抄録集(pdf) - 東北静脈経腸栄養研究会

一般演題Ⅰ
症例報告 1
座長 : 加藤 章信(盛岡市立病院
病院長)
1
人工肛門の皮膚障害改善を目的に NST
が介入した一例
1)
東北医科薬科大学病院 看護局、2)同 外科、3)同 栄養管理部
○野村有希1)、児山 香2)、早坂朋恵3)
【症例】 80 歳代女性。糖尿病の既往あり。平成 26 年 10 月、大腸癌の右半結腸切除術後
に縫合不全となり、小腸人工肛門造設。定期的にストーマ外来を受診していたが、翌年
10 月より水様便が続き、装具の漏れが 1 日 1 ∼ 4 回、ストーマ周囲皮膚障害(疼痛・発赤・
ただれ)を認め、12 月にストーマ管理目的で入院となった。
【経過】 入院当日、皮膚排泄ケア認定看護師より、便性状と栄養状態、皮膚障害の改善を
目的に NST 依頼となった。食欲はあるが必要量は充足できず、糖尿病を考慮した大腸術
後食に、鉄蛋白強化と 1 日 2 回の間食を提供した。便性状に対し、活性生菌製剤・腸運動
抑制剤・過敏性腸症候群治療薬の内服の他に、食物繊維含有ヨーグルトを提供した。皮膚
障害には、亜鉛 59 μg/dl と低値のため亜鉛含有胃薬を開始、アルギニン・グルタミン含有
飲料も 1 日 1 回投与した。それに加え免疫強化を目的に 1 日 1 本シスチン & テアニン® を
投与した。本人の理解もあり、積極的に摂取できた。
ストーマ管理は、装具やアクセサリーの選択、ケア方法の工夫を行った。
結果、水様便・皮膚障害が改善、1 ∼ 2 日毎の装具交換で対応可能となり 19 日目に退
院した。
【結語】 NST へ早期に相談があり、入院当初から栄養面のサポートが開始できたことが
改善の一助となった。
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2
NST 介入の在り方について考えさせら
れた 1 症例
地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院 外科
○橋爪英二
症例は 50 歳代男性、2015 年 5 月ショック状態で当院救急搬送、#1 MSSA 敗血症、
#2 急性腎不全、#3 化膿性脊椎炎、#4 左右腸腰筋膿瘍、#5 脊椎空洞症(両下肢対麻痺)
、
#6 仙骨部褥瘡の診断で 6/4NST 介入、必要エネルギー量 2,500 kcal/日と設定した。食事
摂取が極めて少なく、NGT による強制栄養を開始するも NGT を自己抜去される状況で
あった。嚥下機能に問題はなく、
経口で摂取熱量増加を図った。全身状態は徐々に改善し、
経口摂取にて目標熱量の摂取が可能となり、7/15 酒田医療センター転院となった。転院先
では経口摂取で約 2,200 kcal/日の摂取が維持できていた。最終的に車椅子自操が可能とな
り、仙骨部褥瘡は治癒、11/9 施設へ退院した。
2016 年 4 月 MRSA 菌血症、仙骨部褥瘡、左大腿膿瘍にて当院緊急入院。NST 再介入に
て経口摂取で必要熱量の摂取を目指す方針とした。MRSA 感染のコントロールがついた状
態で 6/14 精神科病院へ転院となった。
2016 年 8 月呼吸不全、意識障害にて当院救急搬送。ご家族より気管切開、胃瘻作成等
の積極的な治療は希望されないとのことで 2016/9/7 永眠された。享年 53 歳であった。
本症例では、一度は広汎な褥瘡、感染症は治癒を認め退院したが、その後に再発、全身
状態の悪化を認め、最終的には救命できなかった。NST 介入の在り方について示唆に富
んだ症例を経験したので若干の考察を加え報告する。
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3
心肺停止蘇生後、多発性脳梗塞、敗血症
性ショックを克服し、NST 介入により
経口摂取可能となった一例
栗原市立栗原中央病院
○木田真美、千葉直史、佐々布隆暁、渡邉香奈子、伊藤義博、
中川 有
【症例】 62 歳、男性。
【現病歴】 H28 年 3/1 自宅で意識消失し倒れ、救急搬送。心肺停止状態で挿管、人工呼吸
器装着、PCI 施行。有意狭窄ないが動脈硬化高度。循環動態不安定で IABP、PCPS、脳低
体温療法開始。3/10 多発性脳梗塞発症し急性期治療。気管切開後人工呼吸器離脱。3/20
肺炎、尿路感染症、感染性下痢症による敗血症性ショック。1 か月後感染症はコントロー
ルされ、経鼻経管栄養開始。5/19 治療継続のため当院転院。
【経過】 開眼し呼名に頷くが指示応答なし。右片麻痺、上下肢拘縮傾向。失語、構音・嚥
下障害と高次脳機能障害認めリハビリ開始、NST 介入。6/30 胃瘻増設。嚥下訓練、口腔
内刺激、顔面筋刺激、頸部エクササイズ等行い、発語促進・言語訓練施行。喉咽頭での回
復良好で、嚥下機能改善。胃瘻併用し徐々に食事形態 up。2 か月後には訓練食から軟菜食
全粥ミキサーとろみ食摂取。気切閉鎖後発語レベル改善、会話成立。現在右片麻痺は高度
だが、車いす移乗軽介助、端坐位安定。9/26 施設入所。
【考察】 比較的若年で、本人・御家族の意欲ありかなり状態が改善。高度麻痺はあるが、
残存機能が訓練により回復していく過程を目の当たりにし、設定目標に向かい個々人が尽
力し、横の連携を強め患者との信頼関係を保っていくことの重要性を感じさせられた。
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4
VE(嚥下内視鏡検査)が嚥下機能改善
に有用だった術後廃用症候群の一例
1)
公立刈田綜合病院 リハビリテーション科、2)同 耳鼻咽喉科、3)同 NST
○齋藤祥恵1,3)、新田留美子1,3)、福永高弘1,3)、斎 一徳1)、髙橋紘子1)、
松原 悠3)、髙橋由紀子2)、桑名智恵子3)、佐藤 馨3)
【はじめに】
当院では嚥下機能検査として VF を施行してきたが、2016 年より、耳鼻咽
喉科医師の協力により適時 VE が可能となった。今回 VE が嚥下機能改善に有用だった一
例を経験したので報告する。
【症例】 82 歳。男性。腹痛・嘔吐で当院受診。大腸癌イレウス、誤嚥性肺炎の診断でハ
ルトマン術施行。術後長期人工呼吸管理、維持透析となり廃用症候群に陥った。
【経過】
人工呼吸器離脱後も排痰の多い状態が継続し、ST 介入時も酸素 3 L、カフ付き
カニューレ装着し唾液誤嚥著しい状態であった。VE による初回評価は、嚥下反射なく、
唾液誤嚥、残留物貯留などの所見を認め、兵頭らの嚥下内視鏡検査スコア評価基準では
11/12 点であった。そこで経管栄養カロリー増加し栄養状態の改善やリハビリによる排痰
訓練や筋力増強訓練を行った。その結果、本人の食べる意欲が向上し、積極的に間接的嚥
下訓練に取り組んだところ、嚥下反射惹起がみられるようになり経口摂取可能となった。
その後、唾液誤嚥も減少し、カニューレも抜去。2 回目の VE では同上評価基準 3/12 点と
改善し、3 食経口摂取、ADL 向上し無事転院となった。
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5
キャリーバッグTM を用いた HPN により
ADL を維持しながら抗がん剤治療を継続
している胃癌の一例
1)
大崎市民病院 腫瘍内科、2)同 外科、3)同 NST
