アメリカの住宅政策と民間非営利住宅事業

国際建設技術協会
機関紙
2008 年 5 月 号
アメリカの住宅政策と民間非営利住宅事業
海老塚良吉(都市再生機構都市住宅技術研究所)
1980 年 代 以 降 、ア メ リ カ や イ ギ リ ス 等 の 世 界 の 主 要 先 進 国 で は 、低 所 得 者 向 け
の住宅事業の担い手は、公的な住宅供給組織から民間非営利組織に次第に移って
き て い る 。 ア メ リ カ で は 1981 年 に 登 場 し た レ ー ガ ン 政 権 の 下 で 福 祉 関 連 予 算 が
削 減 さ れ 、住 宅 都 市 開 発 省( HUD)の 予 算 も レ ー ガ ン 政 権 下 の 8 年 間 で 大 幅 に 削
減された。公共住宅の新規建設戸数が急減して、維持管理費も削減された。公共
住宅に代わって低所得者向けの住宅供給の担い手として民間非営利組織であるコ
ミ ュ ニ テ ィ ・ デ ベ ロ ッ プ メ ン ト ・ コ ー ポ レ ー シ ョ ン( CDC)等 が 各 地 に 設 立 さ れ
て 、 1980 年 代 、 90 年 代 に 急 増 し て い る 。 ア メ リ カ の 公 共 住 宅 戸 数 は 、 全 住 宅 の
1.2% あ ま り( 130 万 戸 )に 過 ぎ な い が 、建 て 替 え に 伴 っ て 戸 数 が 削 減 さ れ 、民 間
非 営 利 組 織 で あ る CDC等 が 低 所 得 者 向 け の 新 規 住 宅 供 給 を 担 っ て い る 。
ア メ リ カ の 人 口 は 2 億 8,800 万 人( 2002 年 )、居 住 者 の い る 住 宅 総 数 は 10,584
万 戸( 2003 年 )、持 ち 家 が 68% 、民 間 借 家 が 30%( 2% は 連 邦 政 府 か ら の 家 賃 助
成 を 受 給 )、 残 り が 地 方 住 宅 公 社 ( Local Housing Authority) が 所 有 、 管 理 す る
公共住宅である 1 。アメリカの政府の住宅統計では、民間非営利組織による住宅
戸数は把握されていない。後述するように民間非営利組織により建設された住宅
は 、こ れ ま で に 55 万 戸 程 度 と 推 定 さ れ て い て 、こ れ は 全 住 宅 の 0.5% 程 度 の き わ
めて少ない戸数で、公共住宅よりも少ない数である。
第 2 次 大 戦 前 の住 宅 政 策
ア メ リ カ で は 19 世 紀 中 頃 か ら 都 市 の 住 宅 問 題 に 対 処 す る た め に 民 間 非 営 利 組
織であるニューヨーク貧困者生活改善協会などがモデル・テネメントの建設を始
めた。配当を限定しても一定の家賃を支払える所得者を対象とすることなり、供
給 戸 数 も 限 ら れ た も の で あ っ た 。20 世 紀 の 初 め に 民 間 非 営 利 組 織 の 非 営 利 住 宅 会
社への連邦政府の低利融資等を求める要望がされたが実現しなかった。
第 1 次 世 界 大 戦 中 に 軍 事 労 働 者 に 対 す る 住 宅 供 給 の た め に 連 邦 政 府 は 1918 年
に 米 国 住 宅 供 給 公 社 を 設 立 し 、 直 接 供 給 を 行 っ た が 終 戦 後 は 中 止 さ れ た 。 1929
年 の 大 恐 慌 の 後 、 雇 用 創 出 を 目 的 と し て 、 連 邦 政 府 の 公 共 事 業 庁 住 宅 局 は 1933
年から集合住宅建設を行った。デザインの優れた団地が建設されたが、民間企業
からは民業圧迫するものとして批判があり、地方政府からは地方の主体性が失わ
れ る と し て 批 判 が 出 た 。 そ の た め 1937 年 住 宅 法 で 地 方 住 宅 庁 を 設 立 し て 、 連 邦
政府の補助により公共住宅を建設する制度が作られた。住宅の改革を求める人々
1
American Housing Survey, 2003 table 1A-7。
1
は、大恐慌の後、民間による慈善活動の限界を知って政府が住宅問題に深くかか
わることを求めるようになり、労働運動と共に公共住宅や組合が出資するコーポ
ラティブ住宅などを建設するように要求したが、民間不動産業界等からの反対を
受けた。
第 2 次 大 戦 後 の住 宅 政 策
第 2 次 世 界 大 戦 後 に 連 邦 政 府 は 、住 宅 不 足 に 対 処 す る た め に 1949 年 住 宅 法 で 6
年 間 に 81 万 戸 の 公 共 住 宅 を 建 設 す る 計 画 を 作 成 し た が 、 実 際 に 建 設 さ れ た の は
20 万 戸 に と ど ま っ た 。1968 年 住 宅 法 で も 連 邦 補 助 に よ り 年 間 13 万 戸 以 上 の 公 共
住 宅 建 設 が 計 画 さ れ た が 、1971 年 の 年 間 9 万 戸 を ピ ー ク に し て そ の 後 の 公 共 住 宅
建設は次第に減少していった。公共住宅の建設は貧困層の集中したコミュニティ
