アメリカ合衆国で馬インフルエンザが犬に飛び火 今週の On-line サイエンス誌に発表された論文によると、2004 年 1 月、アメリカ合衆国フロリダ州に あるグレイハウンドのドッグレース場で 22 頭の犬が呼吸器病を起こし、そのうち 8 頭の犬が死亡した。 フロリダ獣医科大学の C. Crawford 博士が感染犬から採取した材料がコーネル大学の Dr. E.Dubovi に送られ、そこでウイルスが分離された。その後アトランタの CDC の Dr. R. Donis をリーダーとして、こ のウイルスの塩基配列ならびに核酸について研究チームが立ち上げられた。これによって、彼らはこ の犬から分離ウイルスが世界に蔓延する馬インフルエンザとして知られる H3N8 型で、その塩基配列 も 96%の相同性があることを明らかにした。この事実は、馬インフルエンザウイルスが種のバリアーを 超えて犬に飛び移ったことを示すものである。2004 年には、米国6州にある 14 のグレイハウンドのレー ス場において呼吸器病が発生した。2005 年には、11 州のレース場のうち 20 のレース場で同様な発生 が起こった。このすべての発生についてのウイルス学的調査は行われていないが、このウイルスによ る発生はどこにもある可能性がある。血清調査によれば、このウイルスは少なくても 2000 年には犬に 存在していたようである。理論的には犬の流行はまた人への新しい侵入の機会を与えることである。今 のところ、人に馬インフルエンザウイルス(H3N8)が飛び火した事実はないものの、CDC の研究者は 病気の犬に接触した人の調査に乗り出し、それによって、人に感染の証拠が認められたら、仮にそれ が症状を伴うものでなくても、大きな赤旗を掲げるだろう。 (出典:Martin Enserink, Science, Sep30, 309, p2147, 2005, 編集子, 2005.11.15. 記) 馬インフルエンザウイルスの犬への伝播 グレイハウンドのレース犬に発生した重篤な呼吸器病から分離された3株のインフルエンザウイルス を分子レベルと抗原性の双方から解析したところ、すべて馬インフルエンザウイルス(H3N8)に近似し ていることが明らかにされた。ウイルスの系統樹解析によると、犬インフルエンザウイルスの遺伝子は 単一の系統樹を形成し、常にひとつの品種間で伝播していることを示していた。このウイルスの赤血球 凝集素の分子レベルでの変異はこの新しい宿主に適応できる進化を示している。このウイルスが犬に 呼吸器病を起こすことは、抗体上昇や実験感染でも支持されている。 このウイルスの地理的拡大と数年間継続しての発生は、グレイハウンド犬の間にこのウイルスが伝播 していることを示すもので、さらに、ペット犬に対しても感染の証拠があることから、今後この感染がペッ ト犬を巻き込む可能性がある。 (出典:Crawford et al, Science, Oct21, 310(5746), p482-485, 2005, 編集子, 2005.11.15. 記)
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