Vol.16 ~ 20

Vol.16
携帯電話の
番号ポータビリティ
●
携帯電話の番号ポータビリティとは、携帯電話の利用
者が通信事業者を変更しても、引き続き同じ電話番号を
使えるようにする、つまり
電話番号を持ち運びできる
制度。
「ボーダフォンからドコモかauに替えたいが、電
話番号が変わるので変更がしにくい」というユーザーの
悩みに応えようというものだ。
●
政策調査室だより 61
1
料金引き下げやサービスの高度化が期待され
る。
期待される安価で
魅力的なサービス
⑤通話料が下がってもトラヒックが伸びるので、
導入のメリット
良いことずくめのようだが、研究会の議論で
事業者の収入はわずかながら増加する。
は、導入のためのコストを番号ポータビリティ
総務省は昨年11月から、有識者、消費者、携
を利用しないユーザーにも負担させることは問
帯電話事業者で構成する研究会を開催してきた
題ではないかとの意見もあった。また、競争の
が、今年4月27日、「2006年度の早い時期に実施
過熱による販売奨励金や広告宣伝費の増大が、
されるのが適当」との報告書がとりまとめられ
事業者の財務に影響を与え、値下げ原資や事業
た。携帯電話事業者の経営に大きな影響を与え
の健全な発展に必要な利益が失われるとの懸念
る制度の概要と課題を見てみよう。
も示された。
報告書は、「(番号ポータビリティは)潜在的
には携帯電話利用者の40〜50%程度の利用ニー
2
ズがある」としたうえで、
「番号ポータビリティ
各国とも導入と前後
して料金水準が低下
の導入による便益(2733億〜3551億円)が導入
に係わる費用(928億〜1411億円を上回る)と分
析している。しかし本当にすべてのユーザーに
諸外国の導入例
とって良いことばかりなのか、事業者にはどの
ような影響を与えるのか、実施までに残された
課題は何かを考えてみよう。
すでに携帯電話の番号ポータビリティを導入
している国の状況は表のとおりである。全体と
報告書では、番号ポータビリティ導入のメリ
して手続きにかかる期間が短い国の利用率が高
ットを競争の促進とユーザー利便の向上とし、
い。99年に導入されたイギリスでは当初、手続
概ね次のように述べている。
きに25日かかっていたが、7日間に短縮されると
①知人や仕事相手への新番号の通知や電話番号
利用者が25%も増加した。
が印刷されている名刺等の刷り直しが不要に
また、料金の変動は通話料の引き下げだけで
なる。また通知漏れで用件を取り逃がしたり、
なく、端末価格の引き下げや料金プランの見直
ビジネスの機会を失う損失が避けられる。
しなどさまざまな形で現れるので単純な比較は
②このため安い通話料、魅力的なサービスの事
難しいが、各国とも番号ポータビリティの導入
業者に変更しやすくなる。
③電話をかける側もアドレス帳や電話・パソコ
ン内に記録された電話番号の書き換えが不要
になる。
④顧客を獲得するため事業者間競争が促進され、
62 政策調査室だより
に前後して料金水準は低下している。ただし導
入コストを全加入者の基本料に上乗せした国も
ある。
今年1月に導入された韓国では、手続き期間が
30分〜1時間と短いこともあって、1ヵ月を経た
諸外国の番号ポータビリティ導入状況
導入時期
累積利用率
手続場所
手続期間
利用者負担
15〜25日⇒平均2日間
+1週間(大量移転以外)
最大30ポンド(約5,400円)
3営業日
9.08ユーロ(約1,300円)
イギリス
99.1
5% (約251万人) 移転元および移転先
オランダ
99.1
5% (約60万人)
スイス
00.3
スペイン
00.12
デンマーク
01.7
11% (約33万人)
スウェーデン
01.9
ノルウェー
01.11
イタリア
02.5
1.6% (約87万人)
ベルギー
02.10
2.2% (約17万人)
移転先のみ
2日(複雑な移転以外) 最大15ユーロ(約2,100円)
ドイツ
02.11
0.47%(約27万人)
移転元および移転先
平均4日+2日
−
移転元および移転先
(販売店は不可)
−
移転先のみ
1.6% (約53万人)
−
無料
5日
無料
移転先のみ
約30日
無料
5% (約40万人)
移転先のみ
5営業日
無料
14.8% (約59万人)
移転先のみ
6.5日
85ノルウェークローナ(約1,300円)
30日(目標5〜10日)
−
無料
22.5〜24.95ユーロ
(約3,100円〜3,500円)
アイルランド
02.11
2.2% (約6.6万人)
移転先のみ
2〜数時間
フランス
03.6
0.1% (約4.5万人)
移転元および移転先
30日
15ユーロ(約2,100円)
EU平均
02.4(EU指令)
2% (約600万人)
9日
14ユーロ(約1,960円)
アメリカ
03.11
−
2時間半以内(推奨)
最大1.75ドル(約190円)/月
シンガポール
97.4
−
香港
99.3
86.3% (約587万人) 移転先のみ
1〜2日
無料⇒香港ドル(約540円)
(02.3より)
オーストラリア
01.9
8.6% (約108万人) 移転先のみ
数時間
一事業者のみ有料
(8豪ドル=約640円)
韓国
04.1
0.9% (約30万人)
30分〜1時間
−
移転先のみ
−
移転先のみ
無料
−
有料⇒無料(03.8より)
1.100ウォン(約100円)
ないうちに1%のユーザーが番号ポータビリティ
られた。事業者を替えても電話番号が変わらな
を利用した。料金競争も加速しており、音声通
いとなれば、大口の法人ユーザーの交渉力は強
話が使い放題の定額料金プランを設けたり、端
