こちら - 北海道教育大学釧路校・地域教育開発専攻

文
文部
部科
科学
学省
省・
・現
現代
代的
的教
教育
育ニ
ニー
ーズ
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取組
組支
支援
援プ
プロ
ログ
グラ
ラム
ム(
(現
現代
代G
GPP)
)
(実施期間:平成 19-21 年度)
持続可能な社会実現への地域融合キャンパス
~
~東
東北
北海
海道
道発
発 EESSDD プ
プラ
ラン
ンナ
ナー
ー養
養成
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認証
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~
事
事業
業完
完了
了報
報告
告書
書
北
北海
海道
道教
教育
育大
大学
学
平成 22 年3月 31 日
緒
言
北海道教育大学副学長(釧路校担当)
蛭田 眞一
国立大学法人北海道教育大学では、教育学部釧路校を基幹校として、平成 19 年度文部科学省現代的教育ニーズ
取組支援プログラム(現代 GP)
(テーマ4)に選定された、
「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス~東北
海道発 ESD プランナー養成・認証プロジェクト~」の教育実践改善プロジェクトに3ヵ年度にわたって取組み、
平成 22 年3月末日をもって、無事プロジェクトの完了をみた。このプロジェクトの目的の概要は、申請書の冒頭
に以下のとおり記されていた。
本プロジェクトは、本学の教育理念でもある地域の課題に取組み、地域と連携することができる人材の育成を
実現する取組である。釧路湿原や阿寒、知床などの雄大な自然に恵まれた東北海道地域をフィールドに、自然と
共生する持続可能な地域社会(サステナブル・コミュニティー)を実現するための地域のファシリテーターを養
成し、
「ESD(Education for Sustainable Development)プランナー」として認証する、地域融合キャンパスをベ
ースにした教科融合型の実践的カリキュラムの構築をめざしたプロジェクトである。学内に地域協働型の ESD 推
進センターを設置し、この取組を通して、学生ならびに公開講座コースを受講する地域住民のシステム的思考力、
地域ビジョン形成や協働的地域活動の力量を培い、ESD プランナーとして育成し、最終的に自然再生、地域社会
の活性化に貢献することを企図する。
ESD というキーワードに関わる活動は使命の教育活動であると考える。それは教員養成大学にとって必須の活
動であり、その先導的実践の記録が本報告書である。目次を見れば分かるように、活動内容は多岐にわたる。プ
ロジェクト基幹校としての釧路校が総力を上げて取組んで来たことを示している。従ってその成果も多岐にわた
る。
本プロジェクトの成果のエッセンスは、生方ほか編『ESD をつくる』
(ミネルヴァ書房、平成22年4月刊)に
盛り込まれている。本報告書は、この間のプロジェクトの各事業の内容を整理しながら振り返りつつ総括するこ
とで、その成果および残された課題を明らかにし、本学を含む全国の高等教育機関における、持続可能な社会実
現に向けた今後の人材養成の取組みの参考に資することを願って、とりまとめたものである。なお、通常、この
種の報告書は冊子体の印刷物として作成され、各方面に配布・郵送されることが多いが、今回の報告書は、貴重
な紙資源や石油資源を節約し、本当に読みたい人に配布が可能になるように、電子出版物(PDF 版)をインター
ネットを通して配布する方式を採用した。
本プロジェクト実施に際して、多大な協力を頂いた学内外の諸機関・団体・個人の皆様に、プロジェクトを代
表し、この場を借りてお礼申し上げる。
目
次
緒 言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・副学長 蛭田眞一 i
<総論>
本現代 GP の目的・内容・方法の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 取組担当 生方秀紀 1
<各論>
1.新しい学生教育の創出と成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1.1.地域融合キャンパスに展開する教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
1.1.1. 地域融合キャンパスにおける農作業体験学習・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
1.1.1.1. 提携農園における農作業体験学習 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 田丸典彦 6
1.1.1.2. 学内農園の整備・充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今泉 博・進藤貴美子・木戸口正宏 10
1.1.2. 地域住民・学生が協働した学内ビオトープの整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行 12
1.1.3. 学生が主体的に連携して取り組む地域の自然体験
・・・・・・・・・・・・・・・・諫山邦子・平岡 亮・北澤一利・添田祥史 15
1.1.4.地域のエキスパートと連携した自然体験:知床、オオカミ、そして海
・・・・・・・・・・・・諫山邦子・田丸典彦・平岡 亮・神田房行・生方秀紀 20
1.2.地域連携・地域人材を活用した教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
1.2.1.地域人材登用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
1.2.1.1. ゲストティーチャ―(読み聞かせ実践者)を招いての環境教育・・・・・・・・・・・・・大森 享 23
1.2.1.2. シベリアの自然と民俗音楽(講演会)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行 24
1.2.1.3. 外部人材の登用-ブラジル人ゲストを招いての特別授業・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 26
1.2.2.地域産業体験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
1.2.2.1. 林業と木育を中心とする地域教育実践・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戸田竜也 27
1.2.3. 地域と連携した健康教室・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
1.2.3.1. 地域住民との相互協力型健康教室の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・北澤一利・平岡 亮 29
1.2.3.2. 地域 NPO と連携した健康教室・・・・・・・・・・・・・・・・・・北澤一利・平岡 亮・松崎瑞穂 34
1.2.4. 教育行政と連携した児童の放課後支援:
「放課後タイム」の企画と実践
・・・・・・・・・・・・・・諫山邦子・平岡 亮・北澤一利・添田祥史 40
1.2.5. 地域の小学生を対象とした地域食材を活用した食育プログラム
(もぐもぐタイム)の開発・・・・・・・・・・諫山邦子・平岡 亮・北澤一利・添田祥史 44
1.3. 教科融合型クロス・インストラクション授業の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 48
1.4. 学生の主体性を伸ばす自主活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
1.4.1. 釧路エコフェアーへの学生参加:環境ビデオドラマの自主制作
および廃油キャンドルづくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田丸典彦 54
1.4.2. 学生による環境教育国際交流体験発表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 56
1.5. ウエブ上に情報発信を行うための情報リテラシー育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
1.5.1. ボランティア活動を情報発信するスキルの育成・・・・・・・・・・・北澤一利・平岡 亮・松崎瑞穂 57
1.5.2.「ふまねっと運動」活動の映像編集と発信・・・・・・・・・・・・・北澤一利・平岡 亮・松崎瑞穂 58
2. アウトリーチ: 地域への ESD 啓発・普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
2.1. ESD 推進センターの設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・北澤一利 60
2.2. ESD プランナーの養成・認証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 62
2.3. ESD プランナー資格科目授業公開講座の実施・・・・・・・・・・生方秀紀・地域教育開発専攻教員全員 65
2.4. 市民への公開講座等の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
2.4.1. ESD リレーセミナーの実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・現代 GP 関係教員有志 67
2.4.2. 公開講座「ESD の現在~世界の現場からのリポート~」
・・・・・・・・生方秀紀・現 GP 関係教員有志 72
2.4.3. 地域 ESD セミナーの実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・現代 GP 関係教員有志 74
2.5. 出前授業の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
2.5.1. 出前授業:身近な水を調べる環境学習の提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長澤 徹 76
2.5.2. 環境エネルギー教育キャラバン
・・・・・・・・・・・中川雅仁・池田保夫・蛭田眞一・栢野彰秀・小原 繁・平山雄二 80
2.6. 地域の学校と連携した「地域学習カリキュラム」の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84
2.6.1. 地域プラクティス系地域連携授業:弟子屈フィールドにおける学校支援事業
および地域教材の学習・・・・・・・・・・木戸口正宏・進藤貴美子・今泉 博 84
2.6.2. 弟子屈町と連携した「環境教育カリキュラム」
「地域学習カリキュラム」の開発
・・・・・・・・・・・・・・木戸口正宏・進藤貴美子・今泉 博 86
3. ESD 関連フィールド実地調査(国内)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89
3.1. 屋久島におけるエコツーリズムの実際・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行 89
3.2. 公害発生都市の現状調査(水俣、四日市)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田丸典彦 92
3.3. 阿蘇・諫早・八郎潟・印旛沼・霞ヶ浦:農地の拡大と環境との関わり・・・・・・・・・・・・田丸典彦 96
3.4. 白神山地における持続的観光開発の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田丸典彦 104
3.5. ESD の視点による小笠原諸島の生物多様性現状調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 107
3.6. 東海村・焼津市・夢の島・泊村・六ヶ所村:原子力の利用と
放射能汚染の環境や社会に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田丸典彦 111
3.7.
岩手県葛巻町自然エネルギーによる町おこしと学校環境教育・・・・・・・・・・・・・・大森 享 122
4. ESD 関連フィールド実地調査(海外)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124
4.1. マレーシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124
4.1.1. マレーシア熱帯林を素材とした環境教育素材の開拓・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 124
4.1.2. マレーシア・ボルネオ島 調査報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大森 享 132
4.1.3. マレーシア サラワク州における自然環境とその保護について・・・・・・・・・・・・・佐々木 巽 135
4.2. オーストラリア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137
4.2.1. オーストラリア熱帯林・サンゴ礁に生物多様性と環境教育素材を探る・・・・・・・・・・・生方秀紀 137
4.2.2. オーストラリア東北部の自然環境の現況の観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行 142
4.2.3. オーストラリア、ケアンズ・ウルルカタジュタ:国立公園先住民族の
文化保護へ向けての取り組みの調査・・・・・・・・・・・・・・・・・諫山邦子 148
4.3. ドイツ社会と学校環境教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大森 享 151
4.4. アラスカの自然体験と教育交流を組み入れた学生教育・・・・・・・・・・・・・・神田房行・境 智洋 159
4.5. イギリスにおける SD(持続可能な開発)国家戦略と
高等教育機関での ESD 人材育成・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行 162
4.6.「古くて新しい国」インドの ESD―子どもの貧困・NGO・ガンジー主義―・・・・・・・・・・・添田祥史 165
4.7. ケニアにおける先住民の自然観および、都市部における
地域支援とその実態に関する実地調査・・・・・・・・・・・・・・諫山邦子 167
4.8. フィンランド・ヘルシンキ市の小学校環境教育に関する報告・・・・・・・・・・・・・・・・大森 享 179
4.9. ユネスコ本部訪問調査:ヨーロッパ及びフランスにおける
ESD 教育の教材開発事例の収集・・・・・・・・・・・・・・・北澤一利 181
4.10. アメリカ、ヨセミテ国立公園およびイエローストーン国立公園の調査・・・・・・・・・・・川﨑惣一 183
4.11. コスタリカにおける経済開発と自然環境の関連を ESD の視点で探る・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 186
4.12. ベトナム、人と環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・廣田 健・廣重真人 197
5. シンポジウム・フォーラムの開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207
5.1. 国内シンポジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207
5.1.1. 現代 GP シンポジウム:
「持続可能な社会への環境教育(ESD)
-地域から世界へ広がる環-」
・・・・・・・・・・・・神田房行・生方秀紀・他当 GP 関係教員 207
5.1.2. 地域づくりは人づくり-持続可能な社会をめざして-・・・・・・・・・・田丸典彦・他当 GP 関係教員 206
5.2. 国際シンポジウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・208
5.2.1. 持続可能な未来をつくる環境教育~グローバルな視野と地域での実践~・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神田房行・生方秀紀・他当 GP 関係教員 208
5.3. 地域フォーラムの開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・211
5.3.1. ユネスコ・スクール・フォーラム in 釧路・・・・・・・川﨑惣一・神田房行・生方秀紀・他関連教員 211
6. シンポジウム・フォーラムでの発表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・214
6.1. GP 合同フォーラムへの参加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・大森 享・神田房行 214
6.2. HESD フォーラムへの参加・発表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・北澤一利 215
6.3. エコプロダクツ 2008 への出展・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・北澤一利 216
7. 現代 GP 成果図書の刊行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・神田房行・大森 享 217
8. ガバナンス-実施組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・220
8.1. ESD 推進センター・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・北澤一利・神田房行・ほか関係教員一同 220
8.2. ESD 推進委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・神田房行・ほか関係教員一同 220
8.3. 広報部会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・北澤一利 220
8.4. モニタリング部会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 221
8.4.1. GP 事業の自己点検評価(学生による無記名授業評価を含む)の実施
・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀・佐々木 巽・小川隆章・長澤 徹 221
8.5. 本 GP プロジェクトの外部評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 231
現代 GP 担当教員一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232
編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方秀紀 233
<総
論>
本現代 GP の目的・内容・方法の概要
取組担当
生方
秀紀(釧路校教授)
(1) 取組について
当現代 GP の取組の目的・内容・方法・実施体制の要点を、採択された申請書に記載したものをほぼその
ままの形で、以下に掲載する。
1)取組の趣旨・目的
◆持続可能な社会への地域協働型教育
北海道東部は、世界遺産知床、阿寒および釧路湿原国立公園など原生の自然を多く残す雄大な自然環境
に恵まれ、酪農、水産、石炭、製紙を主産業に地域開発が進められてきた。経済のグローバリゼーション
の下でこれら主産業が停滞するなかで、エコツーリズム、栽培型漁業、マイペース酪農、地産地消、リサ
イクル産業などの持続可能な産業や経済システムが成長しつつある。自然と共生する持続可能な地域社会
(サステイナブル・コミュニティー)の実現のためには、自然環境やその持続可能な利用、生きがいのあ
る地域文化などの実践的知識を有する人材を計画的に養成する必要がある。
本取組は「地域融合キャンパス」
(大学の施設・講義を地域住民に開放し、また地域をフィールドとして
住民を交えながら学生の教育を行う場)のメリットを最大限に活用し、正規の教育活動に加えて、学生主
体のチャレンジプロジェクトの活動を通じて、学生と地域住民がアイデアと知恵を出し合い、地域の自然
再生・地域社会の再活性化のためのアイデア創出と具体的な活動を行うことを目指した。
このような学習活動へのインセンティブを付与するために北海道教育大学釧路校独自の「ESD プランナ
ー」の養成・認証制度を整備し、実際に認証を行ってきてた。「ESD プランナー」資格を授与された学生・
市民は、持続可能な地域社会実現のためのファシリテーターとして、また地域での具体的な活動における
リーダー、サブリーダー、サポーターとして信頼されながら活動していくことが期待される。この認証は
この取組の中で実施される「ESD プランナー養成科目群」の講義・実習・実技課目を履修し、更に自主的
地域活動である「チャレンジプロジェクト」の企画・運営の経験を通して地域社会における問題解決・ア
イデア提案の資質を伸ばした人に対して授与してきた。
◆本取組が目指した学生の自己成長と地域の活性化
本学釧路校の教員養成課程は、地域の課題に直接取り組み、地域と連携した学生教育を行う実践的なカ
リキュラムを有する、全国的にも例のないユニークな教育課程である。なかでも地域教育開発専攻は、特
定の教科にとらわれず、地域の現実の課題を直接題材として取り上げ、教科融合型カリキュラムを通して
学生の実践力、行動力を育てる専攻であり、本取組ではこの専攻が中心的な役割を果たしながら全校的な
連携・協力のもとで推進した。学生はこの取組を通して、以下の能力を獲得することを目指した。
・システム的思考力:教科を超えた総合的知識をもとに、地域社会と自然環境の関係性をトータルにとら
え、それらを全体としての動的システムに統合して認識していく力
・地域協働力:チャレンジ精神とコミュニケーション能力を持ち、地域のなかで住民と共に協働して活動
し、地域社会を活性化する力
1
・地域ビジョン形成力:生き生きとした地域社会づくりのための明確な課題や目標を定め、
持続可能な地域社会のビジョンを作り出し、実践する力
2)取組の実施体制等
◆本学のキャンパス体制と新しい教育課程
本学は、道内に5つのキャンパス(札幌校・函館校・旭川校・釧路校・岩見沢校)を有する単科大学
である。これら 5 キャンパスをベースに、それぞれの人材育成機能の特色化と重点化を基調とした課程
再編が平成 18 年度に実施された。すなわち、教員養成課程は札幌校・旭川校・釧路校の 3 キャンパスに
集約し、芸術課程とスポーツ教育課程を岩見沢キャンパスに、また人間地域科学課程を函館キャンパス
に配置した。
◆独創的な教育理念-釧路校地域教育開発専攻の教育の特色-
釧路校はこの再編によって、へき地・小規模校教育や、自然環境教育を中心に、地域に結びついた教
育実践力の形成を担うことになった。釧路校は、地域学校教育専攻 (40 人)、 地域教育開発専攻 (40 人) 、
学校カリキュラム開発専攻 (100 人)からなる。本取組の中心となる地域教育開発専攻は、次のような独
創性の高い教育目的を掲げている。
「これからの教師には、地域の自然や生活、文化の中に学習素材を見
出し、そこから教材や授業を作り上げる力や、体験を通して子どもたちの感性や自己学習力を育ててい
く教育が求められている。本専攻では、北海道東部の豊かな自然環境や地域社会をフィールドに、地域
教育や環境教育に関わる総合的なプランを開発し、実践することのできる教師を養成する」
。
本取組では、この教育目的を実現するために、大きく次の四つの授業科目群からなるカリキュラムを
構築した(図1)。
ESDプランナー:
持続可能な地域社会
教科融合授業力
地域協働力
地域ビジョン形成力
地域社会・自然環境
地域融合キャンパス
教育大学釧路校
長
自己成
学生の
地域ビジョン開発科目群
地域イントロダクトリー
科目群
地域トライアル科目群 地域プラクティス科目群 ESDインターンシップ
実践協力校 地域のステークホルダー
地域のNPO・社会教育施設
図1.
2
・地域イントロダクトリー科目群(1、2年次)
:学生に地域教育や環境教育への動機付けを与えるとと
もに、基礎知識や問題発見のための切り口、視点を明示する。
・地域トライアル科目群(1、2年次):学生をフィールドに頻繁に引率し、複数の教員が指導を行う。
地域の自然に浸り、また地域の人々との交流を通して、地域社会や自然環境がもつ特性や解決すべき
課題の発見と体験的な理解を促し、興味・関心をより現実的・具体的なものへと導く。
・地域プラクティス科目群(2、3年次)
:学生が課題を発見または解決するために、自らフィールドに
出向き、地域社会の産業や生活、自然環境の中で継続的に行動し、地域の人々の夢や悩みに共感しな
がら活動を行う。この活動を通して、地域に内在する価値や困難、矛盾や課題に気づき、地域の人々
とともに考え、行動する力を身につける。
・地域ビジョン開発科目群(3、4年次)
:地域や自然環境の中で見出した課題を地域教育や学校教育を
通して解決していくための、地域ビジョンや教育プログラムを学生が主体的に作りあげる。授業では
そのために必要な専門知識や授業開発力を培い、更にプログラムの実践やビジョンの発信を促す。
◆新しい教育方法
本取組ではカリキュラムの理念を実現し、同時に地域の活性化に寄与するために、以下のような新し
い教育方法を採用した。
・教科融合・相互乗り入れ型授業科目の開設:カリキュラム構築に際しては、教科縦割りや研究室単位の
教育指導を排し、地域や時代に即応した教科融合型の授業科目、複数教員の担当による分野連携型の
授業科目を多く用意した。これによって、統合的な視点を培う専攻教育を行ってきた。具体的には、
地球環境問題の諸相について複数教員による複眼的な視点からの討論を組み入れた基礎講読、学生が
主体的に人間と環境との関係性や環境問題について ESD の観点から多面的に学ぶ授業科目、農牧業の
経営問題やグリーンツーリズムを題材に社会と環境とのかかわりを学ぶ授業科目等を開設し、展開し
てきた。
・地域人材の積極的活用:地域の課題や問題を理解するために、大学での講義や演習に現実に地域環境
にかかわるステークホルダーをゲストスピーカーとして招き、学生が現実社会がかかえている課題に
ついての認識を深めたり、あるいは地域文化の担い手を大学に招き学生がインタビューを通して、地
域文化の意義とその価値を再確認する授業を実施してきた。
・地域融合キャンパスの実現:学生の学びの場を量的にも質的にも飛躍的に拡大するために、キャンパ
スを越えて、学生を広く地域のフィールド(自然環境、地域社会を含む)に入りこませ、現実の自然・
社会と交わりながら実践的に学習できるように工夫してきた。また、地域住民も大学内の施設を利用
可能にし、住民と学生が協働した健康教室や植樹祭、草刈なども毎年実施されていた。本取組ではこ
れに加えて、ESD プランナー養成講座として大学の ESD 関連授業科目を住民のための公開講座として
も開放し、地域住民に対しても ESD プランナー資格取得の道を開いた。
地域融合キャンパスにおいては、大学の正課授業科目のうちの ESD プランナー養成科目(「東北海道
アウトドアトライアル」
、
「釧路湿原エコウオッチング」、
「地域ボランティア」、
「環境教育活動 I」、
「地
域教育活動」
、「地域健康教育コーディネート」等)はもちろん、それらの授業を受けて触発された学
生により自主的・主体的に行うチャレンジプロジェクト(地域実践活動)が住民や地域の子ども達と
協力しながら展開されてきた。この「チャレンジプロジェクト」を「ESD プランナー」の認証を受け
るための重要な必須要件とした。
・NPO・社会教育施設との連携:フィールド系の授業およびチャレンジプロジェクトの両者において大学
や学生が地域の NPO や社会教育施設と連携して、教育活動やチャレンジプロジェクトの内容を充実さ
3
せてきた。これは、地域の活性化を促す効果も期待して実施した。
・協力校における授業づくりへの参加:環境教育・地域教育に取り組もうとしている市内や近隣町村の学
校にとして教員・学生を派遣し、授業案や教材の作成に協力させ、また求めに応じて出前授業も行っ
た。
◆取組の実施体制(図2)
本学は、以前に採択された教職関連 GP2件において、教育実践フィールド科目群を軸とした自己成長
力の育成プログラムや、地域と連携したへき地・小規模校教育実践プログラムを推進していた。このよう
に、本学は地域をフィールドとした実践的指導力養成をその中心的な使命の一つにあげている。本取組
はそのような基盤の上に立ち、新たに構築された実践的地域教育・環境教育の人材養成プログラムの特性
をもち、同時に地域の再生に貢献することを目指した。この取組の中心を担う地域教育開発専攻は、教
育実践系、人文社会系、自然技術系、健康福祉系にまたがる多様な分野の教員 13 名によって発足し、各
専門分野を越えて、相互に緊密に連携・協力した組織的な指導体制を構築した。また、釧路校は、地域の
自治体、学校、NPO、社会教育施設等と相互協力の協定を締結し、学生の自主的フィールド学習活動が円
滑に実施できる基盤を整備してきた。本学教員がこれらの団体・施設と協力しつつ、これらの活動や地
域社会のイベントへの協力を強化し、学生の地域における自己教育のための環境を向上させるために
「ESD 推進センター」を学内(釧路校)に設置した。また、センターの業務を円滑に進めるためにセン
ターの事務補佐員を取組期間中、雇用した。また、本取組では、本学5キャンパス横断型の ESD 研究交
流・推進組織として「北海道教育大学 ESD フォーラム」の立ち上げを構想したが、相前後して発足した
5キャンパス横断型の「グローカル環境教育会議」に本取組担当者および GP 構成員が参加することでそ
の機能は十分代替された。
北海道教育大学釧路校ESDフォーラム
授業評価
・
地域学習活動
連携
協力校
学生・公開講座受講者
外部評価委員会
モニタリング部会
広報部会
地域教育開発専攻
連携
NPO,
社会教
育施設
ワーキングG
教育・認証
環境教育情報センター
情報提供
釧路校ESD
推進委員会
自己評価委員会
広報委員会
北海道教育大学釧路校
(地域融合キャンパス)
授業実践
地域社会・自然環境
図2.取組の実施体制の概念図
◆マネージメント体制
本取組は、「釧路校 ESD 推進委員会」
(地域教育開発専攻の教員全員と、地域学校教育専攻教員1名、学
校カリキュラム開発専攻教員1名の計 15 名より構成)が実施部会となって推進した。委員会の中にワーキ
ンググループ(4 名)を置き、日常的な連絡調整を行った。
4
3)評価体制等
◆実施状況モニタリング部会
推進委員会内に設けられ、当初の目的・計画に沿った事業の進行を定期的にチェックし、結果を推進委員
長に報告した。
モニタリング内容は以下のとおりである。
・学生による授業評価:毎学期終了後に学生による無記名の評価を実施した(毎年度)。
・教員による各授業の相互参観を実施した(初年度のみ)。
・学生の自己評価(チェックリスト)の任意提出を受けてのポートフォリオ評価を実施した(初年度の
み)。
・学生による授業評価を受けて、教育内容と方法の改善を行った(毎年度)。
◆自己評価委員会
本キャンパスに恒常的に設置されるていた委員会であったが、GP 申請後に、大学の評価システムの変更
にともない、廃止された。自己評価委員会に代わる組織として、取組担当者とモニタリング部会とで当 GP
の実施状況の自己評価を行い、その結果は外部評価委員会にも提供した。
◆本取組についての外部評価委員会
計画3年度目終了時に、外部評価委員(北海道大学持続可能な開発国際戦略本部所属の4名の教員)を
委嘱し、取組全体のシステム・内容・方法及びその成果について評価を受けた。
4)教育改革への有効性
◆独創的なカリキュラム構成による教育指導
基本的知識の獲得-体験型学習-問題解決型思考-地域ビジョンのための実践的能力の形成に至る一
連の教育指導のなかで、体験や経験を実践的な能力にまで高め、学生の自己成長を促すカリキュラムの体
系化を実現した。
◆地域融合型キャンパスによる教育内容と方法の改善
大学の教育指導の場は、学内に止まるものではなく、広く地域の環境の活用と諸機関や組織との緊密な
連携が重要である。教育内容・方法の改善と充実にとっても地域に開かれた開放的な枠組のもとで行われ
る方がより効果的であった。
◆教師の基本的な資質の育成に寄与
本プロジェクトは地域社会をフィ-ルドに教育活動を実践することができる教師の養成をめざした。地
域と連携した教育活動のなかで、学生は教師の基本的な資質として求められるコミュニケ-ション能力や
社会性、及び地域と協働する力を培うる。それゆえ、本プロジェクトは教師教育に求められる資質の育成
にも連なる意義を有している。
以上。
本取組(現代 GP)のサイト:http://ckk.kus.hokkyodai.ac.jp/GP/
釧路校 ESD 推進センターのサイト:http://ESDc.kus.hokkyodai.ac.jp/
釧路校:地域教育開発専攻のホームページ:http://ckk.kus.hokkyodai.ac.jp/
5
1.新しい学生教育の創出と成果
1.1.地域融合キャンパスに展開する教育
1.1.1.地域融合キャンパスにおける農作業体験学習
1.1.1.1. 提携農園における農作業体験学習
田丸
典彦(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度、21 年度
実施時期
4月~10 月
実施場所
釧路町別保地区、加藤農園
(1)背景と目的
本学学生の多くは卒業後に小学校教員を志望している。多くの学生は栽培体験があるが、そのほとんど
が小中学校時代の学校での栽培学習である。従って、大学においてしっかりとした栽培体験を経る事は、
将来の学校現場での作物栽培の指導に極めて有効な学習となる。さらに、広い圃場の提携農園での農作業
体験は、農業が自然に大きく依拠した生産活動であることを、労働体験を通して実感し、自然や環境につ
いての考察を深めることが期待できる。
(2)方法および内容
大学のバスを利用し、釧路市郊外の釧路町別保地区にある提携農園(加藤農園)は、当現代GPの標榜
する地域融合キャンパスを象徴する学びの場として農業体験に活用させてもらっている。この農園には大
学から所要時間 25 分ほどで到着する。帰校後授業のある学生も多いことから、昼休みを 15 分短縮し、12
時 45 分に集合し 14 時 30 分までに帰校する。従って、作業時間は1時間弱である。栽培作物は北海道の
学校園で極めて普通に栽培されているジャガイモとした。通園は毎週ではなく、畑の起耕は農園で適時に
やってもらい、学生達は、施肥と種イモの植え付け、土寄せ、除草、収穫を行なった。収穫は授業期間を
超えるため(夏休み中)希望者とした。収穫物は受講生以外の学生も交えた学生達の自主企画に委ね 10
月に収穫祭を行い、イモモチやコフキイモなどに調理して楽しんだ。更に、余剰の収穫物は大学祭で調理
して来訪者に振舞った。
1)授業計画
加藤農園での授業は、移動に 30 分程度要することから、12 時 30 分に集合出発する。終了は、4目講目
の開始前に帰校するため、14 時頃には作業を終える。
下記の週別項目は目安で、期間を通して毎週の授業は無いが、天候によっては土日に補講も予定する。
1週
圃場・花壇の起耕・整地(春耕)
2週
同上
3週
植え付け・播種
4週
同上
5週
育苗管理
6週
同上
7週
中耕・除草
8週
同上
6
9週
除草・追肥
10週
同上
11週
肥培管理・除草
12週
同上
13週
同上
14週
一部花壇の採種
15週
同上
2)授業記録
受講学生:専攻 2 年次、環境教育分野学生 26 名、地域教育分野学生1名。
4月12日
ガイダンス授業と、授業に期待することと植えたことのある作物を書いてもらう。
○期待することの多くは、将来教師となった時の、学校園での栽培や、自然と触れ合うことな
どであった。
○栽培経験については、ほとんどの学生が、何らかの植物の栽培経験がある。その主要なもの
は、学校でのアサガオ等の教材で、次いで家庭菜園の手伝いである。栽培経験のある作物名
を 20 以上書いた学生もいた。
18日
大学バスにて加藤農園に行く。担当教員(田丸)およびティーチングアシスタントの大学院
生1名ほか教員2名が引率。農園の概要説明を行い、農園オーナーの加藤講師を紹介する。
加藤農園は丘陵地帯の丘の上にあることから、周囲を防風のため塀で囲んである。土壌は
火山灰土。まだ有機物の蓄積が少ないいわゆる赤土である。鹿の食害も多いとのことであ
った。
4月23日
大学前並木下花壇の整地
(内容省略)
5月
10日
農場整地、ジャガイモ植え込みのための準備で畝切。山菜のコゴミ株の植え付け。学生た
ちは土の感触を楽しむ。
5月17日
ジャガイモの種芋切り分け(植え付け)
悪天候、寒さの中での作業、農作業の厳しさを味わう。
24日
農繁期となり、農場と花壇の作業をおこなう。
○農場では、堆肥と化成肥料を散布し、ジャガイモ植え付ける。
○大学前街路樹下の花壇では、種まきをする。
5月31日
ジャガイモ植え付け・花壇整備
前週と同様に時間一杯の作業となる。欠席などで花壇の整備ができていない学生は、それぞ
れ独自に時間を作り実行するよう指示した。
6月14日
街路樹下花壇の追肥除草
農場のジャガイモ定植と花壇の播種を終え、除草中心の作業となる。
6月
28日
7月
5日
草刈、ジャガイモに追肥する。土寄せには一寸早い。
ジャガイモ追肥と土寄せ(培土)
農場に行くバスの中で、日本農業教育学会編「学校園の栽培便利帳」のジャガイモの項をプ
リントし、ジャガイモ栽培の中でも重要な作業である、土寄せについて説明する。すなわち、
サツマイモが塊根にデンプンを貯蔵しているのに対して、ジャガイモは塊茎に貯蔵しており、
ジャガイモの土寄せ作業の意味と大切さを伝える。
7
7 月12日
大学前街路樹下花壇の手入れ
雑草取り
26日
前期最後の週となり、正式な授業はこの日までとして、感想レポートを書いてもらった。感
想文の多くは、授業を楽しんだこと、栽培学習は環境だけではなく地域と結びついた内容
を含んでいること、生き物を育てることの難しさが学べられた等、肯定的なものがほとん
どであった。ただ、初めての授業ということで、担当者も予めの日程を伝えられなかった
こと、悪天候でも強行せざるを得なかったことなどが不満として記載されていた。
これ以降の授業は、希望者のみの自主参加授業とし、10 月 14 日には収穫し、自分達
の育てたイモを煮て学生主催の収穫祭を実施した。
(4)学生教育における効果
授業は、ガイダンス時に栽培経験の有無をアンケート調査し、同時にこの授業は、ガイダンス時に栽培
経験の有無をアンケート調査し、同時にこの授業での期待などを記してもらう。授業終了時に、反省も含
めて授業についての概感を提出してもらっているが、写真で見られるように受講生のほとんどが、受講し
て良かったと大好評であった。
農場での体験学習は、参加した多くの学生にとって楽しい体験であり、戸外で行なうこの種の体験活動
は、学生達の気持ちも解放され、学生相互の人関係も親密となり、多くの教育効果があるといえる。
しかし、学習面から考えると、栽培の基本的な知識を持たないままの作業体験であることから、この体
験を作物栽培の学習に繋げ、環境との関わりについて認識を深める学びが望まれる。
加藤農園にて受講生達
耕運機の試操作
施肥と種芋の植え付け
土寄せと除草
8
牧場のポニーと遊ぶ
収穫祭の準備
ジャガイモの収穫(夏休み中)
収穫祭。イモモチの出来上がり
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1.1.1.2. 学内農園の整備・充実
○今泉
進藤
博(釧路校教授)
貴美子(釧路校教授)・木戸口
正宏(釧路校講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
2009 年4月~2009 年 11 月
実施場所
北海道教育大学釧路校内農園
(1)背景と目的
学校教育で行われている栽培活動の多くは、何故この植物を育てるのか、あるいはそもそもどのような
植物を育てるのか、ということについて、子どもたちの意見や議論を踏まえないまま、教師・学校主導で
の取り組みとなっている。
また植物栽培の技法が、先人のさまざまな試行錯誤や失敗を経て、ひとつひとつ確立されてきたことを
十分に学ぶことなく、確立された栽培法を無批判になぞっていることも多い。そのため、多くの子どもた
ちにとって栽培活動は、その意図することとは異なり「やらされている」ものと感じられている。
本事業の対象となっている本学学生もまた、多くはそのような栽培活動を経験している。教員として、
栽培活動の持つ教育的な意義を踏まえた上で、子どもたちの主体性や創意工夫を尊重した栽培活動を構
想・実施するためには、自身がその当事者となって、そのような栽培活動を実際に体験することが重要で
ある。そのため本事業では、栽培方法の工夫や比較実験なども含めて、可能な限り学生自身の発想や試行
錯誤を尊重する形での栽培活動を行うことを試みた。具体的には、各人が、自分たちが栽培を希望する野
菜を育てることを通して、栽培の楽しさや難しさ、栽培に関する先人の智恵や苦労を知るとともに、作物
栽培を軸に行う調査研究の取り組みを通して、学校教育における栽培活動の重要性や、食育・環境教育の
重要性を学ぶことを可能な限り目指すこととした。
(2)方
法
学内農園で、学生と教員が力をあわせて土つくり、野菜栽培、病害虫防除、野生動物による食害防止の
各作業を行うとともに、栽培食物が日本社会に定着するまでの歴史や、食育・学校における栽培活動の意
義などについて調査研究を行った。
(3)結
果
文献による学習だけでなく、実地の栽培を通した学習活動を行うことにより、自身の経験や実感を伴っ
た形で、学生の学習活動を進めることができた。また食育や栽培活動、自然体験などが持つ教育的な力に
対する学生の関心を高めることが出来た。そのような活動を通して、山村留学等に取り組む NPO 関係者
の講演会への参加など、実際の活動への関心なども喚起することができた。
反省としては、実施時期が遅く、栽培できる植物が限られていたため、学生の関心・要求に十分に応え
ることができなかった点が挙げられる。また、取り組みの当初には、
「栽培活動」はただやらされているだ
け、という学生の意見もあり、取り組みの意味づけなどについての周知・事前学習が不十分な部分もあっ
た。
10
畑おこし。ビニールハウスの外でも
畑おこし。ビニールハウス内でも条件を工夫し
栽培は可能か確かめる
て作物を植えた
収穫された野菜
最後に全員で集合写真
(4)学生教育における効果
栽培活動への従事を通して、野菜栽培、病害虫防除、野生動物による食害防止などについての基本的な
知見を学ぶとともに、食育・学校における栽培活動の意義・課題などについて、自分たちの関心に基づい
て、調査・発表を行うなど、自然環境に関心を持つ教員としての資質の向上につながる活動をすることが
できた。
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1.1.2. 地域住民・学生が協働した学内ビオトープの整備
神田
房行(釧路校教授)
事業期間
平成 19~21 年度
実施時期
5月~3月
実施場所
北海道教育大学釧路校敷地内
(1)背景と目的
地域融合キャンパスの整備として、学内ビオトープの整備を行った。この事業は散策路や外来種の駆除、
裸地状の場所への樹木の植栽など、順次整備を行った。これらの作業は市民と学生とが協働的に行った。
ビオトープとして利用した地域は、本学の敷地内で、建物やグラウンドなどに使用されていない土地、
しかも将来計画上も建物などに使用予定のない土地を利用し、構内の地形を活用した自然再生型のビオ
トープを造成するというものである。どのようなビオトープにするかは地域の住民や本学学生教官が計
画段階から共同で相談しあいながら行った。
出来上がったビオトープを単に活用するだけでなく、造成プロセスを大事にし、環境教育教材として
活用することとした。
(2)方
法
・ビオトープ造成地内にごみが散乱しているので春先にごみの除去を行った。
・ビオトープ造成地内でどのように自然を復元するか計画を立てた。
・ビオトープ造成地では軟弱地盤のためウッドチップを購入し、散策路に敷き詰めた。また、散策路の途
中にある水路に木造の橋をかけた。
・ビオトープ造成地内に生育しているオオアワダチソウなどの外来種を除去した。
・ビオトープ造成地に見られる植物に名札をつけた。
(3)結
果
写真1にビオトープ造成地の概要と水の流れ
を示した。ここは大学の敷地と周辺の民間の土
地の境界にあり、周辺から毎年多くのごみが集
まってくるところでもある。そこで、まずごみ
の除去を行った(写真2)。ここでは、釧路市内
で絶滅が危惧されるミズチドリの一時避難場所
としてミズチドリ実験地を設定した。また、釧
路周辺の林地から採集してきたドドマツの苗畑
も設定している。その他、高台になっていると
ころは地下にコンクリート廃材などの廃棄物が
埋まっており、表面の土壌も貧栄養の状態であ
るので、アカエゾマツや広葉樹の植林を周辺住
民の協力のもと行った。
写真1
北海道教育大学釧路校構内にあるビオトー
プ造成地の概要
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写真2
ビオトープ造成の前のごみ拾い作業
写真3
ビオトープ造成地に市民から寄せられた
樹木の苗
写真4
樹木の苗の植え付け
写真6
写真5
添え木を当てて補強する
植物名や花の写真をつけた名札の設置
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(4)学生教育における効果
地域融合キャンパスにおける学生の学びの場を量的にも質的にも拡大するために、学内ビオトープの整
備を行うことにより、学生が自然の変化を鋭敏に観察する能力を培うとともに、このような体験を通して
持続可能な地域社会を体を通して認識することが可能となると考えている。
地域の学校現場では学校ビオトープ作りが行われているところも増えてきている。大学で学生用にビオ
トープの実際と、環境の保全、保全生態学的な考え方などを研究するのは大変意義があることと考える。
また、教育現場でのビオトープ作りを指導できるようになる。
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1.1.3. 学生が主体的に連携して取り組む地域の自然体験
○諫山
邦子(釧路校准教授)・平岡
亮(釧路校講師)
北澤
一利(釧路校准教授)・添田
祥史(釧路校講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年7月 11~12 日、18~19 日
実施場所
屈斜路湖とその周辺
(1)背景と目的
事業の計画、準備、実施のすべての過程を学生がグループに分かれて主体的に連携して取り組むことで、
企画・運営・危機管理能力の力量を高めることを目的とした。
(2)内
容
1)準備段階(6月中)
地域教育開発専攻の1年次学生 48 名を2班に分けて、それぞれの団体装備、個人装備、食糧計画、集団
めあて、個人目標、保険加入等の検討を行う。2グループに分かれての毎週の打ち合わせと事前実技を行
う。
(団体装備)テント設営用具一式、寝袋、エアーマット、炊事用具、カヌー6 艇、
ライフジャケット、スローロープ、新聞紙、ガムテープ、マジック、
ポリタンクなど
(個人装備)トレッキング用&カヌー用靴、Tシャツ2、長袖シャツ、速乾性ズボン、
靴下、帽子、トレーニングウエアー、雨具、傘、カイロ、手袋、懐中電灯、
コッヘル食器類一式、簡易コンロ、非常食、ナイフ、タオル、洗面用具、
携帯電話、携帯ラジオ、ティッシュ、ライターなど
(献
立)1 日目夕食は、バーベキュー、2日目朝食は、ホットドック
2 日目昼食は、バーベキューの残りでのリゾット
(集団めあて)・環境教育につながる自然活動をしよう。
・集団生活を通じて協調性を学ぶ。
・メンバーひとりひとりが実際に自然を体感して環境に対する知識や意識を
高める。
・自然な中で生きる知恵や創造的な心を育てる。
・自然の中で命の大切さや自分と自然との一体感を感じる。
・自然体験活動の良さや自然の大切さを人に伝えることができるようになる。
(個人目標)カヌーの安全技術の習得、参加者同士の交流、自然とのふれあい、
効果的な野外炊事、屈斜路湖畔の自然観察、キャンプ技術の習得など
(保険加入)損保ジャパン、500 円の1泊2日の野外活動に関する保険に加入。
(下
見)数名の学生による実地踏査を教員と行う。
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2)実施段階(7 月 11~12 日、7 月 18~19 日)
指導者:教員2名、非常勤1名
参加者:各日程 27 名
場
所:屈斜路湖キャンプ場
日
程:1 日目―9時集合、9時半大学出発、11 時屈斜路キャンプ場着、テント設営
13 時昼食、14 時~16 時カヌー実技、18 時夕食、21 時就寝
2 日目―7時起床、7時朝食、9時カヌー実技・ツアー、12 時昼食、
13 時フリータイム、14 時半屈斜路湖キャンプ場発、16 時半大学着
片付け、解散
3)カヌーについて
カヌーの乗り降り、安全確保など基本の技術の学習。
直進する方法、ターン、スライド、後退などのパドル操作。
沈した時の救助方法、救命ロープの投下方法。
カヌーとカヤックの違いの体験。
ミニツアー。
4)キャンプ
テント設営、野外炊事、参加者やキャンプ場の人々との交流、フリータイムでの学習
(3)学生教育上の効果
実施後に参加学生に「気づいたこと・考えた事」について課題として、レポートの提出を求めた。それ
らから抜粋して、以下に紹介する。
1)カヌーキャンプの前
・実施要項を作成し、メンバーとの情報の共有や目的の確認をする必要がある。
・万が一のことを考えて、保険に入っておくとよい。
・キャンプでは、計画通りに行かないことが多いから、時間の計画は細かく設定せずに大
まかな流れで汲むようにする。
・なるべく早めに物事を決め、余裕を持って進める。
・決めた事は、必ずはっきりと全員に伝える。情報が行きとどいていないと、他の係の運
営が進められなかったり、準備がなかなかできなくなってしまう。
・あまり贅沢な計画はしない。あるもので色々やりくりをしていくところにキャンプの面白みがある。
・自分の所持品には名前を書いておく。
・現地に行く前に現地の情報を収集し、理解しておくことが大切。
・荷物を積む前には、積んだ物とその個数を確認しながらやる。
学生が準備段階からすべてのこと(大きな骨組みは教員が行ったが)を決めなくてはいけない。この授
業は、今まで受け身の授業が多く、学生の主体性に任せられることなど、学校祭くらいしか経験していな
いためか、不慣れな点が多い。そもそも、何を決めなくてはいけないのか、どういった場所に行くのか、
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何が必要なのか判らない状態でのスタートのため、足取りがおぼつかない。意外なことにキャンプ経験が
ない人が多いことに驚いた。経験がないと必要なものや、やることのイメージがわかないようである。
高校の総合や調べ学習でもそうであるように、大多数の人が、自ら考えたり動くことが苦手なようであ
る。ただし、役割を与えられたら、あるいは仕事が与えられたら、よく動くようである。各個人の仕事が
決まりさえすれば後は早い。やはり、いつもリーダーシップを発揮する人が仕切ることになった。係分担
については一部は仲良しグループで固まり、その定員までの補充には、あぶれた人が入るという形になっ
た。今まであまり話していない人と交わるため、うまくコミュニケーションをとれていなかった人もいる
ようだ。
キャンプ当日が近づくにつれ、今までリーダーシップをとっていなかった人が積極的に動くようになる。
特に係の担当長が多かった。また、この頃から積極的に動いている人を中心に交友関係が変わり始めたよ
うに思える。今までと少し友達グループが変わり始めた。
2)カヌーキャンプ当日
・静かに時を過ごしたい人もキャンプ場にきているため、騒ぎすぎない。節度を持つ。
・自然を汚さない。自然に溶け込む。
・火を起こすタイミングは、早すぎると炭が持たなく、遅すぎると食事に支障が出る。
・体温調節や体温管理は自分で行う。
・メンバーの立場や様子から気持ちを汲み取ろうとし、協力する。
・テントの組み立て、その他の準備など、何をおいてもコミュニケーションを取ることが重要となる。
・失敗しても工夫次第で何とかなる。
(実際にあった例)火が予想以上に強く、コメが柔らかくなる前に焦げてしまった。
→火から離し、水を入れてむらしておけば、何とか食べるレベルにはなる。
・予想通り行かないことが多いため、一人ひとりが感じて考えて行動しなければならない。
・湖の波や風の動きを感じて、危険はないか常に確認する。
・転覆した時の対処法を知っている必要があり、心構えが重要。
・自然は豊かで優しいイメージがあるが、その一方で、自然の怖さも心得ておくことが大切。何が起こる
か判らない。
・カヌーは全身で漕ぐもの。
・泳げない人でもライフジャケットを着ていれば溺れることはない。しかし、泳げるに越
したことはない。教師は絶対泳げないと子どもを助けられない。
・自然とともに動いているという心地よさ、安らぎ。
・他のカヌーとの距離や位置、岸とカヌーとの距離など、周囲のことに気を配りながら進む。
・教えてもらうからには、誠意を見せて積極的に取り組む。自分達が教える立場になった
とき、どんな態度で臨んでほしいかは考えれば判る。
全体で一度テントを建てたり、一部の人はサークルでキャンプを経験していることもあったためか、準
備やテントの設営は割と早かった。ただし、ペグの打ち方など間違っているところもあった。グダグダと
やるということもなく、皆の積極的な行動に驚かされた。自分たちで計画したという意識が強いためだろ
うか。
料理や片づけなど担当者もそうでない人も協力して作業を行っていた。担当者は空いた時間を無駄にし
ないようにしっかりやっていたと思う。特にキャンプの撤収の際は、雨天ということもあり、片付ける順
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序や工夫、また、テントや備品がばらばらにならないよう気をつけたりと、よく気がつくなというところ
が多かった。撤収時も遊ぶ人も少なく全員が各々の責任を果たしていたと思う。
交友関係については、全体的にお互いに今までよりも気を置かなくても話せる人が増えていたように思
える。また、友達グループも今までよりも枠が緩くなったように見えた。グループ間を行き来したり、別
グループの人が入っても普通な関係になっていたと思う。また、グループを越えて全体的な高揚感、結束
感、参加者同士という仲間意識があった。撤収時の心地よい喪失感はここに起因していると思う。
3)カヌーキャンプ後
・楽しんで終わりでなく、片づけや振り返りまでもキャンプの一環である。
・疲れているのは皆一緒であることを忘れてはいけない。
・いくつ運んだか常に個数を数えながら片付ける。
・元の状態と同じように片付けないと、次に使う人が困る。
・元の状態を覚えていなければ困る。
・一人が高い意識で行動していたとしても、一人でも適当になっていると意味がない。
全員で意識を高く持って取り組むことが大切。
・辛い時には声を掛け合う。お互いが気を配って協力し合う。
キャンプ終了後の片付けもさぼったり、抜け出したりせず手際よくこなしていた。特に、集合時間より
早く来て、テントを片づけている人がいたのには驚いた。誰かのためにもやってやろうという心理にもキ
ャンプがもたらした仲間意識が動いているのだと思う。また、大学生活でも、すれ違った時に挨拶してく
れたりとキャンプ終了後もキャンプの影響はあったと思う。
3)振り返り
・失敗は次の課題として受け止める。
・成功も失敗も、自分達の意識次第で良い経験になる。
・たくさんの人や物に支えられて活動ができた事を忘れない。感謝をする。
・このまま満足して終わらせず、この経験をこれからどう生かしていくか、教師として
何が必要になってくるかなどを考えていくことが大切。
野外教育としてのカヌーキャンプが何かしらの向上に動くことは確かなようである。仲間づくり、居場
所づくり、結束力、個人の積極性、新たなリーダーの台頭などなど、沢山のことがある。あくまで予測で
はあるが、雨天という過酷な状況で一夜を共有したことが、そうしたのではないかと思う。また、担当者
以外の参加者が当日の作業を率先して行ったおかげで、仕事が次から次へ出てきても考える時間が省けた
というのもあるのではないだろうか。あれが、リーダーにのみかぶさっていたなら、本人達のキャパシテ
ィーを超えて爆発していたと思う。そうしたことが円滑な対人関係を育めた一因だと思う。また、想像以
上に、キャンプ後も人間関係の結びつきが強くなっていたように感じられました。
教員たちの力を借りながらも仲間と自分たちの力で頑張ったこの 1 泊 2 日とその前後は、生涯忘れられ
ないものとなり、自信にもなるだろう。
(4)まとめ
初年度である 2006 年度はカヌー活動のみ、2007 年度、2008 年度はオートキャンプ場で宿泊を加えた
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活動、そして、2009 年度は、自然豊かな場所においてのカヌーキャンプへと、地域トライアル系アウトド
ア授業の拡大を行ってきた。事業の計画、準備、実施のすべての過程を学生が主体的に連携して取り組む
ことで、企画・運営・危機管理能力の力量を高めることができ、さらに集団での活動の意義について考え
る事ができた。また、豊かな自然の中でのエコウォッチングの成果を生かした活動への発展、カヌー活動
について一定水準の理解とカヌーの基礎技術についての習得が行われたと評価できる。
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1.1.4. 地域のエキスパートと連携した自然体験:
知床、オオカミ、そして海
○諫山
平岡
生方
邦子(釧路校准教授)・田丸
典彦(釧路校教授)
亮(釧路校講師)・神田 房行(釧路校教授)
秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 22 年3月 30~31 日
実施場所
標茶町虹別、羅臼町
(1)背景と目的
北海道の生態系の現状をフィールド学習によって実感できる、1 年生の学生を対象とした授業づくりを
将来的に目指し、その基礎資料として、本事業では地域における人的、物的資源についての調べ学習をお
こないながら、地域の資源についての掘り起こしをしていくこととした。
(2)方法および内容
大学からやや足をのばした、網走地域と知床地域の 2 か所を候補地域とし、道東地域全体に、あまり知
られていない地域資源を選択することとした。調査の結果、標茶町虹別のオオカミスクールと羅臼町のネ
イチャークルージングの二つに絞り、それらを結んで生態系の総合的な理解を図るためのプログラム開発
のためのフィールド調査を行うこととした。地域教育開発専攻1年次学生16名と引率教員4名が参加し
た。
初日は、午前中に虹別オオカミスクールでレクチャーを受け、午後は羅臼町からチャーター船にて海洋
生態系の学習、夜に羅臼地域の小学校教諭と高等学校教諭による地域教育の現状についてのレクチャーを
配置し、翌日は、羅臼ネイチャーセンターとクジラの見える丘公園を訪問した。
1)オオカミスクールでのレクチャー(講師:オオカミスクール主宰、桑原康男氏)
北海道の開拓の歴史の中で、農耕馬ドサンコがオオカミに殺されて数百頭が全滅したこともあり、オオ
カミを殺すことが奨励され、を絶滅させたこと、エゾシカを高級食材として大量に捕獲されいったんは絶
滅と考えられたが、その後わずかな個体数から天敵であるオオカミのいない中で増えていき、昭和 60 年農
家の被害が顕在化したこと、イエローストーンではオオカミを再導入するプロジェクトにより自然のバラ
ンスを取り戻し始めることに成功していことなどの話があった。
レクチャーの前後には、ハイイロオオカミやアカオオカミの紹介見学や、オーナーの桑原氏と戯れるオ
オカミの様子を目の当たりにした。
2)チャーター船による海洋生態系の学習(講師;キャプテン、長谷川正人氏)
羅臼とその周辺海域は、東部に国後島、西部に知床半島があり、マッコウクジラ、ツチクジラ、ミンク
クジラ、シャチ、イシイルカ、トド、オットセイなどをはじめとする海洋動物、エトピリカ、ウミガラス、
ハシブトウミガラス、ハシボソミズナギドリ、フルマカモメ、オオワシ、オジロワシなどの海鳥、冬の流
氷、これらが羅臼海域の特徴である。
流氷の時期には、知床半島の西側のウトロは流氷で埋め尽くされて餌が採りにくくなっているので、流
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氷密度の低い東側の羅臼側へ餌を求めて 2000 羽程度のオオワシ、オジロワシが飛来し、それらの越冬地
域にもなっていることが、知られている。
流氷が育む豊かな海の生態系と原始から続く陸の生態系の相互関係が知床世界自然遺産として登録され
た理由であり、これらの食物連鎖は世界的にも類を見ない生態系を作りだしているとされている。
チャーター船では、特に多くの海の動物を観察することができ、根室海峡はその大自然の海の姿を感じ
ることができ、また漁業や羅臼の人々の暮らしについても紹介された。
当日は、漁業者でキャプテンの長谷川正人氏、クルーガイドで編集担当の大木絵里香氏、シャチとマッ
コウクジラの写真識別を本職とする佐藤晴子氏にガイドや、質疑に応答をして頂きながら、根室海峡のフ
ィールドでの 2 時間のチャータークルーズでにおいて、海の生態系を中心に陸の生態系の学習もあわせて
行うことができた。
オオカミスクールでのレクチャー
チャーター船による海洋生態系の学習
3)羅臼地域の地域と連携した学校教育と社会教育(講師:釧路校同窓生 2 名)
釧路校の同窓生である二人の学校教員による羅臼の教育のレクチャーが行われた。
小学校では行事を中心として地域の人材を活用した教育が伝統的に行われており、中学校と高等学校で
は両者が連携を取った学習が行われ、教員や生徒同士の交流を行いながら、地域を巻き込んだ効果的な中
学校教育、高等学校教育が行われている現状について説明がなされた。また、社会教育においては、羅臼
の魚介類を活用した学習や「ふるさと少年探検隊」として、30 年近く毎年行われている過酷な 5 泊 6 日の
内容が紹介され、羅臼の子ども達に限らず、日本中の子ども達にもオープンになっている社会教育活動が
紹介された。
また、将来教員を目指す学生たちにとって、先輩に当たる同窓生から、在学中の学習や教員として子ど
もたちや保護者、および同僚に対する考え方や心構えについて、自由な質疑応答を通して、有益な情報を
提供して頂いた。
4)羅臼ネイチャーセンターとクジラの見える丘公園
知床半島の歴史、自然、文化、利用のルールやマナーなどについて理解ができるように様々な展示の工
夫がなされていた。
知床は、陸の生態系の頂点であるヒグマを始め、エゾシカ、キタキツネ、エゾクロテン、エゾリスなど
多くの動物たちが密接に関わりながら生きていること、また、海にはマッコウクジラ、シャチ、トド、ゴ
マフアザラシなどの海棲ほ乳類が豊富な魚介類を狙って集まり、四季を通じて見られることについて、解
21
説がなされていた。
さらに、陸と海をつなぐ川には、オショロコマが豊富に生息し、初夏から初冬にかけては、サクラマス、
カラフトマス、シロザケが海の恵みを山へと運んでいること、この連続性が顕著な知床の海、川、森は、
野鳥にとっても貴重であり、希少種であるシマフクロウ、オジロワシ、オオワシなどの大型猛禽類から、
ノゴマやギンザンマシコ、カワガラス、シノリガモ、オオセグロカモメなど、森林、湿地、河川、海岸な
ど多様な自然環境を利用しながら、生活している内容が示されていた。
クジラの見える丘公園に往復 20 分ほどのショートハイキングを行い、高台にある公園からの海と陸を臨
みながら、その生態系の連続に参加者それぞれの思いをはせた。
(3)学生教育上の効果
標茶町に 20 年近くオオカミとの共存をテーマに北海道にその導入を検討している桑原夫妻の取り組み
は、現在エゾシカが増えすぎた事による自然のバランスが崩れていることへの是正アプローチの一つであ
る。今回学生達は、実際のオオカミを身近に実感しながらの学習を行うことが出きた。また、始まって 5
年間の地域おこしを含めたクルージング観光の努力や課題について、根室海峡の海と陸、海洋動物や鳥を
観察しながら考えることができたと思われる。
22
1.2. 地域連携・地域人材を活用した教育
1.2.1. 地域人材登用
1.2.1.1. ゲストティーチャ―(読み聞かせ実践者)を招いての環境教育
大森
享(釧路校准教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年 8 月 6 日
実施場所
北海道教育大学釧路校
(1)背景と目的
1970 年代に高揚した地域に根ざす教育の展開は、80 年代に下火となり、1989 年の生活科、1998 年の
総合的な学習の時間の導入にあたり、
「再び三度生活と教育の結合を」のスローガンのもと地域と学校の連
携がクローズアップされたが、
「分数もできない大学生」から始まった低学力論、遠山文部科学大臣(当時)
の「学びのススメ」を経て、基礎・基本重視・授業時数確保へとシフトしていった。時間数確保・基礎基
本学力形成の叫びの中で、北海道から沖縄まで「共通する学力形成」
(一概に悪いのではなく、地域を潜り
抜けた学力形成が大切)が目指され、地域に根ざした学習内容と授業づくりを担う教師の力量形成が滞っ
ている。学校環境教育実践は、地域の生活と自然を題材とした授業づくりが大切であり、
「地域・日本・世
界を串刺しにする課題化的認識」
(上原専録)による当事者性を潜り抜けた学力形成が求められる。以上か
ら、現代の地域の教育力、学校と地域の連携を考える切り口の一つとして,子どもと教育に関わる NPO
法人とその活動について学生が学ぶ意義が考えられる。
(2)方法と内容
2008 年 8 月 6 日、
「子どもと環境教育」の授業の中で、NPO 法人千葉県子ども劇場センターで秋田の方
言による絵本の読み聞かせ活動を行っている馬場和子さんによる講義と実演をしていただいた。最初に、
千葉県センター事務局長から NPO 法人とは何か、全国子ども劇場運動とは何かについてレクチャーを行
ってもらった。
『八朗』の読み聞かせであったが、目を閉じて深く考えながら聞く学生の姿が目立った。
「方
言は汚い言葉だから使わないように。共通語が良い。」と言われてきた馬場さんの子ども時代の様子も話さ
れたが、明治の学制開始時期、
「標準語とは何か」とあわてた文部行政は、東京山の手の言葉を標準語と決
めたそうだ。沖縄では、方言を使用した児童に「方言札」を下げさせ、標準語指導を徹底したし、戦時中
は沖縄方言を使う住民はスパイとして虐殺されている。
(3)学生教育上の効果
NPO 法人について初めて知る受講生もおり、学校外教育の現状と課題及び学校教育との連携を構築する
主体形成を考えた時に、NPO に関する講義は重要である。環境教育はグローカルな視点が必要だと言われ
ている。それは「地球規模で考え足元から行動する」ことでもあるのだが、方言は正に地域に根ざした言
語表現であり、方言による絵本の読み聞かせによって、その絵本の内容はよりリアルに伝達される。その
ような方言をめぐる歴史についても学びながら、グローカルとは何か、方言とは何かを考えることもこれ
からの環境教育実践を創造していく視点となるのではないだろうか。
23
1.2.1.2. シベリアの自然と民俗音楽(講演会)
神田
房行(釧路校教授)
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 19 年 11 月 7 日
実施場所
北海道教育大学釧路校
(1)背景と目的
「持続可能な社会のための教育(ESD)」はこれからの未来をになう人材をどのように育成するかが大き
な課題である。そのためにはグローバルな視野で物事を考え、行動する事が求められる。当現代GP採択
初年度の当初事業の一つとして、ロシア連邦ヤクーツク民族歴史・文化博物館館長のイゴール・シシギン
館長を釧路校に招き、シベリアの環境や民族、民族楽器について講演と演奏をいただいた。
(2)方法
北海道教育大学釧路校福利厚生施設小ホールにおいて講演と演奏をしていただいた。
また、地域にある口琴の演奏サークルの皆さんにも来ていただき、アイヌの民俗楽器ムックリを一緒
に演奏するなどした。
(3)結果
集まった 40 名以上の学生や市民を前に、まず最初に、ロシア連邦ヤクーツク民族歴史・文化博物館館長
のイゴール・シシギン館長にシベリアの環境についてお話をいただいた。
次に民族楽器ホムスの演奏を即興で行っていただいた。ホムスはアイヌの民族楽器ムックリと大変よく
似た音色、形をしている。ただしホムスは金属で、ムックリは竹で作られている。
(4)学生教育における効果
このシンポジウムにより、グローバルな視野での地域の音楽に触れることができ、また、シベリアと
の連携により、具体的な地域の民族の文化とその比較について学ぶことが出来たのではないかと思われる。
写真1
シベリアの自然について講演
写真2
するシシギン氏。
24
ホムスの演奏をするシシギン氏。
写真 3 ホムスの演奏.
写真4
標茶町の「あそう会」のメン
バーによる口琴の紹介と演奏.
25
1.2.1.3.
外部人材の登用-ブラジル人ゲストを招いての特別授業
生方
秀紀(釧路校教授)
実施年度
平成 19 年度
実施時期
平成 20 年2月 13 日
実施場所
釧路校大会議室
(1)背景と目的
外国の文化や環境についての学生の知識は、書物やテレビ、ラジオ、インターネットなどを通したバー
チャルな体験に基づいたものが大部分で、現地に住む人からの生の声を聞く機会はほとんどない。今回、
環境リテラシーおよび環境教育活動 II の特別授業として、ブラジルからの留学生にブラジルの環境と教育
について語ってもらい、学生に自由に質問させる機会とし、実体験を与えることを目的とした。
(2)方
法
冒頭で、担当教員(生方)から趣旨説明とゲストスピーカーの紹介を行った。引き続き、ゲストスピー
カーのプリシラさん(ブラジルからの教員研修留学生)からパワーポイントを使いながら英語でスピーチ
してもらった。担当教員がおよその内容を通訳して、学生の理解に供した。
(3)特別授業の内容
プリシラさんが紹介してくれた内容はつぎの
とおりである。地図上の位置、国の大きさ、国の
気候区分、アマゾン地方の特徴、リオデジャネイ
ロ州、サンパウロ州の特徴、国民の構成、日本人
の移民 100 年、サンパウロ日本人街、サンバ、ブ
ラジルの自然(動物、自然資源)、それらを保全
する多数のプロジェクトがあること、絶滅危惧生
物の保全のプロジェクトの紹介、ブラジルの学校
制度、ブラジルのごみ問題、ゴミ処理、学校教育
におけるリサイクル
指導、自立共同体キロン
ボの居住民の生活紹介。
最後に学生の質問を受け付け、7,8名の学生から、教育や環境についての質問がだされ、プリシラさ
んが答えた。
(4)学生教育における効果
学生にはブラジルについてブラジル人から直接話をきくことができてよい機会だった。ごみの処理や教
育環境の違い(ブラジルの教員は4時間半で勤務を終えるが日本人は朝早くから夜まで働いている、ブラ
ジルでは給料が安く、二部授業を担当することで収入を補っている。小学校では音楽・美術の授業はなく、
教員採用試験に水泳やピアノはない、等々について具体的な知識を得ることができた。
26
1.2.2.1.