○高橋義和1,3)、大石隆之1)、坂本康寛1)、神波力也2,3)、蒲生真紀夫1
【はじめに】
Home Parental Nutrition(在宅中心静脈栄養、以下 HPN)は合併症や ADL
の低下等の理由で本邦では十分に普及しているとはいい難い。今回、キャリーバッグ(以
下 CB)を用いた HPN で ADL を維持しながら外来化学療法を継続している胃癌の一例を
経験したので報告する。
【症例、経過】
72 歳男性、当科紹介時の PS は 2 で食事は 300 kcal/日程度。
2016 年 1 月に上腹部痛を主訴に紹介され、胃体部癌、癌性腹膜炎、亜腸閉塞(cT3、
cN1、cM1 cStage IV)
の診断で 2 月 1 日当科入院となった。1 次療法として SOX 療法を 3 コー
ス施行し、SD 相当の効果を認め HPN 導入し自宅退院となった。一時的に HPN 離脱でき
たが SOX 療法無効となり、再度 HPN を導入した。その際、CB を使用することで ADL
を維持しながら 2016 年 10 月現在も外来化学療法を継続している。CT での L3 領域大腰
筋面積も 1,104 mm2 から 1,315 mm2 と増加していた。
【結果、考察】
キャリーバッグTM を用いた HPN は癌患者の身体的、社会的 ADL を維持
しながら治療を続けるうえで、有効な栄養支持療法のひとつと考える。
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一般演題Ⅱ
症例報告 2
座長 : 土屋 誉(仙台オープン病院
院長)
6
難治性創傷治癒においてアミノ酸含有食
品の付加により効果があった 1 例
1)
KKR 東北公済病院 栄養科、2)同 看護部、3)同 整形外科
○和泉とし江1)、石森か代1)、佐藤美佐子1)、今村美幸2)、鈴木文江2)、
古田島聡3)、NST
【目的】 整形外科における合併症が多い患者の術後は、
創部が回復遅延に至ることが多い。
創部感染の可能性がある患者にアミノ酸含有食品(オルニュート)を付加して創部の治療
を継続し、回復を得たので報告する。
【症例の概要】
72 歳男性。2012 年頃より右足関節の腫脹あり。2015 年他院にてリウマチ
疑いのため PSL 治療開始。その後も改善されず当院へ紹介。2016 年 1 月診断目的にて骨
膜切除術を行い、踵骨 OA 偏平足によると判明。右外反偏平足矯正のため腸骨骨移植。三
関節固定目的で入院。既往症 : 不整脈、高血圧症、高尿酸血症、ステロイド性糖尿病。
【経過】
術前術後の栄養管理目的で NST 介入。術後 8 日創傷治癒遅延を認め、創培養か
らブドウ球菌を検出、オルニュート 1 包を付加。改善が見られないため、術後日 12 日オ
ルニュート 2 包に増量。術後 15 日プロマック内服開始。術後 24 日深部感染創部離開のた
めデブリードマン、VAC 療法実施。術後 7 週 VAC 除去、免荷サンダル+インソール装着
で歩行許可。
【考察及び結論】
術後、炎症・貧血のため鉄、たんぱく質、亜鉛、オルニチンを補給。ス
テロイド漸減、中止。創部感染に対し抗菌剤使用に加え、体タンパク、コラーゲンの合成
促進、免疫賦活作用効果のあるオルニチンを含有する食品の継続的な摂取は創部の回復に
有効であると考える。
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7
高度な下痢を来した急性膵炎患者に対し
て消化態栄養剤が有効であった一例
東北大学病院 西 8 階病棟
○阿部ますえ
【目的】 急性膵炎患者の治療の一つとして成分栄養剤を用いた経腸栄養がある。しかし、
下痢が続くと栄養不良となり、全身状態の悪化を招く場合もある。今回、高度な下痢が続
いた急性膵炎患者に対して、消化態栄養剤ペプタメン® スタンダードを選択投与したこと
により排便回数が激減した症例を経験した。
【症例】 急性膵炎を発症した 40 代の男性。経腸栄養開始後の高度の下痢のため約 2 週間
で 4.3% という急激な体重減少が見られ、重度栄養不良と診断された。
【経過】 急性膵炎発症 9 日目に経鼻空腸チューブからエレンタール® を投与したが、投与
2 日後より 1 日 10 回を超える高度な下痢が 1 週間以上続いた。エレンタール® を中止し、
TPN 管理に切り替えた。下痢が鎮静化した時点で、ペプタメン® スタンダードに変えて経
腸栄養の再開を試みた。その結果、下痢を起こすことなく栄養を進めることができた。
【考察】 ペプタメン® スタンダードが下痢に効果があると考えられる機序は二つある。一
つ目はアミノ酸に比べ小腸絨毛より容易に吸収されるペプチドを含有する点、二つ目は脂
肪便発生のリスクを低減する MCT が高配合という点である。成分栄養剤を使用した経腸
栄養剤注入開始後に下痢を呈し栄養が進められない場合に、消化態栄養剤ペプタメン® ス
タンダードが有用である可能性が示唆された。
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8
経腸栄養を含む全身管理により救命しえ
た重症急性膵炎の 1 例
1)
みやぎ県南中核病院 消化器内科、2)同 総合内科、3)同 外科
○川村佳史1)、鈴木 郁1)、田中 裕1)、下田楓美子1)、阿曽沼祥1)、
木村 修1)、梅村 賢1)、佐藤晃彦1)、佐藤 仁2)、上野達也3)
【症例】 73 歳女性。201X 年某日起床時から心窩部痛と頻回嘔吐あり、同日近医より当科
紹介された。血清アミラーゼ高値で、CT 所見と併せて急性膵炎と診断した。厚労省予後
因子 1 点、CT Grade 1 で軽症膵炎と判定し、絶食輸液、蛋白分解酵素阻害剤、抗菌薬投
与による初期治療を開始したが、乏尿が遷延し全身浮腫と胸腹水が出現。第 3 病日には予
後因子 5 点、CT Grade 3 と重症膵炎となり、心不全、呼吸不全を呈したため人工呼吸管理、
血液濾過透析を追加した。第 8 病日より TPN を、第 11 病日からは経腸栄養を開始した。
経過中、予後因子 8 点(致命率 50%<)まで増悪したが、厳密な水分管理と呼吸循環管理
により病態が改善し、第 24 病日に抜管、第 32 病日より食事を再開した。被包化膵壊死を
続発したが感染なく経過し、第 60 日病日退院した。
【考察】 本例は極めて重症の膵炎であったが、多臓器不全の制御と膵壊死部の感染阻止に
成功し救命しえた。重症急性膵炎の感染性合併症には腸内細菌の関与が指摘されており、
抗菌薬投与に加え、経腸栄養が有効であったものと考えられた。
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9
Half ED で寛解導入療法を行った初発小
腸大腸型クローン病の一例
仙台市立病院 消化器内科
○尾形洋平、野村栄樹、菊地達也、松本諒太郎、矢野恒太、
齋藤瑛里、鈴木範明、長崎 太、川村昌司、境 吉孝
【はじめに】 活動期クローン病(CD)に対する経腸栄養療法の寛解導入効果は、副腎皮
質ステロイドとほぼ同等程度であることが複数の RCT で示されており、また総摂取カロ
リーの半分を成分栄養剤で摂取(Half ED)すれば、寛解維持に有用であることが示され