まり、より安い条件を求めてくるだろう。
末を無料提供するなど、過熱気味である。
日本では2002年、固定電話にマイライン制度
を導入した際、ユーザー獲得のために料金引き
報告書は、通話料が下がってもトラヒックの
増加で携帯電話事業者は増収になるというが、
実際にはフタを開けてみないと分からない。
下げ競争が行われた。世界一安いと言われた3分
10円の市内通話料まで値下げし、結局各社とも
採算割れになった苦い経験がある。携帯電話の
番号ポータビリティ導入で同じ轍を踏むことが
ないようにしたい。
またこの4月1日から改正電気通信事業法が施
3
手続き費用や
データベース管理等
実施への課題
行され、料金表に縛られない相対取引(事業者
とユーザーの交渉で料金を決める制度)が認め
報告書では、2006年早期の実施を求めている
政策調査室だより 63
が、具体策はこれから事業者が詰めなければな
実施してB社が実施しなければ、A社のユーザ
らない。
ーは番号を変えずにB社に移れるが、B社のユ
たとえば、番号ポータビリティを利用しやす
ーザーは番号を変えないとA社に移れない。つ
くするには、ひとつの代理店で申請から変更完
まり番号ポータビリティを導入しない会社の方
了までをワンストップで短時間に行えることが
が競争上、有利になるからだ。また新規参入者
望ましい。その際、料金滞納者の債務情報をA
にも同じ条件を課す必要がある。報告書では
社からB社に勝手に流せるのか、番号ポータビ
「すべての携帯電話事業者において同時かつ双方
リティの手続き費用は事業者間でどう精算する
向で番号ポータビリティが実現されることが適
かなどの問題がある。
当である」
「新規に市場参入する携帯電話事業者
また現在は、090/080に続く3ケタの番号は事
も参入当初から番号ポータビリティ機能を具備
業者番号として割り振られているが、A社から
することが適当である」としているが、法的に
B社にユーザーが移った場合でも、データベー
担保できるかという問題が残っている。
ス上はA社が番号を管理するのか。あるいは番
また、今回の研究会では「メールアドレスの
号データベース管理のための別組織を作るのか
ポータビリティは時期尚早」とされたが、イン
も検討課題である。
ターネットサービス全体の問題としてメールア
さらに番号ポータビリティは、全事業者が同
時に実施しないと不公正な競争になる。A社が
64 政策調査室だより
ドレスのポータビリティ問題が浮上することも
考えられる。
Vol.17
ブロードバンド
ビジネスと著作権
●
2004年5月31日、映画や音楽のファイルをやり取り
するファイル交換ソフト(注1)
「Winny」の開発者が、
著作権法違反(送信可能化権の侵害)
(注2)ほう助の容
疑で起訴された。同年3月にはメーカーに無断でゲーム
ソフトのプログラムをサーバーに置き、送信可能にした
Winnyユーザの少年が著作権法違反で有罪判決を受けて
いるが、ソフトウエアの開発者が逮捕されたのは世界で
初めてである。
インターネットのトラヒックの8割がファイル交換だ
といわれるブロードバンド時代を象徴するような事件で
賛否両論が渦巻いている。
情報労連は、ブロードバンドビジネスの発展には著作
権に関わる課題が多いことを指摘してきたが、今回は改
めて論点を整理してみよう。
●
政策調査室だより 65
1
な文法で作成されるという特徴があるため、 新
たな創意を加えても
表現が類似すると裁判官
デジタル情報の
保護には無理がある?
に判断される可能性は高い。コピーを前提とし
知的財産権保護の視点
コピーしても劣化が起きないデジタル情報の知
ていなかったアナログ時代の著作権法で、何度
的財産権を保護することに無理はないのか。
情報労連は、ブロードバンドビジネスに関連
この点について、ITに造詣の深い弁護士の早
する著作権関連の問題を大きく二つの視点から
野貴文さんも、連合のブロードバンド勉強会
(注3)で講演し「明らかなフリーライドは許容
捉えている。
第1は、ブロードバンドサービスを支える「技
できないが、Aを保護するあまり亜Aを禁圧する
術」であり、同時に提供される「コンテンツ」
と科学技術・文化の発展が阻害される弊害があ
でもあるソフトウエアの価値を正当に評価する
る」と専門家の立場から情報技術の法的保護の
という知的財産権保護の視点である。
難しさを明らかにしている。
知的財産権は図のように、工業所有権(特許
情報産業に働く労働者の成果であるソフトウ
権、実用新案権、意匠権および商標権)と著作
エアの価値を正当に評価し、保護するためには、
権に分類される。工業所有権は特許庁に登録し
デジタル時代の知的財産権保護のあり方を検討
て発生する権利だが、著作権は制作された時点
する必要がある。
で権利が発生する。ともに「財産権」であり、
財産として処分できる。
2
元来、著作権法では著作物を「思想または感
情を 創作的に 表現したものであって、文芸、
学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と
定義していた。それがスペースインベーダーや
権利処理を簡易化し
コンテンツを豊富に
ブロードバンド普及のために
パックマンなど人気ゲームソフトの模倣事件を
契機に、85年の著作権法改正でコンピュータ・
第2の視点は、ブロードバンドを普及させるた
プログラムも著作物であると明文化されたので
め、魅力あるコンテンツを数多く配信できるよ
ある。
うにすることだ。
ここで問題になるのは、ディスプレイ上の映
情報労連が主体となって運営している「21世
