ポスター演題

ポスター演題
示説発表日時
演題番号奇数:7月14日㈯ 11:40∼12:30
演題番号偶数:7月15日㈰ 10:40∼11:30
会場 4F 409∼414会議室
ポスター演題
001 小児科領域における適応外使用医薬品の「小児薬
用量リスト」の作成
002 医療安全対策を目的とした内用薬・外用薬への
バーコード表示の実施状況と問題点
1
久留米大学病院 薬剤部、
公立八女総合病院
○三池 梨乃1、入江 諒2、蔵王
近藤 恵美子1、鶴田 美恵子1
市立豊中病院 薬剤部
○西岡 直美、宇佐美 順子、北川 克美、
石田 志穂、藤原 拓也、新家 恵子、
栗谷 良孝
2
克敏1、
【目的】小児の薬物療法は70∼80%が適応外であり、添付
文書に小児の適応や用法用量の記載がないものが多い。臨
床では適応外での処方が数多く「新・小児薬用量」などを
参考に調剤している。しかしそれ以外の使用例も多く、疑
義照会の対象となり業務が煩雑であった。当院では平成20
年より情報の共有と調剤の画一化を目的に、小児科領域に
おける適応外使用医薬品の「小児薬用量リスト」を作成し
ている。リスト作成への取り組みと実際の処方例を報告す
る。
【方法】リストの作成においては「新・小児薬用量」「小
児薬物療法ハンドブック」などを参考とした。主な項目は
薬品名・適応症・用量用法で、治験中や公知申請が認めら
れた薬品も随時更新している。リストを院内イントラネッ
トに掲載し、病院内での情報共有も図っている。NICU は
低出生体重児であるため、病棟より毎週提出される体重表
を基に調剤を行っている。実際の処方例として、クループ
に対するエピネフリン吸入液や化学療法後ランク B に対
する感染予防、未承認薬として点頭てんかんに対するビガ
バトリンなどを紹介する。
【結果・考察】病院内で共通の情報を持つことで調剤業務
を円滑に行うことができた。また適応外薬を認識すること
で調剤ミスの防止にも大いに役立っている。薬薬連携にお
いても根拠に基づいた正確な情報提供ができ、スムーズな
対応が可能となった。今後は注射薬に関しても同様にリス
トを作成し活用させたいと考える。
【目的】平成18年9月15日付薬食安発第0915001号医薬食
品局安全対策課長通知により医療用医薬品への新しいバー
コード表示が義務づけられた。この通知では内用薬と外用
薬の調剤包装単位への表示実施時期が明記されていなかっ
たが、平成23年3月28日に改正案が出され、通知発出3年
後までの実施が明記された。そこで今回、当院採用医薬品
のうち内用薬と外用薬のバーコード表示状況を調査し、利
用するにあたっての問題点を検討した。
【方法】平成23年10月現在当院採用の内用薬と外用薬の販
売及び調剤包装単位への新しいバーコード表示の有無、表
示位置等について調査した。
【結 果】1009品 目 の う ち、調 剤 包 装 単 位 で は171品 目
3%)にバーコードが表示されていた。剤形別では、
(17.
1%、秤 量 用 散 剤20.
3%、水 剤52.
2%、バ ラ 錠
外 用 剤30.
24.
0%、錠剤および計数用内用剤8.
6%であった。この錠
6%のうち、表示されていたバー
剤および計数用内用剤8.
4%)であり、表示位置
コード数は、1箇所が41品目(85.
は PTP シート裏下部が最も多かった。
【考察】現時点では調剤包装単位への新バーコード表示は
達成率が低く、錠剤の PTP シートへの表示が最も進んで
いない。また、PTP シートへの表示は改正案で最低限と
される1箇所のものが多いが、医療安全対策の観点からは
1シートにつき1箇所の表示では対応しきれないと考え
る。
003 お薬手帳実態調査
004 抗 が ん 剤 調 製 ロ ボ ッ ト CytoCareTM を 用 い た
Multidose vial のパクリタキセル調製時におけ
るコアリングの検討(2) 第8報
1
時計台記念病院 薬剤科、
アイン薬局時計台店
○
裕太1、小島 幸子1、清水 圭祐1、
西谷 佳七子1、多加 由梨子1、高木 大輔1、
小澤 聖子1、森本 雅子1、金子 聡1、
毛利 智彦1、中島 敬悦2
2
【はじめに】お薬手帳は、患者、医師、薬剤師それぞれが
情報を共有する手段の一つである。今回、お薬手帳が情報
共有の手段として有効に活用されているかどうかを入院患
者、薬局薬剤師を対象に調査した。
【方法】1:入院患者を対象にお薬手帳に関する意識調査
の実施 2:調剤薬局でのお薬手帳による有益事例の調査
調 査 期 間:1 2012年3月1日∼2012年3月31日 2
2011年10月1日∼2012年3月31日
【結果】1:服薬指導を行った患者100名のうちお薬手帳
を持参した患者は47名であった。持参しなかった53名のう
ち、28名は持っているが持参していなかった。必要性を感
じるかとの質問では53名が必要 24名がどちらとも言えな
い 23名が不必要と回答した。2:108例の有益事例が報
告された。項目毎の割合は入院中の薬歴の把握68%、服薬
上の特記事項29%、アレルギー・副作用歴3%であった。
【考察】今回の調査でお薬手帳は病院薬剤師、薬局薬剤師
の間では情報共有の手段として有効に活用されていたが、
患者の中には有益性を理解していない方が多いことがわ
かった。普及率を上げていかないことには情報共有の手段
として有効に活用することができないので、お薬手帳の必
要性の呼びかけなどを継続的に行っていく必要があると考
えられる。また、ただ推進するのではなく、患者参加型の
個別に有益性を高めることができるお薬手帳となるように
質の向上に努めていきたい。
医療法人鉄蕉会亀田総合病院 薬剤部
○伊勢崎 竜也、安室 修、川名 晶子、
永井 淳子、佐々木 忠徳
【目的】抗がん剤 multidose vial の使用は薬剤費の軽減が
可能であり、その経済的効果が期待される一方で、複数回
穿針によるコアリングの発生が、その普及には課題となり
うる。multidose vial 使用時のコアリングの発生状況につ
いては日本薬学会第132年会で報告したが、CytoCareTM で
の調製時に発生したコアリングの原因について、さらに多
角的に調査したので報告する。
【方法】CytoCareTM での調製時に発生したコアリングに
ついて、シリンジ内およびバイアル内液を洗い出し、洗液
をフィルターでろ過した後、FT­IR 法でコアリング、ゴ
ム栓内部および表面のゴムの IR スペクトルを測定した。
また、調製に使用した注射針の先端を顕微鏡を用いて観察
した。
【結果】コアリングの IR スペクトルはゴム栓内部のゴム
のスペクトルと一致した。注射針のヒール部は表面を研磨
するブラスト処理がされていなかった。
【考察】コアリングは注射針のヒール部がゴム栓の表面を
削り取ることで発生するとされているが、今回発生したコ
アリングはゴム栓内部由来であることが明らかになった。
また、このことはヒール部のブラスト処理がされていな
かったことと関連していると考えられた。CytoCareTM の
運用において multidose vial を使用する際には、コアリン
グのリスクを軽減するために、ゴム栓の素材や注射針の加
工処理について考慮する必要があると考えられた。
−180−
005 血液内科領域の化学療法レジメンの標準化(レジ
メンオーダー制導入)を行って
006 疑義照会の解析から見た紙レジメンの有用性
福岡大学病院 薬剤部
○藤 七穂、古賀 亜矢子、波多野
鷲山 厚司、二神 幸次郎
1
JA 長野厚生連佐久総合病院 薬剤部、
2
同血液内科
○宮下 貴浩1、田中 美和1、依田 一美1、
森 勇一2、三石 俊美2
【背景】レジメン審査委員会設立後、化学療法レジメンの
標準化を進めてきたが、血液内科領域は元々レジメン数が
多い上、地域がら超高齢患や合併症を有する患者様が対象
となることも多く、これまで標準化が進まなかった。しか
し2011年1月末の電子カルテ導入で血液内科も含む全科で
レジメンオーダー制がとられることになった。そこで我々
は急遽3ヶ月でレジメンの登録を行ったので、その手法と
実施後に見えてきた課題について報告する。
【方法】過去4年間に遡り実施していたレジメン全てをカ
ルテ調査を行って掘り起こした。そこから過去2年間の実
施が少ないものを列挙し、担当医に確認の上可能なものは
登録リストから外した。また同じレジメン名でもカスタマ
イズで複数になっていたものも、事情を説明しよりシンプ
ルなレジメンに統一した。
【結果】最初の調査で150余りあったレジメンは100近くま
で減らすことができたが、まだ院内で登録されているレジ
メンの約4割を占める。
【考察】レジメンオーダーのみに目を向ければ医師の業務
は時間短縮に繋がったと考えている。薬剤師の監査がしや
すくなった。また全科を通じガイドラインに沿って前投薬
等の統一化が進んだ。しかこのシステムでは薬剤の変更が
許 さ れ ず、以 前 は VCR か ら VDS へ、DXR か ら THP へ
などの変更がよく行われていたが、これらは別レジメンと
して登録しなければならず、電子カルテ稼働後もレジメン
数は減らせないことがわかった。
007 注射剤室における注射薬自動払出システム導入の
影響
熊本赤十字病院 薬剤部
○平田 憲史郎、宮崎 美香、宮里
江島 智彦、福永 栄子
【背景】福岡大学病院薬剤部では、がん化学療法を安全か
つ適切に施行するために、処方鑑査時に、抗がん剤調製前
に提出されたレジメン(以下、紙レジメン)
とレジメンオー
ダの照合を行い、必要であれば医師へ疑義照会を行ってい
る。
【目的・方法】紙レジメンを用いた処方鑑査の有用性につ
いて検証するため、2010年4月∼2011年3月までの1年間
に治療コースが終了した紙レジメンを対象とし、疑義照会
の対象となった紙レジメン枚数および疑義照会件数および
照会内容を解析した。
1%)の紙レジメンで疑
【結果・考察】957枚中307枚(32.
義照会を行った。そのうち、約7割に対して紙レジメンあ
るいはレジメンオーダの修正が行われたことから、紙レジ
メンとレジメンオーダを照合することで、より厳密な処方
鑑査を行えていると考えられた。支持療法に関する疑義照
会が最も多く、新規制吐剤に関するものが制吐剤に関する
疑義照会の約4割を占めたことから、紙レジメンとレジメ
ンオーダの照合は、用法が複雑な新規制吐剤を適切に使用
するのに役立っていることが分かった。本結果により、紙
レジメンが、がん化学療法の安全確保だけでなく、登録レ
ジメンやレジメンオーダでは対応できない、患者個々の状
態に合わせた治療を行う上で有用なツールであることが示
唆された。
008 調剤業務の効率化による薬待ち時間の短縮
総合病院国保旭中央病院
○向後 徹生、小池 望美、礒部
佐々木 芳枝、菱木 賢治
麻友美、
【目的】熊本赤十字病院(以下当院)では、これまで注射
薬については施行前日の朝までに処方オーダのあった分に
限り薬剤部で患者毎施用単位に区分し病棟へ供給を行って
きた。しかし、それ以後の追加・処方変更については病棟
で看護師によるセットとなり薬剤師の関わりがなく、イン
シデント発生の要因となっていた。そこで当院では医療安
全対策や業務の効率化・全処方のセットを目的として、新
たに注射薬自動払出システムを導入した。本検討では、シ
ステム導入による各種業務への影響について導入前との比
較検討を行った。
【方法】業務の比較は、薬剤部内での集薬・患者ごとの
セット・監査・返納に必要な時間、ヒヤリ・ハット報告の
件数等についてそれぞれ検討を行った。
【結果・考察】薬剤部からの注射薬の払出・セットに必要
な時間は、導入前と変化はなかった。しかし、システムが
搭載薬品を集薬している間、他の業務を行うなどの効率化
を図ることができた。また、ソフトバッグ製剤もシステム
に搭載した事で全払出薬品の約85%をカバーできたことに
加え、システム外の手払出薬品の RSS コードによる認証
を行うことで、調剤過誤防止対策を充実させることができ
た。その結果、調剤過誤の件数は減少傾向を示し、特に薬
品の取り違いについて報告件数が減少した。今後は、特に
病棟でのシステムへの理解を深め、薬剤部との連携を深め
ることでさらなる医療安全対策や業務の効率化に努めてい
きたい。
純義、
優子、
【目的】当院では、約1500枚/日の外来処方箋を全て院内
で調剤しているが、薬待ち時間の短縮は最優先すべき課題
の一つである。薬待ち時間には様々な要因が関係するが、
我々は調剤業務の効率化に着目し、その短縮を目的とし
た。
【方法】調査期間は月曜から金曜の連続した5日間、対象
は各曜日の特定の100枚とした。処方箋発行から投薬まで
の過程を階層別に7工程(1=処方鑑査待ち、2=処方鑑
査、3=薬剤取り揃え待ち、4=薬剤取り揃え、5=最終
鑑査待ち、6=最終鑑査、7=投薬待ち)に分類し、事前
に各工程に要する時間と作業員の数および薬待ち時間を調
査した。また最も時間を要する行程については、さらに詳
細な調査を行い、改善の前後における時間の変化を比較し
た。
【結果】事前調査から作業工程では4が最も時間を要する
結果となった。また、詳細な調査では、取り揃えた薬剤を
薬袋に入れる作業に無駄があると思われ、作業の省略と効
率化のためにトレーを使用した調剤方法に切り替えた。そ
の結果、4に要する平均時間は2分34秒から2分5秒に短
縮された。改善後の調査では、作業員数が平均3人減少
し、平均外来処方箋枚数が60枚増加したにも関わらず患者
の薬待ち時間は4分38秒減少した。
【考察】調剤業務の効率化により薬待ち時間短縮の可能性
が示された。長年行われてきた手順を変更することは困難
だが、部内の意識を統一し、無駄のない業務と患者負担の
軽減のために引き続き努力したい。
−181−
ポスター演題
009 電子カルテにおける処方入力方法の改善(第2報)
東海大学医学部付属八王子病院
○岩佐 昌広、原 尚美、柚木
内藤 久志、渡邊 昌之
薬剤科
靖子、
【目的】東海大学医学部付属八王子病院では、入院処方に
おける定期処方を増加させ、調剤業務の効率化を図る目的
で、2003年より処方オーダーシステムに独自の機能を追加
し運用を行っている。本機能は、医師がオーダーする際、
処方期間を指定するだけで処方区分が自動で振り分けられ
るシステム(以下、自動展開機能)である。2012年7月に
処方区分の振り分け機能向上を目的とし、システム更新を
行った。今回、自動展開機能の更新に伴う入院処方せんの
変化について調査した。
【方法】システム更新前と更新後の各6ヶ月間における入
院処方せん枚数および処方区分の割合について調査を行っ
た。また、入院処方せんの増減による調剤過誤への影響、
および消耗品コストについても算出した。
【結果】システム更新後、入院処方せんは約600枚/月減
少していた。処方区分の割合は定期および緊急に関して変
化が見られず、一方、臨時は減少していた。また、処方せ
ん枚数の削減により、年間1件程度の調剤過誤防止効果が
得られると推測され、消耗品削減効果は約1万円/月で
あった。
【考察】定期処方の入力率が維持され、処方せん枚数の削
減効果が得られていることから、今回の自動展開機能の更
新は、調剤業務の効率化に大きく寄与していると言える。
従来、入院調剤業務は医師の処方入力方法に大きく影響を
受けていたが、システムを活用することにより業務量や業
務配分の調整が可能である。
011 内服ハイリスク薬の薬剤照合システムの開発
大分大学医学部附属病院 薬剤部
○西村 文宏、槇原 洋子、荒尾
山村 亮太、佐藤 雄己、伊東
010 化学療法記録を用いた注射抗がん剤調剤監査シス
テムの構築
熊本労災病院 薬剤部
○市村 行典、北森 靖隆、山口
玉置 秀成、宇都 直哉、石田
圭太郎、
英明
【目的】がん化学療法においては、安全かつ適正な抗がん
剤の使用が求められる。特に注射抗がん剤に対する正確な
処方監査と調製は重要である。しかし、その投与には複雑
なレジメンも多く、又、患者個々の至適投与量の確認な
ど、その調剤・監査・調製は煩雑で労力を要する。患者
個々の化学療法記録を用いることで、正確な患者情報を共
有し、安全性を担保した注射抗がん剤調剤監査システムを
構築したので報告する。
【方法】レジメンは疾患毎に電子カルテ内レジメンオーダ
に登録を行い、レジメンオーダからのみ処方可能とした。
注射処方箋発行と同時に、患者属性と疾患名・進行度、組
織型、手術歴、疑義照会内容・特記事項の記録、選択され
たレジメンの登録番号、投与薬剤・用量、休薬期間などの
投与履歴を表示した患者毎の化学療法記録を発行させた。
生涯投与量の規定のある抗がん剤については、投与量の確
認を可能とした。
【結果・考察】システム運用前は、手書きの化学療法記録
と化学療法カレンダーの2枚を用い、投与日・投与薬剤・
投与量・休薬期間の確認を行っていたが、これらが化学療
法記録に自動で記録され、履歴管理が容易となった。ま
た、レジメン変更や減量・休薬期間の延長等の処方変更理
由が備考欄に記録可能となり、患者情報の共有化が図れ
た。化学療法記録を用いることで処方監査が標準化でき安
全性向上に寄与していると考える。
012 処方オーダと連携した情報発信型 Web 版病院医
薬品集の開発
滋賀医科大学医学部附属病院 薬剤部
○佐々木 恭子、田淵 陽平、星野 伸夫、
寺田 智祐
和由、
弘樹
【目的】ハイリスク薬とは、抗癌薬や麻薬など不適切な使
用によって患者に重大な影響をもたらす可能性があること
から、特に安全管理が必要な医薬品である。大分大学医学
部附属病院では、調剤過誤防止ならびに業務の効率化を目
的として内服ハイリスク薬の薬剤照合システムを開発した
ので報告する。
【システム概要】ハイリスク薬が含まれる処方せんに薬剤
照合用のバーコードを印字し、PDA 端末でバーコードを
読み込むと、当該処方のハイリスク薬一覧が PDA 端末の
画面上に表示される。次に、PDA 端 末 で 調 剤 棚 の バ ー
コードを読み込み、処方薬剤との照合を行うシステムであ
る。
【方法】本システム導入前の2008年1月∼2009年12月と導
入後の2010年1月∼2011年12月までの内服ハイリスク薬に
関するインシデント件数を比較し、調剤過誤防止効果を確
認した。また、システム導入に伴う業務の効率化について
も検討した。
【結果・考察】本システムの導入により内服ハイリスク薬
に関するインシデント報告は7件から2件に減少した。ま
た、PDA 端末を用いて内服ハイリスク薬の払出情報を管
理することで、向精神薬、毒薬等の管理台帳がシステムで
作成可能となったため、受払台帳に手書きで記載していた
従来の方法と比較して台帳作成時間が大幅に削減できた。
本システムは、リスクマネジメントならびに業務の効率化
に有用であることが示唆された。
【目的】処方オーダマスタ管理と医薬品情報の整備は、適
切な薬物療法実施のための基盤である。即日変更が要求さ
れる処方オーダマスタに比べ、冊子型病院医薬品集の改訂
は年単位で行われる。また、院内非採用医薬品を持参され
る入院患者も多く、冊子型病院医薬品集は情報提供ツール
としては不十分であった。これらの問題点を解決するた
め、当院ならではの工夫を加えた Web 版病院医薬品集の
開発を試みた。
【方法】医薬品の検索方法、処方オーダマスタと医薬品集
の内容を連携して変更できる仕組み、処方サポート情報の
内容等を考案し、医薬品集データベースの開発をオープン
システム研究所(大阪市)に依頼した。
【結果】医薬品検索の入り口は、診察時に有益な情報を簡
便に入手できるよう、薬品検索・検索結果・薬剤部からの
お知らせ、独自に作成した処方サポート情報を一画面に集
約した。医薬品集データベースには、日本で承認されてい
る全医薬品を登録し、検索結果画面では院内/院外採用・
非採用の区別が容易にできるよう工夫した。一包化された
薬剤検索のための識別コード検索も設定した。さらに、医
薬品集データベースを1ヶ月毎に更新することで、処方
オーダマスタと医薬品集の変更がほぼ同時期に可能となっ
た。
【結論】処方オーダに連携した情報発信型 Web 版病院医
薬品集を開発し、きめ細やかな医薬品情報提供の基盤整備
ができた。
−182−
013 タブレット端末を用いた妊婦・授乳婦服薬支援シ
ステムの構築
014 DI 実習に関する学生へのアンケート調査
医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 薬剤部
○芳賀 貴史、田牧 直也、本間 亜古、
山崎 晃憲、本郷 文教
1
岡山大学病院 薬剤部、
2
岡山大学 薬学部
○佐藤 智昭1、増満 えみ2、江角 悟1、
黒田 智1、河崎 陽一1、千堂 年昭1
【目的】昨年我々は、「妊婦・授乳婦に関わる国内外の医
薬品情報を集積したデータベース(DB)」を構築した。し
かし利用者の多くの意見に「タブレット端末での提供」の
要望があり、携帯性に優れたタブレット端末による迅速で
正確な医療サービスの提供が必要と考え、母子の健康面で
も大きく貢献するものと認識した。そこで今回、タブレッ
ト端末を用いた妊婦・授乳婦の安全性を考慮した服薬支援
システムを構築した。
1
【方法】タブレット端末は NEC 社製 LaVie Touch(10.
型・729g)とし、DB ソフトウェアには Microsoft Access
を用いた。医薬品情報は当院既存のシステムより内服薬、
518品目について、添付文書の
注射薬、および外用薬の19,
「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の要項、FDA 薬剤胎
児危険度分類基準、オーストラリア医薬品評価委員会の分
類を抽出し、さらに「Drugs in Pregnancy & Lactation」
の評価基準と統合させた。検索は、商品名・一般名・薬効
分類別での機能とし、また同種同効薬の一覧表示による出
力を施した。
【結果・考察】これまでは薬剤部内あるいは診療端末のあ
る場所からの情報提供であったが、医療現場においても導
入されつつある携帯可能なタブレット端末を用いることに
より、病棟等での服薬指導時においても効率的かつ迅速な
対応が可能となるシステムとなった。また、Access を用
いたことでインターネット接続環境下でなくても服薬支援
が行え、利便性の向上に繋がると考える。
015 薬学生におけるセルフメディケーションに対する
意識調査
千葉大学大学院 薬学研究院
○佐藤 洋美、上野 光一
【目的】セルフメディケーションの実行には一般用医薬品
(OTC 薬)が用いられることが多い。折しも、平成21年
6月に改正薬事法が施行され、OTC 薬の販売制度が大き
く変更された。このような制度改変時期におけるセルフメ
ディケーションを大学生はどう認識しているのか、将来薬
剤師となる薬学生を対象に意識調査を行った。
【方法】平成22年6月時点において千葉大学薬学部学生1
年次から4年次までの学生246名(1年生79名、2年生67
名、3年生46名、4年生54名)
を対象に意識調査を行った。
7%
【結果】「セルフメディケーション」という言葉は44.
の学生に認知されていたが、特に学年の若い学生の認知度
は低かった。軽い病気やケガの治療には、多くの学生が
「病院・診療所の受診」よりも「セルフメディケーション
を活用する」と回答しており、各学年間で大差なかった。
またその理由として「症状が軽く、OTC 薬で十分」「費用
が安く済む」「医師の診断による治療では時間がかかり過
ぎる」等が多く挙げられた。
【考察】以上より薬学生がセルフメディケーションを正確
に理解・活用するためには、体系的な講義や公開講座など
を通じて医薬品副作用救済制度の周知も含めた啓蒙活動を
行うことが必要と考えられた。さらに大学の保健管理セン
ターが近隣の薬局やドラッグストアと連携する体制の構築
も大学におけるセルフメディケーションの推進に貢献する
と考えられた。
【目的】医薬品情報業務に関する実習(以下 DI 実習)の
質的向上を目的に、当院で実務実習を行った学生に対しア
ンケートを実施し、評価・検討を加えたので報告する。
【方法】対象は平成23年度に当院で実務実習を行った学生
19名 と し た。ア ン ケ ー ト 内 容 は、SBO の 各 項 目、DI ス
タッフのサポート体制等の満足度を、「大変満足=5」と
した5段階評価で行った。また、実習前後での DI 業務に
対するイメージの変化や実習内容に関する要望等の項目に
ついては、記述形式での回答とした。
【結果】アンケートの回収率は100%であった。SBO の各
9であり、スタッフのサポートに
項目の満足度の平均は3.
ついては約8割が「大変満足」と回答した。DI 業務に対
するイメージについては全員が“変化した”と回答し、“想
像していたよりも業務の幅が広かった”という回答がみら
れた。実習内容については「より実践的な実習を行いたい」
との要望があった。
【考察】DI 実習の内容は概ね満足という結果が得られた。
また、DI 業務に対するイメージは全員が“変化した”と
回答しており、これは大学での講義と当院のように DI 業
務専従の薬剤師を配置している施設での業務で内容に差異
があることが原因と考えられた。DI 実習を通して学生の
DI 業務に対する認知度、関心が高まったことがうかがえ
たことから、今後はより実践的な内容の実習を検討してい
きたい。
016 製薬会社からの医薬品情報入手についてーコール
センターと MR の上手な使い方
1
公益社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立う
わまち病院 薬剤部、
2
公益社団法人 地域医療振興協会 横須賀市立う
わまち病院
○飛川 昭雄1、氏家 靖博1、菅原 順子1、
安田 礼子1、小山 秀樹2
【目的】当院医薬品情報(以下 DI)室では DI 入手目的で、
製薬会社に問い合わせを行っている。しかし、コールセン
ター(以下センター)に問い合わせを行った際、目的とす
る情報が速やかに入手できないことがある。センターがど
こまで DI を提供できるか調査を行った。
【対象および方法】当院採用薬の先発医薬品中心の製薬会
社28社に当院担当 MR を通じて2012年3月、アンケート
調査を行った。
【結果】□副作用情報の提供 可能100%
7% 場合によっては可
□国内、海外文献の提供 可能85.
3%
能 14.
3% 不可能10.
7%
□適応外使用の情報提供 可能89.
4% 不可能 3.
6%
□簡易懸濁可否の情報提供 可能96.
4% 不可能78.
6%
□保険に関しての情報提供 可能21.
□他、各メーカーからのコメント
【考察】結果および各メーカーからのコメントより以下と
なる。
DI の入手を急ぐ時はセンター、時間に猶予があるときや、
詳細な情報が必要な時は MR 経由が望ましい。副作用情
報は、発症件数などはセンター、詳細症例などは MR 経
由が望ましい。文献請求はセンターで可能である。適応外
使用に関しては、製薬会社の情報提供規則により入手でき
ないことがある。簡易懸濁の情報はセンターから入手可能
である。
【結語】必要な DI の内容により提供窓口を意識して選択
すると、適切な情報入手が可能になると考えられる。
−183−
ポスター演題
017 医療用医薬品の添付文書におけるゲノム情報に関
する記載内容の検討
018 DPC データを用いた薬剤管理指導業務分析の有
用性の検討
1
1
2
2
東京薬科大学 薬学部、
千葉大学大学院薬学研究院
○大山 邦男1、櫻田 大也2、小林
佐藤 信範2
春日井市民病院薬剤部、
春日井市民病院内科・薬剤部
○坂田 洋1、佐々木 洋光2
江梨子2、
【目的】医薬品添付文書中には、薬物代謝に関連する遺伝
情報が多く記載されているが、それらの情報量、情報の種
類、用途および記載方法などに関しては、必ずしも統一的
ではないようである。そこで、添付文書中の遺伝情報の効
率的な利用のために、記載の現状を調査することとした。
【方法】「独立法人、医薬品医療機器総合機構」HP 中の
「医療用医薬品の添付文書情報」から、CYP および UGT
の情報が記載されている医薬品添付文書をダウンロード
し、CYP および UGT サブファミリーの種類、これらの薬
物代謝への関与による「併用禁忌」と「併用注意」の項目
を中心に「相互作用」について調査した。
【結果と考察】CYP および UGT 遺伝情報を記載した添付
文書は、それぞれ177品目と15品目であった。薬物相互作
用について詳細に記載されている場合、「併用禁忌」ある
いは「併用注意」へのこれらの関与についても詳細に記載
されていた。さらに、CYP と UGT の遺伝子多型に関する
情報記載は31品目であり、アレル構成の違いと薬物動態と
の関係に関する情報まで記載されているものもあった。し
かしながら、これらのほとんどが日本以外での検討結果を
もとにしており、今後の問題点と考えられる。また、説明
の文言にわかりにくい部分のあることが示されたが、説明
方法に統一性を持たせることにより解決できると考えられ
た。さらに、米国 PDR との比較検討も試みる。
019 医療機関における院外採用薬及び持参薬の安全性
情報の管理に関する調査
(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA) 安全
第一部
○平松 彩佳、長谷川 浩一、池田 三恵、
益山 麻貴、森 和彦
【目的】添付文書改訂等の医薬品安全性情報は、厚生労働
省、PMDA、製薬企業等から医療機関に情報提供されて
いるが、提供された最新の情報が医療機関内で適切に伝達
され、臨 床 現 場 で 活 用 さ れ る こ と が 求 め ら れ て い る。
PMDA では各医療機関における院外採用薬及び持参薬の
安全性情報の管理状況を把握することを目的の一つとして
本調査を実施した。
647施設)に対して郵送による調
【方法】全国の病院(8,
査を実施した。調査票は医薬品安全管理責任者あてに送付
し、院内採用薬で積極的に活用している安全性情報の入手
源等についての質問項目のほか、院外採用薬及び持参薬の
使用状況、安全性情報の入手源、管理状況等の実態がわか
るように質問項目を設定した。
2242施設から調査票が回収された(回収率25.
9%)
。
【結果】
院外採用薬の安全性情報の入手源は、院内採用薬と類似の
傾向を示したが、その割合は全体的に低い等の特徴があっ
た。また、持参薬では、企業の医薬品情報担当者からの安
全性情報の入手は比較的少なく、市販本を活用している傾
向がみられた。一方、院外採用薬数は増加傾向にあるにも
かかわらず、安全性情報の管理は十分にできていないと回
答した施設が6割あった。また、持参薬は8割の施設で使
用されていたが、安全性情報の管理は十分にできていない
と回答した施設が6割あった。
【考察】院外採用薬及び持参薬の安全性情報の管理体制を
構築することが今後の課題であると考えられる。
【目的】DPC 制度対象病院は入院患者毎の診療情報を全
国共通フォーマットに記録した DPC データとして厚生労
働省に提供する必要がある。DPC データは医療の質向上
のための指標としてその分析と活用が進められている。今
回、DPC データを用いて当院における薬剤管理指導を例
に薬剤師業務の医療の質向上のための指標として利用可能
かを検討した。
【方法】平成23年11月の DPC データの様式1ファイル、
E·F ファイルを用いた。分析のアウトカムとして、診療
科・病棟別実施件数、算定率、2回目以降算定率、入院通
算日における実施日等の算出を試みた。
【結果】全てのアウトカムが算出できた。2回目以降の算
9%を実施してい
定率は薬剤師が常駐する1病棟だけで80.
3%、入
た。薬剤管理指導実施日は入院初日が最も多く54.
4%であった。薬剤管理指導2が算定可能
院3日以内が86.
であるが薬剤管理指導3での算定がが56件あった。
【考察】施設内で使用できる医療データには DPC データ
以外に医事システムや部門システムから抽出されるデータ
がある。DPC データは薬剤管理指導実施日と投薬状況が
同時に把握できる利点があり、病院全体の薬剤管理指導実
施状況が容易に把握できた。特に2回目以降の算定率や算
定病棟の把握、DPC データから作成した薬歴と薬剤管理
指導実施日を比較することで算定点数の誤りなどが把握で
きることは、薬剤師業務の医療の質向上のための指標やマ
ネジメントに利用できる情報源として有益性が高いと考え
る。
020 医薬品情報検索システムの構築と多職種間の質問
内容の実態調査
近畿大学医学部奈良病院 薬剤部
○平田 敦士、西浦 早織、松岡
寛
【目的】薬剤部における医薬品情報(以下、DI)は固有
の財産であると共に、平成22年度診療報酬改訂において医
薬品安全性情報管理体制加算(平成24年度改訂では新設さ
れた病棟薬剤業務実施加算の実施業務重複のため廃止)が
算定できるようになり、その業務の重要性が益々高まって
いる。我々は日々蓄積される多職種からの質問内容を有効
かつ容易に利用するために医薬品情報検索システム(以下、
DI システム)を構築し、その質問内容についても調査・
分析した。
【方法】DI システムは Access2003を用いて構築し、過去
の情報はフリーワードを用いて検索できるようにした。各
職種からの質問内容の調査対象期間は、システム運用開始
の平成21年12月∼平成24年3月である。
【結果】実態調査の結果、当院 DI 室に直接質問があった
0%、看護師20.
6%、薬 剤 師16.
8%、
のは345件(医師58.
6%)であった。各質問内容は、医師は『治療上
その他4.
の薬の選択』
、『薬剤鑑別』
、看護師は『配合変化・安定性』
、
薬剤師は『配合変化・安定性』
、『治療上の薬の選択』が多
かった。
【考察】今回の調査結果、医師・看護師から質問が多かっ
た『治療上の薬の選択』
、『薬剤鑑別』
、『配合変化・安定性』
は、病棟薬剤業務実施加算の算定項目にもあるように、病
棟において薬剤師に求められる業務であり、これからはよ
り薬剤師の能動的回答が求められると示唆された。
−184−
021 医薬品の安全対策に関する取り組み
テデータの利活用−
−電子カル
1
NTT 東日本関東病院 薬剤部、
株式会社ユー・エス・イー
○折井 孝男1、林 直道2
022 コリスチンおよびチゲサイクリン投与に伴う有害
事象∼FDA 有害事象自発報告システムのデータ
解析
2
1
【目的】医薬品の安全性情報の正確性・迅速性の向上を目
指し、医薬品の安全対策への電子カルテデータ等の活用が
求められている。そこで、病院情報システムのデータが含
まれる電子カルテのデータを利用して、医薬品等の安全対
策、更なる向上を目指した大規模なデータベースを構築
し、副作用等に関する情報を検出し、安全対策に利活用す
るシステムを構築する。
【方法】電子カルテデータに含有する傷病名情報、処方・
注射オーダ情報、検体検査情報等のデータを抽出し、デー
タベースを構築する。医 薬 品 コ ー ド で は、YJ コ ー ド、
HOT コード等を使用するデータマッピングを行うことと
した。
【結果・考察】本データベースの構築により、現在の副作
用報告にみられる問題を解決することが可能となる。現在
の副作用報告にみられる問題とは、(1)その医薬品を投
与されている人数が把握でいない問題。分母が不明確なた
め、発生頻度が不明であること。(2)その医薬品の副作
用について、他剤での発生頻度と比較ができるデータは報
告されていないこと。(3)その医薬品を投与する原因と
なった病気による症状であった場合も、報告上は「副作用」
とされること。(4)医師が報告しなければ、副作用の存
在がわからない場合があること等である。電子カルテに搭
載されたデータの利活用により、他剤との比較、原疾患に
よる症状発現との比較、安全対策の効果の検証等の安全対
策が可能となる。
023 アンジオテンシン II 受容体拮抗薬・利尿薬配合剤
における安全性プロファイルの検討
京都大学大学院 薬学研究科 統合薬学教育開発
センター、
2
京都大学大学院 薬学研究科 システム創薬科学、
3
(株)京都コンステラ・テクノロジーズ
○角山 香織1、多門 啓子3、奥野 恭史2,3、
栄田 敏之1
【目的】近年、多剤耐性アシネトバクター感染症が世界的
に問題となっており、コリスチンやチゲサイクリンに大き
な注目が集まっている。我々は、これまでに、米国食品医
薬品局の有害事象自発報告システム(AERS)に登録され
たデータを用いて解析を行い、コリスチンやチゲサイクリ
ンの投与に伴う有害事象プロファイルを報告した(第59回
日本化学療法学会、2011年;第15回日本医薬品情報学会、
2012年)
。本研究では、本解析における問題点を整理する
目的で、両プロファイルの比較を行った。
【方法】2004年から2009年までの計1,
644,
220件のデータ
を用いた。欧米の主要な公的機関で採用されている4種の
統計学的手法を用いて、各薬剤との関連が疑われる有害事
象をシグナルとして検出した。有害事象の名称は、国際医
学用語集 v13.
0を使用した。
【結果】コリスチン238種、チゲサイクリン248種の有害事
象がシグナルとして検出された。これらのうち、コリスチ
ンでは、腎尿細管壊死、急性呼吸窮迫症候群、消化不良、
好酸球増多症など、一方、チゲサイクリンでは、悪心、嘔
吐、ALT 上昇、膵炎などの件数が多かった。
【考察】シグナルとして検出された有害事象には、原疾患
に起因すると考えらえる有害事象も多く含まれていたが、
それらは両薬剤で比較的共通していた。つまり一般的に
は、特定の有害事象を取り上げ、有害事象の起こり易さの
観点から、同種同効薬の比較が可能かも知れない、と推察
された。
024 整形外科領域での静脈血栓塞栓症予防における抗
凝固薬の有用性の検討
北里大学 薬学部 臨床薬学(保険薬局学)
○有海 秀人、今井 郁弥、吉山 友二
慶應義塾大学 薬学部 医薬品情報学講座
○巻幡 麻衣、橋口 正行、望月 眞弓
【目的】医療用配合剤の規制緩和以降、配合剤の新薬承認
が増加傾向にある。特に、アンジオテンシン II 受容体拮
抗薬(ARB)
・ヒドロクロロチアジド(HCTZ)配合剤は
優れた有効性は証明されているが、安全性については限ら
れた例数による臨床試験のデータ及び市販後調査データに
依存することが大きい。医薬品の安全性は毒性試験により
担保されており、無毒性量および毒性試験における全身的
曝露の評価はヒトにおける安全性評価の有用な情報であ
る。そこで、配合剤の安全性を臨床用量および無毒性量の
関係に加え、ヒトと動物における曝露レベルの関係を調査
し、配合剤の安全性プロファイルを評価した。
【方法】平成13年4月∼平 成22年7月 承 認 の ARB·HCTZ
配合剤(4剤)の審査報告書および承認申請資料を調査し
た。安全性プロファイルの指標として、無毒性量/臨床用
量(成人1日最高用量)の比(投与量レベルの安全係数)
に加え、動物/ヒトの血中濃度時間曲下面積の比(曝露レ
ベルの安全係数)を算出した。
【結果】ARB·HCTZ 配合剤の投与レベル安全係数は、1
0であった一方、暴露レベルの安全係
剤の安全係数が<1.
0であった。
数は3剤の安全係数が<1.
【考察】ARB·HCTZ 配合剤の投与量および/もしくは暴
0である医薬品の安全性プロ
露レベルの安全係数が<1.
ファイルを示す配合剤は、より注意深い副作用モニタリン
グが必要である。
【目的】静脈血栓塞栓症(VTE)は整形外科施行患者で
高頻度に発生する合併症であり、予防は必須である。近
年、新しい抗凝固薬が数多く市販、使用されているが有用
性について関心のある薬剤同士を直接比較した試験は少な
い。そこで、整形外科領域での VTE の予防における複数
の抗凝固薬の有用性を間接比較法(IC)により検討した。
【方法】PubMed を用い、FXa 阻害薬を含む7種の抗凝
固薬の一般名、thrombosis などを検索語として、RCT に
限定し文献検索を行った。論文の採択条件は下肢整形外科
手術患者を対象とし、有効性を VTE の発生予防、安全性
を重大な出血の発生で評価しているものとした。得られた
文献を基に、統合可能なものはメタアナリシスを実施し
た。続いて、IC では、比較可能な2薬剤間でのアウトカ
ムの発生数の OR と95%CI を用いて評価した。
【結果・考察】文献検索の結果、25試験(placebo(P)対
照7、warfarin 対照2、他の抗凝固薬対照16)が条件 を
満たした。直接比較の結果と P を共通対照群とした IC の
結果は、ほぼ一致したが実薬を共通対照群とした IC の結
果では異なるものもあった。
【結論】IC より抗凝固薬の VTE の予防効果における有用
性の順位が示された。
−185−
ポスター演題
025 当院におけるジスチグミンの処方実態およびコリ
ン作動性クリーゼに伴う処方変更の調査
龍ケ崎済生会病院 薬剤科
○田中 幸子、檜山 知美、吉田
026 向精神薬およびその併用薬の使用実態調査
1
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
株式会社 J.みらいメディカル
○小川 真衣子1、上田 一江2、南 恵理子2、
真砂 洋一2、首藤 誠1
2
直弘
2010年3月にジスチグミンの添付文書が改訂され、
【目的】
副作用であるコリン作動性クリーゼを防ぐ目的で、排尿困
難に対する用量が1日5mg へ変更になった。今回当院に
おけるジスチグミンの処方実態およびコリン作動性クリー
ゼの発現状況とそれに伴う処方変更の理由について調査し
たので報告する。
【方法】2011年1月から2011年12月までに、ジスチグミン
が処方された入院患者を対象とし、処方用量と ChE 値の
測定有無、コリン作動性クリーゼの発現状況、処方変更等
について、カルテを遡り調査した。
【結果】ジスチグミンが処方された患者は56名であり、そ
の初期用量は5mg が55名、10mg が1名であった。ChE
値は34名が測定されており、投与開始後2週間以内に測定
された患者は16名であった。用量変更があった患者のう
ち、コリン作動性クリーゼが原因と考えられる患者は6名
であった。(ChE 値低下が3名、下痢・嘔吐が3名)
【考察】
ジスチグミン服用によるコリン作動性クリーゼは、
10mg 以上の用量で発現頻度が高く、投与開始後2週間以
内に出現しやすいと言われている。今回の結果により、用
量設定は1名を除いて適正に行われていた。しかし、投与
開始後2週間以内に ChE 値を測定していた患者は16名で、
ChE 値測定の採血指示の有無については医師によりばら
つきがあることが分かった。重篤な副作用発現予防のため
にも、症状観察や採血の依頼など、薬剤師の積極的な介入
とフォローアップを行う必要があると考える。
【目的】向精神薬の処方に関する調査によると、睡眠薬、
抗うつ薬、抗不安薬などの向精神薬の処方数が増加傾向に
あることが分かっている。しかしながら、向精神薬とその
併用薬の使用実態については不明な点が多い。そのため、
本研究では、向精神薬による薬物治療とそれらと併用され
る基礎疾患の薬物治療の関連性を明らかにする目的で、保
険薬局における向精神薬とその併用薬の使用実態調査を
行った。
【方法】平成23年1月1日∼平成23年1月31日に、メンタ
ルクリニックの処方箋を主として応需している保険薬局
(N 薬局)および総合病院の処方箋を主として応需してい
る保険薬局(M 薬局)において、向精神薬を処方されて
いる患者を抽出し、その使用薬剤を網羅的に集計し、その
結果を解析した。
【結果及び考察】「精神神経用剤」
、「睡眠鎮静剤・抗不安
剤」に分類される薬剤のうち、N 薬局および M 薬局に共
通して、エチゾラム、ブロチゾラム、ゾルピデムの使用頻
度が高いということが判明した。また、その3成分におい
て「血圧降下剤」
、「血管拡張剤」に分類される薬剤の併用
率が両薬局とも比較的高いことが明らかとなった。このこ
とは対象患者の年齢が比較的高いことから、基礎疾患とし
て高血圧症を有しており、それら疾患に対する治療薬の併
用率が比較的高くなっている可能性および不眠によって高
血圧を発症した可能性があるものと推察される。
027 透析患者における薬物使用実態調査
028 医薬品の表示に関する調査(1)−外箱への表示−
摂南大学 薬学部
○藤井 彩、寺本
薬学科
達也、塙
1
由美子、山本
岐阜薬科大学 実践社会薬学研究室、
岐阜薬科大学 附属薬局
○芦野 優佑1、鈴木 麻由美1、多根井 重晴2、
山下 修司1,2、伊藤 絵美2、窪田 傑文2、
杉山 正1,2
2
淑子
【目的】日本の透析患者数は29万人を超え、透析導入患者
数は年に37000人のペースで増加している。透析患者と高
血圧には密接な関係がある為、医療現場において降圧剤が
どのように使用・選択されているのかを分析する。
【方法】協力病院の透析室に2011年4月に通院した38名の
患者における薬物使用状況をカルテより収集、集計、分析
した。
【結果・考察】対象患者の使用薬剤数を薬効別に集計した
結果、多い順から降圧剤、胃薬、糖尿病薬であった。特に
使 用 数 が 多 い 降 圧 剤 に つ い て は、Ca 拮 抗 剤 の 使 用 が
32.
3%、アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)が28.
1%
であった。多数の患者が Ca 拮抗剤と ARB の併用をして
おり、ガイドラインと一致していると言える。Ca 拮抗剤
の使用頻度は、ニフェジピン製剤が最も多く、続いてアム
ロジピンベシル酸塩、アゼルニジピンとなった。降圧作用
が最も高いとされているジヒドロピリジン系薬が多く使用
されている。更に Ca 拮抗薬は肝代謝である為、透析患者
においても減量の必要がなく比較的安全に使用できると言
える。ARB の使用頻度は、多い順にオルメサルタン、バ
ルサルタン、カンデサルタン、ロサルタンであった。オル
メサルタンは AT1受容体に高親和性との報告があり降圧
作用が最も強いと言える為、多数の患者で使用されている
と考える。またロサルタンは降圧作用は弱いと言われてい
るが2型糖尿病性腎症にも適応がある為、使用されている
と考えた。
【目的】
調剤薬局は、複数の医療機関の処方せんを応需し、
後発医薬品への変更も必要であることから、多種類の薬品
を保管する必要がある。今回、薬局における薬品棚への薬
品の充填方法を調査した。また、調剤者が箱の表示から確
認できる情報について調査した。
【方法】薬品棚への薬品の充填方法は、300薬局へのアン
ケートおよび7薬局の実地視察によって調査した。外箱か
ら確認できる情報は、錠・カプセル剤200品目の最小包装
を対象として、最大面、中間面、最小面に表示された情報
を調査した。なお、同面積の各2面のうち、表示項目の種
類が多い面を対象にした。
【結果・考察】アンケート調査の結果、ほぼすべての薬局
が外箱のまま充填することがあると回答した。実地調査の
結果、仕切りのある棚には箱のままと箱から取り出した医
薬品を混在して保管し、引き出しには箱のまま保管してい
た。箱の向きは、最小面が見えるように配置していた。項
目毎の最大面、中間面、最小面への表示割合は、商品名が
5%、95.
5%、規格(商品名とは別に
それぞれ100%、94.
0%、64.
0%、70.
0%、使 用 期 限 が1.
0%、
表 示)が90.
54.
5%、15.
5%であった。最小面では剤形、使用 期 限、
バーコードなどが表示される割合は低かった。今回の調査
の結果、調剤者が外箱から確認できる情報は医薬品毎に異
なることが判明した。今後、薬剤師が望む表示について調
査を行う予定である。
−186−
029 医薬品の表示に関する調査(2)−PTP あるい
は製剤本体への表示−
030 乳がんにおける薬物使用実態調査
1
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
星ヶ丘厚生年金病院薬剤部、
3
星ヶ丘厚生年金病院外科
○高倉 真由1、山本 美代子2、網野 祥子2、
辰野 真理子2、辰巳 満俊3、菊田 真穂1
1
岐阜薬科大学 実践社会薬学研究室、
2
岐阜薬科大学 附属薬局
○鈴木 麻由美1、芦野 優佑1、多根井 重晴2、
山下 修司1,2、伊藤 絵美2、窪田 傑文2、
杉山 正1,2
【目的】医薬品の PTP あるいは本体への表示内容は、調
剤過誤の防止および服用間違いの防止の観点から重要であ
る。我々の調査では、PTP を1錠に切り離した結果、識
別ができなくなった経験のある患者が22%を占めた。そこ
で PTP および製剤本体への表示の現状を調査した。
【方法】錠・カプセル剤のうち200品目を無作為に抽出し、
PTP および製剤本体への表示項目と表示方法を調査した。
【結果・考察】PTP 全体、1錠単位に分割した場合に表
示項目が必ず判別できる医薬品の割合は、薬品名(日本語)
が そ れ ぞ れ100%、25%、規 格 が100%、33%、薬 効 が
15%、3%であった。1錠単位に分割した場合には、デザ
インが大きく異なるシートが混在する医薬品が認められ
た。製剤本体については、識別コードが表示された医薬品
は78%、薬品名が表示された医薬品は4%であった。錠剤
のうち、表裏両面に薬品名あるいは識別コードが表示され
た医薬品は17%であった。在宅医療では、PTP を切断し
服用単位でセットする仕切り容器も利用されており1錠単
位での表示は重要である。今回の調査では、多くの医薬品
で表示に工夫がなされているものの、保管方法によっては
識別が困難になる医薬品が存在することも明らかとなっ
た。今後、患者および薬剤師が望む表示、医薬品の色、形
についても調査を行う予定である。
031 大腸がんにおける薬物使用実態調査
2
【目的】
乳がんは日本女性で罹患率が最も高いがんであり、
近年その患者数は著しく増加している。しかし、その罹患
率に比べ死亡率の増加は緩やかであり、その理由の一つと
して、薬物療法が高い治療効果をもたらしていることが考
えられる。そこで、今回は卒業研究の一環として、臨床に
おける乳がんの薬物使用実態を把握するため医療機関の協
力を得て調査を行った。
【方法】星ヶ丘厚生年金病院外科において2005年8月から
2010年12月までに乳がんと診断された患者を対象とし、レ
ジメン登録書・薬歴を用いて薬物使用実態についてレトロ
スペクティブな調査を行った。
【結果・考察】対象症例数は430例であった。注射薬化学
療法では、施行件数(280件)のうち CE 療法を行う患者
が30%と最も多く、次いで PTX 療法であった。また、複
数レジメンによる治療(注射薬)を行った患者(77名)の
うち約5割が1st Line として CE 療法を行っていた。さ
らに、分子標的薬であるハーセプチンを含むレジメン使用
6%(41件)を占めてい
件数は、施行件数(280件)の14.