ている。Half ED で寛解導入療法を行った若年初発 CD の一例を報告する。
【症例】 18 歳男性。
【主訴】 腹痛、軟便。
【現病歴】 2016 年 4 月の健診採血で白血球と CRP の高値を指摘されていた。5 月より腹痛、
6 月より軟便が出現。6 月中旬に強い腹痛を認め当科外来受診となった。
【臨床経過】
心窩部∼右側腹部に圧痛あり。炎症反応高値、低蛋白血症を認めた。消化管
検査で上行結腸に敷石像、横行結腸に縦走潰瘍、回腸に縦走潰瘍を認めた。類上皮細胞肉
芽腫も確認され、小腸大腸型 CD と診断した。CDAI は 284 だった。狭窄や瘻孔なく、入
院後絶食で症状の改善を認めており、栄養療法で寛解導入すべく Half ED を行った。最終
的にエレンタール 4 pack+食事 1.5 食/日で寛解導入(CDAI 66)し退院、外来で経過観察
中である。
【結語】 CD の治療は近年目覚ましく進歩しており、従来の Step-up 療法から Top-down
療法が行われる傾向にある。初発 CD のなかには栄養療法が有効な症例が存在し、症例を
選択し治療していくべきと考えられた。
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10
免疫抑制治療中に重症尿路感染症をきた
し、経静脈経腸栄養併用による緩解維持
療法に切り替え得た Crohn 病の 1 例
仙台赤十字病院 消化器内科
○千葉祐貴、大森信弥
42 歳、男性。
【現病歴】 2000 年に Crohn 病(CD)と診断された。肛門周囲膿瘍で Seton Drainage、下
行結腸狭窄のため大腸亜全摘術施行後は、5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)
、Infliximab
(IFX)、Azathioprine(AZA)で維持治療されてきた(時折の尿路感染症状に抗菌薬投与で
対応されてきた)。2015 年、転居に伴い加療目的に当科紹介初診となった。初診時に低リ
ンパ球血症になっていたことや膿尿が続くこともあり、IFX を中止し、精査加療目的に入
院を勧めてきたが希望せず。同年 8 月より食欲低下、悪寒出現。CRP 26.865 mg/ dL を認
めたため入院。
【経過】 精査の結果、神経因性膀胱と慢性膀胱炎を基盤とした尿路感染増悪と判明、抗菌
薬投与で症状改善した。当科初診以降、尿路感染症状のため、仕事を休みがちになってい
たことから、自己導尿指導のもと退院。週に 1 回の絶食+外来 PPN から開始し、1 日 2
食+ 5-ASA 内服+成分栄養 600 kcal/日により CD 症状の悪化増悪なく経過し、通常就業
も可能となり現在に至っている。
【考察】 CD 診療において、生物学的製剤をはじめとする強力な免疫抑制治療が趨勢と
なっているが、本症例のように、重症な感染症を併発することもある。免疫抑制治療の導
入・継続においては常に慎重な姿勢で臨むことや、より安全性の高い成分栄養剤等の使用
を検討することが、治療戦略構築上、重要である。
22
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一般演題Ⅲ
N S T 1
座長 : 宮田 剛(岩手県立中央病院
副院長兼消化器外科長)
11
栄養の力は褥瘡治癒に有効か ? ~多職種
共同前向き観察研究による取り組み
1)
東北大学病院 肝胆膵外科、2)同 栄養管理室、3)同 看護部、4)同 形成外科、
5)
同 耳鼻咽喉・頭頸部外科
○有明恭平1)、元井冬彦1)、岡本智子2)、稲村なお子2)、高橋真紀3)、
佐々木夫起子3)、館 正弘4)、香取幸夫5)、海野倫明1)
近年褥瘡治療に対し、栄養補助の有効性についての検討例が増えており、本疾患に対し
栄養補助食品がもたらす効果が期待されている。しかしながら適切な臨床研究はなされて
おらず、栄養補助に関する明確な治療基準は確立していない。当院では本分野における新
たなエビデンスの確立を目指し、医師、看護師、管理栄養士をからなる栄養サポートチー
ム(NST)
、医師、看護師よりなる褥瘡対策チーム(WOC センター)が合同で、登録症例
数 100 例を目指した前向き観察研究の立ち上げを行った。現在初回登録から 10 カ月が過
ぎ、12 例の登録が得られている。褥瘡治癒症例も出現してきており、一定の成果が期待
できるものと考える。研究における多職種の連携やその役割など、当院での褥瘡に対する
多職種共同臨床研究モデルについて、症例検討を交えて紹介する。
症例は 80 代女性、クロイツフェルトヤコブ病による認知障害が出現し当院入院。臀部
に持ち込みの褥瘡を認めたため、WOC センター紹介。NST による栄養介入を行いつつア
ルジネートⓇ 服用を開始。Conut 値は当初 6 点であったが、2 週間後に 4 点、4 週間後に
4 点と改善傾向を認め、4 週間で褥瘡治癒と診断された。
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12
粘度可変型栄養剤の注入時間及び固形化
の比較検討
1)
山形大学医学部附属病院 薬剤部、2)同 栄養管理部、3)同 看護学科基礎看護学講座、
4)
同 外科学第一講座
○丘 龍祥1)、柏倉美幸2)、松田友美3)、高須直樹4)、白石 正1)、
木村 理4)
【目的】 ペクチンやアルギン酸を用い、投与時は液体、胃内で固形化する可変栄養剤の使
用が増加しているが、注入速度及び胃内 pH による固形化状況を比較した報告は少ない。
今回、可変栄養剤 3 製品の注入時間及び in vitro での固形化率を比較した。
【方法】 可変栄養剤 HE、MM、MP を用いた。経管注入試験で製品を高さ 60 cm から経
管栄養チューブ 6.5、8、10 F で注入、それに要す時間を測定。固形化試験で製品を人工
胃液と混和後、pH 及び全量を 50 メッシュの飾でろ過後の残渣物重量を測定し、固形化率
(%)を算出。
【結果】 経管注入試験で HE は 10 Fr で 30 分弱、MM は 8 Fr 以下で 3 時間以上、10 Fr で
2 時間以上、MP は 10 Fr で 1 時間以上を要した。MM 及び MP は製品間で時間差を認めた。
固形化試験で固形化率が HE は pH 4.89 で 20.1%、MM は pH : 5.64 で 18.5%、及び MP は
pH : 5.51 で 18.4% に上昇し、固形状となった。
【考察】
HE は自然滴下、MM 及び MP は経腸栄養用ポンプが必要であり、胃酸分泌抑制
剤服用患者に対しては MM 及び MP が有効と考えられる。
25
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13
リハ患者の栄養状態と ADL 帰結との関
連
1)
日本海総合病院酒田医療センター NST、2)日本海総合病院 NST
○小林大樹1)、茂木正史1)、佐藤由香1)、伊東郁子1)、橋爪英二2)
【目的】 回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟における栄養障害の実態を調査し、
ADL 帰結との関連を報告する。
