工業団地開発基本構想_第5章 [PDFファイル/8.7MB]

5.新工業団地開発基本構想
5-1.工業団地開発の基本方針
伊達市における新工業団地の必要性、現況と課題、上位関連計画における位置づけを踏ま
え、本市における新たな工業団地開発の基本的な方針を以下の通り定める。
(1)定住促進に必要な身近な職場の確保に向けた基本方針
「地域に身近な職場を提供し少子高齢化社会の生活基盤となり得る企業の誘致」
長期的な傾向である尐子高齢化や東日本大震災被災後に増加した市外への流出による人
口減尐を抑制するためには、子育て支援や住宅施策の充実、大都市圏からの移住定住支援施
策の展開をはじめとした定住促進に関する施策にあわせて、身近に働くことのできる職場を
確保することが不可欠である。相馬福島道路の開通にともない広域交通条件が改善されるこ
とから、IC周辺等の土地利用を、新たな工業団地として開発整備を行い、雇用創出に繋が
る企業の立地を誘導する。企業の誘致に当たっては、生産性の高い先端産業や雇用吸収力の
高い物流加工などの企業の誘致を中心に行うこととする。
身近な職場の創出により若年層の流出を抑制するとともに、本市の豊かな自然環境のなか
で「住み、働き、学ぶ」環境の魅力を広く発信し、大都市圏や周辺地域住民の U・J・I ター
ンを促進し、長期的な人口減尐や東日本大震災によって失われた地域活力の回復につなげて
いく。
(2)農村地域の活性化を実現する身近な職場の確保に向けた基本方針
「農業を含む既存の地域産業と連関・連携して地域活力を増進する産業機能拡充」
本市は果樹園芸を中心とした農業の盛んな地域であるが、農村地域工業等導入促進法に基
づく工業団地の整備などによる雇用構造の高度化を図りつつ、農業の高付加価値化・農業経
営の安定化に向けた農業構造改革を進めてきたところである。今後とも、若い農業者とその
家族が安定した世帯収入を得ることができ、前向きに農業経営に取り組み、家族が一緒に住
み続けていくことが可能な地域環境を整備していくため、雇用構造の高度化が必要である。
また、近年本市では県の「ふくしま・地域産業6次化戦略」に基づき、多彩な福島の農林
水産品を活かした6次産業化を推進しており、
「だて6次化推進プロジェクト」の展開により
地域の高品質な農畜産品を活かした食品加工業等の振興に取り組んでいる。
農業の六次産業化をさらに推進するため、6次産業化に関連する企業の誘致に対応した産
業用地供給を図るため、農村地域への工業等の導入を積極的かつ計画的に促進し、農業従事
者がその希望及び能力に従ってその導入される工業等に就業することにより、農業構造の改
善を促進し、農業と工業等との均衡ある発展を図るため策定される、農村地域工業導入計画
に基づく工業団地の整備を行う。
本市の農業以外の基幹産業としては小ロット単サイクルの生産体制が整ったニット工業、
電子機械器具製造業などが盛んである。一方で、現在本市には新たに企業が立地できるまと
まった規模の産業用地が不足していることから、既に市内に立地している製造業の企業の生
産拠点の拡張や生産性向上に資する移転整備などの産業用地需要に対応しうる市街地開発事
業等による工業団地の開発を検討する。
46
(3)ふくしまの復興を支える身近な職場の確保の基本方針
「相馬福島道路の整備効果を地域に波及させ震災復興に寄与する産業団地整備」
現在復興支援道路として整備が進められている相馬福島道路が開通することにより、東日
本大震災による津波被害や原子力災害の被害を受けた浜通り地域を含め福島県全体の復興の
加速が期待されている。相馬福島道路の開通による広域交通条件を本市の活力向上につなげ
ていくためには市内に開設されるIC周辺における産業系土地利用の推進が必要となってい
る。
本市は相馬福島道路の開通により中通り地方と浜通り地方の結節点としての位置付けが
