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チャプター2
心臓術後管理の基本1
講師:星野 竜 先生
(2014年4月17日)
心臓血管外科手術の
術後に影響する因子
術前の全身状態
・ 術前のADL
・ 脳障害
・ 動脈硬化
・ 肝・腎・肺機能障害
・ 糖尿病
・ そのほか
術前の心筋障害
体外循環の使用
・ 心停止時間
・ 心筋保護
・ 低体温法
・ 脳保護法
心臓への直接侵襲
(心内環境の変化)
・ 良好な術前全身状態
・ 良好な心不全管理
・ 適切な手術適応
・ 確実な手術
・ 確実な体外循環管理
・ 的確な術後管理
合併症なく
独歩で退院
心臓血管外科手術と
他科の手術の違いは?
① 循環をつかさどる心臓/大血管を手術を行う。
② ほとんどの症例で、人工心肺装置が使用される。
時には超低体温にして全身の循環を止める。
人工心肺装置の使用の利点
● 心臓血管外科手術で、心拍動を止める必要がある場合、
また、上行~腎動脈上の大動脈で遮断する必要がある時、
全身の血液循環と酸素化を維持することが可能。
● 無血手術野・心臓静止野を得ることができる。
一般的な
人工心肺装置とカニューレ位置
人工心肺装置を使用すると
どんなことが体内でおこる?
1. 臓器の還流障害・虚血
2. 免疫機能障害による易感染性
3. 免疫機能障害による血管透過性の亢進
4. 血液希釈による血管内浸透圧低下
5. 耐糖能異常
6. 凝固因子の消耗
7. 低体温
8. 血液の破壊
9. 血管内皮の損傷
10. その他
心不全 呼吸不全 血栓塞栓症 浮腫 低体温
出血傾向 貧血 高血糖 易感染性 臓器障害
したがって、
心臓血管手術直後は
軽度以上のショック状態なることが多い
ショック状態とは?
急激に生じた末梢循環不全のことで、
末梢の臓器が必要とする血流が得られないために
機能不全におちいった状態
ショックの診断基準
(日本救急医学会編)
日本救急医学会編)
血圧低下
小項目
①心拍数 100回/分以上
★収縮期血圧:90mmHg
②微弱な頻拍
★平時の収縮期血圧が150mmHg以上の
場合
平時より60mmHg以上の血圧下降
★平時の収縮期血圧が110mmHg以下の
場合
平時より20mmHg以上の血圧下降
③爪床の毛細血管のrefilling遅延
(圧迫解除後2秒以上)
④意識障害(JCS2桁以上またはGCS10点以下)
または不穏、興奮状態
⑤乏尿、無尿(0.5mg/kg/h以下)
⑥皮膚蒼白と冷汗、または39度以上の発熱
(敗血症性ショックの場合)
血圧低下+小項目3
血圧低下+小項目3項目以上 → ショック
ちなみに
急を要するもので、速やかに除外診断が必要なもの
Hypovolemia:脱水
Hypoxia:低酸素血症
Hypothermia:低体温症
Hyper/H
Hypo kalaemia / glycemia:高・低カリウム血症、高・低血糖
H+ (acidosis):アシドーシス
Tension pneumothorax:緊張性気胸
Tamponade (cardiac):心タンポナーデ
Thrombosis (massive pulmonary embolism):肺梗塞
Thrombosis (MI):心筋梗塞
Tablet (inT