【方法】 平成 27 年 1 月から平成 28 年 3 月までに当院回リハ病棟へ入院した 411 例(男性
205 例、女性 206 例、平均年齢 75.2±11.5 歳)の疾患、転帰先、MNA®-SF スコア、FIM
関連項目をカルテ記載より後方視的に調査した。
【結果】
疾患内訳は脳血管疾患 232 例、運動器疾患 153 例、廃用症候群・その他 26 例で
あった。転帰先は在宅 319 例、施設 56 例、転院・療養転科 35 例、在院死 1 例であった。
MNA®-SF スコアは入院時平均 9.0±2.5 点、低栄養 133 例(32%)
、At risk 214 例(52%)
、
栄養状態良好 64 例(16%)であり、退院時平均 10.3±2.3 点、低栄養 64 例(15%)
、At
risk 220 例(54%)
、
栄養状態良好 127 例(31%)であった。退院時 MNA®-SF スコア別の入・
退 院 時 FIM ス コ ア、FIM 利 得、FIM 効 率、 在 院 日 数、 在 宅 復 帰 率 は、 低 栄 養 群 :
65.0±27.6 点、93.8±29.9 点、29.7±19.4 点、0.65±0.46、49.5±20.5 日、50%、At risk 群 :
72.4±24.1 点、103.9±22.7 点、31.5±17.4 点、0.57±0.37、65.2±38.3 日、78%、 栄 養 状 態
良好群 : 83.4±23.5 点、115.1±14.7 点、31.7±18.8 点、0.71±0.46、59.1±51.0 日、91% であっ
た。
【考察】 数ある先行研究同様、
入院時の低栄養に加えリスク症例が計 8 割以上存在したが、
在院中の栄養改善が図られれば、良好なリハアウトカムが見込まれると考えられた。
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14
当院の NST 勉強会の取り組み
社会医療法人康陽会中嶋病院 NST
○阿部春子、熊谷進司、高橋雅紀、日下早知子、末長昭子、
吉野亜紀、皆川大地
【目的】
当院は仙台市宮城野区にある急性期 101 床、リハビリ 50 床、内科、外科、整形
外科、形成外科を有する病院である。2008 年 6 月より全科型 NST 活動を開始し、2 か月
に 1 度勉強会を開催している。NST 活動の一翼を担う勉強会について明らかにする。
【方法】 2008 年 6 月からの 8 年間に行った勉強会 36 回と特別講演会 6 回について、年度・
職種・カテゴリー別に参加人数を検討する。
【結果】 参加者は 8 年間で 2485 名、1 回の平均は 59.2 名であった。年度別では 2008 年
度 244 名、2009 年 度 317 名、2010 年 度 331 名、2011 年 度 280 名、2012 年 度 258 名、
2013 年度 340 名、2014 年度 395 名、2015 年度 329 名であった。職種別参加者は医師 5%、
看護師 26%、リハビリ 24%、管理栄養士 6%、臨床検査技師 5%、事務 21% 等であった。
講演を行った職種は医師 32 回、管理栄養士 7 回等であった。
【考察及び結論】
多くの施設では、
勉強会参加者が年々減少していると報告されているが、
当院では参加人数は維持されていると考えられた。内容も演者も多岐にわたることが要因
と考えられる。今後も勉強会を通して NST の役割を職員に周知し、活動の活発化につな
げたい。
27
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15
栄養連絡ノートを用いた地域間での食事
情報の共有
1)
黒石市国民健康保険黒石病院 栄養科、2)同 外科
○川嶋 彩1)、福士実希1)、柴崎政孝1)、横山昌樹2)
【目的】 病院からの退院先は様々であり、入院中の食事に関する情報不足により、退院後
の患者の生活に不利益が生じる場合が見受けられ、患者を受け入れる側と送り出す側で情
報を共有できるツールの必要性を感じていた。そこで、食事・薬剤の情報に特化した「栄
養連絡ノート」の作成に着手した。
【方法】 近隣 5 病院の医師、薬剤師、管理栄養士、看護師などが集まり、病院間の情報交
換を目的に立ち上げた「栄養と薬剤と地域連携を考える会」において「栄養連絡ノート」
の作成を開始。検討、改定をすすめた。
治療食、嚥下調整食の名称や食形態は施設毎に異なるため、各施設の食事の対応表を作
成し、連絡ノートの内容を各々の施設で確認できる体制を作った。
【結果】 「栄養連絡ノート」を受け取った施設を対象に行ったアンケートでは、すべての
施設で「患者の状態の把握に役立っている」との回答を得た。食事内容や摂取量等を把握
することができ、食事指示がスムーズになったとの意見が聞かれた。
【考察・結論】
「栄養連絡ノート」を介護施設、ケアマネージャーへの連絡にも使用する
ようになり、よりわかりやすくするための改良が必要となっている。今後も切れ間のない
医療の提供に向け改良を進めていきたい。
28
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一般演題Ⅳ
N S T 2
座長 : 櫻井 直(東北大学先進外科)
16
食道癌出後患者の在宅経腸栄養管理にお
ける現状と退院支援の検討
東北大学病院 西 7 階病棟
○平間香織
【はじめに】
食道癌根治術は高侵襲な術式のため、術後の低栄養予防を目的に当科ではほ
ぼ全例で術中に腸瘻を作成している。患者は入院中に経腸栄養手技を獲得するため、在宅
での腸瘻管理は個人に任せており、退院後の管理状況の把握や、入院中の指導内容の評価
をしていなかった。従って今回、在宅での経腸栄養管理において患者が困難に感じている
ことを明らかにし、退院支援について検討したので報告する。
【研究方法】 対象 : 平成 28 年 6 月∼10 月の間に当院で胸部食道癌手術を受け在宅で腸瘻
を使用している患者 3 名とその家族。
方法 : インタビューガイドを用いた半構造化面接。
【倫理的配慮】
東北大学病院臨床研究倫理委員会の承認を得た。
【分析方法】
面接内容を逐語録化し、退院後の経腸栄養管理について語られた部分を抽出
しコード化。コードの類似性相違性を検討しながらカテゴリー化した。
【結果】 患者は 60 代 1 名、70 代 2 名で、妻も同席し面接を実施。3 名とも術後の反回神
経麻痺は無く、食事は経口摂取と経腸栄養(エネーボ 250 ∼ 500 ml/日)を併用し、妻の
サポートを得ながら生活していた。退院後の経腸栄養における困難として、
「経腸栄養に
よる生活の制限」
「満腹感で食事が進まない」
「腸瘻トラブルに関する不安」が挙げられた。
【考察】 退院後は、家族のサポートと、日常生活を重視した経腸栄養と食事のバランスに
関する支援が必要であることが示唆された。
30
─ ─
17
当院における NST 臨床実地修練の実状
と受講者の動向
公立置賜総合病院 NST
○水谷雅臣、渡辺晋一郎、和氣貴祥、菅野絢子、小関祥子、
佐藤由紀、遠藤和子、渡辺絵里子、倉本美紀子、小関 睦、
島貫夏実、伊藤恵美子、遠藤美枝子、江口英行
当院は 2011 年に日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)が認定する教育施設となった。以後
