07b 羊水分析の理由と染色体異常 羊水分析の理由と染色体異常 羊水染色体分析を妊娠前半(遅くとも 21 週初め 3)トリソミー児を妊娠した経験 まで)と後半に分けて考えます。妊娠前半は出生前 トリソミー21 トリソミー21 妊娠の経験者がトリソミー21 妊娠の経験者がトリソミー21 を妊 診断を目的とし、染色体異常の頻度は 3~4%です。 3~4%です。 娠する確率は通常の 2.4 倍、30 倍、30 歳以下の妊婦では 8 後半は超音波検査などで異常をみつけた胎児の染 倍です(Warburton (Warburton et al., 2004) 2004)。トリソミー21 トリソミー21 に 色体異常の有無をしらべて周産期・出生後の処置に 限らず生産する可能性のあるトリソミー(13, (13, 18, 21, 備えることが目的で、染色体異常の頻度は 17~18% XXX, XXY)の妊娠経験者がトリソミーを妊娠する XXY)の妊娠経験者がトリソミーを妊娠する に達します。 可能性は通常より高くなるので、出生前染色体分析 此処では、妊娠前半の羊水染色体分析の理由につ をすることが適当でしょう。同じトリソミー ( homotrisomy ) の 妊 娠 、 別 種 の ト リ ソ ミ ー いて述べます。 (heterotrisomy heterotrisomy)の妊娠のどちらも多くなるので、 somy)の妊娠のどちらも多くなるので、 トリソミーの gonadal mosaicism による繰り返し 1.羊水(絨毛)染色体分析の理由 1)母年齢 である可能性は否定できます。 Down 症候群(トリソミー21 症候群(トリソミー21) 21)、トリソミー13 、トリソミー13、 13、 トリソミー18 トリソミー18 などの常染色体トリソミー症候群は などの常染色体トリソミー症候群は 2.非侵襲的検査 母年齢の上昇と共に急激に増えます [12b 母年齢と 羊 水 (絨 毛 ) 検査 は 確定 的 検 査で 侵 襲 的検 査 染色体異常 を参照] を参照]。XXX、 XXX、XXY などの性染色体数 (invasive test)でもあり、羊水で test)でもあり、羊水で 0.3%、絨毛で 0.3%、絨毛で 異常は常染色体トリソミーより緩やかですが、やは 1%の割合で流産する危険があります。 1%の割合で流産する危険があります。そこで、羊水 り母年齢と共に増えます。片親性ダイソミー、過剰 (絨毛)検査を減らすために非侵襲的検査が登場し マーカー染色体も母年齢依存性です。これが高齢妊 ました。 娠が羊水染色体分析の対象になる理由です。 1)超音波検査 わが国の高齢出産(35 わが国の高齢出産(35 歳以上)が全出産中に占め 妊 娠 10~ 10~14 週 に 項 部 透 明 像 ( nuchal る割合は 2000 年以降は年に 1.2~1.3%の割合で急激 1.2~1.3%の割合で急激 translu translucency; NT)の拡大を伴う胎児の羊水分析を NT)の拡大を伴う胎児の羊水分析を に増えて、20011 年には 24.7%に達しました。 24.7%に達しました。Down すると、トリソミー18 すると、トリソミー18、トリ 18、トリソミー 、トリソミー21 ソミー21、 21、45,X、トリ 45,X、トリ 症 候 群 の出 生 の うち で 、高 齢 出 産に よ る もの が ソミー13 ソミー13、種々の構造異常、の順で染色体異常を認 13、種々の構造異常、の順で染色体異常を認 62.4%を占める計算になります(梶井、 2.4%を占める計算になります(梶井、2007; を占める計算になります(梶井、2007; 未発 めます。項部透明像拡大は妊娠 9~14 週に全妊娠の 表)。 1~6%に認め 1~6%に認め 16~18 週に消失するので、羊水検査の 非侵襲的検査(後述)を受けずに高齢だけを理由 時期を 15~16 週とすると使い易い指標です。産婦人 に羊水染色体検査をするのは能率が悪いので、禁止 科医が妊娠のスクリーニングとして行う超音波検 すべきだとの意見も増えつつあります。 査とは違い、専門家が胎児の正中矢状断面で測定す 2)親が染色体構造異常の保因者 るもので、適当な断面を得るためには時間を要しま 妊婦または夫が均衡型相互転座・Robertson 妊婦または夫が均衡型相互転座・Robertson 型転 す。[07h す。[07h 項部透明像拡大] 項部透明像拡大] を参照。 座・腕間逆位・腕内逆位・挿入の保因者で羊水分析 2)母体血清マーカーテスト する例が増えつつあります。反復流産その他の理由 妊娠 1111-13 週に母体血清の pregnancypregnancy-associated でリンパ球の染色体分析をして染色体構造常を発 plasma plasma protein A( A(PAPPPAPP-A; トリソミー21 トリソミー21 妊娠で 見する例が増えたことも関係すると思われます。羊 減少) 、free 、free β-hCG(トリソミー hCG(トリソミー21 (トリソミー21 妊娠で増加)を 水分析で胎児が親と同じ均衡型異常なら表現型は 測定します。