平成 23 年度 第 3 回 兵庫県立図書館利活用講座 平成 23 年 7 月 16 日 法情報の調べ方入門講座 【法情報を調べる前に】 (1)法律はどこがつくるのか? → 法情報を持っている機関が特定しやすくなります 法律…国会=衆議院・参議院(議員立法) 、内閣・省庁(閣法) 条例…地方議会 (2)法の不遡及 事件のあった時期によって、適用される法律の内容が違うことも → 施行年月日に注意してください (3)法律用語を理解する 日常的に使われているものと意味が異なる場合があります (例) 殺 人…殺す意志があった 傷害致死…殺す意志がなかった 善意…知らないこと 悪意…知っていること →法律・法令の用語辞典・事典類、 『似たもの法律用語の違い』法曹界(320.3 /103)などが便利です (4)条文の書き方 改正文(改め文) □□法の一部を改正する法律 など (例)第△条「○○」を「××」に改める。 変更点はわかるが、この条文だけでは意味がわかりません。 (官報、法令全書、衆議院「制定法律」など) 改め文を元の法令に溶かし込むと、読みやすい文になります。 (六法全書、法令データ提供システムなど) (5)裁判ってどんなもの? 「民事」と「刑事」の2種類 (例)民事…原告 vs 被告、刑事…検察官 vs 被告人・弁護人 日本では地方裁判所(簡易裁判所) 、高等裁判所、最高裁判所の3審制(家事事件と少年事件は家庭裁判所) 訴訟提起時に事件番号が付与…事件番号で訴訟の種類・審級がわかる(裁判所で裁判記録を探す時に重要) 【法令の調べ方】 (法令…法律、政令、府令、省令、規則、条約、条例など) (1)現在の法令を調べる ①法令の名前や内容がわかっている場合 ●『六法全書』有斐閣 図書 (320.9/2/2012-1,2012-2) Ⅰ・Ⅱ巻があり、それぞれの巻頭に法令名索引および総目次、巻末に法令名略語が掲載されています。 法令名索引では、法令の略称・通称・俗称(独占禁止法など)からも探すことができます。 Ⅰ巻の巻末に全国裁判所管轄区域表、Ⅱ巻の巻末に各種手数料等一覧表が記載されています。 ◆法令データ提供システム 総務省行政管理局 インターネット http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi(公布後1か月半で搭載、月1回更新) ページ内「法令索引検索」 「法令用語検索」などから探すことができます(法令の略称からも検索可能) まだ施行されていない法令は →「未施行法令一覧」から探せます ②法令の公布(改正)年月日がわかっている場合 ◆法令データ提供システム 総務省行政管理局 インターネット ページ内「法令番号索引」で、公布年と法律の種類から探すことができます。 -1- ●『法令全書』国立印刷局 月刊 図書 (明治年間 320.9/9,大正年間 320.9/38,昭和年間 320.9/49) 官報に掲載された法令を種類ごとに区分し、法令番号順に配列したものです。 年刊の「総目録」から探すことができます。 ●『官報』国立印刷局 日刊 図書 (紙媒体 Z31 /55,マイクロフィルム版 M4) 法令は、政府広報である官報に掲載されて「公布」となるので、公布(改正)年月日の日付の官報から 探すことができます。 ◆インターネット版「官報」 国立印刷局 インターネット http://kanpou.npb.go.jp/ 上記の『官報』を直近 30 日間にわたって見ることができます。当日朝 8:30 以降に掲載されます。 ■官報情報検索サービス 国立印刷局 オンラインデータベース ← 当館でご利用になれます 昭和 22 年 5 月 3 日(日本国憲法施行日)から当日発行分(朝 8:30 以降)までの官報が検索できます (2)過去の廃止・失効した法令を調べる ◆日本法令索引 国立国会図書館 インターネット http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/ 廃止・失効した法令を、法令の形式(憲法・法律・政令など) 、法令名、公布(廃止)年月日、成立国会、 法令番号から検索することができます。 → 日付がわかれば、その日付の『官報』 『法令全書』や、当時の『六法全書』をご覧ください。 ◆法令データ提供システム 総務省行政管理局 インターネット 2001 年 4 月 1 日(同システム運用開始時)以降に廃止・失効した法令データを閲覧することができます ●『日本法令索引 旧法令編』国立国会図書館 図書 (320.9/8/1-1,1-2,1-3) 明治以降に制定公布された憲法、法律、勅令、政令、省令、太政官布告等のうち、昭和 56 年 9 月 1 日 までに効力を失ったものが掲載されています。 (太政官布告は明文をもって廃止・失効したもののみ) 1・2 巻の事項別索引では、法令名と公布・改正・廃止年月日と法令番号、参照等が載っています。 3 巻の五十音別索引では、事項別索引の掲載ページを知ることができます。 (3)法令制定の経過を調べる ◆日本法令索引 国立国会図書館 インターネット http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/ 検索結果にある「法令沿革」で、法令制定の経過や審議経過を調べることができます。 ◆衆議院ホームページ「立法情報」→「議案」 衆議院 インターネット http://www.shugiin.go.jp/ 衆議院議員・参議院議員・内閣の別に法律案の提出元が区分され、国会での審議状況、経過情報、本文 が掲載されています。本文情報に「修正案」とあるものは、国会における修正案で可決したものです。 ◆各省庁ホームページの「国会提出法案」 インターネット 概要、法律案要綱、法律案条文/理由、法律案新旧対照条文、参照条文が掲載されていて、法案を作成・ 改正する目的が理解しやすくなっています。国会での修正案は掲載されていません。 ※内閣法制局ホームページ「最近の法律・条約」→「内閣提出法律案一覧」から、主管官庁の「国会 提出法案」のページにアクセスすることができます。http://www.clb.go.jp/contents/index.html (4)法令の解説が書かれた文献を調べる ← 法律を読んでもわからない時に便利です ◆新法・改正法解説記事書誌情報検索 R-LINE 龍谷大学図書館 インターネット http://www.ryukoku.ac.jp/apps/opac.lib.ryukoku.ac.jp/rline/ 立法担当者や審議会・研究会の委員等が執筆した、新法・改正法の解説記事を集めたデータベースで、 法律名、法律番号、公布日のほか、掲載誌名、論題名、執筆者名、巻号、ページ等が載っています。 ※法学研究者等が執筆した注釈書(コンメンタール)も便利です(図書に限らず、雑誌の別冊もあります) -2- (5)通知・通達・告示を調べる ◆電子政府の総合窓口 所管の法令・告示・通達等 総務省 インターネット http://www.e-gov.go.jp/link/ordinance.html インターネット上で公開している、各省庁所管の法令・告示・通達や、国会提出法案へのリンク集です。 ●分野ごとの『六法』 図書 ← 当館調査相談室のカウンターでお問い合わせください ※行政機関の内部文書なので、 「情報公開請求」をする方法もあります。 (6)条約を調べる ●『国際条約集』有斐閣 年刊 図書 (329/8) 巻頭巻末にまたがる条約名索引が載っており、巻末には欧文条約名・条約の当事国表、国際裁判一覧表、 国際連合組織図、国際連合平和維持活動(PKO)等一覧表、主要国際組織/関連用語略称一覧表が 掲載されています。 ◆条約データ検索 外務省 インターネット http://www3.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/index.php 現行の国会承認条約等を掲載したものです。名称や略称をキーワードで入力する検索や、事項別分類、 地域・国名から検索することができます。名称・略称からの検索は、正規の名称でないとできません。 (例)通称:日米安全保障条約 → × 略称:相互協力及び安全保障条約 → ○ 条約名称:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約 → ○ ◆日本法令索引 国立国会図書館 インターネット http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/ 「条約承認案件検索」で審議経過を調べることができます。法令沿革一覧からは、外務省条約データ 検索の該当部分をPDFで表示させることもできます。 (7)条例を調べる ●各地方自治体の『条例集』 『例規集』 図書 各都道府県立図書館、議会図書館、国立国会図書館に所蔵されています。 (全ての例規集等が所蔵されているとは限りません) ◆各地方自治体のホームページ インターネット ◆リサーチ・ナビ 日本・条例等 国立国会図書館 インターネット http://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/Japan-horei-local.php 国立国会図書館における関連資料の所蔵状況や、公報・条例等のホームページのリンク集があります。 ◆洋々亭の法務ページ インターネット http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/ 「自治体 Web 例規集へのリンク集」などが載っています (8)日本法令の外国語訳を調べる ◆日本法令外国語訳データベースシステム 法務省 インターネット http://www.japaneselawtranslation.go.jp/ 法令検索…法令に含まれる用語、法令名、法令番号、法令の分野、法令の翻訳担当機関で検索できます。 辞書検索…標準対訳辞書に含まれる用語や先頭文字から、標準対訳辞書データを検索できます。 