B−PAC 委員の皆様、 E264:申請実験課題名 Feasibility test for the permanent electric dipole moment search of francium atom に関して内容不備の点、ご指摘いただきありがとうございます。現段階での検討内容を 回答いたしますので、再度、ご確認いただければ幸いです。なお、今回新たに開発を提 案しているビームラインの位置が、Proposal 記載のものと異なっておりますが、検討 の過程で、いくつかの境界条件をクリアするために位置を変更しております。 以上、よろしくお願いいたします。 RCNP 酒見 1 長期プロジェクトとして提案する際の全体計画。 目標:フランシウム(Fr)の永久電気双極子モーメント(EDM)を 10-28 e cm の 精度で探索する。これは、現在の測定精度(1.5×10-27)を1桁向上させ、時間反 転対称性の破れ、超対称模型で導入される CP 非保存の位相および超対称粒子の質 量を調べる等、超対称性破れの機構を探る上で必要な精度である。 1.1 全体の予算規模と想定される年次計画。 1.1.1 予算規模は、総額8500万円程度。 内訳は、資料1に示すが、以下の5つの部分に分けて、外部資金を含め て建設費用獲得の努力を行う。最終的な実験装置の配置を資料2に示す。 今回の申請で、①Fr 生成用ビームラインの開発を行う。 項目 必要予算 申請状況 ① Fr 生成用ビームライン ② 実験室へビームライン延長 1100万 プロジェクト申請検討 ③ 磁気光学トラップ装置 5550万 外部資金申請検討 ④ レーザートラップ装置 530万 科研費(萌芽)申請中 ⑤ 検出器 380万 外部資金・実験申請検討 470万 本申請 1.1.2 年次計画∼6年計画 EDM 探索は、超対称粒子の直接検証をめざす高エネルギー実験が稼動し、 実験データを出し始める前に行うことが重要と思われる。LHC@CERN が2007∼2009年頃に運転開始し、続いて Linear Collider 計画が 進展していくことを考慮すると、6年程度を目安に Physics Output をだ せるような年次計画とする必要がある。実験の Strategy を資料3に示す。 年次 項目 2005年 Fr 生成用ビームライン開発。 主に装置設計・開発、実験の1部遂行(E264)。 平行してトラップ装置の設計。 2006年 Fr が所定の収量でることを確認・実験(E264)。 実験結果をふまえてプロジェクト申請。 トラップ装置のオフラインでの実験開始。 2007年 実験室へのビームライン延長(プロジェクト採択後) トラップ装置等、すべての実験装置を実験室に配置。 2008年 Phase1:Fr 測定精度 EDM の測定。 2週間の測定。 8×10-28 をめざす。18O ビームでの測定。 平行して 19F ビームの引き出し、あるいは、磁気 光学トラップの捕獲効率の向上を検討。 2009年 Phase2:Fr 測定精度 19F EDM の測定。 1.4×10-28 2週間の測定。 をめざす。 ビーム、あるいは、捕獲効率をあげた MOT を 使用する。 2010年 データ解析。 なお、この6年間の測定は、放射線管理上の枠内(AVF からの重イオン ビーム:6 puA 以下)での測定を想定している。 Phase2 を終え、EDM 探索実験の結果、および、高エネルギー実験によ る超対称粒子探索の実験現状をふまえて、さらに、精度を高めて測定す ることに意義がある場合は、放射線管理室、加速器グループ、研究企画 室等と放射線管理変更申請の可能性を議論・相談のうえ、Phase3 として、 イオン源で最大ひきだせるビーム強度での探索実験を検討する。 1.2 物理的な結果を得るまでの全マシンタイム日数。 4週間@Data Production Run+2週間@開発実験=合計6週間/6年間。 その内訳は、資料3に示すとおり、以下の2段階で実験技術の蓄積を行いなが ら行う。 ① Phase1:2週間測定 z 現在の電子 EDM の測定精度をさらに向上させる。(8×10-28) z Surface ionizer、イオンガイドの設計パラメータの最適化により、所 定の測定精度を実現。 z SUSY で予想される CP の破れの位相角が大きい場合の EDM 探索。 ② Phase2:2週間測定 z 放射線管理の制限範囲内で行える最高精度の EDM 探索を行う。 z 目標精度は、1.5×10-28 。 z 19F ビームの加速か、あるいは、磁気光学トラップ中での中性原子捕 獲効率の向上により、所定の精度を実現する。どちらの方式を選択す るかは、加速器グループとの相談により、判断する。 z SUSY で予想される位相角が小さい場合、あるいは関与する超対称粒 子の質量が重い場合の EDM 探索。 想定している6年間で、上記4週間以外に、ビーラインの調整等、基幹装置の 技術開発として、2週間程度のマシンタイムは必要と思われる。 