トリソミー21 測定します。トリソミー21 妊娠の 65%を捕捉でき 65%を捕捉でき 正常、不均衡型なら表現型異常と考えます。 正常、不均衡型なら表現型異常と考えます。 ます。 1 07b 羊水分析の理由と染色体異常 Triple test は妊娠 15 週前後に妊婦の血液を採り、 血 清 中 の chorionic alphaalpha-fetoprotein go gonadotropin (AFP), (hCG), 味での染色体異常を持つことになります。inv(9), 味での染色体異常を持つことになります。 inv(9), human inv(1) などの正常変異、レベルⅠモザイクはこの中 uncojugated に含みません。 estriol (uE3) を測定し、人種、母年齢等を参考にし 染色体異常の種類はトリソミー21 染色体異常の種類はトリソミー21(染色体異常の 21(染色体異常の てトリソミー21 てトリソミー21(またはトリソミー 21(またはトリソミー18 (またはトリソミー18)胎児を妊娠 18)胎児を妊娠 27% 27% )、均衡型構造異常(26 、均衡型構造異常( 26.4 26.4% .4% )、トリソミー18 、トリソミー 18 している確率を計算します。 している確率を計算します。トリソミー21 トリソミー21 の妊娠で (16%) 16%)、不均衡型構造異常(11 、不均衡型構造異常(11.4 、XXX, XXY, 11.4% .4%)、XXX XXX, XXY, は AFP が低値、hCG が低値、hCG が高値、uE3 が高値、uE3 が低値の傾向を XYY(合計 XYY(合計 6.4% .4%)、数の異常モザイク(5 、数の異常モザイク(5%)、トリ 示します。出生予定日が母年齢 35 歳相当(採血時 ソミー13 ソミー13( 13(3%) 3%)、45,X 、45,X( 45,X(2.3%)です。均衡型構造異 2.3%)です。均衡型構造異 には 34 歳~35 歳~35 歳)のときのトリソミー21 のときのトリソミー21 妊娠の確 常は相互転座、逆位、Rob 常は相互転座、逆位、Robertson Robertson 型転座、その他の 率(1/300 率(1/300)以上なら、羊水染色体を分析します。 1/300)以上なら、羊水染色体を分析します。 順で、不均衡型構造異常は不均衡型相互転座、欠失、 この方法でトリソミー21 この方法でトリソミー21 妊娠の 65%を捕捉できま 65%を捕捉できま 構造異常モザイク、過剰マーカー染色体、Robertson す。 型転座、の順です。 これに dimeric inhi inhibinbin-A(InhA;トリソミー InhA;トリソミー21 ;トリソミー21 妊娠で高値)を加えた quadruple test では、母年齢 4.染色体異常を発見したが妊娠を継続したときの 35 歳未満でトリソミー21 歳未満でトリソミー21 妊娠の 75%、 75%、35 歳以上で 流産率 80%以上を捕捉できます( 80%以上を捕捉できます(Driscoll, 以上を捕捉できます(Driscoll, 2004) 2004)。 表2.羊水診断で発見した染色体異常 3)integrated 3)integrated testing の流産率 妊娠 11~13 週に超音波検査で項部透明像と胎児 染色体異常 流産率 (% (% ) 心拍数(トリソミー13 、母血清の PAPP心拍数(トリソミー13 で頻脈) PAPP-A トリソミー21 トリソミー21 29.1 (トリソミー13, (トリソミー13, 18, 21 で減少)と free β-hCH(ト hCH(ト トリソミー18 トリソミー18 67 リソミー21 リソミー21 で増加、トリソミー13, トリソミー13, 18 で減少)を測 トリソミー13 トリソミー13 40 定し、その結果を総合してトリソミー13 定し、その結果を総合してトリソミー13、 13、18、 18、21 の 45,X 68.5 >90%を検出できます。 >90%を検出できます。 XXX 0 4)integrated/combined 4)integrated/combined testing XXY 4.5 Integrated testing に quadruple test を組み合わ XYY 3.6 せたものです。測定項目を増やせば精度は上がりま せたものです。測定項目を増やせば精度は上がりま すが、それだけ煩雑になり、費用も増します。 羊水診断で染色体異常と判明したが妊娠を継続 羊水診断で染色体異常と 判明したが妊娠を継続 5)母体血中の胎児 DNA検査 DNA検査 したときの流産率を表2に示します(Hook したときの流産率を表2に示します(Hook, Hook,1983) 1983)。 ハイリスク妊婦血漿中の胎児由来 DNA 断片をシ トリソミー21 トリソミー21 の数字は Morris et al.( al.(1999)によ 1999)によ ークエンスしてトリソミー13 ークエンスしてトリソミー13、 13、18、 18、21 を診断する ります。