女性不妊・無月経と染色体異常 女性不妊・無月経と染色体異常

06b 不妊・無月経と染色体異常
女性不妊・無月経と染色体異常
避妊していないにもかかわらず2年以上妊娠し
3.無月経
ないときは不妊症(infertility
ないときは不妊症(infertility)で、夫婦の
infertility)で、夫婦の 8%~9%
1)一次性無月経(primary
1)一次性無月経(primary amenorrhea)
amenorrhea)
を占めます。不妊の原因は多数ありますが、WHO
を占めます。不妊の原因は多数ありますが、WHO
一次性無月経の染色体異常率は 30%に達します。
30%に達します。
の統計によると原因が男性にあるのが 20%、
20%、女性に
その代表は 45,X, 45,X/46,XX, X 染色体の構造異常
あるのが 38%、双方にあるのが
38%、双方にあるのが 27%、不明が
27%、不明が 15%
( isoXq; Xp–
Xp–; Xq–
Xq–; ring X ) と そのモ ザイ ク、
です(de
です(de Kretser, 1997)
1997)。不妊の原因が双方にある
45,X/46,XY, Y 染色体の構造異常などです。
のが 27%に達するのは注目すべきで、
27%に達するのは注目すべきで、夫婦の片方に
45,X, 47,XXX などをリンパ球のほぼ 10%以下に
10%以下に
原因がみつかっても、他方の検索を怠ってはならな
認めるときは [02d 性染色体の低頻度モザイク]
性染色体の低頻度モザイク] で、
いことを示します。染色体異常は不妊の原因の一部
無月経やリプロダクションとは関係なく生理的現
に過ぎませんが、同じ傾向がみられます。
に過ぎませんが、同じ傾向がみられます。
象です。
2)二次性無月経(secondary
2)二次性無月経(secondary amenorrhea)
amenorrhea)
不妊治療の前段階として不妊の原因を検索する
早 期 閉 経 と も 呼 び ま す 。 ほ ぼ 10% に isoX,
ときは、夫婦の双方の染色体検査を早期にすること
を推奨します。染色体異常を同定することによって、
45,X/46,XX, XX-Y 転座、X
転座、X-常染色体転座などを認め
その他の面倒な検査をしないで済むからです。
ます。Xq
ます。Xq−
Xq−と早期閉経については [05h X 染色体の
構造異常]
構造異常] をご参照ください。
1.男性不妊
[06a 男性不妊と無・乏精子症]
乏精子症] をご参照ください。
4.顕微受精
無精子症のほぼ 15%、高度の乏精子症のほぼ
15%、高度の乏精子症のほぼ 5%に
5%に
顕微受精候補男性の染色体異常率は 6.1%ですが、
6.1%ですが、
染色体異常を認め、その代表は 47,XXY(Klinefelter
そのパートナーの女性でも 2.1%です
2.1%です(Gekas
(Gekas et al.,
症候群)です。Yq11.2 バンドの a, b, c 領域のどれか
2001; 表1)。成人女性の染色体異常率は 0.6%なの
0.6%なの
に G-バンド分析では検出できないが微細欠失があ
で、パートナー女性ではその3倍強です。無・乏精
で、パートナー女性ではその3倍強です。無・乏精
って無・乏精子症の原因になっていることがあり、
って無・乏精子症の原因になっていることがあり、
子症のように明らかに男性側に不妊の原因がある
微細欠失は mul
multiplex PCR または FISH 分析で検出
と思われるときでも、女性側にも原因がありうるこ
します。
とを示します。
2.女性不妊
文献
成人女性でも 30 歳代の半ばを境にして妊娠率は
de Kretser DM: Infertility. Lancet 349:787−
349:787−790,
1997.
下がり、その後は加齢とともに低下します。いわば
Gekas J, Thepot F, Turleau C, Siffroi JP,
生理的な不妊です。晩婚化が出生率の低下に結びつ
Dadoune JP, Briault S, Rio M, Bourouillou G,
くのも、この理由によります。
女性不妊を来す染色体異常としては 45,X または
Carré
Carré-Pigeon F, Wasels R, Benzacken B;
B;
そのモザイクが代表的ですが、無月経を伴います
Associa
Association des Cytogeneticiens de Langue
[05a Turner 症候群]
症候群]。無月経を伴わない染色体異常
Francaise: Chromosomal factors of infertility
としては均衡型相互転座、逆位、Robertson
としては均衡型相互転座、逆位、Robertson 型転座
in candi
candidate couples for ICSI: An equal risk of
などがありますが、いずれも流産を来すことが多く、
などがありますが、いずれも流産を来すことが多く、
consti
constitutional aberrations in women and men.
不妊になることは稀です。X
不妊になることは稀です。X-常染色体転座も不妊の
Hum Reprod 16:82−
16:82−90, 2001.
梶井 [2005 年 1 月 11 日]
原因になることがあります。
1
06b 不妊・無月経と染色体異常
表1.顕微受精の候補夫妻の染色体分析
総数
男性
女性
2,196
1,
1,012
134(6.1%)
21(2.1%)
49
–
Y 染色体構造異常
9
–
45,X/46,XY
8
–
47,XXY/46,XY、他
47,XXY/46,XY、他
8
–
47,XYY
8
–
XX- or YY-常染色体転座
5
–
相互転座
18
7
Robertson 型転座
18
7
不均衡型構造異常
4
–
腕間逆位
3
7
相互転座モザイク
2
–
複雑な構造異常
2
–
染色体異常(例数)
性染色体異常
47,XXY
常染色体異常
常染色体異常
2