化学英語2:英語論文作成技法 (第6回)

化学英語2:英語論文作成技法
(第6回)
鈴木良尚
期末試験について(再々)
• 2010年2月4日(木)実施予定
• 基本的に毎回の小テストからのみ出題
• 小テスト問題(解答なし)は
(http://www.chem.tokushimau.ac.jp/B2/TamuraLab/H21CE2minitest.ht
ml:学科ホームページ→研究室紹介→物質
機能化学講座→田村・鈴木グループ→研究
室のメンバー→鈴木良尚)に公開する
• 持ち込み不可(もちろん電子辞書も)
• 集中して授業を聴いてください
予定
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ガイダンス
英語で論文を書くということ
名詞の種類・冠詞
冠詞の例外的用法
和文の中の隠れた主語
単数・複数の区別
「∼と考えられる」「∼と思われる」の英語表現
能動態で書く!
現在完了形・過去形の区別
動詞の特徴・効果的変換
関係代名詞
否定表現
数学表現
語順
否定表現
any~notは誤用である その1
• 大気汚染を防止するために、いかなる措置もとら
れなかった。
• (No) measures were taken to prevent air
pollution.
• 「いかなる」→anyとして(誤)Any measure was
not taken to prevent air pollution.とするのは、
誤用→anyがnotの前に出てはいけない
• (誤)No measure was taken to prevent air
pollution.→これもまちがい→単数しか考えられ
ない場合にはこれでもいいが、今は複数のものご
とが考えられるため複数でかかないといけない。
否定表現
any~notは誤用である その2
• 報告されている条件下では、どの反応物につい
ても加水分解は認められなかった。
• Hydrolysis was (not) observed for (any) of the
reactants under the conditions reported.
• anyがnotの前に出てはいけない→否定の意味は
できるだけ早く伝えるため
• バイオチップは、従来のシリコンチップを代替しな
いと考えている研究者もいる。
• Some researchers do (not) think that biochips
will replace conventional silicon chips.
否定表現
部分否定は難しくない その1
• 基板の破損によって遊離したインジウム原子の
すべてが、表面に偏析しているわけではない。
• (Not all) the In atoms liberated by substrate
disruption are segregated to the surface.
• 日本語の部分否定表現はスマートでない。
• ほかにnot every, not both, not necessarily, not
alwaysなどがある
• 全否定の場合には
• (None) of the In atoms liberated by substrate
disruption (are) segregated to the surface.
否定表現
部分否定は難しくない その2
• (単数を意識した場合の全否定)応募者の誰一人
として、私がほしい人材ではない。
• (None) of the applicants (is) the person I want.
• 薄膜ヘッドの高周波性能は、磁壁の運動により
必ずしも制限されるわけではない。
• The high-frequency performance of thin-film
heads is (not necessarily) limited by domain
wall motion.
否定表現
notの位置に気をつけよう
• このことは、蓄積領域Aで終わる電束の大部分は、
ドレイン電極ではなく空乏領域Bから生じているこ
とを意味している。
• notは通常、動詞や助動詞の後につくことが多い
ため→(誤)This means that a large part of the
electric flux that terminates in accumulation
domain A does not originate from the drain
electrode but from depletion domain B.
• This means that a large part of the electric flux
that terminates in accumulation domain A
originates (not) from the drain electrode (but)
from depletion domain B.→正解
否定表現
迷う否定表現 その1
• これらの条件下で紙の芯はつぶれたり、劣化した
りしない。
• The paper core does (not) collapse (or)
deteriorate under these conditions.
• The paper core does (not either) collapse (or)
deteriorate under these conditions.
• The paper core (neither) collapse (nor)
deteriorate under these conditions.
• (誤) The paper core does not collapse and
deteriorate under these conditions.→うっかり
書いてしまうことが多い誤用
否定表現
迷う否定表現 その2
• 雪が降って、初めて山火事は弱まった。
• (It was not until) the arrival of snow that the
forest fires lost their strength.
• この英文はいわゆる強調構文となっている→次
のように普通の構文で書くこともできる
• (Not until) the arrival of snow the forest fires
lost their strength.