た。ホルモン療法においては、閉経前では抗エストロゲン
剤、閉経後ではアロマターゼ阻害剤が多く使われていた。
今回の調査により、臨床における乳がん薬物治療の現状を
把握することができた。特に化学療法では、治療の要であ
るタキサン系薬剤とアントラサイクリン系薬剤が積極的に
使われており、ガイドラインに沿った治療が実践されてい
ることを確認できた。
032 薬剤師による入院時患者面談による持参薬管理業
務を院内に拡大する取り組み−医師および看護師
と協力した持参薬管理システム構築の取り組み−
1
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
2
星ヶ丘厚生年金病院薬剤部、
3
星ヶ丘厚生年金病院外科
○手柴 沙紀1、山本 美代子2、網野 祥子2、
辰野 真理子2、辰巳 満俊3、菊田 真穂1
1
東京警察病院 薬剤科、
昭和薬科大学 医療薬学教育研究センター
○清野 真弓1、小原 万依1、藪山田 香代子1、
榎 亜季1、高橋 真理1、久保田 裕香1、
保屋野 貴通1、渋谷 文則2、中山 博幸1
2
【目的】近年、わが国の大腸がん死亡率および罹患率は著
しく増加しており、大腸がん治療において薬物療法は手術
後の再発予防や進行・再発がんの治療に大きな役割を果た
している。そこで、今回は卒業研究の一環として、臨床に
おける大腸がんの薬物療法の実態を把握するため医療機関
の協力を得て調査を行った。
【方法】2005年8月∼2010年12月の期間に外科にて大腸が
んと診断された症例を対象とし、レジメン登録書、薬歴等
を用いて薬物使用実態についてレトロスぺクティブな調査
を行った。
【結果・考察】対象症例数は387例、レジメン登録総件数
2%、
は413件であった。投与方法別割合では、注射薬:31.
8%、内服薬:62.
0%であった。また、
注射薬+内服薬:6.
使用割合の最も高いレジメンは、注射薬を含むレジメン
1%(31件)
、内 服
(154件)の う ち m­FOLFOX6:20.
5%(136
薬のみのレジメン(259件)のうち UFT/LV:52.
件)であった。今回の調査により、大腸がんにおける化学
療法では内服薬が多く使用されていることが分かった。こ
れは、フッ化ピリミジン系の抗がん剤では注射薬と内服薬
で治療成績がほぼ同等であり、注射より内服での投与の方
が患者の QOL 向上につながるためと推察される。また、
臨床における大腸がん薬物治療の現状を把握することによ
り、化学療法が手術療法と並んで重要な役割を果たしてい
ることを再認識した。
【目的】東京警察病院では2009年9月より看護師が持参薬
の確認を行っていたが、医師への問い合わせ件数が多かっ
たので、2011年4月より薬剤師が入院患者あるいは家族と
直接に入院時面談を行い、持参薬の確認、服薬状況の把
握、アレルギー・副作用歴などの患者情報収集を行い、持
参薬確認書を作成し、医師および看護師に情報提供をする
方法に切り替えるとともに持参薬管理業務の拡大を行っ
た。そこで当院での持参薬管理業務の実情を調査し報告す
る。
【方法】2011年4月から2012年3月の、持参薬管理件数、
患者年齢、問い合わせ件数、管理に要する時間、アレル
ギー・副作用歴などの件数、術前中止薬の件数を調査し
た。さらに、薬剤管理指導による病院収益への影響を検討
した。
【結 果】持 参 薬 管 理 件 数、管 理 に 要 す る 時 間、ア レ ル
ギー・副作用歴などの検出件数、術前中止薬の検出件数は
増加の傾向を示した。問い合わせ件数は低下した。薬剤管
理指導による病院収益も増加した。
【考察】薬剤師が初回面談を行うことで、持参された医薬
品の品目および数量の確認だけでなく、実際の服用状況の
把握、院内処方との重複投与のチェック、サプリメントを
含めた生活習慣等の情報を収集し、適切な情報を医療ス
タッフに提供でき、入院中の薬物療法を安全かつ適正に行
う事ができた。また、薬剤管理指導業務による経済効果に
貢献することができた。
−187−
ポスター演題
033 薬剤師による DPC データ解析の一考察(第2報)
セコム医療システム株式会社
○一川 悦子、山崎 淳
034 降圧薬配合剤の使用実態調査
1
運営監理部
岐阜薬科大学 実践薬学大講座 病院薬学研究室、
セコム医療システム株式会社
○長澤 宏之1、寺町 ひとみ1、高橋 竜也1、
舘 知也1、一川 悦子2、山崎 淳2、
土屋 照雄1
2
【目的】われわれは、薬剤師が薬学的観点から DPC デー
タを分析することにより、医療の質向上と医療経営効率の
改善に貢献する可能性があることを、040080xx99x00x
肺炎等への抗菌薬使用状況と入院期間の相関を検討し、日
本薬学会第132年会にて発表した。今回は、外科・整形外
科領域の手術部位感染予防のための抗菌薬の投与期間と再
投与率、入 院 期 間 と の 相 関 等 を 検 証 し、薬 剤 師 の DPC
データ分析の有用性を検討した。
【方 法】2011年4月−2012年3月 の セ コ ム 提 携12病 院 の
DPC データを MEDI­ARROWS(ニッセイ情報テクノロ
ジー社製)等にて解析した。評価は、「平成22年度医療の
質評価・臨床評価指標」の「人工関節置換術/人口骨頭挿
入術における抗菌薬の術後3日以内および7日以内の中止
率」等や、抗菌剤の種類、再投与率等を解析した。
【結果】3日以内の平均抗菌薬中止率は55%、7日以内の
平均中止率は84%であった。また、抗菌薬は、セフェム系
第1、2世代とペニシリン系で88%を占めた。しかし、第
3世代セフェム系や β−ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリ
ン系が多用されている施設もあった。
【考察】投与期間は、平成23年発表の国立大学病院機構発
表のデータより長い傾向にあった。また、抗菌薬の選択
は、日本感染症学会等の抗菌薬使用のガイドラインに合致
していたが、一部施設では、再検討の余地があると推測さ
れた。
【結論】薬剤師が、DPC データ解析し臨床に還元するこ
とは意義あることと考える。
035 健康食品と医薬品における薬物相互作用解明を目
指した健康食品使用実態調査
1
東北薬科大学 環境衛生学教室、
有限会社えむわん、
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 臨床薬学、
4
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 医薬品安全
性評価学、
5
千葉科学大学 薬学部 薬物動態学研究室、
6
信州大学医学部附属病院 薬剤部
○小西 麻美子1、奥崎 恭子1、北畠 知美1、
佐藤 裕1、佐々木 崇光1、熊谷 健1、
榊原 明美2、鈴木 匡3、松永 民秀3、
頭金 正博4、細川 正清5、大森 栄6、
永田 清1
【目的】配合剤は患者にとって服用剤数の減少、経済的負
担の軽減などの利点が考えられるが、採用品目の増加、用
量調節が困難になるという問題も生じている。そこで我々
は、降圧薬配合剤の使用実態を把握する目的で調査を行っ
たので報告する。
【方法】2010年12月∼2011年11月の間に、セコム提携病院
(12施設)で処方された降圧薬配合剤(16剤)およびその
他降圧薬の処方実態について、医事データを調査し解析し
た。
【結果】調査期間中、降圧薬配合剤が処方された患者は
2601人で、これは、全降圧薬が処方された全患者中2.
5%
で あ っ た。特 に、プ レ ミ ネ ン ト が20.
1%、エ カ ー ド が
16.
8%、エックスフォージが12.
5%と多かった。また、エ
カードが処方された437人の同剤処方前に は ARB が123
人、サイアザイド系利尿薬が11人、Ca 拮抗薬が193人に処
方されていた。またエカードの処方後にも、ARB が55人、
Ca 拮抗薬が352人、サイアザイド系利尿薬が4人併用され
ていた。
【考察】
今回の調査では降圧薬配合剤が処方された患者は、
全降圧薬が処方された患者の2.
5%と少なかった。また、
ARB とサイアザイド系利尿薬の降圧薬配合剤が処方され
る前に、ARB およびサイアザイド系利尿薬が処方されて
いる患者は少なかった。また、降圧薬配合剤と同時に同効
の薬剤が併用されているなど、降圧薬配合剤の適正使用に
ついて問題点が抽出された。今後は、これらの降圧薬配合
剤の有用性および経済性について検討が必要と考える。
036 統合失調症薬物治療の変遷に関する調査研究 −
精神科病院入院患者を対象とした過去15年間の後
方視的分析と考察−
2
1
財団法人創精会 松山記念病院 薬剤課、
財団法人創精会 松山記念病院 医局、
3
就実大学 薬学部、
4
愛媛大学 医学部 附属病院 薬剤部
○梅田 賢太1、石丸 智子1、山内 伸男1、
園部 漢太郎2、蓮井 康弘2、末丸 克矢3、
荒木 博陽4、木村 尚人2
3
【目的】健康食品は、安全性や有効性が明らかとなってい
ない多種多様な製品が流通していることから、その使用実
態の把握及び医薬品との相互作用を予測することが難しい
状況にある。一般に医薬品間の相互作用は、主にシトクロ
ム P450(CYP)が関与することから、当研究室では、代表
的な健康食品有効成分による CYP の誘導及び阻害評価を進
めてきた。しかし、より有益な情報を提供するためには、
現在、市場に流通し、且つ服用されている健康食品につい
て評価する必要がある。そこで、本研究では、健康食品と
医薬品における相互作用解明を目的に健康食品の使用実態
を明らかにするためのアンケート調査を行った。
【方法】全国約100店舗の薬局に依頼し、約1,
000名の来局
者から健康食品の使用状況についてアンケート調査を実施
した。
【結果及び考察】アンケート調査の結果、薬局に来局され
る方の60%は、医薬品と健康食品を併用しており、約130製
品の健康食品の使用が確認された。これらの製品の服用頻
度は、毎日及び週に3∼4回の割合が88%と高く、健康食
品の服用による効果及び健康被害を感じている方は58%と
3%であった。服用期間は、1年以上が約半数を占め、健
康食品の効果の有無には関わらず長期間服用していること
が確認された。本研究から全国規模の健康食品使用実態が
明らかとなり、今後の健康食品と医薬品相互作用解明を行
う上で有益な情報が得られた。
2
【目的】これまで統合失調症薬物治療の長期変遷に関する
研究は僅かしか行われていないことから、松山記念病院入
院患者を対象とした後方視的解析研究を行った。
【方法】抗精神病薬は、患者数、併用数、投与量、新規薬
比率、繁用薬剤種別を算出した。併用薬剤は、気分安定
薬、抗不安薬、睡眠薬、抗パーキンソン薬、便秘薬、糖尿
病用薬を対象とした。単剤群と多剤併用群、新規薬群と従
来薬群に分類し、患者背景と抗精神病薬投与量、併用薬を
比較した。研究の安全性は、パスワード管理及び当院内環
境のみで行うことで確保した。
【結果】各年の調査対象患者の対全病床数比率は、59.
8%
か ら67.
3%の 範 囲 内 で あ っ た。抗 精 神 病 薬 平 均 投 与 量
(chlorpromazine 換 算)は、2001年 か ら の10年 間 で33%
減少した。単剤治療群の新規薬投与量比率は、1996年の
1.
6%から2010年には89.
2%に達した。しかし、多剤併用
群では依然として従来型薬が多く用いられていた。併用薬
は、気 分 安 定 薬 が20.
3%増 加 し、抗 パ ー キ ン ソ ン 薬 は
28.
5%減少した。便秘薬、糖尿病用薬は、それぞれ約1.
5
倍、2倍に増加した。
【考察・結論】新規薬処方は一般的となったが、未だ従来
薬も多用されている。便秘薬や糖尿病用薬の併用率増加要
因の特定は困難であった。本研究は定量分析にとどまった
が、今後は有効性、有害性、経済性などを加味した多角的
な分析を行う必要がある。
−188−
037 鎮痛剤併用によるがん性疼痛における Tramadol
の有用性の検討
社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会中津病
院
○橋間 伸行、高取 秀人、三木 芳晃、
高柳 和代、奥村 裕英、桑井 幸雄
【目 的】Tramadol(以 下、Tra)は WHO 方 式 が ん 疼 痛
治療法における第2段階の薬剤に分類され、Morphine の
3倍の鎮痛作 用 と SNRI 作 用 を 併
1/5倍、Codeine の1.
せ持っている。また非麻薬性薬剤であるため、管理が簡便
である。Tra 処方時には NSAIDs 等の併用が推奨されて
おり、Acetaminophen 配合製剤の発売などから、鎮痛剤
併用によるがん性疼痛における Tra の有用性を検討する。
【方 法】平 成23年7月1日 か ら12月31日 ま で の 間 に Tra
が処方されたがん性疼痛患者20名を対象とし、開始量、最
終量、処方量の推移、診療科、併用薬剤、処方期間等をレ
トロスペクティブに解析した。
【結 果】開 始 量 は50mg が7名、75mg が2名、100mg が
8名、最 終 量 は50mg が2名、75mg が2名、100mg が11
名、200mg が1名、300mg が1名、処方量の推移は増減
なしが14名、50mg 増が4名、100mg 増が1名、250mg 増
が1名、診療科は呼吸器内科が13名、産婦人科が3名、血
液内科が2名、外科が1名、形成外科が1名、処方期間は
Tra 単剤群が平均40日、Acetaminophen(以下、Ace)併
3日、Loxoprofen(以下、Lox)併用群が平
用群が平均59.
1日、Ace+Lox 併用群が平均65.
7日であった。
均62.
【考察】Tra 単剤群よりも鎮痛剤併用群に処方期間の延長
が認められ、良好な疼痛コントロールが維持できた結果と
考えられる。Tra は消化管運動抑制作用や Oddi 括約筋収
縮作用も弱いため、消化器系がん性疼痛患者への使用が期
待される。
039 病院機能評価 Ver.
6.
0に対応した薬剤の温度管
理−保管温度データを自動・定期・メールで取得
する−
038 当院における末梢性神経障害性疼痛治療薬プレガ
バリンの使用実態調査
川崎医科大学附属病院 薬剤部
○服部 真理子、矢吹 晃宏、隅田 優、
槇枝 大貴、二宮 洋子、玉井 恭子
【目的】プレガバリンは神経障害性疼痛の第一選択薬であ
り、がん患者の疼痛緩和など広く効果が期待されている。
しかし、眠気やふらつきなどの副作用が発現することか
ら、150mg/日より少量で開始することが推奨されてい
る。そこで、適正使用を推進するために、当院での使用実
態を調査したので報告する。
【方法】2010年11月1日∼2011年11月30日の期間に内服開
始となった入院患者98名を対象とし、電子カルテの情報を
用いて服薬状況、副作用の発現状況を後方的に調査した。
【結果】開始用量は、150mg/日57%と最も多く、50mg/
7%に認め
日15%、25mg/日15%であった。副作用は35.
3%、ふ ら つ き15.
3%、転 倒6.
12%な ど で
ら れ、眠 気18.
あった。発現時期は、服用開始後または増量時の10日以内
で、発生頻度と用量との関連は認められなかった。35名が
服用を中止しており、中止理由は、効果なし9名、症状改
善8名、副作用のため7名などであった。「効果なし」9
名のうち4名は、服用開始から増量することなく7日以内
に中止されていた。
【考察】今回の調査では、少量での開始が推奨されている
にも関わらず、半数以上の患者が150mg/日で服用を開始
していた。一方、少量から開始した患者との副作用発生率
に差はなかったことから、開始用量に関わらず開始時また
は増量時は慎重に経過観察を行い、患者の状態に応じた増
減法を提案するなどの適正使用に貢献する必要があると思
われる。
040 AUD からみる後発医薬品導入効果
社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会中津病
院
○畑仲 希良々、三木 芳晃、高柳 和代、
奥村 裕英、桑井 幸雄
1
広島大学病院 薬剤部、
広島大学病院 臨床研究部
○村瀬 哲也1、沈 永新2、泉谷 悟1、
池田 博昭1、櫻下 弘志1、深川 恵美子1、
井田 裕美1、宮中 桃子1、亀田 美保1、
宮井 ふみ子1、古屋 由加2、山中 恵子2、
後藤 志保2、小島 美樹子2、木平 健治1
2
【目 的】平 成22年 度 病 院 機 能 評 価 デ ー タ ブ ッ ク 中 で
「4.
3.
2.
1薬剤の適切な保管」の項目に関し「薬品冷蔵庫
の温度・湿度管理がなされていない」と指摘されており、
薬剤の適切な品質管理が求められている。また、グローバ
ル臨床試験では精度保証付き温度計の設置や定期的な温度
記録など厳密な管理が求められ、適切かつ効率的な薬剤温
度管理が重要である。今回、温度管理業務の軽減を目的に
冷蔵庫に設置した無線 LAN サーモレコーダーの測定デー
タをメール配信するシステムの構築を試みた。
【方法】無線 LAN サーモレコーダーは1時間毎測定と10
日毎データ送信、ネットワークミニベースは測定温度デー
タを自動吸い上げ、PC にデータを送信する設定を行っ
た。測定温度データファイルは、PC に登録したメーリン
グリストにより添付ファイルで自動・定期配信した。サー
モレコーダーが設定温度範囲を超えた場合、PC と携帯電
話へアラームを送信する設定をした。
【結果】複数の薬剤師が温度データ受信可能となり、メー
ルソフト上でデータ蓄積ができた。当システムにより厳密
な管理を要する薬剤の品質を効率的に管理できた。
【考察】システムは病院機能評価 Ver.
6.
0「4.
3.
2.
1」の
「薬剤が適切に保管されている」に対応した記録が可能に
なると考えられた。温度データ取得を手動から自動へ変更
することで業務量を減少させることができた。現在は一部
の薬品を対象としており、今後は全薬剤への拡大を検討し
ている。
【目的】当院では、2006年7月より DPC 包括評価制度が
導入され、入院での注射用抗菌薬のコスト削減のため、
2009年9月に、一部を後発医薬品に切り替えた。今回、抗
菌薬使用密度(AUD)に基づいて後発品導入による抗菌
薬の使用動向変化及び経済効果を検討した。
【方法】対象薬は、セファゾリン(以下、CEZ)
、セフォ
チアム(以下、CTM)
、スルバクタム・セフォペラゾン配
合剤(以下、SBT/CPZ)
、スルバクタム・アンピシリン配
合剤(以下、SBT/ABPC)であり、調査期 間 は、2009年
3月から2010年8月までとし、半年ごとの3期間に区切っ
た。各抗菌薬の AUD は各月述べ入院患者数を用いて算出
した。薬剤費の変動についても解析した。
79→8.
08
【結果】CEZ の各期間 の 平 均 AUD の 推 移 は8.
→9.
15、CTM は12.
95→12.
44→11.
54、SBT/CPZ は5.
48
→5.
45→5.
15、 SBT / ABPC は30.
56→26.
52→28.
17で
あった。導入前後半期の全注射用抗菌薬において、経済効
果が示された。
【考察】CEZ と SBT/ABPC では、一時的に AUD の減少
傾向がみられたが、後発品が定着した期間で AUD の増加
傾向がみられ、スムーズに切り替わったと考える。CTM
と SBT/CPZ では、AUD の減少傾向がみられ、後発品に
対する抵抗から他剤への切り替えがあった可能性が示唆さ
れた。薬剤費削減の面では、有益であることが示された。
今後も AUD 値の継続的な調査に加え、後発品の有害事象
に関する調査や抗菌薬感受性に及ぼす影響を評価し、治療
効果の向上に努めていきたい。
−189−
ポスター演題
041 腎機能低下患者におけるゾレドロン酸減量の有用
性に関する検討
金沢大学付属病院 薬剤部
○渡辺 真生、板井 進悟、本谷 和佳子、
志村 裕介、樋口 真衣子、谷本 定子、
前田 大蔵、崔 吉道、宮本 謙一
1
半田市立 半田病院
半田市立 半田病院
○尾崎 正則1、松林
村上 照幸1、田中
2
【目的】ゾレドロン酸は主に腎排泄の薬剤であり、腎機能
低下患者では腎機能に応じた減量が添付文書で推奨されて
いる。しかし、減量することで安全性が高まったとする報
告は乏しい。そこで、金沢大学付属病院(以下、当院)に
おける腎機能低下患者におけるゾレドロン酸の減量の状況
について調査し、その有用性について検討した。
【方法】対象は当院において2010年1月1日から12月31日
にゾレドロン酸を投与された231例。腎機能低下は推定
GFR をもとに判定し、ゾレドロン酸の減量の有無を調査
した。有害事象として血清クレアチニン増加、低カルシウ
4をもとに評価した。
ム血症について CTCAE ver.
【結果】231例中70例(31%)に腎機能低下(60mL/min/
1.
73m2以下)が認められた。そのうち、ゾレドロン酸の
、減量群は20例(29%)であっ
投与量不変群は50例(71%)
た。不変群では G3/4の血清クレアチニン増加は5例
、G3の低カルシウム血症は3例(約6%)に認
(10%)
められた。一方、減量群では G3以上のクレアチニン増
加、低カルシウム血症は認められなかった。
【考察】ゾレドロン酸減量群では、G3以上の血清クレア
チニン増加、低カルシウム血症は認められなかったことか
ら、減量することで安全に投与できる可能性が示唆され
た。ゾレドロン酸を 投 与 さ れ て い る 患 者 で は 腎 機 能 を
チェックし、減量を提案する必要がある。
043 注射薬個人払出における返却薬の現状把握と今後
の対策
大阪大学医学部附属病院 薬剤部
○村地 康、安田 宗一郎、村井
柳本 悦子、上田 要一、竹上
大石 雅子、三輪 芳弘
042 当院での非弁膜症性心房細動患者におけるダビガ
トランエテキシラートメタンスルホン酸塩の副作
用についての検討
薬剤科、
循環器
十糸美1、佐藤
哲人2
朱美1、
【目的】心房細動は、心原性脳塞栓症を発症させる大きな
原因の一つであることが知られている。これまでワルファ
リンカリウムが使用されていたが、2011年3月よりダビガ
トランが発売され、ビタミン K 含有食品の摂取制限がな
く PT­INR による用量調節を行う必要がない等の利点が
あり広く使用されるようになっているが、発売後重篤な出
血等の副作用が報告されている。当院でも2011年5月より
使用開始したために、その副作用について調査することと
した。
【方法】当院でダビガトランを投与された79人におけるそ
の副作用頻度を調査した。調査期間は、2011年5月から
2011年12月までとした。副作用の頻度とその内容、また腎
機能、CHADS2スコア等の背景についても調査した。
【結果】年齢は平均71±10歳、45歳から89歳で性別は男性
が48人、CHADS2スコア平均1.
6±1.
1であった。副作用
は9人(12.
7%)で、出血(血尿)が2人、消化器症状が
5人、その他が3人であった。投与中止になった患者は11
人(13.
9%)であった。また腎機能が測定されていない患
者が2人、CCr を計算すると投与禁忌の30(mL/min)以
下となった患者が3人含まれていた。
【結論】当院におけるダビガトラン使用患者において、重
篤なものは認めなかったが、比較的高頻度に副作用が確認
された。また、腎機能の適正な評価がされていない症例が
すくなからずあった。今回のことを薬剤指導業務に反映さ
せ活用する必要がある。
044 Microsoft Excel を用いた内服抗がん剤の投与ス
ケジュールおよび併用薬の管理
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部
○加藤 こずえ、佐藤 哲、篠 道弘
扶、
学、
【目的】大阪大学医学部附属病院(以下当院)では、注射
薬の施用毎払出を実施している。注射薬の未使用返却は、
不要薬剤配薬による病棟での過誤誘発、薬剤汚損、期限切
迫、薬剤部での誤返却等のリスク要因であり、購入や調
剤・搬送・返却に無駄なコストや労力を要する。今回、注
射薬払出の現状を把握し、返却薬低減のための対策を評価
検討した。
【方法】当院は平成21年に注射オーダシステム更新、22年
に調剤支援システム・自動注射薬払出機器更新を行った。
平成20∼23年の9∼11月における薬剤部からの注射薬払出
数、返却数、定数払出数を病棟・曜日毎に集計し、年度推
移を含めて解析した。
【結果・考察】病院情報システム更新で指示変更を踏まえ
たオーダにより大幅な返却数減少が見られた。ICU 等の
重症病棟では定数配置の充実により改善が見られた。平成
23年 に お け る 全 病 棟 一 日 平 均 返 却 数 は380件(返 却 率
10.
4%)
であり、返却業務に1日延べ3時間を要している。
7%)が高く、休日分一括払出に対し柔
月曜の返却率(11.
軟な処方修正が難しいことが要因と考えられ、結果、約
1300件の返却薬の処理を負担している。また薬剤師が注射
3%、9.
2%)が低い
混合を実施する2病棟では返却率(7.
ことから、薬剤師の十分な関与が運用を改善することが示
唆された。今後は休日分の運用方法を検討し、病棟薬剤師
の配備を図ることで効率と安全をさらに向上させたい。
【目的】これまで静岡がんセンター(以下、当院)では、
服用期間と休薬期間が設定されている内服薬のフッ化ピリ
ミジン系をはじめとした一部の抗悪性腫瘍剤の投与スケ
ジュールおよび併用薬のチェックを、Microsoft Access を
使用したシステムを用いて行ってきた。新規薬剤が採用さ
れた際、システムへの薬剤登録が必要であるが、Access
では登録が難しく、また、当院の電子カルテが搭載された
パソコンでは Excel が標準仕様となっているため、今回
Excel でのシステム構築を試みた。
【方法】Microsoft Excel2010を使用し、投与スケジュー
ルおよび併用薬のチェックが行える管理システムを作製し
た。当 院 採 用 の テ ィ ー エ ス ワ ン®、ゼ ロ ー ダ&
reg;、ユーエフティⓇ/ユーゼルⓇ、テモダールⓇ、フ
ルダラⓇ、スーテントⓇ、レブラミドⓇを対象薬剤とし
た。
800名、登録件数
【結果・考察】現在の登録患者数は約4,
000件である。これまで使用してきたシステムから
は約39,
今回構築したシステムへの変更による利点として、1)新
規薬剤の登録などのメンテナンスのしやすさ、2)Excel
は汎用されているため、Access と比較して患者データ入
力者の抵抗感の少なさがあげられる。デメリットとして、
移行作業の煩雑さなどがあげられるが、電子カルテとの連
携を含め将来的な拡大を考えると、Excel への移行が必要
と考えられる。
−190−
045 エルネオパⓇ採用による TPN 調製業務及び微量
元素充足率への影響
島根県立中央病院 薬剤局
○頼光 翔、島田 杏子、福田 恵美子、
平野 榮作、後藤 澄子、今岡 友紀
046 重症貧血で入院となった高度栄養障害リスク患者
への介入
荒尾市民病院 NST
○大野 由美子、佐々木
【目的】エルネオパⓇは微量元素を配合したキット製剤の
高カロリー輸液で、微量元素の投与忘れに対する防止効果
も期待される製剤である。今回、エルネオパⓇ採用による
TPN 調製業務や高カロリー輸液に対する微量元素の処方
割合(以下、微量元素充足率)に及ぼす影響について調査
した。
【方法】調査期間はエルネオパⓇ採用前(2009年8月∼翌
年7月)及び採用後(2010年8月∼翌年7月)とし、注射
オーダ情報などを基に調査した。調査内容は高カロリー輸
液と微量元素の処方件数、薬剤師による TPN 調製件数と
した。
445件で
【結果】採用前の高カロリー輸液の処方件数は9,
017件 で、そ の う ち エ ル ネ オ パⓇは
あ っ た。採 用 後 は7,
5,
400件(77.
0%)であった。微量元素の処方件数は6,
910
件から1,
534件に減少した。定時注射オーダに対する TPN
820件(85.
0%)から2,
999件(58.
9%)
調製件数(率)は5,
9件から12.
2件に減少
となり、1日当たりの調製件数は23.
した。微量元素充足率はエルネオパⓇ以外の高カロリー輸
5%か ら72.
1%と 減 少 し た が、処 方 全 体 で は
液 で は84.
93.
5%に増加した。
【考察・結論】エルネオパⓇ採用後、高カロリー輸液の調
製件数や割合は減少しており、TPN 調製業務の軽減に繋
がった。また、エルネオパⓇ以外の高カロリー輸液では微
量元素充足率は減少となったが、処方全体では増加してお
り、適正な薬物療法の推進と患者の栄養状態の維持にも寄
与できたと考える。
047 低分子デキストラン含有製剤の高温長期保管での
着色について
一成、山口
祐二
【目的】経管栄養管理中、重症貧血を呈した高度栄養障害
リスクを有する患者に対して栄養サポートが奏功した症例
を経験したので報告する。
【症例】65歳男性。平成21年9月くも膜下出血を発症。平
成22年1月胃瘻造設、リハビリ加療にて施設を転々として
0まで低下し、輸血施行後も改
いた。平成23年3月 Hb6.
善がみられず、貧血精査のため当院血液内科へ紹介入院と
0、
な っ た。入 院 時 所 見 は 身 長175cm、体 重58kg、alb2.
93、Hb6.
5、Fe16、フェリチン410。血糖値282、仙
CRP6.
骨部褥瘡と両下肢に浮腫著明。栄養量は600kcal/day。
5、CRP6.
21、Hb6.
3、プレアルブ
【経過】介入時、Alb1.
ミン(以下 PA)5。骨髄穿刺するが異常なく、また明ら
かな出血も認められず、貧血の原因に長期的な経管栄養と
低栄養による微量元素不足を疑い検査した結果、血清亜鉛
値30μg/dl であった。褥瘡の創傷治癒促進も考慮に入れ、
経腸投与で亜鉛製剤を開始し、低 GL 剤へ変更、PA を用
6、PA12へ上昇を認
いてモニタリングした。その後 Hb9.
め、紹介元へ転院した。
【考察】NST 介入によって亜鉛欠乏性貧血を発見できた
症例で、栄養管理の再検討と亜鉛強化を行い、栄養状態に
改善がみられ有効であったと考えられる。経管栄養管理に
おいて、栄養剤の特性を十分に理解した上で、病態に応じ
た処方設計の支援を積極的に行う事は非常に重要である。
048 免疫増強栄養剤による消化器疾患患者の術前栄養
管理と血中フリーラジカル変動
1
株式会社大塚製薬工場 輸液情報センター
○関本 茂人、相原 健司、佐藤 英喜
九州保健福祉大学 薬学部 薬学科、
社会保険宮崎江南病院 外科、
3
社会保険宮崎江南病院 栄養管理部、
4
社会保険宮崎江南病院 検査部、
5
社会保険宮崎江南病院 庶務課
○鈴木 彰人1、白尾 一定2、本吉 佳世3、
花牟禮 富美雄4、吉田 祥子5、佐藤 圭創1
2
【目的】医療機関より、サヴィオゾール輸液の着色につい
て申し出を受ける場合がある。そこで、低分子デキストラ
ン含有輸液の高温保存によって発生する着色、バッグの膨
れ、不溶性微粒子、デキストラン含量の変化を検討した。
【方法】40℃、50℃及び60℃設定の保温器に3種類の低分
子デキストラン製剤(サヴィオゾール輸液、低分子デキス
トラン L 注、低分子デキストラン糖注)を保管した。40℃
は1箇月毎、50℃及び60℃は1週間毎に取り出し、着色、
バッグの膨れの観察、不溶性微粒子、デキストラン含量の
測定を行った。
【結果】サヴィオゾール輸液は、40℃2箇月保管、50℃1
箇月保管、60℃2週間保管で、製品によってはバッグ越し
に着色して見える場合もあるが、日局の性状試験には全て
適合した。なお、バッグの膨れについては、60℃2週間保
管が最も大きかった。
一方、低分子デキストラン L 注、低分子デキストラン糖
注については、いずれの保管条件においても、バッグの膨
れは認めたものの着色は認めなかった。
また、デキストラン含量は、3種類の製品とも変化はな
かった。不溶性微粒子数は、10μm 以下の粒子で増加傾向
を示したが、規格範囲内で推移した。
【考察】サヴィオゾール輸液は、高温保存したときに着色
する可能性があり、温度が高くなるほどその傾向は顕著で
あった。着色はデキストランが分解して生成したブドウ糖
によるもので、サヴィオゾール輸液は他の低分子デキスト
ラン製剤に比べて、高 pH(約8.
3)であることが原因と
推察された。
【結論】サヴィオゾール輸液については、恒温槽などでの
長時間の保管や、温度の高い場所での長期保管にならない
よう注意が必要である。
【目的】免疫増強栄養剤(IED)は、術後合併症の減少や
入院期間の短縮などを目的に、消化器外科手術患者に対し
て術前から投与される。IED には様々な抗酸化物質が配
合されていることから、我々は健常者及び消化器外科手術
患者の血中フリーラジカル(FR)を測定し、IED の抗酸
化活性について検討した。
【方法】IED としてインパクトⓇ及びメインⓇを使用した。
健常者(20歳代)に対しては絶食後、IED を経口単回投
与(200kcal)し、投与前後の FR を測定した。消化器外
科手術患者(50歳∼80歳)に対しては食事のほかに IED
を術前に7日間連続投与した。当該患者は消化器外科手術
予定の患者の中から栄養評価によって抽出した。術前栄養
管理の開始時(IED 未投与時)及び手術直前(IED・7日
間投与後)に FR を測定した。FR の測定は、採血後、電
子スピン共鳴法により行った。
【結果】健常者において、メインは投与60、90、120分後
に、インパクトは投与90、120分後に、それぞれ FR を有
意に減少させた。一方、消化器外科手術患者において、術
前の IED・7日間連続投与では、メインは FR を約5%減
少させたが、インパクトは FR に影響を及ぼさなかった。
リンパ球数はいずれの IED 投与症例においても増加した。
【考察】IED は免疫力増強作用を示すとともに、FR 産生
を抑制することが示唆された。また FR は、個体間及び個
体内での変動が観察され、これらの変動には IED に含ま
れる抗酸化物質の配合組成が関与していると考える。
−191−
ポスター演題
049 電気生理学的手法を用いたクロモグリク酸ナトリ
ウム OTC 点眼液の角膜障害性の評価
050 サインバルタカプセルの簡易懸濁法適用に向けた
溶出挙動の評価
1
長崎大学 大学院 医歯薬学総合研究科、
上五島病院、
3
崇城大学 薬学部、
4
長崎大学病院 薬剤部
麻衣子1、
○荒木 良介1,2、八坂 貴宏2、
手嶋 無限1、中嶋 弥穂子3、佐々木 均4、
中嶋 幹郎1
岡山大学病院 薬剤部
○武本 あかね、江角
千堂 年昭
2
【目的】我々は摘出角膜に対する点眼液の電気生理学的膜
抵抗値(TER)を測定し、その変化の割合を細胞毒性試
験の結果と関連付けることから、点眼液の角膜上皮バリア
能への障害性を評価する方法を開発した。そして角膜毒性
の原因となる塩化ベンザルコニウム(BAC)を防腐剤と
して含有する点眼液の角膜障害性が、ヒアルロン酸ナトリ
ウム(HA)点眼液の前処置により低減できることを明ら
かにした。医療用では HA を配合した点眼液は未だ市販
されていないが、OTC には添加剤として HA が配合され
ている点眼液が発売されている。そこで本研究では、HA
配合剤があるクロモグリク酸ナトリウム OTC 点眼液の角
膜障害性を解析した。
【方法】BAC や HA を含む各種クロモグリク酸ナトリウ
ム OTC 点眼液を対象とした。点眼液の角膜障害性は角膜
TER の変化を指標として評価した。家兎の摘 出 角 膜 を
チ ャ ン バ ー に 装 着 し、緩 衝 液 を 加 え、点 眼 液 添 加 後 の
TER の変化を経時的に測定した。
【結果・考察】実験の結果、クロモグリク酸ナトリウムの
BAC を含む OTC 点眼液の角膜 TER は速 や か に 減 少 し
た。一方、HA が配合された BAC を含む OTC 点眼液の
角膜 TER は変化しなかった。これらの結果から、HA を
配合することで BAC の角膜障害性が低減されていること
が示唆され、クロモグリク酸ナトリウム OTC 点眼液の製
剤設計において HA を配合することは有用であることが
示された。
051 Ritonavir 製剤における剤形間の溶出挙動に関す
る比較検討
【緒言】HIV 感染症治療において,Ritonavir(RTV)は強
力な CYP3A4阻害作用を持つことから,CYP3A4で代
謝されるプロテアーゼ阻害薬のブースターとして用いられ
ている。RTV は従来,液状成分が充填されたソフトゲルカ
プセル(SGC)が販売され,冷所保存が必要であった。2011
年3月,固溶体化された冷所保存が不要な錠剤(Tab)が
剤形追加されたため,剤形間の溶出挙動について比較検討
を行ったので報告する。
【方法】SGC,Tab を用いて,日局16の溶出試験法パドル法
にて溶出試験を行った。6製剤について,37±0.
5℃,パド
ル回転数75rpm にて試験を行い,120分までの溶出率を経時
的に HPLC により測定した。試験液は溶出試験第1液(pH
1.
2)および第2液(pH6.
8)を用いた。
【結果】pH1.
2の試験液を用いた場合の溶出開始後30分に
お け る SGC お よ び Tab の 平 均 溶 出 率 は,pH1.
2液 で は
74%,42%であった。また、開始後90分では84%,88%で
あり,溶出初期において著しい差が認められた。また,溶
出率のバラツキはいずれの時間においても Tab が小さい傾
向を示した。
【考察】RTV の錠剤化により,溶出率のバラツキが小さく
なったことは,安定した薬剤吸収に寄与するものと考えら
れた。一方,Tab の溶出速度が SGC と比較して遅延したこ
とは,胃内容物排出時間が早い場合,腸管内に薬剤が到達
した際に十分な薬剤の溶出がされない可能性を示唆するも
のと考えられた。今後,吸収過程における血中濃度推移と
の関連について検討が必要であると考える。
陽一、
【目的】サインバルタカプセル(以下、本剤)は、有効成
分 duloxetine が酸に不安定であるため腸溶性コーティン
グを施した顆粒が封入されている。うつ病を適応症とする
本剤を摂食不能な重症うつ病に用いる場合、簡易懸濁法が
適用される症例がある。しかし、懸濁液中でのコーティン
グの経時的な安定性は明らかでなく、簡易懸濁後に投与し
た場合、胃酸と反応して薬効が失われることが懸念され
る。そこで今回、本剤への簡易懸濁法の適用に向けた安定
性を duloxetine 溶出挙動から検討した。
【方法】懸濁液中の duloxetine の定量は,高速液体クロ
マトグラフィーを用いた。測定条件はカラム Supersphere
100RP−18(e)
,カラム温度は40℃,移動相はアセトニト
8)=47:53,
流 速1.
3mL/
リ ル:リ ン 酸 緩 衝 液(pH3.
min,1回注入量は30μL とした。内標準物質は,クロミ
プラミン塩酸塩を用いた。本剤1カプセルを55℃に恒温し
た 超 純 水20mL に 懸 濁 さ せ,55℃の 恒 温 槽 内 で10分,30
分,45分,60分,90分および120分後に懸濁液を取り出し
た。懸濁液は直ちにフィルターを通過させ,1mg/mL ク
ロミプラミン塩酸塩を等量加えて試料とした。
【結果】本剤を懸濁した結果,10分および30分後では duloxetine は検出されなかった。しかし,60∼120分後では
duloxetine 濃度が時間依存的に増加した。
【考察】本研究結果より,本剤を簡易懸濁する場合,懸濁
開始後30分以内に投与することで適用可能と考える。
052 モーズ軟膏を調整した1症例報告
1
公益社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわま
ち病院 薬剤部、
2
公益社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわま
ち病院 外科、
3
公益社団法人地域医療振興協会横須賀市立うわま
ち病院 看護部
○田辺 亮子1、尾崎 麻衣1、藤田 奈緒子1、
菅沼 利行2、角 和恵3、小山 秀樹1
1
国立病院機構 大阪医療センター薬剤科、
2
神戸薬科大学製剤学研究室、
3
国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS 先端医
療開発センター、
4
独立行政法人国立循環器病研究センター薬剤部
○矢倉 裕輝1,2、大歳 奈美子2、大野 靖子2、
寺岡 麗子2、吉野 宗宏1、櫛田 宏幸1、
廣畑 和弘1、山内 一恭1、上平 朝子3、
白阪 琢磨3、桑原 健4、小森 勝也1、
北河 修治2
悟、河崎
【目的】モーズ軟膏は、表在性腫瘍からの出血や悪臭を軽
減する他、組織を固定化させる作用があり、腫瘍組織の除
去目的で使用される。今回、潰瘍形成を伴う局所乳癌患者
に対しモーズ軟膏を使用した症例について報告する。
【症例】73歳女性 左乳癌左前胸部に最大径15cm 大の不
整潰瘍を認め、出血、悪臭を伴い、浸出液も多量に認め
た。止血と悪臭のコントロール目的で、主治医よりモーズ
軟膏(=以下軟膏)の院内特殊製剤依頼があり、ZnCl2の
濃度が異なる2種類の軟膏を作成した。潰瘍の周囲の隆起
部には軟膏(全量70g のうち ZnCl2:50g)を、潰瘍部に
は1/2軟膏(全量70g のうち ZnCl2:25g)を塗布した。
塗布後翌日には患部が固定化され悪臭は消失し、出血、浸
出液は軽減した。固定化した組織の切除と1/2軟膏を塗
布する処置を繰り返した。3ヶ月後には腫瘍はほぼ脱落
し、潰瘍部は上皮化とともに、著明に縮小した。
【考察】軟膏の使用により止血と悪臭のコントロールが可
能となり、患者の QOL 改善に貢献できた。今回、医師や
看護師の処置に立ち会い、薬剤師も積極的に治療に介入し
ていく必要性を感じた。今後は,長期保存による粘度の増
加を見越して、グリセリン、蒸留水、亜鉛化デンプンの初
期量を決めていく必要がある。
−192−
053 日本におけるカルボプラチン製剤のバイアル表面
汚染の比較
054 アジスロマイシン坐剤の in vitro ­ in vivo 相関
を用いた薬物動態モデルの構築
1
1
2
2
浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部、
摂南大学大学院薬学研究科 臨床薬剤学、
3
磐田市立総合病院 薬剤部、
4
聖隷浜松病院 薬剤部
○大澤 隆志1、内藤 隆文1、鈴木 直哉1,2、
後藤 敏也3、高田 晃3、中道 秀徳4、
大貫 よし子4、今井 公江2、中西 邦夫2、
川上 純一1
日本大学 薬学部、
佐賀大学医学部附属病院 薬剤部
○槇石 美聡1、青山 隆彦1、飯盛 美由紀2、
中野 行孝2、林 宏行1、松本 宜明1、
藤戸 博2
【目的】海外の医療機関から抗がん剤の製造過程における
バイアル表面汚染の可能性が報告されている。しかし、日
本で流通する抗がん剤のバイアル表面汚染を調査した報告
は少なく、その汚染状況は明らかとなっていない。本研究
では、日本におけるカルボプラチン製剤を対象にバイアル
表面汚染の調査を行い、製剤間での比較を行うことを目的
とした。
【方法】2009年5月から2010月4月の期間に日本において
流通した7規格、28バッチを含む3メーカーのカルボプラ
チン製剤を対象とした。未開封のバイアルの中から無作為
に各バッチ5バイアルを抽出した。未開封および薬剤未充
填のバイアルの表面全体から拭き取っ た 白 金 化 合 物 を
LC­ MS/MS 法にて測定した。
【結果および考察】対象とした全てのカルボプラチン製剤
のバイアル表面から、0.
205−1,
630ng の白金化合物が検
出された。それらの検出量は薬剤未充填バイアルに比べ、
7規格のうち5規格で有意に高値を示した。このことか
ら、カルボプラチン製剤で検出された白金化合物について
は、汚染の可能性が高いことが示された。また、7規格の
うち6規格でバッチ間に有意な検出量の差が確認された。
さらに3メーカーのうち1メーカーで規格間に有意な検出
量の差が認められた。一方、メーカー間では検出量に差は
認められなかった。
【結論】カルボプラチン製剤のバイアル表面汚染は、メー
カー間では同程度であるものの、バッチ間および規格間で
は異なることが示された。
055 院内製剤の承認および再評価方法の見直しと製造
後トレーサビリティの確保
【目的】経口投与が困難な小児、高齢者に対して直腸内投
与が行われる。本研究では、アジスロマイシン(AZM)
坐剤投与時の血中濃度推移を予測することを目的として、
in vitro における薬物放出データと in vivo における血中
薬物濃度データを用い、薬物動態モデルを検討した。
【方法】AZM 坐剤の溶出試験データを用いて、薬物放出
モデルを作成した。佐賀大学医学部附属病院臨床研究倫理
審査委員会による承認後、健常成人における AZM 坐剤ま
たは錠剤投与後の血中濃度データから、薬物動態モデルを
構築した。薬物動態モデルは、1−コンパートメントモデ
ルおよび2−コンパートメントモデルを検討し、吸収過程
を in vitro データより作成した薬物放出モデルにより記述
した。薬物動態モデルのパラメータを算出し、作成したモ
デルにおける予測値と実測値を比較した。薬物動態パラ
メータの算出には母集団薬物動態プログラム NONMEM
7を用いた。
ver.
【結果・考察】AZM の放出プロファイルは薬物放出モデ
ルにより良好に再現されたため、in vitro 放出プロファイ
ルを考慮した薬物動態モデルを構築した。薬物動態モデル
を用いた予測値と実測値は、比較的良好な結果を示した。
得られた溶出試験データを 用 い る 薬 物 動 態 モ デ ル は、
AZM 坐剤投与時の血中濃度推移を予測するために有用で
あると考えられる。
056 院内製剤「Mohs ペースト」の物性評価
島根大学 医学部附属病院 薬剤部
○上村 智哉、玉木 宏樹、井上 昌樹、
小村 直之、西村 信弘、直良 浩司
1
旭川医科大学病院薬剤部、
2
旭川医科大学総務部会計課、
3
京都大学医学部附属病院薬剤部
○小川 聡1、粟屋 敏雄1、小野 尚志1、
高橋 礼恵2、田原 克寿1、内藤 志保1、
小枝 正吉1、田崎 嘉一1、松原 和夫1,3
【目的】院内製剤は薬事法上の医薬品ではないため、作用
機序や安全性の情報が十分ではない。また、医薬品副作用
被害救済制度の対象外となる。したがって、その使用に当
たっては、治療上の必要性を十分考慮するとともに、患者
の権利が十分に尊重される配慮が必要となる。今回我々
は、院内製剤の適正使用に向けたいくつかの取り組みを同
時に行った。
院内製剤の申請から承認、再評価の手続き、2.
【方法】1.
製剤後のトレー
院内製剤の請求から払い出しの手続き、3.
サビリティの確保の3点について見直した。
【結果】承認組織を、薬事委員会から医薬品等臨床研究審
査委員会(IRB)に変更した。院内製剤は原料の規格と適
応範囲から1類から3類の3群に分類し、安全性に関する
エビデンスに応じて審査手順や同意取得の必要性を決定し
た。院内製剤の承認には3年の期限を設け、再評価を行う
こととした。原則として院内製剤は処方せんに基づいた調
剤により交付するものとし、伝票での払出は一部の処置薬
に限定した。一度に大量生産する製剤についてはロットご
とにロットサンプルを保管し、払い出した製剤に問題が
あった時に検証可能な体制とした。
【考察】今回行った一連の取り組みにより、既存の院内製
剤でも科学的根拠の乏しいものは継続使用できないことと
なった。また、同意書の管理が明確化された。科学的妥当
性と倫理性の両面で院内製剤の使用が適正化されたと考え
る。
【目的】Mohs ペーストは手術困難な腫瘍の縮小や、転移
性皮膚がんの出血、滲出液、悪臭の減少を目的として使用
される院内製剤である。しかし、その粘度、流動性等の製
剤学的な物性は詳細に検討されていない。本研究では、
Mohs ペーストの粘性および展延性について検討した。
【方法】Mohs ペーストは亜鉛華デンプンの添加量を変え
た A、B、C、D の4種類を調製し、測定試料とした。100
g 当りの組成は、塩化亜鉛40g、蒸留水20∼30mL、グリセ
リ ン20mL と し、亜 鉛 華 デ ン プ ン の 添 加 量 は A:10g、
5g、C:15g、D:20g と し た。ス プ レ ッ ド メ ー
B:12.
5mL について同心円状に拡がる
ターを用いて、各試料0.
