腹膜透析(CAPD)について

病診連携事業登録医各位
第42号
発行日
平成20年3月1日
腹膜透析(CAPD)について
腎臓内科
中山
均
末期腎不全の治療(腎代替療法)には大きく分けて透析療法と腎移植が有り、前者は
さらに血液透析と腹膜透析(CAPD)に分けられます。根本的な治療は腎移植ですが、
わが国の現状は生体腎移植、献腎移植を合わせても、年間1000例程度で、ほとんど
は透析療法にゆだねられています。透析療法の内訳は血液透析97%、腹膜透析3%程
度です。日本の血液透析の成績は DOPPS(Dialysis Outcoms and Pratice Patterns
Study)でも明らかなように世界に誇るべきものですが、CAPD は知名度が低く、あま
り浸透していませんが、成績は同様の成果が得られています。CAPD は1976年に
Moncrief と Popovich が考案して、その後の改良を経て全世界的に広がったもので、当
院でも1980年から開始して、酒井医師を中心に約230名(県内では最多)の患者
さんが導入されました。
県内での CAPD の最近の動向は新潟大学腎医学医療センター(第二内科)の丸山教
授らが積極的に CAPD 導入をしています。これは血液透析、腹膜透析、腎移植を駆使
して1人の腎不全の患者さんの一生を治療していこうという考えに基づいています。
CAPD と血液透析の比較は表1、表2をご参照下さい。CAPD の最大の利点は連続的
な治療と残腎機能の保持です。残腎機能と生命予後と密接に関係がありますし、最近で
は CAPD への早期導入は残腎機能を維持し、結果として生命予後を改善するとの論文
も散見されています。残念ながら、CAPD と血液透析患者の生命予後についての決定的
な論文はまだ無く、単純な優劣の判定は困難です。透析療法の選択にはそれぞれ一長一
短があり、個人の生活パターンや心機能、vascular access(シャント)が作れるかどう
か、禁忌の有無(CAPD には若干あります)などをみて個々に対応する必要があります。
選択肢の1つとして CAPD もあることをご記憶頂ければと思います。ご不明の点や質
問などがございましたら当院腎臓内科にお気軽に御相談下さい。
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表1 透析療法と腎移植との比較
血液透析
腹膜透析
腎移植
悪いまま
腎機能
(貧血・骨代謝異常・アミロイド沈着・動脈硬化・低栄養などの問題は十分な解決がで
かなり正常に近い
きない)
必要な薬剤
慢性腎不全の諸問題(貧血・骨代謝異常・高血圧など)に対する薬剤
生存予後
移植に比べ悪い
免疫抑制剤とその副作用に対する薬剤
優れている
心 筋 梗 塞 ・ 心不全 ・
多い
透析に比べ少ない
脳梗塞の合併
生活の質
移植に比べ悪い
生活制約
優れている
多い
やや多い
(週に3回、1回4時間程度の通院治療)
(透析液交換・装置のセットアップの手間)
ほとんどない
社会復帰率
低い
高い
多い
やや多い
蛋白・水・塩分・カリウム・リン
水・塩分・リン
手術の内容
ブラッドアクセス(小手術・局所麻酔)
腹膜カテーテル挿入(中規模手術)
腎移植術(大規模手術・全身麻酔)
通院階数
週3回
月1∼2度程度
移植後1年以降は月に一度
制限あり
制限あり
(通院透析施設の確保予約が必要)
(透析液・装置の準備運搬・配送が必要)
スポーツ
自由
腹圧がかからないように
移植部保護以外自由
妊娠・出産
困難
困難
腎機能良好なら可能
感染に対する注意
必要
やや必要
重要
入浴
透析後はシャワーが望ましい
カテーテルの保護必要
問題ない
医学的ケアが常に提供される
血液透析に比べ自由度が高い
透析による束縛からの精神的・肉体的解放
ブラッドアクセスの問題(閉塞・感染・出
腹部症状(お腹が張るなど)
免疫抑制剤の副作用
血・穿刺痛・ブラッドアクセス作製困難)
カテーテル感染・異常
拒絶反応などによる腎機能障害・透析再導
除水による血圧低下
腹膜炎の可能性
入の可能性
蛋白の透析液への喪失
移植腎喪失への不安
食事・飲水の制限
少ない
旅行・出張
自由
そのほかのメリット
最も日本で確立した治療法
そのほかのデメリット
腹膜の透析膜としての寿命がある(5年以
内で中止が望ましい)
表2 腎移植の分類
生体腎移植
特徴
献腎移植
・早期に移植をうけられる
・善意の贈り物である
・医学的・精神的な準備が整った状態で手術が受けられる
・臓器移植ネットワークへの登録が必要
・近親者のドナーを探すことが必要
・移植まで何年も待つ可能性(平均16年)
・医学的に適切なドナーが必要
・心の準備が十分でない状態で手術が必要な可能性
・ドナーの安全の確保が最優先
2月、1階ギャラリーに展示されたイラスト展をご紹介いたします。
平成19年新潟市美術展入選
「愛娘の眠り」