ゾウの解剖学的構造（骨格・筋肉・内臓）【 Anatomy of the elephants】本章の英語版： http://www.upali.ch/anatomy_en.html Elephant encyclopedia： http://www.upali.ch/elephant_encyclopedia.html ゾウの骨格は，どのようにできているか？とうがいこつせきついこつろっこつきょうこつ全ての哺乳類のように，ゾウの骨格は，頭蓋骨 *1，脊椎骨 *2，四肢の骨，肋骨と胸骨から成り立っている．ゾウの頭蓋骨は， http://www.upali.ch/schadel.htm をクリックすると見きょうついようついせんついびついることができます．ゾウの種が異なると，胸椎，腰椎，仙椎，尾椎 *3 の数が異なるので，ゾウの骨格は 351 ～ 326 個の骨から成っている． *1 訳者注：頭蓋骨は「ずがいこつ」ではなく，医学的には『とうがいこつ』と呼ばれる． *2 背骨を形成する骨のことで椎骨ともいう．頸椎（首の骨）・胸椎・腰椎・仙椎，尾椎からなる． *3 胸椎，腰椎，仙椎，尾椎は，脊椎骨を頭の方から尾まで分類したもの．頸椎が含まれていないが，せぼねついこつけいついゾウ，クジラやキリンをも含むほとんどの哺乳類の頸椎は 7 個のためである（ 3 種ほど例外あり）．ゾウの筋肉の数はどれくらいか？約 394 の異なる骨格筋が，ゾウの体を動かしている．ゾウの体で，最も注目すべき筋肉の部分は，鼻である．鼻は，約 40,000 の個別的な筋で構成されている．ゾウの鼻の驚くべき柔軟性と器用さは，これらの筋肉による．次ページに続くゾウの心臓は，どれくらい大きいか？他の哺乳類の体の大きさと，その内臓の大きさの比率と比べると，ゾウの内臓は，その巨大な体格に比べて大きくはない．脳の重量は，約 4.5 ～ 5.5kg，心臓の重量は（年齢によるが） 12 ～ 21kg である．心拍動（脈拍）は， 1 分間に約 30 回である．血液量は，体重の約 10%に相当する．健康的なゾウの体温は約 35.9 ℃である．ゾウは，「厚い皮で覆われて」いるか？全ての筋肉，臓器と骨は，丈夫で「厚い」皮膚で守られている．しかしながら，「厚い皮で覆われた」という表現は，今もなお，ゾウに関して，全く正しくない *4． *4 訳者注：正しくない理由は， Skin の章に書かれている（それは以下である）．ゾウが，厚皮動物であるという表現（言葉）は，ただ単に，部分的に正しいだけである．攻撃を受けにくい耳の後ろ，目の回り，腹部，胸部，肩の皮膚は，紙のように薄い．メスゾウの乳首は，どこにあるか？ほとんどの他の哺乳類と異なり，メスゾウの乳首は，人間，霊長類とクジラのように前肢の間（前胸部）にある．子ゾウが生まれてくる時に，子ゾウがドスンと地面に落ちないように（軟着陸できるように），メスゾウの膣の外口（外陰部）は，尾の付け根ではなくて，後肢の間にある *5．もし，ゾウの外陰部が肛門のすぐ下にあれば，そこから赤ちゃんゾウが落ちた場合には， 170cm 前後の高さから落ちてしまうのに対して，この特殊な構造により，たった 70cm の高さからの落下に抑えている．この構造の結果として，後肢の間に乳首を配置できる空間はない *6．そういうわけで，メスゾウの乳腺と乳首は，進化の間に，前方の今の位置（すなわち，両前肢の間）に移動した． *5 訳者注：犬猫，牛馬やキリンのように，肛門のすぐ下に外陰部があるのではなくて，後肢の膝付近まで産道が伸びて開口している． *6 訳者注：外陰部が垂れ下がっているので，子ゾウが乳を吸うために入り込む空間がない．