半径を経時的に2時間まで測定した。その結果を基に各試
料の展延性、粘度および流動するために必要な圧力(降伏
値)を算出した。
【結果・考察】Mohs ペーストの展延性は亜鉛華デンプン
添加量の増加とともに低下し、逆に降伏値は増大した。こ
のことから、亜鉛華デンプンの添加量を増やすと、患部に
拡げ難くなることが推測された。また、亜鉛華デンプン添
加量が多いほど初期粘度が高くなった。以上の結果から、
Mohs ペーストは、亜鉛華デンプンの添加量を変えること
で粘度、展延性を調節することが可能であり、患部の状態
に応じた製剤を調製できることが示唆された。
−193−
ポスター演題
057 アジスロマイシンの坐剤による直腸内吸収の基礎
的研究
058 電子カルテに連動した院内製剤管理システムの構
築とその運用
1
佐賀大学医学部附属病院 薬剤部、
日本大学 薬学部
○飯盛 美由紀1、中野 行孝1、青山
松本 宜明2、藤戸 博1
北海道公立大学法人 札幌医科大学附属病院 薬剤
部
○景山 ますみ、益子 寛之、佐々木 直美、
岡崎 正子、中田 浩雅、野田 師正、宮本 篤
2
隆彦2、
【目的】アジスロマイシン(AZM)製剤のジスロマックⓇ
小児用細粒は優れた特性を有するが、患児に服用させるの
に難渋する場面に多く遭遇する。そのため、処方状況や服
薬状況から、飲めなかった患児の年齢や原因を調査した。
また今回、AZM の新たな剤形として AZM の坐剤による
直腸内投与を検討した。
【方法】2010年10月1日∼2011年9月30日の1年間に、佐
賀大学医学部附属病院を受診した15歳未満の患児を対象と
し、電子カルテより内容を調査した。同大学病院臨床研究
倫理審査委員会の承認後、健康成人による AZM の経口投
与及び坐剤投与後の血清中濃度を経時的に測定した。測定
は HPLC­ECD 法により測定した。
【結果・考察】ジスロマックⓇ小児用細粒は、特に0∼4
歳の患児が服用できておらず、その原因として苦味のほか
に、急性呼吸器疾患による咳により嘔吐してしまう患児も
多く見られた。今回、AZM 坐剤の基剤を検討した結果、
溶出試験では AZM の溶出率は油脂性基剤に比較して水溶
性基剤の方が高かったが、基剤の投与後の刺激性は水溶性
基剤の方が強かったため、基剤としてウイテプゾ−ルを用
いた。AZM500mg 坐剤を投与した場合の Cmax 及び AUC
は経口投与に比べそれぞれ約1/3、1/5程度であり、
直腸内投与時の経口投与に対する相対的生物学的利用率は
約20%であった。いずれも重篤な有害事象の発現は認めら
れなかった。今回の結果から、AZM 坐剤を小児へ応用で
きる可能性が示唆された。
【目的】当院では、1995年に PL 法が施行されたのを契機
に、院内製剤に対する体制整備を行ってきた。2002年に本
学の自主臨床研究業務手順書に院内製剤が明文化され、臨
床研究審査委員会にて全ての適応外の院内製剤は審査され
るようになった。院内製剤の適正な製造・使用・管理の実
現に向け、電子カルテと連動した院内製剤管理システムを
2005年に構築し、第16回日本医療薬学会年会で報告した。
その後、2010年の電子カルテ更新時に、これまでの諸課題
を改善し、院内製剤の在庫管理システムを追加構築したの
で報告する。
【方法】現システムでは従来の院内製剤管理システムの機
能を踏襲し、使用期限や在庫数量の管理ができなかった点
を在庫管理システムで改善した。すなわち登録した使用期
限日が切迫した場合は院内製剤在庫ロット検索リストに警
告され、設定在庫数量を割った場合、製造予定品目一覧が
それぞれ自動発行される設定とした。
【結果・考察】品質管理の面からも使用期限の管理は重要
である。今回構築したシステムにより、その管理は従前の
徒手的な運用に比べより確実になった。また、使用期限を
把握することで効率的な製剤調製スケジュールを組むこと
が可能となり、安定した供給体制が確立された。今後も、
院内製剤の適正な製造・使用・管理の実現を目指したシス
テム構築を行っていきたい。
059 後発医薬品の品質,服用感に関する評価 ―酸化
マグネシウム(Mg)細粒における検討―
060 アンブロキソール塩酸塩小児用ドライシロップ剤
の味覚評価
(ヒト味覚官能試験による製剤間の苦味比較評価
第4報)
山形大学 医学部
○丘 龍祥、新関
附属病院 薬剤部
昌宏、豊口 禎子、白石
正
1
【目的】平成24年度診療報酬改定で一般的名称に剤形及び
含量を記載した処方箋を交付した場合,医療機関において
一般名処方加算の算定が可能となった。これにより後発医
薬品(以下,後発品)の使用増加が予想されると共に,後
発品に関する情報が一層重要となる。我々はこれまで酸化
Mg 製剤の後発品である錠剤及びカプセル剤の安定性につ
いて報告してきたが,今回,後発品で83%細粒剤が販売さ
れたので,先発品との製剤比較試験及び服用感について検
討を行った。
【方法】酸化 Mg は,先発品:局方細 粒1品 目(A)
,後
発品:83%細粒2品目(B,C)の3製剤を使用した。各製
剤を分包(成分量500mg/包)し,保存条件(25℃:75%
RH,40℃:75%RH)下で最大90日間保存後,白色度,質
10,
12Fr)の通
量,溶出性,粒度分布,EN チューブ(8,
過性について試験を行った。また,服用感についてアン
ケート調査を行った。
【結果】
3製剤で,白色度の僅かな低下,粒度分布の相違,
吸湿による重量増加が認められた。溶出試験では何れの保
存条件でも溶出挙動で3製剤間に有意な差を認めた。通過
性試験では A,C が保存条件に関係なく8Fr で不通となっ
た。服用感では B が服用良好であった。
【考察】今回の検討で細粒剤においても安定性及び服用感
で相違が認められた。従って,後発品使用時は,物性,服
用感等で先発品との相違点を考慮する必要があると考えら
れた。
北里大学 北里研究所病院 薬剤部、
北里大学 薬学部、
3
城西国際大学 薬学部、
4
北里大学 北里研究所病院 小児科
○加賀谷 隆彦1、小竹 結貴2、薄井 健介2、
松本 かおり3、長谷川 哲也3、綾 美咲4、
秋元 雅之3、厚田 幸一郎1,2
2
【目的】アンブロキソール塩酸塩は小児の去痰剤として汎
用されており,各社から小児用ドライシロップ製剤が市販
されている.しかしながら,アンブロキソールが有する独
特の苦味の為,小児に製剤を服用させる時,苦味の問題か
らアドヒアランスの低下を示す場合がある.そこで今回、
各小児用ドライシロップ製剤の溶解状態における,服用性
に影響を与える味覚比較評価を目的に,ヒト味覚官能試験
を実施し,製剤間の比較検討を行った.
【方法】ヒト味覚官試験は,十分な説明後に文書で承諾を
得られた健常成人ボランティアに二重盲検試験法で行っ
た.各製剤を水で溶解し,アンブロキソール塩酸塩濃度
1.
5mg/mL に 調 製 し た.そ の 溶 液 を0.
45µm の,
フィルターで濾過し,試験溶液とした.試験溶液を,口腔
内に含み10秒後に吐き出し,その後20秒後の味覚を評価し
た。評定尺度法を用い、苦味および甘味強度をスコア化し
て段階評価した.さらに,総合的な味覚官能的評価の「あ
と味」を併せて評価した.評価後はうがいを行い,十分な
間隔を空けて行った.
【結果・考察】ヒト味覚官能試験を実施した結果,製剤間
に苦味および甘味強度に有意差が認められ,各製剤的に工
夫が行われている可能性が推察された.総合的な味覚官能
的評価値の「あと味」も製剤間に差異が認められ,添加剤
の影響が示唆された.本結果はアンブロキソール小児用
DS ジェネリック製剤の有効利用と選択基準に有益な情報
を提供するものと考えられる.
−194−
061 メロキシカム口腔内崩壊錠の患者保管を想定した
安定性について
062 歯科臨床において簡便に調製可能な表面麻酔製剤
の開発
1
1
2
2
日本大学薬学部医薬品評価科学研究室、
日本大学薬学部薬剤学研究室、
3
横浜薬科大学薬学部臨床薬剤学分野、
4
あすなろ薬局
○太田 美鈴1,4、深水 啓朗2、荒川 基記1、
草野 李穂1、岩田 政則3、伴野 和夫2、
日高 慎二1
東京有隣会 有隣病院 薬剤科、
マロクリニック東京、
3
東京有隣会 有隣病院 食養科、
4
明治薬科大学 薬物体内動態学教室
○安藤 崇仁1、中里 政可2、下尾 嘉昭2、
沼田 真美3、近藤 幸男1、吉田 久博4
【目的】医薬品の開封後における品質管理情報は、一包化
調剤の実施や患者の自宅における交付薬剤の保管管理を考
慮すると、その必要性は高く意義があるものと考えられ
る。これまでに我々は無包装状態のアセトアミノフェン
(AA)含有一般用医薬品(OTC)について、高温度高湿
度条件で保存した場合に主薬の溶出性が低下することを見
出した。今回、溶出性の低下を認めた製剤に共通する添加
物に着目し、主剤の異なる製剤を対象として物理薬剤学的
に安定性に関する検討を行ったので報告する。
【方法】試料は、メロキシカムを含有する医療用医薬品か
ら3品目を選択し、ランダムに製剤 A、B および C と表
記することとした。製剤の保存にあたり、複合実験計画法
を参考にして各製剤の硬度および質量の変化を測定した。
さらに、AA 製剤の検討と同様に80℃68%RH 条件におい
て24時間保存した後、各製剤について溶出試験を行い、30
分後の溶出率にて検討した。
【結果】製剤 A の保存後の溶出率は保存前の93%となり、
顕著な溶出性の低下は認められなかった。また、製剤 C
については製剤 A とほぼ同様の溶出性を示した。一方、
エリスリトールおよびクロスポビドンを含有する製剤 B
は保存後の溶出率が保存前の65%となり、溶出性の低下を
認めた。これらは、AA 含有 OTC 製剤を用いた検討と類
似した試験結果であった。従って、製剤 B では高温度高
湿度条件において添加物の相互作用による主薬の溶出性へ
影響が示唆された。
【緒言】歯科臨床では処置の際に局所麻酔注射が頻繁に行
われているが、疼痛を伴うため麻酔前麻酔として表面麻酔
が用いられている。しかし歯科用表面麻酔薬は麻酔効果が
十分とは言えず4%Lidocaine 液や8%Lidocaine スプレー
が用いられることがある。これら製剤は口腔内停滞性が悪
く周辺組織への拡散が問題となる。そこで今回、簡便に調
製可能な表面麻酔製剤を考案し、歯科臨床における有用性
を検討したので報告する。
【方法】製剤は4%Lidocaine 液に介護用食品として市販
されている増粘剤を添加して調製した。増粘剤濃度は3%
および6%とした。麻酔効果試験は文書で同意を得た成人
男女10名を被験者とした。調製した製剤を各被験者の下顎
前歯部歯槽粘膜に1分間塗布し、含嗽後に30G 注射針を刺
入した。試験中に塗布部位以外にしびれを感じた際は挙手
させ時間および発現部位を記録した。製剤の利便性は、本
製剤を使用した歯科医師10名に対するアンケート調査結果
に基づいて評価した。
【結果・考察】今回作製した製剤は簡便かつ短時間で調製
可能であり、撹拌回数により使用者が好みの固さに調整す
ることが可能であった。いずれの製剤でも刺入時に疼痛を
感じた被験者はおらず塗布部位以外でしびれを感じた被験
者もいなかった。また製剤の利便性評価はいずれの製剤も
良好であった。以上のことより本製剤は歯科臨床において
有用性の高い製剤であると評価される。
063 後発医薬品(ゲムシタビン注射用製剤)の溶解性
に関する検討
064 口腔内崩壊錠用崩壊試験器と味覚センサを組み合
わせたアムロジピン OD 錠の苦味予測
九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野
○赤嶺 孝祐、若松 菜摘、横山 絵里、
松永 直哉、小柳 悟、大戸 茂弘
武庫川女子大学 薬学部
○吉田 都、櫨川 舞、原口
【目 的】後発医薬品はその含有成分が先発医薬品と同等
であれば、有効成分以外の部分で「飲みやすさ」や「使い
やすさ」などに工夫を施すことが認められている。これま
でに味を改善した経口製剤や皮膚への刺激が少ない経皮吸
収製剤、溶解性を改善した注射用製剤などが開発されてい
る。ゲムシタビンは代謝拮抗型抗がん剤の一種であり、膵
臓がんに対しては第一選択薬として用いられる。本研究で
はゲムシタビン注射用製剤の先発品と後発品の溶解性につ
いて検討を行った。
【方 法】ゲムシタビン注射用製剤(1g/バイアル)先
発品および後発品 A D に生理食塩水25mL を添加し、回
転型振とう機を用いて200rpm の速度で攪拌した。生理食
塩水を添加後、各バイアルから1mL の溶液を分取し、溶
液内のゲムシタビン濃度を HPLC 法で測定した。また、
凍結乾燥粉末が完全に溶解するまでの時間を製剤間で比較
した。
【結果・考察】HPLC による解析の結果、生理食塩水を添
加直後の先発品製剤におけるゲムシタビンの溶解度は78%
であったのに対し、後発品製剤では57∼98%と製剤間で差
異が認められた。また、凍結乾燥粉末の溶解速度において
も製剤間で有意な差異が認められ、先発品が120秒を要し
たのに対し、後発品では19∼153秒を要した。以上の結果
から、ゲムシタビン注射用製剤の溶解速度には製剤間で差
があり、溶解の速い製剤は薬液調整の効率化や被曝リスク
の低減など使用上の有用性が高いと考えられた。
珠実、内田
享弘
【目的】アムロジピン OD 錠はその有用性が認められ多く
の高血圧患者に用いられているが、約10%の医師がアムロ
ジピンの苦味に対する改善要望を持っているという調査結
果がある。そこで、本研究ではアムロジピン OD 錠の先発
品ならびに後発品9製剤を対象に、口腔内崩壊錠用崩壊試
験器および味覚センサによる各製剤の服用時の苦味予測の
可能性を検討した。
【方法】使用薬剤:アムロジンⓇOD 錠5mg(大日本住友
製薬(株)
)ならびに、後発品9製剤を実験に用いた。崩
壊試験:口腔内崩壊錠用崩壊試験器 OD­mate(京都薬品
工業(株)
)を使用した。溶出液濃度測定:崩壊試験終了
後のアムロジピン溶出液を吸引ろ過し、そのろ液中の薬物
濃度について HPLC を用いて測定した。味覚センサによ
る溶出液の苦味測定:味認識装置 TS5000Z((株)インテ
リジェントテクノロジー)を用いて苦味測定を行った。官
能試験:パネラーに各口腔内崩壊錠1錠を、舌の上に静置
し少しずつ舌と上あごで咀嚼させ、10、20、30秒後の苦味
を評価させた。
【結果と考察】各製剤の崩壊試験終了後のアムロジピン溶
出液の推定苦味強度と崩壊時間には相関性が得られなかっ
た。しかしながら、推定苦味強度とヒト実測苦味強度は良
好な相関性を示した。以上の結果から、口腔内崩壊錠用崩
壊試験器および味覚センサによりアムロジピン OD 錠の苦
味を予測出来ることが明らかとなった。
−195−
ポスター演題
065 市販アンブロキソール錠10製剤の服用性に関する
因子の評価
武庫川女子大学 薬学部
○内田 享弘、櫨川 舞、原口
珠実、吉田
066 セルフメディケーションのための一般用解熱鎮痛
薬の溶出速度による再評価
摂南大学 薬学部 薬学科
○小川 智美、岩田 雄希、鶴田
小森 浩二
都
【目的】先発錠と同一成分を含む後発錠は、服用性が異な
ることがある。そこで、本研究では Semantic Differential
Method(SD 法)を用いて、錠剤服用時に問題となる苦味
強度、ならびにザラツキ感など種々の服用性を評価し、さ
らに服用性に影響を与える因子を抽出することを目的とした。
【方法】アンブロキソール錠の先発品(帝人ファーマ(株)
)
ならびに後発品9品目を加えた10製剤を実験に使用した。
ヒト官能試験は,武庫川女子大学倫理委員会で承認を得た
後、パネラーへの十分な説明と試験への同意のもと実施し
た。各製剤1錠を常温の水25mL で30秒間口腔内に含み、
におい、舌触り、崩壊性、舌 離 れ、苦 味、甘 味、渋 味、
粉っぽさ、清涼感、うがいの回数、全体的な印象など複数
の評価項目について評価した。各評価スコアについて因子
分析を行った。
【結果および考察】因子分析によりアンブロキソール錠の
服用性に与える因子として、「服用時の舌触り」と「苦味」
6%、「苦味」
が12.
6%
が抽出され、「服用時の舌触り」が58.
の寄与率で関与することがわかった。以上より,アンブロ
キソール錠10製剤の「全体的な印象」は「服用時の舌触り」
と「苦味」が関与していた。さらにアンブロキソールの「苦
味」には、服用する水の温度と溶液中のアンブロキソール
濃度による交互作用が影響することが明らかとなった。
067 入院カルテから透析患者薬剤管理指導に必要な情
報抽出方法の検討
【目的】セルフメディケーションにおいて、薬剤師の一般
用医薬品に対する情報提供が重要である。しかし、推奨販
売の根拠となる第三者的に比較したデータは存在しない。
そこで本研究は解熱鎮痛薬の有効成分として多く用いられ
ているイブプロフェンに着目し、6商品の溶出速度を比較
した。
【方法】ナロンエースⓇ、ナロンエース RⓇ、イブ錠Ⓡ、イ
ブ A 錠Ⓡ、イブクイック頭痛薬Ⓡ、リングルアイビーⓇの6
商品を試料とした。溶出試験は日本薬局方に準じて行っ
2)
、第 二 液(pH6.
8)で
た。溶 解 液 は 水、第 一 液(pH1.
5℃で溶出させた。経時的に
検討し、各1錠を50rpm,37.
溶出液を採取し試料とするが、採取時間は0、3、6分と
始め細かく採り、120分まで採取した。採取試料を遠心分
離(12000rpm、30min)し、その上清を HPLC で分析し、
主薬成分のピークを測定した。
【結果及び考察】イブプロフェンの水、第二液に対する溶
出速度を比較した結果、イブクイックⓇが最も早く溶出
し、イブ糖衣錠Ⓡ、リングルアイビーⓇは溶出が遅かった。
コーティングが施されているものや軟カプセルは裸錠に比
べて溶出に時間を要することが考えられた。第一液での試
験結果よりイブプロフェンの酸性条件下の安定性が悪いこ
とが示された。ナロンエースⓇとナロンエース RⓇは、エ
テンザミド及びブロモバレリル尿素の溶出速度も考慮し、
配合剤として比較した結果、大きな違いを認めることは出
来なかった。
068 業務効率化を通じた精神科薬剤師業務の充実にむ
けての取り組み
1
医療法人 岩切病院 薬剤部門、
医療法人 岩切病院 循環器内科
○中村 悦子1、佐藤 敦1、柴崎 有理慧1、
村尾 知彦1、高嶋 梢1、伊藤 香織1、
山田 綾1、鈴木 美恵1、小川 義敬1,2、
中嶋 俊之2
和樹、
岡山県精神科医療センター 薬局
○長谷川 あずさ、笹岡 健二、馬場
2
【はじめに】透析患者は、薬物の重要な代謝・排泄臓器で
ある腎の機能が廃絶し、慢性炎症や低栄養などの特殊病態
下にある。このため、多くの薬物動態や薬力学に変化が生
じており、薬物療法において減量や禁忌などの制限を伴う
ことが多い。また、透析患者の合併症は重篤なものが多く
必然的に薬物処方剤数も多い傾向にある。これら薬剤を使
用量や副作用まで含め正確に記憶し使い分けることは困難
である。そこで今回、ロジカルな手法を用いて効率的かつ
網羅的な入院カルテからの患者データ抽出方法を模索した。
【方法】ロジックツリーを用いて薬剤管理指導のアウトラ
インを設定した。各アウトラインを個別に検討し、フロー
チャート作成を試みた。下記の患者データを使用して当手
法のテストを行った。対象患者は68歳女性。主疾患は慢性
腎不全(平成13年/白内障手術、平成15年/左大腿骨骨折
固定術施、平成16年/慢性腎不全にて某病院入院、平成18
年/肺炎にて当院入院となる。
【おわりに】透析患者処方薬剤の妥当性及び、薬剤から誘
発される副作用を未然に把握し防止する薬剤管理指導フ
ローチャートを構築するルートをロジックツリーで誘導し
た。今後、当手法を実際の業務にて使用し、見直しを行っ
たうえでさらなる効率化を図っていく予定である。また、
新人薬剤師の教育ツールとしての応用も検討していく。こ
のようなロジカルな考え方は医療現場において非常に有用
であると考えられる。
大樹
【背景・目的】精神科病院に勤務する薬剤師の配置規準は
入院患者150人に1人と、他の一般病床(70床に1人)と
比べて低く規定されている。そのため勤務する薬剤師数は
少なくなることが多く、限られた薬剤師数でいかに多くの
業務を行えるかが重要となる。当院では平成22年度に大幅
な業務の見直しを行い、効率化に取り組むことでこれまで
難しかった調剤業務以外の薬剤師業務の充実をはかった。
そこで、業務見直しによってどれだけの時間を創出し新た
な業務に取り組んだかの評価と、業務を拡大したことによ
る他職種からの評価について検討を行った。
【方法】医薬品在庫管理のバーコード化や医療材料の定数
自動発注化などの業務見直しを行い、新たな業務に取り組
む時間をどれだけ創出できたかを業務見直し前後の業務内
容より評価した。また他職種からアンケート調査を行い、
新たに取り組んだ業務について評価を行った。
【結果・考察】業務見直しを行った後、薬剤管理指導や持
参薬管理などを充実させることができ、病棟カンファレン
スへの参加をはじめとしたこれまで取り組めなかった業務
を展開することが出来た。またアンケート調査から、薬剤
師業務に対して他職種から高い評価が得られており、薬剤
師業務に対するニーズが非常に高いことが明らかとなっ
た。少ない薬剤師数であっても、日常業務を見直し薬剤師
業務を活発に行っていくことは、チーム医療へ大きく貢献
できる可能性が示された。
−196−
069 入院時オリエンテーション用の DVD 作成∼他部
門との共同研究∼
070 救急入院患者と予約入院患者の持参薬調査に関す
る比較検討
1
1
2
2
東京都立多摩総合医療センター 薬剤科、
東京都立多摩総合医療センター 看護部
○右川 浩1、田中 三枝子1、齋藤 みずほ2、
大久 由貴2、長谷川 智佳子2
北九州市立八幡病院 薬剤科、
北九州市立医療センター
○宮野 佳子1、植木 哲也1,2、坂本
長井 惠子1
佳子1、
【目的】入院する結核患者さんのオリエンテーションを簡
便にし、かつスムーズに薬剤管理指導を受けることができ
るようにするための DVD 作成を考案した。
【方法】病棟看護師と協働して、患者さん向けの入院オリ
エンテーションビデオを作成し、そのデータをDVD化した。
内容は以下の通りである。
・案内編 病棟の映像に看護師がナレーションをつ
け、病棟内の紹介をする。
・医師編 呼吸器科部長が結核についての説明をす
る。
・薬剤編 病棟担当薬剤師が抗結核薬について説明す
る。
・栄養編 管理栄養士が病院食の概要について説明す
る。
・連携編 結核地域連携に関するスライドに看護師が
ナレーションをつけ、説明する。
ビデオ作成用のアプリケーションは、予算の問題や、次
回の改変が難しいなどの弊害が予想されたため、無料の
Windows7標準のビデオ作成ソフトを使用した。
新規入院患者さんが来棟したら、看護師が面談室に案内
し、ビデオを見ていただく。
【結果】3月より新規患者さんに見ていただいているが、
評判は良好である。
また、薬剤管理指導を始めその他の業務も以前に比べス
ムーズになった印象がある。
【考察】今後の課題としては、患者さんにアンケートを採
り、見ていただいた映像により理解度がどのくらい高まっ
たか、あるいはその後の説明がスムーズに理解できたかな
どを調べて、今後のバージョンアップに生かしていきた
い。
【目的】持参薬調査は,医薬品適正使用と患者安全を確保
する観点から極めて重要である。しかしながら,救急入院
患者における持参薬調査に関する検討は,ほとんど見られ
ない。そこで今回,救急入院患者と予約入院患者の持参薬
調査の現状を比較することで,救急入院患者における持参
薬調査の特徴や問題点を検証した。
【方法】平成23年5月から10月の6ヶ月間に北九州市立八
幡病院に入院した救急入院患者(N=276)と予約入院患
者(N=50)を対象とし,お薬手帳の持参状況,持参薬調
査の情報源,および持参薬調査に基づく薬学的介入の割合
について2群間で比較した。
5%,予
【結果】お薬手帳の持参率は,救急入院患者で27.
0%と有意な差が認められた。持参薬調査
約入院患者で42.
の情報源では,救急入院患者においてお薬手帳の利用率が
有意に低く,調剤薬局に問い合わせる件数が有意に多かっ
た。一方,持参薬調査に基づく薬学的介入の割合は,救急
5%,予約入院患者で10.
0%と同程度であった。
入院患者で10.
【考察】救急入院患者は予約入院患者と比べて入院時にお
薬手帳を持参する割合が低く,持参薬調査の情報源を入手
することに苦慮している現状が示された。医薬品適正使用
と患者安全を確保するための持参薬調査を救急入院患者に
おいて実施するには,お薬手帳の携帯率向上と調剤薬局と
の連携の強化が必要と考えられる。
071 整形外科病棟における糖尿病患者との関わり
072 福井県済生会病院における病棟薬剤師業務の取り
組みと今後の課題
日本赤十字社 長崎原爆病院 薬剤部
○川尻 さおり、西村 由紀、藤原 晴夏、
町田 毅
福井県済生会病院 薬剤部
○福山 公美子、伊藤 妃佐子、高嶋
【はじめに】糖尿病患者は増加と高齢化に伴って複数の診
療科をまたがっている患者は少なくない。整形外科病棟に
おいても手術目的で入院してきたにも関わらず、血糖コン
トロール不良による術前・術後の血糖コントロールを余儀
なくされることも多いのが現状である。今回、当院の整形
外科病棟において糖尿病を背景にもつ患者の実態と薬剤管
理指導業務を通しての関わりを報告する。
【方法】2011年4月∼2012年3月において、当院整形外科
に入院患者を対象。患者の持参薬確認および聞き取り調査
時に、現在の治療や薬の内服(注射)に関してアンケート
を実施。術前・術後の薬剤の変更や血糖の推移などの分析
を行った。
【薬剤管理指導を通しての関わり】食事および血糖測定の
タイミング、術前・術後の中止薬、食事量に関連する薬剤
の周知、服薬タイミングについて病棟スタッフと情報の共
有・確認を実施、必要に応じて糖尿病回診での検討を行った。
【今後の課題】整形外科手術目的で入院してきた際、DPC
稼働施設でかつほとんどの手術がクリニカルパスで運用さ
れている当院において一定の期間内で血糖コントロールを
行うことは困難をきわめることも多い。その中でかかりつ
け医が糖尿病専門医でない場合も多くみられるため、当院
での治療の経過など主治医に還元できるルールとして退院
時指導書を提供している。さらに、病−診−患者相互に役
立つ情報共有ツールの検討が必要である。
孝次郎
【目的】医療の高度化・多様化に伴い、病院薬剤師は多種
多様な場で活躍する機会が増えてきた。その一つの薬剤師
の病棟業務が始まって約20年が経過したが、当院でも当初
より服薬指導業務を開始し、現在では ICU、ホスピス病
棟を除く全病棟にて病棟常駐業務を行なっている。当院の
病棟薬剤師の取り組みを紹介し、今後の病院薬剤師の役
割、求められる能力を再考したい。
【方法】
病棟薬剤師における当院での取り組みを紹介する。
【結果】病棟薬剤師の業務は多岐にわたっており、薬剤管
理 指 導 業 務 の 他、持 込 薬 の 確 認・管 理 や NST・緩 和 ケ
ア・感染といったチームのラウンドへの参加、病棟のス
トック薬剤や麻薬などの管理、TDM、また医療安全への
取り組みとして当院が取り入れているRCAへの参加などがある。
【考察】当院では外来処方の院外処方箋への転換や持参薬
確認の分業・ルールの取り決めなどを推し進め、その結果
薬剤管理指導業務の算定件数増加につなげることができ
た。また、算定件数だけでなく質を確保するために、プレ
アボイド制度を活用したり、特定薬剤薬歴チェック表を用
いて特に注意が必要な薬剤の処方状況を確認している。こ
れらの取り組みは今後も継続し、得られた効果を院内に発
信して他職種からの信頼を得ていきたい。
【結論】本年度より病棟薬剤業務実施加算も開始され、業
務内容は今後もアップデートが必要である。環境の変化に
対応しつつ、薬剤師の専門性をさらに確立していきたい。
−197−
ポスター演題
073 テラプレビル+ペグインターフェロン α2b+リ
バビリンを用いた3剤併用療法導入に伴う薬剤師
の取り組み
074 回復期リハビリテーション病棟に常駐する薬剤師
に不可欠な業務ニーズの探索
1
昭和大学 薬学部 病院薬剤学講座、
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院、
3
神奈川県病院薬剤師会、4日本大学 薬学部、
5
星薬科大学 実務教育研究部門
○藤原 久登1,2,3、濃沼 政美3,4、
湯本 哲郎3,5、金田 昌之3、前田 拓哉3、
綾部 由紀乃3、飯田 純一3、小島 英子3、
上手 真梨子3、小島 昌徳3、添田 真司3、
瀧本 淳3、田村 和敬3、中村 雅敏3、
松原 肇3、齋藤 昌久3、加賀谷 肇3、
村山 純一郎1
2
熊本大学 医学部 附属病院 薬剤部
○末永 安司、宮本 晋治、本田 義輝、
齋藤 秀之
【目的】昨年テラプレビルが市販され、慢性 C 型肝炎(1
型高ウイルス量)の患者に対してより強力な治療が可能と
なった。しかし、テラプレビル併用には従来療法以上に副
作用や相互作用等に注意が必要と考えられる。本発表では
当院でのテラプレビル+ペグインターフェロン α2b+リ
バビリン3剤併用療法(以下、3剤併用療法)開始に伴う
薬剤師の取り組み及びその成果を紹介する。
【方法】テラプレビルに関する情報共有を目的に、消化器
内科病棟の看護師を対象に事前勉強会を開催した。2012年
1月∼2012年3月で、3剤併用療法を開始した患者9名に
薬剤管理指導を実施し、処方介入数等を評価した。
【結果】事前勉強会は、スタッフ間での副作用チェックに
有益であった。本療法導入前・後の介入により、併用禁忌
薬2件、併用注意薬4件、添付文書未記入ではあるが、併
用を注意すべき薬7件、治療全般に関わるプレアボイド事
例6件が発見され、代替薬や用量変更、検査実施等、全て
に適切な提言を行った。薬剤師が治療開始前から継続して
関与することで治療リスク軽減に貢献できたと考えられる。
【考察】テラプレビルには情報が少なく、しかも厳重な管
理が要求される薬剤であることからも、薬剤師が積極的に
治療前から継続して薬物治療モニタリングを行なっていく
ことが不可欠であり、また、得られた知見を解析・評価し
て新たな情報を構築していくことも必要と考えられる。
075 福岡大学病院レジデントにおける薬剤管理指導業
務の質の向上を目指した取り組み―評価・指導方
法の構築―
福岡大学病院 薬剤部
○古賀 亜矢子、上野 雅代、井本 愛、
植山 美穂、土倉 史香、岡村 亜紗美、
森脇 典弘、林 珠希、鷲山 厚司、
二神 幸次郎
【背景・目的】福岡大学病院(以下、当院)では、レジデ
ントが1年目より薬剤管理指導業務を実施している。これ
までレジデントの病棟での指導は担当薬剤師に委ねられて
いた。今回、薬剤管理指導の質の向上を目的にレジデント
が作成した薬剤管理指導記録(以下、記録)をオーディッ
ト(鑑査)し介入することによってレジデントによる薬剤
管理指導内容の評価を検討したので報告する。
【方法】2009∼2011年度に入局したレジデント8名に対し
て1人あたり2症例の記録を抽出し、鑑査用紙をもとに記
録を評価した。これを年に2∼3回行い、評価結果を比較
検討した。
【結果・考察】レジデントの経験年数の観点から比較する
と1年目での記録に比べて、2年目では有意差はないもの
の全体的に改善がみられた。特に患者の特性に基づいた薬
学的ケアが向上しており継続的にレジデント指導を行うこ
とで患者とのコミュニケーション力や観察力等が向上する
ことが示唆された。指導介入前後を比較すると、有意差は
ないが指導介入により記録漏れが減少傾向となることがわ
かった。このように問題点を抽出することによってどの様
な点に記録不足となりやすいか明確となったため、この手
法は有効であったと考えられる。今後も薬剤管理指導業務
に対する評価を継続し、問題点を抽出し改善することでレ
ジデントの業務や教育の質を向上させたいと考える。
【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病
棟)において病棟薬剤師へ求める業務を医師の視点から探
索することを目的として調査したので報告する。
【方法】平成22年度神奈川県病院薬剤師会業務調査におい
て回復期病棟を有すると回答した27施設のうち15施設の回
復期病棟に従事する医師を対象に調査を行った。調査内容
は、医師が薬剤師に病棟で実施を望む業務内容(4分野、
10項目)と当該業務を実施するにあたり、薬剤師が病棟在
駐に必要な時間とした。集計結果から薬剤師に病棟在駐を
求める時間に影響を及ぼす業務内容について多変量解析に
より分析した。
【結果】対象医師61名中42名より回答が得られた(回収率
68.
9%)
。医師による薬剤師の業務必要度は医薬品の適正
管理が最も高く、薬剤自己管理導入時の服薬指導、副作用
のモニタリングなどと続いた。さらに、薬剤師が病棟に在
駐する時間を長く求める医師ほど、処方変更時の服薬指導
や薬剤使用に関連する検査を提案することなどの業務を求
めていた。
【考察】医師が薬剤師の病棟業務の必要性を日常業務から
実感しているものと考えられた。本研究から、回復期病棟
においては、特に処方変更時の服薬指導や検査の提案な
ど、適正な薬物療法への積極的な関与を求めていることが
明らかとなった。
076 薬剤師による処方提案方法標準化への取り組み
ベルランド総合病院
○渡邊 裕之、中井
薬剤部
由佳
【目的】薬剤師による処方提案を含めた薬学的介入が治療
に取り入れられるためには、根拠に基づく介入であること
が必要とされている。ベルランド総合病院ではほぼ全病棟
に担当薬剤師を配置し、薬剤管理指導を通して医師への処
方提案を実施してきたが、処方提案とその後の評価の方法
に関しては標準化されたものがなかった。そこで、これら
を標準化するための取り組みを行い、その有用性について
評価した。
【方法】2011年6月より独自に「処方提案内容入力システ
ム」を構築し、提案内容と処方提案の分類、提案方法、根
拠などを入力することとした。作成した内容を電子カルテ
の診察記事に添付して院内全職員が処方提案内容を閲覧で
きるようにした。提案後の患者状態の評価もシステムに入
力し、必要に応じてプレアボイド報告を行うこととした。
標準化による効果を確認するため、2011年6月から2012年
2月までの提案内容を調査した。
【結果・考察】薬剤管理指導実施患者数8456名に対して、
処方提案件数は287件、188名に行われた。処方提案の根拠
2%)と最も多かった。処
としては「TDM」が147件(51.
7%)
方提案後の医師の反応は、「反映あり」が243件(84.
と、多くの提案が医師に受け入れられていた。また、処方
3%)行われた。
提案によるプレアボイド報告は90件(31.
今回の取り組みにより、薬剤師の薬学的根拠に基づく介入
の重要性が再認識された。
−198−
077 整形外科・リウマチ科病棟における内服自己管理
基準の作成と運用
078 当院における病棟薬剤師常駐化の取り組み
春日井市民病院薬剤部
○田中 伸明、沢田 俊朗、服部
坂田 洋、松原 弘幸
1
独立行政法人国立病院 機 構 宇 多 野 病 院 薬 剤
科、
2
独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 看護部
○広瀬 真実1、野澤 知佳子2、越智 香保1、
御牧 邦子2、坂本 泰一1、岡田 弘康1
【背景】退院後も適切な服薬を継続するためには、入院中
から薬の管理能力を評価し、退院後の服薬管理に向けて
フォローしていくことが望ましい。当院整形外科とリウマ
チ科の病棟において、今まで薬の自己管理への移行は看護
師が行っていた。その際に自己管理適否の評価基準はな
く、評価は個々の看護師により主観的に行われていた。
【目的】今回、自己管理に移行する際の基準を作ることを
目的として、看護師と薬剤師が協同で内服自己管理基準及
び内服自己管理能力評価表を作成し運用したので、
報告する。
【方法】内服自己管理能力評価表は、〈身体機能〉〈理解力〉
の項目にわけ、チェックリストとして作成した。それぞれ
の項目がクリアできれば内服自己管理へ移行することとした。
【結果】看護師による身体機能の評価と、薬剤師が把握し
ている患者の薬識を共有し、一定の基準に基づいて、自己
管理能力を評価することができた。
【考察】整形外科とリウマチ科の病棟においては手術や薬
物治療の経過により患者の ADL が変わっていく。内服自
己管理能力評価表を運用することで、患者の薬の管理能力
を評価し、適切なタイミングで退院後の服薬管理に向けて
フォローすることができるようになった。病棟のニーズ・
特色に応じた病棟業務はチーム医療の実践であり、病棟常
駐化が認められた今、病棟薬剤師に期待される業務と思わ
れる。今後も継続して患者の服薬管理を支援したい。
079 緑膿菌感染症患者に対する薬剤管理指導業務の標
準化の検討
【目的】平成22年4月30日付けの厚生労働省医政局長通知
で、チーム医療への積極的な参加が示され、従来の服薬指
導中心の病棟業務から他医療職者と協働した病棟業務を行
うことが必要となった。春日井市民病院薬剤部では、平成
24年度に新設された病棟薬剤業務実施加算を想定し、薬剤
師を常に病棟に配置して、患者や他医療職者への医薬品情
報提供の充実、医薬品管理等の強化による医薬品適正使用
の推進と医療安全への貢献、持参薬利用による病院経営の
改善を目的とし病棟活動を行ったので報告する。
【方法】勤務時間のうち休憩時間、注射払出業務などを除
く約6時間を病棟常駐とし、平成23年8月から内科病棟に
入院
て薬剤師1名で開始した。業務内容の重点項目は、1.
退院時服薬指導の実施、
患者への服薬指導と服薬支援、2.
3.
他の医療職への情報提供、4.
持参薬の確認と電子カルテ
安全を考慮した配薬管
への入力及び持参薬の有効利用、5.
病棟配置薬の管理、指導、7.
チーム医療回診への参
理、6.
薬薬連携の実施とした。
加、8.
【結果・考察】薬剤師が病棟で常駐し、他医療職者からの
質問に助言することや頻回な処方の変更に即時に対応する
ことで、患者指導の充実や副作用確認、ハイリスク薬剤の
安全管理に貢献することができた。また、退院時薬剤情報
管理指導を実施し、持参薬の返却忘れの防止や患者の状態
に合わせた適切な調剤方法を選択することで、退院後のよ
り安全な薬剤管理を行うことができた。
080 AMI パスにおける MMSE を用いた自己管理導入
への関わり
1
天使病院 薬剤部、
北海道薬科大学 薬学部
○竹田 祥子1,2、谷口 和2、今田 愛也2、
小澤 純1、相馬 まゆ子1、佐々木 洋一1、
早川 達2
伊那中央病院 薬剤科
○伊藤 新司、伊藤 陽一、高野
唐澤 頼勝、北林 浩
2
【目的】緑膿菌を起因菌とする院内感染症は重篤化しやす
く適正な抗菌薬による治療が必要である。当院において
2011年6月から10月までに緑膿菌が検出された検体の総数
は100件(男性50件、女性50件)であり、その検出部位は
、喀痰(10件)
、便(10件)の順に多
気管内分泌物(38件)
く、各検体検出領域の感染症に対する薬学的管理の充実が
必要であることがわかった。そこで、本研究では当院にお
ける緑膿菌感染症患者に対する薬剤管理指導業務の標準化
を目的に、アセスメントツールとしての薬物治療マネジメ
ントプランを作成したので報告する。
【対象と方法】緑膿菌が検出された患者44人(男性22人、
女性22人)を対象に電子カルテにより診療科、既往歴、薬
歴、検査値について後ろ向き調査を実施した。
【結果と考察】従来の薬剤管理指導業務では、長期入院患
者における緑膿菌対策を重要視していた。しかし、今回の
調査結果から、今後は入院初期の薬物治療マネジメントプ
ランを設定し、プロブレムリスト項目に、詳細な病歴の把
握、持参薬と抗菌薬との医薬品相互作用、さらに、患者に
留置されている器材(胃瘻、尿路カテーテル)の有無を加
えることとした。また、検出部位をふまえ、組織移行性を
考慮した抗菌薬を選択することが必要であることがわかっ
た。今後、標準化されたマネジメントプランによる薬剤管
理指導業務を推進し薬物治療の質的向上に寄与していきた
い。
芳明、
耕一郎、
【目的】薬剤の継続服用は病気の再発、進行を抑えるため
に重要だが、自己管理の継続が困難な患者がみられる。当
院、循環器科パスにおいてバリアンス分析を行ったとこ
ろ、負のバリアンスの約39%が内服自己管理に関するもの
で あ っ た。そ こ で、認 知 能 力 を 数 字 で 評 価 で き る 検 査
(MMSE)を AMI パスに組み入れ有用性を評価した。
【方法】対象2011年1月 以 降 AMI パ ス 適 応 の MMSE 実
施に同意の得られた19名。薬剤管理指導開始時に MMSE
を実施。判定基準は最高得点30点、27点以上が自己管理可
能、21点以下が自己管理不可能、22点から26点は自己管理
導入あるいは家族管理を検討。
【結果】27点以上16名、22∼26点2名、21点以下1名。27
点以上で自己管理続行困難な患者は2名。22∼26点の2名
は家族管理とお薬カレンダーを用いた自己管理、21点以下
の1名は家族管理。内服自己管理に関連したバリアンスは
8%で、MMSE 導入により
MMSE 導入前39%、導入後11.
バリアンスは低下した。
【考察】パスに MMSE を組み入れることで自己管理能力
のスクリーニングが可能となり、内服コンプライアンス獲
得の標準化に繋がった。MMSE27点以上で自己管理続行
困難とした2名は薬剤が確定せず、追加変更があったため
管理方法が煩雑となった。そのため今後は自己管理のタイ
ミングを検討する必要がある。今回の結果から MMSE を
自己管理能力の判定に用いることは有用であるが、症例が
少ないためデータを集め評価の精度を上げたい。
−199−
ポスター演題
081 眼科クリニカルパスにおける薬剤師の取り組み
082 中小病院における薬剤師の病棟常駐化への取り組み
山口県立総合医療センター 薬剤部
○山崎 智子、有間 千里、蔵田 康秀、
福田 祥子、渡邉 紘企、山田 克弘
北海道恵愛会 札幌南三条病院 薬剤部
○初山 多恵、大津 圭介、梅原 健吾、
和田 佳子、宮丸 明菜、若本 あずさ、
佐藤 秀紀
【目的】当センター眼科では、高リスク患者の白内障の入
院手術を行っており、その概ねが高齢者である。薬剤師は
入院当初より持参薬の服薬管理状況の確認を行い、退院時
に点眼管理の指導を行っている。退院後、多種類の点眼薬
が約3か月間継続される。高齢患者では管理が難しい場合
が多々見受けられた為、退院後のコンプライアンス向上を
目指し取り組んだ内容を報告する。
8月より白内障クリ
【方法】用法用量を徹底する為、H23.
ニカルパス用点眼ケースを導入した。手術後点眼開始より
実際に28名の患者に使用してもらい、退院時にケースの改
善点はアンケートを行い検討した。
【結果】アンケートの結果、点眼ケースの使用感について
・『使いや
は、28名中27名(98%)が『とても使いやすい』
すい』と回答。さらに、24名(86%)が『有料でも使用し
たい』
、同様に、24名(86%)が『さし忘れが減った』と
回答。その他、自由記載欄には『用法がわかりやすい』8
名、『持ち運びしすい』4名、『整理整頓できる』4名、な
どの回答もあった。
【考察】点眼ケースは概ね好評であったので、適用を網膜
8月∼H24.
3月 ま で の
剥 離、翼 状 片 等 に 拡 大 し た。H23.
ケ ー ス 購 入 者 は、眼 科 手 術 入 院 患 者217名 の う ち170名
。一部『ケースが少し大きい』『蓋が閉まりにくい』
(78%)
等の訴えもあった。市販のケースを利用していた為、今回
は改善することができなかったが、当初の目的であった点
眼管理の向上には寄与できたと思われる
083 薬剤管理指導業務実施後の報告書式とその有用性
について
【目的】チーム医療を推進させるために、薬剤師の病棟常
駐化があげられるが、実施率は高くないのが現状である。
2012年4月からは、病棟薬剤業務実施加算が新設され、多
くの施設で病棟常駐化が進むことが予想される。札幌南三
条病院は病床数99床の中小病院であるが、2011年4月より
全病棟への常駐化を実施したので報告する。
【方法】2011年4月より試験的に1病棟で1人の薬剤師を
配置し、7月から全病棟で常駐化が実施された。病棟での
業務として、医師、看護師の申し送りへの同席、処方内容
のオーダリングへの入力、当日使用開始の注射薬の準備や
ミキシングなどを追加した。常駐化1ヶ月後に、薬剤師と
各病棟の看護師に病棟常駐化に対する意見を求めた。
【結果】薬剤師の意見として、積極的な処方提案、医師の
処方意図の把握、医療スタッフへの助言を行うことができ
た。看護師からは「薬剤に関する質問にすぐに回答してく
れる」
、「至急使用する注射薬のミキシングをしてくれるた
め助かる」などの他に、「病棟管理薬の準備や与薬は、薬
の内容を把握するために今まで通り看護師が行ったほうが
良い」との意見も出された。
【考察】今回の病棟常駐化への取り組みは、以前に増して
チーム医療に貢献することが示唆された。また、医師の処
方意図を患者担当薬剤師にフィードバックすることで、薬
剤師間で有益な情報を共有化することができた。今後も業
務内容を評価し、検討していく必要がある。
084 脳梗塞発症患者のアドヒアランス向上への取り組み
伊那中央病院 薬剤科
○高野 耕一郎、伊藤
唐澤 頼勝
1
石巻赤十字病院 薬剤部、
2
石巻赤十字病院 薬剤部、
3
前石巻赤十字病院 薬剤部
○阿部 浩幸1、佐藤 靖2、我妻
仁3
【目的】当院では、新築移転後の平成18年7月以降、病棟
常駐の専任薬剤師による薬剤管理指導業務を開始した。こ
れまでも特に日誌のようなものは用意せず業務を行ってき
たが、平成21年11月より、統一した様式の報告書を作成
し、運用してきたので報告する。
【方法】EXCEL ファイルを用いて、病棟毎に1シート1
日分のデータを入力することで、集計ができ、情報の共有
や管理ができるような様式とした。
【結果】開始当初の書式は、項目も少なく、業務内容を十
分反映するものではなかったが、その後平成22年5月より
変更を加え、業務を細かく分類して記入できるようにした
のと、表示等も見やすく設定した。
【考察】これまで専任を含め薬剤師が病棟において行って
きた業務への評価については、今年度の診療報酬改定で知
ることができる。またその際の業務に関わるデータの提示
は大変重要なものであり、その意味で今回我々が実施して
きたオリジナルな報告書の作成は、有効だったのではない
かと思われる。今後もさらなる評価のためのデータとし
て、内容を見直しながら継続していきたいと考える。
新司、坂井
孝行、
【目的】脳梗塞の危険因子として高血圧、糖尿病、脂質異
常症、心房細動が取り上げられ、特に高血圧が最大の危険
因子である。脳梗塞を発症した患者への初回面談時には、
薬の種類が多く、効果がわからないとの声が聞かれた。今
回、高血圧を既往歴に持ち、脳梗塞を発症した患者の血圧
と持参薬を調査し、退院後の血圧管理、内服アドヒアラン
ス向上へ応用することを目的とした。
【方法】対象は2011年10月から2012年3月に脳梗塞と診断
され入院し、持参薬が提出された高血圧既往患者58名(男
6±11.
0歳)とした。各患
性26名、女性32名、平均年齢77.
者のカルテ記録から入院時血圧、持参薬の種類、1包化の
有無、お薬手帳の有無、他科処方の有無を調査した。
5/91±19.
5mmHg で
【結果】入院時平均血圧は163±27.
3種 類、1包 化 調 剤 は38名
あ っ た。持 参 薬 の 平 均 は7.
5%)
、お薬手帳を持参した患者13名(22.
4%)
、他科
(65.