像や音響ではなく、プログラムそのものを著作
紀情報通信政策研究会」は、2002年7月、『ブロ
権の対象としたことである。このため現在まで
ードバンド情報市場の確立に向けて』と題する
プログラムの著作権を争う訴訟では、プログラ
研究報告を発表した。この中でブロードバンド
ムの
が争点になっているが、デジタ
ならではの魅力あるコンテンツを流通させるた
ル情報は複製・改変が極めて容易な一方、プロ
めの課題のひとつとして、著作権関連の権利処
グラムは小説などと違い、限られた言語と厳格
理を円滑化させる必要があることを指摘した。
創作性
66 政策調査室だより
ブロードバンド・インターネットのユーザは、
今年3月で約1500万加入となっているが、このイ
ンフラの能力に見合ったコンテンツがどれだけ
配信されているだろう。これはわが国の著作権
法がコンテンツの二次使用を難しくしているか
3
コンテンツ産業の発展には
強力な保護が不可欠
コンテンツ制作者の権利保護
らだ。音楽についてはJASRAC(日本音楽著作
権協会)が一括して権利処理をしてくれるが、
映像はそうなっていない。
著作権処理を簡易にすることと同時に、コン
ピュータ・プログラム、音楽、映画、放送番組、
例えばテレビ番組の場合、制作した放送事業
アニメーション等コンテンツ制作者の権利が強
者が再放送することは何の問題もないが、ブロ
力に保護されなければ、デジタルコンテンツ産
ードバンド事業者がインターネットで配信しよ
業は発展しない。わが国のコンテンツ産業(制
うとすれば、放送会社だけでなく原作・脚本・
作プロダクション)は中小・零細企業が多いた
音楽等の著作者、実演家(俳優・声優・歌手・
め、発注者である放送事業者やプラットフォー
演奏者)すべてと著作権、肖像権などの権利処
ム事業者の支配力が強く、著作権や二次利用権
理を行わなければならない。劇場用映画も同様
が不当に発注者側に帰属させられているという。
である。NHKが国民の財産ともいえる貴重な番
公正取引委員会のデジタルコンテンツと競争
組をデジタル化してアーカイブに収蔵する作業
政策に関する研究会報告(2003.3)は、
「コンテ
を行っているが、これをNHK以外の事業者がブ
ンツ制作委託者が受託者に対して優越的な地位
ロードバンド・コンテンツとして提供するにも、
にある場合に、著作権の譲渡やその他の取引条
関係者一人ひとりとの複雑な権利処理が必要だ。
件について受託者に不当な不利益を与える場合
まして相手が死亡していたり、行方不明であれ
には、優越的地位の濫用として問題」と指摘し、
ば絶望的といわざるをえない。
委託者には二次利用の収益配分の早期明示など
米国では、映像コンテンツを映画館、ビデオ、
も求めている。また昨年6月には下請代金支払等
テレビなどマルチユースすることを前提にした
遅延防止法が改正され、ソフトウエア制作業、
著作権関連の権利処理がビジネスとして行われ
テレビ番組制作業も下請取引の不当な利益侵害
ている。わが国においても著作権処理を一括し
から保護されることになった。
て行う団体、事業を育成する必要がある。また
優秀なクリエーター、プログラマーを育成す
その際、著作権のうち「人格権」(注4)につい
るためには、著作権をはじめとしたコンテンツ
ては最大限配慮する一方、
「財産権」
(注5)につ
制作者の権利保護が重要である。
いてはマルチユースのための柔らかな扱いを検
討し、権利処理を簡易にすることによりブロー
ドバンド・コンテンツを豊富化させることが求
められる。
政策調査室だより 67
知的財産権の分類
図
特許権(特許法)
実用新案権(実用新案法)
意匠権(意匠法)
商標権(商標法)
工業所有権
知的財産権
著作権(著作権法)
その他の権利
営業上の秘密(不正競争防止法)
植物の新品種(種苗法)
注1 インターネットを介して不特定多数のコンピュータの
連合の I T 関連政策・制度要求全般を総合的に検討して
間でファイルを共有するソフト。著作権侵害をはじめと
いる。
する違法な情報流通の温床になっているとして非難の対
注4 著作人格権(著作者の人格的利益を保護する権利。他
象となっている。1999年にアメリカの大学生が開発し
人に譲渡できない):公表権(未公表の著作物を公表す
た「Napster」が始まり。
るかどうか等を決定する権利)、氏名表示権(著作物に
注2 著作権法の「実演家が自分の実演を端末からのアクセ
著作者名を付すかどうか、付す場合に名義をどうするか
スに応じ自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利」お
を決定する権利)、同一性保持権(著作物の内容や題号
よび「レコード製作者がレコードを端末からのアクセス
を著作者の意に反して改変されない権利)
に応じ、自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利」。
注5 著作財産権(著作物の利用を許諾したり禁止する権利。
したがって、インターネット上で実演やレコードの内容
他人に譲渡できる):複製権、上演権・演奏権、上映権、
を配信する場合、著作者だけでなく、実演家やレコード
公衆送信権等(著作物を公衆送信し、あるいは公衆送信
製作者の許諾が必要になる。
された著作物を公に伝達する権利)、口述権(著作物を
注3 2003年7月に連合の「情報・出版部門連絡会」が I T 政
口頭で公に伝える権利)、展示権、頒布権、譲渡権、貸
策を検討する場として設置された。現在は、自治労、UI
与権、翻訳権・翻案権等、二次的著作物の利用に関する