を 作 り 出 す 等 の 批 判 が あ り 、1974 年 住 宅 法 の セ ク シ ョ ン 8 で 民 間 借 家 に 居 住 す る
低 所 得 者 世 帯 へ の 家 賃 補 助 が 開 始 さ れ 、1983 年 住 宅 法 で さ ら に バ ウ チ ャ ー 方 式 に
よる家賃補助が導入されて、住宅政策は公共住宅に対する建設費補助から民間借
家 の 低 所 得 世 帯 に 対 す る 家 賃 補 助 に シ フ ト し て い っ た 。1994 年 以 降 は 、公 共 住 宅
の取り壊し戸数が建設戸数をうわまわり、公共住宅ストック数が純減となってい
る 2 。大規模公共住宅の建て替え事業により公共住宅を減らし、民間非営利組織
によるアフォーダブル住宅建設や市場家賃による民間住宅などが建設されている。
CDC 等 の 民 間 非 営 利 組 織
公共住宅に代わって、主として低所得者向けの賃貸住宅を供給、管理している
の が CDC( Community Development Corporation)等 の 民 間 非 営 利 組 織 で あ る 。
民 間 非 営 利 組 織 に は CDCの 他 に 、コ ミ ュ ニ テ ィ 組 織 、借 家 人 グ ル ー プ 、教 会 関 連
組 織 、 コ ー ポ 住 宅 組 合 な ど が 含 ま れ る 3 。 低 所 得 者 の 住 宅 問 題 に 対 応 し て 、 19 世
紀の後半に様々な民間非営利組織が生まれたが、現在、活動している民間非営利
組 織 の 代 表 的 な 組 織 で あ る CDCの 原 型 は 、 1960 年 代 に で き あ が っ た 。 ジ ョ ン ソ
ン大統領は貧困の削減を優先課題として取り上げ、連邦議会は大統領が提案した
1964 年 経 済 的 機 会 法( Economic Opportunity Act of 1964)を 通 過 さ せ て 、失 業
と貧困問題に対処するために職業訓練、成人教育、事業資金融資等を開始し、全
米 各 地 に 1000 以 上 の Community Action Agencyが 設 立 さ れ た 。 こ の 組 織 は 、 非
営利のグループから市の組織まで多様な組織で、連邦政府の直轄で管理され、最
大限の住民参加が求められた。しかし、都市部の市長からの反発があり、また、
コミュニティからも社会サービスには取り組んでいるが失業問題には十分な取り
組みがないと不評であった。ニューヨーク選出のロバート・ケネディ上院議員は
ブ ル ッ ク リ ン 地 区 の Bedford-Struyvesantで の 取 り 組 み を 視 察 後 に 、 同 僚 の Jacob
2
山 田 ち づ 子 他 [1997]「 ア メ リ カ 」『 海 外 の 公 的 住 宅 供 給 組 織 の 動 向 』、 住 宅 ・ 都
市 整 備 公 団 住 宅 都 市 総 合 研 究 所 、 p 17-19
3
平 山 洋 介 [1999]「 ア メ リ カ の 住 宅 政 策 」『 欧 米 の 住 宅 政 策 』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 、 p
5
2
Javits上 院 議 員 と と も に 経 済 的 機 会 法 を 改 正 し て Special Impact Programを 制
度 化 し 1968 年 よ り 社 会 及 び 雇 用 サ ー ビ ス と と も に 地 域 の 経 済 開 発 を 担 う コ ミ ュ
ニ テ ィ 組 織 を 支 援 、 助 成 す る 事 業 を 開 始 し た 。 こ の 組 織 が Community
Development Coraporation と 呼 ば れ た 4 。
1960 年 代 の CDC は 、荒 廃 し た 住 宅 、衰 退 し た 地 域 経 済 、雇 用 の 不 足 と い っ た
貧困なコミュニティの様々な問題の改善に取り組んだ。経済開発と同時に民主的
な コ ミ ュ ニ テ ィ を 作 る こ と が 追 及 さ れ た 。1970 年 代 に CDC は 組 織 の 数 が 増 え て
200 余 り と な り 、事 業 能 力 が 高 ま っ た が 、こ れ は 連 邦 政 府 が 、1974 年 住 宅・コ ミ
ュ ニ テ ィ 開 発 法 で コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 一 括 補 助 金( Community Development Block
Grant) を 創 設 す る な ど し て 、 CDC の 活 動 を 支 援 し た た め で あ る 。 ま た 、 1977
年 コ ミ ュ ニ テ ィ 再 投 資 法 ( Community Reinvestment Act) に よ り 金 融 機 関 は 衰
退 地 域 へ の 融 資 を 義 務 付 け ら れ て CDC は 事 業 資 金 の 融 資 を 容 易 に 受 け る こ と が
で き る よ う に な っ た 。レ ー ガ ン 政 権 の 1981 年 ∼ 88 年 に は 財 政 赤 字 削 減 の 下 で こ
