畜産環境保全指導マニュアル

農畜産業振興事業団
指定助成対象事業
畜産環境保全指導マニュアル
改訂版
平成14年3月
社団法人
中央畜産会
はしがき
平成11年11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、
野積み・素掘り等、家畜排せつ物の不適切な管理を解消し、堆肥化等の処理によりその有効
活用等を推進していくことが重要な課題になっている。このためには、生産者の意識改革と
ともに経営の実態に応じた施設の整備など具体的な改善策の実行が求められている。
このような状況を踏まえ、本会では、農林水産省の指導のもと、㈶畜産環境整備機構の助
成により畜産環境特別対策事業の畜産環境保全指導の一環として、平成12年度に畜産環境保
全指導マニュアル作成委員会を設置し、適切な家畜排せつ物処理施設整備にあたり、畜産経
営に対する経営面からの適切な助言ができるよう、環境保全指導の実施に係る「畜産環境保
全指導マニュアル」を作成し、都道府県で実施している畜産環境保全指導等のための参 に
供してきた。
本資料は、平成12年度に作成した「畜産環境保全指導マニュアル」に収録した、畜産環境
保全Q&Aに係る『指導・支援に関する一問一答』並びに『家畜排せつ物法に関する一問一
答』について、畜産環境保全指導に携わる畜産コンサルタント並びに畜産環境アドバイザー
からの質問・意見を取り入れて拡充するとともに、利活用の面も
慮し再構成を行ない改訂
版として取りまとめたものである。
お忙しいなか、ご検討いただき、質問に対する回答執筆にあたられた委員の方々に深くお
礼を申しあげるとともに、本書が、畜産環境保全のための指導の一助となれば幸いである。
平成14年3月
社団法人 中央畜産会
畜産環境保全指導マニュアル―改訂版―
作成委員名簿
(順不同 敬称略)
関澤
啻朗
独立行政法人
農業技術研究機構
中央農業
経営計画部
合研究センター
羽賀
畜産経営研究室長
清典
独立行政法人
農業技術研究機構
畜産草地研究所
畜産環境部 環境浄化研究室長
道宗
直昭
生物系特定産業技術研究推進機構
畜産工学研究部 飼養管理工学研究
小野地
一樹
社団法人
塩原
群馬県畜産協会
指導支援部次長
昌治郎
社団法人
前畑
北海道酪農畜産協会 情報調査部
広之
社団法人
大村
主任研究員
岡山県畜産会
指導課
宮崎県畜産会
事業課長
嘉里
社団法人
調査課長
目
次
はしがき
畜産環境保全指導マニュアルの利用にあたって………………………………………………
1
Ⅰ
支援上の心得 ……………………………………………………………………………
2
Ⅱ
畜産環境保全Q&A …………………………………………………………………
5
1.指導・支援の基本的な え方に関する一問一答
Q1
畜産環境問題への支援にあたっての基本的スタンスはどのように
えるべきです
か。…………………………………………………………………………………………
5
Q2
畜産環境問題への支援の具体的な進め方にはどのようなものがありますか。…
Q3
畜産環境問題への支援にあたって実態把握に必要な調査事項には何があげられます
か。…………………………………………………………………………………………
Q4
5
6
畜産環境指導にあたって改善案作成はどのような手順で進めたらよいでしょうか。
………………………………………………………………………………………………
Q5
7
家畜ふん尿処理施設設置後の経営の進め方について、どのようにアドバイスしたら
よいですか。………………………………………………………………………………
7
2.畜産環境汚染の把握・環境美化に関する一問一答
Q6
畜産環境問題で汚染状況をどのように把握したらよいでしょうか。……………
9
Q7
畜産環境問題の実態把握に有用な機材として何がありますか。………………… 12
Q8
畜舎周辺の印象を向上させるための、環境美化に対する具体的な方策について教え
てください。……………………………………………………………………………… 16
3.各畜種のふん尿処理利用システムに関する一問一答
Q9
酪農経営では、乳用牛のふん尿処理利用についてどのような方法があるか教えてく
ださい。…………………………………………………………………………………… 17
Q10 肉用牛経営では、肉用牛のふん尿処理利用についてどのような方法があるか教えて
ください。………………………………………………………………………………… 18
Q11 養豚経営では、豚のふん尿処理利用についてどのような方法があるか教えてくださ
い。………………………………………………………………………………………… 19
Q12 採卵鶏経営・ブロイラー経営では、鶏のふん処理利用についてどのような方法があ
るか教えてください。…………………………………………………………………… 20
4.家畜ふん尿処理施設の設置・ふん尿処理費用に関する一問一答
Q13 家畜から排せつされるふん尿量はどのくらいですか。また、排せつされた家畜ふん
を適正に管理するにはどの程度の施設規模が必要ですか。………………………… 21
Q14 家畜ふん尿処理施設を設置する際に必要な費用にはどのようなものがありますか。
……………………………………………………………………………………………… 22
Q15 家畜ふん尿処理施設を設置する場合の手順や設置に要する期間について教えてくだ
さい。……………………………………………………………………………………… 22
Q16 家畜ふん尿処理施設を導入するにあたって経営的視点から事前にチェックしておく
べきことにどんなことがありますか。………………………………………………… 24
Q17 家畜ふん尿処理施設のランニングコストは設置する施設の種類や処理方式によって
違いがありますか。……………………………………………………………………… 25
Q18 養豚経営では、ふん処理と汚水処理の両方のコストが、特に中小規模の経営に大き
な負担となることが えられます。規模に応じた環境対策が えられませんか。 … 26
Q19 家畜ふん尿処理に係わるコスト計算に必要な知識について教えてください。… 27
Q20 累積負債が多く、経営者は家畜ふん尿処理施設の設置に消極的ですが、経営中止に
なると連鎖的に問題が発生するため、地元関係機関は積極的に推進しており対応に苦
慮しています。どのように対応したらよいのでしょうか。………………………… 29
Q21 畜産環境改善にかかる家畜ふん尿処理利用施設 設のための農地取得、転用につい
ての留意点を教えてください。………………………………………………………… 30
5.堆肥化処理に関する一問一答
Q22 堆肥化のメリットについて教えてください。……………………………………… 32
Q23 堆肥化施設の導入を
える上で注意する点は何ですか。………………………… 32
Q24 堆肥化施設の条件について教えてください。……………………………………… 33
Q25 せっかく堆肥化施設をつくりましたが、思うように堆肥ができません。どうしてで
すか。……………………………………………………………………………………… 34
Q26 全国で堆肥の共励会(堆肥コンクール)が開催されています。良質堆肥の審査基準
にはどのような例がありますか。……………………………………………………… 35
6.汚水処理に関する一問一答
Q27 畜産で利用されている汚水処理技術の種類について教えてください。………… 38
Q28 各種の汚水処理技術を比較するとどのようになりますか。……………………… 39
Q29 畜舎からの排水量を把握するにはどのような方法がありますか。……………… 39
Q30 汚水浄化処理施設を設置するうえで、どのようなことを留意すればよいか教えてく
ださい。…………………………………………………………………………………… 40
Q31 新規に浄化槽を設置しようと思うのですが、どのような浄化槽がよいのでしょうか。
……………………………………………………………………………………………… 41
Q32 尿汚水浄化槽の活性汚泥法とはどのような処理法ですか。……………………… 42
Q33 汚水を活性汚泥法で浄化処理するには、曝気槽内へ流入する原水の BOD 濃度が一
定でなければならない理由を教えてください。……………………………………… 43
Q34 活性汚泥法で発生する余剰汚泥処理について教えてください。………………… 44
Q35 活性汚泥法で発生する余剰汚泥処理について、堆肥化以外の処理方法または利用方
法があるか教えてください。…………………………………………………………… 45
Q36 曝気槽の稼働時の一般的なチェックポイントを教えてください。……………… 45
Q37 曝気槽の注意事項について教えてください。……………………………………… 45
Q38 日常の曝気槽管理について教えてください。……………………………………… 46
Q39 曝気槽出口での pH の異常に対する対策について教えてください。 …………… 46
Q40 豚舎から排出される原水の腐敗と過負荷の対策について教えてください。…… 47
Q41 豚舎内部の設備改善について教えてください。…………………………………… 48
Q42 パーラー排水の処理方法にはどのようなものがありますか。…………………… 48
Q43 汚水処理施設を設置する上で業者の選定と注意事項について教えてください。 … 48
Q44 汚水処理後の放流にあたっての留意事項(水利組合との協議等)や改善に至るまで
の事例を紹介してください。…………………………………………………………… 49
Q45 放流基準を満たす処理水は自己敷地内に地下浸透させてもよいのでしょうか。 … 51
7.焼却処理・バイオガスに関する一問一答
Q46 家畜排せつ物法においてふん尿の適正な管理がいわれていますが、ふんを焼却処理
してもよいのでしょうか。……………………………………………………………… 53
Q47 バイオガスプラントを
設する上での留意点と利用上で注意しておく点について教
えてください。…………………………………………………………………………… 53
8.バイオベッド畜舎に関する一問一答
Q48 いわゆる「踏み込み式豚舎」を活用してふん尿処理量の低減を図ろうとしています
が、設置に際して注意することは何ですか。………………………………………… 55
Q49 酪農におけるバイオベッド方式(発酵床方式)牛舎のメリットと留意点について教
えてください。…………………………………………………………………………… 56
9.敷料・副資材・添加資材に関する一問一答
Q50 敷料と副資材の違いは何ですか。…………………………………………………… 58
Q51 敷料の
用期間 長には、どのような方法があるか教えてください。………… 58
Q52 敷料・副資材に戻し堆肥を いたいのですが、どのような点に注意したらよいので
しょうか。………………………………………………………………………………… 59
Q53 戻し堆肥添加方式での堆肥化施設の設置を計画する場合、冬期間における戻し堆肥
の水 を安価に蒸発させる方式を教えてください。………………………………… 59
Q54 戻し堆肥の
い方の留意事項について教えてください。………………………… 60
Q55 敷料にゼオライトなどの無機質資材を
っても問題はありませんか。………… 61
Q56 副資材にはどのようなものがありますか。………………………………………… 62
Q57 副資材として古紙を利用する場合の留意点を教えてください。………………… 62
Q58 家畜ふん尿処理用に市販されている添加資材の特徴、種類、
用方法について教え
てください。……………………………………………………………………………… 63
Q59 添加資材の原料は何ですか。どうして微生物資材と呼ぶのですか。…………… 63
Q60 添加資材の値段はいくらするのですか。…………………………………………… 64
Q61 添加資材(微生物資材)の効果はあるのですか、ないのですか。……………… 64
10.臭気・害虫・騒音に関する一問一答
Q62 地形、季節、時間、畜舎等による臭気の流れやその問題点等と、樹木などを活用し
た防除方法などを教えてください。…………………………………………………… 66
Q63 畜舎及び周辺の臭気防止に対する、最も効果的な対策を教えてください。……… 67
Q64 オゾン脱臭の効果と問題点について教えてください。…………………………… 67
Q65 吸着法による脱臭装置の吸着材別の
換頻度、通過させる臭気ガスの注意点(湿度
など)、効果的に行なう方法等を教えてください。 ………………………………… 68
Q66 畜産環境問題の中でハエの発生は大きな課題です。ハエ防除の基本について教えて
ください。………………………………………………………………………………… 70
Q67 音域別に聞こえる範囲、発生する機械、騒音を抑える方法について教えてください。
……………………………………………………………………………………………… 70
11.家畜ふん尿処理物の農地還元・販売に関する一問一答
Q68 家畜ふん尿の農地への還元可能量はどの程度ですか。…………………………… 72
Q69 集約放牧、輪換放牧における、ふん尿量からみた面積頭数の関係(環境面を
慮し
て単位面積当たり何頭くらいまで飼うことができるのか)を教えてください。… 75
Q70 堆肥の品質表示はどのようになっているのでしょうか。………………………… 76
Q71 堆肥を流通販売する場合の手続き等について教えてください。………………… 78
Q72 特殊肥料生産関係届出について手続き等を教えてください……………………… 78
Q73 堆肥等の商品を商標登録する方法について教えてください。…………………… 79
12.環境保全の文献に関する一問一答
Q74 畜産環境保全に関する文献を教えてください。…………………………………… 81
13.法律・補助・融資・税制に関する一問一答
Q75 環境三法が制定された背景、三法の関係について教えてください。…………… 83
Q76 家畜排せつ物法で管理基準を定めるねらいはどこにあるのですか。…………… 83
Q77 家畜排せつ物法における管理基準は、具体的にはどのような内容になっているので
すか。……………………………………………………………………………………… 84
Q78 現在、堆肥盤でふん尿を処理していますが、家畜排せつ物法の管理基準に適したも
のとするためには、屋根をかけなければなりませんか。…………………………… 85
Q79 生ふんや堆肥を草地や農地に放置している場合は、家畜排せつ物法の管理基準上問
題がありますか。………………………………………………………………………… 85
Q80 冬が長く雪の多い地域なため冬の期間中農地にふん尿を堆積し、春先に散布してい
ますが、家畜排せつ物法の管理基準上問題がありますか。………………………… 86
Q81 パドック(運動場)で排出されたふん尿は、家畜排せつ物法の管理基準上どのよう
な扱いになりますか。…………………………………………………………………… 86
Q82 家畜排せつ物法では、家畜排せつ物の発生量等の記録が義務づけられていますが、
記録はどのようにとればよいのですか。また、記録はどこで整理し保管するのですか。
……………………………………………………………………………………………… 86
Q83 現在、野積みをしており、これから堆肥舎をつくろうと
えています。家畜排せつ
物法における勧告や命令といった措置は、法律の施行と同時に行われるのですか。
……………………………………………………………………………………………… 88
Q84 家畜排せつ物法の管理基準はすべての畜産農家が遵守しなければならないのです
か。………………………………………………………………………………………… 88
Q85 家畜排せつ物法の管理基準の適用に関して、飼養頭数はいつを基準にして決めるの
ですか。また、カウントの対象には成畜のほか子畜も含むのですか。…………… 89
Q86 新しい農林
庫資金の融資の対象となる処理高度化施設にはどのような施設がある
のですか。………………………………………………………………………………… 89
Q87 金融上の支援措置を受けるための具体的な手続きについて教えてください。… 89
Q88 税制の特例措置の内容と具体的な手続きについて教えてください。…………… 90
Q89 ふん尿処理機械装置、施設を整備するのに活用できる事業等を教えてください。
……………………………………………………………………………………………… 92
Ⅲ
畜産環境保全指導の実施手順と実態調査・ 析表(様式例) ………… 93
Ⅳ
実態調査・
析表(様式例)の活用上の留意点 …………………………… 110
付1
用語解説 ……………………………………………………………………………… 119
付2
図・表索引 …………………………………………………………………………… 147
畜産環境保全指導マニュアルの利用にあたって
本マニュアルを利用するにあたっては、参
となる主な書物として次のようなものがあり
ます。より理解を深めるためには、これらの書物を参照してください。
なお、さらに詳しい文献としては、Ⅱ畜産環境保全Q&AのQ74に紹介したものがありま
すのでこちらもご覧ください。
家畜ふん尿処理全般について
1)畜産環境整備機構:「家畜ふん尿処理・利用の手引き」、1998年、202pp.
2)農山漁村文化協会:「畜産環境対策大事典」、1995年、797pp.
3)押田敏雄・柿市徳英・羽賀清典編:「畜産環境保全論」、養賢堂、1998年、233pp.
特に北海道の家畜ふん尿処理全般について
4)北海道農政部酪農畜産課:「北海道酪農経営低コスト家畜ふん尿処理利用マニュア
ル」、1997年、117pp.
5)北海道立農業・畜産試験場家畜糞尿プロジェクト研究チーム:「家畜糞尿処理利用
の手引き
1999」
、1999年、124pp.
堆肥化について
6)中央畜産会:「堆肥化施設設計マニュアル」、2000年、246pp.
環境三法について
7)畜産環境問題研究会編:「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法
律の解説」、地球社、2000年、180pp.
発行所等問い合わせ先
1)㈶畜産環境整備機構
……電話 03-3459-6300 FAX 03-3459-6315
2)㈳農山漁村文化協会
……電話 03-3585-1141 FAX 03-3589-1387
3)㈱養賢堂
……電話 03-3814-0911 FAX 03-3812-2615
4)北海道農政部酪農畜産課
……電話 011-231-4111 FAX 011-232-1064
5)北海道立農業・畜産試験場……電話 01566-4-5321 FAX 01566-4-6151
6)㈳中央畜産会
……電話 03-3581-6685 FAX 03-5511-8205
7)㈱地球社
……電話 03-3585-0087 FAX 03-3589-2902
― 1―
Ⅰ
支援上の心得
1.国民(消費者)が畜産に求めているもの
国民(消費者)が畜産に求めているものは、良品質で安全な畜産食品と、環境に優しい
畜産経営です。
食料・農業・農村基本法(新農業基本法)が1999年(平成11年)に施行されました。今ま
で生産一辺倒だった畜産も、消費者の声に耳を傾けなければなりません。
畜産の生産性は著しく向上し、畜産食品の生産に関しては近代的な畜産が確立しはじめて
います。しかし、畜産食品の品質や安全性がおろそかにされたり、におい・汚いと環境汚染
を起こしている畜産は、消費者に嫌われてしまいます。
環境に配慮しない畜産経営をこれ以上続けることは、もう不可能です。水質汚濁や悪臭と
いった環境汚染がなく、ふん尿を有機質肥料などに資源化している資源循環型畜産が、当然
のものとなりつつあります。
2.畜産経営(生産者)に求められる新しい側面
畜産経営(生産者)の持続的発展のために、当然のことながら、もうかる畜産が求めら
れています。同時に、環境保全に配慮した持続的発展のある畜産も求められています。
畜産経営(生産者)が、畜産に生きがいを持ち、経営を持続していくために、もうかる畜
産を求めることは当然です。畜産の持続的発展のためには、経営の安定が是非とも必要です。
一方、食料・農業・農村基本法(新農業基本法)(4条と32条)では自然循環を維持増進し
た持続的発展が農業に求められています。いくらもうかっていても、自然循環機能を無視し
て、環境汚染を多発するような畜産では、持続的発展は望めません。畜産の持続的発展のた
めに、経営の安定と環境保全の両立が求められています。
また、家畜ふん尿を堆肥等の資源に変換し、有効利用することが重要なことは、いうまで
もありません。資源変換技術を駆
して、環境保全を実現することは非常に望ましいことで
す。
今、私達は、大量生産・大量消費・大量廃棄の時代を脱却し、新たに資源循環型社会を迎
えようとしています。これから迎える資源循環型社会に適応する畜産が希求されているので
す。
― 2―
3.環境調和型の畜産を目指すヨーロッパ諸国
畜産の歴 の長いヨーロッパ諸国では、農耕地面積当たりの家畜飼養頭数を制限するな
ど、頭数と面積のバランスをとることによって、環境調和型畜産を目指しています。
畜産先進国であるヨーロッパ諸国は、国土面積が日本よりも狭い国がほとんどです。畜産
も盛んで、家畜ふん尿問題も発生しています。ヨーロッパ諸国の対策方針は、家畜ふん尿の
リサイクルを図るよう、農耕地面積当たりの家畜飼養頭数を制限するなど、頭数と面積のバ
ランスをとることです。例えば、1 当たりの乳牛飼養頭数は約2頭と制限されています。
家畜ふん尿がリサイクルされ、自給飼料を生産する畜産は、環境調和型の望ましい畜産とい
えるでしょう。
しかし、日本では狭い面積で多くの家畜を飼う集約的畜産が、外国にも増して多くありま
す。すべての日本の畜産を、ヨーロッパ諸国のような環境調和型畜産に変えることは不可能
です。日本では、集約的な家畜ふん尿処理技術が発達しており、ふん尿処理技術の高度化と
いう点では世界に決して引けをとるものではありません。とはいっても、ふん尿処理技術に
だけに依存するのではなく、頭数と面積のバランスをとることも重要です。
今、資源循環型社会を迎えるなかで、家畜ふん尿を廃棄物とするのではなく、有効にリサ
イクルすることが資源小国の我が国にとって重要です。農業関係の新しい法律である環境三
法の施行をテコに、持続的農業としての畜産の発展を展望するときがきています。
4.畜産農家の環境保全を経営面からも支援できる畜産コンサルタントの特徴
畜産会の畜産コンサルタントは、畜産環境保全の実現のため、経営面から畜産農家を支
援できる重要な役割を担っています。
畜産会の畜産コンサルタント事業は、畜産経営の改善・発展に大きな役割を果たしてきま
した。従来から、畜産コンサルタントは経営面において畜産農家を支援し、各方面から一定
の評価が与えられています。
環境保全の実現のためには、施設の
設や機械の購入が必要であり、多くの資金を有効に
活用しなければなりません。畜産環境保全の技術を理解し、経営面から全面的に農家を支援
できる人材として、畜産コンサルタントの役割は重要です。
消費者の求める良品質で安全な畜産食品と、環境保全について経営面から全面的に支援で
きるのは、畜産コンサルタントをおいて他にはないのです。この特徴を踏まえ、自負心と義
務感に燃えて、環境に優しい畜産経営の実現に向けて頑張ってください。
そして、以上のような特徴的な畜産会の支援活動を、大きく面的に広げるために、国・自
治体・JA・畜産環境整備機構等の団体との連携も非常に重要です。
― 3―
5.畜産環境保全の四得
畜産環境保全の重要性を理解してもらい、環境保全を実現するために、説得・納得・会
得・利得の四得があります。
⑴
畜産農家に環境保全をやってもらえるように 説得 できるか
⑵
畜産農家に 納得 して畜産環境保全をやってもらえるか
⑶
畜産農家に環境保全の技術を 会得 してもらえるか
⑷
そして、畜産農家の環境保全が 利得 になるように
畜産環境保全は、農家の得にならないとの意識から、取組みが遅れています。それを説得
して、本当に納得の上に環境保全に取り組んでもらうことが必要です。人がいうから仕様が
なく環境汚染防止をやるのでは、納得したことになりません。
環境保全技術は、堆肥化にしても、汚水処理にしても、家畜を飼う畜産技術とは非常に異
なります。そのような新しい技術は、十
に会得しておくことが重要です。例えば、畜産環
境アドバイザーなど、環境保全技術を熟知した人材養成が進められています。そのような人
材を広く活用することも重要です。
環境保全を実現することは、利得につながります。環境に優しい畜産は、社会的信用・評
価を向上させ、販売促進につながります。堆肥利用による肥料代の節約や、堆肥の販売収益
は、ふん尿処理経費を相殺することにつながります。また、ヨーロッパ諸国では、畜産環境
に係わる納付金制度を採っている国があります。そこでは、環境に優しい畜産経営には納付
金が低減される優遇措置があります。
― 4―
Ⅱ.畜産環境保全Q&A
1.指導・支援の基本的な
え方に関する一問一答
Q1
畜産環境問題への支援にあたっての基本的スタンスはどのように
えるべ
きですか。
畜産環境問題の支援にあたっては、
「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に
関する法律」(以下、法律)の え方に ったふん尿処理を行なうことにより、経営の
安定を図ることを基本とすべきです。
法律は家畜ふん尿の適正な管理と有効な資源の循環を求めています。畜産経営には
それに必要な対応や資本の装備が求められていますが、一方では採用した対応が当初
の目的どおりに機能しなかったり、過剰な設備投資により経営体質の脆弱化が進んだ
りすることのないよう、計画を十 に検討した上で進める必要があります。
そのため畜産環境問題への支援は、現在のふん尿処理が適正であるかどうか、適正で
ないとしたらどのようにそれを解決できるか、解決するための方策が経営にどのよう
な影響を与えるのか、を第三者の立場から助言することで畜産経営の安定を図ること
を基本として えるべきです。
Q2
畜産環境問題への支援の具体的な進め方にはどのようなものがあります
か。
畜産環境問題への支援の具体的な方法にはいくつかあると思いますが、ここでは
合的な畜産環境保全支援の例をあげておきます。
まず支援の流れとしては、①問題点を整理するために必要な調査、②問題点を裏付け
るための実態把握、③問題点の整理と対策の立案および経営計画の作成、④対策の決定
とそれに基づく実行、⑤対策実施後のフォローアップ、に けられます。
①「問題点を整理するために必要な調査」については、経営の概況や労働力、土地、
資本の装備など基本的な調査とともに、調査対象経営がふん尿処理で何を求められて
いるかを浮き彫りにするために、ふん尿処理施設の設置状況、管理の状況、堆肥や処理
水などの実態、経営者の え方等について調査し、取りまとめます。
次に②「問題点を裏付けるための実態把握」によって、適当な測定装置や 析装置を
用いて問題点を客観的な数値で把握するとともに、施設が設置してある場合には施設
設時の設計計算書などを参
とし実態との乖離状態を調べるなどして、問題点の明
― 5―
確化に努めます。
③「問題点の整理と対策の立案および経営計画の作成」では、②(問題点を裏付ける
ための実態把握)で得られた処理の問題点からそれに必要な対策案を作成し、対象経営
者に提示します。施設投資が必要であると判断される場合には、施設設置に必要な具体
的情報を経営者に示し、経営者の判断で業者から見積もりをもらいます。必要であれば
設計に必要な基本的数値について取りまとめておき、経営者から業者に提示してもら
います。また、経営の実績や借入金の残高等を調査し、施設設置による経営への影響や
資金の調達方法について助言をします。
そして④「対策の決定とそれにもとづく実行」で、必要であれば経営者の最終的な意
思の決定に助言を行ない、改善案の実施を促します。
最後に⑤「対策実施後のフォローアップ」で、改善案の実施後に問題点が解決された
かどうかの確認をし、改善案が有効に働いていないと判断された場合には、経営者、業
者、関連する機関等を えて再検討を行ないます。
Q3
畜産環境問題への支援にあたって実態把握に必要な調査事項には何があげ
られますか。
何が問題なっているのかを確認し、それを裏付けるための調査をすることが最も重
要な点ですが、ここでは一般的な調査事項をあげてみますので、経営の状況によって選
択して い けてください。
① 施設整備の状況や規模について調査します。ふん尿の処理は飼養管理方式や畜
舎の方式によって影響を受けますので、詳しく調査することが必要です。また処理
施設の設置状況などを調査し、ふん尿処理の流れを図にして整理しておきます。
② ふんや汚水の処理の方法について調査するとともに、処理後の堆肥や処理水の
評価を行ないます。評価は目視や手にとった状態、におい等で判断しますが、適正
な処理が行なわれているか、計画値に
った処理が行われているかを基本にしま
す。これらの判断をするためには
「規模算定システム」などを 用すると効果的です。
③ 堆肥等の安定的な利活用がされているかについても調査します。
④ 経営者のふん尿処理に対する
え方、問題をどのように解決しようと
えてい
るか、今後どのような計画を持っているか、などについて聞き取り調査を行ないま
す。
⑤ その他の必要な事項を調査します。調査にあたっては季節、気温、湿度、天気な
ども 慮します。
⑥ 直近の判定値や
析値があればそれらを参
にして、調査の裏づけ資料としま
す。必要であれば経営主の合意のもとに測定機器を用いて実測したり、 析機関に
析を依頼してもよいでしょう。
なお、本編のⅢに調査・ 析表(様式例)を掲載していますので参照ください。
― 6―
Q4
畜産環境指導にあたって改善案作成はどのような手順で進めたらよいで
しょうか。
改善案の作成は、まず①解決すべき問題を整理します。これには「実態の把握」を詳
細に行なっていることが重要です。そして、処理能力の不足、処理施設の不具合、一般
的な飼養管理の失宜などいくつか
えられる要因から、②解決に必要な手段とそれを
阻んでいる最大の障害を見つけだします。解決策に処理施設の能力不足を補うための
施設投資が必要な場合には、「規模算定システム」を用いて必要となる施設の規模を算
定し、立地条件等から最適な処理方式を選択して提案したり、実際に業者から見積書を
提出させて、具体的な解決策を経営主とともに検討します。またこの場合、③
「追加投
資システム」を用いて追加投資による経営条件の変化を予測したり、④経営実績や経営
の長期目標の調査から、「経営計画システム」を用いて長期の経営シミュレーションを
作成して提示することも必要になります。また⑤それらを元に投資計画への助言や資
金調達計画への助言を行ないます。
Q5
家畜ふん尿処理施設設置後の経営の進め方について、どのようにアドバイ
スしたらよいですか。
1.コスト増加 をいくらかでも相殺するために
最も現実的なのは、処理量を減らしていくことです。一般的なコスト低減の手段とし
て推奨されているエサのこぼれや水のこぼれを防ぐ対策は、ふん尿処理コストの低減
にも有効です。また、処理施設の能力を安定的に発揮させることが、結局は最も処理コ
ストを下げることにつながりますから、日常の整備、保守・点検を怠らないようにすべ
きです。さらに飼料の成 や配合する原料の工夫によって、より処理の負荷を小さくし
ようとする試みもされているようですから、常に環境問題に関する新しい動きに注意
をしておきましょう。
2.経営規模をどのように えるべきか
環境対策では、コスト上昇による収益性の低下を飼養頭数規模の拡大で補おうとし
ても、
「収益性向上には結びつかない」といわれます。ふん尿処理能力の向上がなけれ
ば、結局は経営の行き詰まりに結びつきます。環境対策による収益の低下は、単なる規
模拡大による場当たり的な売上高の増加で補うのではなく、経営全体のコスト低減で
吸収することを第一とし、経営規模の拡大はあくまでも大きな経営戦略の一環として
えるべきです。そのためには経営管理を今まで以上に強化していく必要があります。
また中長期の経営計画、短期の経営計画を外部のアドバイスなども参 にして作成し、
それにもとづいた経営の実践を進めていくことが重要です。
― 7―
3.ゆとりある経営をめざす
経営のどこかに「無理」をしているところがあれば、悪い影響が必ず現れてきます。
環境対策でもまったく同じで、「無理」をすればその結果が短時間のうちに明らかに
なってきます。
「よい堆肥ができない」
「処理水が放流基準をクリアーしない」
「におい
で周辺からの苦情が絶えない」
などの問題は、必ずどこかに無理をしているところがあ
るから生じているのだ、と えるべきです。「無理」は処理コストを高くし、最終的に
は経営の寿命を短くする原因になりかねません。収益性が下がり続けている現状では
ゆとりある経営などできるはずがない、などと言わず、自 の経営を外から眺めるゆと
りを常に持つことを心がけるべきです。
4.ふん尿処理施設の 新のために
ふん尿処理施設の耐用年数はQ19の表12のように定められていますが、取り扱うも
のがものだけに腐食などが進みやすく、こまめに修理を重ねても償却年限を待たず施
設を 新する必要が出てくる可能性があります。また、耐用年数を過ぎて い続けたと
しても、いずれは多額の資金を必要とする施設の 新は避けられません。このことを理
由に整備計画を躊躇している経営が多いこともうなずけないわけではありません。し
かし、畜産経営を継続していく限りはふん尿処理施設は必要不可欠なものです。家畜を
飼養管理するのと同じ気持ちで、また畜舎等の施設と同様に、維持管理に気をつかうこ
とで可能な限り
用期間の
長を図り、また減価償却費を確実に留保するなどして資
金の準備を計画的に行なうことで、切り抜けていくしかありません。その点では、ふん
尿処理施設の整備は畜産経営者に今まで以上の経営管理の強化を求めているといって
よいでしょう。
― 8―
2.畜産環境汚染の把握・環境美化に関する一問一答
Q6
畜産環境問題で汚染状況をどのように把握したらよいでしょうか。
排水の水質、地下水の水質、悪臭には表1∼4の基準があります。これをオーバーし
ている場合には、環境汚染が起きていることになり、注意が必要です。
1.排水の水質
排水基準は水質汚濁防止法によって定められています。排水基準には多くの項目が
ありますが、畜産に特に関係の深い項目は pH、BOD、COD、SS、大腸菌群数、窒素、
リンの7項目です。その排水基準、その具体的性質や測定法は以下の表1のとおりで
す。
2.地下水
地下水の水質汚濁に係わる環境基準(平成9年環境庁告示第10号)は表2のように
なっています。畜産に特に関係の深い項目に、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素がありま
す。例えば、家畜ふん尿を施用した畑の地下水の硝酸性窒素濃度(硝酸態窒素濃度)が
10㎎╱ℓを越える場合には、ふん尿中の窒素が地下に浸透し、地下水を汚染している可
能性があるので注意が必要です。
表1
項目
畜産に関係の深い排水基準項目の性質、測定法
排水基準
性質
測定法
pH
5.8∼8.6
7が中性、高いとアルカリ性
低いと酸性
pH 電極または試験
紙
BOD
160㎎/ℓ(日間平 120㎎/ℓ)
微生物学的に酸化 解される成
20℃、5日間培養
COD
160㎎/ℓ(日間平 120㎎/ℓ)
化学的に酸化 解される成
100℃、30 間反応
SS
200㎎/ℓ(日間平 150㎎/ℓ)
浮遊・懸濁している成
1 μm 以上の粒子
大腸菌群数
日間平 3,000個/㎤
ふん 性の細菌数
37℃、20時間培養
窒素
120㎎/ℓ(日間平 60㎎/ℓ)
窒素を含む成
窒素含有量の 析
リン
16㎎/ℓ(日間平 8㎎/ℓ)
リンを含む成
リン含有量の 析
注)1.*:畜産業については、次のような暫定基準がある。
特定海域の流入域
(2003年(平成15年)9月30日まで)
窒素260㎎/ℓ(日間平 200㎎/ℓ)
リン 50㎎/ℓ(日間平 40㎎/ℓ)
2.畜産業についてのトリハロメタン生成能の基準は、1.3∼5.2㎎/ℓ
3.畜産はクリプトスポリジウムや、大腸菌 O157の発生源として関心を集めることがある。
4.略称
BOD(Biochemical Oxygen Demand)生物化学的酸素要求量
COD(Chemical Oxygen Demand)化学的酸素要求量
SS(Suspended Solids)懸濁物質、浮遊物質
―9―
3.悪臭
表3に示す22物質について、自治体が規制地域と規制濃度(表3の濃度範囲内)を定
めることになっています。また、畜産の場合、敷地境界線での物質濃度で規制されます。
表3の規制物質のうち、畜産に特に関係の深い悪臭物質は、⑴アンモニア、⑵メチル
メルカプタン、⑶硫化水素、⑷硫化メチル、⑸二硫化メチル、⑼プロピオン酸、⑽ノル
マル酪酸、 ノルマル吉草酸、 イソ吉草酸の9物質です。
上記の9物質に加えて、人間の鼻を利用した官能試験が併用されることがあります。
この場合、臭気濃度または臭気指数(表4)の値で規制されます。
表2
地下水の水質汚濁に係わる環境基準
項目
基準値
カドミウム
0.01㎎/ℓ以下
全シアン
検出されないこと
0.01㎎/ℓ以下
六価クロム
0.05㎎/ℓ以下
ヒ素
0.01㎎/ℓ以下
水銀
0.0005㎎/ℓ以下
アルキル水銀
検出されないこと
PCB
検出されないこと
ジクロロメタン
0.02㎎/ℓ以下
四塩化炭素
0.002㎎/ℓ以下
1,
2-ジクロロエタン
0.004㎎/ℓ以下
1,
1-ジクロロエチレン
0.02㎎/ℓ以下
シス-1,
2-ジクロロエチレン
0.04㎎/ℓ以下
1,
1,
1-トリクロロエタン
1㎎/ℓ以下
1,
1,
2-トリクロロエタン