Toxication):薬物中毒・アナフィラキシーショック
5H5H-5T と暗記
ショックの種類と機序
種類
発症機序
心拍出 全身末梢 肺動脈 中心静脈
量
血管抵抗 楔入圧
圧
(CO)
CO)
(TRP)
TRP) (PAWP) (CVP)
循環血液量
減少性ショック
循環血液量の減少
↓
↑
↓
↓
心原性ショック
心原性ショック
心疾患に伴う低心拍
心疾患に伴う低心拍出量状態
伴う低心拍出量状態
↓
↑
↑
↑
↑
↓
↓
↓
不定
不定
不定
不定
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
細菌毒素による血管拡張
●hyperdyanamic state(warm
shock)
・動脈、静脈が拡張
・心拍出量増加
敗血症性ショック
・皮膚は温かい
・初期の症状
●hypodyanamic state(cold shock)
・末梢血管収縮
・心拍出量低下
・進行した状態
自律神経反射の異常で
神経原性ショック
末梢血管拡張
Ⅰ型アレルギーに伴う
アナフィラキシー
・血管拡張
ショック
・血管透過性亢進
循環血液量減少性ショック
について
手術直後に、
最も遭遇することが多い病態
人工心肺装置使用時の
特殊な循環血液量減少性ショック
体外循環開始から
手術直後
血管透過性の亢進
膠質浸透圧低下
(術後24~48時間)
(術後6~12時間)
血管透過性改善
血管外から血管内へ
(refilling)
復温
末梢血管
拡張
サード
スペース
正常
血糖値
高血糖
高Na 高K
正常
血糖値
体外
不十分だと
低血圧
尿量多い
(利尿作用)
輸液量
調整
輸液・輸血
(心機能・肺機能に考慮)
出血
尿量減少
出血
減少
大量の尿量
refillingに備えて
十分な尿量を確保して
やや脱水傾向にしておく
循環血液量減少性ショックについて
( hypovolemic shock )
診断方法
ベッドサイドでおこなえるもの
・ Vital signのcheck
・ 血圧測定
・ 脈拍(脈拍数 呼吸性変動(橈骨、大腿))
・ 四肢の皮膚音(触知して)
・ 呼吸音
・ 体温測定
・ 意識評価(鎮静されていない場合)
・ 尿量チェック
・ 点滴ルートのチェック
・ 投与薬剤のチェック
・ ドレーンの排液量・閉塞の有無
・ 医療機器の作動チェック
モニターがあれば
・
・
・
・
・
・
動脈ラインの呼吸性変動
酸素飽和度測定
CVP測定(必ずフラット)
心電図波形の変化の確認
PA / PAWP圧測定
心拍出量/係数(C.O./C.I.)
・ ショック体位にして血圧上昇の有無
・ 採血 / 動脈血液ガス検査
・ 12誘導心電図検査
電子カルテのチェック
・ 輸液速度を早くして血圧上昇の有無
(添加薬や側管からの薬剤に注意)
・ in-outのバランス
・ 中止薬剤・投与薬剤のチェック
循環血液量減少性ショックの診断がついたら
輸液・輸血を負荷します
ここで、質問
輸液をどんどん負荷していいのですか?
答えはNo
答えはNo
ゴムは引き延ばすと
それだけ張力が増える
(弾性体におけるヤングの法則)
心筋は伸ばされると
それだけ強く収縮しようとする
心臓の充満度が上がると
心拍出量が増加する
(Frank-Starlingの法則)
に注目!
