心臓血管外科 - 倉敷中央病院

Update:2016.8.10
心臓血管外科専門研修プログラム
昨今の医療を取り巻く状況は厳しく、本
当に手術ができる医者をどう育てるかが重
要です。外科医を志すものはだれもが、早
く執刀医として活躍できることを夢見てい
ると思います。しかし、心臓血管外科は手
術のエラーが患者の生命に直結するので、
若手医師が執刀医となるのは容易ではあり
ません。そのひとつの理由は、一施設あた
りの症例数が少ないことです。当院では、
心臓大血管手術は約 400、末梢の血管手術
が約 300 と豊富な症例数があり、3 年間の
プログラムで簡単な心臓手術から腹部大動脈瘤の術者を務めることを目標としています。緊
急手術も多く、仕事は厳しいですが、達成感のある仕事です。意欲ある人間は是非チャレン
ジしてください。
【概要】
主任部長
小宮 達彦
医師数
12 名
(スタッフ 5、専修医 1、シニアレジデント 6)
1 日平均入院患者数
33 名
(心臓血管外科専用の集中治療 CCU-S 10 床)
年間手術数
970 件(2015 年実績)
心臓大血管手術 482 例(虚血性心疾患 114 例、弁膜症 197 例、大血管 232 例 うちステン
トグラフト 91 例)をはじめその他血管手術も非常に多くバラエティーに富んでいます。
循環器内科と合同で循環器系の緊急疾患(急性心筋梗塞、急性大動脈解離、大動脈瘤破裂、
急性動脈閉塞)に 24 時間(当直制)対応しています。(年間緊急手術数:167 例)
【一般目標】
心臓血管外科専門医として必要な基本的な
考え方、および基本手技を習得すること。
【行動目標】

患者の全身評価ができること。

手術適応を理解し、適切な治療方針を立て
ること。

循環動態を理解し、術後管理、緊急蘇生が
できるようになる。

基本的な血管吻合技術をマスターすること。

簡単な心臓手術や腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症の術者ができること。
【研修スケジュール】
年間受け持ち患者数:約 80 名、年間手術参加数:約 160 例
1 年目
2 年目
3 年目
開胸
10 例
20 例
30 例
開腹
5例
10 例
10 例
15 例
25 例
Cannulation
大伏在静脈グラフト採取
20 本
20 本
15 本
内胸動脈グラフト採取
血栓除去
2例
3例
3例
1例
2例
15 例
20 例
20 例
20 例
IABP 挿入
血管吻合
5例
内シャント:術者
腹部大動脈瘤:術者
5例
下肢バイパス術:術者
5例
【週間スケジュール】
8:00~9:00
9:00~9:15
9:30~
月
抄読会
CCU カンファレンス
手術、術後管理
火
合同カンファレンス
病棟回診
手術、術後管理
CCU カンファレンス
水
術前カンファレンス
CCU カンファレンス
手術、術後管理
木
研究会
CCU カンファレンス
手術、術後管理
金
術前カンファレンス
CCU カンファレンス
手術、術後管理
土
CCU カンファレンス
病棟回診
日
CCU カンファレンス
*夕方 18 時ごろ、イブニンググラウンド(月~金)
スケジュールでは 8 時からになっていま
すが、カンファレンスの前に CCU や病棟
の患者さんの状態を把握する必要があり、
実際には 8 時以前から仕事が始まります。
術前カンファレンスでは患者さんの状態、
治療方針、手術の術式を説明します。情報
収集不足や CT や血管造影の読影の誤りを
指摘されたりすることもありますが、自分
が執刀医になるつもりで、誤った治療を行
わないようにしてください。CCU カンファレンスは術後の経過の説明、治療方針を説明し
ます。誤った判断が、患者の状態を悪化させ、死亡につながる可能性もあります。心臓外科
では手術が重要なことはもちろんですが、術後管理などでも正確、迅速な判断力、治療技術
が常に求められています。手術室に入れば手術に専念します。病棟、CCU の患者は病棟医
が治療を継続します。夜の帰宅の時間は特に決まっていません。仕事を積み残して毎晩帰宅
が遅いレジデントも見受けますが、明日の仕事に備えて、早い帰宅を奨励しているのですが
…。術直後の患者には土日は関係ありません。土日も半数の医師が出勤しカンファレンス、
病棟回診を行っています。
※当科でのチーム医療について
当科では完全チーム医療制をとっています。事務作業等があるため、便宜上主治医(担当
医)は設定していますが、単独で治療方針を決定する権限はありません。治療方針の変更は
必ず、チームディスカッションで行うこととしています。夕方は、チーム全員で治療方針の
検討を行います。こうして、担当医の経験年数に関係なく、常に良質な医療を提供すること
ができます。また、ディスカッションを通じて、経験の浅い医師に対する有効な教育ができ
ると考えています。昼間は手術に入ったり、当直明けは午後休みがあり、週末は交代で休み
を取りますが、このために患者さんの治療が滞ることはありません。経験年数の一番上のリ
ーダーが常に方針を決定するのではなく、みんなが意見を出し合って、最善の方策を探るを
よしとしていますので、シニアレジデントの意見が採用されることは少なくありません。
※指導体制