0.006㎎/ℓ以下
トリクロロエチレン
0.03㎎/ℓ以下
テトラクロロエチレン
0.01㎎/ℓ以下
1.3-ジクロロプロペン
0.002㎎/ℓ以下
チウラム
0.006㎎/ℓ以下
シマジン
0.003㎎/ℓ以下
チオベンカルブ
0.02㎎/ℓ以下
ベンゼン
0.01㎎/ℓ以下
セレン
0.01㎎/ℓ以下
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
10㎎/ℓ以下
ふっ素
0.8㎎/ℓ以下
ほう素
1㎎/ℓ以下
― 10 ―
表3
悪臭物質
規制悪臭物質と臭気強度別濃度
物質濃度(ppm)
臭気強度
におい
2.5
3
3.5
1
2
5
⑵ メチルメルカプタン
0.002
0.004
0.01
腐った玉ねぎのようなにおい
⑶ 硫化水素
0.02
0.06
0.2
腐った卵のようなにおい
⑷ 硫化メチル
0.01
0.04
0.2
腐ったキャベツのようなにおい
⑸ 二硫化メチル
0.009
0.03
0.1
腐ったキャベツのようなにおい
⑹ トリメチルアミン
0.005
0.02
0.07
腐った魚のようなにおい
⑺ アセトアルデヒド
0.05
0.1
0.5
青ぐさい刺激臭
⑻ スチレン
0.4
0.8
2
⑼ プロピオン酸
0.03
0.07
0.2
⑽ ノルマル酪酸
0.001
0.002
⑴ アンモニア
し尿のようなにおい
都市ガスのようなにおい
酸っぱいような刺激臭
0.006 汗くさいにおい
ノルマル吉草酸
0.0009 0.002
0.004 むれたくつ下のにおい
イソ吉草酸
0.001
0.004
0.01
トルエン
10
30
60
ガソリンのようなにおい
キシレン
1
2
5
ガソリンのようなにおい
酢酸エチル
3
7
20
刺激的なシンナーのようなにおい
メチルイソブチルケトン
1
3
6
刺激的なシンナーのようなにおい
イソブタノール
0.9
4
20
刺激的な発酵したにおい
プロピオンアルデヒド
0.05
0.1
0.5
刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
ノルマルブチルアルデヒド
0.009
0.03
0.08
刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
イソブチルアルデヒド
0.02
0.07
0.2
刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい
ノルマルバレルアルデヒド
0.009
0.02
0.05
むせるような甘酸っぱい焦げたにおい
イソバレルアルデヒド
0.003
0.006
0.01
むせるような甘酸っぱい焦げたにおい
表4
畜種
むれたくつ下のにおい
畜産における臭気強度と臭気指数の関係
各臭気強度に対する臭気指数
2.5
3.0
3.5
豚
12
15
18
牛
11
16
20
鶏
11
14
17
― 11 ―
Q7
畜産環境問題の実態把握に有用な機材として何がありますか。
堆肥、汚水、臭気の実態把握のために現場で用いる機材として、次のようなものがあ
ります。原理や測定方法等の詳しいことについては、成書を参 にしてください。
1.堆肥
表5
機材
堆肥の実態把握に用いられる機材の例
何をするのか
何がわかるのか
バケツ
10ℓのバケツに水 調整したものを一 5∼7㎏あれば、容積重0.5∼0.7㎏/ℓ
杯入れて、重さを測る。
となり、水 調整による通気性の改善
が図られている。
デイスポ手袋
堆肥をさわる、握る。
もみ砕いて、悪臭がすれば、まだ未熟。
ぎゅっと握って、指間からしみ出るく
らいの水 なら水 調整ができてい
る。
温度計
堆肥の発酵温度を測る。
発酵温度が50∼60℃と高いのは、盛ん
に発酵している証拠。
2.汚水
表6
汚水及び活性汚泥の実態把握に用いられる機材の例
機材
何をするのか
何がわかるのか
1ℓのプラスチック 曝気槽の活性汚泥液を1ℓ入れて、30 活性汚泥の沈み方、
濃度などがわかり、
製メスシリンダー
後に沈んだ活性汚泥の容積(SV)を 活性汚泥の調子の良否がわかる。
測る(図1)。
透視度計
処理水の透視度を測る(図2)。
処理水の水質の良否がすぐわかる。
水質がよいものは、透視度も高い。
簡易水質推定尺も利用できる(図2)
。
ビン
採取した水を入れる。
析業者等に 析を依頼する。簡易
析キットを用い自 で 析も可能。
ヒシャク
水や活性汚泥を採取する。
―
3.臭気
表7
機材
ガス検知管セット
臭気の実態把握に用いられる機材の例
何をするのか
何がわかるのか
ガス採取器の先端にガス検知管を付 アンモニアや硫化水素などの悪臭の濃
け、約1 間ガスを吸引する(図3)。 度が直読ですぐわかる。
― 12 ―
4.成書リスト
1)畜産環境対策大事典(農文協)
2)家畜ふん尿処理・利用の手引き(畜産環境整備機構)
3)畜産環境保全論(養賢堂)
図1
活性汚泥の容積(SV)の測り方
注)活性汚泥の濃度の概算方法
活性汚泥の容積(SV)から活性汚泥濃度(MLSS)を概算する
方法は式1のとおりである。
活性汚泥濃度(MLSS)
=SV×100 ……………………(式1)
例:図1の場合、SV は50%なので、
MLSS=50×100=5,000㎎/ℓと概算される。
― 13 ―
図2
透視度計と簡易水質推定尺
注)1:透視度計の い方
⑴ 処理水をヒシャクで、透視度計の30のところまで入れる。
⑵ 上からのぞいて、底にある二重十字標識板を見る。
⑶ 二重十字標識板の見えるところまで、ピンチコックを開いて水を落とし、見
えたときの、透視度計の目盛が透視度となる。
⑷ 例えば、目盛30のところで二重十字標識板が見えれば、透視度30で、これが
最高値である。目盛12まで水を落としたときに、初めて見えれば、透視度12と
なる。
注)2:簡易水質推定尺の い方
⑴ 透視度計で透視度を測る。
⑵ 簡易水質推定尺の換算目盛から BOD、COD、SS を推定する。
⑶ 例えば、透視度12のとき、BOD は122と簡単に推定できる。
― 14 ―
図3
検知管法による臭気の簡易測定
― 15 ―
Q8
畜舎周辺の印象を向上させるための、環境美化に対する具体的な方策につ
いて教えてください。
畜産農家を取り巻く環境で、目に見えて印象を向上させる効果を発揮するのが環境
美化です。特に畜産は汚いものだという印象を子供から取り除くには環境美化が最も
重要です。
「畜舎周辺に花を植えてきれいにする」ためには畜産経営に余裕がないとで
きません。余裕は畜産経営の中でふん尿処理対策を行なう上で最も必要なことといえ
ます。余裕があってはじめて畜舎や周辺の清掃に手が回り、花を植えることによって整
理整 がなされ、その結果、臭気の発生の少ない畜産経営を行なうことができるからで
す。
花壇は、土地があれば直植えのほうが管理がしやすいですが、プランターでもいろい
ろな植え方やプランターの移動によって随時変化をつけることができます。手入れが
少なくいつも花が咲いている植物、たとえばパンジー、ベゴニア、マリーゴールド等や
観葉的なハナキャベツ、シロタエギク等などがあります。
もう1つ環境美化で樹木を植えて緑を保つようにすることも大切な環境美化です。
樹木による じん・臭気対策の効果も期待できますが、やはり緑の中に畜産があるとい
うことが大切です。下に花、目の高さに緑が是非ほしいものです。
― 16 ―
3.各畜種のふん尿処理利用システムに関する一問一答
Q9
酪農経営では、乳用牛のふん尿処理利用についてどのような方法があるか
教えてください。
乳用牛及び肉用牛のふん尿処理・利用システムには以下のようなものがあります。
図4
乳用牛及び肉用牛の排せつ物処理・利用システム
― 17 ―
Q10
肉用牛経営では、肉用牛のふん尿処理利用についてどのような方法がある
か教えてください。
① 肉用肥育牛においては、オガクズ等の敷料等を多量に用いる踏み込み式牛舎が
一般的です。牛舎から搬出される固形物は全量を堆肥化することになります。この
方式は敷料を多量に必要とするため敷料が容易に入手することが前提条件となり
ます。
② 一般に敷料(副資材)等を多量に 用するので堆肥が多量に生産されます。
③ 堆肥は、経営内に施肥する圃場がない場合は経営外への供給先確保が重要にな
ります。
④ 敷料(副資材)の購入を抑えるために堆肥化した堆肥を牛舎内に敷料として戻す
ことで敷料の購入経費を抑えることができます。牛舎へ堆肥を敷料として戻す際
は堆肥が熟成していることが基本となります。なお、堆肥の敷料利用(戻し堆肥の
利用)の詳細についてはQ52∼54を参照してください。
⑤ 肉用牛のふん尿処理・利用システムに関しては前質問の回答に示した図4を参
照してください。
― 18 ―
Q11
養豚経営では、豚のふん尿処理利用についてどのような方法があるか教え
てください。
豚のふん尿処理・利用システムには以下のようなものがあります。
図5
豚の排せつ物処理・利用システム
― 19 ―
Q12
採卵鶏経営・ブロイラー経営では、鶏のふん処理利用についてどのような方
法があるか教えてください。
鶏のふん尿処理・利用システムには以下のようなものがあります。
図6
鶏の排せつ物処理・利用システム
― 20 ―
4.家畜ふん尿処理施設の設置・ふん尿処理費用に関する一問一答
Q13
家畜から排せつされるふん尿量はどのくらいですか。また、排せつされた家
畜ふんを適正に管理するにはどの程度の施設規模が必要ですか。
家畜のふん尿の生重量は、飼料の質や量、生産能力などによって大きく変動します。
したがって、明確な数値を示すのは困難と思われますが、比較的妥当と思われる数値を
表8に示します。
また、ふん尿処理施設規模を算定する場合は、排せつ量でなく施設に搬入される量
(処理量)
を基礎にします。敷料を 用している場合には、これを加えた値を用います。
各畜種の標準的な飼養形態での処理対象ふん量の目安や処理に必要な施設規模の算
定方法については、
「堆肥化施設設計マニュアル」
(中央畜産会、平成12年10月)
の第4
章を参照してください。
表8
畜
種
堆肥化施設、貯蓄槽等の規模算定に用いる排せつ量
体 重
ふん(日・頭羽)
尿
合 計
合 計
生 重 (日・頭羽) (日・頭羽) (年・頭羽)
乾物量 水
乳用牛 搾乳牛
搾乳牛
搾乳牛
乾乳牛
育成牛
700㎏
700㎏
600∼700㎏
550∼650㎏
40∼500㎏
7.5㎏
6.8㎏
5.7㎏
4.2㎏
3.6㎏
86%
86%
84%
80%
78%
54㎏
50㎏
36㎏
21㎏
16㎏
17㎏
15㎏
14㎏
6㎏
7㎏
71㎏
65㎏
50㎏
27㎏
23㎏
25.6
23.7
18.3
9.9
8.4
肉用牛 2才未満
2才以上
乳用種
200∼400㎏
400∼700㎏
250∼700㎏
3.6㎏
4.0㎏
3.6㎏
78%
78%
78%
16㎏
18㎏
16㎏
7㎏
7㎏
7㎏
23㎏
25㎏
23㎏
8.4
9.1
8.4
3∼ 30㎏ 0.15㎏
30∼110㎏ 0.53㎏
150∼300㎏ 0.83㎏
72%
72%
72%
0.5㎏
1.9㎏
3.0㎏
1.0㎏
3.8㎏
7.0㎏
1.5㎏
5.7㎏
10.0㎏
0.55
2.08
3.65
豚
子豚
肥育豚
繁殖豚
採卵鶏 雛
成鶏
成鶏
―
―
―
13ℊ
30ℊ
30ℊ
70%
70%
60%
43ℊ
100ℊ
75ℊ
―
―
―
43ℊ
100ℊ
75ℊ
15.7㎏
36.5㎏
27.4㎏
肉
―
―
26ℊ
26ℊ
70%
40%
87ℊ
43ℊ
―
―
87ℊ
43ℊ
31.8㎏
15.7㎏
鶏 ブロイラー
ブロイラー
注)1.1)生乳生産量が年間10,000㎏以上の場合
2)生乳生産量が年間10,000㎏程度の場合
3)生乳生産量が年間7,600㎏程度の場合
4)低床式鶏舎のふんの場合
5)高床式鶏舎のふんの場合
6)床暖房式のウインドレス鶏舎のふんの場合
2. 堆肥化施設設計マニュアル」
(中央畜産会、平成12年10月)p107より引用
― 21 ―
Q14
家畜ふん尿処理施設を設置する際に必要な費用にはどのようなものがあり
ますか。
設置する施設の種類や経営がおかれた条件などにより異なりますが、業者の提示す
る見積書から見ると、おおむね以下の費用を えておけばよいでしょう。見積書はつい
金額だけに目がいきがちですが、提示された見積書を精査して、どこまでが見積もりに
含まれているのか、この工事だけで安定的なふん尿処理が可能なのかどうかを十
に
確かめておくことが重要です。
1.施設 設・設置費用
工事概要書や見積書に記載されている範囲の費用です。処理に不可欠な施設・機械が
見積もりから欠落していないか注意深く確認する必要があります。また、ふん尿処理施
設に付属すべきふん尿の貯蔵施設や堆肥の保管施設などは、計画図には描かれてあっ
ても見積り金額には含まれていない場合があるので、必要であれば別途見積書を求め
ることも えなければなりません。
2.一次側電気工事費
外部引込み線から受電装置までの電気工事費です。一般にこの費用はふん尿処理施
設の見積書に含まれません。
3.汚水の流入路・処理水の排出路等の工事費用
畜舎等から汚水処理施設まで、処理施設から排水口までの工事が必要な場合、見積書
に含まれていない時には費用を計上しておく必要があります。
4.その他工事費用
設置する施設によっては井戸の掘削、道路や施設周辺の整備費用が発生する場合が
あります。また、外部から直接施設内が見えないようにする植栽などの工事費用を見込
んでおくことも えるべきでしょう。
5.諸税
設置する施設の規模等によっては不動産取得税の納付が必要になります。また、各種
の契約、手続等に伴って印紙税、証紙等が必要となる場合もあります。
Q15
家畜ふん尿処理施設を設置する場合の手順や設置に要する期間について教
えてください。
家畜ふん尿処理施設を設置する基本的な手順は以下のようになります。法律等に基
づく諸官庁への手続きについては設計事務所、施工業者等が行なう場合がほとんどで
あると えられますが、施工主が知っておかなければならないものもあります。またこ
れらの手続きについては地域や経営のおかれた条件によって異なる場合が多いので、
― 22 ―
詳細については地元の市町村役場や都道府県担当部局に問い合わせる必要がありま
す。
1.ふん尿処理施設を設置する手順
⑴ 計画を立てる
施設の種類、規模
施設の設置場所
予算
費用の調達方法
経営の計画
⑵ 設計書類を作成する
設計・施工業者の選定
図面
見積書
地盤調査(用地造成の場合)
⑶ 各種の申請・届出を行なう
(例)
築基準法に基づき 築確認申請を市町村等に行なう
(前提となる手続き)
・農地転用許可(必要な場合)
(前提となる手続き)農業振興地域整備計画指定除外(必要な場合)
※農地転用の留意点についてはQ21を参照
・開発許可(必要な場合)
*家畜排せつ物を機械で自動撹拌し、人間の入らない発酵槽等の密閉性
の高い施設は、サイロと同様に「工作物」として 築物の規制外となり
ます。 築確認は必要ありません。
水質汚濁防止法に基づき特定施設設置の届出を保 福祉事務所等に行なう
⑷ 工事
⑸ 行政庁による完成検査(必要な場合)
⑹ 検収・完了
2.計画から完成までに要する期間
⑴ 計画
施設・機械にはさまざまなメーカーがありますから、自 の経営にあった、また
経営のさまざまな制約を十
勘案して方式、機種等を選定する必要があります。
「必要な施設であるから」と経営への影響を 慮しないで、あるいは「あの人が導
入した方式だから」と自
の経営が置かれた条件に合うかどうかを検討しないで
施設を設置しようとする動きが見られますが、経営のシミュレーションを行なっ
てどのような影響があるのか、その影響に対してどのように対処していくのかを
十 検討しておくべきです。経営のグランドデザイン、自 の人生設計を踏まえな
がら、短兵急に決定せず多くの意見を参 にし、十
― 23 ―
な時間をかけて作成すること
が望ましいでしょう。
⑵ 設計書類の作成
ふん尿処理施設は処理方式が決まれば選択肢はそれほどありませんから、業者
の選定には多くの時間はかからないでしょう。もし選択に迷うことがあれば、いく
つかの業者から同様な条件の下に提案書を提出させて比較してみるのもよい方法
です。図面や見積書の作成も時間がかかるものではありませんが、施工主には、こ
の工事だけで安定的なふん尿処理が可能なのかどうか、時間をかけて精査するこ
とが求められます。
⑶ 各種の申請
例としてあげたものについて述べると、まず
築確認を要する施設を設置する
場合ですが、内容等に不備がなければ一般には申請から
付までに3週間程度か
かります。注意が必要なのは、 築確認申請や施設設置の前提となる農地転用許可
などの手続きです。農地が農業振興地域整備計画に位置づけられている場合には、
農地転用許可申請の前にその指定を除外しておく必要がありますが、この受付期
間は市町村により定められており、1年に1回程度しかない場合があるからです。
また、農地転用許可には最大1ヵ月半程度の期間を見込む必要があるでしょう。隣
地の立会いや同意が必要な場合があります。さらに、設置する土地の状況によって
は、測量、 筆等の手続きをしなければなりません。
汚水の浄化処理施設を設置する場合には、水質汚濁防止法に基づく特定施設設
置の届出が必要です。この届出は工事着手予定日の60日前までに行なう必要があ
ります。また、放流先の河川や水路の管理者、水利権者との協議が必要な場合が多
くあります。その他、各種法令等に基づいて書類が必要な場合もあります。
このように諸官庁等への許可申請、届出や協議には法律的な制約や時間的な制
約のある場合が多いので、設計事務所や施工業者と綿密に打ち合わせるとともに、
十 な期間を見込んでおくことが必要です。
⑷ 工事
地域によっては工事期間が冬季になる場合、
設技術上のさまざまな制約が
えられます。また、施設の構造等から必要な工事に長期間を要する場合がありま
す。特に汚水処理施設の場合、水漏れ検査等の必要な検査にかなりの期間がかかる
場合があり、安定的な処理が行なえるようになるまでにはさらに時間を要します。
工事を監理する業者と十
な打ち合わせをしておくことが重要です。
Q16
家畜ふん尿処理施設を導入するにあたって経営的視点から事前にチェック
しておくべきことにどんなことがありますか。
家畜ふん尿処理施設の導入にあたって、畜産経営がどの程度の費用負担力があるの
かを検討しておくことが必要です。ふん尿処理施設に対する費用負担可能額を把握す
― 24 ―
る方法として期待所得控除法があります。期待所得控除法は、畜産物収入から畜産部門
あるいは畜産経営を再生産するために必要な費用と期待所得を差し引いて残った残余
を費用負担可能額とみなす手法です。家族経営の場合は、費用負担可能額=畜産物収
入−家族労働費を除く費用−期待所得として計算します。その際、期待所得は調査対象
農家が期待する可処 所得額や負債償還額を 慮して設定します。
「家畜排せつ物法」の施行に伴って各種の補助事業が用意されており、補助事業を利
用することによってふん尿処理施設の導入が比較的容易になっています。しかし、ふん
尿処理施設が将来に渡って安定的に稼働するためには、
新時に補助事業が受けられ
なくても無理なく費用負担できるものではければなりません。したがって、施設導入に
際しては、補助事業利用の場合と補助事業を利用しない場合の2とおりのふん尿処理
費用を把握し、これを費用負担可能額と比較して導入の妥当性を検討する必要があり
ます。
また、ふん尿処理施設を導入した場合、新たなふん尿処理作業が生じることもありま
す。したがって、ふん尿処理施設導入のもとでのふん尿処理作業を把握し、経営として
労働負担が可能か否かの点からの検討も必要です。
さらに、処理したふん尿の利用についても十 検討しておくことが必要です。特に、
堆肥等として経営外に供給する場合、経営外に供給できるであろうといった姿勢では
なく、堆肥等のマーケティングリサーチに取り組み、需要ニーズを把握し、ニーズに対
応したふん尿処理・堆肥等の製造・供給計画作成への助言も重要です。
Q17
家畜ふん尿処理施設のランニングコストは設置する施設の種類や処理方式
によって違いがありますか。
業者の設計計算書から見ると、ふん尿処理施設のランニングコストは、設置する施設
の種類や処理方式によって大きく異なります。しかし、単に計算書に記載されているコ
ストを比較するだけでなく、実際に設置されている事例を参 にしたり、必要なコスト
が正しく計上されているかどうかについて専門家の意見を求めたり業者に確認するこ
とは重要なことです。なおランニングコストのうち、施設・機械の運転に直接関係する
費用について比較例を表9∼10に例示しましたので、参 にしてください。
― 25 ―
表9
畜種・規模
堆肥化施設のランニングコスト例
メーカー名
A社
B社
C社
D社
エンドレス式
開放直線式
開放回行式
縦型
円/月
円/月
70,000
―
89,810
―
17,046
―
196,358
119,204
円/月
千円/年
70,000
840
89,810
1,078
17,046
205
315,562
3,787
エンドレス式
開放直線式
開放回行式
縦型
円/月
円/月
35,000
―
15,082
―
17,046
―
47,890
―
円/月
千円/年
35,000
420
15,082
181
17,046
205
47,890
575
発酵槽の形式
経
産
牛
8
0
頭
電力料金
その他費用
計
発酵槽の形式
種
雌
豚
1
2
0
頭
電力料金
その他費用
計
表10 汚水処理施設のランニングコスト例(種雌豚120頭)
会社名
類
維
持
管
理
費
用
A社
B社
C社
D社
連続式
なし
連続式
あり
回 式
なし
回 式
あり
円/月
円/月
円/月
96,588
83,844
14,490
70,900
16,700
―
35,713
―
11,102
円/月
千円/年
96,588
1,159
98,334
1,180
87,600
1,051
46,815
562
運転方法
希釈の必要性
電力料金
凝集剤費用
消毒剤費用
計
Q18
養豚経営では、ふん処理と汚水処理の両方のコストが、特に中小規模の経営
に大きな負担となることが
えられます。規模に応じた環境対策が
えられ
ませんか。
経営者にとって可能な限り費用がかからないふん尿処理方法を選択しようとするの
は当然なことです。経営がおかれた状況を勘案しながら、大小さまざまな知恵と工夫が
今こそ求められていると言えます。表11に規模別の対策例を示しましたので参
てください。
― 26 ―
にし
表11 養豚一貫経営の規模別環境対策の例
種雌豚30頭以下
種雌豚30∼100頭程度
種雌豚100頭以上
ふんの処理
経営の実態に応じて、ふん
の耕地への還元や堆肥舎に
よる堆肥生産、耕種農家と
の連携を積極的に進めてい
く。
ふん尿の混合、雨水の混入
などを可能な限り防ぎ、ま
た安価な敷料が入手可能な
場合には積極的に 用 し
て、取り扱いやすい堆肥の
生産を行なう。
経営の実態に応じて、堆肥
舎や攪拌型堆肥化施設によ
る堆肥生産、耕種農家との
連携を積極的に進め て い
く。
豚舎は踏み込み式など処理
に有利な方式を組み 合 わ
せ、またふん尿の混合、雨
水の混入などを可能な限り
防ぐ。
コンポや開放攪拌型堆肥化
施設により良質な堆肥生産
を目指す。
堆肥は商品としての価値を
高めるため、袋詰や成 表
示、特殊肥料としての届出
などを行なう。
尿汚水の処理
ふん尿の混合、雨水の混入
を可能な限り防ぐな ど し
て、また安価な敷料が入手
可能な場合には積極的に
用して、汚水処理量の低減
を図る。
経営の実態に応じて、ふん
への撒布や曝気による液肥
化で処理する。
経営の実態に応じて、小規
模な浄化処理施設の設置や
ふんへの撒布や曝気による
液肥化で処理する。
豚舎は踏み込み式など処理
に有利な方式を組み 合 わ
せ、またふん尿の混合、雨
水の混入を可能な限り防ぐ
などして、処理負担を減ら
す。
ふん尿の混合、雨水の混入
を可能な限り防ぐな ど し
て、処理負担を減らす。
活性汚泥法を基本とした浄
化処理により河川放流を目
指す。
その他
現在の規模を維持し な が 臭気の発生に注意を払い、 臭気の発生に注意を払い、
ら、環境の調和と資源の有 豚舎周辺の環境整備を進め 豚舎周辺の環境整備を進め
効利用を図る。
る。
る。
現在の規模を当面は維持す 経営の長期計画にも と づ
るが、経営の実態に応じて き、環境に配慮しながら規
規模の選択が必要となる。 模拡大と経営の低コスト化
を目指す。
Q19
家畜ふん尿処理に係わるコスト計算に必要な知識について教えてくださ
い。
家畜ふん尿処理に必要なコストとして計上される具体的な品目や金額は、採用する
処理方式や処理能力によって異なりますが、コスト計算にはおおむね以下の費目を計
上すればよいと えられます。なお、対象となる施設、機械を他の部門と共用している
場合には、その程度により按
して計上します。
1.施設・機械の維持管理に要する費用
① 減価償却費
ふん尿処理施設・機械等を 用することによって生ずる価値の減少を、取得した
金額と定められた耐用年数により算定し,それに相当する金額を毎年費用として
計上します。補助事業等で取得した施設、機械等は実際に負担した金額を用いて計
算します。ふん尿処理に用いられる施設や機械の耐用年数は表12のとおりです。
② 修繕費
― 27 ―
故障、毀損などからふん尿処理施設・機械等を修復するために要した費用を計上
します。
③ 賃借料
ふん尿処理施設・機械等のリース料やレンタル料などを計上します。
④ 租税 課
ふん尿処理施設・機械等に対して課税される固定資産税、自動車税、重量税など
を計上します。
⑤ 保険料
ふん尿処理施設・機械等に掛ける火災保険、車両保険等の費用を計上します。
⑥ 支払地代
ふん尿処理施設・機械等を設置してある場所が借入地である場合に発生する地
代を計上します。
⑦ 支払利息
ふん尿処理施設・機械等の設置に要した費用の一部を借り入れた場合に発生す
る利息を計上します。
⑧ その他
①∼⑦に該当しないもので、施設・機械の維持管理に要する費用を計上します。
2.施設機械の運転に要する費用
① 労働費
ふん尿処理施設・機械を運転し、ふん尿を処理するのに要した労賃を計上しま
す。
② 燃料代
ふん尿処理施設・機械の運転に要した燃料代、オイル代等を計上します。
③ 電気料
ふん尿処理施設・機械の運転に要した電気料を計上します。
④ 水道料
ふん尿処理施設・機械の運転に要した水道料を計上します。
⑤ 消耗品費
ふん尿処理施設・機械の運転に要した消耗品を計上します。汚水処理に用いる凝
集剤、消毒剤等もこれに区 します。
⑥ 副資材費
堆肥化処理に要した水
調整剤等の資材費を計上します。
⑦保守・点検料
ふん尿処理施設・機械等を目的に って順調に運転するために、外部業者等に委
託して実施する保守・点検作業に必要な費用を計上します。
この他、外部から堆肥あるいは生ふんを買い入れ、自経営内で発生するふん尿等と混
ぜて堆肥化処理を行なう場合、原料代(堆肥代)として費用を計上することが えられ
ます。
なお、自経営から発生するふん尿については、特に必要がある場合
(たとえば、畜産
― 28 ―
と産業廃棄物処理をそれぞれ業として独立採算で行なっている場合など)
を除いて、有
市価物として評価することはありません。
表12 ふん尿処理施設・機械の耐用年数表
種
類
細
目
耐用年数
汚水処理施設
鉄筋、鉄筋コンクリート槽
コンクリート、金属槽
合成樹脂槽
機械及び装置
30年
15年
10年
7年
ふん尿乾燥及びふん
焼却施設
ふん尿乾燥機
ふん焼却機
5年
5年
プラスチックハウス
利用乾燥施設
主として鉄骨造り
主として木造造り
主として合成樹脂骨組
8年
5年
8年
付属 物
堆肥舎(木造)
堆肥舎(鉄筋コンクリート)
堆肥舎(鉄骨組)
18年
45年
20年
構築物
堆肥盤
20年
悪臭防止装置
大型脱臭装置
脱臭装置、換気装置
7年
5年
機 械
乗用トラック
マニュアスプレッダー
尿散布機(タンク車)
フロントローダー
フォークリフト
固液 離機
スラリーポンプ
バーンクリーナー
8年
5年
5年
4年
4年
5年
8年
8年
車 輌
し尿車(2トン以下)
し尿車(上記以外)
軽乗用車(660㏄以下)
貨物自動車(ダンプ式)
貨物自動車(上記以外)
3年
4年
4年
4年
5年
農水省「平成7年農畜産業用固定資産評価基準」による
Q20
累積負債が多く、経営者は家畜ふん尿処理施設の設置に消極的ですが、経営
中止になると連鎖的に問題が発生するため、地元関係機関は積極的に推進し
ており対応に苦慮しています。どのように対応したらよいのでしょうか。
通常の負債整理経営の診断と同様に、追加投資可能か否かの判断となります。しか
し、抜本的環境対策への追加投資不可能と判断されても、最小限の追加投資や経常的費
用の対応で、環境対策が可能な場合もあります。
― 29 ―
経営の継続が、地域経済の維持になる可能性があります。経営診断をもとに、地域で
の話し合いや合意が重要です。JA はもとより市町村や都道府県の振興施策にも関連し
ますので、関係機関との十 な協議が大切です。
ア.検証1
・JA や市町村の債務保証があるか、一部保証か全面保証か。
・一部保証の場合、農家負担額の年元利償還が可能か。
・移転により、環境基準が緩和されないか。
イ.検証2
・一時貯留以外に堆肥化センターや、外部委託など利用できないか。
・最小の投資で施設設計しているか。
・施設設置時の投資は補助金等が導入され、金額はすくないが、毎年経費計上され
る動力費・修理費等のランニングコストの検証。
ウ.最小限の追加投資や経常費用での対応
・ふん尿の河川流失や地下浸透を防止するため、簡易な手法を 察。
・暫定的に堆肥化センターの利用や、近隣の畜産農家との共同利用や賃貸利用の
察。
・2∼3年程度の対策として、野積みや素掘り対策でビニールシート被覆などの
簡易対応。
Q21
畜産環境改善にかかる家畜ふん尿処理利用施設
設のための農地取得、転
用についての留意点を教えてください。
家畜ふん尿処理施設等のために農地を取得または転用する場合は、原則として農地
転用許可を受けなければなりません。また、許可後に転用目的を変
する場合は、事業
計画の変 等の手続きを行なう必要があります。
この許可を受けないで無断で農地を転用あるいは転用許可にかかる事業計画どおり
に転用していない場合等には、農地法に違反することとなり、工事の中止や原状回復等
の命令がなされる場合があります
(農地法第83条の2)
。また、3年以下の懲役や100万
円以下の罰金という罰則の規定があります(農地法第92条)
。
農地の所有者が農地を転用する場合は、農地所有者が都道府県知事に許可を得ます。
ただし、市街化区域内の農地の転用をする場合は、農業委員会にあらかじめ届出を行な
えば許可を要しません。
都道府県の農地担当部局、市町村農業委員会で農地転用に関して幅広く相談に応じ
ています。
転用予定地の農地区 と審査(参 )
・第3種農地(都市的施設の整備された区域内の農地や市街地内の農地、例えば駅・
役場等からおおむね300ⅿ内の農地や市街地の中に介在する農地等)
:原則として
― 30 ―
許可
・第2種農地
(近い将来、市街地として発展する環境にある農地や農業 共投資の対
象となっていない生産力の低い小集団(おおむね20 未満)の農地):周辺の他の
土地に立地することが困難な場合、 益性の高い事業の用に供する場合は許可
・第1種農地(生産力の高い農地、集団農地、農業 共投資の対象となった農地):
原則として不許可、ただし、 益性の高い事業の用に供する場合は許可
・甲種農地(市街化調整区域内にある農業 共投資の対象となった農地(8年以内)
、
集団農地でかつ高性能農業機械による営農に適した農地)
:原則として不許可、た
だし、 益性の高い事業の用に供する場合は許可
(第1種農地の場合よりやや厳し
い)
・農用地区域内農地(市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域に
指定された区域内の地域内の農地):原則として不許可、ただし、農用地利用計画
に適合する農業用施設を
設する場合は許可
※第1種農地などであっても農業用施設、農畜産物処理加工施設、農畜産物販売施設を
設する場合は許可の対象とされます。
(市町村農業委員会・都道府県農業会議の「農地転用許可制度のあらまし」より)
― 31 ―
5.堆肥化処理に関する一問一答
Q22
堆肥化のメリットについて教えてください。
家畜ふんを堆肥化するメリットは、我が国にとって貴重な有機性肥料資源を、①汚物
感や悪臭をなくし、つかう側にとって取り扱いやすいものにできること、②肥料成
が
程よく含むことで、土壌や作物にとって優れた栄養 にできること、③持ち運びが容易
になり、よりリサイクル社会の進展に貢献可能なものにできること、があげられます。
しかし、せっかく良質な堆肥をつくっても、それをつかう側の理解が足りなければ、
余剰を生じてしまう危険があります。堆肥化のメリットを背景にして、地域における堆
肥利用のネットワークづくりや堆肥成
の
析等をもとにした用途の提案など、多角
的な面からの支援活動も不可欠です。
なお、上記の堆肥化のメリットについて、表13に整理しましたので参照してくださ
い。
表13 堆肥化のメリット
メリット
説
明
1. 用者にとって取り扱いやすい良質な有 汚物感や悪臭をなくし、病原菌や寄生虫なども
機質肥料資源
死滅させる。
2.土壌や作物にとって良質な有機質肥料資 有機物を十 に腐植させ、有害物質や雑草種子
源
などを 解・死滅させ、肥料成 をほどよく含
む有機肥料
3.有機資源リサイクルによって資源循環型 省資源・省エネルギー
社会に貢献
広く流通利用が可能
注)畜産環境アドバイザー養成研修会「堆肥化施設の設計・審査技術研修」資料 p 1、「家畜ふん
尿処理・利用の手引き」資料 p31より引用
Q23
堆肥化施設の導入を える上で注意する点は何ですか。
堆肥化施設の導入にあたっては、次のことに注意する必要があります。
1.計画どおりに堆肥ができることを最重要に える
戻し堆肥を用いて発酵槽投入時の水
堆肥が求める水
調整を行なう方式の施設では、出来上がった
までにならなければ、発酵が促進されない悪循環に陥る可能性があ
ります。しかし、実際に 設された施設を検証してみると、計画どおりに水 が下がら
ず、堆肥が水 調整材としての役割を果たさないと思われるものが多くあります。ま
た、水 は計画どおりに下がるものの、必要面積にくらべ施設面積を大きく設定しすぎ
ている場合もあります。堆肥化施設の
設費は面積の大小に大きく影響を受けますか
― 32 ―
ら、このような場合、無駄な投資を余儀なくされる可能性があります。
堆肥化施設導入にあたっては、導入する施設の特質をよく理解し、その施設を運転す
る前提となる条件を満たすことができるかどうかを十
検討しておく必要がありま
す。
2.見積内容をよく点検する
提出された見積書をよく見ますと、例えば堆肥化施設の堆肥貯蔵施設など、どうして
も必要な部 が抜け落ちている例が多くみられます。当初の見積もりでは最も安価な
メーカーに決めたつもりでも、工事完了までにさまざまなオプションが必要となって
結局高くなってしまった、と後悔しないためにも、見積書記載 だけで目的とする
「安
定的処理が可能な施設」が 設できるのかどうか、必ず確かめておく必要があります。
3.メーカーの保守体制も重要
施設がうまく運転されない理由には、管理者の落ち度による部
の大きいことがあ
げられます。確かにそういうことが多いだろうと思いますが、一方管理者の落ち度をも
たらすような施設の構造となっていたり、操作を間違いやすい仕組みになっているこ
とも要因として
受けて
えられるのではないかと思います。設置時にはひととおりの説明を
かったような気になっていても、生産者はふん尿処理施設の管理だけを行
なっている訳ではありませんから、操作を誤ることを想定しておく必要があります。そ
のために、例えば操作方法を大きく書いた掲示板を用意したり、万一不具合が起こった
ときの対応を かりやすい言葉で記述してあるマニュアルを用意したりすることなど
が少なくとも必要でしょう。また不具合が起こった場合、施設が順調な運転状態に復帰
するにはある程度時間がかかるはずですが、その間のメーカーのサポート体制も非常
に重要です。不具合の発生しにくい施設であることが最も重要ですが、一方、フェイル
セーフの え方で必要な対策をとることも大切です。
Q24
堆肥化施設の条件について教えてください。
条件としては、次のような事項があげられます。
① 年間を通して計画どおりの量や水
の家畜ふんを確実に堆肥化することができ
る施設(無理のない機能設計計算がなされている施設)
。
② 電気料、副資材購入費などのランニングコストが安い施設。
③ 機械の故障や損耗、 新時の負担などが少ない機械を 用している施設
(機械の
耐用年数は15年程度が限界です)
。
④ 運転・管理労力が少ない施設(作業性のよい施設)
。
⑤
設・施工費の安い施設。
⑥ 処理面積が少ない施設(処理できる面積の確保が必要です)。
― 33 ―
Q25
せっかく堆肥化施設をつくりましたが、思うように堆肥ができません。どう
してですか。
堆肥化の主役は好気性微生物ですから、その微生物の活動を活発にする適正な条件
を整える必要があります。
環境条件は、①栄養源、②水 、③空気、④微生物、⑤温度、⑥堆肥化期間の6つに
整理されます。
まず、堆肥化施設に投入する家畜排せつ物の水 含量が高いことが えられます。必
ず、水 調整して通気性の確保をした上で、堆肥化施設に投入してください。
堆肥化スタート時の水 は、副資材にオガクズやモミガラを混合した場合、豚ふんで
62%、牛ふんで72%以下に、予備乾燥または戻し堆肥混合の場合、豚・鶏ふんで58%以
下、牛ふんで68%以下が目安とされます。
設計した時の飼養頭数規模以上の家畜排せつ物量を処理しようとしていませんか。
設計時に堆肥化できる飼養頭数以上のものを投入すると、堆肥化期間や水
調整など
