お父さん、お母さんのための 子育ての大切な話

お父さん、お母さんのための
子育ての大切な話
心理カウンセラー
衣川竜也
カウンセリングオフィスAXIA
~ はじめに ~
子育てをしていく上で大切な事は、子育てをするお母さん自身が楽しみや充実感を感じ
られる事、安定した気持ちでお子さんに接してあげる事です。
誰かと比べたり競ったりするのではなく、あなたとお子さんのペースで、子育てをして
欲しいと思います。
人生の中で子供を育てる時間は、とても意味のある大切な時間だと思います。
自分のもとに子供が生まれてきたおかげで、私たちはその時間を与えられます。
せっかく与えられた時間ですので、無理をするのではなく自分らしく楽しい時間を
お子さんと一緒に過ごして欲しいと思い、この冊子を書く事を思い立ちました。
この冊子は、精神分析や発達心理学、脳科学の知識をもとに、子育ての大事なポイントを
まとめたものです。
この冊子が、子育て中の多くの方の、お役に立てればうれしく思います。
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~親になる準備~
◆夫婦の関係作り
子育てをする上で、親が親としての役割が果たせるという事はとても重要な事です。
当たり前と思うかもしれませんが、それがなかなかできずにつまずいてしまう人も
少なくありません。
では、親になる準備とはどんな事が必要なのでしょうか。
その事について説明していきます。
まず、第1番目の準備として、夫婦間でしっかりといろんな事を話し合える夫婦になって
おきましょう。
よくカウンセリングでは、子供時代にお父さんやお母さんから、相手の不満を聞かされて
育ったという話を聞きますが、それは子供にとってとても辛い事です。
子供は両親の事を無条件で愛そうとします。
お父さんお母さんの事を大好きでいたいのです。
それなのに、大好きなお母さんから、大好きなお父さんの愚痴を聞かされるのは、耐え
難い事なのです。
心の病を持つ人の背景には、幼少時代から思春期にかけてこういった体験をしている事
があります。
どうか、子供が生まれてくるまでに、夫婦の事は夫婦で解決するための力を身につけて
おいていただきたいと思います。
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◆出産前のお母さんと出産
出産前のお母さんは、できるだけ落ち着いた気持ちで、心穏やかに過ごせる事が大切です。
出産準備は、お母さんにとって楽しい事が第一で、何をすべきという事ではなく、楽しく
ストレスをできるだけ少なく過ごす事を心がけて下さい。
お父さんは、お母さんが心穏やかに過ごせるよう協力してあげて下さい。
何か特別な事をする必要はありません。
相手のして欲しい事、心地よい事をしてあげて下さい。
夫婦でいろんな事を話し合える関係を、妊娠前から築いていられたら何をして欲しいか、
何をして欲しくないかという事も伝えやすくなると思います。
出産に関しては、奥さんが無事に赤ちゃんを産み終えた時、たくさん褒めてあげて下さい。
妊娠中の大変さ、出産の痛みや苦しみは、男性にとっては想像を絶するものです。
だからこそ、それを成し遂げて、自分たちの赤ちゃんを産んでくれた奥さんを心の底
から褒め、労わってあげて欲しいと思います。
~赤ちゃん~
◆赤ちゃんとのふれ合い
子供にとって、親からどんなふうに愛情を受けるのかという事は、その後の人生を
大きく左右します。
親子のふれ合いは、子供が生まれてすぐに始まります。
まず、お乳をしっかりとあげて下さい。
授乳は、お母さんから赤ちゃんへの愛情の贈り物です。
赤ちゃんが欲しがる量を、惜しみなくあげて下さい。
飲む量よりも、
「お乳が欲しい」という感情を満たしてあげる事が重要です。
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また、お乳は目を見ながらあげるのがベストです。
そうすると赤ちゃんは、お母さんからの愛情をしっかりと感じる事ができます。