れ ま で の 補 助 は 削 減 さ れ た が 、1986 年 に は 低 所 得 者 向 け 住 宅 税 控 除( Low Income
Housing Tax Credit) が 創 設 さ れ て 、 低 所 得 者 向 け 住 宅 事 業 に 対 す る 投 資 が 所 得
か ら の 税 控 除 の 対 象 と な り 、 CDC の 事 業 の 資 金 集 め に 利 用 さ れ る よ う に な っ た 。
1990 年 の 全 国 ア フ ォ ー ダ ブ ル 住 宅 法( National Affordable Housing Act)は 、
CDC を 住 宅 供 給 の 主 要 な 担 い 手 の ひ と つ と し て 位 置 づ け 、連 邦 政 府 か ら の 補 助 を
与 え る よ う に し た 。90 年 住 宅 法 に よ り 創 設 さ れ た HOME 事 業 の 補 助 金 の 15% は
CDC の 住 宅 事 業 へ の 補 助 と し て 配 分 す る よ う に 規 定 さ れ て い る 。 CDC 等 の 民 間
非営利組織の活動に対してはさらに州政府や地方政府が独自の補助金を支出して、
低所得者向けの住宅確保を図っている。
CDC の 活 動 実 態 に つ い て 、 National Congress for Community Economic
Development に よ る 1991 年 の 調 査 で は 全 国 の CDC は 1800 団 体 、 1994 年 調 査
に よ れ ば 、2000∼ 2200 団 体 、住 宅 の 供 給 累 積 戸 数 は 約 40 万 戸 、年 間 の 供 給 戸 数
は 3 万 戸 と し て い る 。 1999 年 の 同 調 査 に よ れ ば 、 3500 に 増 加 し 、 そ れ ま で に 建
設 さ れ た 住 宅 戸 数 は 約 55 万 戸 に ま で 増 加 し た 。
ア メ リ カ の 民 間 非 営 利 組 織 に よ る 住 宅 供 給 の 戸 数 は 全 住 宅 の 0.5% に あ た る わ
ずかな戸数に過ぎない。アメリカの住宅政策は、住宅金融や住宅ローンの利子に
対する住宅関連減税など持ち家対策を柱に実施されていて、公共住宅、民間非営
利 組 織 に よ り 供 給 さ れ た 住 宅 戸 数 は 合 計 し て も ア メ リ カ の 全 住 宅 の 2% 以 下 の 少
な い 戸 数 と な っ て い る 。 し か し 、 年 間 2∼ 3 万 戸 と 量 的 に は 少 な い も の の 低 所 得
者向けのアフォーダブル住宅や高齢者やホームレスなどの住宅供給で重要な役割
を 果 た し て い る 。CDC は 職 員 数 も 少 な く 経 営 的 に も 安 定 し て い な い が 、税 制 や 地
方政府からの補助、インターミディアリーからの技術的・財政的支援を受けて、
住宅建設だけではなく、商業開発、雇用創出、職業訓練など多様な社会サービス
を含めて活動を行っている。
4
Kaders, Kristin etc. Building Communities: Making a Difference , P7-8
3
CDC によるアフォーダブル住 宅 の供 給
CDCは 大 都 市 の 衰 退 地 域 の 再 活 性 化 に 成 果 を あ げ て き た が 、そ れ は 、政 府 組 織
とは異なって、機敏に市場の変化が与えた開発の機会に対応することができ、地
域の多様な要望に応えて複合的な事業を特定の地域を対象に行うことができるた
め で あ る 5 。 CDCが ど れ だ け の 地 域 改 善 に 寄 与 で き た は 、 地 域 の 市 場 経 済 力 に も
影 響 さ れ る が 、 CDCを 支 援 す る 地 域 の シ ス テ ム に も 左 右 さ れ る 。
CDCは コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 に 関 す る 様 々 な 事 業 を 行 っ て い る 。 1990 年 代 に 活 動
の幅はますます広がり、住宅開発だけではなく、商業開発や職業訓練、若者向け
の 雇 用 創 出 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 施 設 の 開 発 な ど を 行 っ て い る 。 ア メ リ カ の 主 要 な 23
都 市 に お け る 163 の CDCを 対 象 に Urban Instituteが 実 施 し た 調 査 に よ れ ば 、94%
の CDCは 住 宅 開 発 を 行 っ て い て 、 80% は 地 域 計 画 の 作 成 や 組 織 化 に 取 り 組 み 、
69% は 持 家 事 業( 住 宅 購 入 を す る 場 合 の 頭 金 の 支 援 、持 家 修 繕 な ど )を 行 い 、60%
は商業・業務開発(商業地域の改善や販売促進、業務の技術的財政的支援、商業
建 物 の 修 復 や 建 設 な ど )を 行 っ て い る 。年 間 予 算 の 中 位 値 は 67.6 万 ド ル 、職 員 数