• 「なにをどう否定するのか」をはっきり意識するこ
と&否定する言葉をできるだけ文の前方に持って
くる原則があることを忘れない
数学表現
微分する
• 式(2)を時間に関して微分すると式(3)が得られる。
• (Differentiating) eq. (2) with respect to time gives
eq. (3).
• (Differentiating) eq. (2) with respect to time, we
obtain eq. (3).
• with respect to は、できるだけ使用しないことがす
すめられているが、微分の場合には慣用的に用い
られる
• giveのかわりにyieldを用いても良い
数学表現
積分する
• 空乏層の幅全体にわたって再結合速度を積分する
場合、空間座標yを半導体ポテンシャルφで置き換え
ると便利である。
• When the recombination rate (is integrated) over
the depletion layer width, it is convenient to
replace the spacial coordinate y with the
semiconductor potential φ.
• 「部分積分する」→integrate by parts
• 「x1からx2までyを積分する」→integrate y from x1
to x2
数学表現
∼乗する
• 分子が15のサブユニットの長さがあり、サブユニット
に4つの異なった型があるとすると、可能な配列の
数は4の15乗になる。
• If a molecule is 15 subunits long and there are
four different types of subunits, then the number
of possible arrangements is four (raised) to the
15th power.
• 「Aをx乗する」→raise A to the power of x, or raise
A to the xth power
数学表現
まとめる その1
• 式(1)~(5)をまとめると、次式が得られる。
• (誤)Combining eqs. (1) ~ (5), the following
equation is obtained.
• →懸垂分詞と呼ばれ、誤用の多いパターンの一つ
• 分詞構文では分詞構文の主語と、主文の主語は一
致しなければいけない
• →懸垂分詞が許される慣用表現がある
• 写真は光学顕微鏡で撮影した
• The photo graph was taken (using) an optical
microscope.
• (using)のかわりにwithでもよいがbyはだめ
数学表現
まとめる その2
• 式(1)~(5)をまとめると、次式が得られる。
• (Combining) eqs. (1) ~ (5) yields (gives) the
following equation.
• (Combining) eqs. (1) ~ (5), we (one) obtain(s)
the following equation.
• 「まとめる」に近い、「整理する」には、rearrangeを用
いる
• よく用いる懸垂分詞として、他にassumingがある。
数学表現
展開する
• 電流が流れていない各領域では、スカラーポテン
シャルはラプラス方程式を満足し、球面調和関数の
級数に展開できる。
• In each electric current-free region, the scalar
potential satisfies Laplace’s equation and can
(be expanded) in a series of spherical harmonics.
• free from, free ofで「何かがない」を表現できる
• これらの装置は、選択性エピタキシャルシリコンを必
要としており、このシリコンは欠陥がほとんどない。
• These devices require selective epitaxial silicon,
which is nearly (free from) defects.
数学表現
代入する
• 式(5)を式(3)に代入すると、結晶場エネルギーA, B
が得られる。
• (Substituting) eq. (5) into (for) eq. (3) gives the
crystal field energies A and B.
• (Replacing) eq. (3) by (with) eq. (5) gives the
crystal field energies A and B.
• substituteとreplaceで目的語が逆さになっているの
に注意
• The crystal field energies A and B are given
(obtained) by (substituting) eq. (5) into (for) eq.
(3).とも書ける
数学表現
∼を∼とする
• キャビティーの主半軸と副半軸をそれぞれa, bとし、
x1x2平面の単位面積当たりのキャビティーの数をη
とする。
• (Let) a and b (be) the major and minor semiaxes
of a cavity, respectively, and (let η denote) the
number of cavities per unit area of the x1x2 plane.
• 英語論文では記号は式の後に説明することが多い
→The ballistic condition is given by <E> = e∆V
where <E> is the average energy of the
distribution and ∆V is the magnitude of the
voltage dropped.
数学表現
日本人が犯しやすい間違い
• 最大温度Tcは、 Tc = t2 / uとなる。
• (誤)The maximum temperature Tc is obtained as
Tc = t2 / u.
• obtainにこのようにasを使う表現方法はない→be
written as, be expressed asのような表現がよく使
われるから??
• The maximum temperature Tc is (written
(expressed)) as Tc = t2 / u.
• The maximum temperature Tc is (given) by Tc =
t2 / u.