ゼンセン、電機、JAM、電力など他部門の産別も参加し、
権利
68 政策調査室だより
Vol.18
改正破産法
●
年金改革一色に染まった感があった国会であるが、そ
の陰で2004年5月25日、改正破産法が衆議院で可決さ
れた。破産法は1952年以来、約50年ぶりに大幅に改
正されたもので、その柱は、破産企業における従業員の
生活保護の観点に立った債権の弁済順位見直しである。
今回の「政策調査室だより」では、改正のポイントにつ
いて解説していくこととする。
●
政策調査室だより 69
破産法とは、会社などの再建ではなく清算を
先して配当を受けられることとなっている。
規定した法律であり、債務者である倒産会社の
「破産債権」では、①優先的破産債権、②普通
財産をすべて換価し、これを債権者の優先順位
破産債権、③劣後的破産債権に分けられ、労働
と債権額に応じて配当を行う。
者に対する未払いの賃金である「労働債権」は、
会社が倒産した場合はもちろん、会社更生法
その中でも優先的破産債権と位置付けられてい
や民事再生法で事業を存続しながら会社の再建
た。しかし、滞納税金や滞納社会保険料である
をめざす場合も少なくないが、破産法にもとづ
「租税債権」の方が「財団債権」とされ、「労働
いて再建を断念し、会社を清算してしまうケー
債権」より優先されていた。
スも見られる。破産法は1922年(大正11年)に
このため、破産者が多額の税金や社会保険料
制定された法律であり、制定された時の状況に
を滞納していたり、破産者の財産のほとんどが
そぐわないところもあり、昨年、法務省の諮問
担保に入っていたりすると、未納分の賃金が配
機関である法制審議会において、労働者の生活
当されないケースがある。破産後においても滞
を保護すべき等の観点から、改正が検討され、
納税金を保護するのはやりすぎとの指摘もあり、
今国会において法案が提出されたものである。
連合も労働債権保護を求める抜本的な改正を求
めてきた。
1
労働者の未払い賃金を
租税より優先
「労働債権」の
優先順位の見直し
それらを改善すべく今回の改正では、労働者
の未払い賃金を租税より優先させることとなっ
たのである。
具体的には、破産宣告後の未払い賃金につい
ては、3ヵ月を上限に「財団債権」にするととも
に、未払いの退職金についても給料の 3ヵ月に
会社や個人の破産においては、裁判所が債務
相当する額の支払いを「財団債権」とした。こ
者の資力では債務を返済できないと認めると破
れらに伴い1年を過ぎた滞納税金などは「財団債
産宣告をし、破産管財人が、破産者の財産を換
権」から除外され、格下げされた。なお、3ヵ月
金してすべての債権者にその債権額に応じて配
という上限の設定については、どうやら財政難
当している。その際、銀行など、担保を有して
から財務省の反発があり、3ヵ月という期間にな
いる債権者は、破産手続きと関係なく担保物件
ったようである。
を競売にし、優先的に債権を回収できることに
なっている。
また、今回の改正では、これまで優先的に債
権を回収できていた担保債権については、破産
担保がついていない債権は「財団債権」と
管財人が裁判所の許可を得て設定された担保権
「破産債権」に分けられており、「財団債権」は
を消滅させ、売却した収入の一部を破産した会
〝破産財団から、破産債権に優先して、破産手続
社に組み入れるとする制度も設けた。I L O(国
によらないで随時に弁済を受けることのできる
際労働機関)の条約173条「使用者の支払不能の
債権である〟となっており「破産債権」より優
場合における労働者債権の保護に関する条約」
70 政策調査室だより
改正に伴う債権の優先順位
優先順位
現
行
改
正
破産管財人は裁判
所の許 可を得て担
保権を消滅させ、売
却した収入の一部を
破産会社に組み入
れられる
1
担保債権
担保債権
2
・破産手続費用
・破産手続費用
・税金等の一部(納期1年以内)
(財団債権) ・税金・社会保険料
・賃金の一部(3ヵ月分)
一
部
格
上
3
賃金・退職金
破
(優先的破産債権)
産
債
4
一般債権
権
・退職金(賃金の3ヵ月分)
・賃金の一部
・税金等の一部
(納期を1年過ぎたもの)
一般債権
では、
〝倒産時等に生じる労働者債権は、通常の
向にあるが、個人破産件数は、1994年以降、毎
債権者への返済に先立って使用者の資産から優
年、最悪の数値を更新している。2003年は前年
先的に支払うこと〟となっている。
から 2 万 7000件以上も増え、24万2377件に上っ
たしかに今回の改正では、3ヵ月という上限つ
きであり、ILO条約を完全に満たすまでには至
っていないが、一部の未払い賃金等が、担保債
ており、そのうち 9 割近くが貸金業関係、いわ
ゆるサラ金破産と言われている。
前述したとおり個人破産の場合であっても、
権に次ぐ「財団債権」に位置付けされたことは、
原則、破産者の有している財産は、鍋や衣類な
前進であり評価できるといえよう。
ど差し押さえが禁止されているもの以外は、す
べて換金することになっている。つまり、テレ
2
サラ金破産とは異なり
格差を配慮した額に
個人破産における
「自由財産」の拡大
昨年の法人の破産件数は、前年よりも減少傾
ビ、冷蔵庫などの家財道具や生命保険の積立金、
賃貸アパート・マンションにおける保証金も対
象となり、現行では、生活費として手元に残す
ことができる「自由財産」というものが、昨年
度までは現金 21万円となっていた。
個人破産者が、その後、経済的に立ち直れな
いことになりかねないとの批判から、4月に施行
政策調査室だより 71