の 中 位 値 は 11.5 人 と な っ て い る 。全 国 組 織 の イ ン タ ー ミ デ ィ ア リ ー か ら 補 助 金 を
受 け て 実 施 し て い る 事 業 の 総 事 業 費 は 1991 年 か ら 2000 年 に か け 倍 増 し た 6 。
CDCが 実 施 す る ア フ ォ ー ダ ブ ル 住 宅 の 事 業 は 、複 雑 で 非 効 率 と 言 わ れ て き た が 、
1990 年 代 に は 、開 発 の 事 前 準 備( 用 地 の 買 収 や 計 画 作 成 な ど )に 必 要 な 費 用 は イ
ン タ ー ミ デ ィ ア リ ー か ら 提 供 さ れ る よ う に な っ た 。実 績 の な い CDCの 場 合 は 建 設
費用を民間金融機関から借り入れることが困難であったが、インターミディアリ
ー が 、 低 所 得 者 向 け 住 宅 税 控 除 ( Low Income Housing Tax Credit) な ど の 仕 組
み を 使 っ て 支 援 し 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 再 投 資 法 ( Community Reinvestment Act) が
影響して金融機関からの借り入れも容易になった。開発には土地利用規制や建築
規制なども複雑に関係してくるが、これらの地方政府の関係機関や融資機関など
が 連 携 し て 支 援 す る よ う に 変 化 し て い る 7 。1991 年 に は 連 邦 政 府 が HOME事 業 を
新 た に 創 設 し 、 ア フ ォ ー ダ ブ ル 住 宅 を 開 発 す る た め の 地 方 政 府 の 資 金 が 15 億 ド
ル か ら 30 億 ド ル に 増 加 し 、 CDCへ の 補 助 が 多 く な っ た 。
各 都 市 で は 、 例 え ば 次 の よ う な CDCへ の 支 援 が 90 年 代 に は 実 施 さ れ た 8 。
オハイオ州クリーブランド市では、市、民間、非営利組織が連携して成功を収
め て い る 。財 団 等 が 出 資 し て Neighborhood Progress Inc.を 設 立 し CDC に 資 金
を 融 資 し て い る 。市 の 補 助 は 主 と し て CDC に 配 分 さ れ 、税 金 な ど で 抵 当 流 れ と
な っ た 土 地 を CDC に 優 先 的 に 提 供 す る な ど し て 支 援 し て い る 。 地 域 の 19 の
CDC を ク リ ー ブ ラ ン ド 住 宅 ネ ッ ト ワ ー ク と し て 組 織 化 し 、 市 や オ ハ イ オ 州 な ど
か ら 165 万 ド ル の 資 金 を 受 け て 、 買 い 取 り 特 約 つ き 賃 貸 住 宅 事 業 を お こ な い 、
5
Walker, Christopher [2002], Community Development Corporations and
their Changing Support System , The Urban Institute,p 8、
6
7
8
Walker [2002]、 p 12-16
Walker [2002]、 p 22-25
Walker [2002]、 P31
4
年 間 230 戸 の ア フ ォ ー ダ ブ ル な 一 戸 建 て 住 宅 を 供 給 し て い る 。
ニ ュ ー ヨ ー ク 市 で は CDC は 市 の 所 有 す る 建 物 を 譲 り 受 け て 市 の 住 宅 保 存 開 発
局( Department of Housing Preservation and Development)の 支 援 の 下 で 、民
間金融機関や投資家、インターミディアリーからの融資を受けて住宅開発を行っ
てきた。子供のケア施設や経済開発事業なども開始されている。
シ ア ト ル 市 で は 、1990 年 代 の 初 め に コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 一 括 補 助 金( CDBG)と
HOME 事 業 の 補 助 金 を 利 用 し て 住 宅 開 発 へ の 補 助 を 行 っ て き た 。住 宅 の 修 復 と 開
発のために特別不動産税を設けたり、債権を発行して資金を作り、非営利組織の
開発を支援したりしている。
CDC の破 産 などの失 敗 事 例
CDC は 各 地 で 増 加 傾 向 に あ り 、 1970 年 代 中 頃 の 200 組 織 か ら 、 1988 年 に は
1500∼ 2000 組 織 に な り 、1999 年 に は 3600 に 増 加 し て い る 。CDC に よ り 開 発 や
修 復 さ れ た 住 宅 は こ れ ま で に 55 万 戸 以 上 と な っ て い る 。 し か し 、 新 し く 設 立 さ
れ る CDC が あ る 一 方 で 、経 営 基 盤 の 弱 い CDC は こ れ ま で に 数 多 く が 、業 務 を 停
