首都圏ビジネス機用空港に関する分析と見解

首都圏ビジネス機用空港に関する分析と見解
2008 年 11 月
日本ビジネス航空協会
1. はじめに
本年5月国土交通省航空局より、
「ビジネスジェット利用促進調査報告書」が公表された。
この報告では、これまでに無い綿密な調査に基づき今後取り組むべき課題が示されている
が、その中では長年当協会が問題として改善に取り組んできた多くの事項が採り上げられ
ている。
このように充実した報告書がまとめられた事に大変感謝するとともに、日本のビジネス
航空発展のためにここで取り上げていただいた事項の多くが一日も早く実現することを切
に望む次第である。
協会としては今後これら改善に向けての動きに対し全面的に協力すると共に、自らも積
極的に努力していく所存である。
改善に取り組むべき事項は、報告書でも述べられているように多岐に及んでいるが、活
動を進めるにあたって、まずは日本のビジネス航空発展の鍵となっている首都圏ビジネス
機用空港に関する協会としての分析を行い見解をまとめた。
1
2.調査と分析
(1)最近の情勢(多様なニーズに応える首都圏空港の体制整備の必要性)
国の交通総合政策は、船、鉄道、自動車、航空が、それぞれの特徴を生かすことによっ
て成り立っている。
旅客が、どの輸送手段を選択するかは、所要時間、時刻、快適性、費用、安全度等によ
り決定されることになる。
航空を利用する旅客は、旅客機の大型化に伴い、コストダウンが図られ、大衆の足へと
進化することにより恩恵を享受してきた。
我が国の「国内旅客輸送の輸送機関別分担率」によると、航空旅客は、「輸送人員数」で
は、0.11%にすぎないが、「人キロベース」では、6.1%に達している(国土交通白書H18
年度資料)。航空産業が輸送する旅客数は少ないとしても、経済に与える影響力が大きいこ
とを端的にあらわしていると言える。
同様のことが、ビジネス航空にも言える、すなわちビジネス航空で輸送する旅客数は少
ないとしても、自由に移動できることにより生み出される経済効果が、飛躍的に増加する
と思われるのである。
これまでの我が国の航空政策は、増大する航空需要を賄うため、定期航空中心とならざ
るを得ない状況であった。
しかし、空港は、定期航空のためだけにあるのではなく、多種多様な旅客のニーズに応
えるため、定期航空、不定期航空、地域航空、チャーター航空、自家用航空など、さまざ
まなニーズを満たす運航形態にも開かれていなければならない。それぞれの運航形態が互
いに補完する関係にあるからである。すなわち需要の多いところは、定期航空による運送、
需要の少ないところは、地域航空による運送、定期航空へ(逆に定期航空から)乗り継ぐ運送
等の少数個別的運送にはビジネス航空による運送等、空港は多種多様なニーズに応える必
要があるのである。
このことは、混雑空港の代表格と目される JFK においてさえ 2.5%(ニューヨーク圏で
は 3.1%)、ヒースローでも 1.3%(ロンドン圏では同じく 3.1%)の発着枠が、ビジネス航
空等の GA(General Aviation)に割り当てられていることからも裏付けられるのである。
因みに我が国においては、羽田、成田の合計で 0.49%にすぎない。
先進国の主要空港として限られた発着枠の合理的かつ合目的的な配分が望まれるところ
である。
ビジネス航空は、近年欧米はもちろんアジア新興国等でも時間効率、安全性、セキュリ
ティーを重視する人達にとって欠かせない重要なビジネスツールとして急成長している。
2
ビジネス航空はハブ・アンド・スポークからポイント・トゥ・ポイントの高速移動手段
を提供する質の高いモビリティーとして、グローバル化、多様化するビジネスに適した交
通手段として認知されてきている。
2001.9.11.同時多発テロの発生以来、米国において、セキュリティーの問題がさらに
重視されることとなりビジネス航空への流れが一層加速されることとなった。
現在約 20,000 機のビジネス機が世界の空を飛行し、さらに毎年 2,000 機規模で増えて行
くと言われている。
世界の経済は、24 時間体制で動いている。昼間帯、夜間帯を問わず、ビジネス機が 24
時間、日本に飛来(または日本から飛行)できるよう一定の発着枠を主要空港で、あるいは主
要空港とそれを補完する空港と一体となって確保する必要がある。
ビジネス機が、日本に飛来しにくい、とりわけ首都圏に飛来しにくい状況が続くことは、