授乳はただ空腹を満たす時間ではなく、目と目で会話する母子のコミュニケーション
の時間でもあるのです。
赤ちゃんにお乳をあげる時、赤ちゃんとお母さんの肌がふれ合います。
お乳をあげるという行為は、スキンシップの観点からもとても重要です。
赤ちゃんの脳は、皮膚感覚にて成長します。
実は、皮膚と脳は受精卵の時に同じ外肺葉ですので『皮膚は第2の脳』と言われる
くらい密接な関係があり、皮膚から受けた心地よい感覚が、脳を刺激してくれるのです。
赤ちゃんとたくさん視線を合わせ、たくさん触れてあげて下さい。
ちなみに、母乳の出にくい人は、哺乳瓶でミルクをあげてもでもいいので、赤ちゃんを
しっかりと抱き、視線を合わせてあげるよう心がけて下さい。
◆話しかけるという事
赤ちゃんには、たくさん話しかけて欲しいと思います。
脳は刺激によって成長しますので、当然話しかける事が少なければ、言葉の発達も遅く
なります。
お母さんに比べ、お父さんは話しかける事が苦手な人が多いように思います。
「何を話しかけていいかわからない」と思うようです。
難しく考える必要はありません。
何でもいいのでお父さんの声をたくさん聞かせてあげて下さい。
感じた事やその日あった事など、とにかく話をしてあげて下さい。
赤ちゃんに話しかける時の言葉ですが、これには少し注意をして欲しいと思います。
「~でちゅね」とか「~でちゅか?」という言葉のかけ方をしそうになる人もいるかも
しれませんが、そういった言葉は使わずに、できるだけ正しい言葉で話しかけて下さい。
ただ、言葉を話せるようになった頃、子供は単語でしか表現できないので、ご飯→マンマ、
車→ブーブー、など子供が意思表示をする際に、表現しやすい言葉を覚えさせてあげる
事は必要ですので、うまく使い分けて欲しいと思います。
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~しつけ~
◆しつけを始める時期
しつけを始める時期としての目安は、おしめを取る準備を始める頃がちょうど良い
くらいです。
この頃までは、生命に危険の及ぶ事と他人に迷惑を及ぼす事以外は、
「ダメ」といって
止める事はできるだけ少なくして下さい。
物事の分別がつかない時から、あまり禁止事項をたくさん設けて接していると、何かを
行う際に自信を持って行動する事ができない人になってしまいます。
トイレトレーニングをしつけの始まりとし、そこから少しずつ子供のペースに合わせ、
しつけの幅を広げていって下さい。
◆トイレトレーニングについて
トイレトレーニングの目的は、おしめを取り排泄をトイレで行えるようになるという事
だけでなく、正しく我慢や辛抱を身に付けさせるという事でもあります。
トイレトレーニングによって、
『~したいという欲求』を我慢する訓練を行う事で、我慢
や辛抱のできる子になるのです。
よく間違ったトイレトレーニングをしてしまいがちですので、その間違いの例を取り
上げたいと思います。
まず 1 つ目のパターンは、子供から「オシッコがしたい」と意思表示がないのにトイレ
に連れて行って「オシッコしなさい」と促す方法です。
この方法は、我慢と辛抱を身に付けるという目的から考えるとまったく意味がありません。
子供の「オシッコがしたい」という意思表示があって、それをトイレまで我慢させて排泄
をさせるから意味があるのです。
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もう一つの間違いの例は、子供に「オシッコは?」「ウンチは?」と『したいという欲求』
が見受けられないのに、何度も聞くという事です。
何度も親に急き立てられていると、大人になっても何かを異常に気にしてしまう神経質
な人間になってしまいます。
さらに、親に促されてトイレに行っても出なかったのに、便器から離れた直後やトイレ
から出て数分後にお漏らしをして怒られるというようなトイレトレーニングを受けると、
ケチな人間になってしまいます。
今までおむつの中で漏らしていても怒られなかったのに、急に怒られるようになると、