2016 年までに 6 回の NST 臨床実地修練を主催した。当院での実地修練の実際と受講者お
よび受講後の動向を調査した。
受講者の総数は 45 人で職種は看護師 24 人、薬剤師 8 人、管理栄養士 9 人、他 4 人であっ
た。自施設以外からの受講者は 12 人(26.7%)であった。
実地修練は週に 1 回 8 時間の研修を行い 5 週間で 40 時間を満たすこととした。各講義・
実習の講師は自施設の医療スタッフが担当した。
修練終了後、NST 専門療法士認定試験を受験したのは 11 人(23.8%)であった。その
内訳は看護師 4 人、管理栄養士 5 人、言語聴覚士 2 人であった。資格取得者は 9 人(82%)
となった。
受験率は依然低いが、取得率は上がってきた。受験率の低さは、修練のみで満足あるい
はそれ以上の興味がわかないなどの理由が推察されたが、それ以外にもいざ試験を受けな
ければならないとなると消極的になる方が多いのが実情と思われた。当院では 2 年前より
受験予定者に対する小規模学習会を行い、学習のみならず受験者間の連携を図っている。
2014 年度は看護師受験者の合格率 75% であり、看護師合格率全国平均の 50% を大きく上
回った。
一人でも多くの専門療法士を生み出す意気込みで修練を行っているが、現実問題として
試験合格に向けての修練後のフォローアップ つまりやる気の維持や自己学習のサポート
が重要であると考えられた。
31
─ ─
18
整形外科入院患者の NST 介入の有用性
に関する検討
KKR 東北公済病院 整形外科
○古田島聡
整形外科疾患における NST 介入の有用性は、一般外科や内科疾患に比べ、これまでに
ほとんど報告がない。演者は、これまで 3 病院のべ 10 年間 NST 活動に携わってきた。こ
れらの経験から、独自の視点で整形外科入院患者に NST 介入が如何に有用であるかを報
告する。
創傷を有する患者に栄養療法を介入すれば、明らかに治癒促進に働く。高齢者の骨折患
者においては、単に貧血や低蛋白血症の改善だけでなく、術後離床開始時期を早めるなど
ADL の改善にも大きく影響している。また、待機手術患者が脂質異常、高血圧、肥満を
有する場合、
入院中の NST 介入が退院後の生活習慣病改善に大きく影響していた。さらに、
整形外科病棟スタッフにおいては、これまで NST に関し無知・無関心であったが、その
介入により、栄養、嚥下、口腔ケアに関する個々の看護知識や技術の向上や、栄養士、薬
剤師、リハビリテーションスタッフなどコメディカルとの連携が密になり、結果として患
者の QOL の向上に繋がった。
整形外科入院患者に対し、積極的に NST を介入することは、単に【食べる】ことだけ
ではなく、目には見えない二次的な恩恵があると信じて疑わない。
32
─ ─
19
県立 4 病院共通の指標を用いた NST の
効果検証について(第 2 報)
1)
山形県立中央病院、2)山形県立こころの医療センター、3)山形県立新庄病院、
4)
山形県立河北病院、5)山形県立米沢栄養大学
〇髙橋瑞保1)、堀多恵子2)、武田美保子3)、佐藤英子4)、寒河江豊昭5)
【目的】 NST の効果について山形県立の 4 病院が共通した指標を用いた結果を昨年の本
会で報告したが、継続検証したので今回報告する。
【方法】 第 1 報では共通指標として独自の分析表(以下、
分析表)と栄養ケアプロセス(以
下、NCP)を用いたが、今回は経営面での効果(以下、経営効果)を追加した。1)分析
表では、入院から NST 介入までの期間と NST 介入患者の入院期間について、平成 27 年
度の統計分析を行った。2)NCP では、4 病院共通の使用方法について意見をまとめた。
3)経営効果では、適切な栄養管理が病院経営に及ぼす効果について DPC から検討するこ
ととした。
【結果】 1)分析表より、全施設で入院から介入までの期間と入院日数の間に有意な正の
相関を認めた。2)NCP の山形県立病院版の使用方法を明確にしたことで、効率的に栄養
介入できるようになった。3)経営効果について一つの病院で検証開始し、今後データを
蓄積しながら他の 3 病院でも検証導入を検討したい。
【考察及び結論】
適切な栄養管理が入院早期に行われれば入院日数短縮に繋がり、その経
営効果については今後検証が必要である。
33
─ ─
一般演題Ⅴ
I B D
座長 : 元井 冬彦(東北大学大学院
消化器外科学)
20
IBD 症例における中心静脈栄養関連肝機
能障害の臨床的特徴
東北大学病院 消化器内科
○横山直信、黒羽正剛、平本圭一郎、木村智哉、金澤義丈、
角田洋一、遠藤克哉、下瀬川徹
【背景・目的】
中心静脈栄養(TPN)による合併症の一つに肝機能障害がある。炎症性腸
疾患(IBD)は栄養不良症例が多くハイリスク群と考えられるが、これまでにまとまった
報告は皆無である。本検討では、IBD 症例における TPN 関連肝機能障害の現状を明らか
にする事を目的とした。
【方法】 2015 年に TPN を施行した IBD 39 例の臨床経過を retrospective に検討した。
【結果】 男 30 例、女 9 例。平均年齢は 34.7 歳(18-58)
、現病は CD : 35、UC : 3、他 : 1
であった。20 例(51.3%)で TPN 関連肝障害を認め、肝細胞障害型 5、胆汁うっ滞型 10、
混合型 5 であった。肝障害を認めるまでの平均期間は 23.3 日であった。肝機能障害群(20
例)、正常群(19 例)の 2 群間比較では、
平均 ALT 84.4/37.2 IU/l、
ALP 369.5/204 IU/l であっ
た。栄養関連項目では、平均 alb 2.91/2.95 g/dl、BMI 21.4/21.6 kg/m2、グルコース投与速
度 4.1/ 4.2(mg/kg/min)と両群に差は認めなかった。
【考察】 IBD 症例では、適正グルコース投与速度と言われている 5 mg/kg/min 以下の速度
であっても約半数で肝機能障害を認めた。これは過去の非 IBD 症例での報告より頻度が
多い傾向であり、IBD は TPN 関連肝機能障害のハイリスクと推定された。今回の検討で
は、IBD 症例における TPN 関連肝機能障害のリスク因子の抽出は不可能であった為、さ
らなる症例数の蓄積が必要である。
36
─ ─
21
当院におけるクローン病の栄養療法に関
する検討
1)
仙台医療センター 消化器内科、2)同 栄養管理室
○杉村美華子1)、岩渕正広1)、佐々木里沙2)、伊藤裕美2)、鵜飼克明1)、
田所慶一1)
【目的】 当院におけるクローン病患者における栄養療法の現状を分析し、その効果と課題
を明らかにする。
【対象と方法】
現在、当院に通院あるいは入院中のクローン病患者 57 名を対象とした。
① 栄養療法群(16 名)の年齢、性別、病悩期間、病型、生物学的製剤使用の有無、手術歴、
栄養療法の種類・量を retrospective に調査し、非栄養療法群(41 名)と比較検討した。
② エレンタールを以前内服していたがやめてしまった人及び現在エレンタールを一日 3
包未満しか内服していない人にアンケートを行い、なぜ内服できないかを調査した。