世界の経済活動の動き、流れから外れることを意味すると言っても決して過言ではない。
多様なニーズに応える首都圏のビジネス機受け入れ体制の整備は、喫緊の課題である
日本からダイレクト ニューヨークヘ
高度 40000ft
、速度 M.8
3
、そして快適な機内
(2)海外主要都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港
等)の状況
海外主要都市圏のビジネス機運航実態は、航空局報告書、II-2.ビジネスジェット運航
の現況、の“4.世界の大都市圏と我が国の主要都市圏における GA 機等の取扱い数”
で述べられているが、そこに掲載されている GA(General
Aviation)機等の取扱数の
代表的数値を以下に記載する。
都市
空港
ニューヨーク
ロンドン
GA 機等離発着回数
JF ケネディー
9,556
2.5 %
ニューアーク
14,376
3.2 %
ラガーディア
14,390
3.6 %
テイータボロー
196,130 (参考値)
モーリスタウン
129,000 (参考値)
ウエストチェスター
145,872 (参考値)
ヒースロー
6,244
1.3 %
ガトウィック
8,873
3.4 %
16,411
7.9 %
スタンステッド
パリ
ルートン
36,596 (参考値)
ファーンボロー
15,184(参考値)
シャルルドゴール
8,605
1.6 %
オルリー
4,087
1.8 %
47,888 (参考値)
ルブルージユ
香港
GA 機等比率
14,417
チェックラップコック
5.0%
“GA 機等”比率を記載してあるのは主として定期便用空港。その 9 空港における“GA 機
等”の平均発着回数は 9,175、“GA 機等”の占める平均比率は 3.4%である。
注:
ビジネス航空については、その性格上国際的に認められた厳密な定義が難しい
ことに由縁して、すべての国、空港で同じ基準でのデータの取得、比較が困難
なため、ここでは局報告書で採用され、ほぼビジネス機等同種航空機の取り扱
い状況を表していると考えられる上記値を掲載した。
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これらから下記の状況がわかる。
・欧米主要都市圏(ニューヨーク、ロンドン、パリ、ロサンジェルス等)のビジネス
航空機取扱い数は、日本の首都圏(次項参照)とは比較にならない程多い。(桁が一桁
ないし二桁異なる。)
・ニューヨーク、ロンドン、パリ等、世界を代表する大都市においては、定期航空機の
発着が多い空港とは別にビジネス航空が優先的に使用できる空港が用意されている。
ニューヨーク:テイータボロー、モーリスタウン、ウエストチェスター等
ロンドン:
ルートン、ファンボロー、ビギンヒル等
パリ:ルブルージュ等
・ニューヨーク、ロンドン、パリ等別にビジネス航空が優先的に使用できる空港が用意
されている都市の定期航空機用空港(ニューヨーク:JFK,ラガーデイア等、
ロンドン:ヒ-スロー、ガトウイック等、パリ:CDG,オルリー)においても、
ビジネス機等のGA(General Aviation)機にある程度の離発着を認めており、しかも
その値(平均 3.1%、香港を入れると 3.4%)は日本の羽田、成田両空港(次項参照、
0.49%)よりもかなり高い。
・香港等ビジネス航空用空港が完備されていない都市(東京もそれに該当する)の主要
定期便用空港のビジネス航空を含むGA機等比率は、上記ニューヨークや、ロンドン、
パリの空港のそれより高くなる傾向にある。
出典
:国土交通省
ビジネスジェット利用促進調査報告書
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(3)日本の首都圏の状況
航空局報告書 28 ページ等記載の羽田・成田のビジネス機発着回数及び算出したビジ
ネス機比率は下記の通り。
空港
ビジネス機発着回数
ビジネス機比率
羽田
1,003
0.34%
成田
1,446
0.72%
合計
2,449
0.49%
前項の海外空港の値にはビジネス航空以外の GA 機の値が含まれていること等を考
慮しても羽田・成田の値が諸外国の空港に比べ極端に小さいことがわかる。
(4)今後の予測
首都圏にビジネス航空用の発着枠として今後どの程度が必要になるかを検討する
には、現況に加え、今後の潜在需要を予測する必要がある。ロンドンのデータ等に
基づいて首都圏の今後の需要、状況を予測した。結果を添付資料1.
