救急医療とチーム医療 長崎県ドクターヘリ

救急医療とチーム医療
働して、頸静脈栄養や経腸栄養、食事を工夫しながら、
いらっしゃることと思います。救急医療もエビデン
不必要な合併症を予防しています。
多くの先生方には、日々、救急医療に取り組んで
スに基づいた標準的な医療が進んで来ています。内
因性疾患では、ACLS に代表される心肺停止状態へ
の標準的な対応や除脈・頻脈、ACS、stroke に対す
る標準的な対応が推奨されています。外因性疾患で
は、防ぎえた外傷死を減らすために、外傷初期診療
早期から栄養管理を行いながら回復力をサポートし
このような活動を行いながら、重症患者の治療に
病院全体で努力しています。
写真1:RST 関与の呼吸器リハビリ
(JATEC)による体系的アプローチが推奨されていま
す。県内でも県医師会の後援のもと、これらの内容
を学ぶことができる標準コースが開催されています。
さて、私どもは3次の救急医療を担うために、救
命救急センターにて重症患者の治療に携わっていま
す。しかし、医師による治療だけでは限界があるため、
様々な職種と連携してチームで、患者の早期社会復
帰に取り組んでいます。そのいくつかを紹介します。
呼吸療法サポートチーム(Respiratory Support
Team:RST)は、医師、集中ケア認定看護師、臨床
工学技士、理学療法士らが、毎週ラウンドとミィー
ティングを行っています。患者に対する最適な呼吸
補助や呼吸器リハビリなどを検討し、人工呼吸器早
期離脱のための計画を立て、救命センターの担当医・
看護師と共に呼吸器の早期離脱を目指しています。
人工呼吸器が装着されている患者であっても、積極
的に車いす移乗を行い(写真1)、時には、呼吸器付
きでの入浴なども行っています。
長崎県ドクターヘリ
Team:NST)です。救命センターの医師は、重症患
6月までに、要請 5,141 件、出動 4,520 件となり
NST の医師、看護師、管理栄養士、薬剤師らとも協
動 715 件、645 名 の 傷 病 者 の 診 療 を 行 い ま し た。
次 に、 栄 養 サ ポ ー ト チ ー ム(Nutrition Support
者の栄養管理にも目を向けて努力しています。更に、
平成 18 年 12 月から運航を開始し、平成 26 年
ました。平成 25 年の実績では、要請 831 件、出
NATIONAL HOSPITAL ORGANIZATION NAGASAKI MEDICAL CENTER
現 場 出 動 390 件 で、 外 因 性 273 件、 内 因 性 110
件でした。病院間搬送は 243 件で、外因性 43 件、
写真2:格納庫遠景
内 因 性 191 件 で し た。 予 後 を 改 善 で き た 事 例 は
14.6% あり、防ぎえた死亡が少なくとも 14 例あり
ました。
昨年から工事を行っていました格納庫・駐機場・
給油施設が完成し、8月末から供用開始の予定です。
(写真2・3)今までは、次の出動の備えるために、
長崎空港まで給油に行っていたことが不要となり、
離着陸に伴う騒音の減らし地域住民へ負担軽減につ
ながると思っています。
また、今年度からフライトドクターとして、レジ
ごん
しろうず
デントの権 先生(写真4)、白 水先生(写真5)が
加わりました。引き続き、長崎県ドクターヘリへの
支援をよろしくお願いします。
写真3:格納庫近景
今年6月2日より長崎医療センター整形外科部
長として赴任してきました熊谷謙治です。究極の
写真4・5:権 医師(左)白水 医師(右)
危機的と思われます。
長崎医療センター整形外科の特徴として、ドクター
目標は、前任の本川、牧野両先生に伍するように、
ヘリなどを有する充実した救急部門があり、多発外
崎医療センター・整形外科を発展・繁栄させること、
高齢化の進行に伴い、脊椎外科、股関節膝関節外科
後進を良き医療者として世に沢山輩出すること、長
そして長崎県央地区の医療を充実させることであ
ります。
現在の医療行政、医療事情、医学教育は刻々と変
化しております。特にこの数年私たち医療人にとっ
て、米国の合理主義に基づく医療の数量化や商業化
のウェートが増し、決して良い状態ではありません。
また、大都市指向が強くなり、地方の都市の医療は
傷患者に多くの労力を費やさねば成りません。また
など慢性期疾患の質的、量的需要が増大しておりま
す。幸いにして現在の整形外科スタッフは、個々人