処方有りの患者12名(20%)だった
【考察】調査対象患者のうち49名(84%)が降圧目標値
(140/90mmHg)を満たしておらず、発症前の血圧管理
が不良であったことが推測される。また、1包化調剤だ
が、服用錠数が多い、他科との薬が別包になっていること
がアドヒアランスを低下させている可能性も示唆された。
そこで、患者へ調剤方法の希望を確認し、お薬手帳に調剤
方法を記入した。また血圧管理のパンフレットを作成し、
アドヒアランス向上を図った。今後、継続して内服調査を
行なう予定である。
−200−
085 薬剤師病棟常駐に向けての取り組み
医療法人社団英明会 大西脳神経外科病院 薬剤部
○中川 智予枝、違口 晴子、谷川 まり子、
大西 加奈子、吉田 善子
086 広島市立安佐市民病院における CDTM の実例∼
整形外科病棟(膝関節疾患)における薬剤師によ
る入院時常用薬の継続処方および代替処方入力∼
1
広島市立安佐市民病院
広島市立安佐市民病院
○舟原 宏子1、小笠原
小林 健二2
2
薬剤部、
整形外科
康雄1、長崎
【はじめに】2010年4月付の厚労省通知に、「医療の質の
向上及び医療安全の確保の観点から、チーム医療において
薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加する
ことが非常に有益である」と明記された。この通知を受け
て、当院では2011年より、薬剤部内で行っていた病棟業務
を病棟に移行する事によってチーム医療への参加の一歩を
踏み出す事にした。その後の、薬剤師の業務拡大への取り
組みについて報告する。
【取り組み】4月から病棟カンファレンスへ参加し、得ら
れる情報の有益性の有無を検討した。9月から持参薬のう
ち継続指示のある非採用医薬品の管理に介入した。10月か
ら配薬カートへの定時処方・持参薬セットを薬剤部内から
スタッフステーション内で行う事に変更した。更に看護部
との協議を重ね、IT 室の協力を得て病棟での業務に必要
なシステム設定を行い、11月より病棟での業務時間の延長
を行った。2012年4月から新設された「病棟薬剤業務実施
加算」も算定している。
【結果・考察】病棟常駐の実現により医療安全の向上に繋
がり、病棟スタッフとのコミュニケーションも取りやすく
なった事で、患者様の状態の把握、適切な投薬指示確認が
出来る様になった。また、当院は脳神経外科病院である為
患者様自身に説明出来ない場合も多く、家族への説明が行
い易い環境となった。今後は更に病棟薬剤師の業務拡大に
向けて努力していく必要があると考えている。
【目的】
2010年4月に厚生労働省医政局長通知「医療スタッ
フの協働・連携によるチーム医療の推進について」が発出
され、通知には「医療の質の向上及び医療安全の確保の観
点から、チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が
主体的に薬物療法に参加することが非常に重要である」と
明記された。当院整形外科病棟(膝関節疾患)では、あら
かじめ主治医との合意のもとに作成したプロトコルに基づ
き、周術期間の中止薬剤・継続薬剤・降圧剤等の条件付き
継続薬剤について、入院中の患者の経過観察により薬剤師
が判断し、処方オーダーを行っている。本業務の現状およ
び成果について報告する。
【方法】薬剤師による処方入力開始前と開始後の緊急処方
発行枚数、処方ミスによる問い合わせ確認件数などを比較
検討した。
【結果】
術後トラブル発生もなく、緊急処方枚数は減少し、
また継続処方に関する医師の処方ミスによる問い合わせ確
認も見られなくなった。
【結論】当初は多忙な医師の業務負担軽減が発端となり開
始した業務であったが、業務を進めていくに伴い、薬剤師
による処方オーダーは医療の質向上及び医療安全の確保に
貢献できることが認められた。
087 東大宮総合病院における「病棟薬剤業務実施加算」
への取り組み
088 外来がん化学療法室における薬剤師による診察前
患者面談の導入とその有用性評価
医療法人社団 協友会 東大宮総合病院
○織本 桂、古関 直久、矢吹 直寛
信浩1、
1
薬剤科
岐阜大学病院 薬剤部、
岐阜大学病院 看護部、
3
岐阜大学病院 がんセンター
○吉見 千明1、山田 摩耶1、藤井 宏典1、
西垣 美奈子1、飯原 大稔1、北市 清幸1、
高橋 繭2、倉橋 小代子2、高橋 孝夫3、
吉田 和弘3、伊藤 善規1
2
【目的】本年度の診療報酬改定にて新設された「病棟薬剤
業務実施加算(以下病棟業務)
」への当院の取り組みを紹
介する。
【方法】「病棟業務日誌」を作成し、病棟薬剤師に求めら
医薬品の投薬・注射状況の把握、2.
医薬
れている項目(1.
品の医薬品安全性情報等の把握及び、周知並びに医療従事
入院時の持参薬の確認及び服薬計画
者からの相談応需、3.
2種類以上の薬剤を同時に投与する場合におけ
の提案、4.
患者等に対するハイリス
る、投与前の相互作用の確認、5.
薬剤の投与にあた
ク薬等に関わる投与前の詳細な説明、6.
その他)に対し要
り、流量又は投与量の計算等の実施 7.
した時間の調査を行った。また薬剤師の病棟業務が医療安
全ならびに他職種と連携にどの程度貢献できるのかを調査
した。
【結果】調査結果は病棟業務に従事した1日平均時間、な
らびにその内訳を示す。また、病棟での薬剤師の医療安全
に貢献した事例(プレアボイド)と他職種との連携の事例
を示す。
【考察】結果より、病棟担当者(1名)を配置している当
院においても、従来の薬剤管理指導業務とは別に病棟業務
の時間を確保することは難しかった。しかしながら病棟業
務は本来薬剤師が行うべき業務であり、「患者に安心・安
全な医療を提供する」といった面からも、本業務を利用し
て薬剤師の存在価値を上げていく必要がある。
当院では2008年4月から外来がん化学療法室に薬剤師2名
を専任配置し、安全かつ有効ながん化学療法を提供すべ
く、医師および看護師と連携して業務を行っている。2010
年4月から薬剤師3名体制とし、翌年5月からは患者来院
時の採血から診察までの待ち時間を利用した「診察前患者
面談」(以下、診察前面談)を開始し、患者情報の収集、
副作用モニタリングおよび副作用対策のための処方提案を
充実した。今回、診察前面談の有用性評価について報告す
る。患者指導は全員に実施し、診察前面談実施率は約50%
であった。処方提案実施率は診察前面談実施群では非実施
群と比べ顕著に高かった。さらに、診察前面談開始後1年
間における処方提案件数は開始前1年間と比較して大幅に
増加した。提案採択率は94%と高く、提案内容で最も多
かったのは制吐対策、次いで末梢神経障害対策、皮膚障害
対策となった。制吐対策では、国内外のガイドラインに準
じた対策の推進を中心に行った結果、高度ならびに中等度
催吐性リスク抗がん剤投与時の完全制吐率が向上した。ま
た、末梢神経障害に対してプレガバリンの処方提案を実施
した結果、症状発現率が低下した。さらに、EGFR 阻害薬
によるざ瘡様皮疹に対してスキンケアとともにミノサイク
リンの予防投薬を提案し、症状の改善が確認された。一
方、担当医師からは診察時間が短縮された、提案が役立っ
た等の評価を得た。以上、薬剤師による診察前面談の有用
性が明らかとなった。
−201−
ポスター演題
089 外来通院 HIV 感染症患者に対する早期介入
090 乳腺外科外来における経口抗悪性腫瘍剤の服薬指導
1
奈良県立医科大学附属病院 薬剤部
○治田 匡平、松島 紫乃、
力夫、
森田 幸子、北 啓二、宇野 雅之
広島市立広島市民病院 薬剤部、
広島市立広島市民病院 乳腺外科
○阿部 圭輔1、阪田 安彦1、岡崎 夏実1、
菅原 隆文1、安永 顕子1、岸 仁子1、
宮森 伸一1、伊藤 充矢2、大谷 彰一郎2、
檜垣 健二2、開 浩一1
2
【目的】HIV 感染症の治療は進歩し、HIV 感染者の予後
は著明に改善した。しかし、生涯にわたる服薬が必要であ
り、95%以上の服薬率維持が重要となる。当院では患者の
服薬アドヒアランス向上と医師・看護師の負担軽減を目的
に2009年11月より新規受診患者に対する早期介入を開始し
たので、現状について報告する。
【方法】2010年1月から2011年12月に当院感染制御内科を
新規受診し、外来通院となった18名への薬剤師の介入時期
や服薬支援内容について診療録・服薬指導記録よりレトロ
スペクティブに検討を行った。
【結果】外来通院18名のうち14名に薬剤師が服薬支援を
行っていた。7名で初診日、4名で受診2回目に介入し、
平均介入時期は16週間から1週間へと短縮されていた。薬
剤師は抗 HIV 療法の説明や治療薬の決定から関与し、治
療開始後もアドヒアランスが安定し、治療目標を達成する
まで継続的に服薬支援を行っていた。
【考察】早期介入することで患者との信頼関係が構築しや
すくなり、治療薬の選択や治療導入を円滑に行うことがで
きていた。また治療開始後もアドヒアランスや副作用の有
無の確認が行いやすくなった。相互作用などの服薬に関す
る相談を自発的に来談されるようになるなど他の医療ス
タッフの負担軽減に繋がったと考えられる。今後も薬剤師
が早期介入し、継続的に服薬支援を行うことで医師・看護
師の負担軽減や患者の不安軽減に繋げていきたい。
091 保存期腎不全教室への薬剤師関与による腎機能と
尿蛋白の推移評価
【目的】当院では2011年7月より、乳腺外科外来における
経口抗悪性腫瘍剤を対象とした服薬指導を行っている。今
回、アドヒアランスの向上及び副作用の早期発見を目的と
した本取り組みについて報告する。
【方法】新規に経口抗悪性腫瘍剤が処方される際には、医
師による診察後に薬剤部にて服薬指導を行う。その後の受
診時には、診察の前に薬剤部にて副作用およびアドヒアラ
ンスを確認し、得られた情報を医師へフィードバックする
とともに処方提案及び検査依頼を行う。服薬指導には指導
内容に合わせて三つのツールを用いる。まず、当薬剤部で
作成した説明書を用いて用法用量、副作用など基本的な内
容について説明する。製薬企業が配布している患者用指導
冊子は、主に作用機序及び服用意義の説明に用いる。ま
た、カペシタビン服用時にみられる手足症候群の症状な
ど、文字やイラストだけでは伝わりにくい内容については
i Pad を利用することで理解の向上を図っている。
【結果・考察】指導内容に合わせたツールを用いること、
毎受診時に患者の服薬に対する疑問等に対応することでア
ドヒアランス向上を図ることが出来たと考える。また、診
察前におけるモニタリングにより、アロマターゼ阻害剤服
用時の関節痛やカペシタビン服用時の手足症候群などの副
作用の早期発見に努めることが出来た。さらに、症状にあ
わせた処方提案を行うことで安全な薬物療法のサポートが
可能となったと考える。
092 当院におけるテリパラチド皮下注キットの使用状
況について
1
四日市社会保険病院 薬剤部、
四日市社会保険病院 栄養部、
3
四日市社会保険病院 臨床工学部、
4
四日市社会保険病院 腎透析科
○小島 さおり1、片山 歳也1、脇 由香里1、
中東 真紀2、安田 芳樹3、三宅 真人4、
小寺 仁4、水谷 安秀4、藤岡 満1
済生会呉病院
○前田 哲志、山根
坂本 美湖、岡野
2
【目的】医師・管理栄養士主体の保存期腎不全教室(以下
腎不全教室)において、薬剤師の関与による腎機能と尿蛋
白の推移評価を行ったので報告する。
【方法】2011年度の腎不全教室参加患者を対象(n=10)
に、毎月、医師の医学管理指導および管理栄養士の食事指
導に加え、薬剤師が約30分の薬剤に関する説明を行った。
対象期間における患者の推定糸球体濾過量(eGFR)
、尿
蛋白(g/g·Cre)
、収 縮 期 血 圧(SBP)お よ び 拡 張 期 血 圧
(DBP)について推移データを比較検討した。薬剤師の
指導介入開始時を対照として、各月の推移データについて
一元配置分散分析を行い、p<0.
05を有意差ありとした。
【結果】対象患者は平均年齢65.
5±8.
8歳、男/女7/3、
慢性腎炎8名、腎性硬化症2名であった。各データの推移
(薬剤師指導介入開始時→介入1年後)は、eGFR(mL/
min/1.
73m2)19.
3±10.
2→18.
4±9.
7、尿蛋白(g/g·Cre)
1.
0±0.
9→1.
0±1.
1、SBP/DBP(mmHg)127.
3±7.
8/
69.
3±8.
2→130.
2±9.
9/71.
0±9.
2となり、有意差は認め
られなかった。
【考察】腎不全教室において医師および管理栄養士の指導
に薬剤師の指導を追加することで、1年間の eGFR 低下
および尿蛋白(g/g·Cre)増加が抑制され、血圧上昇を認
めなかった。薬剤師が毎月腎不全教室で薬に関する集団指
導を行うことで、保存期腎不全進行抑制の追加効果の可能
性が示唆された。本調査は少数例で短期間の結果であり、
薬物療法の変化を含めた検討がさらに必要である。
優子、末本
太一、河本
裕美、
宏志
【目的】骨粗鬆症は、高齢者の QOL を低下させる大きな
要因の一つである。骨折による二次的な骨格変形は、寝た
きり状態や慢性腰痛などの原因となり、生活動作を傷害
し、介護の必要性を増加させる要因となっている。現在、
日本での骨粗鬆症の患者数は約1100万人といわれ、今後も
人口の高齢化に伴い、患者数は増加すると考えられてい
る。近づきつつある超高齢社会を前に、骨粗鬆症や骨折の
予防が急務の課題であることは明白である。そこで今回、
この度適応になった骨粗鬆症治療薬の自己注射製剤テリパ
ラチド皮下注キットについて、当院での使用状況について
調査した。
【方法】2012年4月1日から5月31日までの期間、テリパ
ラチド皮下注キットが処方された外来患者を対象とし、ア
ンケートにより使用状況について調査を行った。この結果
に基づき治療効果や問題点などを解析し、今後の課題を検
討した。
【結果・考察】現在進行中であり、上記に示した方法によ
り検討した結果・考察については学会にて報告する。
−202−
093 服薬情報提供書を用いた外来化学療法施用患者の
医師への情報提供について
094 麻薬患者服薬指導について保険調剤薬局へのアン
ケート集計報告と今後の展望
一般財団法人 霞ヶ浦成人病研究事業団 霞ヶ浦薬
剤センター薬局
○鯨 明美、岩瀬 裕治、沼崎 香、丹羽 直人
社会医療法人 蘇西厚生会 松波総合病院 薬剤部
○荒川 大輔、横山 英典、竹村 恵里奈、
松本 利恵、横井 義浩、野田 孝夫
【目的】近年、外来化学療法が増加してきている。化学療
法は副作用の発現頻度も高く、治療を安全に継続し QOL
維持のためには、調剤薬局においても副作用発現の確認等
適切な服薬支援が望まれる。しかし、病院側からの情報は
処方箋のみで、患者からの聞き取り調査だけでは薬物療法
の情報も不足で、十分な服薬支援ができていないのが現状
である。そこで、医師より直接レジメンを知らせてもら
い、レジメン毎の副作用発現状況を調査しその結果を医師
へ情報提供行うことを試みたので報告する。
【方法】調査期間は平成23年2月から12月、対象は乳腺科
にて外来化学療法を受けている患者とした。レジメン毎に
副作用調査票を作り、副作用発現状況の確認を行い、その
状況調査を服薬情報提供書として医師へ提出した。
【結果】情報提供した件数は54件だった。レジメン毎に副
作用状況をまとめると使用薬剤により、特徴的な副作用症
状が発現していることがわかった。
【考察】レジメンが判明することにより、特徴的な副作用
について服薬支援することができたが、その患者が何回目
の治療なのか情報がはっきりしない場合もあり、調査の時
期によっては副作用の発現状況も異なる場合があると考え
られた。また、医師がどの程度情報提供書を活用している
か確認することも必要であると感じた。今後も、患者が安
全に治療を継続するために連携を深めると共に情報を共有
する有用なツールが必要であると考える。
【目的】近年医療用麻薬服用患者の増加に伴い、患者の安
全かつ適正使用推進のため薬剤師による服薬指導の必要が
重要視されているが、当院では外来患者への指導はほとん
ど実施されていない。今回、保険調剤薬局を対象に麻薬服
用患者への服薬指導に関するアンケート調査を実施したの
で報告する。
【方法】保険調剤薬局78軒よりアンケート回答を得た。1)
麻薬が初回であるかの確認、2)服薬指導時どのような事
柄について指導しているか、3)当院で麻薬の服薬指導を
受けた患者の来店の有無、4)継続使用患者への服薬指導
時の確認事項、5)入院中の患者情報提供の必要性、6)
当院への意見・要望などとした。
【結果】ほとんどの保険調剤薬局で麻薬が初回であるかの
確認が実施され、継続して指導を行っていた。問題点とし
て医療用麻薬使用の旨・基礎知識・ペインスケール・保管
方法・レスキューについて服薬指導を行っている保険調剤
薬局が少ないという結果を得た。
【考察】用法・副作用などの基本的説明は患者に指導でき
るが、癌告知の有無・麻薬投与の有無が不明であるため、
患者への十分な服薬指導が出来ていない現状より、今後合
同勉強会開催・退院時お薬手帳への情報提供書の貼付・施
設間連絡書などを利用することで保険調剤薬局との連携を
密にし、適正使用の推進を図りたい。
095 がん地域連携パスにおける薬薬連携の取り組み
096 社会医療法人の指定管理病院(阪南市民病院)と
地域薬剤師会(泉南薬剤師会)における薬薬連携
の立ち上げと今後の取り組み
島根県立中央病院 薬剤局
○園山 智宏、原 弓美、頼光 翔、島林
上代 紗恵、平野 榮作、後藤 澄子、
今岡 友紀
逸人、
1
社会医療法人 生長会 阪南市民病院 薬剤部、
聖芳薬局、3津田薬局、
4
くるみ薬局、5あおば薬局、
6
社会医療法人 生長会 府中病院 薬剤部
○町谷 安紀1、岩崎 三紀2、津田 麗子3、
八田 守也4、吉田 茂5、中埜 晴美1、
甲田 和恵1、池宮 安葵子1、田中 一郎1、
野村 真美1,6
2
【目的】がん地域連携パス(以下パス)では、拠点病院で
開始された抗悪性腫瘍薬等の処方が連携医療機関へ引き継
がれる場合も多く、両者の処方を応需する調剤薬局(以下
薬局)の果たす役割は大きい。島根県立中央病院(以下当
院)では、平成23年度よりパスの運用を開始し、患者の持
つ「私のカルテ」による情報共有に加え、必要に応じて当
院薬剤師から薬局に対して直接情報提供を行ってきたの
で、その概要について報告する。
【方法】情報提供の方法は、地域薬剤師会と協議の上、当
院薬剤師が紹介状形式で薬剤情報提供書を作成し郵送する
方式とした。また、記載項目については、薬局へのアン
ケートを行った上で決定した。パス適用患者に対しては、
当院薬剤師が入院中又は外来受診時に面談を行い、抗悪性
腫瘍薬に関する説明を行うと共に薬局への情報提供につい
て同意を得た。その後、かかりつけ薬局へ一報を入れた上
で薬剤情報提供書を作成・郵送した。
【結果】平成24年3月末までにパス適応となった72名のう
ち、薬局への情報提供が必要と考えられた29名と面談を
行った。情報提供について27名から了解が得られ、そのう
ち23名について薬局への情報提供を行った。
【考察】薬局に対して治療経過を含めた情報提供を行うこ
とについては、概ね患者の理解が得られた。また、薬局の
受け入れも良好であった。今後、情報提供に関する薬局の
評価について調査を行い、連携がより円滑に行えるよう努
めたい。
【目的】2011年4月より、阪南市立病院は社会医療法人生
長会の指定管理を受け、阪南市民病院として運営を開始し
た。薬剤部の運営においても、院内外へ様々な取り組みを
開始した。その一環として、採用薬の大幅な削除と整理を
行ったため、院外処方箋への影響を鑑み、連携が不可欠で
あると考え、泉南薬剤師会と協力し、阪南地区薬薬連携推
進協議会(以下協議会)を立ち上げた。
【方法】泉南薬剤師会4名と阪南市民病院1名の薬剤師で
構成される協議会を立ち上げた。次に連携を推進していく
ための方向性を協議し、会則を作成した。自ら創設に参加
した和泉地区での薬薬連携の例に倣い、まずは病院及び薬
剤部の運営方針を理解していただく事を目的に研修会を企
画した。研修会終了後に感想及び今後の企画の要望を把握
するためにアンケートを行った。
【結果・考察】薬剤師会の研修会の参加率は高く、関心を
持っていただけたと考える。アンケートにおいて、講演に
関する項目では「薬剤部の方針がわかり参考になりまし
た。
」
「今後の市民病院に期待して、我々も努力をします。
」
などの意見を頂き、非常に目的に合致したものになった。
また、今後の研修会の希望としては、
「検査値の見方」が
最も多く、第2回の研修会では「検査値へ親しむ」という
テーマで開催した。今後も継続して、地域住民への薬物治
療の発展のために何が必要かを考え、薬剤師同志の連携を
深め、活動していきたいと考える。
−203−
ポスター演題
097 透析患者に対する病院と保険薬局の連携
098 在宅医療廃棄物処理に対する薬局薬剤師の意識調
査
1
綜合病院社会保険徳山中央病院、
代々木薬局
○佐藤 真也1、松本 圭代1、山本
山本 晃之2
2
北海道医療大学 薬学部
○若松 賢、野田 久美子、唯野
佐和子1、
【目的】透析患者に対し病院と保険薬局薬剤師が協力して
コンプライアンスを改善する。
【方法】当院の透析患者の処方箋は他科を含めて全て院内
処方箋として発行しており服薬指導が不足していたが、患
者の同意を得て院外処方箋の発行を推奨することで、かか
りつけ薬局を決めてもらった。また医師・看護師・病院薬
剤師が保険薬局薬剤師に疾患や薬物療法について4回講義
を行い、医事課職員と保険薬剤師の代表者が保険薬局薬剤
師に更生医療の手続きや患者負担について説明会を行っ
た。次に透析室専任の病院薬剤師を配置し、保険薬局薬剤
師と患者情報を互いに共有することでコンプライアンスが
悪い患者に対して介入を行った。
9%となり
【結果】院外処方箋発行率は180名中169名で93.
更生医療の手続き時にかかりつけ薬局を登録した。また患
者情報を共有することで病院と保険薬局薬剤師が分担して
コンプライアンスの悪い患者に対して介入出来たことによ
り検査値が改善した症例を経験した。
【考察】薬薬連携によりコンプライアンスの改善に貢献出
来た。しかし、保険薬局に出向くことが困難な患者の対応
や保険薬局薬剤師からの残薬状況の情報提供などが不足し
ている点が課題である。
099 地域医療連携を目的とした糖尿病学習会の開催と
アンケート調査による姶良地区の現状
【目的】在宅医療では注射針等が廃棄物として一般家庭よ
り排出されるが、その処理方法は自治体により様々であ
る。また、在宅医療の拡大に伴ってこれら医療廃棄物の誤
分別等が問題となっており、廃棄物処理時に危険を伴うと
推測される。そこで本研究では在宅医療廃棄物に対する薬
局薬剤師の意識を調査することを目的とした。
【方法】札幌市内で長期実務実習を実施する調剤薬局100
店舗を対象に在宅医療廃棄物の適正処理に関するアンケー
ト調査を行った。調査は選択式および記述回答式とした。
【結果】アンケートの回収率は60%であった。回答では在
宅医療を行っている薬局は25%、自己注射薬を取り扱う薬
局は93%であった。針以外の注射器具、ビニールバッグ等
を回収する薬局は少なく、注射針等についても回収してい
ない薬局が多かった。また、患者宅において薬剤使用後に
生じる吸入器等の処理については半数が把握していなかっ
た。自己注射で生じる在宅医療廃棄物の処理について把握
している薬局も37%であった。
【考察】上記の結果より、多くの調剤薬局では在宅医療廃
棄物の処理に関わりが少なく、適切な処理方法が知られて
いないことが誤分別などの要因として考えられた。薬剤師
は患者やその家族に対して廃棄物処理の方法を指導できる
機会が多い。そのため居住する自治体ごとに異なる廃棄物
分別方法を配慮した上で薬剤師がこれらを簡便に知り、活
用できるツールを作成する予定である。
100 薬剤師介入による介護施設入居時持参薬の薬剤費
削減に貢献した事例
1
1
2
2
霧島市立医師会医療センター 薬剤部、
内科、3姶良郡薬剤師会、
4
姶良地区糖尿病医療連携協議会事務局
○長ヶ原 琢磨1,4、岸本 真1,3、児玉 和久2,4
【緒言】姶良地区における糖尿病医療の向上と医療機関の
連携強化を目的に、平成23年3月に糖尿病医療連携協議会
を設立し、多職種が参加できる糖尿病に関連した学習会を
定期開催している。学習会への薬剤師参加者の確保と、ア
ンケート調査により姶良地区の現状の概要把握ができたの
で報告する。
【方法】1)姶良郡薬剤師会へ共催を依頼した。
2)学習会における講演内容や日常における糖尿病患者の
療養指導に苦慮した経験等の質問項目で、アンケート調査
を行った。
【結果】1)平成24年3月までに計7回の学習会を開催し
た。出席者は延べ650名であり、多職種(医師、看護師、
薬剤師や管理栄養士 等)が参加した。薬剤師の参加人数
は、薬剤師会の共催前が2名であったのに対し、共催後は
10倍以上に増加した。
2)アンケートの回収率は60%であり、学習会の内容を4
段階評価した結果、95%以上が“良い”または“やや良い”
という評価であった。糖尿病に苦慮した経験は約75%にみ
られ、その経験は薬物治療や患者教育、シックデイ、血管
合併症等の多岐にわたる回答が得られた。また、糖尿病連
携手帳と血糖管理手帳の活用状況は、それぞれ41%、58%
であった。
【考察】薬剤師は医師と連携を密にし、患者の病態を考慮
した薬物療法を指導しなければならない。今後とも姶良地
区の糖尿病医療の底上げと、医療連携の場を発展的なもの
にしていきたい。
貢司
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
(株)スギ薬局、3スギ HD(株)
、
4
フォーユー堺深阪
○今西 香奈1、福家 つぐみ1、田中 章子2、
清水 俊也2、橘 和弘2、奥村 朋子3、
恵本 崇4、西口 あや子4、竹内 修大4、
朝吹 恵美子4、宮原 久乃4、宮崎 珠美1
【目的】近年、在宅医療の実施件数は増加しており、平成
3年に約21万件であったのに対し、平成18年には約82万件
と4倍近くにもなり、今後さらに増加することが見込まれ
ている。一方、潜在的な飲み忘れなどの年間薬剤費粗推計
は約500億円であり、そのうち薬剤師が関与することで改
善される薬剤費粗推計は約8割といわれている。今回、施
設入居者の持参薬に対して薬剤師が関与することで、どの
程度薬剤費が削減されるのかを明らかにする目的で調査を
行った。
【方法】有料老人ホームに在宅から入居した2名の患者
A·B の持参薬を調べ、各薬剤の残薬数のばらつきからどの
程度の過剰な薬剤費があったかを算出した。また、薬歴か
ら残薬の使い切り状況、処方内容の検討による薬剤中止で
薬剤費がどのように変化したかを解析した。
【結果及び考察】患者 A·B の入居時点での持参薬の薬剤
費を薬価で算出すると、それぞれ14,
936.
7円、61,
158.
6円
となった。患者 A は薬剤師が関与することで全ての持参
薬を使い切ることができた。患者 B は処方内容の検討に
より一部中止となったが、それ以外の持参薬は使い切るこ
とができ、42,
132.
8円の薬剤費が削減された。このよう
に、持参薬を薬剤師が管理することで廃棄することなく使
用することができ、必要のない持参薬が中止された場合に
も、再開時の使用が可能となることが明らかとなった。今
後、在宅医療が増加する中で薬剤師の関与は益々必要と
なってくると考えられる。
−204−
101 在宅医療において薬剤師の介入によって薬剤費が
削減できた事例
1
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
(株)スギ薬局、3スギ HD(株)
、
4
フォーユー堺深阪
○福家 つぐみ1、今西 香奈1、田中 章子2、
清水 俊也2、橘 和弘2、奥村 朋子3、
恵本 崇4、西口 あや子4、竹内 修大4、
朝吹 恵美子4、宮原 久乃4、宮崎 珠美1
102 セルフメディケーション支援を通じて患者教育を
担う薬剤師の育成に向けた教育研究開発−現状調
査(2)
2
1
神戸学院大学 薬学部、
東京大学医学教育国際協力センター
○藤井 友紀1、内海 美保1、平野 佐知1、
大西 弘高2
2
【目的】国民医療費は年々増加しており、厚生労働省の医
療費適正化計画の中では在宅医療の促進が上げられてい
る。そこで薬剤師が在宅医療に関与することで医療費が削
減できた事例を報告する。
【方法】病院等から有料老人ホームへ入居した患者 A·B
の入居時の持参薬を調べた。また、薬剤師の助言による処
方内容の見直しから中止・変更となった薬剤を調べ、薬剤
費がどの程度削減したかを算出した。
【結果】患者 A はクリアナール、バップフォーが処方検
討により中止。夜間転倒があったためアモバンがハルシオ
ンへ変更。その後、後発医薬品のハルラックへ変更となっ
た。退院処方内容のまま継続した場合、薬剤費は36,
624.
9
円となるのに対し、薬剤師の介入によって24,
176.
9円とな
り12,
448円の薬剤費が削減された。患者 B は入居時から
2ヶ月間は持参薬を継続していたが、薬剤師による検査値
の確認でアマリール1mg が0.
5mg へ減量となった。持参
薬を継続した場合の薬剤費と変更後の薬剤費の差は128.
8
円であった。しかし抑肝散の副作用と考えられる偽アルド
ステロン症発症のため薬剤が追加された。患者 B は抑肝
散を中止することが難しく、結果として薬剤費を削減する
ことはできなかった。
【考察】薬剤師が在宅医療に関与することで医療費を削減
できることが証明された。また、患者 B では薬剤費を削
減することはできなかったが、薬剤師が患者の副作用、検
査値の変化に気付くことも在宅医療での役割といえよう。
103 宮崎県北部山間地域における定期的健康相談事業
による成果:循環器症状改善に寄与した症例
1
九州保健福祉大学 薬学部 臨床薬学第一講座、
医療法人永輝会ニュー天草病院、
3
九州保健福祉大学 薬学部 臨床生化学講座
○江崎 文則1、河内 明夫1、冨重 恵利紗1、
堀 雅晴2、中川 みか1、都 亮一1、
鳴海 恵子1、園田 純一郎1、佐藤 圭創3、
本屋 敏郎1
【目的】近年,医療構造の変化に伴い,セルフメディケー
ション(以下,SM と略す)の重要性がいわれている.本
調査では,国民による SM の実態,および薬剤師(以下,
登録販売者を含む)に対するニーズを明らかにし,薬剤師
による SM 支援の現状を把握する.また,今後の薬剤師に
よる SM 支援のあり方を提案する.
【方法】調査対象は兵庫県内の薬局(2施設)の薬剤師と
薬局利用者とした.調査は2012年2月に各施設2日ずつ調
査員が訪問し,OTC 販売時における薬剤師と利用者との
関係をエマニュエル分類に基づき観察した.また,薬局従
業員には WHO·IPF の7つ星薬剤師等をもとに作成したア
ンケートと利用者からの問い合わせに対する応答内容の記
録を依頼した.さらに薬局代表者に自施設の取り組みに関
する聞き取りを行った.
【結果】調査日の来局者総数(2日間)は各々1325名,128
名であった.調査員により観察された利用者(計82名)の
うち,43名は購入する医薬品が既に決まっており,内,薬
6%)であった.
剤師に説明を求めた者はわずか11名(25.
また,医薬品購入の際に薬剤師と利用者の協議により医薬
品が決定された例は31例(37.
8%)に留まった.
【考察】利用者の半数以上は既に購入する医薬品を決めて
おり,薬剤師に説明を求めることはなかった.しかし,適
切な SM の推進に向けては,薬剤師と利用者の共同意思決
定のもとで医薬品選択がなされる必要性があると考えられ
る.
104 セルフメディケーション支援を通じて患者教育を
担う薬剤師の育成に向けた教育研究開発−現状調
査(1)
2
【目的】2010年12月より宮崎県北部山間地域住民に対して
医師協力の下、薬剤師による定期的健康相談を実施してい
る。今回、問診・傾聴、血圧測定等の健康相談の継続実施
及び主治医との連携により、循環器症状改善に寄与した症
例を経験したので報告する。
【症例】59歳女性。既往歴:卵巣摘出術(26歳)
、急性腰
痛症(30代前半)
。家族歴:母(子宮がん) 飲酒・喫煙
歴:なし
【経過・考察】高血圧、左顎関節や左肩の痛み、めまいや
不眠のため、2009年よりカプトプリル錠12.
5mg、ドスレ
ピン塩酸塩錠25mg、トフィソパム錠50mg が処方され、
高血圧と自立神経失調症の治療目的であると本人は認識し
ていた。トフィソパム錠自己中断が原因と思われる血圧上
昇が認められ、その後服用再開を勧め、血圧コントロール
は良好となった。2011年12月主治医に胸部絞扼感を訴え、
ニトログリセリン舌下錠が処方された。主治医は2005年よ
り狭心症を把握していたものの本人はこれまで認識してい
なかった。そのため、左顎関節や左肩の痛みは狭心症によ
る放散痛であったことが推察されたので主治医に連絡し
た。その後、ホルター心電図検査、冠動脈造影が施行さ
れ、冠動脈に狭窄を認めたため、カプトプリル錠からアム
ロジピン塩酸塩錠5mg に処方が変更され、現在は症状が
消失している。問診・傾聴、血圧測定等の健康相談の継続
実施と医療機関との連携を図ることは、地域住民の健康サ
ポートを行う上で有益であると考えられる。
1
神戸学院大学 薬学部、
東京大学医学教育国際協力研究センター
○内海 美保1、藤井 友紀1、平野 佐知1、
大西 弘高2
2
【目的】近年,医療構造の変化に伴い,セルフメディケー
ション(以下,SM と略す)の重要性がいわれている.本
研究では国民による SM の実態,薬剤師(以下,登録販売
者を含む)に対するニーズを明らかにし,薬剤師による
SM 支援の現状を把握する.今後の薬剤師による SM 支援
のあり方を提案する.
【方法】2012年2月,インターネット調査会社に登録する
126名を対象に日頃の医薬品の使用状況,薬剤
モニター1,
師との関係性,期待等に関する質問を行った.また,予め
予備調査を行い,処方薬と市販薬の両方を使用したことが
ない回答者は本調査の対象外とした.
1%,有効回答数は855s で
【結果】本調査の回収率は78.
あった.医薬品の取り扱いに関して飲み残した処方薬,市
6%,89.
0%で
販薬を保管している割合は高く,各々59.
あった.それらの薬は次回,自分に効きそうな症状がある
ときに使用すると答えた割合が最も高かった
7%,55.
5%)
.自分自身の判断に自信がないと答え
(62.
9%を占め,約8割の人がかかりつけ薬剤
た人は全体の46.
師はいないと答えた.薬局での医薬品購入時には,薬剤師
が自分の理解度に応じた説明をしてくれた上で,両者で相
談して医薬品を決めたいと考える人が最も多かった
2%)
.
(37.
【考察】わが国の国民は自分自身の判断で SM をしている
割合が最も高かったが,自分自身の判断に自信を持てない
という人が約4割存在し,医薬品選択においては薬剤師に
対し一定のニーズがあることが示唆された.
−205−
ポスター演題
105 介護者への医薬品情報提供ツール作成のための意
識調査
106 Microsoft Excel VBA を用いた個別化を目指し
た薬剤提供文書作成ソフトの開発と評価
1
1
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室、
(株)スギ薬局、3スギ HD(株)
、
4
ライフハーモニー堺なかもず
○吉岡 恵1、今西 和宏1、田中 章子2、
清水 俊也2、橘 和弘2、奥村 朋子3、
河村 由美子4、内田 愛4、宮崎 珠美1
九州大学 薬学部 臨床薬学科、
九州大学 薬学部 臨床薬学教育センター、
3
九州大学病院 総合診療科、4あかり薬局九大東
○加唐 誠剛東1、齋藤 友亮1、家入 一郎2、
貝沼 茂三郎3、武智 俊子4、武智 秀明4
2
2
【目的】在宅医療の推進に伴い、患者やその家族だけでな
く、介護施設等では介護福祉士・ホームヘルパー等の介護
者が患者の薬に接する機会が増えているのが現状である。
そこで、我々は介護者に対する薬の情報提供や情報ツール
の開発も必要となってくるのではないかと考えた。今回、
その医薬品情報提供ツールの開発を目指し、薬を使用する
にあたっての注意点や対応の知識に関するアンケートを有
料老人ホームの職員に対して実施したので報告する。
【方法】有料老人ホームの職員に対して、「薬の使用に関
して知っていること」
、「薬の知識として知りたいこと」等
の薬に関する項目についてアンケートによる意識調査を
行った。
4%であった。「薬に
【結果】対象者は17名、回収率は82.
関することで不安を感じることがある」と回答した人は
85.
7%、「薬との食べ合わせや飲み合わせが心配になると
4%であった。また、薬に関
きがある」と回答した人は71.
して知りたい項目として「効果」
、「使用上の注意点」
、「副
作用」の順で多い結果となった。
【考察】患者が使用している薬に関して、介護者の多くが
不安を感じていることが明らかとなった。また、それは薬
に関する情報量が少ないことに起因するものと推察され、
介護者も薬に関する知識を身につけたいと思っていること
も判明した。このことより、介護者のための医薬品情報
ツールの開発は非常に意義深く、その必要性は高いと考え
られる。
【目的】レセプトコンピュータ(レセコン)を用い、患者
個別に対し、方剤ごとの薬剤情報提供文書(薬情)の提供
を目的に、煎じ薬の薬情作成ソフトを開発し、その有用性
を評価した。
【方法】Microsoft Excel Visual Basic for Applications を
用いてソフト開発を行った。また、作成した薬情の有用性
と改善点を調べるため来局患者を対象にアンケート調査を
実施した。
【結果】本ソフト導入は、レセコンのシステムへの影響は
確認されず、通常薬局業務の中で運用可能であった。ま
た、来局患者35名へのアンケート調査の結果、(1)薬情
の説明文書の内容は94%がわかりやすい、(2)薬情内容
と処方医からの説明との一致性は72%が大方合っている、
(3)満足度は97%がふつう以上、と回答を得た。患者か
らの要望により、(1)方剤名へのふりがな、(2)注意す
べき副作用の記載、(3)煎じ方の注意の記載、などの改
善を行った。
【考察】患者からの意見を取り入れることで、ニーズに
沿った薬情にできたと考えている。本ソフトの開発は、患
者へ正確な情報を提供でき、それが煎じ薬に対する安心感
を与え、さらにはアドヒアランス向上につながるため有意
義な試みであったと考えている。また、通常のレセコンで
は薬剤ごとの情報提供しかできないが、本コンセプトを用
いれば処方意図まで加味した情報提供が可能となるため、
薬情の今後さらなる発展が期待できる。
107 保険薬局における外来がん患者指導に必要な情報
1
望星薬局、
108 在宅中心静脈栄養法(HPN)の現状と無菌調剤
室の共同利用にむけての課題
2
1
北里大学 薬学部 臨床薬学研究教育センター
○飯塚 敏美1,2、小野澤 雄太1、堀口 雅巳1、
吉山 友二2、石塚 英夫1
社団法人福井県薬剤師会水仙薬局、
社団法人福井県薬剤師会
○木村 嘉明1、山下 泉1、松浦 美帆1、
服部 陽一2、小嶋 洋一2、高畠 栄一2、
廣部 満2
2
【目的】
外来がん化学療法に関する報告は多数見られるが、
保険薬局でのがん患者に対する取り組みを報告した事例は
少ない。そこで、当薬局における取り組みおよび患者から
入手できる情報について薬歴調査を行い、保険薬局が医療
連携に求める必要な情報を検討したので報告する。
【方法】薬歴調査は平成21年9月1日∼平成23年8月31日
がん病名、2.
手術歴、
の期間で行った。薬歴調査内容は1.
3.
投与スケジュール、4.
副作用状況、5.
日常生活への介
点滴抗がん剤名、7.
検査値の7項目に
入・アドバイス、6.
ついて指導または確認の有無を調査した。
【結果】薬歴から1∼4について概ね指導確認を行えてお
り、保険薬局単独で入手可能な情報であったが、5∼7に
ついては確認が不十分であった。指導事例として、便秘を
訴えていた患者に市販のビオフェルミンを提案したとこ
ろ、症状が改善した事例があった。また、6の点滴抗がん
剤名が確認できた患者を対象に解析を行ったところ、3∼
5、7において有意に確認または指導が行えていた。
【考察】円滑な医療連携を実施するためには、保険薬局が
積極的に患者から情報収集する姿勢が重要であることが本
研究から示唆された。特に点滴抗がん剤名が分かること
で、より具体的な指導を行うことが可能であり、医療連携
を推進するにあたり保険薬局が求める情報の一つとして、
レジメンが重要な因子であると推測された。
【目的】在宅医療が進展しない原因のひとつとして、注射
剤や高カロリー輸液などを無菌調剤できる設備を整えた薬
局が少ないことがあげられる。厚生労働省は、在宅医療を
推進するために無菌調剤室の増設およびそれらの共同利用
の推進を図っている。福井県薬剤師会では、平成22年に水
仙薬局に無菌調剤室を設置、平成23年3月より HPN の無
菌調剤を行っている。今回は、我々が経験した HPN 症例
を通じて、無菌調剤の現状と共同利用にむけての課題につ
いて述べる。
【症例】HPN 処方に関する典型的な3症例について示す。
症例1:70代女性 胆管癌再発 ネオパレン2号1500ml、
症例2:60代男性 直腸がん・肝転移 エルネオ パ2号
1000ml+10%塩 化 ナ ト リ ウ ム20ml3A、症 例3:50代 男
性 腎不全・人工透析 処方1:50%ブドウ糖300ml+キ
ドミン注200ml+10%NaCL 注20ml +ビタジュクト注1
A 処方2:ハイカリック RF 輸液500ml+キドミン400ml
+10%NaCl20ml+KCl20ml
【結果および考察】キット製剤の調剤のみで対応可能な症
例から補正のため電解質混合が必要な症例、さらに完全無
菌調剤が必要な特殊病態症例もあった。今後の課題とし
て、まず、HPN 関連の医薬品等の供給体制を整備するこ
とが必要であり、さらに無菌室の共同利用を推進するため
には、無菌室使用マニュアル作成など無菌室の利用体制の
整備を行うとともに利用者が無菌操作を習得する研修シス
テムの構築が必要であると考えられた。
−206−
109 山間地域における継続的な血圧・骨量測定データ
に基づく定期的健康相談を実施した一症例
1
九州保健福祉大学 薬学部 臨床薬学第一講座、
医療法人永輝会ニュー天草病院、
3
九州保健福祉大学 薬学部 臨床生化学講座
○中川 みか1、河内 明夫1、冨重 恵利紗1、
堀 雅晴2、江崎 文則1、都 亮一1、
鳴海 恵子1、園田 純一郎1、佐藤 圭創3、
本屋 敏郎1
110 宮崎県北部山間地域における定期的健康相談事業
と地域かかりつけ薬局との連携:認知症患者での
服薬コンプライアンス向上に向けた取り組み
2
1
九州保健福祉大学 薬学部 臨床薬学第一講座、
医療法人永輝会ニュー天草病院、
3
九州保健福祉大学 薬学部 臨床生化学講座
○都 亮一1、河内 明夫1、冨重 恵利紗1、
堀 雅晴2、江崎 文則1、中川 みか1、
鳴海 恵子1、園田 純一郎1、佐藤 圭創3、
本屋 敏郎1
2
【目的】我々は宮崎県北部山間地域住民に対して医師協力
の下、定期的健康相談を行ってきた。今回、血圧や超音波
骨量測定データに基づく健康指導を継続実施し、健康維持
ができている症例について報告する。
【症例】71歳女性。既往歴:骨折(右脛腓骨)
。飲酒・喫
煙:なし。
【経過・考察】2011/1/25、K 医院よりアムロジピンベ
シル酸塩錠2.
5mg(1日1錠、1×)が処方された。2/
7の健康相談時に服用3日後の13時と20時の家庭血圧がそ
れぞれ107/65、110/62であったため、「血圧が下がり過
ぎた」
との不安があり、自己中断していることを聴取した。
その際、服用再開は指示せず、塩分摂取制限の指導、家庭
血圧130/80台、血圧手帳の使用を勧め経過観察とした。
2/21の健康相談時に家庭血圧の結果から、一旦降圧剤は
休薬しても問題ないと判断し、再度血圧手帳への記録を指
導し、現在安定している。また2011/12/16の健康相談時
の骨量測定データ(骨梁面積率24.
3%、判定5)から、K
医院への受診勧奨を行い、2012/1/10よりラロキシフェ
ン塩酸塩錠60mg(1日1錠、1×)が開始された。3/
7より自己中断していたことを把握したため、再度骨量測
定を実施し、結果を説明し継続治療するように受診勧奨を
行った。3/23再診した結果、服用再開となった。地域住
民に対して連続したデータに基づき継続的に健康相談を行
うことは、不安や健康上の不利益を回避・軽減し、健康状
態を継続して維持する事が可能ではないかと考えた。
【目的】我々は2010年12月より宮崎県北部山間地域住民に
対して医師の協力のもと定期的健康相談を行っている。今
回、認知症の進行に伴う服薬ノンコンプライアンスを確認
し、かかりつけ薬局と連携して主治医に処方内容変更の提
案を行い、変更が行われ服薬状況の改善に至った症例を経
験したので報告する。
【症例】71歳女性。飲酒・喫煙:無し。気管支拡張症、脳
梗塞、高コレステロール血症、アルツハイマー型認知症、
虚血性視神経症のため医療機関に通院中。
【経過・考察】2011年9月、「薬をいつ内服したか分から
ない」「2回内服することがある」等を訴える一方で、10
月、「服薬は出来ている」と回答していた。2011年12月∼
2012年1月、一部処方薬の大量残薬、次回受診予定日との
残薬数の不一致から服薬ノンコンプライアンスを確認し
た。口頭による服薬確認や持参薬確認では服薬状況の把握
は困難と判断し、定期的な在宅訪問、服薬カレンダーを用
いた 服 薬 自 己 管 理 の サ ポ ー ト、2週 間 毎 の カ レ ン ダ ー
チェックを行った。かかりつけ薬局と連携して主治医に処
方内容の変更を提案し、内服薬の一包化、服用回数及び薬
剤数の削減、単純化が実現したため、服薬状況は著名に改
善されている(3月現在)
。今後は認知症の進行具合を考
慮すると自己管理による服薬には限界があるとも考えら
れ、訪問介護の導入、ホームヘルパーによる服薬支援も視
野に入れ、解決の糸口を探る必要があると考えられた。
111 一般名処方せんの応需から見えてきた薬剤選択に
おける薬剤師の適切な介入がもたらす臨床的意義
112 ベザフィブラート後発品に関する製剤学的および
治療学的同等性についての検討
1
1
2
2
北里大学 薬学部 保険薬局学、
(有)くすりのミドリ ミドリ薬局美里店
○玉城 武範1,2、吉山 友二1
【背景】患者各々のかかりつけ薬局の利用を推進する目的
で、診療報酬改定で一般名処方が導入される以前に主たる
処方せん発行医療機関と協議のうえ、特定な薬剤に関して
一般名処方を開始していただいた。
【目的】銘柄指定での処方の時期に比べ一般名処方が開始
した後、先発又は後発医薬品の薬剤選択の割合がどのよう
に変動したか調査し、選択に影響を与える要因と薬剤師の
介入の重要性を検討する。
【方法】主たる処方せん発行医療機関の特定の薬剤につい
て、銘柄指定の処方から一般名による処方に移行した際、
患者の後発医薬品選択率の変動を電子薬歴により後ろ向き
調査した。また、患者が薬剤選択に対し消極的又は関心が
薄い場合に薬剤師が介入した。
【結果】一般名による処方が開始された後、全処方せんに
対する銘柄指定の処方の割合は減少し、後発医薬品の選択
率も減少した。介入により、患者自身も希望する薬剤選択
に薬剤師と共に積極的に参画できた。
【考察】
一般名による処方は従来の銘柄指定の処方と比べ、
その薬剤の選択を通して自分自身の治療に関わりを持て
る、いわゆる concordance(コンコーダンス)の向上に寄
与しやすいと考える。薬剤師は薬剤個別の味、剤型、使用
感など特性に関わる支援はもとより、医療費負担の軽減の
支援や、臨床的情報の解釈を患者に伝える事が出来る。一
般名処方の普及は薬剤師の適切な介入をもって、今まで以
上に患者の治療継続性を高めるものと考える。
九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野、
福岡記念病院薬剤部、
3
福岡大学筑紫病院薬剤部
○松永 直哉1、池田 祐輔1、兼重 晋2、
神村 英利3、小林 真実1、小柳 悟1、
大戸 茂弘1
【目的】医療の質を維持しながら、後発医薬品の普及を図
るためには、品質評価および臨床薬効評価などが必要不可
欠である。本研究では、先発医薬品と後発医薬品の製剤学
的および治療学的同等性を評価することを目的として、
フィブラート系高脂血症治療薬として汎用されているベザ
フィブラート製剤を対象に、製剤学的および治療学的同等
性について検討した。
【方法】ベザフィブラート製剤の先発品(ベザトール SR
錠:キッセイ薬品工業)
、後発品(ベザスター SR 錠:東
和薬品)の溶出性は日本薬局方外医薬品規格第3部(製剤
の溶出性)および「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイ
ドライン」に準じて測定した。臨床薬効評価は、福岡大学
筑紫病院および福岡記念病院にて先発品または後発品を
4∼12週間服用した高脂血症患者を対象に、電子カルテ記
載記録を基に調査した。
【結果・考察】製剤の溶出性は先発品および後発品のいず
れも公的溶出試験の基準に適合していた。溶出挙動におい
2の溶出液を用いた場合、製剤間での
ては水および pH1.
8および7.
2の溶
有意な差異は認められなかったが、pH6.