「首都圏におけ
るビジネス航空の需要予測と必要な空港発着枠に関する予測」に示す。
(5)協会会員の要望
本報告書作成及び関係先への要望をまとめるにあたり広く協会会員に首都圏ビジ
ネス機用空港に関する要望、意見の提出を求め、それらを分析してみた。
ほとんどの会員は、諸外国の状況等からも近い将来羽田、成田に加えて首都圏に
ビジネス航空用の他の空港が必要になってくるとの認識である。しかし当面の課題
としては羽田に対する早期(第4滑走路 Open 時等)の発着枠拡大、使用可能時間帯
の改善、使用可能スポットの増、運用手続きの改善、FBO施設の設置・充実を望
む声が強かった。また成田に対しても同様の改善要望があった。
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(6)首都圏空港現況調査結果
羽田、成田での離着陸回数を確保する以外に、既存空港のビジネス機専用(共
用)空港化に対する可能性を検討するため、離島を除く関東地方全 18 飛行場につ
いて調査した。その内可能性のある 11 飛行場のデータを別添、添付資料2.「首都
圏飛行場データ」に示す。
結論として、十分な滑走路長、都心からの車のアクセス時間、近い将来のビジ
ネス機空港の可能性などの基本的条件を全て満足する飛行場は無いが、羽田、成
田を除く 9 飛行場の中では以下の 4 飛行場が現時点においては候補になり得ると
考えられる。
飛行場
滑走路
アクセス
(管理者)
(m)
(分)
厚木
2,438
70
1,830
50
2,250
70
大型機訓練基地、ビジネス機用施設用地十分
具体的誘致も反対運動もなし
(海自)
3,350
横田
米軍管理施設のため米軍許可要、R/W 短いが都心に近
い、羽田進入直下、滑走路誘導路補修要
(陸自)
下総
2014 年米軍岩国基地移駐後の可能性、現在整備目的の
ビジネス機使用中、整備施設充実
(海自)
木更津
運用状況と民間機共用の可能性
80
石原都知事が民間共用化を公約するも日米協議で結論
出ず米側の反対強い、ビジネス機用施設用地十分
(米空軍)
現段階ではこの 4 候補飛行場の優劣は付け難く政治的にも可能性が不明である。
従って 1 か所に絞るのでなく 2 か所以上の空港を並行して検討する必要がある。
他の下記の5飛行場は以下の理由からビジネス機用空港としての可能性は現時点
では小と判断された。
入間
:都心からのアクセスが 95 分と長い
宇都宮
:都心からのアクセスが 125 分と長く滑走路も 1,700m
百里(茨城)
:都心からのアクセスが 110 分と長く、現時点ではエアラインを
含む民間機の使用は毎時 1 回程度に制限される方向であり、FBO
などの施設用地も未整備
調布、ホンダ:滑走路長、進入コース上障害物、施設用地等により困難
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首都圏の空港
出典:国土交通省
ビジネスジェット利用促進調査報告書
(7)分析
上記調査の分析結果(調査結果の要点及び今後考えなければならないポイント)
は以下の通りである。
a. 世界及び日本がおかれている状況
・航空輸送手段の多様化、Needs の多様化に伴い、ビジネス機は定期便とは別
の有力な移動手段、ビジネスツールとして世界的には認知されてきている。そ
の結果ビジネス機の発展はアメリカだけでなく、近年ヨーロッパや、アジア新
興国においても顕著である。
・その中にあって日本のビジネス航空は、世界的にみて極端に遅れており、
このままでは日本は世界規模のビジネスに遅れをとることになる。
・日本の遅れは、要の首都圏にビジネス機が離発着できる枠が極端に少ないこと
が大きな要因である。
b. 世界主要都市のビジネス機用空港の状況
・アメリカやヨーロッパの主要都市においては定期便用の大空港とは別に、ビジ
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ネス機がほぼ自由に使える専用又は共用空港が存在する。
・離発着枠が厳しいアメリカ、ヨーロッパの主要都市の定期便用大空港でもある
一定数はビジネス機等 GA(General Aviation)に枠を提供している。
・ビジネス機用専用空港のない香港等では定期便用大空港がより多くのビジネス
機枠を提供している。
・日本の首都圏では、上記のいずれもが提供できておらず、これが世界の流れに
取り残される(日本にビジネス航空が発展しないだけでなく日本にビジネス航
空機が飛来してこない)大きな要因になっている。
c. 日本が世界の流れに遅れないために必要な対応