トリソミー18 ります。トリソミー18、トリソミー 18、トリソミー13 、トリソミー13、 13、45,X では 方法が開発され、わが国でも近く臨床研究が始まる 流産率が高く、トリソミー21 トリソミー21 は中間値を示し、45,X と報じられています。[07i と報じられています。[07i 母胎血中の胎児 DNA 検 以外の性染色体数異常(XXX, 以外の性染色体数異常(XXX, XXY, XYY)は殆ど流 XYY)は殆ど流 査] を参照。 産しません。羊水を採取してから結果が出るまでの 2 週間足らずの間に流産してしまうことがあります が、その殆どがトリソミー18 が、その殆どがトリソミー18、トリソミー 18、トリソミー13 、トリソミー13、 13、45,X 3.染色体異常の種類と頻度 出生前診断を目的とした羊水細胞染色体分析(妊 です。 娠 20 週以内)の経験では、 染色体異常が 3.6% 3.6%です。 この他に真性モザイクと鑑別を必要とする偽性モ 5.羊水細胞染色体分析の精度 ザイクが約 1%、明らかな偽性モザイクが 2%、母体 染色体の形・バンドレベルが最良なのは末梢血リ 染色体の形・バンドレベルが最良なのは末梢血リ 細胞の混入が 0.2%あります。検体の 0.2%あります。検体の~ %あります。検体の~7%が広い意 7%が広い意 ンパ球の短期培養で、羊水細胞も含めて他の組織・ 2 07b 羊水分析の理由と染色体異常 細胞はこれに劣ります。また、出生後の末梢血リン open neu neural tube defects and ane aneuploidy. パ球の染色体分析では表現型を参考にすることが Genet Med 6:540− 6:540−541, 2004. Hook できますが、羊水細胞分析では表現型を参考にでき EB: Chromosome fetal abnormalities death and ないのが違いです。羊水細胞染色体分析の精度は近 spon spontaneous following 年向上しましたが、この二つの理由でまだリンパ球 amniocentesis: Further data and associations には劣ります。 with maternal age. age. Am J Hum Genet 35:110− 35:110−116,1983. 梶井 正:わが国の高齢出産と Down 症候群増加傾 6.羊水細胞染色体分析と Down 症候群の頻度 向の分析. 向の分析. 日本小児科学会雑誌 111:1426− 111:1426−1428, ヨーロッパ諸国ではわが国より 10~15 年早く、ア 2007. メリカはわが国とほぼ時を同じくして高齢妊娠が 増えています。母体血清マーカーテストは 35 歳以 Morris JK, Wald NJ, Watt HC: Fetal loss in 下の妊娠を対象に開発されたはずですが、高齢妊娠 下の妊娠を対象に開発されたはずですが、高齢妊娠 Down syndrome pregnancies. Prenat Diagn の増加と共に 35 歳以上を主な対象とするようにな 19:142− 19:142−145, 1999. りました。母体血清マーカーテスト・超音波検査な Verloes A, Gillerot Y, Van Maldergem L, Schoos R, どの非侵襲的検査が普及するにつれて羊水染色体 Herens C, Jamar M, Dideberg V, Lesenfants S, 検査の数は減少し(Verloes (Verloes et al., 2001) 2001)、Down 、Down 症 Koulischer L: Major decrease in the incidence 候群(トリソミー21 候群(トリソミー21)の出生はアイルランド、マル 21)の出生はアイルランド、マル of trisomy 21 at birth in south Belgium: Mass タなどを除いて以前と同じか、より少なくなりまし impact of triple test? Eur J Hum Genet 9:1− 9:1−4, た。 2001. Warburton D, Dallaire L, Thangavelu M, Ross L, 文献 Levin B, Kline J: Trisomy recurrence: recurrence: A Driscoll DA; Professional Practice and Guidelines reconsideration based on North American Committee: ACMG Policy Statement: Statement: Second data. Am J Hum Genet 75:376− 75:376−385, 2004. 梶井 [2013 [2013 年 3 月 30 日:改訂] 日:改訂] trimester maternal serum screening for fetal 3
© Copyright 2024 Paperzz