でうまくいかないことがあります。
計画のふん処理量、ふんの水 、副資材の 用量・水 、発酵スタート時の水 など
を守ることは当然であり、設計・計画で示されている堆積高、切り返し頻度、通気量な
どを守り、実行しなければなりません。
既に、設置されている堆肥化施設の維持管理指導を行なう場合には、まず、その施設
の設計・計画内容を調査・確認しなければなりません。
その設計・計画内容が初めから適切な内容でない場合には、その不適正さの程度にも
よりますが、維持管理指導だけで堆肥化機能が発揮されることは少なく、施設の増設も
しくは処理ふん量の減少などで対応する以外に方法がない場合が多い。
また、注意点としては、通気量の減少が上げられます。送風機の能力低下、通気孔の
閉塞などは比較的気がつきやすいが、開放直線型や回行型の場合、攪拌移送機の攪拌羽
根や刃の摩耗により発酵槽底盤に家畜ふんの盤ができて通気量の減少を招くことが多
い。
以上の堆肥化の条件と目安、堆肥化スタート時の水 について、表14∼15に整理して
示しておきます。
― 34 ―
表14 堆肥化の条件と目安
条
①栄養
件
目
安
は十 にあるか ・十 ある
・ BOD 濃度が数万㎎/㎏以上が目安
・ C/N の窒素過多は30前後
②水 は適当か
・水 含量は55∼77%以内適当
・通気性はよくなるように水 調整する。
③空気(酸素)は十 に ・通気性がよくなるように堆積する(高さ)。
送られているか
・容積量を700㎏/㎥に近づける。
・強制通気する場合には50∼300ℓ/ ・㎥が目安
④微生物は沢山いるか
・十 にいる。戻し堆肥で十 (種堆肥)
⑤温度は上昇しているか ・温度が60℃以上で数日間続くように
⑥時間はかけているか
・畜ふん(戻し堆肥)のみの場合60日間、稲わら・モミなどの作物
残 を混合した場合には90日間、オガクズ・バークなどの木質資
材を混合した場合は180日間
注)畜産環境アドバイザー養成研修会資料「堆肥処理技術の基本」p 1より引用
表15 堆肥化スタート時の水
副 資 材
畜
含量
種
牛
豚・鶏
副資材無 用
65%以下
55%以下
戻し堆肥混合
68%以下
58%以下
オガクズ混合
72%以下
62%以下
モミガラ混合
75%以下
65%以下
注)1.上記水 の場合の容積重はいづれも700㎏/
㎥と設定する。
2. 畜産環境アドバイザー養成研修会資料」p65
より引用
Q26
全国で堆肥の共励会(堆肥コンクール)が開催されています。良質堆肥の審
査基準にはどのような例がありますか。
堆肥の品質を表すいくつかの項目について点数をつけ、その合計点によって評価す
る方法
(評点法)
がよく われています。以下の表16∼17に某県の2つの例を示します。
― 35 ―
表16 堆肥の審査基準(例1)
合評価=官能検査合計×0.7+化学
析等合計×0.3
①官能検査[100点満点]
色相
材料の形状
臭気
感触(水 )
黄色 [5点] 原形のまま
(ふんの色)
[5点] ふん臭とアンモニア臭
握ると指の間からしたたる
[5点]
[5点]
黄褐色[10点] 一部崩れる
[10点] アンモニア臭が強い
強く握ると指の間からしみ
[10点] 出る
[10点]
褐色 [15点] 大部
[15点] 堆肥臭にアンモニア臭が残 強く握ると手のひらにかな
る
[15点] りつく
[15点]
崩れる
黒褐色[20点] ほとんどなし
[20点] 堆肥臭
黒色 [25点] 認めない
[25点] わずかにカビ臭 [25点] 強く握っても手のひらにつ
かない
[25点]
②化学
[20点] 強く握ると手のひらにわず
かにつく
[20点]
析値[100点満点]
水
C/N
NH N/(NO N+NH N)
発芽試験
40%未満[20点]
25未満[25点]
0∼20 [25点]
70%未満[10点]
40∼60%[25点]
25∼30[20点]
20∼40 [20点]
70∼80%[15点]
60∼65%[20点]
30∼35[15点]
40∼60 [15点]
80∼90%[20点]
65∼70%[15点]
35∼40[10点]
60∼80 [10点]
90%以上[25点]
70∼80%[10点]
40以上[5点]
80∼100[5点]
80∼85%[5点]
85%以上[0点]
― 36 ―
表17 堆肥の腐熟度判定指標
牛ふんを主原料とした堆肥の例です。豚ふんや鶏ふんでは、採点基準が若干異なります。
合得点50点未満:未熟、50∼74点:中熟、75点以上:完熟
判定項目
配点
採 点 基 準
色相
15
黄色[0点] 黄褐色[3点] 茶褐色[6点] 褐色[10点]
黒褐色[15点]
形状
15
材料の形をかなりとどめる[5点] かなり崩れる[10点]
材料の形をほとんど認めない[15点]
臭気
10
ふん尿のにおいが強い(刺激臭強い)
[0点] ふん尿の臭気が弱い(刺激臭弱
い)
[5点] ふん尿のにおいが全くない(無臭に近い)
[10点]
アンモニアガス
濃度
10
20㎎/ℓ以上[0点] 20∼10㎎/ℓ[2点] 10∼5㎎/ℓ[4点]
5∼2.5㎎/ℓ[6点] 2.5∼1.0㎎/ℓ[8点] 1.0㎎/ℓ未満[10点]
二酸化炭素ガス
濃度
10
10%以上[0点] 10∼7.5%[2点] 7.5∼5.0%[4点]
5.0∼2.5%[6点] 2.5∼1.0%[8点] 1.0未満[10点]
アンモニア態窒 5
素
(現物あたり)
1500㎎/㎏以上[1点] 1500∼1000㎎/㎏[2点]
1000∼500㎎/㎏[4点] 500∼250㎎/㎏[4点] 250㎎/㎏未満[5点]
硝酸態窒素
(現物あたり)
5
50㎎/㎏未満[1点] 50∼100㎎/㎏[2点] 100∼250㎎/㎏[3点]
250∼500㎎/㎏[4点] 500㎎/㎏以上[5点]
水
10
25%未満[2点] 25∼30%[5点] 30∼40%[8点]
40∼50%[10点] 50∼60%[7点] 60∼65%[5点] 65%以上[2点]
発芽インデック
ス
10
50%未満[0点] 50∼60%[2点] 60∼70%[4点]
70∼80%[6点] 80∼90%[8点] 90%以上[10点]
堆積期間
10
堆積発酵強制通気の場合(機械攪拌の場合強制通気として算出)
堆積日数30日以下=0
堆積日数31日以上=(堆積日数/30日−1)
×3点=(月数−1)
×3点
堆積発酵強制通気なしの場合
堆積日数30日以下=0
堆積日数31日以上=(堆積日数/30日−1)
×2点=(月数−1)
×2点
切返し回数(回)
堆積発酵の場合
3回以下=0
4回以上=(切返し回数−3回)×2点
機械攪拌の場合(機械攪拌日数7日を切返し1回としてカウントし、カウント
を評点とする。
)
機械攪拌日数/7日
(堆積期間と切り返し回数については、25点満点で評価し10点満点に補正)
― 37 ―
6.汚水処理に関する一問一答
Q27
畜産で利用されている汚水処理技術の種類について教えてください。
畜産で利用されている汚水処理技術には、次の図7のようなものがあります。
図7
畜産に利用されている汚水処理技術の種類
― 38 ―
Q28
各種の汚水処理技術を比較するとどのようになりますか。
各種汚水処理技術を規模、処理目標、BOD 除去率、敷地面積、維持管理、施設費など
から比較すると表18のようになります。
表18 各種汚水処理技術の比較
適用規模
処理目標
BOD
除去率
敷地面積
小∼大
放流
90∼95%
小
活 性 回 式
汚泥法
曝気式ラグーン法
小∼中
放流
小∼大
散水濾床法
生
物 回転円板法
膜
接触酸化法
処理方法
連続式
維持管理
技術 経費
施設費
難
大
大
90∼95% (酸化溝は中)
中
中
中∼大
放流
90∼95%
大
中
中
中∼大
小∼大
放流
80∼90%
小
中
中
中
小∼大
放流
80∼90%
小
中
小
中
小∼大
放流
80∼90%
小
中
中
中
簡易曝気法
小∼中
減臭・施肥
80%
大
易
小
小
蒸 回転円板法
発 ハウス乾燥
濃
縮
堆積発酵
中∼大
蒸発
―
小
易
大
大
小∼中
蒸発
―
大
易
中
小
小∼中
蒸発
―
大
中
中
中
土壌浸透蒸散
小
浸透・蒸発
―
大
易
小
小
肥料利用(貯留)
小
施肥
―
大
易
小
小
メタン発酵法
小∼大
施肥
70∼90%
大
中
中
大
メタン発酵法+活性汚泥法
小∼大
放流
90∼95%
大
難
大
大
Q29
畜舎からの排水量を把握するにはどのような方法がありますか。
排水量を把握するには、
① 集水ピットが半日で1日
の水量が貯えられるくらい大きければ、集水ピット
水位で測定できます。
② 汚水ポンプが設置されている場合は、ポンプにアワーメーターを取り付けて計
測できます。
③ 基準値を用いる方法もあります。浄化処理施設の規模算定に用いる設計基準値
は表19のとおりです。
今後事業で施設器具の導入をはかるときは、上記基準値を用いる場合が多くなるで
しょう。
なお、将来増頭する場合には排出量が増加しますので将来計画をしっかり立て、増頭
― 39 ―
したとき排出量がどのくらい増えるか上記測定値によって予想しなければなりませ
ん。
表19 浄化処理施設の規模算定に用いる設計基準値
畜
種
尿汚水量
BOD 量
SS 量
備
肥育豚
15ℓ/頭・日
50ℊ/頭・日
80ℊ/頭・日
経産牛
60ℓ/頭・日
350ℊ/頭・日
350ℊ/頭・日
一般的な畜舎内ふん尿
離率が前提
注)1.肥育豚への換算方法については下記のとおり換算します。
①哺乳中の子豚と母豚は合わせて肥育豚3頭 に換算
②離乳後体重30∼40㎏程度までの子豚は肥育豚1/3頭 に換算
③繁殖豚は雄も雌も肥育豚2頭 に換算
④一貫経営の場合は繁殖母豚頭数の10倍
2.経産牛への換算方法については下記のとおり換算します。
子牛、育成牛の場合は体重割合とし、例えば体重200㎏の育成牛は経産牛の1/3頭
とするが、乾乳牛は安全性を 慮して経産牛1頭 として計算します。
Q30
汚水浄化処理施設を設置するうえで、どのようなことを留意すればよいか
教えてください。
浄化槽管理はひとえに微生物管理につきます。家畜が生理を無視した超過密状態の
飼育管理では十
な発育ができないように、微生物でも快適な環境をつくってやらな
いと十 な浄化能力を発揮できません。汚水中の有機物
解には各種の微生物が、それ
ぞれの 解過程で関与していますので、それぞれの微生物が活動しやすい環境が必要
です。
その指標となるものに容積負荷と汚泥負荷があります。これらの負荷が高くなるに
つれ浄化槽管理は難しくなり、ついには管理不能となります。
① BOD 容積負荷量とは、曝気槽1㎥当たり1日に BOD 量をどれだけ処理させる
かを示します。曝気槽に流入する汚水中の BOD 量を曝気槽の容量(㎥)で割りま
す。この値はできるだけ低いことが望ましく、高くても0.5㎏╱㎥・日以上の容積
負荷は避けた方がよいといわれています。現実には1.0㎏╱㎥・日以上の容積負荷
になって処理不能に陥っているところがあります。
したがって、BOD 容積負荷量は適正な曝気槽の容量を決定する指標です。BOD
容積負荷量を0.3㎏╱㎥・日に設定したいとき、1日当たり流入する BOD 量が150
㎏のときは、150(㎏)
÷0.3(㎏╱㎥)
=500㎥の容量を持つ曝気槽を 造すればよ
いことになります。
② BOD―MLSS 負荷量とは、微生物の指標である M LSS 1㎏に1日に BOD 量を
どれだけ処理させるかを示します。1日に曝気槽に流入する BOD 量(㎏)を曝気
槽内 M LSS 量(㎏)で割ります。通常は連続式活性汚泥法では0.3∼0.4BOD―㎏
╱ MLSS―㎏・日、回 式活性汚泥法では0.1∼0.2BOD―㎏╱ MLSS―㎏・日で
― 40 ―
設定されることが多いのです。低いほど安全といえます。
(メスシリンダーに1ℓの曝気槽内混合液を入れ、
MLSS の測定は、SV を測定し
30 間の沈殿物の量を%で示した数値を SV といいます)、次の式で示します。
=SV(%)╱k×10,000
MLSS(㎎╱ℓ)
kは定数で100∼150の数値です。通常、k=100ですので、結局 SV のパーセン
ト値を100倍した数値が M LSS となります。ただし、MLSS が5,000㎎╱ℓを超え
るとパーセントが急激に増加するのでk=110∼120になります。すなわち、8,000
㎎╱ℓになるとk=120の値に近くなります。
Q31
新規に浄化槽を設置しようと思うのですが、どのような浄化槽がよいので
しょうか。
畜産経営者にとって、浄化処理に労働力・時間はあまりさくことができません。管理
の手間のいる汚水処理施設であれば、せっかく施設を設置していても、だんだん管理が
できなくなり、浄化処理がうまくいかなくなります。そのため、経営者の管理が楽な汚
水処理施設の設置が望まれます。また、高性能の汚水処理施設になればなるほど、管理
の手間が必要になり、専属の管理者が必要になり、つきっきりで管理しなくてはならな
くなります。多くさんの人数を要している経営であれば可能ですが、家族労働が基本で
ある経営においては、このような汚水処理施設の設置は望ましくありません。そこで、
浄化槽の種類と性質の違いをよく理解し、自
の経営にあった浄化槽を設置すべきで
す。
連続式の浄化槽では、ディフューザーの洗浄・ 換、ポンプ・ブロアの 換が比較的
難しく、メンテナンスがしっかりしていないと設計されたとおりの性能が発揮されな
くなります。
また、曝気槽の BOD 容積負荷量が0.4㎏/㎥・日以下になるように設定されている低
負荷型の汚水処理施設であれば、活性汚泥の引き抜き汚泥量も多くならず、汚泥処理に
かかる費用や労働も少なくてすみます。活性汚泥量が多くなれば、脱水機や汚泥濃縮槽
での処理に手間がとられます。
回 式の浄化槽は、活性汚泥の発生量が抑えられており、その処理面積が必要です
が、乾燥処理なので、比較的楽にできます。
どの汚水処理施設も引き抜き活性汚泥の処理が必要になりますが、メーカーの設計
書にはそこまで設計金額に入っていない場合が多い。
汚水処理施設を設置する場合、処理すべき飼養頭数をはっきりとしておき、将来増頭
する予定があるときには、あらかじめ将来の飼養頭数で設計しなくてはいけません。汚
水処理施設設計時の家畜飼養頭数を上回ってはいけません。
また、汚水処理施設は基本的に、活性汚泥による浄化処理になりますから、一概には
いえませんが、必要以上に機械類が多くない方がよいでしょう。機械が多くなればなる
― 41 ―
ほど、メンテナンスが大変です。
Q32
尿汚水浄化槽の活性汚泥法とはどのような処理法ですか。
尿汚水を曝気(空気を吹き込んで酸素を供給すること)し続けると、好気性微生物が
有機物を 解しながら増殖してきて、フロックと呼ばれる綿状の浮遊物を形成します。
このフロックが活性汚泥です。その他の浮遊物も付着しさらに各種原生動物、藻類など
も集まってきて尿汚水を浄化するのです。さらに、活性汚泥は、静置すると凝集・沈殿
する性質も持っていますので、フロックと上澄水が 離できます。
これらの作用を利用するのが好気性浄化処理法ですが、活性汚泥法と生物膜法の二
つの方法に大別されます。
① 活性汚泥法
活性汚泥法とは、曝気槽にフロックを高濃度に浮遊させ、そこに原水を投入し、
曝気して好気処理をします。次いで沈殿槽に導入し、凝集・沈殿させ上澄水を
離
して処理します。これは運転方法によって2つの方法に けられます。1つは連続
式活性汚泥法で、図8に標準型を掲載しました。もう1つは、図9に示した回
式
活性汚泥法です。両者の違いは、連続式ではそれぞれ機能の異なった槽を設置しま
すが、回 式では単一槽で原水の流入・曝気・沈殿・排水の四行程を行なうところ
にあります。
図8
連続式標準活性汚泥法のフローチャート
― 42 ―
図9
回
式活性汚泥法のフローチャート
② 生物膜法
生物膜法とは、砕石などの濾材や円盤にフロックを付着させ、曝気を行わず、濾
材間や表面の空気から酸素を取り込む方法や、槽内の充塡物にフロックを付着さ
せ、曝気をして汚泥水を微生物膜に接触させる方法などがあります。
Q33
汚水を活性汚泥法で浄化処理するには、曝気槽内へ流入する原水の BOD 濃
度が一定でなければならない理由を教えてください。
① 回 式活性汚泥法は一つの大きな単一の槽で原水の流入、曝気、沈殿、排水の4
行程を行なう方法です。原水の BOD 濃度20∼30%増までは処理できますが、増加
幅が50%を越えると処理が困難になるといいます。
② 二段竪型連続式活性汚泥法は、原水槽、調整槽、第1曝気槽、第2曝気槽、第2
沈殿槽、処理水槽といった作用の異なる槽を連結してコンパクトに一カ所にまと
めた方法です。原水の BOD 濃度は、平 値から上下25∼50%の変動であれば処理
できるといいます。BOD には濃度と重量の概念があり、曝気槽の設計では両方を
い けているので注意が必要です。
③ 例えば、BOD 濃度5,000㎎╱ℓの尿汚水が1日あたり10㎥排出される場合、BOD
量は50㎏となりますが、2,500㎎╱ℓが20㎥でも BOD 量は50㎏となります。従っ
て、両者の場合、尿汚水量は10㎥と20㎥で違いますが、BOD 量は同じなので曝気
槽容量は同じでよいのです。しかし、同一浄化槽に流入する排水量が短期間にこん
なに異なりますと、特に連続式の場合は曝気槽中の尿汚水の滞留時間が異なって
きますので、微生物相に変化をきたし、曝気能力が低下することが懸念されます。
④ 特別な管理をして、排水量に大幅な変動がなければ、曝気能力に変調をきたすこ
― 43 ―
とはありませんが、浄化槽管理とは微生物相を安定化させることですので、限りな
く定時、定量、定質であるほど管理は楽です。したがって、連続式の場合、曝気槽
に負荷を一度にかけないように24時間 等に汚水を流入させた方がよいのです。
Q34
活性汚泥法で発生する余剰汚泥処理について教えてください。
曝気槽内では、膨大な余剰汚泥が返送され、かつ排出されるので、受け皿となる堆肥
舎、圃場も十 な面積を確保する必要があります。
堆肥舎、圃場面積を確保するとき、例えば母豚500頭一貫経営の場合、ふんの堆肥化
施設1,706㎡の他に、汚泥堆肥化施設761㎡ の増設が必要です。また、増設 の販路の
確保、圃場の確保が必要です。
なお、上記の繁殖母豚500頭一貫経営の算定は以下によるものです。
ア.前提条件
・固液 離機ふるい け固形物量:600㎏╱日(水 率80%)
・汚泥脱水機による脱水汚泥量:1,680㎏╱日(水 率85%)
・汚泥、オガクズとも発酵熱量は3,000kcal ╱㎏とする。
・汚泥 解率:20%、オガクズ 解率:10%とする。
・オガクズ水
率:25%、容積重:250㎏╱㎥とする。
・水1㎏蒸発に必要な熱量:900kcal ╱㎏とする。
・堆肥化施設で自然蒸発する水 量:1㎏╱㎡とする。
・乾燥施設で自然蒸発する水 量:3㎏╱㎡とする。
イ.ふんの堆肥化施設規模
・発酵槽面積:1,266㎡
・堆肥貯蔵槽面積:440㎡(2ヵ月間貯蔵)
・合計施設面積:1,706㎡
・ふん堆肥生産量:6,593㎏╱日
ウ.汚泥の堆肥化施設規模
・混合槽面積:17㎡(1日
のオガクズを30㎝の厚さに広げ、その上に汚泥を搬
入)
・混合物貯蔵槽面積:18㎡(切り返し作業が週1回のため1週間
の混合物を貯
蔵する。堆積高は2ⅿ)
・発酵槽面積:175㎡
・乾燥舎面積:368㎡(元のオガクズの水 率25%になるよう設計)
・貯留槽面積:183㎡(2ヵ月間貯蔵)
・合計施設面積:761㎡
・汚泥堆肥生産量:1,526㎏╱日
・水 調整用のオガクズは2回転までつかうこととする。
― 44 ―
Q35
活性汚泥法で発生する余剰汚泥処理について、堆肥化以外の処理方法また
は利用方法があるか教えてください。
余剰汚泥処理は、余剰汚泥(微生物の塊:フロックとも呼ぶ)を凝集剤で集めて、脱
水機で り、堆肥化処理し、耕地還元するのが一般的です。脱水方法として、砂ろ床を
活用したシステムを開発しているメーカーもありますが、この場合も、堆肥化処理しま
す。
小規模経営や、労力、還元地が確保できる経営では、余剰汚泥をそのまま農地へ還元
することも、簡単な低コスト処理法として有効でしょう。バキュームカーで余剰汚泥を
散布し、その後ロータリー等で耕起します。余剰汚泥を農地へ還元する場合には、農地
への窒素負荷が高くならないように、余剰汚泥の成
析を必ず行ない、その他の肥料
等もあわせて施用量を決定します。
余剰汚泥を効率良く処理するために、濃縮が必要な場合があります。濃縮は沈殿に
よって行なうことから、このための施設は、底部を円錐状にするなど沈殿槽の構造が必
要です。なお、飼料タンクを沈殿槽として利用している経営もあります。この場合、余
剰汚泥取出口とバキュームカーで吸引するジョイントが、簡単に接続できるように、取
り付け口の高さ等には気をつけたいものです。
余剰汚泥は、ほとんど臭気がなく、脱臭効果もあるようです。農家で家畜ふんの堆肥
化処理時の臭気対策に活用している事例があります。堆肥舎から集めた臭気をダクト
で筒内に導き、筒内を通る際に余剰汚泥液を噴霧することで臭気を除去しているよう
です。散布量や、効果など今後の課題でしょう。
Q36
曝気槽の稼働時の一般的なチェックポイントを教えてください。
① 停電などの不慮の事故に対する対策(例:自家発電機の設置など)を十 に立て
ておかなければなりません。
② 一人だけが専従となるのではなく、必ず複数の人が同一技術水準をもって管理
できる体制をとっておきます。
③ メーカーの迅速な指示を常に得られる体制を取っておきます。
Q37
曝気槽の注意事項について教えてください。
一般に微生物の反応速度は、温度が10度上がるごとに2倍になるといわれます。この
― 45 ―
ことは夏に対して冬は BOD
解速度が大幅に低下するということです。したがって、
冬は活性汚泥量を夏より多くしたり、曝気槽の滞留時間を長くしたり、あるいは両方を
組合せたりします。この調整は水温が下がりはじめる9月頃からはじめ、10∼11月には
活性汚泥の働きが低下するので、なおさら注意して活性汚泥量の安定化、酸素供給の最
終調整をしておかなければなりません。
なお、温度が変化する季節の変わり目である2∼3月と9∼10月頃にも気を付けて
曝気量を調整しなければなりません。
Q38
日常の曝気槽管理について教えてください。
曝気槽が正常に稼働しているかどうか次の諸点について常に注意しなければなりま
せん。
① 曝気槽、沈殿槽の汚水の性状を毎日調査し、記録しておきましょう。この記録は
次回の異常の時どうすればよいのかの重要な指針を与えてくれます。
② 色調が赤褐色の状態になるように調節します。褐色、茶褐色までは良好といえま
すが、ふん尿色に近づくほど過負荷か酸素不足の状態を示します。さらに酸素不足
状態が続くと黒色になってきます。
③ 臭気はほとんどないか、わずかに土臭か川臭がする程度が正常です。ふん尿臭が
するほど過負荷か酸素不足状態を示します。さらに進んで腐敗臭になりますと、汚
水の腐敗、酸素不足、曝気槽の対流不足状態です。
④ 曝気が良好な状態では、曝気で生じた泡は速やかに消えます。ところが、既述し
たように曝気槽の微生物相が変化すると、発生した泡は粘性を持って消えず、曝気
槽表面を覆うほどになります。
茶色の泡の場合、余剰汚泥の引き抜き不足が えられますので、引き抜き量を調
整しなければなりません。白い泡の場合、曝気のし過ぎの可能性が大きいので、こ
の場合には、曝気量を下げます。
普通の泡は処理水を散水することによって消すことができますが、泡も寒冷期
では保温効果があるのです。消泡剤で消えますが、経費がかかります。
適正な施設規模の処理施設で上記に記載された諸点に適切に対応した管理をし
ている状態で発生する泡に対しては、神経質になることはありません。
Q39
曝気槽出口での㏗の異常に対する対策について教えてください。
曝気槽出口では㏗7.0前後になっていれば正常です。
尿汚水中には多量の窒素がアンモニアの形で含まれています。したがって、㏗はアル
― 46 ―
カリに傾き8以上になると汚泥が沈殿しなくなります。㏗は6∼8が正常ですので、こ
の範囲になるように㏗が高くなったら曝気量を上げ、㏗が下がったら曝気量を下げる
ように調整しなければなりません。また、原水濃度が高すぎることから凝集剤で固形物
を沈殿除去しようとする場合、アンモニアまで除去できないので、やはりアルカリにな
る可能性があります。これが8以上になると浄化不能となりますので、希釈するか、活
性汚泥量を多くする操作が必要になります。
曝気をして、アンモニア態窒素から亜硝酸態窒素、硝酸態窒素と変化しても、それ以
降窒素ガスとなって空気中に放出(脱窒)される量が少ないと処理水は酸性に傾いてい
き、汚泥は沈殿しなくなる可能性があります。
連続式活性汚泥法はこの脱窒が泣き所です。脱窒を連続式活性汚泥法で行なうには、
原水段階の BOD、SS 濃度を少なくとも5,000㎎╱ℓ以下になるように希釈するのが早
道です。それ以上の濃度になると素人では脱窒まで行なうのは次第に難しくなってき
て、最終的にはエタノール投入装置、あるいは中空糸膜などの膜処理装置を増設して対
応しなければならなくなります。経費がかかります。
Q40
豚舎から排出される原水の腐敗と過負荷の対策について教えてください。
① 原水が腐敗すると黒色に変色し、卵の腐敗臭
(硫化水素)
、タマネギの腐敗臭
(メ
チルメルカブタン)、野菜腐敗臭(硫化メチル)等々の悪臭が出てきます。原水の
腐敗防止のため、豚舎ピットの中に汚水を長期間貯めないようにしなければなり
ません。
それ以外にも浄化槽が何らかの理由で浄化能力が低下し、それが長期間におよ
んだときに起きることがあります。
この場合、最終処理水の措置の問題がありますので、原因を追及して早急に改善
を図らなければなりません。改善策が立ったら腐敗汚水は抜き取って畑に還元す
るなりして、最初から出発し直した方が改善しやすくなります。
② 過負荷の問題は、活性汚泥(MLSS)が少なすぎる場合、原水濃度が濃すぎる場
合、余剰汚泥の引き抜き量が少なすぎる場合があります。
ア.活性汚泥(MLSS)が少なすぎる場合は、曝気量を適宜落としたりして調整し
ます。
イ.原水濃度が濃すぎる場合は、原水の汚濁物質の量を削減する対策を えます。
固液 離状況を調べ、固液 離を強化したり、凝集剤を 用したりします。それ
でも不十 なときは、希釈するか、新たに浄化槽を 造するか、液肥として土壌
還元するか全く別の手段を採らなければなりません。
ウ.余剰汚泥の引き抜き量が少なすぎる場合は、既述のように適宜対応しなければ
なりません。
― 47 ―
Q41
豚舎内部の設備改善について教えてください。
① 固液 離は、できるだけ実施した方が負荷が軽くなり、後の浄化処理が容易にな
ります。
② 雨水と豚舎から排出する尿汚水は完全に
離し、雨
などの雨水が尿汚水処理
施設に流入しないようにしなければなりません。
③ スクレーパーが故障したため、ふん尿 離がうまくいかず、高濃度の混合液が浄
化槽に入り浄化不能になっていることがあります。これは用地造成時の締め固め
や寝かせ期間が不十
なときによく起こります。床上は改修できるとしても床下
の改修は不可能に近いので工事施工時に十 注意しなければなりません。
なお、経年変化ですり減ってくる場合もありますので注意が必要です。
Q42
パーラー排水の処理方法にはどのようなものがありますか。
パーラー排水の平 的な性質は表20に示すとおりです。処理方法としては、尿汚水と
同じように活性汚泥法が推奨されます。排水量と BOD 量に合わせて、適正な規模の活
性汚泥処理施設を選択します。人間用の浄化槽も利用されていますが、コストがかさむ
ことから、畜産用の簡易で低コストな活性汚泥処理施設も利用されています。パーラー
では消毒剤が われますが、通常の
用量ならば活性汚泥の微生物に大きな悪影響を
およぼすことはありません。
表20 パーラー排水の性質
排水量
(㎥/日)
pH
2∼3
7.3
BOD
(㎎/ℓ)
COD
(㎎/ℓ)
SS
(㎎/ℓ)
窒素
(㎎/ℓ)
リン
(㎎/ℓ)
1,188
844
1,014
119
28
大腸菌群数
(個/㎖)
0∼2,400
注) 1) 搾乳牛頭数が50∼100頭規模の場合 2) 19事例の平 値
3) 17事例の平 値 4) 17事例の範囲
Q43
汚水処理施設を設置する上で業者の選定と注意事項について教えてくださ
い。
浄化槽を設置しようとする人の中には、経費節減を図るため、メーカーの設計図のよ
いところだけを採用し、規模縮小などをして発注することがあります。このような設備
の場合、結果的には浄化能力が足りず、環境汚染を起こしている事例があります。専門
― 48 ―
メーカーによく相談して納得の上で施工すべきです。地域には汚水処理アドバイザー
もおりますので相談されるのもよいでしょう。
その他の留意点として助言すべき事項をあげると次のとおりです。
① アフターケアのしっかりとしたメーカーを選びます。
② 実績のあるメーカーを選びます。実績を十 に調査し、長所、欠点を十 に把握
しなければなりません。
③ 実績がないメーカーを選定するときは、施設の計画書を十 に検討した上で、最
後まで面倒をみてくれることを契約書に明記する必要があります。
④ より廉価なメーカーを選定しがちですが、廉価であるほど後で能力が発揮出来
ず問題になっているところが多い傾向にあります。納入実績が多く、しっかりした
メーカーほど高額の場合が多く、結果的には、こちらの方が安くつく場合がありま
す。
Q44
汚水処理後の放流にあたっての留意事項(水利組合との協議等)や改善に至
るまでの事例を紹介してください。
図10に某県の素掘り解消に取り組んだ事例について紹介します。
― 49 ―
図10 素掘り解消取り組み事例フロー
【取組事例の解説】
家畜尿汚水の素掘りや汚水流出を解消する手順及び方策について事例で解説しま
す。
① 河川の水質汚濁による地域住民からの苦情が市町村に寄せられる。
・市町村は、環境汚染である水質汚濁の状況を確認する。
② 市町村は地域の農林事務所、農業改良普及センター、保 所など行政機関及び農
― 50 ―
協等の担当者に参集願い、緊急を要することについて優先順位を付け、改善事項を
提案するなど対応策について協議を行なう。
・とりあえず、一時的ではあっても汚水を流出させないことが重要です。
③ 地域の状況を熟知した市町村の担当者は、経営主へ環境汚染(汚水流出)の状況
と②の対応策を説明し、実行するように促す。
・ここでは、経営主は、地域住民に対し直ちに謝罪に行くなど、誠意を持って行動
することがその後の協議等をスムーズに進行させる上で重要です。
④ 具体的な改善への取組みは、市町村が主体となって設置した
「○○養豚場の尿汚
水浄化処理施設整備推進協議会」で行政機関や団体の支援指導を仰ぎながら協議
する。
・浄化処理施設整備を行なう場合、豚舎の構造を十
に把握した上で検討するこ
とが必要です。
・浄化槽の管理、労力、費用などについて、経営主が十 納得した処理施設整備計
画案を作成することが重要です。
⑤ 地域の住民への説明会は、地域の区長・ 長や水利組合・漁協の代表などにわか
りやすく説明する。
・説明会を実施する前に、関係機関や団体と十 協議しておくことが重要です。
・最初の説明会は、事業主体と市町村の担当課と地域の代表者程度の出席にとど
め、他の行政機関や団体等はその前の計画協議など後方支援に止めておきます。
・最初から多人数で開催すると、感情的な発言や、収拾がつかなくなることが予想
され、説明会に無駄な時間を費やすことになるおそれがあります。
・徐々に出席者を増やして最終的に必要な同意を取得します。
・場合によっては、導入しようとする施設の現地視察等も有効です。
⑥
害防止協定を締結する。
・ 害防止協定の締結は、事前に行政機関(市町村・県出先機関・保 所)や団体
(団体等)の協力を得て、特に質問事項を想定するなど、対応策を十 に協議し
ておくことが重要です。
・地域住民代表者と事業主体・市町村担当者が、十
に納得のいくまで議論を
わ
し 害防止協定を締結すべきです。
⑦ 豚尿汚水浄化処理施設を設置する。
・畜産環境アドバイザーに相談して、設計内容のチェック、アフターケアのしっか
りしたメーカーを選定します。
Q45
放流基準を満たす処理水は自己敷地内に地下浸透させてもよいのでしょう
か。
① 水質汚濁防止法では、有害物質を製造・ 用・処理する施設を有する特定事業場
― 51 ―
(
「有害物質 用特定事業場」という)から地下に汚水等を、濃度にかかわらず、
地下浸透させることを禁止しています。畜産農家は、
「有害物質 用特定事業場」
には当たらないことから、上記の地下浸透規制の対象とはされません。
② ただし、これとは別に、有害物質を含む水の地下浸透による人の 康への被害を
防止するため浄化基準(例:硝酸性窒素は10㎎/ℓ)が定められていて、特定事業
場(
「有害物質
用特定事業場」とは異なる通常の特定事業場で畜産農家を含む)
から有害物質を含む水が地下浸透したことにより、地下水の有害物質の濃度が浄
化基準を超えた場合、都道府県知事は当該特定事業場の設置者に対し、地下水浄化
のための措置をとるよう命ずることができるとされています。
③ このため地下浸透については、排水基準を満たす処理水であっても、継続的に地
下浸透させることにより地下水を汚染する可能性があることに十
留意する必要
があります。仮に地下浸透せざるを得ない場合においては、地域条件に配慮し、水
生植物等の植生を活用した水質浄化や、軽石や炭等のろ材に付着した微生物によ
る 解を利用した接触ろ過の組み合わせにより一層の負荷軽減を措置するなど、
可能な限り環境への負荷を低減するといった対応が必要と えます。
― 52 ―
7.焼却処理・バイオガスに関する一問一答
Q46
家畜排せつ物法においてふん尿の適正な管理がいわれていますが、ふんを
焼却処理してもよいのでしょうか。
家畜ふんは水
が多く含まれており、これらを燃焼させるためにはエネルギーの補
充が必要であり、排煙の脱臭にも大量の燃料が必要です。畜産の 野では極めて限られ
た処理技術ですが、鶏のふんの処理の場合には焼却処理は利用されています。この焼却
灰が肥料として販売されている事例もあります。
また、ばい煙等の発生施設を設置する場合は、施設の構造、 用方法、ばい煙の処理
方法等について都道府県知事に届け出る(大気汚染防止法第6条)とともに、排出基準
等の規制を遵守しなければなりません。さらに、有害大気汚染物質でその排出、飛散を
早急に抑制しなければならない指定物質の1つとしてダイオキシンがあり、それにつ
いても排出基準が決められています。
水田の稲わら、せん定枝、干し草、雑草、野菜 などの農業の野焼きや伝統行事の山
焼きなどは、規制対象外ですが、廃棄物処理法で、廃ビニール、プラスティック、ゴム
や金属 、廃油、廃材、動物のふん尿などの野外焼却は禁じられています。
なお、平成12年4月に悪臭防止法の一部改正があり、悪質な野外焼却は全面禁止に
なっています。
Q47
バイオガスプラントを
設する上での留意点と利用上で注意しておく点に
ついて教えてください。
バイオガスプラントは、近年脚光を浴びている施設です。しかしながら、バイオガス
プラントは直接的にふん尿処理を行なう施設ではありません、十
内容を吟味検討し
て計画を作成する必要があります。
1.バイオガスにかかるふん尿処理
ふん尿→嫌気性発酵→メタンガス+水+非発酵物質
メタン菌による嫌気性発酵でメタンガスが発生し、メタンガスをエネルギーとして
回収利用するのが、バイオガスプラントです。この嫌気性発酵により投入された原材料
のふん尿の容積はほとんど変化しません、よく誤解される点です。
嫌気性発酵にとって致命的なのは、気温の低下で外気温がマイナスとなる北国では
加温等により発酵液の温度管理が重要です。北国の厳冬期では、プラントのエネルギー
収支がマイナスの場合もあり注意が必要です。
2.発酵処理後の廃液
― 53 ―
ふん尿の有機質が 解され、メタンガスとして回収された残りが廃液です。この廃液
は肥料としての養
は豊富で、液肥の前処理として有効な手段です。
廃液処理の基本は農地への還元です、仮に廃液の浄化を
えるのであれば初めから
浄化処理を選択すべきです。バイオガスプラントの 設費は億の単位です、小規模プラ
ントでも1億のオーダーが必要です。
― 54 ―
8.バイオベッド畜舎に関する一問一答
Q48
いわゆる「踏み込み式豚舎」を活用してふん尿処理量の低減を図ろうとして
いますが、設置に際して注意することは何ですか。
踏み込み式豚舎は、安価、簡易な養豚施設として定着しており、生産コストの低減に
一定の役割を果たしているといえます。さらに、踏み込み式豚舎は水 が自然蒸発やふ
ん尿の発酵熱により低下して処理すべきふん尿量の減少が見込まれることから、特に
汚水処理の方策を見いだすことが経営経済的に難しい場合が多いと
えられる中小規
模以下の養豚経営には有効であると えられます。
しかし一方、踏み込み式豚舎は衛生面や臭気をはじめとしてさまざまな問題を包含
していることも確かであり、安直にふん尿処理を踏み込み式豚舎に頼ることは、好まし
くない結果をもたらす可能性が否定できません。また一部には踏み込み式豚舎に対し
て「食肉生産の場」の観点から疑問を呈する声もあります。
踏み込み式豚舎にはいくつかのタイプがあり、肥育豚舎についての最近の調査によ
ると、床面にコンクリートを打設して屋根をかけた簡易豚舎方式が最も多く約6割を
占め、次いで豚舎敷地内や畑等の農地にビニールハウスを設置して豚を収容するハウ
ス豚舎方式が全体の3割程度となっています(図11参照)。またハウス豚舎における別
の調査では、ふん尿由来成
が浅いながらも地中に染み込んでいることがわかってい
ます。
豚舎は「家畜排せつ物法」の対象とはならないと えられますが、地中にふん尿由来
成
が染み込むことは避けるべきことであり、踏み込み式豚舎を 設する場合には、コ
ンクリートの打設や不透水性シートの敷設などにより、ふん尿由来成
が豚舎床面か
ら地中に浸透しないようにするとともに、雨水の吹き込み等によりふん尿が泥状化し
図11 肥育豚舎における踏み込み式豚舎タイプ別割合
― 55 ―
て豚舎外に漏出することがないような対策もあわせてとるべきであると