が優秀で、性格も良く、チームワークは良好と思い
ます。この関係を維持するためには、個々のスタッ
フの過労・ストレス過多にならぬように配慮する必
要を感じております。
私は、ここ 20 年弱関わった分野は骨軟部腫瘍であ
ります。この分野は整形外科の他の subspeciality、
ます。骨粗鬆症は圧倒的に女に多い病気です。閉経
手術・診療を行うことや、他の診療科と連携、コン
代では2人に1人、70 歳以上になると 10 人に7人
例えば肩関節、股関節、脊椎のチームと連携して、
サルトが多い部門であります。九州内の施設でロー
テーションプラスティー(下肢の腫瘍部を取り去り、
残存機能を向上するため前後逆に残存部を接着する
手術)の最多の症例数を経験しております。このこ
とに関しては、私共の技術に加えて、形成外科、放
射線科、小児科、緩和ケアの連携の賜物かと自負し
ております。また病院病理部、放射線科との画像診
断 discussion により、世界的にも非常に稀な腫瘍病
変、骨病変を経験し、整形外科骨軟部学術集会、症
を迎える 50 歳前後から骨量が急激に減少し、60 歳
が骨粗鬆症といわれています。これは、女性ホルモ
ン(エストロゲン)が骨の新陳代謝に関わっている
からです。その他、年齢や遺伝的な体質、偏食や極
端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、運動習慣など
も骨粗鬆症の原因として考えられており、最近では、
若い女性の骨粗鬆症も問題になっています。なお、
他の病気の影響によって骨粗鬆症になりやすくなる
場合もあります。
骨粗鬆症の症状としては特異的なものは存在しま
例検討会(持ち時間一人1時間弱の整形外科、放射
せん。診断にはまず骨密度の測定検査が行われます。
提示させていただくことが出来ました。患者さんの
ネルギーの低い2種類のX線を使って測定。全身の
線科、病理の専門家の全員検討・討議)に2回症例
骨や軟部組織のこぶが気になる方は、私にご紹介戴
ければ、対応・精査・治療し、逆紹介させて戴きます。
肩、股、膝、足関節など整形外科の主流となる関
節外科は、次号の木寺先生、次々号の浅原先生が述
べると思いますので、整形外科基盤として重要で、
最近注目をあびつつある骨粗鬆症について少し述べ
させて戴きます。
骨粗鬆症有病率の性・年代別分布
骨密度の測定法の主流は DXA(デキサ)法です。エ
ほとんどの骨を測ることができます。他にもレント
ゲン検査や身長測定なども参考にします。血液や尿
から、骨代謝マーカーという検査により、骨の新陳
代謝の速度を知ることができます。骨吸収を示す骨
代謝マーカーの高い人は骨密度の低下速度が速いこ
とから、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高
くなっています。診断の基準は、骨密度の正常値は、
成人(20 ~ 44 歳)の平均値をもとにしています。
基準の 80%以上:正常、70 ~ 80%:骨量減少(要
注意)、70%未満:骨粗鬆症と大まかに定義されます
が骨がもろくなったときに起こる脆弱性骨折が認め
られれば、骨密度の値が骨量減少のレベルであって
も、骨粗鬆症と診断されます。
骨粗鬆症の治療は骨折を起こしてからの治療ではな
く、起こさないための予防が重要です。予防について
は生活習慣の改善が大事で、
食事と運動に気をつけなけれ
ばなりません。骨折を有効に
防止するビスホスホネート製
骨粗鬆症は、がんや脳卒中、心筋梗塞のようにそ
れ自体が生命をおびやかす病気ではありませんが、
骨粗鬆症による骨折から、要介護状態になる人は少
なくありません。厚生労働省などによると、日本国
内の患者は高齢女性を中心に年々増加しており、自
覚症状のない未受診者を含めると、推計で 1200 万
人超に上ります。2007 年の厚生労働省「国民生活
基礎調査」によると、介護が必要となった主な原因
の 9.4%が「骨折・転倒」によるものです。骨は毎日、
古い部分を溶かし(骨吸収)、新しい骨をつくって(骨
形成)生まれ変わっています。骨が溶かされた(壊
された)分を、作りきれなくなると骨粗鬆症になり
剤、選択的女性ホルモン受容
体調節薬などが登場して、骨
粗鬆症治療は大変躍進しまし
た。患者さんの骨の状態が気
になる方は、整形外科、産婦
人科、内分泌代謝内科などを
受診され、上記の検査など相
談されては如何でしょうか?
