毛玉が発生しにくい材質は何か 6班 1.はじめに 澤穂尊 り合わせるだけでは刺激が弱いということで、今度 本実験では、毛玉が発生しにくい材質は何かとい は紙やすりを使用してこすってみた。 うことについて検討する。具体的には洋服同士のこ しかし紙やすりで布をこすると、刺激が強すぎて すり合わせを考慮し、布同士をこすり合わせてどの 毛玉ができる以前に布が破れてしまった。だいたい 材質の服が一番毛玉ができにくいかを調べていく。 200回こすった時点で布が破れてしまったため、こ すった回数で布の表面を比べていくことも難しか 2.毛玉発生のメカニズム 1) った。 繊維は使っているうちに先端部分に毛羽が発生 以下に紙やすりのこすり合わせにおいての布の し、隣同士の毛羽が絡まり合うことで、小さな毛玉 表面の写真を図1~図4で示す。図の倍率は全て50倍 が発生するものである。この段階で羊毛などの動物 である。 繊維は、摩耗などによって自然と毛玉が取れるため、 大きな毛玉ができにくい。 それに対してアクリルやポリエステルといった 人工繊維は、繊維の強度が強いため毛玉が取れるこ となく留まり、周囲の小さい毛玉同士が絡まり合う ことによってより大きな毛玉が発生してしまう。 つまり、毛玉は人工繊維の割合が高いほど発生しや すくなるのではないかと考えられる。そこで今回の 実験では、自然素材の繊維と人工素材の繊維の毛玉 の発生しやすさの比較検討を行った。 3.実験方法 上述の毛玉発生のメカニズムから、綿 100%の服 図1 綿100% こすり合わせる前 は毛玉ができにくく、アクリル 100%やポリエステ ル 100%の服は毛玉ができやすいと考えた。そのた め、その 2 種類の繊維をこすり合わせてみて毛玉の 発生数にどれくらいの差が出るのかを観察した。布 はユニクロの製品を使用した。布同士でこすり合わ せても変化があまりおこらなかったので、紙やすり を使用して布をこすった。そして繊維の表面の変化 を光学顕微鏡で観察した。 4.結果と考察 4.1 こすり合わせ実験の結果 こすり合わせの実 験を行ったが、たくさんこすっても布にほとんど変 化が現れなかった。5000回こすり合わせても綿、 アクリルの布は両方とも変化が見られなかったの で、こすり方を変えて実験してみた。布同士でこす 図2 綿100% 紙やすり200回 るのが図2、図4である。しかし布が長期間こすられ ていくと、強度の強い人工繊維であっても繊維が切 れ始め、周囲の繊維と絡まりあい、毛玉を生成して いく。人工繊維は一端小さな毛玉ができてしまうと その毛玉が取れることはあまりなく、次第に大きな 毛玉を形成していくため、小さな毛玉が発生したの ちは突発的に大きな毛玉が発生していくと考えら れる。それに対して自然繊維は、初期段階から図2 のように個々の繊維が切れ絡まりあうが、繊維自体 は強度があまりないためにある程度の大きさの毛 玉ができると、しだいにとれていく。そのため結果 図3 アクリル100% こすり合わせる前 的には、初期段階の状態が長く続き、人工繊維より も大きな毛玉はできにくくなると考えられる。 4.2 実験結果に対する考察 本実験であまり毛玉 の発生が確認できなかった要因は大きく分けて2つ あると考えられる。 1つ目は、毛玉の発生という長い期間かけておこ る現象を短期間のうちに再現しようとしたことで ある。紙やすりで布をこすったことなど、まさにこ のことに当てはまる。満足のいくような結果を残す ためには、布のこすり合わせを5000回でとどめる のではなく、10000回、100000回といった回数行う 必要があったと考えられる。その際、手でこすり合 図4 アクリル100% 紙やすり200回 わせるのではなく、こすり合わせ専用の装置を作る のが良いと思う。 2つ目は、実験で使用した布の材質が毛玉のでき 毛玉の発生は確認できなかったため、実験の目的 を達成することはできなかったが、本実験から1つ にくいものだった可能性があるということである。 考えられることがある。それは自然繊維と人工繊維 毛玉がよくできる洋服といえばセーターやコート における毛玉発生の過程の決定的な違いである。 なので、多少お金はかかるかもしれないが、セータ 人工繊維のほうが自然繊維よりも大きな毛玉が 発生しやすいということは2節で述べた。しかし図 ーを用いてこすり合わせの実験を行えばよかった のではないかと思う。 1~図4を観察すると綿100%のほうが布の表面が粗 く、アクリル100%よりも毛玉発生の前の段階にさ 5.おわりに しかかっている。このようなことが起こった理由と 本実験は過去に前例がなく、実験方法に少し苦労 して考えられるのは、それぞれの図が毛玉発生の初 した。満足のいくような結果が得られなかったこと 期段階を表しているからだと思う。つまり、布がこ についてはとても残念だが、本実験で毛玉について すられていく段階で、人工繊維は繊維のひとつひと の理解がよりいっそう深まった。 つに強度があるため、初期段階ではそれぞれの繊維 が切れることなく残り、小さな毛玉自体できない。 参考文献 それに対して自然繊維は繊維のひとつひとつが弱 1) いため初期段階でそれぞれの繊維が切れて絡まり、 小さな毛玉がたくさんできる。この状態を表してい http://www.tokyo929.or.jp/column/ware/post_23 .php
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