1.3 全体計画と今回の申請の関係。 資料2の図に示すように、今回の申請では、①Fr 生成用ビームラインをリン グ本体室に建設し、所定の測定精度を得るために必要な収量の Fr が得られる ことを確認する。予算項目の全体計画との関係は、資料1に示すとおりである。 今回の申請で建設する装置を、全体計画の中で最大限そのまま活用できるよう な設計にする。 全体計画としては、コンクリートシールドの先にある西実験室に①で建設した ビームラインを②延長し、③磁気光学トラップ装置、④レーザートラップ装置、 ⑤検出器を西実験室大扉横のスペースに配置することを検討している。 なお西実験室に測定装置を配置するのは、Fr 生成の際に融合反応で放出され る数 MeV 程度の中性子、ガンマ線などのバックグラウンドから EDM 測定用 の検出器、トラップ装置を保護するためである。 プロジェクトが認められた段階で、ビームライン延長、ロータリーシャッター 等の放射線管理上の基盤設備を整備する。また外部資金等の獲得により、EDM 探索のためのトラップ装置、検出器が整備された段階で、Phase1 の実験遂行 の条件が整う。 1.4 長期プロジェクト申請予定について、申請者の計画。 以下の2つの条件がクリアされた段階で、プロジェクト申請を行う。 時期としては、1.2 節で記述したように、来年度2006年度の B-PAC への提 案を目指す。 ① 所定の測定精度に必要な Fr 収量を得る見込みを確認する。 (本申請) ② トラップ装置に要求される仕様をつめて、開発に見通しがたつ。 実験施設(ビームライン)等のインフラ整備にかかわる費用は、RCNP のプロ ジェクト予算にて、また、トラップ装置等は、RCNP の通常の共同利用には活 用しにくい装置でもあるので、外部資金での整備を最大限努力する。 予算項目⑫の磁気光学トラップ用レーザーが5000万円程度であり、非常に 高額である。現在検討しているレーザーは、東実験室におけるレーザー核分光 等の実験提案でも、これまでに要求があった物品であり、該当研究グループ同 士での共同利用体制も考慮して、継続して購入方法を検討する。また、このト ラップレーザー光を、比較的安価な半導体レーザーで実現できないか、あわせ て検討中である。 資料1 必要予算総額(案):今回申請する予算項目は、下表の青色部分。フランシ ウム生成用ビームライン開発部分となる。 0 0 1 1 Function Equipments Contents Fr Surface W rod, extraction cost ionizer This proposal electrode, heater Vacs メタル electrostatic lenses, 1 2 Fr beam line KT \2,400,000 This proposal beam pipe, frame 1 Power Power supply supply and control 3 contact 日本 \750,000 production Budget サイエンス \400,000 This proposal \1,000,000 This proposal \150,000 This proposal 高砂 Vacuum 1 4 Pump system 1 5 detector silicon detector 1 合計 \4,700,000 2 beam line rotary extension shutter 6 2 7 2 8 shield \5,000,000 Project apply \1,000,000 Project apply \2,000,000 Project apply \3,000,000 Project apply Vacuum system 2 9 Control 2 合計 \11,000,000 vacuum 3 10 MOT chamber \2,000,000 外部資金 ホリゾン \500,000 外部資金 タカノ技研 \50,000,000 外部資金 Coherent \3,000,000 外部資金 メレスグリオ chamber 3 11 coil coil for MOT 3 12 trap laser Ti-sapphire laser optical mirror, beam 3 13 elements expander, bread board 3 合計 \55,500,000 Science 4 14 Laser Trap 科研費(萌芽) chamber \300,000 chamber ホリゾン 申請中 科研費(萌芽) 4 15 trap laser fiber laser \3,000,000 Keopsys 申請中 4 4 合計 16 Vacuum ion pump etc.. \2,000,000 \5,300,000 外部資金 CCD 5 17 外部資金・ detector \300,000 camera Silicon 5 外部資金・ 18 \200,000 detector 共同利用 photon 5 SONY 共同利用 外部資金・ 19 \300,000 detector 浜松 共同利用 外部資金・ 5 20 DAQ system computer, electronics \3,000,000 GND 共同利用 5 合計 総計 資料2 \3,800,000 \80,300,000 実験装置全体図(案) :今回の申請では、①で示したビームラインを開発する。 ③④⑤のトラップ装置、検出器等は、西実験室に配置することを検討中である。 資料3 EDM 探索の長期計画(案) :2010年までに、測定精度 10-28 を目指す。 下図で Phased2 までを実現する。その際、19F ビームの加速あるいは磁気光学トラップ 装置の原子捕獲効率向上のどちらかの技術を選択する。 2 Fr の収量が SUNY を一桁上回ることができる定量的根拠。 SUNY における中性 Fr 原子の収量は、MOT に入射させる前で(Neutralizer から 放出されるフランシウム原子) 、106 個/s である。今回、EDM 探索に必要な収量は、 Phase1 において 107 /s 以上、Phase2 で 108 /s 程度である。SUNY での 18O のビーム 強度はターゲット上で 0.2puA である。今回建設中の超伝導 ECR イオン源は、理研と ほぼ同型のものを開発しているが、イオン源から 80puA 以上のビーム強度の実績があ る。イオン源からリング本体室までのビーム透過効率を考慮して、放射線管理の限界: 6 puA までビームをターゲット上に伝送することが、原理的には、可能と考えられる。 ビーム強度がSUNYに比べて30倍になるのが、Fr収量を増加させる大きな要因で ある。以下に、収量評価の概略を記述する。 RCNP で予想されるフランシウム原子の収量を以下の要領で評価した。 ① 18O+197Au→2xxFr+xn、および 19F+198Pt→2xxFr+xn の融合反応の断面積を、 統計モデル計算(計算コード:PACE2/4 を用いた)にて評価した。結果を 資料4に示す。この断面積から、ビームが表面イオン化器(Surface Ionizer) 標的中でとまるまでに生成されるフランシウムの数を評価する。 ② 表面イオン化器において、生成されるフランシウム(1価)のイオン化効率 は、資料5に記載してある Langmuir-Saha の式に従う。結果は、資料5に 示すように、想定している Ionizer の物質では100%に近い。 ③ Surface Ionizer から生成されたフランシウムイオンが、ひきだされて、静 電レンズによるビーム伝送系をとおり、Neutralizer で中性フランシウム原 子となるまでには、資料6上図で示す各構成要素の効率がかかってくる。 (ⅰ)イオン化効率∼②で評価 (ⅱ)引き出し効率∼SUNY での実績値を入力。 (ⅲ)フランシウムイオン透過率∼SUNY の実績値を入力 る損失(真空度)∼ⅲに Include 率∼SUNY の実績値を入力 (ⅳ)残留ガスによ (ⅴ)Neutralizer での中性原子引き出し効 (ⅵ)トラップ装置の原子捕獲効率∼これは、磁 気光学トラップ装置での中性原子捕獲・冷却効率と、レーザートラップ装置 への伝送効率から構成される。これらの効率は京大のトラップ装置から評価 される数値を入力した。SUNY のトラップ効率が、Phase1/2 と比較して大 きいのは、磁気光学トラップ装置のみでフランシウムを捕獲しているために、 レーザートラップ装置への伝送効率がかかっていないのが理由である。 ④ これらをすべて考慮して評価した結果が、資料6で示す表である。青で囲ん だ部分が、RCNP における Phase1/2/3 各構成での収量、およびこの評価の 手続きにより SUNY で予想される収量を示す。SUNY の実績値 106 /s と比 較して本評価では30%程度低く見積もっているが、期待される収量評価の 目安になると考えられる。 ⑤ この結果により、Phase1 では、3.4×107 /s、Phase2 では 9.6×107 /s の収 量が見込まれ、ほぼ所定の精度を実現する必要条件は整うと考えられる。た だし、Phase2 実現の条件は、19F ビームの加速、あるいは、磁気光学トラ ップ装置の原子捕捉効率の向上が必要である。 資料4:統計モデル(PACE4)による融合反応の断面積。 資料5:Surface Ionizer でのイオン化効率。 資料6:フランシウム原子の収量評価。青で囲んだ部分が中性フランシウム原子の 収量の比較。Phase1 では、3.4×107 /s、Phase2 では 9.6×107 /s。SUNY は、この評 価では、7.1×105 /s となる。
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