文脈検索…法令文中で用語やその訳語が用いられている文脈を検索できます。 ●『法律用語対訳集』商事法務研究会 図書 (320.7/9) 当館では、中国語(広東語) 、中国語(北京語) 、フィリピノ(タガログ)語、英語、ドイツ語、韓国語、 -3- スペイン語、タイ語、ヴィエトナム語、ミャンマー語、ロシア語、フランス語、ウルドゥ語の各編を 所蔵しています。 (9)外国の法令を調べる ◆国/地域別資料紹介 国立国会図書館 インターネット http://rnavi.ndl.go.jp/politics/cat19/ 200 を超える国/地域の法令、判例、議会資料の調べ方について、国/地域別に説明しています。 ●◆外国の立法 国立国会図書館 図書・インターネット http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/index.html 諸外国の立法に関する翻訳・解説が掲載されています。当館では雑誌(紙媒体)も所蔵しています。 ◆東北大学大学院法学研究科・法学部 リンク集 インターネット http://www.law.tohoku.ac.jp/link/index-j.html アメリカ法、国際法、ヨーロッパ各法、EU法などへのリンク集です。 ●『新解説世界憲法集』三省堂 図書 (323/182) イギリス、アメリカ、カナダ、イタリア、ドイツ、フランス、スイス、ロシア、中国、韓国の10カ国 の憲法を解説つきで紹介しています。世界の憲法動向や、日本国憲法も収録されています。 【判例の調べ方】 (判決年月日や事件番号などから探すことができます)※特に最高裁判所の判決が重要 公式判例集などに掲載されるのはごくわずかで、判決後6か月から1年以上経ってからです。 まだ掲載されない新しい判例については、裁判所ホームページや判例掲載雑誌、判例集を利用してください。 判決 最高裁判所 1~5日 ホームページ 判例集 3~6か月 雑誌 CD-ROM 6か月~1年 加除式 (1)紙媒体の資料 図書 ①公式な判例集 ●最高裁判所民事・刑事判例集(略称:民集・刑集) (民事 Z32/14,刑事 Z32/15) ●最高裁判所判例解説(民事・刑事) (民事篇 324/16,刑事篇 326/20) 法曹時報に掲載されたものを収録しており、判例を読んでもわからない場合に便利です。 ↑ 裁判では、法律にはっきりと明記されないような法解釈を行うこともあります。 (例)プライバシー権( 「宴のあと」事件)←憲法 13 条から導き出されたもの ②判例掲載雑誌 ●『判例時報』 (略称:判時) 、 『判例タイムズ』 (略称:判タ) ← 2大メジャー雑誌 『ジュリスト』 『法学協会雑誌』 『法学セミナー』 『法律時報』 『民商法雑誌』 『自治研究』など ※『判例時報』については『別冊付録 総索引』 (年刊)か『臨時増刊 総索引』 (100 号分)から検索可能 ③代表的な判例集(解説・コメント付き) ●『判例百選』 (別冊ジュリスト) ●『重要判例解説』 (ジュリスト臨時増刊)← 当館調査相談室のカウンターでお問い合わせください ④図書 ●『憲法判例』有斐閣(323.1/421) ●『商法判例集』有斐閣(325/81) ●『行政関係判例解説』ぎょうせい(323.9/47) ●『最新重要判例 250 刑法』弘文堂(326/111) ●『民法基本判例集』勁草書房(324 /150) ●『判例国際法』東信堂(329/102) -4- など (2)インターネット上の資料 インターネット ①ホームページ ◆最高裁判所ホームページ「裁判例情報」 http://www.courts.go.jp/ 最速ですが、一部の判例しか掲載されていません。 (内容はPDFデータで全文読むことができます) ◆裁判所判例Watch http://kanz.jp/hanrei/ 新しい判例を探すのに便利です ②有料法データベース ■法情報総合データベース D1-Law.com オンラインデータベース ← 当館でご利用になれます 明治以降の公刊判例 20 万件の判例要旨・本文を体系的に整理・分類した「判例体系」 、現行の国内法令 約1万件を収録した「現行法規(現行法検索) 」 、1,300 誌以上の法関連文献および判例の掲載情報を 独自に分類・整理した「法律判例文献情報」をそれぞれ収録しています。 フリーワード検索や、裁判官名検索もできます。 「判例体系」で判例の解説も見ることができます。 ③新聞 最高裁判所ホームページに載っていない、新しい判例を探すことができます。 ④弁護士や当事者・支援者等のホームページやブログ ⑤判決を出した裁判所で裁判記録を閲覧…民事だと公開してもらうことができます 【参考となる本】 ●『はじめての法律学:HとJの物語』有斐閣 (321/115) ●『法律学習マニュアル』有斐閣 (320.7/31) ●『リーガル・リサーチ』日本評論社 (320.7/33) など -5-
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