この頃の年齢の子供は当然混乱します。
そして、怒られたのはお漏らしをしたからではなく、『出した』からだと思うようになり、
『出す』という事に罪悪感を持つようになるのです。
そのため、愛情やお金などを『出す』という事に非常に抵抗が強くなり、将来の人間関係
や生活に支障をきたすようになります。
このように、トイレトレーニングは人間の感情の作用と深く関係しています。
自分の子供が、神経質やケチな子にさせてしまわないように、その子に合ったペース、
正しい方法でトイレトレーニングをしてもらいたいと思います。
では、次はお勧めのトイレトレーニングの方法について説明していきます。
◆お勧めのトイレトレーニング
正しいトイレトレーニングは、子供が『したいという欲求』を訴えてきた時に、
その欲求をトイレまで我慢させ、上手に排泄ができたら思いきり褒めてあげる事です。
まず『したいという欲求』を我慢する事は、我慢するという事が時には必要なのだと
いう事を、身をもって体験する訓練です。
そして排泄の後に、我慢できた事を褒めてあげる事で『我慢する事』と『褒められる事』
を一緒に体験しますので、子供は「我慢する事は良い事だ」と思い、我慢と辛抱のできる
子に育つのです。
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具体的なトレーニングの方法としては、最初に『オシッコやウンチはトイレでする事』
だと認識させてあげる事から始めて下さい。
親がトイレに行く時に、その事を子供に告げてから行くという事を繰り返して、
「気持ち
がいい」とか「スッキリした」という事を子供に伝えて下さい。
子供は親のする事を真似たがります。
上記の様な事を何日か続けた後に、
「トイレに行ってオシッコしてみる?」と聞けば、
大概は「うん! する。
」と言うでしょう。
こういった事を続けると、子供は何回かに 1 度はオシッコをするので、その時に思い
きり褒めてあげましょう!
そのうち、子供からオシッコに行きたいと意思表示をしてトイレに行き、ちゃんと
トイレでオシッコをするようになりますので、それが何度か続き、おしめを濡らさない
ようになってくれば、おしめを取ってあげる時期です。
子供が自分からオシッコしたいという事に気がつくのには個人差があります。
慌てておしめを取ろうとしなくても、脳に障害がない限り子供の成長段階で、必ずおしめ
は取れます。
おしめを取る時期にこだわるのではなく、トイレトレーニングを通じて何を子供に学ばせ
るのかという事を大切にして欲しいと思います。
トイレトレーニングを始め、さまざまなしつけは、それを行う『タイミング』と『待つ』
という事が非常に重要です。
その子に合ったタイミングでしつけを始めたら、上手くできなくても、できるようになる
まで根気強く待つように心がけて下さい。
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また、子供が生まれてからしつけを始めるまで、しっかりと愛情をかけて授乳をしたり、
話しかけたり、さわってあげて下さい。
しつけは、子供にとって楽しい事ではありません。
今まで感情の赴くままにできていた事を、我慢したり見直していかなければならないから
です。
だからこそ、子供の立場からすれば、しつけは愛情をいっぱい与えてくれる、大好きな
お母さんから受けたいものです。
しつけは、与えた愛情の分だけ行なえるものだという事を忘れないで下さい。
◆子供を叩くという事
しつけを始めると、子供を叩いてしまうという事に悩むお母さんがおられます。
子供を叩いてしまった時、
「これは虐待ではないか」
、「いつかもっとひどい事をしてしまう
のではないか」という思いから、子供を叩いた自分を責めてしまう人がおられます。
そんな人は、まず自分がなぜ叩いたのかよく考えてみて下さい。
子供が危険な事をしていたからですか? または誰かに迷惑をかけていたからですか?
それとも些細な事でイライラして叩いてしまったのでしょうか?