出液においては後発品6検体のうちの1検体で24時間後の
溶出率が高値を示した。臨床薬効評価では、TG、TC 低
下作用、また肝、腎、筋および血球成分に対する障害性に
も両製剤間で有意な差異は認められなかった。以上の結果
から、ベザフィブラート後発品は、先発品と同様の有効性
および安全性が期待できると考えられた。
−207−
ポスター演題
113 調剤薬局に勤務する薬剤師の BLS/AED に関す
るアンケート調査
114 岡山県下における簡易懸濁法実施状況および剤形
別重要度順位に関する研究
1
刈谷豊田総合病院 薬剤科、
刈谷豊田総合病院 臨床工学科、
3
刈谷豊田総合病院 看護部、
4
刈谷豊田総合病院 麻酔科
○亀島 大輔1、吉里 俊介2、中村
三浦 政直4、足立 守1
岡山大学病院 薬剤部
○河崎 陽一、佐藤 智昭、松永
2
3
千恵 、
【はじめに】近年 AED の普及とともに BLS(Basic Life
Support:一次救命処置)
に対する関心が高まりつつある。
医療従事者は心肺停止患者に遭遇した際適切な行動が求め
られる。今回、保険調剤薬局に勤務する薬剤師の BLS に
関する状況を把握するため、アンケート調査を行ったので
報告する。
【対象・方法】
当地域
(刈谷市、知立市、碧南市、高浜市、
大府市、東浦町)で保険調剤薬局に登録されている136施
設に対し、H24年1月に郵送法によるアンケート調査を実
施した。
【結果】
アンケートを回収できたのは90施設、204名であっ
た。過去に BLS/AED 講習会の受講経験がある薬剤師は
43%であったが、自信を持って AED を使えると答えたの
は1%であった。施設内に AED を設置しているのは1%
で、40%の薬剤師が最寄りの AED がどこにあるか知らな
かった。また20%の薬剤師が今までに人が倒れているのを
目撃していた。今後 BLS/AED 講習会を受講したいと思
うと答えたのは85%であった。
【考察】目撃経験は20%と一般の人より高いと考えられる
が、自信を持って BLS を実践できる薬剤師は少ない。保
険調剤薬局には医師、看護師がいないため、薬剤師が中心
となり蘇生法を試みるべきであり、BLS は薬剤師にとっ
ても重要だと考える。また BLS/AED 講習会の受講を希
望する薬剤師も多い。今後、地域の薬剤師を対象とした
BLS/AED 講習会の開催が地域中核病院としての役割の一
つだと考え、より実践的で、継続的な講習会を実施してい
きたい。
115 「禁忌薬剤」の投与回避における薬剤師の役割∼
クリニカルパス・マルチセット処方の問題点∼
住友病院 薬剤部
○豊濱 隆、竹村 沙希子、延藤
高井 幸司、北尾 善信
年昭
【目的】近年,経鼻チューブ挿管,胃瘻および腸瘻患者へ
の投薬には簡易懸濁法が用いられる.簡易懸濁法が必要と
なる原因の1つとして剤形不足が考えられる。しかし,医
療現場で新規剤形が切望されている薬剤に関する研究は見
当たらない.そこで今回,岡山県下の日本病院薬剤師会会
員が所属する施設の薬剤師を対象にアンケート調査を行
い,簡易懸濁法実施状況ならびに薬剤師の視点における剤
形重要度順位を調査した.
【方法】調査対象は,岡山県下の日本病院薬剤師会会員が
所属する155施設とした。調査方法は,郵 送 に よ る ア ン
ケート形式とした.
4%(92施設)
【結果および考察】アンケート回収率は,59.
であった。そのうち,簡易懸濁法は約60%の施設で実施さ
れていた.また,簡易懸濁法を必要とする患者の約80%が
経鼻チューブ挿管,胃瘻および腸瘻を造設しており,長期
にわたり簡易懸濁法を必要とすることが明らかとなった.
さらに,簡易懸濁法の頻度が高い薬剤は,中枢神経系用
薬,循環器官用薬および消化器官用薬であることが明らか
となった.薬剤師の視点における剤形重要度順位の結果を
統合すると,医療現場で最も必要とされている剤形は口腔
内崩壊錠であることが明らかとなった.本研究結果より,
中枢神経系用薬,循環器官用薬および消化器官用薬の他剤
形を早期に開発することは,経管投与患者への投薬負担軽
減ならびに繁雑な調剤業務の軽減につながると考える.
116 医薬品適応外処方における検討と評価 ∼症状に
対する効果・患者負担・薬剤師の評価∼
医療法人箱田会
○有働 香代
勇、
【目的】禁忌薬剤の投与は患者に不利益をもたらす可能性
がある。特にアレルギー起因薬剤の再投与は重大な影響を
及ぼすことがあり、その回避が重要である。禁忌薬剤投与
回避に関して、当院における問題点を明確にし改善を図る
ことを目的に、薬剤師が「禁忌薬剤」の投与回避に関わっ
た事例を調査した。
【方法】薬剤部プレアボイド報告に「禁忌回避」として入
力された事例を調査した。調査期間は2009年1月∼2011年
8月。
【結果】
報告事例は配合禁忌14例や併用禁忌20例も含めて、
合計86例であった。特に問題であったのは、電子カルテに
禁忌薬剤として登録されているにもかかわらず、当該薬剤
が処方されていた11例である。尚、その処方のほとんどが
クリニカルパスやマルチセット(約束処方)であった。こ
の調査結果をもとに、安全管理委員会・クリニカルパス委
員会・診療科長会よりそれぞれ注意喚起の対策が図られ
た。以後、同様の事例は発生していない。
【考察】クリニカルパスやマルチセットは、処方内容があ
らかじめ決まっているため、オーダーが簡便である。その
ため禁忌薬剤のチェックなど患者個々の情報把握が不十分
なまま処方されていたと考えられる。尚、根本的な解決策
は禁忌登録薬剤を処方オーダー不可とするシステムだが、
ジェネリックや配合薬などの問題がある。薬剤師はチーム
医療の一員として安全な薬物療法の提供に貢献する必要が
あり、禁忌薬剤チェックは重要な業務である。
尚、千堂
箱田病院
【目的】医薬品は添付文書通りに使用されることが望まし
いが、臨床では、適応外使用と思われる処方が存在する。
それに対して、薬剤師として、何をすべきかを検討し、ま
た薬剤師が関わることで医師のインフォームドコンセント
(IC)へかける時間を軽減し、それが医師の業務軽減に
貢献できるか。薬剤師の特性である薬理学的な説明を理解
しやすく行い、患者が適応外であることを理解したうえで
服薬していける環境作りを薬剤師が行う。
【方法】当院の患者さんの処方から、適応外使用されてい
る例をあげる。それを評価・副作用モニタリングを行っ
た。
【結果】精神科病院における適応外使用の状況が明らかに
なり、患者の症状は軽減している。薬剤師として評価した
結果をまとめた。
【考察】医薬品の適応外使用に関しては、医師との十分な
カンファレンスを要する。保険請求に関して、医事課も含
めた検討が必要。また、患者の疾患名の見直しを医師へ検
討依頼。チームで動くことによる利点が明らかになる。
【結論】薬剤師が医療チームに入り、医師から薬理学的な
説明として薬剤師の必要性を評価してもらう。そのこと
で、患者・医療従事者との信頼関係が築け、薬理学的に必
要な情報を提供できる。効果をしっかり追求でき、必要な
いことを考えられた際には、処方を直ちに中止にしてもら
える。また、副作用モニタリングも十分にしていけると考
える。
−208−
117 薬剤師と看護師の協働による入院時患者アセスメ
ントの導入とその成果
118 整形外科領域における非ステロイド性抗炎症薬
(NSAIDs)処方患者の腎機能障害実態調査
1
1
2
2
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院、
同 看護部
仁1、鈴木
○齋藤 千秋1、田中
高野 秀仁1、畠山 房子2、松本
永井 淳子1、完戸 香2、佐々木
愛媛大学医学部附属病院 薬剤部、
就実大学 薬学部
○田中 守1、濟川 聡美1、田中 亮裕1、
末丸 克矢2、荒木 博陽1
正論1、
春代2、
忠徳1
【背景・目的】診療報酬改定において、チーム医療を実践
することがより重視され、薬剤師が医療従事者の負担軽減
ならびに薬物療法の質の向上に積極的に関わることが明記
された。当院では薬剤師と看護師が協働し、入院時の患者
アセスメントを2011年7月より開始した。薬剤師の主な業
務は予定入院患者を対象とした持参薬および服薬状況確
認、抗凝固薬等の休薬確認、服薬管理方法の推奨等であ
る。今回、業務を評価する目的で看護師を対象に行ったア
ンケート調査の結果と導入後の成果について報告する。
【方法】入院時患者アセスメントを実施した病棟看護師を
対象にアンケート調査を実施した。また導入後の業務改善
について集計および分析を行った。
【結 果・考 察】調 査 は 看 護 師188名 に 配 布 し、回 収 率 は
94.
9%であった。回答結果より看護業務が軽減されたとの
4%であった。また抗凝固薬等の休薬状況に問題
意見が81.
があった事例を5件発見し、医師および看護師と情報共有
することで患者の安全を確保することができた。一方、看
護師は薬剤師が得た情報を活用して看護アセスメントを実
施しているため、業務効率の向上に寄与していると考えら
れる。薬剤師と看護師の協働による入院時患者アセスメン
トの導入は看護業務の負担軽減ならびにチーム医療の推進
に貢献しており、各々の専門知識を生かすことで医療安全
に繋がると考えられた。
119 当院手術室における薬剤師業務の実績と今後の課
題 ∼第3報∼
【背景】高齢者には膝関節に障害を持ち、整形外科領域で
非ステロイド性抗炎症薬(以下、NSAIDs)が長期投与さ
れている症例が多くみられる。また、高齢者では薬剤性の
急性腎不全発症の60%以上が NSAIDs 服用によることが
知られている。
【目的】整形外科領域で処方頻度の高い NSAIDs を適正
使用することは、急性腎障害(AKD)の発症を予防、慢
性腎臓病(CKD)に移行するのを遅らせることにつなが
る。そこで、現状を把握のために愛媛大学病院医学部附属
病院(以下、当院)での整形外科領域における NSAIDs
処方患者での腎機能障害状況を調査したので報告する。
【方法】当院の整形外科・外来患者において2011年4月∼
9月に NSAIDs が処方された528名を対象として、性別、
年齢、NSAIDs の種類、投与期間、eGFR を調査した。
【結果】腎機能検査は30%と実施率が低いにもかかわら
ず、70歳以上では中程度以上の腎機能障害患者が5割以上
認められた。また、NSAIDs 使用患者においては、加齢と
66x+107.
8,
r=−
eGFR との関連性が示唆された(y=−0.
0.
5698,
p<0.
001)
。
【考察・結論】本調査結果から整形外科領域では漫然な
NSAIDs 投与による高齢者の腎障害リスクが考えられた。
現在、当院の脊椎センタ−において運動器(整形外科)疼
痛の薬物療法アルゴリズムの見直し検討している。
120 北里大学東病院における薬物血中濃度パニック値
への対応業務の現状
1
上尾中央医科グループ 上尾中央総合病院薬剤部、
上尾中央総合病院看護部、
3
上尾中央総合病院診療部
○早川 美穂1、加藤 善大1、国吉 央城1、
新井 亘1、増田 裕一1、高橋 志保2、
江口 広毅3、平田 一雄3
1
北里大学東病院 薬剤部、2臨床検査部
○小原 美江1、黒田 ちか江1、飛田 夕紀1、
佐々木 善信1、香取 祐介1、平山 武司1、
新井 万理子1、吉本 紅子2、棟方 伸一2、
狩野 有作2、黒山 政一1
2
【目的】病棟担当薬剤師から手術予定患者情報を収集し、
麻酔科カンファレンスにて情報提供している。手術室への
薬剤師配置から約2年半が経過し、当初より情報収集方法
が周知されるようになった。また、手術で使用する抗がん
薬から調製者の曝露を防ぐ為、取り扱いに関する講習会を
手術室看護師対象で行った。これらの業務を評価すべく
データを集積、内容を振り返る。
【方法】1.
H23.
4∼H24.
3麻酔科カンファレンス前に把握し
た手術予定患者情報の収集率と提供率の集計
2.
プレアボイド症例の分析
3.
講習会について手術室看護師16名対象にアンケート調査
を実施
【結果】1.
情報収集率(手術予定患者情報件数2330件/麻
酔科担当手術件数3148件)
:74.
0%(前年度:1474件/2382件、12.
1%増)
患者情報提供率(提供件数140件/手術予定患者情報件数
2330件)
:6.
0%(前年度:115件/1474件、1.
8%減)
2.
プレアボイド件数:53件(前年度:12件)
3.
「参考になった」
「業務に活かせる」
:100%
【考察】病棟担当薬剤師との連携により、前年度と比較し
患者情報収集率の向上が見られた。情報提供率の前年度比
はほぼ同率だが、プレアボイド件数が向上していることか
ら、提供内容の質向上が見られる。抗がん薬の取り扱い指
針は、化学療法担当薬剤師の協力を得て、より実践的な内
容にすることができた。調製者の曝露防止に貢献し、看護
師からの評価も高い。今後も安全な薬剤使用の推進及び管
理に務める。
【目的】北里大学東病院では、薬物血中濃度のパニック値
が測定された際、臨床検査部門から主治医および薬剤部へ
緊急報告がなされ、医師と薬剤師が協働して処方変更等の
対応を実施している。そこで、当院におけるパニック値報
告症例の現状について報告する。
【方法】2011年4月∼2012年3月の1年間におけるパニッ
ク値報告症例について、その内訳および対応状況について
調査した。
【結果】対象期間における報告件数は49件(47症例)で、
フェニトイン(PHT)21件、カルバマゼピン(CBZ)17
件、バルブロ酸(VPA)3件、フェノバルビタール(PB)
3件、ジゴキシン(Dig)5件であり、対象薬剤全測定件
2%であった。47症例中入院患者は30%(14例)
、外
数の3.
来患者は70%(33例)であった。処方変更は再診時の対応
を 含 め る と69%(34件)で 実 施 さ れ、PHT16件、CBZ9
件、VPA2件、PB2件、Dig5件 で あ っ た。そ の う ち、
薬物血中濃度モニタリング(TDM)解析に基づく処方変
更は、9件であった(PHT2件、CBZ3件、PB1件、Dig
3件)
。 血中濃度上昇の要因は、併用薬による相互作用
の可能性4件〔PHT3件(トピラマート、PB 併用)
・CBZ
1件(PB 中止による影響)
、維持量の過多18件、大量服
薬6件、脱水など4件であった。
【考察】院内におけるパニック値の緊急報告と薬剤師の
TDM 業務と機能を連携させること、および、抗てんかん
薬の多剤併用時における TDM 実施の重要性を再認識する
ことができた。
−209−
ポスター演題
121 入院患者における向精神薬使用と転倒・転落リス
ク
1
社会医療法人函館渡辺病院 薬剤部、
北海道薬科大学
○佐野 知子1、松村 一哉1、佐々木 元子1、
滝澤 理貴1、原田 雅史1、島森 美光2、
黒澤 菜穂子2
122 中小病院における「急性期 DIC 治療フローチャー
ト」作成の試み
∼診断から治療まで、薬剤師の積極的な参加∼
2
医療法人 渡辺会 大洗海岸病院
○新井 克明、清水 範子、前原
真家 佑介、菊地 麻希
【目的】精神科に入院中の患者は、複数の向精神薬が処方
される場合が多く、その鎮静催眠作用、筋弛緩作用などの
ため、より転倒・転落のリスクが高いと考えられている。
今回、転倒・転落防止策を講じることを目的に向精神薬の
服用と転倒・転落事故との関連性について検討したので報
告する。
【方法】函館渡辺病院において2009年4月1より2年間に
発生した転倒・転落事故714件のうち転倒回数が1回の患
者200件と転倒歴のない患者213件の処方薬について、向精
神薬の剤数及び投与量(気分安定薬の処方量、CP 換算量、
BP 換算量、DAP 換算量)を比較した。
【結果】転倒・転落リスクは、剤数が1剤増えると、気分
9倍、抗神病薬は約2.
2倍、抗不安薬は約1.
6
安定薬は約1.
倍となった。また、抗精神病薬の投与量を治療効果がほぼ
定常状態となる CP 換算値500mg を基準に比較すると、
500mg 以上でリスクは約3倍高くなり、抗不安薬の投与
量をジアゼパムの添付文書で示されている用量15mg を基
6
準に比較すると、DAP 換算が15mg 以上でリスクは約2.
倍高くなった。
【考察】複数の向精神薬が処方されている場合、薬剤師
は、転倒・転落リスクが高くなることを医療スタッフに注
意喚起し、剤数や用量の調節によって適切に薬物治療が行
われるよう関わる必要があると考える。
123 薬物動態の変化を伴う薬物間相互作用薬2012年度
版の作成∼アップデートと米国 FDA の薬物間相
互作用ガイダンス案との比較∼
【目的】プライマリ・ケアを担当する中小病院にとって播
種性血管内凝固症候群(DIC)は強敵である。DIC の原因
となる疾患は多岐に渡り、治療には出血のリスクが伴うな
ど注意すべき事項も多い。DIC を専門とする常勤医師が
いない中小病院においては、薬剤師も DIC の診断と薬物
治療に精通し、医師と連携して治療に当ることが重要と考
える。そこで、我々は早期から診断でき安全かつ効果的な
治療を行う為のフローチャートの作成を試みた。
【方法】フローチャート作成の対象疾患は感染症性 DIC
とした。DIC の診断基準は、急性期 DIC 診断基準を用い
た。治療に用いる薬剤は、トロンボモジュリンアルファ製
剤と人アンチトロンビン製剤とした。診断から治療に至る
フローチャートの作成を試み、医局会議にて医師に提案し
修正を重ねた。また、看護師と話し合い、副作用の早期発
見のためにサブチェックシートも作成した。
【結果】本フローチャートの活用により専門医でなくとも
円滑な DIC の診断と治療が実施された。フローチャート
に従って当院にて DIC と診断され、治療された患者は6
例。1例は薬剤性の血小板減少症であった。副作用は全例
で認められず、医師や看護師からの問合せに対して全ての
薬剤師が迅速に対応できた。
【考察】今回作成したフローチャートが活用されたこと
で、早期に確実な DIC 診断が行われ、副作用の発現もな
く適正にそして円滑に治療が実施されたと考える。
124 薬薬連携を基盤とした冠動脈カテーテル治療に伴
う薬剤適正使用の取り組み
1
済生会熊本病院 薬剤部、2熊本大学 薬学部
○柴田 啓智1,2、一野 仁実1、堀川 幸子1、
異島 優2、渡邊 博志2、丸山 徹2、
田上 治美1
1
東京大学医学部附属病院 薬剤部、
東京大学医学部附属病院 薬理動態学、
3
東京大学 薬学部 分子薬物動態学、
4
理化学研究所 杉山特別研究室
○山口 諒1、大野 能之1、樋坂 章博2、
上野 正貴1、前田 和哉3、吉門 崇4、
杉山 雄一4、鈴木 洋史1
2
【目的】薬物間相互作用が臨床で検証された薬剤は、可能
性のある組み合わせのごく一部に過ぎず、したがって添付
文書等の注意喚起は十分ではないと考えられる。そのた
め、我々は薬物動態の変化を伴う顕著な相互作用に関わる
薬を網羅した一覧表を、その機構を考慮して作成し、2009
年から PharmaTribune 誌で毎年発表している。今回は情
報の更新に加え、2012年2月に発表された FDA の薬物間
相互作用のガイダンス案(以下 FDA 案)との関係を考察
した。
【方法】2012年2月現在、CYP やトランスポーター等が
関与する相互作用により、体内動態が明らかに変化すると
推定される331薬を選択し、その変化の程度等に基づき4
段階に分類した。また、FDA 案では CYP 基質薬を2種
類(sensitive, narrow therapeutic range)に、阻害薬を3
段階(strong, moderate, weak)に分類しているため、我々
のクラス分類と比較した。
【結果・考察】CYP の関係する薬剤は CYP3A、2D6、
2C9、1A2、2C19の順に多く、トランスポーターの
場合は MDR1、OATP(1B1および1B3)
、OAT(2
お よ び3)
、小 腸 の OATP の 順 で あ っ た。本 リ ス ト と
FDA の分類及びリスト薬物は類似点が多かったが、本リ
ス ト に お け る2∼5倍 の 比 較 的 強 い AUC 変 化 を 伴 う
CYP の基質薬を、FDA 案では直接分類していない点が、
適切な注意喚起の観点から懸念された。一方でトランス
ポーターの関与する相互作用は、その機構を多くの薬剤で
明確にすることが今後必要と考えられた。
薬剤部
梨恵、
【目的】ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンショ
ン(PCI)は、心筋梗塞などに対し生命予後を改善する極
めて有効な治療のひとつであるが、PCI 後には多くの薬剤
が併用される上、胸部不快感などの症状が早期に消失する
ため、アドヒアランスが低下しやすい。この課題の克服に
は、地域保険薬局薬剤師との薬薬連携による継続した患者
指導が重要である。そこで我々は、地域の保険薬局で勤務
する薬剤師を対象として、情報提供会を開催し、PCI 後の
薬剤適正使用に関する情報の共有化を試みた。
【方法】4回の情報提供会を企画し、PCI 後に用いられる
薬剤の情報提供を行った。また、参加者を対象として適正
使用に関する情報の共有化の程度をアンケートにより調査
した。
【結果】80件のアンケート結果から、情報共有化の程度を
評価したところ、治療のポイントとなる4つの評価項目の
なかで、ステントの再狭窄を予防するための抗血小板剤2
剤併用療法、特にステントの種類によって異なる併用期間
の違い LDL コレステロール100mg/dL 以下を目標とした
スタチンによる厳格な脂質管理の2点について会を通じた
情報共有の有用性が示された。
【考察】今回の取り組みにより、PCI 後の薬剤適正使用に
関して、急性期病院と地域保険薬局の薬剤師間で情報の共
有化を図ることができた。このことはシームレスな薬物療
法を実施していく上で、情報提供会を介した薬薬連携が有
用であることを示唆している。
−210−
125 当院呼吸器内科病棟における睡眠薬別、転倒転落
リスクの調査
126 与薬カート導入における薬剤師の関わり
1
日本赤十字社 長崎原爆病院 薬剤部、
日本赤十字社 長崎原爆病院 看護部
○西村 由紀1、池田 能利子1、近戸 友美2、
高倉 雅子2、中村 真知代2、町田 毅1
1
2
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院薬剤部、
2
聖マリアンナ医科大学西部病院看護部、
3
日本大学薬学部
○多田 純平1、鈴木 慎一郎1、林 宏行3、
財満 隆1、斎藤 秋雄1、飯田 ゆみこ2
【目的】転倒・転落の危険因子は様々な原因が知られてい
るが、睡眠薬の服用も重要な要因とされている。本研究で
は呼吸器内科病棟における睡眠薬別の転倒リスクを明らか
にすることを目的とした。
【方法】2010年1月∼12月の1年間における入院患者を対
象とし、オーダリングシステムと転倒・転落症例をインシ
デントレポートより抽出した。調査項目は年齢、性別、睡
眠薬服用患者率、転倒・転落時間帯、各睡眠薬の転倒率と
した。
,平均73
【結果】対象患者は,33人(男性/女性25/8)
±8歳であった.睡眠薬使用率は45.
5%.夜間帯(23時か
3%、非服用群
ら8時)の転倒・転落率は睡眠薬服用群33.
15.
2%であった。各睡眠薬の転倒率は、ゾルピデム(10
mg)1.
3%、トリアゾラム(0.
25mg)16.
7%、ゾピク ロ
5mg)1.
0%、ブ ロ チ ゾ ラ ム(0.
25mg)2.
2%、リ
ン(7.
9%、エスタゾラム(2mg)2.
1%
ルマザホン(1mg)5.
であった。
【考察】夜間帯での睡眠薬服用患者による転倒率が高い結
果となり,睡眠薬による転倒・転落に注意する必要が示唆
される。リルマザホン(1mg)の転倒率が高い理由とし
、
て半減期が長いことが考えられた。ゾルピデム(10mg)
5mg)の転倒率が低かった理由としては、
ゾピクロン(7.
25mg)に比べ
半減期が短いことに加えトリアゾラム(0.
ω1受容体選択性が高いことが考えられた。薬剤師は患者
の年齢や薬物の半減期、特性、投与量に十分注意し適正使
用を推進することで医療安全に貢献できると考えられた。
127 手術室における薬剤の調製・鑑査システムの開発
と業務改善
独立行政法人 労働者健康福祉機構 大阪労災病院
薬剤部
○藤田 將嗣、小田 剛史、小林 睦、
白神 千鶴、平原 志保、中島 典史、
井上 隆至、前田 頼伸
【目的】大阪労災病院(以下、当院)では、2010年5月よ
り平日の日勤時間帯に薬剤師が1名、手術室に常駐してい
る。常駐開始後、常駐薬剤師が手術で使用する薬剤の調製
を行ってきた。しかし、調製の際には鑑査役の薬剤師がお
らず、常駐薬剤師が一人で調製、鑑査、払い出しを行い、
医療安全上、リスクの高い状況であった。そこで、2011年
12月より手術室における注射薬の調製および鑑査を支援す
るシステムを構築した。また、新規でボタンが押しやすく
カウンター機能がついた iv­PCA 装置(IP1−E1006)の
導入にあたり、従来品(IP1−B)との比較検討を行った
ので報告する。
【方法】
TOSHO と共同で、薬剤のバーコードを読み取り、
鑑別し、吸い取った薬剤の量を比重換算して mL 表示でラ
ベルを印字するシステムを開発した。また、iv­PCA 装置
の比較検討に関しては、iv­PCA 装置を使用することに
なった婦人科手術患者(それぞれ10名)を対象に使用感な
どに関するアンケート調査を行った。
【結果・考察】一般病院において手術室に薬剤師を2名常
駐させることは困難である。鑑査システムの導入により、
一人の薬剤師が調製、鑑査、払い出しを行うことによる潜
在的なリスクを回避することができた。また、新規術後鎮
痛装置の導入にあたり、従来品との比較検討した結果、有
意差は認められなかった。以上より、薬剤師が手術室に常
駐することでより良質の医療を提供することができ、医療
安全にも貢献できるものと考えられる。
【目的】平成22年度の当院での薬剤に関するインシデント
件数は最も多く、リスクマネジメントにおいて大きな課題
となっている。配薬に関するインシデントでは、看護師の
多忙な業務の中で、確認忘れ、思い込みによる誤投与な
ど、チェック体制が不十分であったことが原因として挙げ
られる。このような配薬ミス防止のため、インシデント低
減に向けての新しい体制を構築すべく取り組みを行った。
【方法】与薬カートの全病棟配置に向け、まず内科系・外
科系の病棟から一病棟ずつ試験的に運用を開始し、安全管
理体制の構築を検討した。与薬カートの運用方法について
は、看護部・薬剤部で、全病棟統一のマニュアルを作成し
た。薬剤部では、配薬チェックを行うと共に、配薬エラー
の集計を行い、各病棟やリスクマネージャーへ提示した。
【結果】与薬カート導入により、配薬に関するインシデン
トは激減し、また病棟での全体的なインシデントも減少し
た。配薬エラーの集計をとることで、病棟での配薬におけ
る意識の低さを露呈し、今までの薬剤管理体制を見直すめ
の良いデータとなった。また、病棟での薬剤師の貢献度を
示し、今後の病棟薬剤師業務の一つとしての意義を確立し
た。
【考察】与薬カート導入により、安全管理体制が飛躍的に
向上したが、未だ問題点も多く、改善すべき点は多い。今
後、医師との連携や、看護部と薬剤部との情報伝達方法等
を見直し、より効率的な薬剤管理体制の検討が必要であ
る。
128 適正使用に基づいた薬剤業務の医療経済的評価
岐阜大学医学部附属病院 薬剤部
○安田 浩二、山田 紘嗣、小森 善文、
丹羽 隆、北市 清幸、松浦 克彦、伊藤
善規
【目的】薬剤師は医薬品の適正使用による医療安全の確保
ならびに治療効果の向上、さらには薬剤業務の効率化を目
的として、処方箋疑義照会や処方提案あるいは採用薬剤の
検討等を行っている。一方、医薬品の適正使用推進により
医療経済にもたらす効果も大きいと考えられるが、これら
薬剤業務のアウトカムを医療経済的に分析した報告は本邦
では少ない。そこで、我々はその評価を試みた。
【方法】平成23年度(23年4月∼24年3月)において、(1)
調剤時の疑義照会による経済効果、(2)複数規格がある
抗がん剤の投与量に基づく最適規格の組み合わせによる薬
剤節減額、(3)抗がん剤投与直前の検査値チェックによ
る投与不適患者の薬剤調製回避による薬剤節減額、(4)
注射用抗菌薬が使用される全入院患者での感染制御専門薬
剤師による適正使用推進のための処方チェックによる抗菌
薬節減額について、各部門の薬剤師が記録するための共有
ファイルを作成し、経済効果を評価した。
【結果】(1)∼(4)による年間節減額はそれぞれ約107
万円、772万円、458万円および1,
900万円であり、年間総
200万円以上の薬剤費節減につながった。
計3,
【考察】
薬剤業務は安全性確保や医療の質向上のみならず、
医療経済にも大きく貢献することが明らかになり、それを
客観的に示すことは極めて重要であると考えられる。
−211−
ポスター演題
129 ICU におけるニカルジピン注射液による血管障害
の危険因子の解析
九州大学病院 薬剤部、2九州大学 薬学部、
九州大学 大学院薬学府、
4
九州大学病院 救命救急センター
○尾川 理恵1,2,3,4、成重 友莉2、辰島 瑶子3、
福井 史織2、江頭 伸昭1,3、光安 正平2、
武田 真樹1、桑城 貴弘4、大石 了三1,3
130 エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナⓇ)
の適正使用への取り組み
1
福岡大学病院薬剤部
○森脇 典弘、井本 愛、土倉 史香、
古賀 亜矢子、植山 美穂、岡村 亜紗美、
林 珠希、鷲山 厚司、二神 幸次郎
3
【目的】ニカルジピン注射液は静脈投与が可能な唯一の Ca
拮抗薬であるため ICU において汎用されるが、末梢静脈
より投与した場合にしばしば静脈炎が発現することがあ
る。しかし、その頻度は不明であり、対応や予防策が確立
していないのが現状である。そこで、血管障害の発現頻度
と危険因子について調査を行った。
【方 法】2009年1月∼2011年12月 の 間、ICU 病 棟 で 脳 卒
中に対して末梢よりニカルジピン注射液を持続投与された
患者41名を対象に、患者背景、ニカルジピン注射液の使用
状況および血管障害の有無について診療録を後ろ向きに調
査した。
【結果】対象患者41名のうち14名(34.
1%)に血管障害が
発現していた。血管障害は投与時間が24時間以上で投与速
度が45ml/h 以上において高頻度に発現し、投与時間が96
時間を超えた3名の患者の血管障害はいずれも重篤であっ
た。単変量解析の結果、総投与量、投与時間、投与速度に
有意差が認められた(p<0.
05)
。さらに多変量解析の結
果、投与時間と投与速度が有意な因子として同定され、
カットオフ値 は そ れ ぞ れ20.
43時 間、44.
72mL/h で あ っ
た。
【考察】今回の結果から、投与速度を45mL/h 以下に設定
して投与を行い、投与時間が20時間を超えた場合にはモニ
タリングを強化し、血管障害の重篤化防止のため、少なく
とも96時間での差し替えの必要性が示唆された。
【目的】エドキサバントシル酸塩水和物(以下、エドキサ
バン)は、腎障害患者・高齢者・低体重患者においての低
用量投与など適正使用の喚起が行われている。今回、福岡
大学病院(以下、当院)での処方状況を調査し、その結果
をふまえ、エドキサバン適正使用の案内を作成し医師・看
護師に伝達(介入)した。介入前後の処方用量について調
査したので報告する。
【方法】当院整形外科にてエドキサバンの適応のある膝関
節全置換術・股関節全置換術・股関節骨折手術を行った入
院患者に対して、介入前5ヶ月間(平成23年8月∼12月)
と介入後3ヶ月間(平成24年1月∼3月)の適正使用につ
いて調査した。
【結 果】介 入 前 は、エ ド キ サ バ ン15mg/day 投 与 群 と30
mg/day 投与群の腎機能に有意差が認められ、投与量の算
定にまず腎機能が考慮されていることが明らかとなった。
しかし、年齢と体重には有意な差は見られなかった。介入
後は、腎機能と年齢において有意差が見られ、適正使用の
向上が見られた。体重には有意差が見られなかった。静脈
血栓塞栓症早期判断の指標として「術後7日目における D
0μg/mL 以上」としたとき、介入後の方が
ダイマー値10.
指標を満たす割合は少なかった。
【結論】現在、出血に関するエドキサバンのリスクを評価
する方法は未だ確立されておらず、投与に関しては十分注
意を払わなければならない。薬剤師が介入し適正使用を啓
発することで、効果的な治療に貢献することができる。
131 発熱性好中球減少症治療薬のけいれん発症に関す
る検証
132 “手作り薬薬連携”を成功させるためには病院薬
剤師がキーパーソン
1
1
2
2
愛媛大学医学部附属病院 薬剤部、
就実大学 薬学部
○田中 亮裕1、田中 守1、末丸 克矢2、
荒木 博陽1
東京大学 大学院薬学系研究科、
東京大学 大学院情報学環
○三木 晶子1、佐藤 宏樹1、堀 里子1,2、
澤田 康文1
【目的】2007年海外で発熱性好中球減少症治療薬の有効
性・安全性をメタ解析した結果,セフェピムによる治療は
他剤に比べ有意に死亡率が高いことが報告された。その理
由の一つとして,セフェピムの中枢毒性(痙攣誘発)が挙
げられている。しかし、海外におけるセフェピムの最大投
与量は1日6g と日本(1日4g)よりも多いため、日本
におけるセフェピムの安全性については不明である。そこ
で、本研究では発熱性好中球減少症治療薬であるセフェピ
ムおよびメロペネムの痙攣発症に関して調査を行った。
【方法】2009年10月∼2011年9月に愛媛大学医学部附属病
院に入院した18歳以上の患者のうちセフェピムあるいはメ
ロペネムを投与した例を調査対象とした。痙攣発症につい
ては抗菌薬投与中にジアゼパム注、フェニトイン注、フェ
ノバルビタール注またはチアミラール注を投与あるいは増
量した例をカルテで確認し、痙攣発症の記載があった症例
を痙攣ありと判定した。
67%)はメロ
【結果・考察】セフェピムの痙攣発症率(2.
49%)
と比較して有意に高い値を示した。セフェ
ペネム(0.
ピム投与時に痙攣を発症した5例の基礎疾患はウイルス性
脳炎2例、脳に浸潤を認める悪性リンパ腫3例であった。
この結果から脳に何らかの疾患がある症例に対しセフェピ
ムを投与することにより、痙攣発症のリスクが高まる可能
性が示唆された。
【目的】外来化学療法の適正使用には病院の医師・薬剤師
と地域薬局の薬剤師との連携が重要である。しかし現時点
では、処方せんを応需した薬局では、情報が非常に不足し
ている。そこで、本研究では、抗癌剤適正使用推進のた
め、“手作り薬薬連携”成功事例を収集し、そのノウハウ
を調査することとした。
【方法】病院薬剤師と地域薬局の薬剤師および医師とが連
携をとり、適正ながん外来化学療法を行った成果が学会発
表や論文発表されている病院薬剤部を抽出し、平成23年10
年5日∼平成24年2年5日まで郵送によるアンケート調査
を行った。
1%(27病院)であっ
【結果】55病院に送付し、回収率は49.
た。最も多かった連携のきっかけは、外来化学療法を院外
薬局に任せることに対する病院薬剤部や医師の危機感だっ
4%)
。連携の発案者は、病院薬剤師が96.
3%と最
た(70.
も 多 く、院 外 薬 局 に 提 供 し て い る デ ー タ は、治 療 計 画
2%)
、患者のレジメン(88.
9%)が多かった。連携
(85.
をしていて助かった様々な事例が記載されていた反面、薬
局からのフィードバックが無い、薬局の知識レベルに差が
あるなどの不満な点も挙げられていた。
【考察】薬薬連携を成功させるためには病院薬剤師に多大
な労力が求められるが、適正ながん外来化学療法のために
は、薬局側の問題点を解決しつつ、より多くの病院で薬薬
連携を推進していく必要がある。
−212−
133 ダビガトランの適正使用に向けた薬剤科の取り組み
社会医療法人 誠光会 草津総合病院
○大西 摩耶、清水 理沙、市川 裕己、
藤戸 靖久、岩崎 秀子
【背景】心弁膜症性心房細動における虚血性脳卒中及び全
身性塞栓症の発症抑制として効能をもつ薬剤ダビガトラン
が2011年3月に発売となり、ワルファリンの代替薬として
注目を浴びた。しかし、ダビガトランは腎排泄型薬剤であ
るため腎機能に応じて用量を調節せねばならず、高齢者や
腎不全患者への投与には特に注意が必要となる薬剤であ
る。
5∼2011.
10の期間で入院、
【目的】当院薬剤科は、2011.
、電子カルテより追跡調査を
外来患者を対象とし(27名)
行い、薬剤管理指導用チェック項目を作成した。さらに、
処方オーダー時に医師に注意喚起を促す目的でワーニング
が出るように設定した。この取り組み後、5ヶ月間の適正
使用の評価を報告する。
11∼2012.
3の期間で入院、外来患者を対象
【方法】2011.
とし、電子カルテより投与量が適正であったか、また副作
用の発生状況を追跡調査した。
【結果、考察】薬剤管理指導用チェック項目を活用するこ
とで、過量投与や副作用発現のリスクを回避し、薬剤の適
正使用に繋がった。2012年4月より長期投与が可能となっ
たため、ひきつづき副作用等の追跡が必要であるといえ
る。院内処方のみではなく、院外処方、持参薬も含めた薬
剤の適正使用を推進するために、薬薬連携の強化が今後の
課題である。
135 当院循環器内科におけるダビガトランの使用状況
の検証
平成紫川会 小倉記念病院 薬剤部
○富田 敏章、町田 聖治、福島 将友、
増田 和久
134 プレアボイド報告の解析
施に向けて∼
∼質の高い薬物療法実
九州厚生年金病院 薬剤部
○本間 敦子、松本 恵、釘原 瑶子、
宮本 愛子、桑村 恒夫、赤松 孝
【目的】九州厚生年金病院(以下、当院)では平成22年6
月より、プレアボイド報告全例を薬剤部において集計し、
得られた薬学的ケア情報を薬剤師間で積極的に共有してい
る。今回、集計されたプレアボイドについて解析し、当院
における傾向と今後の課題について評価した。
【方法】平成22年6月から平成24年3月までに収集された
プレアボイド報告について、発生場所、発見の経緯、医薬
品の種類、薬学的ケア等に分類し集計した。
【結果・考察】プレアボイド報告の総件数は287件であっ
2%)
、薬 剤 部71件
た。発 生 場 所 は、病 棟193件(67.
7%)であり、発見の経緯は、薬歴90件(31.
4%)
、
(24.
9%)
、患者の訴え39件(13.
6%)
、処方調
検査値57件(19.
5%)等であった。医薬品の種類と
剤または鑑査30件(10.
、抗生物質43件(15%)
しては、循環器用薬66件(23%)
となっていた。薬学的ケアの分類では、腎機能低下時の推
6%)と最も多く、次いで持参薬
奨投与量提案が65件(22.
8%)
、相互作用の回
からの切り替え間違いの指摘28件(9.
7%)等であった。プレアボイドの対象となっ
避25件(8.
た医薬品は循環器用薬、抗生物質と処方件数に相関して多
くみられた。また、近年 CKD(慢性腎臓病)患者の増加
により、腎機能低下時における過量投与についても、より
注意が必要であることが示唆された。今回集計されたデー
タをもとに、より質の高い適切な薬物療法が実施できるよ
う、指針・マニュアル等の整備に取り組んでいきたい。
136 後発医薬品安全対策の取り組み
院のアンケート調査より∼
∼医師・近隣病
社会医療法人 誠光会 草津総合病院 薬剤科
○市川 裕己、藤戸 靖久、岩崎 秀子
【目的】抗凝固薬ダビガトランが2011年3月発売された。
同年、8月には重篤な出血に関する安全性速報(ブルーレ
ター)が通知された。当院では採用後から適正使用に取り
組んできたが、今回同薬剤の安全性に寄与できたのかを検
証した。
【方法・期間】2011年4月∼2012年3月の期間で、循環器
内科における処方状況を調査した。調査項目は、患者性
別・年 齢・投 与 量・腎 機 能・投 与 後 の 凝 固 能 検 査
(aPTT)
、重篤な副作用報告の有無などとした。
6歳。1日投与量が
【結果】投与患者164名。平均年齢65.
300mg の患者は90名(内70歳以上の患者は10名)
、220mg
の患者は72名(内70歳以上の患者は50名)であった。投与
前の腎機能検査実施患者155名で、CCr50mL/min 未満の
患者は20名には、すべて1日220mg が投与されていた。
投与後の凝固能検査が実施された患者は93名で、うち2名
は aPTT 延長が認められ、減量・中止となった。
【考察】1日投与量をみた場合、年齢では、70歳を目安に
投与量を設定している傾向が見られた。また腎機能では、
投与前に腎機能を把握し、適切に投与量を設定されている
と思われた。
【結語】
当院では、適正使用が行われていたと考えられる。
投与の際には、年齢・腎機能を考慮し投与量を決定し、定
期的に腎機能や aPTT を測定することが、安全に使用す
るためには特に重要であると思われる。
【はじめに】国による医療費削減の施策として、院外処方
箋の様式変更や後発医薬品使用加算等の診療報酬上の優遇
等により後発医薬品(以下後発品)の使用が推進されてい
る。また当院のように DPC 算定病院においては薬剤コス
トの圧縮のため、後発品への切り替えが経営上の命題と位
置づけられている。しかし、処方する医師は馴染みのない
医薬品名に戸惑うことも多い。このような状況下、薬剤師
は医薬品管理や適正使用チェックによる患者安全の確保、
持参薬管理による経営マネジメントを行うことが求められ
ている。当院でも医薬品処方時の患者安全の確保のため
に、取り組みを行ったので報告する。
【方法】
電子カルテのオーダー画面で重要な薬物相互作用、
併用禁忌に関しては注意喚起を表示し、また医薬品名称の
検索を先発医薬品名や成分名でも検索可能とするなどの対
策を行った後、医師への意識調査アンケートを実施した。
また、オーダー時の注意喚起の実施状況について近隣病院
にアンケート調査を実施した。
【結果・考察】医師へのアンケートでは、注意喚起の表示
が有用であるという回答が得られ,好意的に受け入れられ
ていることがわかった。近隣病院のアンケートにより、各
病院とも何らかの安全対策をシステムに組み入れている
が、オーダー時の煩雑さとの兼ね合いで、どこまでシステ
ム化するかに病院間のばらつきがあることが示唆された。
−213−
ポスター演題
137 当院におけるワルファリンとベプリジル塩酸塩の
相互作用の検討
国立病院機構九州医療センター
○有馬 希、大石 裕樹、安達
薬剤科
るい、西野
138 非定型抗精神病薬による耐糖能異常フォローアッ
プへの介入
1
金沢大学 附属病院 薬剤部、
金沢大学医薬保健研究域薬学系、
3
金沢大学大学院医学系研究科脳情報病態学、
4
金沢大学大学院医学系研究科恒常性制御学
○坪内 清貴1、田平 裕美子1、増江 俊子1、
菅 幸生2、小柴 美紀恵1、前田 大蔵1、
長澤 達也3、篁 俊成4、三邉 義雄3、
崔 吉道1、宮本 謙一1
2
隆
【目的】抗凝固薬であるワルファリン(以下,WA)は心
房細動に合併する心原性脳塞栓症の予防に広く使用される
薬剤である。また,抗不整脈薬であるベプリジル塩酸塩
(以下,BP)は持続性心房細動に対し高い除細動効果を
示し,しばしば WA と併用される。近年,WA と BP の
併用患者で PT­INR が上昇するという報告が散見される
が,両剤の添付文書に WA と BP の相互作用に関する記
載はなく,PT­INR の上昇と BP 併用との関連は明らかで
はない。そこで,本研究では当院における WA,BP の併用
状況と BP 併用患者での PT­INR の推移を調査し,PT­
INR の変動に影響を及ぼす因子を同定する。
【方法】当院において H23年1月∼12月の期間で WA 投
与中に BP の投与が開始された症例を対象として,WA の
投与量,PT­INR,その他の臨床検査値を電子カルテより
抽出し,各因子と PT­INR の延長の有無との間で相関解
析をおこなった。
【結果】観察期間中,WA に BP が併用となった22症例の
うち4症例で PT­INR の上昇が観察された。
【考察】WA と BP が併用となった22症例のうち4症例で
PT­INR の上昇が観察された。BP 併用 後 の PT­INR の
上昇には個人差があることが示唆された。BP 併用による
PT­INR の上昇に影響を及ぼす因子を同定するために,
年齢,性別,臨床検査値,薬物代謝酵素の遺伝子多型など
の各因子と INR 上昇の有無について相関解析をおこなっ
ているところである。
139 先発品とジェネリック医薬品の剤形類似性について
1
徳島文理大学 薬学部 医療薬学講座、
2
徳島大学薬学部臨床薬学講座
○日浦田 崇紘1、原田 香穂里1、前田 恵里1、
土井 沙由梨1、富田 かおり1、
土屋 浩一郎2、庄野 文章1
【目的】従来から先発品に剤形や PTP 包装形態を類似さ
せたジェネリック医薬品が市販されているが、最近では、
先発品との PTP 包装の識別性は勿論のこと、一包化調剤
時の過誤防止や錠剤鑑別時の作業軽減から色、大きさ、ロ
ゴマークなどの違いにより識別が可能な製剤が増加してい
る。特に成分名がフィルムコーティング錠に直接印字され
たジェネリック医薬品まで出現している。そこで、先発品
とジェネリック医薬品の剤形の類似性について検討した。
【方法】調査品目は2011年冬初収載された3品目(アトル
バスタチン、ドネペジル、ロラタジン)と既存の抗菌薬、
降圧薬、抗血小板薬、睡眠薬等の先発品とジェネリック医
薬品について、製薬企業から提供されている添付文書情報
を基に形状、色、ロゴマーク、割線の有無、大きさ等につ
いてクラスター分析(ウォード法)を用いて類似性を比較
した。
【結果・考察】錠剤の大きさや色はほぼ類似性が高く、厚
さや質量の類似性は余り見られなかった。それぞれの品目
はクラスター分析(ウォード法)
により、いくつかのグルー
プに分類され、ジェネリック製薬大手は先発会社との類似
性が高かった。ドネペジルやアトルバスタチンは先発品と
の類似性も見られず、また成分名の印字が表裏にあり、識
別性が高められ個別化されていた。このように剤形類似性
を客観的に評価する手法は、ジェネリック医薬品選択の指
標の一つとしても有用と考えた。
【目的】非定型抗精神病薬の olanzapine と quetiapine は
糖尿病性ケトアシドーシス及び糖尿病性昏睡について緊急
安全性情報が発出され、血糖値等のモニタリングが必要と
されている。そこで、非定型抗精神病薬による耐糖能異常
の実態と医師の意識調査を実施し、薬剤師介入の効果を検
討した。
【方法】本学医学倫理審査委員会の承認を得て、2006年か
ら2007年に本院で olanzapine、quetiapine、risperidone お
よび perospirone のいずれかを連続4回以上処方された患
者を対象に後ろ向き調査を行った。また、2009年の北陸精
神神経学会に参加した医師にアンケートを行った。
【結果と考察】非定型抗精神病薬服用患者の約60%が1度
も血糖値や HbA1c 値を測定されていなかった。特に外
来でその数は約70%に達し た。随 時 血 糖 値200mg/dL 以
上、HbA1c 値6.