強化されることから、新たに開設されるICに近接した地区に市街地開発事業等により新た
な工業団地の開発を行い、広域的な交通条件の変化に対応した加工・組立や物流にかかる企
業の誘致等を通じて、福島県全体の震災からの復興に寄与する。
47
5-2.工業団地開発適地選定
「3-5.伊達市における産業用地需要」において、本市における産業用地需要は最低限で1
1ha あるものと確認された。単独の工業団地開発によりこの需要に応える場合、IC 整備、有
効宅地率等を勘案すれば約 40ha の産業団地を開発することが求められる。
ここでは、本市の都市計画区域内において、工業団地開発を行うことが適しているエリア
を2段階により抽出する。1段階目では、立地場所を検討するために一般的に用いられる手
法であるメッシュ分析により工業団地開発候補地を抽出する。2段回目で抽出された候補地
を企業が求める立地条件等により相対評価を行い、工業団地開発適地を選定する。
【メッシュ分析による工業団地開発候補地の抽出】
市内の都市計画区域全域を対象に産業用地としてのニーズへの適合性や造成の容易さな
どの側面から、250mメッシュ(基準地域メッシュ・1マス約 6.3ha)により GIS(地理情報
システム)を用いて適地選定を行い、候補地を抽出する。
なお、メッシュ解析による分析は、任意の地域における様々な事象を同一の基準で詳細に
計量的かつ時系列で比較することが容易であることから、古くから地域分析において活用さ
れてきた既に確立された分析手法である。我が国では緯度経度を基準とした基準地域メッシ
ュが「統計に用いる標準地域メッシュおよび標準地域メッシュ・コード」(昭和 48 年行政管
理庁告示第 143 号)で定められており、総務省統計局の国勢調査や事業所・企業統計調査、
経済産業省の行う商業統計調査や工業統計調査、国土地理院の土地利用分類調査などのデー
タが同じ土地区画(メッシュ)のもとに整理されている。今日ではメッシュ分析による立地
分析は一般的な地域分析のみならず、施設や店舗等を最小の投資(造成費等)で最大の便益
(分譲価格・集客・売上等)を検討する施設立地計画などにも国、地方自治体及び民間を問
わず幅広く利用されている一般的な手法である。
【候補地の相対評価による工業団地開発適地の選定】
メッシュ分析によって抽出した工業団地候補地を相対評価する。この評価結果をもって、
本構想における工業団地開発適地とする。
48
(1)工業団地適地選定の抽出・評価の視点の設定
工業団地開発適地選定を行うにあたっては、
「企業の求める立地条件」と「整備の容易性」
の分析・評価が必要であり、この2つから抽出・評価の視点を設定する。
【企業の求める立地条件】
交通アクセスの利便性や雇用環境など企業の求める立地条件の視点から対象地の抽出・評
価を行う。抽出・評価の視点の設定にあたっては、
「工業立地動向調査/経済産業省」におけ
る「全国立地企業への調査(立地地点選定理由(平成 26 年))
」及び本業務の一環として今回
実施した「伊達市 企業立地に関する意向調査(平成 27 年)
」から抽出・評価項目の洗い出
し、抽出・評価項目としての適性判断を行い、抽出・評価の視点を設定する。
【整備の容易性】
土地の一団性や造成の容易性、各種規制の有無など造成コストや開発実現性の有無といっ
た視点から対象地の抽出・評価を行う。抽出・評価の視点の設定にあたっては、用地整備に
関する抽出・評価項目の洗い出し、抽出・評価項目としての適性判断を行い、抽出・評価の
視点を設定する。
次ページ以降に示す「企業の求める立地条件と指標の関係」および「整備の容易性と指標
の関係」より、以下の指標を適正と判断した。
【適正と判断した指標】
①メッシュ分析による工業団地開発候補地の抽出
