(図表1)
。
担保管理高度化自体は、決して新し
い話ではない。担保管理は、預金取
扱金融機関のバンキング業務におい
ては、与信時に通常に発生する業務
であり、
トレーディング業務において
は、これまで取引ライフサイクルの
一部として、バックオフィスによって
実施される業務に過ぎなかった。今回
対象としているトレーディング領域に
おける担保管理高度化のもたらすメ
リットは、
カウンターパーティ別エクス
発生する課題が主要因となっており、
歴史的に抜本的な改革が困難と考え
られていた。
しかしながら、
リーマンショック時に
発生した信用収縮による流動性リス
ク顕在化は、金融当局による大幅な規
制強化を世界的にもたらした。各金融
機関は内部的なリスク管理強化を掲
げており、その中でも非効率な運用を
余儀なくされ、
コストを圧迫している
担保については、収益減少局面にお
いて、新たな展開が求められている。
これまでは、
バックオフィスの 1機能に
すぎなかった担保「管理」に加えて、
担保「最適活用」が求められており、
な非効率な担保運用は許されない状
況とも考えられる。
外部コストおよび潜在的な内部コス
ト削減可能額は、当然のことながら
今後の規制動向にも大きく依存する
ため、見積もることは困難であるが、
本調査では40 億ユーロにも上ると推
計している。各 金 融 機 関において、
担保最適化によるコスト削減の潜在
的な施策としては、①担保プール数の
削減、②担保情報可視化による最適
化、
③Internal Transfer Pricing (内部
移転価格)の仕組み改善などを挙げて
おり、調査にてインタビューを実施し
ポージャ管理のインプット程度と過去
「 規 制 対 応 」および「コスト削 減( 効
た 38% の金融機関については、過去
認識されてきたことから、流動性が確
率化)」という2 つの流れが大きな変
保されている経済環境下においては
化をもたらしている。
3 年間でなんらかの担保効率化施策
を社内で実施しており、25% の金融
6
図表1 担保マーケットサイズ
5,055
4,450
Central-banks-secured funding (44%)
Trading with CCPs (3%)
320
205 185
Settlement (2%)
OTC Derivatives Margining (2%)
Market-secured Funding (50%)
出典:Clearstream Accenture共同調査結果
(単位:10億ユーロ)
© 2012 Accenture  All rights reserved.
機関では、社内だけではなく外部向
では、非効率性を排除し、最適化を可
手しており、集中的な管理を志向する
けの施策も実施していると回答して
能とする新たな担保管理のフレーム
金融機関もあれば、
金融機関内他リー
いる。
ワークを、いかに検討すべきであろう
ガルエンティティへの情報共有も行
か。効率的な担保管理では、アセット
わない分散管理を志向する金融機関
クラス、拠点、部門、通貨、
リーガルエ
も存在している。特にフロント収益の
ンティティに関わらず、担保データを
極大化を目指す取引中心型モデルの
集約することが可能であり、そのデー
金融機関(ブローカ・ディーラ)では
タが意思決定に十分な精度・細かさ
集中化の方向が顕著となっている
(図
を保持し、担保を効果的にかつ安全に
表2)
。
今回の調査で、各金融機関が特に問
題視していたのは、担保管理全体が
可視化されておらず、アセットクラス
別・部 門 別・拠 点 別 の 管 理 の た め 、
最適化を可能とする管理がなされてい
ない社内管理・仕組みの課題である。
これにより、流動性確保や資金コスト
削減を最大限効率化することが困難
となっている現状であった。特に、グ
ローバル展開を行う金融機関では、
これまで拠点による個別最適に傾倒
していたため、全体最適を行うために
必要となるITインフラを整備しておら
移動できる仕組みをもつことが求め
られる。金融機関ごとにそれぞれ異
なったアプローチで検討しているが、
要素としては大きく4 つの軸で検討
を進められている。1つ目は、
ビジネス
モデ ルに応じた担 保 管 理 の 最 適 化
(Business Model)。2つ目は、拠点別
ず、過剰な人員を配置していることか
管 理 になっている担 保 の 統 合 管 理
ら、業務プロセスも複雑化していると
(Geographic Footprint)
。3つ目は、
部
いう問題点も明らかになった。
また、外部的な課題点として、カウン
ターパーティごとにカストディ・サービ
スにプーリングした担保の最適化が
非常に困難であり、結果として過剰担
門別管理となっている担保資産使用
よる担保最適化は、過度な IT 投資を
助長するだけであり、
実現性が乏しく、
期待した効果を実現できない。これ
は金融機関が収益部門別に組織化さ
れ、
部門別収益の極大化が求められて
いるためであり、担保最適化実現には
個別部門別担保プール管理が望まし
いと考えているからと思われる。
の効率化( Internal Organization)。
担保最適化に求められることは、すべ
最後に金融機関にとっての担保管理
ての担保情報を可視化し、Internal
の説明責任とガバナンスの観点であ
Transfer Pricingを効果的に運用する
る
(Internal Governance)。
ことであり、流動性とファンディングの
保(Over Collateralization)
を維持せ
調査を行ったすべての金融機関では、
ざるを得ない現状を挙げている。
担保管理システムの改修や更改に着
7
しかしながら、単 純な管 理集中化に
バランスを管理する責任を明確にす
ることである。担保の効率的運用とい
図表2 集中管理を志向する担保管理モデル
Internal
Internal
Silo
Silo
Silo
Collateral
Management
Collateral
Management
Collateral
Management
Utilized
Not
Utilized
Trading
Under
Pressure
Netting
Settlement
Silo
Under
Utilized
Custody
Silo
Silo
Collateral
Management
Trading
External
Netting
Settlement
Custody
External
出典:Clearstream Accenture共同調査結果
© 2012 Accenture  All rights reserved.