5%以上を示した患者はそれぞれ約11%
存在した。そこで、精神科病棟に専任薬剤師を配置し耐糖
能異常等の副作用モニタリング、医師に検査や薬剤減量提
案等の介入を行った。院内を含む北陸地区の精神科医対象
の意識調査では70%以上が血糖値や HbA1c 値を年1回
以上モニタリングしていると回答した一方、検査依頼や結
果の確認、患者説明の時間がとれない等の意見もあり、耐
糖能フォローアップが不十分な要因として医師の多忙さ等
が推察された。チーム医療をさらに推進し、薬剤師が潜在
的な糖尿病患者の早期発見、積極的なフォローアップに努
める必要がある。
140 疑義照会等に関わるインシデント・アクシデント
事例の検討
公益社団法人 地域医療振興協会
進センター
○石川 雅彦、斉藤 奈緒美
地域医療安全推
【目的】医療機関における薬剤の処方から服用までの業務
プロセスは複雑であり、さまざまなインシデント・アクシ
デントが発生する可能性がある。今回、疑義紹介および疑
義に関連して医療機関で発生したインシデント・アクシデ
ント事例を公開データから抽出し、発生要因と再発防止策
等に関して検討した。
【方法】日本医療機能評価機構(以下 JCQHC)のウェブ
サイト掲載の公開データ検索を用いて、薬剤に関連した疑
義紹介、または疑義に関与して発生した事例を検討した。
【結果】JCQHC のウェブサイトで検索可能な事例73例を
検討した。薬剤師から医師への疑義紹介に関与した事例が
62例で最多であり、このうち疑義照会がなかった事例が42
例、あった事例が20例、看護師から医師や薬剤師への疑義
関連3例、医師から医師や薬剤師への疑義2例、患者から
医師や薬剤師への疑義5例、および薬剤師が疑義紹介中に
発生したエラー1例、などであった。
【考察】薬剤処方から服用までの業務プロセスには、複数
の職種、複数の職員が関与するという特徴があり、エラー
発生の可能性が懸念され、単一の職種や個々人の努力のみ
では再発防止が必ずしも容易ではない。疑義紹介があって
も発生した事例、あるいは疑義紹介あって未然に影響が最
小限に抑えられた例などから、事例発生の根本原因を抽出
して対策を立案し、それを実施・評価までのシステム整備
が必要なことが示唆された。
−214−
141 新規薬名類似度指標 m2−vwhtfrag の構築と評価
1
東京大学 大学院薬学系研究科、
東京大学 大学院情報学環
○佐藤 宏樹1、玉木 啓文1、三木
堀 里子1,2、澤田 康文1
142 メトトレキサートの LC­MS/MS 定量法の開発
と患者血清への適用
2
1
佐世保中央病院 薬剤部、
長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科、
3
佐世保中央病院 リウマチ・膠原病センター
○曽根本 恵美1,2、河野 なるみ2、
泰弘1、紙谷 友里子1、
大深 早記2、
池田 理恵2、和田 光弘2、植木 幸孝3、
中島 憲一郎2
晶子1、
2
【目的】医療現場での薬名類似に起因する医薬品取り違え
事故は後を絶たない。取り違え事故防止のためには、薬名
類似度の客観的評価と取り違え可能性の事前予測に基づく
対策立案が必要である。本研究では、我々が過去に構築し
た薬名類似度指標 vwhtfrag を基盤に、取り違えの可能性
を精度良く予測可能な新規薬名類似度指標を構築すること
を目的とした。
【方法】Vwhtfrag の計算アルゴリズムに、末尾一致に対
して先頭一致の寄与を高くする係数と、文字列長の差の寄
与を表す係数を組み込み、新規指標 m2−vwhtfrag を構
築した。ウェブアンケート調査による取り違えた医薬品名
の組み合わせを正例、ランダムに作成した組み合わせを負
例とし、両者を最も良く判別できる係数と閾値を求めると
ともに、判別性を既存指標と比較した。
5、
【結果】
M2−vwhtfrag は、先頭一致に関する係数が2.
15のときに最も良い判別性
文字列長の差に関する係数が0.
972、負例を正し
を示し(正例を正しく判別した割合:0.
968)
、
閾値は0.
46と算出された。また、
く判別した割合:0.
vwhtfrag やその他の既存指標よりも判別性が高かった。
【考察】構築した m2−vwhtfrag は、取り違えが発生し
た医薬品名の組み合わせを最も良く判別できることが示さ
46以上の組み合わせで
れた。M2−vwhtfrag 指標値が0.
は取り違えが発生する可能性が予測され、m2−vwhtfrag
は取り違え防止対策に活用できると考えられる。
143 アロマテラピー精油含有成分 Linalool 局所投与
による抗侵害作用
【目的】メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)
治療薬の中で最も有効性が確立した薬剤である.MTX の
薬物動態には個体差があり,重篤な副作用や薬物相互作用
が報告されていることから,RA 治療においても,血中濃
度モニタリングを行う必要があると考えた.そこで MTX
の高感度 LC­MS/MS 法を開発し,これを患者血清に適用
した.
【方法】血清試料の前処理
ヒト血清に I.S.
(pterin: PT)及び methanol を加えて除タ
ンパクを行った.撹拌後・遠心分離後,その上清を窒素気
流下乾固した.得られた残渣を溶離液に再溶解し,メンブ
ランフィルターでろ過後,
これをLC­MS/MS分析に供した.
LC­MS/MS システム
Ionization: ESI(positive ion mode);detection mode: MRM
(MTX: m/z455.
2→308.
1,
PT: m/z164.
1→164.
1);カラ
ム:Luna3u C18(2)カラム(100x4.
6mm i.d.
);溶離
液:1%acetic acid/acetonitrile=88/12(v/v,%);流
速:0.
5mL/min;注入量:10μL.
【結果・考察】MTX の保持時間は4.
4分であり,他の血清
成分の影響を受けることなく良好に分離することができた.
内標準法を用いて検量線を作成した結果,10−1200nM の
濃度範囲で良好な直線性を示し( r =0.
999)
,検出下限(S/
N=3)は3.
0nM であった.本法を RA 患者血清中の MTX
定量に適用したところ,検討したすべての患者で MTX を
定量することができた(n=9)
.患者は多くの種類の併用
薬 を 服 用 し て い た が,そ れ ら の 影 響 を 受 け る こ と な く
MTX の定量が可能であった.
144 ニフェジピン光分解産物による糖尿病性腎症進展
抑制作用
1
1
東北薬科大学 臨床薬剤学教室、
第一薬科大学 薬品作用学教室
○佐藤 一真1、勝山 壮1、八木 朋美1、
岸川 幸生1、小松 生明2、櫻田 司2、
中村 仁1
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
医薬品機能生化学、
2
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
薬理学
○藤井 聖子1、石澤 啓介1、櫻田 巧2、
山野 範子2、石澤 有紀2、今西 正樹2、
布 あさ美1、鈴木 雄太1、木平 孝高2、
池田 康将2、冨田 修平2、土屋 浩一郎1、
玉置 俊晃2
2
【目的】近年、アロマテラピー精油を用いたアロマテラ
ピーマッサージが緩和ケアの補完療法の一つとして実施さ
れている。我々は以前、各種精油の抗侵害作用について検
討し、linalool 含有量の多い精油において顕著に抗侵害作
用が見られることを明らかにした。そこで本研究では、linalool 局所投与による抗侵害作用の作用機序について検討
を行った。
【方法】実験には ddY 系雄性マウス(体重22−26g)を用
いた。Linalool 局所投与による抗侵害作用は、マウス右後
肢足蹠皮下(i.pl.)に2%HCHO(20μL)を投与した際に
見られる疼痛関連行動(Licking および Biting)を指標と
した。HCHO 投与直後から10分間を第一相、10−30分間
を第二相として測定した。Linalool の i.pl.投与は HCHO
投与10分前に行った。また、ナロキソン(NAL)および
NAL・メチオジド(NAL·Met)(末梢性オピオイド受容体
)した。
拮抗薬)は linalool 投与30分前に腹腔内投与(i.p.
Linalool の希釈には知覚神経に影響を及 ぼ さ な い jojoba
wax を用いた。
25−5μg/20μL)
【結果・考察】Linalool の i.pl.投与(1.
は HCHO 誘発性疼痛関連行動の両相とも用量依存的に抑
制した。一方、反対足側への linalool の投与は抑制効果を
示さなかった。さらに、NAL(4−16mg/kg)および NAL·
Met(2−8mg/kg)の i.p.前投与は linalool の抗侵害作
用に対して用量依存的に拮抗した。以上の結果より、linalool 局所投与による抗侵害作用は、末梢性オピオイド機
構が関与していると推察される。
【目的】ニフェジピンは光分解によりカルシウムチャネル
遮断作用の減弱したニトロソニフェジピン(NO­NIF)に
変換されることが報告されている。一方で我々 は NO­
NIF が脂質ラジカル消去活性を獲得すること、TNF­α に
よる腎糸球体血管内皮細胞障害を抑制することを既に報告
している。糖尿病性腎症の発症及び進展には酸化ストレス
亢進による内皮障害が関与していることから本研究では糖
尿病性腎症に対する NO­NIF の効果を検討した。
【方法】2型糖尿病モデルとして KKAy マウスを用い、
NO­NIF は30mg/kg/day の用量で連日腹腔内投与した。
尿中アルブミン排泄量および尿中8−OHdG 量は ELISA
法にて測定した。メサンギウム領域拡大は PAS 染色、活
性酸素種(ROS)産生は DHE 染色にて評価した。血管内
皮障害モデルとしてL­NAME慢性投与ラットを使用した。
【結果】NO­NIF は KKAy マウスの尿中アルブミン排泄
量の増加、メサンギウム領域の拡大を抑制した。NO­NIF
は KKAy マウスの腎臓における ROS 産生の増加、尿中
8−OHdG 排 泄 量 の 増 加 を 抑 制 し た。NO­NIF は L­
NAME 慢性投与ラットにおける尿中タンパク排泄量の増
加を抑制した。一方、NO­NIF は KKAy マウスにおける
耐糖能異常および血圧上昇に対して影響を示さなかった。
【結論】本研究より NO­NIF は血糖降下作用および降圧
作用非依存的に糖尿病性腎症の進展を抑制する可能性が示
唆された。
−215−
ポスター演題
145 浸透圧性下剤硫酸マグネシウムと大腸刺激性下剤
ビサコジルを併用しても、瀉下作用は増強しない
146 シスプラチン誘発末梢神経障害に及ぼす投薬時刻
の影響
1
星薬科大学 薬動学教室
○五十嵐 信智、今 理紗子、三村 綾子、
飯笹 朋彦、面高 みどり、名古屋 智香、
石井 敬、戸田 雄大、落合 和、杉山 清
富山大学 薬学部 医療薬学研究室、
長崎大学病院 薬剤部
○岡崎 史泰1、嶋村 浩太郎2、瀬戸 祥弘1、
佐々木 均2、藤 秀人1
2
【目的】現在、重度な便秘症患者に対して、作用機序が異
なる複数の瀉下剤が併用されている。しかし、瀉下剤の併
用により、瀉下作用が増強するかどうかについての明確な
エビデンスはない。そこで本研究では、作用機序が異なる
瀉下剤を併用した際に、作用が増強するか否かをラットを
用いて調べた。本研究では、瀉下剤として浸透圧性下剤
MgSO4と大腸刺激性下剤ビサコジルを用いた。
【方法】MgSO4単独、ビサコジル単独、あるいは MgSO4
とビサコジルを同時にラットに経口投与し、8時間後まで
の糞中水分量を測定した。また、大腸を摘出し、アクアポ
リン3(AQP3)のタンパク質発現量を解析した。
【結果および考察】併用投与したラットの糞中水分量は経
時的に増加し、投与2時間目以降から、下痢が認められ
た。併用群の糞中水分量は MgSO4単独投与群よりも低
く、ビサコジル単独投与群とほぼ同じであった。大腸の水
の輸送に重要な役割を担う AQP3のタンパク質発現量は、
併用群では Control 群に比べて約70%低下していた。この
低下率は、ビサコジル単独投与群とほぼ同程度であった。
本研究の結果から、MgSO4とビサコジルを併用しても瀉
下作用は増強しないことがわかった。この理由として、併
用した際の大腸の AQP3の発現量がビサコジルのそれと
同程度であったためであると考えられる。今後、瀉下剤を
併用する場合、その治療効果を正確に確認し、適正に使用
していく必要があると考える。
【目的】時間薬物療法とは、概日リズムを考慮し投薬時刻
を設定することで効果の増大・副作用の軽減を目的とした
生体にやさしい薬物療法である。痛みは、患者の QOL を
損なうことから、薬剤誘発末梢神経障害などに対する疼痛
ケアは、臨床現場において重要な命題となっている。しか
し、現在まで多くの研究が行われているが、十分な予防
法・治療法は確立されていない。そこで本研究では、シス
プラチン誘発性末梢神経障害を対象に、投薬時刻の設定に
より疼痛レベルを緩和できるか検討した。また、この機序
について薬物動態学的側面から検討を行った。
【方法】ラットを対象に、5:00または17:00にシスプラ
チン4mg/kg を週1回、計4回投薬し、経時的に疼痛レ
ベルを評価した。また、上記と同様に5:00または17:00
にシスプラチンを単回または週1回、計4回投薬後、経時
的に血液および神経組織を採取し、Pt 濃度および蓄積量
を ICP­MS を用い測定した。
【結果・考察】Hot plate test を用い疼痛レベルを測定し
た結果、5:00投薬群は、control 群と同様の痛覚反応を
示した。一方、17:00投薬群では熱刺激に対する反応が有
意に遅延した。以上より、投薬時刻の設定によりシスプラ
チン誘発末梢神経障害が改善できることが示唆された。現
在、シスプラチン誘発末梢神経障害に対する投薬時刻の差
異について、薬物動態学的側面から検討を行っている。
147 ハムスターを用いた放射線誘発口内炎モデルの作成
148 β‐グルクロニダーゼを介したイリノテカン塩酸
塩代謝物(SN38G)の脱抱合反応におけるシプ
ロフロキサシン併用の影響
1
愛媛大学 医学部附属病院 薬剤部、
2
就実大学 薬学部 健康解析学分野
○渡邉 真一1、末丸 克矢2、荒木 博陽1
【目的】がん放射線治療は、近年がん根治療法としての役
割が増大している。一方、副作用の一つである口内炎は頭
頸部放射線療法時の殆どに発症し、口腔内から咽頭に至る
まで重篤な粘膜障害を引き起こすことで患者の QOL を著
しく低下させる要因となっている。しかし、現在のところ
有効な予防・治療薬剤はなく、臨床では局所麻酔や鎮痛・
抗炎症薬による対症療法が行われているに過ぎない。この
ような背景から、放射線療法時における口内炎治療薬の探
索・開発は重要な課題である。薬剤の評価を行うためには
臨床に近いモデル動物の作成が必須である。マウスを用い
た放射線誘発口内炎モデルはこれまで数多く報告されてい
るが、ハムスターを用いた報告は少ない。今回我々はハム
スターを用いた放射線誘発口内炎モデルの作成を行ったの
で報告する。
【方法】雄性シリアンハムスターのチークポーチに放射線
照射(2050Gy)を行うことで口内炎を発症させた。口内
炎の評価は、発生した口内炎の程度を判断するスコアリン
グに加え、炎症の指標である好中球ミエロペルオキシダー
ゼ(MPO)活性を測定することで行った。
【結果・考察】ハムスターチークポーチに発症した口内炎
は線量に依存してスコアの増加を認めた。MPO 活性に関
してはスコアとほぼ相関して線量に応じた炎症の増大を認
めた。これらの結果から、放射線誘発口内炎の評価系とし
て、ハムスターモデルは有用であると考えられる。
福井大学医学部附属病院 薬剤部
○古俵 孝明、東 高士、根来 寛、渡辺
矢野 良一、中村 敏明、政田 幹夫
享平、
【目的】腸内細菌によって産生される β−グルクロニダー
ゼは、消化管内のグルクロン酸抱合体に作用して脱抱合を
行い、活性型代謝産物を再生成する。我々はシプロフロキ
サシン(CPFX)が β−グルクロニダーゼに直接作用し、
ミコフェノール酸グルクロン酸抱合体の脱抱合を阻害する
ことを既に報告している。その結果から、腸肝循環の寄与
が大きくグルクロン酸抱合を受ける薬物は CPFX の併用
により体内動態が変化すると考えられた。イリノテカン塩
酸塩は肝ミクロソーム内で活性代謝物(SN38)に変換さ
れ、主に肝臓でグルクロン酸抱合体(SN38G)となるが、
一部腸内で脱抱合反応を受け SN38に再変換される。そこ
で SN38G の脱抱合に対する CPFX の影響について検討し
若干の知見を得たので報告する。
【方法】リン酸緩衝液中に β−グルクロニダーゼと SN38
G を添加し、インキュベーション後の脱抱合による SN38
生成量を測定した。また、CPFX 共存下における SN38生
成量を測定した。
【結果・考察】β−グルクロニダーゼを用いた in vitro 解
析系において SN38の生成を確認できた。また、CPFX 共
存下において SN38の生成が阻害され、CPFX の見かけの
阻 害 定 数(IC50値)は、83.
8±7.
7μM、阻 害 様 式 は 非 競
合阻害であった。
【結論】CPFX は β−グルクロニダーゼによる SN38G の
脱抱合を直接的に阻害することが示唆された。従って、臨
床での経口 CPFX の併用は、SN38の腸肝循環を抑制する
可能性があると考えられる。
−216−
149 Bergamot essential oil 局所投与による抗侵害
作用
150 エ ピ ル ビ シ ン 誘 発 血 管 内 皮 細 胞 障 害 に お け る
MAPK 経路の関与
1
1
2
2
東北薬科大学 臨床薬剤学教室、
第一薬科大学 薬品作用学教室
○神尾 咲留未1、勝山 壮1、八木 朋美1、
岸川 幸生1、桑波田 日香里2、櫻田 司2、
中村 仁1
九州大学 薬学部 臨床薬学科、
九州大学病院 薬剤部
○西銘 唯1、山田 孝明2、江頭 伸昭1,2、
桑原 純1、矢野 貴久2、大石 了三1,2
【目的】近年、緩和ケアの補完療法の一つとして、アロマ
テラピー精油を用いたアロマテラピーマッサージが実施さ
れている。我々はイタリアで古くから解熱鎮痛、痙攣緩
和、消毒の民間療法として用いられている Bergamot essential oil(BEO)に着目した。本研究では二相性の疼痛
関連行動を示すホルマリンテストを用い、BEO 局所投与
による抗侵害作用発現メカニズムについて検討を行った。
【方法】実験には体重22−26g の ddY 系雄性マウスを用
い、BEO はマウス右後肢足蹠皮下(i.pl.
)に20μL 投与し
た。希釈には知覚神経にほとんど影響のない jojoba wax
を用いた。BEO 投与10分後に2%HCHO(20μL)を同部
位に投与し、その後見られる疼痛関連行動(Licking/Biting)に対する効果を、HCHO 投与直後から10分間を第一
相、10−30分間を第二相として測定した。また、オピオイ
ド受容体拮抗薬のナロキソン(NAL)および末梢性オピ
オイド受容体拮抗薬の NAL・メチオジド(NAL·Met)は、
BEO 投与30分前に腹腔内投与(i.p.
)した。
5−20μg/20μL)は、
【結果・考察】BEO の i.pl.投与(2.
HCHO が引き起こす疼痛関連行動を両相とも用量依存的
に抑制した。一方、反対足側への BEO の投与は抑制効果
を 示 さ な か っ た。さ ら に、BEO の 抗 侵 害 作 用 は NAL
(4−16mg/kg)および NAL·Met(2−8mg/kg)によっ
て用量依存的に抑制された。以上の結果より、BEO 局所
投与による抗侵害作用は、末梢オピオイドシステムが関与
していると考えられる。
151 バンコマイシンによる腎尿細管細胞障害とミトコ
ンドリア標的抗酸化剤の効果
【目的】エピルビシン(EPI)は、投与時に血管障害を高
頻度に起こすことが問題となっているが、有効な対策法は
確立されていない。当研究室ではこれまでに、EPI 誘発血
管内皮細胞障害に酸化ストレスを介したアポトーシスが関
与していることを報告した。今回、我々は EPI 誘発血管
内皮細胞障害における mitogen­activated protein kinase
(MAPK)family; p38MAPK, c­Jun N­terminal kinase
(JNK),extracellular signal­regulated kinase(ERK)
の関与について検討を行った。
【方法】細胞障害の評価に WST−8法ならびに TUNEL
染色、細胞内過酸化脂質の評価に DPPP 染色、タンパク
質の発現に Western blot 法を用いて検討を行った。
【結果】JNK および ERK 阻害剤処置による EPI 誘発細胞
障害に対する改善効果は認められなかった。一方で p38
MAPK 阻害剤は、EPI による細胞生存率の低下ならびに
caspase−3/7活性の上昇を抑制した。また、EPI 処置
により p38MAPK リン酸化体の発現が増加し、この p38
MAPK の活性化は、抗酸化剤の処置によって抑制された。
【考察】EPI 誘発血管内皮細胞障害において、JNK 経路、
ERK 経路の関与は認められなかった。一方で酸化ストレ
スの亢進による p38MAPK の活性化が血管内皮細胞のア
ポトーシスを誘導している可能性が示唆された。
152 ヒト膵臓がん細胞に対するビスホスホネートとス
タチンの抗腫瘍効果
1
九州大学 薬学部 臨床薬学科、
九州大学病院 薬剤部
○坂本 裕哉1、矢野 貴久2、平野 めぐみ2、
牛島 悠喜1、江頭 伸昭1,2、大石 了三1,2
九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学分野
○渡邊 夏希、村田 竜清、吉澤 裕子、
松浦 徹、小林 大介、窪田 敏夫、島添 隆雄
2
【目的】塩酸バンコマイシン(VCM)はメチシリン耐性
黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症治療薬として広く用いら
れているが、腎機能低下患者や多剤併用症例においては腎
障害が問題となることが少なくない。一方で、VCM によ
る腎障害発現に関する基礎的な検討はこれまでほとんど行
われていなかった。そこで本研究では培養腎細胞を用い
て、VCM による腎細胞障害機序の詳細を明らかにすると
共に、保護薬物に関する基礎的検討を行った。
【方法】VCM をブタ尿細管細胞(LLC­PK1)に曝露し、
細胞障害の評価には propidium iodide(PI)染色法、annexinV 染色法および TUNEL 染色法を用いてフローサイト
メーターにより解析した。活性酸素種(ROS)の評価には
蛍光指示薬の DCF­DA や MitoSOX を用いた。
【結果】VCM を LLC­PK1細胞に処置すると、濃度およ
び時間依存的にアポトーシスが引き起こされた。加えて、
VCM 処置により腎細胞内のミトコンドリア由来 ROS が
増加し、ビタミン E 等の抗酸化剤の併用により、VCM に
よる腎細胞障害は有意に抑制された。
【考察】VCM は腎細胞にアポトーシスを引き起こし、そ
の発現にはミトコンドリア呼吸鎖やミトコンドリア由来
ROS が寄与することが考えられた。さらに、VCM による
腎細胞アポトーシスに対して、ミトコンドリア標的抗酸化
剤が保護効果を有することが示された。
【目的】膵臓がんの罹患率は現在増加傾向にある一方、化
学療法の進展がないのが現状である。近年、ビスホスホ
ネートやスタチンが抗腫瘍効果を示すことが報告されてい
るが、ヒト膵臓がん細胞に対する抗腫瘍効果については十
分に検討されていない。そこで、ヒト膵臓がん細胞株を用
いてビスホスホネート及びスタチンの抗腫瘍効果について
検討を行い、それらの併用による抗腫瘍効果についても検
討した。
【方法】96well プレートにヒト膵臓がん細胞を播種し48hr
培養後、ビスホスホネート(1−100μM)またはスタチン
(1−30μM)を添加し、48hr 培養した。その後、培地を
交換し5日間培養後に生細胞数を WST−8法により測定
した。また、同様にビスホスホネートとスタチンを併用
し、生細胞数の測定を行った。
【結果】1−100μM のビスホスホネートまたは、1−30
μM のスタチン存在下で、検討を行った全ての細胞株にお
いて濃度依存的な殺細胞効果が認められた。単剤での抗腫
瘍効果が認められたことから、それらの併用による抗腫瘍
効果について検討を行った。その結果、1−10μM のビス
ホスホネート存在下、1−10μM のスタチンを併用するこ
とで、殺細胞効果の増強が認められた。
【考察】ビスホスホネートとスタチンを併用することによ
り、ヒト膵臓がん細胞に対する抗腫瘍効果を増強すること
が明らかとなった。ビスホスホネートとスタチンの併用が
膵臓がん領域での新たな治療法となる可能性を示唆するも
のと考えられる。
−217−
ポスター演題
153 尿毒症物質 p−クレジル硫酸は酸化ストレス誘導
を介して腎線維化を促進する
154 オルメサルタン・アゼルニジピン配合剤の抗酸化
作用による動脈硬化症の進展抑制効果
1
熊本大学 薬学部、
熊本大学 薬学部 育薬フロンティアセンター、
3
東海大学 医学部、4崇城大学 薬学部、
5
崇城大学 DDS 研
○渡邊 博志1,2、本田 大輔1、宮本 洋平1、
野口 剛1、門脇 大介1,2、異島 優1,2、
小谷 俊介1、中島 誠1、深川 雅史3、
小田切 優樹4,5、丸山 徹1,2
1
熊本大学 薬学部、
熊本大学 薬学部 育薬フロンティアセンター、
3
崇城大学 薬学部、4崇城大学 DDS 研究所
○福留 一平1、宮本 洋平1、門脇 大介1,2、
末永 綾香1、渡邊 博志1,2、異島 優1,2、
小田切 優樹1,3,4、丸山 徹1,2
2
【目的】近年、尿毒症物質 p−クレジル硫酸(PCS)と慢
性腎臓病(CKD)の病態進展との関連性が注目を集めて
いる。事実、複数の臨床試験において、血清中 PCS 濃度
が CKD 患者の新たな予後予測因子となることが示唆され
てきた。しかしながら、PCS の腎毒性やその発現機序に
ついて明らかにされていない。本研究では、PCS の尿細
管上皮細胞への蓄積と腎障害との関連性を、ヒト近位尿細
管上皮細胞(HK−2)及び CKD ラットを用いて検討し
た。
【方法】HK−2における活性酸素種(ROS)の測定には
CM­H2DCFDA を用いた。NADPH oxidase 及び各種サ
イトカインの発現量は real­time RT PCR 及び Western
blot により確認した。CKD ラットは5/6腎臓摘出によ
り作製した。
【結果及び考察】HK−2において、PCS は NADPH oxidase の活性化を介して細胞内 ROS 産生を増大させた。
ROS 産生に伴い線維化マーカーの発現量増大と細胞障害
が観察された。この現象は、有機アニオントランスポータ
(OATs)阻害剤であるプロベネシド存在下で有意に抑制
された。PCS 負荷した CKD ラットにおいて、酸化ストレ
スの亢進と腎線維化が観察された。以上の結果より、PCS
の尿細管細胞内への取り込みは、ROS 産生を亢進するこ
とで腎線維化を惹起し、CKD の病態進展に寄与すること
が示唆された。
155 3次元培養を用いたアセトアミノフェン誘発肝障
害の新規ヒト in vitro 評価系の構築
1
熊本大学 薬学部・大学院薬学教育部・大学院生
命科学研究部、
2
熊本大学 薬学部 附属育薬フ ロ ン テ ィ ア セ ン
ター
○富島 喜朗1、石塚 洋一1、有冨 航平1、
志水 大介1、古庄 弘和1、福崎 久美子1、
首藤 剛1、甲斐 広文1、入倉 充1、
入江 徹美1,2
【目的】解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(APAP)は過量
服用した際に重篤な肝障害を発症する。ヒト由来培養肝細
胞は薬物代謝酵素発現の低さをはじめ、生体機能を必ずし
も反映しないなど新規治療法開発のための適切な APAP
誘発肝障害(AILI)のヒト in vitro 評価系は欠如してい
る。近年、細胞を3次元培養すると種々の蛋白質発現が上
昇し臓器機能を模倣し得る可能性が報告された。本研究で
は、ヒト肝由来細胞株 HepG2を3次元培養した系(3D­
HG)を用いて新規ヒト in vitro AILI 評価系の構築を企図
した。
【方法】各種 CYP の mRNA 発現、各濃度の APAP に対
する細胞生存率および既存の治療薬 N­acetyl cysteine
(NAC)の肝細胞障害抑制効果を3D­HG および通常培
養 HepG2(2D­HG)で比較し、3D­HG における細胞
内グルタチオン量およびミトコンドリア膜電位の経時変化
を調べた。
【結果】3D­HG では、2D­HG と比較して、各種 CYP
mRNA が高発現し、より低濃度の APAP で細胞生存率の
低下が見られた。NAC の AILI 抑制効果は3D­HG のみ
で認められた。3D­HG では APAP による経時的な細胞
内グルタチオン量の減少およびミトコンドリア膜電位の低
下が見られた。
【考察】2D­HG に比べ3D­HG では CYP が高発現する
ため、AILI に見られる病態を形成しやすくなったと考え
られる。さらに、3D­HG では NAC が細胞保護効果を示
したことから、 in vitro AILI 評価系としての有用性が示
唆された。
2
【目的】慢性腎臓病(CKD)は代表的な酸化ストレス疾
患の1つであり、Angiotensin II(AII)などの蓄積に伴い
活性酸素種(ROS)が産生されることで、血管内皮や血管
平滑筋が傷害を受け、動脈硬化などの合併症を発症する。
現 在、CKD の 降 圧 療 法 で は、AII1型 受 容 体 拮 抗 薬
(ARB)及び Ca チャネル拮抗薬(CCB)の併用が繁用さ
れている。そこで本研究では、ARB であるオルメサルタ
ン(OLM)と CCB であるアゼルニジピン(AZL)の併用
に伴う抗酸化作用の増強が、動脈硬化症の進展に及ぼす影
響を明らかにするために、血管内皮細胞及び血管平滑筋細
胞に対する検討を行った。
【方法】細胞の刺激剤として AII を用いた。また細胞内
ROS 産 生 量 は、ROS 検 出 蛍 光 試 薬 で あ る CM­H2
DCFDA を、ROS 産生に関わる酵素 NADPH oxidase の
mRNA 発現量は、定量的 RT­PCR を用いてそれぞれ評価
した。さらに、細胞死及び細胞増殖に関しては、細胞生存
率等を指標とした。
【結果及び考察】血管内皮細胞において、OLM と AZL
の併用は、各々単独添加時と比較して、AII 刺激による細
胞内 ROS 産生、NADPH oxidase の発現上昇、及び細胞
死を有意に抑制した。同様に、血管平滑筋細胞において
も、細胞内 ROS 産生及び細胞増殖を有 意 に 抑 制 し た。
従って、CKD 時における OLM と AZL の併用療法は降圧
作用に加えて、相加的な抗酸化作用の増強を介して血管内
皮及び血管平滑筋の保護効果を発揮することで、動脈硬化
の進展抑制に寄与できる可能性が示唆された。
156 ビリルビン尿中排泄作用を促進したヒト血清アル
ブミンドメイン II 変異体による低侵襲性血液浄化
療法の開発
1
熊本大学 薬学部 薬学科、
熊本大学 薬学部 育薬フロンティアセンター、
3
崇城大学 薬学部、4崇城大学 DDS 研究所
○西村 知晃1、蓑毛 藍1、異島 優1,2、
渡邊 博志1,2、森岡 弘志1、
小田切 優樹1,3,4、丸山 徹1,2
2
【目的】肝炎や肝硬変時には、高ビリルビン(BR)血症
を呈し、肝性脳症や肝腎症候群、循環器機能変化などの症
状が認められるため、血液透析を始めとする血液浄化療法
が施行されているが、除去効果は十分ではない。そこで本
研 究 で は、BR に 親 和 性 を 有 す る ヒ ト 血 清 ア ル ブ ミ ン
(HSA)のドメイン II が高い腎クリアランスを有する点
に着目し、BR 尿中排泄促進剤としての有用性を評価する
と と も に、よ り 効 率 的 に BR 排 泄 を 促 す BR 高 親 和 性
HSA ドメイン II 変異体の作製を行った。
【方法】高 BR 血症モデルは、胆管結紮マウスを用いて検
討し、結紮後5日目に、HSA ドメイン II を尾静脈内投与
し、投与2、9時間後の血漿中及び尿中 BR 濃度を測定し
た。BR 高親和性 HSA ドメイン II 変異体は、HSA ドメイ
ン II に 位 置 す る4残 基(211Phe、214Trp、218Arg、222
Arg)を、20種のアミノ酸残基へランダムに変異させるこ
とで作製した。
【結果・考察】HSA ドメイン II 投与群では、生食投与群
及び HSA 投与群と比較して、高 BR 血症モデルマウスに
おける血漿中 BR 濃度の低下が亢進するとともに、尿中
BR 排泄量が有意に増加していた。そこで、BR 親和性の
高い HSA ドメイン II 変異体をスクリーニングし、高 BR
血症モデルマウスに投与したところ、野生型ドメイン II
よりも優れた血漿中 BR 除去効果を示した。このことか
ら、BR 尿中排泄促進剤としての HSA ドメイン II 変異体
は、高 BR 血症における侵襲性の低い新たな血液浄化療法
として期待される。
−218−
157 薬剤性肝障害における小胞体ストレス−CHOP
経路の役割
158 腎不全時におけるアセトアミノフェンの安全性評価
1
熊本大学 薬学部、2熊本大学腎臓内科、
崇城大学薬学部
○有水 かなみ1、門脇 大介1、北村 健一郎2、
濟川 聡美1、宮本 洋平1、成田 勇樹1、
冨田 公夫2、丸山 徹1、小田切 優樹3、
平田 純生1
1
熊本大学 薬学部・大学院薬学教育部・大学院生
命科学研究部 薬剤情報分析学分野、
2
熊本大学 医学部 大学院生命科学研究部 分子
遺伝学分野、
3
熊本大学 薬学部 付属育薬フ ロ ン テ ィ ア セ ン
ター
○志水 大介1、石塚 洋一1、宮田 敬士2、
福崎 久美子1、富島 喜朗1、入倉 充1、
尾池 雄一2、入江 徹美1,3
【目的】アセトアミノフェン(APAP)は安全な解熱鎮痛
薬として世界中で繁用されているが、過量服用した際に重
篤・致死的な肝障害を誘発する。APAP 誘発肝傷害の詳細
な機序は不明であるが、近年アポトーシス様細胞死の関与
が示唆されている。炎症・アポトーシスを惹起する小胞体
ストレス誘導性転写因子 CCAAT/enhancer binding protein homologous protein(CHOP)は、様々な疾患の病態
形成に関与することが報告されているが、APAP 誘発肝傷
害における役割は不明である。本研究では、APAP 誘発肝
傷害における小胞体ストレス−CHOP 経路の役割を解明す
ることを目的に検討を行った。
【方法】APAP 誘発肝傷害マウスモデルにおける肝臓中の
小 胞 体 ス ト レ ス 関 連 因 子 発 現 を 調 べ た。ま た、野 生 型
(WT)マウスと Chop 遺伝子欠損ホモマウス(Chop −/−)
マウスに APAP を投与し、血清 ALT 値測定および肝組織
の病理学的解析を行った。
【結果】APAP を投与した肝臓で、CHOP 等の小胞体スト
レス関連因子の発現が上昇した。WT マウスと比較して
Chop −/−マウスでは、APAP 投与後の血清 ALT 値は顕著
に低値を示し、肝細胞壊死(H&E 染色)お よ び TUNEL
陽性細胞数も激減した。
【考察】APAP 誘発肝傷害の病態形成に小胞体ストレス−
CHOP 経 路 が 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 示 唆 さ れ た。
CHOP を介した肝細胞傷害のさらなる機序解明およびその
制御が、APAP 誘発肝傷害に対する新規治療法につながる
ことが期待される。
159 新規酸化ストレスマーカーとしてのシスティン付
加ヒト血清アルブミンの簡便かつ高感度測定法の
開発―透析患者における検討
3
【背景・目的】アセトアミノフェン(AP)は NSAIDs と
比較し腎障害を起こしにくく、近年その酸化ストレス抑制
作用を示す報告もあるため、慢性腎臓病(CKD)患者に
対してより安全かつ有用な鎮痛薬であることが示唆され
る。しかし実際に腎障害時における AP 投与の影響につい
て検討した報告は少なく、詳細は不明である。そこで本検
討では5/6腎摘ラットを作製し、AP 長期投与による腎
への影響について評価した。
【方法】5/6腎摘ラット作製後、vehicle、150mg/kg も
しくは750mg/kg の AP を12週間連日経口投与し、生化学
パラメータ、血圧、酸化ストレスの評価、NSAIDs である
Indomethacin 投与群との生存率の比較を行った。さらに
ESR スピントラップ法を用い、AP、AP 代謝物の直接的
なラジカル補足作用について検討した。
【結果】5/6腎摘により、腎機能の悪化、血圧の上昇が
認められたが、AP 投与による更なる悪化は認められな
かった。また AP 投与群は Indomethacin 投与群よりも有
意に生存率が高かった。さらに AP 投与群では8−OHdG
蓄積量の有意な低下が観察され、ESR 法から AP 代謝物
が直接的なラジカルスカベンジ能を有することも示唆された。
【考察】今回の検討から長期的な AP 投与による明らかな
腎毒性は認められないこと、AP 代謝物が酸化ストレス抑
制傾向を有することが示唆された。以上より CKD 患者へ
の AP 長期投与の安全性を示唆するとともに、AP 代謝物
が有する抗酸化作用による更なる腎機能悪化の抑制が期待
される。
160 アセトアミノフェン誘発肝障害に対するオザグレ
ルの有効性評価および作用機序の検討
1
熊本大学 薬学部・大学院薬学教育部・大学院生
命科学研究部、
2
九州大学 大学院 薬学研究院、
3
熊本大学 薬学部 附属育薬フ ロ ン テ ィ ア セ ン
ター
○古庄 弘和1、富島 喜朗1、永留 美菜子1、
石塚 洋一1、松永 直哉2、入倉 充1、
大戸 茂弘2、入江 徹美1,3
1
熊本大学 薬学部、
2
熊本大学 薬学部 育薬フロンティアセンター、
3
味の素(株)イノベーション研、
4
岩手医科大学泌尿器科、5崇城大学 薬学部、
6
熊本中央病院 薬局
○宮村 重幸1,6、杉森 剛志1、南雲 恒平1、
渡邊 博志1,2、異島 優1,2、山田 尚之3、
阿部 貴弥4、小田切 優樹1,5、丸山 徹1,2
【目的】ヒト血清アルブミン(HSA)における Cys34の SH
基の酸化/還元状態は、酸化ストレス疾患で著しく変動す
るため、そのモニタリングが病態進展や治療効果を予測す
る際の酸化ストレスマーカーとして期待されている。そこ
で本研究では、代表的な酸化ストレス疾患である慢性腎臓
病に焦点をあて、血液透析療法が Cys34のレドックス状態
に及ぼす影響を、高感度、迅速かつ簡便な測定方法である
ESI­TOF/MS により評価した。
【方法】血液透析患者の透析療法前後における血漿を採取
し、これを固相抽出して得られた HSA 分画を ESI­TOF/
MS で測定した。
【結果】透析患者血漿を MS 解析したところ、分離能の高
いスペクトルが得られ、Cys34のレドックス状態を分子レ
ベルでモニタリングすることができた。その結果、透析患
者における Cys34の酸化状態は、その大部分が Cys 付加
体(Cys 化 HSA)であること、加えて、透析療法前に高
値を示した Cys 化 HSA 含量は透析後には有意に低下して
いることが判明した。また、この変化に及ぼす透析膜の影
響は小さかった。興味深いことに、Cys 化 HSA 含量の減
少に伴い、血漿中の酸化ストレスは低下した。以上の結果
か ら、血 液 透 析 患 者 に お け る Cys 化 HSA 含 量 の ESI­
TOF/MS によるモニタリングは、血漿中酸化ストレスを
評価する上での新たなマーカーになりうる可能性が示唆さ
れた。
【目的】解熱鎮痛薬 acetaminophen(APAP)の大量服用
で惹起される重篤な肝傷害は、救命救急領域で問題視され
ている。これまでに我々は、thromboxane(TX)合成酵
素阻害薬 ozagrel(OZA)が、APAP 肝傷害に対し抑制効
果を有することを見出している。本研究では、OZA の有
用性評価および作用機序の解明を目的とした。
【方法】APAP 誘発肝傷害マウスモデルを用い、各投与
経路・投与タイミングでの OZA 投与の有用性を評価し、
また、既存の治療薬 N­acetylcysteine(NAC)との併用
効果を調べた。さらに、血中 TX 濃度、CYP2E1活性、
肝臓中グルタチオン量などに及ぼす OZA の影響を検討し
た。
【結果】腹腔内、経口および静脈内投与のいずれにおいて
も、肝傷害惹起の後投与で OZA は顕著な傷害抑制効果を
発揮した。また、OZA は NAC との併用により強い肝保
護効果を示した。本実験条件下、OZA は血中 TX 濃度を
低下させるが、OZA 以外の TX 合成酵素阻害薬および同
受容体拮抗薬は肝傷害を抑制しなかった。OZA は APAP
毒性代謝物の産生に関わる CYP2E1活性および肝臓中グ
ルタチオン量に影響を与えなかった。
【考察】OZA は APAP 肝傷害発症後に投与しても顕著な
肝保護効果を示し、既存治療薬 NAC との併用効果が認め
られたことから、APAP 肝傷害の新規治療薬となりうる
可能性が示された。OZA の肝保護作用機序として、TX
合成酵素阻害や APAP 毒性代謝産生阻害とは異なる、新
たな作用点の存在が示唆された。
−219−
ポスター演題
161 メタボリックシンドロームに関わる検査値(レプ
チン,アディポネクチン)の24時間経時的推移の
基礎検討
162 メタボリックシンドロームに関わる検査値(HDL·
LDL コレステロール,中性脂肪)の24時間経時
的推移の基礎検討
1
1
3
日本大学 薬学部、2日本大学 医学部、
北里大学東病院 治験管理センター
○島田 崇史1、辰野 正浩1、青山 隆彦1、
上野 高浩2、福田 昇2、藤田 朋恵3、
鈴木 立紀3、池田 康彦3、熊谷 雄治3、
松本 宜明1
3
日本大学 薬学部、2日本大学医学部、
北里大学東病院 治験管理センター
○牧田 朋実1、辰野 正浩1、青山 隆彦1、
上野 高浩2、福田 昇2、藤田 朋恵3、
鈴木 立紀3、池田 康彦3、熊谷 雄治3、
松本 宜明1
【目的】アディポネクチンとレプチンは,アディポサイト
カインと呼ばれる脂肪細胞から分泌されるホルモンであ
り,近年,メタボリックシンドロームの PD マーカーにな
り得ると報告されている。本研究では,健康成人男性を対
象に血液中アディポネクチン(総量体,低・中・高分子量)
とレプチンの日内の経時的推移を検討する。
【方法】健康成人の非肥満者・肥満者群の各群10名の計20
名を対象として5種の検査項目について,入院下第1日目
午後12時から第2日目午前9時まで3時間毎に計8回,経
時的に採血を実施した。なお,本試験は北里大学医学部・
病院倫理委員会 B 委員会および日本大学薬学部倫理審査
委員会による承認の後,被験者の文書による同意を得て実
施した。
【結果・考察・結論】レプチンは,肥満者群が高い値を推
移し,アディポネクチンはレプチンに相反して非肥満者群
が高い値を推移した。高分子量アディポネクチンの日内変
動は,低および中分子量の変化に比べ小さかった。以上か
ら健康成人を対象にこれらの検査項目を測定することは,
メタボリックシンドロームの予防措置のための PD マー
カーになるかもしれない。今後,日内変動も考慮した解析
を実施し,経時的な採血ではなく,最適な採血時間の探索
を行う必要があると考える。
【目的】メタボリックシンドロームは,内臓脂肪型肥満,
高血圧,脂質異常症,糖尿病などが複合したもので,心血
管系疾患を発症しやすい状態を言う。原因としては,飽食
と運動不足に伴う肥満などが一因であり,また夜間勤務者
の罹患率が日中勤務者に比較して高い事が疫学的に報告さ
れている。本研究では,健康成人男性を対象に,メタボ
リックシンドロームに関わるとされる PD マーカーで,脂
質異常症の診断基準に用いられる血清中 HDL·LDL コレス
テロール,中性脂肪,LDL/HDL 比の日内の経時的推移を
検討する。
【方法】健康成人の非肥満者・肥満者群の各群10名の計20
名を対象として5種の検査項目について,入院下第1日目
の午後12時から第2日目の午前9時まで3時間毎に計8
回,経時的に採血を実施した。なお,本試験は北里大学医
学部・病院倫理委員会 B 委員会および日本大学薬学部倫
理審査委員会による承認の後,被験者の文書による同意を
得て実施した。
【結果・考察・結論】総コレステロール・LDL コレステ
ロールは2群間で差は見られず,HDL コレステロールは
非肥満者群が高い値を推移し,中性脂肪,LDL/HDL 比は
肥満群が高い値を推移する結果であった。今後は,日内変
動の解析を実施するのみではなく,2時点間の差・変化率
などを考慮した解析を実施し,最適な採血時点を探索する
必要があると考える。
163 新規閉塞性肺疾患モデルマウスの創出とその肺病
態へのセリンプロテアーゼ阻害剤の効果
164 マウスにおける骨髄抑制状態の定量的検出法の確立
福岡大学 薬学部
○渡瀬 大輔、寺田 一樹、西尾 公志、
瀬戸口 修一、彌生 知里、楠田 真理子、
長田(赤穂) 菜美、松永 和久、高田 二郎、
加留部 善晴
熊本大学 大学院 薬学教育部
○首藤 剛、松本 千鶴、坂口 由起、
小野 智美、亀井 竣輔、スイコ メリーアン、
甲斐 広文
【目的】閉塞性肺疾患は,慢性気道炎症や粘液産生などに
よる気道閉塞症状を呈する難治性疾患である.本研究で
は,本分野で低致死率化に成功した気道上皮特異的に上皮
型 Na+チャネル(ENaC)β サブユニットを過剰発現する
Tg マウス(βENaC­Tg マウス)の気道粘液貯留症状や呼
吸機能に関する情報を多面的に収集し,最終的に薬物治療
評価を実施することを目的とし,種々の検討を実施した.
【方法・結果】βENaC­Tg マウスを C57/BL6マウスで
戻し交配して得られた低致死率 βENaC­Tg マウスの表現
型解析を実施したところ,気道粘液貯留症状,肺気腫様症
状,肺機能の低下に伴う呼吸機能障害を有する慢性呼吸器
疾患モデルであることを明らかにした.さらに,microarray 解析により,本マウスの肺組織においては,プロテ
アーゼ関連経路の活性亢進が認められたことから,本研究
では,本マウスの肺病態に対する経口プロテアーゼ阻害剤
メシル酸カモスタット(Camostat mesylate: CM)および
その誘導体 ONO3403の作用について検討した.その結果,
CM および ONO3403は,βENaC­Tg マウスの粘液貯留症
状,肺気腫様症状および呼吸機能障害を有意に改善するこ
とが示唆された.
【考察】本研究は,低致死率 βENaC­Tg マウスが,薬効
評価に耐えうる閉塞性肺疾患のモデルマウスとなることを
示し,肺組織におけるプロテアーゼ亢進病態を伴う閉塞性
肺疾患に対するプロテアーゼ阻害剤の有用性を示唆するも
のである.