仮定法
反現実を仮定する その1
• 日本人の論文では仮定法はほとんどない→ネイティ
ブの論文ではたまに見られる→表現に幅が持てる
• 放射能がなければ、核エネルギーで動く心臓は理
想的なのだが。
• A nuclear-powered heart (would be) ideal (if it
were not for) radiation.
• 仮定法過去→現在は成立していないことを条件に
設定→その条件下で導かれることについて述べる
• 鳥になって空を飛びたいなあ。
• (If I were) a bird, (I could fly) in the sky.
仮定法
反現実を仮定する その2
• 反現実的条件の仮定文は、かなわぬ願望を表現す
るだけではない
• 世界中の電話会社は、電話の転送や会議のような
色々な電話サービスに関連したコードやプロトコル
を使用している。OSI標準がなければ、このような
サービスは不可能であろう。
• Telephone companies around the world use
codes or protocols related to various telephone
services such as call forwarding and
conferencing. (Without) the OSI standard, such
services (would be) impossible.→if節を用いなくて
も表現できる
仮定法
現在は成立していない条件を設定する
その1
• これらの計算を行えば、同じ結果が得られるであろ
う。
• (If) we (performed) the calculations, we (would
obtain) the same result.
• この文章では「計算を行う」ことは将来の可能性とし
てゼロではない
• 将来は成り立つ可能性がある条件の仮定文→科学
論文では、むしろこの用法の方が多く使われる
仮定法
現在は成立していない条件を設定する
その2
• 適切な刺激策が導入されれば、産業はより効果的
な役割を果たせるであろう。
• (If) the proper incentives (were introduced),
industry (could play) a more effective role.
• もっと軽いエンジンと冷却システムがあれば、このメ
タノール車の他の部品を軽くすることができるであろ
う。
• (With) a lighter engine and cooling system, it
(would be) possible to lighten other parts of the
methanol vehicle.
仮定法
were to不定詞→未来の低い可能性
• ナイジェリアの人口が、万一この割合でこれから140
年間増加すれば、今日の世界人口と同じになる。
• (If) Nigerian population (were to increase) at this
rate for the next 140 years, it (would be) equal to
that of the whole world today.
• 日本語で言ったら「仮に∼すれば」「万一∼すれば」
仮定法
条件節のない仮定法過去
• 仮定法過去は、可能性、推量、婉曲などの意味で条
件節なしで用いられることがある
• これらの測定を、9~25個の原子を有するクラスター
まで拡張するとおもしろいであろう。
• It (would be) interesting to extend these
measurements to clusters with nine through 25
atoms.
• 言外に「拡張はしていないが、仮に拡張したら」とい
う意味が含まれている
仮定法
過去の事実とは異なる条件設定
その1
• 仮定法過去完了→過去の事実とは異なる条件を設
定し、そこから導かれることを記述する
• 1988年の火事は、最初の段階で抑えていたら、猛
威をふるわなかったであろう。
• The fires of 1988 (would not have raged)
furiously (if) they (had been suppressed) at the
first stage.
過去の事実とは異なる条件設定 その2
仮定法
• 図1の上の曲線に見るように、熱交換器が大きいと定格燃
費は下がるが、熱交換器をさらに大きくしても、システムエ
ネルギー性能はわずかしか改善しなかったであろう。
• As shown in the upper curve in Fig. 1, the larger
regenerators yielded lower specific fuel consumption
values, but it is clear that further (increases in)
regenerator size (would have yielded) a slight
improvement in system energy performance.
• 構造方程式(3.28)を用いていなかったら、この研究におい
ては間違った結果が得られていたであろう。
• (If) the constitutive equation (3.28) (had not been
used), wrong results (would have been obtained) in
this work
仮定法
仮定法現在は動詞の原形を用いる
• 可能な場合はいつでも、陽極酸化皮膜をほどこした後で、
これらの異種の金属を挿入することをお奨めする。
• (It is recommended that) whenever possible, these
dissimilar metals (be inserted) after the anodized
coating has been applied.
• 設計技術者がこれらのモーターの全能力を活用するには、
正確に故障を予測する技術が利用できることがきわめて
重要である。
• In order for the design engineer to utilize the full
capabilities of these motors, (it is essential that)
techniques for accurate failure prediction (be
available).