う命題に対して、自行のビジネスモデ
十分に当てはまると考えられる。今秋
ルに沿った管理手法を確立し、
ガバナ
に予定されている金利スワップの中
ンスを定義・運用することを、
各金融機
央清算機関(Central
関が真剣に検討している状況とも言う
CCP )による集 中 清 算 導 入 、現 在グ
ことができる。ITについてもそれを支
ローバル金融機関において検討が進
える基盤構築となることが求められて
められているStandard CSA の採用、
おり、
結果として担保管理システムは、
信用リスクをアクティブに活用する
トレジャリ、
トレーディング、
リスク管
Credit Value Adjustment (CVA=信
理、財務管理、資本管理と密接な連携
用価格調整)の導入などが各金融機
を行うことが必要となってきている。
関においても、大きな検討課題とな
本邦金融機関では、
トレーディング領
域について各アセットクラス別に IT
インフラを整備してきた歴史的な経
緯があり、バックオフィス共通基盤に
あたる担保管理の領域については、
各アセットクラス別に管理がなされ
ている金融機関が大半である。今回
の調査において、日本の金融機関は
対象となっていないが、この結果の
Counter Party :
っているが、担保領域とこれらの領域
と密接な関係があるため、担保管理
の高度化は避けられない業務課題と
我々は考えている。単なる規制対応
という文脈ではなく、
「 担保効率活用
によるコスト削減」という転換を実現
可能にする新しいプラットフォームの
検討に向けて、弊社も各金融機関に
協力、貢献していきたい。
示唆する内容は、本邦金融機関にも
8
損害保険業のIT 効率化に向けて
~契約管理パッケージ・ソフトウェア活用の可能性
長引く不況の中、損害保険業界では保険料収入の伸び悩みが続いており、
経営の効率化が求められている。これまでも、合併・経営統合やITを活用し
た効率化を実現してきているが、さらなる効率化のための手段として、弊社
の契約管理パッケージ・ソフトウェア活用の可能性を探る。
藤田 秋生
1995 年 大手損害保険会社入社
その後、
大手IT会社勤務を経て、
2007年 アクセンチュア㈱入社
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
保険業担当
日本の損害保険業界を取り巻く
現状
この事務処理を効率化することが経
金融業界全体がシステムを自前主義
営の効率化につながる。以前は、最前
で構築する風潮であったことや、パッ
日本国内の保険市場は低迷が続いて
線で契約の募集を行う代理店が自分
ケージ・ソフトウェアが台頭し始めた
いる。過去 10 年間の自賠責保険を除
で保険料を算出して、
保険申込書の作
2000 年代前半は、保険業界が再編の
いた保険料収入の推移をみると減少
成を行っていたため、申込書内容の不
波の中でシステム統合対応に追われ
傾向にあり、
日本損害保険協会の調査
備を解決するために多大なロードが
ていたことが一因と思われる。この
では、2010 年度の元受正味保険料は
かかっていたが、近年では募集段階で
結果、
システム統合で非常に複雑化し
10 年前と比較すると約2.2%減少して
ITを活用して正確な保険申込書で契
た現在のシステムは、機能拡張に期間
いる。一方、保険金の支払額は増加傾
約を締結することが可能になりつつあ
とコストが多大にかかるものとなって
向にあり、2010 年度の元受正味保険
り、その後の代理店および保険会社
しまっている。
金は10 年前と比較すると約1.5% 増加
での不備の解消に要する作業の軽減
している。長期化する不況、人口の減
に寄与している。
少、若者の自動車離れなど、昨今の状
パッケージ・ソフトウェアの導入が
進まない損害保険業界
況を考えると、今後もこのような状況
は続くと考えられ、保険会社が業績を
パッケージ・ソフト導入の効果
日本の保険業界では利用が限定的な
パッケージ・ソフトウェアではあるが、
導入の効果は大きい。近年、パッケー
保険会社の多くは、現在でも1980 ~
ジ・ソフトウェアには多額の投資が行わ
90 年代に構築されたメインフレーム
れており、
開発生産性の向上のための
上のレガシーシステムを使用し続けて
フレー ムワーク・ア ー キテクチャが
損害保険の業務の特徴
おり、パッケージ・ソフトウェアの活用
確立している。これを1事業会社で実
損害保険は、生命保険とは異なり、通
は非常に限定的である。導入している
現することは困難であり、利用しない
ケースでも、財務会計などの一部の
ことは競争力を弱めることにほかなら
領域での活用が殆どであり、保険業務
ない。
維持するためには、
ますますの経営の
効率化が求められる。
常の契約の保険期間は 1年間と短期
であり、毎年契約の更新を行う。この
ため、
メガ損保であれば、年間に取り
扱う契約数が 1000 万件以上に上り、
9
の中枢である契約管理領域に活用し
ているケースは皆無に近い。これは、
図表1 弊社の損害保険業向けパッケージ・ソフトウェアのラインナップ
Product Studio
Rating & Rules
Policy
Administration
• 保険商品の設計
コンポーネント。
• 保険料計算コン