えられま
す。また、適正な飼育密度を保ち、定期的に床の 換やオガクズ等の敷料の追加を行な
うなどして、管理に十 気を配ることが求められます。さらに、踏み込み式豚舎は設置
後年数を経ている場合が多い実態から見ると、設置にあたっては農地法等各種法令に
抵触しないような配慮が必要です。
Q49
酪農におけるバイオベッド方式(発酵床方式)牛舎のメリットと留意点につ
いて教えてください。
家畜管理とふん尿処理を結合したバイオベッド方式(発酵床方式)は、家畜や環境に
やさしい新たな家畜管理方式として有効です。バイオベッド方式のメリットは、除ふん
作業が省かれることや堆肥舎・尿だめが小規模ですむことがあげられます。
バイオベッド方式とは、
「畜舎内に厚く施設した敷料(堆肥)上で家畜を飼育し、ふ
ん尿をその場で敷料と混合し発酵させることにより、家畜飼育とふん尿処理を同時に
畜舎内で済ませる飼養方式」と説明されています。バイオベッド方式には、牛床の地下
を掘り下げ、そこに敷料を敷きつめた方式と牛床に高く敷料を積み上げた方式があり
ます。
フリーバーン方式牛舎においては、オガクズ等の敷料を多く要するため、牛舎から搬
出量が増加するため堆肥化施設面積を広く必要とします。この問題解決を図るため、バ
イオベッド方式による牛舎管理により敷料の搬入量を軽減し、かつ牛舎外に搬出する
敷料(ふん尿と混合)の減量を計ろうとする取り組みを実践している経営があります。
ある県における酪農経営におけるバイオベッド方式の調査結果から、バイオベッド
方式では、堆肥化と同様の過程が進行していると想像されます。搬出敷料のコマツナ発
芽試験では、蒸留水と差異はなく、ある程度腐熟が進んでいる結果が示されています。
牛舎での発酵温度は60℃以上に達していないので、施用の安全性から えて、搬出した
ふん尿混合敷料はさらに堆積発酵をさせた方がよいでしょう。
バイオベッド方式により、敷料必要量が大幅に節減できるため、敷料の入手難、価格
高の場合は有効性が高い技術といえます。
また、畜舎からの敷料搬出量も一般の管理方法と比較して約半 程度に低減され、フ
リーバーン牛舎の短所でもある搬出量増加対策として期待されます。しかも、搬出物は
施用時期、施用する作物を適切に選択すれば、そのまま圃場施用が可能であり、堆肥施
設の必要面積の縮小が可能です。ただし、雑草発生予防の面から、さらに堆積発酵する
ことが望まれます。
このように敷料必要量や搬出量が減少する理由は、ふん尿と敷料の発酵による乾物
解と水 蒸発、および送風による水 蒸散促進によるもので、ベッドを4∼5日の間
隔で切り返し、オガクズ添加することが管理上の重要なポイントと
た、十 な送風量を確保することは、水
えられます。ま
蒸散促進だけでなく、発酵に伴い発生される
― 56 ―
アンモニア等の揮散を促進するためにも不可欠です。
バイオベッド方式では、通常のフリーバーン方式牛舎での飼養密度よりも低めにす
る必要があります。さらに、季節によるベッドの発酵や水
蒸散量には大きな差があ
り、特に冬季は十 な切り返し、搬出、敷料添加により、ベッド水
の上昇を防ぐ必要
があります。
このようにバイオベッド方式は、大幅なオガクズ添加量、敷料搬出量の軽減ができ、
フリーバーン方式の経営における新しい牛床管理の方法として期待されています。
― 57 ―
9.敷料・副資材・添加資材に関する一問一答
Q50
敷料と副資材の違いは何ですか。
敷料とは、①家畜の肢蹄、体軀がコンクリート床面などに接して生ずる損傷の防止
や、②保温、③ふん尿の付着を防止して体表面を清潔に保つなどの目的のために、畜房
に投入される、わら・乾草・落ち葉などをいいます。
また、副資材とは、堆肥化処理に際し、家畜ふんなどの物性を改良して通気性をもた
せ、良好な好気的発酵を促すために添加される素材です。また、副資材の添加は、攪拌
発酵装置による処理を困難にする堆肥化素材の粘性の軽減にも有効です。
敷料として利用していたオガクズや稲わら等が、最終的には、堆肥化処理に家畜ふん
尿と一緒に持ち込まれるため、結果的に副資材としても利用されていることになりま
す。
Q51
敷料の 用期間 長には、どのような方法があるか教えてください。
最近、酪農家や肉牛農家の牛舎内の天井に下方向の換気扇が取り付けられています。
そのねらいは暑熱対策と敷料の乾燥です。したがって、畜舎の屋根や窓などの構造およ
び
用目的により直下型(風が垂直方向に送風される)か斜め45度方向に送風するかに
なります。
敷料の 用期間を
長するために
用される換気扇の目的は、敷料を乾燥させるこ
とです。乾燥の促進を図るためには、乾いた空気をできるだけ多く材料(敷料)に当て
ることです。そのためには外部の乾いた空気との入れ替え、すなわち換気という操作が
必要になりますが、乾いた空気でも温度が高い方がより乾燥能力が高くなります。
畜舎の場合、畜舎構造を念頭に置きながら、牛への風の影響を えながら、かつ外の
新鮮な乾いた空気を取り入れて敷料に当てることが大切です。直下型で風が垂直方向
に敷料に当たり、その空気が再び上昇して換気扇により敷料に当たる構造では、乾燥は
あまり進みませんので外の空気を取り入れるような横方向の送風が必要となります。
その1つの方法として畜舎の壁等の遮
物が少ないとき、斜め45度方向に送風するこ
とで換気と敷料への送風を同時に行なうことができます。
ハウス乾燥装置のように壁のない構造であれば、ハウス内の換気も兼ねて斜め45度
の方向で空気を材料に送風することで乾燥をより促進させることが可能となります。
特にハウス乾燥ではハウス上部の暖かい空気を材料に当てることができますので乾燥
が促進されます。
また、1日のなかで晴れた日中が最も水 が蒸発します。夜間は湿度が高くなります
― 58 ―
ので乾燥能力は低下します。したがって乾燥を促進させるには日中の運転が効果的で、
夜間の運転はあまり期待できません。
Q52
敷料・副資材に戻し堆肥を いたいのですが、どのような点に注意したらよ
いのでしょうか。
完熟した堆肥は、戻し堆肥として、牛舎の敷料や水 調整の副資材として利用するの
に適しています。
しかし、戻し堆肥を敷料・水
調整材として利用する場合、以下の点に留意すること
が必要です。
① 堆肥化処理において、戻し堆肥はできるだけ水 の低いもの(50%以下)を用い
ないと、戻し堆肥の量が膨大になってしまうので注意が必要です。
② ふんのみの戻し堆肥を多量に添加した場合、通気性が低下する傾向があり、通気
性を確保しようとすると、オガクズやモミガラにくらべて、発酵スタート時の水
含量を低くしなければなりません。それは、ふん1に対して、戻し堆肥の方がオガ
クズやモミガラより多く必要ということになります。その理由として、戻し堆肥
は、粒子が細かいため、通気性を確保しにくいといった点があげられます。特に、
水 の高い戻し堆肥の場合、通気性の改善効果は少ない。そのため、水 を低下さ
せる乾燥施設を設置する必要があります。
③ 塩類濃度の上昇の可能性もあります。
④
解による発生熱エネルギーが小さい、またはほとんどありません。
⑤ 水 調整材として利用すると、販売できる製品量が少なくなります。
⑥ 戻し堆肥を牛舎内で、敷料として利用する場合、粒子が細かいため、牛体に付着
しやすいので、敷料の 換頻度が早くなります。
Q53
戻し堆肥添加方式での堆肥化施設の設置を計画する場合、冬期間における
戻し堆肥の水
を安価に蒸発させる方式を教えてください。
「水 蒸発を図る」ことはすなわち材料を乾燥させることです。家畜ふん尿を乾燥さ
せるには、太陽熱、燃料、風等の熱エネルギーをふん尿に供給してふん尿中の水 を蒸
発させ、蒸発により水蒸気を含んだ空気を除いて新たに乾いた空気を供給しなければ
なりません。1㎏の水 を蒸発させるには約600kcal(約2.5MJ)の熱エネルギーが必
要ですが、ふん尿の乾燥施設では熱の伝導、輻射等により熱エネルギーが逃げるため、
これらの損失を 慮すると実際には800∼2,000kcal(3.35∼8.37MJ)の熱エネルギー
が必要となります。
― 59 ―
乾燥を促進させる条件としては、①ふん尿等の材料を加温(保温)し水 の蒸発を図
る、②高温で低湿度の空気を多量に供給する、③ふん尿等の材料を撹拌や 砕によりそ
の表面積や蒸発面積を広くして空気との接触面積を多くする、ことなどが必要です。
戻し堆肥を乾燥させるのも同じ原理です。いかに安価に乾燥させるかがポイントで
す。そのためには太陽エネルギーと自然の風のエネルギーを効率よくつかうことが必
要です。ただこれらの自然エネルギーで材料中の水 の蒸発を図り乾燥させるとき、季
節によりその乾燥能力は大きく変動し、冬期では夏期の場合の1╱3∼1╱5程度と
なります。ハウス乾燥施設の規模算定にあたっては、関東以南では冬期の乾燥能力
(1.0∼1.5㎏╱㎡・日)と夏期の乾燥能力(4.5∼5.0㎏╱㎡・日)には大きな差があり
ますが、経営全体からみると冬期の乾燥能力を基準に えるべきです。
積雪地帯や寒冷地では、冬期の乾燥能力はさらに半
以下になりますので非常に難
しくなります。そのためには①ハウス乾燥装置を大きくする、②ハウスを密閉型の二重
構造にしてハウスで暖まった空気を戻し堆肥に当てるよう送風機をつかう、③ハウス
乾燥装置を日当たりのよい場所に設置し、裾を降ろして暖まった空気を材料に当てる
よう工夫する、④堆肥生産を年間スケジュールで組み、夏期に乾燥した堆肥を冬期に副
資材として えるような生産方式をとり、冬期でも堆肥化しやすいような初期条件を
維持する、などの対策が えられます。
また、堆肥化装置の発酵槽や乾燥装置をビニールハウスなどで覆い、外気との温度差
によってハウス内側に結露した結露水を材料表面に落とさず、側壁面を利用するなど
して別途回収し、材料水 を低下させる結露方式も安価な方式の1つです。
Q54
戻し堆肥の
い方の留意事項について教えてください。
戻し堆肥は、堆肥を生産している農家ではどこでも入手しやすい副資材ですし、悪臭
の低減効果や、堆肥化の種菌効果が期待できます。しかし、衛生面や水 などに留意し
なければなりません。
堆肥化過程において、発酵温度を一度は高温(60℃以上)にして、衛生的に問題のな
い堆肥にしておくことが重要です。しかし、熟成があまりにも進行した堆肥
(完熟堆肥)
は、粒子が細かくなり、粘り気が出て、通気性改善効果が低下してくるため注意が必要
です。
戻し堆肥の水
はできる限り少なくする必要があります。水
の多い戻し堆肥では
混合する量が膨大になってしまうからです。例えば、図12に示すように、水 80%の生
ふんを水 65%に水 調整する場合、戻し堆肥の水 が40%でも生ふんの容積の1.5倍
量が必要になりますし、水
50%の戻し堆肥では2倍、水 60%では4.2倍にもなって
しまいます。
ふんを主体とした戻し堆肥の場合、通気性改善効果が低下したり、塩類濃度が上昇す
る可能性があるので、常に新しい副資材(オガクズ、モミガラ、バークなど)を少量ず
― 60 ―
つ添加することが必要です。
図12 生ふん1㎥を水
調整するのに必要な戻し堆肥の量
Q55
敷料にゼオライトなどの無機質資材を っても問題はありませんか。
ゼオライトは副資材としては無機質資材になりますが、その中でも通気性発現が最
も出にくい副資材といえます。ゼオライトには水
や臭気を吸着する効果があります
が、通気性の確保については稲わらやオガクズなどの従来の敷料に比べあまり効果が
あるとはいえません。
ゼオライトのような無機質系の副資材は、水
の、オガクズ等の有機資材のように、乾物
の吸収と物性改良の効果があるもの
解による熱エネルギーの発生は期待でき
ず、物理性の改良の効果があるといえます。
副資材として、オガクズを添加したとき、通気性発現したときの混合物の水
は約
74%ですが、ゼオライトを添加した場合の混合物の水 は、約50%になります。このこ
とは、オガクズに対して、多くさんのゼオライトが必要になります。
ゼオライトなどの無機質資材は有機質資材に比較して、混合重量比が大となるので、
副資材の添加量は最小限にすることが大切です。
また、無機質資材は有機質資材に比べ物性改良効果が劣るだけでなく、 解すること
がないので、長期間連用すると土質に影響を与える恐れがあります。特に石灰 に富む
資材は、過剰に至らずとも石灰不足を解消しつつある圃場が少なくない状況を
― 61 ―
える
と、製品としての堆肥の流通先を狭くする恐れがあります。
Q56
副資材にはどのようなものがありますか。
副資材は、吸水性・保水性に富み、家畜ふんと混合した場合にその通気性が高められ
ることが必要です。そのような物性改良効果が高く、安価で、必要量の確保が容易にで
きるものが望まれます。
副資材は、有機質資材か無機質系資材に かれますが、有機質資材としては、稲わら、
麦稈、モミガラ、オガクズ、バークがあります。また、無機質系資材には、パーライト、
トバモライト、ゼオライトなどがあげられます。戻し堆肥も副資材として利用されま
す。
オガクズまたはモミガラは、家畜ふんに比較して 解速度は遅いが、その乾物 解に
よるエネルギーを有し、材料中の水 を蒸発させる利点があります。しかし、オガクズ
は作物の生育阻害物質を含有している場合があるので、これらの
解に長期間が必要
であり、施設面積が広くなり、堆肥生産コストに影響するなどの問題点があります。未
砕のモミガラは、吸収性はよくないが、通気性改善の面では良好な性質があり、 砕
したモミガラは逆の性質を持っています。
パーライト、ゼオライトなどの無機質資材は、水 の吸収と物性改良の効果があるも
のの、オガクズ等の有機質資材のように、乾物 解による熱エネルギーの発生は期待で
きません。
Q57
副資材として古紙を利用する場合の留意点を教えてください。
古紙も副資材として利用されることがあります。近年、有害・有害物質(重金属類、
について 析済みで安全性の確認されている古
PCB、ダイオキシンなど30種類の物質)
紙を原料とした商品が開発・販売されています。
一般の古紙は印刷インク油の重金属などの有害・有害物質が含まれている可能性が
あり、堆肥として販売が困難なため、すべての古紙が敷料としてつかえるとは限らない
ので、有害・有害物質がないことが確認できない場合は古紙を副資材として 用しない
ようにすべきです。
現在、販売されている有害・有害物質の安全性を確認されている古紙は、水 含率が
10%程度と低く、吸水性に優れ、重量比で5倍以上の水を吸収できるため、水 を調整
するには適しています。その反面、通気性の確保が良好でないため、全量古紙だけを副
資材として利用した場合、水
調整はできても、比重調整が困難であると
す。
― 62 ―
えられま
古紙単独では水
合が望ましいと
を吸収すると凝縮し通気性が悪くなるため、オガクズなどとの混
えられます。古紙を利用する場合は、全量古紙を利用するのではな
く、古紙とオガクズ・モミガラを半々で利用する方が、堆肥化がうまくいくと思われま
す。
堆積切り返しのときには、古紙を副資材とした場合、団子状の固まりが多く見られる
こともありますが、撹拌装置のある施設で堆肥化するとより良質な堆肥にできると
えられます。
古紙は安定供給という面ではオガクズなどより優れているため、副資材の入手困難
な経営においては、部 的な古紙の利用も選択肢のひとつといえます。
Q58
家畜ふん尿処理用に市販されている添加資材の特徴、種類、 用方法につい
て教えてください。
家畜ふん尿の処理を目的に数多くの添加資材が市販されています。添加資材の効果
には、悪臭防止、堆肥の発酵促進など、家畜ふん尿の処理・利用上非常に重要な効果が
謳われています。特に、悪臭防止効果のあるものが多いようですが、同時に家畜の
康
によいというものも見られます。
2001年5月に行われた調査(農山漁村文化協会:「農業技術大系畜産編8環境対策」
の2001年追録)によると、家畜ふん尿処理に関連する118件の資材のうち、飼料や飲料
水に添加し家畜に給与するもの(給与型)が44件、畜舎やふん尿に散布・混合するもの
や汚水浄化槽に添加するもの(散布型)が74件ありました。
用方法および
用量については、簡 かつ明解です。例えば、飼料に0.1∼5%添
加するとか、1日に家畜1頭当たり数ℊ∼100ℊ給与するとか、散布量が0.5∼1㎏╱㎡
とか、 かりやすくなっています。
資材の性質について記載してある他の参 書には、農山漁村文化協会編「畜産環境対
策大事典」
、p481∼508(1995年)や羽賀清典監修「マニュア・マネージメント」
、デー
リィマン社、p51∼57(1996年)などがあります。
Q59
添加資材の原料は何ですか。どうして微生物資材と呼ぶのですか。
2001年5月に行われた調査(農山漁村文化協会:「農業技術大系畜産編8環境対策」
の2001年追録)によると、微生物が添加もしくは培養されているものが118資材中98件
(83%)に上り、最も多くなっています。
「微生物資材」と呼ばれる所以です。微生物
の入っていないものは、植物質15件、鉱物質3件、化成品1件、あとは不明です。
微生物の学問的な名前が明確になっているものは少なく、ニックネームみたいな名
― 63 ―
前や強力 解菌とか、バチルス菌とかいう程度のものが多くあります。微生物と混合さ
れている材料も、鉄塩などの無機塩類や、米ヌカなどの有機物が入っているものなど多
様です。企業秘密に属する部 があるのか、微生物の名称および混合物の組成について
は不明な部 が多くあります。
Q60
添加資材の値段はいくらするのですか。
添加資材の値段には大きな幅があります。例えば、文献(羽賀清典監修「マニュア・
マネージメント」、デーリィマン社、1996年)にある酪農の添加資材を例に、値段の特
徴をみてみましょう。
飼料や飲料水に添加し家畜に給与するもの(給与型)では、大体が200∼1,500円╱㎏
の範囲にありますが、100円以下の安価なものから、36,000円に上る高価なものもあり
ます。畜舎やふん尿に散布・混合するもの(散布型)では、大体が300∼3,000円╱㎏の
範囲にありますが、やはり100円以下の安価なものから、60,000円にのぼる高価なもの
もあります。一般に鉱物質のものは安価なようです。微生物資材は価格の幅が極めて広
く、36,000円とか、60,000円とかいう高価なものはすべて微生物資材です。
給与型の資材について、乳牛1頭1日当たりの経費を算出してみました。50円╱頭・
日あたりを中心に20∼100円╱頭・日の範囲にわたっています。例えば、50円╱頭・日
とすると、1頭あたり年間費用は50×365日=18,250円╱頭・年となります。年間乳量
7,000㎏とすると、生乳1㎏当たり経費は、18,250÷7,000=2.6円╱生乳1㎏かかるこ
とになります。
Q61
添加資材(微生物資材)の効果はあるのですか、ないのですか。
添加資材の効果については、賛否両論あり、まだ確固たる結論はないようです。
ある農家では効果があったが、他の農家では効果がない例も、よく聞きます。試験場
でも、ある県の試験場では効果があったが、他の県の試験場では効果がない例も、よく
聞きます。
微生物資材はまだ発展途上の技術のようです。スーパーマンのような、絶大なる効果
を期待するのは時期尚早のようです。これからの技術開発にも期待したいものです。
ふん尿処理方法は、堆肥化や汚水の浄化槽など微生物を利用しています。悪臭の発生
も抑制も微生物の作用によります。したがって、微生物資材が適正に われていれば決
してマイナス効果はないはずです。むしろプラス効果があるはずです。そこでは、微生
物資材が存 に効果を発揮できるような、適正な環境条件づくりが重要です。堆肥化の
微生物が効果を発揮できる適正な発酵条件、浄化槽の微生物が汚水を浄化できる管理
― 64 ―
条件、微生物が悪臭を発生させない条件づくりに努力しなければなりません。
環境条件づくりを無視し、微生物資材の効果を過大に期待しても無理があります。微
生物活動の促進条件をつくることを心がけて、ふん尿処理を熱心にやりましょう。
― 65 ―
10.臭気・害虫・騒音に関する一問一答
Q62
地形、季節、時間、畜舎等による臭気の流れやその問題点等と、樹木などを
活用した防除方法などを教えてください。
畜舎で発生した臭気(低濃度、大風量)がどのように拡散されていくかは、発生源の
高さ、形状(点・線・面)
、排出量などの発生源条件や、風向、風速、温度勾配あるい
は湿度などの気象条件、遮 物の有無やその大きさ、形状などの地表面の条件などを要
件として、ある程度予測計算ができるといわれていますがかなり複雑です。一般に、臭
気が問題となるのは大気の拡散との関わりが大きく、大気が安定であれば拡散は小さ
く、不安定であれば拡散は大きくなります。また、拡散は風速にも大きく支配されます。
拡散が小さいと発生源から出た臭気は拡散されずに団塊状のまま移動する可能性が高
くなります。
現実には、風が天候、季節、時間帯などによって畜舎のどの方向から吹いてきて流れ
ていくかが問題となりますので、風の動きを知ることがまず必要となります。風下に住
宅がある場合、いつの時点で臭気が風とともに流れていくのかを知ることです。臭気が
拡散しにくいのは、経験的にも風がなく、空気がよどんでおり、湿度も高いときですが、
上昇気流がなく、大気に温度層ができているときも高さ方向の拡散がなくなって横方
向に臭気を含んだ空気の移動がみられます。そのようなときに、臭気による苦情が発生
しますので畜舎周辺の風の動きを知ることが大切です。
次に対策ですが、畜舎の換気空気には
じんと臭気が含まれており、臭気対策は
じ
ん量と大きな関係があります。例えばウィンドレス鶏舎(離乳豚舎)では換気出口から
排出される1㎥の換気空気に1∼10㎎(平 3㎎程度)の じんが含まれます。この
じんに臭気成 がかなり付着しています。したがって、 じんを取り除くことで臭気は
かなり軽減できます。換気空気全量の臭気、 じん対策を行なうとするとかなりの費用
がかかりますので、畜舎から10ⅿ程度離れたところに防風ネットを張り、 じんを除去
し、臭気を軽減して成果をあげている例があります。また、樹木を植え、換気空気を拡
散しながら じんを除去し臭気を抑えることも1方法です。樹木としてサンゴ樹など
の常緑樹が適しているといわれています(群馬畜試)
。樹木はあまり畜舎に近づけず適
度に畜舎周辺の風が動くようにし、できるだけ地面近くから畜舎の屋根近辺まで樹木
の葉が茂っているようにすることが望ましい。
それでも臭気が問題となる場合、換気口に細霧装置を取り付けて、臭気問題が起きそ
うなときに細霧装置を運転し苦情を抑えることも可能と えられます。
最近、畜舎換気の臭気が問題となりつつあるため、生研機構では畜舎換気用除じん脱
臭装置を開発しました。敷地の余地の広さに合わせて細霧・吸着方式と生物脱臭方式が
あり、ランニングコストを抑えた方法の除じん脱臭装置です。
― 66 ―
Q63
畜舎及び周辺の臭気防止に対する、最も効果的な対策を教えてください。
畜舎及び周辺の効果的な臭気防止対策は、1にも2にも清掃して床面にふん尿を残
さないことです。床面にふん尿が残るとすぐに嫌気
解がはじまり不快臭が発生しま
す。したがって、まずは清掃して臭気発生源を無くすことが必要です。
畜舎の換気空気のような場合でも畜舎内部の清掃がまず第一と
えるべきです。そ
れでも畜舎の臭気が問題になるときは、Q62のような防止対策が必要となります。養豚
も養鶏も じん対策と臭気対策とはリンクしておりますので、
じん対策がまずは効
果的でしょう。
Q64
オゾン脱臭の効果と問題点について教えてください。
オゾン脱臭はオゾンの酸化力によって臭気成
を酸化
解する方法です。悪臭物質
のなかで硫化水素やメチルメルカプタンのようなイオウ化合物はオゾンによって比較
的
解されやすいのですが、アンモニアや低級アミン類に対しては期待されるほどの
効果は認められません。ましてやアンモニアなどの臭気ガスと数秒の接触時間で臭気
成
を 解することは困難です。オゾン脱臭装置で水洗と併用している装置を見かけ
ますが、アンモニアが水に溶けやすい性質を利用しているだけで、水に溶解仕切れなく
なるとすぐに脱臭されずにアンモニアが出てきます。したがって、堆肥化装置のように
アンモニアを主体とする臭気の脱臭には不適です。
オゾン脱臭ではオゾン自体のにおいによるマスキング(においの覆い隠し)効果を併
用して脱臭できるといわれることがありますが、オゾンのにおいで置き換えているだ
けで本質的な 解による効果は低く、安定した脱臭効果を期待できません。
最も注意しなければならないのは、オゾンは、本質的に人体に対して有害で、濃度0.1
ppm が労働衛生的許容濃度といわれ、人が長く暴露されますと不快になり鼻、咽喉の刺
激が生じ、さらに濃度が高くなりますと呼吸困難、肺水腫が起きるといわれます(表
21)
。
一般に排水の脱色や殺菌に利用する場合や高い濃度で
われる場合は、必ず廃オゾ
ン対策がとられますが、畜産の脱臭対策(堆肥化装置だけでなく畜舎も含め)では廃オ
ゾン対策がとられることはほとんどありませんので、危険性を認識しながら細心の注
意を払うことが必要となります。
― 67 ―
表21 各種濃度におけるオゾンの影響
濃度(ppm)
影
響
0.01∼0.015 正常者における嗅覚閾値
0.1
正常者にとって不快、大部 の者に鼻、咽喉の刺激(労働衛生的許容濃度)
0.23
長時間暴露労働者に慢性気管支炎有症率増加
0.5∼1.0
呼吸障害、酸素消費量減少、モルモットの寿命短縮
1∼2
疲労感、頭重、頭痛、上部気道のかわき
5∼10
呼吸困難、肺水腫、脈拍増加、体痛、麻痺、昏睡
15∼20
肺水腫による死亡の危険、小動物で2時間以内に死亡
50
1,000以上
6,300
オゾン
1時間で生命の危険
数 間で死亡
空気中浮遊細菌に対する殺菌
解技術(三 書房 p.9より抜粋)
Q65
吸着法による脱臭装置の吸着材別の
換頻度、通過させる臭気ガスの注意
点(湿度など)
、効果的に行なう方法等を教えてください。
脱臭対策において吸着法は簡単で
いやすい方法の1つですが、吸着材の臭気成
吸着能力には限界があり、それを越えてしまうと吸着されずににおいがでてきます。吸
着材として利用されている最も身近なオガクズなどのアンモニア吸着能力を調べた結
果を表22に示します。この中ではゼオライトの吸着能力が最も高くなりました。
最もよく利用されているオガクズ脱臭装置は、オガクズだけでは微生物
解による
脱臭機能はなく、吸着能力のみの脱臭となります。吸着能力の範囲内であれば臭気濃度
が高くてもアンモニアを吸着しますが、その 脱臭するための持続性は短くなります。
図13はオガクズ脱臭装置の脱臭能力を表22から計算したグラフですが、オガクズの堆
積高さは約1ⅿ、見掛風速は2㎜╱秒、24時間送風、臭気ガスとオガクズが接触する時
間は500秒としますと、臭気ガスのアンモニア濃度が500ppm 程度であれば20日間以内
にはオガクズ表面からアンモニアが検出され、脱臭能力は低下します(10日くらいから
少しずつ出始める)
。見掛け風速を5㎜╱秒に、200ppm のアンモニアガス濃度とした場
合(土壌脱臭装置の送風条件と同じ)もほぼ同様です。脱臭能力が低下し、オガクズ表
面からアンモニアが検出されたときに、オガクズ表面に十
な散水をすれば脱臭能力
は一時的に回復します。それは散水した水にアンモニアが溶解するからです。この操作
の繰り返しである程度の脱臭は可能ですが、排水に多量のアンモニアが溶解している
ので留意する必要があります。したがって、オガクズ脱臭装置の脱臭機能が低下してし
まった場合、どうしても脱臭しなければならない日に限り散水で一時的に脱臭機能を
回復することができますが、長期間は持続しません。
― 68 ―
表22 各種吸着材のアンモニア吸着量
水
(%)
見掛密度
(㎏/㎥)
NH 吸着量
(㎎/100ℊ DM )
オガクズ乾材
10.0
200
300
オガクズ湿材
64.0
400
550
モミガラ乾材
17.6
110
320
モミガラ湿材
60.1
250
600
モミガラくん炭
49.1
380
140
ゼオライト
15.0
940
700
供試材料名
DM :乾燥重量
図13 オガクズ脱臭装置の脱臭限界日数
オガクズに比べゼオライトは容積当たり7倍程度の吸着能力がありますので、
換
費用はかかりますが吸着材としては性能がよい材料です。例えば、ゼオライトを1ⅿ堆
積し、下部から200ppm 程度のアンモニアガスを含む臭気を見掛け風速5㎜╱秒で送風
したとき、3∼5ヵ月間で吸着飽和します。その後、脱臭材料表面からアンモニアが出
てきますので新しいゼオライトとの 換が必要となります。
苦情が出ているようなところでは、ロックウール脱臭装置のようなランニングコス
トの安価で確実に脱臭できる装置の導入が奨められます。
― 69 ―
Q66
畜産環境問題の中でハエの発生は大きな課題です。ハエ防除の基本につい
て教えてください。
ハエ防除の基本は発生源をつくらないことであり、畜舎内外の整 、清掃が最も有効
な方法であるといえます。きれいに清掃や除ふんを行なったつもりでも、一部 でも取
り残しがあるとそれが発生源になってしまいますから、常にチェックを怠らないよう
にすべきです。また、ふんや尿汚水を途中で滞留させることなくできるだけ早期に処理
施設に導入することも重要です。これには畜舎の方式やふん尿処理方式も大きく関係
していますから、可能であれば問題となる箇所を改善し、場合によっては新しい施設や
方式に移行することを検討する必要があるでしょう。また、ハエの生活環境をよく理解
して、物理的に成長過程の一部を断ち切ったり、それぞれの時期
(成虫になった後の駆
除、成虫になる前の予防)に有効な薬剤を 用したりすることで、かなり発生を抑制す
ることができます。表23に防除法の種類と特徴を示しましたので参 にしてください。
表23 ハエの防除法の種類と特徴
方法
目標
化学的防除
機械的物理的防除
生態的防除
生物的防除
駆除 発生した害虫を
対象とした殺虫
薬剤散布
捕殺、点火、誘殺 発生源対策
予防 発生の抑制
不妊剤の利用
IGR 剤
防虫構造
発生環境の改良
天敵の利用
管理システムの確立
忌避剤の利用
遮断、除去
管理システムの確立
被害回避
微生物の利用
(林晃 :家畜ふん尿処理・利用の手引き(畜産環境整備機構)
)
Q67
音域別に聞こえる範囲、発生する機械、騒音を抑える方法について教えてく
ださい。
人の聴覚の可聴範囲は、個人差はありますが20㎐∼20,000㎐といわれています。特に
機械から発生する音で気になるのは高音域と低音域ですが、ふん尿処理用機械の発生
源としては、撹拌機の摩擦音、通気用、曝気用、換気用などの送風機があげられます。
これらは高音域で問題となるものですが、騒音を抑えるには摩擦音であれば必要なと
ころへの注油を行ない機械整備を行なうことが必要です。また、送風機のように連続し
て発生する騒音に対しては、遮 板で覆うことが必要です。ただ完全に覆ってしまいま
すとモータなどは発熱をしますので、空気の入れ換えができるようにしておきます。遮
板に吸音材を張ればもっと効果があります。とにかく直接、騒音が住宅に届かないよ
う遮 物を取り付けることが大切ですが、反射音がでないように留意する必要があり
ます。
― 70 ―
騒音の規制も悪臭と同様、住民の生活環境を保全する必要があると認める地域を規
制地域としており、周辺に迷惑がかからないようにすることが求められています。畜産
農家のある地域が住居に供される地域とすると、昼間で50㏈、朝・夕で45㏈、夜間で40
㏈となっています。
低音域は振動を伴うことで不快感を伴うことが多いようですが、畜産用機械では少
ないと思われます。
― 71 ―
11.家畜ふん尿処理物の農地還元・販売に関する一問一答
Q68
家畜ふん尿の農地への還元可能量はどの程度ですか。
作付した作物が標準的な収量を得るために、耕地に受入可能と
えられる家畜ふん
尿処理物の量は表24∼28に示したとおりです。
表24 草地・飼料畑における家畜ふん尿処理物の施用基準
( /10 )
牛
豚
鶏
液状ふん尿
堆 肥
乾燥ふん
3∼4
5∼6
2∼3
0.5
5∼6
3∼4
5∼6
2∼3
0.5
イタリアンライグラス
4∼5
3
4∼5
2
0.5
トウモロコシ
5∼6
3∼4
5∼6
2∼3
0.5
予想収量
(生草重)
堆 肥
牧 イネ科草地
5∼6
草 混播草地
草
ソルゴー
種
4∼5
2∼4
注)
「家畜ふん尿処理・利用の手引き」(畜産環境整備機構、1997)p.68より引用
1) 鹿児島県資料による 2) 堆肥
― 72 ―
0.5∼1
表25 都道府県における家畜ふん尿処理物の畑地への施用基準
堆きゅう肥等の種類
作 物(作目)
施用基準( /10 )
堆きゅう肥
麦類、てん菜、
ばれいしょ、
豆類、いも・根菜類 0.8-1.0、1.0-2.0
だいこん、ごぼう
2.0
牛きゅう肥
麦類、豆類
にんじん
だいこん、かんしょ
1.0-2.0、2.0-3.0
3.0
0.5
豚きゅう肥
麦類、豆類
0.3-0.5、0.6以下、1.0-2.0
稲わら(オガクズ、モミ 麦類、一般畑作物
ガラ)牛ふん堆肥
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
1.0-2.0、1.5-3.5、2.0-4.0
0.5-1.0、1.0-2.0、2.0-4.0
4.0
稲わら(オガクズ、モミ 麦類、一般畑作物
ガラ)豚ふん堆肥
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
0.5-2.0、1.0-1.5、1.0-2.0
0.5-0.8、1.0-2.0
3.0
稲わら(オガクズ、モミ 麦類、一般畑作物
ガラ)鶏ふん堆肥
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
0.2-0.4、0.2-2.0、0.5-1.0
0.2-0.4、0.4-1.0、2.0、3.0
3.0
牛生ふん
麦類、一般畑作物
かんしょ、たまねぎ、だいこん
2.0、3.0
2.0-4.0
豚生ふん
麦類
1.0-1.5、1.0-2.0、0.1-2.0
鶏生ふん
一般畑作物
0.1-0.2、0.8-1.0
乾燥牛ふん
豆類、一般畑作物
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
0.1-2.0、0.5-1.0
0.4-0.8
1.5
乾燥豚ふん
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
一般畑作物
0.3-0.4、2.0
0.8
0.1-1.0、0.3-0.6
乾燥鶏ふん
麦類、一般畑作物
かんしょ、たまねぎ、だいこん、にんじん
ばれいしょ
0.1-0.5、0.2-0.4
0.2-0.3、0.5
0.5
発酵鶏ふん
麦類
0.3-0.6
牛液状きゅう肥
麦類、一般畑作物
2.0-3.0、4.0、6.0
牛ふん尿
麦類、一般畑作物
1.0-2.0
豚ふん尿
麦類、一般畑作物
1.0、1.5、0.3-0.5
注)「家畜ふん尿処理・利用の手引き」
(畜産環境整備機構、1997)p.70より引用
― 73 ―
表26 連用を前提とした野菜に対する家畜ふん尿類の施用基準
( /10 )
牛
野 菜
豚
乾燥
牛ふん
牛ふん
オガクズ
牛ふん堆肥
乾燥
豚ふん
豚ふん
鶏
オガクズ
豚ふん堆肥
乾燥
鶏ふん
オガクズ
鶏ふん堆肥
少肥型 2.0∼4.0 0.4∼0.8
1.0∼2.0
1.0∼2.0 0.3∼0.4
1.0∼2.0
0.2∼0.3
0.4∼1.0
中肥型 3.0∼5.0 0.6∼1.2
1.3∼2.5
1.3∼2.5 0.4∼0.6
1.2∼2.5
0.3∼0.4
0.6∼1.5
多肥型 4.0∼6.0 0.8∼1.5
2.0∼4.0
2.0∼4.0 0.5∼0.8
1.7∼3.5
0.4∼0.5
1.0∼2.0
注)1.化学肥料施用量は基準量の30%減とする。ただし、*の資材では多い側の量を施用するときには、
K O を60%減とする。
2.少肥型:ダイコン、サトイモ、ジャガイモ、ホウレンソウなど
(N、K O 基準量20㎏/10 以下の
場合)
中肥型:ショウガ、キャベツ、レタス、トマト、スイカなど
(N、K O 基準量25㎏/10 前後の場合)
多肥型:ナス、ピーマン、キュウリなど(N、K O 基準量30∼35㎏/10 の場合)
3.施設栽培では鶏ふん類、豚ふん類は上記の1/2、牛ふん類は2/3とする。特に周年施設では土壌診
断の結果等を参 にして、養 の 衡を保つよう化学肥料の減肥、資材の種類変 などを行なう。
4.
「家畜ふん尿処理・利用の手引き」
(畜産環境整備機構、1997)p.70より引用
表27 水稲に対する家畜ふん尿処理物の施用基準
( /10 )
生ふん
牛
乾燥ふん
豚
鶏
1.0∼2.5 0.8∼1.5
0.8
牛
豚
ふん堆肥(オガクズ入り)
鶏
牛
豚
鶏
0.3∼2.0 0.2∼1.5 0.1∼0.2 1.0∼2.5 0.5∼1.5 0.5∼1.0
(農業 合研究センター 1984年まとめ)
注)この施用基準は一般的な目安を示したもので、利用にあたっては以下の点の注意が必要である。
①施用基準は、乾田の場合を示したもので、半湿田では半量とし、湿田ではごく少量あるいは施
用しない方が無難である。
②生ふんを施用する場合は、冬期までに施用しておく。ただし、この場合は稲作期までに可 解
性有機物の 解はほとんど終わり、無機化した窒素の相当部 が失われるので、化学肥料の減
肥は必要ない。
③稲作二毛作の場合は、ふん尿は麦の播種前に1回のみ施用し、稲作には施用しない。
④ふん尿が含有する窒素成 の化学肥料に対する肥効果率は、
一般に 用されている数値に準じ、
牛ふんで30∼40%、豚ふんで60∼70%、鶏ふんで70%とする。堆積発酵物などで肥効果率が確
認されているものについてはその数値を 用する。
表28 果樹における家畜ふん堆肥の施用量と施用効果
施用効果
10 あたり施用量
1∼2
2∼4
5 以上
土壌改良
+
+
+/−
果実収量
+
+
+/−
果実品質
+
+/−
+/−
環境保全的見地
+
−
注)1.