止している。
ニ ュ ー ヨ ー ク 市 ブ ロ ン ク ス で 1977 年 よ り 活 動 し て い た CDCの バ ナ ナ ・ ケ リ ー
( Banana Kelly Community Improvement Association)は 、開 発 事 業 が 減 少 し 、
各種財団や政府からの補助金が削減され、財政管理がきちんとされず経営が破綻
し た 。 こ の よ う な 事 例 に つ い て 、 William M. Rohe と Rachel G. Brattは 、 CDC
が 業 務 停 止 、業 務 縮 小 、組 織 統 合 さ れ た 事 例 を 分 析 し て 、CDCの 失 敗 が ど の よ う
な要因で起きたかを下記のように紹介している 9 。
業 務 停 止 を し た 事 例 の ひ と つ は 、 ミ ル ウ ォ ー キ ー 州 の CDCW ( Community
Development Corporation of Wisconsin) で あ る 。 CDCW は 1989 年 よ り ア フ ォ
ー ダ ブ ル 住 宅 の 供 給 を 行 っ て い た が 1999 年 2 月 に 破 産 し た 。1980 年 代 の 後 半 に
公的及び民間分野のリーダー達はアフォーダブル住宅を供給する組織が必要であ
る と し て CDCW を 作 っ た 。CDCW は Wisconsin 市 の 北 側 の 黒 人 が 多 い 貧 困 者 が
集まっている地区で小規模、中規模の集合住宅を修復管理した。建物の傷みが激
し く 、問 題 の あ る 借 家 人 を 多 く 抱 え て い た 。1997 年 ま で に 21 地 区 で 722 戸 の 住
宅 を 開 発 し 、1990 年 代 の 終 わ り に は 25 人 の 職 員 を 抱 え 、年 間 予 算 は 百 万 ド ル を
越 え 、年 に 約 150 戸 の ア フ ォ ー ダ ブ ル 住 宅 を 開 発 し て い た 。し か し 、不 適 切 な 借
家 人 の 選 定 な ど に よ り 管 理 費 が 不 足 し 、民 間 管 理 会 社 と 比 べ る と 給 与 水 準 が 低 く 、
勤務環境が劣っているために職員が辞めていった。新しい開発事業に補助が十分
に 付 か ず 、借 金 が 増 大 し て 市 か ら の 支 援 を 受 け る こ と が で き な く 、1999 年 に 倒 産
した。
ミ ネ ア ポ リ ス 州 の Whittier 地 区 に あ る WHC( Whittier Housing Corporation)
9
Rohe, William M. & Bratt , Rachel G. [2003] Failures, Downsizings, and
Mergers among Community Development Corporations , Housing Policy Debate,
Vol.14, Issues 1 and 2, Fannie Mae Foundation
5
は 、 1994 年 か ら 2000 年 ま で 活 動 し た 。 衰 退 し て い た Whittier 地 区 の 再 活 性 化
す る た め に 1978 年 に Whittier Alliance が 設 立 さ れ 、 12 年 間 に わ た り 集 合 住 宅
を 購 入・改 善 す る 活 動 を 行 っ て き た 。1990 年 に 低 所 得 者 向 け に ア フ ォ ー ダ ブ ル 賃
貸 住 宅 の 供 給 と 社 会 サ ー ビ ス の 供 給 を 行 う 計 画 が 立 案 さ れ 、 別 組 織 と し て 1994
年 に WHC が 設 立 さ れ て 、こ れ ま で 管 理 し て き た 住 宅 158 戸 が 移 管 さ れ た 。し か
し、これらの住宅は大規模修繕が必要で、十分な予算を取ることができずに倒産
した。
職 員 数 が 大 幅 に 削 減 さ れ た CDC も 2 事 例 が 紹 介 さ れ て い る 。
ダ ラ ス 市 は 、 1990 年 代 に 人 口 が 急 増 し た が 、 市 の 南 部 地 域 は 増 加 が 見 ら れ ず 、
こ の 地 域 の 活 性 化 の た め に CDC が 設 立 さ れ 、ダ ラ ス 市 の 支 援 の 下 で 1990 年 半 ば
に は 25 以 上 の CDC が 活 動 し た 。 OCDC( Oak Cliff Development Corporation)
は 、1987 年 に 教 会 が 資 金 を 出 し て 南 ダ ラ ス 地 区 の ア フ ォ ー ダ ブ ル 住 宅 の 供 給 の た
め に 設 立 さ れ た 。低 中 所 得 者 向 け の 持 ち 家 事 業 を 行 い 、93 年 に は 市 と の 契 約 で 1
戸建て住宅供給の事業を開始した。しかし、経験のある職員が退職したり、新規
の開発計画が住民の反対にあったりして、市との契約がなくなり、補助金が削減