ポーネント。
• 契約管理コンポー
ネント。
• ビジネス部門の
ユーザの利用を
想定し、保険商品
の定義をウィザー
ドに従って操作
することにより
実現。
• 契約管理コンポー
ネントの一部と
して、および既存
システムから呼び
出すことも可能。
• 新商品の販売の
早期化を実現。
Templates
Billing
Claims
• 企業向けの商品の
設計を行うための
テンプレート群。
• 請求収納コンポー
ネント。
• 損害サービス・
コンポーネント。
• 契約管理コンポー
ネントの拡張と
して利用される。
© 2012 Accenture  All rights reserved.
例えば、一般的なパッケージ・ソフト
全てを切り替える必要があり、
必ずしも
型 商 品 の 契 約 管 理 領 域に大きなメ
ウェアでは、新 商 品 対 応 などの 際 、
システム保守を考えると最善の解決
リットがあると考えるが、その他にも、
画面から商品の内容を入力するだけ
策ではないと考える。
昨今の日本の損害保険業界の動向を
でシステム対 応 が 完 了 する構 造に
なっており、システム対 応に要する
開発コストの削減や開発期間の短縮
につながる。また、この操作は、ビジ
ネス部門のユーザ自身が実施できる
ようなユーザ・フレンドリーな作りと
パッケージ・ソフトウェアの活用により、
これまでは投資対効果で困難であっ
た少量・多品種の保険種目の業務に
ついてもシステム化が可能になり、業
務の効率化に寄与すると考えられる。
を最も熟知したユーザが操作するこ
弊社の損害保険業向けの
パッケージ・ソフトウェア
とによる、品質の向上の効果も期待で
弊社では、保険商品設計、保険料計
きる。
算、契約管理、請求収納など損害保険
なっているケースも多く、商品の内容
前述の通り、保険会社や代理店の業
務を効率化するシステム機能が提供
されてきてはいるが、保険会社が取り
扱う全ての保険種目に対して実現は
できていないのが現状である。国内
保険会社の保険料収入の約 50% を
占める自動車保険については、
保険料
収入・契約件数も非常に大きいため、
システム化は非常に進んでいるが、
自動車保険ほど保険料収入が大きく
ない傷害保険・新種保険などについ
てはそれほど進んでおらず、
とりわけ
商 品 数が多 い 新 種 保 険 のシステム
化が遅れている状況である。代理店
の 業 務を効 率 化 する代 替 手 段とし
業 務 の 広くカバ ーしたパッケ ージ・
ソフト
(図表1)
を保持しており、全世界
で 70 社以上に導入実績がある。この
パッケージ・ソフトウェアは領域ごとに
コンポーネント化されており、一部の
コンポーネントのみでの導入も可能
中止商品の受け皿としての活用や、
海外進出時の標準のソフトウェアとし
ての活用方法が考えられる。
合併・経営統合に伴う販売中止
商品の受け皿としての活用
保険会社の合併や経営統合において
は、経営の効率化のためにシステム統
合が行われる。その際、
システム統合
以前に取り扱った契約については、従
来のシステムで処理するケースが殆
どである。保険会社のシステムはメイ
ンフレーム上に構築されているケー
スが多く、システム統合によるコスト
削減の効果を享受するためには、多大
な運用・保守費用が必要な旧システム
である。例えば、保 険 料 計 算 のコン
を早期に収束させる必要がある。大
ポーネントは既存システムとの連携
部分の損害保険の契約は、システム
も可能になっており、実際にこのコン
統 合 の 1 年 後には満 期を迎えるが、
ポーネント単体で導入している事例も
火災保険や医療保険などでは保険期
多く存在する。パッケージ・ソフトウェ
間が数十年間に及ぶ保険契約も存在
アの導入により、
システムの開発作業
するため、旧システムの収束のために
が不要となるため、既に導入を行って
はこれらの契約を別システムに移行
いる企業ではシステム開発コストの大
させる必要がある。システム統合後に
幅な削減を実現している
(図表2)
。
稼働するシステムに移行する方式が
ツールを提供しているケースも多く
日本におけるパッケージ・
ソフトウェア活用の可能性
あるが、
この場合、商品の改定などの
前述の通り、パッケージ・ソフトウェア
都度、代理店に提供しているツールの
の導入効果を考えると、少量・多品種
て、Excelなどで作成した保険料計算
考えると、合併・経営統合に伴う販売
運用・保守を鑑みるとベストであるこ
とに間違いはないが、会社ごとに異な
る商品内容や事務処理で引き受けて
きた契約を一つのシステムに移行す
るためには多大なコストが必要となる
10
図表2 弊社パッケージ・ソフトウェア活用時の開発コスト
プロジェクト管理
テスト
開発
業界
現在
展望
弊社パッケージ・ソフトウェア活用
• 現状では、弊社のパッケージ・ソフトウェアを活用した場合、業界の平均と比較して、
開発に要する工数で50%以上の削減効果が表れている。
• 弊社パッケージでは、商品内容などの要件を入力することでシステムが稼働可能な
状態になるため、将来的には“要件定義期間=開発期間”の実現、すなわち、システム
対応に要する期間およびコストの大幅な削減を目指している。
© 2012 Accenture  All rights reserved.