もちろん私どもにご紹介戴け
れば、対応・精査し、逆紹介
させて戴きます。
何 卒、 ご 指 導・ ご 鞭 撻 よ
ろしくお願いいたします。
産婦人科医長
福田 雅史
1997 年長崎大学を卒業し、2011 年より当院で産
婦人科医長をしています。大村出身で研修医の時も合
わせると3度目の医療センター勤務です。現在に至る
まで、とくに専門を定めるというより産科・婦人科、
年齢の別を問わず全般的に診療を行ってきました。
当院は産科の三次救急を扱うため母体搬送を含め
妊婦さんの紹介を数多く受け入れているのが特徴で、
ご紹介頂く近隣の産婦人科開業医の先生方には大変
感謝しております(写真は右が血糖コントロール不
や下肢リンパ浮腫など)を減少させることが可能で
す。目下手術スキルの習得に努めていますので、症
例の紹介を是非お願い致します。
月曜が外来担当日なのですが、外来に行くとまず
電子カルテの受付画面で地域連携枠の紹介患者さん
を確認することにしていて、これが朝一番の楽しみ
です(産婦人科以外の先生からの紹介があると緊張
しますがテンションは更に上がります)。性器出血、
下腹痛、貧血などで気になる場合はどうか気軽に紹
介して下さい。月曜日は祝日法の関連で休みとなり
がちで、地域連携枠を1日3枠設けていますが足り
ないかも知れません。ご紹介頂ければ枠外でもよろ
こんで診させて頂きます。少しでも地域医療に貢献
できればと思いますので、よろしくお願い致します。
良の糖尿病母体から出生した 4,800g の巨大児、左
は小さく見えますが 3,000g の児です。このような
児の分娩に際しては種々のリスクが伴うので、妊娠
中から十分な管理が必要です)。幸い分娩に至らず妊
婦のリスクが低減しましたら積極的に逆紹介したい
と思いますので、その節はよろしくお願い致します。
産科医療に限らず、悪性腫瘍をはじめとした婦人
科疾患も幅広く診療しています。なかでも今年3月
の本誌で当科の安日部長が紹介した子宮頸癌に対す
る広汎子宮全摘術(骨盤神経温存術式)は、原疾患
の予後を損なうことなく術後合併症(神経因性膀胱
連携室からお願い
すでに多くの患者さまがお持ちの「お薬手帳」を、当院受診時にご持参いただくようお声掛けをお
願いいたします。もし「お薬手帳」をお持ちでない場合は、現在飲んでおられるお薬をご持参いただ
くようお声掛けいただければ幸いです。いうまでもなく、内服薬の履歴は、診療に際して、投薬や手
術のタイミングなどの治療方針決定において欠くべからざる重要な情報のひとつです。よろしくご協
力のほどお願いいたします。
E-mail : [email protected]