さ れ て 、最 盛 期 に は 8 人 い た ス タ ッ フ が 、事 務 局 長 と パ ー ト タ イ ム の 1 人 だ け に
なった。
フ ィ ラ デ ル フ ィ ア 市 は 1990 年 代 に 人 口 が 4.3% 減 少 し た 。市 の 人 口 の 5 分 の 1
は 貧 困 階 層 で あ っ た 。 市 は こ れ ま で CDC の 活 動 を 長 い 間 支 援 し て き て お り 、 65
の CDC が 主 に 貧 困 者 が 集 中 し て い る 市 の 北 部 で 活 動 を し て い て 、
ACDC(Adovocate Community Deveplopment Corporation)も そ の 一 つ で あ る 。
ACDC は 1968 年 に 設 立 さ れ 、71 年 に 始 め て の 住 宅 事 業 を 実 施 し 、そ の 後 は 歴 史
的 地 区 で の 事 業 な ど も 成 功 さ せ 、こ れ ま で の 30 年 間 に 365 戸 の 住 宅 を 完 成 し た 。
これまでの成功の要因は設立者のリーダーシップに負うところが大きかったが、
健康を害して活動ができなくなった。4、5 人の職員がいたが複雑な開発事業を
こなすことができず、新たなリーダーを探したが見つけることができず、次第に
支援を失って職員も減り、現行の事業も行き詰って未完のままとなっている。
こ の William M. Rohe と Rachel G. Brattに よ る 研 究 で は 、 電 話 イ ン タ ビ ュ ー
に よ り 業 務 停 止 、業 務 縮 小 、組 織 統 合 さ れ た 103 の CDCの 事 例( 内 訳 は 業 務 停 止
46、業 務 縮 小 41、組 織 統 合 16)も 合 わ せ て 分 析 し 、業 務 停 止 な ど の 原 因 と し て 、
経験に富んだ事務局長などのリーダーを失うこと、低質な修復住宅などの開発・
管 理 費 を 過 少 に 見 積 る な ど の 開 発 事 業 や 不 動 産 管 理 の 失 敗 、CDCを 支 援 す る き ち
ん と し た 仕 組 み が な い こ と な ど を あ げ て い る 。CDCが 活 動 し て い る 地 域 の 経 済 環
境が悪いことが原因の一つともされるが、このような経済環境でも活動を継続し
て い る CDCも あ る 。活 動 の 対 象 を 低 所 得 者 向 け 賃 貸 住 宅 だ け に 絞 る な ど す る こ と
はリスクが多く、商業開発などある程度活動範囲を広げたほうが良いとしている
10 。
10
Rohe& Bratt [2003]、 p 41-42
6
民間非営利組織の危機
ア メ リ カ の 民 間 非 営 利 組 織 に よ る 住 宅 事 業 に つ い て 、 Koebel[1998]は 、 政 府 の
補助金の削減と住宅事業の過度な複雑性という住宅政策としての問題の他に、非
営 利 セ ク タ ー と し て 下 記 の 危 機 が あ る と し 、 対 応 策 を 列 記 し て い る 11 。
・商 業 化:民 間 非 営 利 組 織 が 小 さ な イ ン フ ォ ー マ ル な ボ ラ ン テ ィ ア 組 織 か ら 、専 門 的
な 事 務 処 理 が 行 わ れ る 企 業 的 な 組 織 に 次 第 に 変 化 し て い る 。住 宅 開 発 事 業 は ビ ジ ネ ス
で あ り 、成 功 の た め に は 熟 練 し た 技 能 と 実 践 が 必 要 と な る 。住 宅 事 業 が 成 功 し 、事 業
継続するに従って組織が変質する。
・ 専 務 理 事( Executive Director)に よ る 支 配 : 専 門 的 な 経 験 が 求 め ら れ 、政 府 と の
契 約 事 務 が 複 雑 に な る に 従 っ て 意 思 決 定 が 理 事 会 か ら 専 務 理 事 に 移 行 す る 。理 事 会 の
構 成 員 が 会 計 や 財 政 、人 事 管 理 な ど の 専 門 的 な 知 識 を 持 つ 人 が 多 く な り 近 隣 住 民 代 表
者 な ど が 減 る 。組 織 の 当 初 の 目 的 を 知 る メ ン バ ー が 少 な く な っ て 、専 務 理 事 が 組 織 の
方向性や使命を決定するようになる。
・組 織 の 拡 大:民 間 非 営 利 組 織 は 当 初 は 低 所 得 者 の 居 住 す る 近 隣 地 域 の 問 題 に と り く
む 小 さ な 組 織 で あ っ た が 、政 府 と の 契 約 に 成 功 し て 住 宅 開 発 を 進 め 、住 宅 管 理 を 行 っ
て 収 入 を 確 保 で き る よ う に な る と 、対 象 地 域 が 拡 大 し 組 織 が 大 規 模 と な っ て 変 質 す る 。
・ボ ラ ン テ ィ ア 精 神 の 喪 失:専 門 性 が 高 ま り 、組 織 が 拡 大 し 、企 業 的 な 体 質 に な る に
し た が い 、ボ ラ ン テ ィ ア を 組 織 化 し て 管 理 す る よ り も ス タ ッ フ を 利 用 す る よ う に な っ