ケースが多く、また、既存の契約に悪
弊社のパッケージ・ソフトウェアの活用
影響を及ぼすリスクもある。
が考えられる。
このような場合の受け皿として、契約
日本の損害保険業界では、
これまでは
管理パッケージ・ソフトウェアの活用が
パッケ ージ・ソフトの 活 用 は 非 常に
考えられる。独立したシステム上で稼
限定的であったが、昨今の国内での
働するため、
既存の契約に悪影響を及
伸び悩みの状況を考えると、業務の
ぼす可能性はなく、また、既に売り止
めとなっている過去の契約のみを取
り扱うため、
パッケージ・ソフトウェアに
搭載されている機能で契約の維持が
可能であれば、保守費用の削減にも
つながると考える。
海外進出時の標準のソフトウェア
としての活用
国内の保険料収入が伸び悩む中、
成長の機会を求めて、海外進出、特に
アジア 圏 を 中 心とした 新 興 国 へ の
進出が今後予想される。その際、各
国の業務プロセス・システムの統合が
グループ会社としての業務効率化に
寄与するが、それを実現する手段とし
て、海外でも多くの導入実績を有する
11
中枢である契約管理領域においても、
パッケージ・ソフトウェアが活用される
時代が今後到来するかもしれない。
要件定義
企業におけるPMO活用戦略
~複雑化する企業経営を助ける次世代PMO
企業における中長期的な取り組みは、組織や部門を跨ぎプロジェクト単位で
推進する機会が多い。
昨今のビジネス環境の変化を受け、グローバル規模の開発や、企業再編に
よる全社的な取り組み、
マルチベンダ・アウトソーシングの活用によるプロ
ジェクト参画メンバーの多様化、市場ニーズに応じた開発期間の短期化など、
プロジェクトを複雑化させる要因が増え、運営の難易度がますます高くなる
傾向にある。
これらの高難易度のプロジェクトを成功に導くために、プロジェクト全体
の共通基盤を築き、統制・管理を行うプロジェクト・マネジメント・オフィス
岡本 美保
1999年 アクセンチュア㈱入社
テクノロジー コンサルティング本部
金融サービスSIグループ所属 (以下 PMO)の存在が不可欠となっている。本稿では弊社が PMOとして
現場で支援した例を踏まえ、様々なプロジェクトにおけるPMO の在り方を
類型化し、プロジェクトを円滑に立ち上げ運営していくための要諦を考察
する。
シニア・プリンシパル
プロジェクト管理・プロセス改善
プロフェッショナル
PMOに求められる役割
2.管理・運営機能
前述の機能に対して、PMO 要員に対
プロジェクトを円滑かつ着実に実行し
進捗・課題管理など管理標準を整え、
して期待されるスキルや経験レベル
ていくために必要な PMO の役割は
会 議 体 の 運 営 他 、プロジェクトメン
も大きく違ってくる。戦略・統括機能に
非常に多岐にわたるが、
PMOに求めら
バーが円滑に作業するためのファシリ
は、
プロジェクトのリーダーシップを支
れる機能を以下の 3 つに大別する。
テーションとチーム間情報連携を支
える参謀的な能力と、企画・調整力が
(図表1参照)。特に大規模かつ複雑な
援する。継続的にモニタリング・可視化
求められる。管理・運営機能は、プロ
形態のプロジェクトとなれば、複数の
を行うと共に、現場への管理負荷や適
ジェクト管理における知見・経験が必
プロジェクトを束ねる全体俯瞰的な管
用価値を図りながら、プロジェクトの
要とされるが、一旦管理基盤さえ整え
理の枠組みが必要であり、3つの機能
状況や工程にあった形で展開する工
ば、会議体運営やモニタリング用の基
を最適に配置することが求められる。
夫がPMOの役割として期待される。
礎データ収集など定型化できる作業
1.戦略・統括機能
3.実行・推進機能
ソースを実現しやすい領域である。
プロジェクトにおける意思決定プロセ
プロジェクトの 実 行 計 画 作 成 、設 計
一方、実行・検討支援については、
より
スやガバナンス・レポーティングの仕
開発標準策定、全体テスト・移行計画・
システム開発における経験・知見が求
組みを確立するとともに、マネジメン
推進など、
コンテンツに踏み込んだ支
トが投資・コスト最適配分やサブプロ
められるが、
プロジェクト規模・形態や
援業務であり、プロジェクトの形態や
ジェクト間の優先順位に応じた意思決
ソリューションなどにより、各領域に
状況によって、PMOとしての関与度合
定を行うために必要な情報と仕組み
必要な支援工数も変動する。品質を
が変動する。時にはチームマネジメン
を提供する役割を担う。複雑なプロ
保ちつつ効率よく運営していくため
トに踏み込んだ梃入れやユーザ側の
ジェクトほど、経営・ユーザ・ITが三位一
に、役割と機能を明確化し、
プロジェク
検討も含めた個別領域テーマの検討
トマネジャーを支える適正な PMO 要
体となって推進されることが重要であ