・造成の容易な平坦地であること
・幹線道路へのアクセスが容易であること
・高速道路 IC 等(計画含む)への到達時間が有利であること
・周辺への影響が小さく、一団の規模が確保できるエリアであること
②候補地の相対評価による工業団地開発適地の選定
・IC からの近接性
・国県道からの近接性
・市街地からの近接性
・既存の一団の工業地への近接性
・転用困難な土地利用規制区域を含まない
49
企業の求める立地条件と指標の関係(指標の適性判断)
大区
NO
分
1
伊達市 企業立地に関する
意向調査(平成27年)
小区分
高速道路や主要幹線道
路が利用しやすい
空港・港湾・鉄道を利用
2 アクセ
できる
ス
3
市場に近接している
4
関連企業に近接している
本社・ほかの自社事業所
へ近接している
流通業や対事業所サー
6
ビス業へ近接している
人材・労働者が確保しや
7
すい
雇用
社員の生活環境(従業員
環境
8
の通勤・住居の確保のし
やすさ)が整っている
5
9
周辺環境からの制約が
尐ない
全国立地企業への調査
①メッシュ分析によ
②候補地の相対評
回答
設定した指標又は
設定した指標又は
る工業団地開発候
価による工業団地
数
適正が無い理由
適正が無い理由
補地の抽出
開発適地の選定
・幹線道路への
アクセスが容易
であること
・ICからの近接性
42 高速道路を利用できる
106
○
・高速道路IC等
○
・国県道からの近
(計画含む)への
接性
到達時間が有利
であること
空港・港湾・鉄道等を利
市内に空港・港湾
市内に空港・港湾
6
20
×
×
用できる
が無いため
が無いため
メッシュ分析に適さ
市街地からの近
21 市場への近接性
146
×
△
ないため
接性
メッシュ分析に適さ
市街地からの近
18 関連企業への近接性
136
×
△
ないため
接性
本社・ほかの自工場への
メッシュ分析に適さ
市街地からの近
13
394
×
△
近接性
ないため
接性
流通業や対事業所サー
メッシュ分析に適さ
市街地からの近
3
39
×
△
ビス業への近接性
ないため
接性
メッシュ分析に適さ
市街地からの近
60 人材・労働力の確保
125
×
○
ないため
接性
回答
数
小区分
29
24
-
周辺環境からの制約が
尐ない
10 周辺 原材料等が入手しやすい
環境
19 原材料等の入手の便
11
工業団地であること
15 工業団地である
12
学術研究機関が充実して
いる(産学協働)
13 地価 地価もしくは地代が安い
14
15
16
電力等のエネルギー供給
が受けやすい
インフ 情報インフラが整備され
ラ ている
工業用水が確保しやすい
44 地価
×
メッシュ分析にて評
価済みのため
130
○
91
×
197
×
メッシュ分析に適さ
ないため
○
7
×
定量化が困難であ
るため
×
204
×
メッシュ分析に適さ
ないため
×
周辺への影響が
小さく、一団の規
模が確保できる
エリアであること
メッシュ分析に適さ
ないため
△
-
×
メッシュ分析に適さ
ないため
×
10
-
-
×
メッシュ分析に適さ
ないため
×
×
メッシュ分析に適さ
ないため
×
8 工業用水の確保
24 国・地方自治体の助成
経営者等の個人的つな
20
その がり
他
21
他企業との共同立地
市街地からの近
接性
-
18
地方自治体の協力体制
○
×
12
27
19
メッシュ分析に適さ
ないため
-
2 学術研究機関の充実
17 災害 災害(地震・津波)に強い
国・地方自治体の助成
適性の有無/設定した指標
(立地地点選定理由(平成26年))
-
25
-
×
141
×
99
×
34
×
10
×
地方自治体の誠意・積極
19
性・迅速性
経営者等の個人的つな
2
がり
1 他企業との共同立地
22
気候が業種に適している