【結果】 栄養療法群(16 名)は、非栄養療法群(41 名)と比較して、男性が多く(男/女 ;
15/1 vs. 21/20)
、小腸型が多く(43.8% vs. 14.6%)
、外科手術の既往(50.0% vs. 39.0%)が
多く、生物学的製剤の使用頻度(75% vs. 56.1%)が高かった。
栄養療法の内訳は、エレンタールのみが 9 名で、一日 3 包以上の摂取が 8 名であった。
エレンタールを内服できない理由としては、臭い・味のあげる人が多かった。
【結語】
栄養療法は副作用がなく、特に本邦において多くの evidence がある有効な治療
法である。近年は、生物学的製剤との併用での効果も報告されており、今後も患者への地
道な啓蒙活動やメーカーによる臭いや味の改善などが望まれる。
37
─ ─
22
クローン病に対する抗 TNFα 抗体療法
における成分栄養(Half ED)併用の有
用性
東北大学病院 消化器内科
○遠藤克哉、山本勝利、下瀬川徹
【背景】 抗 TNFα 抗体はクローン病(CD)に対する中心的治療薬であるが、維持療法中
に効果減弱・二次無効となり、同薬による治療を断念せざるを得ないケースが少なからず
存在する。近年、抗体製剤の効果減弱を抑制する併用療法として、CD の既存治療法であ
る成分栄養療法(ED)が注目されるようになってきた。
【目的】 CD に対する抗 TNFα 抗体療法における ED 併用効果を明らかにする。
【方法】 対象は 2003 年∼ 2013 年までの間に当科で抗 TNFα 抗体製剤を新規に導入した
CD 171 例(術後寛解維持目的導入例は対象外)
。
(1)製剤の継続投与率を Kaplan-Meier
法で後方視的に解析した。
(2)ED 併用(摂取量不問)の有無別、Half-ED(900 kcal/日以
上の ED 摂取)の有無別に製剤の継続投与率を Log-rank 法で解析した。
【結果】 全 171 例の臨床背景は、男性 114 例(66.7%)
、導入時罹病期間 5 年(中央値)
、
Top down 導入 28 例(16.4%)
、
製剤種別 infliximab(IFX)144 例(84.2%)
・adalimumab(ADA)
27 例(15.8%)、ED 併用 53 例(31.0%)うち Half-ED 23 例(13.5%)
、免疫調節剤併用 31
例(18.1%)であった。(1)導入後 1 年・3 年・5 年の製剤継続投与率は 89%・79%・72%
であった。(2)製剤継続投与率について、ED(摂取量不問)併用の有無では継続投与率
に差はないが、Half-ED(900 kcal/日以上摂取)併用の場合には有意に継続投与率が高かっ
た(p<0.05)。
【結論】
抗 TNFα 抗体治療における Half-ED 併用は二次無効予防策として有用である可
能性がある。
38
─ ─
23
炎症性腸疾患(IBD)患者における末梢
挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の
有用性
東北大学病院 消化器内科
○千葉宏文、遠藤克哉、平本圭一郎、黒羽正剛、金澤義丈 、
木村智哉、角田洋一、木内喜孝、下瀬川徹
【背景】 IBD 患者での完全静脈栄養(TPN)は入院治療の基本である。TPN は従来、鎖
骨下静脈などから中心静脈カテーテル(CVC)を挿入していたが、安全性から PICC が普
及し当科でも 2014 年に導入した。IBD 患者での従来型 CVC と PICC の合併症について比
較検討した。
【方法】
2013 年 7 月から 2016 年 9 月に TPN 目的に CVC または PICC を挿入した IBD 患
者 137 例の穿刺時合併症、留置期間、抜去理由、カテーテル関連血流感染(CRBSI)を診
療録から調査した。
【結果】 CVC 群 56 例、PICC 群 81 例のうち、穿刺時合併症は CVC 群で気胸 2 例(3.5%)
認 め た が、PICC 群 で は 認 め な か っ た。 留 置 期 間 は CVC 群 35.6±21.4 日、PICC 群
39.3±19.7 日で有意差なく、抜去理由は目的達成が CVC 群 28 例(50.0%)
、PICC 群 58 例
(70.7%)
、血栓が 1 例ずつ、CRBSI が CVC 群 20 例(35.7%)
、PICC 群 14 例(17.2%)で
あった。1,000 カテーテル留置日あたりの CRBSI 発生率は CVC 群 10.05、PICC 群 4.40 で
有意差を認めた(p=0.012)。CRBSI の危険因子を CVC 群に加え年齢、疾患、免疫抑制剤
の有無で単変量および多変量解析すると CVC 群のみで有意差を認めた。
【考察】 PICC は CVC と比較し CRBSI 発生率が低く、既報と合致する結果であった。ま
た PICC は血栓形成が多いと報告あるが、本報告では 1 例のみだった。
【結語】 IBD 患者での TPN 時に PICC は CRBSI 発生率が低く有用である。
39
─ ─
24
ポートカテーテル感染に対する抗菌剤/
抗真菌剤併用ロック療法の有用性の検討
東北大学 消化器外科学
○渡辺和宏、長尾宗紀、阿部友哉、井本博文、唐澤秀明、
工藤克昌、田中直樹、大沼 忍、武者宏昭、元井冬彦、
内藤 剛、海野倫明
【背景・目的】
在宅中心静脈栄養(HPN)は短腸症候群などの症例に対して行われるが、
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を高頻度に合併する(Watanabe K, et al. J Gastroenterol. 2014)。カテーテルを抜去せずに CRBSI を制御する治療として、高濃度の抗菌剤
をポートに注入しロックするロック療法が報告されてきている。当科で考案したロック療
法の有効性について検討した。
【方法】 初回治療として抗菌剤/抗真菌剤を併用したポートロック療法を行う。血液培養
の結果に応じて、感受性のある抗菌剤または抗真菌剤を選択したロック療法を開始する。
14 ∼ 21 日間のロック療法を行う。
【結果】 14 症例(18 回)が登録。起因菌は G(+)球菌 13 回、真菌 3 回、G(­)桿菌 3
回。 94% でロック療法は完遂。MRSA 以外の G(+)球菌感染例での有効率は 82% と良
好も、真菌感染例 0%(0/3 回)、MRSA 感染例 0%(0/1 回)
、G(­)桿菌感染例 33%(1/3
回)であった。有効例 10 例の経過は良好で、ロック療法後累積 1 年ポート温存率は 64%。
【考察】 本療法はとくに G(+)球菌感染例に対して諸文献と同等以上の成績が得られた。
40
─ ─
一般演題Ⅵ
周 術 期 管 理 1
座長 : 佐々木 章(岩手医科大学
外科学講座)
25
膵切除術前患者の上腕計測値と術後合併
症発生の関連
1)
東北大学病院 栄養管理室、2)東北大学 消化器外科
○稲村なお子1)、佐々木まなみ 1)、西川祐未1)、岡本智子1)、元井冬彦2)
【背景】 手術関連合併症は栄養不良の影響を受けるとされ、当院では膵切除術前入院患者
に対し CONUT や BMI、上腕計測による栄養スクリーニングを行っているが、深刻な栄