された改正民事執行法で「自由財産」は66万円
ならびに免責申し立ての一本化、③養育費や扶
に引き上げられたが、さらに上積みをし、標準
養者として負担すべき費用の非免責債権化など
的な世帯の必要な生活費を基準とした3ヵ月分、
も盛り込まれ、来年から施行される予定である。
99万円としたのである。また、これらはサラ金
破産者への対応との格差に配慮したものと考え
3
られる。つまり、サラ金破産は、破産者の財産
が少ない場合、破産管財人なしで破産手続きが
行われ、家財道具などは処分されずに済み、そ
雇用確保を
たしかなものに
の上、免責により借金についても帳消しになる。
むすびに
一方、サラ金破産とは異なる、ある程度の財
産を残して破産をした者は、家財道具まで換金
「破産なんて…」と思うかもしれないが、お
されてしまうという不公平な現状にも配慮した
そらく破産した会社のほとんどがこう思ってい
といわれている。
たに違いなく、破産したくて破産した会社はな
個人破産における「自由財産」の拡大におい
い。われわれ労働組合としては、雇用を確かな
ても、破産者を落伍者とするのでなく、再起を
ものにする観点から、われわれ労働組合が適宜、
促進する観点から意義のあるものと言えよう。
業績に関わらず財務を含めた経営状況を把握し、
また、今回の改正では、労働組合に対して裁
これらを踏まえどう対応していくのかというこ
判所から破産手続開始決定や債権者集会期日等
とを、労使協議会などを通じて会社と協議して
についての通知義務が加えられたとともに、①
もらいたい。
破産者の財産保全のための制度の拡充、②破産
72 政策調査室だより
Vol.19
03年度
「毎勤統計」と「賃構」の特徴
●
今号は、厚生労働省が実施している「毎月勤労統計調
査(以下「毎勤」
)
」と「賃金構造基本統計調査(以下
「賃構」
)
」の03年度調査結果の特徴について記載した。
ふたつの調査からは、平均賃金と個別賃金の乖離が明ら
かになった。
●
政策調査室だより 73
1
年度の102.8がピークである。以降、2000年に若
干の揺れもどしはあったが、指数は下がり続け、
高学歴化で
平均賃金が上昇
現在は96.7と表中最低値となっている。
「毎月勤労統計調査」
増加傾向が続いており、91年度に全産業より6ポ
これに対し製造業の同指数は、ほぼ一貫した
イント低かった指数が、03年度には逆に6ポイン
雇用、賃金および労働時間について毎月の変
トも高くなっている。
動(全国、都道府県ごと)を把握することを目
このように、賃金コストとしての平均賃金が
的として、厚生労働省が実施している調査であ
上昇しているのであるが、個別賃金の水準(年
る。毎月、月末時点で調査し、その都度発表し、
齢、勤続、職務、能力などの条件をそろえたポ
年度結果を5月中旬に発表している。
イント別の賃金水準。例―高校卒・35歳・勤続
<毎勤の指数変更>
17年)は上がってはいない。
この毎勤統計は、時系列データの安定性を確
個別賃金は上がらず、平均賃金が上がるとい
保するためとして、おおむね3年ごとにサンプル
うのはどういうことなのか。主な原因は4つあ
の抽出替えをしている。今回は今年1月に、事業
る。高年齢化、男子化、高学歴化とパート比率
所規模30人以上の抽出替えをした。そのギャッ
である。要するに、高い価格の労働力の比重が
プ修正として99年2月以降の賃金、時間指数が全
増えたことが製造業の実質賃金指数を増加させ
面的に改められ、常用雇用指数も96年10月以降
たのである。
の数値について同様の措置がとられた。
この結果、現在の指数の基準年である2000年
この4つの原因の中で、高年齢化は、製造業に
限ったことではないし、ピークは過ぎつつある。
の指数が改訂されたことから、2000年=100にな
男子化もかなり前に終わっている。製造業では
るよう過去に遡ってすべての指数が改訂された
パートはすでに減らし済みで、人手が必要なら
のである。現在の5人以上事業所を主系列とする
海外で生産するということになっている。
統計は、90年にはじまっている(これ以前は、
このように考えると、製造業の実質賃金の上
30人以上が主系列だった)ので、実質的には調
昇の主要因(統計的に要因分析をすれば、5〜6
査開始以来のすべての指数が全面改訂されたわ
割)は「高学歴化」であるといえよう。製造業
けである。
において、
「大卒・ホワイトカラー」の労務構成
したがって、指数が修正されたことを考慮し
比率の上昇(=賃金の高い労働者の比率が高ま
て、データを活用願いたい。
ったこと)が、賃金コストの上昇を招いたので
<年度統計にみる特徴>
ある。産業計では、パート比率を高めることで、
第1表「毎月勤労統計・実質賃金指数」には、
上昇を押さえているにすぎない。こちらは、パ
91年度以降03年度まで13年度分の数値をあげて
ート比率が上昇し続けていることが、実質賃金
ある。ここでは毎勤の「実質賃金」指数にふれ
低下の主因となっている。
たい。給与総額での実質賃金は、産業計では96
74 政策調査室だより
2
3.0ポイントの上昇、後半2.9ポイントの下落とな
っている。93年〜03年通期でいえば、パーシェ
ここでも平均賃金と
個別賃金に乖離
指数は1.4ポイント下落、毎勤「総額」は1.7ポイ
「賃金構造基本統計調査」
って支払われる賃金」は4.1ポイント上昇となる。
ント下落、物価は0.1ポイント上昇、毎勤の「決ま
パーシェ指数の低下は、個別賃金の低下を意
6月14日に「賃金構造基本統計調査」03年6月
味するものであり、「決まって支払われる賃金
分が公表、刊行された。この調査からも平均賃