+:プラスの効果 −:マイナスの効果
+/−:両方の事例が混在する
2.環境保全的見地は、土壌の無機態窒素量と塩基状態からみたもの
3.家畜ふん堆肥は木質系資材混入牛(豚)ふん堆肥を想定
4.
「家畜ふん尿処理・利用の手引き」(畜産環境整備機構、1997)p.71より引用
― 74 ―
Q69
集約放牧、輪換放牧における、ふん尿量から見た面積頭数の関係
(環境面を
慮して単位面積当たり何頭くらいまで飼うことができるのか)を教えてく
ださい。
現場では時々採食行動を伴わない運動も含め、放牧と
称する場合がありますが、採
食行動を伴う放牧を前提に北海道の個別経営で説明します。
1.放牧地の一般的立地条件
・採草地として利用できない傾斜地が多い
・育成牛の放牧地では、傾斜地かつ遠隔地の利用もある
・傾斜地利用のため小河川に隣接している場合が多い
・採草放牧兼用地では、2番刈り以降の利用が多い
以上の一般的立地条件から、放牧専用地の大半は傾斜地が多く一部機械作業が困難
な急傾斜も含まれ、雨水によるふん尿流出の危険がある。
2.放牧の形態と牧養力
牧地の集約度の順に放牧形態を整理すると、ストリップ放牧、輪換放牧、連続放牧と
なるが、現状ではストリップ放牧と輪換放牧を併用する時間制限放牧が最も集約度が
高いといえる。
いずれの放牧形態であれ、放牧時の採食可能な牧草量により放牧頭数が決まる。採食
可能量を無視した入牧頭数や滞牧日数では、放牧地が蹄傷により裸地化し土壌流亡と
ともにふん尿流出が発生する危険が多くなり、傾斜地では確実に発生している。
3.ふん尿排せつ量から計算した単位面積当たり放牧上限頭数
まず、放牧導入による年間ふん尿の牛舎回収量と通年舎飼回収量(坂東 、
「乳牛の
ふん尿処理から見た放牧」北農 Vol.63⑷、1996より)を基に経産牛の放牧地でのふん尿
排せつ量を試算すると以下のとおりである。
・4時間放牧:8.7㎏╱日
・8時間放牧:25.6㎏╱日
・昼夜放牧:44.8㎏╱日
(いずれも、経産牛50頭、放牧日数175日、昼夜放牧は1日当たり20時間の設定条件)
このふん尿排せつ量の試算値のうち最も条件の厳しい昼夜放牧で175日放牧した場
合、経産牛1頭当たり7.84 のふん尿が放牧地に排せつされると計算できる
(44.8㎏×
175日≒7.84 ╱頭)。
次に、北海道では草地・とうもろこしのふん尿還元上限50 ╱ を目安としているこ
とから、安全をみて1╱2の25 ╱ を放牧地へのふん尿還元上限とし、ふん尿排せつ
量からみた放牧飼養可能頭数を試算すると、1
当たり経産牛3.2頭が上限と算出され
る(25 ╱ ÷7.84 ╱頭≒3.19頭╱ )
。
4.採食量での「ふん尿排せつ量から計算した単位面積当たり放牧上限頭数」検証
最も放牧草の採食量が多い昼夜放牧での検証として、以下の設定条件で検証する。
― 75 ―
・1 当たり放牧頭数:経産牛3.2頭
・経産牛1頭当たり採食量:牧草70㎏╱日
・放牧地牧草利用率:70%
・放牧日数:175日
【検 証】
・1 当たり放牧期間採食量:経産牛3.2頭×70㎏╱日×175日≒39,200㎏
・1 当たり放牧期間必要草量:39,200㎏÷70%(利用率)≒56.0 ╱
以上の試算から、ふん尿排せつ量から計算した単位面積当たり放牧上限頭数3.2頭╱
を放牧飼養するには、1 当たり56 の牧草生産力が必要である。
しかし、北海道の放牧地の牧草生産量は40 ╱ 以下である。
つまり、ふん尿排せつ量から計算した単位面積当たり放牧上限頭数3.2頭╱ は、北
海道の放牧地の牧草生産量(40 ╱ 以下)から 察して過剰な頭数といえる。
以上から、放牧地の単位当たり頭数は、放牧地の牧草生産量に見合う頭数であれば問
題はないと えられる。
この結果は、採食行動を伴う放牧が大前提であり、運動として放牧地を利用する場合
や夏以降放牧草の生産が弱まった時期は例外とすべきである。
Q70
堆肥の品質表示はどのようになっているのでしょうか。
① 1999年の肥料取締法の改正にともない、特殊肥料の「肥料」及び「動物の排せつ
物」の品質表示が制度化されました(品質表示基準は2000年10月1日から施行)。
② 品質表示事項の内容には、一般表示事項、原料の種類(牛ふん、稲わらなど)、
成 の含有量(窒素、りん酸、加里、炭素窒素比など)の3項目があります。表示
の様式は表29に示すとおりです。銅、亜 、石灰については、限度量を超えた場合
に表示義務が出てきます。また、主要な成 の表示値の誤差範囲成 に関する表示
項目は表30に示すとおりです。
③ 成
析を
析機関に依頼する場合、経費を必要とするので、事前に経費の負担
等について関係者と打ち合わせておくことが必要です。
④ 成
析は各県の肥飼料検査所に依頼することも可能ですが、次の機関に依頼
すると半月程度で 析が可能です。経費は試料の状態にもよりますが、例えば表示
項目にある全主要成 の場合約6万円の経費がかかります。ただし、試料の状態が
析に適さず、前処理などを必要とする場合には、その の経費が加算されます。
㈶日本肥糧検定協会 [本部]
:〒135-0032 東京都江東区福住1-12-15
(電話:03-3641-3453、FAX:03-3641-3750)
[支部]
:〒650-0041 神戸市中央区新港町14-1
生活用品振興センタービル内
(電話:078-332-6491、FAX:078-332-6545)
― 76 ―
表29 特殊肥料の品質表示の様式
肥料の種類
表示事項
堆肥(汚泥又は魚介類の臓器を原料とし 一般表示事項
て生産されるものを除く)
原料
主要な成 の含有量等
窒素全量
りん酸全量
加里全量
銅全量
亜 全量
動物の排せつ物
石灰全量
炭素窒素比
水 含有量
備
1.一般表示事項は、次のとおりとする。
⑴ 肥料の名称
⑵ 肥料の種類
⑶ 届出をした都道府県
⑷ 表示者の氏名又は名称及び住所
⑸ 正味重量
⑹ 生産(輸入)した年月
2.主要な成 の含有量等については、銅全量にあっては豚ぷんを原料として 用する
ものであって現物1㎏あたり300㎎以上含有する場合に限り、亜 全量にあっては豚
ぷん又は鶏ふんを原料として 用するものであって現物1㎏あたり900㎎以上含有
する場合に限り、石灰全量にあっては石灰を原料として 用するものであって現物
1㎏あたり150ℊ以上含有する場合に限り、
水 含有量にあっては乾物あたりで表示
する場合に限り、それぞれ表示しなければならないものとする。
表30 主要な成
項 目
の表示値の誤差範囲
表示の単位
誤差の許容範囲
窒素全量
パーセント(%)
表示値が3%以上の場合は表示値のプラスマイナス10%
りん酸全量
パーセント(%)
表示値が3%未満の場合は表示値のプラスマイナス0.3%
加里全量
パーセント(%)
銅全量
1キログラム当たり
ミリグラム(㎎/㎏) 表示値のプラスマイナス30%
亜 全量
1キログラム当たり 表示値のプラスマイナス30%
ミリグラム(㎎/㎏)
石灰全量
パーセント(%)
炭素窒素比
水 含有量
―
パーセント(%)
表示値のプラスマイナス10%
表示値のプラスマイナス30%
表示値のプラスマイナス10%
― 77 ―
Q71
堆肥を流通販売する場合の手続き等について教えてください。
肥料を、有償・無料にかかわらず他人に譲渡する場合、肥料取締法第23条により届出
が必要になります。ただし、肥料を1回限り譲渡する場合は必要ありません。
届出は、販売する肥料の種類にかかわりなく必要です。
届出は、販売業務開始後2週間以内に事業場の所在する都道府県の知事宛てに提出
することとなっています。一度届ければ廃止届を出すまで届出は有効ですが、届出後の
内容に変化が生じた場合、変
届が必要です。
届出には、下記(表31)の書類が必要です。届出の受付は各都道府県により提出先が
異なりますので県出先機関や農業改良普及センターにお尋ねください。
表31 某県の肥料販売業務開始届出に必要な書類
№
書 類
数 量
備
1 肥料販売業務開始届出書
2通
2 登記簿謄抄本(法人の場合)
又は住民票(個人の場合)
1通
1通
(肥料取締法内で他に届出されている場合は不要)
3 販売を行なう事業場の略図
1通
所在地が かるものであれば、手書きでも道路地図
の写し等に場所を記入したもので可能です。
4 その他
届出のための手数料は不要です。
Q72
特殊肥料生産関係届出について手続き等を教えてください。
肥料を生産し、複数回、複数の人に譲渡する場合は肥料取締法に基づく手続きが必要
です。
① 特殊肥料については都道府県知事への生産・販売関係についての届出が必要で
す。
② 普通肥料については大臣または、都道府県の知事への登録等が必要になります。
③ 肥料取締法では
特殊肥料……米ぬかや堆きゅう肥等農家の経験により品質の
識別できるもので法令に定められたもの。
普通肥料……上記以外のものは、各県出先機関や県肥飼料検
査機関や農業改良普及センターへ問い合わせて下
さい。
④ 特殊肥料は、その種類を「指定名」として農林水産大臣が指定しています。
⑤ 特殊肥料を生産する場合、その全てを自家用として利用する場合を除き、ほとん
どの場合、肥料取締法第22条の規定に基づき「特殊肥料生産業者届出書」による届
出が必要です。
― 78 ―
表32 某県の特殊肥料生産業届出に必要な書類
№
書 類
数 量
1 特殊肥料生産業者届出書
2通
2 肥料製造工程表
1通
備
3 登記簿謄抄本(法人の場合) 1通
又は住民票(個人の場合)
4 肥料見本
1通
5 その他
現物約1㎏程度
届出のための手数料は不要です。
⑥ 特殊肥料生産業者届出は、肥料の生産開始2週間前までに、事業所の所在する都
道府県の知事宛てに提出することになっています。
⑦ 届出は1銘柄1届出となっています。
なお、一度届出をすれば廃止届を出すまで届出は有効ですが、届出後内容に変化が生
じた場合には、変
届の提出が必要です。
Q73
堆肥等の商品を商標登録する方法について教えてください。
畜産経営において、堆肥に商標をつけて、有機肥料として直接農家に出荷している
ケースも見られます。このように堆肥も商品として商標をとることができます。
商標権とは、 商標権”商品やサービス(以下指定商品等とする)の識別標識である
商標についての権利です。商標権者は、指定商品等について、登録商標を独占的に
用
することができます。
商標は、文字、図形、記号等の平面的なものだけでなく、立体的なものであっても登
録することができます。
商標権者は、他人が、指定商品等に類似する商品等について、登録商標に類似する商
標を 用することを禁止することができ、侵害によって被った損害を賠償させること
ができます。
ある指定商品等について、登録商標がある場合、他人が商標 用を 用したときに、
商標権侵害となるか否かは、表33のとおりです。つまり、商品等か、もしくは商標が類
似していない場合には、商標権侵害とはなりません。
表33 商標権侵害の要因
同一商標
類似商標
類似しない商標
同一商品等
侵害
侵害
侵害でない
類似商品等
侵害
侵害
侵害でない
類似しない商品等
侵害でない
侵害でない
侵害でない
― 79 ―
2つの商標が類似するかどうかは、外観、称呼、観念の3つによって 合的に判断し
ます。ただし、多くの場合、称呼(つまり読み方)が最も重要な判断基準となります。
また、2つの商品が類似するかどうかについては、特許庁が、その基準を 開してい
ます。商標権は、一応10年で満了しますが、登録の 新をすることにより、永久的に権
利を存続させることができます。
商標登録の方法について以下に述べます。商標は、所定の商標登録願を特許庁に提出
します。その内容が手続上または形式上の要件を備えているか否かで審査されます。ま
た、実体的な要件を満たしているか否かについて審査されます。
自己の商品等と他人の商品等とを識別することができないものや、
益上の理由や
私益保護の見地から商標登録を受けることができないものは、実体的要件を満たさな
いものとして拒絶されます。最終的に拒絶の理由がないと判断されると登録すべき旨
の査定がされ、登録料を納付すると商標権の設定登録が行なわれ商標権が発生します。
商標について詳しいことが知りたい場合は、特許庁のホームページを参
よいでしょう。
― 80 ―
にすると
12.環境保全の文献に関する一問一答
Q74
畜産環境保全に関する文献を教えてください。
畜産環境保全に関する最近の主要文献を以下にあげておきます。
1.尿汚水処理に関する文献
① 中央畜産会:家畜尿汚水の処理利用技術と事例、1989
② 羽賀清典:家畜尿汚水の浄化処理の基本、畜産環境リース情報・第46号、1989
③ 蔭山潔ら:畜産用水質推定尺の 案とその利用の検討、畜産の研究・第47巻第5
号、1993
④ 羽賀清典:畜産系排水処理と負荷軽減、用水と排水・第37巻・第1号、1995
⑤ 本多勝男:養豚農家の視点から汚水処理施設を える、養豚界・第31巻・第6号、
1996
⑥ 岩渕功ら:養豚場浄化槽水質推定尺の開発と応用、畜産の研究・第51巻第2号、
1997
⑦ 羽賀清典:これからの汚水処理システムの着眼点、養豚界・第32巻第6号、1997
⑧ 養豚の友編集部:養豚場浄化槽の検査法(千葉県の研究成果発表会から)
、養豚
の友3月号、1998
⑨ 農林水産省農業研究センター・畜産試験場・草地試験場:平成10年度家畜ふん尿
処理利用研究会資料―畜産汚水処理と環境マネージメントの現状と今後の方向
―、畜産試験場資料1998-10
⑩ 塩原広之:汚水処理・たい肥化施設設計計画の比較検討、畜産コンサルタント・
通巻426号、2000
中村作二郎:知っておきたい排水処理の基礎知識、養牛の友・2,6,8,10,
12月号、2000
畜産環境整備機構:「畜産環境アドバイザー養成研修会資料―汚水処理施設の
設計・審査技術研修―」、1999
道宗直昭:畜舎排水浄化処理装置、畜産の研究・第11号、1999
大泉長治:機能膜を用いた畜舎排水浄化装置、畜産の研究・第11号、1999
福光 二:土壌を用いた尿汚水浄化法(Ⅰ、Ⅱ)
、畜産の研究・第7,11号、2000
2.ふん処理に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―家畜ふん尿処理・
利用の手引き―、1998
② 羽賀清典:堆肥生産による家畜ふん尿の肥料資源化、肥料・通巻80号、1998
③ 干場信司ら:「堆肥化施設設計マニュアル」を上手に活用する、畜産コンサルタ
ント・3月号、2001
④ 中央畜産会:堆肥化施設設計マニュアル、2000
― 81 ―
⑤ 養豚の友編集部:堆肥の流通促進に向けて(千葉県の取組と販売事例から)
、養
豚の友・4月号、2000
⑥ 養豚の友編集部:堆肥化施設はどうなっている 、養豚の友・6月号、2000
⑦ 養豚の友編集部:家畜ふん尿処理の新技術(畜産環境保全に関する技術開発成
果発表 会より)
、養豚の友6月号、2000
⑧ 本多勝男:家畜ふんのハウス型堆肥化発酵処理施設、畜産の研究・第10号、1999
⑨ 羽賀清典:ふん尿処理と堆肥製造の現段階と展望、畜産の研究・第1号、2000
3.悪臭防止に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―家畜ふん尿処理・
利用の手引き―、1998
② 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―臭気対策技術及び
新規処 理技術研修―、2000
③ 道宗直昭:最近の悪臭防止技術について、養豚の友・3,5月、1999
④ 中央畜産会:脱臭装置、
「堆肥化施設設計マニュアル」
、2000
⑤ 道宗直昭:寒冷地用脱臭装置、畜産の研究・第10号、1999
4.メタン発酵技術に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―臭気対策技術及び
新規処 理技術研修―、2000
② 司馬顕:見直されるメタンガス、養豚の友・3,4月号、2000
5.硝化脱窒、脱燐、脱色技術に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―臭気対策技術及び
新規処 理技術研修―、2000
6.衛生害虫に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―家畜ふん尿処理・
利用の手引き―、1998
7.経済性・コストに関する文献
① 関澤啻朗:家畜ふん尿処理及び利用の経済性、畜産環境情報・第9号、2000
② 関澤啻朗:処理経費の計算方法、「家畜ふん尿処理・利用の手引き」、1997
8.用語解説に関する文献
① 畜産環境整備機構:畜産環境アドバイザー養成研修会資料―家畜ふん尿処理・
利用の手引き―、1998
― 82 ―
13.法律・補助・融資・税制に関する一問一答
Q75
環境三法が制定された背景、三法の関係について教えてください。
家畜排せつ物を適切に処理し有効利用することが、畜産環境の保全による畜産経営
の安定化、消費者ニーズに対応した農畜産物の安定供給化などの点から今日的で緊要
な課題となっています。こうした情勢の中で、平成11年7月に施行された
「食料・農業・
農村基本法」(
「新基本法」
)では、第32条「自然循環機能の維持増進」において「国は、
農業の自然循環機能の維持増進を図るため、農薬及び肥料の適正な 用の確保、家畜排
せつ物等の有効利用による地力増進その他必要な施策を講ずるものとする」としてい
ます。
これを受けて、平成11年11月に
「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関す
る法律」
(
「家畜排せつ物法」
)、
「肥料取締法の一部を改正する法律」
(「改正肥料取締
法」
)、
「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」
(
「持続農業法」
)
のいわ
ゆる環境三法が施行されました。
「家畜排せつ物法」は畜産業の 全な発展を図るため、家畜排せつ物の管理に必要な
事項を定めるとともに、家畜排せつ物処理施設の整備を進めて、家畜排せつ物の適正な
管理(処理・保管)と、堆肥等として畜産農家自らが一層利用、あるいは畜産農家以外
に一層利用してもらうことを目的としています。そして、
「改正肥料取締法」は、堆肥
等特殊肥料の品質表示制度を
設し、堆肥等の品質たる肥料成
を正しく表示するこ
とにより畜産農家以外での家畜排せつ物の有効利用の推進を目的としています。さら
に、
「持続農業法」は、堆肥等を活用した土づくりと化学肥料・農薬の 用の低減を一
体的に行なう持続性の高い農業生産方式の普及・浸透を目的としています。つまり、環
境三法により、家畜排せつ物を適正に管理するとともに、肥料としての成 表示を明確
にして有効利用を促進し、持続性の高い農業生産方式の普及・定着を図るための道筋が
定められたということができます。
Q76
家畜排せつ物法で管理基準を定めるねらいはどこにあるのですか。
① 近年、畜産経営の大規模化の進行に伴い、家畜排せつ物の発生量が増大し、その
利用が 困難になりつつあり、野積み・素掘りをはじめとする家畜排せつ物の不適
当な管理が増えています。このことが主な原因となって、家畜排せつ物の管理のあ
り方をめぐり、畜産業を営む者と地域住民との間で問題が生じる事例も見受けら
れるようになっています。
また、野積み・素掘りは、家畜排せつ物の河川への流出や地下水への浸透等によ
― 83 ―
り、クリプトスポリジウム(原虫)や硝酸性窒素による水質汚染を招くおそれもあ
るため、早急にその解消を図る必要があります。
② 環境問題に対する国民の意識が高まる中で、地域において畜産を安定的に営ん
でいくためには、家畜排せつ物の管理の適正化を図ることが重要な課題となって
います。こうしたことを踏まえ、家畜排せつ物の管理について、畜産業を営む者が
遵守すべき管理基準が定められたものです。
Q77
家畜排せつ物法における管理基準は、具体的にはどのような内容になって
いるのですか。
1.管理基準は、野積み・素掘りをはじめとする家畜排せつ物の不適切な管理を改善す
るために畜産業を営む者が遵守すべき最小限の基準を定めたものです。
管理基準の具体的な内容は、大きく
けて施設面と管理面の基準からできていま
す。
⑴ 施設面の基準
家畜排せつ物を処理したり保管したりする施設(以下「管理施設」といいます。
)
の構造設備に関する基準です。
① 固形状の家畜排せつ物の管理については、床を不浸透性材料(コンクリート等
汚水が浸透しないものをいいます。以下同じ。
)で築造し、適当な覆い及び側壁
を設けること。
→ ふんやふんと尿を敷料等で吸着させ固形状になったものを管理するするた
めの施設としては、堆肥舎や乾燥施設が一般的ですが、この基準は、このよう
な施設から汚水が飛散したり、流出したりすることがないように、床をコンク
リート張りとしたり、防水シートを敷いたりする必要があることを示したも
のです。なお、必ずしも屋根をつけることを義務づけるものではなく、例えば、
防水シートを下に敷き、上から防水シートで覆うなどの簡易な方法でも結構
です。
② 液状の家畜排せつ物の管理施設については、不浸透性材料で築造した貯留槽
とすること。
→ 尿やスラリーといった液状の家畜排せつ物を管理するための施設としては
尿溜、スラリータンク等が一般的ですが、この基準は、このような施設につい
て、①と同様の趣旨から、コンクリートや防水シート、鋼板等でつくり、汚水
が地下浸透しないようにする必要があることを示したものです。
⑵ 管理面の基準
家畜排せつ物の管理の方法に関する基準です。
① 家畜排せつ物は管理施設において管理すること。
→ 堆肥舎等が整備されても、これを利用しないで野積み等をしては意味がな
― 84 ―
いために、堆肥舎等できちんと管理していただくことを定めたものです。
② 管理施設の定期的な点検を行なうこと。
③ 管理施設の床、覆い、側壁または槽に破損があるときは、遅滞なく修繕を行な
うこと。
④ 送風装置等を設置している場合は、当該装置の維持管理を適切に行なうこと。
→ ②∼④は、管理施設について、ひび割れがないかどうか、覆いが破れていな
いかどうか等について点検していただき、ひび割れ等が確認された場合は速
やかに修繕していただくこと、また、送風装置(ブロアー)、攪拌装置等の装
置について、注油、掃除等の維持管理を適切に行なっていただき、排せつ物の
処理に支障がないようにすることを定めたものです。
⑤ 家畜排せつ物の年間の発生量、処理の方法及び処理の方法別の数量について
記録すること。
→ 飼養規模の拡大等が行なわれた場合でも、施設の容量不足等で不適切な管
理になるようなことがないように、家畜排せつ物の発生量などについて確認
していただくことを定めたものです。
2.なお、家畜排せつ物法に関する様々なご質問、ご相談等にお答えできるよう、国
(畜
産局、地方農政局)、各都道府県の畜産担当課や指導機関に
「畜産環境相談コーナー」
を設置しておりますのでご利用ください。
Q78
現在、堆肥盤でふん尿を処理していますが、家畜排せつ物法の管理基準に適
したものとするためには、屋根をかけなければなりませんか。
堆肥盤については、屋根かけをして堆肥舎とすることが望ましいと えられますが、
園芸用パイプハウスのようにパイプを利用してビニールで覆いをしたり、防水シート
で覆いをするといった対応をとっていただければ、屋根がなくても管理基準上問題な
いと えています。
Q79
生ふんや堆肥を草地や農地に放置している場合は、家畜排せつ物法の管理
基準上問題がありますか。
生ふんや堆肥を散布する前に草地や農地に放置している場合は、管理基準上問題に
なりますので、できる限り速やかに散布するか、堆肥舎に搬入するか、あるいは防水
シートで上下を覆う等の対応をとっていただく必要があります。
― 85 ―
Q80
冬が長く雪の多い地域なため冬の期間中農地にふん尿を堆積し、春先に散
布していますが、家畜排せつ物法の管理基準上問題がありますか。
秋に堆積したふん尿を散布することなく、そのまま春まで放置しているとすれば管
理基準上問題がありますので、例えば、防水シートで上下を覆うなど適切に管理してい
ただく必要があります。
Q81
パドック(運動場)で排出されたふん尿は、家畜排せつ物法の管理基準上ど
のような扱いになりますか。
① パドックで排出されたふん尿については、そのまま放置されドロ状になったり、
野積みされている場合は、管理基準上問題があります。
② このため、ローダー等で適宜集めて堆肥舎に搬入するか、農地に散布する等適切
な管理をしていただくことが必要です。
Q82
家畜排せつ物法では、家畜排せつ物の発生量等の記録が義務づけられてい
ますが、記録はどのようにとればよいのですか。また、記録はどこで整理し保
管するのですか。
① 記録は、農家自身が下記②により記入し整理保管します。
② 家畜排せつ物の発生量等は飼料の給与量等により異なるため、正確に把握する
ことは難しい面があると
このため、簡
えられます。
な方法で記録していただけるように様式が定められています
(表
34の例を参 にしてください)
。
具体的な方法は次のとおりです。
発生量については、様式に1頭羽当たりの標準的な年間発生量が示されていま
すので、これに頭羽数を掛け合わせて求めてください。
また、処理の方法については、自己の経営内で利用、堆肥センター等経営外で利
用、浄化処理施設で処理等が示されていますので、発生量を10割とした場合の処理
方法別の大まかな割合を、処理の方法別の数量として記入してください。
③ なお、管理施設の整備等には一定の期間を必要とすること等を 慮して、記録の
実施は法施行3年後の平成14年11月1日からとしています。
― 86 ―
表34 家畜排せつ物の発生量等の記録様式
(例)乳用牛の場合
平成
年度 家畜排せつ物の発生量等に関する記録
(記入日:平成
年
月
日)
1.年間の家畜排せつ物の発生量
種
平 的な
飼養頭数
(頭)
①
類
(単位: /年)
1頭あたり排せつ物量
ふ ん
②
尿
③
搾乳牛
16.6
4.9
乾乳牛
10.8
2.2
未経産牛
10.8
2.2
6.5
2.4
―
―
育成牛
合
計
1年あたり排せつ物量
ふ ん
④
(①×②)
尿
⑤
(①×③)
合 計
⑥
(④+⑤)
注1) 平 的な飼養頭数は、
2月1日現在の頭数又は当該年と前年の2月1日現在の平 頭数等を用いる。
2.処理の方法及び処理の方法別の数量
処 理 方
割
法
ふ ん
合
尿
①自家処理し、自己の経営内で利用
割
割
②自家又は経営外で処理し、経営外で利用
割
割
③浄化処理施設で処理
割
割
④焼却施設で処理
割
割
⑤その他(
)
割
割
(
)
割
割
10割
10割
合
計
注1) ②は、堆肥センター等の共同処理施設、耕種農家等に譲渡したものについて記入。
注2) ふん尿混合の処理を行なっている場合、固形物として処理している場合はふん、液体物として処理
している場合は尿に記入する。
注3) 割合は、過去1年間の処理方法にもとづいて記入する。
― 87 ―
Q83
現在、野積みをしており、これから堆肥舎をつくろうと えています。家畜
排せつ物法における勧告や命令といった措置は、法律の施行と同時に行なわ
れるのですか。
① 家畜排せつ物法は平成11年11月1日から施行され、管理基準についても、同日か
ら施行されましたが、施設整備には一定の期間が必要となること等を 慮して、管
理基準のうち、構造設備に関する基準については5年間の猶予期間を設けていま
す(従って、平成16年11月1日から施行)
。
② また、猶予期間経過後も、いきなり罰則ではなく、まず指導・助言を行ない、さ
らに必要があれば勧告、命令という十 な手順をとることとしています。
③ なお、命令に違反した場合には、50万円以下の罰金に処せられます。
Q84
家畜排せつ物法の管理基準はすべての畜産農家が遵守しなければならない
のですか。
① 管理基準に関しては、飼養規模が小規模な農家については、排せつ物の発生量が
少ないこと、自己所有の農地・草地に還元することで野積み・素掘り等が解消され
る可能性が高いことを踏まえ、適用されないこととされました。その具体的な頭羽
数は、牛及び馬にあっては10頭未満、豚にあっては100頭未満、鶏にあっては2,000
羽未満となっています(表35参照)。
② なお、小規模な畜産農家であっても、家畜排せつ物を適正に管理し環境問題の発
生を防止することの重要性は同じですので、野積みや素掘りは行なわないよう適
切に管理してください。
表35 畜種別構造設計基準と管理の方法基準
家畜の
種 類
対象となる
飼養規模
牛
豚
鶏
馬
10頭以上
100頭以上
2,000羽以上
10頭以上
②管理の方法基準
①構造設備
基
準 イ.
施設管理 ロ.定期点検 ハ.修繕 ニ.維持管理
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
注)○は、平成11年11月1日から適用
●は、平成14年11月1日から適用
◎は、平成16年11月1日から適用
― 88 ―
○
○
○
○
○
○
○
○
ホ.
記録
●
●
●
●
Q85
家畜排せつ物法の管理基準の適用に関して、飼養頭数はいつを基準にして
決めるのですか。また、カウントの対象には成畜のほか子畜も含むのですか。
① 飼養頭数については、ある特定の時期を基準として決めるということではあり
ません。例えば、牛の場合でいうと、10頭以上を超えている時点で不適切な管理が
行なわれている場合には、管理基準に合うように改善していただく必要がありま
す。
② また、子畜については排せつ物の量が少ないこと等から、頭数のカウントの対象
から除外することとしています。具体的には、牛及び馬では6ヵ月未満、豚では
3ヵ月未満、鶏では2日齢未満のものが除かれます。
なお、肉用牛繁殖経営については、出荷されることが確実と見込まれる子牛につ
いては、10ヵ月齢未満のものを子畜として扱ってよいこととされています。また、
乳用種育成経営については、大規模化が進展しており、家畜排せつ物の適正な管理
を確保する必要があることから、飼養されている育成牛
(6ヵ月齢未満のものを含
みます)の実頭数に1╱3を乗じて得た数をもってその経営の飼養頭数として扱
うこととされておりますので、この換算した頭数が10頭以上である経営について
は、管理基準が適用されることになります。
Q86
新しい農林
庫資金の融資の対象となる処理高度化施設にはどのような施
設があるのですか。
① 尿貯留槽等の管理施設、堆肥舎、乾燥発酵施設等の堆肥化施設、また、固液
離
器、脱臭装置、マニュアスプレッダー等の機具類に至るまで、家畜排せつ物の管理、
堆肥化、施用及び販売に必要となる全ての施設、機具が対象となります。
② また、これらの施設と一体的に整備する畜舎等の生産施設も融資の対象となり
ます。
Q87
金融上の支援措置を受けるための具体的な手続きについて教えてくださ
い。
1.農林漁業金融 庫の融資を受けるためには、処理高度化施設整備計画を作成してい
ただき、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
そのための手続きは次のとおりです。
― 89 ―
⑴ 処理高度化施設整備計画認定申請書(以下「計画認定申請書」
)を作成します。
計画認定申請書には、①処理高度化施設の整備の目標、②処理高度化施設の整備の
内容及び実施時期、③処理高度化施設の整備の実施に伴い必要となる資金の額及
びその調達方法等について記載していただきます。
⑵ 計画認定申請書を都道府県に提出するとともに、写しを融資機関窓口に提出し
てください。都道府県の認定手続きと並行して借り入れに必要な審査を行ないま
す。
⑶ 都道府県は、この計画が都道府県計画に照らし適切なものであり、かつ、その達
成される見込みが確実である場合に、適切である旨の認定をして、申請者ご本人に
連絡します。
2.都道府県知事の認定を受けた後は、資金の借入申込書を融資機関窓口に提出しま
す。融資機関において貸付決定が行なわれた後、担保設定等の必要な手続きを経て、
資金が融通されます。
なお、農林漁業金融 庫の融資が円滑に行なわれるようにするため、お近くの JA、
農業普及センター、農林漁業金融
庫等が必要に応じて計画認定申請書の作成等の
支援を行なうこととなっていますので、予めご相談ください。
Q88
税制の特例措置の内容と具体的な手続きについて教えてください。
1.家畜排せつ物法の制定に併せて、畜産業を営む者が新たに整備する堆肥化施設等に
ついて、次のような税制上の特例措置が講じられることとされました。
⑴ 所得税・法人税(国税)
畜産業を営む者が新たに整備する堆肥化施設等について、青色申告する場合、そ
の取得額の16%(平成11年度現在)の特別償却ができます。
⑵ 固定資産税(地方税)
畜産業を営む者が新たに整備する堆肥化施設等のうち、法の施行日(平成11年11
月1日)から平成16年3月31日までに取得したものについて、取得後5年間課税標
準が1╱2に軽減されます。
2.具体的な手続きは、次のとおりです。
⑴ 所得税・法人税(国税)
ア.毎年の所得について、2月16日から3月15日までの間に税務署に申告します。
イ.この際、青色申告決算書に、今回の特別措置を受けようとする堆肥舎等に関す
る特別償却費を減価償却費として記入します。
⑵ 固定資産税(地方税)
ア.毎年1月2日から31日までに、償却資産について市町村に申告します。申告の
内容は、償却資産の所在、種類、取得時期、取得価額等です。
イ.なお、今回の特別措置を受けるためには、農林水産大臣の証明書を添付する必
― 90 ―
要があります
(表36の記入例を参 にしてください)。証明書の 付申請書は
「畜
産環境相談コーナー」に準備してありますので、詳細についてはお問い合わせく
ださい。
表36 税制上の特例措置を受けるための申請書の記入例
(記入例)
地方税法施行規則附則第6条第98項に該当することについての証明申請書
申請年月日 平成 年 月 日
農林水産大臣
殿
申請者名
農 林
太 郎
印
住所
県 市 1―1
下記の家畜排せつ物の管理を行なう施設については、地方税法施行規則附則第6条第98項第1号又は
第2号に該当することについて、農林水産大臣の証明を受けたいので、下記のとおり申請します。
記
①所有者の氏名
又は名称及び住所
農 林
県
太 郎
市 1―1
②施設の種類
○イ 発酵施設(たい肥舎)
ロ 発酵施設(液肥化施設)
ハ 乾燥施設
③取得年月日 11年12月1日
④対象畜種
○牛・馬・豚・鶏
⑤容積
120㎥
床面の材質 コンクリート
⑥
施
設
の
構
造
屋根の材質(液肥化施設については不要) トタン
*a付属する装置がある場合
*b装置がない場合
イ 撹拌装置
装置の種類 ロ 送風装置
ハ 火力乾燥装置
側壁の材質 コンクリート
側壁の高さ 0.9ⅿ
*a、bどちらか一方を記入
* 証明番号
* 証明年月日
上記の申請は、地方税法施行規則附則第6条第98項第1号又は第2号に該当することについて証明し
ます。
*農林水産大臣
*記名押印
(備
)
*印のある欄は、記入しないこと。
― 91 ―
Q89
ふん尿処理機械装置、施設を整備するのに活用できる事業等を教えてくだ
さい。
家畜排せつ物処理施設の整備に活用できる事業は、平成13年度現在で下記の事業が
あります。
① 個人で設置する場合
○畜産環境整備リース事業
○農業改良資金
○農業近代化資金
○農林漁業金融 庫資金
② 共同で設置する場合
○資源リサイクル畜産環境整備事業(生産局)
○資源循環型農業推進 合対策事業(生産局)
○草地畜産基盤整備事業(生産局)
○経営構造対策事業(経営局)
○新山村振興等農林漁業特別対策事業(農村振興局)
○農業集落廃水統合補助事業(農村振興局)
○農村振興 合整備事業(農村振興局)
○中山間地域
合整備事業(農村振興局)
― 92 ―
Ⅲ
畜産環境保全指導の実施手順と
実態調査・ 析表(様式例)
1.実施手順
― 93 ―
― 94 ―
法人(有限会社
畜種・経営類型
飼養方式
5,000,000
水稲
その他の農業部門
その他
50,000,000
売 上 高
酪農
区
収入構成
得
1,000,000
10,000,000
所
ホルス
100
10.0
90
構成比
品種
資本金額:
)
)
250
100
規模(頭数・面積・出荷量)
頭羽数
Fax:
指導回次・期日
構成員数:
農事組合法人 (その他
Tel:
法人名称・代表者氏名
調査期日・期間:
合資会社
(性・子育成肥)
合名会社
畜産部門
⑶
経産牛
種類区
家畜飼養方式と飼養頭羽数
フリーストール
⑵
酪農・専業
⑴
2.経営の概況・内容
株式会社
析表(様式例)
法人経営の設立年月日:
経営形態:個人
現場所在地:〒
経営者住所:〒
経営者氏名:
1.対象経営
2.実態調査・
稲ワラ↕堆肥
畜産部門との関係(有機的なつながり等)
備
役員数:
Email:
― 95 ―
共
同
利
用
地
個
別
利
用
地
⑸
臨
時
雇
常
雇
家
族
⑷
性
・
年
齢
田
畑
採草地
放牧地
山 林
原 野
畜産施設用地
田
畑
採草地
放牧地
山 林
原 野
畜産施設用地
区
年従
間事
農日
業数
利用内容・作目
主な担当作物・
作業内容
土地の所有と利用
区
労働時間
数
間
実面積
日
期
間
期
数
日
1日あ
たり従
事時間
繁忙時作業
排せつ物還元面積
還元面積
還元可能面積
うち負担割合
(時間)
畜産 うち環
部門 境保全
うち
借地面積
1日あ
たり従
事時間
通常時作業
うち負担割合
(時間)
畜産
うち環
部門
境保全
備
労
働
時
間
労働時間計
うち負担割合
(時間)
畜産 うち環
部門 境保全
― 96 ―
経営地・
物等の配置
機
器
具
・
車
輛
物
・
構
築
物
畜舎の規模と飼養管理方式
区
畜舎
100頭用フリーストール
型式・大きさ・能力等
①取得・所有・利用状況・減価償却費
⑴
員数
物施設の配置(処理・利用関連施設)
3.施設整備の状況・規模
③
②経営地(施設・耕地・牧草地等)
①経営周辺(河川・湖沼等を含む立地等)
⑹
5.4
取得
年次
1
利用
戸数
40,000,000
取得価額
(千円)
0
0
うち 年間賃貸料
補助金 (リース料)
100
農業
部門
100
畜産
部門
負 担 割
0
ふん尿
部門
合
計算項目
(減価償却費等)
備
― 97 ―
処理
処理
堆積発酵処理
強制発酵処理 焼却処理
浄化処理
その他 )
量については正確に把握することが必要。
液肥処理
により処理方法が異なることから、排せつ量、資材投入後の
火力乾燥処理
処理量の把握
経産牛
家畜の種類・区
①固形物
⑴
100頭
頭羽数
〇㎏
頭羽あたり
排せつ量
〇〇
排せつ
量
週に〇㎏の稲ワラ
敷料投入量・割合
なし
副資材投入量
・割合
〇〇
処理
量
〇〇
投入可能 量
また、将来的な規模拡大等の意向について把握することにより、施設整備の検討、特に改善計画の素材となる。
家畜の種類・区
4.現在の処理状況の把握
③液
②固形
天日乾燥処理
処理施設・設備の規模、処理概要フロー
①処理方法(
⑵
備
― 98 ―
舎
区
処理名称
処理評価問題点・
原因等
作業従事者数
(性・年齢階層)
所要時間・期間等
副資材等の投入状況
(種類・量等)
(
処理の方法と評価(固形物)
関連施設
(名称と内容)
⑵
その他施設
畜
②汚泥水
)処理
積
(
算 基
礎
)処理
貯留・処理
(
量
備
)処理
― 99 ―
冬期の処理に時間がかかるが、おおむね良
好
処理評価問題点・
原因等
評価・問題点・改善点
その他(関連施設活用)
搬送(方法・距離)
撒布(撒布者・方法・経費負担等)
還元時期
堆肥(形状・完熟度・投入量・施用限界)
利用地(地目・作物名・面積)
経営内・外の区
区
利用パターン
①無償利用
パターン①
主に経営主、男、55歳
作業従事者数
(性・年齢階層)
堆肥等の利・活用
製品まで夏期〇日、冬期〇日
所要時間・期間等
⑷
なし
戻し堆肥
)処理
副資材等の投入状況
(種類・量等)
(乾燥・発酵
〇〇式堆肥発酵施設・幅〇 m×長さ〇 m
など
処理名称
処理の方法と評価(尿・汚水)
関連施設
(名称と内容)
⑶
(
パターン②
)処理
(
パターン③
)処理
― 100 ―
販売
区
経営者・関係者の問題認識・改善意向
その他に関する事項
期待する改善効果に関する事項
外部施設等の利活用に関する事項
資金額・調達・活用施策等に関する事項
施設・機械等の導入・施設に関する事項
堆肥等の利活用の方法に関する事項
排せつ物の処理方法に関する事項
飼養規模・飼養方式・飼養頭羽数に関する事項
⑸
受注者の評価良好
トラック、最長で8㎞
搬送(方法・距離)
評価・問題点・改善点
受け農家
撒布(撒布者・方法・経費負担等)
なし
1・2月
時期・期間
その他(関連施設活用等)
バラ、〇ヵ月・完熟
堆肥(形状・荷姿・完熟度)
経
営
4 車1台で5000円、持ち込みまで
販売・
換単価・金額
〇〇 程度
取り扱い量
相手先(農家・非農家区 、
対象地域・作目等) 果樹農家・主に町内
換の区
販売・
パターン①
1
利用パターン
換
区
②販売・
者
(
パターン②
関
係
者
パターン③
)
― 101 ―
その他
3)地域の環境規制基準・保全に関する事項
河川が近く、汚水の放流規制基準が厳しい。現状、問題はなし。
2)地域の実情・環境保全に関する評価・問題点指摘の有無・内容
堆肥センター(サブセンター)の活用
関連施設と活用の内容
畜産会の指導
関係組織と支援活動内容
1)地域の関連組織・施設等の状況
②地域の状況
畜舎周辺への花卉植栽
①美観等への対応措置内容
⑹
― 102 ―
⑶
有
処理水の評価
)
検査結果
臭気・騒音等の評価
騒音
アンモニア
硫化水素
プロピオン酸
ノルマル吉草酸
ノルマル酪酸
値
臭気
測
定
)
ph
BOD
COD
SS
大腸菌群数
計
測
析結果:窒素(
期日・時間
無
析結果
水質
区
実施の有無
⑵
実施の有無:(
析の実施と
堆肥の評価
析による評価
堆肥の成
⑴
5.測定・
計
結
燐酸(
測
果
者
)
計測時の状況
) カリ(
の 基
準
①水質汚濁防止法(環境庁)
②
同
(県条例)
③特定湖沼方
④悪臭防止法
地 域
備
― 103 ―
施設計画値と規模算定
㎥
㎥
ppm
ppm
ppm
ppm
㎥
㎥
ppm
ppm
ばっき層処理前流入汚水量
ばっき層処理前 BOD 濃度
ばっき層処理前 SS 濃度
ばっき層処理後 BOD 濃度
ばっき層処理後 SS 濃度
1日あたり汚泥発生量
1日あたり放流水量
放流水 BOD 濃度
放流水 SS 濃度
単位
1日あたり処理汚水量
②汚水処理
㎡
%
二次処理終了時水
戻し堆肥調製用乾燥施設必要面積
㎡
一次処理槽必要面積
㎏
%
一次処理終了時水
1日あたり堆肥生産量
ⅿ
一次処理堆積高
㎡
日
一次処理日数
二次処理槽必要面積
%
%
スタート時水
調整原料水
水
%
調整原料名
ふん水
水
㎏
単位
1日あたり処理ふん量
①堆肥化処理
⑷
設計書記載値
設計書記載値
計算値
計算値
― 104―
小計④
その他
消耗諸材料費
敷料・副資材費
小計③
燃料・油費
水道料
電力料
小計②
収支
販売・
計
換収入合計
支払利子
合計
物・構築物
機器具・車輛
小農具費
修繕費
却費
減価償
小計①
雇用労働
賃料料金その他
材料費
電力水道費
施設機器具費
目
家族労働
費
額
5,000,000
金
関係経費と処理コストおよび収支
労働費
⑸
90
農業部門
負
割
100
畜産部門
担
15
ふん尿部門
合
6,750
頭羽数当たり負担額
経常所得に占める同経費の割合
当期生産費用に占める処理・利用経費負担割合
675,000
ふん尿処理部門負担額
備
時給1000円
(量・単価など)
― 105 ―
問題点の整理と対策方針の立案
実態値
追加投資による施設整備の検討
種類・名称
能力・大きさ
①取得予定施設・機械・車輌
⑵
問題点
②問題点の整理と対策方針
キーとなる項目
数量
取得金額
計画値
①処理の実態と計画値・既存施設の処理能力との比較検討
⑴
6.対策の具体的検討
導入年月
自己資金
対策方針
既存施設の能力
借入資金
資金調達
補
助
問題点
備
― 106 ―
借入先
既存施設
費目
収益実績
⑤収益実績との対比による適正投資の検討
費目
④ランニングコスト(直接的経費)の検討
資金名
③資金手当の検討
改善項目
②追加投資による処理能力の改善効果
増加
新規施設
借入金額
借入金利
改
効
合計
合計
借入条件
善
果
平常年償還額
備
備
備
― 107 ―
⑶
経営の長期的展望
長期経営計画からの検討
短期経営計画からの検討
検討項目
⑦経営計画システムから見た施設整備の検討
検討項目
⑥追加投資システムから見た施設整備の検討
説
説
明
明
― 108 ―
括的な助言
生産実績
経営の当期生産費用と損益計算書、貸借対照表
借入金の明細
その他
①
②
③
④
8.付属資料
7.