1.2.2.地域産業体験
林業と木育を中心とする地域教育実践
戸田
竜也(釧路校講師)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 21 年2月
実施場所
紋別郡西興部村
①森の美術館・木夢
②西興部村立西興部小学校
(1)背景と目的
現在、北海道では幅広い市民が参加して「木育(もくいく)推進プロジェクト」が進められている。
木育とは、
「子どもをはじめとするすべての人が『木とふれあい、木に学び、木と生きる』取り組みであ
り、子どものころから木を身近に使っていくことを通じて、人と木や森とのかかわりを主体的に考えられ
る豊かな心を育むこと」
(同プロジェクト会議)と定義される。
利便性や経済効率の追求により生活環境と自然環境が大きく変化する一方で、
「本当の豊かさ」とはなに
かがあらためて問われている今日。木は、人間と自然の力で再生される「循環資源」であり、その保全と
活用のバランスをとってきた木の文化は、古くから受け継がれてきた伝統の一つでもある。
木育について、特に子どもとのかかわりで想定すると、食器やおもちゃといった身の周りの道具に木を
使うことや、机や靴箱、書棚等の生活空間に木の材質のものを増やすこと、モノづくりや森の散策などの
木や森と積極的にかかわることなどが挙げられる。教育実践では、林業を主産業とした地域での「総合学
習」における木工制作や、魚月林づくり、特別支援教育における「作業学習」での木工制作などがある。
本学においては、学生たちに木育の理念・概念を学ばせることを通して、将来の実践者を育てることが
求められている。この事業では、林業を地場産業とし、地域住民(産官民)が連携して木育実践に先駆的に取
り組んできた西興部村での研修を通して、木育実践を構想することができる教師の力量形成を目的とした。
(2)方
法
担当教員からは、①「木育」を実践する教師になるために必要な学習を取り入れること、②森の美術館・
木夢の視察・体験を中心とすることを提示し、その他プランニングや進行は学生全体で取り組むことを確
認した。
1)視察研修プランの作成
リーダーを中心にこの事業のプランニングをさせ、全体で検討した。教員からは、①個々のプロ
グラムの「ねらい」を明確にすること、②振り返りをして考察することなどを助言した。
2)「木育」の経緯と具体的な実践についての調査し、全体学習会
参加者を 2 つのグループ分け、それぞれが文献等を使って調査した。視察直前に全体での学習
会を行い、発表・討議を行った。教員が補足説明を行い、研修への動機づけを高めた。
3)森の美術館・木夢での体験活動(玩具・遊具体験、木工制作)
自ら玩具・遊具で遊び、その素材・機能の魅力を感じるとともに、発達的効果の考察を行った。
また遊んでいる児童の様子を観察し、インタビューを行って「子どもの視点」を学んだ。
4)学習の振り返りと課題の明確化
27
1 日目終了時、2 日目終了時、そして大学帰着後、それぞれグループおよび全体での振り返りの
時間を設け、個々の気づきを「全体での学び合い」につながるよう配慮した。
(3)結
果
1)1 日目
西興部村到着後、森の美術館・木夢の視察を行った。
① おもちゃに直接ふれることをとおして、素材・
機能(動きや音)等の魅力を考察すること。
② 子どもが遊んでいる様子を観察すること。
写真は、地元の小学生と一緒に遊んでいる場面である。
2) 1 日目・夕方
西興部村中央公民館の一室をお借りし、一日の振り返
りと翌日の研修内容の確認を行った。
① 木の玩具・遊具ならではの意義・魅力はなにか。
② 子どもにとって「森の美術館」の意義はなにか。
写真は、グループでの話し合いの様子。
3)2 日目
午前(写真・左)
西興部小学校視察。
午後(写真・右)
木のおもちゃ制作。
(4)学生教育における効果
以下、学生のレポートの一部抜粋である。
「木」という素材にこだわる意味について自分なりに考えてみると、次のようなことが考えられた。一
つ目は、リラックス効果があり心が落ち着くということ。木を見ていたり、木に触れることで非常に心が
落ち着き、ゆったりとした気持ちで館内にいることができた。また木がぶつかったときの音も、人工物の
高音とは違い、聞いても嫌にならずに遊べた。(略)二つ目は、木のおもちゃであそぶことにより遊びの創造
性が高まると考えた。自分の手や力で動かさなければならないおもちゃばかりで、おもちゃの使用方法が
多様にあることがわかった。木でつくられてあるものを使ってどのようにして遊ぶのかというところに、
子どもの遊びの広がりが生まれてくると考える。
木の玩具・遊具に直接ふれ、またそこで遊んでいる子どもたちの姿を観察した結果、木の素材(教材)とし
ての魅力に気づき、その発達的効果についても考察できた。木育の実践を構想するにあたって、
「自然志向」
などといった説明で終わらせることなく、「木が持つ積極的意味」に気づくことができた事業であった。
一方、当初の目的のひとつであった、木育を通して進められる「地場産業や地域住民(産官民)との連携」
については学ぶ機会が少なく、今後の課題として残った。
28
1.2.3. 地域と連携した健康教室
1.2.3.1. 地域住民との相互協力型健康教室の実施
○北澤
一利(釧路校准教授)・平岡
亮(釧路校講師)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年 4 月~平成 21 年月
実施場所
北海道教育大学釧路校体育館
(1)背景と目的
本事業の目的は、学生が地域住民と相互に協力しながら一つの事業として住民対象の健康教室をやり遂
げることである。この事業を通じて、学生は、地域社会の福祉、安全、環境保全や美化活動の一端を担う
一人の地域住民であることの自覚を持ち、他の地域住民との交流、日常生活の協働作業を経験しながら、
コミュニケーションスキルを学び、誇りを高めていくことができる。これは、学生が社会人としての基本
的こころがまえを身につけることだけでなく、持続可能な地域福祉の実現に貢献すると考えられる。
① 現代 GP 選定プログラム「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス」において、これまでの実
践活動の完成モデルの一つとして、学生と地域住民、および NPO が協力して高齢者を対象とした
地域福祉ボランティア活動「ふまねっと健康教室」を実施する。
② この活動を通じて、学生を「地域の課題に取組み、地域と連携することができる人材」として育成
し、本現代 GP の最終目標を実現する。
(2)方
法
この健康教室は、北海道教育大学釧路校で新たに開発された「ふまねっと運動」というユニークな運動
プログラムを中心に企画運営されている。ふまねっと運動とは、50 センチ四方の大きなあみを床に敷き、
このあみをふまないように歩く運動である。学生はもちろん、歩行機能が低下した高齢者や障がい者も等
しく参加することができる、1 回 200 歩程度のわずかな歩行運動である。
この健康教室の企画、運営をするにあたり、
「地域健康教育コーディネート」という授業の中で、このふ
まねっと運動の体験実習、指導技術の習得、模擬教室の実施、ふまねっと指導資格であるふまねっとサポ
ーター養成講習会の受講を行った。このふまねっと運動の講習は、NPO 法人地域健康づくり支援会ワンツ
ースリーが主催するものであり、本事業は、この NPO 法人と連携して、学生の教育に取り組んだ。
(3)結
果
① 毎月2回(年間合計 24 回)、平均 60 名の地域住民対象の健康教室を、地域住民と学生が協力しながら、
ボランティア活動として行った。
② 本学が開発した新しい運動プログラムふまねっとを行った。
③ 学生達は、運営と運動指導を担当し、グループリーダーとして、担当グループの指導と交流のために
準備と企画を行った。
④ NPO 法人地域健康づくり支援会ワンツースリーとの連携により、地域住民との相互連携活動が実施で
きた。
⑤ 健康教室の参加者は、50 人から 70 人に達した。参加する方々の感想は、たいへん好評であった。
29
(4)本事業に参加した地域住民と学生の意識調査アンケート
本事業に参加した学生と地域住民が、ふまねっと運動を通じた地域福祉活動にどのような意義を感じて
いるのかを知ることは、今後のこの事業の可能性を知るために重要である。以下に、今回の事業を通じて
行った意識調査の結果をまとめる。
ⅰ)調査対象:地域住民ふまねっとサポーター(男性 2 名、女性 11 名)
平均年齢
66.8 歳
ⅱ)調査方法:直接配布し、その場で回収した。
サポーターになったきっかけ
勧誘されたから
多くの人と交流したいから
知人に誘われたから
人の役に立ちたいから
生きがいを作りたかったから
自分を豊かにしたいから
他のサポーターを見てやりたくなったから
指導の技術が身に付くから
指導者としての経験を生かしたかった
0%
とても思う
図1
少し思う
どちらとも言えない
20%
40%
60%
あまり思わない
80%
100%
まったく思わない
サポーターになったきっかけについて
サポーターになったきっかけについて、
「勧誘されたから」
「多くの人と交流したいから」
「生きがいを作
りたかったから」「自分を豊かにしたいから」に肯定的回答をつけた人が約 6 割であった。
30
サポーターとしてどういうときに嬉しいか
参加者に感謝の言葉をもらった時
仲間と協力して何かを達成できたとき
活動成果が参加者に現れたとき
地域の人に賞賛されたとき
運営側に感謝の言葉をもらったとき
生きがいだと感じたとき
やりがいがある活動と実感できたとき
0%
とても思う
あまり思わない
図2
20%
40%
少し思う
まったく思わない
60%
80%
100%
どちらとも言えない
無回答
サポーターとしてどういうときに嬉しいと感じるか
サポーターとしてどういうときに嬉しいと思うかについては、「参加者に感謝の言葉をもらったとき」
「仲間と協力して何かを達成できたとき」「活動成果が参加者に現れたとき」「生きがいだと感じたとき」
「やりがいがある活動と実感できたとき」において肯定的回答の割合が 6 割~8 割を占めている。
31
サポーターをどのくらい続ける予定ですか
健康なかぎり
未定
仲間がいるかぎり
1年以上
半年くらい
1年くらい
0%
とても思う
あまり思わない
図3
20%
40%
60%
少し思う
まったく思わない
80%
100%
どちらとも言えない
無回答
サポーターをどのくらい続ける予定か
サポーター活動をどのくらい続ける予定か尋ねたところ、
「健康な限り続ける」において肯定的回答の割
合が 6 割を占めた。また、「仲間がいる限り続ける」においては肯定的回答の割合が約 4 割であった。
(5)学生教育における効果
学生達には、地域住民との連携活動を通じて、誇りが高まり、自信がつき、コミュニケーションスキル
や社会性が身についたと感じられる。
ふまねっとサポーターとして、地域住民を対象にふまねっと運動の指導を
している学生。高齢者を対象とした健康づくりは、安全とわかりやすさが
求められる。大きな声で、堂々と、指導している様子がわかる。
32
高齢者を前に、緊張をほぐすためのアイスブレーキングをしている学生。高
齢者の参加者は、和やかなムードで健康教室に参加することができる。この
ような技術も、社会的スキルと考えられる。今日の学生にとって、貴重な経
験の一つである。
参加者に、ステップを説明している学生。とまどっている高齢者に、親切に
わかりやすく指導する。その結果、高齢者ができるようになることと、ほめ
られることで、学生自身の誇りが育ち、背筋が伸びて、堂々とした自信を獲
得することができる。
33
1.2.3.2. 地域NPOと連携した健康教室
○北澤
一利(釧路校准教授)・平岡
松崎
亮(釧路校講師)
瑞穂(釧路校非常勤講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 10 月 8 日~平成 21 年 12 月 16 日
実施場所
北海道教育大学釧路校体育館
(1)背景と目的
インターンシップ系学生教育実践活動を促進するため、人と人のコミュニケーションを活性化する効果
のある「ふまねっと運動」を使用した地域住民対象の健康教室を学生が主体となって企画し、地域 NPO
と連携しながら運営した。
持続可能な福祉社会に向けて地域の人材養成に取り組んでいる、NPO 法人地域健康づくり支援会ワンツ
ースリーと連携し「地域住民を対象とした健康教室」を実施し、これに学生を参加させて必要な講義と技
術指導を受講させることによって、地域住民対象の健康づくり活動を自主的に企画、運営する実践力を養
う。また、この活動を通じて、地域社会の中で福祉活動に積極的に取り組んでいく知識と技術、資質と指
導力、コミュニケーションスキルを習得する。
(2)方
法
平成 20 年度に行った地域住民対象の健康教室事業により、学生と NPO 法人地域健康づくり支援会ワン
ツースリーとの間には、信頼関係が構築された。この相互の信頼関係をもとに、本年度はふまねっと運動
の効果を研究するためのデータ収集を行いながら、健康教室を実施した。また、ふまねっと運動の指導者
である「ふまねっとサポーター」の養成講習会も実施した。
学生と NPO 法人地域健康づくり支援会ワンツースリーは、毎週定期的に打合せを行い、研究方法や、
ふまねっと運動の指導スキルの研修を行った。この研修を通じて、学生の社会的スキルの向上や打合せの
進め方、準備、記録の保管などの基本的な習慣も身についた。
(3)結
果
① 毎週 1 回(合計 18 回)、地域住民対象の健康教室を、NPO と学生が協力しながら、ボランティア活動と
して行った。
② 本学が開発した新しい運動プログラムふまねっとを行った。
③ 学生達は、運営と運動指導を担当し、グループリーダーとして、担当グループの指導と交流のために
準備と企画を行った。
④ 活動はビデオで収録し、参加者のインタビューも行った。
(4)学生教育における効果
NPO 法人との連携活動やふまねっと運動を通じて、学生達が行ったボランティア活動の評価は次のよう
な結果となった。
「この授業は将来役に立つと思う」という質問に対し、ほぼ 100%の学生が肯定的に回答
している。また、「地域教育の重要性について理解できた」という回答も 95%に上っている。本事業の結
34
果は、GP 事業の成果を高く意義づけることと考えられる。
⑨この授業は将来役に立つと思う
⑩地域教育の重要性についてよく理解できた
④教員は授業のテーマに関する事項を熟知している
⑦教員は質問の受付等で学生の授業参加を促している
⑤教員の説明はわかりやすい
⑧教員は学生の質問に適切に対応、回答している
⑥資料配布、野外観察用具等の使用は効果的である
⑪地域教育分野で取り組みたい課題を見つけることができた
①この授業は体系的でよくまとまっている
③授業のレベルが低すぎる
②授業のレベルが高すぎる
0%
5:そのとおり
4:ほぼそのとおり
10%
20%
3:どちらでもない
30%
40%
50%
2:あまりそうではない
60%
70%
80%
90%
100%
1:そうではない
色々な角度から地域と触れ合えることができるのだなあと思い知らされた授業でした。「よし!地域
1
の人々と触れ合うぞ!」と思っていても簡単に、すぐにはできないと思います。少しずつ少しずつ活
動していくことが大切なのだと思いました。
地域と触れ合うということは「人とのコミュニケーション」というところでしか考えていなかった。
人とコミュニケーションをとるということを高めるものだと思っていた。でも、人とのコミュニケー
2
ションだけでなく、地域の人、地域に自分からかかわることで「地域を活性化させる!!」というこ
とにとっても感心しました。例えば、子どもたちを良く育てるというのは、学校の先生の仕事だけで
なく、地域を活性化させることで、地域全体で子どもたちを育てていく、守っていくということもで
きるんだなと思いました。
地域にこちらから飛び出していくことの大切さはよく授業で聞いていたが、その方法については、よ
3
くわかっていなかったため、今回様々な分野の方法を知り、やり方はなんでも良いのだと分かった。
また、人と人とのつながりはとても大切なものだと改めて感じた。
5
6
地域は広くて、それとの係わり方は人の数だけあると思った。それぞれの先生が提供してくれた体験
や知識は密度が濃かったです。
地域と触れ合うことは、自分から地域に向けて働きかけることだなぁと思った。また、この授業で「思
った」「感じた」だけではいけない。これから実際に自分で動いていきたい。
私はこの教科の中で地域と人との関わり合いがどれほど重要で私たち人間にとって必要不可欠なも
のということが分かりました。まず、私は「ふまねっと」に感動を覚えました。2回目の授業の時に
7
車いすのお年寄りがたった1週間であれほど動けるようになるとは。「ふまねっと」には医学的効果
があると教わりましたが、それだけではないように思います。あの車いすのお年寄りがあそこまで回
復したのは、周りの人の温かい声援、まさに人と人との関わりの中であったからこそ、頑張ることが
でき、回復にまで影響することができたのだと思います。「人ひとりの力は弱くとも、集まれば奇跡
35
だって起こせる」まさに、地域の触れ合いとはそういうものだと思いました。
地域にこちらから働きかけることでこちら側、向こう側の両方に利益が生まれる。これは、すぐには
8
効果がでなく、大変なことだが、担当教員が実際にそれを乗り越えて利益を生み出していることを聞
き、あきらめずに取り組めば成果がでるのだと分かった。
本気になれば自分が変わる。じぶんが変われば世界が変わる。自分からアクションを起こすことの重
9
要性、年齢や立場というものの違いが地域活動を行う上で大きな問題になると私は感じました。(親
として、指導者として)
10
自分が地域に働きかければ、地域が変わるということ。人との触れ合いには様々な方法があるという
こと。
「地域」というものについてずっと曖昧な知識しか持っていなかったのですが、この地域文化と触れ
合うを受けることで、理解することができた。今後、興味のあることで、半年前くらいの「地域を読
11
む」の授業で、平岡先生と話をした「子どもの遊び場づくり」をやりたいと思った。安全性や材料費
はかかるが、遊び場が少なくなってきた子どもたちや交流を求めるお年寄りのために、公園的なもの
があったら良いと思った。直接我々が地域の人と関わるだけでなく、場所を提供するのもありだと思
う。
地域の方々と触れ合うことに関して、自ら働きかけることで、新しいものがどんどん生まれていくと
12
いう可能性にすごく感銘を受けた。現代はあまり関わり合いの薄い状況が多いが、私自身は積極的に
地域活動に関わってみたいなと感じた。
13
直接地域の人と関わることはなかったが、どんなことをすれば地域とうまく関わっていけるかという
ことが分かった。
学校教育、社会教育、家庭教育とが、三位一体となって教育活動に取り組んでいかなければならない
14
と思った。自ら(私の場合、教員として)働きかけることによって、その地域づくり、まちづくりが
できれば良いと思っている。その媒体は何でも良いと思うが、私としてはスポーツであったり、高齢
者からの授業(沖縄でいうところの、戦争や文化の話など)ができれば良いと考えている。
地域分野の先生が全員で講義を分担しながらやっていたので、多くの視点から「地域」というものが
15
考えることができた。また、違う年代に方々と経れ合うことで、自分自身についてもわかってくるの
ではないかと思う。
地域との関わり方がたくさんあることを知った。本講義では4人の先生ごとに分かれて、様々な地域
16
との関わりを見れた。それぞれに特色があって講義を受けている方もとても楽しく、為になったと思
う。また、この講義で身に付けたことを、教師になってどう生かしていくかを考えていきたい。
17
18
地域とつながることで色んな人と出会い関わることができるので、地域との関わりは大切だと思っ
た。積極的に行動を起こさなければならないと思った。
地域と関わるというところは、4人の先生みんな同じだけど、その関わり方はそれぞれ違うと思った。
バザーが面白そうだと思った。
地域とのつながりの大切さを感じることができた。それぞれ4人の先生の地域教育のあり様や地域と
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の関わり方を違う視点から見ることができ、人とつながることに大きな価値を見つけられた。学生も
36
地域の一員として支え合い協力していくべきであると感じた。
地域住民との関わり合いの大切さを学ぶことができた。また、私たちの地域との関わりの少なさも実
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感した。こちらからの働きかけに、多くの地域の人々は答えてくれると思うので、私たちがもっと積
極的になることで、地域との距離に大きな変化がうまれてくるのではないかと思った。
地域には様々な活動があって、その中において「信頼関係」というものがとても重要で欠かせないも
21
のであるということに気づいた。地域活動は人間の生活にも大きくつながっていくものであると思っ
た。
22
ふまねっとが意外に難しくて驚いた。最初はよく授業内容がわからなかったけど、最終的には地域教
育の大切さに気づけた。
4人の先生方によって、この講義が成り立っていたので、広く知識を吸収することができた。その中
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で、自分はこういうのに興味を持っているのだといった発見が生まれたり、どう地域と関わっていく
のかのヒントが得られた。今回、子どもとお年寄りといった2つの年齢層について知れたが、私たち
の年齢層を対象とした地域活動があったら、知りたかった。
野外教育の様々な可能性や、先生がどんなことに取り組んでいるのか知ることができて良い学びにな
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ったと思う。高校の授業のような授業の日があったのは嫌だったし、今回の振り返りの仕方は当たら
ない人は振り返ることがないだろうなと思いました。実践する機会が多く、とても楽しい授業でした。
地域の人たちとのコミュニケーションは、やはり大切なんだと改めて気づくことができた。また、体
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験することもできて、たくさんの友達とコミュニケーションをとることができて良かった。地域の
人々の中が深まると、地域の活性化ができるようになるのがわかった気がする。
26
27
私は地域文化と触れ合うを受けて、来年からの活動として「自然にどの世代も集まれる空間をつくる」
ことに取り組みたいと思う。
色々な体験学習うをすることができて良かった。
特にこの授業で印象に残っているのは北澤先生の「ふまねっと」の授業です。最初はとっても失礼だ
とは思うんですけど、10代20代の若者にはちょっと物足りない運動かなと思いました。でも、車
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いすのおばあちゃんが最初はねっとを踏みまくっていたのに、だんだんうまくなってちゃんとふまね
っとになっていたビデオを見て感動しました。あのおばあちゃんにとってはあの一歩一歩が本当に重
要なものだったのだと思いました。この授業を通して地域と関わること、地域に生きること、地域に
呼び掛けていく大事さを知りました。
29
30
様々な分野の先生がおり、どのように地域とのかかわりがあるか、多くのことを学べたと思う。自分
の特性をよく理解し、自分に何ができるのかそこを生かした地域とのかかわりを考えたい。
4人の先生方が行った授業はそれぞれ関わる相手は違っていたけど、全て含めて地域なのだと、それ
ぞれがお互いに協力し合うことで地域社会が成り立つのだということに改めて気づかされた。
自分は今まで地域の人々との関わりの重要性を感じたことがなかったが、今回の授業を通して自分の
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身近なことだと強く感じました。例えば歩道の雪かきや氷を割ってくれている人がいたり、「すべる
から気をつけてね」と声をかけてくれる人たちがいることに気づき、自分の知らないところで地域の
方々の力をたくさん借りているんだということを知りました。
4人の先生方が行った授業はどれも違ったが、どれにおいても相手が楽しめる活動を作り上げるまで
32
の過程が大変だと感じた。しかし、これらの講義を受けて、地域住民、子どもたちに対する接し方や
イメージが変わってきたように思う。特に平岡先生の実習的活動では子どもたちへの教え方等、意識
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転換ができたし、何より自分がまず楽しむ、ということが大切だと感じた。
現代は自分が住んでいる地域の方と交流がなかたりする人が多いと聞いたので、自分から進んで交流
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しようと思った。スポーツ少年団やふまねっとなど以外にも挨拶など、自分のできるところから始め
ていこうと思った。無縁社会をつくらないようにしていきたい。
4人の先生方のよる、それぞれの地域という場の活かし方を学べた。自分からアクションを起こして
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いかなければ、何も始まらないと思ったので、例えば地域のお祭りに参加したり、日常のちょっとし
た場面で挨拶をしたり会話をしたりすることが大切だと思った。人とのつながりを大切にしたいと思
ったし、釧路という場所はそのようなコミュニティー作りに適している場だと思った。
35
地域の人々、保護者、学校のつながりがいかに大切か理解できた。主体的にこちらから歩み寄ること
が大切なんだなぁと思った。
この授業は実際に行われている活動が身近にあり、それらのことを VTR や自ら体験できたことが良か
36
ったと思います。頭の中で整理しやすかったです。人と人とのつながりというものが誰もが死ぬまで
実感できる社会でなければならないと感じました。また、改めて人の笑顔っていいもんだなと思えま
した。お腹の底から声を出して笑える活動をできたら、とっても素敵だなと思います。
最初、地域教育は学校外で行う、子どもへの教育のことだと思っていたが、くるかいやふまねっとの
37
ようにさまざまな年齢の人たちと関わることは難しいと考えていたが、自分から行動することができ
れば、交流することは可能だと思う。昨年、バザーの手伝いをしたが、PTA の人や地域住民の人々と
関わることができなかった。積極的に自分から関わることが大切だと気付いた。
多くの地域との関わり方を学んだ。それぞれ、たくさんのやり方があって、とても良いと思った。
38
39
4名の教授それぞれの地域との関わり方を学ぶことができた。私は野外教育をやってみたいと思って
いるので実践してみたい。
この講義を通して、今まで漠然としていた地域というものが具体的にどのようなものかわかった気が
する。大切なのは、勇気を持って自分から働きかけることだと感じた。自分は教師になったときには、
40
学校と地域とのちながりを大事にして、文化交流をさせたいと思う。その時は自分から働きかけるの
であるが、こちらが学ぶだけではなく、参加してくれた、地域住民にも良い学びの場にできればいい
と思う。
41
42
地域との関わりがとても大切だということに改めて気づくことができた。今後、自分が地域にどう関
わっていきたいかということも見出すことができたような気がする。
積極的に授業に取り組めた。体を動かしたり、映像を見たり、そこで感じたことを発表する場があっ
たので、積極的に取り組めたのだと思う。
正直、寝てしまうこともありましたが、「地域教育」の中の様々な視野が一気に開けたので、自分か
43
らもっと地域に関わる活動をしたいと思ったし、私は野外教育だけやりたいなと思っていましたが、
他の方向にも目を向けてみようと思いました。
授業には毎回参加することができ、楽しく体験することができた。体験の時、たくさんの友達と話す
44
こともできて、コミュニケーションがとれて良かったと思った。この講義を受けて、地域の人たちと
の関わりの大切さに改めて気づくことができたので、今後自ら多くの人たちと関わっていこうと思っ
た。
38
45
自分の考えはちゃんと周りに発信することができたと思う。また、体育館を用いた活動では楽しみな
がら学ぶことができたと思う。
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一欠もしなかった。体験を通して地域活動について知ることができた。
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自分なりに地域文化について理解することができました。
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授業に参加している中で、積極的な発言をしたり、働きかけができたと思う。
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よりよい地域社会を作っていくためには、自分から働きかけることが大事だということを知り、人と
積極的に関わることが苦手な私は、まだまだ努力が足りないということを実感した。
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話を聞くだけでなく、実際に体を動かして体験できるところは積極的に参加できました。
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どの講義においても、どんな学び、活動があるのか探ろうと試みることができていたと思う。
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ふまねっとが一番面白かった。ふまねっとは交流の一契機になるだけじゃなく、医学的な効果もある
のですばらしいと思う。サッカーや落語など楽しく授業ができたと思う。
体験を通して自分が考える庫尾ができた。地域という場がこれからひととのつながりの場であり、育
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ち合う場となるために、自らアクションを起こしたい。今の社会が無縁社会といわれているが、普段
の会話や挨拶だけでもそれは解消することができるだろうし、行動を起こすことが何より大切だと思
った。
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自分の考えを持って授業にのぞむことができた。地域とのつながりの重要性を理解できた。この授業
を受けてから近所の人に挨拶するように心がけるようになった。
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積極的に参加できたと思います。
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実際に体験したり、VTR を見たり、授業で色んな知識を得れた。
先生たちの講義を聞いて、色んな事を感じた。実際に、自分もやってみたいなと思ったけど、自分に
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もできるのかなと不安に思った。先生方の話を聞いて、自分だったらなにがしたいか、など考えなが
ら授業を受けれたので良かったと思う。
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考える場面の時はできるだけ頭を回転させ、自分の意見が一つでも発表できるように取り組んでい
た。しっかり取り組めたと思う。
先生からの問いかけに対して、自分なりの考えを言うことができたと思う。しかし、先生からのアプ
ローチに答えただけで、自分からのアプローチができなかった。
討論などにはあまり積極的に参加することができなかったが、自分がどう取り組んでみたいか、どの
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ような取組が、より良い関わり合いを実現できるのだろうかということを考えながら取り組むことが
できた。
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1.2.4. 教育行政と連携した児童の放課後支援:
「放課後タイム」の企画と実践
○諫山邦子(釧路校准教授)・平岡
北澤
亮(釧路校講師)
一利(釧路校准教授)・添田 祥史(釧路校講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年5~7月(11 回)
平成 21 年8~11 月(7回)
実施場所
釧路市立 O 小学校
東北海道地区、僻地小規模校(A 小学校)
(1)背景と目的
教育行政が主導している「釧路市放課後チャレンジ教室」の一部分として学生が O 小学校で 11 回分の
企画運営を行い、児童理解・児童支援方法・遊びの指導技術について学習を深めたことが背景となってい
る。次に、放課後の実態をとらえるアンケート調査から僻地小規模校は都市部小学校に比べ、子ども同士
の多様な交流が少なく社会性が身につきにくいと予想されため、 企画者らは、外部からの刺激を投入して、
僻地小規模校に通う子ども達が安全に友達と遊べる環境づくりや習慣への援助を行い、他者を思いやり、
体験や感情の交流を行えるような社会性の育成をめざして、7 回の放課後支援事業を行った。
(2)方法および結果
1)O 小学校「釧路市チャレンジ教室」の1学期間にわたる企画・運営
僻地・小規模校での実践に先立ち、企画者らの児童理解・児童支援方法・遊びの指導技
術について学習を深めるために、釧路市教育委員会主催の「釧路市チャレンジ教室」の一
部の時間を対象として「社会性」ということは特に意識せず、児童が楽しめるような活動
計画・援助を行い、本実践に必要な支援の方法や技術について獲得をめざした。
また、全 11 回の活動の中で出席率の1番よい児童をピックアップして「社会性の変化」を調査した。調
査方法は、「他者とかかわる力」「他者へ配慮する力」の2つの内容のチェックリスト項目を各 3 つ、計 6
項目のポジティブリスト(「~できた」という項目を立て、達成できた回数をチェックしていく)を設定し、
どのような変化が見られるかの調査をした。これと並行して、その児童に「社会性アンケート」を初回と
最終回に行い、主観的な社会性の変化を調査した。結果としては、ほとんどの項目に変化は見られず、主
観的な回答でも変化をとらえることはできなかった。
これらの結果をもとに、本実践の準備に取り組んだ。
2)放課後の遊びアンケートについて
酪農地域の小学校で本実践を行うため、東北海道の酪農地域の僻地小規模校 19 校の児童(371 名)およ
び、比較のために都市部の小学校 2 校の児童(330 名)へ放課後の実態調査を行った。
僻地・小規模校では、放課後は、
「外で遊ぶ」と回答した児童と「家の中で遊ぶ」と回答した児童がとも
に、全体の3分の1前後で、都市部での調査結果とほぼ同じであった。
「家の手伝い」を行う児童は全体の
1割にも満たないが、都市部の小学校と比較すると都市部の約3倍の児童が「家の手伝い」を行っていた。
放課後の遊ぶ人数は「1人で遊ぶ」と回答した児童は全体の3分の1、
「2,3人で遊ぶ」と回答した児童
40
は全体の約半分程度で、都市部よりも「1人で遊ぶ」児童が多いことが判った。遊ぶ相手は「同じ年」
「年
上」
「年下」の3つの回答がほぼ同数だが、都市部の「同じ年の人」の回答が7割以上になったことから考
えると、
「年上」
「年下」の割合は大きい。
「家族」と回答した児童は全体の4分の1割程度で、都市部と比
較すると約2倍になる。
以上の結果から、僻地学校に通う児童は、外で安全に遊ぶ環境が整っていなくても外で遊ぶことは多々
あるが、地理的要因から都市部に比べ、1人で遊ばざるを得ない状況にあるのではないかと推察される。
また、地域の中心産業の関係から「家の手伝い」で放課後を終える児童も少なくないのではないかと考え
る。つまり、僻地学校に通う児童には、多くの人とふれあえ、且つ外でも安全に遊べる環境づくりが必要
であると考えられた。
3)A小学校「放課後タイム」の全 7 回の企画・運営と調査
以下の2つのことを行った。
①社会性を養うことを意識した活動指導・支援とその観察。
②児童の社会性の変化が見られたかの調査。
①社会性を意識した活動指導・支援と観察
児童と本学の学生数名とで活動し、会話、ボディータッチなどのコミュニケーション、話し合いや互い
のことを考えながら行うような内容で児童の「社会性」の涵養を図る。全 7 回。
第 1 回×月 26 日(水)13:10~16:00 参加者 6 名、学生スタッフ 2 名
活動説明
→
→
社会性アンケート
合わせてドン
→
→
名札作り
→
私は誰でしょうゲーム
→
新聞じゃんけん
振り返りシート
・とりあえずコミュニケーションはとれた。最初は子どもも企画者も緊張していたが、少しずつ活動に慣
れ、最後は普通に楽しく活動ができた。
・全体的にチェックリストは高得点である。以後は、どのように伸ばして、社会性を身につけるかを考え
る必要があると感じた。
第2回△月 2 日(水)14:15~16:00 参加者 6 名、学生スタッ 1 名
活動説明
→
○○(芸人の名前)さんが転んだ
を合わせて立ってみよう
→
→
リーダーあて
→
色々な順番で並ぼう
→
力
振り返りシート
・休み時間も含めて子どもを観察した方が、色々なことが見えてくる。
・チェックリストで、今回子どもの行動の変化はあまりみられない。
・BちゃんEちゃん姉妹が積極的に周りの皆を誘導。
第3回○月 9 日(水)13:00~16:00 参加者 6(11)名、学生スタッフ 3 名
活動説明
→
6 年生も参加)
押し相撲
→
→
グリコ
心で握手
→
→
ジャンケン列車
→
花いちもんめ
→
しっぽとり(5,
振り返りシート
・「ジャンケン列車」は楽しいだけ。社会性は身につかないと考えらる。
・「自分のやりたいこと」だけをやるのは、違うということを判ってほしい。
・企画者AとEちゃんとのかかわりが薄い。次は気をつけて関わりたい。
・Bさんは自分の気持ちを優先することは少なく、
「お姉さんになろう」という気持ちが強く自分のやりた
41
いことができていないのではと感じた。
・Aさんが勇気を出して他の子に話しかけて遊ぼうとするが、断られ、大学生の方ばかりに行った。
第4回□月 16 日(水)14:30~16:00 参加 4 名、学生スタッフ 1 名
活動説明
→
風車づくり
→
屋外で風車遊び
→
振り返りシート
・Dさんが以前、
「名札づくり」や「私は誰でしょうゲーム」の時には描く絵について悩んでいたが、今回
はスムーズに制作に入ることができた。話(説明やこれからの動き)を
聞いていないのが目立った。
・Aさんが話し出すと止まらない。今後しっかりと人の話を聞く態勢にしたい。
・全体的に集中して取り組み、自分で考えて行動する姿が見られた。
第5回×月 30 日(水)13:30~16:00 参加者 5 名、学生スタッフ 4 名
活動説明
→
ジェンカ
→
ボール入れ
→
パズル合わせ
→
大根抜き
→
輪っか通し
→
振り返りシート
・Aさんは自分の意見をしっかり言っていた。
・Cさんが、落ち着きがない。
・Dさんは 3 人の学生スタッフが初対面だったためか初めは緊張し、後半はなじんでいるようだ。
・Eさんはパズル合わせからの参加だったため、最初はうまく入れていない感じがした。時間がたてば、
どの人ともなじんでいた。
・Bさんが「痛いこと」
「乱暴な言葉」が嫌いだということが分かってきた。他の子よりも注意して未然に
防止すること。
・休憩時間は特定の子と遊ぶことが多い。
第6回△月 4 日(水)14:10~16:00 参加者 6 名、学生スタッフ 3 名
活動説明
→
ドッジボール当て
→
宝探し
→
振り返りシート
・全体的に「社会性」が身についてきていると思われる。
「関わり」に関しては、以前より
だいぶ良くな
っていると思われる。
・Eさんは「宝探し」のみの参加であったが、1年生の面倒を良く見て、周りと協力して遊んでいた。
・Aさんは「ドッジボール当て」でも「宝探し」でも発言していた。他者の意見も受け入れることができ
ていた。
・Dさんは、活動を通して、以前より慣れる時間が短くなったようだ。
第7回□月 11 日(水)14:40~16:00 参加者 6 名、学生スタッフ 3 名
活動説明
→
社会性アンケート
→
紙作り
→
振り返りシート
・Dさんが初めて参加した大学生に挨拶ができていた。目を見て挨拶できるようになった。
・Cさんも楽しそうだった。初めて参加した大学生とも積極的にコミュニケーションをとっていた。
・Bさんがいつもより生き生きと活動していた。
・Aさんは自分から関わっていく力がついたと思う。
・担任の先生から、各児童の変化についてアドバイスを頂いた。企画者らの支援は子ども達の社会性の育
成には手助けになったよう。でも、風車などのものづくりは少人数でもできるので、他の活動を配置す
べきだったといわれ、反省。
42
② 児童の社会性が変化が見られたかの調査
企画者の1人がチェックリストでそれぞれの児童の社会性の変化について観察する。チェックリスト
はネガティブリスト(「~できない」
「~していない」などの項目をたてて、該当する行為を児童がとっ
た回数をチェックしていく方法)で行う。また、初回と最終回に社会性に関するアンケートを実施し、
児童自ら、主観的にみた社会性の変化をみる。以上2つの調査と活動の様子の観察を踏まえて児童一人
一人の社会性の変化について考察をおこなった。
・××さんは、説明が多い活動内容は、話を聞けていない場面も見られるが、徐々に集中して聞けるよう
になる。また、初対面の人に対しても自分から積極的に話しかけられるようになってきた。
・○□さんは、開始当初からチェックリスト項目に関しては、ほぼ達成することができていた。しかし、
それ以上の変化は見られなかった。活動を通して、特に友達と感情を共有したいと強く思うようになっ
た。
・△×さんは、回を重ねるごとに積極的に初対面のひとと関わるようになった。人の話を聞くことについ
ては話を聞いていない場面が目立っていたが、徐々に集中して聞くことができるようになった。
「社会性
に対する向上心」は高くなった。
・○△さんは、恥ずかしいという気持ちから、積極的に人と関わったりすることはなかったが、徐々に初
対面の人と関わることに慣れ、
「社会性」が身についてきたと思われる。活動を通して、特に友達と感情
を共有したいと強く思うように変化した。
(3)活動の成果および学生教育上の効果
放課後児童の活動支援について、釧路市内の小学校で教育委員会の支援のもとに、基礎的な力を学習
し、アンケートの結果を参考に、僻地小規模校の児童向け、とした、社会性を意識した活動内容の設定
をし、一定の支援を行うことができた。
理想としては他校の同年代の児童同士の関わりの中で、遊びのコーディネーターなどの専門家と地域
の住民が連携を図り、
「社会性の育成」が望めるようなプログラムで行うことだと考えるが、今回は、大
学生数名と児童数名との関わりの中で「社会性の育成」を試みた。
みんなで一つの活動に取り組む楽しさ、難しさを感じることが社会性の育成には必要であると思われ
た。活動内容も話し合いの場を多く設け、「他者とかかわる力」「他者を思いやる力」の育成につながっ
たと思われる、しかし個人的な「ものづくり」の活動は社会性の育成にはつながらなかった。さらに「社
会性」をはっきりと意識した活動・支援を行うと、よりよい支援ができたのではないかと考える。
この活動に取り組んだ学生にとっては、放課後も含めた児童の教育支援について考察を行い、実際の
教育現場の課題に取り組むことで教員としての資質が高められたと考えられる。
43
1.2.5. 地域の小学生を対象とした地域食材を活用した
食育プログラム(もぐもぐタイム)の開発
○諫山邦子(釧路校准教授)・平岡
北澤
亮(釧路校講師)
一利(釧路校准教授)・添田 祥史(釧路校講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年5~10 月(4回)
実施場所
釧路郡釧路町・達古武オートキャンプ場
厚岸郡厚岸町・ネイパル厚岸
(1)背景と目的
様々な「食」の万台の中にあると言われてい児童の「食」に対する関心を高めるために、身近な地元
の食材に注目して、春夏秋の地域素材を生かして入念な準備の元にプログラムを企画し、全 4 回の実際
に五感を使った活動を通して、児童自らが「食」に対して自分達ができることを考えるきっかけにする。
(2)方法と内容
1)5 月 17 日/草しんこ編
達古武オートキャンプ場。児童 27 名(6 班)、スタッフ 9 名。
先発隊がキャンプ場到着後、ヨモギを採り、各班ごとの見本を準備。子ども達はヨモギの特徴である「葉
の裏側に毛が生えて白いこと」、
「香りがあること」をそれぞれ目(視覚)、鼻(嗅覚)を使って知る。学習
したことをもとに、ヨモギをさがし、発見した際には、特徴を再確認し収穫。児童が自分で判断できない
場合は、近くにいるスタッフに尋ねた。採集活動を通して、子ども達は自分が食べる食材を収穫した。
調理をすることで、草しんこができるまでの工程を知り、自分の手で草しんこを作ることができるよう
にした。草しんこづくりでは班のリーダーを中心に作業が困難な低学年の子どもを高学年の子どもが手伝
い、子どもたち同士の「協力」「助け合い」「思いやり」が観察できた。
出来上がった班から、小雨のためロッジやセンター内で試食会を行った。
アンケートから
・ヨモギを摘むのが楽しかった。
・ヨモギ探しの班が面白かった。
・匂いや色は少ししかわからないけど、楽しかった。ヨモギを採って草しんこを作っ
てすごくみんなで協力して楽しかった。
・班のみんなで楽しめて嬉しかった。ヨモギ餅が美味しくてうれしかった。
・草しんこを作るのがすごく楽しかった。
・よもぎを採るのを頑張った。
・手にいっぱい餅とかがついて気持ちが悪かった。でも草しんこはとっても美味しかった。
・ヨモギにあまり興味がなかったけれど、ヨモギがたくさん採れたときは嬉しかった。
44
2)6月7日/搾乳体験編
弟子屈・渡辺牧場。児童 33 名(6 班)スタッフ 13 名。
バスの中では牛に関するクイズのレクリエーションを行った。牧場到着後、開会式で経営者からのあい
さつの後、搾乳体験を行う班と施設見学(牛の見学)を行う班に分かれ活動を開始した。牛に対して恐怖
感を持つ子どももいたが、無事に搾乳体験を終えた。
その後地域のコミュニティーセンターに移動し、班ごとに分かれ、アイスクリームとバター作りを同時
進行で行った。先にアイスクリームを試食。どの班もうまく固まっているようだった。大内牧場で学生が
補助をして作ったパンが届き、そのパンにバターを塗り試食会を行った。閉会式では農協会長からの挨拶
があり、予定の 15 時には牧場を出発し桜ケ丘小学校で解散した。
アンケートから
・楽しかったし、またしたい。
・牛を触る時怖かったけれど、搾った。
・アイスとバター作りを初めてやって楽しかった。
・アイスとバターが美味しかった。
・牛のお乳がとても温かく、ふわふわで気持ちよかった。
・牛がかわいかった。
・アイスやバターを振るのが疲れた。バターはいつも買って食べているバターよりも
美味しかった。
・牛からミルクがどうやって出るのかわかった。それに地域の人が親切にしてくれて
ありがたかった。
2)9月 27 日/サンマ料理編
ネイパル厚岸。児童 19 名(6 班)スタッフ7名
3回目のもぐもぐタイムで、約3カ月ぶりの活動ということを感じさせない、親しみのこもった元気な
様子で受付を済ませていた。今回はサンマを使った班内での調理中心の活動であったため、子どもたち同
士の協力とスタッフの補助が重要であったことから、活動を始める前から子ども達とスタッフとの距離が
近くなり、親しくなるようバスレクで打ち解けられるような企画を行った。
はじめてサンマを捌く子どもが多い中、企画者側が見せる三枚おろしを真剣に観察し、積極的に包丁を
握り調理に参加して行った。活動を通して子ども達はわずかな時間でも同じ目的に向かって、協力し合い、
やり遂げることで仲間意識を持つことができたのではないかと感じた。このことは、余暇時間に施設内で
遊ぶ子ども達が、学校や学年にとらわれず、参加スタッフと一緒に笑顔で走り回っていたことからも考え
られる。
アンケートから
・お魚を三枚に捌くのが難しかった。
・とても楽しかったし、食べたらおいしかった。
・サンマをどのように捌くのかわかりました。
・サンマを切るのが楽しかった。
45
・いつも作っていないサンマ料理を作って楽しかったです。また、家でも作ってみた
いと思いました。
・サンマを捌く時、最初はちょっといやだなーと思ったけどやってみたら楽しかった
です。
・お釜でご飯を炊くのが楽しかった。
・サンマの捌き方を1回目はうまくできなかったけど、2回目はうまくできた。
4)10 月4日/ジャム作り編
ネイパル厚岸。児童22名(6 班)スタッフ 12 名。
前回に引き続き、ネイパル厚岸でジャム作りをメインプログラムとして行った。ジャム作りはサンマ料
理作りの際と同様に、各班にレシピを1枚ずつ置いて作るように指示し、班内での活動を濃くするために、
あまり企画者らが口を出さないようにした。すると、初めてジャムを作りにも関わらず子ども達は企画者
らが予想していたよりも班内で団結して、班担当のスタッフの援助を得ながら、高学年中心に活動をして
いた。この嬉しい想定外の出来事により、予定では2時間を見ていたが、片付けを含め1時間半で終わっ
た。
このことは、これまでの4回の「もぐもぐタイム」の活動で子ども達が仲良くなった証であると感じた。
試食会で皆、自分達が作ったジャムを食べ、子ども達は「美味しい」
「家でもまた作りたい」と発言してお
り、企画者らがねらいとしていたことが達成できていたと考える。
バックタック作りの後半では、子ども達に「もぐもぐタイム」を振り返って、これから「食」に対して
自分で何ができるかの意思表明をバックタックに書いてもらった。子ども達は皆、自分と向き合って、何
ができるかを考えている姿を見ると、この「もぐもぐタイム」シリーズで子ども達は「食」についてこれ
までとは違った何かを感じてくれたのでなないかと思われた。
アンケートから
・ジャムがよく作れてよかった。
・ジャムがどうやってできるか判った。
・リンゴをみじん切りにしたのが楽しかった。
・パンを作ったのが楽しかった。
・野焼きパンをつくってジャムを塗って食べたのが楽しくて美味しかった。
・ぶどうを剥くのに疲れたけれど、その分美味しくできた。
バックタックの記述
「食に困らないようにする」「料理の手伝いをする」「食べ物を粗末にしない」「もっと料
理がんばります」「好き嫌いをしない」「食べ物を残さない」
「自分で料理を作りたい」「ば
ーちゃんと食事の用意をする」「たくさんの料理を作れるようにする」
「家に帰ってもパ
ンを作りたい」「料理の手伝いを毎日する」「牛乳を残さない」
(3)活動の成果および学生教育上の効果
生活が便利になる一方で私たちの生命を支える「食」を軽視している傾向がみられる。今こそ食の大切
さを再認識するときであると考える。本来は自然の中に食材があり、それを自分のからだを使って収穫・
加工という過程がある。子ども達がその過程を体験し、自然に対するありがたみを感じてほしいと考え、
46
食育基本法第3条に基づいて今回の企画を行った。
活動場所となる釧路の身近な食材として野・山・海を舞台とし、四季ごとの食材を検討した。その結果、
春は「草しんこ作り」、夏は「搾乳体験」、秋は「サンマ料理作り」、「ジャム作り」の年4回の活動を企画
した。この4回の活動をとおして、子ども達がこれからの食生活において「食」の大切さを再認識し、こ
れからの「食」に対して自分たちでできることを考えるきっかけとするために一連の実践を行った。
企画者らは子ども達の目的達成度を測るために「実践後の子ども達へのアンケート」「企画者らの観察」
「参加スタッフの感想」を用いた。さらにバックタック作りを通しての意思表明から、子ども達はこれか
らの食生活について考え直す兆しを見せたと判断されたため、「食」に対する関心が高まったと考える。
最後に、子ども達がそれぞれに感じた事を日常生活に還元して、これから食生活について少しでも行動
に移すきっかけになっていくのであれば成功であったと言えよう。また、子ども達が成長過程の中で、一
連の活動を思い起こし、自然への恩恵の念や「食」のありがたさ、
「食」に関わる人々への感謝の気持ちを
持って行動できる大人になってくれることを願っている。
もぐもぐタイム、草しんこ。
もぐもぐタイム、搾乳体験編。
同左。
もぐもぐタイム、さんま料理編。
47
1.3.
教科融合型クロス・インストラクション授業の展開
生方
秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成 19~21 年度
実施時期
10 月~3月
実施場所
釧路校
(1)背景と目的
現代の環境問題は複雑多岐にわたり、その問題状況の把握や原因の究明、解決の方向の模索、解決に向
けての参加と社会変革という、一連の問題解決の奥行きと広がりを考えるならば、特定の学問分野の枠内
で物事を考えたのでは、たちどころに行き詰るにちがいない。既存の人文・社会・自然の諸学問分野の壁
を取り払い、統合的・全体的・システム的な視点で、すなわちホリスティックに対象を捉え、解決の道を
模索するというスタンスが必要である。
また、学生が真に環境教育・ESD に取り組む人材へと成長するためには、対象を被観察物として眺める
のではなく、観察者である自分自身を、対象とその背景あるいは脈絡の中に放り込み、あたかも「るつぼ」
の中であがくような図式として、現在進行形の状況として認識することが求められる。環境教育・ESD の
場における教員と学生との関係は、これまでのように知識を高所から低所へと流し込むというものではな
く、両者が同じ現場に立ち、教員は学生の課題意識と問題解決への意欲をかきたて、関連する知識や物の
見方を必要な場面ごとに提供し、学生の主体的な取り組みを通した学びを支援するというものでなければ
ならない。
このような問題意識のもと、学生が主体的・問題解決的学びを通してホリスティックな環境観と、解決
にむけた意識を形成することをねらいとした授業プランを構築し、数名の教員の協力のもとでそれを実践
し、その新しい試みの効果を検証する機会をもった。
(2)方
法
1)授業の目的と概要
2006 年度の北海道教育大学の学部再編に際して、釧路校「地域教育開発専攻」のカリキュラムの中に、
学生の環境や環境問題についての認識を深めるための導入的授業科目の一つとして、
「環境リテラシー」が
置かれた。筆者は、
「環境リテラシー」の共同担当教員に原案を示して意見を聞きながら、この授業の授業
内容、授業方法を構築していった。具体的には、授業内容としては各教員の専門性を十分活用しながら、
全体にバランスをとり、環境問題全般を幅広く、また多面的な角度から扱うこと、授業方法の面では、学
生主体の問題追求・課題解決型の学習を大幅に採用するとともに、課題発表および討論の場面では2名の
教員が同時に参加して、異なる角度からのコメントおよび補充指導を行うことにした。
この授業科目は 2006 年度から毎年度後期に開講し、改善を繰り返しながら継続実施されている。シラ
バス(2009 年度)に掲載した授業の趣旨は以下のとおりである。
地域や世界規模の環境問題の解決に貢献できるような環境教育を進めていくためには、「環境とは何か」
「環境問題とは」「環境問題の原因」についての知識を整理し、構造化し、さらに「環境と人間との関係」
への深い考察を試みることが不可欠である。このような試みを行い、意思決定に生かしていく知的能力の
48
こと「環境リテラシー」と定義する。この講義を通して、学生が環境リテラシーを身につけ、それを自ら
磨き上げていくための方法に慣れることが期待される。前半の9回の授業で、
「持続可能な開発のための教
育(ESD)と環境教育」
「子どもと環境教育」
「地域の生態系」
「環境問題と人間活動」について教員が講義
を行なう。後半の5回では、提示された環境問題や環境教育にかかわる課題群の中から小グループ(2,
3人)の学生が選択した課題についての「ミニ・リサーチ」
(調査活動と自らの意見形成のための調査デー
タの分析検討を行なうこと)の成果を発表してもらい、全員でディスカッションを行い、個々の課題間の
結びつきや、問題解決のあり方、環境教育の役割等についての意見を交換する。その際、毎回2名の教員
が司会と指導および補足説明を行う。最終回には全体を通した総合討論を行い、教員がまとめを行なう。
毎週1回 90 分の講義または演習を 15 週連続で行い、専攻の1年生全員(定員 40 名)が受講する。週の
進行に応じた授業の展開は以下のように策定した。
また、2009 年度の授業計画は以下のとおりである(他の年度もほぼ同様)。
1)ガイダンス: 授業の目的、概要、課題提示、ミニリサーチの方法、課題の選択。(生方、大森)
2)講義:「ESD と環境教育(1)」(H.U.)
3)講義:「ESD と環境教育(2)」(H.U.)
4)講義:「地域の自然環境」(T.S.)
5)講義:「子どもと環境教育」(S.O.)
6)講義:「地域の生態系」(F.K.)
7)講義:「環境問題と人間活動(1)農業」
(N.T.)
8)講義:「環境問題と人間活動(2)工業」
(T.N.)
9)~14)「ミニ・リサーチ」発表およびディスカッション。2クラスに分け、各クラスに教員2名。
15)総合討論と全体のまとめ(H.U. および S.O.)
2)第1週
ガイダンス:授業の目的・概要を説明する。その後で、学生が取り組むテーマを例示する(テーマの例
を整理して列挙したプリント[表1]を配布)。学生に2~3人一組のグループを組ませ、グループごとに一
つずつ課題を選択または設定させる。各グループの設定テーマの実例(2009 年度のもの)を表 2 に掲げる。
学生は選択または設定した課題について、そのあとの8~12 週間をかけて調査活動と自分たちの意見形成
を行う。調査は、図書・文献・ウエブサイト資料が主であるが、意欲的なケースではインタビューやフィ
ールドワークも行われる。そのあと、グループ内で頭をつき合わせて、得られたデータの整理および分析・
考察を行なうことになる。学生のこの一連の調査活動を「ミニ・リサーチ」と呼ぶことにした。主担当教
員(筆者)は、第1週および第2週の授業時間の一部においてミニ・リサーチの基礎的方法を指導する。
第2週の授業時までに各グループにテーマを確定させる。
3)第2~8週
7週間にわたって、毎回1名の教員が講義を行なうオムニバス形式で実施する。主担当教員である筆者が
各教員の担当内容の大枠(下記)を提示して講義を依頼し、内容の詳細や授業の進め方は各教員の裁量に
委ねた。各教員には講義実施後、使用したプリントを主担当教員に提供するよう依頼した。以下に、2009
表1.学生がミニ・リサーチで取り組むテーマの例示(2009 年度)
大テーマ
小テーマ(トピック)の例示
物質と環境
大気汚染、水質汚濁、地球温暖化の機構、リサイクル、環境と情報、ゼロエミッション、循環型社会、
49
新エネルギー、有害物質、ゴミ溶融化処理、ゴミ発電、サーマルリサイクル、エコカー
環境と政治・
環境税、京都議定書、グローバリゼーション、開発と環境、ラムサール条約、エコ植民地主義、カーボ
経済
ンオフセット、CO2、対 90 年 25%削減の効果・影響、排出権取引、ロハス、われら共通の未来
生命と環境
生物多様性、生態系の破壊、保全の生態学、生物と環境、遺伝子操作、BSE,有機農業、農薬と環境、
環境ホルモン、移入種
環境と社会
環境倫理、共有地の悲劇、環境と福祉、環境と人権、限界集落、地域通貨、地域共同体
環境と人間
自然と人間、環境と文化、先住民と環境、伝統的生活と環境、グリーンコンシューマ、地球全体主義、
動物の権利、人間中心主義、フードマイレージ
地域と環境
河川管理と環境、砂漠化、里山の保全、グリーンツーリズム、エコツーリズム、水収支、自然再生、気
候変動、ダム問題、富栄養化、焼畑農業
表 2.「ミニ・リサーチ」で学生が設定したテーマ
発表日程
大テーマ(担当教員)
(2009 年度、クラス B)
その1
その2
第9週
地域と環境(S.O.、T.S.)
グリーンツーリズム
河川管理と環境
第 10 週
物質と環境(H.U.
、T.N.)
エコカー
循環型社会
第 11 週
環境と政治・経済(S.O.、F.K.) CO2、25%削減の効果・影響
エコ植民地主義
第 12 週
環境と社会(H.U.
、T.S.)
宗教・呪術と環境
地域通貨
第 13 週
生命と環境(F.K.、N.T.)
環境ホルモン
生態系の破壊
第 14 週
環境と人間(H.U.
、S.O.)
先住民と環境
動物の権利
年度の実施事例を掲げる。(括弧内は担当教員のイニシアル)
① 第2~3週:「ESD と環境教育(1)
(2)」(H.U.):現在の環境問題の諸相と ESD の必要性を述べ、国
連 DESD のめざす ESD の特徴を紹介。
② 第4週:
「子どもと環境教育」
(S.O.)
:子どもにとっての環境、子どもが学びや課題解決の主体となる
環境教育のあり方。
③ 第5週:「地域の自然環境」(T.S.):自然地理学の視点からの地域環境のとらえ方。
④ 第6週:「地域の生態系」
(F.K.):湿原を中心とした地域生態系の構造・機能と保全。
⑤ 第7週:
「環境問題と人間活動(1)農業」
(N.T.)
:農業と環境とのかかわりおよび持続可能な農業に
ついて。
⑥ 第8週:
「環境問題と人間活動(2)工業」
(T.N.)
:工業と環境とのかかわりおよび環境問題解決に向
けた新しい技術開発
4)第9~14 週
第9~14 週にかけては、受講学生を約 20 人ずつの2クラスに分割して、学生グループによる「ミニ・
リサーチ」発表を、別室で同時進行のかたちで実施する。ミニ・リサーチ発表では、両クラスに異分野教
員を2名ずつ(合計4名)を配置し、異なる角度からの指導・助言を行う(クロス・インストラクション)。
教員の組み合わせは、なるべく発表テーマに関連の深い教員を毎回組み替えて配置する(表2)。たとえば、
「物質と環境」を扱う発表の回においては工学(機械)、理科教育(自然環境教育)の教員を、「地域と環
境」を扱う発表の回においては環境教育(学校環境教育)と地理学(自然地理学)の教員を、
「生命と環境」
を扱う発表の回においては生物学(植物生態学)、農学(栽培)の教員を充てる、といった具合である。
50
各発表グループは、発表日の前日までに担当教員に発表要旨(=レジュメ;A4 サイズ2枚)を提出し、
担当教員はこれを人数分印刷して授業の際配布する。「ミニ・リサーチ」発表(標準、25 分)は、両クラ
スとも、毎回2件を実施し、各発表後に学生間のディスカッション(標準、10 分)と2名ずつの教員によ
るコメントと補充指導(標準、5分)、そして「コメント票」への学生のコメント記入(標準、5 分)を行
う。
「コメント票」は、発表班以外の受講学生が発表内容および方法について気づいた点(感想・意見)を
記入するためのもので、出席記録も兼ねている。担当教員が授業開始時点に全員に配布し、授業終了時に
記入済みのものを回収し、主担当教員に引き渡す。主担当教員は全員のコメントの内容を点検後、出席記
録部分、および二つの発表班それぞれへのコメントの3片に裁断し、コメント票を束ねたものを翌週の授
業の際に当該発表班の代表に手渡す。
コメント担当教員は、授業終了までに教員専用の「評価票」に各発表班についての評価項目ごとの評点
と総合評点および所見を記入し、主担当教員に引き渡す。また、コメント担当教員は、出席学生個々のデ
ィスカッションへの関与の程度を記録したものも主担当教員に引き渡す。関与した学生を特定できるよう
に、学生の着席位置を全週を通じて指定しておく。
環境リテラシー、ミニリサーチ発表
環境リテラシー、ミニリサーチ発表のあとの
(2006 年度)
補充説明をする教員。(2006 年度)
5)第 15 週
最終回、第 15 週には、6週間ぶりに、両小クラスが一同に会して「総合討論」を行う。これも、複数教
員が参加し、必要な指導を行う。
第13週までに、両クラスから司会グループ担当者として2名ずつを互選してもらい、当日は計4名の
学生が司会グループとして議論を進行させる。司会グループの学生は、総合討論実施1、2週間前から両
小クラスの全てのレジュメを読み込み、部内討論をして、総合討論の筋道を立てる。
当日は、主担当教員が進行についていくつか基本的な点を説明し、すぐに学生司会グループに進行を委
ねる。円卓に近い配置になるように、教室の机や椅子を移動し、学生同士がお互いに向き合うようにして
討論を行う。主担当教員(筆者)および副担当の教員が、途中で議論が行き詰った場合の助言および、最
後のまとめを行う。
学生は、このあと2週間ほどの間に、期末レポート(自分たちの班のミニ・リサーチの取組みの経過、
結果と考察、発表に際して受けた質問・意見への対応、全体を通しての感想からなる)を作成し、主担当
教員に提出する。この期末レポートは、
「個人レポート」とも呼ばれる。レポートでは、グループ活動の中
51
における学生個々の分担部分を明確にし、個々が自分独自に考察したことについても強調して書くように、
あらかじめ学生に指示しておく。これは成績評価は学生個々に付与するものである中で、個々の学生のミ
ニ・リサーチにおける貢献度の程度をグループ発表だけからでは担当教員は十分観察することができない
からである。個人レポートの他に、ミニ・リサーチの発表内容、技術、質疑応答の質、さらには他の発表
者に対する質問・意見、総合討論での発言の質なども成績に加味している。
環境リテラシー総合討論(2008 年度)
そのとおり
ほぼそのとおり
どちらでもない
あまりそうではない
受講学生による無記名の授業評価の結果(2009 年度後期)
そうではない
表3.
