カキ産地から新たな味を!

−香川県−
カキ産地から新たな味を!
∼
カキの薫製
商品化への取り組み∼
鴨庄漁業協同組合女性部
部 長
佐 藤
幸 恵
1.地域の概況
さ ぬ き 市 鴨 庄 は 、高 松 市 内 か ら 20 キ ロ ほ ど 東 に 位 置 し 、近 く に は 弘 法 大 師 が 開 い た
霊場、四国八十八ヶ所の八十六番札所、志度寺がある。
庵治町
高松市
牟礼町
鴨庄漁協
さぬき市
図 1
地域図
2. 漁 業 の 概 要
鴨 庄 漁 協 は 、 正 組 合 員 102 名 、 准 組 合 員 26 名 、 合 計 128 名 で 構 成 さ れ る 。
主な漁業は、ハマチ、ノリ、カキなどの養殖業と、小型底曳網、刺し網、小型定置
網などの漁船漁業である。
3. 女 性 部 の 組 織 と 運 営
女 性 部 は 、昭 和 32 年 6 月 に 結 成 さ れ 、現 在 の 部 員 数 は 99 名 、役 員 数 は 15 名 で あ る 。
部員は、漁家の方だけでなく、数は少ないが一般家庭の方も参加している。
結成当初から、貯蓄推進と天然せっけんの普及活動、浜の掃除を続けている。
平 成 3 年 か ら は 、 高 齢 者 の 自 立 支 援 を 行 う 、 さ ぬ き 市 の 給 食 ボ ラ ン テ ィ ア 、「 ほ の ぼ
の」に参加し、志度・小田漁協女性部と共同で年 2 回、さらに地区の生活研究グルー
プの活動として年 2 回、市内の高齢者に旬の魚を使ったお弁当を配布している。魚を
扱っているのは私たちのグループだけなので、利用者たちから大変喜ばれ、さらに 9
月 の 「敬 老 の 日 」に は 、 手 作 り の お は ぎ の プ レ ゼ ン ト も 行 っ て お り 、 好 評 を 得 て い る 。
4. 実 践 活 動 課 題 選 定 の 動 機
平 成 6 年 か ら 12 年 ま で 、 漁 協 が 開 設 し た 水 産 物 直 売 所 「 志 度 フ ィ ッ シ ュ セ ン タ ー 」
で、女性部が手作りした干物の販売、また、カキのケチャップ煮などの試食とアンケ
ート調査を行い、大変好評であった。
平成 7 年には、香川県立多度津水産高校でコノシロやアジなどの缶詰加工など、水
産加工技術の研修を受けた。
平 成 10 年 に は 、 県 の 水 産 振 興 対 策 事 業 に よ り 冷 風 乾 燥 機 を 購 入 し 、 タ チ ウ オ の 干 物
な ど の 水 産 加 工 を 行 い 、「 志 度 源 内 ふ る さ と ま つ り 」 な ど 市 内 の イ ベ ン ト で 販 売 し た 。
この冷風乾燥機の導入により、加工する干物の種類や量も増やすことができた。
平 成 14 年 に は 、 県 の 漁 家 生 活 向 上 支 援 モ デ ル 事 業 を 活 用 し て 、 地 元 特 産 品 の 加 工 に
よ る 新 商 品 の 開 発 に 取 り 組 む こ と に し た 。女 性 部 で 話 し 合 っ た 結 果 、「冷 風 乾 燥 機 を 活
用 し よ う ! 」、「鴨 庄 と い え ば カ キ ! 」と の 意 見 か ら 、カ キ を 使 っ た 新 し い 商 品 づ く り に
取り組むことにした。
5. 実 践 活 動 の 状 況 及 び 成 果
1)
カキの薫製
に至るまで
平 成 15 年 に 、 直 売 所 で 試 食 販 売 し た カ キ の ケ チ ャ ッ プ 煮 を 含 め 、 冷 風 乾 燥 、 く ん 製
(冷 風 乾 燥 ・ 天 日 乾 燥 )、 佃 煮 の 5 品 目 を 試 作 し た 。 そ の す べ て が お い し く 、 好 評 だ っ
たが、冷風乾燥だけでは物足りず、ケチャップ煮では長期保存できないことから、販
売を目的とした商品の開発は、くん製か佃煮に絞ることにした。