つい子供を叩いてしまうという人は、『何でわかってくれないの!』という思いが行動に
出てしまっているようです。
自分が幼い時、同じような形でしつけられたため、子育ての方法として自分の記憶の中に
ある行動を選択してしまっているのです。
衝動的になった時は、それが特に顕著にあらわれます。
つい叩いてしまった時は、お子さんをしっかりと抱きしめてあげて下さい。
抱きしめて叩いてしまったお子さんの心と自分の心を癒してあげて欲しいと思います。
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つい手をあげてしまう人の中には、叩いた時の感触が自分の気持ちを伝えた実感となって
いる人がいるようです。
叩く代わりに、子供と同じ目線になるよう身を屈め、両手を取って手を握る事で親子が
つながり、気持ちを伝えるようにしてみて下さい。
同じ思いでも、痛みで伝えるのではなく手のぬくもりを通して伝えてあげましょう。
叩かないように意識しても、衝動的に叩いてしまう人や自分は虐待をしているのではない
かと感じる人は、無理をせずに子供をあずけ働きに出る事を考えてみて下さい。
また、信頼できじっくりと話を聞いてくれそうな人に、悩みを話す事もお勧めします。
子供を叩いた時、その罪悪感に苦しみ自分が耐えられなくなり、何度も子供を叩いて
しまうという人がいますが、そういった自覚のある方は、必ず心の専門家に相談して
欲しいと思います。 自分一人で改善していく事は容易ではありません。
早い段階で、腕のいい専門家の手を借りて下さい。
◆待つという事
子供の成長に欠かせないものには、体験と体験を通して得られる知識、感覚、感情、記憶
などがあります。
これらを成長過程で子供が得るためには、親は何を心がける必要があるでしょうか。
それは『待つ』という事です。
子供は大人と比べて、何をするにしても無駄な動作が多かったり、手を止めたり、立ち
止まったりして時間がかかります。
しかし、それを待ってあげる事ができず、大人が先回りしてしまう事は、子供の体験を
奪ってしまっている事になります。
また、
「何もたもたしてるの!」
、
「早くしなさい!」と何度も言われ続けて育つと、大人に
なってからも、いつも何かに追われているような気分がとれない人になる人もいます。
幼い頃にたくさん聞いた親の言葉が、自分の行動を縛るメッセージとして定着してしまう
のです。
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子供と接する時、意識的に『待つ』という事を心がけて欲しいと思います。
着替えたり、ご飯を食べたりするのも時間がかかります。
また、どこかへ行く際にもいきなり立ち止まったりします。
親が待つ事を実践するためには、親自身が心にゆとりを持てるように、何かを行う際には
前もって時間を確保するよう工夫する事も大切です。
しかし、お母さんは子育てだけでなく家事にも追われ、そんな余裕はないかもしれません。
子供を待つ時間を作るには、夫婦の協力も不可欠です。
家事を分担しお母さんと子供がふれ合える時間を、お父さんの協力のもと作る事ができ
れば、お母さんも子供を待つ余裕が生まれるのではないでしょうか。
いろいろ工夫しても、それでも子供を待つ事が出来ない。
子供の行動をみていると焦ったり、イライラしてしまうという人は、なぜ自分は待てない
のだろう、自分は何にそんなに焦っているのだろうと自分の心に問いかけてみて下さい。
それが分かるだけでも、少しは子供を待つ余裕が生まれます。
自分に問いかけても答えが見つからない方は、カウンセラーなど心の専門家に手伝って
もらい、自分と向き合ってみられる事をお勧めします。
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~子供の遊び~
◆遊びは子供の成長につながる
遊びは、子供の心の成長や、脳の発達に非常に重要な役割を果たします。
遊びは、子供の中で視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という全ての感覚を働かせています。
その事によって子供の右脳は活性化され、空間能力や創造力、音感など、さまざまな能力
が養われていくのです。
また、遊びは豊かな社会性を育むためにも欠かせません。
子供同士で遊んでいると、物を取り合ったりしてケンカをする事もありますが、ケンカの
様子もある程度は見守り続ける事も必要です。
早い段階で、ケンカを治めようと親が介入するのではなくて、泣いた子や泣かされた子が
どう感じ、どう行動するのかという事に関心を示してあげて欲しいと思います。