環境リテラシー総合討論(2009 年度)
この授業は体系的でよくまとまっている
0
1
3
18
22
教員は授業のテーマに関する事項を熟知している
0
0
2
12
31
教員の説明はわかりやすい
0
0
6
8
31
資料配布、野外観察用具等の使用は効果的である
0
0
5
21
19
教員は質問の受付等で学生の授業参加を促している
0
0
2
14
29
教員は学生の質問に適切に対応、回答している
0
0
3
15
27
この授業は将来役に立つと思う
0
0
3
8
34
いての見方が深まった
0
0
1
13
31
プレゼンテーション能力を向上させる機会が得られた
0
0
4
13
28
ディスカッションに積極的に参加することができた
2
3
11
16
13
環境にかかわる事柄についての知識を収集、整理することで環境につ
(3)受講学生による授業評価の結果
最終週の授業終了直後に学生にアンケート用紙に記入してもらい受講学生による授業評価を実施し、記
52
入済みの用紙は事務部が施錠・管理する書類受けロッカーに学生が投入してもらう。現代 GP 担当事務補佐
委員がこれを一括回収し、集計してエクセル書類として作成し、筆者を含む担当教員全員に送付する。2009
年度の授業評価アンケート回答集計の結果を表3に示す。45 名の履修登録(うち 2 名は市民受講生)数の
うち 45 名(92%)が回答した。
(4)学生教育における効果
1)この授業科目にミニ・リサーチを授業に組み入れたことで、学生が自ら選択あるいは設定した課題
のもとで、主体的・課題解決的に学びを作っていったことが見てとれた。グループとして取り組ませるこ
とで、対話を通した思考の深まり、知識の拡大が見られた。準備を含めた発表活動を通してプレゼンテー
ション能力が向上したことを自覚する学生も少なくなかった。
2)この授業科目の前半に、オムニバス方式の講義を組み入れたことで、異なる視点からの環境の考え
方や環境について、それぞれの専門からの基本的な知識を学生に伝えることができ、それを学生が環境を
見たり考えたりする場合の手がかりにすることが見て取れた。
3)この授業科目の後半に、ミニ・リサーチ発表および発表後のディスカッションを組み入れたことで、
学生同士が刺激し合い、知識が拡大し、環境問題相互を関連づけて理解する思考が伸びた。ミニ・リサー
チ発表後の異なる専門分野の複数教員によるコメント・補充指導からなるクロス・インストラクションは、
単に知識を正したり、補充したりするだけでなく、異なる角度からの物の見方を交錯させることで、学生
の環境に関する認識をホリスティックな方向に拡大する効果があったといえる。
4)この授業科目の最終週に組み入れた総合討論を通して、多様なテーマに取り組んだ学生達が、多方
面からの知識・考え方を出し合う中で相互に刺激され、それらを関連づけながら問題解決に向けて考えを
深め、環境への意識を高め、対策への興味を持つようになることが見て取れた。
5)この授業科目の受講を通して、各年度とも 95%以上の学生が、環境問題に関する知識を拡げたり深
めることができたと認めている。また、環境問題相互の関係について理解を深めたことも 80%以上の学生
が認めている。
6)この授業科目の受講を通して、80%以上の学生が環境問題の原因や解決方法について考えたり、対
策について知ることができたと答えている。
7)この授業科目の受講を通して、環境に対する意識が変わったことを自覚したり、どうしたら改善で
きるのか考えたり、自分からアクションを起こし、これからの自然環境・地球環境を考えようとする学生
が出ている。
53
1.4.学生の主体性を伸ばす自主活動
1.4.1. 釧路エコフェアーへの学生参加:
環境ビデオドラマの自主制作および廃油キャンドルづくり
田丸
典彦(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度、21 年度
実施時期
平成 20 年6月7~8日
平成 21 年6月6~7日
実施場所
釧路市子ども遊学館
(1)背景と目的
「くしろエコ・フェアー」は 2006 年より、釧路市とその周辺地域で、日常的に環境や地域活動に取り組
んでいる市民サークルが集い、6 月の環境月間にそれぞれの活動を展開し、
「くらしと環境」について考え
る活動として開始された。この市民サークル主体の活動に学生達が参加し、市民の環境についての思いを
学ぶとともに環境に優しく活力ある街作りの実践力を学習する。
(2)方
法
2008 年:交換留学で琉球大学に行き映画製作を学んできた学生が中心となり、学生が台本を創作し、キ
ャストとなり、上映時間約 1 時間のビデオ映画「エコノート」を作成した。また宣伝用のポスターも美術専
攻の学生によって作成された。
2009 年:廃油を利用したオリジナルキャンドル作りとエコ・フェアーの運営に参画した。キャンドル作
りに必要なものは、廃油処理剤、タコ糸、温度計、アロマオイル、カセットコンロ、ガスボンベ、鍋、お
玉と文房具の色画用紙、クレヨンである。また、市民の自主的活動組織である「くしろエコ・フェアー2009」
の実行委員会には3月から参加し、当日の受付、会場案内等の実務運営に当たった。
(3)結
果
ビデオ映画はエコフェアーの当日に上映した。作品は、大変好評でその後、大学での放映ばかりでなく、
幾つかの団体からの依頼に答えて上映会を開催した。キャンドル作りは、エコ・フェアーに来場した子ど
も達とともに、廃油を利用して着色したオリジナルキャンドル作りを行なった。
(4)学生教育における効果
1)映画作りは、多くの学生の協力があって完成した。達成感の大きな喜びと、人間関係の構築につい
て沢山のことを学んだ。また、映画のテーマを追求する中で、環境についての認識も深まった。
2)キャンドルを子ども達とともに作成し、もの作りの楽しさを味わうことができた。また廃油を利用
することで環境問題に対する関心を深めることができた。
3)市民との交流実践の中で、エコロジーを多面的に考える柔軟な思考が重要であることを学んだ。
54
自主制作ドラマ
子ども達とのオリジナルキャンドル作り(2009 年)
「映画エコノート」
55
1.4.2. 学生による環境教育国際交流体験発表
生方
秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年 12 月 18 日(木)
実施場所
釧路校 201 教室
(1)背景と目的
2008 年 11 月 16 日から 22 日にかけて開催された「日中韓環境教育ユースキャンプ(TEEPY)」に参加
した釧路校地域教育開発専攻二年次学生のNさんに、持続可能な農業を営むソウル郊外の農村での日本・
中国・韓国の学生間の交流の体験について報告してもらい、市民・学生との間で質疑応答および意見交流
を行い、環境についての視野を広げてもらう。
(2)実施報告
報告タイトルは「日中韓環境教育 TEEPY プログラムに参加して~韓国、エコビレッジで共に考えた1週
間~」というもので、Nさんが、2008 年 11 月 16 日から 22 日にかけて韓国のソウル郊外で開催された「日
中韓環境教育ユースキャンプ(TEEPY)」に参加した経験を報告した。集まった学生・教員を前に、持続
可能な農業を営むソウル郊外の農村での日本・中国・韓国の学生間の交流の体験を豊富な写真資料を提示
しながら紹介した。
報告会で発表するNさん。
(3)学生教育における効果
関心をもったごく少数の学生の聴講があり、熱心に聞き入っていた。もっと多くの学生の参加を期待し
ていたが、日中韓交流そのものへの関心が思ったより低かったものと考えられる。ただ、発表したNさん
にとっては、発表の準備の過程でこの体験の内容を言語化し、意味を考えるよい機会になったようである。
56
1.5. ウエブ上に情報発信を行うための情報リテラシー育成
1.5.1. ボランティア活動を情報発信するスキルの育成
○北澤
一利(釧路校准教授)
平岡
亮(釧路校講師)
・松崎
瑞穂(釧路校非常勤講師)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 21 年 1 月 8 日~平成 21 年 2 月 16 日
実施場所
北海道教育大学釧路校体育館
(1)背景と目的
この事業の目的は、学生に自分たちが行った地域社会活動をホームページなどで公開して、社会的 PR
を行うための IT スキルを身につけることである。地域プラクティス系地域連携授業の拡充・充実のため、
学生にウエブ上に情報発信を行う技術及びパワーポイントを使用したプレゼンテーション作成法を指導し
た。さらに学生は、自分のボランティア活動、研究活動、地域活動を記録、公開するための映像アーカイ
ブを作成した。
(2)方
法
平成 20 年度に行った地域住民対象の健康教室事業により、活動を記録した写真や映像をあつめ、PC に
取り込んだ上でパワーポイント、およびプリメアなどで編集を行った。
(3)結
果
① 発信する映像を完成させることができた。一部はホームページ上で公開した。
② 運動プログラムふまねっとの PR ビデオを作成した。
③ 映像の編集、プレゼンテーションのスキルが身についた。
(4)学生達に見られた効果
① 実社会の中で、地域の住民に自分から働きかけていくことができるようになった。
② ふまねっと運動の指導を通じて、高齢者の介護予防などの地域福祉活動に参加することができるように
なった。
③ 自分自身の活動に誇りと尊厳をもち、勇敢に地域活動に取り組むような成功経験を得ることができた。
57
1.5.2.「ふまねっと運動」活動の映像編集と発信
○北澤
平岡
一利(釧路校准教授)
亮(釧路校講師)
・松崎
瑞穂(釧路校非常勤講師)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 22 年 2 月 1 日~平成 22 年 3 月 29 日
実施場所
北海道教育大学釧路校体育館
(1)背景と目的
学生がこれまで参加してきたESD関連の実習やイベントの記録画像を編集してアーカイブをつくり、
ホームページ上に公開する。この作業は、学生のITスキルの向上や、プレゼンテーションの教材づくり
に役立つものであると同時に、これまで行った実習の振り返りにつなげることができる。また、今後の ESD
活動の PR や釧路校の活動の発信につなげることができる。
学生が運営企画して実施した地域住民対象の健康づくり活動から、
「知的障害者向けの教育支援レクレー
ションプログラム」を完成させ、知的障害者施設で実践する。教育実践プログラムとしての「ふまねっと
運動」の活動映像を編集して、ホームページ上で発信する。また、この活動を通じて、地域社会の中で福
祉活動に積極的に取り組んでいく知識と技術、資質と指導力、コミュニケーションスキルを習得する。
(2)方
法
平成 20 年度に行った地域住民対象の健康教室事業により、学生と NPO 法人地域健康づくり支援会ワン
ツースリーとの間には、信頼関係が構築された。この相互の信頼関係をもとに、本年度はふまねっと運動
の効果を研究するためのデータ収集を行いながら、健康教室を実施した。また、ふまねっと運動の指導者
である「ふまねっとサポーター」の養成講習会も実施した。
学生と NPO 法人地域健康づくり支援会ワンツースリーは、毎週定期的に打合せを行い、研究方法や、
ふまねっと運動の指導スキルの研修を行った。この研修を通じて、学生の社会的スキルの向上や打合せの
進め方、準備、記録の保管などの基本的な習慣も身についた。
(3)結
果
① ふまねっと運動を知的障がい者に向けて指導するプログラムを開発することができた。
② その過程で、知的障がい者施設に協力を求め、アポイントを取り、個人のプライバシーに配慮した手
続きに従って撮影を行うことができた。
③ 撮影した写真や映像で、記録を残すための DVD を作成することができた。
(4)学生教育における効果
① 写真を編集して、映像を作ることができた。
② 一枚一枚の写真の記録が貴重に感じられる。これまで、とりためてきた写真が生かせると思う。
③ 言葉で伝えることができない現場の臨場感や経験を映像で伝えることができる。
④ ホームページで、ESD の情報を発信しやすくなった。 NPO 法人との連携活動やふまねっと運動を通
じて、学生達が行ったボランティア活動の評価は次のような結果となった。
「この授業は将来役に立つ
と思う」という質問に対し、ほぼ 100%の学生が肯定的に回答している。また、「地域教育の重要性に
58
ついて理解できた」という回答も 95%に上っている。本事業の結果は、GP 事業の成果を高く意義づ
けることと考えられる。
O 町B学園の職員と現地で打合せをする学生。
施設の皆さんの前で、自己紹介を行う。NPO 法人と
の連携により、ボランティアさんが協力参加してく
ださる。
施設の知的障がい者の皆さんとレクリエーションを
行っているところ。コミュニケーションスキルがか
なり上達してきたと言える。
ふまねっと運動を知的障がい者に指導しているとこ
ろ。言葉が自由ではない方々に対して、どのように
何を目的にして行うかを検討した結果が試される。
一人ひとりに親切に丁寧に指導する。学生達は、躊
躇せず、堂々と指導にあたる。
最後に、現地の職員にお礼を述べて、退去するとこ
ろ。職員もとてもうれしそう。大成功に終わりまし
た。
59
2. アウトリーチ: 地域への ESD 啓発・普及
2.1. ESD 推進センターの設置
○生方 秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
北澤
一利(釧路校准教授)
事業期間
平成19~20年度
実施時期
4~3月
実施場所
釧路校
(1)背景と目的
北海道教育大学教育学部釧路校に , ESD ( 持続可能な開発のための教育 ) に係る調査・研究を行うと
ともに , 持続可能な社会実現に向けた課題に取り組む学校教育及び社会教育に関わる人材の育成並びに
地域と連携した ESD 活動の促進を図るために, 北海道教育大学釧路校 ESD 推進センター ( 以下「センタ
ー」という) を設置する。なお、設置されてから 10 年を経過した「環境教育情報センター」を改組・改称
し、その知的遺産および研究紀要を受け継ぎ、拡大充実するものとして構想した。
(2)設
置
平成 19 年度、GP 採択に基づき、副学長(釧路校担当)に釧路校への ESD 推進センター設置の検討を依
頼した。釧路校運営企画委員会で検討が続けられ、平成 20 年5月の教授会で ESD 推進センター設置が認め
られた。さらに、同年6月の教授会で生方秀紀教授がセンター長に選出され、同年9月の教授会で「北海
道教育大学釧路校 ESD 推進センター要項」が決定された。同年 10 月3日にセンター開所式が執り行われ
た。
蛭田副学長の挨拶
北澤釧路自然環境事務所長
センターの看板を掲げる蛭田
の祝辞
副学長(左)と生方センター長
(3)センターの特色
1) 域の課題に取り組み、地域と連携する人材育成のための、地域住民との協働的活動を推進する。
2) 域住民がもつ教育力を活用した学生の力量形成をコーディネートする。
3) 教員・学生のもつ教育実践力を地域活性化・環境保全の場で活用するための連携を推進する。
4) 地域の学校や附属学校・団体・施設との連携を推進する。
5) ESD 研究活動の促進と広報活動を行う。
6) ESD プロジェクト・イベントの企画・推進と広報活動を行う。大学教員が行う教育研究と関連機
60
関、地域住民との協力関係の構築と支援を行う。
(4)センターの業務
1)ESD (環境教育・地域教育を含む)に関する調査・研究の推進(研究紀要の発行を含む)
2)ESD プランナー資格認証を含む大学内外における ESD 人材の育成への支援
3)地域社会と連携した ESD の実践及び普及の推進(ESD 関連シンポジウム、ワークショップなどの
企画・実施・広報など)
4)その他必要な業務(地域における ESD 人材、ESD 関連機関についての情報の収集・蓄積・交流・広
報など)
(5)組織および運営
1)センターに, センター長のほか, センター員及び研究員,客員研究員を置く。
2)センター長(任期 2 年、再任可)は, 釧路校の教授をもって充てる。センター員(任期 2 年、再任
可)は ,地域学校教育専攻から選出された者 2 人,地域教育開発専攻から選出された者 4 人,学校
カリキュラム開発専攻から選出された者 2 人から構成される。
3)研究員は, 本学の教員のうちからセンター長が委嘱する。
4)センターに, センターの運営に関する必要な事項を審議するため , センター員会議を置く。
5)センターに関する事務は , 総務担当グループが行う。
(現代 GP 採択期間中(19~21年度)はセ
ンターおよび GP 担当事務補佐員を臨時的に雇用した)
(6)施設・設備
1)センター室を釧路校研究棟 B の1
階に設置した。
2)センター室では、センター来訪者へ
の応対、センター員会議、資料の保
管・整理、研究紀要その他刊行物の
編集、コンピュータを用いたデジタ
ル映像コンテンツの編集・保管・ア
ップロード作業、ウエブサイト管理
作業等を行う。
(7)学生教育における効果
地域連携による教育活動を強力に推進
する本センターが設置されたことで、地域
と連携した学生の学習や研究、実践活動が
大幅に充実する道が開けたといえる。
61
2.2. ESD プランナーの養成・認証
○生方
秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
事業期間
例:平成19~21年度
実施時期
例:4月~3月
実施場所
例:釧路校
(1)背景と目的
自然と共生する持続可能な地域社会(サステイナブル・コミュニティー) を実現するためには、その実
現に向けて地域の活動を巻き起こすファシリテーター(リーダー、サブリーダー、サポーター)が不可欠
である。 そのファシリテーターには、自然環境やその持続可能な利用についての知識、生きがいのある地
域社会づくりを促進していく実践力が求められる。本学では本 GP プロジェクト申請に際して、そのような
力を備えた人材を釧路校で育成し、
「ESD プランナー」資格を付与して世に送り出し、ファシリテーターと
して地域の自然再生や地域社会の再活性化のためのアイデア創出と具体的な活動を行ってもらうことを企
図した。この資格は、国家資格でも全国規模の資格認定機関が認証するものでもなく、北海道教育大学釧
路校がその責任において独自に認証するものである。この資格認定は現代 GP が終了する 2010 年3月以降
も継続されることになっている。
(2)方
法
釧路校では、地域教育開発専攻で開設している授業科目のうち、ESD 人材養成にかかわる科目を ESD プ
ランナー資格科目に指定している。それらの指定科目から 16 単位以上履修し、更に「チャレンジプロジェ
クト」を企画・運営した実績をもつ学生にこの資格を付与している。一般市民の場合は、ESD 資格科目の
授業公開講座あるいは資格読み替えを行う公開講座を 16EP(授業公開講座受講では大学から正規の単位は
認定されないので、市民受講者には単位のかわりに EP を付与している。これは ESD
Point を省略したも
のである)以上受講し、地域における ESD 関連活動(環境活動、地域ボランティア活動等)の実績があれ
ばこの資格が授与される。16EP のうちの6EP までは、他大学における取得単位あるいは実務経験によって
代替することが可能になっている。資格認定と付与は半期ごと(9月および3月)に行っている。ESD プ
ランナー資格を得た方々には、その後、ESD 情報の提供やイベント案内のお知らせをし、フォローアップ
を図っている。
(3)結
果
2009 年3月には初めての ESD プランナー資格が学生3名、市民1名に認定され、蛭田眞一副学長から資
格認定証が授与された。市民の第一号 ESD プランナーである I さんは、積極的に授業公開講座に参加され、
過去十数年間における地域での環境活動、地域活動の実績が評価されてのスピード認定を受けられ、その
後も公開講座等で知識を深めながら地域活動の推進に携わっておられる。このような方が地域に増えてく
ることで、持続可能な社会の実現をぐーっと引き寄せることができると思われる。2009 年9月には学生1
名、2010 年3月には学生2名がそれぞれ資格を認定・付与された。
62
1)第1回「ESD プランナー」認定証授与式
2009 年3月 27 日に、北海道教育大学釧路校において、第1回(2008 年度後期)
「ESD プランナー」認定
証授与式を行った。授与式では、初めて「ESD プランナー」に認定された学生3名(うち1名は代理受領)、
市民1名に、蛭田眞一副学長(釧路校担当)から認定証が手渡された。引き続き、副学長から新しいプラ
ンナーへの祝福と期待の言葉を含む挨拶が行われ、記念撮影をして終了となった。認定証は、毎年9月下
旬と3月下旬に交付され、認定申し込みの締め切りはそれぞれ8月末、2月末となっている。
蛭田副学長(右)から認定証
副学長の挨拶
副学長(中央)とセンター長
を囲んで
2)第2回「ESD プランナー」認定証授与式
2009 年9月 28 日に、北海道教育大学釧路校において、第2回(2009 年度前期)
「ESD プランナー」認定
証授与式を行った。授与式では、
「ESD プランナー」に認定された学生1名に、蛭田眞一副学長(釧路校担
当)から認定証が手渡された。引き続き、副学長から新しいプランナーへの祝福と期待の言葉を含む挨拶
が行われ、記念撮影をして終了となった。
3)第3回「ESD プランナー」認定証授与式
2010 年3月 18 日に、北海道教育大学釧路校において、第3回(2009 年度後期)
「ESD プランナー」認定
証授与式を行った。授与式では、新たに「ESD プランナー」に認定された学生2名(うち1名は代理受領
に、蛭田眞一副学長(釧路校担当)から認定証が手渡された。これで、釧路校に「ESD プランナー」制度
が発足して以来7人(うち1人は市民)がこの資格を取得した。
蛭田副学長による認定証授与
新しいプランナーを囲んで
副学長(右)とセンター長
(4)学生教育における効果
単に卒業のための単位を取得するのではなく、明確な目的をもって ESD プランナー資格を目指して学習
するものが現れ、学習意欲が向上したと考えられる。さらに、
「チャレンジプロジェクト」を企画・運営し
た実績を資格認定条件に加えているため、大学の授業を履修するだけではなく、自主的に地域や子供にお
ける課題を見出し、友人と協力しながら企画を練り、運営のために地域や担当機関等と連絡調整を行う経
63
験を誘導することになり、大学教育の枠を超えた人材育成となっている。副次効果としては、授業公開講
座に一般市民が参加し、学生と机を並べて学習することから、その学習意欲に刺激され、学生の授業にお
けるよい意味での緊張感の向上にも役立っている。ESD 推進センターでは、2010 年度以降も同様に資格認
定を継続することになっている。
64
2.3. ESD プランナー資格科目授業公開講座の実施
○生方
秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
釧路校地域教育開発専攻教員全員
事業期間
平成19~21年度
実施時期
4月~2月
実施場所
釧路校
(1)背景と目的
一般市民が ESD プランナー資格を取得できるよう、釧路校地域教育開発専攻で開講している講義の大部
分を、授業公開講座として公開し、申し込んだ市民に受講してもらう。授業公開講座は通常の科目等履修
生の場合とは異なり、半年 2000 円の納入で、公開されている授業であれば何本でも受講可能である。そ
の一方で大学の授業単位としては認定されない。そのため、本 GP では授業公開講座の受講記録および期
末の成績評価を ESD 推進センターで管理し、後日の ESD プランナー資格認定の資料とするようにしてい
る。
(2)方 法
毎年3月と9月に北海道教育大学から発行・配布される「公開講座ハンドブック」に、ESD プランナー
資格科目として公開する授業科目一覧を、ESD プランナー資格についての説明文とともに掲載し、受講者
を募集した。これ以外に、ポスター・パンフレットの印刷配布、ウエブサイトでの広報も行った。
(3)結 果
平成19~21年度まで実施したが、紙幅の関係からここでは21年度分のデータを掲げる。
1)授業公開講座(2009年度前期)
講 座 (授 業 )名
受講対象者
定員
受講者数
釧 路 湿 原 エコウォッチング
ESD プランナー資 格 取 得 希 望 者 に限 定
5
6
環 境 教 育 と工 業 演 習 Ⅰ
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
0
子 どもと環 境 教 育 演 習 Ⅰ
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
2
アドベンチャー教 育 A
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
2
子 ども環 境 教 育
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
3
地域教育活動Ⅳ
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
0
地域教育活動Ⅱ
市民一般
10
1
環 境 教 育 活 動 ⅠA
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
3
0
65
環 境 教 育 活 動 ⅢA
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
2
1
環 境 教 育 活 動 ⅢC
ESD プランナー資 格 取 得 希 望 者 優 先
3
3
農 業 と環 境 教 育 演 習 I
ESD プランナー資 格 取 得 希 望 者 優 先
3
0
環 境 教 育 と産 業 トライアル
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
0
10
4
5
3
定員
受講者数
地 域 健 康 教 育 コーディネー ESD プランナー資 格 取 得 希 望 者 に限 定
ト演 習 Ⅰ
東 北 海 道 ア ウ ト ド ア ト ラ イ ア ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
ル
2)授業公開講座(2009年度後期)
講 座 (授 業 )名
受講対象者
環 境 リテラシーA
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
10
2
環境教育
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
1
環 境 と産 業 技 術
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
3
0
地域教育活動Ⅳ
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
3
0
地 域 の生 態 系 演 習 Ⅰ
市民一般
3
0
地 域 の自 然 環 境
市民一般
10
2
環 境 教 育 プ ラ ン ニ ン グ 演 習 ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
3
0
Ⅰ
環 境 教 育 活 動 ⅢB
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
5
3
環 境 教 育 活 動 ⅢD
ESD プランナー資 格 取 得 予 定 者 に限 定
10
0
環 境 教 育 活 動 ⅢE
市民一般
5
0
環 境 教 育 活 動 ⅣD
市民一般
10
0
(4)学生教育における効果
市民学習者が机を並べて学習することで、学生はその向学心に刺激されたと思われる。また、実社会で
働き、生活している人の授業での発言は、教員を通して聞く伝聞情報よりも強いインパクトを学生に与え
たと思われる。実際に学生の期末無記名授業評価アンケートの自由記述にそのような趣旨の記述が見られ
た。
66
2.4. 市民への公開講座等の実施
2.4.1. ESD リレーセミナーの実施
○生方
秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
現代 GP 関係教員有志
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年 11 月 8 日(土) ~平成 21 年3月 28 日 (11 回)
実施場所
釧路校201教室及び大会議室
(1)背景と目的
現代 GP 事業で設置された「ESD 推進センター」の発足イベントとして,北海道教育大学釧路校の教
員 10 名が現代 GP 国内外調査旅行にて,この2年間に視察し,肌で感じ,心に受け止めたことを,豊富
な取材資料・画像を駆使してレポートし,国内外の熱帯林,氷河,サンゴ礁,干拓地,干潟などの環境
の現場や,そこで実践されている ESD(持続可能な開発のための教育)の活動状況についてのセミナー
を学生や市民に向けて行う。
(2)日程および実施内容
1)第1回「世界遺産屋久島とエコツーリズム」
2008 年11月8日に、釧路校 201 教室で、ESD 推進センターと現代 GP プロジェクトの共催による
「ESD・リレーセミナー」の第1回「世界遺産屋久島とエコツーリズム」が行われた(写真下)。
挨拶する生方センター長
セミナー会場風景
講演中の神田教授
講演中の高橋准教授
生方秀紀 ESD 推進センター長の挨拶に続いて、一般市民、学生、教職員など十数名の聴衆を前に、神田
房行教授による「世界遺産屋久島とエコツーリズム」と題した講演と、高橋忠一准教授による「屋久島に
おける環境文化について」と題した講演がそれぞれ1時間ずつ行われた。神田教授の講演では、屋久島に
おける特異な生態系や屋久杉の生育パターンなどの生態学的な解説と過密なエコツーリズムの現状と問題
67
点などが豊富な取材写真をもとに示された。
高橋准教授の講演では、古事記の時代から現代に至るまでの屋久島の環境と人間文化の深い関わりにつ
いて、地元の古老などから聞き書きした内容をもとに、独特の環境観が述べられた。また島の豊かな生活
文化が観光開発を含む近代化の波に現れている状況についても触れられた。
各講演の後に、活発な質疑応答が行われ、北海道東部のエコツーリズムやアイヌ文化との比較にまで話
題が及びました。同じフィールドを異なる視点からクロスさせるように調査するという釧路校の現代 GP
のねらいは十分達成されたといえよう。
2)第2回「開発にゆれる熱帯林からのレポート」マレーシア(1)
2008 年11月22日に、釧路校 201 教室で、
「ESD・リレーセミナー」の第2回「開発にゆれる熱帯林
からのレポート」マレーシア(1)が行われた。
集まった市民・学生を前に、講師の佐々木巽教授が、2008 年3月4日~11 日に野外調査を行ったマレ
ーシアのクチン市とその周辺を中心に豊富な資料を提示しながら講演を行った。最初に地理学の立場から
マレーシアの概要についてふれ、同国の自然環境の特色(地形や気候等)について説明がなされた。次に
バコ国立公園での野外調査の様子や、環境教育に関連した各種の情報(施設やガイド等)について克明な
報告がなされた。この報告では、スンダ棚の大陸棚上に残存している氷河期に形成された延長河川の痕跡
について焦点があてられました。講演後には、この痕跡が残っている理由と生態系への影響等について、
熱心な質疑応答や意見の交換が行われた。
3)第3回「熱帯林と白砂をめぐる開発と教育」沖縄、マレーシア(2)
2008 年12月6日に、釧路校201教室で、「ESD・リレーセミナー」の第3回「熱帯林と白砂をめぐ
る開発と教育」
講師の大森
沖縄、マレーシア(2)が行われた(写真下)。集まった 10 数名の学生・市民を前に、
享・准教授が、
「地域の生活・環境と小学校環境教育」というテーマのもと、自身で現地調査
に赴いた沖縄県名護市、石垣島白保、慶良間諸島・鹿留間島、マレーシア・ボルネオにおける地域の生活・
環境の現状と、そこにおける小学校教育の関わりについて、教育学的な視点からの考察を加えながら報告
した。講演終了後は、珊瑚礁の保護のあり方や小学校教育と地域の生活や環境保全との関わりについて、
活発な質疑応答がなされた。
会場風景
講演中の大森准教授
4)第4回「世界遺産白神山地、そして阿蘇の今」
2008 年12月13日に、釧路校大会議室で、「ESD・リレーセミナー」の第4回「「世界遺産白神山地、
そして阿蘇の今」~白神山地、大潟、阿蘇、諫早~が行われた。集まった学生・市民を前に、講師の田丸
典彦教授が現代 GP 国内調査旅行で自分の足で歩き、自分の目で見てきた白神山地におけるエコツーリズ
ムの現状と課題、阿蘇の景観維持と農林業のかかわり、諫早・大潟における干拓農業と環境とのかかわり
68
について熱っぽく報告した(写真下)。講演終了後は活発な質疑応答がなされた。
セミナー講演の様子
講演中の田丸教授
市民も熱心に聴講
5)第5回「今も生きる公害教育」~四日市、水俣~
2008 年 12 月 20 日に、釧路校 201 教室で、「ESD・リレーセミナー」の第5回「今も生きる公害教育」
~四日市、水俣~が行われた(写真下)。20名を超える学生・市民が参加したこのセミナーでは、「今も
生きる公害教育」というテーマのもと、まず長澤徹教授が四日市市のコンビナートとゴミ処理場の現状に
ついて専門的な(工学的な)考察も加えながら報告した。つづいて田丸典彦教授が、四日市ぜんそくの歴
史的経緯と現在の四日市の様子について報告し、四日市ぜんそくについての短編ビデオを映写した。田丸
教授はさらに、水俣病について現地で入手した短編ドキュメンタリービデオも用いて説明したうえで、現
在の水俣の状況や取り組みを自身の撮影した写真をもとにレポートした。同教授はこれ以外にも、足尾銅
山鉱毒事件についての概説と現在の銅山の様子についても紹介した。全体として、映像や写真の資料が豊
富な講演となった。各講演終了後、熱心な質疑応答がなされた。参加者の中には、九州出身で水俣の公害
問題を卒論のテーマに選ぶ予定の学生も参加しており、公害教育の役割が浮き彫りにされたセミナーであ
った。
講演中の長澤教授
講演中の田丸教授
6)第6回「ドイツ社会と学校環境教育」~西ヨーロッパの ESD の現状
2009 年1月24日に、釧路校 201 教室で、
「ESD・リレーセミナー」の第6回「ドイツ社会と学校環境教
育」~西ヨーロッパの ESD の現状~が行われた。最初に、カールスルーエにある森の幼稚園の取り組み「森
のきつね」が紹介され、子どもたちにとって自然の原体験が重要であること、保護者たちもこうした取り
組みを積極的にサポートしていることが報告された。次に、カールスルーエ教育大学のレナート教授らに
よる「学校の庭」の取り組みが、カールスルーエのあるバーデンヴュルテンベルグ州において大きな成果
をあげていることが報告され、カールスルーエの小学校の校庭に作られた学校の庭が紹介された。
これに関連して、当地の小学校教育において、メヌックと呼ばれる人間・自然・文化に関連する科目が組
み込まれていることが報告され、ビオトープや庭づくりなど、カールスルーエ市内のさまざまな環境教育
の実践が紹介された。さらに、ドイツの「黒い森」で実践されている体験学習の報告がなされ、最後に、
環境教育とは何かという問題に対する大森准教授の問題意識が述べられた後で、環境教育のあり方に関す
69
るいくつかの考え方が紹介された。講演終了後は、学生や一般市民の方から活発な質問や報告が行われ、
非常に充実した内容であった(写真下)。
講演中の大森准教授
聴講する市民・学生
市民の体験談の報告も
7)第7回「熱帯林の開発と ESD」
2009 年2月11日に、釧路校 201 教室で、「ESD・リレーセミナー」の第7回「熱帯林の開発と ESD
~ボルネオからのレポート~」が行われた(写真下)。講師の生方秀紀 ESD 推進センター長は、最初に熱
帯林と ESD の関わりについての視点を紹介したあと、特にマレーシア・サバ州に焦点を当て、サバ州の歴
史や産業、先住民族の言語や宗教の概略を説明した。引き続き、熱帯林やマングローブの生物の生態、開
発の状況について現地で撮影した膨大な量の写真を投影しながら説明した。中でもキナバタンガン川では
開発によりオランウータンやテングザルなどの貴重な野生生物の移動路が分断されている状況を食い止め、
緑の回廊を造成する計画が進められ、熱帯林や河川生態系を維持しながら地元経済が潤うエコツーリズム
を活発に推進している現状が紹介された。講演終了後は、参加した市民・学生から、現地の状況や治安、
温暖化の影響など多岐にわたる質問が出され、丁寧な回答がなさた。会場には現地で収集した図書やパン
フレットなどの資料も閲覧に供され、それにかかわる質問も出されるなど、参加者の知識欲を満たすセミ
ナーであった。
講演中の生方センター長
エビ養殖場での取材風景
質問に答える生方センター長
8)第8回「ツンドラとオーロラの国で ESD を考える」
2009 年2月21日に、釧路校 201 教室で、
「ESD・リレーセミナー」の第8回「ツンドラとオーロラの
国で ESD を考える」が行われた。 講師の境 智洋准教授は、2008 年9月に訪れたアラスカの自然環境お
よび学校教育の状況について報告した。アラスカでは木を切り倒すのではなく、木を生かしたまま様々な
シラカンバの工芸品をつくっていることなどを例に挙げ、持続可能な社会の一つのあり方について説明が
なされた。引き続き、北教大の国際イニシアチブ事業についての説明がなされ、水を題材とした ESD カリ
キュラムの開発にかかわり、アフリカ、ザンビアの教育支援を行っていることが紹介された。講演終了後、
参加した学生・市民から、現地の状況や環境などについて活発なが質問なされた。さらに、展示した現地
の教育資料に関する質問も多数なされるなど、予定時間をオーバーして有意義なディスカッションが行わ
70
れた。
9)第9回
「カンガルーの国の環境と ESD」の報告
2009 年3月7日に、釧路校 201 教室で、
「ESD・リレーセミナー」の第9回 「カンガルーの国の環境
と ESD」が行われた。講師の神田房行教授は、最初に、オーストラリアの生物地理学的特徴、オーストラ
リアにおける生物の進化の概略、先住民であるアボリジニーの現状について紹介した。引き続き、多数の
取材写真を映写しながら、クインズランド州ケアンズ周辺の熱帯林の植物の生態、グレートバリアリーフ
における海洋生物の状況、オーストラリアの鳥獣類の印象などが紹介された。講演終了後は、参加した市
民・学生から、オーストラリアの生態系や ESD について熱心な質問が出され、講師から丁寧な回答がなさ
た。会場には現地で収集した図書や手工品などの資料も展示され、楽しいセミナーとなった。
10)第 10 回
「カンガルーの国の環境と ESD(2)」
2008 年3月 21 日に、釧路校 201 教室で、
「ESD・リレーセミナー」の第 10 回 「カンガルーの国の環
境と ESD(2)」が行われた。生方秀紀教授(ESD 推進センター長)が 2008 年3月の GP 調査旅行のデータ
をもとに講演を行った(写真下左)。生方教授は、最初に、クインズランド州の歴史、経済、先住民族につ
いて簡単に紹介したあと、オーストラリアにおける動植物の種多様性減少の状況とその原因について説明
した。引き続き、クインズランド州の世界自然遺産デイントリー熱帯雨林、グレートバリアリーフの生態
系の現状と各種動植物のクローズアップが豊富な取材写真をもとに紹介された。講演終了後は、参加者か
ら、オーストラリアの植生変化についての質疑応答や、現地から持ち帰った図書やパンフレットなどの紹
介がなされ、オーストラリアの環境を知る上で有意義なセミナーとなった。
生方センター長の講演
11)第 11 回
添田講師(左端)の講演
「古くて新しい国インドに見る ESD」
2008 年3月 28 日に、釧路校 201 教室で、「ESD・リレーセミナー」の第 11 回(最終回)「古くて新し
い国インドに見る ESD」が行われた(写真上右)。学生、市民のほか、ESD 推進センターの視察に訪れた
神戸大学の先生も参加して、双方向で意見表明を行う、
「セミナー」と呼ぶにふさわしい形式でインドの調
査報告と、その内容と結びつけたかたちで持続可能な開発とは何かについて議論が活発に行われた。添田
祥史講師による報告では文献で読みとれない、雑踏のざわめき、匂い、そして、まなざしなども伝わり、
とくにストリート・チルドレンの実情は参加者にとってもショッキングなものだったようである。
(3)学生教育における効果
市民・学生対象のセミナーであったが、毎回数名から十数名の学生と数名の市民の参加があり、熱心に
聴講し、質問をしていた。世界の環境の現場からの直接取材に基づく本 GP プロジェクト担当教員の熱の
こもった報告に、学生の知識や学習意欲が深まったことが見てとれた。
71
2.4.2. 公開講座「ESD の現在~世界の現場からのリポート~」
生方 秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
ほか現代 GP 関係教員有志
事業期間
平成 21 年度
実施時期
11月7日(土)~3月6日(土)
実施場所
釧路校201講義室
(全7回)
(1)背景と目的
この公開講座の趣旨は、当 GP プロジェクトにより、国内外の各地に環境や生活文化の状況、ESD の実施
状況を視察調査に出向いた本校教員が鋭い観察眼とコミュニケート力によって収集した情報や映像を整
理・分析して報告するとともに、問題解決の方向を受講生の皆さんと共に考えようというものである。
(2)内容および日程
11月7日(土)13:30~16:00
「ESD とは何か」
教授 生方 秀紀
12月12日(土)13:30~16:00
「イギリスにおける ESD の推進」 教授 神田房行
アラスカの自然環境と ESD」 教授 神田房行
12月19日(土)13:30~16:00
「泊村、六ヶ所村で原発と環境を考える」
「放射能汚染、第五福竜丸からの警鐘」
教授
教授
田丸
田丸
典彦
典彦
1月23日(土)13:30~16:00
「ベトナム、人と環境」 准教授 廣田 健
「コスタリカとエコツーリズム」 教授 生方 秀紀
1月30日(土)13:30~16:00
「フィンランドの教育思想」
准教授 大森
享
「葛巻町と自然エネルギー教育」 准教授 大森
享
2月11日(祝)13:30~16:00
「フランスにユネスコを尋ねて」 准教授 北澤一利
「イエローストーン、ESD の源流」
准教授 川崎 惣一
2月20日(土) 13:30~16:00
「オーストラリア・ケニアの先住民と ESD」 准教授 諫山 邦子
3月6日(土)13:30~16:00
「総合討論」
教授 生方
秀紀、
72
第一回目(生方センター長の講義風景)
第二回目(神田教授の講義風景)
(3)学生教育における効果
毎回受講者と講師の間で熱気のある質疑応答がなされ、最終回には各受講者がそれぞれの日常における
環境活動や地域活動について報告し、相互討論が活発に行われた。市民対象の公開講座であったため、学
生については、特に興味のあるテーマに関して自由に学生が聴講できるようにした。学生の聴講人数は少
数であったが、参加した学生は多くの新しい知識を講師の熱意とともに受け止めたと思われる。
73
2.4.3. 地域 ESD セミナーの実施
○生方
秀紀(釧路校教授/ESD 推進センター長)
ほか現代 GP 関係教員有志
事業期間
平成 21 年度
実施時期
3月 10~25 日(全5回)
実施場所
例:釧路校
(1)背景と目的
当 GP3年間のの成果を地域住民・学生に広めることを目的としたセミナーである。
(2)内容と日程
第1回目は、3月10日(水)に、
「豊かな自然を生かした ESD」と題して、アフリカ・ケニアにおけ
る開発・環境と人の暮らしについて諫山邦子准教授(下の写真左)が、川・湖・農の恵みを活かした自然
体験について田丸典彦教授(下の写真右)が講演した。
第2回目は、3月18日(木) に、「ブラジルの持続可能な地域共同体(キロンボ)について」と題して、
生方秀紀教授が講演を行った(下の写真左)。大農場の奴隷の束縛から逃れて自由な土地へ定住して1世紀
半のこの土地で、小規模農業と手工品とエスノ・エコツアーで自立の道を維持しようとしている状況が紹
介された。
第3回目は、3月22日(月)に「アラスカにおける ESD」と題して、神田房行教授が講演した。
第4回目は、3月24日(水)に「貧困と ESD-インドのストリートチルドレンを事例に-」と題して、
添田祥史講師が講演した(上の写真右)。
第5回目は、3月25日(木)に「立ち止まって ESD を考える~現代 GP3年間を振り返って」と題し
て、生方秀紀教授が講演した。
74
(3)学生教育における効果
市民と学生に参加を呼びかけた。春休み中で釧路を離れている学生が多い中、興味のあるテーマに関し
て数名の学生の参加があり、講演終了後、活発に質疑応答がなされた。そのようなケースでは、学生は、
今まで知らなかったことや、関心の薄かったことについて、講師の現場からの生々しい報告に接すること
で新たな関心が広がった様子が見られた。
75
2.5. 出前授業の実施
2.5.1. 出前授業:身近な水を調べる環境学習の提案
長澤
徹(釧路校教授)
事業期間
平成19年度,21年度
実施時期
平成20年2月、平成21年2月、
実施場所
釧路市立S中学校、釧路校理科実験室
(1)背景と目的
水は、人間にとって一番大切なものである。日本においては、おいしい水が供給されており、水のあり
がたさが実感されないのが現状である。現在の日本では水不足は考えられないが、今後温暖化と共に水飢
饉が来ると言われている。我々人間は、もっと水の有り難さ、大切さを認識する必要がある。子供たちに
水の大切さを実感させるため、授業での展開を考えた。あらゆる場所で水を採取しその地域での特徴を調
べ、場所による性質の違いを知ることで、水の有り難さ、水を大切にする心が育まれると思われる。この
出前授業を行うことで、水の大切さ、有り難さの心が育まれ、また化学反応を理論的に判断する力が養わ
れる効果をもたらされることが期待される。
(2)授業の実施
1)授業について
出前授業は、平成 20 年2月 28 日、釧路市立S中学校で行い、2学年1組の技術の2時間続きの特別授
業として実施した。授業の実施者は技術科教育専修の大学院1年生の二人であり、授業を行う前に、長澤
の指導のもと指導案の作成・検討を行い、後で示す指導案を作成した。作成にあたりS中学校の先生にも
指導案を見てもらい助言を頂いた。当日は、長澤はデジタルカメラとビデオカメラで授業を記録した。技
術科の総合演習の一環として、この環境の授業を行った。最初1時間目に、どこの地域から採取したこと
を明らかにしないで、3か所の水を取り上げ、実験方法を師範し、各自実験を行った。
2)指導案
以下に指導案を載せる。
指導案
1
「身の回りの水を調べ、環境について見直そう!」
本時の目標
(1)本時の目標
・自分たちの地域の水と環境についての関係を理解することができる。
・自分たちの地域の水の状態を調べ、そこから環境について見直すことができる。
(2)指導過程
◎評価・評価の方法
学習活動
段階
教
師
の
活
動
生
徒 の 活
動
○雪を用意し、水に戻したものを使 ・教員の行う実験を見る。
76
○留意点
▲支援
●制限時問 20 分
用し、実験をしてみせる。
.「色が変わった!」
.「どうして?|
導
実験の注意点、やり方を確認する。
○課題を提示する
入
学習課題
身の回りの水を調べ、環境について見直そう!
○水をどのように調べるのか、
・説明を聞く。
今回調べるCOD、pH、
▲実験の仕方を指導
する。
残留塩素、アンモニウム態窒素
について説明し、示す。
・説明を聞く。
○実際に調べてみる。
○一人1度作業を行うよう
●制限時開 30 分
・
にする。
◎評価1
では、水3種類を調べてみ
ましょう。
・
春採湖・釧路川・水道水
(活動場面、自己評価)
・ 時間を区切る。
<意欲・態度・技能>
をA~Cとし、名前は伏せ
意欲を持って実験を行
て、調べる。
い、身の回りの水につい
(COD・アンモニウム態
て状態がわかる。
窒素・残留塩素・pH)
○後片付けをする。
○後片付けをする。
○ワークシートに記入する。(水調 ワークシートに記入する。
▲記入されているか、ま
ベプリントNo.1)
わってみて、個人指導す
(水調べプリント No.1)
A~C は、どの楊所の水なのかをグ 「A は水道水かな」
る。
ループで話合い、ワークシートに記
●制限時間 10 分
「Bは川かな」
入する。
○A~C を全体で確認する。
正解を教える。
○どうしてこのような結果になっ ワークシートに記入する。
●制限時問15分
たのか、考えよう。
◎評価2
(水調ベプリントNo.1)
(活動場面、自己評価)、
○ で は 、 実 験 し た こ と を も と ワークシートに記入する。
<関心・意欲・態度>自
に、自分たちの生活地域ではどうな (水調ベプリント No.2)
分たちの地域にある水
っているのか見てみましょう。
・グループで話し合い、記入す がどのような要因で水
77
る。
質汚濁となっているの
・ 家、工場、山
かを図を見ながら自分
たちで考え、そこからそ
まず、釧路川の周りの様子のシート ・洗剤、油、家畜の糞尿など
の関係がわかる。理解す
を見せ、汚濁になっている要因につ ○
時間をとって、記入する。 る。
いてあげてみましょう。
その後、確認をして、直す。
○考えたことを発表させる。
○
●制限時間 15 分
発表する。
◎評価3
○実験結果と自分たちの地域の環 ワークシートに記入する。
(活動場面、自己評価)
境と結びついているということを
<意欲・態度・技能>
実験結果を振り返りながら進める。
そこから環境について
見直し、自分たちのでき
ることを探す.
○またこのような実験結果になら
ないためにどうすればよいか考え
てみましょう.
・評価、感想を記入させる.
・自己評価・感想を記入する。
● 制限時間1
0分
●
大学院生による出前授業。
実験結果について、討論している生徒。
3)授業の後での生徒の自己評価
実験を行った後で生徒に自己評価をしてもらった。その結果の概要を示す。
◆意欲的に実験を行い、地域性との関係について考えることができたか?(関心・意欲・態度)
A・・・意欲を持って実験を行い、地域性との関係について見直すことが出来た。
B・・・実験を行い、地域との関係について理解できた。
C・・・意欲を持って実験に取り組めず、地域との関係も見直すことが出来なかった。
78
全 23 名中
A評価 18 名:78%、B評価5名:22%、C評価0名:0%となっており、大部分の生徒が
実験に積極的に関わり、きれいな水を長持ちさせるために何が出来るのかを考えている。生徒たちがこの
試験を通して水の大切さを実感したこと、水を汚さないためにはどうしたら良いかが解ったことなど、ま
とめのプリントでの感想から判断すると、出前授業の効果が表れた授業であったように思われる。
4)生徒の感想
この様な実験を行ったことのなかった生徒の反応は良く、積極的に試験を行っていた。2時間目は、試
験薬剤の色の変化を見て、どこの水かを総合的に判断させた。最後に正解を与え答え合わせを行った。実
験後の生徒の意見を以下に示す。
・おもしろかった。
・春採湖の水が想像以上に汚かった。
・水道水のありがたみがわかった。
・楽しく取り組めた。
・おなじ水でも場所により性質が違うことがわかった。
・楽しかった。
・今度は違うところの水を調べたい。
・もっと環境のことを考えようと思った。
・環境のため我々がどのようなことが出来るのか、興味を持った。
(3)学生教育上の効果
出前授業を担当した大学院生は、生徒たちの自己評価や感想に触れることで、自分たちで開発した教材
や授業プランのよかった点、改善すべき点を知ることができ、今後の研究のよい資料となり、また自信も
ついた。
79
2.5.2.環境エネルギー教育キャラバン
○中川
蛭田
小原
雅仁(釧路校准教授)・池田
保夫(釧路校教授)
眞一(副学長/釧路校教授)
・栢野
彰秀(釧路校准教授)
繁(釧路校教授)・平山 雄二(釧路校准教授)
事業期間
平成 20 年度~平成 21 年度
実施時期
10 月(1回)、12 月(1回)、1 月(1回)、
2 月(2回)
実施場所
標茶町A小中学校(2回)、
別海町K小学校(2回)
、
標茶町コンベンションホール(1回)
(1)背景と目的
北海道教育大学釧路校には学校カリキュラム開発専攻があり、その中に理科グループがある。この事業
は、理科グループが中心となって行った。
理科離れが叫ばれて久しいが、理科グループとしてはこれを重大に受け止めている。理科離れを食い止
める重要な方法は、将来教員となる学生の中で理科ができる学生を多く育てること、特に、実験・観察に
強い学生を育てることであると考えている。
理科グループに配属している学生には、実
験や観察の授業を多く課しているが、より現
実に即した形として、実際に子どもたちを対
象に教える、ということを体験させることが
望ましい。これによって、子供たちへの対応
の仕方や実験・観察の知識を増やすと共に、
学生がこれまで学んできたことが実際に活
用できることに喜びを感じ、モチベーション
の向上につながるものと考えている。
理科の中では、環境やエネルギーについて
の比重が大きい。理科グループとしては、こ
の度の現代 GP を利用して学校に訪れ、実際
A小中学校での活動の様子。保護者も参加している。
に学生が環境やエネルギーについて、実験を
通して子どもたちに教える、という機会を持つことを考えた。
この事業では、学生の教育のみを目的としているのではなく、地域の子供たちや保護者、さらに将来的
には地域全体に環境やエネルギーについての関心や理解を推し進めることができればよいと考えている。
(2)方
法
1)事前準備
・担当の教員が学校と連絡を取りあい、実施日時、実施場所などを決める。学校の都合もあるが、学生が
参加できる土日か長期休暇の期間に設定する。場所は体育館などの大きな場所で、一箇所で行う。
80
・学校には長机やいすを複数用意してもらう。
・借り上げバスの予約もしておく。
・実験はブースを複数設置して、各教員が受け持つ研究室(物理、化学、生物、地学、理科教育)で担当
する。
・実験の準備は各研究室で行う。学生がテーマを
決めるところから当日の準備まで主体的に実行す
る場合もあれば、内容に応じて教員の方が積極的
にかかわる場合もある。
・ブースで実験を行えば、スタンプを押すという
スタンプラリーを行うため、その台紙(首から下
げるタイプ)とスタンプを学生が準備する。スタ
ンプラリーの主目的は、子供たちがまだ回ってい
ないブースを確認することであるが、子供たちの
意欲向上にもつながると考えている。
摩擦熱で湯を沸かす子供たちとサポートする学生
2)当
日
・学校を訪れてからは、学校側で流れなどが準備されて
おり、その指示に従って行動する。
・ブースの配置は学生同士がその場で相談して決め、長
机やいすの設置、実験の準備を行う。
・はじめの挨拶や実験の紹介など、学校側で準備した流
れで行うが、スタンプラリー用の台紙を配る時間を入れ
廃油を使ったろうそくを説明する学生
させてもらう。
・実験が始まると、子供たちが一箇所に集中したり、ど
こに行ってよいかわからない子供たちがいることがある。
適宜学生が声をかけてスムーズに行えるように注意する。
(3)結
果
標茶町コンベンションホールで 1 回、K小学校で 2
回、A小中学校で 2 回の、計 5 回事業を実施した。内
容は以下の通りである。
○標茶町コンベンションホール「うぃず」
(北海道川上
郡標茶町旭2丁目6-1)にて、平成20年10月5
日に実施した。
○K小学校(北海道野付郡別海町)にて、平成21年
1月24日と平成21年12月5日の 2 回実施した。
○A小中学校(北海道川上郡標茶町)にて、平成21
年2月24日と平成22年2月23日の 2 回実施した。
81
ミジンコを説明する学生
ブース内容は、環境やエネルギーに関するものの他、それにつながる科学的な知識に関するものも含ま
れる。
・バランストンボ
バランストンボを作るための厚紙は全部学生たち
が飲んだ牛乳パックなどを再利用し、資源の無駄遣
いや再利用を考える。
・摩擦熱でお湯を沸かそう
摩擦熱でお湯を沸かす苦労を実体験することで、
エネルギーの無駄遣いや有効利用を考える。
・火おこし体験
火おこしを体験し、エネルギーの形態について考
える。
化石の作成法を説明する学生
・ミジンコ
ミジンコの顕微鏡観察などを通して生物環境を考察する。
・雲の実験
気象から地球環境を考える。
・太古の生き物の世界を知ろう
化石から生物環境を考える。
・大型手回し発電機
自転車の発電機(ハブダイナモ)を使って手回し
発電機を自作し、9 個の豆電球を一度に光らせる実
験。
・ペルチェ素子の実験
ペルチェ素子を用いて、熱のエネルギーについて
考える。
果物電池を説明する学生
・果物電池
果物を使って電池つくり、電池のしくみを考える。
・ろうそく作り
廃油を使ってろうそくを作る。
(4)学生教育における効果
学生にアンケートを行ったところ、子供の環境への理解、及び自身の環境への理解が少し進んだ、と答
えた学生が最も多かった。また、今後も参加したいと答えた学生が最も多かった。このような活動は、そ
れなりの成果が上がったものと考えている。
「感想や要望」からは、学生自身が自分なりに反省し、今後のためにどうすべきかが考察されているこ
とがわかった。また、あらかじめ参加人数がわかった方がよいことがわかるが、保護者も含めると把握し
づらい面があり、今後の課題である。
今後全国の大学に波及していけば、環境・エネルギーに関する学生の教育のみならず、全国の地域の人
達に関心や理解を推し進めることができるであろうと考えている。
82
以下は平成22年2月23日に行ったA小中学校での活動のアンケート結果である。
子供の環境理解
ア(大変進んだ)
0
イ(少し進んだ)
12
ウ(あまりすすまなかった)
4
エ(ほとんど進まなかった)
0
自信の環境理解
ア(大変進んだ)
0
イ(少し進んだ)
11
ウ(あまりすすまなかった)
5
エ(ほとんど進まなかった)
0
今後の活動
ア(参加したい)
15
イ(どちらでもよい)
1
ウ(参加したくない)
0
感想や要望
・児童、生徒、先生や保護者の方など、たくさんの人がブースに来てくれたのがうれしか
ったです。理論とか難しいことはいいので純すいに遊んでくれたのが良かった。記憶のか
たすみにでも残ってくれるといいなぁと思います。
・子供たちが、つくったり、もらったりした物を入れる袋を用意すればよかった。自分達
のブースは材料を人数分しか準備してなかったので、次からは、もっと余分に用意してお
かなければいけないと思った。あらかじめ、詳しい人数が知りたい。
・保護者の方々や先生が予想以上に参加してくれていた。その関係もあって物づくりのた
めに用意していた道具が不足してしまった。保護者も含めたある程度の参加人数が分かれ
ば目安になるので良いと思う。
・ブース数が多く、スタンプラリー形式なので、全部周れる様に1つのブースの話を聞か
ないでサクサク進んでしまうようになっている。全部周れた人は、何もすることがなくな
ってしまって会話をしながら座りこんでしまっている。各ブースで行っている実験の原理
などを模造紙にまとめる等して、興味をもったものに関しては深く学べるような工夫をす
ると、もっと意味をもつものになると思う。
83
2.6.地域の学校と連携した「地域学習カリキュラム」の開発
2.6.1. 地域プラクティス系地域連携授業:
弟子屈フィールドにおける学校支援事業および地域教材の学習
○木戸口正宏(釧路校講師)
進藤貴美子(釧路校教授)・今泉 博(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
2008 年 6 月 13 日~2008 年 12 月 12 日(全9回)
実施場所
弟子屈町内各小中学校および町内各地域
(1)背景と目的
本事業は、地域プラクティス系地域連携授業として、2007 年 8 月に北海道教育大学と相互協力協定を締
結した弟子屈町での学校支援事業および地域教材の学習を目的として取り組まれたものである。
大学の社会貢献・地域貢献に対する期待は年々高まっている。とりわけ道東地域における高等教育の重
要な拠点である北海道教育大学釧路校にとって、各自治体との連携、および教育活動に対する支援は、重
要な課題となっている。本事業は、そのような大学の地域貢献の一翼を担うものとして、意味のある活動
となることを目指し取り組まれた。
同時に、本事業は、教員養成大学として、近年の教育現場の要請に応える教員の資質の育成に寄与する
ものとしても取り組まれている。近年の教員養成課程の改革においては、教育実践科目と教科・教職科目
との連関の再構築、理論と実践の往還がひとつのキーワードになっているが、本事業もまた、そのような
実践(教育フィールド研究を中心とした小中学校での学習支援・行事支援ボランティア)と理論(大学で
の講義および教育フィールド研究のふり返り活動)との往還を意図して取り組まれている。
(2)方
法
弟子屈町内の各小中学校で、月1~2回程度の、学校フィールド研究および学習支援・行事支援ボラン
ティア(地域清掃行事や植樹事業への参加・協力を含む)年1~2回程度の「理科実験教室」
「地域環境学
習」など、学生を主体とした教育活動の企画・実施を行った。また、摩周湖・屈斜路湖など、地域の環境
資源を活用した「環境教育カリキュラム」、「地域学習カリキュラム」の開発にむけた事前の学習を行うと
ともに、「弟子屈町クリーンタッチ事業」に参加し、町内小中高生とともに域内美化の活動に取り組んだ。
具体的な活動内容は以下の通りである。
1)教育フィールド研究Ⅰ・Ⅱの実施
年9回(町内6小学校・2中学校で毎回 25 名を受け入れ)
2)主免実習・へき地実習などの実施
主免実習(母校実習1名)/へき地教育実習(のべ4校4名)
3)学校行事・授業への学生ボランティアの派遣
運動会(のべ7校 23 名派遣)/学芸会(のべ8校 25 名派遣)
クリーンタッチ事業(19 名派遣)
弟子屈子どもフェスティバル(学生 15 名・教員5名派遣)
その他行事・授業補助(のべ4校 14 名)
※運動会・学芸会では、主に用具の準備・移動・片づけ、児童の引率補助(運動会)
、舞台装置の設置・
移動・片づけ、児童の着替え補助・企画協力(学芸会)等の活動を行うとともに、適宜参与観察を行い、
84
行事場面での子ども理解の仕方や、教師の働きかけの仕方などを学んだ。
またへき地校の通学合宿では、
子どもたちと寝食を共にし、
特色のある教育活動について学ぶとともに、
学校規模によって異なる教育活動上の特徴・特色について学んだ。
