超薄型木製ブラインドの開発

技術情報
支援事例紹介
IRI
超薄型木製ブラインドの開発
技術開発派遣指導(平成17 ~ 23年度)
材料技術部 山岸 暢
1.はじめに
開発するスラットの特性の水準に関して、既存
最近、ブラインド等のインテリア商品に、木材等
の市販されているプラスチック製等のスラットと
の天然素材を活用したものが多く開発されていま
同等以上の曲げ剛性の確保を目標とし、積層板の
す。木製ブラインドは、プラスチック製や金属製と
材料構成について検
は異なる高級感や落ち着いた質感があるため、イン
討した結果、厚みが
テリア製品として市場規模が急激に拡大しており、
0.6mm以上必要であ
今後も需要の増加が期待される製品です。しかし、
ることが明らかにな
市場に流通している木製ブラインドは、スラット
りました。また厚み
(羽根)の厚みが大きいため、巻き上げ時に窓を大
が1.0mm以上の積層
きく占有してしまうことや、重量が大きいため、巻
板では、繰り返しの
き上げ操作に負荷が掛かる問題点があります。そこ
曲げ荷重により層間
で、木材を0.2mm程度の厚みにスライスした超極
剥離が発生し易いた
薄単板と和紙からなるサンドイッチ構造の積層板に
め、スラットの厚み
ついて検討し、超極薄のブラインド用スラットへの
は0.8mm程度が最適
展開を図りました。また、木材は可燃性であり火災
と判断しました。
図2 木製ブラインド
を引き起こす危険性があることから、この対策とし
て平成20年3月より㈶日本防炎協会で「木製等ブ
②防炎化の検討
ラインド」の防炎製品の認定が開始されました。こ
木製ブラインドの防炎製品の認定試験方法は、
れにより防炎防火対象物等の建築物では、火災によ
メッケルバーナーで2分間加熱し、残炎時間5秒
る甚大な被害の防止の目的で、防炎製品に認定され
2
以下、残じん時間20秒以下、炭化面積40cm 以下、
た木製ブラインドの使用が推奨されるようになりま
炭化長20cm以下と厳しい基準となっており、開発
した。そこで、スラットの防炎化について検討しま
したスラットに防炎薬剤を含浸させただけでは、認
した。
定取得は困難でした。そこで積層材の芯材に難燃性
の塩ビフィルムを挿入することにより、基準を満た
せることが明らかになりました。
2.内容
①スラットの材料構成の検討
木材は、水分や溶剤の吸収・放出により寸法が
3.おわりに
大きく変化します。このため超極薄単板層と和紙
開発した木製ブラインドは、平成22年5月より
層間の貼り合わせに
空知単板工業㈱と大湖産業㈱で販売しております。
水系や溶剤系の接着
木材としては、道産のカバ材を使用し、カラーは、
剤 を 用 い る と、 ス
ナチュラル、ブラウン、ダークブラウン、オフホワ
ラットの成形時に設
イトの4種類ですが、お客様のご要望に応じて樹種
計通りの形状を維持
やカラーは、変更できます。また防炎仕様のもの
することができませ
は、平成22年に防炎製品に認定されたため、オプ
ん。そこで層間の貼
ションとして防炎加工タイプの販売も承っておりま
り合わせ用の接着剤
す。
には、ホットメルト
系の接着剤を選定し
ました。
図1 木製スラット
TEL:011−747−2931(ダイヤルイン)
E-mail:yamagishi-tohru@hro.or.jp
工業試験場技術情報 Vol . 5 No . 7