子供達が行き詰った時、仲直りの手伝いをしてあげても遅くはないのではないでしょうか。
「うちの子が泣かされた」といって相手の家に怒鳴り込む親がいるという話を聞いた事が
ありますが、子供達には子供達の世界がありますので、親の介入でそれを歪めたり壊した
りしない事が大切です。
子供は、ケンカし仲直りしながら人間関係を学んでいきます。
親が子供同士の関係に介入する事は、子供が人間関係を学ぶ機会を奪う事になります。
成長するほど、多くの人とさまざまな形で関わる事になります。
その時に必要な能力を、見守るという事で育ててあげて欲しいと思います。
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◆遊び道具
子供のおもちゃは、昔に比べると本当に進化しているなーと思います。
子供の興味や自己主張がはっきりとするまでは、親がおもちゃを選んで子供に与える事に
なりますが、選択肢が多様なだけに何を与えるかはよーく考えていただきたいと思います。
生後1ヶ月から3歳までにかけて、外部からの刺激によって脳の可塑性(物事に柔軟に対応
する神経構造)が爆発的に成長します。
その後、9歳から10歳までが一生の中で成長する度合いが大きく、10歳以降も緩やか
に成長していきます。
だからそこ、小学4年生くらいまでの子供時代を、どのように遊ぶかがとても重要に
なってきます。
まず、子供に遊びを教える時は、自分の身体を使って遊ぶ事を学ばせて下さい。
いないいないバーに始まり、手を叩いて音を出す事や歌に合わせて手足や体を動かす事
など、幼い頃に自分の体でいろんな表現ができるという事を、遊びの中で教えてあげて
欲しいと思います。
おもちゃを与えるようになっても、決まりきった遊び方をする物よりも人形やぬいぐるみ、
ブロックや積み木など、子供の想像力を刺激するものがお勧めです。
子供向けのカウンセリングであるプレイセラピーでも、上記のようなおもちゃを用いて
いますが、子供が人形やぬいぐるみにどんな言葉をかけているか、ブロックや粘土で
何を作るか、どんな絵を描くかなどを観察する事で、子供の心の状態や日常が見えて
きたりします。
おもちゃは、子供が自分の心や想像力をいろんな形で表現できるものを目安に与えて
あげて下さい。
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余談ですが、私の子供の頃は、祖父が竹トンボや竹馬、釣り竿などを買うのではなく自分
で作ってくれたり、作り方を教えてくれたりしました。買って与えるばかりではなく、
身近にあるものでおもちゃを作ってあげるのも、子供の心に与える影響はとても大きいと
思います。
親子間のコミュニケーションの深まりや思い出作りにもなります。
自分には子供に何か教えてあげたり、作ってあげたりする知識や能力がないという方も
おられると思いますが、それならお子さんと一緒に学んでみればいいと思います。
何かを教えたり作ってあげる事により、親子で共有した時間は子供の心に大切な思い出
として残るでしょう。
子供にとって遊びは、成長するための学びでもあります。
親の責任として、遊びの内容や遊ぶ機会、遊びを通じた思い出をしっかりと与えてあげて
欲しいと思います。
◆遊びと人のまね
子供は、大好きな親の真似をしたがります。
遊ぶ時も、親が手足を使って何かをしてあげたり、何か絵を描いてあげたり、歌を歌って
あげると、それを一生懸命真似ようとします。
子供とたくさん遊び、たくさん真似をしようとさせて下さい。
幼い頃にそういった時間を過ごしておくと、親が家で何かの勉強をしたりすると子供も
勉強をします。
幼い頃、親のまねごとをして楽しかった記憶があれば、ちゃんと成長してからも親の
真似をしようとしてくれるのです。
成長した子供に、
「勉強しろ」口うるさくといってあまり効果がありませんが、親が
勉強をする姿勢を見せる方が、よほど効果があります。
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~夫婦の力~
◆夫婦の協力
最初の方にも書きましたが、子供を育てる上で夫婦は仲がよく、いろんな事を話し合える
関係である事が、とても重要な要素です。
夫婦が、父親、母親としての役割を果たしているだけでなく、夫と妻の役割を果たさなけ
ればなりません。
それが、子供が安心して子供らしく生活できる家庭の条件です。
親が子供にお手伝いを頼むのは、教育上大切な事かも知れませんが、子供の遊ぶ時間を
奪ってしまうほどの仕事を与え、親が楽をしているような事ではいけません。
子供にとって遊びは、学びの時間でもあり、大人になって生きていく上での心の土台を
育てる時間でもあります。