養不良患者は少ない。一方、膵切除術では肥満や内臓脂肪過多を腹腔内合併症の危険因子
とする報告があり、その評価は主に CT による内臓脂肪面積で行われているが、被爆侵襲
を伴い簡便な栄養スクリーニング指標とは言い難い。
【目的】 ルーチンで行う術前栄養スクリーニング指標の中で、体格や体組成を反映する
BMI、上腕計測値と膵切除術関連腹腔内合併症の関連を検討すること。
【方法】 当院肝胆膵外科に 2012 年 4 月からの 1 年間に膵切除目的で入院した 86 人の術前
BMI、%TSF、%AMC と腹腔内合併症の有無を分析し、有意な関連があった項目のカット
オフ値を算出した。
【結果】 BMI(P=0.623)、%AMC(P=0.630)に関連が見られないのに対し、%TSF はオッ
ズ比(95%CI)1.02(1.00-1.03)、P=0.015 と腹腔内合併症と正の関連を示した。%TSF の
ROC 曲線からカットオフ値を 208.6 と定めると、%TSF が 208.6% 以下の群では腹腔内合
併症の発生率が 6.3% であるのに対し、208.6% 以上の群では 52.2% と有意に高頻度となっ
た(P=0.009)。
【考察】 膵切除前の %TSF 評価は、腹腔内合併症高リスク群のスクリーニング指標とな
る可能性が考えられた。
42
─ ─
26
サルコペニア診断基準として、握力、ふ
くらはぎ周囲径の有用性の検討
仙台オープン病院
○中島康介、安藤涼平、岡田由香里、矢澤 貴、土屋 誉
【目的】 サルコペニアは筋肉量や筋力の低下と定義され、外科手術予後不良因子と報告さ
れているがその診断基準は定まっていない。近年サルコペニアの診断に CT 画像による腸
腰筋体積や体幹筋力を反映するとされる最大呼気流量を使用した報告が散見されるが、腸
腰筋体積の測定は煩雑な操作を要する。そこで握力やふくらはぎの周囲径といった簡便に
測定できる指標で代替できないか検討した。
【方法】 当院で 2015 年 1 月∼12 月に大腸癌手術を施行され、腸腰筋体積、握力、ふくら
はぎ周囲径、最大呼気流量を測定した患者 100 例を対象として比較検討を行った。
【結果】 握力と腸腰筋体積は正の相関を認め、相関係数は 0.45(有意確率<0.001)
、ふく
らはぎと腸腰筋体積は正の相関を認め、相関係数は 0.59(有意確率<0.001)であった。
また最大呼気流量と腸腰筋体積は相関を認めず、
相関係数は 0.29(有意確率 0.003)であっ
た。
【結論】 腸腰筋体積は握力やふくらはぎ周囲径は相関を認め、今後有用なサルコペニアの
診断基準となりうることが示唆された。
43
─ ─
27
食道扁平上皮癌術前治療患者におけるサ
ルコペニアの検討
東北大学 先進外科学
○小澤洋平、亀井 尚、中野 徹、谷山裕亮、櫻井 直、
佐藤千晃、神谷蔵人、久保田洋介、大内憲明
【背景】 現在、進行食道扁平上皮癌の治療として術前化学療法(NAC)や術前放射線化
学療法(NACRT)が一般的であるが、その間のサルコペニアについての検討は少ない。
【方法】 2008 年から 2013 年に当科で NAC・NACRT 後に根治手術を施行した 82 名を対
象とした。CT 検査における腸腰筋の断面積から Psoas Muscle Index(PMI)を算出し、術
前治療前後のサルコペニアの有無やサルコペニアの進行と周術期合併症や予後との関連に
ついて検討した。
【結果】 全体の 75.6% に術前治療中の PMI 減少が認められた。治療前のサルコペニアあ
り群では前治療の治療効果は有意に悪く、術後再発が有意に多かった。前治療内容ごとの
検討では、NACRT 群で有意に多くのサルコペニアの進行が見られた。また、Disease free
survival(DFS)は前治療前のサルコペニアあり群が、なし群に比べて有意に低かった。
さらに多変量解析では、前治療前のサルコペニアが DFS における予後不良因子であった。
【考察及び結論】 食道扁平上皮癌患者は術前治療によって約 75% の患者で PMI の減少が
見られた。術前治療前のサルコペニアは術後の再発や無再発生存に影響を与えている可能
性がある。
44
─ ─
28
成人生体肝移植後晩期合併症である生活
習慣病と栄養療法の必要性
東北大学医学系研究科 先進外科学分野
○原 康之、清水健司、米田 海、中西 渉、戸子台和哲、
中西 史、宮城重人、大内憲明
【目的】 肝移植後の生活習慣病が血管合併症や死亡率の上昇に関与することが報告されて
いる。今回我々は、生活習慣病の移植前後の有病率や危険因子について検討し、長期経過
における栄養療法の重要性について考察する。
【方法】 2001 年から 2012 年までに当科で施行した生体肝移植のうち移植時 18 歳以上の
成人症例で移植後 6 カ月以上生存した 54 例を対象に検討。
【結果】 年齢中央値 51 歳、性別は男性 25 例・女性 29 例。高血圧の有病率は、移植前
18.5%、移植後 35.2% と移植後に上昇したが、肥満、脂質異常症及び糖尿病の有病率は移
植前後で変化はなかった。移植後肥満の危険因子は移植前 BMI ≧25・アルコール多飲歴
であった。移植後高血圧の危険因子は、年齢・移植前 BMI ≧25・移植前高血圧・cyclosporine A であった。移植後脂質異常症の危険因子は、移植前 BMI ≧25 のみであった。移
植 後 糖 尿 病 の 危 険 因 子 は、 男 性・ 移 植 前 糖 尿 病・ ア ル コ ー ル 多 飲 歴・mycophenolate
mofetil であった。
【結語】
移植後に高血圧の有病率が上昇しており、移植前 BMI ≧25 が複数の移植後生活
習慣病の危険因子であった。周術期の適切な栄養管理と危険因子を考慮した長期的なフォ
ローアップが生活習慣病の予防・改善につながり、最終的に長期予後の改善につながるこ
とが示唆された。
45
─ ─
29
炎症性腸疾患手術例における術前栄養管
理の問題点
東北労災病院 NST
○高橋賢一、羽根田祥、渡辺よし子、伊藤有紀子、川嶋 彩、
佐藤美千代、佐藤美由紀
潰瘍性大腸炎(UC)
、クローン病(CD)といった炎症性腸疾患(IBD)手術例における
術前栄養管理の問題点につき、術前に完全静脈栄養(TPN)あるいは経腸栄養(ED)を
2 週間以上施行した症例を対象として検討を行った。血清アルブミン値(Alb)は、CD で
は栄養療法施行により 3.0 g/dl → 3.6 と上昇を認めたが、UC では 3.0 → 2.8 と有意の変化
を認めなかった。プレアルブミン値(PA)については、CD、UC とも上昇した(CD : 15.3
mg/dl → 24.0、UC : 19.1 → 26.2)。CD において病型別の検討を行うと、非穿通型では全
例で栄養療法施行後の CRP が 1 mg/dl 未満となったが、穿通型では 33% の症例で 1 以上
であった。穿通型では非穿通型と比較し栄養療法後の Alb が低い傾向で(3.3 vs 3.6)
、PA
が有意に低値であった(22 vs 26)。UC では栄養療法による Alb 改善効果は乏しかったが
PA の改善はみられており、肝での蛋白合成能の改善に寄与していると推察された。以前
の我々の検討で術前 PA 値と術後の感染性合併症と関連することが示唆されており、UC