4)公開研究会への学生参加(のべ2校3名参加)
(3)結
果
年間を通した授業参観、および行事支援の活動を通して、子どもや学校の実態を深く捉える目が形成さ
れた。とくに、へき地・小規模校の学校と地域との関わりや、地域の自然環境と子どもたちとの関わりに
ついて学ぶことができたのは、大きな成果であると考えられる。以上の活動を通じて、学生の教員として
の資質向上につながる学習・体験活動を積み重ねることができた。
学生達は、各小中学校の日常的な教育活動に、補助的な立場でかかわり、環境整備・採点補助など協力
的な業務にたずさわるとともに、適宜参与観察を行い、教室・行事場面での子ども理解の仕方や、教師の
働きかけの仕方などを学ぶことができた。これは、現在教員に求められている資質の向上という点で、重
要な成果であると考える。またへき地実習の実施は、道東の教員に求められる重要な資質の形成に寄与し
うるものである。
また学生教育という点では副次的な成果であるが、日常的な意見交換や調整の積み重ねを通して、教育
委員会・校長会と、一定の信頼関係を形成することができた。今後も双方の要望を提示しつつ可能な取り
組みから具体化するという原則を堅持し、より強固な関係を築いていきたい。
反省点としては、
「環境教育カリキュラム」、
「地域学習カリキュラム」については、事前学習の段階で終
わってしまったことが挙げられる。この点については、来年度以降引き続き課題として取り組む必要があ
る。
(4)学生教育における効果
年間を通した授業参観、および行事支援の活動を通して、学生たちの中に、子どもや学校の実態を深く
捉える目が培われた。また、へき地・小規模校の学校と地域・自然環境との関わりについて知ることで、
へき地・小規模校が多く存在する道東の地域課題に応える、ESD の視点を持った教師の育成に、寄与する
ことができたと受け止めている。さらに、行事・授業支援などの取り組みを通して、学生・教員ともに、
一定の地域貢献を果たすことができたと考える。
また地域清掃行事(クリーンタッチ事業)への参加・協力や、環境教育カリキュラムの開発を目指した
事前学習への参加を通して、環境資源の豊かさなど道東地域の地域特性に触れ、環境教育への関心を深め、
地域に貢献する教員として自らを成長させていく契機となることが期待される。
85
2.6.2. 弟子屈町と連携した「環境教育カリキュラム」・
「地域学習カリキュラム」の開発
○木戸口正宏(釧路校講師)
進藤貴美子(釧路校教授)・今泉 博(釧路校教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
2009 年 5 月 22 日~2009 年 11 月 6 日(全
5回)
実施場所
弟子屈町内各小中学校および町内各地域
(1)背景と目的
本事業は、2008 年度に引き続き、地域プラクティス系地域連携授業として、弟子屈町での学校支援事業
および地域教材の学習を目的として取り組まれたものである。昨年度の成果をふまえ、今年度は「環境教
育カリキュラム」・「地域学習カリキュラム」の開発など、地域プラクティス系地域連携授業の拡充を目指
して、活動を行った。
(2)方
法
昨年度に引き続き、弟子屈町内の各小中学校で、月1~2回程度の、学校フィールド研究および学習支
援・行事支援ボランティア(地域清掃行事や植樹事業への参加・協力を含む)年1~2回程度の「理科実
験教室」
「地域環境学習」など、学生を主体とした教育活動の企画・実施を行った。また、摩周湖・屈斜路
湖など、地域の環境資源を活用した「環境教育カリキュラム」、「地域学習カリキュラム」の開発にむけた
学習を行った。
具体的な活動は以下の通りである。
1)教育フィールド研究Ⅰ・Ⅱの実施
年7回(町内6小学校・2中学校で毎回 23 名を受け入れ)
※当初計画では年9回実施予定であったが、新型インフルエンザ対応のため、9/16、10/9 の2回分を
中止とした。
2)へき地実習の実施
へき地教育2週間実習(4校5名)
3)学校行事・授業への学生ボランティアの派遣
運動会(のべ6校 20 名派遣)
※学芸会の学生派遣は新型インフルエンザ対応のため中止
通学合宿補助(1校4名)
やんちゃウィンターフェスティバル補助(1校5名)
※運動会では、主に用具の準備・移動・片づけ、児童の引率補助(運動会)、舞台装置の設置・移動・
片づけ、児童の着替え補助・企画協力(学芸会)等の活動を行うとともに、適宜参与観察を行い、
行事場面での子ども理解の仕方や、教師の働きかけの仕方などを学んだ。またへき地校の通学合
宿では、子どもたちと寝食を共にし、特色のある教育活動について学ぶとともに、学校規模によ
って異なる教育活動上の特徴・特色について学んだ。
4)公開研究会への学生参加(10 名参加)
86
(3)結
果
年間を通した授業参観、および行事支援の活動を通して、子どもや学校の実態を深く捉える目が形成さ
れた。とくに、へき地・小規模校の学校と地域との関わりや、地域の自然環境と子どもたちとの関わりに
ついて学ぶことができたのは、大きな成果であると考えられる(詳細については、以下に引用する学生の
感想などを参照のこと)
。
学生達は、各小中学校の日常的な教育活動に、補助的な立場でかかわり、環境整備・採点補助など協力
的な業務にたずさわるとともに、適宜参与観察を行い、教室・行事場面での子ども理解の仕方や、教師の
働きかけの仕方などを学ぶことができた。これは、現在教員に求められている資質の向上という点で、重
要な成果であると考える。またへき地実習の実施は、道東の教員に求められる重要な資質の形成に寄与し
うるものである。
ただし新型インフルエンザの影響などもあり、環境教育関係の行事(弟子屈クリーンタッチ)が中止に
なってしまい、弟子屈地域での環境教育の進展について、実地での学習が十分にできなかった。また「環
境教育カリキュラム」、
「地域学習カリキュラム」については、端緒的な取り組みにとどまっており、事業
終了後も、引き続き課題として取り組む必要がある。
今後は、財政的・地理的な制約があるなかで、より効果的な支援活動を行うために、どのような学生派
遣の在り方があるか、検討していくことが求められる。
(4)学生教育における効果
年間を通した授業参観、および行事支援の活動を通して、学生たちの中に、子どもや学校の実態を深く
捉える目が培われた。また、へき地・小規模校の学校と地域・自然環境との関わりについて知ることで、
へき地・小規模校が多く存在する道東の地域課題に応える、ESD の視点を持った教師の育成に、寄与する
ことができたと受け止めている。さらに、行事・授業支援などの取り組みを通して、学生・教員ともに、
一定の地域貢献を果たすことができたと考える(詳細については、以下に引用する学生の感想などを参照
のこと)。
学生の感想
児童の成長と感動
今回の弟子屈フィ一ルドは翌日の学芸会に向けて準備と練習に追われていた。前回のフィールドでも学芸会の
準備と練習をしていた。その時、児童の合唱と器楽の演奏を聴いた。合唱の感想は、声は大きいのだがただ怒鳴っ
ているだけで、単語を聴き取れなく何を歌っているのかわからなかった。学生からもこのことを指摘し、学芸会までに
改善することを児童と約束した。楽器演奏に関しては、障害を持つ二人の児童がタイミングをつかめず、楽器を奏
でることができなかった。私もその一人の児童の横に付き指導したが、なかなかうまくできなかった。私は、学芸会ま
でには少しは良くなるのだろうが、去年の学芸会とそう変り映えしないのだろうと思っていた。
児童の最後の練習に参加して私は本当に驚いた。合唱は、改善すると私たちと約東していたところが改善され、
大きな声で単語一つ一つがはっきりと聞き取れるようになっていた。楽器演奏も、全く奏でることのできなかった二
人が完璧に奏でていた。そしてなんとソロまでやってのけていた。私は素直に感動した。子供はこんなにも成長する
ものなのかと驚かされた。練習が終わった途端その二人の児童に駆け寄りうんと褒めた。褒めたというよりも、ただ感
動を伝えただけだったかもしれないが…。聞くと毎朝練習したそうだ。
このとき、教師も大変熱心に教えたのだろう。そして児童も熱心に練習したのだろう。その成果が本当によくあら
87
われていた。私はより強く教師になりたいとおもった。自分は何も教えていないが、児童の成長を見ることができてこ
んなに感動したのは初めてだし、こんなに感動できるのもこの仕事だけだと思った。そして、この和琴小学校の先生
のような教師になりたいと思った。将来は大規模校で働きたいと思っていたが、へき地で働きたいと思った。改め
て、教師になる活力がわいた。
子どもに反映される教師の思い
今回のフィールド研究では、奥春別小学校で行われた公開研究会に参加することが出来た。このような公開研
究会に参加する機会はめったに無いので、大変貴重な経験をさせて頂きとても勉強になった。
奥春別小学校はへき地校ということで、複式学級で授業が行われている。私のフィールド研究先である昭栄小学
校もそうなのだが、やはり学校や教師が違うと教え方も異なり、その点でも勉強になった。昭栄小では全員が肩を並
べ、一斉授業のようにして進めるのだが、奥春別小では学年ごとに黒板を分け、別個に授業を行っていた。私は複
式学級というとやはり別個に授業を行うというイメージが強かったのだが、一斉授業のように行うことで、異学年の内
容を関連付けたり、復習としてもう一度内容を確認できたりなどの工夫も出来ることがわかった。なので、今回奥春
別小で行われている学年を分けての授業方法は私にとって新鮮だったのだ。その中で、児童に損な時間を作らせ
ない、という教師の意図が感じられた。これは通常学級でももちろんそうなのだが、複式学級ではそれをより強く感じ
たのだ。一方で説明をしている間にもう一方で練習問題を解かせるなど、一方に付きっきりになれないため、様々な
工夫をこらしていた。説明に時間がかかってしまったり、問題を早く解き終わってしまったりと、必ずしも計画通りに
進まないが、こうした思いを強く持っているだけで教室の雰囲気は変わり、児童にもやる気が出るのではないだろう
か。教師の姿は児童に反映されるというが、「子どもたちにこんなことを学ばせたい」という思いを明確に持つことが
大切なのでは、と研究協議で先生方のお話を聞き特に強く感じた。
今回、公開授業と研究協議に参加させて頂いたのだが、へき地校ならではの工夫や通常学級と複式学級との違
いを感じることが出来たりなど、たくさんのことを学んだ。これらの学んだことを今後の実習などで生かしていきたい。
88
3. ESD 関連フィールド実地調査(国内)
3.1. 屋久島におけるエコツーリズムの実際
神田
房行(釧路校教授)
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 19 年 11 月 15 日~20 日
実施場所
屋久島
(1)背景と目的
屋久島は我が国における生態系として亜熱帯から冷温帯までの幅広い植生を持っていると同時に、縄文
杉に見られるように樹齢 3000 年から 3500 年(7200 年説もある)という巨木が残る島嶼生態系を維持し
ていることでも知られている。また、標高 1936m の宮の浦岳を始めとして九州地方で1位から7位までの
標高の山が存在し、海岸のマングローブや海岸に面した標高数メートルの平地にある亜熱帯の照葉樹林か
ら毎年冬期間には 3~6m の積雪を見る高山の山頂部まで、我が国の九州から北海道までの自然環境を凝縮
したような植生の垂直分布をしていること。また、多くの固有植物種や南限・北限の植物が自生している。
このようなことから 1993 年 12 月には世界遺産として登録された。近年、縄文杉が広く国内外に知られる
ようになり、屋久島を舞台としたエコツアーが盛んになってきている。北海道でも釧路湿原や大雪山、知
床の世界遺産でエコツーリズムが行われるようになってきたが、エコツーリズム先進地である屋久島のエ
コツールズムの実際や、ツアーの案内をしているツアーガイドの実際や、エコツーリズムにおける問題点
などの調査を行うのを目的とした。
(2)方
法
1)調査地域:屋久島(特に縄文杉、白谷雲水峡、屋久島観光文化村センター)
2)調査旅行期間:2007 年 11 月 15 日~20 日
3)調査日程・行程:
2007 年 11 月 15 日
JAL1145 便
釧路 15:10→東京 16:55
2007 年 11 月 16 日
JAL1863 便
東京 08:05→鹿児島 10:00
鹿児島フェリーロケット
東京泊
鹿児島 12:20→屋久島 14:10
「屋久島環境文化村」視察
民宿まんてん泊
2007 年 11 月 17 日
3:30 起床
ツアー準備
4:30 屋久杉エコツアー出発
終日:屋久杉エコツアー(ツアー時間:14 時間)
民宿まんてん泊
2007 年 11 月 18 日
5:00 起床
ツアー準備
6:00 白谷雲水峡ツアー出発
15:00
民宿まんてん泊
89
2007 年 11 月 19 日
7:00 起床
屋久島低地の照葉樹などの植物観察
鹿児島フェリーロケット
JAL1878 便
2007 年 11 月 20 日
JAL1145 便
屋久島 12:00→鹿児島 14:45
鹿児島 19:45→東京 21:20
東京泊
東京 7:55→釧路 09:30
(3)各調査日程ごとの調査内容、調査結果の概要
第1日目(11 月 16 日)「屋久島環境文化村」視察
ここは屋久島環境文化財団の運営する屋久島の博物館である。今回の目的である屋久島の自然について
の全体的な解説やビデオ映像の展示で訳す間野すばらしい自然と人々の暮らしを分かりやすく紹介してい
る。屋久島の全体像についての知識を習得するのには最高の施設であった。
第2日目(11 月 17 日)「縄文杉エコツアー」の体験
エコツアーは縄文杉を観察することや屋久島の自然の垂直分布、世界遺産の体験などを行うことができ
た。全行程は 22km あり、早朝に出発しなければならなく、また、縄文杉は標高 1396m の高塚山の南斜
面にある。登山口から標高差 700m ある。ツアーに要した時間は登り 6 時間、下り 4 時間合計 10 時間と
いう大変ハードなものであった。登山口から3時間近くは屋久杉切り出しのためのトロッコの線路が通っ
ており、今はないが小杉谷集落跡を通って大株歩道入り口まで比較的緩やかな登りが続いていた。
第3日目(11 月 18 日)
「白谷雲水峡ツア
ー」
5:00 に起床し、ツアー準備後 6:00 に
ガイドさんが来て出発であった。
「白谷雲
水峡」は屋久島らしい原生的な自然の残
る地域であった。早朝の方が観光客が少
なく、自然を体験することが出来るとい
うガイドさんの考えで早朝出発している
とのことであった。雨模様の一日であっ
たが、反って屋久島らしい雰囲気を堪能
出来たような気がする。残念だったのは
原生林の中は雨のせいもあり暗くて良い
写真が撮れなかったことである。
縄文杉
第4日目(11 月 19 日)「屋久島低地の照葉樹などの植物観察」
屋久島の最終日である。12 時に屋久島をフェリーで発つので、午前中に植物観察をした。これまで高山
や山岳の生態系を主に見たので、屋久島の平地の照葉樹林を見ようと思ったからである。
(4)全体としての成果の概略
エコツアーは少人数が常道であるが、縄文杉ツアーはガイド1人にツアー客が6人、計7人のツアーで
あった。当日は 11 月中旬でもあり、ピーク時と比べると人数も少ないということであったが、それでも縄
90
文杉ツアーの人数は約 400 人ということで、ピーク時の 1000 人の4割の入り込み数であった。年々多く
なるとういことであった。このツアーは屋久島に約 20 社あるツアー会社の中でネイティブビジョンという
名の会社であった。ツアーガイドさんは 50 代のベテランで、エコツアーがブームになる前からガイドをし
ていると言うことでガイドの中でもリーダー的存在の方であった。いろいろと情報を聞くことができた。
ツアーガイドは屋久島で約 150 人いるが、実際にガイドをしているのは約 100 名で、毎日のようにガイド
をしているのはその内の約 50 人と言うことであった。このガイドさんもほぼ毎日ガイドをしているという
ことで、屋久島の地誌から動植物まで誠に詳しいガイドであった。植物も粘菌まで話が及び地域の歴史人々
の暮らしなど幅が広かった。ガイドになるための養成講座などはなく、皆自分で知識を習得しているよう
であった。ガイドは殆ど島外の人であるとのことで釧路などと状況は似ているなと思えた。ただこれだけ
のガイドがガイドという仕事で食べていけるというのは驚きであった。ガイド料はツアー企画によってい
ろいろであるが、ツアー客一人あたり、1日 1.5 万円~数千円という料金で、決して安くはないがガイド
を頼むメリットは十分あるように感じた。ツアーの規模は平均 5 名程度で、1人からでもガイドを行って
もらえる。
「白谷雲水峡」ツアーはガイド一人に、客は私一人という最も恵まれたツアーであった。料金は事前に
払い込んでいたので恐らく1人でも5人でも同じ料金であろう。ガイドはツアーによる環境の破壊に細か
く気をつかい、ツアーによって屋久島のコケが少なくなっている事など、詳しく説明してくれた。ツアー
の最後には下山後に手作りの昼食をごちそうになり、屋久島や北海道の自然などの話で盛り上がった。ガ
イドの個性が出ていると感じた。
(5)学生教育上の効果
環境教育の中で実際に自然を体験しながらエコツーリズムを行うのは学生の今後のツーリズムもあり方
に大いに参考になることがらである。自然環境に配慮しながらエコツールズムをおこなうにはどのような
点に留意しなければならないかなど学生の教育上大変参考になるものと思う。また、釧路校の所属学生は
学芸員や自然ガイドなどの希望を持つものも少なくないが、これからのエコツーリズムでそれらの需要が
どのような方向性を持つか調査によりある程度明らかになるものと思われる。
91
3.2. 公害発生都市の現状調査(水俣、四日市)
田丸
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年3月 12、13,14
典彦(釧路校教授)
、15 日
1)四日市:室四日市環境学習センター公害資料室、四
日市の第1コンビナート、第2コンビナー、四日市ぜ
実施場所
んそくの被害地区の磯津および関連の港湾施設
2)水俣:水俣湾埋立地、水俣病資料館、水俣病情報セ
ンター、水俣歴史考証館、果樹園と漁港、リグラス工
房びんの風
(1)背景と目的
公害問題は、社会科の教科書で取り上げられていることから、学生たちはいわば受験用に 4 大公害を丸
暗記している。しかし、公害は過去の解決済みのことと思っている者も多く、水俣訴訟は現在も続いてい
る問題でありことを知っている学生はほとんどいない。企業による人命を損なうほどの環境汚染がどのよ
うなものであったか、解決に至っているのか、人や地域社会への後遺症はどのようなものか等検討されね
ばならないことが多く残されている。今回 4 大公害のうち四日市市と水俣市を訪問し、生産活動による環
境破壊の凄まじい実態とその回復への取り組みを調査する。
(2)方
法
1)四日市
インターネットで四日市環境学習センター公害資料室を検索し、電話にて見学依頼する。その際、四日
市再生「公害市民塾」の澤井余四郎氏を紹介してもらう。当日は澤井余四郎氏が所要不在のため、
「公害市
民塾」の他の方に車にて案内していただいた。
2)水
俣
水俣甘夏みかん生産組織の「きばる」の知人を通して、水俣教育プラニングを紹介してもらう。水俣教
育プラニングのガイド(有料)で水俣関連諸施設の訪問と患者さんの話を聞いた。
日
程
●第1日目
移動日
釧路→
東京泊
●第2日目
東京(新幹線)→名古屋
名古屋(快速)→四日市、諸施設および港湾見学
●第3日目
四日市→名古屋
新八代
新八代→新水俣
小牧空港→熊本
熊本空港(バス 60 分) →熊本駅
水俣泊
諸施設および水俣病患者さんや支援者達の現状を聞く。
●第4日目
新水俣発(新幹線)→新八代
四日市泊
→以下別旅程
92
熊本(新幹線)→
(3)結
果
1)四日市
四日市環境学習センター公害資料室長から展示パネルをもとに四日市公害の発生と被害そして現状につ
いて説明してもらう。その後、四日市再生「公害市民塾」の方に、四日市の第1コンビナート、第2コン
ビナー、四日市ぜんそくの最初の患者発症地の磯津および関連の港湾施設について案内してもらった。
1a
四日市環境学習センター公害資料室の展示
1c
今も盛んに稼動している第 1 コンビナート
1e
映像放映がよく行われた工場群中の小学校
1b 公害資料室の当時の調査器具
1d 同左
第 2 コンビナート
1f 最初に患者さん発生した磯津地区
93
2)水
俣
水俣教育プランニングの案内で、水俣湾埋立地、水俣病資料館、水俣病情報センター、水俣歴史考証館
の見学、果樹園と漁港特に水俣病が最初に報告された袋地域など見学する。最後にリグラス工房びんの風
の工房主で水俣病患者さんから、ご兄弟と水俣湾で遊んでいた一枚の写真をもとに水俣病について色々な
話を伺う。また、知人の紹介で水俣病患者支援の運動を続けてきた何人かのひとの話を伺った。
2a
チッソ水俣工場
2c
水俣病で死んだ全ての生き物慰霊碑(埋立地)
2e
2g
2b 市内に建てられた水俣病関連説明展示版
2d 官立の水俣病資料館と情報センター
2f 水銀汚染を立証したネコ実験小屋
民間の施設「水俣歴史考証館」
2h 甘夏みかんも水俣の特産品
今も変わらぬ豊饒の海
94
(4)学生教育における効果
学生たちは公害については受験に必要な知識として一定程度学んできている。しかし、企業による地域
住民の生命を奪うほどの凄まじい環境汚染の実態について具体的な認識にまでは至ってはいない。日本の
高度経済成長の暗の部分として、また、発展途上国にとってはまさに今日的課題として、日本が経験した
ような公害は、世界のどの地においても再び発生させてはならない。そのために、環境教育の中で公害を
しっかりと取り上げ、その実態を十分検証する必要がある。
四日市喘息については、優れた日本の環境関連技術である排煙中の脱硫装置の開発によって終息に向か
ったとされている。しかし、今回、
「公害市民塾」の方にお話を伺ったところ、そのようなこともあるかも
しれないが、当時は大気汚染の濃度が高まると、各企業に連絡して、より値段の高い重油に切り替えても
らい汚染を抑えていたこと。また、水俣と違い、患者さんを汚染地区から転居させれば喘息の発作がなく
なること、汚染工場が多数で患者さんへの補償も十分行える財力があったこと等の説明を受けた。このよ
うな公害発生時の住民の生の話を学生たちに伝えることにより、四日市の公害について学生たちはより具
体的なものとして理解し得る。
水俣病については、工場廃液が原因であることを知っている学生は相当数いる。しかし、原因工場のチ
ッソが現代社会に必須な塩化ビニールを作る工場であること、工場の廃液が原因であることを知りながら
隠蔽して生産を続け、水銀汚染を拡大して膨大な水俣病患者を発症させたこと、さらに、当時多くの若者
たちが水俣病患者支援のため日本国中から集まり大きな社会運動となっていたことなど、関連する事柄に
ついてはほとんど知識がない。患者さんの支援活動を続けて水俣に定住した人は、もう若者ではなく結婚
した人もいて、その子供たちが関連施設を手助けするなど水俣地域に根を生やした支援活動が今も続けら
れていた。また、水俣を学ぶため、長期滞在の若者が世界中(この時はドイツの高校生)から来て、ガイ
ヤみなまたの施設に宿泊していた。公害という日本の社会が生み出した負の遺産を正面から見据え、伝え
てゆこうとする地道な活動が見られた。
今回の調査では、患者さんや支援者など水俣病に関わって生きてきた人たちの、それぞれの生き方につ
いての話を伺うことができた。学生たちには、その人たちの考えや生き様を伝えることにより、水俣病を
抽象的なものではなく具体的なものとして理解した。さらに、公害が加害者の企業と被害者の住民という
単純な構造で考えることができない、日本社会が作り出した大きな社会問題であるとの理解も深まった。
95
3.3. 阿蘇・諫早・八郎潟・印旛沼・霞ヶ浦:
農地の拡大と環境との関わり
田丸
事業期間
典彦(釧路校教授)
平成 19 年度、平成 20 年度
1)平成 20 年 3 月 15 日~18 日(阿蘇、諫早)
実施時期
2)平成 20 年9月 26 日~9月 29 日(八郎潟)
3)平成 21 年 2 月 27 日~3 月 2 日 (印旛沼・霞ヶ浦)
実施場所
熊本県阿蘇、長崎県諫早、秋田県大潟村、千葉県印旛沼、
茨城県霞ヶ浦
(1)背景と目的
近年に至るまで、日本は増大する人口とそれに伴う食料不足を補うため、国家的事業として食料増産に
励んできた。特に山岳丘陵地域が多く農耕適地が限られているわが国は、寒冷地や湿地などの平坦地の耕
作不適地を開発して広大な農耕地を確保する開発農業が推進された。しかし、高度経済成長以降、食料自
給を高めるより、発展した工業生産物を輸出し、代わりに食料を輸入することで、国内における食糧の安
定供給が図られてきた。このため、日本は、先進国の中では際立って低い食料自給率となり、食糧供給に
ついては依然として不安を抱えたままではあるが、国民は飽食の時代を迎えている。
こうした中、農産物価格が海外輸入品に負けない低コストを実現するため、効率的農業生産を目指して
大規模化が推進されている。一方、日本の気候風土の中で培われてきた農業、すなわち、お百姓さんが営
む生業としての農業との考えに立ち、農業を見つめなおそうとする動きも生まれている。更に、新たな要
因として、現代農業では各種の農薬規制に顕著に現れているように、環境と健康を考慮した農業生産が求
められるようになった。
本調査は、上記の時代背景を踏まえ、環境に配慮する余裕など無かった時代に取り組まれた、耕地拡大
の開発農業の現在の有り様について、特に環境面との関わりを探る目的で、高冷地の阿蘇と大規模な干拓
が行なわれた諫早、八郎潟、印旛沼、霞ヶ浦を調査した。
(2)方
法
1)阿蘇、諫早
阿蘇:水俣甘夏みかん生産者の紹介により、阿蘇(赤水)で農業を営み、阿蘇百姓村を主宰されている
山口力男氏を訪ねお話を聞くことができた。
●熊本→阿蘇(赤水
泊)→長崎(泊)
諫早:平成 13 年に潮止め堤防の締め切りを巡り、漁業者の激しい抗議行動があり、その時は新干拓地を
訪問したが、今回は干拓の情宣施設である諫早干拓資料館を鉄路を利用して見学した。
諫早干拓資料館は「ゆうゆうランド干拓の里」の中にある建物で、干拓の里は他にこの地方の民家
や水族館などがあるレジャー施設。
●長崎→諫早
諫早(島原鉄道)→干拓の里(諫早干拓資料館)→諫早(バス)→長崎空港
2)八郎潟
96
秋田県立大学の個人的知人を通して、大潟村の干拓地農業や環境保全型農業の現状および八郎潟残存湖
の現状を見学した。広い地域でしかも交通の便が悪く、車の使用が有効である。
秋田市(秋田泊)→秋田県立大学(車)→大潟村(大潟村泊)(車)→八郎潟駅→秋田
●第1日目
釧路→秋田市(秋田泊)
●第 2 日目
秋田県立大学→大潟村 大潟村干拓記念館 見学
●第 3 日目
大潟村→八郎潟駅 八郎潟記念館見学 →秋田(千歳経由)→釧路
(大形村泊)
3)印旛沼・霞ヶ浦
印旛沼は、佐倉の観光協会からレンタル自転車が利用できる。
印旛沼まで行く道路が狭隘でちょっと怖い。印旛沼に着くと快適なサイクリングロードがある。
霞ヶ浦のクルージングは、時期が悪く乗船者不足のため欠航となり乗船できなかった。
常陸川水門と霞ヶ浦科学館の見学は公的交通機関の便が悪く、今回は知人の車で見学した。
●第1日目:釧路→羽田
(千葉泊)
千葉市資料収集:千葉県立中央博物館で利根川治水の歴史調査
●第2日目
佐倉→土浦
(土浦泊)
印旛沼調査:印旛沼干拓地と現在の印旛沼の利用調査
印旛沼サイクリングロードを自転車で見学
●第3日目
土浦→潮来
霞ヶ浦調査
(潮来泊)
:霞ヶ浦の調査:高浜霞ヶ浦干拓地調査
千葉県博物館大利根分館、
霞ヶ浦環境科学館見学、常陸川水門見学
●第 4 日目
水郷地帯調査 潮来→羽田
羽田→釧路
(3)結
1)a
果
阿蘇
阿蘇百姓村主宰の山口力男氏に会い、農業について話をお聞きした。丁度外輪山の野焼きで大観峰に車
で案内してもらい壮大な野焼風景を見ながら、高冷地阿蘇の農業や生業としてのお百姓さんの生き方につ
いて独自の考えをうかがった。(山口氏については、彼のホームページを参照されたい。)百姓村の施設で
は、学生の長期宿泊を受け入れるとのことで、共同生活しながら野良仕事をする貴重な体験ができる。
1a
1b
阿蘇外輪山の雄大な野焼き
97
阿蘇百姓の家と山口氏
1)b
諫早
日本各地で遠浅海岸を干拓して耕地(水田)の拡大を目的とする干拓事業は、江戸時代から盛んに行わ
れてきた。諫早の干拓事業も古くから営まれてきたものである。しかし、海苔などの沿岸漁業の不振が続
く中、平成 13 年には、潮受け堤防の締め切りに対して、漁業者たちの激しい抗議があった。
今回の訪問は2度目で、平成 13 年には堤防内部を訪問したが、今回は干拓についての公的な説明施設で
ある、干拓資料館を訪ねて諫早出身の館員に干拓の意義について解説してもらった。すなわち、諫早干拓
は歴史的に行なわれてきたこと、諫早地方は水害多発地域で、干拓と調整池は水害対策の役割を担ってい
ること等の説明を受ける。しかし、干潟については生物や漁法についての展示はあったが、干拓の影響に
ついての説明は聞かれなかった。
1c
諫早干拓資料館
1d
1e
干拓地の歴史的拡大の資料
1f 水族館のムツゴロウ
98
干拓地の模型展示
2)八郎潟(大潟村)
八郎潟干拓事業と農地の造成については、小中学校の教科書で紹介されているが、そこで営まれている
農業生産や、残存湖については略記されているにすぎない。現在、干潟干拓の問題は、九州の諫早でも潮
止め水門の開閉を巡って裁判が行なわれるなど、今日的課題である。大潟村では、「21 環境創造型農業」
を掲げ、従来の生産重視型の農業生産と異なる、環境を考慮した農業生産を目指そうとしている。実際、
秋田県立大学の教員の説明を受けながら、大潟村の大規模水田を見学したが、有機栽培に取り組んでいる
2a 大潟村の広大な干拓耕地と残存湖
2c
2e
干拓地の生命線(大潟村を貫く排水溝)
有機農法で栽培している農家が多い
2b ホテルの窓からの大潟村の眺望
2d かつての湖底を示す多くの貝殻
2f 環境に配慮した農業への呼びかけ
99
農家が多く見られた。そもそも、沼底の肥沃なヘドロが耕作地であることから、化学肥料を使用しなくて
も高い生産性が得られるようであった。ただ、海面下より低い耕地は、常にポンプ排水が行なわれており、
この広大な耕作地の維持には相当多くのエネルギーの投入が常に必要であることがわかった。残存湖は、
水田代掻きなどの影響で汚染・汚濁が懸念され、こうした面からも不耕起栽培が取り組まれているようで
ある。
2g
干拓記念館の受付嬢(大潟村は南瓜が特産)
2i 漁法などが展示されている八郎潟展示館
2h 3770cmの小山(頂上は海抜0m)
2j 残存湖に発生しているアオコ
3)印旛沼・霞ヶ浦
本調査では、印旛沼の広大な干拓地が明治以降に開発され、それらが客土により湿害を克服したことと、
現在の印旛沼が市民にとっての親水公園として利用されていることを学んだ。次に
千葉県立博物館大利
根分館により利根川治水の歴史を学び、霞ヶ浦淡水化の決め手となった常陸水門を見学し、大規模干拓地
の稲敷地域と高浜地域を訪問した。霞ヶ浦干拓地は河川の浚渫土壌を客土することにより、安定した農耕
地となったことが分かった。さらに、霞ヶ浦環境科学館では、霞ヶ浦の歴史と現状について認識を深めた。
これらの調査結果から、干拓地の農業生産と湖沼の環境保全については、地域に住む人々の生活史の面か
ら多面的に考察することが重要であるとの認識が深まった。
100
3a
3b 親水公園として活用されている印旛沼
印旛沼の干拓記念碑
3c 千葉県博物館大利根分館
3e
稲敷市の博物館の干拓史展示
3d 利根川の治水、利水の歴史的説明
3f 湿潤な霞ヶ浦高浜の干拓耕地
101
3g
3h 利根川の逆流防止のための常陸水門
利根川流域に見られる用水施設
(4)学生教育における効果
人類による自然破壊の開始は農耕より始まったとされるが、農業そのものが自然環境に大きく依存した
生産活動であること、人類の生存にとって不可欠な営みであることなどから、環境と農業のかかわりにつ
いては難しい問題が多く存在する。
日本は、イネが伝播されて以来その優れた生産力を求めて、稲作を中心とする耕作体系が進められてき
た。このため、日本各地で水田の拡大が時代を超え、地域を越えて推進された。九州の諫早は江戸時代か
ら大きな干拓が行なわれ、秋田の八郎潟は戦後の干拓により広大な農耕地を生み出した。関東の印旛沼や
霞ヶ浦も、同様に干拓により農耕地を拡大させた。
ところで、今日では干潟は生物環境にとって特に大切に保護しなければならないとの認識は、環境を学
んでいる学生たちにとっては容易に理解されている。しかし、今回訪問したところはいずれも野生生物に
とって重要な干潟や湿地などを耕作不適格地とし、日本の国家的事業が自然環境を破壊、改変して農業開
発を行ったところである。
環境よりも国民の生活を優先させることは、現在の発展途上国では普通に行われていることで、これに
対して日本も含めて先進諸国が環境への配慮を求めるということがよく報じられている。日本で食糧増産
に向けた開発事業が取り組まれた敗戦後の状況を振り返ってみると、1 ドルは 360 円で、1 日の土方労働
が 1 ドル以下の 254 円(ニコヨン)であり、多くの国民が満足に食事を取れない状態であった。現在の発
展途上国と同様に貧困と飢えにあえいでいた当時の日本は、国家事業による農業開発を強力に推し進め、
干拓事業ばかりでなく森林に覆われていた北海道への戦後入植も盛んに行われたのである。
さて、開発と自然保護という大きな環境問題を学生たちが考える時、上記のような時代状況を踏まえて
日本で行われた大規模開発の有様を具体的な教材として取り上げることは、学生たちにとって身近な問題
として考えることができ、また、発展途上国の主張に対してもより深い認識を抱くようになる。また、諫
早の潮止め水門の開閉を巡っての裁判については関心を抱くなど、この種の問題は、自然科学的判断ばか
りでなく社会的問題として検討する必要があるとの理解に至った。
なお八郎潟、印旛沼、霞ヶ浦、諫早等のすべての干拓地は、その維持のため排水に一定のコストを要す
る。しかし、諫早を除いて、開発事業が完了し農業生産が安定しているところでは、環境へ配慮した様々
な取り組みが行われており、特に大潟村では、「21 環境創造型農業」を掲げ、従来の生産重視型の農業生
産と異なる農業生産を目指そうとしている。学生たちは、このような環境にやさしい農業について高い関
心を示した。
102
学生の自主学習体験施設について
今回見学した多くの公的施設は比較的よく整っており、環境教育の面から学生達が見学しても関心を引
くものが多いと感じた。また、阿蘇では関心のある学生を受け入れてくれる長期宿泊施設と組織があるこ
とが分かった。学生たちが宿泊体験できる施設や受け入れ団体は、様々な分野で各地にいくつもあること
が推測できる。学生たちが自主的体験学習として学ぶ時、このような施設、組織の活用は大いに有用であ
ると言える。
103
3.4. 白神山地における持続的観光開発の可能性
田丸
典彦(釧路校教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 10 月 10 日~10 月 13 日
実施場所
釧路校
(1)背景と目的
白神山地は、世界自然遺産に登録され、毎年多くの人々が訪れるようなった。保護地域は秋田県と青森
県にまたがっており、俗に秋田県側では自然保護が優先され、青森県側では観光資源としての活用が望ま
れていると言われている。そこで、白神山地における自然保護と持続可能な観光開発の現状を調査・見聞
し、釧路校の学生にとって身近である釧路湿原や世界自然遺産登録地の知床半島等の自然保護と持続的観
光開発について考察する教材として自然を保護しながら行なわれる観光開発の現状と問題点を講話、解説
する。
(2)方
法
調査日程、行程
平成 20 年 10 月 10 日(金)~平成 20 年 10 月 14 日(火)
1日目:釧路→弘前泊
2日目:弘前よりレンタカーを使用。午前は世界遺産白神山地ビジターセンターでガイドを依頼し、
「ブナ林散策道」と「暗門の第3の滝」コースをガイドに案内されて探索、午後は、
白神ラインをレンタカーで岩崎村に抜け、白神山荘に到着。白神山荘泊
3日目:「白神岳」登山、下山後能代で泊。
4日目:能代から世界遺産センター(藤里館)を訪れ、そのまま北上して「岳袋自然観察教育林」でブナ林
を散策し再度世界遺産センター(西目屋館)を訪れ、弘前に戻る。弘前泊
第 5 日:弘前→→釧路
(3)結
果
散策路のブナ林
暗門第3滝
104
マザーツリーといわれるブナの巨木
白神ラインからの紅葉の白神山地眺望
白神岳山頂の筆者
白神山地の多くのブナに彫り込まれた落書き
急峻な渓谷に刻まれた白神山地
岳袋自然観察教育林
・青森側の暗門の滝とブナ自然林を有料ガイドの案内で散策したが、ガイドの白神山地に対する知識は豊
富であると共に、ブナ林に対する愛着が強く感じられて好感が持てた。
・西目屋村から岩崎村に抜ける白神ラインは急カーブの連続で未舗装道であったが、途中 2 地点でトイレ
が設置され、自然を汚さないという視点での環境整備が感じられた。
・白神岳は、多くの登山者が訪れていたが、ここでも山頂のトイレはよく管理され、ヘリコプターにより
汚物の運搬がなされている。
・秋田側の岳袋自然観察教育林を散策したが、訪問者は散策道以外の立ち入りが規制され、自然林の保護
が図られていた。
105
・ナは、現在は大切に保護されているようだが、以前に多くの樹幹に彫られた落書きは目に余った。
以上、白神山地は世界遺産に登録されたことにより多くの観光客が訪れるようになり、観光資源として
活用が図られているが、そもそも急峻な渓谷に沿った狭隘な山道が幹線であり、大規模開発は馴染まない
ところである。ビジターセンターの活動も、自然を理解し白神山地を愛するリピーターの育成に力を入れ
ていた。今後の白神山地の観光開発は、このような観点を重視して行なわれると感じた。
(3)学生教育における効果
学生には、上記のような調査結果をもとに、環境や遺伝資源保護に関わる授業で白神山地を教材として
取り上げ、自然を保護しながら行なわれる観光開発の現状と問題点を講話、解説した。釧路は釧路湿原を
始め阿寒湖や世界自然遺産登録の知床半島など、豊かな自然と観光開発が身近で見られることから、この
難しい課題に対する学生の興味と関心は高く、理解も深かまったと感じた。
106
3.5. ESD の視点による小笠原諸島の生物多様性現状調査
生方 秀紀(釧路校教授)
実施年度
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 6 月 4 日(木)~平成 21 年 6 月
17 日(水)
実施場所
東京都小笠原村(父島、母島、弟島、南島)
(1)背景と目的
固有種生物の比率が高く、絶滅危惧種も多く存在する小笠原諸島を訪れ、外来種導入や経済開発などの
影響による生物多様性の急速な衰退と保全への取り組みの現状ならびに島における環境教育の実態を調
査し、生物多様性と開発が両立する ESD のあり方を題材とした授業の内容を充実する。
(2)調査日程・内容
第1日目(6月4日)
釧路→東京(東京泊)
第2日目(6月5日)
午前 10 時、東京港出航(おがさわら丸)。
第3日目(6月6日) 午前 11 時 40 分、父島着。小笠原水産センターおよび小笠原ビジターセンター
を訪問して展示物や図書資料などの閲覧とスタッフへの質問により、小笠原の自然環境および漁業につい
ての概観を得るとともに情報の収集を行った。夕方には、自然保護関係で調査に入っている神奈川県の博
物館学芸員ら一行と面談し、島の自然環境、とくに昆虫の生息状況の現状について聞き取りを行った。
第4日目(6月7日)
地元の自然ガイドの案内で、島の南西部の小港地区で海岸植生、河口植生を観
察した。引き続き、熱帯農業センターの圃場、温室内で熱帯性果樹、野生植物を観察。ここでは野生化ヤ
ギの小群に遭遇した。その後、赤灯台付近の柱状摂理・サンゴ礁を観察し、午後は宮の浜、長崎展望台で
海岸生態系を観察した。
第5日目(6月8日)
自然ガイドの案内で、中央山に徒歩で登りながら地形や植生を観察を行った。
引き続き、車で東平に移動し、固有亜種アカガシラカラスバトのサンクチュアリ内での保護の状況を視察
した。その後、途中で小規模な農地を見学してから三日月山展望台で一帯の森林、海岸の状況を観察した。
第6日目(6月9日)
「ゆり丸」で父島から母島へ移動した。午後、母島の小学校(中学校併設)を
訪問し、4~6年生対象の総合学習特別授業(自然環境について都レンジャー2名がクイズ形式や作業課
題を用いて学習指導)を参観させていただいた。そのあと、副校長からこの学校の概要および環境教育の
方針・内容についてお話をうかがった。そのほか、アンケート調査も依頼した。
第7日目(6月 10 日) 地元、母島の自然ガイドの案内で乳房山山頂までの往復ルートで母島の動植物
についての観察と聞き取りを行った。母島独自の固有種も多く存在すること、ニューギニアヤリガタウズ
ムシが未侵入、グリーンアノールの個体数がまだ少ないため、昆虫類や貝類が父島にくらべてまだ残存し
ていることなどの情報が得られた。
第8日目(6月 11 日) 前日と同じ自然ガイドの方の車で石門一帯の観察ルート沿いで母島の動植物に
ついての観察と聞き取りを行った。とりわけ、オガサワラグワが衰退し、外来種アカギが在来種を駆逐し
ている状況、希少固有種を種子から再生する試み、外来種(グリーンアノール、アカギなど)の駆除の状
況を実見することができた。
107
第9日目(6月 12 日) レンタルバイクで母島の南崎へ移動し、トレイル沿いの生態系視察調査を行い、
小富士山頂からは南崎の猫除けフェンスの全体像を遠望できた。帰路、御幸之浜の貨幣石を含む海岸地形
を観察。沖港集落に戻り、ローズ記念館で母島の開拓の歴史についての展示資料閲覧とスタッフへの聞き
取り調査を行った。その後、「ゆり丸」で母島から父島へ戻った。
父島、絶滅危惧ⅠA 類である、ウラジロコムラサキ 母島、外来種グリーンアノールを捕獲するアノール・
の幼木保護ネット。
トラップ。調査協力者でもあるフィールドガイドの方
が開いたところ。
母島、外来種であるアカギの薬剤注入による駆除。
母島、オガサワラシジミ(固有種の蝶)をアノールか
ら守るための侵入防止柵。トラップも併用している。
第 10 日目(6月 13 日)
神奈川県の博物館職員一行の調査に同行させていただく形で、宮の浜
から動力船で兄島へ渡り、外来種の影響の少ない無人島(過去には開拓者も住んでいた)である兄島の地形、
動植物を観察するとともに、調査員からも聞き取りを行った。外来種モクマオウの除去作業をしている作
業員がいたので作業の状況を見学した。午後遅く、迎えのボートに乗り、父島へ戻った。
第 11 日目(6月 14 日)
これまでと別の自然ガイドの案内で、小型ボートで父島沿岸の海洋生
態系の観察と、南島に上陸してのこの無人島での生態系回復状況の視察を行った。父島沿岸ではハシナガ
イルカの群れに遭遇しその生態を観察した南島では、ヤギによる植生破壊から回復してきている状況や、
アオウミガメの産卵にともなう砂上の足跡、ヒロベソカタマイマイの化石、そしてエコツアーの総量規制
108
や立ち入り制限の状況を現認した。陰陽池では非固有種トンボ数種を観察できた。その後、釣浜沿岸の礁
生態系をシュノーケル、シーカヤックを利用して体験型の観察を行った。帰路には扇浦一帯の開発の状況
や、大戦中に座礁した船の残骸状況を見ることができた。
第 12 日目(6月 15 日)
父島の中学校と小学校を順に訪問し、校長または教頭、教務主任から
同校の環境教育の方針と現状について説明をいただいた。同時に、アンケート調査も依頼した。次ぎには、
大神神社境内で石碑から島の歴史の一端に触れたほか、小笠原ビジターセンターに行き、小笠原の歴史と
開拓について情報収集を行った。夕方、神奈川県の博物館職員に会い、自然発生的な自然保護グループで
ある「小笠原クラブ」についての知見などを得た。
第 13 日目(6月 16 日)
小笠原ビジターセンターで小笠原関係の本(小笠原植物誌、小笠原学、
私たちの小笠原(中学校副読本、1985 年頃刊行)を閲覧し、その後、小笠原自然文化研究所を訪問し、こ
の NPO による環境保全活動の取り組みについて聞き取り調査を行った。午後おがさわら丸に乗船し、小
笠原を後にした。おがさわら丸の船内ロビーには、外来種から小笠原の生物多様性を守るための啓発ポス
ターが多数掲示されていて旅行者の注意を喚起していた。
第 14 日目(6月 17 日)
東京港着。
外来種から小笠原の生物多様性を守るための啓発ポ 南島、エコツアーの総量規制や NPO による外来植
スター。おがさわら丸の船内ロビーにて。
物除去も行われている。
(3)調査結果の要点
・小笠原諸島は孤立した海洋島であり、ガラパゴス諸島と並び称せられるほどに多くの固有種を進化させ
た、生物多様性の上で重要な地域である
・今回の調査では、父島、母島および属島の海岸から山頂までの生態系に分け入り、生態系の状況を詳細
観察、記録するとともに自然保護関係者や学校関係者からの聞き取り調査を行った。
・明治以降の開拓、アメリカから返還後の日本人の入植奨励、その後の物資の移動に伴い、野生ヤギやグ
リーンアノール(トカゲ)を始めとしたかなりの数の外来種種が進入・定着し、固有種を始めとした在来
種を駆逐しつつある。
・固有種の衰退ははなはだしいものであることが実感でき、その程度も把握できた。
・開発のための外来種導入でやむをえない事情も発掘できた
。
・固有種保護、外来種保護のために様々な取り組みが連携して進められている。
109
・島という、固有種ができやすい事情、逆に在来種外来種に駆逐されやすい事情は本土において生物多様
性を取り扱う環境教育・ESD を構築していく上でよい「理想モデル」
(理想気体の理想と同じ用法)を提
供する。
・島の小中学校での環境教育の内容は独自の教材を組み入れて充実している。
・行政機関、地域住民と学校との連携が活発に行われている。
(4)学生教育における効果
東洋のガラパゴスとも呼ばれる小笠原の生態系とくに固有種への移入種の影響および地元住民の環境保
全への取組みの状況を調査した結果を、大学の授業の中で教材として取り入れることで、学生たちは、単
に活字やメディアからの情報からの無機的な情報にではなく、教員自身が汗をかきながら収集してきたデ
ータや映像に触れることで、よりリアリティーに迫る環境学習が成立し、生物多様性にかかわるESD・
環境教育に向けて理解が深まり、意識も高まったように思われる。
110
3.6. 東海村・焼津市・夢の島・泊村・六ヶ所村:
原子力の利用と放射能汚染の環境や社会に及ぼす影響
田丸
事業期間
平成 21年度
実施時期
1)平成 21 年 9 月 17 日~9 月 22 日
典彦(釧路校教授)
2)平成 21 年 12 月 5 日~12 月 9 日
1)a
茨城県東海村
「アトムワールド」
「東海テラパーク」
原子力科学研究所
b
実施場所
静岡県焼津市
歴史民族資料館
c 東京都江東区夢の島
都立第 5 福竜丸展示館
d
東京都千代田区
科学技術館
北海道泊村
原子力PRセンター「とまりん館」
2)a
北海道原子力環境センター
b
青森県六ヶ所村
六ヶ所原燃PRセンター
原燃再処理施設
c
青森県東通村
原子力PR施設「トントゥビレッジ」
東通原子力発電所
(1)背景と目的
原子力発電は、1951 年にアメリカで最初に行われ、以後商業用原子炉が開発され広まったが、1979 年
のアメリカスリーマイルアイランド原発事故、1986 年のソ連チェルノブイリ原発 4 号機事故により、原子
力発電所の事故は地球規模の汚染を生じ、地球環境に好ましくないとの認識が広まり、ドイツを始めいく
つかの国では開発の中止や廃止が決定された。この時期、原子力発電に対して世界的に消極的な国が増加
したが、地球温暖化の主要因が CO2であるとの説が登場し、現在、原子力発電を積極的に進めようとの動
きが活発化している。
日本において原子力エネルギーと国民との関わりを考えると、まず日本は、世界で唯一の原子爆弾被爆
国として、その凄まじい破壊力を広島、長崎の悲惨な光景から具体的なものとして認識している。
さらに、1954 年のアメリカビキニ環礁水爆実験で、第五福竜丸が被爆して人命が失われ、これを契機に原
水爆禁止反対運動が大きな広がりとなり、核兵器の廃絶は国民の総意となって定着した。この第 5 福竜丸
事件では、放射能による汚染マグロの大量廃棄など食品安全性問題や、放射能の雨による環境汚染など、
日常生活を脅かす放射能の恐怖が広がり、放射能についての国民の拒否意識は根強いものとなった。
一方、原子力発電などの原子力エネルギーのいわゆる平和利用と開発は国策として推進され、日本の原
子力発電は 1963 年に発電試験が行われ、1966 年に商業用原子力発電が開始された。そして、電源三法交
付金をはじめ特別措置法などにより原子力関連施設立地については多くの支援があり、住民対策などにも
莫大な資金が投入されている。このような国の強力な支援により、2007 年の原子力発電量は総電力量の 4
分の 1 を占めるに至っている。加えて、電力会社では、CO2 地球温暖化主因説が展開される中で、環境に
負荷をかけないエネルギーとして原子力エネルギーを位置づけて宣伝し、2009 年には北海道電力泊原発 3
号炉で、使用済み燃料の再処理により回収されたプルトニウムを混入した MOX 燃料使用が許可された。
111
しかし、1995 年の高速増殖原炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故は、核燃料サイクルの展望に疑問を
生じさせ、1999 年の東海村 JOC 臨界事故では放射能により人命を失う事故が発生し、この時の放射能地
域汚染の危険は住民を恐怖に陥れた。2002 年の東京電力による原発点検記録の不正記載、2007 年の新潟
中越沖地震による柏崎刈羽発電所の被害(運転全面停止)など信頼を損なう事故が絶えず生じている。加
えて、原発より生じる放射性核廃棄物について、世代を超えた長期貯蔵や受け入れ場所の問題など不安要
素が多くあることから、なかなか国民的合意に達していない。
地球温暖化の問題が世界的課題として論議される中で、温暖化抑止エネルギーとして、原子力エネルギ
ーに注目が寄せられている。電力会社では、原子力発電等が環境に優しいエネルギーであるとの宣伝に努
めているが、日本においては、原子力発電などの原子力エネルギーの利用については、いまだに国民的合
意が得られていないのが実情である。原子力の利用と放射能汚染の環境や社会に及ぼす影響についての具
体的教材作成を目的として調査をおこなった。
(2)方
1)a
法
東海村原子力関連施設
原子力関連の諸施設見学は、インターネットで検索して電話にて事前申し込み行った。一般見学にはコ
ースが設けられており、私は、一般見学コース2を申し込んだ。JR 東海村駅から見学用のバスが用意され
ているが、午前と午後各1で、曜日が指定されている。施設見学は、アメリカの 9,11 テロ事件以来厳しい
制限を行うようになったそうで、写真撮影についても、PR 用に建てられた一般見学者用施設以外は禁止さ
れた。なお、見学は、別途団体での申し込みもあるようで、団体見学者も見られた。
b,c
第 5 福竜丸
第5福竜丸に関わっては、焼津市と東京都の2ヶ所で関連資料が展示されていることが分かった。お台
場の「船の科学館」には一切無かった。また、
「科学技術館」の原子力関連展示の中にも含まれていなかっ
た。
焼津市の「歴史民族資料館」の中に、第5福竜丸の資料室が特別に作られていた。JR焼津駅より徒歩
で見学が可能である。
東京都の第5福竜丸記念館は埋立地「夢の島」に、廃船となった第 5 福竜丸が放置されていた経緯から
建てられたもので、JR駅の他、公的交通機関での訪館が容易である。
d
科学技術館
3 階にアトミックステーション
ジオ・ラボがあり、一般展示と地層処分の映像による疑似体験がで
きる
●第1日目
釧路→羽田→水戸
●第2日目
水戸→東海村
(水戸
泊)
原子力の平和利用とJCO臨海事故調査
東海村駅前より見学用バスにて巡回
一般見学コース2
東海展示館「アトムワールド」
東海テラパーク
東海村→焼津市
●
第3日目
(焼津
原子力科学研究施設
泊)
第 5 福竜丸被爆調査
焼津市歴史民族資料館見学
焼津市及び焼津漁港見学
112
焼津市→東京都
●
第4日目
(東京
泊)
第五福竜丸被爆調査と原子力の将来技術展望
都立第 5 福竜丸展示館見学
館員による説明と資料収集
(東京
●第5日目
科学技術館見学
(3Eアトミックステーション
地層処分技術などの資料収集
●第6日目
2)a,b
泊)
移動
ジオ・ラボ)
(東京
泊)
羽田→釧路
泊村
原子力PRセンター「とまりん館」
、「北海道原子力環境センター」
北海道電力泊原子力発電に見学を申し込んだが一般者の見学は許可されなかった。北電関係者の紹介な
どがあれば可能とのことであった。そこで、PRセンター「とまりん館」と「北海道原子力環境センター」
を訪問することとした。
「とまりん館」と泊原子力発電所は、離れており、外観からもみることはできなか
った。「とまりん館」の近くに「北海道立原子力環境センター」があり、館員による説明が受けられる。
c
六ヶ所村原子力関連施設
六ヶ所原燃PRセンターおよび原燃再処理施設は、電話にて申し込み許可となった。
野辺地よりレンタカーでPRセンターに行き、原燃再処理施設など他の施設見学は、館員の車で案内し
てもらった。
d
東通村東北電力東通原子力発電所、東通村原子力PR施設「トントゥビレッジ」
東北電力の東通原子力発電所は電話にて見学を申し込んだところ、北海道電力と異なり、見学可能と
なった。ただし、館内の写真撮影は禁止されていた。
東通村原子力PR施設「トントゥビレッジ」は、発電所に隣接しており、展望台より発電所を見るこ
とが可能であった。
●第1日目
移動日
釧路→札幌
(札幌
●第2日目(12 月 6 日)
泊)
調査・見学・資料収集
移動は定期バス
(岩内→泊PR)
原子力PRセンター「とまりん館」
、北海道原子力環境センター
PRセンターバス→岩内
●第3日目(12 月7日)
(岩内
泊)
移動日
岩内→札幌駅→新千歳空港
新千歳空港→青森空港
●
→青森駅→野辺地
第4日目(12 月8日)
(野辺地
調査・見学・資料収集
泊)
移動はレンタカー
野辺地(レンタカー)→六ヶ所原燃PRセンター、原燃再処理施設→東通村原子力PR施設「トントゥ
ビレッジ」→東通原子力発電所
周辺地域住民対策見聞
(青森
●第5日目(12 月 9 日)
青森→青森空港→新千歳空港→新千歳→南千歳→釧路
113
泊)
(3)結
1)a
果
茨城県東海村原子力関連施設
JR東海村駅前に、見学者用のバスが待機していた。この日は私以外に 3 名の若い人が乗車した。東海
村駅は改築されたようで、駅前にはスーパーマーケットが進出し、原子力産業に支えられた地域社会との
感を持った。
1)a-1 JR東海村駅
1)a-2
見学者を待つ巡回バス
「一般見学コース2」は、原子力についての PR を目的として組み立てられていた。見学者を対象とし
たどの展示館もゆったりとしたスペースに展示物がおかれ、館員の説明は丁寧で分かりやすかった。JCO
事故については、原子力科学館に別館が建てられ事故についての展示があった。
「いばらき量子ビーム研究
センター」
「原子力科学研究所」では、原子力発電の歴史や原子力エネルギーの日常生活における利用にも
多くの展示が用意されていた。
「原子力科学研究所」の構内見学についてはほとんどの施設が写真不許可で
あった。「テラパーク」は、電力会社の PR 館である。
1)a-3
一般見学コース2
1)a-4
「原子力科学館」の漫画キャラクター
一般見学コース2
同館の団体見学者多数来館
1)a-5 一般見学コース2
1)a-6 一般見学コース2
広々とした見学展示場
原子力の平和利用(医学)展示
114
1)a-7 一般見学コース21)
a-8 一般見学コース2
JCOの事故により設けられた別館
1)a-9 一般
見学コース2
「いばらき量子ビームセンター」
1)b
JCO事故についての説明展示
1)a-10 一般見学コース2
「テラパーク」原子力発電の安全 PR
静岡県焼津市歴史民族資料館
1)b-1
焼津市歴史民族資料館
1)b-2
第5福竜丸コーナー
焼津市歴史民族資料館
岡本太郎氏の作品
115
1)b-3
焼津市歴史民族資料館
第 5 福竜丸の模型と今も飾られている千羽鶴
1)b-4
焼津市歴史民族資料館
放射能を測定したガイガーカウンター?
焼津市歴史民族資料館には、焼津市の漁業の歴史資
料が集められており、マグロやカツオ漁についての展
示が多くあった。この中の小部屋を第5福竜丸コーナ
ーとして当時の新聞や、航海記録等が展示されている。
第 5 福竜丸被爆について、若い館員の方が、丁寧に説
明してくださった 。コーナーの入り口に岡本太郎氏
の作品が飾られて、強烈なインパクトがあった。東京
都の第5福竜丸記念館とは、時折連絡を取り合うが、
定期的会合は持っていなとのことであった。
1)b-5
1)
c
今も変わらぬ漁業の町焼津の港
東京都江東区都立第五福竜丸展示館
1)c-1
第五福竜丸展示館
1)c-2 第五福竜丸展示館
第 5 福竜丸の船体が収納されている。
戸外展示されている第 5 福竜丸のエンジン
116
1)
c-3 第五福竜丸展示館
1)c-4 第五福竜丸展示館
第 5 福竜丸の木造船体
久保山さん葬儀の報道写真
第5福竜丸記念館は、第 5 福竜丸の船体を格納するよ
うに建てられている。被爆後改造され、東京水産大学の
練習船として使用されたが、1967 年に廃船となり、当
時のゴミの埋め立て地であった夢の島に捨てられてい
るのが偶然発見された。保存を求める市民運動が起こり
東京都が建設した。
館内には、第 5 福竜丸被爆の資料に加えて、ビキニ環
礁で暮らしていた人々の被爆を伝える写真も多数展示
されている。その他、原水爆被爆についての資料が多数
あり、ここでも若い館員が丁寧に説明してくれた。
1)c-5 第五福竜丸展示館
第 5 福竜丸に降り注いだ「死の灰」
1)d
東京都千代田区
1)d-1科学技術館
原子力発電の啓蒙展示
科学技術館
1)d-2科学技術館
放射性廃棄物ガラス固化処理についての展示
117
科学技術館の 3 階をアトミックステーションとしてエネルギー関連の展示がおかれている。奥の映写室
で、放射線廃棄物の地層処理についてバーチャル地層体験ツアーを見ることができる。
2)
a
北海道泊村
2)
a―1
原子力発電PR館「とまりん」
2)
a-3
プルサーマルの説明
2)
a―5
北海道原子力環境センター
2)
2)
a-2 泊原子力発電所の写真展示
a-4 原発PR館の職員と地域住民向けプール
2)
a-6
118
原子力環境センターの放射能計測器具
2)b
青森県六ヶ所村
2)b-1
六ヶ所村には多くの風車があった
2)b-2
2)b-3
2)b-4
六ヶ所村原燃PRセンター
放射性廃棄物を入れるドラム缶
地層処理の展示
2)b-5 低レベル放射線貯蔵センター
2)b-6 原燃施設に繋がる道路
現物見学は可能であったが撮影は禁止
港から原子力関連物を直送する道路?
119
2)c
青森県東通村
2)b-1東北電東通原子力発電所入り口
会議室以外内部は一切撮影禁止
2)b-2
東北電東通原子力発電所遠景
PR施設「トントゥビレッジ」から撮影
2)b-3 原子力PR施設「トントゥビレッジ」 2)b-4 ビレッジのキャラクター人形
(4)見学訪問メモ
今回、東海村、六ヶ所村、東通村の原子力関連施設と PR 館を見学したが、PR 館では、原子力発電や放
射性廃棄物の処理、核燃料サイクルなどの展示がゆったりとしたスペースに分かり易く示され、安全性と
原子力エネルギーの必要性が共通して強調されていた。また、このような PR 館や原子力関連施設には地
元出身者が積極的に採用され、過疎に悩む地域では、原子力関連施設は地方財政を豊かにし、雇用を増大
するものとして受け入れている現実がよく分かった。そして、PR 館自体も、地元市民の利用施設として、
餅つきなど、各種のイベントを積極的に行い、地元との交流に努めていた。しかし、辺鄙な場所にでんと
建てられた PR 館は、奇異な存在と映った。
原子力発電所については、北海道電力泊原子力発電所は一般見学不許可で、東北電力東通原子力発電所
は許可となった。東通発電所では、担当者から原子力発電の電気エネルギーが市民の生活を支えているこ
とや安全性について説明を受けた。原発は建設当初から公開する予定で造られているそうで、撮影はでき
なかったが発電用巨大タービンや原子炉も小部屋から十分に見ることができた。
第五福竜丸被爆について、焼津市では博物館に特別にコーナーが常設されており、ビデオ鑑賞の場所も
あって被爆についての古いビデオも放映してもらえた。東京都の記念館には、第五福竜丸被爆ばかりでな
120
く、核兵器廃絶を訴える多くの資料が集められていた。第五福竜丸被爆は歳月の経過と共に、様々なこと
が風化してしまう危険があると思ったが、近年学校単位の見学利用が多くあるとのことであった、
(5)学生教育における効果
CO2が地球温暖化の主原因とされ、その削減が国家目標となる中で、CO2を排出しないエネルギーとし
て原子力発電を評価する見方が、産業界を中心に勢いを増している。そして、原子力発電より生じるプル
トニウムを利用したプルサーマル発電が開始され、原子力依存のエネルギー政策が既成事実化している。
しかし、スリーマイル島での原発事故、チェルノブイリ原発事故のように、原子力発電所の事故は一度発
生するとその汚染は地球規模に及び、回復には大変な年月を要する。さらに、放射性廃棄物は人工的に厳
重に管理して長期貯蔵しなければ、重大な環境汚染源となる。
さて、今回の調査で、原子力の未来技術としての可能性と核燃料サイクルの現状、放射能汚染の恐ろし
さと放射能廃棄物の長期貯蔵の問題など原子力に関わる多くの資料を収集することができた。
学生達は、原子力発電などについて、必ずしも日本社会の合意が形成されていないこと、双方の意見を
理解するために必要な知識の習得が大変そうであること等により、重たい問題と感じ論議を避けるところ
がある。したがって、時折報じられる原子力関連のニュースにも積極的な関心を示す学生は多くはいない、
しかし、日本がエネルギー多消費型社会で、日々その恩恵に学生自身が浴した生活を送っていることは、
指摘すれば十分認識することである。原子力発電の稼働性、安全性とそこで生じる核廃棄物の世代を超え
た長期貯蔵等の問題を具体的に伝えることにより、学生達が、原子力の利用ついて自らの考えを構築し、
将来教員となった時に、この大きな課題に対してしっかりとした教材研究ができる力を養うことが可能と
なる。
121
3.7.