― 109 ―
処理条件の検討…処理に係る面積、立地条件
① 立地条件のもとでの処理施設の規模・配置等の実態・可能性の検討
② 自己有地への排せつ物、堆肥等の投入実態の 析(投入地の利用形状、面積あたり投入量・時期、投入限界など)
処理条件・労働効率性の 析(労働負担)
①
労働負担(時間)に占める排せつ物処理・利用労働負担割合の実態・可能性など
② 作業内容・体制と施設整備との関連における作業の効率性 析・検討(1人あたり負担労働時間・1頭あたり負担労働時間など)
施設等の内容・経済性の 析
① 関連施設・機械等の処理能力・規模の 析・検討(施設・機械の大きさ・処理能力・効率など)
② 関連施設等の(初度)投資負担額、資金調達と関連経費負担の 析・検討
③ 改善に要する新規導入施設・機械等の導入にかかわる適正な投資の検討(シミュレーション手法)
④ 関連施設周辺の外観(美観)の検討
処理・利用技術 析(固・液について)
① 処理方式・詳細方法の検討(副資材・菌等の利用なども含む)
② 施設・機械の運用・管理技術の確認・検討
③ 堆肥化技術の 析(堆肥の質の 析…発酵・腐熟期間、成
析など)
④ 汚水処理技術(放流水の水質)
⑤ 排せつ物・堆肥等の利・活用技術(堆肥の形状・流通方法・手段など)
処理等のコスト・収支 析
① 処理等に係るコスト 析(関連費用と処理量…飼養畜1頭あたりの負担費用、畜産主産物生産コストに占める負担費用割合など)
② 堆肥等の販売・ 換収入との収支 析
労働
施設・機械
技術
費用・収支
処理条件・規模の検討
① 家畜飼養方式(フリーストール等)の違いによる排せつ物処理の基礎的条件の確認と関連事項の検討(飼養方式と排せつ物処理方法の
整合・効率性、敷料の種類・量など)
② 飼養頭数をもとにした排せつ・処理 量の把握(1頭あたたり排せつ量×飼養頭数)
③ 排せつ物処理の面から見た適正飼養規模の検討
家畜
土地
地域条件の検討
① 地域的な立地条件(混在化など)や汚水放流などに係る環境規制基準等に関する検討
② 地域の関係組織との連携・協調、関連施設活用等に関する実態・可能性の検討(支援組織の指導の受入、堆肥センターの活用など)
③ 堆肥等の耕種利用・流通の実態と可能性の検討(地域の生産作目、利用形状・量・時期など)
地域
析事項
人的条件の検討
① 環境保全に対する経営者としての問題意識・改善意欲の把握と検討
② 経営管理水準の検討(経営全体の中での処理・利用部門の位置付けなど…経済・労働)
検討・
経営者
析の内容
条件検討
① 経営類型(専・複合の別など)等の違いによる基礎条件の確認と検討(他作目部門との関連など)
実態把握
−調査・
経営類型・形態
参
Ⅳ
実態調査・ 析表(様式例)の活用上の留意点
1)対象経営
【実態調査時】
個人(家族)または法人経営(会社組織)では、環境保全に取り組む基本的な姿勢は同
じでも、法人経営では環境専属の従業員を配置し対応できます。
2)経営の概況・内容
⑴
畜種・経営類型
【実態調査時】
畜種・経営類型により処理方法が異なってきます。
例えば、酪農経営では、牛舎から搬出するふん尿量は特に水
含量が高いという特徴
があります。各畜種の処理方法について処理パターンを理解しておくことが重要です。
⑵
家畜飼養方式と飼養頭羽数
【実態調査時】
ふん尿の最大発生量を算出する基礎となるので、施設別に飼養方式別と収容可能頭羽
数及び現況の飼養頭羽数を調査します。
なお、全頭羽を種類区
ごとに調査すると、施設の規模算定が容易となります。
【改善計画検討時】
検討する上では、家畜の飼養方式とふん尿処理パターンが異なるので正確に把握して
おくことが重要になります。
例えば、
酪農経営の場合>
・フリーストール・フリーバーン方式の場合、ふん尿混合を堆肥化処理することにな
ります。
・つなぎ牛舎の場合、バンクリーナーによるふん尿
離、または、自然流下方式のふ
ん尿混合でスラリーをバキュームカー等で圃場散布することになります。
・経産牛と搾乳牛の頭数は、経産牛1頭当たりの乳量の増減により飼料給与量も異な
りふん尿量が変化するので、正確に把握しておきます。
養豚経営の場合>
・飼養頭数を正確に把握しておくことによって、排せつ量が容易に算出されます。
・飼養方式(平床・スノコ式)によりふん尿
離(かき出し・スクレーパー等)やふ
ん尿混合の構造に かれます。
・肥育豚舎では、スクレーパー等を用いふん尿 離し浄化処理する方式、踏み込み式
の発酵床、蹴り出し方式(ふん尿を鋸
で吸着し堆肥舎で堆積発酵する)などがあ
ります。
肉用牛経営の場合>
・群飼い・単飼方式でふん尿混合と敷料を
― 110 ―
慮して牛舎からの搬出をショベルローダ
等で搬出することになります。
⑶
収入構成
【実態調査時】
・所得は概算で構わなく、家計費で対応することも可能であるが、収益性の 析が必要
な場合は、通常の診断様式を利用し調査します。
・堆肥(ふん尿)の販売・
換の実施については、確認が必要です。
【改善計画検討時】
・「規模の頭数」からは、頭数を把握することで、ふん尿の量が算出できます。そこで
1日当たりのふん尿量に敷料(副資材)の
る
用量を加味することで牛舎から搬出され
量を算出します。
・「規模の面積」からは、堆肥を保管(ストック)する場所の確保の有無を検討します。
例えば、堆肥の保管場所については、簡易的な施設または圃場の一画にでも防水シー
トなど簡易な方法で保管場所を確保できるのでいろいろな立地条件下での対応を検討
します。
また、堆肥処理ができ、良質堆肥を処理できる捕場面積の確保が必要となり、年間
作付け時期と作物の種類により圃場10 当たりの堆肥施用基準量が決定されます。堆
肥を施肥する圃場(田・畑地・牧草地等)面積が対象経営内で不足する場合は、対象
経営以外への販売・無償譲渡等を検討しなければなりません。
・「規模の出荷」からは、畜産部門と耕種部門との連携や堆肥と稲ワラ等との無償 換
などを把握することによって畜産部門以外での堆肥処理量が把握できます。また、特
に圃場面積が少ない経営については、行政の斡旋による借地圃場や稲ワラ 換の圃場
確保が経営を維持するうえで重要となります。
⑷
労働時間
【実態調査時】
労賃や報酬等については、投資可能性を調査・検討する時には必要だが、通常の環境
指導のための調査では必要ありません。
【改善計画検討時】
・個人ごとの労働時間を300日から330日程度で割り、1日当たり睡眠時間がとれない労
働時間では再度内容を検討します。
・ふん尿処理に関する労働日数を把握することで不足する労働力の確保が予測できま
す。
・作物の播種時期に堆肥散布時期が集中するので臨時雇用が必要になります。
・1日当たりの作業行程について、ふん尿処理に要する時間を把握することで効率的な
作業体系への改善方法が容易となります(週単位・繁忙時のふん尿処理に要する時間
を把握することで臨時雇用も必要になります)。
⑸
土地の所有と利用
【実態調査時】
・排せつ物還元面積の把握に当たり、圃場や処理施設の距離、運搬時間を把握すること
によって、堆肥等の利活用の検討時に参
となります。
― 111 ―
・また、施設整備検討にあたっては、将来的な規模拡大の可能性を把握し用地拡大の可
能性と周辺環境を 慮した調査を実施することによって、改善検討の素材となります。
・同じ圃場に年に何回作付けするかは、地域の気象条件により異なるので確認しておき
ます。
【改善計画検討時】
・作物の種類や作付体系により施肥する量が異なるので作物ごとの施肥基準を把握して
おきます。
・家畜ふん尿処理については、自己所有圃場で還元可能な面積を確保できない場合、圃
場の借地、または経営外への販売、もしくは粗飼料(稲わら)との
換を模索するこ
とが必要となります。
⑹
経営地・
物等の配置
【実態調査時】
・現時点で作成する略図の他に、市町村で作成した地図を利用し、排汁等の流入可能な
河川や湖沼を確認します。また、水質汚濁などの環境問題が発生している場合は、そ
の地点も確認します。
・必要に応じ、施設と周囲の高低差をハンドレベルで構わないので簡易に測量します。
・ふん尿を近隣に提供しやすい環境にあるのか、また現状及び近い将来における環境汚
染生起の可能性を把握しておくために、地域の農業事情(耕種農家における堆肥利用
の可能性、畜産農家間における堆肥販売競争など)、都市化の進展程度などを聞き取り
ます。
【改善計画検討時】
経営周辺>
・農場周辺に河川・湖沼などの水系がないか十 に把握しておくことが重要です。
例えば、大雨の時に環境汚染が発生しないよう畜舎からの雨水や排汁の流れを え
ます。
堆肥舎・汚水浄化施設等を設置する場合は、排汁や汚水等で地下水が汚染されない
よう十
な対策を講じます。
経営地>
・施設設置場所が、傾斜地域または河川が近いか把握しておきます。
また、牧草地などの傾斜地では、表土流出やパドックからの排汁等の流出などを確
認しておくことも重要です。
物施設の配置>
・畜舎や堆肥処理施設等は、平坦地域や山間地域で降雨量が異なるため経営主より最
大雨量等を聞き取り、堆肥舎等の設置場所や設計時に雨量や排汁対策を十 に検討
しておくことが望ましいです。
3)施設整備の状況・規模
⑴
畜舎の規模と飼養管理方式
取得・所有・利用状況・減価償却費
― 112 ―
【実態調査時】
・所有する固定資産ごとに記入します。
・償却費は、利用目的により圧縮計算を行ないます。また、共同利用の場合や賃料料金
で支払っている場合は、償却対象としないこと。賃料料金支払いなどではなく、固定
資産として共同資産(所有)の場合は、利用(所有)戸数で割った
割取得価額で償
却計算をします。
・投資可能性を検討する場合は、詳しく調査します。
・環境保全の検討の場合は、ふん尿処理に係る調査を中心に実施します。
【改善計画検討時】
・家畜ふん尿処理によっては、イニシャルコストとランニングコストの算出を行ない、
これをもとに投資計画をたてることが重要です。
・機器具・車輌等の耐用年数および
新時期の把握と追加投資について、計画段階で把
握しておくことも重要です。
・畜産環境施設・機器具の設備投資については、国の補助事業に対して県や市町村が増
額補助する際に、適正な頭数規模以上に過剰投資とならないように常に低コスト施設
整備を心がけて検討することが重要です。
・対象経営の年間リース料及び当期償還額を把握し、過剰投資を未然に防止することが
必要です。
⑵
処理施設・設備の規模、処理概要フロー
【実態調査時】
・最終処理(圃場散布、販売・ 換など)までをフローにします。
【改善計画検討時】
・施設の計画設計時のフローを把握し、現場で実際にどのように処理されているか確認
することで堆肥及び汚水処理が上手くいかない場合の改善方策がたて易いです。
堆肥の場合>
・畜舎の構造から搬出と処理方法について対象経営の処理方法をフロー図で把握してお
くと問題を解決する際に重要となります。
汚水処理の場合>
・畜舎から排出される汚水処理方法について、処理施設の施行業者の処理方法と対象経
営の現状処理方法が異なっていないことを確認し、フロー図で把握しておくことが重
要となります。
4)現在の処理状況の把握
⑴
処理量の把握
①
固形物
【実態調査時】
・家畜の種類・区 により処理方法が異なることから、排せつ量・資材投入後の 量
については正確に把握することが必要です。
また、将来的な規模拡大等の意向について把握することにより、施設整備の検討時
― 113 ―
に改善計画の素材となります。
【改善計画検討時】
・良質堆肥が製造できる副資材として、戻し堆肥を利用することで水
調整が可能に
なります。ストックした堆肥の利用法も検討しておくことが重要になります。
②
尿・汚水
【実態調査時】
・施設と畜種区
により排せつ量が異なることから、各々の区
ごとに正確に把握す
ることが必要です。
また、将来的な規模拡大等の意向について把握することにより、施設整備の検討時
に改善計画の素材となります。
【改善計画検討時】
・処理概要フローと曝気槽内の処理過程を
析し、放流処理の水質検査結果を把握し、
比較検討することによって改善対策が容易になります。
⑵
処理の方法と評価(固形物)
【実態調査時】
処理区
ごとに処理施設・副資材の投入状況・作業時間などについて、現状の方法と
評価を対象経営から正確に把握します。
【改善計画検討時】
・飼養管理作業とふん尿処理にかかわる時間を把握しておくことが重要になります。特
にふん尿処理をする上で飼養管理に不備が生じないことが肝要です。
・副資材(敷料を含む)等の種類(野草・木質系(鋸 ・バーク)・古紙)により処理日
数が異なるので畜種毎と副資材の組み合わせによる処理日数を把握しておきます。
・堆肥処理する上で畜種ごとの堆肥化スタート時の水
含量・容積重を把握しておきま
す。
・副資材等を投入する量により処理量が増加するので施肥する圃場面積の確保が必要と
なります。
・良質堆肥を製造し、堆肥
析結果により熟成度と施肥量が確定します。
・地域により作物の播種時期が異なるので年間に所有する圃場面積にどの程度施肥でき
るか事前に把握します。
・堆肥を圃場に施肥できない時期について、堆肥ストック場所の確保、圃場の一画に防
水シートを敷き堆肥を積み上げ上から防水シートで覆う簡易方法も
慮する必要があ
ります。
⑶
処理の方法と評価(尿・汚水)
【実態調査時】
処理区
ごとに処理施設・副資材の投入状況・作業時間などについて、現状の方法と
評価を対象経営から正確に把握します。
【改善計画検討時】
・汚水浄化施設設計時(施行前)の処理フローと設置後(施工後)に経営主の処理過程
をフローにて把握しておくことで問題点等が発生しても改善対策が容易になります。
― 114 ―
・汚水処理する際に経営内の責任者を明確にしておくことで汚水浄化処理が上手くいく
かの判断となります。
・日々の汚水浄化処理槽の状態を記録しておくことによって問題点・原因の要因が明確
になり改善対策が容易となります。
⑷
堆肥等の利・活用
【実態調査時】
・無償利用の場合と販売・
・販売・
換の場合について区 して調査します。
換で特に 換の場合は、
換物を確認します。
【施設設置後の指導・支援時】
・堆肥を無償譲渡する際も常に一定の品質基準を明確にし、利用者が長期に渡り利用し
やすいように工夫することを心がけることが畜産経営の維持につながります。
・経営外への無償譲渡については、処理の方法及び処理別の数量について大まかな割合
を記録することが平成14年1月から適用されています。
⑸
経営者・関係者の問題認識・改善意向
【実態調査時】
各区 について、経営主と関係者から問題認識と改善の意向を聞き取り調査します。
特に第3者としての関係者の意見については具体的に聞き取ることが重要です。
【改善計画検討時】
経営主の畜産環境問題に関する認識・
意見を聞き取ることで十
え方等は地域の行政関係者や畜産技術者等の
に理解できます。
例えば、畜産環境問題に対する
え方や認識等が良くても実行段階で異なる経営主も
います。そこで地域の畜産技術者から経営主に関する情報を把握しておくことが改善対
策をたてるうえで重要となります。
⑹
その他
【実態調査時】
畜舎周辺への環境保全対応、地域の関係組織との連携、地域の環境保全に関する認識、
環境規制基準等について調査します。
地域の状況については、近い将来を念頭において調査します。
【改善計画検討時】
・美観対策においては、混住化地域での花および四季の樹木を植栽することで地域住民
との融和を図り日々の努力が地域の住民とのトラブルを最小限に抑えることにつなが
ります。特に、臭気対策では重要となります。
・指導・支援者は、関係機関及び経営者への情報提供と相談を行ないます。例えば、地
域相談員・畜産環境アドバイザーが初期対応し、相談内容によっては専門機関を早急
に紹介し、支援指導を依頼するなどの対応を行ないます。
・地域に第三セクター等の堆肥施設がある場合、特に小規模経営での利用・活用方法を
把握した支援指導が重要となります。
・市町村が設置する堆肥センターの意見を聞くことも重要です。
― 115 ―
5)測定・ 析による評価
⑴
堆肥の評価
【実態調査時】
堆肥の成
析実施の有無を調査し、成
析を実施している場合は、 析結果につ
いて調査します。
【改善計画検討時】
・家畜ふん尿及び堆肥の成
的特徴を十
理解しておきます。
・堆肥 析のための堆肥採取については、複数箇所から十
混合して採取します。
・良質堆肥を製造する場合、堆肥の熟成度を確認する上で堆肥
・畜種と副資材により堆肥の
析が重要となります。
析結果が異なるので、事前に試験成績等を把握しておき
ます。
・
析結果については、水
・炭素―窒素比・窒素・燐酸・カリの成
を把握すること
で圃場への施肥設計が容易となります。
⑵
処理水の評価
【実態調査時】
処理水検査の実施有無を調査し、実施している場合は検査結果について調査します。
【改善計画検討時】
・放流基準を満たしているかどうかの判断は、年間数回の検査が必要となります。
・行政機関等(河川への放流の場合、保
所の抜き打ち検査等がある)の立ち入り検査
が実施されるので、常に経営主への責任が科せられる旨を十
に説明しておくことが
重要です。
・放流規制については、窒素規制が新たに追加され、有害物質として排出する全ての施
設が該当することを理解しておくことが重要です。
・地域の県・市町村の条例により上乗せ基準があるので該当する施設の水域の基準を事
前に把握しておくことが必要です。
⑶
臭気・騒音等の評価
【実態調査時】
対象経営、関係者、近隣住民から臭気・騒音等の現状について聞き取り調査します。
また、現在は特に苦情など発生していないが、近い将来に発生する可能性があるかも
含め調査することが必要です。
⑷
施設計画値と規模算定(①堆肥化処理、②汚水処理)
【実態調査時】
処理施設設置計画時の業者等の設計書に記載されている処理能力値を調査するととも
に、処理能力から導きだせる計算値を再計算し調査します。
【改善計画検討時】
設計書記載値と再計算した計算値が異なることがあるので、その場合は、導入予定施
設の再検討が必要となります。
また、市販されている施設について情報を収集しておくことが重要です。
― 116 ―
⑸
関係経費と処理コストおよび収支
【実態調査時】
・ふん尿処理に掛かる経費を把握することを目的とします。
・経費のうちふん尿処理部門として特定し仕訳けできるものは、あえて負担割合の按
は行ないません。
・敷料、副資材については、ふん尿処理のために利用したものだけ(水
や容積重調整
の敷料や副資材)を計上します。
・ふん尿処理・堆肥製造費用と堆肥販売費用が
離把握できるように備
欄に注記する
とよいでしょう。
【改善計画検討時】
・現状の処理経費を把握した、追加投資の検討が重要となります。
・施設機器具については、次期 新年数及び次期投資額を把握しておくことが重要です。
・副資材(水
調整剤等)について、汚水処理では、余剰汚泥処理に凝集剤が必要とな
るので堆肥化施設を設けます。なお、凝集剤で処理した堆肥の利用方法まで 慮して
おく必要があります。
6)対策の具体的検討
⑴
問題点の整理と対策方針の立案
【改善計画検討時】
既に調査した結果に基づき、現在の処理の実態・計画値等から比較し、問題点等につ
いて検討します。
また、整理された問題点から対策方針について検討を実施します。
⑵
追加投資による施設整備の検討
【改善計画検討時】
既に調査した結果に基づき、取得予定施設等の設置による改善効果を検討するととも
に、資金調達について対象経営主を
えた綿密な検討を行なうことが重要です。
さらに、新規施設設置後のランニングコストの把握を行なうとともに、収益実績から
みた投資の適正化を検討します。
また、既に提供されている「追加投資システム」「経営計画システム」を活用した施設
整備の検討を行ない、経営経済面からの適正化の把握を実施します。
⑶
経営の長期的展望
【改善計画検討時】
環境保全対応したことによる長期的展望について検討します。
7)
括的な助言
【改善計画検討時】
調査結果に基づく、 括的な助言内容について検討します。
― 117 ―
8)付属資料
付属資料が添付されることによって、
合的な調査結果に基づく助言・指導が可能とな
ります。
― 118 ―
付1
用語解説
この「用語解説」には、畜産環境保全を行なう際に われる一般的な用語とその解説を取
りまとめています。また、本マニュアル内の「Ⅱ
語については、各Qの中で最初に
畜産環境保全Q&A」で
用している用
用した用語を太文字で表記しています。
においては、通常、亜硝酸態窒素が蓄積す
ア行
ることはない。しかし、pH 等の影響で硝酸
RO 膜(reverse osmosis membrane)
菌の活性が抑制されると亜硝酸が集積する
逆浸透膜。[膜処理]参照
ことがある。窒素肥料の施肥量が多いと土
壌中に亜硝酸が多量に集積しやすく、酸性
悪臭物質(offensive odor material, mal-
条件下ではとくにガス化しやすくなる。野
odorous material)
菜のハウス栽培では施肥量が多く密閉度が
不快なにおいの原因となり、生活環境を
高いために、亜硝酸によるガス障害が起こ
損なう恐れのある物質で政令で定められた
りやすい。また、亜硝酸は動物に対して毒
もの。現在、アンモニア、メチルメルカプ
性が強い。亜硝酸は反すう家畜の消化管内
タンなど22の物質が悪臭物質に指定されて
で硝酸から生成され、血液中のヘモグロビ
いる。[指定悪臭物質]参照
ンと結合し酸素の運搬を阻害する。飼料作
物に対し家畜ふん尿等を多量施用すると作
亜硝酸細菌(nitrite bacteria)
物体中の硝酸塩濃度が高まり、このような
硝化細菌のうち、アンモニアを亜硝酸ま
で好気的に酸化できる細菌の
飼料を家畜に給与すると中毒を起こしやす
称。アンモ
い。
ニア酸化細菌とも呼ぶ。代表的なものとし
水中の亜硝酸態窒素は、主としてたんぱ
て Nitrosomonas(ニトロソモナス)があ
く質などの
解によって生じたアンモニア
る。[硝酸化成作用]参照
性窒素が、さらに生物学的に酸化された結
果生じたもので、汚水処理においては汚濁
亜硝酸性窒素(nitrite nitrogen)
物質の浄化の程度を知るうえの手掛かりと
[亜硝酸態窒素]参照
なる。また、亜硝酸は、アンモニアが酸化
して硝酸になる中間生成物であるため、自
亜硝酸態窒素(nitrite nitrogen)
然水域においては、アンモニア性窒素と同
NO -N と表記する。
様、比較的近い過去に、し尿(ふん尿を含
亜硝酸態窒素とは、亜硝酸塩をその窒素
む)による汚染のあった可能性を示す指標
量で表したものである。亜硝酸性窒素とも
ともなっている。[硝酸化成作用]参照
いう。硝酸化成作用の過程でアンモニアか
ら硝酸に酸化される際の中間生成物として
圧力損失(pressure loss, pressure drop)
現れる。アンモニア酸化反応よりも亜硝酸
エアダクトあるいは配管などを空気や水
酸化反応の方が反応速度が大きいため、堆
などの流体が流れるとき、摩擦や渦流など
肥化や汚水処理などの過程あるいは土壌中
のエネルギー損失によって観察される圧力
119
の損失。入口と出口の圧力差などによって
環境への影響について注目されている。
表わされる。
ヨーロッパでは、家畜ふん尿からのアンモ
ニア揮散が酸性雨の主な原因とみなされて
アミン類(amine)
いる。アンモニアを含む雨自体は酸性を示
アンモニアの水素原子を炭化水素残基 R
さないが、この雨が降下し土壌中で硝酸イ
で置換した化合物であって、置換された炭
オンに変化(→硝酸化成作用)することに
化水素残基の数によって第1アミン、第2
よって酸性雨が降ったと同様の影響を表す
アミン、第3アミンの3種がある。トリメ
からである。従って、ヨーロッパではアン
チルアミン[(CH ) N]は脂肪族第3アミ
モニア揮散を防止するために、ふん尿の貯
ンに属する。
留槽を密閉したり、農地に施用する場合も
表面散布でなく土中施用するなどの対策を
アンモニア(ammonia)
とっている。
刺激性の強い無色の気体(NH )。ふん尿
中の窒素化合物が
解したときに発生する
アンモニア性窒素(ammonia nitrogen)
ため悪臭防止法の規制物質のひとつになっ
[アンモニア態窒素]参照
ている。
アンモニア態窒素(ammonia nitrogen)
アンモニア化成(ammonification)
NH -N と表記する。
家畜ふん尿を放置あるいは処理する過
アンモニア態窒素とは、アンモニウム塩
程、またふん尿や堆肥を土壌施用した場合
をその窒素量で表したものである。アンモ
に、有機態窒素が微生物などにより 解さ
ニア性窒素ともいう。家畜ふん尿において
れてアンモニアに変換される反応。細菌、
は、アンモニア(NH )はタンパク質、ア
糸状菌、原生動物などの従属栄養生物が産
ミノ酸、アミン類、尿素、尿酸、馬尿酸な
生する加水 解酵素により、有機物中の主
どの含窒素化合物が
としてアミノ基からアンモニアが生成され
アンモニア化成)されるが、家畜ふん尿や
る。[アンモニア態窒素]参照
畜舎汚水のように水と共存するような状態
解する際に生成(→
ではアンモニウムイオン(NH )の形態で
アンモニア揮散(volatilization of ammo-
存在する。
nia)
排水中のアンモニア態窒素は、水の汚染
貯留・放置された家畜ふん尿、スラリー
指標として重要であるほか、水域の富栄養
の曝気処理、家畜ふんの堆肥化過程、ある
化の要因として、また稲作等に対する窒素
いはふん尿や堆肥を土壌に施用した場合
過剰による弊害を評価するうえで測定の意
に、アンモニアガスが大気中に放出される
義が大きい。アンモニア態窒素は、酸化さ
現象。アンモニア揮散はふん尿の窒素含有
れて亜硝酸態窒素を経て硫酸態窒素とな
率及び pH が高いほど起こりやすく、畜種
る。
別にみると揮散量は鶏ふんで最も多く、次
水系におけるアンモニア態窒素の存在
いで豚ふん尿、牛ふん尿では少ない。アン
は、近い過去に、し尿(ふん尿を含む)に
モニアの放出によって窒素が失われること
よる汚染のあった可能性を示す指標とも
から養
なっている。
損失とみられるが、最近では大気
120
EC(electric conductivity)
もつ。
[電気伝導度]参照
I=k log C+a
ここで、k、a は物質によって定まる定数
異化作用(catabolism, dissimilation)
従って、臭気強度を1段階低下させるた
物質代謝において、化学的に複雑な物質
をより簡単な物質に
めには、臭気物質濃度が1/10にならなけれ
解する反応。例えば、
ばならない。
生体内において、蛋白質、糖類、脂肪など
が
解されて、二酸化炭素、水、アンモニ
エアレーション(aeration)
アなどになる反応。生体は、
この反応によっ
空気を送り込むこと。空気を液状物中に
て活動エネルギーを得ている。
送るときは曝気、固形物中に送ときは通気
という。好気的な生物処理ではこの操作が
イソ吉草酸(isovaleric acid)
必要であって、活性汚泥法や堆肥化処理は、
(CH ) CHCH COOH
その代表的な処理技術である。
悪臭防止法の規制物質のひとつで低級脂
肪酸(VFA)に属する。
エアレーションタンク(aeration tank)
[曝気槽]参照
一次処理(first treatment,primary treatment)
液相(liquid phase)
前処理ともいい、微生物等による本格的
[三相
布]参照
な処理を行う以前の汚水処理工程。
一般に沈殿
離、浮上
離、
篩やスクリー
SS(suspended solids)
ンによる SS 除去等の物理的処理が中心と
浮遊物質。濃度(ppm 又は㎎/ℓ)で表示
なる。その工程だけでは、汚水処理が完了
する。水中に懸濁している不溶性の物質を
しない比較的簡易な汚水処理の
いう。BOD、COD と深い関連性を持ち、ま
称。
た、汚泥生成量にも関係する。
イナワラ(rice straw)
SVI(sludge volume index)
ウィルス(virus)
汚泥容量指標または汚泥容積指数。活性
最も微少
(10∼300nm、1 nm は1㎜の百
万
汚泥処理における曝気槽内の微生物活動の
の1)な生細胞寄生性の微生物。DNA
良 否 を 判 定 す る た め の 指 標 で、SV と
あるいは RNA の一方だけを持つ。寄生宿
MLSS を測定し次式で算出する。
主の違いにより植物ウィルス、動物ウィル
SVI=SV(%)×10,000╱ MLSS(ppm)
ス、細菌ウィルスに区別される。
SVI は、活性汚泥を30 間静置した場合
に、1 g の活性汚泥浮遊物の占める容積を
ウ エ バー・フェヒ ナーの 法 則(W eber-
数で示したもので、SVI=100とは、活性
Fechners law)
汚泥1 g が100 の容積を占めることを表
感覚の強さは刺激の強さの対数に比例す
しており、曝気槽内の SVI は100∼150が標
るという法則。悪臭の場合、その臭気強度
準とされる。
は臭気物質濃度 C との間に次式の関係を
121
MF膜(microfiltration membrane)
変化量のある水準で回路が開き、他の水
精密濾過膜。[膜処理]参照
準で閉じる、最も基本的な制御方式。下水
槽の水位が上がりある高さになるとスイッ
MLSS(mixed liquor suspended solid)
チが接続して汚水ポンプが作動し、水位が
活性汚泥浮遊物。曝気槽活性汚泥中の
ある高さまで下がると停止する、あるいは、
SS(浮遊物)を㎎/ℓで表したものである。
ある気温を超えると換気扇が作動するな
活性汚泥中の微生物量を測定することが困
ど、その例である。汚水処理施設などのポ
難であるため、MLSS がその代わりの指標
ンプ類の制御では現在でも広く われてい
として
るが、
各種恒温槽のヒータに対する通電量、
われる。M LSS は、活性汚泥処理
施 設 運 転 上 の 機 能 を 表 す 指 標 と し て、
畜舎の換気量、浄化槽の曝気量などでは、
3000∼6000ppm を標準としている。
負荷に応じてサイリスターにより実効電力
量を制御したり、インバータにより周波数
MLVSS(mixed liquor volatile suspended
を変えてモータの回転数を制御する方式も
solid)
われるようになっている。
[比例制御]
参
活性汚泥有機性浮遊物。MLSS の強熱減
照
量を㎎/ℓで表したものである。M LSS は、
無機性の SS も含まれるので有機性の SS
温室効果(green house effect)
のみとして、なるべく微生物量に近似させ
大気中の成
が、赤外線を吸収して地球
ようとしたもの。
圏外への放出を妨げる効果。
塩基置換容量(cation-exchange capacity)
温室効果ガス(green house effect gas,
[陽イオン
換容量]参照
green house gas)
温室効果をもつ大気中の成 には二酸化
ORP(oxidation-reduction potential)
炭素(炭酸ガス)
、水蒸気、オゾンがあるが、
[酸化還元電位]参照
これらのうち二酸化炭素は近世以降の人類
の活動により増加している。
これらのほか、
汚濁負荷量(pollution loading amount,
各種フロン、メタン、亜酸化窒素などがあ
pollution load)
るが、これらは人工産物か人口の増加に一
河川・海・湖沼等の水質汚濁の原因とな
致した消長を示し、かつ温室効果が高いの
る物質の量。
で、二酸化炭素とともに地球温暖化対策上
排出量×
(BOD、COD、SS 等の各汚濁物
その抑制策が求められている。[地球温暖
質濃度)の計算から算出される各汚濁物質
化]参照
の絶対量(例えば、㎏╱日)を、その排水
の汚濁負荷量という。
カ行
汚泥容量指標(sludge volume index)
回転ふるい(rotary screen)
[SVI]参照
下方に傾斜した円筒形のスクリーンを回
転させ、上部から円筒形スクリーン内に汚
onoff 制御(on-off control)
水を投入し汚水中の比較的大型の SS を除
122
去する篩。
ガス濃度(gas concentration)
臭気物質が大気中に含まれる濃度で容積
灰
(ash)
比(
試 料 を 大気中 で500∼600℃の 高温で熱
million、百万
し、含有する有機物を完全に燃焼、揮散さ
せた後の残存部
。通常、灰
ppm の千
率)、ppb
(part per billion、
の1)で表す。
の量をもっ
て近似的に試料の無機物含量とみなすこと
が多い。強熱残量、
/㎥)で表す。通常、ppm(part per
活性汚泥(activated sludge)
熱残量と呼ぶことも
汚水中で曝気を続けると、しだいに褐色
ある。[有機物]参照。
状で凝集、沈殿性を持ったフロックができ
る。このフロックを活性汚泥という。
回