【目的】抗腫瘍薬は骨髄抑制等の副作用を発現する。代表
的なニトロソウレア系抗腫瘍薬である ACNU[1−(4−
amino−2−methylpyrimidine−5−yl)−methyl−3−
(2−chloroethyl)
−3−nitrosourea]投与後14C­thymidine
投与したマウスの骨髄細胞を採取し、骨髄抑制状態の定量
的検出法の確立を試みた。
【方法】動物は ICR マウスを用いた。ACNU を静脈内投
与 し 、24時 間 後 に14C ­ thymidine を 静 脈 内 投 与 し た 。
14
C­thymidine 投与1時間後に麻酔死させ、オートラジ
オグラフィーを行うとともにマウス大腿骨から採取した採
取した骨髄細胞から酸可溶性画分と RNA 画分を除き、抽
出した DNA 画分を発色法により定量した。DNA 中の放
射能は液体シンチレーションカウンターで測定した。
【 結 果 ・ 考 察 】14C ­ thymidine 単 独 投 与 で は 、 明 瞭 に
14
C­thymidine の骨髄細胞への取り込みが観察された。
一方、ACNU60mg/kg 投与により、ACNU 投与24時間後
の骨髄細胞への14C­thymidine 取り込みが減少すること
が 判 明 し た。そ の 結 果、14C­thymidin 取 り 込 み 量 と
DNA 含量を調べることにより、定量的に骨髄抑制状態を
測定できることが判明した。これらの結果はオートラジオ
グラムの骨髄部位を計数した結果と相関した。今回確立し
た検出システムは、骨髄抑制軽減物質の探索に非常に有用
であることが示された。
−220−
165 タイ国産植物抽出物 KP018によって誘発されるが
ん細胞死のメカニズム解析
166 DPP−4阻害薬シタグリプチンの投与量設定に
関する理論的解析
1
広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 医療薬剤
学研究室、
2
Khon Kaen University, Faculty of Pharmaceutical
Sciences
○柿添 早紀1、湯元 良子1、永井 純也1、
Patanasethanont Denpong2、
Sripanidkulchai Bung­orn2、高野 幹久1
【目的】我々はこれまでに、paclitaxel 耐性ヒト肝がん由
来 HepG2細胞(PR­HepG2細胞)に対 し て、タ イ 国 産
植物 Ellipeiopsis cherrevensis のエタノール抽出物 KP018
が強力な細胞毒性を示すことを報告した1,2)。本研究で
は、がん細胞に対する KP018の毒性誘発メカニズムを解
明するため、細胞死の経路や活性酸素種の関与について検
討した。
【方法】PR­HepG2細胞を KP018で48時間処置し、その
細胞毒性を XTT assay や Flow cytometry により評価し
た。抗酸化剤と し て N­acetylcysteine(NAC)を 用 い、
1時間の前処置を行った後、KP018と併用した。
【結果・考察】PR­HepG2細胞のバイアビリティーは KP
018の濃度依存的に減少し、その細胞死はネクローシス(後
期アポトーシス)であった。また、抗酸化剤である NAC
の処置によって、KP018によって誘発される PR­HepG2
細胞のネクローシスは抑制された。これらの結果から、
KP018は PR­HepG2細胞に対してネクローシスを引き起
こし、その細胞毒性には活性酸素種が関与していることが
示された。他のがん細胞に対しても同様の作用を示したこ
とから、KP018は新たな抗がん剤のシーズとして有用であ
る可能性が示唆された。
【参考文献】1)Takano M. et al.: Drug Metab. Pharma418−427(2009) 2)Kawami M. et al.:
cokinet. ,24,
Drug Metab. Pharmacokinet. ,25,
155−162(2010)
167 Peroxisome proliferator­activated receptorβ(PPARβ)を介した乳がん転移/migration
抑制
東京薬科大学 薬学部 臨床薬効解析学教室
○高柳 理早、原田 智子、山田 安彦
【目的】DPP−4阻害薬であるシタグリプチンリン酸塩
水和物(以下シタグリプチン)を対象に、投与量及び臨床
効果について標的分子への結合占有をもとに検討を行い、
臨床における投与量設定に関する評価を行うことを試み
た。
【方法】シタグリプチンの分子量、血漿中蛋白結合率、日
本人投与時における体内動態パラメータ、DPP−4への
解離定数等のデータを文献から収集した。そして種々の投
与量を対象に、ヒトへの投与時における平均 DPP−4結
合占有率(Φss)を算出した。次いで国内臨床試験報告よ
り、HbA1c 値変化量と食後2時間血糖値変化量のデータ
を収集した。得られたデータを解析し、シタグリプチンの
臨床使用時における投与量設定の妥当性について検討した。
【結果・考察】Φss は、投与量の増加に伴い非線形的に増
大し、50∼100mg/日の常用量範囲では、90%以上の高い
値を示した。次に、HbA1c 値変化量および食後2時間血
糖値変化量は、それぞれ Φss の増加に伴い増大した。ま
た Φss と HbA1c 値 変 化 量 と で は 投 与 開 始 後8、12週 時
に、食後2時間血糖値変化量とでは12週時において有意な
関係が得られ、臨床効果が Φss で評価できることが示唆
された。これらの関係性に基づき検討した結果、投与量が
50mg 以下の場合には臨床効果は低下し、100mg 以上の場
合は増量しても大きな変化は見られない可能性が示され
た。本検討により、シタグリプチンの常用量設定が理論的
に妥当であることが示唆された。
168 マウス結腸がん細胞の増殖に及ぼす低酸素応答性
shRNA 発現プラスミドベクターの影響
1
大分大学 医学部附属病院 薬剤部、
九州大学大学院 薬学研究院 薬剤学分野
○藤岡 孝志1、松永 直哉2、岡崎 裕之2、
小柳 悟2、大戸 茂弘2、伊東 弘樹1
1
第一薬科大学 薬学部 薬学科、
2
北陸大学 薬学部 薬学科
○三好 弘子1、竹田 修三1、岡島
原田 麻里1、渡辺 和人2、荒牧
2
隼輔1、
弘範1
【目的】乳がん患者は年々増加しており、我が国では約20
人に1人の女性が乳がんを経験するといわれている。多く
の患者は、遠隔転移を来す乳がん、すなわち「転移性乳が
ん」により死亡する。大麻主成分のテトラヒドロカンナビ
ノール(THC)が転移性乳がん細胞に対し、顕著な migration 抑制作用を示すといわれているが、THC による migration 抑制機序の詳細は不明であった。本研究では、高
転移能を有する MDA­MB−231細胞(ERα 陰性乳がん細
胞)をモデルに、THC による migration 抑制メカニズム
の解析を行うことを目的とした。
【方法】MDA­MB−231細胞を培養し、薬物処理時には
活性炭処理済みの血清で調製した培地を用いた。常法に従
い1)トランズウェル migration 解析/wound healing 解
析、2)レポータージーンアッセイ(PPARα/β/γ)
、3)
RT­PCR を行った。さらに、Rac1の活性測 定 は、市 販
の kit(Cytoskeleton)を用いて行った。なお、本研究で
用いた THC は、大麻草より抽出・精製されたものであ
る。
【結果および考察】THC が MDA­MB−231細胞の migration を抑制することを確認した。そのメカニズムを解明す
るにあたり、検討を重ねた結果、THC が PPARβ 機能を
選択的に抑制し、Rac1活性を抑制することを見出した。
これまでに、PPARβ が Rac1を活性化させ、細胞 migration を促進することが報告されていることから、THC に
よる migration 抑制には、PPARβ­Rac1システムが関与
していることが示唆された。
【背景・目的】多くの固形がん組織は正常組織と異なり、
酸素の不足した低酸素状態に陥っている。そのため、がん
組織では低酸素誘導因子 HIF−1α および低酸素応答配列
HRE を介した特異的な遺伝子発現機構が亢進している。
本研究では、効率的な遺伝子治療薬の開発を指向して、低
酸素応答性 HRE­CMV プロモーターを有する shRNA 発
現ベクターを作成し、腫瘍移植モデルマウスにおける細胞
増殖に及ぼす影響を検討した。
【方法】HRE­CMV プロモーターの構築は CMV プロモー
ターの上流に4つの HRE を含むオリゴヌクレオチドを挿
入した。また、shRNA 発現ベクターはプロモーターの下
流に bcl−2遺伝子に対する shRNA を挿入し構築した。
腫瘍移植モデルマウスはマウス結腸がん細胞を右足蹠に皮
下 移 植 し 作 製 し た。細 胞 増 殖 抑 制 効 果 は HRE­CMV­
shRNA 発現ベクターを腫瘍内投与し、経日的に腫瘍体積
を算出した。
【結果・考察】HRE­CMV プロモーターは HIF−1α 依
存的な shRNA 発現を示した。また、腫瘍移植モデルマウ
スを用いた検討において、HRE­CMV­shRNA 発現ベク
ターは CMV­shRNA 発現ベクターと比較して有意な細胞
増 殖 抑 制 効 果 を 示 し た。こ れ ら の 結 果 よ り、構 築 し た
HRE­CMV プ ロ モ ー タ ー は 低 酸 素 が ん 細 胞 に お い て
shRNA 発現を促進することで、より効率的に腫瘍細胞の
増殖を抑制することが示唆された。
−221−
ポスター演題
169 マウス腎細胞がんにおける mTOR シグナルの時
間薬理学的研究
九州大学大学院 薬学研究院 薬剤学分野
○岡崎 裕之、松永 直哉、小柳 悟、大戸
九州大学大学院 薬学研究院 薬剤学分野
○柿本 啓輔、松永 直哉、河野 友美子、
小柳 悟、大戸 茂弘
茂弘
【目的】 増殖制御因子である mTOR の阻害剤は様々な
腫瘍の増殖を抑制し、新しい抗がん剤として利用されてい
る。一方、多くの哺乳類の生体機能には約24時間周期の日
周リズムが存在し、様々な薬物の効果が投与時刻によって
変化することが知られている。本研究では、腎細胞がん移
植マウスを用い、mTOR シグナルの日周リズムとその成
因、および mTOR 阻害薬の投薬タイミングについて検討
した。
【方法】 BALB/c 雄性マウスに腎細胞がん細胞 RenCa
を移植した腫瘍モデルマウスに対し、7:00または19:00
に10mg/kg の Everolimus を単回投与後、経日的に腫瘍体
積 を 測 定 し た。ま た、4時 間 毎 に 腫 瘍 を 採 取 し、各 種
mRNA およびタンパク量を測定した。転写制御解析は、
ルシフェラーゼアッセイおよびクロマチン免疫沈降法を用
い検討した。
【結果・考察】 mTOR タンパク発現量は暗期に高値を
示す有意な日周リズムが存在していた。このリズムの成因
と し て、mTOR タ ン パ ク を ユ ビ キ チ ン 化・分 解 す る
Fbxw7に明期に高値を示す有意な日周リズムが存在し、
時計関連因子 DBP により制御されていることを明らかと
した。また、mTOR 阻害剤である Everolimus の抗腫瘍効
果は、7:00投与群と比較し19:00投与群において増強し
ており、mTOR の日周リズムとの対応が見られた。これ
らの結果から、mTOR を標的とした薬物の効果には投与
時刻による差異が存在していることが示唆された。
171 滋養強壮ドリンク剤の抗疲労・回復効果の評価法
の構築
摂南大学 薬学部 薬学科
○甲斐田 大地、竹村 大生、金澤
大谷 美紀、小森 浩二
170 肝臓の初代培養細胞における発癌物質ジエチルニ
トロソアミン(DEN)の細胞毒性に及ぼす Clock
遺伝子の影響
【目的】時計遺伝子により様々な生体機能は約24時間周期
の日周リズムが存在している。生体リズムと発癌との関連
は広く知られており、時計遺伝子の転写抑制因子である
PERIOD は癌抑制因子として機能する一方で、転写促進
因子である CLOCK は、発癌との関連について詳細な検討
はされていない。本研究は、野生型(WT)及び Clock 遺
伝子変異マウス( Clk/Clk )の肝初代培養細胞を用いて、
発癌物質 DEN の細胞毒性に及ぼす CLOCK の影響につい
て検討を行った。
【方法】自由摂食摂水、明暗周期条件下で飼育した WT
および Clk/Clk マウスからコラゲナーゼ灌流法で肝細胞
を単離し、DEN を曝露した。DEN の細胞毒性はアポトー
シス、ネクローシスにより、遺伝子型による差は遺伝子発
現量、細胞生存率を測定することによって CLOCK の影響
を調べた。
【結果・考察】DEN 曝露24時間後に、WT ではアポトー
シスが誘導されたが、 Clk/Clk では認められず、損傷した
細胞が除去されにくくなっていることが示唆された。さら
に Clk/Clk でのアポトーシス低下は、DEN の代謝活性化
やアポトーシス関連因子の発現量低下が関与していること
が示唆された。また、DEN による細胞死は、 Clock 遺伝
子の ノ ッ ク ダ ウ ン に よ り 軽 減 さ れ た。本 研 究 の 結 果、
CLOCK は DEN の代謝活性化やアポトーシス誘導を介し
て DEN の細胞毒性に対する感受性に影響を及ぼしている
ことが明らかになった。
172 リスペリドン持効性注射剤に対する患者の主観的
評価
1
大泉病院 薬剤部、2帝京大学 薬学部、
大泉病院 精神科
○松田 康子1、齋藤 百枝美2、今坂 康志3
3
早紀、
【目的】2011年の滋養強壮剤市場は1217億円が見込まれ、
OTC 市場全体の4分の1程度を占め、セルフメディケー
ションにおける役割は非常に大きい。しかしながら、肉体
疲労やその回復は定義付けが難しく、滋養強壮剤の評価法
は只野らの報告のみである1)。本研究は只野らの抗疲労
試験を参考に評価法を構築し、数種の栄養ドリンクを評価
した結果を報告する。
【方法】動物は ddY 雌性マウス(体重35±3g)を用いた。
試験時間以外は餌と水を自由に摂取させた。本試験では、
ユンケル黄帝液 DCF(ユンケル群)はじめとする各ドリ
ンク剤及び生理食塩液(生食群)を6ml/kg、1日1回連
日で最大5日間、マウスに経口投与した。抗疲労効果を測
定するため、投与前および投与後60分後に5分間強制水泳
試験を行い、無動時間を測定した。その後、10分間の休息
後、オープンフィールド試験を実施し、行動量・移動距離
を ANY­maze V.T.S で1時間測定した。
【結果および考察】強制水泳試験の結果、生食群及びユン
ケル群の投与前平均無動時間はそれぞれ50秒、68秒となっ
た。また、投与後平均無動時間は、82秒、40秒となった。
生食群では無動時間の延長傾向が見られ、ユンケル群で
は、無動時間の短縮傾向が見られた。以上の結果より、ユ
ンケル黄色液 DCF による抗疲労効果が見られたものと推
察される。現在、オープンフィールド試験の結果を含め検
(1992)
討中である。1)只野武ら日薬理誌、100、423−431
【目的】2009年6月にリスペリドン持効性注射剤(RLAI)
が上市され、大泉病院では延約160名の統合失調症患者に
使用されている。今回、我々は RLAI 使用中患者の満足度
などの主観的評価を実施したので報告する。
【方法】対象は2009年6月∼2010年12月中に RLAI を投与
開始し、2011年10月まで継続投与中の60名の統合失調症患
者である。調査期間は2011年10月24日∼11月11日で、9項
目からなるアンケート用紙に記入してもらい、その場で回
収した。また、RLAI 投与前後の入院回数を調査した。
【結 果 お よ び 考 察】ア ン ケ ー ト 回 答 者 は58名(回 収 率
96.
7%)であった。年齢は50.
8±12.
8歳で、平均投与量は
40.
6±11.
1mg、平均投与期間は19.
0±5.
6月であった。患
者の RLAI の評価は「そう思う」と「ややそう思う」を合
わせると「症状改善」73%、「副作用の減少」57%、「再発
の減少」68%、「服薬のストレスの低下」62%、「生活の質
69%、「満足度」
74%であり、
の改善」64%、「継続の意思」
すべての項目で50%を超えていた。また、各項目間の相関
について、有意な強い相関が認められた項目は、「症状改
6779,
p<0.
01)「症 状 改 善」
:
善」
:「再 発 の 減 少」(r=0.
6048,
p<0.
01)であった。また、RLAI 投
「満足」(r=0.
2回、投与後0.
7回と有意に減少
与後の入院回数が投与前1.
した。以上から、患者の治療への満足度には「症状改善」
と共に「再発の減少」が大きく影響していることが考えら
れた。
−222−
173 エプレレノン新規開始症例における有効性・忍容
性に関する検討
三重ハートセンター
○梶間 勇樹、山本
薬剤部
珠美、高井
174 Maraviroc+Tenofovir/EmtricitabineによるHIV―1
感染症導入療法(症例報告)
1
慶應義塾大学病院 薬剤部、
慶應義塾大学医学部 感染制御センター、
3
慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室、
4
ねぎし内科診療所、
5
慶應義塾大学医学部 血液内科学教室
○小谷 宙1,2、長谷川 直樹2、池谷 修1,2、
河村 俊一1、加藤 真吾3、根岸 昌功4、
岩田 敏2、岡本 真一郎1,5
2
靖
【目的】EMPHASIS­HF 試験などにおいて、慢性心不全
患者へのエプレレノン投与の有効性が報告されている。当
院においても高血圧症を合併した心不全患者を中心に処方
されており、今回我々はエプレレノンが新規開始となった
患者を調査し、有用性・忍容性について検討したので報告
する。
【方法】当院においてエプレレノンが新規開始となり、6
ヶ月以上フォローできた32症例対象に、血清カリウム値、
eGFR、BNP 値の変化をレトロスペクティブに調査した。
また途中投与中止となった16症例については中止理由を調
査した。
17mEq/L から投与開
【結果】血清カリウム値は開始時4.
46mEq/L と上昇し、3ヶ月後、6ヶ月後の
始1ヶ月で4.
時点でも上昇傾向であった。eGFR 値は経時的な変動はな
く、BNP 値は開始時413PG/mL から投与開始1ヵ月で242
PG/mL と低下し、3ヶ月後、6ヶ月後の時点でも低下傾
向であった。途中投与中止となった症例のうち、副作用が
疑われた症例は8例であった。
【考察】エプレレノン投与に忍容性のある症例では、カリ
ウムの上昇を認めたものの BNP 値は低下し、慢性心不全
への有効性が確認された。しかし高カリウム血症にて投与
中止となった症例が2例あり、定期的な経過観察が重要で
あると考えられる。エプレレノンは長期投与されることが
考えられ、長期的な有用性・忍容性についての検討が必要
であると考えられる。
175 人工膝関節全置換術における関節周囲局所に注入
したオピオイドを含む多剤カクテル療法の有用性
医療法人財団 神戸海星病院 薬剤部
○山城 幸子、河井 順計、藤嶋 若奈、
梶田 祐三子、葭 ちとせ、濱田 晶子、
古出 直子、柏木 佑貴、真砂 聖、濱名
【目的】新規 HIV−1治療薬 Maraviroc(MVC)は、HIV−
1が宿主細胞に侵入する際の補受容体の1つである CCR
5を特異的に阻害し、HIV−1の増殖を抑える。CCR5指
向性の HIV−1は感染早期に優勢であり、MVC は導入療
法に適した薬剤と考えられる。しかし MVC と併用する薬
剤については臨床試験が少なく、検討が必要である。今回
我 々 は、未 治 療 の HIV−1感 染 患 者 に 対 し て、MVC+
Tenofovir/Emtricitabine(TVD)による導入療法を行い、
効果を認めたので報告する。
【症 例】30代 男 性、梅 毒 に よ り 当 院 耳 鼻 科 を 受 診 し、
HIV−1感染を診断された。ジェノタイプ検査にて HIV−
1の指向性が CCR5であることを確認した後に、MVC+
TVD による導入療法を開始した。治 療 開 始2週 間 後 の
CD4陽性 T 細胞数は626→590cells/μL、血中 HIV RNA
量 は5.
5×104→1.
1×103copies/mL で あ っ た。副 作 用 は
下痢、便秘、眠気、倦怠感を認めたがいずれも軽度であ
り、治療開始2週間以内に消失した。
【結果・考察】MVC+TVD による導入療法は、短期間の
評価であったため免疫学的な効果は判定しづらいものの、
ウイルス学的には効果を認めた。また、これまでに当院で
行ってきた TVD を含む導入療法と比較をしても有効性に
差を認めなかったが、嘔気などコンプライアンスの低下に
繋がる副作用は少なかった。以上により、MVC+TVD に
よる導入療法は有用であると考えられた。今後は症例数を
増やし、短期および長期の臨床効果について、更なる検討
を加える必要があると考える。
176 慢性疼痛患者におけるトラムセット配合錠Ⓡの服
薬継続に影響を与える因子の検討
済生会広島病院 薬剤室
○向田 浩典、池本 雅章、佐々木
則子
【目的】人工膝関節全置換術(以下 TKA)後の疼痛コン
トロールは、従来大腿神経ブロックを使用していたが、カ
テーテルの挿入位置によって大きく差が生じることが多い
等の理由により、現在、当院では TKA 術野へのオピオイ
ドを含む多剤カクテルの術中局所麻酔を検討している。今
回、大腿神経ブロックと多剤カクテルの術中局所麻酔にお
いて、術後疼痛に対する効果を比較した。
4
【方法】対象は当院で TKA を施行した患者40例(年齢72.
±7.
3才、男性8人、女性32人)
。うち20例に術中、閉創前
にカクテル剤(ロピバカイン200mg、アドレナリン0.
3mg、
デキサメタゾン3.
3mg、ケトプロフェン30mg、モルヒネ
塩酸塩3∼10mg)を局所注入した(オピオイド群)
。20例
は術後持続性大腿神経ブロック(ロピバカイン100∼500
mg)を施行し(大腿神経群)
、この2群間で比較検討を行っ
た。疼痛の評価は鎮痛剤の使用量及び Visual analog scale
(VAS)で行った。
【結果】術後当日の疼痛に対するジクロフェナクナトリウ
ム坐剤25mg やペンタゾシン注15mg の使用量、術後1日
目及び2日目の安静時の VAS は、オピオイド群において
有意に低かった。術後3日目以降の VAS に2群間の有意
差は認めなかった。また、両群で嘔気等の副作用に差は認
められなかった。
【考察】オピオイドを含む多剤カクテルの、術中関節周囲
の局所麻酔投与は、術後の持続性大腿神経ブロックに比べ
て、有意に鎮痛効果があり、患者の QOL 向上に繋がると
考える。
雄啓
【目的】慢性疼痛に対する NSAIDs の薬物療法では、効
果・安全性の面でも、慢性疼痛マネジメントは不可能と言
われている。オピオイド鎮痛薬は、副作用として吐き気、
便秘などから服薬継続困難となる症例が臨床上問題となる
ことがある。今回、トラムセット配合錠Ⓡの服薬継続に影
響を与える因子について検討を行った。
【方法】2011年9月から2012年2月までに、本剤が投与さ
れた患者計34例を対象とした。年齢、性別、配合錠の1日
投与量、制吐薬などの併用の有無、AST 値など医療介入
状況23項目について調査・集計した。トラムセット配合錠
Ⓡの服薬継続に影響を与える因子の抽出は多変量解析(数
量化2類)にて行った。
6±13.
9歳、AST 値37.
5±
【結 果】患 者 背 景 は、年 齢73.
71.
3IU/l、初回投与量1.
5±0.
74錠、維持投与量2.
9±1.
68
錠、他の説明変数のうちドンペリドン錠、酸化マグネシウ
ム錠の併用頻度が高かった。服薬継続に影響を与える最重
4792)
、以下、AST 値
要因子は筋弛緩薬(偏相関係数=0.
4796)
、の順に影響因子が抽出された。
(偏相関係数=0.
5266であった。
本解析の決定係数は0.
【考察】トラムセット配合錠Ⓡは、肝代謝酵素 CYP2D
6及び CYP3A4で代謝されるため内的変動により血中
濃度の推移から増強され、併用薬剤においても競合阻害薬
物などが服薬継続の有無に影響したものと推測された。こ
のことから臨床においても外的・内的変動要因を相互に考
え留意する必要があると考えられる。
−223−
ポスター演題
177 バンコマイシンによる腎障害の発現に併用薬が及
ぼす影響
大分大学 医学部付属病院 薬剤部
○川崎 佳奈子、鈴木 陽介、佐藤
伊東 弘樹
179 モルヒネ軟膏により疼痛および QOL の改善がで
きた進行肛門直腸癌の一症例
鹿児島県立北薩病院
鹿児島県立大島病院
3
鹿児島県立薩南病院
4
鹿児島県立大島病院
5
鹿児島県立大島病院
○赤塚 千文1、椨木
師玉 美幸2、白窪
小磯 孝幸2、若松
前田 亜希子4、保
2
奈良県立医科大学附属病院 薬剤部
○重田 純一、松井 俊典、大久保 佳代、
岡西 康治、
力夫、森田 幸子、
北 啓二、宇野 雅之
雄己、
【背 景・目 的】バ ン コ マ イ シ ン(以 下 VCM)は MRSA
感染症に最も汎用される抗生物質の一つであるが、副作用
として腎障害が生じやすく臨床上問題となる。本研究で
は、VCM の腎障害の発現頻度に及ぼす併用薬および患者
背景の影響を検討した。
【方 法】2010年1月∼2011年12月 の 期 間 中 に3日 間 以 上
VCM が投与された16歳以上の非透析患者のべ180症例を
対象とし、電子カルテを用いてレトロスペクティブに調査
を行った。調査項目は、VCM 投与量、投与日数、性別、
年齢、体重、VCM 投与前後における血清クレアチニン値
5
(Scr)
、各 種 併 用 薬 の 有 無 と 薬 剤 名 と し た。Scr が0.
mg/dL 以上又は50%以上上昇した場合腎障害ありとした。
多重ロジスティック解析により腎障害発現と各要因の関連
性について検討した。
9%であった。腎
【結果】対象症例の腎障害発現頻度は13.
障害の発現にアムホテリシン B(AMPH)
、クリンダマイ
シン(CLDM)およびカルバペネム系薬剤が影響すること
87
が 明 ら か と な っ た。各 オ ッ ズ 比(95%CI)は、33.
(5.
89−194.
62)、8.
28(1.
54−44.
60)、0.
30(0.
096−
0.
93)であった。
【考察】腎障害発現のリスクは、VCM 使用中に AMPH
を併用した場合約33倍、CLDM を併用した場合約8倍に
上昇することが示唆された。一方、カルバペネム系薬剤を
併用した場合そのリスクは約1/3に低下することが示唆
された。これらの薬剤を併用する際は、腎障害のリスクを
十分に考慮し、注意してモニタリングを行う必要がある。
1
178 バンコマイシン投与時の腎機能低下に影響する要
因の分析
薬局、
薬局、
薬局、
看護部、
外科
丈郎2、羽子田 真吾2、
碧2、大田 哲也2、
良知3、濱島 俊郎1、
清和4
【目的】バンコマイシン注射薬(VCM)の適正使用を推
進するために、VCM 投与による腎機能低下に影響を及ぼ
す要因について分析する。
【対象と方法】2011年7月1日から2011年12月31日までに
VCM を投与された155症例中7日以上継続投与した80症
例を対象とし後方視的調査を行った。VCM 投与開始時と
5mg/dL 以上
比較し投与終了時の血清クレアチニン値が0.
または50%以上上昇した場合に腎毒性発現とした。腎機能
低下と VCM 投与量および血中濃度、併用薬などとの関連
性について検討を行った。
【結果】
対象80症例中、腎毒性発現症例は13症例であった。
VCM を1日2g 超えて投与された6症例のうち腎毒性発
現症例は2症例であった。VCM 最低血中濃度が20μg/mL
を超えた31症例のうち腎毒性発現症例は10症例であった。
シクロスポリン併用7症例のうち4症例で腎毒性発現が認
められた。アムホテリシン B リポソーム製剤併用6症例
のうち2症例で腎毒性発現が認められた。
【考察】副作用に腎障害を有する薬剤の併用により、高頻
度で腎毒性の発現が認められた。また、腎毒性発現症例の
77%で最低血中濃度が20μg/mL を超えており、投与量調
整の難しさおよび TDM の重要性を再確認した。今回のよ
うに腎機能低下に影響する要因の分析は、薬物投与設計を
行う際の有用な情報となり、適正使用に繋がると考える。
180 2型糖尿病患者におけるシタグリプチンの有用性
検討
千葉徳洲会病院 薬剤部
○門脇 裕、小野崎 綾子、畠山
福井 宗憲
【はじめに】切除不能進行肛門直腸癌の患者の局部痛に対
してモルヒネ軟 膏 を 使 用 し た と こ ろ、疼 痛 緩 和 お よ び
QOL の改善ができた1症例を報告する。
【症例】50代女性 H21.
11に他院にて進行肛門直腸癌の
診断、手術加療を勧めるも本人が拒否。その後、同病院で
H22.
4∼5月放射線治療施行。H23.
8に緩和医療目的で県
立大島病院外科に紹介。オキシコドン錠処方されるも本人
拒薬し、オキシコドン散のみ頓服で使用。その後フェンタ
ニル貼付剤に変更となり、1mg/日さらに2mg/日と増
量になるが癌性疼痛憎悪と腫瘍出血のため入院となる。
【経過】入院後、フェンタニル貼付剤を3mg/日に増量
したが局部痛が強かったため、院内製剤である0.
1%モル
ヒネ軟膏(モルヒネ10倍散1g、精製水10mL、マクロゴー
ル軟膏100g)を1回約2.
5g をシリコンガーゼに塗布して
1日4回患部に貼付したところ、疼痛改善がみられ、それ
までできなかったあおむけ寝ができるようになった。その
後も本人の希望により貼付を継続した。
【考察】今回の症例は局部痛であったため痛みの改善をみ
ることができた。局部に痛み止めを使用している安心感が
QOL を高めたと考えられる。また、今回はモルヒネの除
去を容易にするために基剤をマクロゴール軟膏としたが、
今後さらに検討が必要である。
貴司、
【目的】DPP−4阻害薬シタグリプチンの上市から2年
以上が経ち、現在多くの患者に使用されている。今回当院
で本剤を内服した2型糖尿病患者の症例を集め、その有用
性を検討した。
【方法】2010年1月から2011年12月にシタグリプチンを服
用開始し、6ヶ月間投与した2型糖尿病患者115名を対象
と し た。患 者 の HbA1c(JDS 値)と 体 重(BMI 値)に
ついて6ヶ月間の後追い調査を行い、血糖コントロールへ
の効果を検討した。
15±1.
19%か ら6ヵ 月 後
【結 果】開 始 時 の HbA1c 値8.
85±0.
88%まで有意な改善が認められた(p<0.
01)
。
は6.
また、体重の有意な変化は見られなかった。また、SU 薬
使用患者群(A)と非 SU 薬・無投薬患者群(B)にて比
01±1.
02%か ら6.
77±0.
77%ま
較 し た と こ ろ、A 群 は8.
01)
、B 群も8.
27±1.
54%から7.
04±1.
08%まで
で(p<0.
01)
、何れも体重の有意な変
有意に改善しており(p<0.
化は認められなかった。
【考察】シタグリプチンは何れの群も体重を増加させず、
HbA1c の有意な低下が認められた。特に A 群も改善し
たことから、インスリン分泌能が低下していると推察され
る SU 薬2次無効例にも効果が期待出来る。よって血糖コ
ントロールが不十分な2型糖尿病患者に対して有効であ
り、体重増加のリスクが少ない薬剤として、有用性が示唆
された。
−224−
181 肝細胞癌患者でシタグリプチンによる肝障害を発
症し、同系統薬剤へ変更することにより改善した
1例
182 タクロリムスを用いた潰瘍性大腸炎治療に及ぼす
CYP3A5 遺伝子多型の影響
1
京都大学医学部附属病院 薬剤部、
京都大学医学部附属病院 消化器内科
○西岡 由貴1、増田 智先1、丸山 志穂子1、
矢野 育子1、松浦 稔2、仲瀬 裕志2、
千葉 勉2、松原 和夫1
2
霧島市立医師会医療センター 薬剤部
○岸本 真、長ヶ原 琢磨、荻尾 夕起子、
西本 真理、砂田 和幸、吉村 真、
佐久間 弘匡
【目的】肝障害患者に対しては禁忌となっていない DPP−
4I が原因と推測された肝障害発生事例に対して,同系統
の薬剤へ変更することにより血糖コントロールが維持で
き,肝障害の増悪も回避できた症例を経験したので報告す
る。
50代男性,C 型肝炎,肝細胞癌の患者。FBS(mg/
【症例】
HbA1c(NGSP)9.
8に対して,シタグリプチン
dL)421,
50mg/day 単剤で治療を開始した。服用62日目で FBS109,
0とコントロール良好であった。しかし,AST/
HbA1c6.
8が1.
3へ上昇した。
ALT132/186が172/238へ,T­Bil0.
薬剤性肝障害が推測され,シダグリプチンが中止となっ
た。その後,肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法を実施
した。治療後に血糖コントロールの維持目的にて,アログ
リ プ チ ン25mg/day 開 始 と な る。服 用8日 目 に は ASL/
T­Bil0.
8であり,肝機能の悪化は無く,自
ALT92/117,
宅退院となった。
【考察】シダグリプチンによる肝障害が疑われた症例に対
して,アログリプチンへ変更することで,肝動脈化学塞栓
療法後においても肝障害の悪化は見られなかった。
【結論】肝障害患者に対して禁忌でない DPP−4I におい
ても,肝障害惹起の可能性が認められた。その際には他の
DPP−4I に変更することで,肝障害の増悪を認めること
なく,血糖コントロールを維持できる可能性が示唆され
た。
【目的】潰瘍性大腸炎(UC)の難治性患者数の増加に伴
いタクロリムスの使用が拡大されているが、臨床効果の個
人差が問題となっている。タクロリムス体内動態の個人差
は、大腸にも発現する CYP3A5の多型性との相関が知
られている。そこで、UC 治療において効果指標として用
いられる Clinical Activity Index(CAI)と CYP3A5 遺
伝子多型の関係について解析を行った。
【方法】平成17年10月以降にタクロリムスの服用を開始し
た UC 患者のうち、CAI データと CYP3A5 遺伝子多型
が調査可能であった12名を対象とした。各症例のタクロリ
ムス服用開始時(day0)から14日 目(day14)
、day0か
、day14から day30までの CAI 変化率を
ら30日目(day30)
算出した。本研究は京都大学大学院医学研究科医の倫理委
員会による承認を得て実施した(G−408)
。
【結果】day0から day30のうち、 CYP3A5 機能欠損型
(*3/*3)患者の CAI は day14まで低下し以後ほぼ一定
であったが、 CYP3A5 機能型 (*1/*3および*1/*1)
患者の CAI は、day14から day30にかけて大きく減少した
(P=0.
017)
。ま た、day14に お け る CAI は CYP3A5 *
3/*3全例(n=6)が5以下であったのに対し、 CYP3
A5 *1/*3全例(n=6)が6以上を示した(P=0.
0016)
。
すなわち、大腸 CYP3A5の活性がタクロリムスの患部
での薬効を制御することが推察された。
【考察】UC 症例に対するタクロリムス治療において、
CYP3A5 遺伝子多型情報は、治療継続の可否判断のた
めの一指標になると考えられた。
183 腎部分切除後の尿中 L­FABP および酸化ストレ
スマーカーの変動に関する調査
184 ビスホスホネート系薬とミネラルウォーターとの
相互作用(4)
―ラットにおけるリセドロネート経口投与時の吸
収への検討―
1
熊本大学 薬学部 薬学科、
熊本大学 医学部附属病院
○宮地 亜由美1、西 一彦2、門脇
成田 勇樹1、平田 純生1
2
大介1、
1
東京理学大学 薬学部、
国立病院機構東京医療センター薬剤科
○伊東 晃尚1、赤木 祐貴2、下村 斉1、
青山 隆夫1
2
【目的】虚血は急性腎傷害(AKI)の一因であり、虚血後
の再灌流も組織障害に関与することが知られている。この
障害にはフリーラジカルの関与が大きく、臨床的虚血再灌
流モデルにおいて生体内の酸化ストレスマーカーが上昇す
ることが報告されている。また、L 型脂肪酸結合蛋白(L­
FABP)は腎臓の微小循環障害により生じた過酸化脂質と
結合して尿中へ排泄する働きを有し、虚血再灌流後に尿中
排泄の増加が報告されている。虚血再灌流を伴う処置の一
つに腎部分切除術(PN)があるが、PN 後の L­FABP や
酸化ストレスマーカーの変動を評価した報告はないため、
本研究では PN 後の腎機能と各種これらのマーカーの変動
を経時的に評価することを目的とした。
【方法】
PN 施行患者12例について、手術前および術後1、
3、7日 目 に 腎 機 能、尿 中 L­FABP、蛋 白 質 過 酸 化 物
(AOPP)
、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)
、
8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノジン(8−OHdG)
を測定した。
【結果】血清クレアチニンは術後1日目に一過性の上昇を
示した。酸化ストレスマーカーは、1日目に AOPP の上
昇傾向と TBARS、8−OHdG の 有 意 な 上 昇 が 認 め ら れ
た。また、L­FABP は1日目に有意に上昇したが、7日
目には術前のレベルにまで回復した。
【結論】PN 後には腎機能が一時的に低下しており、この
とき L­FABP および酸化ストレスマーカーの尿中レベル
が増加することが示された。今後は、この障害と長期予後
との関連を検討すべきと考える。
【目的】骨粗鬆症治療薬の経口ビスホスホネート系薬(BP
薬)は、Ca や Mg などの多価金属イオンを多く含むミネ
ラルウォーターで服用した場合にキレート形成により吸収
率が低下することが報告されている。我々は、以前から
BP 薬の吸収に対するミネラルウォーターの硬度や金属イ
オンの影響を検討している。今回は第3世代 BP 薬のリセ
ドロネート(RD)について尿中排泄率から評価した。
【方法】各被験飲料水(精製水、水道水、海の深層水、
evianⓇ、ContrexⓇ、CaCl2水 溶 液、MgCl2水 溶 液)に RD
を添加・混和した液を、絶食下の Wistar 系雄性ラット
(9
35mg/kg)
、膀 胱 カ
週 齢)に 経 口 投 与 し(RD と し て0.
ニューレより24h まで経時的に採尿した。尿中の RD は
OASISⓇHLB カートリッジで抽出した後に HPLC­UV 法
により定量して排泄率を求めた。
【結果・考察】24h 累積尿中排泄率は、精製水(平均排泄
58±0.
08%、n=4)に比べてそれ以外の飲料水で低
率0.
下傾向を示し、水道水を除いて有意差が見られた。水道水
47±0.
04%)と比較した場合では、硬度304mg/L(Ca
(0.
32±0.
02%)と1468mg/L(Ca
濃度80mg/L)の evianⓇ(0.
22±0.
05%)で 有 意 な 減
濃 度468mg/L)の ContrexⓇ(0.
少が認められ、吸収率の低下が示唆された。同じ硬度の
CaCl2水 溶 液(Ca 濃 度331mg/L)と MgCl2水 溶 液(Mg
濃度200mg/L)の排泄率では、精製水に比べて各々54%
と12%減少したことから、飲料水間の差は Ca の影響によ
るものと考えられる。
−225−
ポスター演題
185 インスリンアナログ製剤にて治療中に血糖不安定
性を来たした緩徐進行1型糖尿病の一例
186 急性心不全患者におけるトルバプタンの投与期間
に影響を与える因子の検討
1
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 薬剤部、
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 診療部 内
分泌代謝内科
○宮内 綾子1、平出 耕石1、坂井 聡美2、
今関 孝子1、加藤 武司1、高見 和久2
済生会広島病院薬剤室
○池本 雅章、岡村 和彦、向田
藤本 綾、佐々木 雄啓
2
【背景】インスリン非使用者がインスリン抗体を生じて血
糖が不安定となる病態はインスリン自己免疫症候群(Insulin Autoimmune Syndrome、以下 IAS)と呼ばれる。近
年、インスリン使用者に IAS に類似した症状を来たす症
例が報告されている。
【症例】79歳、女性。
【現病歴】1987年に2型糖尿病と診断。以降主に経口血糖
降下薬で加療を受けてきた。2003年、高血糖、インスリン
分泌能の低下、抗 GAD 抗体陽性などを認め緩徐進行1型
糖尿病と診断。以後ヒトインスリン製剤による治療を開
始、2008年にはインスリンアナログ製剤(アスパルト)に
変更。2009年以降、低血糖、高血糖が繰り返し出現し、イ
ンスリン抗体(総結合率)75%と高値。リスプロ+グラル
ギンに変更し、しばらく比較的血糖は安定していた。2011
年12月、重症低血糖にて緊急入院。やはり不安定な血糖コ
ントロールのため、再度インスリンをグルリジン+デテミ
ルに変更し、さらにシダグリプチンの投与にて血糖不安定
性は軽減。今回入院中に施行した Scatchard 解析において
high affinity site で親和性が低く、結合能が高い IAS の抗
体と類似した抗体であることが判明。
【結語】本症例の血糖不安定性の原因は、外来インスリン
とりわけアナログ製剤に対する IAS 類似抗体の産生によ
るものと考えられた。
187 DPP−4阻害薬シタグリプチン服用患者におけ
る HbA1c 値の推移と治療成績に影響を与える
重要因子の検討
浩典、
【目的】トルバプタンは、既存の利尿剤のみでは効果不十
分な心不全に有効な治療剤である。しかし、その急激な利
尿により脱水症状が現れることがあることから薬剤管理指
導を通した情報提供が重要である。今回、トルバプタンの
投与期間に影響を与える因子について検討したので報告す
る。
【方法】2009年4月から2012年2月までに急性心不全で入
院し、トルバプタンを初期投与された患者計34名を対象と
した。平均投与量、血清電解質の推移、腎機能、併用薬、
NHAH 分類、ADL について調査した。脱水症状と ADL
の関係は χ2検定を用い、トルバプタンの投与期間に影響
する重要因子の抽出は多変量解析(数量化 I 類)にて行っ
た。
【結果】患者背景は、平均年齢84.
1±7.
3歳、1日投与量
4.
5±2.
3mg。本 剤 投 与 に お け る 血 清 Na 上 昇 は3名 で
あった。ADL が低下しているほど脱水症状が出現する傾
向にあった(p=0.
076)
、また、トルバプタンの投与期間
に影響する重要因子は、ACE 阻害剤又は、ARB の併用、
入院時血清 Cr 値の順に抽出された。本解析の決定係数は
0.
63160であった。
【考察】ADL が低下している患者では自らの意思で飲水
行動が困難のため Na 上昇につながったと思われる。多変
量解析の結果、慢性心不全ガイドラインと同様に、ACE
阻害剤叉は、ARB の併用の重要性が示唆された。また、
腎機能が低下している症例ではトルバプタンが長期投与に
なる傾向がみられ、初期治療薬選択の際には臨床において
も注意が必要と考える。
188 健康診断受診者における悪心・嘔吐に関連する遺
伝子多型と臨床検査値との関連解析
1
名城大学 薬学部 病態解析学1、
名古屋大学 医学部附属病院 薬剤部、
3
名古屋大学 医学部 尿毒症病態代謝学、
4
名古屋大学 医学部附属病院 呼吸器内科
○山下 加織1、室崎 千尋1、小谷 悠1,2、
下山 泰彦3、丹羽 利充3、長谷川 好規4、
宮崎 雅之2、石川 和宏2、山田 清文2、
毛利 彰宏1、野田 幸裕1
1
2
済生会広島病院 薬剤室、
2
広島国際大学 薬学部
○谷後 友絵1,2、藤本 綾1、池本 雅章1、
佐々木 雄啓1、木村 幸司2、松山 彰子2、
斉藤 茜2、佐和 章弘2、三宅 勝志2
【目的】新たな糖尿病治療薬の登場に伴い、さまざまな併
用療法が可能になった。その中で DPP−4阻害薬シタグ
リプチンの併用療法が治療成績に及ぼす因子については不
明な点が多い。今回、シタグリプチン使用患者の HbA1c
値に影響を与える重要因子の検討を行った。
【方法】2011年5月から2011年12月までに85日以上投与さ
れた患者計180名を対象とした。年齢、BMI などの項目別
0%以上低下群と1.
0%未満低
に群間比較し、HbA1c 値1.
下・増加群を目的変数とし糖尿病薬・ARB·EPA 製剤の併
用薬剤の有無、服薬期間、中性脂肪値など医療介入状況18
項目について調査・集計した。HbA1c 値に影響を与える
重要因子の抽出は多変量解析(数量化 II 類)にて行った。
1±11.
4歳、
【結果】
調査対象患者の主な背景は平均年齢66.
4±3.
6%、総 コ レ ス テ ロ−ル 値190.
4±29.
3mg/
BMI24.
2±92.
1mg/dL であった。HbA1c 値に
dL、中性脂肪142.
影響する最重要因子は他の糖尿病薬の併用であり以下、
EPA 製剤の併用、年齢、中性脂肪値の順に強く影響を与
える重要な因子 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た(判 別 的 中 率
70.
15%)
。
【考察】
EPA 製剤や中性脂肪値の両群に空腹血糖値、HbA
1c 値に有意な差が認められたことはインクレチンの分
泌、インスリン抵抗性が関係あることが示唆される。しか
3%あることから EPA
し、シタグリプチンの無効例が28.
製剤併用の有無や中性脂肪値が最重要因子であることから
も臨床においても留意する必要があると考えられる。
【目的】がん化学療法に伴う悪心・嘔吐(chemotherapy­
induced nausea and vomiting;CINV)の発現には個人差が
認められ、その対策が重要視されている。本研究では、
CINV に対する個別化医療への応用を目的として、その発
現に関与すると考えられる遺伝子多型と臨床検査値との関
連性について解析した。
【方法】名古屋大学医学部附属病院に健康診断として受診
した日本人199名を対象とし、セロトニン(5−HT)3A、
3B、3C 受容体、ニューロキニ ン(NK)−1受 容 体、
ドパミン(DA)D2受容体およびカテコール−O−メチ
ルトランスフェラーゼ(COMT)の遺伝子多型における
頻度解析と臨床検査値との関連性について解析した。
【結果】各遺伝子多型の遺伝子型頻度は、HapMap デー
タベースあるいは先行研究で報告されている頻度と類似し
ており、ハーディ・ワインベルグ平衡からの逸脱は認めら
れなかった。各種遺伝子多型と臨床検査値との関連性につ
いては、HTR3A(rs1062613)において、変異アレル(T)
を有する患者では、野生型(CC)患者と比較してコリン
エステラーゼ値が有意に低かった。
【考察】本研究より CINV の発現に関与すると考えられ
る遺伝子多型の日本人における頻度が判明し、臨床検査値
との関連性も見出された。血液検査はがん化学療法施行患
者全員が定期的に行うため、簡便な指標となり得る可能性
があり、本結果は日本人の遺伝子情報を用いた個別化医療
への応用につながることが期待される。
−226−
189 スピリーバⓇのディバイス変更に伴う患者の吸入
状況調査
190 グラム陰性菌に対するピペラシリン・タゾバクタ
ム配合剤の%T>MIC と有効性に関する研究
1
信州大学医学部附属病院 薬剤部
○塩澤 彩香、百瀬 泰行、作山 佳奈子、
土屋 広行、山折 大、大森 栄
北里大学 薬学部 薬学科、
北里大学東病院 薬剤部
○大隈 良太1、浜田 幸宏2、小原
平山 武司1,2、黒山 政一1,2
2
【目的】
長時間作用型抗コリン薬であるチオトロピウムは、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の第一選択薬として使用が推
奨されている。2010年にスピリーバⓇの新しいディバイス
(スピリーバⓇレスピマット)が発売された。そこで、ス
ピリーバⓇのディバイス変更による患者の吸入手技や副作
用への影響及び利便性や使用感について調査した。
【方法】信州大学医学部附属病院(以下当院)の外来並び
に入院中患者でスピリーバⓇ吸入用カプセルからレスピ
カート
マットへ変更した15名を対象とした。対象患者に1.
チェック表を用いた吸入手
リッジ挿入に必要な力の測定2.
副作用の確認や使用感などのアンケート調査を
技の確認3.
行った。
6±7.
1歳であった。
【結果・考察】患者の平均年齢は71.
1kg 以上が必要であるが、患者の
カートリッジ挿入には6.
6kg(座位)
、23.
3kg(立位)と挿入には問題な
それは11.
いことが判った。1吸入にかかる時間はレスピマットで
20.
6秒であり、以前当院で調査した吸入用カプセルと比較
し大幅に短縮されることが明らかとなった。また、正しく
9回であり、定期的な手
吸入できるまでの回数は平均で1.
技の確認の必要性も示唆された。アンケートでは「操作が
簡単になった」と回答した患者が80%、「楽に吸入できる
ようになった」と回答した患者が75%であった。副作用は
吸入用カプセルで4名であったのに対し、レスピマットで
は9名に発現しており、効果や副作用発現等を含めた服薬
指導が必要と考えられた。
191 統合失調症患者における抗精神病薬による体重変
化および代謝異常に関する研究
【背景】ペニシリン系抗菌薬の PK­PD パラメータは%T
>MIC であり、動物実験にて遊離型薬物の%T>MIC(%fT
>MIC)が30%以上で増殖抑制作用,50%以上で最大殺菌
作用が得られることが報告されている。今回、ピペラシリ
ン・タゾバクタム配合(以下、TAZ/PIPC)投与患者 に
おける%fT>MIC と有効性の関係について検討を行ったの
で報告する。
【対象・方法】北里大学東病院において2009年1月から
2011年11月までの TAZ/PIPC 投与患者から検出されたグ
ラム陰性菌を対象として解析を行った。対象患者の TAZ/
PIPC 血中濃度推移から以前我々が算出した PPK を用い
て%fT>MIC を求め、ロジスティック回帰分析により有効
率5割および8割における%fT>MIC をそれぞれ算出し
た。有効性の評価は細菌学的効果(菌の消失)に基づき判
定した。なお、本研究は北里大学医学部倫理委員会の承認
のもと実施した。
【結果】対象患者17名においてグラム陰性菌28株が検出さ
1±18.
6%
(平均値±標準偏差)
であっ
れ、%fT>MIC は67.
た。ロジスティック回帰分析の結果、5割および8割の有
6%および66.
7%
効率が得られる%fT>MIC はそれぞれ53.
013)
。
と算出された(p 値=0.
7%以上を目標に
【考察】TAZ/PIPC 投与は%fT>MIC66.
することで、十分な有効性が期待できることが示唆され
た。また、%fT>MIC の変動により有効率は大きく左右さ
れ、%fT>MIC を考慮した投与法を処方介入時から提案す
ることで、より高い有効率を得られる可能性が示唆され
た。
192 ABCG2/BCRP による腸管への尿酸排泄の低
下は腎外排泄低下型高尿酸血症の原因となる
1
1
2
2
北里大学 薬学部 薬学科、
北里大学東病院 薬剤部、
3
北里大学東病院 精神神経科
○岩瀬 華奈子1、飛田 夕紀1,2、平山 武司1,2、
宮地 伸吾3、宮岡 等3、黒山 政一1,2
【目的】統合失調症治療に用いられる新規抗精神病薬の副
作用として、高血糖、代謝異常が認められている。そこ
で、新規抗精神病薬適正使用の推進寄与を目的に各種薬剤
による体重変化、代謝異常について検討した。
【方法】北里大学東病院にて2006年1月1日から2011年12
月20日までに、新規抗精神病薬(オランザピン:OLZ、リ
スペリドン:RIS、アリピプラゾール:APZ)が12週間以
上投与された入院患者74名を対象とした。
調査項目は、年齢、身長、体重、対象薬剤名、対象薬剤の
投与量、服用期間等とし、服用期間中における有意な体重
増加(7%以上)症例の割合、投与開始から4週間ごとの
体重推移について比較検討した。
【結果】
服用期間中における有意な体重増加症例の割合は、
OLZ·RIS·APZ 群でそれぞれ55・42・19%であっ た。OLZ
群において服用開始4週・8週・12週後、それ以降での有
意な体重増加症例の割合はそれぞれ5・20・35・53%で
あった。OLZ 群では、服用4週から8週と8週から12週
05)
。
の平均体重値において有意差が認められた(p<0.
【考察】有意な体重増加症例の割合は OLZ>RIS>APZ で
あり、特に OLZ 群では服用開始後12週間までに服用患者
の過半数で認められることが明らかとなった。また、いず
れの薬剤でも服用初期に体重増加が認められた症例は、そ
の後も経時的に増加傾向が認められ、投与開始とともに生
活習慣指導の必要性が示唆された。
美江2、
東京大学 医学部附属病院 薬剤部、
東京薬科大学 病態生理学、
3
防衛医大 分子生体制御学
○高田 龍平1、市田 公美2、松尾 洋孝3、
中山 昌喜3、村上 啓造1、山梨 義英1、
春日 裕志1、四ノ宮 成祥3、鈴木 洋史1
【背景・目的】ABCG2/BCRP は抗がん剤の多剤耐性に
関わる蛋白質として見出されたトランスポーターであり、
広範な組織においてさまざまな内因性・外因性物質の排出
を担うことが知られている。本研究においては、血清尿酸
値および痛風発症リスクの個人差をもたらす ABCG2の
生理的尿酸排泄機構を明らかにすることを目的として、動
物実験および高尿酸血症患者の遺伝子解析を行った。
【方法・結果】尿酸分解酵素ウリカーゼ阻害条件下での詳
細な in vivo 実験の結果、Abcg2欠損マウスは野生型マ
ウスと比べ高い血清尿酸値を示すが、尿中への尿酸排泄は
低下せずにむしろ亢進している一方で、腸管からの尿酸排
泄は顕著に低下していることが明らかとなった。また、臨
床検体を用いた解析の結果、機能低下型遺伝子多型の組み
合わせから予測される ABCG2活性低下の程度に伴い、
尿中尿酸排泄はマウスと同様に上昇していること、“尿酸
産生過剰型”
高尿酸血症のリスクが高まることが示された。
【考察】ABCG2は尿酸の腸管排泄を担い、その活性低下
は尿中尿酸排泄の低下しない旧分類でいう“尿酸産生過剰
型”高尿酸血症をもたらすことが示された。この成果は新
たな分類としての“腎外排泄低下型”高尿酸血症を提案す
るものであり、新たな視点からの予防法・治療薬の開発に
繋がることが期待される。
【参考文献】 Science Translational Medicine ,1,
5ra11
(2009)
., Nature Communications ,3,
764(2012)
.