り、PMOが牽引役・調整役となり、適時
支援なども実施する場合がある。
もあり、比較的機能を階層化し、
アウト
員を配置することが肝要である。
適切な意思決定のためのプロセスと
材料を整えることが求められる。
12
図表1 PMO の主な機能とスキル
主要な機能
必要とされるスキル
• リーダーシップ・マネジメント
戦略・統括機能
• 企画力・調整力
• 全体統括・推進
• 全体アプローチ・ロードマップ策定
• ガバナンスコントロール
• 工程完了判断
• モニター・コントロール
• マネジメントレポーティング
• ファシリテーション
• 投資・効果管理
管理・運営機能
実行・推進機能
• 管理標準策定・展開
• プロジェクト実行計画策定
• 進捗・課題管理
• スケジュール策定
• スコープ・変更管理
• 設計・開発支援(標準策定、展開)
• ベンダ管理
• 全体テスト計画策定・実行支援
• 品質管理
• 全体移行計画策定・実行支援
• システム開発経験
• エンジニアリング知識
• 会議体運営支援
© 2012 Accenture  All rights reserved.
PMOの類型化 ~プロジェクト
タイプ別にみるPMO設置事例
プロジェクトの特色によって、PMOに
期 待される役 割も変わってくるが、
プロジェクトの特徴やミッションに応じ
て以 下 の 5 つ のタイプに類 型 化し、
それぞれの推進上のポイントを整理
する。
立ち上げ当初から整えておくことも
③ テ ー マ 別 検 討 支 援 P M O: 領 域
PMOの重要なミッションだ。
横断の共通テーマの検討や、部門横
②統合P M O: 合併・統合などの企業
再編により、
システム統廃合・業務プロ
セス再構築といった全社レベルの取
り組みを行う際に配置され、複数プロ
ジェクトを束ねて推進するプログラム
管理的な特色が強いPMOである。
断 で 調 整 が 必 要 なテー マをもった
タスクフォースとして結成されるPMO
の位置づけである。
問題発生領域に対する火消し部隊的
なとらえ方をされがちではあるが、
個 別テーマに特 化した集 中 検 討 が
必 要 な 難 易 度 が 高 い 領 域 や 、横 断
①システム開 発プロジェクト P M O:
合併・統合においては、
トップ間で大
一般的なシステム開発プロジェクトに
方針レベルの合意が形成されていて
設置されるPMOである。
も、各論ベースでの方針・戦略まで調
議論し、あらかじめリスクを見込んだ
整されていないことが多く、IT
・経営・
必要な体制として設置タイミングと必
ユーザ間の決定・調整スキームを整備
要コストを見極めることが予算管理上
することが重要である。また、実務者
の観点からも重要である。
大規模プロジェクトは、管理しやすい
単位にサブプロジェクト化され、サブ
プロジェクト間の整合性をとり、スケ
ジュールや担当スコープの明確化と
全体計画策定をPMOが中心となって
行う。また、昨今はグローバル規模で
のプロジェクトや、マルチベンダやオ
レベルでは現業の利害を優先しがち
なため調整が難航することも多く、組
織に縛られずに部門を跨る調整機能
としての PMO の活躍が期待される。
現場レベルできめ細やかにフォロー
検討領域をプロジェクト計画段階から
④コーポレート PMO: 会社・組織全
体のプロジェクト選定や優先順位付け
などプロジェクトポートフォリオの管理
や、投資・予算計画・管理支援機能をも
フショアを含めた複数サイトでの開発
するためにも、
システム開発プロジェ
つと同時に、
プロジェクト・マネジメント
が主流となっており、
メンバーの多様
クトPMOやテーマ別検討支援PMOを
力の向上を目的として、IT企画部門な
化などによる文化や手法による行き
傘下に配置し、
「 複合型 PMO」として、
ど、企業全体における管理インフラを
違いを防ぐためにも各種標準策定と、
全体最適を意識した推進体制構築が
維持するミッションをもった部署に設
統合的なプロジェクト管理の仕組みを
プロジェクトの成否に大きく影響する
置される。プロジェクト管 理 標 準や
だろう。
アセット整備や、
教育展開までを担い、
13
図表2 PMO 類型と配置例
経営・マネジメント
4
コーポレート
PMO
プロジェクト(プログラム)
全体プロジェクト統括
(プログラムマネジャー)
5
第3者評価型
PMO
2
統合PMO
業務・ユーザ
ユーザ部
IT・システム
ユーザ部
プロジェクトマネジャー
ユーザ部
分科会(横断テーマ検討)
サブプロジェクト
システム
開発PMO
サブプロジェクト
共通テーマ検討および
テスト推進・移行推進など
分科会(横断テーマ検討)
3
サブプロジェクト
1
テーマ別検討
支援PMO
3
テーマ別検討
支援PMO
© 2012 Accenture  All rights reserved.