(定期給与)」の上昇は、コストとしての平均賃
金と個別賃金の乖離が明らかになった。
この調査は、わが国産業の5人以上の企業規模
の常用労働者の賃金実態を地域、企業規模、労
金の上昇を意味する。この2つの乖離の最も大き
な要因は、毎勤のところでも述べたように高学
歴化である。
働者の種類、性別、職種、雇用形態、学歴、年
齢、勤続年数、経験年数別等に明らかにするこ
3
とを目的として、厚生労働省が実施している。
賃金は、一般的に、平均年齢や平均勤続年数
が高いほど高くなる。そこで、この「賃構」の
データを統計的な処理によって、賃金や勤続年
人件費負担増を回避
するための一方策に
平均賃金と個別賃金の乖離
数等を固定し、これらの変化による賃金への影
響を除去し、賃金の推移を観察したものが、第2
組合員一人ひとりの賃金は、定昇相当分をな
表「労働者構成を固定した賃金の推移」(以下
んとか確保するにとどまり、組合によっては定
「パーシェ比較」と呼ぶ)である。
昇相当分も確保できないケースも出ており、個
男女計では98年をピークに01年、02年を除け
別賃金水準の上昇はみられない。ベアなし春闘
ば、ほぼ年率0.6〜0.8%の低下が続いている。そ
が数年にわたって続いていることからも明らか
の低下は男性の方が著しく、98年から4.0%の下
である。これがパーシェ指数の低下となって現
落となり、女性の1.8%を上回っている。
れたのである。
このパーシェ指数と毎勤や物価との関係をみ
一方、平均賃金は、高学歴化等の影響により
たのが第3表「パーシェ・毎勤・物価の相互関係」
上昇傾向にある。さらに、社会保険料負担の増
である。パーシェ指数は、93年から98年にかけ
加が、企業の人件費負担を高めたことになる。
て2.2ポイント上がり、98年から03年にかけて3.6
パートや派遣といった有期契約労働者へのシフ
ポイント下がっている。これに対し、毎勤の
トは、この人件費の負担増を回避するためのひ
「現金給与総額」は、93年〜98年=+1.4ポイント、
とつの方策となっている。
98年〜03年=−2.9ポイント、同「決まって支払
個別賃金と平均賃金の乖離は、賃金引き上げ
われる賃金(定期給与)
」は前半が3.4ポイントの
の抑制、賃金制度の見直し、パート・派遣など
上昇で、後半が0.7ポイントの上昇、物価は前半
有期契約労働者の増など、さまざまな課題にか
政策調査室だより 75
たちを変えて、われわれの前に現れているとい
を立ち上げ、今後、これらの課題について検討
えよう。
していくことにしている。
情報労連では、労働政策ワーキンググループ
毎月勤労統計・実質賃金指数
第1表
実
産業計
90年
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
90年度
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
現金給与総額
伸率
製造業
98.1
99.2
99.5
98.7
99.6
101.0
102.2
102.2
100.1
99.0
100.0
99.4
97.6
97.0
98.0
99.4
99.4
98.7
100.1
101.3
102.8
101.6
99.8
99.2
100.1
99.3
97.4
96.7
1.7
1.1
0.3
−0.8
1.0
1.4
1.1
0.0
−2.0
−1.1
1.0
−0.6
−1.8
−0.6
0.7
1.4
−0.1
−0.5
1.3
1.3
1.5
−1.3
−1.8
−0.6
0.9
−0.8
−1.9
−0.7
93.1
93.5
93.3
92.5
93.9
96.8
98.9
99.8
98.1
97.5
100.0
100.7
100.5
102.7
93.0
93.6
93.1
92.6
94.5
97.2
99.8
99.3
98.1
98.0
100.2
100.9
101.0
102.9
質
賃
伸率
事業所規模5人以上
指 数
決って支払われる賃金(定期給与)
産業計
伸率
製造業
伸率
金
93.2
94.0
94.7
95.0
96.5
98.3
99.7
99.4
98.4
98.6
100.0
99.8
99.3
99.1
93.4
94.3
94.8
95.2
97.0
98.7
100.0
98.9
98.3
99.0
99.9
99.9
99.2
99.0
0.4
−0.2
−1.0
1.5
3.2
2.2
0.9
−1.6
−0.6
2.6
0.7
−0.2
2.2
0.6
−0.5
−0.5
2.0
2.9
2.7
−0.5
−1.2
−0.1
2.2
0.7
0.1
1.9
0.7
0.8
0.4
1.6
1.8
1.4
−0.3
−1.0
0.2
1.4
−0.2
−0.5
−0.2
1.0
0.6
0.3
2.0
1.8
1.3
−1.2
−0.6
0.7
0.9
0.0
−0.7
−0.2
89.3
89.5
89.6
89.7
91.8
94.5
96.8
97.3
96.7
97.7
100.0
101.1
102.4
104.3
89.5
89.5
89.6
89.9
92.5
95.2
97.5
96.9
96.8
98.3
100.3
101.4
103.1
104.6
0.2
0.1
0.2
2.3
3.0
2.4
0.5
−0.6
1.0
2.4
1.1
1.3
1.9
0.1
0.1
0.3
3.0
2.9
2.3
−0.6
−0.1
1.5
2.0
1.1
2.8
1.5
労働者構成を固定した賃金の推移(産業計、企業規模計)〔試算〕
第2表