処理(batch system treatment)
活性汚泥は、汚水を浄化することのでき
原料を一度に投入し、一定の処理時間を
る微生物の集合である。
経て変化を生じさせたのち、処理系から排
出する処理。
活性汚泥浮遊物(mixed liquor suspended
この方式をとる汚水処理に回
式活性汚
泥法がある。活性汚泥と上澄液を
solid)
離させ
[MLSS]参照
る沈殿槽を設けず、曝気を停止した曝気槽
を沈殿槽として利用する。具体的には、曝
活性炭吸着法(activate carbon adsorption
気を停止し1∼2時間静置し活性汚泥を沈
method)
殿させて上澄液を排出させた後、汚水を投
活性炭は普通20∼40・
Aの多孔質で、その
入して再び曝気を続ける運転法。汚水の投
表面積は900∼1,300㎡/g もあり、脱色、吸
入と処理水の排出を連続的に行わず、何回
湿、脱臭性が高い。この性質を利用して臭
かに
気物質を活性炭に吸着させて脱臭する方
けて(1日に1回の入れ替えが一般
的)行う運転法。沈殿槽を必要としないた
法。
め費用も安く、汚泥返送等の沈殿槽管理が
不要のため維持管理が容易である。
かび(mold)
糸状菌のこと。しかし生物学上の厳密な
化 学 的 酸 素 要 求 量(chemical oxygen
呼び方ではなく、堆積したふんの表面に生
demand)
える菌糸状の微生物のかたまりをいうこと
[COD]参照
が多い。
かさ密度(bulk density)
仮比重(apparent specific gravity)
[密度]参照
みかけ比重と同じ。[比重]参照
ガス吸着材(gas adsorbent)
監視装置(monitoring system,monitoring
臭気物質を吸着する能力の高い材料で、
活性炭、おが
equipment)
、モミガラ、くん炭、ゼオ
ライト等が材料として用いられる。
緩衝作用(buffer action)
外界からの作用に対して、その影響をや
123
わらげる向きに起こる作用。例えば pH 緩
と区別されてきた。成
的にみれば、きゅ
衝液は、pH に対する緩衝作用があり、酸や
う肥は堆肥に比べて肥料成
アルカリを加えても、pH はあまり変化せ
傾向がある。しかし、現在ではこれらの原
ず一定である。
料が様々な割合で混合して用いられること
含有率が高い
が多く、きゅう肥と堆肥を厳密に区別する
気相(gaeous phase)
[三相
ことは困難である。現在では、家畜ふん尿
布]参照
を主原料とするものでも、堆肥化したもの
は家畜ふん堆肥と呼ぶことが多い。[堆肥]
揮発性脂肪酸(volatile fattyacid,VFA)
炭素数10個のカプリン酸以下の
参照。
子量の
また、家畜のふんと尿を混合したスラ
脂肪酸をいう。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、
リー状 の も の を 液 状 きゅう 肥(liquid
酪酸などは、これに属する脂肪酸である。
manure)という。これには、貯留槽に溜め
低級脂肪酸と同義である。悪臭物質のノル
ただけのものの他に、曝気して好気的処理
マル酪酸、プロピオン酸、ノルマル吉草酸、
したものや嫌気的処理(メタン発酵)した
イソ吉草酸などが属する。これらのうちプ
ものも含まれる。
ロピオン酸とノルマル酪酸は、ふんの悪臭
の主要な原因となっている。
凝集剤(coagulant)
水の濁りや色を除去するために用いられ
逆浸透(reverse osmosis)
る薬剤で、水中に懸濁する微粒子をくっつ
[膜処理]参照
けてフロック(集塊)をつくらせ、沈降、
濾過によって
吸着(adsorption)
離除去するのを容易にする
作用がある。硫酸アルミニューム、硫酸第
活性炭が悪臭の原因物質を表面にとらえ
一鉄など低
子の無機化合物と、デンプン、
て脱臭したり、染色工場排水中の染料をと
アルギン酸ソーダなど高
らえて脱色したりする現象。
とがある。
[高
子の有機化合物
子凝集剤][無機凝集剤]
[有機凝集剤]参照
吸着法(adsorption method)
臭気物質を吸着する能力の高い材料に吸
強熱減量(volatile solids)
着させる方法で、活性炭を主体とする物理
VS と表記する。
的吸着法と、イオン
強熱減量とは、蒸発残留物を強熱したと
換樹脂等の化学吸着
法との2つがある。
きに揮散する物質をいい、おもに有機性物
質の量を示す。蒸発残留物と強熱残留物の
きゅう肥(barnyard manure, farnyard
㎎/ℓの表熱減量の㎎/ℓとする。
manure)
家畜ふん尿、わらやオガクズなどの敷料
強熱残留物(ignition residue)
を含む家畜ふん尿の堆積物、あるいはこれ
強熱残留物とは、
蒸発残留物を約600℃で
らを堆積・発酵させたものをいう。古くよ
強熱灰化したときに残留する物質(灰 )
り、家畜ふん尿を主原料とするものをきゅ
をいう。
う肥と呼び、わらなどを主原料とする堆肥
124
菌類(fungi(複)、fungus(単))
タン発酵に関与するメタン細菌は絶対嫌気
主として、かび、きのこ、酵母類の 称。
性菌である。[好気性細菌]参照
もっとも広い意味では細菌類を含める場合
もある。
嫌気性処理(anaerobic treatment)
遊離酸素が存在する状態で生存が困難な
空
率(porosity, fractional void)
嫌気性微生物が活動して汚水中の汚染物の
土壌、堆肥など見掛け上、固体と見做せ
るものの体積に占める
[三相
解を行う一連の方法。メタン発酵処理(消
間の体積の割合。
化処理ともいう)は、嫌気性処理の代表的
布]参照
なものである。
クリプトスポリジウム(cryptosporidium)
原生動物(protozoa)
コクシジウム近縁の消化管寄生性原虫。
単細胞動物の
称。大きさは5∼250㎛。
哺 乳 動 物 に 寄 生 す る も の に Cryptospor-
汚水浄化施設における活性汚泥などに多数
idium parvum と C.muris がある。前者の
存在し、細菌とともに汚水の浄化に重要な
寄生部位は腸管で、オーシストの大きさは
役割を果たす。
4.5∼5.5㎛、後者の寄生部位は胃で、
7∼8
㎛である。少数(通常、30個前後、時に1
好気性細菌(aerobic bacteria, aerobe)
個)のオーシストの経口摂取により感染が
酸素の存在下で生育する細菌をいう。活
成立し、激しい下痢症状を呈することがあ
性汚泥法などの浄化処理や、コンポスト化
り、免疫力の低下している人では死に至る
処理は好気性細菌の有機物
こともある。治療に有効な薬剤はなく、輸
ところが大きい。[嫌気性細菌]参照
解能力による
液、補液などの対症療法により自然治癒を
まつ。発病時には人で10億個、牛では100億
好気性処理(aerobic treatment)
個のオーシストを排泄する。犬などでは無
空気の存在下で生育、増殖する好気性細
症状のままオーシストの排泄があり、ネズ
菌、カビ類、原虫類、藻類、プランクトン
ミなど野生動物を含め、感染源を幅広く捕
その他の好気性微生物により有機物を 解
えなければならない。塩素に対する抵抗力
し、汚水の安定化をはかる方法。活性汚泥
が強く通常の塩素消毒ではオーシストが耐
法処理は、好気性処理の代表的なものであ
過するので、上水道も感染経路となる。
る。
限外濾過膜(ultrafiltration membrane)
孔
[膜処理]参照
率(porosity)
[空 率]参照
嫌気性細菌(anaerobic bacteria, anaer-
好熱性細菌(thermophilic bacteria)
obe)
生育最適温度が50∼105℃で、30℃以下で
酸素の存在しない条件下で生育する細
はほとんど増殖しない細菌の 称。
菌。酸素が存在すると増殖できない絶対
(偏
性)嫌気性細菌と、酸素の有無にかかわら
高
ず増殖できる通性嫌気性細菌とがある。メ
polymer coagulant)
125
子凝集剤(high molecular coagulant,
有機凝集剤で、エビやカニ類の甲羅から
コンポスト(compost)
作る天然高 子系のものと、合成高 子系
に
[堆肥]参照
けられる。重合度の高い有機物質で、
イオン活性が大きく、浮遊粒子やコロイド
コンポスト脱臭(compost deodorization)
粒子と結合または吸着しやすく、少量の添
家畜ふん尿をコンポスト化処理する際に
加 で 著 し く 凝 集 を 促 進 す る。陰 イ オ ン
発生する臭気を、コンポスト材料に通し、
(anion)系、陽イオン(cation)系、非イ
吸着及び生物脱臭法により脱臭する方法。
オン(nonion)系とがあり、汚水の化学処
理に用いることができるが、おのおの特性
サ行
があるので、あらかじめ用途に応じて選択
しなければならない。
最適温度(optimum temperature)
微生物の生育や酵素反応などに最適な温
酵母(yeast)
大部
度。至適温度ともいう。例えば中温細菌の
の生活環を単細胞で経過し、一般
に出芽によって増殖する菌類の
最適生育温度は37℃前後である。
称。ふつ
う大きさは5∼10㎛(1㎛は1㎜の千
の
サルモネラ菌(Salmonella)
1)、形は球形か楕円形である。アルコール
腸内細菌科に属し、ヒトおよび動物に病
発酵の能力が高く、酒類の製造やパンの製
原性を示し、チフス症や急性胃腸炎、食中
造に広く利用されている。
毒などを起こす多くの菌を含む菌属であ
る。食中毒の原因となるサルモネラ菌は数
固相(solid phase)
[三相
10種に及ぶが、S. typhimurium, S. enter-
布]参照
itidis などが主要な菌種である。
コリンエステラーゼ(cholinesterase)
酸化(oxidation)
1つの神経細胞の興奮を、神経繊維を通
酸素と化合して酸化物をつくること。例
じて他の神経細胞へ伝達するための接続部
えば、炭素が酸化されると二酸化炭素に、
をシナプスという。シナプスにおける興奮
アンモニアが酸化されると、亜硝酸や硝酸
の伝達は、多くの場合、神経繊維末端から
になる。
放出される化学物質により行われ、その1
つにアセチールコリンがある。神経繊維末
酸化還元電位(oxidation-reduction poten-
端から放出されたアセチールコリンは、コ
tial)
リンエステラーゼにより速やかにコリンと
酢酸に
ORP 物質が化学変化する場合には必ず
解される。有機リン系殺虫剤、
カー
起電力の増減がある。その増加の場合は酸
バメイト系殺虫剤は、このコリンエステ
化反応が進み、減少の場合は還元反応が進
ラーゼに不可逆的に結合して機能を失わせ
む。その原理を応用して汚水が酸化状態に
るので強烈な神経興奮が持続し、筋肉の収
あるか、還元状態にあるかを、その際の起
縮による運動機能の停止、循環機能、呼吸
電力を測定することによって判断すること
機能の阻害により死に至らしめる。
ができる。その測定値を酸化還元電位とい
い、Eh または rH という表現をとる。
126
三次処理(third treatment,tertiarytreat-
に消費される酸素の量を示し、その排水の
ment)
汚染度の目安として
二次処理の次に行なう汚水処理工程。後
用され、COD、BOD、
TOD 等の表示法がある。
処理ともいい、本処理工程が終了しても処
理が不十
な場合、もしくは、より高度な
酸素利用速度(oxygen utilization rate)
処理が求められる場合に行なう処理工程。
[酸素消費速度]参照
一般には、滅菌、脱色、脱窒、脱リン等の
処理工程が多いが、凝集沈殿や膜濾過等に
3点比較式臭袋法(trianglar odor bag
よる三次処理もある。
method, triangle bag method for odor
sensory measurment, odor sensory
三相
布(solid, liquid and gaeous phase
measurment with triangle bag)
of soils)
3試料のうち1試料だけに、においの濃
土壌は、固体、液体ならびに気体から構
度や種類を変えてこれを当てさせる方法、
成され、それらを固相
(solid phase)、液相
嗅覚スクリーニングテストの基本型であ
(liquid phase)、気相(gaeous phase)、
る。臭袋を用いて無臭空気と希釈臭気を比
称する。これら3者の割合を百
較して臭気濃度を測定する。
たものを三相
率で示し
布という。また、これらを
称して土壌三相という。一定容積の土壌
に占める固体を除く部
を孔
ジアルジア(giardia)
といい、こ
ジアルジアは、鞭毛虫類の1属であり、
こを気体(空気)を液体(水)が満たして
様々な哺乳動物の消化管内に寄生してい
いる。[孔
る。大きさは12∼15×7∼10㎛で、糞 を
率]参照
塗抹染色することにより検出される。小腸
酸素消費速度(oxygen utilization rate)
に寄生し、従来、病原性は不明であるが、
酸素利用速度ともいい、曝気槽内混合液
ヒトではまれに多数寄生すると下痢症を起
(活性汚泥液)が単位時間当たりに利用
(消
こすとされてきた。近年、クリプトスポリ
費)する酸素量のことで、単位時間当たり
ジウムと同様に水道を経由し感染すること
の利用(消費)酸素濃度(㎎/ℓ・H)で示
がわかり問題となっている。
され、r と表示される。活性汚泥を最適に管
理するためには、活性汚泥の酸素利用速度
C/N 比(C/N ratio)
に等しいか、あるいはそれ以上の速度で酸
全炭素と全窒素の比であり、炭素/窒素
素を供給しなければならない。その際の曝
比、炭素率ともいう。C/N 比は有機物の
気槽内混合液の溶存酸素は常に2∼3㎎/
解性と密接な関係があり、一般的には C/N
ℓ以上を保たせる必要があるといわれてい
比が高いほど
る。
しやすいと
解しにくく、低いほど 解
えられている。従って、有機
質資材の堆肥化を行なう場合には、原料の
酸素消費量(oxygen demand)
C/N 比を30∼40以下に調整する必要があ
排水中の酸化されやすい物質、主として
る。稲わらなどを主原料とする堆肥化の場
有機物によって消費される酸素量を㎎/ℓ
合には、C/N 比が70∼80と高く窒素が不足
で表したものである。汚水を浄化する場合
するために、硫安や尿素などを添加するこ
127
とが一般的に行われている。しかし、家畜
ム)と反応させて酸化剤の酸素がどのくら
ふんは概して窒素含量が高く、その C/N
い消費されたかにより有機物量を推定する
比は牛ふんで15∼20、豚ふんで10∼15、鶏
方法。
ふんでは10以下であり、きわめて
解され
生物化学的に酸素要求量を測定する
やすい資材であるので、 解促進のために
BOD 量とは必ずしも一致しない汚染有機
硫安や尿素などの窒素を加える必要はな
物量の推定方法であるが、試験が容易で短
い。
時間に結果がわかるため、COD は BOD と
C/N 比は堆肥の腐熟を示す目安の一つ
と
ともに処理効率などの指標として用いられ
えられている。堆肥化原料の C/N 比
る。
が高い場合には腐熟の進行に伴って C/N
比が低下してくるが、鶏ふんのように C/N
糸 状 菌 ( filam ent ous
比が10以下の場合には逆に C/N 比が上昇
filamentous fungus)
b a ct eria,
し、いずれも10付近に収束してくる。この
視覚的に糸状を呈する微生物群の
称。
ように一定の傾向はみられるが、原料の C/
汚水処理では、浅い水底に糸状の群落を
N 比の違いによって堆肥製品の C/N 比は
つくり、あるいは水中に
散した糸状の群
異なるため、C/N 比のみで腐熟度を判断す
体を生じる細菌(bacteria)を糸状菌と称し
るのは困難である。
ている。活性汚泥の糸状菌性バルキング(膨
また、堆肥などの有機資材を農地に施用
化)を引き起こす原因微生物(Sphaerotilus
する場合、有機資材の C/N 比は作物に対
がよく知られている)であり、汚泥の沈降
する窒素の供給力と重要な関係がある。C/
性の良否を判定する重要な指標生物となっ
N 比が20以下の有機資材を施用した場合、
ている。また、一般に糸状菌は有機質を多
有機態炭素は呼吸により CO として放出
く含む水域に増殖するから、有力な汚濁指
され、有機態窒素はアンモニア態窒素に無
標生物としても利用できる。
機化され、その一部は微生物体を合成する
ために
堆肥化処理では、堆積層中に増殖したか
われる。これを窒素の有機化とい
び(fungus)の菌糸を糸状菌といっている。
う。しかし、C/N 比30以上の有機資材の場
かび類は、
糸のように細く連なった細胞(菌
合、窒素が少ないために、微生物の 解で
糸)でできており、その菌糸の尖端に胞子
無機化された窒素だけでなく土壌中に存在
がつき、その胞子が飛散して増殖する。堆
している無機態窒素まで微生物の体内に取
肥中のかびの発生は水
り込まれる。そこで、土壌中の無機態窒素
められ、発酵の末期であることが多い。こ
に対して植物と微生物の間で競合が起こ
のため、かびが発生した堆肥では不快臭が
り、植物にとっては窒素欠乏の状態、すな
少ないが、これは発酵が進行し易 解性物
わち窒素飢餓の状態となる。C/N 比20付近
質の大半が消失したためで、かび自体は有
が、この窒素の無機化と有機化の起こる境
機物の 解に関与しているが、生物脱臭に
界と
は直接的に役立っているとは
えられている。
が少ないときに認
えられな
い。
COD(chemical oxygen demand)
化学的酸素要求量。検水を一定時間、一
湿式燃焼法(wet oxidation process, wet
定温度で酸化剤(例、過マンガン酸カリウ
combustion process, Zimmermann proc128
ess)
される。質的な評価として快・不快度で評
湿式酸化法のことで、液中に溶解または
価され、量的には臭気強度や臭気濃度で示
懸濁している有機物を高温高圧下で、必要
される。
最小限の空気と混合し、耐圧容器中で水
の多い状態のままで酸化 解し、燃焼ガス
臭気除法(removal of odor)
と水と灰にして取り出す方法。
住民の生活環境が損なわれるような悪臭
湿度(humidity)
が発生した場合、その臭気を除去(脱臭)
しなければならない。臭気の除去方法には
湿度(humidity)
水洗法、燃焼法、吸着法、生物脱臭法、薬
空気が水蒸気を含む度合い。飽和水蒸気
液処理法などがある。
圧に対する水蒸気圧の割合(%)を相対湿
度という。一般に湿度というときは、相対
臭気の快・不快度(comfort and discomfort
湿度をさす。相対湿度は気温によって変化
rate of odor)
する。体積1㎥の空気中に含まれる水蒸気
臭気の質的評価法の1つ。9段階快・不
量を g 単位で表したものを絶対湿度とい
快表示法にしたがって、臭気の不快度は、
う。
0:快でも不快でもない、+1:やや快、
+
2:快、+3:非常に快、+4:極端に快、
指定悪臭物質(specified offensive odor
逆に−1:やや不快、−2:不快、
−3:非
material)
常に不快、
−4:極端に不快の9段階で表
悪臭
害の主要な原因となっている物質
示される。
であって、その大気中の濃度を測定しうる
ものを選定して、悪臭防止法の規定により
臭気の強度(intensity of odor)
指定された物質。現在、アンモニア 、メチ
臭気を量的に表す方法の1つ。0
(無臭)、
ルカプタン 、硫化水素 、硫化メチル 、二
1(やっと感知できるにおい、検知閾値)、
硫化メチル 、トリメチルアミン 、アセト
2(何のにおいであるかがわかる弱いにお
アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ノル
い、認知閾値)、3
(楽に感知できるにおい)、
マルブチルアルデヒド、イソブチルアルデ
4(強いにおい)、5(強烈なにおい)の6
ヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバ
段階で表示される臭気の強さ。
レルアルデヒド、イソブタノール、酢酸エ
チル、メチルイソブチルケトン、トルエン、
臭気防止(deodorization)
スチレン、キシレン、プロピオン酸 、ノル
臭気の発生を防止するには、発生源にお
マル酪酸 、ノルマル吉草酸 、
イソ吉草酸 、
ける臭気の発生を抑制することが第1であ
以上22の物質が指定されている( を付した
る。畜舎では清掃管理の励行、新鮮ふん尿
物質は、畜産に関係が深いものであること
の早期 離と搬出、家畜の適切な 康管理
を示す)。
などが臭気の発生防止に効果がある。
臭気(odor)
重金属(heavy metal)
臭気は人の嗅覚、すなわち官能によって
比重が比較的大きい金属。通常、比重4.0
その存在を判断され、質的及び量的に評価
あるいは5.0以上の金属をいうが、水銀、カ
129
ドミウム、 、クロム、ヒ素、銅、亜
な
を硝酸態窒素にまで酸化する硝酸菌(亜硝
どのように有害な金属が多いことから、環
酸酸化菌)が含まれる。アンモニア酸化菌
境汚染との関連が深い。肥料取締法におい
と し て は Nitrosomonas、Nitrosospira、
ては、堆肥など特殊肥料の重金属濃度は、
Nitrosococcus、Nitrosolobus 属等の細菌、
乾物1㎏当たりヒ素50㎎、カドミウム5㎎、
また亜硝酸酸化菌としては Nitrobacter、
水銀2㎎以下であるように規制されてい
Nitrospira、Nitrococcus 属等の細菌が知ら
る。しかし、家畜ふん堆肥の場合は、これ
れている。これらは CO を唯一の炭素源と
らの物質が混入するとは えにくい。家畜
してエネルギーを得る独立栄養型の細菌で
ふんの場合に問題となるのは銅と亜 であ
ある。そのほかにも従属栄養細菌や糸状菌
る。とくに豚の場合には、多量の銅と亜
などで硝酸化成を行う微生物が知られてい
が飼料に添加されるため、ふん中でのこれ
るが、それらの硝化能力は著しく弱い。
らの金属の濃度は極めて高くなる。堆肥と
汚水の好気性処理では、硝化が活発であ
しての利用を促進するためには、銅と亜
るほど汚水の安定化がより進んでいること
の添加を極力減らすことが重要である。
を示している。
土壌の硝化能力は、少なくとも土1ℊ、
硝化細菌(nitrifying bacteria)
1日当たり0.02㎎のアンモニア態窒素を酸
アンモニアから硝酸を作る反応に関与す
る亜硝酸細菌および硝酸細菌の
化するものとさており、これを10 当りに
称。通常
換算すると1日約1/4∼1/2 の硫酸アンモ
の微生物が有機物の酸化過程で生体に必要
ニウムのアンモニア量に相当する。
なエネルギーを獲得しているのに対して、
硝化細菌は NH や NO などの無機物の酸
硝酸細菌(nitrate bacteria)
化過程によりエネルギーを獲得する。好気
硝化細菌のうち、亜硝酸を硝酸まで好気
性の比較的増殖の遅い独立栄養細菌であ
的に酸化する一群の細菌の
称。亜硝酸酸
る。[硝酸化成作用]参照
化 細 菌 と も 呼 ぶ。代 表 的 な も の と し て
Nitrobacter(ニトロバクター)がある。[硝
硝酸塩(nitrate)
酸化成作用]参照
硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなど硝酸
を含む化合物の
称。飼料作物中の硝酸塩
硝酸性窒素(nitrate nitrogen)
含有量や、地下水の硝酸塩汚染などが問題
[硝酸態窒素]参照
となっている。
硝酸態窒素(nitrate nitrogen)
硝酸化成作用(mitrification)
NO -N と表記する。
アンモニア態窒素が微生物によって酸化
硝酸態窒素とは、硝酸塩をその窒素量で
され、亜硝酸態窒素、さらに硝酸態窒素に
表したものである。硝酸性窒素ともいう。
まで変化する反応のこと。硝化ともいう。
硝酸化成作用の過程で微生物(硝酸菌、亜
硝酸化成は自然界に存在する硝化菌に
硝酸酸化菌)の働きにより亜硝酸から生成
よって行われる。硝化菌には、アンモニア
される。土壌中では、アンモニア態窒素は
態窒素を亜硝酸態窒素にまで酸化する亜硝
土壌粒子に吸着されるため移動しにくい
酸菌(アンモニア酸化菌)と亜硝酸態窒素
が、硝酸態窒素は移動性が大きく土壌中を
130
下降する水によって洗脱されやすい。家畜
これを植種といっている。
ふん尿等を多量に施用した場合、土壌中で
多量の硝酸が生成し、硝酸イオンとして洗
振動ふるい(vibrating screen)
脱され地下水汚染を生ずる可能性がある。
金網を張った篩の上に汚水を投入し、振
水中の硝酸態窒素は、主としてたんぱく
質などの
解によって生じたアンモニア態
動によって固液
離を行なう機構で、振動
方式によって篩
を輸送したり、逆勾配で
窒素が、硝化細菌群の作用によって酸化さ
持ち上げたりもできる簡易で安価な固液
れる際の最終生成物であるため、汚水処理
離機であるため、畜舎汚水の固液 離に適
においては汚濁物質の浄化の程度を知るう
す。
えの手掛かりとなる。なお、アンモニア態
窒素と同じく富栄養化への要因として硝酸
水
態窒素を測定することがある。
[硝酸化成作
(moisture)
試料に含有される水を指す。一定温度で
用]参照
試料を加熱して完全に乾燥し、その際の減
晶析(crystallization)
結晶として析出すること。処理水中のリ
量を以て水
量とし、試料に対する百 率
(%)で水
を表すことが多い。試料から
水
を除いた残部は、乾物または固形物と
ンをさらに除去する方法の一つに晶析法が
呼ばれ、全体100%から水
ある。晶析法は、リン酸イオンとカルシウ
される。
%を差引いて示
ムイオン及び水酸化物イオンとの反応で生
成するヒドロキシアパタイトの晶析反応を
水
利用してリンを除去する方法であり、リン
調整材(moisture adjusting material)
[副資材]参照
は不溶性の結晶として担体上に析出する。
水
量(moisture content)
蒸発残留物(total solid)
TS と表記する。
汚水の化学
スカム(scum)
析において用いられる用語
汚水の貯留槽、消化槽、浄化槽の腐敗槽
で、汚水を蒸発乾固した後、前後105℃で乾
などで、消化
燥したもの。単位は㎎/ℓ。浮遊物質(SS)
尿素 解菌などにより発生した炭酸ガスが
と溶解性物質(DS)との和を示す。さらに
浮遊物とともに槽の表面に浮上してできた
これらを灰化すると有機物が取り去られ、
厚いスポンジ質の層をいう。スラッジの対
無機物だけが残ったものを強熱残留物とい
語として浮上している汚泥を意味すること
う。
もある。
植種(seeding)
スチレン(styrene)
汚水の浄化を円滑に行なうために、すで
解の進行とともに、大腸菌、
C H CH=CH
にその生活環境や栄養条件に適した微生物
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
を添加する操作のこと。BOD 測定時に際し
1つ。水に微溶で都市ガスのようなにおい
ては、
がする。畜産で発生する臭気には少ない。
用する希釈水に好気性酸化に必要
な微生物を添加する操作を行なっており、
131
スラッヂ(sludge)
T-N と表記する。
生汚泥、沈殿汚泥、消化汚泥、余剰汚泥
等を
全窒素とは、無機性窒素及び有機性窒素
称した汚泥。スカムの対語として沈
の
量を表したものである。無機性窒素と
殿した下層部の汚泥を意味する場合もあ
は、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素及び
る。
硝酸性窒素をさし、有機性窒素とは、たん
ぱく質をはじめとする種々の有機化合物中
成型機(pelletting machine)
の窒素(ただし試験操作の条件で 解でき
家畜ふん堆肥などをペレット状に成型す
ないものを除く)をさす。
る機械。家畜ふん堆肥のペレット化に用い
家畜ふん尿の場合、窒素化合物の形態の
ることのできる成型機はディスクペレッ
変移は汚水浄化の過程を示すもので、最終
ター方式とエキストルーダー方式の2つに
的には汚水の処理程度の指標ともなり得
大別できる。ディスクペレッター方式は、
る。特に微生物による好気的処理を行う処
直径数㎜の が多数あけられたディスクと
理水中には、有機性窒素が減少し、亜硝酸
ローラあるいは2つのディスクの間に供給
性窒素、硝酸性窒素の含有量が比較的多く
された堆肥がディスクの に圧送され成型
なる。
される構造となっており、ローラ・ディス
クダイ方式、ローラ・リングダイ方式、ダ
潜熱(latent heat)
ブルダイス方式などがある。エキストルー
物質が固体から液体あるいは液体から気
ダー方式は、装置内に供給された堆肥がス
体に変化する(これを1次の相転移という)
クリューによって圧縮されながら先端に付
際に生じる熱。融点にある固体に熱を加え
したダイス部
に圧送され成型される構造
ると、温度は一定のままで融解だけが生じ
となっており、スクリューが一軸のものと
る現象を英国の物理学者 Joseph Black が
二軸のものがある。
1755年に発見し、潜熱と名付けた。転移熱
ともいう。
生物化学的酸素要求量(biochemical oxy-
液体が気体に変化する際に必要な熱を気
gen demand)
化熱(heat of vaporization)といい、固体
[BOD]参照
が液体になる際に必要な熱を融解熱(heat
of fusion)という。逆反応、例えば気体が
生物脱臭法(bio-filter method)
脱臭材料中の水
液体に凝縮する場合、熱の収支が異なるだ
または水溶液に臭気成
けで、熱量は等しい。
を溶解するか、材料中への吸着などによ
りいったん臭気成
を捕集し、材料中また
括酸素移動容量係数(over-all oxygen
は水溶液中の微生物等の働きで無臭な成
coefficient, over-all oxygen transfer co-
へと変えて脱臭する方法。
efficient)
曝気槽が、単位時間に気相から液相へ酸
精密濾過(microfiltration)
素を移動させる、すなわち溶存酸素を生成
[膜濾過]参照
させる能力を示す係数。KLa と表示する。
曝気槽における酸素移動は、接触する気液
全窒素(total nitrogen)
の面積(気泡の大小)、気圧(酸素 圧)
、
132
水温、水質などにより影響を受ける。通常、
タ行
水温20℃における値で示す。時間の単位は、
時、
、秒を任意にとることができ、いず
大 腸 菌(coliform bacillus, Esherichia
れを用いたかを示すため、KLa のあとに
coli)
(1/h)、(1/min)、(1/sec)を付け、K La
人および動物の腸内とくに大腸に多数存
(1/h)のように表わす。K La に槽の容積
在する細菌で、ふん尿に汚染された所に広
(V)と時間( )を乗ずれば、その時間に
く存在し、汚染の指標となる。腸内細菌科
おける酸素の移動量が得られる。
(Enterobacteriaceae)に属する。菌体に
非定常状態における測定:清水を入れた
由来する O 抗原(耐熱性)、鞭毛に由来する
曝気槽の溶存酸素を次亜硫酸ナトリウムを
H 抗原(易熱性)、莢膜に由来する K 抗原、
用いて除去したのち、曝気を行ない溶存酸
線毛に由来する F 抗原があり(いずれも中
素の上昇過程を測定し、以下の式により K
間的熱抵抗性)、
これにより血清型が細 さ
La を得る。
れている。
dc/dt=K La(Cs−C)
大腸菌は元来非病原性であるが、下痢等
これを変形して、
lo (Cs−Ct )−lo (Cs−Ct )
K La=2.303
t −t
定常状態における測定:安定した運転状態
を起こす病原性大腸菌も知られており、人
にある曝気槽では次式による。
①腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E.
に体する病原性から、次の4種に 類され
ている。
−r
dc/dt=K La(Cs−C)
coli(EPEC))、別名:腸管凝集粘着性大腸
定常状態における dc/dt=0より、
菌(enteroaggregative E.coli(EAEC))
、
K La=r /(Cs−C)
腸管接着性微絨毛消滅性大腸菌(attaching
ここで、Cs:温度
and effacing E. coli (AEEC))。以下3種
℃における飽和溶存
酸素量
に属さない下痢原性大腸菌の 称。
C:液槽の酸素濃度
②腸管侵入性大腸菌(enteroinvasive E.