そして、香川県産業技術センター食品研究所から、細菌発生の危険性を少なくする
ためには、①カキの下茹では、沸騰後もグラグラ加熱をすること、②くん製にすると
き に は 、 カ キ の 中 心 温 度 が 75℃ 以 上 1 分 間 の 加 熱 を 確 認 す る こ と 、 な ど 加 工 に 伴 う 注
意点のアドバイスを受けた。
さらに、女性部員の知恵から、③佃煮を作るときに水分が加わると腐りやすくなる
た め 、 調 味 液 を 独 自 に 工 夫 し 、 再 度 、 く ん 製 (冷 風 乾 燥 ・ 天 日 乾 燥 )と 佃 煮 の 3 品 を 試
作して、同研究所に細菌検査を依頼した。
そ の 結 果 、 4∼ 6℃ の 冷 蔵 状 態 で は 、 冷 風 乾 燥 し た く ん 製 は 4 週 間 、 天 日 乾 燥 し た く
ん製は 3 週間、佃煮は 2 週間、保存できることが分かった。おいしさと目新しさ、そ
して保存性の高さから総合的に検討した結果、冷風乾燥したくん製を商品化すること
に決めた。
カキの薫製
の作り方は、
下 茹 で (沸 騰 後 も グ ラ グ ラ 加 熱 ) → ハ ー ブ 液 へ の 漬 け 込 み → 冷 風 乾 燥 に か け る
→ く ん 製 → 冷 ま す → 包 装 → 出 来 上 が り (4∼ 6℃ で 冷 蔵 保 存 )
2)完 成 品 の 試 験 販 売 へ
平 成 16 年 3 月 に 、
「 志 度 源 内 ふ る さ と ま つ り 」で 試 食 販 売 を 実 施 し た (写 真 1)。乾 燥
時 間 6 時 間 の 「 し っ と り ち ゃ ん 」 (写 真 2)と 、 12 時 間 の 「 し っ か り く ん 」 を 50 袋 用 意
したところ、3 時間ほどで完売することができた。
写真 1
イベントでの販売
写真 2
カ キ の 薫 製 (し っ と り ち ゃ ん )
こ の と き 、「 し っ と り ち ゃ ん 」 と 「 し っ か り く ん 」 の そ れ ぞ れ に つ い て ア ン ケ ー ト 調
査 を 行 い 、 90 名 の お 客 さ ん か ら 回 答 を 得 た (図 2)。
そ の 結 果 、「 し っ と り ち ゃ ん 」 の 方 が 好 評 (図 3)で 、 旬 の 冬 だ け で な く 夏 に も 食 べ た
い と い う 意 見 が 約 4 割 (図 4)、 お つ ま み と し て 食 べ た い と い う 意 見 は 7 割 を 超 え た (図
5)。 さ ら に 、 価 格 も 手 頃 (6∼ 7 個 入 り 300 円 )と 好 評 で あ っ た 。
生産地の旬のカキを使ったので「特別限定品」と表示したところ、お客さんに大い
に注目されたため、パッケージングの重要性を痛感した。
カキの燻製の味についてどう感じますか?
年代別
他
⑤
そ
の
くな
④
お
い
し
し
甘
い
い
い
5.1
1.0
⑥その他
入
出
購
図5
の
他
0.0
⑤
そ
の
他
そ
6.1
10.0
③
購入したい時期
③
少
し
辛
15.3
し
て
し
安
(少
②
少
①
お
い
⑤お歳暮の時期
⑥
っ
た
時
来
な
)
くな
っ
た
時
④
期
お
中
元
の
時
⑤
期
お
歳
暮
の
時
期
)
期
時
くな
い
高
段
が
(値
旬
カキ
の
旬
図4
⑤その他
30.0
②
カキ
の
④贈答品として
④お中元の時期
20.0
1.0
0.0
①
③おやつとして
40.0
②
お
5.0
50.0
④
贈
答
品
と
6.7
②おつまみとして
③購入出来なくなっ
た時期
て
10.0
①おかずとして
60.0
つ
と
し
10.6
70.0
て
15.0
72.4
②カキの旬(少し安く
なった時)
や
20.2
20.0
80.0
か
25.0
しっかり
くん(12
時間乾
燥)
3 0
どんな用途で食べたいですか?