小宮 達彦(主任部長、京都大学 S59 卒)胸部外科指導医、心臓血管外科専門医、外
科専門医

恒吉 裕史(部長、鳥取大学 H6 卒)心臓血管外科専門医、外科専門医

島本 健(医長、京都大学 H7卒)心臓血管外科専門医、外科専門医、循環器専門医、
ステントグラフト指導医
【専門医の取得】
心臓血管外科の専門医を取るためには、外科専門医(卒後 5 年以上)を取得しており卒後
7 年以上、執刀経験 50 例が必要です。したがってシニアレジデントの期間は心臓血管外科の
経験を積みながら、外科専門医の資格を取ることが目標となります。外科専門医申請に必要
な単位を取るために、シニアレジデント研修期間中に、外科、呼吸器外科での研修を行う必
要があります。2018 年以降に新専門医制度が開始、新たに 5 年間の連動型外科・心臓血管
外科プログラムが設置される予定です。これは当院での現行の研修制度とほぼ同じ内容です。
シニアレジデント終了後に専門医取得を目指した専攻医コースをすでに設置しています。こ
れにエントリーする条件は、外科専門医筆記試験合格に加えて、当院で定める Stage3 相当
の技能を有すること、筆頭論文 2 編、所定の学会発表経験としています。
※臨床研究
全国学会発表を年 2、3 回。英語に秀でていれば、国際学会での発表もできます。論文は少
なくとも年1編書いてもらいます。専門医の取得には論文が 3 編必要です。臨床研究は新し
い手術方法を取り入れながら、治療方法の妥当性を科学的に検証する作業であり、当科での
重要な仕事の一つです。忙しい臨床の合間にデータ整理、解析を行っています。2014 年の当
科での臨床研究の実績ですが、学会発表は 39 回(全国学会 38 回、国際学会 1 回)
。論文は
2015 年 11 編(英語 3 編)2014 年 17 編(英語 9 編)でした。
※レクリエーション
夏のバーベキュー大会では、バスをチャーターし(飲酒運転にならないように)網焼き、
流しそうめん、手作りカレーなど食べきれないほどの料理と鮎つかみなどのイベントがあり
ます。冬は伝統の 1 泊スキー旅行で、温泉つきの宿に泊まったりしてエンジョイします。人
数の少なかったときは、途中で呼び戻されることもありましたが、最近は緊急当番を残して、
安心して参加できるようになりました。
学会中、昼間は朝から夕方まで参加して、学会報告ができるようにしなければなりません
が、夜は解放されたようにお酒を飲んだり、若い人はエンジョイしているようです。毎年、
11 月には倉敷 OB が集まる研究会も楽しいひと時です。隔年で広島、熊本など遠方で開催さ
れます。
【将来の進路】
研修 3 年目の段階で、進路について相談します。
* 外科専門医取得者は専攻医コース(2 年)で心臓血管外科専門医取得を目指す
* 大学医局入局
* 他の病院での研修
【研修期間】
3 年間