カテーテル関連 尿路感染の予防のための CDC

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2010年1月発行
株式会社メディコン
カテーテル関連
尿路感染の予防のための
CDCガイドライン
1981年にCDCが「尿道カテーテルにおける感染の予防の
矢野 邦夫先生
ためのガイドライン」を公開してから既に28年が経過した。
県西部浜松医療センター 副院長 兼
感染症科長 兼 臨床研修管理室長
その間にカテーテル関連尿路感染を予防するための数々
'81年 名古屋大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院、名
古屋大学病院を経て、'89年 フレッドハッチンソン癌研究所、
の新しい技術の発展や知識の向上がみられ、急性期施設
'93年 県西部浜松医療センター。'96年 ワシントン州立大学感
染症科エイズ臨床、
エイズトレーニングセンター臨床研修修了。
'97年 感染症科長/衛生管理室長に就任。2008年7月より
のみならず長期療養型施設や外来の患者、尿道カテーテ
現職。
ルが長期間必要な患者への対応も必要となってきた。その
ような背景から、2009年11月、CDCは旧ガイドラインを改訂し、
「カテーテル関連尿路感染の
予防のためのガイドライン」*を公開した。ここではガイドラインの要点について紹介する。
尿道カテーテルの適正使用
尿道カテーテルは、
適応となる症例のみに限定して挿入し
(表1)、
必要な期間だけ留置する。
カテーテ
ル留置によって尿路感染を引き起こしやすい患者やそのような感染によって死亡する危険性が高い
患者(女性、
高齢者、
免疫機能障害など)
ではカテーテルの使用を極力抑え、
留置したとしても留置期
間を可能な限り短くする。
臨床現場では、
尿失禁を管理するために尿道カテーテルを使用することが多々見受けられるが、
この
ような使用はしてはならない。
また、
手術患者であっても、
必要な場合に限ってカテーテルを使用するよ
うに努める。留置カテーテルの適応となる手術患者であっても、
術後はできるだけ早くカテーテルを抜
去することが大切である
(24時間以内が望ましい)。
特定の患者においては、
尿道留置カテーテルに替わる手段を検討してみる。例えば、
尿閉や膀胱出口
部閉塞のない協力的な男性患者ではコンドームカテーテルを用いることを考慮する。脊髄損傷患者に
おいては、
長期にカテーテルを留置するよりも、
間欠的にカテーテルを挿入することを考慮する。間欠的
カテーテル法は膀胱を空にする機能が低下している患者では尿道留置カテーテルや恥骨上カテーテ
ル
(恥骨の上の切開を通じて膀胱内に外科的に挿入されるカテーテル)
よりも望ましい方法である。髄
膜脊髄瘤(脊柱の欠損部から脊髄とその膜が突出すること)
や神経因性膀胱障害の小児についても、
尿路が荒廃してしまうことを避けるために間欠的カテーテル法を検討する。
尿道カテーテル挿入のための適切な手技
尿道カテーテル挿入の前後や操作の前後には手指衛生を行う。尿道カテーテルの挿入は無菌的なカ
テーテル挿入と維持についての正しい手技を理解している適切な訓練を受けた者(例:病院職員,
家
族,
患者本人)
のみが実施する。
急性期病院では、
滅菌器材を使って無菌的に尿道カテーテルを挿入する。尿道口周囲の洗浄には
滅菌手袋、
ドレープ、
スポンジ、
適切な消毒薬または滅菌溶液を使用し、
挿入には単回使用の潤滑剤
パケットを使用する。
非急性期施設においては、
間欠的カテーテルを清潔手技(未滅菌手技)で挿入してもよい。清潔手技は間
欠的カテーテルが継続的に必要な患者においては、
滅菌手技よりも実践的な代替法である。
尿道留置カテーテルが移動してしまったり、
尿道を牽引してしまうのを防ぐために、
挿入後はカテーテルを
適切に固定することが大切である。カテーテルの口径については、
膀胱頸部および尿道外傷を最小にす
るために、
十分な排尿を確保できる、
可能な限り最小口径のカテーテルを使用する。
間欠的カテーテルを利用するならば、
膀胱の過膨張を防ぐために定期的に挿入しなければならない。間
欠的カテーテルを使用している患者については、
カテーテル挿入回数を減らすために携帯超音波装置を
用いて尿量を測定してもよい。
尿道カテーテル維持のための適切な手技
尿道カテーテルは無菌的に挿入し、
閉鎖式ドレナージシステムを維持する。無菌操作の破綻、