0
23
その他
2 その他
-
-
×
143
×
※1:今回調査結果より
※2:「工業立地動向調査/経済産業省」
50
定量化が困難であ
るため
定量化が困難であ
るため
定量化が困難であ
るため
メッシュ分析に適さ
ないため
メッシュ分析に適さ
ないため
メッシュ分析に適さ
ないため
-
×
×
×
×
×
×
×
市街地からの近
接性
既存の一団の工
業団地への近接
性
一般化が困難であ
るため
適地選定後件とす
べき事項であるた
め
適地選定後に検討
すべき事項である
ため
適地選定後に検討
すべき事項である
ため
適地選定後に検討
すべき事項である
ため
定量化が困難であ
るため
定量化が困難であ
るため
定量化が困難であ
るため
定量化が困難であ
るため
適地選定後に検討
すべき事項である
ため
業種が未確定のた
め
-
整備の容易性と指標の関係(指標の適性判断)
NO 大区分
1
2
小区分
土地の一団性
地形
3
地盤
造成
の
4 容易 周辺道路の整備
性
5
既存集落の有無
6 各種 区域区分
規制
の有
7 無 農業振興地域
8
埋蔵文化財包蔵地の有無
適性の有無/設定した指標
①メッシュ分析によ
②候補地の相対評
設定した指標又は
設定した指標又は
る工業団地開発候
価による工業団地
適正が無い理由
適正が無い理由
補地の抽出
開発適地の選定
周辺への影響が
小さく、一団の規
メッシュ分析にて評
○
×
模が確保できる
価済みのため
エリアであること
造成の容易な平
メッシュ分析にて評
○
×
坦地であること
価済みのため
適地選定後に検討
メッシュ分析に適さ
×
×
すべき事項である
ないため
ため
適地選定後に検討
メッシュ分析に適さ
×
×
すべき事項である
ないため
ため
周辺への影響が
小さく、一団の規
メッシュ分析にて評
○
×
模が確保できる
価済みのため
エリアであること
適地選定後に検討
メッシュ分析に適さ
×
×
すべき事項である
ないため
ため
転用困難な土地
メッシュ分析に適さ
×
○
利用規制区域を
ないため
含まない。
適地選定後に検討
メッシュ分析に適さ
×
×
すべき事項である
ないため
ため
(2)メッシュ分析による工業団地開発候補地の抽出
工業団地開発適地選定を行うにあたっては、企業の求める立地条件と整備の容易性の分
析・評価が必要である。ここでの検討では、地形(傾斜等)や人口、交通利便性など多角的
な視点からの評価に適したメッシュ分析により、
「
(1)工業団地適地選定の抽出・評価の視
点の設定」において適正と判断した以下の4つの視点から工業団地開発候補地の抽出を行う。
①造成の容易な平坦地であること
→造成費用を抑えるため、大造成や難工事を要しない宅地造成が比較的容易な平坦地ま
たは緩傾斜地を抽出する。
②幹線道路へのアクセスが容易であること
→工業団地の立地にあたっては大型車の通行が容易な幹線道路へのアクセスが良好な
地域を抽出する。
③高速道路 IC 等(計画含む)への到達時間が有利であること
→工業立地動向調査などでも、高速道路 IC に近いことを工場立地の条件としている企
業が多く、また福島相馬道路の IC 整備を最大限に生かすため、IC 等への到達時間に
有利な地域を抽出する。
④周辺への影響が小さく、一団の規模が確保できるエリアであること
→周辺への影響が小さい人口密度の低い地域を選定する。また、産業用地需要として既
存集落等が介在しないある程度まとまった開発区域設定が可能な地域を抽出する。
51
標準地域メッシュの第五次メッシュ(250mメッシュ)を最小単位とし、下図の流れに沿
って工業団地開発候補地を検討すると以下の通りである。
なお開発候補地の検討対象範囲は都市計画区域内全域として段階的に絞り込みを行う。最