て、民間非営利組織としての特質を失う。
・市 場 規 範 の 優 先:成 功 し た 民 間 非 営 利 組 織 は 、企 業 家 精 神 、効 率 、競 争 、利 益 な ど
の 市 場 規 範 を 優 先 す る よ う に な る が 、こ れ ら は 社 会 的 使 命 と か 慈 善 の 目 的 、ボ ラ ン テ
ィ ア な ど の 非 営 利 の 規 範 と は 調 和 し な い 。組 織 が 破 産 し な い で 運 営 す る 上 で は 一 定 の
収 益 が 必 要 で は あ る が 、過 大 に バ ラ ン ス・シ ー ト を 強 調 す る と 民 間 非 営 利 組 織 と し て
の特色を失う。
・反 対 者 の 取 り 込 み:政 府 か ら の 補 助 金 を 獲 得 し た り 、民 間 の 慈 善 基 金 を 得 る た め に 、
民 間 非 営 利 組 織 は 受 け 入 れ や す い 目 標 と 手 段 を 掲 げ る よ う に な る 。コ ミ ュ ニ テ ィ の 政
治 的 な 活 動 を 維 持 し て い く た め に は 、住 宅 開 発 の 事 業 に か か わ る 組 織 の ほ か に 、コ ミ
ュ ニ テ ィ の 組 織 化 や 強 化 に 取 り 組 む 組 織 が 必 要 で あ る が 、こ の よ う な 民 間 非 営 利 組 織
への資金援助は限られている。
上記のような危機に対する対応策として下記を挙げている。
・社 会 的 使 命 の 重 要 性:民 間 非 営 利 組 織 は 何 よ り も 社 会 的 使 命 が 重 要 で あ り 、市 場 で
は 適 切 に 対 応 で き な い 住 宅 問 題( 低 所 得 者 向 け 住 宅 供 給 、地 域 の 再 活 性 化 な ど )に 対
応 す る こ と が 役 割 で あ る 。事 務 局 長 は 職 員 の 給 与 確 保 に 責 任 を 感 じ 、使 命 を 忘 れ が ち
となるので、理事会が定期的に組織の使命が果たされているか評価する必要がある。
・理 事 会 と 方 針:民 間 非 営 利 組 織 は し ば し ば 、理 事 会 よ り も 専 務 理 事 に よ り 指 揮 さ れ
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Koebel, C. Theodore edit[1998] Shelter and society , State University of
New York Pres、 p254-262
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る 傾 向 が あ る が 、理 事 会 は 専 務 理 事 と 緊 張 関 係 を 維 持 す る べ き で あ る 。理 事 会 の メ ン
バーの一定数以上は入居者と地域住民の代表であることが民間非営利組織としての
留 保 条 件 と さ れ て い る が 、こ の 条 件 に か か わ ら ず に 理 事 会 は 定 期 的 に 組 織 の 使 命 が き
ちんと果たされているか、良好な成果が上がっているかを評価すべきである。
・信 頼 関 係:民 間 非 営 利 組 織 が 必 要 と さ れ る 根 本 的 な 理 由 は 、入 居 者 の 利 益 を 守 り 公
益 を 提 供 で き る と い う 信 頼 関 係 で あ る 。営 利 企 業 が 公 的 な 支 援 を 受 け て 住 宅 を 供 給 す
る よ り も 、民 間 非 営 利 組 織 の 方 が 良 質 な サ ー ビ ス を 提 供 し 、低 所 得 の 居 住 者 の 利 益 を
守 れ る と 期 待 さ れ て い る 。し か し こ れ は 仮 説 で あ っ て 、調 査 等 に よ り 証 明 さ れ た も の
で は な い 。民 間 非 営 利 組 織 は 入 居 者 の 信 頼 を 得 る だ け は な く 、公 的 な 支 援 の 提 供 者 と
も オ ー プ ン で 率 直 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 り 、信 頼 関 係 を 維 持 す る こ と が 必 要 で あ
る。
・フ ィ ラ ン ソ ロ フ ィ ー と ボ ラ ン タ リ ズ ム:時 間 の 貢 献 で あ る ボ ラ ン タ リ ズ ム と 資 金 の
貢 献 で あ る フ ィ ラ ン ソ ロ フ ィ ー は 、民 間 非 営 利 組 織 の 仕 事 に 対 す る 地 域 の 支 持 を 示 す
重 要 な 証 と な る 。政 府 と の 契 約 が 重 要 な 資 金 源 と は な っ て い る が 、こ れ の み に 依 存 す
る の は 誤 り で あ り 、地 域 か ら の 寄 付 と ボ ラ ン テ ィ ア は 、民 間 非 営 利 組 織 が コ ミ ュ ニ テ
ィにとって重要で、賛同する業務をしていることの証明となる。