岩手県葛巻町自然エネルギーによる町おこしと学校環境教育
大森
享(釧路校准教授)
事業期間
平成 21年度
実施時期
平成 22 年 2 月 14 日から 18
日
実施場所
岩手県葛巻町
(1) 背景と目的
地球環境諸問題が話題に上らない日はない。これからの人類は、持続可能な社会を目指し、経済と政治
のシステムを転換していかざるを得ない。すべての人間が最低限の人間的な生活を営むことと今後の地球
人口の増加を考慮すると、自然エネルギーの活用及びエネルギー教育は重要な課題である。
日本で先進的な取り組みをしている岩手県葛巻町で、同町の自然エネルギーの活用と町おこし調査、及
び学校環境教育での自然エネルギー学習の調査を行い、21 世紀のエネルギー問題解決と学校環境教育にお
ける自然エネルギー学習の展望についての示唆を得ることを目的とした。調査テーマは、①自然エネルギ
ーによる町おこし、②自然エネルギーに関する学校環境教育である。
(2)方法と内容
2009 年 12 月 14 日から 18 日 にかけて、かつては日本のチベットと呼ばれた北上山地の過疎地、現在
では自然エネルギーによる町おこしで全国的に有名な葛巻町の調査を行った。自然エネルギーによる町お
こしの重要な推進者である町役場職員近藤勝義さんのレクチャーと施設見学を行った。レクチャーによれ
ば、2009 年 10 月現在人口 7723 人(2892 世帯)、面積 434.99 ㎢、東北一の酪農地帯で乳牛 10500 頭 1
日の搾乳量 110t である。1999 年 3 月葛巻町エネルギービジョン作成後、
その年に風力発電 1200kw、2001
年小水力発電量 300kw、2003 年風力発電量 21000kw、畜糞バイオガスプラント発電量 37kw、2005
年木質バイオマスガス発電量 120kwである。
近藤さんは、
「町長が全国的に宣伝し、町長の役割も当然大きいが、実際には住民の理解と努力によって
推進されている」と住民の力を強調した。水車によるソバ粉作りを生かした「田舎料理」の店は地元の婦
人たちが交代で開いているし、地元の植物を使った染物や昆虫づくりも地元の婦人が行っている。また、
「町おこしは、行政のリーダーシップと地元住民の理解と努力によって進められる」や、
「風車設置にあた
り、渡り鳥の激突や昆虫の棲息環境破壊に関し自然保護団体との協議を何度もやりクリアーした」、「ドイ
ツなどで風車による低周波での健康被害とその対応として風車設置場所の法的規制があるが、日本ではま
だない。葛巻町では、牧場周辺にあるが、牛の被害は未だない」という説明が印象に残った。
あいにく、雪のため道路が封鎖されており、風車設置場所まではいけなかったが、写真等で確認するこ
とができた。
ペレット(木の皮で作る燃料)工場見学後、灯油とペレット暖房の違いを近藤さん自身の日常体験を踏
まえて次ぎのように語ってくれた。
「小さな火からだんだん炎が大きくなるひと時は心和む時です。また、
灯油暖房に比較し、室内の保温力もありますし、ペレットによる風呂はお湯が柔らかいと多くの人がいい
ます」。
町で唯一の喫茶店で住民の話を聞いたが「昔は、恥ずかしくて(日本のチベット)、ここのことは話せな
122
かった。今は違う、葛巻町というと自然エネルギーの町ということで有名だから」と住民の自信に満ちた
話が聞けた。高速道路もない・鉄道もない・企業も誘致されない・スキー場などレジャー産業もないこの
町で、自然エネルギーを活用した持続可能な地域づくりに向かう住民の姿が散見された。その住民は、高
校・大学卒業後地元に戻れる就職口を広げる計画についても、語ってくれた。
以上の町の概要を念頭に、葛巻小学校、葛巻高原牧場のグリーンツーリズムと森の幼稚園構想、NPO
法人「森と風のがっこう」を訪問し、子どもの環境教育調査を行った。
葛巻小学校校長・副校長お二人から話を伺った。岩手大学の技術科教員を中心とした出前授業と町の自
然エネルギー施設見学がそれぞれの学年ごとに実施され、学校教育と地域・大学の教育力の連携がなされ
ていた。学校には、電気のスイッチの横にどこの電灯なのかが明記され、誰でも気が付いた子どもが電気
を切れるような環境整備がなされていた。単に、節電や節水をうながすポスターの掲示、教師の注意で動
く子どもの姿ではなく、家庭で節電・節水を保護者に促す児童、6年生が省エネの大切さを説明し各自の
行動の仕方まで提案する全校児童集会など、学習することと活動することが統一されることを目指した学
校環境教育が模索されていた。日常生活で自然エネルギーの活用を実体験し、学校で系統的なエネルギー
教育によって学ぶという地域に根ざした環境教育が展開されていたと言える。
町のはずれの廃校にNPO法人「森と風のがっこう」がある。ここで施設見学とスタッフ聞き取り調査
を行った。そこでは、以下のような説明を聞くことができた。
「東北の中山間部の伝統的な自然を活用した
生活を体験してもらうために、スタッフ自身が住み込んで実際に自給自足の生活を目指している」、「ソー
ラクッキング、小水力発電など自然エネルギー教育を実施している」
。また、「単なる自然体験とか野外活
動ではなく、自然を活用した持続可能な生活を参加者で協同しながら体験する」ことを目指して、伝統的
な東北地方の中山間部の生活を伝承しつつ、自然エネルギー教育を参加体験的な教育で実施していた。
地域の自然エネルギー活用という実生活での経験とそれを活かす学校での系統的な学習により、子ども
の環境教育は現実世界を動かす当事者性・主体性そして協働性を持った教育として立ち現れている。
(3)学生教育上の効果
小学校教員養成を目的とした本校で、小学校での環境教育のスペシャリストを育てるべく、研究・教育
活動を行っている。本専攻環境教育分野学生にとって、今後のエネルギー教育は重要教育課題である。そ
のエネルギ―教育の内容について、今回の調査から得られた知見は役に立つと考える。
123
4. ESD 関連フィールド実地調査(海外)
4.1. マレーシア
4.1.1.マレーシア熱帯林を素材とした環境教育素材の開拓
生方
秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 19 年 12 月9日~12 月 24 日
実施場所
マレーシア、ボルネオ島、サバ州
(1)背景と目的
マレーシア、ボルネオ島には、広大な熱帯林が存在しているが、森林伐採、商品作物プランテーション
の造成などによって、天然林の面積が減少してきている。そのため、オランウータンに象徴される貴重な
野生動植物の存続が脅かされている。生物多様性保全の環境教育の立場から、この熱帯林の保全状況およ
び周辺の開発の状況をつぶさに観察し、環境教育のための素材となる資料を収集するとともに、現地で行
われている環境教育についての資料もあわせて収集する。
(2) 日程および内容
12 月 9 日:釧路空港発、成田着
12 月 10 日:成田空港発、コタキナバル着
12 月 11 日:コタキナバル市内にあるサバ州立博物館を訪問し、ボルネオの自然史および歴史についての
展示物を縦覧し資料を収集した。歴史コーナーでは、先史時代から中国人の定着(農法や陶磁器などの導
入を含む)、イギリスによる支配、日本による占領、連合軍の爆撃、マレーシアの独立までを様々な展示物
とその説明文を見ることで概観することができた。マレー人の伝統的生活のコーナーでは、吹き矢、やり、
ロングハウス、竹や藤による民具などの特徴を知ることができた。自然史関連ではカワセミだけで5,6
種展示されていたり、サル類をはじめとした霊長類、両生爬虫類、トリバネアゲハやナナフシを含む昆虫
類など多くの標本が展示され、熱帯雨林の島の特徴がよく現れていた。このほか、マレーシアの伝統的衣
服や陶磁器の展示も目をひいた。
博物館を出た後は、港に隣接した中央市場の各売り場を見て歩き、農作物、海産物、工芸品などの生活
関連物資についての知見を集めた。米が同じ店で8品種以上陳列され、量り売りされていたり、隣接の青
空市場(フィリピーノ市場)では、多くの種類の熱帯果実や各種魚介類(エビ・カニを含む)が賑やかに
売られていた。中にはサンゴや装飾品の貝殻を売っている店もあり、サンゴ礁の保護問題が頭をよぎった。
12 月 12 日:サバ州教育局で副主任(女性)から州の教育制度について聞き取り調査を行った。それによ
ると、マレーシアでは7歳から中学校までが義務教育であること、幼稚園はあるが通園は任意であること、
小学校には数学と英語には教科担任がいること、環境教育は特別の教科としてではなく、地域科(地理と
環境を含む)や公民で取り扱う。キャンプやトレッキングなどのアクティビティーを課外で実施している
こと、環境教育については、よい実践校があるので事前に連絡をとり、許可手続きをすれば訪問可能であ
ること(現在は冬季休暇中)、英語は必修で小学校1年からやっていること、マレー語は当然ながら必修、
124
中国語は選択であること、マレー系言語は部族により、いくつかの言語グループ・多数の方言の分かれて
おり、共通語のほかに方言を話すこと、中国系は家では中国語で話していることなどの状況を聞き取るこ
とができた。
コタキナバルのフィリピン市場。
フィリピン市場、熱帯フルーツも豊富。
フィリピン市場、魚種も多様。
フィリピン市場、サンゴや置物用貝殻も売られてい
た。
午後、コタキナバルウエットランドセンターでマングローブの生態系および保全状況の視察を行った。こ
のセンターはコタキナバル市街地に隣接したマングローブをカバーする自然保護区 24 ヘクタールの管理
事務所を兼ねたもので、シベリア、中国北部からの渡り鳥の中継地ともなっていて、80 種の鳥類が確認さ
れている。洪水防止、水の浄化、沿岸動物の繁殖場所として重要であり、1996 年には州政府により鳥の保
護区に指定されている。環境教育、レクリエーション、エコツーリズムの場としても利用されている。マ
ングローブ内を一巡できる木道(延長 1.5km)や、高さ 30mの観察塔などからマングローブ特有の生態景観
をじっくり観察することができた。子ども達と自然再生のための植林も行われていて、幼木を植えた後の
状況も見ることができた。かつては海岸沿い一帯にこのようなマングローブ林が広がっていたということ
なので、この保護区は渡り鳥にとって最後の砦の一つになっていることを実感した。センターの建物では
センターの活動、とりわけ環境教育としての保全活動についての展示ボードの閲覧やパンフレットの収集
を行った。
125
サバ博物館。手前の堀は生活廃水で汚染されていた。 サバ州教育局を訪問。
コタキナバルウエットランドセンター、展望塔。
ウエットランドセンターの展示:子どもの植林活動。
ガヤ島のフィリピン不法滞在者の集落
マングローブのエビ養殖場、経営者(中央)を囲ん
で。
12 月 13 日:モーターボートをチャーターし、対岸のガヤ島沿岸に行き、沿岸に密集しているフィリピン
不法滞在者のバラック住宅の状況を見た。各戸とも4畳半程度の居室と3畳程度の台所をもつ廃材やなま
126
こトタン板でできていて、2,3mの長さの丸太か角材の柱で破壊されたさんご礁と思われる岩盤の上に
建っていた。手すりには魚網や洗濯物が干されていて、家の下の海で水遊びをしている子ども達の姿も見
られた。小さなモーターボートを繋留している家もあり、小規模な漁を営み、対岸のコタキナバルで売っ
て生計をたてている様子が伺えた。その集落から少し離れたところのやはり沿岸部に、Selamat Datang ke
SMK Pulau Gaya という小学校があり、教室や多目的教室兼集会室などを見学した。午後はサバ州立図書
館を訪れ、ボルネオの自然史、地理・歴史についての図書閲覧・資料収集を行った。
12 月 14 日:タクシーを利用して Tudan 周辺に移動し、クロッカー山脈の国立公園内の森林内、渓流沿い
などを踏査し、生態系の観察を行った。海抜が高いこともあって、雲がかかりやすい中でラン、野生のバ
ナナやヒカゲチョウの仲間、岩にへばりつくカエルなど熱帯特有の動植物を観察することができた。通り
かかった親切な青年の運転するトラックに便乗させてもらい、平野部まで移動し、そこから路線バスでコ
タキナバルに戻った。往復の途上、国道沿線の農業地帯の状況を観察した。農家は小規模近郊農業で、こ
れは山が海に迫る地形の制約と考えられる。ニワトリの放し飼い、キノコの栽培所や水源ダムなどが目に
ついた。便乗させてくれた青年は、タンブナン出身の山岳民族で、今はコタキナバルで働いているとのこ
と。彼の話では、マレーシア独立時に、民族ごとに分かれて別の町に住むようになったという。日本の経
済の影響が大きく、トヨタの東南アジア最大の修理工場があるそうで、彼の車もトヨタであった。
12 月 15 日:マングローブのエビ養殖場を視察、経営者(中国系)、に聞き取り調査を行った。例にもれず、
マングローブ林を切り払って人工池(1面あたり、60m×20m程度)を数面掘削し、ローテーションで水
を抜いて養生し、水を張ってある現役の池には電動水車による強制循環や、ジョホールバルに本社のある
工場で製造された配合飼料の投入、そしてエビの捕獲が行われていた。経営者は、マングローブの生態的
機能の重要性を十分認識しており、それゆえに、マングローブを一部残存させながらエビ養殖を行うこと
で、環境にも養殖管理の上でもメリットがあることを強調していた。
本土側の沿岸にあるフィリピン不法滞在者集落。
同集落にある学校の内部。
養殖場を後にして、次は本土側の沿岸にあるフィリピン不法滞在者の集落を視察した。ガヤ島の不法滞
在集落の住居の造りと基本的に同様であるが、少し良質の建材を用いて、同一規格長屋造りが繰り返し整
然と建ち並び、長屋2棟の間には路地の役割を果たす廊下が張り巡らされていた。更に電柱が立ち、電気
が各戸に配線され、プロパンガスのボンベも目についた。また、集会所や粗末な造りながら学校があり、
集落入り口には車が数台止まれる広場があり、乗用車1台とワゴン車、小型トラック各一台がとまってい
127
た。集落内には船大工の小屋があり、木材を加工して小さな磯舟を二人の職人が製造していた。子ども達
は裸足で歩いていたがこざっぱりした服をきていて、明るい顔をしていた。しかし、集落の床下の干潟は
大量のゴミで埋め尽くされんばかりであった。住人たちが不法滞在で税金を払っていないため市のゴミ収
集の対象外になっているためだとのことであった。
12 月 16 日:コタキナバル発、空路サンダカン着、セピロックオランウータンリハビリセンターで傷つい
たり、迷子になったオランウータンを自然に戻すための取組みの現状やこれまでの経緯を取材した。午後、
サンダカン港から高速ボートでキナバタン川を、テングザルもたたずむ川沿いの生態系を観察しながら遡
った。途中、アバイで船を下りて小さな集落と学校建物を視察した。ここでも小規模なリバークルーズや
植林などのエコツアーが行われているという。ボートで更にさかのぼり、エコツアーの拠点のひとつであ
るスカウのエコロッジに到着した。そこで小休止のあと、リバークルーズと途中下船したジャングルでの
トレッキングを行い、川沿いの生物の観察を行った。夕食後もナイトクルーズで夜行性動物を観察した。
リバークルーズではグレイリーフモンキー、テングザル、カニクイザル、サイチョウなどを、トレッキン
グでは、キノボリトカゲ、ゴマダラ属の蝶、大型ヤスデ、オオジョロウグモなどを、ナイトクルーズでは
川面にさしかかった木の枝で眠っているクロアカヒロハシ、ルリカワセミなどを観察した。
セピロックオランウータンリハビリセンター。
スカウでの熱帯林トレッキング。
油やし農園が延々と続くラハダトゥへの道。
ダヌムバレーへの道、木材搬出のトラック。
12 月 17 日:早朝クルーズとジャングルトレッキングで生態系観察を行った。ロッジに戻ってからロッジ
128
裏手の木道で森林内の生物観察を行った。木道沿いの樹木には樹種と伝統的利用の内容についての簡単な
説明の札がついていて、多様な樹種の存在と、伝統的利用(食物、工作用、袋物の材料や薬用などの用途)
の状況をつぶさに知ることができた。木道の一部には象が横切って通れるように渡り廊下状になったとこ
ろもあった。午後、川下側へのリバークルーズで各種動植物の観察をし、夕食後、裏手の木道で夜のジャ
ングルの空気を体験した。キナバタンガン川の下流域には氾濫原が広がり、きわめて野生生物相が豊かな
地域であるが、現在までに森林のかなりの部分が農地に改変されており、野生生物が生息できする場所は
次第に減少している。しかも、森林は分断されつつあり、ゾウなどは移動が困難な状況である。そのよう
な中で自然の回廊の計画も存在としているが、開発(油やし農園の拡大)などの圧力でその行く手は厳し
いようである。
12 月 18 日:ボートそして 4WD 車と乗り継ぎ、ラハダトゥに移動した。途中の陸路では道路沿いに延々
と油ヤシ農園が広がっていた。運転手の話では、バイオ燃料が注目されるようになってから油ヤシの値段
が上がり、作付け面積も増えていること、油を絞る工場が韓国資本によっても作られているという。ラハ
ダトゥの旅行代理店に立ち寄ったあと、同じ車でらダヌムバレーに移動。この大部分未舗装の移動経路は
かなりの距離があり、木材を満載した大型トラック数台とすれ違った。ロッジに到着し、ジャングルの木
道の短時間トレッキングで、この自然度の高い熱帯林の生態系観察を行った。夕食後、車道のナイトドラ
イブで夜行性動物の観察を行った。
12 月 19 日~20 日:この2日間は、スコールで中心になった場合を除いて、早朝、午前、午後のジャング
ルトレッキング、夕食後のナイトドライブでジャングル内の道路沿いの生態系を観察した。一連のトレッ
キングでは、キャノピーウォークを渡ったり展望地への山道を登りながら、フタバガキ科の巨木、各種着
生植物、双子をつれたオランウータン、トカゲ、フンコロガシ、シロアリの巣を含む多様な動植物をつぶ
さに観察することができた。また、鳥やコオロギ類の騒々しい鳴き声を聞きながらのナイトドライブでは、
オオコウモリ、ミスジパームシベットを含む若干の哺乳動物を確認できた。
ダヌムバレーは現在保護区となっている原生林地区で、275 種の鳥、110 種の哺乳動物が報告されるな
ど、生物多様性の高い場所である。今回直接観察できなかったが、アジアゾウ、スマトラサイ、ウンピョ
ウ、マレーセンザンコウなども生息している。ジャングルと野生生物をターゲットとしたエコツーリズム
が観光産業として成立している。一方、保護区の外側の広大な森林地帯は管理された伐採・植林が行われ
ている地域であり、森林という形は維持されながらも、経済性の高い樹木に置き換えられ、生物多様性の
一定程度の低下は免れない状況である。
12 月 21 日:午前中、この森での最後のトレッキングを行ったあと、4WD でラハダトゥ空港へ移動し、
コタキナバルに戻った。飛行機の窓からは、ボルネオ島サバ州を南から北へ横断する航路沿いの地形や森
林・河川の状況を観察した。ラハダトゥ付近では、丘陵地にまでヤシ園が這い上がるように広がっている
状態が見られ、脊梁山地に向かう山岳地帯では森林伐採用の道路や赤茶けた濁流の流れる川などが目につ
いた。東南アジアの中ではサバ州はまだまだ森林が多く残されているが、その生態系としての質はじわじ
わと劣化が進行する中で、保全へ向けた取組みも行われていることを肌で感じることができた。
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ダヌムバレー、キャノピーウォーク。
ダヌムバレー、巨大なフタバガキ科の木
ダヌムバレー、樹上のオランウータン。
ラハダトゥ近郊、丘陵地までヤシ園に覆われている。
12 月 22 日:モンソピアード文化村を訪れ、展示されている住居や民具、そして民族舞踏を見学して、ボ
ルネオ山地先住民の伝統的生活様式の一端に触れることができた。首狩の習俗を今に伝える多数の頭蓋骨
の陳列や、食用にされているサゴ・ワーム(Sago Worm:ゾウムシ科甲虫の1種の幼虫)の飼育法の実演
もあり、先住民がジャングルの中で生き抜く上での凄まじいパワーを感じた。
12 月 23 日 : サ バ 州 立 図 書 館 で ボ ル ネ オ の 自 然 史 、 地 理 ・ 歴 史 に つ い て の 図 書 閲 覧 ・ 資 料 収 集
後、ホテルで荷物をまとめ、空港へ向かう。
12 月 24 日:早朝、コタキナバル発、成田着;午後、羽田発、釧路着
(3) 調査結果の要約
1)熱帯雨林の野生動植物を直に観察し、写真、ビデオ、聞き取りにより多くの環境教育素材を得ること
ができた。
2)生物保護区や国立公園の周辺にも農地化、森林伐採の波が押し寄せており、線引きによってかろうじ
てまもられていることが実感できた。
3)ガイドからの聞き取り、図書、印刷物の収集により、ボルネオにおける生物多様性衰退の現状と原因
についてのアウトラインを得ることができた。
130
4)オランウータンリハビリテーションセンターの取組に見られるように先進国の協力もあり、さまざま
な保全の手段が講じられていることを目の当たりにできた。
5)エコツーリズムも活発に行われており、客に受けることを狙い、野生のサルをガイドが泣き真似の声
を出して威嚇したり、就眠中の野鳥にボートで異常接近するなどの、好ましくない状況を目撃した。
6)バイオ燃料への注目から油ヤシが高値で取引されるようになっていることが聞き取りにより判明し、
これが熱帯林破壊を促進する惧れがある。
7)州の教育局での聞き取り調査から、この国における環境教育カリキュラムの概要が明らかになった。
8)マングローブのビジターセンターでは湿地保全の環境教育が意欲的に行われていた。
9)マングローブをエビ養殖場に変える開発の中でも、マングローブの生態機能に着目し、それを一定程
度保全しつつエビ養殖を行う業者が存在することが判明した。
10)以上の成果は今後の学生教育に縦横に利用することができると考える。
(4) 学生教育における効果
学生に地球環境について講義で説明をしているが、教員自身が実際に自分の目や肌で観察し、体感してき
た話を加えることで、より現実味を帯び、学生も目を輝かせる。
熱帯林についていえば、私はこれまで、アマゾンで同様の調査経験をもっており、また、このあとオー
ストラリアの熱帯林の調査も予定している。それらの共通点・差異点にも触れることで、学生の生物多様
性への認識が広がるはずである。いずれの調査においても大量の写真、ビデオ、印刷物を収集しており、
これらは学生の卒業研究にも資料として提供可能である。
131
4.1.2. マレーシア・ボルネオ島
調査報告
大森
享
(釧路校准教授)
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 19 年 12 月 10~24 日
実施場所
マレーシア
ボルネオ島
(1)背景と目的
マレーシアボルネオ地域における自然体験と環境教育の実態調査を行い、子どもの人格形成における豊
かな自然との接触体験がもたらす教育的価値を考察するとともに、将来の小学校教師として,子どもの人格
形成に関わる豊かな自然体験について考える力量の育成に生かすことを目的とした。
(2)方法と内容
調査地域:マレーシアボルネオ島サバ州のキタコナバル市、キナバタン川スカウ、タヌムバレー
調査旅行期間:2007 年 12 月 10~24 日に調査を実施した。
調査日程、行程、調査内容の概要
第1日目(12 月 10 日)
マレーシアキタ・コナバル市到着(18 時 10 分)
第2日目(12 月 11 日)
教育局訪問、旅行会社相談(エコツアー申し込み)、
サバ州博物館訪問(マレーシアの自然・民俗など調査)
第3日目(12 月 12 日)
教育局訪問(小学校視察打ち合わせ)、サバ州観光局(資料収集)、
野鳥保護区見学(マングローブ林観察、環境教育調査)
第4日目(12 月 13 日)
現地在住日本人松木みどりさん聞き取り調査
(地元の小学校環境教育など)
第4日目(12 月 14 日)
日本人学校訪問、校長聞き取り調査
(現地での小学校環境教育実践と教材について)
第 5 日目(12 月 15 日)
マングローブ林、エビ養殖池見学・聞き取り調査、フィリピン不法
入国者滞在地域での学校教育視察
第 6 日目(12 月 16 日)
セピロックオラウンタン保護施設見学、スカウロッジ着
ナイトクルージング
第 7 日目(12 月 17 日)
早朝トレッキング、小型ボートによる自然観察
第 8 日目(12 月 18 日)
ダヌムバレーに移動。熱帯雨林伐採現場視察。ナイトクルージング
第 9 日目(12 月 19 日)
早朝トレッキング、熱帯雨林観察
第 10 日目(12 月 20 日)
早朝トレッキング。熱帯雨林観察。
第 11 日目(12 月 21 日)
早朝トレッキング。コタキナバルに移動。
第 12 日目(12 月 22 日)
ボルネオロングステイ事務所聞き取り調査(子どもの環境教育)
第 13 日目(12 月 23 日)
コタキナバル市内調査(文献・資料収集)、空港移動
第 14 日目(12 月 24 日)
0 時 35 分発成田 6 時 30 分着
132
(3)調査成果と考察
1)エコツーリズムをめぐって
エコツーリズムは、
「投資や雇用を創出し、さらに環境に対する理解や感謝の念、そして保全を促す」
「金
銭消費型ではなく教育的なもの」で、そこには「持続可能性や地域貢献という新しい概念が持ち込まれて
いる」。「倫理的な側面も含まれ」「エコツーリズムという言葉が生まれ 20 年ほどたつが、未だに広く認め
られた定義がな」く、
「エコツーリズム先進国」には例えば「オーストラリアやニュージーランド」等があ
る(スー・ビートン 2002 年『エコツーリズム教本』平凡社)。
スカウでのエコツアーでは、キタバタン川沿いのロッジに宿泊し、8 人乗り程度のボートでオラウンタ
ン・テングザル・サイチョウ・クロコダイルなどを船からガイドの指示で観察したり、舟を降りてトレイ
ルを歩き観察をした。ダヌムバレーでのエコツアーでは、自然保護区のロッジに宿泊し熱帯雨林の中のト
レイルを歩いたり、トラックの荷台に乗って夜の野生動物観察をした。宿泊ロッジには、シャワー・水洗
トイレ・ベットが完備され、食事も欧米風のスタイルで「快適な空間」が保たれていた。
「快適な空間」で
過ごし、1 時間ほどのトレイル散策・トラックとボートによる観察がプログラム化されていた。コタキナ
バル市からの交通(航空機・車・船)
・宿泊・食事・ツアーガイドによる野生動植物観察全てがセット化さ
れたツアーが実施されていた。
プログラム化されたツアーガイドによる観察は、客の自由意志でキャンセルも可能だが、料金返金はな
い。スカウでは、別料金によるオプションガイドもあった。ツアーガイドは、国家・州資格を有し、エリ
ア別資格取得者・全エリア資格取得者に別れており、資格更新制度も完備している。外貨獲得の観光産業
の一翼を担っている。
「三浦半島自然保護の会(柴田敏隆・故金田平)」の自然を観察する方法論と生態学的自然観の普及など
を総括し、
「生態学的自然観が自然保護の基礎となる自然の理解という位置づけから自然保護教育と呼ばれ
ている」(小川
潔 2002 年)ことや「ネイチャーゲーム」、各地NPO法人によるエコツアー(海津ゆりえ
2007 年『日本エコツアー・ガイドブック』岩波)など、日本の自然保護教育と先進エコツアーの比較研究
が必要だと思われた。
欧米人は、その生き物が何かについて知ることに興味を示し、どんな生き物に出会えるかを楽しみにし
ていた。ツアーでは野生動物を発見し説明するのがほとんどであり、匂いを感じる、音を感じる、暗さを
感じる、触ってみる、食べてみるという場面はあまりなかった。
ガイドの仕方は説明中心で、インタープリター、ファシリテーター、コーディネーターとして参加者と
どう関わるか、絶滅危惧種に対する思い入れは参加者に獲得されるが、個々の生物を知りそれらのつなが
りの理解を促したり、開発・発展など社会の問題との関連まで視野に入れたガイド方法や「ネイチャーゲ
ーム」による自然を感じるなどの領域についての検討があると思われた。
自然保護と観光業を統一した持続可能な社会に向けたエコツーリズムは、これからの後進国の都市化と
開発を考える上で重要な視点となると思われる。
2)日本人学校での子どもの環境教育
コタキナバル日本人学校校長久本順一先生と日本人ツアーガイド松木みどりさんの聞取り調査から概ね
以下のことがわかった。日本人学校では、ボルネオの自然と環境を活かした環境教育はまだまだであり、
文部科学省による学習内容規定や基礎学力論により地域の自然と環境を生かした授業の軽視は、日本本土
と変わらない。マレーシアの小学校での自然と環境を生かした授業づくりの現状も日本人学校とあまり変
わらないということであった。日本人学校では、マレーシアの自然と環境を題材とした副読本を作成して
いたが、現在ほとんど使用されていないということであった。
133
(4)学生教育上の効果
学校環境教育実践を進める上で、子どもをどう見るのか・これからの学力観とは・地域に根ざす教育は
何故重要なのか・地域を教材化し授業を進める教師の力量形成をどのように進めるか、など原理的な研究
が求められている事を強く感じた。これらを念頭にしながら学生の指導にあたっていくことで、学生の環
境教育実践者としての力を高められるであろう。
134
4.1.3. マレーシア
サラワク州における自然環境とその保護について
佐々木
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 20 年3月
実施場所
マレーシア
巽(釧路校教授)
サラワク州バコ国立公園、ク
チン市、ダマイビーチ周辺部
(1)背景と目的
マレーシア
サラワク州における自然環境について、特に自然地理学的な観点から調査を行う。クチン
市近郊のバコ国立公園は、1957 年に国立公園として指定を受けて現在に至っている。海岸部はマングロー
ブを主とした樹林となっており、丘陵には熱帯雨林が広がっている。本調査ではこの国立公園に残ってい
る自然と開発が進行したクチン市およびその周辺部、さらにクチン市近郊のダマイビーチとその周辺部に
ついて、自然環境の保存状況について比較検討を行う。
(2)調査旅行期間
2008 年3月4日~3月 11 日
(3)調査日程、行程
3月4日(火)
釧路発
―――
羽田着
羽田から成田へ移動(リムジンバス)
宿泊:成田エアポートレストハウス
3月5日(水)
成田発
クアラルンプール発
―――
―――
クアラルンプール着
クチン着
宿泊:ムルデカ・パレス・ホテル
3月6日(木)クチン市内で各種の情報の収集。
宿泊:ムルデカ・パレス・ホテル
3月7日(金)バコ国立公園の調査。
宿泊:ムルデカ・パレス・ホテル
3月8日(土)ダマイビーチとその周辺部についての調査。
宿泊:ムルデカ・パレス・ホテル
3月9日(日)サラワク博物館の見学。
クチン発
―――
クアラルンプール着
宿泊:ホテル・ニッコー・クアラルンプール
3月10日(月)クアラルンプール市内で資料の収集。郊外における宅地開発状況の調査
クアラルンプール発
3月11日(火)―――
成田着
成田から羽田に移動(リムジンバス)
羽田発
―――
釧路着
135
(4)各調査日程ごとの調査内容、調査結果の概要
第1日目(3月6日)
クチン市内で各種の情報の収集。バコ国立公園を調査するためにガイドを雇っ
た。ガイドとの綿密な打ち合わせ。3月7日の野外調査の準備。
第2日目(3月7日)
バコ国立公園の調査。午前中は丘陵部の基盤岩石の風化状況や植生についての
調査。午後は主としてマングローブ海岸の調査。
第3日目(3月8日)
ダマイビーチとその周辺部についての調査。午前中は主に海岸部の堆積物につ
いての調査。午後は周辺部の樹林の観察。樹林が伐採されて住宅地となった地域についての調査。
第4日目(3月9日)
サラワク博物館を見学し、情報の収集をした。第5日目(3月10日)
午前
中はクアラルンプール市内で、地図やその他の資料を収集。午後は Hulu Langat 地区の住宅地の開発状
況を調査。
(5)成果と学生教育への効果
バコ国立公園はほぼ手つかずの熱帯雨林が残っており、特に海岸部にはマングローブの樹林が広がって
いる。クチン市とその郊外やダマイビーチとその周辺部では、宅地の開発や工業団地の造成が活発に行わ
れており、原生林は著しく減少している。この海域では潮差が大きく、主要な河川が内陸から多量の細粒
物質(シルトや粘土)を運搬してくる。これらの物質は河口付近で河道の両側に堆積して顕著な干潟を形
成している。岩石海岸では熱帯特有の岩石の風化と波食によって特異な海食崖を形成している。本調査で
はこれらの調査結果を裏付ける写真や観察した事項、ガイドの説明などについての記録がとられた。これ
らの調査結果および取材資料をもとに、学生の自然環境を見る力をつけていきたい。
136
4.2. オーストラリア
4.2.1. オーストラリア熱帯林・サンゴ礁に
生物多様性と環境教育素材を探る
生方
秀紀(釧路校教授)
実施年度
平成 19 年度
実施時期
平成 20 年 2 月 29 日~3 月 11 日
実施場所
オーストラリア、クインズランド州
(1)背景と目的
オーストラリア北東部には、かろうじて残された世界最古といわれる熱帯雨林、世界最大のサンゴ礁生
態系があるが、開発の荒波を受け、その保全が焦眉の急となっている。生物多様性保全の環境教育の立場
から、この熱帯雨林、サンゴ礁生態系をつぶさに観察し、環境教育のための素材となる資料を収集すると
ともに、現地で行われている環境教育についての資料もあわせて収集する。
(2)調査日程・内容
2 月 29 日:成田発のブリスベーン行きに搭乗した(機中泊)。
3 月 1 日:オーストラリア東海岸を俯瞰しながら南下し、ブリスベーン着。ケアンズ行きに乗り換え、再
び北へ向かう。ケアンズ到着し、ホテルにチェックインした後、早速ケアンズ博物館を訪問した。
ケアンズ博物館:館は Cairns Historical Society の会員が運営しており、展示物や解説パネルについて
の質問に気さくに答えてくれた。内容は、主にこの地区の開発の歴史である。以下に取材内容の要点を紹
介する。中国からの農民がバナナやパイナップル農業をスタートさせ、やがて交通や害虫管理で競争に敗
れていったこと、彼らが中国の生活文化を持ち込み白人に違和感をもって迎えられたこと、19世紀末に
はサトウキビが利益の大きい作物だったが絞り器のない農民はコーヒーを栽培したこと、しかし労賃の安
いブラジルに負けたこと、アボリジニーの労働に依存していたが、その質を高めるには白人に置き換えな
ければならないが労賃が高すぎること、最後に、南アフリカからの白人が機械化を導入して成功したこと。
20世紀初頭に、アボリジニーの労働力を使って綿花栽培が試みられたが火災と第一次大戦中のインフレ
で衰退したこと。インドゴムノキや Alstonia 属の木からのゴム抽出がアボリジニの方法を受け継いで工業
化されていたこと。1930 年頃、農家はサトウキビ栽培に乗り換え、政府貸付金で圧搾機を購入し、出稼ぎ
労働者により刈り取り、積み込みをおこなったがワイル病に罹患するようになり、サトウキビ畑を焼くこ
とで蔓延を防止した。1950 年代から機械化されていく。1950 年代にはパイナップル缶詰工場が進出した
が、供給不足と時代遅れの機械であったため、長続きしなかったこと。お尋ね者「オオヒキガエル」につ
いてその導入の生態学的失敗の経緯の説明もあった。熱帯林のレッドシーダー(センダン科)は価値が高
く「赤い金」と呼ばれ、不法に端から伐採され、アサートンテーブルランドも伐採と火入れで農地へと変
貌した。製材所は 1873 年に始まり、鉄道の延長で活況を呈した。第二次大戦直後まで、鉄道駅までは去
勢牛やロバにひかせて運んだ。ケアンズで木材はベニヤ材に加工され海外に輸出された。森を守れという
声は 1873 年から既に存在しており、1881 年には小さいながらも森林保護区が宣言された。伐採業界は伐
採を続けたが植林も行った。その後の森林保護政策に対しても木は多すぎるという反対派のもとで無制限
の伐採が続き 1950 年代にピークを迎えた。保護派の長いいキャンペーンののちに 1988 年に雨林が世界自
137
然遺産に登録された。19 世紀末当時の、Madjanydi 族のアボリジニーの木製武器、石斧、胡桃割のための
石臼、木や葉でできた小屋、植物繊維でできた手提げ袋、木登りロープ、魚罠、綾取りなどを写真・実物
で見ることができた。このような物質文化は白人と接触した初期のもので、その後、彼らは白人社会に同
化していった。ケアンズの白人のための学校は 1878 年に設置された。ケアンズの州立学校での教師の規
則、体罰の方針や実施記録などもあった。男女教員とも極度の品行方正が求められ、女性教員は結婚した
ら退職する規定になっていた。
ケアンズ博物館の外観
伐り出した木材の鉄道輸送(博物館展示より)
3 月 2 日:ツーリスト情報センターを訪問し、オーストラリアの国立公園・自然保護区についての資料収
集したあと、ケアンズ市内の海岸地区を中心に、沿岸の景観および環境保全の状況の視察を行った。観光
の起点となる都市だけあって、ビーチやそれに隣接する風致地区はゴミの散乱もなく、熱帯樹が整然と植
栽され、良好なアメニティーを有していることが感じられた。
3 月 3 日:クランダ国立公園:クランダ国立公園のふもとのカラボニカ駅からスカイレール(ロープウエ
ー)に乗り換えて、途中レッドピーク駅、バロンフォールズ駅で途中下車し、熱帯林の遊歩道沿いの動植
物の観察、撮影を行った。途中駅の展示コーナーには熱帯林の特徴をわかりやすく書いた説明板、ヒクイ
ドリが餌にする各種木の実の実物展示(触ってよい)が充実していて、自然教育への配慮がみられた。ク
ランダ駅到着後、レインフォレステーションに移動し、アーミーダック(水陸両用車)に乗り換えて、敷
地内の森林・沼地の動植物をガイドのジェイ氏の解説を聞きながら観察した。二次林であるため野生のタ
バコや各種バナナの木、コーヒーの木などもあらわれた。次に、敷地内のコアラ&ワイルドライフパーク
でカンガルー、ヒクイドリ、各種トカゲ、ワニ、コアラを観察した。午後はオーストラリア・バタフライ・
サンクチュアリでオオルリアゲハをはじめとした熱帯の蝶の生態・行動をつぶさに観察した。次にマリー
バ村のゴルフ場に移動し、そこで起居している野生カンガルーを観察し、さらに牧場の片隅で大きな蟻塚
(シロアリのもの)や、グラネット渓谷の岩場に繁殖しているロックワラビーを観察した。このワラビー
はオーストラリアでキツネによる捕食やヤギとの競争、生息地破壊により減少しているが、観光客を楽し
ませるために餌付けされており、生態系のバランスの上で問題があると思われた。次に、ピーナツ農園の
試食販売所に移動し、試食がてら、ピーナツ産業の実態を垣間見た。1870 年に金採掘の中国人が最初にピ
ーナツ栽培を開始し、現在はアサートンだけでも 60 農家が毎年1万トン生産している。そこでは地平線ま
で続くと言いたくなるほど長大な移動式灌漑機の実物や移動式大型脱穀機の写真を目にした。その後、ユ
ンガブラ村の牧場で牛、馬、ポニーとの触れ合い体験とバーベキューの夕食後、野生カモノハシの生息地
(カモノハシはついに現れず)の観察をし、牧場にもどって有袋類のバンディクートが餌台にきているの
138
を観察し、帰路ではカーテン状に空中根が垂れ下がった巨大なイチジクの木を観察した。
3 月 4 日:グレートバリアリーフ国立公園:クルーズ船でグレートバリアリーフ国立公園へ向かう。船
内で海洋生態学者 Ted Wooley 氏によるサンゴ礁生態系についての解説に耳を傾けた。モアリーフでサン
ゴ礁でのスノーケリングおよび半潜水艦乗船、浮き桟橋観察窓、タッチプール、など一連の活動を通して
サンゴ礁の生態系、動植物をつぶさに観察した。生物多様性のホットスポットであるだけに、多様な魚類
を目撃することができたが、浮き桟橋の観察窓の外で餌撒きをしており、これは生態系の中で特定の種の
個体数を増やすことになり、バランスを乱すことであると思われた。
ロックワラビーに群がる観光客。
ピーナツ農園の移動式灌漑機(展示写真より)
3 月 5 日:市立図書館でオーストラリアの開発の歴史、野生動植物の本の閲覧・複写で資料収集を行っ
た。
ジェームスクック大学でのセミナーで筆者。
セミナーの聴衆。
3 月 6 日:ジェームスクック大学ケアンズ校:ジェームスクック大学ケアンズ校教育学部を訪問;Hilary
Whitehouse 先生および学部長の Nola Alloway 教授の出向かえを受けたあと、セミナー室で5名の教員、
院生を前に、筆者が釧路校の ESD についての取組について、パワーポイントで発表した。教員相互および
地域との連携を活用した実践的教育プログラムには関心を示してもらうことができた。昼食後、Hilary
139
Whitehouse 先生の研究室で同氏がおこなっている環境教育についてのインターネットを利用した遠隔教
育の内容・システムについて説明を受け、遠隔教育のメリット・デメリットを中心に意見交換を行った。
その際、熱帯雨林およびサンゴ礁を取り扱った小中学校 CDROM 教材および教材冊子を頂いた。帰路、
Whitehouse 先生の自宅に移動し、庭のカエル繁殖池、カエル保護用水槽、自宅敷地斜面での自然林復活
のための植林した場所などを見せていただいた。
3 月 7 日:一泊のエコツアーに出発。最初に、ポートダグラスのワイルドライフセンター(レインフォレ
ストハビタートワイルドライフサンクチュアリ)に立ち寄り、有袋類、ワニ、ヒクイドリ他の鳥類各種を
観察した。
ディンツリー国立公園①:ディンツリー国立公園内のモスマン渓谷でトレッキングを行い、比較的保存の
よい熱帯林とその中を流れる渓流を観察した。更に、ケープトリビュレーションの遠浅の砂浜に出て同国
立公園の海浜生態系の観察を行った。この海岸は有毒のクラゲが多いため、海水浴ができないため、自然
景観が非常によく保存されていた。
3 月 8 日: ディンツリー国立公園②:Sorrow 山の登山道を散策し、特徴的な形のウチワヤシの一種 Licuala
ramsayi を含む、同国立公園の熱帯雨林の生態系を観察した。昼食後 Marrdja に移動し、ダニエル氏のガ
イドでマングローブの木道を歩きながら、3億年前を髣髴とさせる木性シダの老木やオオタニワタリの仲
間を含む同国立公園マングローブ生態系を観察した。次に、ディントリー川でクルーズボートに乗り換え
てガイド兼操縦士の説明を受けながらフルーツバットの騒がしいネグラや、川辺で休息するワニを含む河
口部のマングローブ林生態系を観察した。デイントリー熱帯雨林は、面積ではオーストラリアの面積の
0.2%に過ぎないが、コウモリ、蝶の 65%
鳥の 20%、カエル、有袋類、爬虫類の種の 30%が分布し、1988
年に世界自然遺産に指定されている。
ディンツリー国立公園内のエコツアー
Ms Robin Moore のトークショー
ケ ア ン ズ に 戻 っ て 、 夕 方 、 Sofitel ホ テ ル で 開 か れ た Association of Women Educators 主 催 の
International Women's Day Dinner に参加し、Ms Robin Moore のトーク「Powerful words; powerful
women; powerful futures」を聞いた。これはジェームスクック大学の Whitehouse 先生に誘われて参加し
たもので、トークのテーマはコミュニケーションと言葉によるエンパワーメントについてであった。コミ
ュニケーションスキルやエンパワーメントは ESD の課題でもあり、会場に詰め掛けた半島地区の女性教育
者の熱気とともに印象に残った。
140
3 月 9 日:市立図書館でオーストラリアの歴史、アボリジニー、動植物、開発と生物絶滅、の本を閲覧し、
資料を収集した。
3 月 10 日:ケアンズ発、成田着、成田泊。翌日釧路に戻る。
(3)調査結果の要約
1)ディンツリー国立公園の熱帯雨林は多くの固有種を有し、生物多様性保全上貴重な生態系である。
2)この熱帯雨林は開発の危機にさらされているため、行政等の消極的な態度を押し切って NGO の力で
世界遺産に登録された。
3)この自然資源を生かしたエコツーリズムが活発に行われており、ガイドの知識レベル、インタープリ
テーション能力ともにすぐれている。
4)グレートバリアリーフにおけるエコツアーも非常に活発であり、観光業者による魚への餌付け、観光
客によるサンゴ礁への接触といった行為が目撃された。
5)ケアンズ周辺では熱帯雨林およびサンゴ礁を舞台にした小中学生用対象の環境教育の内容が整備され
ており、それぞれ CDROM 教材および教材冊子を、ジェームスクック大学で入手した。
6)ジェームスクック大学では遠隔教育が充実しており、そのカリキュラムの中に環境教育についてのも
のもあり、受講生は教員や他の受講生とネット上の掲示板で活発に質疑・応答、アイデア交流を行ってい
る。
7)ジェームスクック大学での臨時セミナーで私が北海道教育大学釧路校地域教育開発専攻における ESD
人材養成カリキュラムとその実践について講演を行い、質問に答えた。複数教員同時担当による授業や活
発に地域自然・地域人材を学生教育に活用していることの紹介はインパクトを与えることができたようで
ある。
(4)学生教育における効果
学生に地球環境について講義で説明をしているが、教員自身が実際に自分の目や肌で観察し、体感してき
た話を加えることで、より現実味を帯び、学生も目を輝かせる。熱帯雨林についていえば、私はこれまで、
アマゾン、ボルネオで同様の調査経験を、サンゴ礁についてはエジプトの紅海沿岸で観察経験をもってお
り、それらの共通点・差異点にも触れることで、学生の生物多様性への認識を広げる効果が認められた。
また、これまでの調査で大量の写真、ビデオ、印刷物を収集しており、これらは学生の卒業研究にも資料
として提供するなど役立てている。
141
4.2.2. オーストラリア東北部の自然環境の現況の観察
神田
房行(釧路校教授)
事業期間
平成 19 年度
実施時期
2008 年 3 月 4 日~11 日
実施場所
ケアンズ(オーストラリア)
(1)調査目的
オーストラリア東北部には熱帯雨林があり、世界でも最も古い熱帯雨林であることが知られている。こ
こはかつてニューギニアと陸続きであったと考えられておりアジアの熱帯雨林と共通する動植物が生息、
生育している。この熱帯雨林は世界自然遺産であり、オーストラリアの国立公園にもなっている。この地
域の熱帯雨林の現況を観察する。更に、オーストラリア東北部の沿岸には広大な珊瑚礁が分布しており、
地球の歴史上重要な役割を担ったシアノバクテリアの生息環境であるグレートバリアリーフも広がってい
る。ここも世界自然遺産となっている。ここの自然環境の現況を観察する。
(2)方
法
調査地域:オーストラリア東北部(ケアンズ周辺)、グリーン島など
調査旅行期間:2008 年 3 月 4 日~11 日
調査日程・行程
・2008 年 3 月 4 日火曜日
JL5141 便
JL1144 便
釧路 10:20→東京 12:05
東京(成田)20:10 発
・2008 年 3 月 5 日水曜日
JL5141 便
4:50
機中泊
ケアンズ着
ツアー準備、ツアー申し込み手続き
・ 2008 年 3 月 6 日木曜日
ケアンズ The Hotel Cairns 泊
世界遺産およびオーストラリア国立公園であるグリーン島、
グレートバリアリーフのアウターリーフ訪問
・2008 年 3 月 7 日金曜日
ケアンズ The Hotel Cairns 泊
雨のためツアー中止、ケアンズ市内のインフォメーションセン
ターアボリジニー作品展示場訪問
・ 2008 年 3 月 8 日 土 曜 日
ケアンズ The Hotel Cairns 泊
モスマン渓谷での熱帯雨林観察、動物園でオーストラリア
の動植物観察 ケアンズ The Hotel Cairns 泊
・2008 年 3 月 9 日日曜日
世界遺産およびオーストラリアの国立公園であるクランダの世
界最古の熱帯雨林観察、水陸両用車による熱帯雨林の内部からの観察
ケアンズ The Hotel Cairns 泊
・2008 年 3 月 10 日月曜日 JL5142 便 ケアンズ 12:05→東京(成田)18:45
・2008 年 3 月 11 日火曜日 JAL1145 便
東京(羽田)12:50→釧路 14:25
(3)各調査日程ごとの調査内容、調査結果の概要
第1日目(3 月 5 日水曜日)
4:50 ケアンズ着
7:00 ホテルでの朝食
142
成田泊
9:00 ツアーデスクで今後のツアーの計画、申し込み
14:00 The Hotel Cairns チェックイン、ツアーの準備
第2日目(3 月 6 日木曜日)
6:00 起床
6:50 朝食
7:45 ホテルに迎えのバス到着、出発
8:30 ケアンズから船でグリーン島へ
グリーン島での植物観察、動物観察を行った。グリーン島はグレートバリアリーフの中にある島で国立
公園であり、熱帯雨林に被われている。珊瑚礁が元になって形成された島で、周囲は白い砂で被われてい
る。植物の種子は風や鳥によって運ばれてきたものである。地球の温暖化による海面の上昇の影響は特に
まだ見られてはいないようである。
11:30 グリーン島からアウターリーフへ
アウターリーフは広大なグレートバリアリーフの中の一つの珊瑚礁で、ここには人工の艀が作られて船が
いつでも停泊出来るようになっている。ここでは水中の魚類や珊瑚礁の観察ができる。また、ミニ潜水艦
での水中の観察もできた。前日に豪雨があったため水中は濁り気味であった。珊瑚礁は白化しているとこ
ろもあり、環境の悪化が懸念された。残念ながらシアノバクテリア観察は出来なかった。
写真1
グリーン島(世界遺産、グリーン島国立公園)全景
15:30 アウターリーフからグリーン島へ
16:30 グリーン島からケアンズへ
18;00 ケアンズホテル着
第3日目(3 月 7 日金曜日)
6:00 起床
6:40 朝食
7:35 ホテルに迎えのバスが来て、キュランダへの
ツアーに出発の予定であったが、豪雨のため交通機関
が十分でないため予定を変更。最終日の 11 日に変更。
この日はケアンズ市内のインフォメーションセンタ
ーでオーストラリア北東部の自然環境についての資
写真2
オーストラリア先住民、アボリジニーの芸術作
品
料を集めた。また、オーストラリアの先住民アボリジ
ニーの作品を展示即売している所でアボリジニーの芸術、文化について学習した。
143
第4日目(3 月 8 日土曜日)
7:00 起床
8:00 朝食
9:30 ホテルに迎えのバスが来て出発
11:00 ポートダクラス着
11:15 世界遺産モスマン渓谷で植物観察
モスマン渓谷は世界遺産に指定されているところで、熱帯雨林の植物を森林の内部から観察出来る所で
ある。ここは Daintree 国立公園でもある。地盤は大きな岩石からなっており、森林はその岩石の上に成
立していた。シダ植物や蔓植物が非常に多く、川では3日前の豪雨の影響で水量が多く急流となっていた。
熱帯雨林は良く保全されており、状態が良いことが伺われた。
13:20 熱帯雨林ハビタット動物保護園で熱帯雨林の動植物の観察
ここは熱帯雨林を再現し、熱帯雨林の植物の観察とオーストラリアの動物を観察することが出来るよう
に整備されている所であった。オーストラリアのカンガルーやワラビー、コアラ、淡水や海水性のクロコ
ダイル、爬虫類、両生類など野生に近い状態で観察できた。
16:30 ポートダクラス出発
18:00 ケアンズホテル着
写真3
モスマン渓谷の熱帯雨林内(世界遺産、Daintree 国立公園)から
第5日目(3 月 9 日日曜日)
6:00 起床
6:40 朝食
7:35 ホテルに迎えのバスが来てクランダのツアーへ出発。
144
写真4
クランダの鉄道沿いの熱帯雨林(世界遺産、バロン渓谷国立公園)の景観
クランダの世界最古の熱帯雨林観察をした。ここは年間降水量が 2500mm もある雨林で鳥類だけでも 200
種以上おり、オーストラリア原産のチョウの 60%が生息している。羽の開長が 13cm もある美しいブルーの
ユリシーズ・バタフライは有名。ここの熱帯雨林はジャワ島などと同じ起源を持つとされ、有袋類が生息
するなど共通点が多い。植物では木生のシダが生育しており、世界の熱帯雨林でも最古であろう。
12:00 昼食
13:00 出発。
午後はまず、バロン川で水陸両用車に乗りながら熱帯雨林を川から観察した。3 日前の豪雨で水量が増
しており、水もにごっていたが川岸に繁茂する熱帯の樹木やつる性植物、木生シダを観察できた。
最後に、スカイレールによる熱帯雨林の空中からの観察を行った。ここはバロン渓谷国立公園になって
おり、世界遺産でもある。ここはでは 1 億 2,000 万年前のオーストラリアを覆っていた森林の景観を見て
いることにもなる。スカイレールからはバロン渓谷国立公園の景観を見ることができる。ここでは 160 種
以上の熱帯雨林の植物が観察できる。熱帯雨林のユーカリの一種カダジ、締め殺しのイチジク(ブーンジ
フィッグ)
、クーパーズツリーファーン(シダの一種)、レッドペンダ、アレクサンドラパーム(椰子の一
種)、バスケットファーン(樹上シダ)、スコッツジンジャー(生姜の一種)、バンクスバナナ、スタグホー
ンファーン、ローヤーケイン、ブラウンパイン、カウリマツ、ファラデーズヴァインやサプルジャックの
ようなツル科の植物、ソテツなど実に多様な熱帯雨林の植物を観察することができた。
145
写真5
写真6
熱帯雨林に生育する木生シダ、クーパーズツリーファーン
オーストラリアに生息する淡水クロコダイル〔動物園で〕
2008 年 3 月 10 日月曜日
JL5142 便
2008 年 3 月 11 日火曜日
JAL1145 便
ケアンズ 12:05→東京(成田)18:45
東京(羽田)12:50→釧路 14:25
146
成田泊
写真7
スカイレールからの熱帯雨林(世界遺産、バロン渓谷国立公園)の樹冠の景観
(4)全体としての成果の概略
今回訪れたオーストラリア北東部のサンゴ礁や熱帯雨林は、世界遺産やオーストラリア国立公園として
保護、保全されており、状態は大変よいと思われる。特に熱帯雨林はオーストラリア大陸とニューギニア
が大陸移動の前に陸続きであったことからの共通する動植物が多いところである。アジアの熱帯雨林が焼
き畑農業やエビの養殖などで急速に失われている現状を見ると、自然状態で良好に維持されている環境は
世界の環境保全の観点から重要である。これらが世界遺産として保全されていることも好ましいことであ
る。今後オーストラリアの政策が仮に変わるようなことがあって開発がされようとしても、環境保全の意
味から、世界の目が注がれていることはいいことであろう。オーストラリアだけが保全の労をとることに
ならないよう、世界がバックアップする必要があろう。ただ懸念されることは世界自然遺産や国立公園の
周囲(内部も含めて)の開発が進んでいることや、観光客の増大によって少しづつ破壊が進んでいること
である。サンゴ礁の白化や周辺の樹木の立ち枯れが見られたことが気にかかる。
(5)学生教育上の効果
環境教育の授業を行う上で指導する教員が現場を実際に見たことがあるかどうかは重要な点である。経
験のない授業活動は学生には説得力にかけるのは言うまでもないことである。実際に自然環境を体験しな
がらエコツーリズムを行うのは学生を引率してツアーを行う場合大変参考になるし、学生がツアーを行う
場合に適切な指導ができる。また、自然環境に配慮しながらエコツールズムをおこなうにはどのような点
に留意しなければならないかなど学生の教育上大変参考になる。
147
4.2.3. オーストラリア、ケアンズ・ウルルカタジュタ:
国立公園先住民族の文化保護へ向けての取り組みの調査
諫山
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 19 年 12 月 23 日~29 日
実施場所
邦子(釧路校准教授)
オーストラリア・クイーンズランド州・ケアンズおよび、
ノーザンテリトリー(北部準州)・ウルルカタジュタ国立公園
(1)背景と目的
エコツアー先進地の実際を調査し、道東の文化や自然を保護し維持していくための知見を得るために、
現地に赴き資料を収集する。オーストラリアの都市ケアンズにおける世界自然遺産を二つ活用したエコツ
アーの実態および、ウルルカタジュタ国立公園における先住民族の文化保護へ向けての取り組みを調査す
る。
(2)調査日程、行程
12 月 23 日
釧路空港→成田空港→オーストラリアへ
12 月 24 日
オーストラリア、ケアンズ空港→エアーズロック空港着
・エアーズロックビジターセンター(図書資料購入)
・カタジュタ・ウルル国立公園(同公園の歴史、概要、エコツアーの多様性について
資料収集)
・天文台にて星座観察のエコツアーに参加(望遠鏡を 3 台使用しての恒星、惑星、星
雲についての解説を聴く、)
12 月 25 日
・ウルルサンライズ、マラウォーク、ムチィジュルウォーク、アポリジニカルチャー
センター(先住民族の居住地域とかかわる自然遺産や先住民族の文化を保護、保
全する政策についての資料収集)
ケアンズへ
ケアンズの町散策(二つの世界自然遺産にはさまれて
いる町の様子や工夫について見学)
12 月 26 日
グリーン島一日研修
エコパス散策、シーウォーカー、シュノーケリング(世界自然遺
産の中で観光と保護活動の啓発を行っている様子を概観)
先住民族のエコツアー(エコツアーの賞を獲得したツアーに参加
し、資料を収集)
12 月 27 日
12 月 28 日
乗馬体験、土ぼたるの観察(熱帯雨林の世界自然遺産を活用した活動に参加)
バルーニング(熱帯雨林の空域を利用し、動植物を観察する)、
ケアンズ発成田着
12 月 29 日
羽田発釧路着
148
(3)調査内容、調査結果の概要
1)ウルルカタジュタセンターとアポリジニカルチャーセンター
ウルルカタジュタビジターセンターには、アポリジニに関するビデオや図書などが配架され、併せて、
ウルルカタジュタ地域に関する地質学等に関する資料が入手できるようになっていた。
アポリジニカルチャーセンターには、学芸員、職員がアポリジニの文化保護やそのための研究に携わっ
ており、多くの研究資料や年報、一般向けの出版物、を検索入手するための便宜が図られており、併せて、
アポリジニ芸術・文化に関わる観光客向けの販売店も併設されていた。
先住民アポリジニは4~5万年前からオーストラリア大陸に住んでいたと言われている。狩猟採集・漁
労で自然とともに暮らす生活を営み、文字を持たず「ドリーミング」と呼ばれる天地創造の神話や踊り、
絵画によって独自の文化と伝統を伝承し続けてきたとされている。白人の入植がはじまる 200 年前までは、
一部族あたり、約 500 人で 570 ほどの部族がオーストラリア大陸点在し、推定人口 25 万人とされていた
が、植民地化による迫害・虐待で 1901 年の調査では約 6 万人までに回復し、現在ではほぼ元通りとされ
ているが、500 の言語が 10 程に減少し、オーストラリア全土の人口比では 1.5%とされている。1970 年代
以降、土地件回復などをはじめ、政治・経済的自立をめざし、政府や国際的なサポートのもとに、失われ
つつある自らのアイデンティティーを取り戻すために伝統的な生活様式、言語、儀式の復活、また、ディ
ジュリドゥをはじめとした音楽・踊り、絵画等の芸術活動が活発化されて来ているようである。
この中で昨年度には、研究プロジェクトがほぼ終了し、来年度に向けて「ジュクルバ」という、アポリ
ジニに伝わる社会生活の方法、規律、知恵、などアポリジニのエッセンスとも考えられる伝承の聞き取り
調査をし、わかりやすい表現と内容で改訂出版される厚手の書籍が完成されると言う情報を得ることがで
きた。このプロジェクトの成果はアポリジニを理解すること、アポリジニの知恵や哲学を現代の世界が抱
える解決の一助としたいと考えている研究者にとっても、非常に有効であり、世界の先住民族の文化保護
へ新たな一石を投じるものであろうと、学芸員の方が強調されていた。
2)ウルルカタジュタ国立公園でのエコツアー
通称「エアーズロック」と呼ばれる世界最大の 1 枚岩「ウルル」(偉大な岩の意味)、36 個の奇岩が約
500m のドーム状に連なる「カタジュタ」(たくさんの頭の意味)、これらを総称してウルルカタジュタと
よび、この場所はアポリジニが聖なる場所として大切にしてきた場所で、かつてはエアーズロックに登る
観光が人気を集めていたが、近年では、アポリジニの立場を尊重して登山することを控えるような運動も
起きている。
宿泊施設やレストラン、ツアーデスクはウルルからは 20 キロ、カタジュタまでは 53 キロ離れたところ
に配置され、聖地では、夜間の宿泊等が禁止されている。また、ツアーとして、日の出、日の入りに合わ
せた多様なツアーが展開され、その中で、「ウルルサンライズ」「マラウォーク」「ムチィジュルウォーク」
の 3 つのツアーに参加した。また、宿泊施設のツアーデスクを訪れ、国立公園内の天文台で行われる「星
座エコツアー」と「アポリジニカルチャーセンターツアー」もエコツアーとして勧められ 2 つに参加した。
ツアー主催者へのインタビューで、この5つのツアーの共通の背景にある哲学・理念として、自然に対
し思いやりを持って接すること、五感を最大限に活かして自然を感じ取ること、多様な自然を受け入れる
こと、先住民や地元の人と触れ合って敬意を払うこと、そして、持続可能な観光を考えているということ
が掲げられていることがわかった。実際、そこに生きる動植物の生態や、人と自然の関わりや、現地の人々
の生活や文化についてなど、できるだけ多くのことを体験して学び、保護や保全への関心を高めるような
組み立てになっていると感じられた。また、これらは、優良なエコツアーとして認められているそうであ
る。
149
3)ケアンズのエコツアー
世界最古の熱帯雨林とグレートバリアリーフの二つの世界自然遺産を持つ都市として知られ、熱帯雨林
では「乗馬トレッキング」
「土ボタルツアー」、市街地で行われている先住民に関わる「ジャプカイナイト」、
グレートバリアリーフのグリーン島では、野鳥や自然観察等が楽しめる「エコパス散策」と海の活動とし
て、「シーウォーカー」
「シュノーケリング」を行い、ケアンズの平野部を生かした「バルーニング(熱気
球)」の活動に参加した。
乗馬や土ボタルは、歩いたり、馬に乗ったりしながら、それ自体の楽しみもあるが、地元の人が日常の
生活途中で発見した地域の自然について焦点を当て、訪れた地域を効果的に学習できるような工夫を随所
に行っている取り組みであると評価できた。
イギリスの女王も鑑賞し、エコツアーの最高賞を受賞した「ジャプカイナイト」は、アポリジニの歴史
と伝統をビジュアル化したショーで、伝統の楽器ディジュリドゥーの演奏とダンスを参加型の内容として
組み込まれ、ショー後に出演者へ質問したところ、深くアポリジニについて学び、考えることのできる内
容を常に工夫改善しているとのことであった。
広大なグレートバリアリーフの一部を観光やエコツアーが出来るような場所として整備されたグリーン
島では、港から 30 分程の乗船でアクセスできる場所であり、泳げない人でも海の中を歩いて実感できる「シ
ーウォーカー」、泳げる人であればだれでも浅い海に潜ってサンゴ礁と海の中に生息する動植物をを堪能で
きる「シュノーケリング」が、双方ともに、安全に楽しめるように、範囲を区切ってまた、監視体制も十
分に行われている状況を実際に活動しながら、実感として理解することができた。また、グリーン島を一
周することができ、海岸や島に生息する野鳥や動植物を「エコパス散策路」として、幼い子どもから年輩
の人までの範囲で楽しんで学習することのできるようなクイズや解説版やコース案内が充実していた。ま
た、2 件の宿泊施設もあり観光客や学習者の要望に応えられるような、リゾート設備と研修設備が配置さ
れていた。
(4)全体としての成果の概略
12 月の年末時期にオーストラリアへ実質 5 日間滞在し、先住民族の文化保護に関して、都市部ケアンズ
とアポリジニが生活するウルルカタジュタ国立公園では、それぞれの形で伝統文化の継続を目指し、維持
し、守っていこうとする実態をエコツアーやショー、研究活動として資料を得ることができた。また、学
芸員やツアー主催者および出演者へのインタビューを行い、さらに開発可能な観光を目指した 8 つのツア
ーとその他の海での活動に実際に参加することで、良好なエコツアーの工夫やその観点を確認することが
できた。これらの知見を道東に於ける地域と連携した今後の企画や活動に生かすための議論のきっかけや
参考としたり、担当の授業内容の充実に活用することを期待している。
(5)学生教育上の効果
本調査では、地域の自然資源や文化資源を継承し保護するための体験型活動が活発な、国際的な先進地域
として知られているオーストラリアを訪れて持続可能な社会と環境教育の関連についての情報が得られた。
ケアンズという都市やウルルカタジュタ国立公園での政策および、民間における観光を巻き込んでの方法
論や実態について、各授業の機会をとらえて提供することができ、また、道東に於ける地域と連携した今
後の企画や活動に生かすための議論のきっかけや参考となり、授業内容の充実に資するものであると思わ
れる。
150
4.3. ドイツ社会と学校環境教育
大森
享(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年 12 月 8 日から 12 月 19 日
実施場所
ドイツ(カールスルーエ市)
(1)背景と目的
環境先進国と言われているドイツの子どもの環境教育の実態調査を行い、ら日本の環境政策・環境教育
の現実と今後の方向を考える。
(2)方法と内容
調査地域
ドイツ・カールスルーエ市及びフランクフルト市
調査旅行期間
12 月 8 日から 12 月 19 日
各調査日程ごとの調査内容、調査結果の概要
第 1 日目(12 月 8 日) 成田発ドイツフランクフルト市着
フランクフルト市内宿泊
第 2 日目(12 月 9 日) 時差ボケのため、ホテルに滞在。市内散歩。
第 3 日目(12 月 10 日) フランクフルト市からカールスルーエ市移動。カールスルーエ市宿泊
第 4 日目(12 月 11 日) 市内森の幼稚園視察・園長聞き取り・自然保護センター職員聞き取り・
夜の森観察会参与観察
第 5 日目(12 月 12 日) カールスルーエ教育大学学校の庭研究室研究協議・グーテンベルク小学校教員
聞き取り調査
第 6 日目(12 月 13 日) 黒い森自然観察会”水の教育学”参加
第 7 日目(12 月 14 日) カールスルーエ市植物園・動物園参観
第 8 日目(12 月 15 日) 市環境局職員聞き取り調査・市森の教室職員聞き取り調査・見学
第 9 日目(12 月 16 日) カールスルーエ・ヨーロッパ学校校長聞き取り・メヌック担当教員聞き取り。フ
ランクフル市へ移動
第 10 日目(12 月 17 日) 在独日本人聞き取り調査、市内の公共交通機関(路面電車)調査
第 11 日目(12 月 18 日) フランクフル市から成田に向けて出発
第 12 日目(12 月 19 日) 早朝帰国
(3)調査結果
カールスルーエ市での視察場所は、森の幼稚園“森のきつね”、自然保護センター、夜の森の親子自然観
察会、カールスルーエ教育大学“学校の庭”研究室、グーテンベルク小学校、森の教室、ヨーロッパ学校、
黒い森自然観察会、環境局、市立動物園である。
151
1)子どもの環境教育の一側面
①森の幼稚園“森のきつね”について:
1950 年代半ばデンマークの一人の母親の取り組みから始まった(今泉みね子 2002)森の幼稚園。
カールスルーエ市では 1998 年に設立された唯一の森の幼稚園“森のきつね”を訪問した(ドイツでは
1993 年から始まった:プラウ“森のきつね”園長 2008)。定員 30 名を保育者 4 名が担当し 3 歳以上で定
員に空きがあれば自由に入園できる。
9 時から始まり 12 時半に終わる。母親の自転車の後ろに引かれたバギーに乗り、8 時半ころから集まっ
てくる。12 月はドイツ中が各地域の広場でのクリスマスマーケットで盛り上がっていて、幼稚園では昼の
おやつタイムに順番に代表者が保育士手作りのアドベンツカレンダーのその日の袋からお菓子を取り出し、
園児みんなが食べていた。筆者が訪問した日は寒さと雨のため森には行かず、
“馬車ごっこ”で園庭を走り
回っていた。
