総 1 テーマ 納税義務者と課税所得等の範囲 理論:重要度 ★★★ 計算:重要度 ー 法人税は、会社の「もうけ」に対して課され、会社が納める税金である。この「もう け」は、会社が勝手に計算するのでは問題があり、「課税の公平」を図るために一定のル ール「法律」が必要となってくる。このルールが、これから学習していく「法人税法」で ある。 今回は、「法人税とはいったいどのような税金なのか」ということを中心に、法人税法 を勉強していくうえでのいろいろな約束事を学習する。 このテーマの学習内容 テーマ番号 学 習 内 容 学習回数 1-1 法人税の概要 №1第1回 1-2 法人税の納税義務者 №8第3回 1-3 納税義務者と課税所得等の範囲 №8第3回 本テキストの設例は、原則として、年1回3月末決算の法人の当期(自平成24年4月1日 至平成25年3月31日)を対象として作成しています。 -3- 則 企業利益と課税所得 7-1 具体的な課税所得計算と別表4 所得金額は、企業利益と全く別に計算されるのではなく、確定した決算(株主総会の 承認を受けた決算)に基づく企業利益に一定の調整を加えて計算する。 この企業利益を出発点にして所得金額を算出する計算表を「別表4」という。 (注)決算から申告までの流れ 期 首 4/1 期 末 3/31 事業年度 株主総会 5/× 5/31 ▼ P/L・B/S 1 ▼ 確定した決算 (申 告) 別 表 別表4 別表4は、確定決算上の当期純利益との差異が生ずる部分を加算又は減算すること によって所得金額を計算する表である。 P/L 費 用 等 収 益 当 期 純 利 益 別 当 表 期 4 純 利 益 加 益 金 算 入(会計上非収益・税務上益 算 損金不算入(会計上費 用・税務上非損金) 減 益金不算入(会計上収 益・税務上非益金) 算 損 金 算 入(会計上非費用・税務上損 所 得 金 -19- 額 金) 金) 企業利益と課税所得 【具体例】 (会計:P/L) (税務:別表4) 収 益 1,000 益 金 1,200 費 用 700 損 金 800 利 益 300 所 得 400 損金800 P/L 費 用 700 損金算入 100 益金1,200 収 当期純利益 300 益 1,000 所 得 金 額 1,200-800 =400 益金算入 200 別 表 当 期 純 利 益 加 算 減 算 所 4 300 収益計上もれ (益金算入) 200 費用計上もれ (損金算入) 100 得 金 額 400 理論的には、益金1,200-損金800=所得金額400と計算する。 しかし、別表4は損益計算書とのつながりから、税引後当期純利益からスタートし、会 計上の収益と税務上の益金との差額及び会計上の原価、費用、損失と税務上の損金との差 額を加算又は減算することによって所得金額を誘導的に計算する。 -20- 企業利益と課税所得 2 加算・減算 別表4において当期純利益にプラスすることを「加算」、当期純利益からマイナ スすることを「減算」という。 「加算」又は「減算」する項目の中心は「別段の定め」であり、その内容は次の 4つのグループに区分されるが、何が「加算」となり、何が「減算」となるかを理 解することが重要である。 益金算入 「加算」 会計上収益ではないが、税務上益金の額に算入されるもの 会計上収益に計上していれば問題はないが、収益に計上していなければ企業会計 上の利益にプラスする。 (例)売上高の計上もれ、引当金の取崩額など 損金不算入 「加算」 会計上原価・費用・損失だが、税務上損金の額に算入されないもの 企業会計上の利益にプラスする。 (例)交際費、寄附金など 益金不算入 「減算」 会計上収益だが、税務上益金の額に算入されないもの 企業会計上の利益からマイナスする。 (例)受取配当金、法人税の還付金など 損金算入 「減算」 会計上原価・費用・損失ではないが、税務上損金の額に算入されるもの 企業会計上の利益からマイナスする。 (例)売上原価計上もれ、所得の特別控除など -21- 企業利益と課税所得 設 例 株主総会の承認を受けた損益計算書の末尾 税 引 前 当 期 純 利 益 10,000円 法人税、住民税及び事業税 4,000円 当 6,000円 期 純 利 益 「売上高計上もれ」 1,500円 売上高が会計上収益計上されていないが、法人税法では益金となる。 「損金計上法人税」 700円 「損金計上住民税」 300円 「損金計上納税充当金」 2,000円 法人税、住民税及び事業税に含まれ、会計上費用計上しているが、法人税法では損金と ならない。 「受取配当等の益金不算入額」 1,000円 受取配当金を会計上収益計上しているが、法人税法では益金に計上しないことができる。 「貸倒損失認定損」 3,000円 売掛金の一部は会計上損失計上していないが、法人税法では貸倒損失として損金となる。 【別表4】 摘 要 金 当 期 利 益 の 額 円 売 上 高 計 上 も れ 損 金 計 上 法 人 税 損 金 計 上 住 民 税 加 損 金 計 上 納 税 充 当 金 算 小 計 受取配当等の益金不算入額 減 貸 倒 損 失 認 定 損 算 小 所 得 計 金 額 額 -22- 企業利益と課税所得 解 説 【別表4】 摘 要 金 当 期 利 益 の 額 額 6,000円 税引後当期純利益 益金算入 売 上 高 計 上 も れ 1,500 損 金 計 上 法 人 税 700 損金不算入 損 金 計 上 住 民 税 300 損金不算入 損 金 計 上 納 税 充 当 金 2,000 損金不算入 加 算 小 計 4,500 受取配当等の益金不算入額 1,000 益金不算入 貸 3,000 損金算入 減 倒 損 失 認 定 損 算 小 所 得 金 計 4,000 額 6,500 【解答への道】 損益計算書の当期純利益(税引後)を別表4に転記する。 法人税法の学習の第一歩は、別表4の記載方法を理解することであり、別表4上の調整 項目は、「加算」又は「減算」の2つしかない。したがって、何が「加算」となり、何が 「減算」となるのかを的確に判断できるようにしなければならない。 トレーニング -23- 問題1
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