終的な工業団地開発候補地の選定の段階で既成市街地や整備済み工業団地を除外する。
工業団地開発候補地抽出の流れ
標準地域メッシュの設定
(五次メッシュ)
地
形
要
因
標高・傾斜度データの
平均傾斜度
平均傾斜度が
5%未満
国県道路網から
500mバッファ
幹線道路へのア
クセスが容易
ア
ク
セ
ス
要
因
高速道路 IC への到達時間圏
(計画 IC 含む)
高速道路 IC への
到達時間が 5 分
以内
人口密度分布図から集落地と
の関係を確認
周
辺
環
境
要
因
集落地等を含ま
ず一団の用地規
模が確保可能
工業団地開発候補地
52
① 造成の容易な平坦地であること
造成費用を抑えるため、大造成や難工事を要しない宅地造成が比較的容易な平坦地または
緩傾斜地として、国土数値情報の五次メッシュ(250mメッシュ)標高・傾斜度データから平
均傾斜度が5%未満のメッシュを抽出する。
【平坦地の分布状況】
都市計画区域内について国土地理院の標高データから算出した 250mメッシュ単位の平均
傾斜度の分布状況(図「平均傾斜度」)を見ると、阿武隈川沿いの(旧梁川町・旧保原町・旧
伊達町)
、広瀬川沿い(旧霊山町)を除き平均傾斜度が 6 度以上のゾーンが広がっている。
【平坦地の抽出結果】
平均傾斜度 5 度未満の平坦地メッシュを抽出した結果、図「平均傾斜度が 5 度未満の平坦
地メッシュ」のように、現在の市街地とその周辺、阿武隈川、広瀬川沿いの平地(多くは農
地)が抽出された。
53
平均傾斜度(五次メッシュ)
54
平均傾斜度が5度未満の平坦地メッシュ
55
② 幹線道路へのアクセスが容易であること
工業団地の立地にあたっては大型車の通行が容易な幹線道路へのアクセスが良好な立地
が求められる。また、幹線道路への接近性が高いエリアは概ね上下水道への取り付けが容易
な立地でもあり、基盤整備コストの面で有利となる。
【幹線道路 500mバッファに含まれるメッシュの分布】
交通条件に加え、公共下水道や水道幹線などの基盤へのアクセス性を考慮し、幹線道路へ
の接近性の高い区域を抽出するため、市内の国道・県道から沿道 500mの区域にバッファゾ
ーンを作成し、このバッファ内に重心が含まれる 250mメッシュを抽出したのが図「幹線道
路 500m未満」である。
【
「幹線道路沿道の平坦地」抽出結果】
図「幹線道路沿道の平坦地」は①で抽出した平均傾斜度5度未満のメッシュのうち、幹線
道路 500m未満のメッシュに該当するものを抽出した結果である。
市街地外でこの条件に該当するメッシュは旧保原町・旧梁川町の国道 399 号及び国道 349
号沿道、県道 125 号、県道 150 号、県道 120 号沿道などに限定される。広瀬川沿いの県道沿
道にも一部抽出メッシュが分布しているが、市街地周辺の平坦地と比べて一団性が低い。
56
幹線道路沿道 500mバッファに含まれるメッシュ
57
幹線道路沿道の平坦地
梁川・保原の平坦地と比
べて一団性が低い
58
③ 高速道路 IC 等(計画含む)への到達時間が有利であること
工業立地動向調査などでも、高速道路 IC に近いことを工場立地の条件としている企業が
多く、また福島相馬道路の IC 整備を最大限に生かすため、IC 等への到達時間に有利な地域
を抽出する。
②の抽出結果から将来の相馬福島道路の開通に伴い高速道路 IC までの所要時間が短縮さ
れる IC 到達時間圏 5 分以内のメッシュを抽出する。
…図「高速道路 IC 等への到達時間圏」「IC 直近の平坦地メッシュ」参照
【高速道路 IC 等への到達時間圏の分布】
相馬福島道路開通に合わせ市内に開設される IC からの時間到達圏を図「高速道路 IC 等へ
の到達時間圏」に示した。都市計画区域内かつ市街地外で IC5分圏に含まれることになるの
は(仮)国道 4 号 IC・