接続の
切断、
漏れが起きた場合などでは、
滅菌器具を使って無菌操作にてカテーテルと採尿システムを交換
する。カテーテルチューブの接合部が予め接続されてシールされている尿道カテーテルシステムを使
用するのが望ましい。
尿道カテーテルを利用する場合、
尿流を遮らないようにすることが大切である。カテーテルやチューブ
が折れ曲がらないようにしたり、
排尿バッグが常に膀胱レベルよりも低くなるようにする
(但し、
バッグは床
につかないようにする)。
排尿バッグを定期的に空にするときは患者毎に異なる清潔な採尿容器を用いる。
この場合、
尿が飛散
しないようにし、
未滅菌の採尿容器がドレナージの口栓に接触しないようにする。
このような操作を行う
場合は標準予防策を遵守する。
尿道留置カテーテルや排尿バッグの交換については、
定期的な間隔で交換する必要はなく、
感染や
閉塞がみられたり、
閉鎖式システムが障害されたときに交換すればよい。
カテーテル関連尿路感染の予防を目的として、
抗菌薬の全身投与をおこなうことは不適切である
(泌
尿器手術後のカテーテル抜去時に細菌尿がみられる患者などでは適用となることがある)。
また、
カテー
テルが挿入されているときに消毒薬で尿道口周囲を消毒する必要もない。
この場合、
日常的な清潔(例:
毎日の入浴やシャワーでの尿道面の洗浄など)
が適切である。
膀胱洗浄については、
カテーテルの閉塞が予想されない限り
(前立腺手術や膀胱手術のあとに出血
するかもしれないような場合でない限り)、
推奨されない。
しかし、
閉塞することが予想されるならば持続
閉鎖洗浄しても構わない。当然のことながら、
膀胱を抗菌薬で定期的に洗浄する必要はないし、
尿路
ドレナージバッグ内に消毒薬または抗菌薬を日常的に注入する必要もない。
おわりに
尿路感染は医療関連感染の中で、
最も多い感染症であり、
急性期病院から報告されている感染症の
30%以上を占めている。医療関連尿路感染の殆どは尿道に器具が挿入されていることによるものであ
り、
カテーテル関連尿路感染は罹患率、
死亡率、
入院費用、
入院期間を引き上げている。
さらに、
細菌尿
は不必要な抗菌薬使用を誘導しており、
尿回路システムが多剤耐性菌の温床となって、
他の患者への
感染源になることもある。
このようなことから、
適切なカテーテルの利用が求められている。
このガイドライ
ンもまた他のガイドラインと同様に日本の医療施設の感染対策に大きな影響を与えることと思われる。
* CDC. Guideline for prevention of catheter-associated urinary tract infections 2009.
[本文] http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/guidelines/CAUTI_Guideline2009final.pdf.
[付録] http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/guidelines/CAUTI_GuidelineAppendices2009final.pdf
表1
A.尿道留置カテーテルの適正使用
①患者に急性の尿閉または膀胱出口部閉塞がある
②重篤な患者の尿量の正確な測定が必要である
③特定の外科手技のための周術期使用
・泌尿生殖器に隣接する構造で泌尿器科手術または他の手術を受ける患者
・長時間の手術が予想される患者
(この理由のために挿入されるカテーテルは麻酔後回復室で抜去する)
・術中に大量の点滴または利尿剤が投与されることが予想される患者
・尿量の術中モニタリングが必要な患者
④尿失禁患者の仙椎部または会陰部の開放創の治癒を促すため
⑤患者を長期に固定する必要がある
(例:胸椎または腰椎が潜在的に不安定、骨盤骨折のような多発外傷)
⑥必要に応じて終末期ケアの快適さを改善するため
B.尿道留置カテーテルの不適正使用
①尿失禁のある患者または居住者の看護ケアの代わりとしての使用
②患者が自発的に排尿できるときに、
培養またはその他の診断的検査のために尿を採取する手段としての使用
③適切な適応ではない場合の術後長期の使用
(例:尿道または近隣構造の構造的修復、硬膜外麻酔の長期効果)
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