仮定法
時制の一致の原則が成立しない仮定法
• Zenerは、反応を進めるのに利用できる全自由エネ
ルギーが、ラメラ間の界面の形成に仮に使われるよ
うな場合に達成できる間隔について検討した。
• Zener considered the spacing that (could be
achieved) if all the free energy available to drive
the reaction (went) into the creation of the
interfaces between lamellae.
語順
bothのすわりどころ
• 2つの結晶は、同じ構造を有している。
• (誤) The both crystals have the same structure.
• 冠詞は一番前におくのが原則だが、both, all, such
は冠詞を後に置く
• (Both (the)) crystals have the same structure.
• both→2つの結晶をまとめて捉えている
• the two→2つの結晶を別々に捉えている
• 2つの分布の間には、密接な関係が見られた。
• (誤)A close relationship was found between
both distribution.→2つの分布の関係を問題にして
いる→当然別々のものとして捉えられている
語順
such theはない
• such の場合、such the ~となることはない→such
a ~はあるが→one, two, severalなどと使うときは、
one suchなどとなる。。
• このようなデバイスの一つである4Xは、IRCAMに
おいて使用されている実時間デジタル信号処理装
置のシリーズの第4世代である。
• (One such) device, the 4X, is the fourth
generation in a series of real-time digital signal
processors used at IRCAM.
as (so, too) + 形容詞 + a
語順
• たいていの化学者は、触媒作用の本質は、今日において
もファラデーの時代と同様、大きな謎であると感じている。
• Most chemists feel that the essence of catalytic action
is (as great a mystery) today (as) (it was) in Faraday’s
time.
• この要件のため、4気筒エンジンと6気筒エンジンでは問題
が生じる。これらのエンジンでは、最適な位置は良好な制
御をするには温度が低すぎる場合がある。
• This requirement poses a problem in 4- and 6-cylinder
engines, where the optimum location may have (too
low a temperature) for good control.
語順
tested partsかparts testedか
• 試験した部品は、14マイクロインチ仕上げした直径1/2イン
チの鋼製マンドレルであった。
• (The parts tested) were ½ in. diameter steel mandrels
with a 14 micro inch finish.
• the parts testedはthe parts that were testedの省略とし
て考えるとわかりやすい
• 過去分詞の位置は、過去分詞の性質により異なる
• 一時的な動作や状態を表す場合→名詞の後ろに→the
obtained dataよりthe data obtained, …
• 形容詞化している場合→名詞の前に→a used car
語順
動詞と目的語の間には副詞を置かない
• データは、我々のブレンドに大規模な相分離が存在してい
ることを強く支持している。
• The data (strongly) support the presence of largescale phase separation in our blends.
• (誤)The data support (strongly) the presence of …
• (例外)They describe in the last article in Volume 175,
a method for doping activators into ZnS crystals under
the action of an electric field.(彼らは、Vol. 175の最後
の論文の中で、電場の作用下でZnSに活性剤を注入する
方法について述べている。
• →目的語に長い修飾語句がついたために、文末に持って
くるとわかりにくくなるから
語順
onlyの位置には注意しよう
• 液滴の変形度は、レイノルズ数だけの関数である。
• The degree of deformation of the droplet is a function
(only) of the Reynolds number (of the Reynolds
number (only)).
• (誤) The degree of deformation of the droplet is (only)
a function of the Reynolds number. →これだと、「レイノ
ルズ数の関数に過ぎない」という意味になる
語順
recentlyの位置はどこが良いか
• 最近、de Lyonらは、注入された少数キャリヤがバンド構
造を乱すことがあることをほのめかした。
• de Lyon et al. have (recently) suggested that the
injected minority carriers might perturb the band
structure.
• (日本人の多用ケース) (Recently), de Lyon et al. have
suggested that …→文頭に置くと強調の意味になる
期末試験について(再々)
• 2010年2月4日(木)実施予定
• 基本的に毎回の小テストからのみ出題
• 小テスト問題(解答なし)は
(http://www.chem.tokushimau.ac.jp/B2/TamuraLab/H21CE2minitest.ht
ml:学科ホームページ→研究室紹介→物質
機能化学講座→田村・鈴木グループ→研究
室のメンバー→鈴木良尚)に公開する
• 持ち込み不可(もちろん電子辞書も)
• 集中して授業を聴いてください