(仮)福島保原線 IC・(仮)霊山 IC の3IC の周辺である。
【
「IC 直近の平坦地」抽出結果】
②の抽出結果のうち、IC 到達時間圏が 10 分以内のエリアに含まれるメッシュを抽出した
ところ、IC アクセスの良好な幹線道路沿いが抽出された。抽出メッシュの分布をみると旧保
原町では国道 399 号及び 349 号沿道、県道 317 号沿道等が抽出され、旧霊山町では(仮)霊
山 IC 周辺などが抽出されている。
59
高速道路IC等への到達時間圏
60
IC直近の平坦地メッシュ
IC アクセスのよい幹線
道路周辺が抽出された
61
④ 周辺への影響が少なく、一団の規模が確保できるエリアであること
【H22 人口密度による集落地等の除外】
③で抽出されたメッシュには市街地縁辺部などの既存集落地も含まれていたことから、平
成 22 年国勢調査メッシュ人口統計(500mメッシュ)から作成した図「H22 人口密度」を用
いて、③で抽出されたメッシュからから 15 人/ha 以上の人口密度の 500mメッシュに含まれ
るメッシュ(集落地に該当)を除外した。
【開発候補地の抽出】
既存集落等が介在しないある程度まとまった開発区域設定が可能なエリアを抽出するた
め、③で抽出されたメッシュのうち辺を接して3メッシュ以上連続しないメッシュ(県道 51
号及び同 269 号沿道等の孤立したメッシュ)を除外した。
抽出された一団地メッシュのうち、既存の工業地に重複するエリアを除くとともに面的な
広がりのない抽出地(月舘町御代田の国道 349 や霊山町の県道 149 号沿い等)や阿武隈川の
河川敷等を除いて開発候補地を抽出した。
62
H22 人口密度
63
⑤ 開発候補地抽出結果
①から④のメッシュ分析による抽出の結果、図「開発候補地抽出結果」のとおり、A)保
町原桑田地区、B)保原町大泉地区、C)保原町上保原中ノ台地区、D)保原町小幡地区、
E)霊山町下小国地区、F)堂ノ内地区(図では赤枠で表示)が抽出された。
なお、F)堂ノ内地区については、伊達市の上位計画において、その用途や位置づけが別
途示されているため工業団地開発候補地から除くものとする。
よって、工業団地開発候補地は以下の5地区とする。
【工業団地開発候補地抽出結果】
A)
保原町桑田地区
B)
保原町大泉地区
C)
保原町上保原中ノ台地区
D)
保原町小幡地区
E)
霊山町下小国地区
64
開発候補地抽出結果
D
F
C
B
A
E
65
(3)候補地の相対評価による工業団地開発適地の選定
前項で抽出された5箇所の開発適地について、工業団地適地選定の評価基準として一般的
に企業が求める立地条件と整備の容易性が用いられており、
「(1)工業団地適地選定の抽出・
評価の視点の設定」において適正と判断した以下の5つの視点から相対的に評価を行い、工
業団地開発適地を選定する。
① IC からの近接性
◎:IC 隣接 ○:IC まで概ね 1km △:IC まで概ね 3km ×:IC まで概ね 3km 以上
② 国県道からの近接性
◎:国県道に接している
③ 市街地からの近接性
◎:隣接 ○:一部隣接 △:概ね 1km 以内 ×:概ね 1km 以上
④ 既存の一団の工業地への近接性
◎:隣接 ○:近接 ×:左記以外
⑤ 転用困難な土地利用規制区域を含まない
○:除外の見込みが高い土地利用規制区域を含む
△:除外の見込みが低い土地利用規制区域を含む
×:除外困難な土地利用規制区域を含む
※
⑤についてはすべての区域で農振農用地を含むが、転用にあたっての第三種農地の認定
可否等について別途評価が必要となる。(参考…農地転用条件図)
その他の条件による抽出適地の相対評価
①
②
③
④
⑤
IC(将来
含む)から
の近接性
国県道から 市街地から 既存の一団 転 用 困 難
の近接性
の近接性