“森のきつね”は、園庭も園舎もない森の幼稚園ではなく、普通の幼稚園と森の幼稚園の中間
に位置する幼稚である。
プラウ園長に話を伺った。「“土、水、火、空気”という自然を大切にしています。まず園児の興味から
始まり、五感を通した直接体験を大切にしています。園児は自然や仲間から学びます。保育者はそれを支
援するのです。例えば、落ち葉を見つけた園児に対して、その落ち葉はどの木から落ちたの?と問いかけ
たり、その木の名前を知りたくなった園児には教えます。落ち葉やクリの数を数えたりします。森の中の
切り株を利用したり、柳の枝を重ねてトンネルを作ったり、枝からロープをつるしターザンごっこをした
り等、園児たちが興味と想像力を働かせ、自然物を利用した手作り遊具(もちろん、保育者や保護者の力
を借りることもある)で遊ぶびます。ストレスの少ない生活を送っていると思います。クリスマス行事以
外に 3 つの行事(イースター祭り、夏祭り、ランタン祭り)がありますが、それ以外はすべて森の中で遊
びます。ただし、この幼稚園は、寒さや雨によって園庭で過ごすこともあります。」
普通の幼稚園に比較すると、社会性の発達、経験の豊かさ、能動性、判断力、自主性、想像力(ファン
タジ―)、知性に優れている(ピーター
ヘッフナー他
ハイデルベルグ大学「森の幼稚園に関する研究結
果」より)。
昼のおやつは、昼食を兼ねて食べる園児と帰宅後自宅で昼食を食べる園児がいたが、園児が持参したお
弁当を見るとパン・チーズ・果物程度で、筆者の感覚としては質素だなあと感じた。また、友達と離れ一
人だけ違うテーブルで食べていたので、
「あの子はどうして一人ですか」と尋ねると「一人で食べたい時も
ある」と保育者は答えた。
さて、日本の保育者ならどうするだろう。別の場面でも、例えば、フランクフルト中央駅構内で店の前
のテーブルでコーヒーを飲んでいた時、若い母親に連れられた子どもが、お母さんの説得を聞かず寒い外
に居ると言いだし、母親は無理強いせず自分は温かい室内に入ってしまい、子どもは外にしばらくいて中
に入った。ドイツでは、小さい時から、まず「その子の考え」を大事にしているように思われる。
園庭の隅にはバイオトイレの小屋とコンポストがあり、屋根には太陽光発電が設置され、冬場の水道凍
結のため水は保護者が毎日交代で運んでいるそうである。ということで、日差しが少ない時は照明が暗く
なり、水も使い過ぎると途中でなくなり、もちろんお湯はない。
「それらの生活が園児にとって自然と人間の生活を考える上で貴重な体験となる」と語り、
「小学校入学
当初は文字学習で多少遅れをとるようであるが。話すこと、自主性、集中力は優れている。書くことは 3
カ月もすれば追いついてしまいる(上記論文より)」とプラウ園長は力強く話した。
日本でも、森の幼稚園もしくはそのような取り組みは行われている。例えば、千葉県木更津市社会館保
育園の里山を活用した保育、その園の卒園児を中心とした「土曜学校」など、子どもの能動性を引き出す
「自然と仲間」という環境を活用した実践が展開されている。
152
“森の幼稚園”を見学して、能動的に仲間とともに自然という対象に働きかけ対象を変革することを通
じて人間自身が成長・発達を遂げてきたという人間の成長・発達の原則といっていいものに依拠している
事を感じた。知識はその子の体験やその子の文脈に位置付けられて生きて働く知恵となる、ということが
提起されていると考える。
②“学校の庭”研究と実践について
<カールスルーエ教育大学、グーテンベルク小学校、ヨーロッパ学校>。
カールスルーエ市の学校環境教育に大きく影響を及ぼし、ドイツにもその影響を広げようとしている環
境教育実践(カールスルーエ市のあるバーデン・ヴュルデンベルグ州の 39.5%で実施。そのうち学校敷地
面積が小さい所では、市内 27%周辺 47%田舎 14%。中くらいの所では、46%、46%、43%。大きい所では
38%、63%、53%。現在 710 個所で実施これまでに 237 個所で廃止されている。400 人の教師と学校数 703
校の調査で、教師が問題にしている点は、時間がかかる 114 人、カリキュラムの位置づけ不明 67 人、運
営の問題 60 人、協力の問題 24 人となっている。『Schulgelande zum leben und lernen』karlsruher
padagogische studien-band4)にかかわる研究が、カールスルーエ教育大学“学校の庭”研究室で行われ
ている。
カールスルーエ教育大学「学校の庭」研究室のレナート先生、ブレーマー先生に話を伺いた。
「本研究室では 1985 年から研究を始めています。市内の子どもたちは自然接触がほとんどなく、身近な
学校の校庭を活用して自然を学ぶことはできないかと考えたのが出発です。それらの事を進めていける教
師をどう育てるのかということです」。
「
“学校の庭”実践は、①ビオトープ作りとその学び
て土から学ぶ
③五感を通して感じる
②栽培を通し
という 3 つの主要なねらいがあります」
。「若い教師の体験不足は
非常に問題です。児童と地域の様子から校庭にどのようなもの(=ビオトープ・畑など)を造るのか、ま
た、どの科目で活用するのか、教師の裁量に関わってきます。教員養成で、教師としての能力や意思をど
う育てるかが問題です」
。
「カールスルーエ教育大学では、実際に大学敷地に学校の庭を建設しています(今
回移転中で、工事中のため見学はできなかった)」
。
「理論だけでなく学生には実際に経験してもらい、技術
と専門性を高めてもらいたいと考えています」
。「ドイツの教育は、州単位で決めるので、カールスルーエ
教育大学の“学校の庭”実践は、あくまで各学校の意欲に関わって、実践が進められていきます」。「野生
生物保護の国家戦略に沿って進めていて、実践の広がりはあります」
。
「問題点としては、
“学校の庭”の運営が 1 人~2 人の教師となってしまい、組織的にできていないとい
うことや、校庭が狭く、子どもの運動スペースにするのか“学校の庭”にするのかで各学校で論議があり、
小さなスペースの“学校の庭”しかできていません」。「そのため、市のクラインガルテン(市民農園)を
“学校の庭”実践を通して環境と自然に責任を持てる子どもたちを育てたいです。
活用したりしています」
。
「
先生がそのモデルとなればよいと思います。
“校庭の庭”実践でその学校の子どもたちの自然に対する責任
感がでてきたと聞いています」。
1974 年のバイエルン州など 70 年代西ドイツを中心に進められたビオトープ(生物生息空間)は、
“学校
の庭”実践の 3 つのねらいの一つとして重要な位置にあり、ドイツ市民のクラインガルテン(市民農園)
とも連携しながら学校環境教育に影響を及ぼしているようである。
次に、グーテンベルク小中学校で“学校の庭”実践を行っているベンコビッツ先生の聞き取りをした。
ベンコビッツ先生は、現在カールスルーエ教育大学大学院博士課程在籍で、
“学校の庭”実践における子ど
もの評価方法の研究をしていた。グーテンベルク小中学校の“学校の庭”は、直径 2 メートルほどの「う
ずまき花壇プロジェクト」で、中心に行くほど高くなり、高さは 1 メートルほどであった。周辺から中心
部に行くにつれ植生が変化する。周辺部は乾燥に強い植物、中心部は湿潤を好む植物を植えていたそうで
153
ある。周辺部の水やりは、時々忘れても大丈夫なように低学年の子どもたちが行ったそうである。このプ
ロジェクトは、全校から希望者をつのり、実施し、観察などの結果を全校に発表したそうである。
いくつか質問をした。
「“学校の庭”実践でビオトープを作る場合、子どもたちと相談して造ると思いますが、具体的にはどうす
るのですか」
「グループ毎に計画案を出してもらい、コンテストで決めます」
「たとえば、子どもたちと先生の考えが合わない時がありますね。子どもたちは、生態系とか生物多様性
とか重視しない時があると思いますが、どうですか」
「他のビオトープを見学したり、先生方が望ましいと思うビオトープの写真を廊下に張り出したり、それ
となく方向性を示します。
“学校の庭”のビオトープは、設計・制作・維持・管理を子どもたちの参加で実
施します。自治体や公園局の援助も受けます。子どもたちは、ここで五感を使い気づき、知識を習得して
いきます。私の指導した 2 年生では、たとえば、ヒマワリを育て、種ができてそれが地面に落ちて芽が出
てまたヒマワリになることを発見したり、ミミズやナメクジが嫌いな子が多いのですが、ミミズについて
知ることによってミミズを好きになる子が出てきました」
「子どもたちは、地域や社会にかかわったりしないのですか」
「畑で作った作物や料理したものをフリーマーケットで売って、農業経営の学習をしたりしています」
「カールスルーエ市では、公園に対する要望を大人はもちろん、子どもも自由に投書できます」。
筆者の実践で、河川敷のオープンスペースに池を掘る、公園に子どもたちの要望を反映させて公園を変
える、など地域の公共空間に子どもたちが主体者として立ち現れる実践があるが、日本では地域住民が公
共空間に関わるルートがほとんどなく、ましてや子どもが意見表明をする「公論の場」もない(河川法の
改正により地域住民の要望を反映させる河川造りは進められようとしているが)
。
日本の教師は子どもたちが意見表明できる「公論の場」を組織する活動のなかで、子どもを活動主体と
して捉え「子どもはちいさなまちづくり人」
(埼玉県鶴ヶ島市教育委員会スローガン)というような地域環
境に働きかける子ども観を鍛え、教育実践を進めていると言える。
また、子どもたちの作成する環境計画(=ビオトープ設計図、活動計画、維持管理計画)を生み出す段
階においても、日本に比較するとドイツの子どもたちは、参考にするビオトープが社会に多様にあり、接
する機会(大人・社会のメッセージによる形成力も含めた)が多く、その段階での指導も比較的スムーズ
と言える。ただ、教師のねらいと子どもたちの要望のズレは存在しており、その点における指導をめぐっ
ては日本もドイツも共通していた。身近なビオトープから写真が撮れるし見学なども手軽にできるドイツ
はうらやましく思えた。
カールスルーエ教育大学“学校の庭”研究室が開発した「ビオトープ設計・維持・管理キット」にはビ
デオやワークシートなどのマニュアルがまとまっており、誰でも参考になるものであった。
次に、カールスルーエヨーロッパ学校(幼・小・中・高併設)を訪問した。ヨーロッパ学校とは、ヨー
ロッパ各国である程度共通したカリキュラムを持つ学校で、かなり複数の語学が学習できるようになって
いる。ダナ女性校長はドイツ語・英語・ポーランド語など語学力があった。教科と時数は以下の通りであ
る。
小学校
Ⅰ年
2年
3年
4年
宗教
2
2
2
2
ドイツ語
6
6
7
7
フランス語
2
2
2
2
154
算数
4
5
5
5
メヌック
3
3
3
3
図工
1
2
3
3
音楽
1
1
1
1
体育
3
3
3
3
メヌック(MENuK)とは「人間・自然・文化」領域の学習で「世界の発見」科目<地理、歴史、生
物、物理>として扱っていた。
“学校の庭”は主にメヌックの時間の一部を使い、教科横断型・統合型授業で、ビオトープ、理科、栽
培に関わり、現在はコンポスト、植物栽培が中心だそうである(ビオトープは建設中であった)。授業は、
“学校の庭”担当者と担任が協力して行うが、評価は担任がするそうである。四季を通じて栽培・植物と
関わり、収穫して調理して食べる。収穫量が少ないので、購入したものを混ぜる(もちろん、生徒は知っ
ている)。野菜嫌いが多いであるが、自分達で作った野菜は喜んで食べるそうである。
“
学校の庭”の評価は、
「態度:仕事が良くできたか、参加、集中力。技能:耕す。知識:ノートを教師
が見て、学習者は何を学んだか・何をしたかを評価する。例えば花の名前、栽培されている植物について
評価する。」
「ドイツは『庭文化』の国であり、
“学校の庭”を推進する背景があります」と担当者は言って
いた。余談であるが、体育では週 1 時間か 2 時間サイクリングをするそうである。
2)学校環境教育を支える地域社会の教育力の一側面
①市環境局
市全体の環境に関わる仕事をしている環境局で、担当のバーベル博士ら二人の話を伺いた。
市環境局のテーマは「水、土、自然、空気」である。水は取水保護・検査・雨水浸透・アルプ川の魚道
や近自然工法、土は土壌汚染などの問題点・4分の 1 の建ぺい率・緑地を保つこと、自然は緑地確保・保
護区は赤・景観保護区は緑で地図に表示・種の保存、空気についてはカールスル―エ市がライン川に沿っ
た谷にあるため空気の循環重視(風の通り道確保)
・大気を観測し微粒子や二酸化炭素濃度測定・硫黄酸化
物は低下・窒素酸化物は多少上昇・法で規制・工場技術の向上・工場の売買については調査している。
車については 2009 年 1 月から環境ゾーンを設け、排気ガスの質で赤・黄色・緑シールを車に貼り、赤
は環境ゾーン侵入規制をしる。公共交通の整備を行い、レンタル自転車やカーシェアリングを増加させて
いる。
インターネットで市民への手紙を宣伝し啓蒙活動・建物のエネルギー節約に対する資料配布を行ってい
る。
環境教育について:
i)自然教育
具体的行動とそれをなぜ行うかを重視している。
若い世代に対し、動植物にしてはいけないこと(いたみやすいので焚き火やキャンプの影響)を指導して
いる。
i i)自転車利用促進
環境局ボランティアが学校へ行、自転車修理の仕方を指導する。警察官が交通ルールの指導をする。都市
計画局が学区域通学マップ作成している。
i i i)食生活
小学校入学祝に地元の果物を入れた袋を渡している。小学校 1 年生の第 1 週に環境局と地元市場が協力し、
155
週末の市場に行き体験学習をしている。地域の食べ物について興味を持って学習してほしいと思っている。
i v)メヌック(人間・自然・文化)での地域・社会の学習
例えば、高校でエネルギー教育(ソーラーシステム、大気保護、低開発国支援、自転車の活用)を行って
いる。
v)地域に根差す学習プログラムの開発
州の教育局が幼児教育・学校教育を担当し、教員はカールスールエに住んでいない場合があるが、市環境
局は、メヌックの内容に関わるカタログやリストを各学校に送付したり、インターネットで公開している。
それらを各学校が判断し選択している。自然保護センター、移動エコ教室、森の教室、動物園、保護区ビ
オトープ、博物館、各種看板(説明)を活用するプログラムである。例えば、速くそして負荷をかけずに市内
を移動するにはどのようにすればよいか、という学習プログラム。学校管者のための省エネセミナー。環
境アドバンスカレンダー。各地域には各地域の環境があり、地域の環境アドバイザーとしての市民の意識
を高めることが大切だと考えている。
最後に、屋上緑化を特別見学させてもらい、緑豊かな屋上であった。環境局の担当者は専門職として博
士号を取得した方が担当されていた。科学的なデータと調査、啓蒙活動、何よりも市民の主体的な活動を
促す(例えば、情報はすぐに流し、判断材料にしてもらう・公園に対する要望を自由に記入してもらうな
ど)活動を重視していると思われた。
②私的体験から
カールスルーエ中央駅前の道路は自動車進入禁止で歩行者は駅を出て道路を横切りトラム(路面電車)停
留所に安心していけた。車に心配なく道路を横断できる安心感はあらためて大切だなと思った。トラムの
床が低く乗り降りが楽なのは言うまでもない。ただし、フランクフルトの方がより低く、停留所の高さと
同じであった。歴史的建造物の外観は保存義務があるが、内装は自由に変えられる。歴史的な面持ちのあ
る立派な建物の中は、近代的なショッピングモールであった。歩道・自転車道・車道が区別されていて、
安心して歩けるし、自転車に乗っている高齢者も多かったである。公共交通機関としてのトラム(路面電
車)は低料金で利用できた。
煙草のポイ捨てが多く、毎朝清掃車が道路を清掃していたが、毎朝しないとタバコの吸い殻だらけとな
るかもしれない。駅構内で、歩きながら食べ物を食べている年配者を含めた市民が多かったのには驚いた。
以上の 2 事例は、移民の方もしくは旅行者だとドイツ在住 10 年以上の日本人(渡辺裕子さん)は言って
いたが。
閉店法により、土曜日・日曜日に店は開いていなかった。日曜日の動物園は店が閉店しており、園内も
日本と比べ閑散としていた。ホテルも土・日曜は平日よりも料金が安いのには驚いた。買い物をしても包
装はしない。たとえば、ケーキを購入したとき、固い紙の皿に載せ固い紙をケーキの上に載せて、袋に入
れていた。朝食は各種パン・各種チーズ・各種ハム・コーヒーか紅茶・牛乳・ヨーグルト・果物、昼食は
例えば、ホットドックとか具入りスープとか各種パン、夕食も似たようなもので、全般的に野菜不足、特
にヨーグルトなど乳製品や肉・ソーセージが多いようである。ビン類の使用が多いはさすがドイツと思わ
れた。
12 月はクリスマスマーケットの季節である。各都市の広場には屋台や特設のメリーゴーランドがあり、
年配のご夫婦が手を繋いで歩いていたり、職場の同僚が屋台の前のテーブルで論議していたり、子どもも
大人も集まって楽しそうにしていたのが印象的であった。授業を中断して来ていた学校がいくつかあった。
156
3)学校環境教育実践と行政・NPO 等の連携一側面
①自然保護センター
市街地から少し離れたライン川のほとりにセンターはあった。
学校の授業の一環としてセンターを活用する学校が多く、例えば最近では 4 年生のメヌックで 2 時間半ほ
ど「川と生き物」学習が行われたそうである。どんな動物が、四季の変化や環境の変化でどのように生き
ているのかを学んだそうである。再度週末に親子で来る子どもは 1 割ほどである。森の生き物、草はらの
生き物、土壌生物など虫眼鏡を使って観察する。建物の中では、子どもたちがゲーム感覚で遊びながら川
の変化を学べるようになっている。たとえば、直線的な水路と蛇行した水路にビー玉を転がして落ちる速
さを比較したり、年代ごとのライン川の様子を見て人の関わりや河川工事のやり方を比較させ、将来の河
川工事について考えさせたりする。非常に工夫されていたと思う。
②夜の森の親子自然観察会
自然保護センターのボランティアが毎年冬に開催している夜の森の親子自然観察会に参加した。参加し
た親子は 10 組ほどであった。最初に森の中の屋根のある建物で、小学校教師であるボランティアの一人が
「森の動物の話」の読み聞かせを行った。夕闇せまる森の中で静かに読み聞かせは始ったが、騒ぐ子ども
もおらず集中して聞いていた。終了後、各自ランプをもらいみんなで森の中に入って行き、雨の音を静か
に聞いたり暗闇を感じたり、途中、サンタと妖精が登場し、
「森の困っている動物たちに餌をやってくれな
いか」というような話をしていた。森の一画には、猪と鹿が飼育されており、子どもたちはイノシシに栗
をあげていた。野生の猪が森に生存しており、子どもたちも猪を大切にしているようであった。最後に焚
き火にあたりながらサンタからプレゼントをもらっていた。この森の観察会は幻想的でファンタジーを基
調とし、自然を感じる目的があったと思った。
③カールスルーエ森の教室
この教室では、3 歳から 6 歳の「小枝グループ」12 人(遊び中心)、6 歳から 10 歳の「リスグループ」
20 人、11 歳から 14 歳の「コウモリグループ」8 人から 20 人が、月 1 回活動している。参加申込は年 1
回、年間参加費15ユーロ(1800 円程度)である。学校単位、学級単位で参加する場合もある。州全体で
は 120 の子どもグループが参加している。カールスルーエ市では 3 つの学校のグループが参加し、土曜日
や平日放課後の2時から 4 時に活動いている。担任は週 1 回ほど放課後の活動に参加しているそうである。
放課後の参加は、授業外としての活動である。午前中の参加は、メヌック授業として参加しているそうで
ある。評価はボランティアと教師が話し合って行うが、最終的には教師による評価が行われている。森の
教室のめあては、森で遊ぶこと(例えば、インディアンのテントを使う、自然のものを使った遊具づくり)、
畑づくり(例えば、綿を育てるなど)などだそうである。
④黒い森自然観察会
市内からトラムに 1 時間程乗り、下車後徒歩 15 分で黒い森の入口に着く。ライン川に流れ込むアルプ川
に沿って観察トレイルがある「水の教育学」コースのガイドの説明を聞いた。要所に説明板がありそこで
実際に実物を見ながら説明が行われる。例えば、
「静かに自然の音を聞こう」という所では、川のせせらぎ
を聞く体験をさせる。
「最近は子どもが集中しなくて困っている」というので、
「サウンドマップ」の話を
したら、
「今度ぜひやってみたい」と喜ばれた。川遊びの場所では、ワークシートに書かれた指標生物を採
取し川の自然度を測る調査(日本でも普及している)、この地方の昔からの遊び(水車づくり、タンポポの
茎を繋げて水路を作る、ダムづくりなど)をするが今の子どももとても喜ぶそうである。
157
大人の参加者には、
「水の精霊を感じるプログラム」を実施しているそうである。一つの川を上流に向か
って歩くなかで、土砂崩れ・雨水の浸透・湧水、人間の土地利用、自然を感じるプログラム、川で遊ぶプ
ログラムというようにバランスよく行われていると思われた。「川の水を飲むプログラムはないのである
か」と尋ねたところ「飲んでも問題はないが実施していない」とのことであった。
「これから実施してみた
い」と話していた。
⑤市立動物園
カールスルーエ中央駅の目の前は動物園で、駅を降りて最初に目に飛び込んでくる。ドイツで最初の動
物園の一つでもある。園内はとても広々として、入口を入ると中央に池が広がり、池を挟んで右手には市
内を見渡せる小高い丘、左手には庭園が広がっている。広く静かな庭園は散策や思索にとても良い環境だ
と思われた。1 番人気の白クマは、水槽の壁の一部がガラスでできており、白クマの泳ぐ様子や餌をとる
様子がよく見えるようになっている。来園者と動物との距離が近く動物がとても見やすく、
「行動展示」と
いう工夫はあまり感じないが、それぞれの動物には比較的広いスペースが確保されていた。昼ごろから三々
五々乳母車を押した家族づれが入園して来た。カエルとコウモリに関するパンフレットが子どもの年代別
に3種類置かれていた。
(4)調査の成果と学生教育上の効果
「『持続可能な発展』は、エネルギー、資源、廃棄物、交通、水、食糧など環境を取り巻く物理的な社会
経済システムの『地域自立』によって実現され」
「環境によって経済的・社会的問題を解決することなので
あ」り「経済問題、社会問題の解決のためにも環境政策が必要になってきている」(竹内恒夫 2004)こと
や、「国民の思想の在り方」「それは一言で言えば、人間の尊厳の思想がどの程度定着しているか」という
ことであり、
「人間の尊厳理念の内容として、もうひとつ重要なのは、共同決定の考え方である」。
「人は自分に関係することについては、自ら決定できるか、少なくとも決定に関与できなければならない、
という思想である」。「ドイツの共同決定の考え方は、すでにワイマール時代に全面的に展開していたが、
戦後西ドイツにおいては、人間の尊厳の思想と結びついて、より強固な思想基盤を獲得した」
(西谷敏 1992)
とする指摘は、日本の環境教育を考える上で示唆に富むと考えている。学生教育にもドイツでの調査の成
果を還元してゆきたい。
158
4.4. アラスカの自然体験と教育交流を組み入れた学生教育
○神田
境
房行(釧路校教授)
智洋(釧路校准教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年9月 21 日~平成 21 年 10 月 9 日
実施場所
アンカレッジ、フェアバンクス(アラスカ)
(1)背景と目的
本学釧路校では「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス」をテーマに大学と地域との取組を行っ
ている。「持続可能な社会のための教育(ESD)」はこれからの未来をになう人材をどのように育成するか
が大きな課題である。そのためにはグローバルな視野で物事を考え、行動する事が求められる。本調査旅
行は学生にアラスカの環境教育を体験させ、グローバルな視野で考え地域での活動をする場合のファシリ
テーターを養成するプログラムの開発のための試行実践調査として行うものである。
(2)方
法
調査日程、行程は下に記したとおりである。
アンカレッジではアラスカ民族文化センター、キナイ・フィヨルド国立公園、デナリ国立公園、アラス
カ動物園などを訪問した。フェアバンクスではアラスカ大学、公立小学校、チャータースクールなどを訪
問した。
参加者は以下の通りである。
〈引率教官〉神田房行、境
智洋
〈大学院生〉教職大学院1年生:男子1名
〈学
生〉
(3)結
釧路校4年生:男子1名、女子2名
果
アラスカ・アンカレッジ周辺では、アラスカの国立公園である、キナイ・フィヨルド国立公園で船上か
らのアラスカの氷河や海獣、鯨類の観察を行った。また、北アメリカ最高峰マッキンリーを含むデナリ国
立公園で植生や大型動物の観察を行った。また、アメリカにおける国立公園の管理・環境教育の実際を視
察した。アンカレッジ市内では、アラスカの先住民族博物館や動物園を訪問した。
アラスカ・フェアバンクスでは、アラスカ大学訪問と学校訪問を行った。アラスカ大学では日本語学科
の ク ラ ス を 訪 問 し 、 学 生 間 の 交 流 も 行 っ た 。 学 校 訪 問 で は ア ラ ス カ の 公 立 の 小 学 校 Pearl Creek
Elementary School を訪問し、アメリカの典型的な小学校の様子や複式学級の様子を見学した。また、少
数民族対応の中・高等学校チャータースクール Effie Kokrine Charter School を訪問し、先住民教育の実
際を視察した。アラスカ大学の先住民教育を専門に研究しているレイ・バーンハート教授の研究室では
2009 年度に設立予定の野外活動に重点を置いたカリキュラムを構築中の小学校のチャータースクールに
ついて設立準備委員の先生から説明を受けた。また、環境問題に対応した学校(小・中・高等学校)での
カリキュラムを紹介してもらった。
159
調査日程、行程
日程
17(水)
18(木)
19(金)
行動
釧路→羽田→成田
成田→シアトル
シアトル→アンカレッジ
アラスカ民族文化センター
アラスカ動物園
事項等
宿泊
釧路 15:20-羽田 17:00
成田市内
成田 15:50-シアトル 08:30
アークティッ
日付変
シアトル 10:00-アンカレッジ 12:40
ク・フォック
更
アンカレッジでレンタカー用意
ス・インB&B
自然・民俗についての情報
同上
20(土)
Seward へ移動 11:30 出航(船)
アラスカの氷河の現状視察
同上
21(日)
アンカレッジ市内視察
市民生活の現状
同上
アンカレッジ→フェアバンクス
レンタカーで移動
デナリ国立公園
デナリ国立公園視察
22(月)
23(火)
24(水)
25(木)
26(金)
フェアバンクス市内視察
オーロラ観察
アラスカ大学訪問(日本語クラス)
オーロラ観察
学校訪問(小学校)
オーロラ観察
チナ温泉
パイプライン
オーロラ観察
市民生活の現状
フェアバンクス発→シアトル着
タウンサイ
トガーデン
ズB&B
同上
アラスカ大学との交流・情報交換 同上
アラスカの教育の現状
同上
アラスカの産業
同上
フェアバンクス 7:00-シアトル 11:35
27(土)
備考
シアトルでアラスカ以外のアメリカ
都市体験
レンタカー返却
グリーント
ートス・ホス
テル
28(日)
シアトル発→成田
シアトル 14:30-
機中泊
29(月)
成田着
-成田 17:20
成田市内
30(火)
羽田→釧路
羽田 13:00-釧路 14:35
訪問した学校では、日本文化紹介として、コマ、けん玉、だるま落とし、竹とんぼ、とんとん相撲など
の日本の伝統的な遊び道具を子供達と一緒におこない、日本文化を通して学生とアラスカの生徒や先生た
ちと交流した。
(4)学生教育における効果
この調査により、グローバルな視野での環境教育の実際に触れることができ、また、アラスカ大学にお
いて地域社会と大学との連携の具体的なあり方について学ぶことが出来る教育プログラムの完成に向けた
修正点が発見できると期待される。
アラスカは自然環境を環境教育の場として非常に有効に活用している所である。実際にアラスカにおい
て環境教育について実践的に学習したり学んだりできることは学生の体験的な学習にとっておきのフィー
ルドと言えよう。
160
写真1
スワードでの氷河が海中に落下する様子を観察
写真2
フェアバンクスで先住民のミーティングに参加
写真3
アラスカ大学での学生同士の交流
161
4.5. イギリスにおけるSD(持続可能な開発)国家戦略と
高等教育機関での ESD 人材育成
神田
房行(釧路校教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 21 年 1 月 29 日(木)~
平成 21 年2月7日(土)
実施場所
ロンドン(イギリス)
(1)背景と目的
本学では「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス」をテーマに大学と地域との取組を行っ
ている。
「持続可能な社会のための教育(ESD)」はこれからの未来をになう人材をどのように育成するかが
大きな課題である。今回の行く先は ESD を積極的に推進しているイギリスで、ロンドン大学を主に訪れ、
イギリスにおけるSD(持続可能な開発)国家戦略と高等教育機関での ESD 人材育成について現地調査を
行う。この調査により、世界的に SD(持続可能な開発)を推進し、国家戦略もいち早く確立しているイギ
リスを訪問し、グローバルな視野での高等教育機関における環境教育の今後のあり方を探ることができる
ものと考える。
(2)方
法
調査日程、行程
日程
行動
29(木) 釧路→羽田→成田
30(金)
事項等
釧路 11:10-羽田 12:55
宿泊
成田市内
Shaftesbury
成田発→ロンドンヒース 成田 11:35-ロンドン(ヒー
Premier London
ロー空港着
スロー空港)15:15
Paddington
31(土) ロンドン市内視察
大英博物館、ロンドン大学
同上
1(日)
ロンドン市内視察
書籍調査
同上
2(月)
ロンドン大学訪問
ロンドン大学の ESD 関係情
同上
報収集
3(火)
ロンドン大学訪問
ロンドン大学での高等教育
同上
カリキュラム
4(水)
ロンドンインペリアル大
英国におけるSD戦略調査
学図書館訪問
5(木)
ロンドン(ヒースロー空 ロンドン(ヒースロー空港)
機中泊
港)発→
19:00-
162
同上
備考
6(金)
成田着
7(土)
羽田→釧路
-成田 15:55
成田市内
羽田 14:55-釧路 16:30
(3)各調査日程毎の調査内容、調査結果の概要
第 1 日目(1 月 30 日(金))
ロンドンヒースロー空港から市内のホテルへ。地図などを購入してこれからの計画を立てる。
第 2 日目(1 月 31 日(土))
ロンドン市内の視察、交通機関の確認、ロンドン大学の位置を確認する。
ロンドンでは 2005 年7月に市内で同時テロが起きて 56 人が死亡している。治安の状態が心配であった
が、中心街は大勢の人が歩いており、特にテロが起きたオックスフォード通りの周辺には非常に多くの人
が出ており、とても大きなテロが起きた所とは思えなかった。ポンドは約 120 円に落ちて、経済がどうな
っているかと思っていたが、メイン通りの店舗では多くの人が買い物をしていて、アメリカ、ヨーロッパ
を中心に経済破綻が起こっている感じはしなかった。ちょうど中国から温家宝首相がロンドンを訪ずれて
おり、イギリスと中国の間の「相互経済協力の強化」が議題となった。ヨーロッパやアメリカでの経済の
落ち込みを中国市場で何とかしようとする英国の対応の早さとしたたかさを感じた。
ロンドン大学は 20 のカレッジと 10 余りの研究所からなる大学である。こん回はその中の東洋アフリカ
研究学院 (School of Oriental and African Studies, SOAS)を訪問した。
第 3 日目(2 月 1 日(日)
)
日曜日なのでロンドン市内を見て回った。もっとも人通り
の多いオックスフォード通り沿いに書店などをみた。一般書
の大型書店で ESD 関係の本を探してみたが、ほとんどなし。
店員に検索してもらったが見当たらなかった。
第 4 日目(2 月 2 日(月)
)
さていよいよ SOAS へ出かけようとしたその日、ロンドン
は大雪に見舞われた。18 年ぶりということで、前日までま
写真
大英博物館
ったく雪がなかったところに一面の雪となった。
写真は当日の BBS のニュースを写したもので、小学校から
大学までほとんどの学校が休校となった。交通機関も大混乱、
ロンドン大学 SOAS まで行ってみたが、校舎内立ち入り禁止で
教職員も入れない状況であった。
ロンドン大学 SOAS は日本の大学と広く提携していて、北海
道教育大学とも国際交流協定を結んでいる。今回日本語教育
プログラム担当の Senior Lector 田中和美氏と会うことにな
っていたが、まったく連絡がとれず、翌日、出直すことにし
た。
163
写真
18 年ぶりの大雪で学校も閉校
第 5 日目(2 月 3 日(火)
)
この日は SOAS も開いており、ロンドンの混乱も収まりつつあった。日本語教育プログラム担当の Senior
Lector 田中和美氏からいろいろとお話を聞くことができた。
ロンドン大学では SOAS の中の Center for Development,Environment and Policy の中にある Study
Program の中に Sustainable Development の分野があり更にその中に Study Program が多数用意されてい
る。センターの中には 17 人のスタッフがおり、環境、経済、生物多様性、持続可能な開発、農業経済など
の専門を教えている。
ロンドン大学の近くには専門書を扱う本屋がある。ここで ESD 関係の最近の図書を探したら、多数の ESD
関連図書を見つけることができた。
その内の 2 冊をあげる。
Sustainable Development Strategies. OECD 2007 Earthscan, London.
An Introduction to Sustainable Development.2008 Peter P. Rogers et al. Earthscan, London.
写真
第 6 日目(2 月 4 日(水)
)
ロンドンインペリアル大学
ロンドン大学から独立した大学であるロンドンインペリア
ル大学にはロンドンで最大の図書館があると聞いていたので、
ここの図書館で ESD 関係の図書を調査することにした。
しかしながら環境関係の図書はたくさんあったが、ESD 関係
の図書はほとんど見当たらなかった。しかしそこでの充実した
図書と学生の学習環境の設備の良さに驚いた。
第 7 日目(2 月 5 日(木)
)
日本へ帰る日である。ヒースロー空港から成田に向かった。
写真
インぺリアル大学の図書館内部
(4)学生教育上の効果
イギリスは国連における SD(持続可能な開発)の考え方を積極的に推進している。ロンドン大学でのカリ
キュラムの実際などを調査することにより今後の我が国における ESD の推進方策について学ぶことが出来
た。また、本学における ESD のカリキュラム構築に寄与できるものと思われる。
164
4.6.「古くて新しい国」インドの ESD
―子どもの貧困・NGO・ガンジー主義―
添田
祥史(釧路校講師)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 21 年 3 月 2~13 日
実施場所
インド
(1)調査の目的
これからの小学校教員は、自国内の問題だけではなく、グローバルな視野にたち国際的な問題を共有し、
解決に向けて連帯していく力量が求められている。インドにおけるストリート・チルドレンの実情とその
解決に取り組む NGO の真摯な取り組みから学生たちは多くを学ぶだろう。また、テロリズム、環境破壊が
人類の大きな課題となっている今日、
「非暴力・非服従」を核とするガンジー主義は ESD の文脈からも再評
価がはじまりつつある。彼の思想とそれを体現するコミュニティや学校のあり方を知ることは、学生に新
たな気づきをもたらすと考える。以上の問題関心より、本調査は、次の3点を目的に行われた。
①ストリート・チルドレン問題とその解決に向けた NGO の取り組みの把握。
②ガンジーの教育思想とそれを体現するコミュニティの日常の視察。
③インドにおける環境教育の取り組みの把握。"
"
(2)調査方法と日程
本調査は、2009 年3月2日~3月 13 日にかけて行われた。調査先の選定と交渉、現地でのガイド及び
通訳などの一切の業務をニューデリーにおいて、ストリート・チルドレン支援の NGO にスタッフとして携
わりながら継続したフィールドワークを行っている針塚瑞樹氏にお願いした。現地語と英語に堪能で、豊
富な調査経験を有する氏の協力のもと、10 日間の限られた日程のなかで有意義な調査を遂行できた。調査
日程は次の通りである。
日程
第1日目(3月2日)
第2日目(3月3日)
調査内容
日本時間 14 時成田発。現地時間 16 時着。
SBT 主催の元当事者がストリート・チルドレンの日常と NGO の取り組みを紹
介するツアー「CITY WALK」に参加。夕刻アーメダバードへ移動。
午前:ガンジーアシュラム視察
午後 :①ガンジー主義の通学型の子どもの貧困対策 NGO 視察
第3日目(3月4日)
②ガンジー主義の寄宿型の子どもの貧困対策 NGO 視察
③環境教育センター視察
夕刻 :①、②に再度訪問(食事をいただく)
午前:①ガンジー主義の通学型の子どもの貧困対策 NGO の聞き取り
第4日目(3月5日)
②ガンジー主義の寄宿型の子どもの貧困対策 NGO の聞き取り
午後:女性の自立支援 NGO「SEWA」訪問
165
「SEWA銀行」視察
夜:ワルダーへ移動
第5日目(3月6日)
列車4時間遅延のためワルダー駅到着 20:00
午後:セワグラム農園視察
第6日目(3月7日)
夕刻:①ガンジー主義にたつ教員養成大学関係者への聞き取り
②ガンジー主義にたつ小学校の校長への聞き取り
夜:セワグラム農園内泊
午前:4時起床~農園の生活体験
第7日目(3月8日)
午後:農園の生活体験
夜:デリーへ移動
第8日目(3月9日)
午前:デリー市街地調査
午後:ストリート・チルドレン支援 NGO「SBT」の補足調査
午前:アーグラーへ移動
第9日目(3月 10 日)
午後:①世界遺産「タージマハール」視察
②世界遺産「ファテーブル・シークリー」視察
夕刻:デリーへ移動
第9日目(3月 10 日)
第 10 日目(3月 11 日)
第 11 日目(3月 12 日)
午前:ホーリー祭見学
午後:ホーリー祭参加
午前:世界遺産「フマユーン廟」視察
午後:日本へ
午前:成田着
午後:羽田空港へ移動。釧路へ
(3)調査結果の学生教育への還元
調査結果をもとに、貧困と ESD を考える参加型の授業プログラムを開発し、実施した。具体的には、本
学学生並びに一般市民を対象に次の授業実践を行った。
「関係的権利」
、
「構造的暴力」、
「潜在能力」などの
学問知と結びつけながら、インドの現状から持続可能な開発について考えるというものである。先行研究
の成果や政府統計などのデータと現地で撮影した写真などを組みあわせながら、対話型のセミナーを意識
した。具体的には次の3つである。
第一に、本学 ESD センター主催のセミナーにおいてである。2009 年5月、2010 年3月と2回の合計行っ
た。公開講座として開催された本セミナーには市民の参加もみられた。
第二に、学部3年生を対象とした「総合演習」においてである。社会問題についての調べ学習と発表で
構成される授業において、その見本と話題提供として実施した。その後の学生の発表の質を高めることに
も寄与できたと思う。
第三に、本学大学院「地域教育特論」においてである。今年度のテーマの一つに、子どもの貧困問題を
とりあげた。そのなかで世界の貧困問題として講義した。現職小学校教諭でもある受講生は大変興味をも
ち活発に意見交換を行った。各自が職場にもちかえることで、今後の実践の向上に少なからずつながった
であろう。
今後、さらに機会をみつけては、本調査の還元に努めていきたいと考える。
166
4.7. ケニアにおける先住民の自然観および、
都市部における地域支援とその実態に関する実地調査
諫山
邦子(釧路校准教授)
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 21 年 3 月 15~25 日
実施場所
ケニア
(1)背景と目的
我が国では、中教審答申をはじめとして、小中高校生等の学習への「地域の教育力を引き出す」とい
う命題が掲げられている。一方、世界に目を向けると、人類の発祥の地とされるアフリカにあるケニア
では、絶滅が危惧される動物と密猟、環境問題、貧困とエイズ、先住民の生活の課題、失われゆく先住
民族の文化などの様々な問題を見つめ、解決のために努力するする人々や活動が知られている。
そこで、上記2点を組み合わせて、一人ひとりの生き方、世界との関わり方も含めて、日本と世界は
どうあるべきか、自らはどう関わるべきかを、大学生対象の授業の中で、考え、国際人として地球規模
での「地域の教育力」を考える材料とするために、現地事情を熟知し、現地の人々と信頼関係を長年に
わたって築いてきたガイドの案内・通訳の助力を得て、ケニアの都市部と農村部における、それぞれの
課題解決のために努力する人々と地域支援活動の実態に関して訪ね、調査することを目的とした。
(2)方
法
調査地域
ケニアにおける都市部ナイロビでは、エイズ孤児院、キベラ・スラムのマゴソスクール(寺子屋)や産
院兼診療所を中心に訪れ、都市郊外キンテゲリでは、サイディア・フラハの幼稚園、養護学校、洋裁学校、
溶接工養成教室を訪問した。
また、農村部では、マサイ村および、セレンゲティー国立公園に隣接するマサイマラ動物保護区とマサ
イマラ地区を対象とし、野生動物観察、マサイ村での滞在を行った。
今回の調査旅行については、調査者が、アフリカ訪問が初めてであること、現地ではタガログ語をはじ
めとした多様な言語が使用されていること、特に都市部のナイロビについての治安状況は良好ではないこ
との 3 点から、ケニアの都市部に関して 1 名と農村部のマサイマラ地区に関して1名を中心とした通訳・
ガイドを配している規格型のスタディーツアーに参加する形で資料の収集を行った。ツアー参加者は現地
からの参加者も含めて全員、日本国籍の女性の 5 名であった。
・調査旅行期間
平成 21 年3月 15 日~3月 25 日
167
・調査日程、行程
1日目
3/15(日) 釧路(07:39)→南千歳(11:00)JR おおぞら 2 号
機中泊
南千歳(15:00)→関西空港(17:15)
JAL2510 便
2日目
関西空港(23:15)→
ドバイ
3/16(月) ドバイ空港(05:55)EK317
ナイロビ泊
ドバイ空港(10:45)→ナイロビ空港(14:55)EK719
16:00~市内で、マサイ村でのキャンプ食糧調達
17:00~永松真紀氏のレクチャー
3日目
3/17(火) 10:00~マゴソ小学校訪問、子どもたちや先生と交流
ナイロビ泊
13:30~キベラスムス病院や機織りプロジェクトについ
て工場や病院を訪問し、地域支援の実際について、早川
千晶氏に話をうかがう
4日目
3/18(水) 10:00~ナイロビからマサイ村へ移動、夕刻着。
マサイマラ泊
テント設営。
17:00~マサイの伝統的食事づくりを行う、
マサイ村の女性と交流。
食事や生活について話をうかがう。
5日目
3/19(木) 08:30~マサイウォーキング研修
マサイマラ泊
マサイ人の案内による歩いてのサファリウオーキング。
自然に寄り添って生きるマサイの文化や伝統についての
研修
6日目
3/20(金) 09:00~終日サファリでの研修。
マサイマラ泊
動物保護とその課題。聞き取り
7日目
3/21(土) 08:30~テント撤収、マサイの人々との交流
ナイロビ泊
10:00~ナイロビへ移動
16:00~ナイロビの関係者との打ち合わせ研修
8日目
3/22(日) 09:00~ナイロビ NGO 訪問と交流
ナイロビ泊
13:00~女性の自立支援について話をうかがう
15:30~エイズ孤児の施設へ行き地域支援等についての
話をうかがう
9日目
3/23(月) 09:00~研修のまとめを参加者で行う
機内泊
ナイロビ(16:40)→ドバイ(22:40)EK720
10 日目
3/24(火) ドバイ(03:40)→関西空港(17:30)EK316
千歳泊
関西空港(18:50)→千歳空港(20:40)
11 日目
3/25(水) JR おおぞら 1 号
南千歳(7:33)→釧路(10:51)
(3)調査内容
●キベラ訪問について
キベラは人口約 80 万といわれるケニア最大のスラムである。ナイロビの人口の半分以上はこのようなス
ラムに暮らしているので、特別な地域と言うよりもスラムの方が一般的ケニア人の居住区ともされている。
約百年前のナイロビは草原とブッシュが広がっており、周辺の村々のキクユ人は象牙を扱うキャラバンに、
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食料やマサイから得た象牙を供給し、海岸地方の布を入手していたようである。イギリス植民地支配がは
じまると鉄道建設が開始され、中間点のナイロビはその拠点となり、労働力として、体格がよく従順で温
和な気質を持つとされるルオー人が 15 年間の間に多数連れてこられ、その他の民族も出稼ぎや商売のため
に移住してきて、人口が増え続けたという歴史を持っている。
この訪問では、キベラの生活の様子を見ながら、最後は学校を訪問するというものである。この学校は
マゴソスクールという名前で、初めは自らも貧しい地域の人が細々と運営していたものでそこに、日本人
の早川千晶氏がアドバイザー的に加わり、出来るだけ援助に頼るのではなく、地域住民の手で運営が可能
なような工夫が検討されて来た。
女性の自立のための洋裁教室からの授業料、そこで出来たものを売っての収入、日本からの古着や廃品
回収品のバザーからの収入、早川氏とその友人のプロジェクトで子ども達の音楽 CD 制作、キベラツアー
からの収入などで運営している。
安全確保への配慮
キベラでは、観光客が何の知識もなくキベラに入ったり、見学するのは安全面での保証はなく、キベラ
に対する偏見や誤解も生むことにもつながるようなので、
「キベラ訪問」には、日本人ガイド、万全を期す
ために地元の私服の警察官(全員が無線機を持っていて、キベラの中でパトロールしている警官達や警察
本部とも無線のネットワークでつながっている、また早川氏たちのプロジェクトに賛同して協力をしてく
れているそうである)が数名同行していた。また、キベラ在住の学校責任者が、キベラ在住の自分達が知
ってもらいたい内容の場所への訪問と説明が行われた。
キベラのすべての人が、ギリギリの生活をしている中で生き抜いているというスラムなので、様々な人
の様々な心情があるようである。個人旅行の観光客が「スラムを見てみたい、貧しい人々の暮らしを見学
してみたい」という場合、
「野次馬根性で貧乏な私達を見学にきたんだな」と思い、そこには反感や嫌悪感
が生じたり、
「いったい何が目的なんだ」と警戒したりもすることが予想できる。このキベラツアーでは、
参加する人々が、その経験から学びたい、何らかの気づきを得たいという積極的な意思があることが求め
られ、ツアーを受け入れる側が、どのような人達がどのような気持で、何の目的でキベラに入ってこよう
としているのかということを事前に認識し、スラムの人々が主体となって案内プログラムが組まれる。し
たがって、ツアーでスラムのずっと奥までの歩く行程には、商店、機織り工房、古くから伝わる伝統薬の
店、占いをする場所等があり、そのルートで出会う人々や訪問先では、
「このグループは、マゴソスクール
のリリアンが案内しているグループ」ということが認識され、日ごろの関係から、決して危険な目に会わ
せないゲストとして迎え入れられる。道々、たくさんの子ども達から「ハウ・アー・ユー?」と声をかけ
られた。
スラムというのは、貧しい人々が暮らす不法占拠居住地であり、いわゆる貧民街である。そこに暮らす
約 9 割は、貧しい中にも人間として良好な精神を持ち、秩序を守り、正しく生きていこうとしているそう
である。政府や自治体の助力無しでも、自ら、衛生・秩序・治安を守る努力や様々な工夫をし、コミュニ
ティーの力も強く、正しく生きている人々がたくさんいる。一方、スラムという状況下では、犯罪者やテ
ロリストが警察の監視を抜けて潜伏しやすい条件があり、スラム人口の一握りの中にこれらの大変危険な
要素がある。その危険に対応するために、このツアーでは、地元の警察や地元の人々と連携して安全を確
保する体制をとっていた。
キベラスラムについて:(写真1)
住民の多くは、地方に生活していた人々が色々な理由で生活が困難になり、都会への出稼ぎ労働者とそ
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の家族である。都会に出たが、仕事が無い、しかし田舎では、飢え死にしそうなたくさんの家族が仕送り
を待っている。このようにスラムで貧しい暮らしを送りながら、田舎に仕送りをして多数の家族を助けて
いる人々がたくさんいる。
「貧困問題」を抱えるアフリカであるが、それ以上に、どんな困難な状況であっ
ても生きることをあきらめず、がんばって生きている人たちがたくさんいることが実感できた。その人々
の生き抜く力や工夫、助け合いの様子をいくつか訪問しながら、話を伺った。
写真1
写真2
キベラハンドクラフトセンター:(写真2)
スラム住民のエリックさんが運営している貧困家庭の女性達の糸紡ぎ・機織りのワークショップでは、
綿花、羊毛、シルクでマフラーやショールを作っていた。天然染料で染めて、物品を製作しており、その
制作過程を見学させていただき、どのように収益を生んでいるのかということや、フェアトレードについ
て学んだ。
マゴソスクール:(写真3)
現在 260 人の子ども達が在席している学校で、元ストリートチルドレンや虐待を受けてきた子ども達、
労働させられていた子ども達など、厳しい人生を背負って生きている子ども達が集まっている。その子ど
も達の輝きに触れることのできる内容であった。交流会では、子ども達と先生達、スラムのママ達、スラ
ムの若者たちのグループ、近所の人々などのグループによる歌や踊り、伝統楽器、ドライバーや釘、鉄の
端材を駆使しての楽器演奏などで盛り上がった。お返しに、私たちからは日本の歌を 2 曲ほど披露した。
交流会の後はスラムのママ達が、野菜や多様な食材を調理した、ルオー族伝統のゲスト向けの昼食を頂い
た。子ども達はこの、一日一回の昼食が唯一の食事である子どもも多いとのことで、私達とは違ったメニ
ューで芋が中心の普段の給食内容となっていた。子ども達は、ここに通うことを楽しみにしていて、特に
小さな子ども達が算数や英語の学習を楽しそうに取り組んでいる姿が印象的であった。昼食後は 2 階にあ
る、併設の洋裁ワークショップの見学も行った。
(ツアーの収入、物品の収益、CD 制作と販売利益などで
学校が運営されているそうである)
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写真3
写真4
フリーダさんの産院と診療所:(写真4)
スラムの奥にある産院と診療所を訪ね、ケニア人の助産師・看護婦であり、スラムの中でスラムの人々
を医療方面から助ける活動をしているフリーダさんから、HIVやAIDSの現状について話を伺った。
子どもを出産してもHIVの疑いがあると子どもを置き去りにしたり、誤った知識で理解を得て育てられ
ない現状に苦しむ母親。ケニアの医療事情については、医療を受ければ治療可能であるにもかかわらず貧
困が原因で治療を受けられない子どもや大人が大勢いること、大怪我をしても診療所では、応急処置しか
出来ないため、大きな病院に移すためには、車の通る場所まで移動するのに、土木作業なでで使われる一
輪車に患者をのせて小路のスラムを 20 分程かけて運ぶ必要があるとのことで、4 台ほどの一輪車が診療所
の裏においてあった。
時間的にも金銭的にもスラムの医療活動に 20 年以上献身的に従事されてきている、フリーダさんは、ス
ラムの外に住居を持っており、町で助産師として不自由なく暮らしていたそうであるが、キベラスラムの
現状を「見てしまったから、、
、」と町の生活を捨ててここへやってきたそうである。 息子さん達は、汚職
などで腐敗しているケニア政府にはほとんど期待できないとして、現在国外に留学中で、ケニアに戻って
くることは考えていないという意志を持っているそうで、そのことからもケニアの抱える問題の難しさの
一端を垣間見るようであった。
●日本でマッサージの資格を取得して仕事をしているフィリーさんの話
ケニアツアーの前半は、JICA の隊員がトレーニングをするときに合宿所としている宿舎で宿泊し、夜に
は、その宿舎にゲストを招いての交流があった。
ケニア人女性フィリーさんは、生まれた時には目が見えていたのであるが、小学校で体育をしていたと
きに、目にボールが当たり、怪我をしたが、病院が遠くて対応が遅れたため次第に見えなくなり、失明を
して、視覚障害者となった。小学校の低学年で両親から離れての盲学校寄宿舎での生活は、寂しく、怖く、
泣いてばかりいたそうである。
ケニアでは、障害を持っていない人でも仕事のチャンスが少なく、大卒の人でも就職には苦労するそう
である。故に高校卒業後は仕事が無く家の厄介者である自分がとても嫌だったそうである。そんな折に、
日本の視覚障害者協会から、日本に勉強にいくチャンスを得た。試験を受けて、一番になった人しか日本
に行く資格がない中で、フィリーさんは、ケニア人の第 1 号となったそうである。日本の視覚障害者協会
はこのように、視覚障害者の人々を日本に招いて、鍼灸・指圧の勉強ができるようにサポートしている。
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彼女は、そのチャンスを得て、世界中の多様な国からの視覚障害者の人々と勉強を始めた。その学校は、
日本人と同じ普通の鍼灸・指圧の学校で、授業はすべて日本語で行われる。日本語と英語の点字は違うよ
うで、日本語や点字も一から勉強をしなければならなかった。日本到着後、すぐに、
「宿舎から学校までは
電車を 3 回乗り換えて自力で学校へ移動しなさい」と言われ、言葉も地理もわからず、目も見えないため
に、初めはとても辛かったそうである。自身も全盲の視覚障害者協会の会長から、
「辛かったら、泣きなさ
い。泣いたら強くなるから。」といわれ、頑張ったそうである。最初の半年は、泣いて過ごし、その後 3 年
間日本で勉強するうちに、友人ができ、日本が大好きになり、3 年後の帰るときには、帰りたくないと泣
いたそうである。
資格をとってケニアに帰国すると、ケニアでは、障害者は医療機関の仕事には従事できないという法律
があったそうである。その難関に対して、彼女は、政府に色々な働きかけ、呼びかけをし、当時の日本大
使館の青木大使からも大きな助力があり、法律を改正することが出来たそうである。それからは、ホテル
や国連などで、指圧の仕事をしながら、ケニアの他の視覚障害者の人々の指導を行うようになっていると
のことである。
夕食を摂りながら、フィリーさんの堪能な日本語を交え、上述の人生経験や活動を伺った。
●サイディア・フラハ訪問
(写真5A,B)
ナイロビ郊外のキンテゲラにある、サイディア・フラハを訪問した。サイディア・フラハとは「幸福の
手助け」という意味で、1984 年ケニア人と日本人の共同運営の NGO で、女性と子どもを支援する団体で
ある。日本人運営者の荒川氏は 2005 年社会貢献支援財団から長年にわたるサイディア・フラハの運営を
評価され、
「社会貢献支援者賞」を受賞された。幼稚園、養護学校、洋裁学校、溶接工養成教室があり、ゆ
ったりとした時間の流れの中で、子ども達との交流や全員そろっての昼食パーティーが行われた。ウガリ
やチャパティーの昼食作りは手伝いに来ているママ達と一緒に行った。私たちからは子ども達への御礼と
して、ノートなどの文具を渡した。
サイディアフラハには、虐待などを受け精神的課題を抱えた女性が自立する為に滞在したり、近隣の青
少年が職業訓練のために通ってきたり等、幼児から、青年までを対象に多彩な支援がおこなわれている。
訪問時には、旅行途中の日本人青年が一人、1 カ月ほど手伝いを兼ねたボランティアとして滞在していた。
しばらくしたら、旅行に行き、再度戻ってくる予定とのことであった。ミシンを使用した洋裁の様子を見
せて頂いたが、ツアーの仲間には、リタイアした家庭科の教員がおり、その方は、
「この技術のレベルはあ
まり高く、自分達の服を作るのには良いけれど、市場で販売するまでの製品を作るまでにはなっていない
ので、本当の力になるかは疑問です。」と厳しい評価をされていたのが印象的であった。アフリカでは社会
支援として様々なプロジェクトがあることが知られているが、このツアー仲間の感想のように、本当の意
味で、社会でしっかりと通用する技術を獲得したり、トータルの社会を見据えた支援を行っていくことの
必要性について考える機会となった。
ここ、サイディア・フラハでも、キベラスラムと同様に、幼い子ども達が生き生きと勉強したり、輝く
笑顔で生活する様子を見ることができた。そして、おしゃれが好きで、シャイで、話してみると日本の中
学生と全く同じような思春期の少女達が、色々な問題を抱えながらも、力強く、明るく生きている様子に
力を貰ったような気持ちになった。
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写真5A
●エイズ孤児院:
写真5B
(写真6)
ナイロビ市内で、クリスチャンの白人夫妻が私財を投じて始めたエイズ孤児院の一つを訪問した。キリ
スト教会も支援しており、市内にいくつかの建物があるそうであるが、訪問したところは、0 歳から 3 歳
くらいまでの小さな子ども達がいるところで、建物も敷地もスタッフも充実している素晴らしい施設であ
るという印象を受けた。私達 5 名は、施設、設備、歴史、等の説明を受けた後に、0 歳児の部屋で抱っこ
ボランティアを行った。
エイズと分かって放置したり、置き去りにされたりした子ども達が収容されるが、十分な栄養が与えら
れ、栄養状態が改善されると約 8 割の乳幼児がエイズではなくなるという結果が出ているそうである。こ
の調査事実には驚かされた。養子縁組も行われている。また、乳幼児には、養育者としてのスキンシップ
の不足が懸念されるために施設を訪問する人や旅行者に、抱っこをするボランティアを常時、募っている
そうである。アメリカ合衆国でも同様にエイズの子ども達を抱っこするボランティアがあると聞いていた
が、私自身、自らが抱っこするボランティアは初めてであった。5 人の仲間と 6-7 名の乳児を約 1 時間の
中で、抱いたり、あやしたりした。幼い子どもを抱くとそれだけで、充実感と満足感で満たされるが、こ
の短時間の抱っこで子ども達の健やかな発育発達に微力であるが貢献できるのだと思うと、ほんの僅かで
も支援出来ているのかもしれないな、という喜びが感じられた。
また、私財を投じて始めたご夫妻の取り組みや、それに賛同するキリス教会、周辺の人々の色々な協力、
助成金で支援が行われているという実態に、触れることができ、実感する事が出来た。
写真6
写真7
173
●ケニアの自然とマサイ族の概観
東アフリカの中核をなす国ケニア。イメージとしてのケニアは、自然が多く、野生動物が棲む、マサイ
族の国。キリマンジャロ山は南隣のタンザニアの国にあるが、ケニアから見るキリマンジャロの美しい眺
望がケニアのイメージとして出てくるようである。
中高年には、懐かしい響きを伴う「少年ケニヤ」という物語の主人公が、大冒険をする密林が出てきる
が、実際のケニアは、熱帯雨林としての密林はほとんどなく広大なサバンナが広がっている。ゾウ、ライ
オン、ヒョウなどアフリカの野生生物はサバンナで生息し、アカシアを除いて大きな樹木はほとんど無い
そうで、疎林と灌木を交えた熱帯長草草原が広がっている。
ケニアのほぼ中心を赤道が通っているが、大半が標高 1500~2000mであるため、1 年を通して、18 度
くらいが平均気温であり、夏季の日中温度が 30 度近くになることもあるようである。日本での春と秋の時
期は雨季、夏と冬の時期は乾季に当たる。
ケニアといえばマサイ族とイメージするほど印象付けられた、赤いローブを身につけ、手には長い槍、
高く跳びあがる独特の踊り。しかし、ケニアには多くの民族や先住民族が生活している。先住民だけでも、
キクユ、ルオー、カンパなど 42 部族。3200 万人の人口のうち、5 分の 1 はキクユ族、マサイ族は隣国の
タンザニアも含めて 20~30 万人で人口の 1 パーセント以下である。
歴史的には、アラブ人、ボルトガル人、イギリス人が東アフリカに来た時に、植民地政策の重要な一環
としての宗教政策で、アラブ人がイスラム教をポルトガル人がキリスト教を布教し、多くの部族は外来の
文化や宗教を受け入れていった。しかし、マサイは、こうした同調はせず、自分達の神エン・カイを守り
続け、ヨーロッパやアラブの生活様式を取り入れることを拒んだとされている。その背景には、植民地を
広げようとしていたポルトガルは、プライドが高く戦闘能力の高いマサイとは摩擦を避けたがった事もあ
り、また、海岸線を重視していたアラブ人もポルトガル人も、遊牧民族マサイが生活していた奥地には行
かず、イギリスが参入する 19 世紀までは、ケニアサバンナの大半を占める国立公園や保護区となっている
場所はマサイの土地となっていて、昔のままの生活が継続されていた。現在のマサイは遊牧生活を続ける
人が大半であるが、若者には、文明の波を受けて生活様式に変化がみられてきている。実際に訪れたマサ
イマラ地区では、レンジャーやホテルの仕事をしているマサイに出会って来た。
●サファリ:
(写真7)
「サファリ」とはスワヒリ語で「旅」という意味で、それを外国人が狩猟を意味するハンティングに変
え、さらにハンティングが禁止された現在では、写真を撮り、見学するツアーとして用いられるようにな
ってきているとのことである。ケニアではこの野生動物を鑑賞するサファリツアーが国の代表的な観光と
なっている。ケニアのサファリが可能なエリアは国立公園(一切の狩猟も許されず、車も指定された道の
みを走る)
、国立保護区(地方自治体が管理するエリアで動物が増えた時など一時的に狩猟が認められて、
現地ドライバーの判断で道の無いサバンナを車で走ることができる)
、動物保護区(地方自治体の管理のも
とに昔からの住民の居住や放牧が認められている)の 3 つで、基本的には、ガイドとドライバーがいる車
でツアーが行われ、車から降りることは許可されない。
今回は、国立公園と動物保護区を中心に訪れた、昼食休憩をはさんで、早朝から夕方まで、ゾウの群れ、
川の水量が少ない中で集まっているカバ、ハネムーン中とみられる 2 頭のライオン、ハイエナ、トムソン
ガゼル、インパラ、ワニ、ヤックル、キリン、ユキヒョウ、ヌー、ウシ、など国立公園内の決められた環
境であるものの、野生の生活をしている様子、チーターがインパラを追い、草食動物が草を食む様子など
を見ることができた。ガイドからは、アフリカゾウの一生や生態の説明、象牙が高値で取引され、乱獲さ
174
れ密漁者にも狙われた為に、かつてはアフリカ大陸のどこにでも生息していた陸上最大の哺乳類のアフリ
カゾウが、国立公園や保護区でしか姿を見ることができなくなった状況など、各種の動物実態やの関わり
をはじめ、ケニアやアフリカの野生動物の抱える現状や課題についての説明がなされた。
●マサイ村
ナイロビから、人類の発祥の地と関わるとされる大地溝帯を抜け、半日かけての移動の後、3 泊を過ご
すマサイ村へ到着した。この村は、マサイの中でも一番奥地にあり、一般の観光客は訪れない村とのこと
であった。夕方には、マサイのママ達と食事づくりをともにし、村の散策と見学、村人との交流を行った。
翌日は、マサイ戦士の案内での村の伝統の知恵が学べるエコツアー、ヤギの解体と調理の見学、夜や早朝
は食事をともにしながらの、マサイの若者とたき火を囲んで長時間の談話を行った。
マサイの生活を体験し、その中から学ぶことを目的とし、そのことに村の長老たちが賛同し、一緒にプ
ログラム作りに取り組んでいるそうで、治安は安全な場所であるが、自然の脅威に対して、長老たちが指
示した村の若者たちや地元のレンジャーが、私達 5 名の警護にあたってくれており、常に行動を共にして
頂いていた。
マサイの衣食住:
(写真8,9)
一夫多妻制のマサイでは、結婚した女性は、財産として、牛フンと土と木で家屋をつくり、家畜を持つ。
マサイの財産は夫婦のそれぞれが別々に財産を管理するそうである。夫は妻たちが所有する家に交互に公
平に通い滞在する生活となる。夫にとっては妻たちや子どもはすべて一つの家族であるが、妻たちが同じ
一つの家で暮らすことはないのである。
一般のケニア人は少量の水で行水し、食器を洗うが、マサイが使う水の量は極端に少なく、家族と家畜
で使う一家族平均 20 リットルの水を 30 分ほどかけて森に汲みに行くようである。食事は、昔はウシの乳
を一日に 5 リットルほどだけだったようであるが、近年は牛の乳の出がよくなくなってきた背景もあり、
ウガリ粉を加えたり、野菜を食べたりするように食生活も変わってきたようである。
赤く染めた長い髪、赤い布をまとったファッション、黒い肌に生える色とりどりのビーズアクセサリー、
驚異のジャンプ力を見せるダンス、ライオンを倒す野生の魅力、ケニア人にとってもマサイ族は特殊であ
り、
“遅れている民族”とする向きもあるが、自分たちの生き方に誇りを持ち、文明社会で生活するよりも
伝統的な生活を望んでいるそうである。近年、履物は、プラスチックの履物やスニーカーへ、Tシャツの
上に赤い布を巻きつけるスタイルへと変わり、ラジカセや携帯電話を所有するマサイも増えている。しか
し、そもそもマサイの伝統とされる赤い布やビーズアクセサリーは外国から来たもので、それまでは牛や
ヤギの革をまといアクセサリーは植物の実、木の実、ダチョウの卵の殻を使用していたそうで、いち早く
最低限必要なものを取り入れると言う姿勢は変わっていない。ラジカセはニュースを聞いたり自分たちの
歌を録音して聞くために所有し、Tシャツも寒暖の激しいサバンナを生きていくためにはあった方がよく、
携帯電話の普及で、草が生えている地域の情報を貰い放牧に有利だったり、近隣の医者を呼び命がつなが
ることもあるとのことである。電気は普及していないため、町まで 8 キロ歩いて充電してもらうようであ
る。
教育を受けたいとは思っているが、伝統的生活をしていく上では必要性は感じていないような一方、30
代では約 4 割が学校教育を受け、弁護士、医者、公務員、外交官、大臣になったマサイもいる。ケニアで
は小学校教育は義務付けられ、地域がお金を出し合って学校を作ったり、学校の近くの親戚に子どもを預
けたりするようになってきている。この村のすぐ近くに中国資本の国道が通る計画もあり、今後は、マサ
イの生活も変わっていくと予想される。たき火を囲んでの談話の時に、レンジャーのマサイと伝統的生活
175
を送っているマサイが言いあいをしていたが、レンジャーのマサイは、安定した収入と生活が得られるの
で、文明をどんどん取り入れていくべきだと主張し、戦士のリーダー的役割を担い、伝統的生活を送って
いるマサイは、誇りを持ってマサイの生活をしていく伝統を守っていくことが自分たちにとっては重要で
大切ではないか、どうしてそれがわからないのか、と主張していた。リーダーの中には、ウシ基金として
国際的な個人的外部資金を確保して、村の課題を解決しようと工夫しているとの話を聞くことができた。
写真8
写真9
伝統文化への誇り
マサイの男性は、少年期、下級青年期、上級青年期、長老期、最長老期の 5 つの世代があり、青年期は
戦士時代と呼ばれ、それぞれの儀式を経て次の世代へ移る。マサイの割礼は 12~15 歳で、戦闘能力を持