C :時刻
coli (EIEC))。
における液槽の酸素濃度
r :酸素摂取速度
③毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli
dc/dt:単位時間当りの濃度変化
(ETEC))。
2.303:自然対数の底
④腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic
非定常状態における測定は実施が容易で
E.coli (EHEC))、別名:Vero 毒素産生大
あり、汚泥の活性、汚水の毒性などの不確
腸菌(verocytotoxin-producing E. coli
定な要素に左右されず、物理的な性能を評
(VTEC))
。
価する数値として利用できる。また、定常
近年、食中毒による死亡例のでて話題と
状態における測定では、機械の性能ととも
なっている病原性大腸菌 O-157は、EHEC
に汚泥の活性を併せて評価できる。
に
類され、血清型は O-157:H7である。
家畜における大腸菌症には、牛では子牛
相対湿度(relative humidity)
の下痢症、乳房炎など、豚では敗血症、白
[湿度]参照
痢、浮腫病など、鶏では敗血症、関節炎、
腸炎などがある。
133
大腸菌群(Coliform group)
については、家畜ふんだけで作る場合もあ
人及び動物の腸内に寄生する細菌(coli
るが、稲わら・モミガラ・オガクズなどの
型)、および主として水、土壌など広く自然
副資材を混合してつくるのが一般的であ
界に
り、畜種および副資材の種類によって牛ふ
布する細菌(Aerobacter aerogenes
型および中間型)の三型を大腸菌群と
称
んオガクズ堆肥、豚ふんモミガラ堆肥など
する。衛生対策などで早急に結果を求めら
と呼ばれる。[きゅう肥]参照
れる場合には、これら三型菌をそれぞれ正
確に区別することは困難である。また、上
堆肥の品質推奨基準(guideline for quality
水(飲料水)の汚染を確認するのであれば、
of composts)
三型を区
する必要はない。そこで検査上
良質な有機資材を供給することを目的と
は三型細菌群をひっくるめて coli 型菌と
した民間の自主的な品質保全を行なうため
みなして検査し、水の衛生上の安全度(し
に作成された堆肥の品質基準。この基準は、
尿やふん尿による汚染度)の示標とする。
全国農業協同組合中央会を事業主体として
実施された「有機質肥料等品質保全推進事
堆肥(compost)
業」において作成された。現在のところ、
様々な有機物質を原料とし、好気的発酵
によって腐熟させ、成
バーク堆肥、おでい肥料、おでい堆肥およ
的に安定化し施用
び家畜ふん堆肥の4種類の資材について、
に適する性状にしたものをいう。本来は、
種類別および共通の品質基準が設定されて
わら類、落ち葉、野草などを堆積し発酵さ
いる。なお、これらはガイドラインであっ
せたものを堆肥、家畜ふん尿を主原料とす
て、 定規格ではない。
るものをきゅう肥と呼んで区別していた
が、現在では様々な有機物質が原料として
滞留時間(retention time)
用いられるようになり、堆肥化・発酵させ
槽や池の有効容量を単位時間当りの流入
たものは原料の如何に関わらず堆肥と呼ぶ
量で除したもの。曝気槽の滞留時間は、汚
ことが多い。また、かつて都市ゴミを堆肥
水が活性汚泥微生物による生物酸化処理を
化したものをコンポストと呼んで区別した
受ける時間を意味する。
ことがあるが、堆肥とコンポストは同じと
沈殿槽の滞留時間は、固形物の沈殿 離
えて良い。
に要する水の静置時間を意味する。
わら、落ち葉、野草などを用いる本来の
堆肥は、積み肥と促成堆肥に
けられる。
脱臭(deodorization)
積み肥はこれらの材料に家 雑排水や家畜
ガス中に含まれる悪臭物質を吸着、
燃焼、
ふん尿を混合して堆積し長期間かけて作る
水洗、生物脱臭、薬液処理などの方法で除
ものであり、促成堆肥は硫安や石灰窒素を
去する操作。
添加して腐熟を促進し、比較的短期間で作
るものである。バーク堆肥・オガクズ堆肥
脱臭装置(deodorization system)
など木質系の堆肥は、バーク(樹皮)
、オガ
悪臭物質を吸着、燃焼、水洗、生物脱臭、
クズ・プレーナークズなどの廃材を主原料
薬液処理などの方法で除去(脱臭)する装
とし、鶏ふん・米ぬか・油かす・尿素・硫
置。吸着や水洗、薬液処理法では吸着材の
安などを混合して作られる。家畜ふん堆肥
換、処理水や廃薬液の処理に費用がかか
134
る。生物脱臭では高濃度の臭気ガスには不
を
互に繰り返す間欠曝気方式や制限曝気
向きであるが持続的な効果が期待される。
方式が用いられている。
脱窒(denitrification)
多量要素(macronutrient,macroelement)
微生物が嫌気的条件下で硝酸態窒素ある
植物が多量に必要とする元素。植物の生
いは亜硝酸態窒素を呼吸系の電子受容体と
育に必須である元素は16あるが、そのうち
して利用し、N あるいは N O を生成する
水素、炭素、酸素、窒素、リン、カリウム、
過程のことをいう。脱窒素ともいう。脱窒
カルシウム、マグネシウム、イオウの9元
は、水中や土壌中において NO などの窒素
素を多量要素と呼ぶ。水稲の場合にはケイ
酸化物が上記の反応の最終過程で N など
素を含めることもある。多量要素の中で作
のガス態の窒素に還元されるので、生物圏
物生産上とくに重要なものは窒素、リン、
から大気圏へ放出される窒素の主要な経路
カリウムであり、これらを肥料の三要素と
として地球上の窒素循環に大きな役割を果
いう。家畜ふんにはこれらの元素が多量に
たしている。
含まれている。
脱窒を行う細菌のことを脱窒菌という。
脱窒 菌は 自然 界 に広く
布 し、
炭素/窒素比
Achromobactor、Alcaligenes、Batillus、
[C/N 比]参照
Chromobacterium 、 Corynebacterium 、
Micrococcus、Pseudomonas、Thiobacillus
炭素率
な ど14属 の 細 菌 が 確 認 さ れ て お り、
[C/N 比]参照
Thiobacillus 属以外はすべて従属栄養細菌
である。脱窒が起きるためには次のような
単粒構造(single grained structure)
条件が必要である。①脱窒菌は酸素存在下
土壌の一次粒子が単独に積み重なる配列
では硝酸があっても酸素を優先的に利用す
状態をいう。[団粒構造]参照
るので低酸素条件が必要。②多くの脱窒菌
は電子供与体として有機物を利用するの
団粒構造(aggregated structure)
で、有機物が多いほど脱窒は進む。③好熱
土壌の単一粒子(一次粒子)が集合して
性や低温性の脱窒菌もいるが、一般的には
二次粒子となり、これがさらに集合して高
30℃付近が最適温度である。④脱窒菌の最
次の粒団を形成する配列状態をいう。堆肥
適 pH は7∼8の範囲であるが、アルカリ
などを連年施用していくと土壌有機物含量
側で脱窒を行なう菌もいる。
が次第に増加し、土壌の団粒化が進む。団
活性汚泥法などの汚水処理技術における
粒構造が発達して土が膨軟になれば、作物
脱窒処理は、この原理を用いて汚水中から
の根が良く発達して養
窒素を除去している。連続式活性汚泥法の
が高まる。また、非毛管孔
場合には嫌気槽と好気槽を設け、好気槽で
適当な割合で存在するので、通気性や透水
硝酸化成を起こした処理水の一部を嫌気槽
性だけでなく保水性も増大する。さらに、
に戻して脱窒させる仕組みになっている。
粘着性や可塑性が減少し、乾燥しても粒子
また、回
の固結性が強くならないので、耕耘が容易
式活性汚泥法のように単一の槽
で処理する場合には、嫌気条件と好気条件
になる。
135
や水 の吸収能力
と毛管孔 が
地球温暖化(global warming effect)
ここで、L:電気伝導率(mS/ⅿ)、J:セ
地球が10万年に及ぶ長い周期で氷河期と
ル定数、R:電気抵抗(Ω)
間氷期を繰り返しており、両期の移行過程
イオンが溶液中に存在すると、その溶液
を温暖化、寒冷化といい、これらの原因に
の電気伝導度は上昇する(溶液の電気抵抗
は、太陽の活動や地球の 転軌道の変化、
が下がる)
。完全に純粋な水は、106Ω㎝程
火山活動などが推察されているが、詳細は
度の高い電気抵抗を持ち、電圧を与えても
明らかではない。これらに加えて、近年に
電流はほとんど流れないが、空気中に放置
おける人類の活動が大気中の温室効果ガス
しておくと炭酸ガスを吸収して炭酸水溶液
を増加させており、これによる地球温暖化
になるため電気抵抗は、短時間の内に上記
の加速が問題となっている。[温室効果ガ
の1/100程度まで下がる。したがって、溶液
ス]参照
の電気抵抗を計測することから、イオン性
の物質の有無及び濃度を知ることができ
DO(dissolved oxygen)
る。
溶存酸素。水中に溶けている酸素量のこ
このことから、電気伝導度は水中の塩類
とで、㎎/ℓで表わす。
酸素の溶ける量は、気圧、水温、塩
濃度の概略を確認するために広く用いられ
な
ている。水中の可溶性塩(TSS)と電気伝
どに影響されるが、汚染された水中では、
導度との関係を示す目安として、次式が用
消費される量が多いのでその含有量は少な
いられている。
く、水が清純であるほどその温度における
TSS(ppm)=640×EC(mS/㎝)
飽和量に近く含有される。0℃、1気圧に
おける飽和溶存 酸素 濃度は14.16㎎/㎏、
伝熱面積(heating area)
20℃のそれは8.84㎎/㎏である。
大気汚染防止法によりばい煙発生施設と
溶存酸素の量は、汚水の安定化に直接関
して規制対象となるボイラの大きさを規定
係し、魚類の生存の可否、BOD 測定の基礎
する要素。同法施行令の別表第1に定めら
となっている。また、エアレーションタン
れており、伝熱面積10㎡以上のもの(又は、
ク内の溶存酸素濃度は汚水処理性能を左右
バーナーの燃料の燃焼能力が重油換算1時
する重要な指標である。
間当り50ℓ以上のもの)が該当する。
低級脂肪酸(lower fatty acid)
同化作用(anabolism)
[揮発性脂肪酸]参照
物質代謝において、化学的に簡単な物質
から、複雑な物質を合成する反応。異化作
電気伝導度(electric conductivity)
用と対置される。例えば植物が太陽光線と
[EC]、電気伝導率ともいいう。電気低効
水と二酸化炭素からデンプンを作る作用で
率(Ω
・ⅿ)の逆数に相当し、S/ⅿ(ジーメ
ある「炭酸同化作用(光合成)」が有名であ
ンス毎メートル)で表示する。従前のモー
る。
(mho)と同じ。
電気低効率を電気伝導度に換算する式は
透視度(transparency)
次のとおり。
検水(浄化槽の放流水)をガラス製の透
L=J/R・103
視度計に満たして、上方から透視しながら
136
下部のドレインから検水を流出させ、底部
生物脱臭法の1種。土壌中に送りこまれ
の二重十字がはっきり、はじめて読むこと
た臭気成
ができる検水の高さ(㎝)を透視度といい、
水
Tp と 表 示 す る。例:透 視 度30の 場 合、
臭気成 を無臭な成
Tp30
等の働きを利用した脱臭方法。
特殊肥料(special fertilizer)
トリメチルアミン(trimethylamine)
肥料取締法では肥料を普通肥料と特殊肥
を土壌粒子に吸着、または土壌
などに溶解させ、これを栄養源として
にかえる土壌微生物
(CH ) N
料に大別し、特殊肥料についてはその品質
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
の判定を消費者にゆだね、法律上の規制を
1つ。水に易溶で、腐った魚のようなにお
極めて緩くしている。すなわち、普通肥料
いの物質。
では肥料成 含有率などの 定規格が設定
されているが、特殊肥料には有害物質(水
ナ行
銀・ヒ素・カドミウム)の上限値が定めら
れているだけで肥料成
などの
定規格は
二酸化炭素(carbon dioxide, CO )
ない。特殊肥料は、
「堆肥類などのように農
家の経験と五感により簡単にその品質が識
二次処理(second treatment, secondary
別できるものまたは品質が一定せず 定規
treatment)
格を設定し得ないようなもので、農林水産
一次処理の次に行う汚水処理工程。本処
大臣が指定した肥料」
をいう。
[肥料取締法]
理ともいい、その汚水処理技術を代表する
参照
汚水処理工程。一般的に微生物による本格
的な汚水処理工程を意味するが、処理法に
特定施設(specified facility)
より微生物処理以外の処理工程を意味する
法律用語。特定とは、法規制の及ぶ範囲
こともある。
を規定する場合に付けられる語。特定物質、
特定事業場、特定
じん、特定悪臭物質な
二硫化メチル(dimethyl disulfide)
ど。
CH SSCH
水質汚濁防止法に規定する特定施設と
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
は、同法により排水規制の対象となる施設
1つ。硫黄化合物の1種でキャベツの腐っ
で、カドミウム、シアン化合物などの有害
たようなにおいがする物質。
物質を排出したり、化学的酸素要求量など
の高い排水を排出する可能性のある施設。
熱量(heat quantity)
具体的には同法施行令に指定され、届出が
熱を数量的に表した量。単位は cal
(カロ
義務付けられている。
リー)または J(ジュール)を用いる。水1
騒音規制法、振動規制法にも、特定施設
ℊを1℃上昇させる熱量が1 cal であり、
の規定がある。
4.186J に当たる。
土 壌 脱 臭 法(soil filter deodorization
燃焼脱臭法(combustion deodorization
method)
method)
137
臭気成
を含むガスを燃焼炉等で
曝気(aeration)
700∼800℃の温度に0.3∼0.5秒間維持して
酸化
[エアレーション]参照
解し脱臭する方法。
曝気槽(aeration tank)
ノルマル吉草酸(normal valeric acid)
活性汚泥処理施設の活性汚泥と汚水とを
CH (CH ) COOH
混合し曝気(エアレーション)を行ない反
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
応させる槽。結果的に、汚水が浄化される
1つ。低級脂肪酸に属し、むれたくつ下の
とともに活性汚泥微生物が培養増殖され
においのする物質。
る。
ノルマル酪酸(normal butyric acid)
曝気槽混合液(aeration tank mixed liq-
CH (CH ) COOH
uor)
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
曝気槽内でエアレーション攪拌を受けて
1つ。低級脂肪酸に属し、汗くさいにおい
いる活性汚泥液と流入汚水の混合液。
の物質。サイレージの調製に失敗した場合
発生する。
発酵(fementation)
狭義では微生物による糖質の嫌気的 解
のことをいうが、一般的には微生物が有機
ハ行
物を 解し、サイレージ発酵、乳酸発酵、
バーク堆肥(bark compost)
メタン発酵、堆肥の発酵のように人間に
[堆肥]参照
とって有用な物質を作り出すことをいう。
家畜ふんの処理においては、メタン発酵と
培地(culture medium)
堆肥の発酵が用いられる。メタン発酵は嫌
微生物、組織などのガラス器内培養のた
気的発酵であるが、堆肥の発酵は好気的発
め、たんぱく質、脂肪、無機質などの栄養
酵であり、水
物質を組み合わせたもの。試験の目的によ
など好気的条件を与えるような管理が必要
り、各種物質の組合せが工夫されている。
である。
大別して大量培養用の液体培地と
調整や切り返し、強制通気
離定量
用の固体培地がある。
バルキング(bulking)
膨化ともいい、活性汚泥法において最終
培養(culture, cultivation, incubation)
沈殿槽で汚泥が沈降しにくくなり、上澄水
微生物、大型動植物もしくはその組織の
が得にくくなる現象。
一部を外的条件(温度、光などの物理的並
沈降性の非常に悪い活性汚泥をバルキン
びに酸素、
栄養物質などの化学的環境条件)
グ汚泥と呼び、バルキング汚泥には糸状菌
を制御して人工的に増殖、生活、発育させ
の増加が見られる。畜産汚水の活性汚泥法
ること。
処理では、よく見られる活性汚泥の異常現
象であり、発泡が伴うことも多く、対処療
バクテリア(bacteria)
法としては凝集剤を用いて沈降性を改善す
細菌のこと。
る。原因は、炭水化物の多量流入、硫化水
138
素の増加、不溶性無機物の欠乏、曝気不良
rate, gross yield coefficient of sludge)
など多種多様であるが、畜産汚水処理にお
一定期間内に曝気槽内で増加した
けるバルキングの原因は高濃度汚水の投
MLSS 量が、曝気槽で除去された BOD 量
入、腐敗汚水の投入、投入 BOD 量の過負
の何%に相当するかを示した数値。増加し
荷、曝気槽の溶存酸素不足、殺菌力を持っ
た MLSS(余剰活性汚泥)は引き抜き処
た消毒薬の混入などが原因となっている。
が必要である。増加 MLSS は除去 BOD な
らびに除去 SS が転換したものであるか
ら、SS 汚泥転換率とともに余剰汚泥量算
pH
水素イオン指数(hydrogen ion expo-
出の基礎となる数値である。一般に除去
nent)を意味する記号。pH は、水素イオン
BOD や SS の30∼100%(BOD 負荷量に強
濃度の逆数の常用対数であり、水素指数と
く影響される)が余剰汚泥に転換するもの
もいう。水素イオン濃度の変化は微少のた
として引き抜き処
汚泥量を計算する。
め比較的不 なので、これを簡単な数値と
するため、その逆数の常用対数をもって示
BOD 負荷(BOD loading)
すようにしたものである。pH が7のとき
処理対象とする BOD の
量をいう。活
を中性、これより数値の高い場合をアルカ
性汚泥法による畜産汚水処理では BOD 容
リ性、低い場合を酸性という。
積負荷(1㎥の曝気槽が、1日に負荷され
汚水は、いろいろな塩類、酸及びアルカ
る BOD の量)や BOD・MLSS 負荷(1㎏
リ性物質などの組成によって、中性、酸性
の MLSS が1日に負荷される BOD の量)
及びアルカリ性を呈するが、理化学的ある
として われる。[負荷]参照
いは生物学的作用によってそれらの割合が
変わると、その水素イオン濃度も変わって
BOD 容積負荷(BOD volume loading)
くる。
1㎥の曝気槽が1日に処理する BOD 量
を意味し、BOD ㎏/㎥・日で表す。汚水処
BOD(biochemical oxygen demand)
理施設の設計では、曝気槽必要容積の算出
生物化学的酸素要求量。測定方法は、普
に用いられる重要な数値である。
通20℃で5日間保持し、その前後の溶存酸
例えば、曝気槽において BOD 濃度2,000
素量の差と希釈倍率から検水の酸素消費量
ppm の汚水を10 /日処理する場合は処理
を算出して㎎/ℓで表わす。
水の汚染度を示
対象 BOD 量が10 ×0.002=20㎏/日とな
す有力な尺度であり、河川や汚水中の微生
り、曝気槽の BOD 容積負荷を0.5㎏/㎥・日
物で
と設定すると必要曝気槽容積は20㎏÷0.5
解可能な有機物の量を示す指標であ
る。BOD の高い汚水は、生物的に
解され
㎏=40㎥と算出される。つまり、BOD 容積
やすい有機物を多く含んでいることを示
負荷を大きく設定すれば必要曝気槽容積は
し、高いほどその汚水は汚濁しているとい
小さくなり、小さく設定すれば大容積の曝
える。汚水の処理は、この BOD を低下さ
気槽が必要となる。曝気槽は汚水処理施設
せ、河川の汚濁を防ぐことを目的としてい
の心臓部であるから、その容積を左右する
る。
BOD 容積負荷の設定は設計計算の中で最
も重要な設定数値になる。標準的な活性汚
BOD 汚泥転換率(BOD sludge divertment
泥法の BOD 容積負荷は、0.6㎏/㎥・日とさ
139
れているが、実際の処理施設設計では標準
として規制対象となる廃棄物焼却炉の大き
負荷量±0.4㎏程度の幅で設定されること
さを規定する要素。同法施行令の別表第1
が多い。
に定められており、火格子面積2平方メー
標準法より高い負荷量の設定には活性汚
トル以上のもの(又は、焼却能力が1時間
泥微生物の働かせ方に各種の工夫が必要で
当り200キログラム以上のもの)が該当す
あり、高率活性汚泥法などと呼ばれている。
る。
他方、長時間曝気法など標準より低い負荷
量を設定した処理法は能力が低いことを意
肥効率(relative effciencies of fertilizer,
味するのではなく、負荷の変動や水温の変
effciency index of fertilizer)
化に対応する安全性を
慮したり、余剰活
肥料の効果を相対的に評価するときの尺
性汚泥発生量の抑制を狙っている。
度。一般的には、家畜ふん堆肥を施用する
とき、それに含まれる養
ppm(parts per million)
百万
が化学肥料の養
に対してどれだけの効果があるかの目安
率。ある物質の量が全体の百万
として用いられている。
のいくつ存在するかを表す単位。水質関係
では通常㎎/ℓや g/㎥で表し、10,000ppm
が 1%と な る。大 気 関 係 で は
比重(specific gravity)
/㎥ が 1
ある物質の重さと同体積の水の重さ
ppm である。また、ppm のさらに千 の1
(4℃)との比。したがって水の比重は1
を ppb(parts per billion)と呼ぶ。
である。固体の場合、物体の空 部
を除
いた実質のみの比重を真比重という。これ
BOD 汚泥負荷(BOD sludge loading)
に対し、多孔性物体などで空 部 も物体
ここでいう汚泥とは活性汚泥のことであ
の構成要素とした場合の比重を見掛け比
り MLSS を意味するから BOD・SS 負荷と
重、また、容器に
体や粒体などを詰めた
もいう。BOD 容積負荷は、曝気槽容積に対
とき、個々の
する BOD 負荷のことであるが、BOD・SS
間を含めた比重をかさ比重という。
体や粒子の間に存在する空
負荷は微生物(MLSS)に対する BOD 負荷
を意味し、BOD ㎏╱(MLSS)㎏・日で表わ
微生物数(the number of microorgan-
す。BOD を処理するのは厳密にいえば、曝
isms)
気槽ではなく曝気槽内の微生物であるから
微生物量の指標である MLSS 1㎏に負荷
微生物相(bacteria phase,bacterial flora)
する(処理する)BOD 量を設定することが
活性汚泥には種々の微生物が生育してい
正確であるとの
え方である。
るが、それら微生物の種類を 類、把握す
BOD 容積負荷量を0.6㎏/㎥・日とし、曝
ることによって浄化機能や施設管理の良否
気 槽の MLSS 濃 度 を5,000ppm に 設 定 す
を推定することができる。微生物の種類や
ると、BOD・SS 負荷は0.6㎏÷1,000㎏×
状態を示した
0.005=0.12㎏╱㎏・日と算出される。
微生物相という。
火格子面積(fire grate area)
比熱(specific heat)
大気汚染防止法になよりばい煙発生施設
類一覧表をその活性汚泥の
物質単位量(㎏または N ㎥)の温度を
140
1℃高めるのに要する熱量をいう。水の比
式(P 制御)。この方式では負荷変動が過大
熱は1である。
になると追随できなくなる。そこでこれに
誤差量に比例する速度で操作量を変化させ
肥料取締法(Fertilizer Control Raw)
る動作すなわち積
動作(I 動作)を加えた
肥料の品質を保全し、その
正な取引を
比例積 制御(PI 制御)が
案されており、
確保するため、肥料の規格の
定、肥料の
さらに誤差が増減する方向とは逆向きに誤
登録、および肥料の検査を行ない、それに
差の変化速度に比例する動作(微 動作・
より農業生産力の維持増進に寄与すること
D 動作)を加えて精度を高めた比例−積
を目的として制定された法律。肥料を普通
−微 制御(PID 制御)などもある。
肥料と特殊肥料に大別し、普通肥料につい
ては農林水産大臣が一元的に
定規格を設
VFA(volatile fatty acid)
定し、この規格に基づいて登録が行なわれ
[揮発性脂肪酸]参照
る。登録は農林水産大臣登録肥料と知事登
録肥料に区 され、強制登録制度である。
富栄養化(eutrophication)
肥料の立入検査は国(農林水産省肥料検査
湖水などが
栄養から富栄養の状態に変
所)と都道府県がそれぞれ検査対象を調整
化する現象。結果として窒素、リンなどの
して実施している。
水生植物の栄養素を多く含むようになり、
湖水の生物生産性が増大する。元来、湖沼
肥料の利用率(effciency of fertilizer)
施用された肥料成
学の用語であったが、近年、人間の活動に
が作物によって利用
起因する栄養
の急激な流入により、湖沼
される比率。養
吸収率ともいう。施肥さ
だけでなく、内湾、河川などの、藻類の大
れた作物中の養
吸収量から、無施肥で栽
量繁殖とそれによる水質の悪化、魚類の生
培された作物中の養
吸収量を差し引き、
産性の減少、上水源としての異臭味の増大、
その差(施肥による吸収の増大量)を施用
岸での悪臭の発生などの問題にも適用さ
量で除して求められる。
れている。
微量要素(micronutrient,microelement)
負荷(loading)
植物の生育に必須であるが、要求量が低
処理施設または処理装置に送り込む被処
い要素のこと。必須16元素のうち鉄、マン
理物の量。それを水量で示した場合は推量
ガン、ホウ素、亜
負荷、有機物で示した場合は有機物負荷、
、銅、モリブデンおよ
び塩素を微量要素と呼ぶ。植物の種類に
BOD の
よってはナトリウム、コバルト、バナジウ
いう。
量で示した場合は BOD 負荷と
ムなどを含むこともある。家畜ふんには多
量要素だけでなく微量要素も含まれてい
副資材(amendment, bulking agent)
る。
家畜ふんなど含水率の高い資材を堆肥化
する場合に、水
比例制御(proportional control)
調整および通気性改善の
目的で添加する資材のこと。一般的には、
フィードバック制御系において、制御目
水
標値との誤差に比例するように制御する方
調整材とも呼ばれるが、単に堆肥化材
料の含水率を低下させるだけでなく孔 率
141
を増加させることによって通気性を改善
ふんなどには易
解性有機物が多く含まれ
し、併せて成
組成を調整する効果もある
ており、これを多量に施用すると土壌中で
ことから、副資材と呼ぶのが妥当であろろ
急激に 解して土壌が還元状態になり、作
う。
物が生育障害を起こす危険性がある。
また、
オガクズ、モミガラ、藁桿類などの有機
家畜ふんや敷料にはフェノール性酸や揮発
質副資材(organic amendments)が広く用
性脂肪酸などの生育阻害物質が含まれるこ
いられているが、パーライト、トバモライ
とがある。そのため、十
トなどの無機質副資材(inorganic amend-
解性有機物や生育阻害物質を 解しておく
ments)があり、添加の目的により、堆積物
ことが重要である。
の水
腐熟させ、易
を減らし通気性を図るもの(struc-
tural or drying amendments)と、発酵熱
腐熟度(degree of maturity, degree of
と
stability)
解速度を得るためにエネルギーを高め
ることを目的とするもの(energy or fuel
[腐熟]参照
amendments)とに大別できる。
腐植(humus)
腐熟(maturation)
土壌中に存在する有機物のうち、新鮮動
地力の維持増強を目的として有機資材を
植物遺体や微生物菌体以外の有機物のこと
施用する場合に、あらかじめその有機資材
をいう。広義では、腐植と土壌有機物は同
を微生物の働きによって堆肥化し、施用し
義語として用いられることもある。また、
ても土壌および作物に悪影響をおよぼすこ
狭義では、土壌中で動植物遺体が微生物の
とがなくなるまで腐朽・熟成することをい
代謝によって生成される土壌特有の暗色無
う。その到達目標に達したときが腐熟の終
定形の高
了時(完熟)であり、この目標に達するま
う。腐植物質は酸とアルカリに対する溶解
での様々な程度を腐熟度という。
性によって3つの画
腐熟の目的は大きく
けて2つある。第
子有機化合物を腐植物質とい
に
けられる。すな
わち、アルカリによって抽出され酸
(pH 1
1に家畜ふんなどの有機資材を作業者に
以下)で沈殿する部
を腐植酸、アルカリ
とって取り扱いやすく、衛生面でも安全な
抽出液から腐植酸をのぞいた部 をフルボ
ものにすることである。生の家畜ふんなど
酸、アルカリにも酸にも抽出されない部
は悪臭が強く汚物感があり、搬送・貯蔵・
をヒューミンと呼ぶ。
施用などの作業性の面からみて極めて取り
最近、家畜ふん尿処理、とくに悪臭防除
扱いにくいものであるが、腐熟させること
の目的で腐植あるいはヒューマスと称する
によって悪臭は減少し、取り扱いやすくな
資材が用いられているが、これらは泥炭や
る。また、家畜ふんなどには病原菌、寄生
底質土に近い物質であり、本来の腐植とは
虫の卵、雑草の種子などが含まれることが
異なるものと
えられる。
あるが、腐熟の過程で発生する発酵熱に
よって温度が70∼80℃程度まで上がれば、
浮遊物質(suspended solid)
これらを死滅させることが可能である。第
[SS]参照
2の目的は、家畜ふんなどを作物の生育に
とって安全なものにすることである。家畜
篩(ふるい)(screen, sieve)
142
枠などに目の大きさが一定の網を張った
され、上澄液は越流して放流され、沈殿し
もの。網目の目開きの大きさ(㎜)か、1
た活性汚泥はエアリフトポンプ等により再
インチ当たりの目の数(メッシュ)などで、
び曝気槽に戻される。
細かさを表す。ふん尿の固液
離などに多
用される。
防塵装置(dustproof system)
畜舎や堆肥化・乾燥施設等で発生する塵
フロック(flock)
凝集体。液体の中に固体粒子が
埃を抑制する装置。臭気物質は塵埃にも吸
散して
着されており、塵埃の発生を抑制すること
いる状態を懸濁液というが、この状態の固
によって畜舎内等の臭気の発生を抑制する
体粒子が凝集剤によって集められ、より大
ことができる。
きい集合を形成する。これをフロックとい
う。攪拌により懸濁している活性汚泥が静
放線菌(Actinomycetes)
置状態におかれると活性汚泥自身の凝集力
放射状に繁殖することから名付けられ、
によりフロックを形成し、沈降する。
糸状を示すことの多い微生物。伸長し、
枝した形状は「かび」に似ている。一方、
プロピオン酸(propionic acid)
菌糸の幅は1㎛内外で細菌にも似ている。
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
ストレプトマイシンなどの抗生物質を作る
1つ。低級脂肪酸に属し、水溶性で牛舎で
ことで知られている。
はサイレージの影響で発生する。酸っぱい
ような刺激臭がする。
飽和水蒸気圧(saturation water vapor
pressure)
ペレット堆肥(pellet compost)
一定温度において、大気中に含まれる最
ペレット状に成型された堆肥。最近、取
大量の水蒸気の圧力。
り扱い性の観点から粒状の堆肥が望まれて
いる。堆肥化の過程で粒状化させる方式も
マ行
あるが、粒径を揃えることは困難であり、
また堆肥化の初期段階で粒状化するため粒
膜処理(membrane filtration,membrane
の内部まで腐熟するかどうかは明らかでな
separation)
い。これに対し、ペレット化は発酵が終了
物質により透過性が異なる膜を用いて、
した堆肥を成型機を用いてペレット状にす
溶液や混合気体の成
を
離することを膜
るものであり、品質が安定し粒径の揃った
離といい、この原理を汚水処理に応用し
ペレット堆肥を製造することができる。
[成
た方法を膜処理といっている。酢酸セル
型機]参照
ローズ膜を用いた透析(dialysis)が古くか
ら知られていたが、現在では、高 子化学
返送汚泥(return sludge,returned sludge)
の進歩により多様な口径の濾過膜が作られ
沈殿槽から曝気槽に返送される活性汚
るようになり、人工透析、海水の淡水化、
泥。曝気槽混合液は隣接する沈殿槽に越流
製塩、精製水、飲料水など多方面で利用さ
して、静置されるとフロックを形成して沈
れるようになっている。
降することにより上澄液と活性汚泥が
離
処理対象とする物質の領域により、次の
143
4種に区
される。
ギのようなにおいのする物質。
①一般濾過:浮遊物質領域(1㎛以上)
②精密濾過(microfiltration or precision
filtration
モミガラ(rice hull)
(M F)): 懸 濁 物 質 領 域
(0.1∼150㎛)
ヤ行
③限外濾過(ultrafiltration (UF)):コロ
イド領域(2 nm∼5㎛)
薬 液 洗 浄 法(medical fluid washing
④逆浸透(reverse osmosis (RO)):イオ
method)
ン・低
子領域(0.3∼5 nm)
これらのうち、現在、畜産の
洗浄塔で薬液を散布または混合させて臭
野で応用
気を除去する方法をいう。原理的には、化
が試みられているのは、清澄な処理水が排
学反応による酸化・中和等と、有機溶剤な
出され曝気槽における活性汚泥濃度が維持
どによる吸収とがある。
できるとされている精密濾過である。
UF膜(ultrafiltration membrane)
マスキング法(masking method)
芳香成
限外濾過膜。[膜処理]参照
を臭気ガスに混ぜ、人の嗅覚で
は芳香を感じさせるようにする脱臭方法。
有害物質(hazardous substance, toxic
substance)
見かけ密度(apparent density)
水質汚濁防止法においては、カドミウム、
[密度]参照
シアン、有機リン、 、六価クロム、ヒ素、
水銀及びアルキル水銀、PCB が有害物質と
密度(density)
して規定されている。廃棄物の処理及び清
物質の単位容積当りの重量。例えば、水
の密度は1ℊ╱
で、空
掃除に関する法律においてもほぼ同様に規
である。特に固形状物質
定されている。大気汚染防止法においては、
のない状態での単位容積当りの重
カドミウム及びその化合物、塩素及び塩化
量を真密度という。多孔質体、繊維質、
水素、フッ素、フッ化水素及びフッ化ケイ
体などの密度は、その物質本来の真密度と、
素、 及びその化合物、窒素酸化物が有害
空孔を含めた見掛け密度、さらに充塡空間
物質として規定されている。
を含めたかさ密度の3種類に区
けして
える必要がある。
有機凝集剤(organic coagulant)
でんぷん、ゼラチン、アルギン酸ソーダ、
無機凝集剤(inorganic coagulant)
水溶性アニリン樹脂塩酸塩、ポリエチレン
硫酸アルミニウムや硫酸第一鉄、塩化第
イミン等の有機質の凝集剤。
二鉄、石灰等の無機質の凝集剤。
有機物(organic matter)
メチルメルカプタン(methyl mercaptan)
炭素を主体とし、水素、酸素および窒素、
CH SH
リン、イオウなどを含む様々な化合物の
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
称。対するものは無機物。家畜ふん尿は有
1つ。硫黄化合物の1種で、腐ったタマネ
機物と無機物と水
144
からできている。家畜
ふん尿中の主要な汚濁物質である BOD、
していくため曝気槽内の M LSS は増加し
COD、SS の大部
は有機物である。強熱減
続ける。M LSS の増加は、酸素不足や沈殿
熱減量と呼ぶこともある。[灰 ]参
槽での 離悪化の原因になるため余剰汚泥
量、
照
として引き抜き処
しなければならない。
余剰汚泥の処理は各種の脱水機を 用する
陽イオン
換容量(CEC,cation-exchange
ことが多いが、凝集剤費用、電力費、運転
capacity)
管理労力等が畜産経営には負担できないほ
一定重量の物質が、その表面に他の陽イ
オンによって
ど多い場合がある。脱水機の導入は十 に
換しうる形態で陽イオンを
注意して運転の可能性を検討する必要があ
吸着しうる容量であり、通常は pH7.0にお
いてい物質が有する負荷電の
る。
量と えら
れている。塩基置換容量ともいう。一般的
ラ行
には物質100ℊ当たりのミリグラム等量数
(meq/100ℊ)で示されるが、最近は SI 単
硫化水素(hydrogen sulfide) H S
位(cmol(+)㎏−1)で示されることが多
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
い。
1つ。硫黄化合物の1種で、腐った卵のよ
有機資材の陽イオン
換を行う官能基は
主にカルボキシル基と
えられている。家
うなにおいのする物質。
畜ふんや稲わら、オガクズなどの有機資材
硫化メチル(methyl sulfide)
の堆肥化において腐熟の進行に伴ってカル
(CH ) S
ボキシル基の数、すなわち陽イオン 換容
悪臭防止法により指定された悪臭物質の
量が増加してくることから、腐熟度を示す
1つ。
硫黄化合物の1種で、キャベツの腐っ
目安の一つと
たようなにおいのする物質。
えられている。
容積重(volume-weight, bulk density)
粒度(particle size, grain size)
体や粒体の物質の一定容積当りの重
粒子の大きさ、または細かさのこと。粒
量。普通はかさ密度に同じで、現場でよく
径、または体積や重さで表す。
用いられる用語。
連続処理(continuous system treatment)
溶存酸素(dissolved oxygen)
原料を連続的に投入し、製品・処理物を
[DO]参照
連続的に排出する処理。
この方式をとる汚水処理法に連続式活性
余剰汚泥(excess sludge)
汚泥法がある。活性汚泥法汚水処理の一般
曝気槽内で増加し、処理施設から引き抜
き、処
しなければならない余
的な運転法。曝気槽に沈殿槽を併設し汚水
な活性汚
投入と曝気を曝気槽で、活性汚泥の沈殿と
泥。
上澄液の排出を沈殿槽で行ない、沈殿活性
活性汚泥微生物は汚染物質を栄養源とし
て増殖するし、栄養源として
汚泥を曝気槽に連続的に返送する運転法。
解されな
汚水の投入と処理水の排出を連続的に行な
かった SS 等の汚染物質も曝気槽内に蓄積
う活性汚泥法で比較的低濃度で大量の汚水
145
の処理に適する。
6段階臭気強度(six stage odor intensty)
臭気強度を嗅覚で6段階に
ける表示法
で、(0)無臭、(1)やっと感知できるにお
い(検知閾値)、(2)何のにおいであるかが
わかる弱いにおい(認知閾値)
、(3)楽に感
知できるにおい、(4)強いにおい、(5)強
烈なにおい、の6段階である。嗅覚パネル
やモニターで判定する。
146
付2
図・表索引
1)図索引
図1 活性汚泥の容積(SV)の測り方 …………………………………………………13
図2 透視度計と簡易水質推定尺…………………………………………………………14
図3 検知管法による臭気の簡易測定……………………………………………………15
図4 乳用牛及び肉用牛の排せつ物処理・利用システム………………………………17
図5 豚の排せつ物処理・利用システム…………………………………………………19
図6 鶏の排せつ物処理・利用システム…………………………………………………20
図7 畜産に利用されている汚水処理技術の種類………………………………………38
図8 連続式標準活性汚泥法のフローチャート…………………………………………42
図9 回
式活性汚泥法のフローチャート………………………………………………43
図10 素掘り解消取り組み事例フロー……………………………………………………50
図11 肥育豚舎における踏み込み式豚舎タイプ別割合…………………………………55
図12 生ふん1㎥を水
調整するのに必要な戻し堆肥の量……………………………61
図13 オガクズ脱臭装置の脱臭限界日数…………………………………………………69
2)表索引
表1 畜産に関係の深い排水基準項目の性質、測定法…………………………………9
表2 地下水の水質汚濁に係わる環境基準………………………………………………10
表3 規制悪臭物質と臭気強度別濃度……………………………………………………11
表4 畜産における臭気強度と臭気指数の関係…………………………………………11
表5 堆肥の実態把握に用いられる機材の例……………………………………………12
表6 汚水及び活性汚泥の実態把握に用いられる機材の例……………………………12
表7 臭気の実態把握に用いられる機材の例……………………………………………12
表8 堆肥化施設、貯蓄槽等の規模算定に用いる排せつ量……………………………21
表9 堆肥化施設のランニングコスト例…………………………………………………26
表10 汚水処理施設のランニングコスト例(種雌豚120頭) …………………………26
表11 養豚一貫経営の規模別環境対策の例………………………………………………27
表12 ふん尿処理施設・機械の耐用年数表………………………………………………29
表13 堆肥化のメリット……………………………………………………………………32
表14 堆肥化の条件と目安…………………………………………………………………35
表15 堆肥化スタート時の水 含量………………………………………………………35
表16 堆肥の審査基準(例1)
①
官能検査〔100点満点〕 ……………………………………………………36
②
化学 析値〔100点満点〕 …………………………………………………36
表17 堆肥の腐熟度判定指標………………………………………………………………37
表18 各種汚水処理技術の比較……………………………………………………………39
表19 浄化処理施設の規模算定に用いる設計基準値……………………………………40
147
表20 パーラー排水の性質…………………………………………………………………48
表21 各種濃度におけるオゾンの影響……………………………………………………68
表22 各種吸着材のアンモニア吸着量……………………………………………………69
表23 ハエの防除法の種類と特徴…………………………………………………………70
表24 草地・飼料畑における家畜ふん尿処理物の施用基準……………………………72
表25 都道府県における家畜ふん尿処理物の畑地への施用基準………………………73
表26 連用を前提とした野菜に対する家畜ふん尿類の施用基準………………………74
表27 水稲に対する家畜ふん尿処理物の施用基準………………………………………74
表28 果樹における家畜ふん堆肥の施用量と施用効果…………………………………74
表29 特殊肥料の品質表示の様式…………………………………………………………77
表30 主要な成
の表示値の誤差範囲……………………………………………………77
表31 某県の肥料販売業務開始届出に必要な書類………………………………………78
表32 某県の特殊肥料生産業届出に必要な書類…………………………………………79
表33 商標権侵害の要因……………………………………………………………………79
表34 家畜排せつ物の発生量等の記録様式………………………………………………87
表35 畜種別構造設計基準と管理の方法基準……………………………………………88
表36 税制上の特例措置を受けるための申請書の記入例………………………………91
148