①カキの旬(値段が
高い時期)
③
お
30.0
3 1
どちらのほうがおいしいですか?
て
29.8
図3
ず
と
し
31.7
0 3
ま
み
と
し
購入したい時期はいつですか?
35.0
27
22
し
い
0代
無
回
答
0代
0代
0代
8
7
6
5
0代
0代
アンケート回答者の年齢構成
しっとり
ちゃん(6
時間乾
燥)
37
①
お
図2
4
3
2
1
0代
0代
人数
62
70
60
50
40
30
20
10
0
つ
30
25
20
15
10
5
0
どのような用途で食べたいですか?
初めて販売する商品なので、お客さんの反応が心配で不安だったが、好評を得るこ
とができた。このことから、 カキの薫製
が珍しいだけでなく、商品として販売して
いくことに自信を持った。
3)残 さ れ た 課 題
2 年 間 の 試 験・試 作・販 売 の 経 験 、そ し て ア ン ケ ー ト 結 果 を ふ ま え 、次 の 課 題 が 残 っ
た。それは、①年間を通じた商品の供給、②見た目がよく、お客さんの口にもあう商
品づくり、③女性部員のための製造過程の効率化、④販売方法の拡大、確保の4つで
ある。
まず、①の通年販売には材料の確保が必要なので、生、ボイル後、冷風乾燥後やく
ん製後の冷凍など、各段階の保存方法による味覚の違いなどの研究を進めている。ま
た、②のお客さんの口に合う商品づくりのため、風味づけのハーブ、チップの量や種
類についても、試作を繰り返している。さらに、③の製造過程の効率化を図るため、
新たにくん製機と卓上密封包装機を購入した。
ま た 、 平 成 16 年 9 月 に は 、 市 販 さ れ て い る 北 海 道 、 広 島 な ど の く ん 製 品 の 試 食 を 行
い 、 「私 た ち が 作 り た い 、 そ し て 、 食 べ て も ら い た い 味 」を 再 検 討 し た 結 果 、 安 全 性 、
柔らかさ、カキとハーブ・チップの香りのマッチングなどの点で、私たちが作ってい
る
カキの薫製
に自信を持った。
6. 波 及 効 果
活動の継続により、地域と女性部の活性化が図られ、水産物の加工に対する部員の
意 識 が 向 上 し た 。ま た 、カ キ 養 殖 業 を 行 っ て い る 部 員 も い て 、材 料 の 安 定 確 保 が で き 、
し か も 、カ キ の 新 し い 食 べ 方 を 提 案 で き た こ と で 、将 来 に 期 待 が 持 て る よ う に な っ た 。
7.今 後 の 課 題 や 計 画 と 問 題 点
○より良い商品づくり
現在、原料の各段階の冷凍保存を行っており、最もおいしく食べられる保存方法を
見出して、年間を通じて供給できる商品にしたい。また、風味づけのハーブ、チップ
の量や種類も、お客さんの口により合うよう、試作・検討していく予定である。
○販売方法の拡大、確保
地 元 の「 志 度 源 内 ふ る さ と ま つ り 」な ど 各 種 イ ベ ン ト で の 即 売 、近 隣 の 市 町 に あ る 直
売 所 で の 販 売 に も 積 極 的 に 取 り 組 み た い 。 さ ら に 、 商 品 単 品 の 販 売 で は な く 、 地 元 「さ
ぬ き ワ イ ン 」と の セ ッ ト 販 売 な ど 、 提 案 型 の 販 売 を 進 め て い く 予 定 で あ る 。
ま た 、東 京 に あ る 香 川・愛 媛 の 特 産 物 ア ン テ ナ シ ョ ッ プ 「せ と う ち 旬 彩 館 」へ 参 加 す る
など、活動の場を広げたい。
さ ら に 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 通 じ て の 宣 伝 、 紹 介 も 考 え て お り 、 私 た ち の 作 っ た 「カ キ
の 薫 製 」を 、よ り 多 く の 皆 さ ん に 知 っ て い た だ け る よ う 、こ れ か ら も 努 力 し て い き た い 。