お母さんが、家事が大変だというのであれば、子供ではなくお父さんに協力を求めま
しょう。
カウンセリングをしていると、
『自分は、幼い頃からいつも母親の話す父や祖父母に
対する愚痴を聞かされていた』という体験を聞く事が少なくありません。
これは、子供にとって大好きな家族の愚痴を、大好きな家族から聞く事になるので、
とても辛い事であり、子供の心を、非常に混乱させる事でもあります。
話を聞き続けるためには、子供らしい心を閉ざしたり、母親に聞かされる内容のように
家族の事を思わないとならなくなります。
そうしないと、話を聞き続ける事は出来ません。
夫婦の問題は、夫婦で解決できるような関係作りを目指して下さい。
自分たちだけでそれが困難なら、負担を子供に与えたりするのではなく、専門家の力を
借りて下さい。
二人で話合いができ、問題を乗り越えていける夫婦の力が、子供が子供らしく育つ事が
できる家庭を作るのです。
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◆父親の決断力
子育てにおいて、父親の果たす役割として重要な事は決断を下すという事です。
母親は、妊娠や出産をはじめとてもわかりやすい役割があり、子育ての中でも子供との
心身の密着が多いため、子供にはその存在の重要性が伝わります。
しかし、父親は基本的には仕事で家に居ないため、存在感は母親ほど子供には伝わらない
でしょう。
そんなお父さんの重要性を、子供に理解させるにはお母さんの役割がとても重要です。
お母さんは、いつも家に居ないお父さんの重要性を子供に伝えるため、大事な決断は
「お父さんに相談してみるね」と子供に言って下さい。
一番多い機会は、子供が何かを欲しがった時です。
「~が欲しい」と子供が言ったら、
「お父さんに相談しよう」と言い、実際相談してから
決定すると、子供は、父さんは偉いんだと思うようになります。
男性は生物学上、女性より決断する能力に優れていますので、決断を下す機会を母親が
たくさん作ってあげる事も、夫の父親としての自覚を育てる事にもなりますし、子供は
お父さんが家にいる時間が少なくても、存在感を感じるようになります。
また、父子間の会話も当然増える事でしょう。
子供が幼い頃から、こういった習慣をつけておく事と、子供が成長していく過程でも
きっと助けになります。
子育てにお父さんの力を反映させるためには、お母さんの言動がとても重要です。
お母さんが、お父さんを大好きで尊敬していれば、子供は間違いなくお父さんを尊敬
します。
お父さんは、尊敬される夫になる努力を、お母さんは子供にお父さんの素晴らしさを
伝える努力ができれば、家族の絆は強くなるでしょう。
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~子供と対話をしよう~
◆親子の会話
子供がお母さんに向かって「ねえ、今日保育園(学校)でね」と話しかける時、これは子供に
とってとても重要で聞いてもらいたい話をしようとしている時です。
子供は親から離れ保育園に通い始める時や、入学、進級など環境が変化する時、または
テストや行事がある時、さまざまな不安を持ち通園、通学をしています。
また、友達や先生との関係でストレスを感じている事もあるでしょう。
だから、家で子供との会話にしっかり時間をかけてあげて欲しいと思います。
幼い頃に自分の話をしっかりと聞いてもらった子は、自分の感情や意見をしっかりと
言える大人になります。
親という身近で大好きな人に、話を聞いてもらえなかった子が大人になって他人にうまく
話をし、思いを伝えられるわけがありません。
親子の会話は、子供が自分という存在を、受け入れてもらっていると感じるための大切な
コミュニケーションです。
人に話を聞いてもらう事で、心は穏やかになり安定します。
子供の健全な心は、親子の会話によって育てていきましょう。
◆0歳から始める親子の対話
親と子の対話は、0歳から始まっています。
「0歳なんて言葉を話さないのに対話なんて成立しない」と思われるかも知れませんが、
対話は何も言葉だけで行うものではありません。
例えば、赤ちゃんがお乳をもらっている時、じっとお母さんの顔を見ています。
これは、
「おいしいよ」という満足感を伝えてくれているのです。
こんな時は、しっかりと赤ちゃんの目を見つめてあげて欲しいと思います。
見つめる事以外にも、たくさん話しかけたり、たくさんさわってあげる事も大切な親子
のコミュニケーションです。
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こういった事は、女性は比較的自然とできているようですが、男性は苦手な人が多く、