の術前栄養評価では PA 値評価の意義は大きいと考えられた。CD 穿通型では炎症改善が
不十分な症例が 1/3 程度存在し、栄養改善効果が限定的であった。
46
─ ─
一般演題Ⅶ
周 術 期 管 理 2
座長 : 大須賀 文彦(福島労災病院
外科)
30
障害肝の肝切除における栄養評価と周術
期管理
東北大学 先進外科
○米田 海、原 康之、清水健司、吉田 諭、宮澤恒持、
柏舘俊明、藤尾 淳、中西 渉、戸子台和哲、中西 史、
宮城重人、川岸直樹、大内憲明
【背景、目的】
肝硬変患者においては、肝障害が進行するに従って、蛋白質・エネルギー
低栄養状態に陥りやすく、術前評価で肝障害度・栄養状態を正確に評価することが手術適
応決定・周術期管理の為に肝要である。当科における、肝障害を有する肝細胞癌患者につ
いて、周術期の栄養状態・周術期合併症について検討した。
【方法】
当科にて 2014 年 9 月より、2016 年 8 月までの 2 年間に肝細胞癌に対し肝切除施
行した 48 例を対象とし、肝障害の程度、術前後の CONUT 値、血清プレアルブミン値、
血中亜鉛値、インスリン抵抗性指数、周術期合併症、術後在院日数等について検討した。
【結果・考察】
術前の CONUT 値は中央値 2、プレアルブミン値は 18.9 mg/dl、インスリ
ン抵抗性指数 2.16 であった。肝細胞癌で肝切除をうける患者の多くでは、術前から栄養
指標で低値を示しており、インスリン抵抗性を有していた。そのような患者では術前から
の LES の導入・BCAA 製剤等の栄養介入、インスリン抵抗性改善のためのリハビリ介入、
腹腔鏡手術などが早期回復に有用と考え、当科でも ERAS を導入しており、その有効性
については今後の検討課題である。
48
─ ─
31
高齢者における術後合併症発生予測因子
の検討
仙台オープン病院 消化器外科
○安藤涼平、土屋 誉
【目的】 近年、高齢者の増加、手術手技や周術期管理の進歩に伴い、高齢者手術例が増加
している。それに伴い、サルコペニアという概念が提唱され、筋肉量低下は術後合併症の
増加に関与すると考えられている。当科では筋肉量の簡易的な指標とし、術前の握力測定
と下腿周囲径測定を採用しており、それらが術後合併症発生予測の一助となるかを検討し
た。
【方法】 2015 年に行われた 65 歳以上の大腸癌手術症例を対象とし、術後合併症を有した
群、有さなかった群を 2 群に分け、年齢、採血検査値、呼吸機能検査値、握力低下の有無
(男性<30 kg、女性<20 kg)
、下腿周囲径を含めた患者背景を比較した。
【結果】 当科では 2015 年に、65 歳以上の大腸癌手術は 126 例行われた。そのうち術後合
併症は 29 例認めた。特に、感染合併症は 14 例認め、内訳は表層 SSI 5 例、深部 SSI 4 例、
肺炎 5 例であった。感染合併症を有した患者群は、有さなかった群と比して、年齢、Alb 値、
呼吸機能検査値、下腿周囲径(31.7 vs 32.6 cm ; p=0.35)に差を認めなかったが、握力低
下 頻 度(10/14 vs 50/112 ; p=0.05)
、Hb 値(11.0 vs 12.3 g/dL ; p=0.01)
、Plt 値(29.0 vs
22.6×103/μl ; p=0.01)
、および好中球値(5,922 vs 3,376/μl ; p=0.01)にて有意差を認めた。
【考察】 術後感染合併症を有した群では握力低下の頻度が有意に高かった。握力低下が全
身筋肉量の低下を反映すると考えられ、術後合併症発生予測の一助となり得る。
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食道癌術前治療中における CONUT 値変
化と周術期合併症の関連
東北大学病院 先進外科
○神谷蔵人、中野 徹、櫻井 直、谷山裕亮、瓶子隆弘、
武山大輔、佐藤千晃、小関 健、久保田洋介、亀井 尚
【目的】 食道癌の周術期においては合併症の発生や重篤化する事が多いと言われている。
術前に積極的な栄養介入を行うことで合併症の予防が期待される。今回我々は術前治療患
者の栄養指標の経時的変化と感染性合併症の発生との関連を検討した。
【対象】 2008 年∼2015 年に当院で CDDP と 5FU による術前治療後に胸腔鏡下食道切除
術を施行した 68 症例。術前治療前と術前治療中の 2 点で CONUT 値を測定し周術期感染
性合併症(縫合不全・肺炎)の発生との関連を検討した。
【結果】 感染性合併症は 19 例(27.9%)
、
内訳は肺炎 14 例(20.6%)
・縫合不全 7 例(10.3%)
であった。感染性合併症発生群(A 群)と非発生群(B 群)で治療前/中 CONUT 値に有
意 差 は な か っ た が、CONUT 値 変 化 量( 治 療 中-治 療 前 ) は、A 群 0.63±0.83、B 群
0.06±1.20(p=0.062)であった。CONUT 値正常から栄養障害へと移行した症例の割合は、
A 群 31.5% 、B 群 14.3%(p=0.104)と有意差はなかったが、肺炎の発生群と非発生群で
はそれぞれ 64.3%、35.2%(p=0.049)と有意差を認めた。
【結論】 食道癌術前治療中の CONUT 値の経時的変化を評価することで、周術期合併症を
予測できる可能性があると考えられた。また肺炎の発生した群においては CONUT 値が有
意に減少していた。食道癌周術期においては術前治療施行中から適切な栄養管理が重要で
ある。
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胸腔鏡下食道切除術後早期回復を目指し
た周術期管理の実際
東北大学 先進外科
○櫻井 直、亀井 尚、中野 徹、谷山裕亮、武山大輔、
佐藤千晃、丸山祥太、小関 健、大内憲明
【はじめに】
当科では早期回復を目指し 2009 年より段階的に周術期管理を変更してきた。
今回、我々は胸腔鏡下食道切除術において周術期管理が治療成績にどのような影響を及ぼ
すかについて検討した。
【対象と方法】
2008 年 1 月から 2015 年 12 月まで胸腔鏡下食道切除、胃管再建術が施行
された症例を対象とし術後在院日数、周術期合併症などについて検討した。
【結果】 2008 年 1 月から 2008 年 12 月に手術を施行した 40 例を従来の周術期管理を行っ
たコントロール群とし、術前リハビリと当日抜管、さらに、術前 2 時間前までの飲水と炭
水化物負荷、手術翌日からの飲水を開始した 2014 年 12 月以降の 59 例を ERAS 群とした。
術後在院日数(コントロール群 vs. ERAS 群 : 39 日 vs. 24 日、p=0.0056)
、ICU 滞在日数
(コントロール群 vs. ERAS 群 : 6 日 vs. 3 日、
p=0.0074)は ERAS 群で有意に短縮していた。
術後合併症は縫合不全や肺炎を含め有意差を認めなかった。
【結語】
ERAS プロトコルは胸腔鏡下食道切除術においても導入可能で術後在院日数の短
縮につながる可能性がある。
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