・首都圏空港における日本の経済規模に見合うビジネス機用発着枠の確保
・その為には、下記が必要になって来る。
-羽田空港における早期(羽田第 4 滑走路 Open の 2010 年が一つの目途)の
ビジネス機用専用枠の設定と増枠(世の中の変化に合わせた発着枠の再配
分)
-羽田空港のビジネス機用施設の充実を含む利便性の向上
-その後、ビジネス機が自由に運航できる首都圏におけるビジネス航空専用
空港(軍との共用空港を含む)の整備
身近にビジネス機がある風景
車からダイレクト飛行機へ、そして又車へ
Dekalb Peachtree 空港(アトランタ郊外)
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3.見
解
上記の調査、分析をもとに、協会としては、今後各方面に対し下記の実現を要望してい
く所存である。
(1) 首都圏空港に対する発着枠増
これまで述べてきた海外主要都市の状況、羽田、成田の現状、そしてビジネス機の
運航制限が緩和された場合の GDP を基にした将来の需要予測などを総合的に検討
し、少なくともビジネス機のために以下の発着枠(発着回数)が必要であると考え
る。
2007 年
(実績)
羽田空港発着枠
羽田空港昼間枠
1,003(0.34)
2010 年
(要望)
10,200 (3.0)
2013 年
(要望)
2017 年
(要望)
12,200 (3.0)
12,200(3.0)
8,760
8,760
8,760
2,200(1.0)
2,200(1.0)
2,200(1.0)
0
0
23,400
23,400
2,449(0.49)
12,400
37,800
37,800
145,900
164,100
184,600
216,000
―――
(内数)
成田空港発着枠
1,446(0.72)
その他の首都圏ビジ
ネス機用空港発着枠
首都圏空港発着枠合
計
首都圏潜在需要
( )内:各空港の総発着枠に占める要望発着枠比率
希望発着枠の根拠
z
現状では羽田・成田合計の総発着回数に対する GA 機比率は約 0.5%であり厳
しく制限されているが、2010 年の総容量の増加後これを欧米首都圏主要空港の
GA 機比率平均 3%強を目標に緩和し、
羽田 3%、成田 1%とする事が望まれる。
z
羽田 10,200 回のうち昼間 12 時間の枠として 8,760 回の確保を要望する。この
枠は昼間(8:30-20:30)の毎時間各 1 回の発着を可能とするものであり
(12x2x365=8,760)、「いつでもどこでも」というビジネス機の利便性確保の
ため最低限必要な発着枠である。
z
しかしこれでもロンドンを基準に GDP 比で算出したビジネス機発着回数の需
10
要予測からは大幅に不足することが明らかであり、また羽田、成田の定期便需
要増による総容量の限界も予測されるため、2013 年頃にはその他の首都圏ビジ
ネス機用空港の整備が必要となる。
z
ビジネス機用空港の発着枠は空港施設の整備に併せて漸増するが、ロンドン地
区の代表的ビジネス機用空港であるファーンボロー空港の現取扱回数のレベル
23,400 回(最新の 2007 年値)を可能とすべく、前述の4つの候補飛行場の1
か所ないし複数個所により実現を図る。
z
首都圏潜在需要やデータの詳細については、添付資料、1参照
(2) 羽田空港に関する要改善事項
羽田空港に関しては、上記発着枠増に加え下記の改善の早期実現が望まれる。
a. 発着枠関連
上記の単なる枠数の増加だけでなく枠数に関連し、
・公用枠の一部としてでないビジネス機専用枠の新設
・昼間各時間帯でのミニマム発着枠の確保(各時間帯 Min2発着/時)
・全時間帯、全方面からの国際便受け入れ
b. スポット関連
・旧整備場地区におけるビジネス機使用可能スポット数の大幅増
・機体サイズに応じた駐機スペースの有効活用
・駐機期間制限(5 日)の延長
c. 運用施設の新設、充実
・ビジネス機運用を視野に入れた旧整備場地区の再開発
・旧整備場地区への諸外国並みの下記を含むフルサービスのビジネス機専用
運用支援施設(FBO(Fixed Base Operation))の新設
・簡易旅客用施設(含 CIQ)
・運航乗務員支援機能
・給油機能
・航空機整備機能(軽微な整備作業を提供できる格納庫を含む)
・上記施設へのスムーズなアクセスと駐車場
d. 上記 c.の施設ができるまでの、旅客が最短時間で移動できるようにする旅客
導線の改善
e. 申請手続きの改善
事前申請受付期限(7 日前申請)の短縮等