の工業地へ な 土 地 利
の近接性
用規制区
域を含ま
ない
◎
◎
◎
△
A)保原町桑田地区
○
B)保原町大泉地区
△
◎
△
×
×
C)保原町上保原中ノ台地区
○
◎
○
×
×
D)保原町小幡地区
×
◎
△
○
×
E)霊山町下小国地区
◎
◎
×
○
○
総合的な評価の結果、保原地区市街地の保原工業団地の南側に隣接し、開設される相馬福
島道路保原ICから1~1.5km の県道山口保原線沿道の一団の農地(田)からなる「保原町
桑田地区」が、農用地解除・農地転用見込みの取得を前提に、最適であると選定される。
(4)新工業団地開発適地選定
(1)及び(2)の検討の結果、造成の比較的容易な一団の平坦地が確保可能な地形条件
であり、市街地及び既存工業地に隣接した位置にあり、相馬福島道路のIC開設により高速
交通網への近接性が高まることが期待される「保原町桑田地区」を新たな工業団地の開発適
地として選定する。
66
農地転用条件図
D
C
B
A
E
67
5-3.選定した開発適地(保原桑田地区)への新工業団地整備実現に向けて
(1)保原桑田地区における新工業団地の基本的な考え方
本市においては、①定住促進、②農村地域の活性化、③ふくしまの復興を支える、という
3点から身近な職場を確保していくことが必要となっており、工業団地開発の基本方針にお
いてもこの課題に即して、以下の3つの方針が掲げられた。

地域に身近な職場を提供し尐子高齢化社会の生活基盤となり得る企業の誘致

農業を含む既存の地域産業と連関・連携して地域活力を増進する産業機能拡充

相馬福島道路の整備効果を地域に波及させ震災復興に寄与する産業団地整備
本市には現在上記基本方針に基づく新たな一団の産業用地を供給可能な余地がないため、
市内で開発に適した地区として「保原桑田地区」
(以下、本地区)を選定した。
本地区において、工業団地開発の基本方針を踏まえて工業団地の開発を実施するにあたっ
ては、以下のような方向性で進めることが望ましい。

市街地への近接性、周辺の恵まれた自然環境を活かした、住み続けられる・住みたく
なるまちを支える先導的な工業団地開発

市内及び地区周辺に既に立地している企業と関連した業種、業態の企業の用地需要に
応える柔軟な用地規模の設定等による工業団地開発

広域交通網への近接性を活かし、浜通りと中通りの機能分担によりふくしまの復興を
支える工業団地開発

四季を感じる環境にやさしい工業団地開発
(2)立地誘導業種・業態(定性的)と地域雇用創造の目標
本地域における立地誘導業種・業態は「ふくしま産業復興投資促進特区」の特定業種、主
要関連業種を基本とする(3-3.(1)参照)。なお、立地業種は各種製造業をはじめ、相馬福島
道路の整備による相馬港との近接性向上や東北道と浜通りの結節点としての位置付けの向上
を踏まえ、震災以降全国的に進められているサプライチェーンの見直しに対応した広域的な
物流拠点機能の立地も目標とする。
企業立地誘導の基本方針を踏まえ、選定された団地開発地の特性を勘案して、特に立地が
効果的な業種・業態の団地への立地誘導と地域雇用創設の目標を次のように設定する。
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【立地誘導業種・業態と地域雇用創造の目標】
近接する既存の工場と連関・連携する電子機械関連産業等の事業所用地整備
IC周辺の立地需要が強く地域農業の6次産業化に寄与する食品加工工場・広域配送セン
ター・食料品等産品直売所等の複合施設の用地整備
相馬港との近接性向上、浜通りと東北道の結節点としての特性を活かした流通加工を含む
広域的な物流拠点施設に係る事業用地整備
本市常住就業者の減尐を抑制する 500 人以上の雇用の場の創出
(3)整備用地(宅地)規模と開発区域