03年
94年
95年
96年
97年
98年
99年
00年
01年
02年
賃金・千円 計 306.3 310.8 311.1 312.3 313.1 313.2 310.9 308.9 308.8 304.4 302.1
男 342.1 347.2 347.5 349.2 349.9 349.6 346.7 343.7 343.7 338.0 335.5
女 221.2 224.6 225.7 226.2 227.4 228.4 226.9 226.8 226.1 225.6 224.2
1.6
1.5
0.1
0.4
0.3
0.0 −0.7 −0.6 −0.0 −0.4 −0.8
計
対前年
0.0 −0.7 −0.7
1.5
1.5
0.1
0.5
0.2 −0.1 −0.8 −0.9
増加率% 男
1.5
1.5
0.5
0.2
0.5
0.4 −0.7 −0.0 −0.3 −0.2 −0.6
女
93年
指数はいずれも00年=100
上段:指数、下段:対前年比
パーシェ・毎勤・物価の相互関係
第3表
93年
94年
95年
96年
97年
98年
99年
00年
01年
99.2 100.6 100.7 101.1 101.4 101.4 100.6 100.0 100.0
1.6
1.5
0.1
0.4
0.3
0.0 −0.7 −0.6 −0.0
98.7 99.6 101.0 102.2 102.2 100.1 99.0 100.0 99.4
毎勤
「現金給与総額」 −0.8
1.0
1.4
1.1
0.0 −2.0 −1.1
1.0 −0.6
95.0 96.5 98.3 99.7 99.4 98.4 98.6 100.0 99.8
毎勤「決まって
支払われる賃金」
1.6
1.8
1.4 −0.3 −1.0
1.4 −0.2
0.4
0.2
98.0 98.6 98.5 98.6 100.4 101.0 100.7 100.0 99.3
CPI
全国
0.7 −0.1
0.1
1.3
1.8
0.6 −0.3 −0.7 −0.7
パーシェ指数
注)毎勤は事業所規模5人以上産業計
CPI(消費者物価指数)は、総合(持家の帰属家賃を含む)
76 政策調査室だより
02年
03年
98.5
−0.4
97.6
−1.8
99.3
−0.5
98.4
−0.9
97.8
−0.8
97.0
−0.6
99.1
−0.2
98.1
−0.3
Vol.20
電気通信サービス
の
内外価格差調査
●
総務省では、わが国の電話やインターネット利用料金
が世界的にどのような水準にあるかを見るため、1995
年から毎年「電気通信サービスに係る内外価格差調査」
を行っている。東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、
デュッセルドルフ、ジュネーブの6都市が調査対象で、
情報通信が国民生活、産業・経済の基本インフラとなっ
た現在、暮らしの豊かさや国際競争力を計る指標のひと
つともいえる。
この調査から、わが国の各種電気通信サービス料金が
世界でどのような水準にあるか概観してみよう。
●
政策調査室だより 77
1
図1
ADSL定額制料金
(アクセス回線利用料+インターネット接続料)
円
6都市の中で最も安価
ADSL定額料金
インターネット接続料
8,850
9,000
8,734
■ 2000年 ■ 2004年
8,000
6,627 6,648
7,000
7,179
6,000
8,125
6,630
5,842 5,991
5,000
4,188
4,000
3,190
3,000
2,000
まず「e‐Japan戦略」策定前の2000年と今年
発表された2004年の調査結果を比較してみよう。
「e‐Japan戦略」は
1,000
0
東京
ニューヨーク ロンドン
デュッセルドルフ ジュネーブ
パリ
ソウル
5 年以内に世界最高水準の
IT 立国になる ことをめざして策定されたもの。
サービスが普及しており、 1 M当たりの価格で
当時、「わが国のインターネット利用の遅れは、
比較すると、図 2 のとおり、ロンドンの78分の1、
インターネット網が低速で非効率な音声電話網
ソウルの6分の1という低価格である。短期間で
の上に作られていることおよび通信料金が従量
価格破壊が起きたのは、ソフトバンクが2001年
制になっていることが原因」だといわれた。
8月に採算割れで参入したのがきっかけ。各社と
しかしあれからわずか 3 年半でブロードバン
ド利用者は1,700万人(2004 年 8月)と、米国に
次ぎ世界第 2 位となったが、通信料金はどう変
も料金値下げでユーザーの囲い込みに走ったた
め、ADSL事業は赤字が続いている。
一方、ADSLが普及するまで高速インターネ
ット接続の主役であったCATVの定額制料金は、
化しただろう。
◇
はじめにインターネット接続を見てみよう。
東京は2000年の6,000円から2004年は4,600円
に低下したが、ADSLほど劇的な低廉化は見ら
インターネット系のサービスはADSLのように
れない(図3)
。これはCATVがほぼ地域独占に
毎年、伝送速度が飛躍的にアップしていること、
なっているためだ。
国によって一般的なサービスレベルが異なるこ
とから、完全に同質のサービスの価格を比較す
ることは難しい。このため調査時点で、各都市
で平均的に利用されているサービスの価格を取
り上げることとする。
ADSL定額制料金は図1のとおり、2000年2月
には東京(NTT)が8,850円でパリの1.5倍、ニ
図4
25
市内通話料金(平日・昼間・3分)