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(3) 成田空港に関する要改善事項
長距離国際定期便からのビジネス機への乗り継ぎ(その逆も)の需要増も予想さ
れ、首都圏空港の一つとしての成田空港の重要性は変わらないと考えられる。
a. 引き続き諸外国主要国際空港と同程度(全発着数の1-3%程度)までのビジ
ネス航空機の受け入れ数増及びその維持が必要である。
b. 発着枠増に加えて下記改善措置が必要である。
・5.7t 以下の機体の乗り入れ制限の撤廃(国際定期便との乗り継ぎには小型の
ビジネスジェットが使われる可能性が高い。)
・給油可能スポットを含む使用可能スポットの増(機体サイズに応じた駐機ス
ペースの有効活用を含む)
・旅客が最短時間で移動できるようにする旅客導線の改善
・その後できれば羽田に要望しているのと同じような運用支援施設の整備
・申請手続きの改善
(4) その他の首都圏ビジネス機用空港に関する見解
2.(4)項、今後の予測、の添付資料.1「首都圏におけるビジネス航空の需要予測と
必要な空港発着枠に関する予測」からも明らかなように、羽田、成田両空港で増
枠が認められた場合でも、世界的見地から予想される潜在需要の充足にはほど遠
く、近い将来(2013 年頃)羽田/成田空港に加えて首都圏にビジネス航空用の他
の空港が必要になる事は避けられない。
a. 2013 年頃を目途に、羽田、成田両空港に加えて首都圏にビジネス航空用の他
の空港を使用可能にする。
b. その他の首都圏ビジネス機用空港が備えるべき要件
-軍用空港との共用等、必ずしも専用空港でなくてもよいが、必要な時に必
要な所に運航する事が重要なビジネス航空としては、発着回数、発着時間
帯(羽田が深夜に使えれば第 3 空港は必ずしも深夜は使用できなくてもよ
い)、駐機場等の制限が極力少なく、希望する時間に希望通り使える空港
である事。
12
-都心から遠くても車で1時間 30 分(できれば 1 時間以内)に到達できる
距離にある事。
-滑走路長はビジネスジェット機が離着陸可能な十分な長さを有する事。
(最低 1,500~1,800m程度、国際長距離用には 2,500m以上が必要)
-開港時に、簡単なターミナル(乗客待合搭乗施設、運航乗員支援施設、
国際用は CIQ)が設置されている事。(その後ビジネス航空用空港として
さらに発展させるのであれば、航空機整備機能や格納庫の充実も重要)
上記を満足できる可能性がある候補空港としては、2(6)項でも述べているように
現時点では、
厚木、木更津、下総、横田
の4空港が考えられる。
13
4.
おわりに
「必要な時に、必要な所へ、速く行ける」輸送手段、それがビジネス航空である。
経済活動はグローバル化しており、トップ VIP のみならず中堅の役職員も迅速な対応が求
められ、その強力な活動ツールとしてビジネス航空は、欧米のみならず、中国、インド、
台湾、韓国などのアジアの国々においても、広く使われるようになってきている。
このような状況で日本の首都圏に十分な数のビジネス機を受け入れる事ができる空港が
無いことは、単に日本のビジネス航空業界の発展の阻害要因になっているだけでなく、ビ
ジネス機を武器にする世界の動きから日本が取り残され、日本の経済活動全体の発展を妨
げることにもなりかねない。
そのようなことにならないためにも首都圏にビジネス航空用の発着枠を確保していくこ
とは急務である。
もっと自由に首都圏の空港が使えるようになれば、ビジネス航空の需要が飛躍的に増え、
一大産業が形成されることは確実であると確信する。
今後、我々ビジネス航空業界が努力することは当然であるが、加えて日本の政官財をあ
げての取り組みが必要な時期に来ていると考える。
幸い当局におかれては、2008 年 5 月 30 日前述の報告書を公表され、また ETOPS 規制
緩和等非常に前向きに取り組んでいただいており、自民党においては、
2008 年 6 月 10 日「日
本の活力創造総合戦略」を公表され、「首都圏空港におけるビジネスジエットの受け入れ体
制の充実、出入国手続き等の迅速化」が明記された。
空港問題は、世論の理解も含め更なる広い啓蒙活動等も必要と考える。
協会としては、今回ここに記載している要望事項の早期実現を強く望むとともに、それが
実現できるよう政官財の皆様のご理解とご支援が得られるよう、広く活動していく所存で
ある。
添付資料
:
1.
首都圏におけるビジネス航空の需要予測と必要な空港発着枠に関する予測
2.
首都圏飛行場データ
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