つと認められる年代に、あるまとまった人数で儀式の日取りを決め行われる。滞在した村では 2005 年初
めて医師の立ち合いで消毒、痛み止めの薬を処方された、長老たちによる割礼がおこなわれた。それ以前
は、割礼のショックで死亡したり、切り口が化膿してしまうこともあったようである。女性は儀式のかた
ちでは行われないが、12~14 歳に割礼をし、割礼をしないことは恥ずかしい事だと考えている。キリスト
教会や教育の影響で割礼から逃げ出す少女もいるが、多くの場合、割礼をしないことは恥ずかしいことと
して、最終的に割礼を選択することが多いようである。
少年達は、素手で牛の角をつかみ倒す儀式や髪を剃り落す儀式もある。もともと家畜を外敵から守るた
めに作られた青年村での共同生活を経て、槍と盾をもつことが許される。さらに、戦士としての約 10 年間、
修業を積むために長老から伝統文化や牛やヤギを殺す方法や調理方法を学んだり、豊富な薬草の知識を学
習する。この内容が、後述のエコツアーの主内容となっていた。マサイは儀式、祭り、病人や妊婦に栄養
をつけるため以外に肉を食べることはほとんどないそうであるが、この時期はたくさんの肉を食べるそう
である。その後「エウノト」と呼ばれる村々から集まった青年達が数百人以上で数日間踊り明かす儀式を
行い、連係プレーでライオン、ゾウ、サイ等をしとめる儀式が行われる。槍とこん棒でライオンに立ち向
かうので、命を落とすマサイもいるようである。最後には、数年間伸ばした髪を母親に剃り落してもらい、
儀式は終了しる。あくまで、伝統文化を敬い、誇りを持ち、その上での儀式ととらえているようである。
176
写真 10A
写真 10B
エコツアー:(写真 10A,B)
マサイの戦士達の案内で、村での牛を中心にした生活、長老たちから受け継いだ知恵や知識などをエコ
ツアーとして組み立て、例えば薬草や自然を利用した弓矢に使う武器や仕上げに利用する樹木・灌木・葉、
鳥を落とす、こん棒とその使用方法、歯ブラシなど生活に利用する物や調理に活用する自然物ついて、実
物を示し、家畜を見学しながら、あるいは体験を伴うような方法で、参加者へマサイの村人の生活習慣、
考え方、家族や世代別の役割を含めてわかりやすく説明して頂いた。また、建築中の学校や屋外で学習し
ている子ども達の様子、キリスト教会も訪れ伝統的生活に新しいものが加わっていく意味や課題について
解説がなされた。昼食時には、実際のヤギを捕獲し、解体し、肉を捌き、たき火を起こして調理し、細か
くマサイ語でつけられた肉の部位や特徴を示しながら美味しく食べる方法についても学習することができ
た。昼食後は草原に寝ころび、色々なマサイのエピソードを聞くことができた。長老たちと話したり、マ
マ達と一緒に踊ったりしながらの、交流も楽しんだ。
マサイが何を大切にしているかと言うと、ウシが一番大切で、また、家族が一番大切で、神というより、
自然をつかさどっている法則にたいして、敬意を払っているようであった。
(死生観)
マサイは、死に目に立ち会うとか、葬式にでることはあまり重要ではなく、生きているときがすべて。
死んでしまえば物体でしかなくなるという考え方だそうである。
かつては、死に目が近づいた時は家の外に出されて、死を待つということであった。もし、家の中で死
んだなら、死人を家から運び出すには、その専門の人に謝礼を払って運びだす事になるそうである。日本
では死者は仏になるが、マサイはただの物になる。死者の身体は東向けに寝かせて、関わりのあった人た
ちが全身に人塗りずつ牛の脂を塗っていくそうである。その後牛の皮に包んでそのままサバンナに放置し
ていたそうであるが、近年は森の中の適当なところに土葬にするようである。墓標もなくどこに埋めたか
も不明となるようで、墓参りの習慣もない。また、
「戦って死ぬことも怖くないし、なんで死を恐れるかも
わからない」と言う。戦士の修業中に命をかけてライオンを倒し、家畜を守って他民族と戦って仲間と死
に分かれた事も少なくなかったと言う。
「死は死であり、それ以上の何物でもない。死からは何も生まれず、
事実は事実である」という死生観を持っている事がわかった。この死生観は、日本における縄文時代の死
生観、沖縄のニライカナイの死生観と共通するものがあることが感じられた。
177
(4)全体としての成果の概略
ケニアにおける先住民の自然観および、都市部における地域支援とその実態に関する実地調査を行った。
ナイロビの都市部、キベラスラムでは、自立の為の機織りプロジェクトが行われている事、私財を投じ
ての診療所と医療活動を 20 年以上にわたって継続的に行っている事、ストリートチルドレンや虐待を受け
た子どものための学校がたてられ、一日一回の給食で飢えをしのぎながら、生き生きと学ぶ子どもの実態
等に触れることができた。
都市と郊外におけるエイズ孤児院やサイディア・フラハなど NGO、キリスト教会、民間、ボランティア
など多様な形での連携を取りながら、課題解決に取り組んでいる人々の活動の実際について体験を通して、
身近なものとして認識することができた。また、国際協力の一例として、日本視覚障害者協会の助力を得
て、日本で学び、ケニアで就職している人の経験談をインタビューを含めて伺うことができた。
マサイマラ動物保護区では、野生動物の様子を真近に観察しながら、ガイドの説明により、密猟や気候
温暖化により、絶滅が危惧される動物の現状や課題を認識し、マサイ族の村で 3 日間にわたる経験や交流
を通して、伝統的生活を送っている実態や自然や死に対する考え方の一端を、把握することができた。さ
らに、いわゆる文明の影響と伝統的生活のはざまで揺れ動くマサイの人々の状況と、マサイのリーダーの
葛藤や工夫を捉える事ができたと思われる。
以上、ケニアでの、絶滅が危惧される動物と密猟、環境問題、貧困とエイズ、先住民の生活の課題、失
われつつある先住民族の文化などの様々な問題を見つめ、解決のために努力する人々や活動について収集
した資料を、大学生対象の授業の中で ESD の立場に立って、
「地域の教育力」を考える材料として、また、
小中高校生等の学習への「地域の教育力を引き出す」という命題にたいして検討を行っていくうえで、具
体例として、上述のケニアにおける実践や実態について提示することができると考えられる。
(5)学生教育上の効果
我が国の野外教育の定義や内容を ESD の視点から再認識を行ったり、
「総合演習」等において、国際的
な視点をもって課題について取り組む時に、学生達が収集した資料に加えて、現地視察や聞き取りを行っ
た教員からの生の情報を提供しながら、学生と検討を行っていくことは効果的であると考えられる。
また、小中高校生等の学習への「地域の教育力を引き出す」という命題が掲げられている中教審答申を
はじめとする、教育界の課題について考え、方策を模索する上で、具体例として、ケニアにおける実践や
実態について提示することにより、国際人として地球規模での地域の教育力を考える為のきっかけや材料
となることが予想され、学生の学習意欲を喚起するものと期待される。
178
4.8. フィンランド・ヘルシンキ市の小学校環境教育に関する報告
大森
享(釧路校准教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 11 月1~8日
実施場所
フィンランド
(1)背景と目的
環境教育は、単に知識を獲得するだけでなく「環境と持続可能性」
(テサロニキ宣言 1997)に向け、
「個
人や集団で働く・・世界的な数を増やす」
(ベオグラード憲章 1975)ため、
「認識・知識・態度・技能・関
与(参加)
」
(トビリシ勧告 1977)という環境教育目標カテゴリーに「ABOUT/IN/FOR」
(ルーカス 1972)
のアプローチから進める教育であり、そこでは、子どもが主体的に当事者性を持って協働で対象に立ち向
かい「活動と学び」を統一させる教育実践が立ち現われる。協働で対象に立ち向かい「活動と学び」を統
一し、子どもたちが主体的当事者性を持って学ぶ学習理論として、フィンランドの「活動理論」
(エンゲ・
ストローム 1999)を検討し、その援用から日本の子どもの環境教育実践を検討する。そのために、実際に
フィンランド国内でのその理論と実践が、小学校現場ではどのように展開されているのか、あるいはされ
ていないのか、授業参観・聞き取りを中心として調査する。あわせて、フィンランドの「社会構成主義学
力観」の現場での適用についても調査する。
「学力世界一」と騒がれているフィンランドの社会・風土も感
得していきたい。特に図書館の普及と利用率は非常に高いものがあり、
「ムーミン」を生んだ風土ともかか
わらせて市内の施設を見学する。以上から、学力問題で揺れる日本で、
「子どもの環境教育」が持つ子ども
の学力形成にとっての教育的価値の考察に迫ることを目的とした。
(2)方法と内容
2009 年 11 月 1 日出国 8 日帰国で、
PISA の学力世界一で注目されているフィンランドの調査を行った。
ヴィゴツキーの「文化・歴史理論」から始まりレオンチェフの「活動の 3 層構造」そしてフィンランドの
「エンゲストロームの活動理論」が小学校の実践にどのような影響を及ぼしているのかを実際の授業参観
を通じて知りたいと思いヘルシンキ市に向かった。
学習者である子どもは、学習対象・学習内容を知的物理的道具を用い探究する。同時に探究に伴い探究
を支える重要なコミュニケーション活動が行われる。学習者と共に探究する共同体及び共同体におけるル
ールと分担が主体的な探究を支えるコミュニケーション活動として展開される。探究活動とコミュニケー
ション活動の両者によって学習者の学びは主体的協同的探究的に展開され、それを指導する教師の指導が
問われる。すなわち、ある時はファシリテーター、またある時はコーディネーター、インタープリター、
インストラクター・・としての指導の質が問われてくる。学校環境教育は、エンゲストロームの活動理論
に学びながら、子どもを協同的活動主体として育てることが重要である。持続可能な国家・社会の形成者
として個々の人格の形成を目指す環境教育は、探究的協同的な当事者性を持った学習活動を要請するから
である。
(3)成果と考察
あいにく、ヘルシンキ大学のエンゲストローム教授は新型インフルエンザに感染されており、聞き取り
179
調査はできなかったが、エンゲストローム教授と共に研究をしていた小学校校長の聞き取り調査が実施で
きた。
彼はヘルシンキ市の隣の市の開発地域の新設小学校校長として、街づくりを進める行政と共に全
校児童に、これからのこの地域の開発について考えさせ意見表明する学習を展開させた。設計担当者を招
き、児童に対しこの地域の街づくり計画についての説明や児童の質問に答える等の学習を組織した。児童
から様々な要望が出た。児童が提案した道路の名前が実際に使用されている。また、このままの状態(森、
草はら等)が良いという意見表明も当然出たが、街づくりをやめるような方向の学習は展開されていない。
何故街づくりが必要なのか、どのような街づくり良いのか、これからの地域づくりについて児童の参加を
促した意見表明を大切にした全校児童による学習が展開された。
校長は、学校と様々な行政組織との対話、教師と子どもたちとの対話など対話が活動理論にとっては重
要なキーワードであるということを明言された。対話による学習対象・学習課題の抽出の大切さを強調し
ていた。2 年生の環境の授業は、いくつかの要素によって構成されていた。ベースとなる考えは、
「物語る」
という活動である。グループごとに話しあいながら、自分でフクロウのための家をつくる活動を展開する。
勿論、そのフクロウはその家をめぐる物語の主人公であり名前も付いている。子どもたちは、それぞれの
家庭と担任教師の持ち込んだ廃物を利用し机の上に家を作っていく。教師は省エネとか伝統的な家屋につ
いてアドバイスを行っている。ある時間には、この家の主人公であるフクロウの物語を作文にしたり、あ
る時間では、天井にビニールをかぶせマジックで家具など家の様子を写し取り、それを基に地図作りを行
う。2 クラス同時に授業を実施しているがデジカメで写真を撮り、それを基に地図を作るとういうように
クラスで違ったやり方で行っていた。
筆者が質問すると「違う学習方法でやると子どもはどう変化するか、楽しみです」と語っていたが、学
年主任を中心に同じ時間に同じように進める日本の生活科授業を思い出し苦笑した。地図作り、作文、絵
を描くなどの学習を伴いながら、フクロウを主人公とした住環境を学ぶ。フクロウのための家づくりは、
子ども一人一人のわくわくした物語りが展開しながら行われているため、
「面白くてこの授業は半年も続い
ているですよ」と言った教師の話は当然だろうなあと思われた。
最後に、この授業は上記のような学習活動がねらいだが、
「重要なことは地図を作成するときに地図記号
を話しあい合意形成する活動です」と言った点は、意見表明し合意形成する民主主義における実践知の大
切さを自覚している小学校教師の発言として重く受け止めた。単なる知識の獲得ではなく実際に生きて働
く実践知の獲得は、現実世界を動かす知とは何かについて重要な示唆を示している。
180
4.9. ユネスコ本部訪問調査:
ヨーロッパ及びフランスにおける ESD 教育の教材開発事例の収集
北澤
一利(釧路校准教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年7月3~13 日
実施場所
フランス
(1)背景と目的
1)各国の ESD に関する各種のイベントを視覚教材として開発する実践例を収集する。
2)フランスの ESD に関する事業を行う大学の実践事例を調査する。
3)貧困、差別、ジェンダー、AIDS などの社会問題に対するヨーロッパの ESD の取り組みを調査する。
(2)方法と内容
<調査先>
UNESCO (フランス、パリ市)
<調査旅行期間>
平成 21 年 7 月 3 日~平成 21 年 7 月 13 日
ユネスコ本部前で筆者
<取材先および日程>
第2日目(7 月 5 日)
ユネスコ本部を訪問し、ESD 担当幹部 Mr. Mark Richmond さん(Director for the Coordination of United
Nations Priorities in Education)に面会・取材して、ヨーロッパの高等教育機関におけるESD関連教
育プログラム、教材開発、映像やアーカイブなどの動向についてインタビューした。
第3日目(7 月 6 日)
ジェンダー、貧困、格差、エイズ、感染症保健衛生政策などが、ヨーロッパにおいてESDと深く関連
している現状についてユネスコ図書館の資料を中心に調査した。
第4日目(7 月 7 日)
ユネスコ本部で行われた The Role of Research Networks For The Promotion of Right and Values In
Education シンポジウムに参加した。
第5日目(7 月 8 日)
2009 World Conference on Higher Education, GUNI SPECIAL EVENT に出席してマイノリティーの共存、
異文化、異宗教間の言語と相互理解に向けた活動の取り組みについて、取材と映像資料の収集を行った。
(3)取材調査の成果
181
本事業では、ユネスコ本部を訪問し、ESD担当幹部に面会・取材して、ヨーロッパの高等教育機関に
おける ESD 関連教育プログラム、教材開発、映像やアーカイブなどの動向についてインタビューした。ま
た、ヨーロッパにおいて、ジェンダー、貧困、格差、エイズ、感染症保健衛生政策などが、ESD と深く関
連している現状についてユネスコ図書館の資料を中心に調査した。
また、この他にパリ滞在中の経済産業省の新エネルギー開発の担当者を取材して、ヨーロッパの新エネ
ルギーへのいこうに関わる市民への啓蒙プログラムについて対策を取材した。パリ市内及び近郊で ESD 関
連の活動が進んでいる地域をたずねて教材開発の実践例を視察した。
その結果は以下の3点に要約される。
① ユネスコの事業の中での ESD の位置づけと今後の動向やビジョンが明らかになった。
② 釧路校の ESD 推進センターの取り組みを紹介することができた。
③ 今後の釧路校の ESD 事業を進める上で参考となる資料や情報が得られた。
日本では、環境教育に偏りがちな ESD であるが、ヨーロッパではむしろ、貧困、差別、エイズ、ジェン
ダーなどの社会問題が ESD の重要な教育課題となっていることを知ることができた。今後の ESD プログ
ラムの充実と、学生の教材開発、カリキュラムの構築にたいへん有意義な情報を得ることができた。
(4)学生教育上の効果
UNESCO の取材を通して、ESD プログラムが環境保護やエネルギーの資源問題だけではなく、人権や
福祉、差別、貧困なども含む広く普遍的な問題を取り扱いながら、持続可能な社会に向けた教育を行うも
のであることを知った。その結果、我々が取り組んできた健康の問題もESDの主要な問題として取り組
むに値することがわかった。
我々は、これまで地域住民を対象とした健康づくり活動を企画運営しながら、ボランティア活動によっ
て学生達の誇りを育て、自身と自負を高め、堂々と地域の課題に取り組むことができるような人材養成を
行ってきた。また、これと同時に、学生達に現在の福祉制作の課題、高齢化、過疎化、少子化による地域
の疲弊、また、失業や生活保護による貧困の問題などに関心を高めてきた。こうした活動を経て、学生達
は学校教育だけでなく、地域教育を通じて、これらの問題に取り組むことによって、社会をよくしていこ
うという意識を強く持つようになった。また、地域社会のボランティア活動をとおして、新しい運動プロ
グラムの開発に成功した。この運動プログラムは、高齢者の介護予防に効果があるだけではなく、コミュ
ニティーの力を高めていく効果を持っている。
182
4.10. アメリカ、ヨセミテ国立公園およびイエローストーン国立公園の調査
川﨑
惣一(釧路校准教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 8 月 31 日~9 月 10 日
実施場所
アメリカ
(11 日間)
サンフランシスコ、ヨセミテ国立公
園、イエローストーン国立公園
(1)背景と目的
近年、地球温暖化や生態系の保護など、環境関連する諸問題が広く共有されるようになってきた。この
問題に関心を示す学生も増えている。しかし、ほとんどの学生は、漠然と「環境問題は重要だ」と考えて
いることが多く、具体的に「何を、どのように、どこまで」行うべきか、あるいは、将来教員として子ど
もたちに何をどう伝えていくか、と問われれば、はっきりした答えが返ってくることは少ない。
そこで、環境倫理学の観点から、日本を含めた世界のさまざまな国において、自然環境を保護するため
にどのような取り組みがなされているか、またその土台にある思想・価値観とは何かを調査して、学生に
提示していくことが重要だと思われた。
このことから、本事業では、アメリカの自然保護の象徴的存在であるヨセミテ国立公園と、世界初の国
立公園であるイエローストーン国立公園を訪れ、環境保護や環境教育の在り方について調査することとし
た。
(2)方
法
アメリカを代表する二つの国立公園を訪問し、アメリカでの自然保護の基本的な仕組みと、観光・レジ
ャーのための自然の利用の在り方を実地で学ぶことができた。さらに、レンジャー制度やガイドの仕組み、
さらに自然保護に対する姿勢や方針などを調査することができた。
(3)結
果
調査初日
釧路から羽田空港・成田空港を経由してサンフランシスコへと
移動。
2日目
午前は、サンフランシスコ市内の書店で環境問題に関連する資料収
集を行った。午後には、サンフランシスコ近郊のミュアウッズ国定公園を訪
問した。(右上の写真は、ミュアウッズ国定公園内のもの)
3日目
早朝からバスにてヨセミテ国立公園へ移動。午後に到着し、公園内
の散策と、インフォメーションセンターでの資料収集を行った。
(右下の写真は、ヨセミテ国立公園内のパーキングエリアでのもの。熊が食
べ物をあさるので、車内に食べ物を置きっぱなしにしないよう注意をよびか
けている。)
183
4日目
現地ツアーに参加し、グレイシャーポイントまで移動。そこから
トレイルを通って下山しながら、公園内の環境保護のようすを確認した。
夕方からは、園内のビジターセンターを訪問し、パークレンジャーの仕事
を調査した。(右の写真は、ヨセミテ国立公園内の写真)
5日目
午前にヨセミテ公園内散策。午後よりバスにてサンフランシスコ
市内へ移動。夜に市内に到着。
6日目
午前にサンフランシスコ国際空港から空路でミネアポリスへ移動。さらに、飛行機を乗り継いで
ボーズマン空港へ。現地ガイドに案内してもらいながら、イエローストーン国立公園内のホテルへ移動。
7日目
イエローストーン国立公園内の見学および調査。午前はマンモス
ホットスプリングス(園内北西部)を見学。午後は、園内および公園事務
所をガイドに案内してもらいながら、園内での、バイソンやオオカミなど
の自然動物の保護の仕組みについて調査。(右の写真は、園内のさまざま
なレンジャープログラムが掲示されているボードを撮影したもの)
8日目
ガイドの案内で園内南東部へ移動し、オールドフェイスフルでの
観光設備および園内ガイド・レンジャー制度の在り方について調査。この
ほか、園内の観光資源の利用状況およびバクテリア等希少生物の研究の在
り方について調査。(右の写真は園内の間欠泉。右下の写真は、オールド
フェイスフルそばにあるインフォメーション・センターで、ジュニアレン
ジャー・プログラムを終えた子供たちが、証明書をもらう前にレンジャー
としての宣誓をしている光景を撮影したもの。)
9日目
午前より、ガイドの案内でミネソタ州立大学を訪問。野生生物研
究センターの見学等。午後、ボーズマン空港から空路でソルトレークシテ
ィーへ移動。
10 日目
ソルトレークシティーから空路でミネアポリスへ移動。ミネア
ポリス国際空港で、成田空港行きの便に乗り換え。
11 日目
夕方、成田空港に到着。
(4)学生教育における効果
今回の調査旅行は平成 21 年 9 月初旬に実施されたことから、授業内容に反映させるのは平成 22 年度以
降となる。
なお、授業で紹介するのに先立って、平成 22 年 2 月 11 日(木)に開催された、北海道教育大学釧路校
ESD 推進センター主催
ESD セミナー『ESD の現在』」において、今回の調査旅行の一部を利用して、一
般市民および学生を対象とするセミナーを開催した。そのなかでは、今回の調査において収集した資料や
現地の写真などを参加者に紹介しつつ、アメリカにおける国立公園の成立事情について触れながら、とく
184
に「原生自然(ウィルダネス)」という概念のあらましと、日本とアメリカの自然観の違いを理解してもら
うよう心がけた。
来年度以降は、担当している授業科目(「現代の社会と思想」「社会と思想」「初等社会」等)において、
世界のさまざまな地域や文化において、それぞれの自然観を踏まえつつ、どのようなESDを推進してい
のがふさわしいか、という問題をめぐって、学生が自分なりの観点から考察を深めてもらえるような講義
を実施していく予定である。このことは、学生がやがて学校教員としてESDを実施していくうえで、非
常に有益な学びとなるはずである。
185
4.11. コスタリカにおける経済開発と自然環境の関連を ESD の視点で探る
生方 秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年8月 31 日~平成 21 年9月 13 日
実施場所
コスタリカ(サンホセ、コルコバード国立公園、
モンテヴェルデ自然保護区)
(1)背景と目的
中米において環境立国を目指すコスタリカを訪れ、経済開発と自然環境の関連を、とくに生物多様性の
保全と国民生活の改善とを両立させる取組と考えられる生物多様性保全およびエコツーリズムを含む環境
教育に焦点をあてて調査し、大学の ESD 関連授業とくに自然環境の保全と地域経済活性化との関わりにつ
いての内容を現実に根ざし、バラエティー豊かなものにし、もって学生教育の質量の充実をはかる。
(2)調査日程
月日
行動
8/31
15:55 発のコンチネンタル航空機でヒューストンへ。ヒューストンで乗り継ぎ、同日20時過ぎにコスタリカの
(月)
首都、サンホセ到着。
<サンホセ泊>
9/01
午前中:迎えの車で、サンホセ市内の Instituto Educativo Moderno (IEM)
を訪問し、小学校レベルにおける
(火)
先進的な環境教育について、日本語通訳を介して、校長・教諭・児童に聞き取り調査。
昼食後、SINAC (Sistema Nacional de Area de Conservación)(意訳:保全エリア全国システム)を訪問し、コ
スタリカにおける自然環境保全についてのシステム・政策・実行状況について、日本語通訳を介して、聞き取り
調査、資料収集。
<サンホセ泊>
9/02
午前中:迎えのワゴン車でモンテベルデへ 5 時間かけて移動。モンテベルデ着。昼食後、タクシーでバタフライ
(水)
ガーデン、カエル園を訪問し、展示を見学・撮影しつつ、説明を受け、質問するなどして取材。
<モンテベルデ泊>
9/03
迎えのワゴン車でモンテベルデ自然保護区へ移動。モンテヴェルデ自然保護区のネイチャートレイルで専門ガイ
(木)
ドによる解説を受けながら動植物の観察・撮影。
昼食後、同自然保護区のネイチャートレイルの別コースを日本語ガイドによる解説を受けながら樹冠部にかかる
吊り橋の上等から森林生態系を時間をかけて観察・撮影。
<モンテベルデ泊>
9/04
モンテベルデのロッジの敷地と隣接する二次林内のトレイルを、早朝および朝食後ゆっくり歩き、動植物をじっ
(金)
くり観察・撮影。
昼食後、迎えの車でサンホセへ戻る。
<サンホセ泊>
9/05
サンホセ国立博物館訪問。展示解説をじっくり読みながら展示品を観察、撮影することで、コスタリカ開発の歴
186
(土)
史および同国の自然史の概要をつかむ。
<サンホセ泊>
9/06
迎えの車でサンホセの国内空港へ移動。Natureair の小型機(6人乗り)で Quepos ケポス空港経由で、パルマー
(日)
ル・スールへ。迎えの車でボート乗り場へ移動。乗り合いボートに乗船し、川の河口へ向って下り、太平洋に出
てからは岸沿いに航行し、コルコバードのロッジに到着。昼食後、海岸沿いの歩道沿いに自然観察。
<コルコバード泊>
9/07
早朝からボートでコルコバード国立公園 San Josecillo 地区に行き、トレッキングコース沿いに現地ガイドの解
(月)
説を受けながら手つかずの熱帯雨林の動植物を観察・撮影。
<コルコバード泊>
9/08
早朝からボートでコルコバード国立公園 Sirena 地区に移動。途中、アオウミガメの交尾観察。Sirena ではトレ
(火)
ッキングコース沿いに現地ガイドの解説を受けながら熱帯雨林の動植物を観察・撮影。帰りのボートではスコー
ルでずぶ濡れに。
<コルコバード泊>
9/09
迎えのタクシーで滑走路と小さな小屋があるだけのドレイクベイ空港へ移動。木陰で待っていた空港職員がチェ
(水)
ックイン手続き。小型飛行機でサンホセ空港へ。途中 Jimenez ヒメネス空港で乗客を乗せ換える。送りの車でホ
テルへ。昼食後、サンホセ動物園で中南米の哺乳動物・鳥を見学。中央市場等で地元農産物の多様性について観
察・撮影し、ホテルへ戻る。
<サンホセ泊>
9/10
子ども博物館で宇宙、地質、物理、化学、生物、産業、歴史などの展示物等を視察。そのあと、国立図書館でコ
(木)
スタリカの自然史、ツーリズムについての資料収集。
<サンホセ泊>
9/11
早朝タクシーをでサンホセ空港へ。コンチネンタル航空でニューアークへ。トランジット滞在。
(金)
<ニューアーク泊>
9/12
ニューアーク発のコンチネンタル航空で成田へ向かう。
(土)
9/13
成田着。
(日)
(3)結
果
コスタリカは、面積は世界の陸地の 0.1%でありながら、世界の5%の生物種が生息し、国土の 25%が
国立公園または保護区(保護区比率は世界最高)に指定され、環境パフォーマンス指数(Environmental
Performance Index (EPI))では世界5位の環境先進国ともいえる国である。しかし、実際に訪れてみると
農業開発で熱帯林が跡形もない景観が延々と続いていて、逆にいえば開発によって消滅の危機にあった熱
帯林が保護区設置によってかろうじて維持されているというのが実感された。訪れた熱帯林や海岸生態系
では活発なエコツーリズムが行われており、野生動植物が海外からのツアー客の目を楽しませている状況
を実感し、エコツーリズムが主要産業として成立している状況をとらえることができた。小学校訪問では
同校を中心としたコスタリカの環境教育の意欲的取組みの概要を知ることができた。また、SINAC 訪問で
は、同国の自然保護区の管理の現状と、環境保全における環境教育の位置づけについて知見を得ることが
できた。以下、小学校および SINAC でのインタビューで得られた知見を紹介する。
187
稜線近くまで牧草地に変えられている山岳地帯
モンテヴェルデ自然保護区でのエコツアー
コルコバード国立公園のエコツアー
コルコバード国立公園、ジョフリークモザル
1)小学校(Instituto Educativo Moderno)での取材から
訪問した小学校 Instituto Educativo Moderno では Leda Beirute 校長へのインタビューで同校の理念と
実践について多くを知ることができた。以下に同校および同国の環境教育の現状についての聞き取り結果
の概要を紹介する。特記のない引用発言は校長の Leda Beirute 氏によるものである。
i) 学校の沿革:
・ 「この学校は 1975 年創立で、35 年になる。学校の敷地に緑地帯が多い。その中で子ども達が自然に親
しみ、研究・フィールドワークを行うことができる。2002 年から現在までラテンアメリカレベルで環
境教育メソッドについての生態学的研究の場所に指定されている。EP という環境教育に関する科学的
方法で学校の庭をつかって子ども達が自由研究の実験をし、4年にわたって国内の金賞を受賞してい
る。2006~2009 年、毎年、エコロジーフラッグという国の認証がある。認証は水道局、教育省、科学
技術省が、どのように環境活動をし、環境保護に役立っているかを、レイティング認証している。こ
の学校は毎年認証をうけることができていて、三ツ星である。」
ii) 本校の目標:
・ 「本校の目標は、道徳的観念、自尊心、創造的活動、リーダーシップ、未来のビジョンをもたせるこ
188
とである。それをふまえて、一人一人の子供がグローバルな社会で生きていくことに対して、また地
球に存在する生き物の永続に対して責任を持っていくことも当校の環境教育の目的になっている。 こ
の学校の大きなプロジェクトとして健康・福利厚生教育があり、環境教育はその一つの柱となってい
る。自己ケアの能力をつけること、他者のケアへの社会的責任、健全な身体をつくる、自分の感情を
コントロールすることなどを含む。子ども達同士の対立を調停する学級内組織があり、これは平和教
育にかかわる。自然災害防止のプログラムがある。これらと並んで環境教育のプログラムがある。
これらすべてが、身体的、精神的、社会的に健全な成長をうながす。
」
iii) 環境教育の視点:
・ 「この学校には18年前には環境教育専門の教員がいた。理論的な理解には適していたが、それでは
だめなので、全ての授業を通して環境教育をおこなってきた。私たちの 15 年来の環境教育の捉え方は、
単純なのだが、これまでは人と自然はまったく別個のもので、人は自然を利用していくという考え方
だった。それを変えていかなければならない。自然の中に人間があって、自然の中に平和を求めるの
であれば、自然との平和をまず築いていかねばならない。自然を尊重する気持ち、自然と団結する気
持ちを持つことが何よりも環境教育のすがたである。」
iv) 環境教育のプロジェクト:
・ 「この学校では環境教育に関して 12 のプロジェクトを持っている。現在わたしたちがかかえている環
境問題を解決していこうという内容である。子ども達が学校生活、日常生活を通して個人的な体験と
して、それを学んでいけるようなプロジェクトになっている。また、それを通して新しい自然と人間
との関係を子ども達の中に築いていく。三つの柱があり、それは、社会的内容・環境の内容・生産性
の内容である。自然はただ守られるだけの存在ではなく、人間の活動にもなんらかの生産性を与える
ものである。人間も自然を守ることによってなんらかの恩恵を受けていく。この三つの柱をおさえる
ことによってはじめて持続可能性という解答を出していける。人が存在して環境を守りながら、お互
いになんらかの生産性をもちあっていくことが持続可能な開発につながっていく。人間は自然の中の
一部という考え方から、どうやって共存していくのかというのが柱になっている。12のプロジェク
トに、2人の教職員(教師、職員のすべて)がかかわる。それぞれのプロジェクトに大体20人の生
徒(いろいろな学年混成)が所属している。それぞれのプロジェクトが科学的研究活動としてとらえ
られている。ただ単に感情的にこうしなくてはいかないというのではなく、子ども達の中になんらか
の知識の構築がなされるよう、科学的アプローチを大切にしている。プロジェクトは6ヶ月ごとに開
催される。子ども達にすべてのプロジェクトの情報を示して、学級討論をさせ、それぞれ興味がある
プロジェクトに登録する。学校のカリキュラムの中では、毎週金、8時半から9時45分が環境教育
プロジェクトの時間になっている。
」
v)4R プロジェクト:
・ 「リサイクル、リユース、リフューズ、回復。自分たちの日常の生活から具体的にはじめる。ゴミ処
理の活動に関係。ペットボトルを利用し、鳥の餌箱にする。図工、人形劇の材料につかい、環境教育
にもなる。ゴミ処理の活動を通して、子ども達にゴミを活用していけるのかという創造性を高める。
その活動を通してチームワーク、協働。協力関係をむすんでいく。それから生産性を学んでいける。
社会に対する責任感、社会に対して責任をもって約束をする。」
189
vi)自然との交流:
・ 「まず、植物はなんなのか。名前をしること。植物が生態系の中でどんな役割をしているか知るのも
大切。鳥の観察もある。観察された鳥が全部登録されている。子ども達の活動で学校の敷地に27の
違う鳥がいることがわかった。」
vii) 公共公正:
・ 「学校全体の子ども達の健全な生活をまもっていくグループ。たとえば排水溝に葉がおちて洪水にな
らないように常日頃、注意したり。デング熱はちょっとした水溜り、すててあったコップとかに卵を
産むので、そういった水溜りになりそうな水を常日頃きちんとコントロールしている。」
viii) 共同組合:
・ 「子ども達が協働組合をつくり、キャンプ活動をしたり、新聞やビンを売ったりして、その恩恵を全
体に還元していく。」
ix) 蝶園プロジェクト
・ 女児:
「この中で1ヶ月くらい幼虫を育てて世話をして観察して、今さなぎになっている。幼虫の段階
ではそとに連れ出して葉をつめてもらってもってきて食べさせている。
(蝶のプロジェクトに参加した
のは)すごく動物も好きだし環境に興味あるから。このさなぎはクモにおそわれた。」
・ 校長「そこから研究の課題もでている。さなぎをどうクモから守るのかも課題になる。ここで育てる
にあたり、どういったえさをあたえるかはテーマになっている。」
・ 女児:
「蝶に食べてもらえるように何か代わりになるような植物はないかと、植えてみたり、外につれ
だして葉をたべさせてみる。どうしたら、作物に影響をあたえないようにするかもためしている。」
Instituto Educativo Moderno の校長(左)、教諭(中)
蝶園プロジェクトについて説明している女児(右)
および筆者
x) 堆肥プロジェクト
・ 「苗床、野菜畑に堆肥を還元。」
・ 男児(11 歳)
:
「(堆肥のプロジェクトを選んだのは)堆肥の活動は楽しそうだし、リサイクルして自然
に還元していくのはいいアイデアだと思う。どんな生ゴミがどれだけ堆肥として有効かが面白そうな
190
テーマだったので選んだ。これができあがった状態。こちらはプロセスの過程なので沢山虫がいる。
こちらは虫はいない。こちらも最近、全部入れ替えたもの。だいぶ進んでいる。
(日本ならいやがる子
どもが多いけどと聞かれて)なれてしまったので、汚いと思わないし、このプロジェクトをくりかえ
しとっている。」
・ 校長:
「各教室に生ゴミを含め分別ゴミを集めるものがあるので、各教室と、食堂からのゴミを台車で
運んで堆肥にする。興味を持ち続けてプロジェクトを続けている子がリーダー的な役割を果たす。ソ
フィアさんは蝶園のエキスパートになっているし、この男の子は堆肥のエキスパート。別の小さい子
達を彼が研修する。」
・ 男児:
「堆肥の活動は維持の活動にも役立つ。落ちた葉っぱも清掃活動で集める。苗床、植林、野菜畑
にも恩恵を与える。堆肥をつかって種から植物を育てる。そこで大きくなったものを実際に学校に植
木として植えている。パイナップルも植えていてこの穴はパイナップルのあったあと。大きくなって
別の場所に移された。生ゴミとして運ばれたものは乾燥させないといけないので、しずくが落ちて少
し乾燥してからこの中に入れる。このようなところに水がたまるとデングの蚊が発生するので気をつ
けている。ほんとにこのプロジェクト自体が楽しいし、おもしろい、それ自身が喜び。他のプロジェ
クト、人たちにも役立っていることが幸福に感じる。ほかにもプラスチックのキャップがあってこう
いうものは自然にやさしくないんだとこのプロジェクトにかかわる子ども達に実際に見せている。何
が自然によく、何がよくないか皆に伝えることができるというのも皆につたえられるのが嬉しい。」
xi)餌箱プロジェクト
・ 男性教員:「 子ども達は餌箱プロジェクトで、それぞれ観察カードを持っていて、それぞれの木にど
のような種の昆虫がいるのか、蝶がいるのか、花があるのか、それから菌糸類、コケ類どんなのがあ
り、果物どんなのがなるのか。季節によって、クモの増減、観察をして、それぞれの子ども達が仮説
をたてる。なぜこの季節にクモが多くて他の季節に少ないのか、あるいはなぜこの季節に動物が多く
て、あるいは少ないのか、観察活動を通して科学的な調査をしている。」
堆肥プロジェクトについて説明している男児
流水域のプロジェクト(三匹の竜)の
資料を持つ児童。
191
xii)流水域調査プロジェクト
・ 校長:
「国内の科学フィリアの大会で金賞をとった。で、次の柱として生産性があった。何年もこのプ
ロジェクトをやってるので、だんだん内容が変化してきている。最初は、川を清潔にするための清掃
活動がほとんど。しかしどんどん清掃してもどんどん汚れていって解決策にならない。どうやったら
川をきれいに保てるかというのがテーマになった。子ども達がそれぞれ仮説をたて、どうやったらよ
いか考えた。たとえば川警察をつくればよい、罰金や刑務所。網をはってゴミが流れないようにする。
月に一回トラックを呼んでゴミを撤去するなど、子ども達からいろいろでた。しかし子ども達が研究
活動をしていくなかで、持続的ではないことに子ども達が気づいた。そこで今おこなっているプロジ
ェクト、二つの大きな柱があるけれども、子ども達の意識を変えていかなくてはいかないんじゃない
かというふうに、子ども達も気づいて、自分たちは未来の大人なので、川の大切さを知っている子ど
も達をたくさん作るべきじゃないかというのが一つの柱。もう一つが、川の水質調査。川の近くに工
場があるので、工場の人たちは川をきれいにという考えがあるので、実は川はきれいじゃないという
のを知らせるために川の水の酸素の溶存量とか川にどんな微生物がいるとかいないという調査をして、
実はきれいに見えているけれど科学的にはきれいじゃないと、その工場に訴えようとしている。」
・ 「これは、水サンプルで、化学物質を足して言って酸素の含有率を調べていける。色の違いで。これ
は5,6年生の環境プロジェクトになるが、望ましい酸素含有率というものがあって、それが達成さ
れていればおのずから生物も生き残っていける環境にある。でも、汚染がすすんでしまうと、そうい
った状態ではないということで、ちょっと大きい子ども達のプロジェクトになっている。子ども達が
この調査を進めていって、最終的には子ども達が工場の人たちに「僕たちの研究の結果では実は川は
汚染されているんです」と言えるようになる、そういった研究活動である。実際に子ども達は工場に
一度行っている。そこで工場の人たちに「いや、川はきれいだよ」と答えられたので、それに反論す
るために、今調査活動している。」
・ 「これが、より年齢層の低い子ども達がおこなった流水域のプロジェクトの発表原稿で、3匹の竜と
いう名前がついた、子ども達の寸劇である。まずは子ども達が水の循環について学んで、それから川
を人間にたとえて、川はどんなときに悲しむんだろう、どんなときに喜ぶんだろうということを寸劇
仕立てにしたり、歌にしたり、物語をつくったり、ということを通して川の大切さを学んでいってい
る。この3匹の竜というものが自然環境を保護していくのにすごく大事なんだというのを訴える寸劇
だが、ある日、空から三つの竜の卵が落ちてくる。一つは川の地域に、一つは森林に一つは都市部に
落ちた。それらが大きくなっていくうちに、どうしてこんなに川は汚いんだろう。森林の竜はなんで、
こんなに森はきたないんだろう、町の竜はなんで町はこんなに汚いんだろうと思う。川の竜は川の水
を全部飲み干して自然に帰す、森林は森林で、都市は都市で元にもどすが、すぐにまた汚れる。そこ
でほかの竜の助けを求める。」
xiii) 教員の社会的ネットワークの活用
・ 「教員は、だれも環境教育の専門家ではなく、子ども達と一緒に学んでいる。社会的ネットワークを
より多く活用する。生徒の父母に生物学者や社会学者もいるのでそういった方をお招きし、そういっ
た知識を教員も生徒といっしょに学ぶ。先生ひとりひとりが環境教育についてモチベーションを高め
ていかなくてはならない。ひとりひとりいろいろなアイデアをもっているので、各学期ごとに職員ミ
ーティングをおこない、環境教育がどういうふうに進んでいるのかという評価をおこなっている。そ
ういったところで新しいプロジェクトがいつになるかという意見交換を活発におこなっている。私自
192
身、流水域の保存をライフワークにしている。それぞれのプロジェクトで違う子ども達を受け入れて、
子ども達がする質問もそれぞれ違うし、それに答えるために知識をつけなくてはならないし、この人
とコンタクトとったらいいな、ということで社会的ネットワークを活用しながら先生たち自身が学ん
でいけると思う。」
xiv) 環境教育に取り組んだきっかけ
・ 「普通教育の学校として設立され、平和教育に重点をおき、紛争の解決をテーマとしてきた。80年
代、カラス大統領のときにダライラマがきて、この学校も訪問した機会があった。彼は、この惑星に
平和を望むのなら、私たち自身がこの惑星・自然と平和の関係をもたなければならないと述べた。そ
れが私たちの活動にすごく必要と感じた。平和教育を進めていく中で平和教育と環境教育を二つの柱
とし、アプローチの仕方はちがうが根本的に同じ平和、自然との平和、自分自身の平和と関係してい
るので、二つを車輪の両輪としてきている。」
xv)コスタリカの環境教育
・ 「教育省がもっている教育要領の中で環境教育はもちろん謳われていて、科目の中で統合しているの
ではなく、様々な教科を通して教えると決められている。で、教育省も環境教育は重要といっている
が、具体的なプロジェクトは公的には組まれていない。それぞれの学校である先生がある校長が環境
教育に関心をもっているので独自にプロジェクトをもっているところはある。私たちの学校はその中
でもより進んだ環境教育をやっている。総合的な開発をしている、研究であったり、大学との協力関
係であったり。私たちがもっているカリキュラムはフレキシブルで開放的。そのカリキュラムをとお
して、科学であったり、社会科であったり、算数であったりを学ぶので環境教育に時間をそいでしま
うのではなく、すべての活動の中に環境教育をとりいれて、さまざまな教科の要素をつくるような教
育をしている。」
・ 「大事なのは教員の意識である。というのはあくまでも課外活動みたいなので、職務として規定され
ている時間以外のものを要求される。ほんとに先生たちのモチベーションが重要になる。国内のネッ
トワークとして、アスリという別の場所に私立の学校があり、いい環境教育をしている。別な公立校
でも、コミニテーをベースにして企業の協力もえていいプロジェクトをしているのもある。いずれに
せよ、先生たちのモチベーションが重要になる。」
2)コスタリカの生物多様性保護管理と環境教育(SINAC での取材から)
9月1日に、サンホセ市にある SINAC (Sistema Nacional de Area de Conservación)(意訳:国家保全
エリアシステム)を通訳兼コーディネーターを伴って訪問し、コスタリカの生物多様性保護管理と環境教
育について、インタビューを行った。以下にそのインタビューから得られた概略を掲げる。
i) 自然環境保全の管理体制
SINAC(国家保全エリアシステム)は、環境エネルギー省の 12 の部局のうちの一つの部局である。SINAC
のもとに国家委員会があり、これが上位権限をもつ。コスタリカは、SINAC が管轄して、全国を、11 の保
全エリアに分けている。それぞれのエリアに委員会が設けられる。国立の組織、行政側の組織、そして民
間の組織のそれぞれから委員がでて委員会を構成する。保全エリアの責任者が地域委員会の委員長・事務
局長も兼ねる。この地域委員会のメンバーは、公の選挙、地域住民の直接選挙によっによって選ばれる。
法律で地域委員会には自治体から一人出ると決められている。
193
このエリアは、県とか郡といった行政区とは別途に、地質、地理、生態学、ユーザーの便宜を勘案して
境界がきめられた。社会的、管理的視点よりも、どちらかといえば生態学的とくに流水域が考慮されて分
けられている。それぞれの保全エリアで公共的活動、私的活動が制限されているが、公的なところとして
は、生物多様性を保全するために野生保護地域が指定されている。公的保全エリアの中の活動としては国
立保護区が国土の 26%を占めている。その国立保護区の中は7つの管理カテゴリーに分かれていて、国立
公園、生物保護区、森林保護区、野生動物保護区、歴史記念物などに分かれている。26%の国立保護区の
中には、一部民間の地主の土地もある。それらも開発に関する規制がかけられている。国としてはそれを
買い取る方向、または何らかの保障をはらって保護活動ができるような体制をとっている。それ以外の民
間の保護地域でもそれぞれ保護活動がなされている。その地域に関して、国が法律を定めてどのような種
類の生物多様性の資源を保全していくのか規制がかけられている。野生の動物や植物をどのように活用で
きるのかも規制されているし、どの地域に住宅街として人の生活を導入していくのかも規制されている。
また、その地域によってどんな環境教育を行っていくのかも法律によって定められている。
SINAC のもとでの11の保全エリア
インタビューを終えて、SINAC スタッフ
(SINAC のウエブサイトより)
と筆者
ii) 生物回廊
生物回廊の理念があり、国全体で 37 の生物回廊が実際に運用されている。一部の生物回廊地域について
は国が買い上げて国有地もあれば、一部は民間が協力という形で提供している。やはりコミュニティーが
深くかかわっているのが生物回廊である。こちらの地域委員会には必ず自治体(地域政府)の人が一人入
る。自治体の人が生物多様多様性のプロジェクトを進めるにも自治体と連携をもったたいへん大きな役割
を果たしている。この生物回廊だけを扱うローカル委員会もつくられている。それぞれの地域で活動して
いる。なぜかといえば、私有地であるので地域の人たちの貢献がかかわる。
iii) 環境教育について
SINAC は環境教育の戦略的プロジェクトのシステムを持っている。2005~2010 年の戦略である。11
のそれぞれの保全エリアに一人ずつ環境教育の担当者が決められている。各地域の環境教育コーディネー
ターと SINAC の担当者が環境教育専門委員会をつくっている。それ以外にも環境教育のスタッフがいて
194
全体で 34 名いる。より専門的、より組織的にオーガナイズされている保全エリアもあれば、そうでもない
ところもある。それぞれごとに違う発展のしかたがある。たとえば、Guanacaste という保全エリアでは
20 年も前から生物学的プロジェクトがあり、小学生4~6年生に環境教育をおこなって、よい成果をあげ
ている。コミにティーとして水資源の有効な使用の仕方のプロジェクトをやっているところもあり、そこ
では自治体と非常によい関係をもっている。別の、住民の多い地域では、住民によって環境へのインパク
トどれぐらいのものなのか、また人の生活人間活動と水質を保っていくにはどうしたらよいかについての
プロジェクトが、この何年間おこなわれてきた。Tortuguero という保全エリアでは、JICA が Barra del
Colorado というところで、現在プロジェクトを5年かけて行っていて、そこではコミュニティー活動が活
発におこなわれている。
SINAC 全体のアクションプランは、それぞれの地域の特徴に合せて適応していく。SINAC が直接それ
ぞれにかかわるのではなく、それぞれの地域委員会に活動してもらっている。大切なことは、それぞれの
地域に国立公園をもっているので、観光客が訪れる。そういったところにグリーン教室と呼んでいる、ス
ペース・サロンがある。そこにツーリストに訪れてもらい環境教育を行っている。散策ルートもより教育
的啓蒙的になるようにルートの設計・改善がなされている。1998 年に環境教育国家委員会が設立された。
これは SINAC がコーディネートした。メンバーは公立大代表者、私立大代表者、教育省、厚生省、サン
ホセ自治体の代表者によって構成される。そこで最大公約数の環境教育の政策が決められた。その効果の
一つとして、国立大4つの総長の集まりである大学総長連合が、その中に独自の組織として大学の環境教
育のための組織をつくった。国の教育の中にも環境教育を教育の一つの柱として学習指導要領にくみこん
でいる。立法されている、国会に提出されている案のなかに、大学のカリキュラムに環境教育を義務付け
るというのがある。2007 年までは環境エネルギー省の中に環境教育の担当部局があったが、今は SINAC
が環境教育の担当になっている。地域委員会の中にも環境教育を担当するメンバーがいる。地域の自治体
やさまざまな市民団体と連携できる。たとえば、その地域の学校の先生に環境教育の研修会をおこなった
りしている。
iv)エコツーリズム:
エコツーリズムの過剰によるインパクトはないのかという質問に対して、以下のような回答がなされた。
環境のインパクトについては総量規制の話と関係する。エリアによってなされているところと、そうで
ないところがあるが、どのくらいインパクトがあるかきちんと調査がなされ、それによって規制も生まれ
ている。キャパが決まっている国立公園ではそのキャパがいっぱいになれば数時間入場させないという規
制を行っている。コスタリカ全体で保護地域は 160 ある。そのうち、観光客を受け入れられル状態にある
のが 39。その中でも沢山の観光客を受け入れているのは5つの地域。この5つの地域では総量規制がされ
ているので、コントロールできている。
v) 外来種および密猟:
エコツーリズムの客がよそから生物を持ち込むことが問題になっていないかという質問に対して、以下
のような回答がなされた。
持ち込みより、持っていかれてしまうほうが問題になっている。在来種でないものが持ち込まれてしま
うことは農業省により空港できちんと管理されているが、保護地域で採取され、そこから持ち出されるほ
うが問題である。外来種については、SINAC としてもそれに対する戦略的なプランとして、3回ほどワー
クショップを行っている。靴についた草の種などについては農業省がとても厳格なコントロールシステム
をもっている。このシステムは国際的規制に適応したもので、そちらできちんと管理されている。侵略と
195
呼べると思うが、フロリダからはいってきた魚「ライオン魚」がカリブ海沿岸地域で増加してしまい地域
の生態系に影響を与えているということで、3年前から地域委員会などを通して具体策のシステム化に取
り組んでいる。コスタリカ大学と SINAC が共同で対応していて、漁民や地域のガイドと研修会を行って
いる。見分け方や、見つけたら通報する、情報を集め、どうやって駆除するかなどを含んでいる。また、
アフリカバチが大きな問題になっている。そのため在来のミツバチの人口が減ってしまっている。それは
ナショナル大学でオランダの専門家がきちんと調査し、結論づけられている。植物でも外来の木の花が毒
素をもっていて、その毒素で野生のミツバチがやられてしまう。在来種でない植物の悪影響として、ラテ
ィーファと呼ばれる植物がある。すごく繁殖力がある、対抗手段として家畜を入れてしまって、彼らの踏
みつけで抑えようとしている。
(4) 学生教育における効果
コスタリカは中米の小さな国であり、アメリカの強い軍事的経済的影響のもとで経済開発を進め、その
ため国土の広範な部分がバナナ、コーヒーをはじめとした大農園化によって生物多様性を喪失した。この
国には熱帯雨林、熱帯乾燥林、熱帯雲霧林など多様な生態系が存在し、残存した生態系の多くは国立公園
または自然保護区として保護・管理され、それらの貴重な生態系を舞台に活発なエコツーリズムが展開さ
れ、この分野で世界をリードするまでに至っている。この状況を現地で実際に自分の目で確かめ、現地の
人々がどのような生活や文化をもち、どのような考えを持っているかについて聞き取り調査を含む視察を
行い、その資料を大学に持ち帰り、学生に対する授業での教材に活用した。これにより、内容が現実に根
ざしたものとなり、教員自身も聞き伝えではなく自分の生の声で語り、学生の質問に答えることができた。
学生達は、生物多様性の保護・管理のあり方、熱帯林における生物の状況をより真に迫った情報として得
ることができ、環境教育を考える上で考えを深める一つのきっかけを得ることができた。
196
4.12. ベトナム、人と環境
○廣田
健(釧路校准教授)
廣重
真人(釧路校准教授)
事業期間
平成 21 年度
実施時期
平成 21 年 11 月 21~29 日
実施場所
ベトナム(ハノイ、トンキン湾を中心
とした北部地域)
(1)背景と目的
気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づく締約国会議(COP)等の開催により、
「地球温暖化」を中心に環境問
題についての関心がたかまりつつある。しかしながら、学生の多くは、環境問題についての関心は主に自
然科学的な側面に集中していること、自然保護の重要性を主張する割には実際に自然体験が不足している
ために「知識」としてとらえ、それを内面化していない等の問題を抱えている。
本事業は、環境と ESD のありかたを、ベトナムにおける「持続可能性」の諸問題について自然科学の視
点からだけではなく、社会科学の視点(特に経済と戦争の視点)からの検討を進めると共に、実際に現地
を訪問し、実地調査と自然体験を行うことで、ESD の重要性について社会科学的な側面からの理解と自然
保護についての重要性を内面化するという効果をもたらすことを目的として実施した。
(2)方
法
1)本事業における学生指導の概要と全体的観点
○本字業の中核となる現地調査は、2009¥年 11 月 21 日(土)~11 月 29 日(日)に実施したが、調査当
日だけでなく、周辺事項を含んだ事前・事後学習の充実に心がけた。
○事前学習は、実施の約3ヶ月前から、ベトナムの環境問題に関する社会・経済的側面に焦点をあてて実
施した。
○事後学習は、地球温暖化をテーマとした「総合演習」の中で調査についてのふりかえりを行った。
2)事前学習の概要
○実施三ヶ月前より、原則として金曜日 17:00 から約 2 時間を事前学習の時間に充てた。
○事前学習は演習形式とし、調査を通じて学生の主体性を確保するために、学生自身で進行させることを
原則に、教員は演習を深める助言に徹することとした。
○事前学習には、現地調査のプランニングも含めて調査地の選定なども学生自身に行わせた。
○事前学習の中で、調査事項としてあげられた内容項目は次の通りである。
①ベトナム戦争と環境問題
―
戦争と環境
②ベトナムの経済発展と環境問題
③ベトナムにおける環境教育の現状
―
発展途上国における環境問題
―
ベトナム国民に対して、在留邦人に対して
④ベトナムでの自然体験を通じた環境への関心
―
197
世界遺産としてのハロン湾
3)現地調査の概要
○事前学習事項に沿って調査プランを実施した。主な調査先は以下の通りである。なお、聞き取り調査の
質問項目については事前学習の時点で作成し、聞き取り先に連絡を行った。
①ベトナム歴史博物館・ホーチミン博物館・ホアロー収容所等ベトナムの歴史と政治に関わる施設の訪
問・見学
②現地邦人、日本人学校の教師からの聞き取り調査
③自然体験を目的としたハロン湾(ユネスコ世界遺産)の実験調査
④ベトナム民族学博物館、水上人形劇場(収穫祭に演じられる伝統的な民族劇)等のベトナムの文化に
関わる施設の訪問・見学
4)事後学習の概要
○帰国後、すぐに調査内容の整理を行うと共に、本事業の実施教員である廣田・廣重の所属する授業開発
研究室でミニ報告会を行った(2010 年 2 月)。
○本事業参加の学生が参加する「総合演習」のテーマを「地球温暖化」とし、ベトナム調査の内容の他学
生への共有化を図った。
(3)結
果
1)事前学習について
○観光目的にならないようにするために、事前学習を行うことは重要であった。特に、本事業の目的がベ
トナムの環境・ESD を社会科学的視点から検討するということに着目していた事から、現地で実見で
きる事象の背後関係を学習すること不可欠である。現地では原則として現地語の文献ばかりなので学生
の理解を深めるためには、日本での事前学習が決定的に重要であることを実感した。
○また、実施教員の担当する研究室の学生だけでなく、複数研究室の学生の参加もあったので、初対面の
学生も多く演習を通じて調査団の協力関係と認識の共有ができた。
○事前学習の中で ESD に関して中心的論議となったのは、持続可能性から見る「戦争」の意味であった。
このなかで、環境と開発に関する国際連合会議(1992 年)を中心に「持続可能な開発」について議論
するとともに、
「環境と開発に関するリオ宣言」の第 24 原則「戦争の環境破壊的性質」、第 25 原則「平
和、開発及び環境保全の相互依存的性質」、第 26 原則「平和的解決」に注目した論議がなされた。
2)現地調査について
○おおよその日程は次の通りである。
第1日目(11 月 21 日) ベトナムへの移動日のため特に調査を行わなかった。
第2日目(11 月 22 日) ①ベトナムの生活と文化・社会についての講話:現地の在留邦人に、ベトナム
の気候・風土、生活の様子や文化・社会について説明を受ける。②ベトナムにおける生活・文化につ
いての調査:上記、在留邦人に案内を受けてハノイ市内を中心に、ベトナム都市部での生活・文化と
環境の実見調査を行う(市街地や市場等を中心にできるだけハノイ市民の生活を実感できるところを
見学)。
第3日目(11 月 23 日) ①ベトナムにおける歴史・政治についての調査:ベトナム歴史博物館・ホーチ
ミン博物館・ホアロー収容所等ベトナムの歴史と政治に関わる施設を訪ねて、ベトナム人と歴史・環
境の関係について調査を行う。②ベトナムにおける生活・文化についての調査:ベトナム農村の収穫
祭に演じられた伝統的な水上人形劇の実演を見学を通じてベトナム人と環境との共存を考える。
198
第4日目(11 月 24 日) ・第5日目(11 月 25 日)
:ハロン湾の調査及び体験学習:トンキン湾の一部で
あり、1994 年にユネスコ世界遺産に指定されたハロン湾の実見調査を行う(現地で、ガイドによる鍾
乳洞の見学、カヌーを使った体験学習を実施する)。②ベトナムの農村地域の生活・文化の調査:ハノ
イからハロン湾に至る道筋の農村部の観察を通じて、ベトナムの農村地域の生活と文化、環境を考察
する(残念ながら、時間の関係もあって、実際に農村地域の人と交流することができなかった)。
第6日目(11 月 26 日)①ベトナムの教育と ESD についての講話:現地日本人学校の先生方から、ベト
ナムの教育の制度と現況、日本人学校の様子及びベトナムにおける環境教育の現状について講話を受
ける。②自由調査:それぞれのテーマ課題にそって、班別に調査を行った。
第7日目(11 月 27日)①ベトナムにおける生活・文化についての調査:これまでの補充調査を行うと
共に、多民族国家であるベトナムの生活・文化と環境の関係を、ベトナム民族学博物館を中心に調査
する。②ベトナムにおける歴史・政治についての調査:これまでの補充調査とベトナム軍事博物館を
中心に戦争と人と環境の関係について調査を行った。
第8日目(11 月 28 日) 帰国のための移動日なので調査は無かった。
○一日ごとに、就寝前に集合し、短時間であったが見てきたこと・収集資料の確認を行うと共に、感想の
交流を図り成果化の蓄積を行った。このことが、事後学習の成功につながった。
3)事後学習について
○事前学習で確認された調査事項を巡って
(A)ベトナム戦争と環境問題:戦争被害を巡る写真や実物証拠の実見によって、
「戦争の環境破壊的性質」
や「平和、開発及び環境保全の相互依存的性質」についてより深く実感し、平和的解決の重要性につ
いて理解を深めたようである。帰国後の演習では、戦争と環境の問題点を総括して、次の4点が挙げ
られた。
①現在まで続く戦争の後遺症(除草剤・PTSD。人体への被害だけでなく自然環境に対する被害も)
②兵器の開発と経済性の原則(安価に、効率的に作戦を遂行できるものが追求され、残虐性や後遺
症の問題が看過されることの問題。戦争の反人間性・反環境性)
③紛争地域の歴史に注目する必要性。植民地化が直接・間接に戦争の原因となること(開発におけ
る不公平に対する抵抗と植民地権益の保護の対立)
④兵器の非環境性(莫大な燃料を使用するが、原則不使用の高価・稀少品であること。経済コスト
とエコ・エコノミクスの問題)
特に、ベトナムの施設に置いては、下記の写真(学生が資料館より撮影)に見るような枯れ葉剤の散
布による後遺症の問題が出されていたこともあって、
「①
現在まで続く戦争の後遺症」についての問
題について、繰り返し議論があった。この中で、
「その後、世界では、ベトナム戦争でのこの問題が教
訓として生かされたのか?」という議論がなされ、戦争と後遺症の問題について、湾岸戦争・旧ユー
ゴスラビア内戦・アフガニスタン戦争・イラク戦争での事例を検討するまでに発展した。結果として、
ベトナム戦争以降の戦争でも、原油採掘施設等への攻撃による原油流出による海洋生態系の破壊、油
井の炎上による大気・土壌汚染、化学兵器貯蔵庫への攻撃による危険物質の拡散、核施設への攻撃に
よる放射能汚染、劣化ウラン弾使用による放射能汚染等の深刻な問題が発生しており、国際的な動き
でも 2001 年 11 月 5 日、国連総会は毎年 11 月 6 日を「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための
国際デー」とすると宣言(決議 56/4)等についての注目が行われた。
199
(B)ベトナムの経済発展と環境問題及びベトナムにおける環境教育の現状:事前学習では、①ベトナム
が有望成長株であること(ASEAN 諸国でフィリピンと並んで、インドネシアに次ぐ人口規模、高い
教育水準・識字率、中国と東南アジアをつなぐ位置、市場経済化による経済発展・一人当たりの GDP
が$1000 突破を間近であること、実質 GDP 成長率がここ数年8%を越えていること、比較的柔軟で
安定した政権であることから、海外投資が近年集中していること等)
、②環境問題の観点からは、進出
した日系企業が行っている公害対策等についての学習が行
われていたが、ベトナムにおける環境教育については情報不
足から事前調査できなかった。
学生を中心に実施した聞き取りや実地調査から分かった
ことは、海外からの高い経済的評価を受けて、現状では経済
発展に合わせた教育の振興が優先していること、教育熱は都
市・地方を問わず高いこと(地方の視察をしているときに学
生が一様に指摘していたのは地方で一番立派な建物は学校
であるということであった)、しかしそうした高い教育への
期待にかかわらず校舎や教材などの教育資源が行き渡らず、多くの地域で二部授業をしていること等
であった。残念ながら今回の調査では現地の学校を直接に訪問することができなかったが、このよう
な状況のため、教育条件の整備が優先され、ベトナムの初等・中等教育では、未だ環境教育への志向
が高まっているとは言えない状況であることが判明した。
現地の日本人学校のカリキュラムにおいても、国内におけるのと同様な一般的な環境教育が行われ
ているものの、ベトナムを題材とした学習はあまり行われていないようである(もちろん、ベトナム
の歴史を通じてベトナム戦争等についても学ぶが、ESD の視点からのアプローチは特に無いそうであ
る)。現地を題材とした環境教育が難しいのは、国内の学校と同様のカリキュラムになっているために
ESD については意識的に働きかける教員が居なければなかなか根付かないという理由もあるのだが、
もう一つは在留邦人のほとんどが日系企業関係者であることから開発問題と絡む微妙な問題は取り上
げられづらい雰囲気があることも挙げられていた。
また、事前学習の中ではほとんど触れられていなかったことであるが、現地に行って分かったこと
として学生が挙げていたことは、交通・運搬手段としての原動機付き自転車(以下、原付)の普及で
あって、自転車から原付への転換が想像以上に速かったことである(というよりも、事前学習で入手
できた資料の多くが古く、原付に合わせて自転車がまだ主要な交通手段であったものが多かったため
かもしれないが)。学生の観察によると、原付の大部分が日本製の中古品(一部韓国の品)であること、
200
二人乗りどころか、三人・四人乗りも普通の状況、器用
なベトナム人は修理・メンテナンスにあたって同一メー
カーの部品にこだわらず複数のメーカーの部品を使っ
て改造しているために排気ガスも基準値による規制が
無いように感じられること等であった。
規制の有無については確認をすることができなかっ
たが、実際に原付の普及が著しい都市部での排気ガスに
よるスモッグは問題化しており、学生が敏感に感じ取っ
たように、今後の車の普及に伴っての環境への影響についても考慮しなければならない状況になって
いる。
(C)ベトナムでの自然体験を通じた環境への関心:事前学習においては、主な対象となるハロン湾の現
況について学習を実施した。1994 年に世界遺産登録基準において自然的・文化的価値を満たすものと
して世界遺産へ登録されたこと、桂林から続く石灰岩台地であり、これが沈降・浸食してできたもの
であること等の地学的観点からの学習が中心であった。
学生はハロン湾での自然体験(鍾乳洞や景勝地の見学、カヌー体験等)を通じて自然の美しさや価
値を十分に体験する一方で、観光地と
しての性格が強くなっている点(例え
ば、鍾乳洞での見学において、自然の
美しさそのものを目玉とするのでは
なく、ライトアップの美しさ目玉とな
っている点など)について危惧を表明
しており、自然遺産の指定による観光
客の増加が必ずしも自然保護に通じるわけではないという問題点について議論を行っていた。
(D)ベトナム文化と環境の関係:事前学習ではあまり指摘されなかった部分であったが、ベトナム民族
学博物館、水上人形劇場(収穫祭に演じられる伝統的な民族劇)等のベトナムの文化に関わる施設の
訪問・見学の中から事後学習の中で出された論点であった。
これらの施設の見学を通じて、学生達からは、多民族国家であるベトナムは様々な民族文化が存在
しており、これらがそれぞれの住む地域の自然や社会のあり方を反映した知恵の結晶であること、か
つての日本と同様に米を中心とした農業国家であったこと等から、わが国の農耕や自然の利用での共