家にいる時間も少ない事から、父子間の0歳児からの親子の対話をしないままになって
しまいます。
そんなお父さんが、子供が中高生くらいになってから、いきなりコミュニケーションを
取ろうとしてもうまくいかないでしょう。
限られた時間かもしれませんが、お父さんもお子さんが小さい時からたくさん対話を
するようにして頂きたいと思います。
◆抱きしめる
子供が言葉を理解できるようになると、親子間のコミュニケーションの手段は主に言葉
になってくると思います。
当然、それが一番お互いの意図を、相手に上手く伝えるための手段になるからなのですが、
たまにはお子さんをギュッと抱きしめてあげて下さい。
「ありがとう」
、
「よくやったね」
、
「ごめんね」、「気持ちは分かったよ」などを言葉だけで
なく、抱きしめるという行動でお子さんに表現してみて下さい。
言葉だけでなく、抱きしめるというふれ合いを通じて感情が伝わるという体験は、子供
にとってとても重要な体験です。
自分が大切にされている感覚、親に対する安心感を言葉以上に感じる事ができます。
抱きしめるという行動を通じて、たくさんの思いを伝えてあげて下さい。
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~子供との関わり方~
◆過保護とは
よく『過保護』という言葉を聞きますが、具体的に過保護とはどういう状態をいうので
しょうか。
それは、子供が親の手助けを求めていないのに手を差し伸べてしまう事、親の都合で
子供に何かをしてあげる事を言います。
例えば、一つ目の例は、子供が一人でブロックを使い遊んでいて、何かを作ろうとして
試行錯誤をしている時に、親が手を出して何かを作ってしまうような事です。
このような事は、親は子供に対し何かを作ってあげた事で子供は喜び、親は得意げに
なり自己満足に浸れるかもしれませんが、子供が工夫し何かを成し遂げる体験、成し
遂げた喜びを奪う事になります。
もう一つの例は、親が家を空ける事が多く子供に寂しい思いをさせているからと言って、
代わりにたくさんおもちゃを買って与えるというような事です。
これは正直、親の申し訳ないという気持ちを、おもちゃを与える事で誤魔化している
だけにすぎません。
子供にとってはおもちゃを与えられるより、たまにでも親子で過ごせる時間を作って
もらえる事の方が、愛情のこもった思い出として残ります。
親として、今子供に手を差し伸べるべきかどうか、子供が心の底で何を求めている
のか、常に意識しながら接して欲しいと思います。
子供の状態をしっかりと見極める事によって、『過保護』ではなく『保護』という
正しい関わり方ができるようになると思います。
お子さんを見ていて、何かしてあげたいと思った時、一度そこで立ち止まって行動
を選択できるようになるといいですね。
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◆感想を聴く
子供は、幼稚園や学校から帰ったら、その日あった事を一生懸命に話します。
この時、子供が大人に伝えたい事は、自分の『感想』です。
話には、
『事実』
、
『感想』
、
『計画』が含まれているのですが、どうしても『事実』
ばかりを聞こうとしてしまいがちです。
子供の話は、大人の話に比べてどうしても要点がはっきりしない事も多いため、
「いつ?」
、
「どこで?」
、
「誰と?」
、
「何でそんなことしたの?」など、次々と
質問し、あげくの果てには「話が分かりにくい」と叱ってしまう事もあります。
こんな事では、子供はお父さんやお母さんに話をしたくなくなってしまいます。
子供は、
『事実』ではなく『感想』を聞いてもらいたいと思っています。
『嬉しい、楽しい、悲しい、寂しい、悔しい』などの感情を話の中から汲み取り、
「○○だったんだね」と共感を示してあげて下さい。
感情を受け取ってもらえると子供の心は満たされます。
そうすると、子供は自ら『計画』を話してくれます。
「今度はこうするからね」
、
「今度からはこうしたい」と事実を受け入れ、前向き
に『計画』を考えていくのです。
大人は、子供の話を聞くと、つい事実確認をはじめ、勝手にアドバイスをしてしま
いますが、まずはその前に子供の思いに耳を傾けてあげましょう。
存分に思いを聞いてもらった時、子供が出す答えを楽しみに話を聞いてあげて欲しい
と思います。
子供の出した答えに補足が必要な時、または大人に答えを求めてきた時に、はじめて
アドバイスをしてあげて下さい。
『感想を聴く』という事は、けっして親子間だけではなく夫婦、友人同士、上司と部下、
というようなさまざまな関係の中で重要な事です。
大人も、自分の思いを相手に受け取ってもらえると嬉しくなります。