標準類を教科書で終わらせないよう、
すえ、プロジェクト品質・リスクに対す
機となりうる。社内における推進力を
現 場からのフィードバックを受けて
るアクションを明確化する役割が第
もち、リーダーシップを発 揮できる
改善するプロセスを定着化させること
3 者評価型 PMOに求められる。また、
メンバーをPMやPMOに配置するとと
が重要である。
工程完了タイミングにおける品質保
もに、組織にとらわれず中立的な判断
証活動のみならず、各工程内での品
を行うことも必要である。
前述 3つのタイプの PMOは、
プロジェ
クト完了時に解散する部隊だが、
コー
ポレートPMO は組織内に配置され、
組織における継続的なプロジェクト管
理高度化に貢献する役割をもつ。
⑤第 3 者評価型 PMO: プロジェクト
およびシステムの品質保証活動を行
うことをミッションとするPMOである。
プロジェクトを推進する側の PMOと
一体化せず、客観的評価ができるよう
PMO から分離した体制とすることが
多い。
金融業の場合、金融庁によるシステム
リスク管理態勢の確認検査における
基準が取り上げられる機会が多いが、
形式要件を満たすだけではなく、
これ
ら基準が意図する本質的な内容を見
質 を 保 つ た め の 定 期 点 検( 月 次レ
ビュー)を組み合わせ、工程完了時点
で手遅れにならないよう、問題の早期
検知を行うことも意識すべきである。
PMOはプロジェクト内容に応じて様々
な形態をとりうる
(図表 2 参照)。プロ
ジェクトの目的・形態に合わせ、最適な
配置を議論し、
その企業・組織にあった
PMO の姿を計画段階に定義すること
が重要である。また上述した PMO 機
能の重要度はPMO 類型によって変化
するため、各機能に適した人員配置に
企業風土やメンバーの状況を理解し
つつ、プロジェクトという目的達成に
向け客観的な立場を保てるPMO 経験
豊富なコンサルティングの活用も有
効な手段となりうる。
このような PMO サ ービスの 提 供を
通じて、弊社経験・知見を将来のリー
ダーシップ育成に活用していただくと
ともに、企業におけるプロジェクト・マ
ネジメント高度化に貢献するお手伝い
ができれば幸いである。
関する考慮が必須である。
PMO活用による価値創出に向けて
プロジェクトは企業における投資活動
であり、人材育成や組織における管理
インフラの高度化に向けた最大の好
14
最近話題のプロジェクト
IT 領域や事務領域も含めた人材に着目した改革検討のプロジェクト機会
をいただいております。
国内競争を勝ち抜く、あるいはグローバルに成長機会を見出す、
いずれの
場合も、金融機関の本業において、人財が不可欠の経営資源であること
が再認識されており、その活性化、一層有効な活躍機会の創出を弊社も
ご支援できればと考えております。
業態
案件概要
CS
銀行
次期基幹系システムの構築ポリシー策定と更改計画検討
○
本社事務部門BPRおよび定着化活動を通じた人材育成
○
グローバルIT運営に向けた各種検討・推進支援
○
リテール営業のための分析ツール・データウェアハウスの構築
○
証券
保険
システム統合対応および業務案件追加対応
○
○
(略)
CS:コンサルティング、OS:アウトソーシング、TC:テクノロジー
○
○
オフショアを活用したテストフェーズのアウトソーシング
ノンバンク 不正利用リスクを極小化するアナリティクス
TC
○
ITインフラ運用トランスフォーメーション(プロセス・組織)
I
T子会社の中期経営計画策定支援
15
OS
○
アライアンスおよびパッケージ・システム
社名 /ソリューション名 ソリューションタイプ
ソリューション概要
弊社/
生命保険会社向け
生命保険・年金保険の契約管理(サイクル)業務を包括的に支援する基幹系パッケージシステム。
Accenture Life
Insurance Platform
(ALIP)
契約管理システム
コンポーネント単位の組み合わせによって、最適な機能のみの導入が可能。北米を中心に
60社以上に提供中。2006年8月アクセンチュアがNaviSys社を買収後、ソリューション名を
アクセンチュア生命保険プラットフォーム(Accenture Life Insurance Platform–ALIP)に改称。
弊社/
損害保険会社向け
損害サービス業務全般をカバーするグローバルNo.1のソリューション。北米トップ三社の
Claim Components
Solution(CCS)
パッケージシステム
うち二社が導入しており、約7万人の事案担当者が日々CCSを使用、米国個人保険損害全事案
中 36% はCCSで処理されている。初期導入は1998 年で、16 社に導入済。個人保険、企業
保険といった全商品に対応。業務分析ツール等変革に必要となる要素を包括的に含む。
弊社/
損害保険会社向け
アカウント管理、
リスクセグメンテーション、