通点の比較などができて、ESD にかかわる事前学習にはなかった新しい観点についても事後学習で話
し合われた。
ベトナムそしてふりかえってはわが国の伝統的な自然との共存・依存関係について新たに学びたい
との声も見られた。
(E)これらの議論は、現地調査後に数回にわたって行われた参加学生による検討会で出されたものであ
ったが、この論点は同時期に開設されていた「総合演習」の中でも参加学生によって取り上げられて、
教材の一部とされたり、論点を深めたりする原動力ともなった。
特に、同演習のテーマにかかわって取り上げられていた UNFCCC での先進国と発展途上国との基
本的対立点である「開発」と「環境」の問題についてみるならば、それを現時点における対立的論点
201
としてみるのではなく(現時点の論点としてのみ見た場合には、発展途上国は自然環境を尊重しない
「身勝手な国」としてとらえられることが多い)
、ベトナムの歴史をモデルとして欧米や日本による植
民地化による収奪の歴史が国際格差を生み出しているという論点にも結びついて、対立の構造を立体
的にとらえる事に貢献した。
(4) 学生教育における効果
本事業は、ベトナムの現地調査を中核とするものの、事前・事後学習の担当教員による指導を通じて、
環境問題の社会的・経済的側面についての視点を広げることを中心に企画された事業である(その詳細に
ついては、「
(3)結果」の「3)事後学習について」を参照)。
これを総括的に述べるならば、以下の点について効果があったと言える。
①
地域事例の調査を通じて、持続可能性の重要性を理解する。
②
ベトナム戦争での環境破壊の事例を調査することを通じて、リオ宣言にいう「平和、開発と環境保
全の相互依存性」を理解する。
③
環境の文化的・社会的背景に注目して ESD の重要性を理解する。
しかしながら一方で、事後学習については教員側の強いイニシアティブにおいて実施されたもので、こ
のことから考えると、必ずしも自然に対する価値や ESD の重要性が学生に内面化されたとは言えず、この
点で課題を残したと言える。
また、事後学習で出てきた様々な疑問や論点について、授業科目である「総合演習」につながった点で
は評価できるものの、これから漏れた論点については発展的な検討が成されていない。
総じて調査旅行を動機とする事前学習との結びつきはよいものの、ふりかえり作業を中心とする事後学
習のあり方については再考する必要があると考える。
202
5. シンポジウム・フォーラムの開催
5.1. 国内シンポジウム
5.1.1. 現代 GP シンポジウム:
「持続可能な社会への環境教育(ESD)-地域から世界へ広がる環-」
○神田
房行(釧路校教授)
・生方 秀紀(釧路校教授)
他当 GP 関係教員
事業期間
平成 19 年度
実施時期
平成 20 年2月 16 日
実施場所
釧路校小ホール
(1) 背景と目的
ESD とは Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)の頭文字をとったも
のである。そもそもは 1992 年リオデジャネイロで開催された地球サミットで合意された持続可能な開発
(Sustainable Development)の考え方に基づくものである。Development を開発と訳すか、発展と訳すか
は議論のあるところであるが、いずれにしてもこの地球環境を将来的にも維持していくことが我々人間社
会が持続するために必要である。更に 2002 年のヨハネスブルグサミットで日本が「ESD の 10 年(持続可
能な開発のための教育の 10 年)」を提言、同年の第 57 回国連総会本会議で「ESD の 10 年」が採択された。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)がその主導機関として国連総会で指名された。この決定を受けて 2003
年、ユネスコより「ESD の 10 年国際実施計画 2005~2014」の草案が発表され、2005 年から実施計画がス
タートしている。
アジアでもユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が「ESD の 10 年」の開始に伴い、ESD をアジア地域
で推進する上で、有効な実践例となるように「ACCU-UNESCO アジア太平洋地域 ESD 事業」を計画した。こ
の事業は、日本政府がユネスコに拠出する ESD 信託基金の助成のもとに実施されている。
ESD を進めていくためには環境ばかりでなく、平和、識字、開発、ジェンダーなど幅広いテーマで市民
への啓発活動を展開していくことが必要であるということが認識されている。我が国は「ESD の 10 年」を
そもそも提案した立場上、国内、国外の ESD の取り組み、特に教育との関わりでの取り組みを推進する上
で、世界での取り組みのイニシアチブを取っていくことが求められている。このようなこともあって、文
部科学省は「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代 GP)」の一つとして 2006 年度から ESD 推進のた
めに「持続可能な社会につながる環境教育推進」プロジェクトの選定を開始した。
北海道教育大学では 2007 年度に「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス-東北海道発 ESD プラン
ナー養成・認証プロジェクト-」が現代 GP に採択され、釧路校が核となってプロジェクトを推進している。
このプロジェクトの事業の一つとして今回の本学主催のシンポジウム『持続可能な社会への環境教育(ESD)
-地域から世界へ広がる環-』を開催することになった。このシンポジウムを契機にして「持続可能な開
発のための教育(ESD)」について、学生、教職員、地域住民の皆さんの理解が深まり、本学の ESD の取り
組みに協力していただけることを期待している。
(2)方法および内容
北海道釧路支庁及び釧路市の後援を得て、本学教職員、学生のほか、釧路市議会議員、地方公共団体職
203
員、公立学校教員、一般市民等、約 40 名が参加した。
開催要項
【開催日時】2008 年 2 月 16 日(土) 10:00~17:00
【会場】北海道教育大学釧路校・福利厚生施設小ホール(入場無料) (釧路市城山 1-15-55)
【プログラム】
10:00~10:10 主催者挨拶 北海道教育大学副学長(釧路校担当)佐々木 巽
10:10~10:40 『持続可能な社会を追求する地域人材 ESD プランナーの養成』
生方 秀紀(北海道教育大学・教授)
10:40~11:10 『持続可能な社会とは何か』 阿部 治(立教大学・教授)
11:10~11:25 休憩
11:25~11:55 『持続可能な社会構築にむけた「知の獲得」のあり方』
佐藤
真久(武蔵工業大学・講師)
11:55~13:00 昼食休憩
13:00~13:30 『持続可能な観光を通した地域づくりとしての ESD の可能性』
大島 順子(琉球大学・准教授)
13:30~14:00 『発展途上国の教育と開発-サブサハラは持続可能か-』
大津
和子(北海道教育大学・教授)
14:00~14:15 休憩
14:15~14:45 『子どもにとって環境教育とは何か』 大森 享(北海道教育大学・准教授)
15:00~17:00 【パネルディスカッション】
パネリスト 阿部 治、佐藤真久、大島順子、大津和子、大森 享、生方 秀紀
コメンテーター 横井 彩(ユネスコ・バンコク事務所)
コーディネーター 神田房行(北海道教育大学・教授)
【主催】北海道教育大学
【後援】北海道釧路支庁 釧路市
【問い合わせ先】シンポジウム実行委員長 神田房行(Tel. 0154-44-3335)
【開催案内ポスター】http://ckk.kus.hokkyodai.ac.jp/GP/ESD.Symp.Kus.080216.pdf
(3)結
果
講演では、6名の講師から、「持続可能な社会を追
求する地域人材 ESD プランナーの養成」
(生方秀紀 北
海道教育大学・教授)、
「持続可能な社会とは何か」
(阿
部治立教大学・教授)「持続可能な社会構築にむけた
「知の獲得」のあり方」
(佐藤真久 武蔵工業大学・講
師)
「持続可能な観光を通した地域づくりとしての ESD
の可能性」(大島順子 琉球大学・准教授)「発展途上
国の教育と開発-サブサハラを事例として-」(大津
和子 北海道教育大学・教授)
「子どもにとって環境教
育とは何か」(大森 享 北海道教育大学・准教授)研
究成果等の発表があった。
204
講演する佐藤氏
パネルディスカッションでは、ユネスコ・バンコ
ク事務所のアソシエート・エキスパートである横井
彩氏から、ユネスコのアジアにおける活動や ESD へ
の取組等の説明の後、
「ESD(持続可能な開発のための
教育)」をテーマとして、神田房行氏(北海道教育大
学・教授)の司会により講演講師がパネリストとな
り、活発な意見交換を行い、参加者からも質問や感
想が多数寄せられた。
北海道教育大学釧路校では、今後も、
「持続可能な
社会実現への地域融合キャンパス」として、環境教
パネラーの大島氏(左)と阿部氏(右)
育を基本とし、教科融合型の実践的カリキュラムの
構築と実践をとおして、自然と共生する持続可能な
地域社会を実現するために積極的に活動し、地域と
連携できる人材の育成と自然再生、地域社会の活性
化に貢献する事業を積極的に行っていくことが確認
された。
(4)本シンポジウムの成果
本シンポジウムでは招聘講師2名による持続可能
な社会(あるいは持続可能な開発=SD)の概念の成
パネラーの大森氏(左)
、生方氏(中央)、
立と運用の経緯、ESD(持続可能な開発)の理論的枠
大津氏(右)
組みが丁寧に解説され、参加した教員、学生、市民
が SD や ESD について理解を深める絶好の機会となっ
た。また、もう1名の招聘講師および3名の本学教員による、小学校、大学、地域社会、途上国における
ESD の実践について詳細な報告がなされ、参加者は ESD がどうあるべきかについての具体的なイメージを
抱くことができた。最後のパネルディスカッションでは、冒頭にコメンテーターにより、ユネスコによる
アジア地域での ESD 活動推進の方針や現状が説明され、ついで実行委員長の司会のもと、SD や ESD の日本
語訳をめぐって開発という概念をどう捉えるかについての議論や ESD における高等教育の役割と期待など
についての意見交換がなされた。このほか、フロアからも活発な質問や意見が出された。全体を通して参
加者に対して多くの知見や考え方が提供され、有意義なシンポジウムの幕が閉じられた。
本シンポジウムの講演、パネルディスカッションのすべてを収録した、シンポジウム報告書(約100
頁)が 2008 年3月末日に発行されている(残部僅少)。
205
5.1.2. 地域づくりは人づくり-持続可能な社会をめざして-
○田丸
典彦
(釧路校教授)
他当 GP 関係教員
事業期間
平成 21 年度
実施時期 平成 21 年 11 月3日
実施場所 釧路市生涯学習センター(まなぼっと)多目的ホー
(1)背景と目的
本シンポジウムは、釧路校の現代 GP 採択事業の「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス」の一環
として『地域づくりは人づくりー持続可能な社会をめざしてー』をテーマとして企画された。
現代日本は、地方社会に限界集落と表現されるような極端な過疎地域を多数出現させ、医療、福祉、教
育など様々な面で都市部との格差が大きく進行している。地域社会は、生活する上で都会の利便性に劣る
が、一方、自然環境に恵まれた穏やかな生活があり、北海道教育大学釧路校の学生の多くは、このような
過疎地域の教育の担い手として巣立ってゆく。本シンポジウムは、本学の学生たちが、現代日本社会の中
の地域を主体的に捉え、地域教員としての将来構想を展望する際に、有用な指針を提供する目的で開催さ
れた。
(2)方法および内容
1)テーマを深めるため、一般市民も参加可能な公開シンポジウムをとし、学生、パネラー、市民によ
る論議を期待した。
2)開催日は市民が参加しやすい祝日(11 月 3 日文化の日)の午後、会場は釧路市生涯学習センター(ま
なぼっと)多目的ホールとした。
3)当日の時間配分と講演者
13:10-14:20
基調講演 内山 節氏(哲学者)
14:20-15:20
シンポジウム
話題提供
コーディネーター
山道
省三(NPO 法人全国水環境交流会代表理事)
吉野
了嗣(学校法人九州自然学園事務長)
小林
友幸(NPO 地域健康づくり支援会ワンツースリー理事)
田丸
典彦(北海道教育大学釧路校教授)
15:20-15:50
健康づくりの実演披露(NPO 地域健康づくり支援会ワンツースリー)
15:50-16:50
質疑・総合討論(内山氏も参加)
(3)結
果
1) 参加者
100 名以上の参加者(70 名以上の学生と 30 名以上の市民)があった。
2)基調講演とシンポジウム
著名な思想家として知られている内山節氏による基調講演は、氏が永年にわたって農村山村で人々と暮
206
らしを共にする中で培ってきた思考を中心に、フランスなどの
外国の地域社会の現状も含めて話された。シンポジウムテーマ
である、持続可能な地域社会を考える上で、極めて多くの示唆
と指針が提供された。
公開シンポジウの話題提供者の 3 名は、いずれも地域の人々
と様々な活動に携わっており、山道氏は、川を通した自然と地
域住民の活動を、吉野氏は、学校作りを通して教育と地域社会
の関わりを、小林氏は、健康作りを通して地域の人々の生き方
について話題提供をしてもらい、これらをもと会場の学生や来
内山節氏の基調講演
場した市民、パネラーとともに、地域における人と人とのかか
わりや持続可能な社会の有りようについて論議を深めた。
3)健康づくりの実演
健康づくりの実演は、NPO 地域
健康づくり支援会ワンツースリ
ーの会員の導きで、用具「ふま
ねっと」を用い、会場の多くの
参加者を交えて楽しく行なわれ
た。
市民も参加した会場風景
健康づくり実演
(4)学生教育における効果
今日のシンポジウムを通して、地域の自然や人が私たちに感動や癒し、連帯感を与えてくれるというこ
とへの確信が強められた。また、地域に住む人々が手を携えて共に課題に取り組んでいくならば、心身と
も充実した豊かな地域社会が実現していくと期待できる。釧路校の多くの学生は、将来小中学校の教員と
なって、地域社会の学校現場に赴く。内山氏の基調講演から、学生達は現代社会で大きく変容してゆく地
域社会を主体的にとらえることの大切さを学び、卒業後に地域社会の担い手となる上での貴重な指針を得
たと考える。また、パネラー3 名からはいずれも地域社会をしっかり見据えた活動が紹介された。これら
についての学生達の質問は、地域での具体的な活動方法を尋ねたものが多かった。都会と異なり、地域に
はそこで生活している人々と結びついた実に様々な活動があり、学生達は、将来そのような所に赴任する
際の有用な知見が得られたと言える。
207
5.2.国際シンポジウム
5.2.1. 持続可能な未来をつくる環境教育
~グローバルな視野と地域での実践~
○神田
房行(釧路校教授)
・生方 秀紀(釧路校教授)
他当 GP 関係教員
事業期間
平成 20 年度
実施時期
平成 20 年7月9日
実施場所
釧路市観光国際交流センター
(1) 背景と目的
ESD(持続可能な開発のための教育)とは Education for Sustainable Development の頭文字をと
ったものです。従来の環境教育(Environmental Education)の考え方は ESD に変わろうとしている。この
地球環境を将来的にも維持していくことが我々人間社会を持続するために必要であるということである。
2002 年のヨ ハ ネ ス ブ ル グ サ ミ ッ ト で 日 本 が 中 心 と な っ て 「 ESD の 10 年 ( DESD 持 続 可 能 な 開 発
の た め の 教 育 の 10 年 )」を 提 言 、同 年 の 第 57 回 国 連 総 会 本 会 議 で「 ESD の 10 年 」が 採 択 さ れ
た 。2003 年 、ユ ネ ス コ よ り「 ESD の 10 年 国 際 実 施 計 画 2005~ 2014」の 草 案 が 発 表 さ れ 、2005
年 か ら 実 施 計 画 が ス タ ー ト し て い る。
ア ジ ア で も ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)による「ACCU-UNESCO アジア太平洋地域 ESD 事業」
が、日本政府がユネスコに拠出する ESD 信託基金の助成のもとで、実施されている。今 や 日 本 が ESD の
イニシアチブを取って世界をリードしていると言っても過言ではない。
ESD を進めていくためには環境ばかりでなく、平和、識字、開発、ジェンダーなど幅広いテーマで市民
への啓発活動を展開していくことが必要である。我が国は「ESD の 10 年」を提案した立場で、国内、国外
の ESD の取り組み、特に教育との関わりでの取り組みを推進している。
北海道教育大学では 2007 年度に「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス-東北海道発 ESD プラン
ナー養成・認証プロジェクト-」が現代 GP に採択され、釧路校が核となってプロジェクトを推進している。
このプロジェクトの事業の一つとして 2008 年2月に国内シンポジウム『持続可能な社会への環境教育
(ESD)-地域から世界へ広がる環-』を開催した。そして今回、地球サミットが北海道で開催される機会
を生かして国際シンポジウム『持続可能な未来をつくる環境教育~グローバルな視野と地域での実践~
Environmental Education toward Sustainable Future: Global Perspective and Local Action』を釧路
で開催することになった。このシンポジウムを契機にして「持続可能な開発のための教育(ESD)」につい
て、学生、教職員、地域住民の皆さんの理解が深まり、本学の ESD の取り組みが実り多いものになること
を期待している。
(2)方法と内容
このシンポジウムは北海道教育大学が主催し、環境省北海道地方環境事務所、北海道、北海道教育庁釧
路教育局、釧路市、釧路市教育委員会、北海道新聞社、釧路新聞社、NHK 釧路放送局、FM 釧路の後援を
受けておこなわれた。ゲスト講師として、アメリカのアラスカ大学からレイ・バーンハート・教授、オー
ストラリアのモナッシュ大学からフィリップ・ペイン准教授、埼玉大学から曽貧(ソウ・ヒン)講師(非
常勤)、東京農工大学から朝岡幸彦・准教授の計4名が招かれ、会場には本学教職員、学生のほか、公立学
208
校教員、NPO 法人職員、一般市民等約 150 名がつめかけた。
また、このシンポジウムのサテライトセッションが、7 月 5 日、6 日の両日に北海道教育大学札幌キャン
パスで開催された「グローカル環境教育国際会議 2008」の中で実施された。
7 月 9 日のシンポジウムでは、佐々木巽副学長(釧路校担当)の開会挨拶に引き続いて、5題の基調講
演とゲスト講師をパネラーとしたパネルディスカッションが行われ、ロビーではポスターセッションも行
われた。
最初の基調講演「地球環境の危機と環境教育の必要性」では、
本学釧路校教授・神田房行氏が様々な地球環境問題を取り上げ、
環境教育の必要性と環境教育の考え方がリオデジャネイロの地球
サミットを契機として ESD(持続可能な開発のための教育)に変
わってきたことを紹介した。
基調講演の2番目、フィリップ・ペイン氏の講演「教育改革に
向けた社会生態学の‘偉大な道徳的挑戦’」では、現代オーストラ
リア社会における若い世代の環境意識が低下していること、いか
にエコ教育を進めるか、そのための社会や政治の関わりについて
センセーショナルなマスコミの記事などを紹介しながら報告され
た。
開会挨拶をする佐々木巽副学長
(当時)。
基調講演の3番目、レイ・バーンハート氏の講演「地域に根ざ
した教育とアラスカ先住民の知恵」では、環境教育におけるアラ
スカ先住民の生活の知恵や伝統的文化から我々が学ぶべきものが
大変多いことが示された。
基調講演の4番目、曽貧氏の講演「グローバル経済、環境問題
そして中国の環境教育」では、現代中国で起きている環境問題や
社会階層の現状、環境問題解決のための中国の国内外の事情など
について説明がなされた。
基調講演の最後、朝岡幸彦氏の講演「持続可能な社会のための
環境社会教育」では、環境教育や ESD について、教育学の視点か
北海道教育大学の神田房行氏の
らの考察が報告された。
講演。
パネルディスカッションは、神田房行氏の司会のもと、環境教
育を通して持続可能な未来をつくるために、私たちがこれから何
をすべきかが各パネラーの見解を丁寧に結び合わせながら討論さ
れた。その中で自然との共生の大切さや、現代社会における環境
教育の問題点と課題について、活発な意見交換が行われ、参加者
からも質問や感想が多数寄せられた。パネルディスカッションで
は、文化や民族の違いがある中で、環境教育を進める人々がコミ
ュニケーションを図りながら共通理解を導き出すことの大切さを
会場全体で確認することができた。
モナシュ大学のフィリップ・ペイ
ポスターセッションでは、本学学生や NPO 法人等から 20 点以
上のポスター発表が行われ、積極的な問題提起や活動の報告が行
われ、ゲスト講演講師がポスター発表者に質問する場面も見られ
る等、環境に対する課題を共有する意味でも大変有意義であった。
209
ン氏の講演
(3)シンポジウムの成果
本シンポジウムを通して、グローバルな環境問題と持続可能性、
ESD における地域での取り組みの重要性などに関して様々な視
点からの論点が提起され、学生・市民をはじめ参加者の環境教育
や ESD に対する視野の拡大や考え方の深化の役に立ったと思わ
れる。
今後は、ESD についての数々のアイデアや世界各地での取組み
の内容を学生教育や一般市民を含む ESD プランナー養成の中に
アラスカ大学のレイ・バーンハート
組みこんで、自然と共生する持続可能な地域社会を実現するため
氏の講演。
に積極的に活動し、地域と連携できる人材の育成と自然再生、地
域社会の活性化に貢献する人材を養成していくほか、シンポジウ
ム報告書を各方面へ配布して ESD の普及に貢献するなどして、こ
のシンポジウムの成果を GP 事業に反映させていく。
埼玉大学の曽貧氏の講演。
東京農工大学の朝岡幸彦氏の講演。
活発に意見が交換されたパネルディス
ポスターセッションでも賑やかな
カッション。
研究教育活動の交流が行われた。
210
5.3. 地域フォーラムの開催
5.3.1. ユネスコ・スクール・フォーラム in 釧路
○川﨑 惣一(釧路校准教授)
神田房行(釧路校教授)
・生方
秀紀(釧路校教授)・他関連教員
事業期間
平成21年度
実施時期
平成 21 年 11 月 21 日
実施場所
釧路市生涯学習センター(まなぼっと)801 会議室
(1)背景と目的
本フォーラムは、宮城教育大学を中心として昨年度設立された「ユネスコ・スクール支援大学間ネット
ワーク(ASPUnivNet)」が申請し採択された、「日本/ユネスコ
パートナーシップ事業」企画案に基づい
て開催される。この事業は、上記のネットワークの連携強化および加盟大学をハブとするユネスコ・スク
ール地域拠点の形成を目的としている。
こうした趣旨にもとづき、本フォーラムでは、釧路地域における教育・学校関係者や市民の方々に、ユ
ネスコ・スクールに関する情報提供を行い、全国の加盟校の活動・取り組みを紹介する。このことを通し
て、釧路の学校教育においてユネスコの理念に基づいた国際理解教育や環境教育、ESD(持続可能な開発の
ための教育)を充実させるとともに、釧路でのユネスコ・スクール加盟校を増やし、釧路でのユネスコ活
動および ESD の実践を活発にする。
(2)方法と内容
今回のフォーラムは、北海道教育大学釧路校 ESD
推進センター主催、ユネスコ・スクール支援大学間
ネットワーク(ASPUnivNet)共催という形で開催さ
れた。このほか、北海道教育委員会、釧路市教育委
員会、北海道ユネスコ連絡協議会、釧路ユネスコ協
会、さらに北海道教育大学現代 GP「持続可能な社
会実現への地域融合キャンパス」の後援を受けた。
プログラム
午後1時~
主催者挨拶
蛭田
※
眞一
北海道教育大学副学長(釧路校担当)
当日は入学試験日のため、中村太一(北海道教育大学釧路校准教授)が代理
来賓挨拶
千葉
誠一氏
(釧路市教育委員会
211
教育長)
山田
※
和弘氏
(釧路ユネスコ協会
会長)
当日は体調不良のため、田丸典彦氏(北海道教育大学釧路校教授)が代理
開催者挨拶
生方
秀紀
(北海道教育大学釧路校 ESD 推進センター長)
基調講演 「持続発展教育(ESD)とユネスコ・スクールの活用について」
豊嶋
美穂子氏(文部科学省国際統括官付ユネスコ第二係
午後2時~
フォーラム
司会:川﨑
係長)
惣一(北海道教育大学釧路校准教授)
国際理解教育の実践(開発教育にかかわる教材作成のための材料提供)
戸松
栄氏
(釧路市立山花小中学校校長)
ユネスコ・スクール加盟校からの実践報告(1)
廣瀬
修也氏
(東京都江東区立東雲小学校)
ユネスコ・スクール加盟校からの実践報告(2)
堀井
良徳氏
(富山市立中央小学校)
ユネスコ・スクール加盟校からの実践報告(3)
岩槻
仁氏
(気仙沼市立面瀬小学校)
菊田
斉氏
(気仙沼市立大島中学校)
午後5時
神田
閉会の挨拶
房行
(北海道教育大学釧路校教授
本フォーラム実行委員長)
(3)フォーラムの成果
当日は釧路市内の小・中・高等学校の教員の方々、釧路ユネスコ協会会員および市民の皆様、本学学
生のほか、全国の大学関係者にご参加いただき、総勢約 40 名の参加者を集めました。文部科学省の豊嶋氏
から、ESD(持続発展教育)およびユネスコ・スクールの概略と、日本のこれまでの取り組みが紹介された
あと、全国から集まっていただいた学校教員の皆様から ESD に関する先進的な取り組みが紹介され、活発
な質疑応答がなされるなど、非常に有意義なフォーラムとなった。
(今回のフォーラムの詳細な記録につい
ては、別に刊行された報告書に掲載されている。)
北海道にはユネスコ・スクール加盟校がまだなく(2009 年 11 月現在で申請中が 4 校)、釧路でのユネス
コ・スクールの知名度についてもまだまだこれからという段階であるが、今回のフォーラムを一つのきっ
かけとして、釧路地域での ESD(持続発展教育)の実践をいっそう活発化させるとともに、多くの学校に、
ユネスコ・スクールへの加盟を申請することで教育内容の充実をはかっていただければと切に願っている。
212
豊嶋美穂子氏
戸松
廣瀬修也氏
堀井良徳氏
岩槻
菊田
仁氏
213
栄氏
斉氏
6. シンポジウム・フォーラムでの発表
6.1. GP合同フォーラムへの参加
○生方
大森
秀紀(釧路校教授)
享(釧路校准教授)・神田 房行(釧路校教授)
事業期間
平成 19、21 年度
事業期間
①平成 20 年2月9日~10 日
②平成 22 年1月8日
実施場所
①横浜市、パシフィコ横浜
②東京ビッグサイト
(1)背景と目的
釧路校の現代 GP の取り組みをポスター発表およびチラシの配布により報告するとともに、他大学の取
り組みについても情報を収集する。
(2)方
法
①2008 年2月9日~10 日に横浜市、パシフィコ横浜で開催された平成 19 年度「大学教育改革プログラ
ム合同フォーラム」
(文部科学省と(財)文教協会の主催)のポスターセッションに、当 GP プロジェクト
として出展し、活動内容を多くの参加者に紹介した。
②2010 年 1 月 7~8 日に東京ビッグサイトで開催された平成 21 年度「大学教育改革プログラム合同フ
ォーラム」
(文部科学省と(財)文教協会の主催)のポスターセッションに、当 GP プロジェクトとして出
展し、活動内容を多くの参加者に紹介した。
平成 22 年 1 月の大学教育改革プログラム合同フォーラム」
。左と中の写真が当 GP のブース。
(3)学生教育における効果
他大学の GP の取り組みについてのポスター発表を聞き、また資料を収集することで、これら他大学の
取り組みのうち、本学の学生にとって有益な事項を参考にしたり、取り入れることができた。
214
6.2. HESD フォーラムへの参加・発表
○生方
北澤
秀紀(釧路校教授)
一利(釧路校准教授)
事業期間
平成20年度
実施時期
2008 年 12 月 12、13 日
実施場所
東京ビッグサイト東展示場内会議室
立教大学池袋キャンパス太刀川記念館
(1)背景と目的
このフォーラムの目的は、高等教育機関の ESD 推進への取り組みを報告し紹介し情報の共有をはかるこ
とにあり、大学における ESD カリキュラムの制度化や資格認証制度、そして大学間の連携の在り方につい
て基調講演とパネルディスカッションが行われた。
(2)報
告
2008 年 12 月 13 日に立教大学池袋キャンパス太刀川記念館で開催された「HESD フォーラム 2008」に
本学のほかに17大学が取り組みについて発表した。本学からは釧路校 ESD 推進センターの生方センター
長と北澤センター員が参加して、本 GP の取り組みについて発表した。
*第 1 日:12 月 12 日(金)
*於、エコプロダクツ 2008(東京ビッグサイト東展示場内会議室)
・HESD 会議「大学教育から発信する ESD(仮)」
14:00~16:00
…広く一般の参加者を迎えて HESD の活動をアピールする目的で開催
①大学の役割をアピールする講演
②大学によるパネルディスカッション
・エコプロダクツ 2008 への出展
10:00~18:00(終日)
*第 2 日:12 月 13 日(土)
*於、立教大学池袋キャンパス太刀川記念館3F多目的ホール
・記念講演会「(講演会タイトル未定)」
10:00~11:30
…講師:デイヴィッド・セルビー氏
(英国;プリマス大学持続可能な未来センター〈CSF〉センター長)
・2008HESD フォーラム
12:30~18:30
…国連機関や省庁、各大学からの報告、質疑応答、討論
・交流会
(3)学生教育における効果
このフォーラムに参加したことで、釧路校の取り組みの国内における位置づけが明確となり、他大学と
の連携の方向が明確になった。
215
6.3. エコプロダクツ 2008 への出展
○生方
北澤
秀紀(釧路校教授)
一利(釧路校准教授)
事業期間
平成20年度
実施時期
2008 年 12 月 11~13 日
実施場所
東京ビッグサイト
(1)背景と目的
「地球と私のためのエコスタイルフェア
エコプロダクツ 2008」の会場の、NPO・NGO/大学・教育
機関コーナーの一画に、各大学の ESD 推進事業をPRする目的で「ESD スペース」が設けられた。環境
問題に携わる幅広い分野の方々が集合する(昨年は 3 日間で 16 万人入場)環境総合展示会で当GPの活動
および ESD 推進センターの活動について報告を行うことで、本学の社会への貢献の一端を知ってもらう良
い機会となる。
(2)報 告
当GP取組担当者である生方と、
「ふまねっと」の開発者である北澤の2名の教員が出展し、見学者に対
して「ふまねっと」の実演を含むプレゼンテーションを行い、本取組の成果および釧路校 ESD 推進センタ
ーの活動方針等を発表した。
当GPのブース。写真中は、「ふまねっと」の体験コーナー。
このイベントには、17 万人もの企業、団体、行政、教育関係者、一般市民、学生・生徒が訪れた。釧路
校のブースにも人並みが途絶えることなく、用意した資料(センター紹介チラシ、GP 紹介チラシ、ESD
国内シンポ字有無報告書、ESD プランナー紹介パンフレットなど)が次々と配布することができた。それ
だけでなく、釧路校の学生・教員と地域 NPO「地域健康づくり支援会 ワンツースリー」との連携による
地域教育の実践紹介ビデオ放映と、この実践から生まれた心身の健康増進用器具「ふまねっと」の実演も
行い、注目を集めた。参加者の質問や、他のブースの見学から ESD・環境教育について多くのことを得る
ことができた。
(3)学生教育における効果
本取り組みについて発表し、来訪者に強い関心を持ってもらえたことは、われわれ教員の学生への教育
活動に対する自信を与えるものであった。また、他の大学の取り組みや企業・NPO による環境への取り組
みについて見て歩き、資料を収集することができたのは、今後の本学における環境教育の内容の充実に資
することができる。
216
7. 現代 GP 成果図書の刊行
○生方
神田
秀紀(釧路校教授)
房行(釧路校教授)・大森 享(釧路校准教授)
事業期間
例:平成 21 年度
実施時期
平成 22 年3月(全国販売は4月から)
実施場所
ミネルヴァ書房
(1)背景と目的
地球規模の自然環境の破壊、埋蔵資源の低減、平和や人権の蹂躙、飢餓や不衛生、経済格差の拡大とい
った様々な問題がのしかかる中で、今世紀に入ってから「持続可能な開発」、「サステイナビリティー」と
いった言葉が頻繁に目につくようになった。
「持続可能な開発」という概念は、1987 年に国連のブルント
ラント委員会の報告書『Our Common Future』(邦題:『地球の未来を守るために』)の中で、「将来世代のニ
ーズを満たしつつ、現在の世代のニーズも満足させる開発」と定義されて以来、環境と開発とを対立概念
としてではなく、車の両輪のように調和させていく人類社会の進み方として、世界各国の人々に提案され、
浸透していったものである。この「持続可能な開発」を、人間の考え方や行動を変え、高めていくことを
通して追求する教育が「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development:ESD)
である。
ESD は、自然環境と平和で安定し、心身ともに健康な生活が維持される未来社会、すなわち「持続可能
な社会」を実現させるための教育であるといえる。これは、従来個別的に行われてきた環境教育・開発教
育・人権教育・福祉教育・平和教育・国際理解教育などを融合させながら一体として展開していく、ホリ
スティック(全体的)なスコープのもとで行われる、実践重視の教育思潮であり、教育方法論である。2002
年のヨハネスブルクでの地球サミットにおいて日本が提案した「国連持続可能な開発のための 10 年」
(DESD)は、同年の国連総会で採択され、2005 年から実施されている。今、DESD は丁度折り返し点の5年
目に来ている。しかしながら、ESD という言葉とその意味は、一般市民はもとより、日本の学校や教育行
政関係者、さらには教育人材を養成する場でもある大学の教員、大学院生、学生にも十分浸透していると
はいえない。
本書は、教育に関心を持つ人々、とりわけ教育研究者・大学生・大学院生・学校教員・関連 NPO 関係者
に、ESD がどのような経緯で構想されてきたのか、どのような内容・方法で行われるものなのか、そして
最終的にどのような世界をめざしていくのか等について知っていただくことを目的に企画し、出版する。
本書は ESD の理論の全体像を明らかにするだけでなく、学校や地域における ESD(環境教育を含む)の実
践のあり方についても提案している。いたずらに学校や地域レベルの教育活動で直接グローバルな問題の
解決に立ち向かおうとしても無理があり、また学習者における当事者性や自己効力感の欠如という結果を
もたらすであろう。地域で実現可能な、いや地域だからこそ実現できる ESD があるはずである。それは、
グローバルな視野をもちながらも、学習者が地域社会の中で現実の課題に対して当事者性を持ち、互いに
連携しながら解決への実践を進めることで、持続可能な未来社会を創っていくというものである。このよ
うな観点から、学校教育およびインフォーマル教育が地域づくり、未来づくりに果たす役割をも様々な角
度から浮き彫りにする。
217
(2)構想・編集
生方秀紀(代表)・神田房行・大森享の3名が編集を担当し、全体の構想、執筆依頼、出版社との交渉、
原稿の校閲、校正、出版社との諸連絡を行った。 本書は、文部科学省の 2007 年度「現代的教育ニーズ取
組支援プログラム(現代 GP)」に採択された大学教育改善プロジェクト(北海道教育大学)
「持続可能な社
会実現への地域融合キャンパス-東北海道発 ESD プランナー養成・認証プロジェクト-」のもとで開催さ
れた、3つの ESD 公開シンポジウムの基調講演の講師に、本書の企画に沿った内容の原稿を寄稿してもら
い制作した。11章担当のミシェル・サトウ教授(ブラジル)は、個人的な都合で本 GP が招待したシンポ
ジウムには参加できなかったが、シンポジウムで講演する予定であった大変新奇性の高いテーマについて
書き下ろしてくれた。また、本書にはいくつかの「コラム」を挿入したが、そこでは本 GP のもとで行われ
た国内外での ESD 実地調査の際に現地で肌に感じ、考えたことが主に紹介されている。これらの現実の断
面を手がかりに、読者のが ESD について考える一助になればと願った。
(3)出
版
以下の書誌データのとおり、京都市のミネルヴァ書房から刊行した。
生方秀紀・神田房行・大森享(編著)
『ESD をつくる-地域でひらく未来への教育』
233 頁。ミネルヴァ書房。2010 年4月発行。2800 円+税。
ISBN978-4-623-05766-5。
(4)内容(目次)
・ はしがき
(生方秀紀)
・ 第1章 ESD(持続可能な開発のための教育)とは何か (阿部治)
・ 第2章
ESD における「知の構築」のあり方――「持続可能性」・「開発」・「教育」を橋渡しする
開発コミュニケーションに焦点をおいて(佐藤真久)
・ 第3章
環境教育概念の進化
・ 第4章
学校環境教育における子どもの人格形成と教師の力量形成――協同的活動主体形成と教師
の指導
(神田房行)
(大森享)
・ 第5章
地域の教育力としての〈ローカルな知〉(朝岡幸彦)
・ 第6章
持続可能な観光を築く地域における教育のあり方
218
(大島順子)
・ 第7章
地域教育力を活かした ESD 人材育成
(生方秀紀)
・ 第8章
サブサハラにおける持続可能な開発と教育
・ 第9章
地域に根ざした教育とアラスカ先住民の知恵
(大津和子)
(レイ・バーンハート)
・ 第 10 章
環境教育における時間と場所の概念――スロー教育のすすめ(フィリップ・ペイン)
・ 第 11 章
アートと環境教育
・ コラム
(4)配
(ミシェル・サトウ/ルイーズ・アウグスト・パソス)
(生方秀紀、大森享、神田房行、川﨑惣一、添田祥史、佐々木巽)
布
2010 年3月末に、本学の全教員(附属校園の教諭を含む)、道内の教育関係者(教育委員会、ユネスコ
関係等)および本学地域教育開発専攻の学生全員に配布した。
(5)学生教育上の効果
本 GP の担当教員の大部分が所属している、地域教育開発専攻の学生全員に配布したことで、学生は単に
教科書としてではなく、日常的に ESD について考える際の基本的な参考の書物、いわば座右の書として利
用することが可能となった。実際に、地域教育開発専攻の学生の間では、もはや ESD という用語は新語で
はなく、それをどこまで理解し、自分のものにするかという学びの対象、さらには学びそのものになって
いると言っても過言でないであろう。
219
8.ガバナンス-実施組織
8.1.ESD 推進センター
8.2.ESD 推進委員会
8.3. 広報部会
○生方
神田
秀紀(釧路校教授)
房行(釧路校教授)
・北澤
一利(釧路校准教授)
ほか関係教員一同
事業期間
平成 18~21 年度
実施場所
釧路校
(1)「ESD 推進委員会」の設置
2007 年度に現代 GP に採択内定にともない、2007 年 11 月 13 日釧路校に佐々木巽副学長が関係者を招集
し、「ESD 推進委員会」を設置した。これは現代 GP の教育活動を中核的に担う釧路校地域教育開発専攻担
当の全教員と残りの二つの専攻である地域学校教育専攻と学校カリキュラム開発専攻から各1名の教員か
らなる合議組織で、この委員会で現代 GP の事業計画の承認、重要な追加・変更の審議、期末事業報告の承
認を行った。委員長には GP 取組担当者である生方が選ばれ、神田房行教授を補佐役に指名した。
現代 GP 事業の実施にかかわる日常的な推進業務は取組担当者の生方を中心に、ワーキンググループ(地
域域教育開発専攻担当の4~5名よりなる)によって行われた。
(2)「ESD 推進センター」の設置
「ESD 推進センター」の設置については、本報告書の「2.1.ESD 推進センターの設置と活動」で述べたと
おり、2008 年5月の釧路校教授会で設置が認められ、10 月3日にセンター開所式が行われた。センター設
置にともない「センター長」のもとで「センター員会議」が活発に開催されるようになり、ESD 推進委員
会の活動のうち、ESD 推進活動の部分はセンターの活動に委ねられた。とはいえ、センター員会議はすべ
て現代 GP の担当者を兼任しており、センター長も GP 取組担当者である生方が任命されており、委員会と
センターとがなかば融合したかたちで現代 GP およびセンターの活動が推進されてきた。
なお、センターには GP 期間中、事務補佐員が雇用され、各種の事務作業を担当した。この補佐員は、現
代 GP の事務も本務として担当した。現代 GP 終了後は、事務補佐員の雇用はなくなるが、釧路校の総務・
附属学校グループの事務職員が事務を担当することになる。
(3)「広報部会」の設置
ESD 推進委員会の設置にともない、委員会の内部に広報部会を設けた。主にインターネットのホームペ
ージのコンテンツを作成し、外部の業者にウエブデザインを依頼し、それを大学のサーバーにアップロー
ドし、その後のアップデートを行う担当であり、北澤一利准教授と生方が担当した。ホームページは現代
GP の経費をあてることができたので洗練され、使いやすいデザインのものができあがった。このホームペ
ージを通して、現代 GP のさまざまな取組みを外部に発信するとともに、教員・学生が作成した教育活動実
践記録も積極的に発信するよう心がけてきた。現代 GP のURLは下記のとおりである。
http://ckk.kus.hokkyodai.ac.jp/GP/
220
8.4.モニタリング部会
8.4.1. GP 事業の自己点検評価(学生による無記名授業評価を含む)の実施
○生方
秀紀(釧路校教授)
佐々木
巽・小川
隆章・長澤
徹(釧路校教授)
事業期間
平成 19~21 年度
実施時期
2~3月
実施場所
釧路校
(1)背景と目的
本 GP プロジェクト事業の自己点検評価(学生による無記名授業評価、3年間を通しての学びのアンケー
ト調査を含む)を実施し、プロジェクトの当初の目的通りに達成されたかどうかを評価し、今後の改善に
資するほか、外部評価を受ける際の基礎データの一つとする。学びのアンケート調査は、現代 GP で狙いと
した学生の資質向上が、現代 GP の枠組みのもとでの地域教育開発専攻(第二専攻)による教育活動の成果
として現れているかを、専攻の1~4年次学生全員を対象としたアンケートによって把握することを目的
とした。
(2)方
法
1)授業評価および FD
平成 19 年度後期から 21 年度後期までの5学期のすべての学期末において、地域教育開発専攻の原則と
してすべての授業科目について学生による授業評価(無記名、10+2~3項目、5段階評価、自由記述も
あり)を実施し、担当事務補佐員が集計し、各担当教員に結果を通知し、改善に役立てるよう依頼した。
GP 実施責任者(生方教員)および「モニタリング部会」担当教員(佐々木巽、小川隆章、長澤徹の各教員)
には全科目についての結果が渡された。
このほか FD 活動として、19 年度後期には釧路校地域教育開発専攻の授業を教員が相互参観し、21年
度末には専攻教員全員を対象とした、学生による無記名授業評価の高い教員による講演会を実施し、学生
による無記名授業評価の低い教員には授業方法の改善を求めた。
2)年度末事業評価
平成19年度から21年度まで毎年度末、GP プロジェクトの実施状況の自己点検評価を行った。
3)最終年度における学生による学びの状況についての無記名のアンケート
2009 年度2月に GP プロジェクトのもとでの学生の学びの状況を把握するために無記名のアンケート調
査を行った。アンケート回収数および回収率は以下の通りである。1年生 39 名(回収率 87%);2年生地
域教育分野 11 名(79%)、環境教育分野 15 名(56%);3年生地域教育分野 10 名(53%)、環境教育分野 14 名
(58%);4年生地域教育分野 14 名(78%)、環境教育分野 22 名(81%)。
アンケートの各設問では、学びの状況に関して、次の⑤~①の5つの選択肢から選択させた。
⑤そう思う
④少しそう思う
③どちらともいえない
221
②あまりそう思わない
①そう思わない
4)最終年度における3ヵ年度の総合事業評価
平成21年度2月に GP プロジェクトの3ヵ年度の総合事業評価に関する自己点検評価を行った。
(3)結果と考察
以下に、最終年度による3ヵ年度の総合事業評価の結果を示す。
(A)プロジェクト全体ゴール
「地域の課題に取組み、地域と連携することができる人材の育成を実現する」
b.おおむね達成している。
[根拠]:以下の三大構成要素についての自己評価結果を総合した。
(A-1)全体ゴールの三大構成要素
1)「地域融合キャンパスをベースにした教科融合型の実践的カリキュラムを構築・運営する」
a.達成している。
[根拠]:以下の1-1-1から1-2-4の下位目標についての自己評価結果を総合した。
2)「学生・地域住民のシステム的思考力、地域ビジョン形成や協働的地域活動の力量を培う」
b.おおむね達成している。
[根拠]:以下の2-1-1から2-2-4の下位目標についての自己評価結果を総合した。
3)
「自然と共生する持続可能な地域社会を実現するための地域のファシリテーターを養成し、ESD プラン
ナーとして認証する」
b.おおむね達成している。
[根拠]:以下の2-1-1から3-2-2の下位目標についての自己評価結果を総合した。
4)「取組をスムースかつ効果的に実施する体制を構築し、全学に波及させる」
b.おおむね達成している。
[根拠]:以下の4-1-1から4-2-1の下位目標についての自己評価結果を総合した。
(A-2)細目ごとの自己評価
以下の分析では、学生による5段階回答値の平均値が4.0以上であれば「達成している」と、3.5以上4.0
未満であれば「おおむね達成している」と自己判定した。
222
1-1)カリキュラム構築・運用
1-1-1)教科融合型のカリキュラムの構築および実践を行うことができたか
b.おおむね達成している。
[根拠]:地域教育開発専攻のほとんどすべての授業科目で、教科融合型の内容で実施している。その意味合
いは特定の教科の枠を超えて環境問題または地域社会の課題を取り扱っているということである。
「おおむ
ね達成」としたのは、各授業科目相互の内容がまだ十分連携しあって、全体として大きいまとまりにまで
はなっていないからである。これは今後の課題としたい。
1-1-2)実践的カリキュラムの構築および実践を行うことができたか
a.達成している。
地域連携、実践活動
[根拠]:2010 年2月 10 日に専攻学生全員へ
の「学びの状況」アンケート*(無記名)の
結果、「3.第二専攻の授業の履修や卒業研
5.0
4.5
3.5
ったり、地域の人々と連携、共同しながら教
3.0
4.1
3.8
4.4
3.8
2.5
2.0
する回答で、地域教育分野4年生平均 4.6、
1.5
環境教育分野4年生平均 4.4 を達成してい
1.0
る。(別紙「地域教育開発専攻における学生
4.1
4.0
究の取り組みを通して、友人同士で協力しあ
育的実践活動をする力が身についた。」に対
4.6
4.2
0.5
0.0
の学びの状況アンケート回答分析結果報告」
1
2地
2環
3地
3環
4地
4環
参照)
(*学びの状況回答選択肢:⑤そう思う、
④少しそう思う、
③どちらともいえない、
②あまりそう思わない、
①そう思わない。
)
1-1-3)専攻カリキュラムを通して、体験や経験を実践的な能力にまで高め、学生の自己成長を促す
ことができたか。
→
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223
a.達成している。
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結果、
「8.市内や近隣町村の学校や NPO、社会教
学校、団体、施設連携
6.0
育施設に出向き、地域教育や環境教育にかか
5.0
わる活動実践、あるいはそのような学外にお
4.0
4.8
3.3
ける活動への協力を行った。」に対する回答
で、地域教育分野4年生平均 4.8、環境教育
分野4年生平均 3.7 を達成している。(別紙
「アンケート回答分析結果報告」参照)
3.7
3.5
2.9
3.0
3.7
2.9
2.0
1.0
0.0
1
2地
2環
3地
3環
4地
4環
1-2)地域融合キャンパス
1-2-1)地域融合キャンパスの1つの側面として、大学の施設・講義を地域住民に開放し、活用しても
らうことができたか。
a.達成している。
[根拠]:別紙資料1の通り、公開講座、授業公開講座、シンポジウム、フォーラム、講演会を開催し、地域
住民に公開した。
1-2-2)地域人材をゲストスピーカーとして招いて、現実社会がかかえている課題について学生が認
識を深め、地域文化の意義とその価値を再確認したか。
b.おおむね達成している。
地域ゲスト、具体的課題
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結果、
「7.地域の方を大学にゲストに招いての
4.5
授業を通して大学の外の現実社会の中にお
4.0
ける人々の生活や、社会がかかえている具
3.5
体的課題について、より深く知ることがで
3.0
きた。」に対する回答で、地域教育分野4年
2.5
生平均 3.4、環境教育分野4年生平均 3.9
2.0
を達成している。
(別紙「アンケート回答分
1.5
析結果報告」参照)
1.0
3.9
3.8
3.7
3.5
3.1
3.4
3.2
0.5
0.0
1
224
2
3
4
5
6
7
1-2-3)学生を広く地域のフィールド(自然環境、地域社会を含む)に入りこませ、現実の自然・社
会と交わりながら実践的に学習できるようにしたか。
a.達成している。
[根拠]:次の授業科目で地域のフィールド(自然環境、地域社会を含む)に入りこませ、現実の自然・社会
と交わりながら実践的に学習できるようにしている。①東北海道アウトドアトライアル、②釧路湿原エコウ
オッチング、③環境教育活動Ⅱ(農業体験実習)、④環境教育活動ⅢA(自然環境教育),ⅢC(生態学),
ⅢD(自然地理)、⑤地域健康教育コーディネート、⑥地域健康教育コーディネート演習Ⅰ、⑦地域教育活
動Ⅱ、⑧地域教育特講 B
1-2-4)学内に地域協働型のESD推進センターを設置することができたか
a.達成している。
[根拠]:2008年9月に釧路校の教授会で「ESD推進センター要項」を決定し、10月に開所式を実施し、以後、
生方秀紀センター長以下、8名のセンター員(研究員兼任)、4名の研究員のもとで種々主の活動を実施し
ている。
2-1)学生・地域住民のシステム的思考力・地域ビジョン形成を培う
2-1-1)教科融合・相互乗り入れ型授業科目によって、システム的思考力、統合的な視点が培われたか。
b.おおむね達成している。
大きな全体像
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結果、
「1.第二専攻の特徴的授業科目(教科融合、
5.0
4.5
複数教員による指導)を履修したことで、地
4.0
域や環境についての問題を個々ばらばらでは
3.5
なく、相互につながりを持つ大きな全体像の
3.0
中でとらえられるようになった。」という設
4.1
3.2
3.3
3.3
2環
3地
3.6
3.8
2.5
2.0
問に対する5段階評価の回答で、地域教育分
1.5
野4年生平均4.1、環境教育分野4年生平均3.8
1.0
を達成している。地域教育分野4年生に限れ
4.2
0.5
0.0
ば「a.達成している」の自己評価となる。
(別
1
2地
3環
4地
4環
紙「アンケート回答分析結果報告」参照)。
2-1-2)専攻の教育活動を通して、学生の地域ビジョン形成の力量を培うことができたか
c.やや不十分である。
[根拠]:この設問は地域ビジョンについては直接尋ねていない。そのため、「b.おおむね達成している」
と断言することはできないので控えめな自己評価とする。参考までに、「学びの状況」アンケートの結果、
「2.第二専攻の授業の履修や卒業研究の取り組みを通して、地域や環境の課題を少しずつ解決していくた
225
めの道筋を見出し、それを皆に伝えるための構
地域の課題、道筋
想を練り上げる力がついた。 」に対する回答
では、地域教育分野4年生平均4.3、環境教育
5.0
分野4年生平均4.0を達成している。(別紙「ア
4.5
ンケート回答分析結果報告」参照)。
4.0
4.3
3.8
3.5
3.0
3.5
3.6
3地
3環
4.0
3.2
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
1
2地
2環
4地
4環
2-2)協働的地域活動の力量を培う
2-2-1)教育活動を通して、学生の協働的地域活動の力量を培うことができたか
b.おおむね達成している。
学生主体活動企画運営
[根拠]:
「学びの状況」アンケートの結果、
「9.
大学の授業とは別に、学生が主体となって地
4.5
域教育や環境教育にかかわる活動実践を企画
4.0
し、運営した。」に対する回答で、地域教育分
3.5
野4年生平均 4.2、環境教育分野4年生平均
3.0
3.0 を達成している。地域教育分野4年生に
2.5
限れば「a.達成している」の自己評価となる。
(別紙「アンケート回答分析結果報告」参照)
。
4.2
3.2
3.0
2.9
2.8
2.5
1.9
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
1
2地
2環
3地
3環
4地
4環
2-2-2)地域の課題に取組み、地域と連携することができる人材の育成を実現したか
a.達成している。
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結果、「2.第二専攻の授業の履修や卒業研究の取り組みを通して、
地域や環境の課題を少しずつ解決していくための道筋を見出し、それを皆に伝えるための構想を練り上げ
る力がついた。 」に対する回答で、地域教育分野4年生平均 4.3、環境教育分野4年生平均 4.0 を達成
している。(別紙「アンケート回答分析結果報告」参照)
226
地域の課題、道筋
5.0
4.3
4.5
4.0
3.8
3.5
3.0
3.5
3.6
3地
3環
4.0
3.2
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
1
2地
2環
4地
4環
2-2-3)市内や近隣町村の学校やNPO、社会教育施設に「ESDインターン」あるいは出前授業として学
生を派遣し、環境教育・地域教育授業案や教材の作成に協力させたか。
a.達成している。
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結果、
「8.市内や近隣町村の学校や NPO、社会教
学校、団体、施設連携
6.0
育施設に出向き、地域教育や環境教育にかか
わる活動実践、あるいはそのような学外にお
ける活動への協力を行った。」に対する回答
で、地域教育分野4年生平均 4.8、環境教育
分野4年生平均 3.7 を達成している。(別紙
「アンケート回答分析結果報告」参照)
4.8
5.0
4.0
3.3
3.7
3.5
2.9
3.0
3.7
2.9
2.0
1.0
0.0
1
2地
2環
3地
3環
4地
4環
2-2-4)学生主体のチャレンジプロジェクトの活動を通じて、学生と地域住民がアイデアと知恵を出し
合い、地域の自然再生・地域社会の再活性化のためのアイデア創出と具体的な活動を行ったか。
227
a.達成している。
学生主体活動企画運営
[根拠]:
「学びの状況」アンケートの結果、
「9.
大学の授業とは別に、学生が主体となって地
4.5
域教育や環境教育にかかわる活動実践を企画
4.0
し、運営した。」に対する回答で、地域教育分
3.5
野4年生平均 4.2、環境教育分野4年生平均
3.0
3.0 を達成している。
(別紙「アンケート回答
2.5
4.2
3.2
1.9
2.0
分析結果報告」参照)
3.0
2.9
2.8
2.5
1.5
1.0
0.5
0.0
1
2地
2環
3地
3環
4地
4環
3-1)地域のファシリテーターの養成
3-1-1)自然と共生する持続可能な地域社会(サステナブル・コミュニティー)を実現するための実
践的知識を有する人材(ファシリテーター)を計画的に養成できたか
b.おおむね達成している。
シンポジウム、持続可能社会
[根拠]:「学びの状況」アンケートの結
果、「6.第二専攻の教育活動(授業、
5.0
講演、シンポジウム、フォーラム、セミ
4.5
ナーなど)に参加する中で、『自然と共
4.0
3.5
が
3.0
どのようなもの
であるか
をつ
かむことができた」に対する回答で、地
2.5
域教育分野4年生平均 3.4、環境教育分
2.0
野4年生平均 3.7 を達成している。
(別
1.5
紙「アンケート回答分析結果報告」参照)
1.0
3.7
3.6
3.5
生する持続可能な地域社会』というもの
3.3
3.3
2地
2環
3.4
3.2
0.5
0.0
1
3地
3環
4地
4環
3-1-2)公開講座を実施し、地域住民のESD理解を拡大することができたか
b.おおむね達成している。
[根拠]:ESD についての公開講座を実施したほか、ESD プランナー資格科目の授業公開講座を多数用意した
ことで、一定程度の受講生が ESD について学んでいる。実際の受講生数はそれほど多いものではないが、
受講者が口コミで家族や友人・知人に ESD について広めていくことで二次的な波及効果も期待できる。な
228
お、授業公開講座の市民受講生の一人が「ESD プランナー」資格を2008年度末に取得している。
3-2)ESDプランナーの認証
3-2-1)「ESDプランナー」の認証を行ったか。
a.達成している。
[根拠]:2008 年度末に学生3名、市民1名、2009 年度前期末に学生1名に認証を行った。
(「ESD 推進セン
ターニュース」創刊号参照)
3-2-2)「ESDプランナー」の認証を受けた学生・市民は、持続可能な地域社会実現のためのファシリ
テーターとして、信頼されながら活動したか。
b.おおむね達成している。
[根拠]:市民 ESD プランナーは、張り切ってその後も環境活動に取り組んでいる(ESD プランナーの肩書
きで釧路市環境審議会のメンバーに就任等)(
「ESD 推進センターニュース」創刊号参照)。「エコチャリ活
動」で ESD プランナーを認定された学生はその後もこの活動に参画した。まだプランナーの人数が少ない
こと、卒論や教員採用試験の時期とぶつかって活動参加がほとんど休止したこと、
「信頼されながら」の客
観的データが得にくいことから「b.おおむね達成」と自己評価した。しかし、プランナーの数が増加し
ていけば、プランナー認証がなかった場合とくらべて、自信を持って地域活動・環境活動に取り組むケー
スが増加することは十分予想される。
4-1)取組をスムースかつ効果的に実施する体制を構築したか
4-1-1)本プロジェクトの実施組織は当初の計画通り設置し、十分機能したか。
b.おおむね達成している。
[根拠]:ESD推進センターの設置は分校にとって大きいイベントであった。10年来活動してきた「環境教育
情報センター」を発展的解消させるという大掛かりなものであった。ESD推進センター設置後は、当初計画に
あったESD推進委員会(地域教育開発専攻の全教員と他専攻から教員1名ずつ)は現代GP担当者会議に、ワー
キンググループはESD推進センター員会議にバトンタッチされた。広報部会(北澤教員と生方)は主にインタ
ーネットホームページの開設運用を担当した。
4-1-2)本プロジェクトの自己評価組織は当初の計画通り設置し、十分機能したか。
b.おおむね達成している。
[根拠]:GP内部の「モニタリング部会」が計画通り設置され、主に学生による授業評価を担当した。200
9年度末には、同年度の授業評価結果に基づき、専攻独自のFDを実施する。GPプロジェクト全体の自己評
価は、外部評価のための基礎資料作成を兼ねて、GP実施責任者(生方)が担当した。なお、当初計画に掲げ
229
られている分校自己評価委員会は廃止されたため関与していない。
4-1-3)本プロジェクトの自己評価(学生による自己評価)は予定通り実施され、その後の改善に活
かされたか。
a.達成している。
[根拠]:2007年度後期から2009年度後期までの5学期のすべての学期末において、地域教育開発専攻の原則
としてすべての授業科目について学生による授業評価(無記名、10+2~3項目、5段階評価、自由記述も
あり)を実施し、担当事務補佐員が集計し、各担当教員に結果を通知し、改善に役立てるよう依頼した。GP
実施責任者および「モニタリング部会」担当教員(佐々木巽、長澤徹両教員)には全科目についての結果が
渡された。
4-2)取組を全学に波及させたか
4-2-1)全学的な連携・協力のもとでプロジェクトを推進したか
c.やや不十分である。
[根拠]:当初計画にあった、当GPにかかわる全学横断組織である「ESDフォーラム」については設置しなかっ
た。当GPは100%釧路校地域教育開発専攻で実施していたため、全学との連携は直接には必要なかったこと、
および、ほぼ同内容の機能をもつ全学組織「グローカル環境教育会議」が2007年に設置され、活動したので
それに委ねたためである。ESDフォーラム」は、ESD推進センターの全学組織化をにらんで構想したものであ
り、GP終了後に残された課題である。全学組織化は、2010年度のセンターの優先課題となっている。
230
8.5. 本 GP プロジェクトの外部評価
生方
秀紀(釧路校教授)
事業期間
平成21年度
実施時期
平成22年2~3月
実施場所
北海道大学および本学釧路校
(1)背景と目的
本プロジェクトの自己点検評価(学生による無記名授業評価を含む)は各年度末に実施しているが、外
部評価を受けることによって、より客観的な事業評価を得て、その中で指摘された改善事項を今後の教育
活動に反映させることを目的とした。
(2)方
法
外部評価委員 4 名(「北海道大学持続可能性戦略本部」の教員3名およびコーディネーター1 名)との間
で2月から3月にかけて、2度にわたるヒアリングを行った(札幌で1回(2月)、生方が出向き、全評価
委員に本事業の概略を説明)、釧路で1回(3月、北大から教員2名とコーディネーター1 名を招聘し、生
方が対応)。この間に、釧路校から外部評価委員に自己評価書を送付した。この一連のヒアリングおよび提
出文書を基に、外部評価委員全員に本 GP 事業全体についての客観的な業績評価を実施してもらった。
(3)結
果
全 11 頁にわたる外部評価書が 22 年3月 29 日に本学副学長(釧路校担当)宛に提出された。詳細多岐
にわたる丁寧な評価と建設的な提言を提供してもらうことができた。外部評価の結果を閲覧希望の場合は、
釧路校総務・附属学校グループの現代 GP・ESD 担当事務職員に照会されたい。
(4)学生教育における効果
外部評価で指摘された課題を今後一つ一つクリアーしていくことで、学生教育はより充実したものにな
ると見込まれる。
231
現代 GP 担当教員一覧
(すべて釧路校所属)
取組担当者
生方 秀紀(教授・ESD 推進センター長)
地域教育開発専攻
生方 秀紀(教授)(再掲)
小川 隆章*(教授)
神田 房行(教授)
佐々木 巽+(教授・前副学長)
田丸 典彦(教授)
長澤
徹(教授)
松浦 勇一*(教授)
諫山 邦子(准教授)
大森
享(准教授)
北澤 一利(准教授)
小松 丈晃**(准教授)
高橋 忠一*(准教授)
添田 祥史(講師)
平岡
亮(講師)
地域学校教育専攻
学校カリキュラム開発専攻
担当事務補佐員
今泉
博(教授)
進藤 貴美子(教授)
境
智洋(准教授)
広重 真人(准教授)
廣田
健(准教授)
木戸口 正宏(講師)
戸田 竜也(講師)
蛭田 眞一(副学長・教授)
池田 保夫(教授)
小原
繁(教授)
栢野 彰秀(准教授)
川﨑 惣一(准教授)
平山 雄二(准教授)
中川 雅仁(准教授)
佐藤
辻本
千晶**(19-20 年度)
夏実(21 年度)
所属、役職は、平成22年3月末日現在。
(*定年退職)(**転出)(+物故)。
232
編集後記
生方 秀紀(現代 GP 取組担当者)
当現代 GP3カ年の活動のすべての成果を盛り込んだ最終報告書を、こうして pdf ファイルとして、関心
をお持ちの皆様にお届けできることをうれしく思います。230 頁を超える膨大な量の原稿を整理し、フォ
ーマットに統一すべく編集する作業は、思いのほか煩雑であり、難儀しましたが、原稿を提出してくれた
同僚諸氏の協力のお蔭でなんとか完成にこぎつけることができました。
この報告書を、紙に印刷した冊子状のものとしてでなく、CDR/DVD にコピー可能な、あるいはインター
ネットでダウンロード可能な電子文書として作成したのは、一つには資源・エネルギーの節約もあります
が、何よりも、当 GP に関心をお持ちのすべての皆様に手軽に入手していただき参照していただけるように
するためです。
この報告書に盛り込まれた北海道教育大学の現代 GP「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス」の
目指す方向性と豊富な実践例が、皆様の今後の活動、ひいては日本や世界で ESD が広がり、深まっていく
ために少しでも役立てられれば望外の喜びです。
最後になりましたが、当 GP の企画、申請、運営、もろもろの実践、調査、評価にさまざまな立場でご協
力頂いた皆様がたに、当 GP の取組担当者として心よりお礼申し上げます。
平成 22 年
付
記
① 本報告書に掲載された文章、写真、図表の著作権はすべて執筆者に帰属します(引用した図版を除
く)
② したがって、本報告書の全部または一部を出版あるいはウエブ上で配布することはご遠慮願います。
③ 報告書全体の取り扱いについての照会は下記にお願いします。
平成 25 年3月まで:
生方 秀紀
ubukata-h[at]kus.hokkyodai.ac.jp ([at]を@に置き換えてください)
平成 25 年4月以降:
北海道教育大学釧路校総務・附属学校グループ気付 「現代 GP 融合キャンパス責任者」
電子メール: syomu[at]kus.hokkyodai.ac.jp ([at]を@に置き換えてください)
④ 本報告書は平成 22 年3月 31 日の時点から振り返って原稿が執筆されたものであり、
執筆者の所属、
肩書きは平成 21 年度末時点のものとしてありますのでご注意ください。
⑤ 本報告書の内容に何か誤りがありましたら、それぞれの執筆者にお知らせ頂ければ幸いです。
233
文部科学省現代的教育ニーズ支援プログラム(現代 GP)選定(平成 19 年度)
「持続可能な社会実現への地域融合キャンパス-東北海道発 ESD プランナー養成・認証プロジェクト-」
事業完了報告書
発
行
者
(pdf 版)
北海道教育大学
発行責任者
北海道教育大学副学長(釧路校担当)
蛭
田
眞
一
編集責任者
北海道教育大学教授(釧路校)
生
方
秀
紀
(現代 GP 取組担当者)
プロジェクト終了年月日 平成 22 年3月 31 日
※ 本報告書に掲載された文章、写真、図表の著作権はすべて執筆者に帰属します。
233