まず、思いを受け止めてから、自分の意見や感想を伝えるようにすれば、良い人間関係
を築いていけると思います。
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◆愛を確認する子供
兄弟姉妹がいる子供は、他の子供と自分では、どちらがより両親が愛されているか
確認したがります。
基本的に子供達は、親の愛を自分が一番受けていると感じたいし、子供が兄弟ゲンカ
をするのは、親の愛の奪い合いをしているからなのです。
だから、兄弟で仲が悪いのは仕方がない事なんです。
子供にとって、自分が親から愛されている事を感じられるかどうかという事は
とても重要な事です。
子供は、親との間でほかの兄弟に内緒事を作りたがったり、弟や妹ができると
上の子が幼児がえりをするのは、親の愛の感じようとしているのです。
子供が複数いるご家庭の人は、
『子供は常に両親に一番愛されたがっているものだ』
という事を頭において、お子さんと接してあげてほしいと思います。
子供に自分が両親の愛情を受けていると感じさせる具体的な方法は
・叱る時はみんなの前で叱り、褒める時は二人の時にしっかり褒めてあげて下さい。
兄弟が叱られているのを見ると、他の兄弟はみんな同じだと安心し、陰でこっそり
褒められると、自分だけが褒められていると嬉しく感じます。
そうやって、自分が愛されている事を実感するのです。
・幼児がえりをしていると思ったら、しっかりと甘えさせてあげて下さい。
上の子は、下の子ができると色々と我慢を強いられるし、お兄ちゃん、お姉ちゃん
として行動する事を求められます。
だから時に、あえて親が家事や下の子と接している時に甘えてきます。
そんな時は、後回しにせずしっかりと甘えさせてあげて下さい。
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・1つしかないお菓子を分ける時は、上の子に分けさせましょう
お菓子やケーキが一つしかない時、親が分け与えると不満を持つ事が多い
ようです。
子供は自分の方が愛されていたいので、それはお菓子の分け方一つとっても、
自分が一番だと感じたいのです。
だから、親ではなく上の子が、みんな公平になるように分けると不満は
出にくいですし、兄弟で分け合うという事を学びます。
・兄弟ゲンカは介入せず見守りましょう。
兄弟ゲンカは、つい「やめなさい」といって介入したくなる方が多いよう
ですが、子供はケンカから学ぶ事がたくさんあり、大人になるためにそれが
必要なのです。
兄弟ゲンカは、親としてルールだけ示してやり見守ってあげるのがベストです。
兄弟ゲンカのルールは、相手が泣く、謝るなどしたらたらやめる事、武器を
使ったり、噛みついたり、目や急所への攻撃はしないなど、安全を配慮した
ルールや1対複数で一人を攻めないという正義感を伝えるルールは、しつけ
として親が示してあげて下さい。
子供は親の愛情を確認するもの、自分が1番愛されていると感じたいものだという事
を覚えておいていただきたいと思います。
そして、自分の子供すべてに、両親に自分が一番愛されているという満足感を与えて
あげれるよう工夫していただきたいと思います。
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~ あとがき ~
この冊子は、多くの子供と子育てに奮闘するお父さん、お母さんのお力になれればと
思い書いたものです。
カウンセリングのテーマとなる問題には、親子関係が大きく影響している事は少なく
ありません。
人生において、幼少期にどんな親子関係だったかという事は、大人になってからの
自分という人間の捉え方、他人との関係の築き方の基盤となります。
だからこそ、大変な中でも楽しみながら子育てをし、良い親子関係を築いて欲しいと
いう思いから、この冊子を書く事にしました。
この冊子が、少しでもこれを読んでいただいた方のお役に立てればと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
平成24年1月8日 新訂
参考文献
・子供を育てるとっておきのメッセージ
著 竹内成彦
リヨン
・手にとるように発達心理学がわかる本
著 小野寺敦子 かんき出版
・子どもの才能は 3 歳、7 歳、10 歳で決まる!
脳を鍛える 10 の方法
著 林 成之 幻冬舎新書
注意事項
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著者紹介
心理カウンセラー
衣川竜也(きぬがわ たつなり)
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