■ 2000年 ■ 2004年
円
21
20
20
18
17
ューヨークの 3 割増しだった。ところが2004年2
15
月には3,190円と2000年の3分の1近くまで値下
10
がりした。 6 都市の中で最も安く、参考に挙げた
『ブロードバンド普及率 No.1韓国のソウルを
も下回る。しかも伝送速度が40Mbpsを超える
78 政策調査室だより
14
12
10
8.5
10
10
11
12
5
0
東京
ニューヨーク
ロンドン
パリ
デュッセルドルフ
ジュネーブ
図2
1M当たりADSL料金
図3 CATVインターネット定額制料金
(2004年)
円
7,000
5,850
6,000
5,000
■ 2000年 ■ 2004年
円
7,000
6,474
6,000
6,709
6,000
4,000
5,394
4,362
4,000
3,385
2,911
3,000
4,978
4,600 4,4084,763
5,000
4,432
3,000
2,000
2,697
2,000
1,000
524
83
0
東京
ニューヨーク ロンドン
パリ
デュッセルドルフ ジュネーブ
ソウル
1,000
0
東京
ニューヨーク
パリ
ロンドン
デュッセルドルフ
ム、KDDI)が発表され、基本料も値下げ競争
2
が始まる。この 4 年間で各国とも通話料値下
市内料金安く
市外はやや割高感
げ・基本料値上げの料金リバランシングを行っ
音声・固定電話料金
準ではない。しかしユーザも料金が下がること
ているので、わが国の基本料は現在でも高い水
を喜んでばかりいられない。NCCの電話サービ
次に音声・固定電話の料金はどうだろう。わ
スもADSLもNTT東・西の加入者線を利用し
が国の市内通話料金(平日・昼間・3分)は、電
ないと提供できないが、基本料がADSLのよう
電公社時代から世界一安かったが、2001年の
な採算割れの値下げ競争に入ると加入者回線の
NCCの市内参入、マイライン制度導入に伴う競
維持が困難になる恐れがある。ユニバーサルサ
争で、さらに値下がりした(図4)
。これに対し
ービスの維持と公正競争を両立させる通信政策
長距離通話料金(最遠距離)は90円から80円に
が求められる。
値下がりしたが、他都市と比べると割高感があ
る(図5)
。
ただし、加入時の一時金 7 万2,800円はニュー
ヨークの12倍、ロンドンの 4 倍と高額である。
また、NTTの交換機を使わないでユーザーに
携帯電話の料金は、基本料に一定時間の無料
固定電話サービスを提供する計画(日本テレコ
通話を組み込んだものが主流であるため比較が
図5
120
長距離通話料金(平日・昼間・3分)
■ 2000年 ■ 2004年
円
80
8,000
■ 2000年 ■ 2004年
7,678
7,210
7,343
90
80
86
41
40
5,828
6,000
5,000
34
49
45
37
5,234
4,420
4,434
4,161 4,239
4,000
42
3,000
22 20
20
7,443
7,004
7,000
60
0
携帯電話基本料金(120分通話プラン)
円
116
100
図6
2,000
1,000
東京
ニューヨーク
ロンドン
パリ
デュッセルドルフ
ジュネーブ
0
東京
ニューヨーク
ロンドン
パリ
デュッセルドルフ
ジュネーブ
政策調査室だより 79
難しい。そこで日本の平均月間通話時間120分
んな水準にあるだろう。日本を100とした指数
に近いパッケージ料金で比較した。2000年は東
で各国の水準を比較してみる(表 1、内閣府
京が7,678円と最高値であったが、2004年はパ
2003 年調査)
。
リの4,239円を若干上回るものの、 6 都市の中で
電気、ガス料金は総じて割高である。郵便は
は低水準にある(図6)
。2006年には番号ポータ
新規参入が認められなかった手紙は米国の約2倍
ビリティが導入され、ソフトバンクなどの新規
だが、競争が活発な小包は米・英の半分程度。
参入も計画されているため、携帯電話の値下げ
国内航空は普通運賃は安いが割引運賃では割高
競争はますます激しくなりそうだ。
である。鉄道運賃は新幹線・特急は日本が高め
だが普通列車・地下鉄は低水準。バス、タクシ
ー運賃は割高だ。
3
こうしてみると通信は公共料金全体の中でも
通信料は国際的に
低水準を維持
国際的に低水準にあると言えよう。
公共料金
最後に、わが国の他の公共料金は国際的にど
公共料金の内外価格差
表1
(2003年・内閣府委託調査、日本を100とした指数、アミ掛けは日本が安いところ)
電気(290kwh使用時)
都市ガス(55万kcal使用時)
上水道(20m3 使用時)
手紙
郵便
小包
市内通話
長距離通話(100km)
電気通信
ADSL(月20時間利用)
普通運賃
国内航空
(400km換算)
割引運賃
新幹線(300km換算)
特急(300km換算)
鉄道
普通(100km換算)
地下鉄(初乗り)
バス(初乗り)
タクシー(昼間5km走行)
80 政策調査室だより
米
106
36
47
54
204
133
57
101
147
176
−
207
83
145
116
49
英
69
35
100
66
201
256
71
130
130
29
149
−
171
237
95
89
仏
72
58
119
81
171
233
79
120
186
39
54
−
106
106
85
43
独
109
88
208
90
146
178
76
141
207
78
84
72
115
98
79
86