震災前年の H22 年末から震災のあった H23 年末の間に減尐した製造業従業者数約 500 人(≒
454 人)を震災により失われた製造業関連の雇用とみなし、これを回復するため、500 人の雇
用創出を目標とする。また、近年の企業立地に際しては、増改築の余地等の可変的な用地供
給が求められるため、それが可能な用地整備供給を行う。
雇用創出の目標と増改築の余地等の可変的な供給に対応した用地の整備を勘案して、IC 周
辺における工業団地整備であること、広域的な産業立地動向、再生可能エネルギーの活用な
どを加味した 40ha が用地需要と考えられるが、このうち約 20ha を本構想に基づき当面整備
供給すべき産業用地とする。
団地整備に当り適正な基盤施設、公益施設を整備する必要があり、それを除いた団地内の
有効宅地率を 70%(環境にやさしい工業団地造成のため、事業性を維持しつつ緩衝緑地等を
確保した場合の有効宅地率)とすれば、団地開発規模は約 30ha と設定されるが、開発要件と
して開発区域の境界を一定の幅員を要する道路等に求めることを踏まえ、団地開発区域は県
道山口保原線と主要市道に囲まれた約 19ha の区域とする。
【開発区域の概要】
保原桑田地区における新工業団地の団地開発規模は約 19ha とし、そのうち、企業立地用
地となる有効宅地面積を約 13.3ha、道路や公園、調整池、緩衝帯等の基盤施設、公益施設の
面積を 5.7ha とする。
開発区域については、開発規模を踏まえ、保原工業団地に隣接した一般県道山口・保原線、
都市計画道路幹線 2 号線、上野崎早稲田線、西郡山柳田線に囲まれた区域とする。
69
新たな工業団地開発整備構想区域
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(4)事業スケジュール
農村地域工業導入法に基づく市(若しくは開発公社)による開発行為により工業団地整備
の場合と市街化区域編入を前提とした市による開発行為により工業団地整備を行う場合の概
略事業スケジュールを検討した。地権者合意形成と進出企業の選定見込みのタイミングによ
って全体の事業スケジュールに影響が出ることが考えられることから以下のスケジュールは
あくまでも想定である。
事業手法別概略スケジュール
<市の開発行為(農工法)による工業団地開発>
着手
2年目
3年目
4年目
5年目
6年目以降
農村地域工業導入実施計画の見直し
農村地域工業導入実
施計画に基づく市によ
る工業団地開発(全て
企業決定(19ha)して
いる場合)
農振地域除外申請(国)
用地交渉・用地買収
農地転用申請
許
可
開発許可申請
造成着工
平成30年度
平成31年度
農村地域工業導入実施計画の見直し
段階的な工業団地
開発を図った場合
(企業決定(1社、
4ha未満)している
場合)
用地交
渉・用地
買収
(済)
農振地域除外申請
(県)
農地転用申請
(県)
開発許可申請
(県)
許
可
造成着工
<市の開発行為(区域編入を先に実施)による工業団地開発>
平成27年度
基本構想・基本計画
平成28年度
平成29年度
予備設計・実施設計
地権者
合意
市街化調整区域を市
街化区域内工業専用
地域に拡大
(市の工業団地開発)
区域マス見直し
整・開・保見直し
開発
協議
用都
途市
地計
域画
・地 決
定
区(
計線
画引
) き
・
用地
買収
開発許
可申請
農政協議
進出企業の募集・選定
※特例措置による市街化区域編入随時見直しを想定
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許開
可発
造成着工
平成32年度以降
イメージパース
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