・組 織 の 多 様 性 :民 間 非 営 利 組 織 と し て の 典 型 的 な 形 態 で あ る CDC、と り わ け 住 宅 事
業 を 実 施 し て い る CDC に つ い て 議 論 さ れ る こ と が 多 い が 、住 宅 に か か わ る 民 間 非 営 利
組 織 に は 、住 宅 供 給 だ け で は な く 、ホ ー ム レ ス へ の シ ェ ル タ ー や グ ル ー プ ホ ー ム 、様 々
な サ ー ビ ス 提 供 を 行 っ て い る 組 織 な ど が あ る 。CDC の 中 に も コ ミ ュ ニ テ ィ の 組 織 化 や
政 治 活 動 を 重 視 し て い る と こ ろ も あ る 。住 宅 建 設 に は 大 き な 資 本 を 要 し 、連 邦 政 府 の
住 宅 補 助 に 依 存 す る こ と と な っ て 、商 業 化 の 悪 影 響 を 受 け る 。住 宅 の 建 設・管 理 を す
る 民 間 非 営 利 組 織 は 、あ る 都 市 や 地 域 で 少 数 の 組 織 が あ れ ば 良 く 、そ の 他 の 民 間 非 営
利組織は住宅建設以外の多様な住宅活動を展開するべきである。
アメリカの民間非営利組織の特徴
アメリカの住宅事業を実施している民間非営利組織は、欧州各国の民間非営利
組織と比較すると下記のような特徴がある。
・住宅建設や経済開発などの多様な活動を含む
住 宅 事 業 を 実 施 し て い る 多 様 な 民 間 非 営 利 組 織 の 中 で 最 も 組 織 数 が 多 い の が CDC
で あ り 、 CDC は 住 宅 の 供 給 管 理 だ け で は な く 、 商 業 ・ 業 務 開 発 や 居 住 者 の 職 業 訓
練、雇用創出などを行っている。
・小規模な組織が多い
住 宅 事 業 を 活 発 に 行 っ て い る CDC の 場 合 で も 職 員 数 は 平 均 10 人 程 度 で 、 多 く の
CDC は 2∼ 3 人 の 職 員 で 運 営 さ れ て い る 。特 定 の 地 域 や 特 定 分 野 の 住 宅 に 限 定 す る
などして、少人数の職員で対応している。
・運営の自立性が高い
民間非営利組織の理事は、地域の居住者や入居者代表者などの民間人が多く、政
府職員や議員などの公的職員がほとんど含まれていない。政府からの一定の支援
を受けているものの運営は自立的に行っている。
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・税控除を利用
住 宅 事 業 に 対 す る 政 府 の 支 援 方 法 と し て 、税 控 除( Tax Credit)を 実 施 し て い る 。
公的な低利融資の制度も一部にはあるが、最も多く利用されているのが低所得者
向け住宅税控除である。
・銀行や企業等とパートナーシップの形成
住宅事業の事業資金として民間の銀行からの融資や、民間企業からの投資資金を
活用している。銀行には地域の活動に融資を義務付ける法律があり、また、民間
企業に対しては税控除を利用して投資を呼び込んでいる。
・インターミディアリィによる支援
民間非営利組織の事業活動に対して、インターミディアリィは事業資金を補助し
た り 、税 控 除 の パ ッ ケ ー ジ 化 を 支 援 し た り 、職 員 の 研 修 事 業 な ど を 実 施 し て い る 。
アメリカの民間非営利組織は住宅事業を実施するに伴ってボランティア的な組
織から、民間企業に類似した組織に変化するなどの課題を抱えながらも、低所得
者への住宅提供やホームレスへの住宅事業で一定の成果をあげている。アメリカ
の住宅政策は基本的には住宅金融制度を整備して持ち家の促進を図ることで実施
されてきたが、低所得者向けの持ち家はサブ・プライム問題に見られるように高
金利でリスクのある事業であり、低所得者向けの社会賃貸住宅事業が必要と思わ
れる。アメリカの住宅政策と同様に日本でも民間非営利組織による住宅事業が今
後は、高齢者やホームレスなどの分野で必要とされ、各地で萌芽が見られる。
本 稿 は 、『 民 間 非 営 利 組 織 に よ る 住 宅 事 業 : 日 本 の 実 態 と 欧 米 と の 比 較 』 2007 年
3 月 、法 政 大 学 人 間 社 会 研 究 科 、博 士 論 文 の 一 部 を 編 集 し て ま と め た も の で あ る 。
* ス ペ ー ス が 許 せ ば 下 記 の 写 真( 2007 年 3 月 、筆 者 が 撮 影 )を 適 当 に 配 置 し て く
ださい。
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シカゴの典型的な公共住宅
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シカゴの公共住宅建て替え事業
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シカゴの路上で施しを求める黒人女性
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