=心臓の充満度(静脈圧)
満たしすぎると
かえって一回拍出量は低下して、低血圧
心原性ショックについて
(cardiogenic shock)
shock)
心疾患に伴う低心拍出量状態
高度な心不全状態
当然、血圧は下がります
原因 : 心筋梗塞
心筋梗塞・
・心筋症・
心筋症・弁膜症
:心臓術後・ 心筋炎 など
心原性ショック
種類
発症機序
心拍出 全身末梢 肺動脈 中心静脈
量
血管抵抗 楔入圧
圧
(CO)
CO)
(TRP)
TRP) (PAWP) (CVP)
循環血液量
減少性ショック
循環血液量の減少
↓
↑
↓
↓
心原性ショック
心原性ショック
心疾患に伴う低心拍
心疾患に伴う低心拍出量状態
伴う低心拍出量状態
↓
↑
↑
↑
↑
↓
↓
↓
不定
不定
不定
不定
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
細菌毒素による血管拡張
●hyperdyanamic state(warm
shock)
・動脈、静脈が拡張
・心拍出量増加
敗血症性ショック
・皮膚は温かい
・初期の症状
●hypodyanamic state(cold shock)
・末梢血管収縮
・心拍出量低下
・進行した状態
自律神経反射の異常で
神経原性ショック
末梢血管拡張
Ⅰ型アレルギーに伴う
アナフィラキシー
・血管拡張
ショック
・血管透過性亢進
心機能と血圧の関係
(心拍出量と末梢血管抵抗)
心拍出量と末梢血管抵抗)
心拍出量(CO)(L/分)
=心拍数(回/分)×1回拍出量(L/回)
全末梢血管抵抗
(末梢血管抵抗=血流の流れやすさ)
・ 血管の収縮と拡張
・ 血管の弾性(しなやかさ)の程度
血圧=心拍出量(心拍数×
血圧=心拍出量(心拍数×1回拍出量)×
回拍出量)×全末梢血管抵抗
(回/分) (L/回
(L/回)
1回拍出量を規定する因子:
回拍出量を規定する因子: ①前負荷 ②後負荷 ③心臓の収縮力
心機能と血圧の関係
(心拍出量と末梢血管抵抗)
心拍出量と末梢血管抵抗)
心拍出量(CO)(L/
心拍出量(CO)(L/分
心拍数(回/分) × 1回拍出量(L/
回拍出量(L/回
(CO)(L/分) = 心拍数(
(L/回)
血圧 = 心拍出量( 心拍数 × 1回拍出量 ) × 全末梢血管抵抗
(回/分)
(L/回
回)
(L/
1回拍出量を規定する因子
回拍出量を規定する因子:
因子:
①前負荷
②後負荷
③心臓の収縮力
前負荷および後負荷とは?
心室が収縮を開始する前
(=心室拡張終期)に
心室にかかる負担を前負荷
前負荷
拡張終期に心室に流入した血液量
(容量負荷
容量負荷ともいいます)
容量負荷
心室が収縮を開始した後
(=心室収縮中)に
心室にかかる負担を後負荷
後負荷
心室が末梢血管の抵抗に逆らって
血液を送り出すに必要な圧力
(圧負荷
圧負荷ともいいます)
圧負荷
出典:「病気がみえる vol.2 循環器」 医療情報科学研究所
出典:「病気がみえる vol.2 循環器」 医療情報科学研究所
心不全および心原性ショックの治療は
どうすればいいの?
Forrester分類に基づく心不全管理
Forrester分類に基づく心不全管理
- 心原性ショック管理 -
正常
(ポンプ不全なし)
肺うっ血
末梢循環不全
(循環血液量減少性ショックを含む)
SwanSwan-Ganzカテがないときは
Ganzカテがないときは
CVPで考える
CVPで考える
→ほぼ左房圧と並行して動く
肺うっ血+末梢循環不全
(心原性ショックを含む)
薬剤で改善がないときは
IABP or PCPS使用
※ LOS(Low Output Syndrome : 低心拍出量症候群)
心拍出量が低下している場合改善するにはどうするか?
心拍出量(CO)(L/
心拍出量(CO)(L/分
(CO)(L/分) = 心拍数(
心拍数(回/分) × 1回拍出量(L/
回拍出量(L/回
(L/回)
原因 : 心拍数が少ない or 1回拍出量が少ない
心拍数が少ない
→ 脈拍を増やす薬剤投与
or
脈拍を抑制している薬剤中止
一時ペーシング
①前負荷
1回拍出量が少ない → 1回拍出量を規定する因子
回拍出量を規定する因子 : ②後負荷
③心臓の収縮力
前負荷 = 血管内volume 多いと判断
→ 利尿剤 or 末梢血管拡張薬の投与
少ないと判断 → 輸液・血液製剤負荷
後負荷 = 末梢血管抵抗 高いと判断
→ 末梢血管拡張薬の投与
心収縮能が悪いと判断 → 強心剤投与 (カテコラミン etc)