外国子会社株式の評価損 - 中国税務 会計 国際税務と事業承継に強み

西山会計事務所通信 2016 年 2 月号
NO:JP-3
外国子会社株式の評価損
国税不服審判所の公表裁決事例等に外国子会社株式の評価損計上についての事
案が公表されました。
法人税法上、資産の評価損は原則として損金不算入となりますが、政令で定め
る事実が生じた場合については損金算入を認めています。
外国子会社である非上場の有価証券についても、①その有価証券を発行する法
人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと。
②①に準ずる特別の事実が生じた場合に限定して損金算入することができます。
公表された事案は、①の要件である次の2つの事実が生じたと認められるか否
かが主な争点となっています。
・その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため。
・その価額が著しく低下したこと。
事実認定
・外国子会社 J 社は N 国に設立された法人である。
・J 社の設立時の登録資本金は P 国通貨建てであり、出資者間の契約書の出資
比率は P 国通貨建てで算定されている。
・J 社の利益、残余財産は出資比率に応じて分配されることが定められている。
・J 社には 1 株又は 1 口という概念がない。
・J 社の資産及び負債の全てが N 国通貨で運用及び調達されている。
・J 社の株主は 4 社である。
税務署の主張
有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化の要件は法基通 9-1-9 の(2)
に掲げる
「当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の 1 株又は 1
口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の 1 株又は
1 口当たりの純資産価額に比しておおむね 50%以上下回ることとなったこと。」
によるとし、出資1P 通貨単位あたりの純資産価額(N 国通貨建て)は取得時
の純資産単価(N 国通貨建て)に比して 50%以上下回っていない。
また有価証券の価額が著しく低下したことについては、上記の 50%基準を満た
していないため判断する必要がないとし評価損の損金不算入を主張している。
西
山
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計
事
務
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西山会計事務所通信 2016 年 2 月号
NO:JP-3
納税者の主張
J 社には 1 株又は 1 口という概念が存在せず1株あたりの純資産価額を算定する
ことはできないため 50%基準の判定は資本金1N 国通貨あたりの純資産価額
(N 国通貨建て)が取得時の資本金1N 国通貨当たりの純資産価額(N 国通貨
建て)に比して 50%以上下回っているため損金算入はできると主張している。
国税不服審判所の判断
本事案では 100%子会社でなく追加出資時に純資産価額が考慮されていなかっ
たこともあって人民元ベースでの判定は合理的ではなく納税者の判断基準を採
用することはできないとして税務署の主張を採用し評価損を損金不算入とした。
また、納税者は、工場の稼働率が 50%以下になるなど急激な業績悪化に見舞わ
れ、資産状態が悪化し、有価証券の価額(純資産価額)の回復の可能性もたた
なくなったことを事由として資産状態が著しく悪化に準じる特別の事実が生じ
たとし、評価損の損金性も主張しているが、国税不服審判所は、そのような事
情は J 社そのものの資産状態に反映される事情であることから該当しないとし
た。
①に準じる特別な事実とは、その有価証券を発行する法人そのものの資産状態
以外の当該有価証券の価額の変動を生じさせる客観的な要素について、災害に
準じるような何らかの特別の事実(投資対象国のデフォルト等)が生じたこと
により、その価額が大幅に下落し、かつその価額の回復の見込みがないような
場合としている。
公表事案から注意すべきこと
原則として資産の評価損の計上について税務は限定的であるため注意が必要で
す。今回の事案では一株又は一口あたりの単価で 50%基準を満たすか否かを計
算するにあたって、その概念がない場合に実際に出資した通貨や合弁契約に定
める出資比率の計算の基となる通貨単位を一株等に置き換えて計算することが
特徴かと思います。評価損の否認事例を公表され保守的な処理になりそうです
が外国子会社の清算時においては清算までに時間を要することもあり、過去の
経緯等を精査し評価損を計上することも検討してみてはいかがでしょうか?
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