外部データとの統合、
指標管理といった機能に強み
Underwriting
Components Solution
(UWC)
引受業務支援
を持つ全商品に対応し、引受業務全般をカバー。より迅速かつ適切な見積・引受を可能にし
パッケージ
新たなリスクセグメントの開拓、
コンバインド・レシオの改善に大きな効果をもたらす。英RSAや
弊社/
マーケティング
Webサイトのランディングページ、E-mail、DM、リスティング広告、コールセンター等ダイレクト
Memetrics
(Digital Marketing
Optimization)
チャネル最適化
マーケティング手段の活用を最適化し、売上増加、口座開設率の向上等、
ROIの最大化を科学
Calypso
Murex
米Allstate, Travelersといった欧米トップ企業9 社が既に採用済。
ソリューション
的かつ自動的に実現。2007 年 12 月アクセンチュアがMemetrics 社を買収したことにより、
コンサルティングを含めたより総合的なソリューションとして提供可能。
トレーディング・
デリバティブ(株式、金利、コモデティ、クレジット)、外為関連のディーリングフロントオフィス・
リスク管理システム
リスク管理やバックオフィス業務を行うための市場系システムの導入支援。欧州を中心に世界
で200 名以上のエンジニア(国内では約 20 名)と多数の導入経験により培った方法論を
最大活用。
証券・資産運用系
銀行、証券、投信投資顧問等を主要顧客として、総合証券システム、
オンライントレーディング
ソリューションズ
システム&
システム、投信窓販システム、投信経理システム等を、
ASP 型のシステムサービスとして提供。
(NKSOL)
コンサルテーション
また、豊富な実務・運用経験に基づく、業務・システム・技術コンサルティングを展開。2005 年、
日興システム
より高度で幅広いサービスをワンストップで提供すべく、
アクセンチュアとアライアンスを締結。
Odyssey Financial
Technologies
Oracle Financial
Services Software
プライベートバンキン
プライベート・バンキング/ウェルス・マネジメント・ビジネスを展開する上で必須となる顧客
グ・システム
管理・ポートフォリオ管理・リスク管理・レポーティングを統合化したシステム「Odyssey」。
ウェルス・マネジメント・
要件定義、開発・導入、運用・保守までOdyssey Financial Technologies社とのアライアンスに
システム
基づいて日本にて展開。
銀行勘定系システム
コア・バンキングパッケージとして、新規顧客 獲得数 4 年連 続世界第一位にランキング
(2002~2005年、IBS誌)。現在の顧客数500以上、115ヵ国以上でサービスを提供している
「Oracle FLEXCUBE」。モジュール・アーキテクチャとして、機能が部品化されており、必要な機
能のみの導入が可能。また、商品をパラメータで設定可能なため、新商品の導入が容易。
SAP
BaselⅡ
対応システム
高品質・高付加価値な導入コンサルテーション、豊富な成功事例に裏づけされた安全・確実な
銀行勘定系システム
システム導入、およびSAP社とのグローバルアライアンスに基づく手厚いサポートを提供。
ERP(人事・会計)システム
"BWを中核とした情報系システムの再構築" 等、個別課題へのソリューションとして提供可能。
データベース・システム
SAS Institute
イベント・ベースト・
クレジットライン最適化
CRM、リスクマネジメント、サステナビリティ等同社ソフトウェア・コンポーネントにより、金融業界
では、個人・法人向け顧客営業支援、
クレジットカード与信分析、BaselⅡAMA 分析、
カーボン
モデリング等のCSR環境アプローチ等、
様々な分野における高度データ分析をリードするソフト
リスク・マネジメント
ウェア。
マーケティング
サステナビリティ
Financial Architects
金融商品会計
アクセンチュアは、IFRSを単なる制度対応としてではなく、経営の高度化に向けた好機として
ソリューション
捉えるべきであると考え、その実現モデルを提供。金融商品会計に対する大きな変化と既存
システムの複雑性という問題の中、Financial Studioのような効率的なソリューションと共に、
クライアントの経営力強化の実現を支援。
16
弊社レポートおよび書籍紹介
バンキング:
「不確実な時代を乗り切る - キャピタルマーケット:
「2012年に投資銀行ビジネスが
アジアの銀行が収益性のある
直面する10 の課題 - 成長を遂げるために」
概要紹介」
レポートのご案内
最新の弊社レポートを紹介させてい
「新興国進出のための
保険:
「アクセンチュアリスク管理 – 保険」
保険:
「アクセンチュアリスク管理 – 保険」
グローバル組織・人材マネジ
メント」
書籍のご案内
「 新 興 国 進 出 の ため のグロー バ ル
ただきます。いずれもホームページに
保険業界は大幅な規制変更の真った
組織・人材マネジメント」 掲載しております。
だ中にいます。
グローバル調査結果に
(発行:東洋経済新報社)
基づく、競争優位獲得のための施策
新興国への事業開始、定着化におい
を紹介いたします。
ては、
日本企業が今まで実施してきた
www.accenture.com/jp/fs
バンキング:
「不確実な時代を乗り切る - アジア
長 い 間ご愛 顧 い た だきました T he
の銀行が収益性のある成長を遂げる
Point の 廃 刊が決 定 いたしました。
ために」
今後はより詳しい内容を、各種レポー
このダイナミックなアジア地域におい
トで紹介していきたいと存じます。引
て、長期的で持続的な成長実現のた
き続きよろしくお願いいたします。
めに、
アジアの銀行が検討すべき戦略
的手段を紹介いたします。
キャピタルマーケット:
「2012 年に投資銀行ビジネスが直面
する10の課題 - 概要紹介」
規制対応、顧客フォーカス、成長に向
けた事業再構築など、グローバルな
調査結果を基に、
厳しい経営環境下に
おいて投資銀行が直面する10 の経営
課題を紹介いたします。
17
欧米市場でのグローバル化とは明ら
かに違ったアプローチが必要とされ
ます。このためのグローバル人材マネ
ジメントに関する問いに着眼点をお
き、経営者の視点から日ごろ悩まれて
いる課題解決の糸口をつかめるよう
いずれのレポートも内容にご興味が
詳述した書籍を出版いたしました。
おありの方は、
金融サービス本部マー
よろしければ、
ご一読ください。
ケティング 担 当( A c c enture A sia
[email protected])までお問
い合わせください。
会社概要
グローバル拠点数:
アクセンチュア株式会社
お問合せ先
世界54カ国
本社所在地:
ニューズレターの掲載内容に関する
〒107-8672 東京都港区赤坂1-11-44
お問合せは、
赤坂インターシティ
金融サービス本部 FS Architect担当
200 都市以上
売上高:
255億米ドル(2011年8月期)
従業員数:
24万6千名以上
会長:
ウィリアム・D・グリーン
(William D. Green)
最高経営責任者:
ピエール・ナンテルム
(Pierre Nanterme)
電話番号:
03-3588-3000(代表)
FAX:
03-3588-3001
従業員数:
4,600名以上(2012年2月29日時点)
(アクセンチュア・テクノロジー・
ソリューションズ株式会社、
および株式会社ソピアを含む)
代表者:
パートナー 山本 晋五
[email protected]
へご連絡ください。
送付先の変更・停止等に関するご連絡
は、同封のFax用紙・ご郵送にてご連絡
ください。
03-3588-3000(代表)
03-3588-3001(FAX)
FS Architect専用サイト
www.accenture.com/jp/fsarchitect
代表取締役社長 程 近智
URL: www.accenture.com/jp
金融サービス本部トップページ
www.accenture.com/jp/fs
18
アクセンチュアについて
アクセンチュアは、経営コンサルティング、
テクノロジー・サービス、アウトソーシング・
サービスを提供するグローバル企業です。
24万6千人以上の社員を擁し、世界120カ国
以 上 の お 客 様 に サ ー ビ スを 提 供 して い
ます。豊富な経 験、あらゆる業 界や業務に
対応できる能力、世界で最も成功を収めて
い る企 業に関 する広 範 囲に及 ぶリサー チ
などの強みを活かし、民間企業や官公庁の
お客様がより高いビジネス・パフォーマンス
を達成できるよう、その実現に向けてお客様
とともに取り組んでいます。2011年 8月31日
を期末とする2011年会計年度の売上高は、
約255億USドルでした(2001年7月19日NYSE
上場、略号:ACN)。
アクセンチュアの詳細は
www.accenture.comを、
アクセンチュア株式会社の詳細は
www.accenture.com/jpをご覧ください。
http://www.accenture.com/Countries/
Japan/About_Accenture/Company_
Overview/japan_over_core.htm
Copyright © 2012 Accenture
All rights reserved.
Accenture, its logo, and
High Performance Delivered
are trademarks of Accenture.
ACC12-0872/11-4917