−227−
ポスター演題
193 神 奈 川 県 下4施 設 に お け る VCM 低 感 受 性
MRSA の検出状況と治療の現状
194 小児生体肝移植後におけるサイトメガロウイルス
感染の危険因子の解析
1
1
2
2
日本医科大学武蔵小杉病院 薬剤部、
横浜市立市民病院 薬剤部、
3
横浜市立脳血管医療センター 薬剤科、
4
厚木市立病院 薬剤管理指導室
○吉田 奈央1、野口 周作1、五十嵐 文2、
佐藤 歩2、原 弘士3、臼田 誠3、永井 徹3、
牧野 淳子4、岩崎 弥生4、五十嵐 俊2
自治医科大学 医学部 臨床薬理学、
自治医科大学 医学部 移植外科学、
3
自治医科大学附属病院 薬剤部
○牛島 健太郎1、梅原 実2、坂本 公一3、
大友 慎也3、脇屋 太一2、眞田 幸弘2、
井原 欣幸2、浦橋 泰然2、安藤 仁1、
水田 耕一2、藤村 昭夫1
【目的】VCM はグリコペプチド系抗菌薬であり、主とし
て MRSA 感染症治療目的に使用されている。近年 VCM
に対して感受性の低い MRSA による感染症がその治療の
困難さから問題になっている。今回我々は、VCM に対し
て低感受性(MIC≧2)の MRSA の検出状況、薬物治療
の現状について調査し、今後の治療計画の検討に役立てる
こととした。
【方法】2011年1月から12月に神奈川県下4施設に入院し
た患者で VCM に感受性 の 低 い(MIC≧2)MRSA が 検
出された症例を retrospective に検討した。
【結果・考察】調査4施設における MRSA の検出患者数
は533例 で、そ の う ち236例 で VCM の MIC≧2の MRSA
が検出された。236例中、保菌は185例で、実際に治療が行
われたのは51例だった。選択された治療薬(抗 MRSA 薬)
の 内 訳 は、VCM24例、TEIC26例、ABK8例、LZD12例
だった(重複含む)
。初期治療に VCM が選択され、その
後変更された症 例 が6例 で、2例 は TEIC、4例 は LZD
に変更された。抗 MRSA 薬の投与終了後1ヶ月以内の死
亡は12例だった。低感受性株の検出数、選択された治療内
容は施設ごとに差が認められた。今後、抗 MRSA 薬ごと
の治療効果について評価し、低感受性株のより最適な治療
方法について検討していきたい。
【背景と目的】自治医科大学移植外科(当科)では、2001
年に1例目の肝移植を実施して以降、2009年までドナー
(D)の術前サイトメガロウイルス(CMV)抗体が陰性
のレシピエント(R)に CMV 感染が出現しなかった。し
か し2010年、D の 術 前 CMV 抗 体 が 陰 性 の R で 初 め て
CMV 感染が出現した。この R はオルニチントランスカル
バミラーゼ欠損症(OTCD)であり、術後に拒絶反応を認
めステロイドパルスを行った。一般に、免疫抑制の強化は
ウイルス感染のリスクを高める。本研究では、OTCD が
移植術後の CMV 感染の危険因子であるか否か検討した。
【方法と結果】2001年5月から2010年6月までに、胆道閉
鎖症または OTCD に対し当科にて生体肝移植を行った144
例の小児を対象とした。CMV 感染は C7−HRP 法にて陽
性 細 胞 数1以 上 と し た。レ シ ピ エ ン ト の 背 景、術 前 の
CMV 抗体、免疫抑制療法、術後合併症などを後向きに解
析し、CMV 感染の危険因子を検討した。多変量解析の結
果、OTCD、術前の CMV 抗体が D 陽性/R 陰性およびス
テロイドパルスが肝移植後における CMV 感染の危険因子
であった。
【考察】OTCD ではアミノ酸代謝異常を来たし、血中ア
ンモニア濃度の上昇を抑制するために術前のタンパク質摂
取量が制限される。OTCD ではこのような栄養制限を行
うため、免疫機能がより低下しているためと考えられる。
195 ワルファリンの薬物相互作用に関する調査∼ワル
ファリンとアミオダロン併用による抗凝固作用増
強∼
196 札幌厚生病院におけるリラグルチドとエキセナチ
ドの有効性及び安全性の比較検討
札幌厚生病院 薬剤部
○藤井 達也、姫氏原 亮、佐藤 茂、
小松 弘幸、廣瀬 哲也、桂川 みき、
小林 龍、小原 秀治、妻木 良二
1
姫路獨協大学 薬学部、
2
神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部
○宮崎 真弓1,2、北田 徳昭2、高瀬 友貴2、
奥貞 智2、山本 健児2、高良 恒史1、
奥村 勝彦1、橋田 亨2
【目的】ワルファリンは食事や併用薬剤の影響により、作
用が増強または減弱することが知られている。ワルファリ
ンと相互作用を有する薬剤には様々なものがあるが、既報
告では海外症例も多く、日本人におけるエビデンスが十分
であるとは言いがたい。そこで、神戸市立医療センター中
央市民病院(以下、当院)において、ワルファリン使用時
の抗凝固効果の変動と併用薬剤による影響をレトロスペク
ティブに調査、解析し、ワルファリンの適正使用に影響を
及ぼす因子について検討したため報告する。
【方法】2011年7月1日から2012年2月29日までの間に、
当院においてワルファリンが処方された患者687名を対象
として、ワルファリンの使用状況と出血イベントの発生状
況 を レ ト ロ ス ペ ク テ ィ ブ に 調 査 し た。ま た、期 間 内 の
PT­INR 最大値を調べ、併用薬剤と PT­INR の関係を評
価した。
【結果・考察】ワルファリンは、心臓血管外科、循環器内
科から多く処方されており、PT­INR は使用者全体の約
3割 が 有 効 域 を 越 え て い た。ま た、PT­INR の 上 昇 に
伴って、ビタミン K の使用割合および出血イベントの発
現頻度が増加していた。PT­INR が上昇した例の多くは
アミオダロンを併用しており、ワルファリンの代謝が阻害
されたことで抗凝固作用が増強した可能性が考えられた。
本調査は今後のワルファリンの適正使用において有用な知
見となると考えられる。
【目的】近年、GLP−1受容体作動薬であるリラグルチド
とエキセナチドの使用が進んでいる。しかし、日本で承認
されている用量において直接比較検討した報告はない。そ
こで、札幌厚生病院におけるリラグルチドとエキセナチド
の有効性及び安全性を比較検討した。
【方法】2010年9月1日∼2011年10月31日までにリラグル
チドまたは、エキセナチドを投与された患者105名を対象
とし、リラグルチド群とエキセナチド群に分類した。さら
にリラグルチドまたはエキセナチドを3カ月以上継続投与
した患者を SU 剤を併用した群と SU 剤+BG 系薬剤を併
用した群に分類し、性別、年齢、開始時の HbA1c 及び
投与開始時から3ヵ月後までの HbA1c を比較した。ま
た、副作用の発現状況について調査した。
【結果】両群の患者背景に差はなく、SU 剤を併用したリ
5%か ら3カ 月 後
ラ グ ル チ ド 群 の HbA1c は 開 始 時8.
7.
1%、エ キ セ ナ チ ド 群 は、開 始 時8.
8%か ら3カ 月 後
8.
1%と低下した。SU 剤+BG 系薬 剤 を 併 用 し た 両 群 の
HbA1c は、いずれも低下した。また、副作用の発現率に
有意な差は見られなかったが、症状別として、吐気、胃も
たれの発現率についてはいずれもエキセナチド群がリラグ
ルチド群より有意に高かった。
【考察】HbA1c は併用薬剤により変化量に違いがみられ
たが、両薬剤ともに有効性が確認された。しかし、安全性
についてはリラグルチド群の方が吐気、胃もたれの発現率
が低く、有用な薬剤であると考えられた。
−228−
197 エキセナチド単剤投与で低血糖が認められた1症例
1
東京医科大学茨城医療センター 薬剤部、
東京医科大学 第五内科
○塚本 那緒子1、山本 佐栄子1、長田 薫1、
松本 晃一1、高橋 利幸1、桂 善也2
198 日本人および白人健康成人男子におけるモキシフ
ロキサシンの QT/QTc 間隔への影響の検討
2
1
シーピーシー治験病院、
東邦大学 医学部 薬理学講座
○長 茂1、山田 陽一郎1、深瀬
杉山 篤2
2
【目的】当施設において、エキセナチド単剤投与で低血糖
が認められた症例を経験したので報告する。
【症例】
女性,61歳 ,2003年糖尿病指摘されグリニド薬,
メトホルミン,α­GI にて血糖コントロールしていた糖尿
病患者。
5kg,HbA1c 値9.
4%。医師の勧
【経過】入院時、体重64.
めでエキセナチド5μg 2回/日,メトホルミン2錠 ,
5mg 服用,指示カロリー1440kcal となっ
グリメピリド0.
3kg,HbA1c 値
た。エキセナチド開始2ヶ月 後,体 重62.
6.
7%に改善。開始3ヶ月後,低血糖の訴え有り,間食の
3kg,HbA1c 値6.
1%,グ リ メ ピ リ ド
回 数 増 加,体 重63.
0.
25mg に 減 量。開 始5ヶ 月 後,HbA1c 値5.
8%,夕 食
後に低血糖が頻回ありグリメピリド中止。開始6ヶ月後,
低 血 糖 が 時 々 あ り メ ト ホ ル ミ ン 中 止。開 始7ヶ 月 後、
7%,夕食後の血糖値60mg/dL 未満が3回認
HbA1c 値6.
められた。エキセナチドを朝1回のみの投与とした。
【結果】本症例ではエキセナチド投与中では高脂肪食の摂
取は胸焼けがして気分が悪くなるため避けていた。1回の
食事量は減ったがストレスがあり間食が多くなった。エキ
セナチド単剤投与において、低血糖が認められた。
【考察】エキセナチドにおいてはヒト GLP−1とは異な
る構造を持ち希ではあるが低血糖を引き起こす症例もある
ため投与開始後も慎重に経過を観察する必要がある。
199 ダルベポエチン α からエポエチンベータペゴルへ
の変更における皮下注射時の疼痛比較
1
医療法人 豊田会 刈谷豊田総合病院 薬剤科、
医療法人 豊田会 刈谷豊田総合病院 腎・膠原
病内科
○若本 麻美1、近藤 洋一1、宮原 留美1、
滝本 典夫1、杉浦 充1、足立 守1、
西尾 尊江2、小山 勝志2
【目的】2010年11月,
「非抗不整脈薬における QT/QTc 間
隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的評
価について」
(平成21年10月23日薬食審査発1023第1号,
いわゆる ICH E14ガイドライン)が施行され,非抗不整
脈薬においては原則として臨床開発の早期に心室の再分極
への影響を評価することを目的とした「QT/QTc 評価試
験(thorough QT/QTc study(tQT 試験)
」の実施が求め
られている.tQT 試験においてはその検出感度を保証す
るため陽性対照群を設けることが推奨されているが,国内
では陽性対照を用いた臨床試験は一般的ではなく,また,
海外で陽性対照として汎用されているモキシフロキサシン
(MFLX)の日本人における QT/QTc 間隔延長作用につ
いてもこれまであまり検討されていない.そこで演者らは
MFLX の薬物動態および QT/QTc 間隔延長作用を日本人
と白人とで比較し,日本人を対象とする tQT 試験におい
て,MFLXを使用することの妥当性を検討することとした.
【方法】日本人30名,白人30名の健康男性志願者に MFLX
及びプラセボを二重盲検下にクロスオーバー法により投与
し,MFLX の薬物動態,QT/QTc 延長作用について,人
種差を検証した.
【結果・考察】MFLX の薬物動態においては日本人と白
人との間に有意な差は認められなかった.QT/QTc 延長
作用については現在解析中であり,本発表では QT/QTc
延長作用の人種差について報告,MFLX の陽性対象とし
ての妥当性の考察を行う.
200 カルボプラチン点滴静注液「NK」Ⓡとパラプラチ
ン注射液Ⓡの製剤学的および治療学的同等性の比
較
2
【目的】持続型赤血球造血刺激因子製剤の皮下注射時の疼
痛は、治療コンプライアンスに影響を与えることが懸念さ
れている。刈谷豊田総合病院(以下、当院)では、2011年
12月に保存期慢性腎不全患者と腹膜透析患者を対象に、ダ
ルベポエチン α(以下、DA)からエポエチンベータペゴ
ル(以下、C.E.R.A)への変更を行った。今回、変更に伴
う疼痛に関して比較検討を行ったので報告する。
【方法】当院外来にて DA を注射していた保存期慢性腎
不全患者で同意を得た35名を対象に、DA から C.E.R.A へ
切り替え時に、注射時(注射中と注射直後)の疼痛につい
て、Visual analog scale を行った。
【結果】分散分析の結果、注射中の痛みは DA vs C.E.R.A
3±2.
8vs3.
2±2.
3:P=0.
001で、注 射 直 後 の 痛 み も
が5.
3±2.
8vs1.
8±1.
9:P=0.
01で統計学
DA vs C.E.R.A が3.
的に有意差が認められた。
【考察】DA から C.E.R.A への切り替えにおいて痛みが有
意に減少した。薬液量の減少が大きな理由であるとは考え
られるが、同量の疼痛比較において、C.E.R.A が、有意に
痛みが少ないという報告もあることから、他の要因の存在
も推察される。痛みの軽減が治療コンプライアンスの向上
につながるため、C.E.R.A は皮下注射を必要とする患者に
おいて有用と考える。
広幸1、
1
公益財団法人天理よろづ相談所病院 薬剤部、
九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野
○西川 豊1、梶田 貴司1、杵崎 正典1、
山口 和美1、水上 喜代光1、山川 ひろこ1、
黒松 誠1、雪矢 良輔1、若松 菜摘2、
増井 裕亮2、小柳 悟2、大戸 茂弘2、
上田 睦明1、中塚 英太郎1
2
【目的】カルボプラチン点滴静注液「NK」Ⓡ(GE)は、
パラプラチン注射液Ⓡ(OR)の後発医薬品であるが、先発
医薬品との製剤学的および治療学的同等性について比較し
た検討は少ない。そこで、両製剤の純度試験および in vitro での抗腫瘍効果に関して検討を行うとともに、OR か
ら GE に変更された患者を対象に副作用の発現状況を調査
した。
【方法】両製剤の夾雑物および類縁物質の検出には、高速
液体クロマトグラフィーを用いた。また、in vitro におけ
る抗腫 瘍 効 果 は、24well プ レ ー ト に 各 細 胞 を1×105/
well と な る よ う 播 種 し24時 間 培 養、そ の 後、0か ら100
μM の OR または GE を培養液に添加し、72時間後の細胞
活性を評価した。更に、OR から GE に変更された72例を
対象に副作用発現頻度を調査し、有害事象共通用語基準
(CTCAE v4.
0)に基づいて評価した。
【結果・考察】純度試験および抗腫瘍効果では、両製剤間
で差を認めなかった。また、副作用の評価のため調査した
臨床検査値8項目のうち7項目では両製剤間で有意差を認
めなかったが、好中球数では GE 投与群で有意な上昇を認
めた( P=0.
029 )
。しかしながら、これらの違いは、カル
ボプラチンの総投与量、投与期間の増加により一般的に観
察されることから、GE は OR と製剤学的にも治療学的に
もほぼ同じであり、先発医薬品と同様の有効性と安全性を
示すものと考えられる。
−229−
ポスター演題
201 ゲムシタビン塩酸塩の後発医薬品変更による血管
痛発現に対する評価および危険因子の調査
広島市立安佐市民病院 薬剤部
○北本 真一、古谷 智裕、柳田
藤井 静香、長崎 信浩
202 抗悪性腫瘍剤の後発医薬品導入への対応について
独立行政法人国立病院機構岩国医療センター薬剤科
○森近 俊之、吉田 昭昌、尾崎 誠一、
山木 和志美、近藤 奈央子、内畠 久美子、
二五田 基文
祐子、
【目的】ゲムシタビン塩酸塩(以下 GEM)投与中に発現
する血管痛は患者に不快感を与え、化学療法継続に影響を
及ぼすことがある。当院では、2011年12月より GEM を先
発品のジェムザールから後発品のゲムシタビンに変更と
なった。今回、変更前後での血管痛の発現状況およびその
危険因子について調査した。
【方法】20011年10月から2012年2月に当院の外来化学療
法室において GEM を投与した膵臓癌および胆道癌の患者
55名を対象とした。血管痛の評価は電子カルテの看護師記
録によりおこなった。GEM の後発品変更による血管痛の
増減および、GEM 投与による血管痛の危険因子について
年齢、性別、鎮痛剤の有無、GEM 投与量を調査した。
、ゲム
【結果】ジェムザール投与179コース中25件(14%)
6%)に血管痛が見ら
シタビン投与174コース中22件(12.
れたが有意な差は見られなかった。血管痛の危険因子につ
いては、平均年齢の72歳以上の群において血管痛が高い傾
向が見られた。GEM 投与量で1000mg 以下の群に有意に
05)が、性別、鎮痛剤の有無に
血管痛が低かった(p<0.
よる差は見られなかった。
【考察】GEM 後発品ゲムシタビンは先発品ジェムザール
と比較して血管痛の発現頻度に差はなく、医療経済学的お
よび調製手技上、有用であると思われる。GEM による血
管痛はブドウ糖液に溶解することで軽減されることが報告
されているが、今調査より溶解濃度が影響していることも
考えられ、今後検討が必要と思われる。
【背景】患者負担の軽減、医療費削減のため、後発医薬品
の使用促進が国を挙げて進められている。独立行政法人国
立病院機構中期計画においても「後発医薬品の採用を促進
し、平成24年度までに数量ベースで30%以上の採用を図
る。
」と規定されている。しかしながら、後発医薬品への
理解が不十分なために、必ずしも順調に採用が進んでいる
とは言えない。
【目的】当院では、平成23年3月末の段階で、後発医薬品
7%であったことより、更なる後
の割合は、数量ベース17.
発医薬品の採用を推進するべく、当初、後発医薬品変更不
可品目としていた抗悪性腫瘍剤の切り替えを検討すること
とした。
電子カルテ上に化学療法記録システムを導入す
【方法】1.
ることで、抗悪性腫瘍剤の安全性を担保する体制を構築
し、抗悪性腫瘍剤の後発医薬品への切り替えを実施する。
2.
後発医薬品の安全性データの集積及び評価を実施する。
【結果・考察】化学療法記録システムの導入により、ス
ムーズに後発医薬品への切り替えが可能となり、年間約
1,
140万円の医薬品費が削減可能となった。現在のところ、
後発医薬品の安全性上の問題は生じていない。病院経営及
び患者負担軽減に貢献できたことより、今後も、安全性等
に留意しながら後発医薬品の導入に積極的に取り組んでい
きたいと考える。
203 少量シスプラチン連投による腎障害:先発医薬品
と後発医薬品の比較
204 外来化学療法オリエンテーションへの薬剤師の関
わり
1
久留米大学病院 薬剤部
○高橋 誠、三池 梨乃、松本 浩一、堤 一貴、
吉丸 裕子、小森 美佳、別府 竜弥、
中垣 春美、有馬 千代子、鶴田 美恵子
【目的】少量シスプラチン連続投与における腎障害の頻度
と程度を、先発医薬品と後発医薬品で比較検討を行った。
【方法】2007年2月から2012年3月までに、当院放射線科
で頭頸部癌に対する放射線併用の少量 FP 療法(CDDP;
8∼12,
15∼19+5−FU;250mg/m2
5mg/m2day1∼5,
day1∼5,
8∼12,
15∼19)を受けた患者を 対 象 に、先 発
医薬品を使用した44例(先発群)と後発医薬品を使用した
30例(後発群)の間で、血清クレアチン増加の grade(NCI­
0)をレトロスペクティブに比較した。
CTCAE v3.
【結果:患者背景】患者背景(年齢・性別)は、先発群と
後発群には差はなかった。シスプラチン投与量および投与
回数においても両群には差はなかった。
【結果:腎機能への影響】腎機能障害の重症度は、先発群
1%)
、grade1が6例(13.
6%)
、
では grade0が37例(84.
3%)であり、後発群では grade0が26
grade2が1例(2.
例(86.
7%)、grade1が4例(13.
3%)、grade2が0例
0%)であった。検定を行った結果、両群間の腎機能
(0.
989)
。
障害の発生に有意な差はなかった(p=0.
【結語】少量シスプラチン連続投与における腎機能障害の
発生頻度は、先発医薬品と後発医薬品の間で差はみられな
かった。
独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター
薬剤科、
2
独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター
看護部
○山岸 佳代1、菊地 実1、伊藤 めぐみ2、
川上 愛2、春口 優紀2、寺谷 弘ニ1
【はじめに】当院は2010年3月の開院後、同年5月より外
来化学療法を開始し、主に外科、婦人科、消化器内科を中
心に行われている。化学療法導入時は原則として入院で化
学療法を実施してから外来へ移行する。その流れを円滑に
するため、患者の退院前に薬剤師と外来化学療法室看護師
(以下ケモ室ナース)が化学療法のオリエンテーション(以
下ケモオリ)を実施することにした。今回はその取り組み
について報告する。
【取り組み】対象患者が外来化学療法への移行決定時に医
師又は病棟から担当薬剤師とケモ室ナースに連絡があり、
部署間で話し合いケモオリの日程を調整する。ケモ室ナー
スが外来化学療法室の案内や施行までの流れを説明し、在
宅中に予想される副作用のチェックシートを配布する。薬
剤師は初回治療での副作用や体調の確認、院外処方等の説
明を行い、医事課は退院精算時にレジメンや患者の保険等
を確認し外来化学療法でかかる金額の概算を説明する。
【まとめ】外来化学療法へ移行することが薬剤師に伝わら
ず退院してしまった事例があり、必ず退院前に薬剤師とケ
モ室ナースに連絡するよう院内化学療法委員会より医師お
よび病棟へ周知した。また、外来治療に来た患者に面談に
行けず、薬剤師が副作用などを継続フォローできない状況
にある。他職種との良好なコミュニケーションを基に患者
への良質で安全な薬物療法ができる体制づくりが今後の課
題である。
−230−
205 益田赤十字病院でのがん化学療法チームの活動
206 消化器がん化学療法における腎機能低下に対する
薬剤師介入の必要性
1
益田赤十字病院 薬剤部、
益田赤十字病院 栄養課、
3
益田赤十字病院 医事課、
4
益田赤十字病院 医療社会事業部、
5
益田赤十字病院 看護部、
6
益田赤十字病院 血液内科、
7
益田赤十字病院 外科
○吉田 勝好1、大庭 恵子2、大庭 夏樹3、
俵 美由紀4、渋谷 功志4、篠原 由美5、
馬庭 泰久6、岸本 弘之7、西園 憲郎1
2
市立札幌病院 薬剤部
○山本 明日香、宍戸 桃子、落合 彰子、
大下 直宏、加納 宏樹、結城 祥充、
後藤 仁和、黒沼 博史、岩井 新治
【目的】益田赤十字病院(以下当院)では、基本的に初回
の化学療法は入院で行い問題なければ外来治療に移行し実
施している。2007年4月から外来化学治療室も設置され、
外来通院で治療を行っている患者も年々増えてきている。
また最近では新規抗がん剤や新たな支持療法薬の登場など
があり、従来の化学療法とは副作用の発現状況や対策方法
が変化してきている。このような現状を踏まえ、当院では
2010年4月にがん化学療法チーム
(医師2名、認定看護師、
認定薬剤師、栄養士、MSW、臨床心理士、事務は各1名)
を立ち上げ、患者が安全かつ良質な化学療法を継続出来る
ように活動を行っている。
【活動内容】チーム会を2ヶ月に1回開催し、チーム内外
で連携を取りながら活動を行っている。2010年度の主な活
動としては抗がん剤取り扱いマニュアル、血管外漏出時の
対応マニュアル、化学療法を受けている患者の発熱時の対
応フローチャート、食事・高額医療相談についてなどを
行った。2011年度では、チーム外の皮膚科医師、皮膚・排
泄ケア認定看護師の協力を得て皮膚障害のアルゴリズム表
の作成、がんサロンでの勉強会の実施、さらには院外薬局
薬剤師に対しての講義などを行った。
【今後の課題】2012年度は、口内炎と悪心・嘔吐のアルゴ
リズム表の作成、メンバーの専門性を生かした勉強会の開
催を予定している。またチーム内で今まで作成したマニュ
アル等の再評価やレジメンの整理を行う必要もあると考え
る。
207 アプレピタント併用制吐療法における追加薬剤の
検討 (1)追加薬剤の処方実態調査
【目的】近年、消化器がんにおけるがん化学療法は多様化
し、標準治療とされるレジメンには腎機能低下時に投与量
調整が必要な薬剤が多くなってきている。当院消化器内科
病棟では、がん化学療法を施行するにあたり、薬剤師はそ
の都度、クレアチニンクリアランス(CCr)を推算し、腎
機能に応じた介入を行っている。今回、介入事例から投与
量設定上の問題点を検討したので報告する。
【方法】2011年2月∼2012年1月の1年間に当院消化器内
科病棟において、がん化学療法施行にあたり薬学的に関与
した事例中、腎機能低下への対応について介入に至った経
過を調査した。
【結果】腎機能の評価に対し、増量をした例はなく、腎機
能低下より投与量の減量を提案し変更になった事例は15件
8歳、男女
(12名)だった。患者背景としては平均年齢73.
45m2、平 均 血 清 ク レ ア チ ニ ン
各6名、平 均 体 表 面 積1.
93mg/dL であり、これらを電子カルテ上で自
(SCr)0.
73m2補正推算糸球体ろ過量
(eGFR)
動表示される体表面積1.
で評価すると減量を必要とされるものはなかった。
【考察】抗がん剤治療を行う患者には小柄で筋肉量の少な
い高齢者が多い。今回の結果は、医師が腎機能を SCr や
73m2補正 eGFR で評価したため、腎機能を過
体表面積1.
大評価したことによるものと推察された。薬剤師の積極的
な介入が適正使用に重要であることが示唆された。
208 肺がん患者を対象としたゲフィチニブの投与量に
関する実態調査
1
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
○川井 正宏、鈴木 慎一郎、斎藤 秋雄
日本病院薬剤師会学術委員会学術第2小委員会、
熊本大学医学部附属病院薬剤部、
熊本市立熊本市民病院医療技術部薬剤課、
4
熊本赤十字病院薬剤部、
5
熊本労災病院薬剤部、
6
山口大学医学部附属病院薬剤部、
7
済生会熊本病院薬剤部、
8
滋賀医科大学医学部附属病院薬剤部、
9
佐賀県立病院好生館薬剤部、
10
国立病院機構九州がんセンター薬剤科、
11
八戸市立市民病院薬剤部、
12
東京労災病院薬剤部
○政 賢悟1,2、近藤 元三1,3、合澤 啓二1,4、
宇都 直哉1,5、大坪 泰昭1,6、北岡 朋子1,7、
寺田 智祐1,8、濱田 哲暢1,2、松永 尚1,9、
林 稔展1,10、平賀 元1,11、松田 俊之1,12、
齋藤 秀之1,2
【目的】本邦でのゲフィチニブ標準投与量は欧米と同等量
であるが、日本人における副作用の発現頻度は欧米人より
高いことが指摘されており、副作用症状に応じて適宜減量
投与されている。そこで、ゲフィチニブの投与量に関する
実態調査を行ったので報告する。
【方法】2011年1月1日∼3月31日の期間にゲフィチニブ
が処方された487名を対象に、処方箋、診療録等より年齢、
性別、体表面積、投与量変更の有無、変更理由を後方視的
に調査した。
【結果】調査期間中に主に病勢進行のため60例でゲフィチ
ニブ投与が中止されていた。調査終了時まで服用を継続し
6%)でゲフィチニブが減量されてお
た427例中88例(20.
り、標準投与量群と比較して減量群では体表面積が有意に
49m2vs1.
44m2)
、年齢は有意に高かった(69
小さく(1.
歳 vs75歳)
。ま た、減 量 理 由 は 皮 膚 障 害(23%)
、肝 障 害
、下痢(7%)
、血液毒 性(4.
5%)等 の 副 作 用 で
(16%)
あった。
【考察】高齢者ならびに体表面積が小さい症例では、副作
用発現によりゲフィチニブが減量される割合が高いことが
示唆された。実地臨床における投与量ならびに投与量に影
響を及ぼす諸因子の解析はゲフィチニブの適正使用を推進
し、個々の患者背景を考慮した薬学的ケアを実践する上で
重要と考えられる。
2
3
【目的】高度催吐性リスクに分類されるがん化学療法によ
る悪心・嘔吐に対し、アプレピタント、5HT3受容体拮
抗薬、デキサメタゾンの3剤併用療法が推奨されている。
しかし、効果不十分な症例も散見され、その様な症例に対
して追加される制吐薬剤の実態については不明である。本
研究は、3剤併用制吐療法に追加される薬剤処方状況の把
握を目的とし、
乳がん患者の制吐療法の実態調査を行った。
【方法】調査期間は2010年3月から2012年2月まで、調査
対象は FEC または EC 療法を施行され、3剤併用療法を
行った乳がん患者とした。調査項目は追加された薬剤の有
無、追加された薬剤の処方時期、追加された薬剤の種類と
し、オーダリングシステムより情報を収集した。
【結果】対象症例36例のうち薬剤が追加された症例は23例
9%)であった。追加された時期は、1コース施行時
(63.
4%)
、2コース施行時6例(26.
1%)
、3コース
7例(30.
0%)
、4コース施行時2例(8.
7%)
、1
施行時3例(13.
0%)
、3コースと4コー
コースと2コースの間3例(13.
3%)
、4コース施行後1例(4.
3%)であっ
スの間1例(4.
た。追加薬剤は5HT3受容体拮抗薬2件、ステロイド薬
2件、ド パ ミ ン 受 容 体 拮 抗 薬16件、胃 腸 薬(H2ブ ロ ッ
カー、プロトンポンプ阻害薬など)15件であった。
【考察】半数以上の症例で制吐薬剤の追加が処方されてお
り、化学療法施行初期から積極的な薬剤追加が必要である
と考えられた。今後、各薬剤の制吐効果について検討を加
える予定である。
−231−
ポスター演題
209 外来化学療法室での薬剤師による過敏症対策−薬
剤師による約束処置セットオーダに関する治療計
画書について−
一宮市立市民病院 薬剤局
○桜田 宏明、大島 有美子、川瀬
浅野 寿規、青山 佳晃
210 糖尿病を合併したゲムシタビン投与膵癌患者にお
けるデキサメタゾンのグリコヘモグロビン値への
影響
1
広島市立広島市民病院 薬剤部、
広島市立広島市民病院 内科、
3
広島市立広島市民病院 外科
○菅原 隆文1、阪田 安彦1、宮森 伸一1、
平尾 謙2、小川 恒由2、塩崎 滋弘3、
開 浩一1
2
洋次、
【緒言】当院では薬剤師が中心となり,がん化学療法にお
ける過敏症対策マニュアルを作成し過敏症対策に取り組ん
できた。2011年4月からは更なる試みとして,外来化学療
法における薬剤師による前投薬必須抗がん剤の約束処置
セットオーダ(以下,約束オーダ)に関する治療計画書を
作成し運用を開始した。今回この取り組みについて報告す
る。
【方法】1.
薬剤師による約束オーダに関する治療計画書の
作成。2.
2011年4月1日から2011年12月31日までの期間に
おける前投薬必須及び非必須抗がん剤での前投薬の医師処
方漏れ,患者持参忘れ及び薬剤師による約束オーダ件数に
ついての調査。
【結果】1.
治療計画書の内容として,目的・運用方法・対
象抗がん剤・セットオーダ内容について明記した。また,
電子カルテに約束処置セットを登録し,外来化学療法室専
任薬剤師のみオーダ権限を得た。2.
調査期間の前投薬必須
抗がん剤は651件であり,前投薬の医 師 処 方 漏 れ は38件
(5.
8%)及び患者持参忘れは9件(1.
4%)であった。薬
剤師による約束オーダ件数は,非必須抗がん剤のケースも
含めると55件であった。
【考察】薬剤師による前投薬の約束オーダ治療計画書作成
により,がん化学療法での安全管理及び医師の業務負担軽
減に貢献することができた。また,患者処方待ち時間の短
縮及び外来化学療法室の円滑な流れにも繋がったと考え
る。これを機に更なるチーム医療における協働作業を考え
ていきたい。
211 アザシチジン使用患者に対する薬学的管理の標準
化に向けた試み ∼当院における使用状況と薬剤
管理指導の実際∼
【緒言】ゲムシタビン塩酸塩(GEM)は、日本癌治療学
会制吐薬適正使用ガイドラインで、制吐目的で支持療法に
デキサメタゾン(Dex)の使用が推奨されている。しかし、
膵癌患者の約半数に糖代謝異常が指摘されており、糖尿病
(DM)を合併した GEM 投与膵癌患者に対する、支持療
法の Dex がグリコヘモグロビン(HbA1c)値に影響を与
えるか評価した。
2008年4月∼2011年10月に広島市民病院において、
【方法】
DM を合併した GEM 投与膵癌患者のうち、支持療法に
Dex が使用され、その後 Dex 以外の薬剤に切り替えた9
症例を対象とし、診療録を後方視調査した。
【結果】Dex から他の支持療法への変更内容はグラニセ
トロン注2例、ドンペリドン錠3例、支持療法なしが4例
であった。GEM 投与前と比較し、支持療法が Dex の期間
では6例で HbA1c 値が悪化した。また、Dex 以外の支
持療法の期間では、Dex の期間と比較し、8例で HbA1c
値が改善した。糖尿病用薬処方状況は支持療法が Dex の
期間では9例中4例に糖尿病用薬の増量がみられ、Dex
以外の期間では9例中5例が糖尿病用薬の減量がみられ
た。
【考察】DM を合併する膵癌患者の GEM 投与において、
支持療法として Dex の投与は HbA1c 値の悪化を招く可
能 性 が あ り、Dex か ら 支 持 療 法 変 更 す る こ と に よ り、
HbA1c 値の改善が期待できることが示唆された。
212 がん化学療法における支持療法の統一と実施
1
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 薬剤部、
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 看護部、
3
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 診療部 外科、
4
社会医療法人厚生会 木沢記念病院 通院治療セ
ンター
○平出 耕石1,4、宮本 義浩1、市原 知佳1、
伊佐治 哲也2,4、小林 洋子2,4、
鈴木 文子2,4、江ノ本 直美2,4、今関 孝子1、
加藤 武司1、尾関 豊3,4
2
1
医療法人創起会 NTT 西日本九州病院 薬剤部、
医療法人創起会 NTT 西日本九州病院血液内科
○山田 邦夫1、江藤 文乃1、宮本 浩子1、
下村 泰三2、鈴島 仁2、森岡 淳子1
2
【目的】骨髄異形成症候群(MDS)治療剤として希少疾
病用医薬品(OD)の指定を受けたアザシチジン(AZA)
は、予後不良とされる MDS 症例に有効な治療薬として位
置づけられている。継続投与が治療効果へ反映することか
ら、AZA 使用時の薬剤師の関与が重要と考えられる。今
回、当院の使用状況と薬剤管理指導時内容を基に安全かつ
有効に治療が継続実施されるための薬学的管理の標準化を
試みた。
【方法】2011年3月∼2012年2月に AZA 治療を実施した
症例9名を対象に、診療録、薬歴および薬剤管理指導記録
より調査した。
【結果】患者は、男性6名、女性3名、年齢76歳(中央値、
48∼81歳)
、投与クールは平均4.
4回(1∼8回)
、投与日
数は初回時のみ7日間、その後5日間投与、投与方法は初
日のみ静脈投与、その後皮下投与となった。4名において
化学療法の治療歴があり、AZA の副作用として WBC の
低下が主で8名に認められ、1名は減量となった。治療継
続は2名であった。
【考察】AZA は OD であり治験時の患者数が少なく、患
者背景も今回の症例との違いが認められた。よって、薬剤
師は副作用のモニタリングをはじめとした薬学的管理を実
施して行く必要がある。また、外来での治療継続であるこ
とから患者へのシームレスな関わりを構築できるよう薬剤
師間の情報の共有化が重要でありそのためのワークシート
の作成が必要であると考えた。
【目的】がん化学療法を継続するうえで、副作用の発現予
防・症状軽減は重要である。今回、我々は院内各診療科に
おける支持療法を統一(標準化)することにより、副作用
に対し迅速かつ的確な対処を可能としたためその取り組み
を報告する。
【方法】院内レジメン審査機関であるがん化学療法委員会
において、薬剤師を中心として、エビデンスに基づいた副
作用毎の支持療法と過敏症等緊急時の対処方法を検討・統
一化した。またオーダリングシステム上に、各診療科共通
の16種類の支持療法セットおよび3種類の緊急時セットを
登録し、各端末において処方できるようにした。さらに、
薬剤師・看護師は抗がん剤投与時の血管痛および爪症状を
チェックし応じた対策をとった。
【結果】作成した支持療法セットあるいは緊急時対応セッ
トは、ほぼ全診療科において必要に応じ使用された。薬剤
師・看護師は、血管痛に対して溶解輸液の変更・保温等を
行いほぼ全症例において改善が認められ、また爪症状につ
いてフローズン・グローブおよびソックスを用いたクライ
オセラピーを行うことにより進行の遅延が確認されつつあ
る。
【考察】登録したセットを使用することで、医師は診療
科・経験を問わず即時の副作用対策施行が容易となった。
また薬剤師・看護師は、患者からの有害事象モニタリング
時に必要な対策を迅速に行うことが可能となった。今後、
登録・施行した支持療法の効果を評価しさらに適切なもの
としたい。
−232−
213 抗がん剤の簡易失活法に関する検討
214 動注療法におけるシスプラチンと炭酸水素ナトリ
ウムの至適配合比の検討
1
城西大学 薬学部 薬学科、
埼玉県立がんセンター薬剤部、
3
城西大学薬学部医療栄養学科
○小山 梓1、武井 大輔2、中山 季昭2、
井口 毅裕3、古屋 牧子3、杉野 雅浩1、
大島 新司1、細谷 治1、從二 和彦1、
武者 利樹2
2
茨城県立中央病院 薬剤局 薬剤科
○大神 正宏、日向 沙織、谷中 敦美、
島田 匡彦
【目的】近年、がん化学療法はその多くが外来で施行され
るようになりレジメンによっては患者の自宅で持続的に治
療を受ける機会が多くなった。しかしながら、居宅で抗が
ん剤による曝露が生じた場合に、患者やその家族が自ら安
全に行える対策は確立していない。そこで今回、抗がん剤
の汚染防止を目的に患者宅にある生活用品を用いた抗がん
剤の簡易失活法の検討を試みた。
【方法】抗がん剤としてフルオロウラシル(以下5−FU)、
ドキソルビシン(以下 DXR)を、市販の排水パイプ洗浄
剤(以下 PU)とそれぞれ用量比1:1で混合し、HPLC
を用いて5−FU、DXR のピーク形状を確認した。また、
その混合生成物の変異原性については Ames 試験を行い
確認した。
【結果】混合生成物中の5−FU および DXR のピークは
消失し、いずれも主成分の構造変化が示された。さらに、
Ames 試験において DXR の変異原性は認められ な か っ
た。しかしながら、5−FU のそれは本実験条件では消失
しなかった。
【考察】本試験結果から、居宅で容易に入手できる PU が
条件次第で抗がん剤の失活剤として使用できる可能性が示
唆された。そこで、今後 PU の処理条件について検討し、
簡易失活法の確立を試みたい。なお、他の抗がん剤への応
用の可否についても現在調査中であるため、結果が得られ
次第報告する。
215 抗がん剤投与後におけるデキサメタゾンの制吐効
果:レジメン間における効果の違い
【目的】シスプラチンを用いた超選択的動注療法は頭頸部
癌の治療においてその有効性が報告されているが、シスプ
ラチン注射液は酸性であるため、激痛を訴えたり、血管内
膜を刺激し、スパズムが出現することがある。これらを解
決するために、シスプラチン注射液に炭酸水素ナトリウム
注射液を混合し中性化する方法が報告されているが、その
混合比は報告によって大きく異なる。シスプラチン注射液
は中性∼アルカリ性領域では安定性が悪く、経時的に分解
することが知られている。そこで今回、シスプラチン注射
液に炭酸水素ナトリウム注射液を混合し、pH 及び残存率
を経時的に測定し、至適配合比と適正な調製開始時間を検
討した。
【方法】シスプラチン注射液と炭酸水素ナトリウム注射液
05、20:0.
1、20:0.
5で配合し、配合直
を20:0、20:0.
後、30分後、1時間後、3時間後の pH 及び残存率を測定
した。
【結果】 シスプラチン注射液に炭酸水素ナトリウム注射
液を加えると pH は上昇したが、経時的な変化は見られな
05では3時間後でも90%以上で
かった。 残存率は20:0.
5では3時間後では80%未満であった。
あったが、20:0.
5
【考察】投与には約2時間を要するため、配合比を20:0.
から20:0.
05とし、患者の入室直前に調製することとし
た。これにより、pH を中性領域にしたまま、動注終了後
までシスプラチンの残存率を90%以上とすることができ
た。
216 パクリタキセル施行時におけるデキサメタゾン漸
減の認容性
1
岐阜大学医学部附属病院 薬剤部、
岐阜薬科大学 実践薬学大講座 病院薬学研究室、
3
岐阜大学医学部附属病院 泌尿器科、
4
岐阜大学医学部附属病院 消化器外科
○今西 義紀1、藤井 宏典1、青木 慎也1,2、
飯原 大稔1、北市 清幸1、仲野 正博3、
高橋 孝夫4、出口 隆3、吉田 和弘4、
伊藤 善規1
広島市立広島市民病院 薬剤部
○岡崎 夏実、阪田 安彦、菅原 隆文、
赤木 恵、宮森 伸一、開 浩一
2
【目的】デキサメタゾン(DEX)は抗がん剤による急性な
らびに遅発性制吐効果を発揮し、化学療法時の制吐対策に
は必須の薬剤である。我々はこれまで国内外のガイドライ
ンに準じた制吐対策を院内で推進し、その結果を評価した
ところ、DEX の遅発期における制吐効果が抗がん剤レジ
メンによって大きく異なることが明らかとなった。
【方 法】大 腸 癌 治 療 と し て mFOLFOX6療 法 も し く は
FOLFIRI 療法、膀胱癌治療として GEM(1000)/CDDP
(70)療法が初めて施行された患者を対象とした。薬剤師
による制吐対策への介入前後における DEX 処方状況と制
吐率を比較した。制吐率は急性期、遅発期および全期間に
おける完全制御率(悪心なし、嘔吐なし)を指標とした。
【結果】介入前は抗がん剤投与初日における5−HT3拮抗
薬および DEX はほぼ全例に処方されていたが、2日目以
降の DEX 処方率は極めて低かった。介入後にはいずれの
レジメンでも DEX 処方率は90%以上となった。制吐率を
介入前後で比較すると、GEM/CDDP 療法では遅発期にお
ける完全制吐率が顕著に改善したが、mFOLFOX6療法お
よび FOLFIRI 療法では遅発期の制吐率の改善効果はほと
んど見られなかった。
【考察】DEX による遅発性制吐効果は抗がん剤レジメン
によって大きく異なることが明らかとなった。mFOLFOX
6療法や FOLFIRI 療法は長期にわたって実施されるレジ
メンであり、抗がん剤投与後の DEX 処方については risk­
benefit の観点から十分に考慮する必要があると考えられ
る。
【背景・目的】パクリタキセル(以下、PTX)のアレル
ギー予防としてデキサメタゾン(以下、Dex)の投与は必
須である。PTX によるアレルギー症状は初回に起こりや
すく、徐々にその頻度は低くなる。添付文書では PTX 週
1回投与の場合、Dex 量を初回投与時は8mg(デキサメ
タゾンリン酸エステルとして)とし、アレルギー症状がな
ければ半量ずつ最低1mg まで減量が可能とされている。
一方、米国臨床腫瘍学会(ASCO)等のガイドラインでは
PTX の催吐毒性は低リスクに属し、対策として Dex8mg
の前投与が勧められている。当院では Dex により不利益
が生じる可能性がある場合に Dex の漸減を行っている。
今回、これらの症例に対し Dex 漸減の認容性について検
討を行った。
【方法】
PTX 施行時に Dex の漸減を行った患者について、
有害事象を電子カルテにより後方視的に調査した。
【結果】PTX 施行時に Dex を漸減した症例は計6例(Dex
2mg:4例、Dex4mg:2例)であり、その理由は不眠
および糖尿病(以下、DM)の既往であった。Dex 漸減後、
アレルギー症状や消化器症状等の有害事象はみられなかっ
た。
【考察】Dex 漸減後に不眠や DM が改善した例もあった
が、これらに対して薬剤が処方されている場合もあるため
Dex 漸減による副作用改善の確認は困難である。しかし、
有害事象の発生が無かったことから Dex 漸減は許容でき
る方法であると考える。
−233−
ポスター演題
217 がん化学療法施行時の好中球減少に対するアプレ
ピタントの影響
218 がん化学療法事前処方介入による疑義照会の解析
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院
○西 健太郎、北岡 朋子、山下 愛子、
田上 治美
1
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 薬剤部、
2
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 呼吸器内科、
3
北海道薬科大学
○山崎 将英1、渋谷 ゆかり1、矢萩 秀人1、
矢部 勇人2、小島 弘2、西山 薫2、
菅谷 文子2、小場 弘之2、猪爪 信夫3、
戸田 貴大3、本郷 文教1
【目 的】ア プ レ ピ タ ン ト(APR)は、カ ル ボ プ ラ チ ン
(CBDCA)などの中程度催吐性リスクの抗がん薬を用い
た場合の制吐薬として併用が推奨されるが、CYP3A4阻
害作用を有し、多くの相互作用が報告されている。肺がん
治療で汎用されるパクリタキセル(PTX)
、エトポシド
(VP−16)は CYP3A4で代謝されるが、副作用発現に
及ぼす APR の影響について検討した報告は殆どない。今
回我々は、化学療法施行時の APR 併用群と非併用群にお
ける副作用発現状況を比較した。
【方法】2011年1∼12月に当院にお い て CBDCA を 併 用
した PTX あるいは VP−16レジメン施行患者を対象とし、
APR 併用群と非併用群における好中球減少の重症度を後
ろ向きに調査した。
【結果】CBDCA/PTX 施行 患 者 で は APR 併 用 群10例 中
4例、非併用群9例中1例に grade4の好中球減少が認め
られた。CBDCA/VP−16施 行 患 者 で は APR 併 用 群10例
中8例、非併用群7例中3例に grade4の好中球減少が認
められ、更に APR 併用群の4例では好中球100/mm3以
下の減少、5日以上の遷延がみられた。
【考察】両レジメン共に APR 併用群で重篤な好中球減少
が多く見られた。その理由として、APR の代謝阻害によ
る PTX、VP−16の血中濃度が上昇した可能性が考えられ
た。特に CBDCA/VP−16施行 患 者 で は、APR 併 用 群 で
重篤な好中球減少の遷延がみられたことから、適切な制吐
薬の選択、G­CSF 製剤の予防投与、APR 併用時の抗がん
薬の薬物動態の変動について検討する必要性が示唆され
た。
219 進行・再発非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に
おけるペメトレキセド単剤とドセタキセル単剤の
比較検討
社会医療法人 製鉄記念八幡病院
○船越 康太、松本 知子、山澤
【目的】当院でのレジメンオーダーシステムは、電子カル
テ MegaOak HR(NEC)と化学療法部門システム CROSS
(CMCC メディカル)を導入しており、施行当日に医師
が処方確定後、薬剤師が処方発行を行うまでは投与開始で
きない仕組みとなっている。この仕組みの中で化学療法室
専従薬剤師がオーダー受付時(施行3日前)→施行前日→
当日処方確定後の3段階で処方監査、患者情報の収集、当
日検査値・患者状態の確認を行い、疑義照会を実施してい
る。今回、疑義照会の分類と処方変更率を調査したので報
告する。
【方法】2011年10月∼2012年3月の6ヶ月間(総化学療法
件数2623件:外来2139件,入院484件)における処方監査
時の疑義照会を解析した。
【結果】(1)疑義照会件数及び(2)処方変更率は(1)
428件(2)46%であった。内訳は投与量変更・中止:(1)
290件(2)34%、投与間隔:(1)9件(2)0%、副作
用対策:(1)119件(2)73%、レジメン選択:(1)3
件(2)67%、そ の 他:(1)7件(2)57%。さ ら に こ
れらの中で検査値に対する疑義は(1)162件(2)46%、
4の骨髄抑制で疑義照会後中止となった
そのうち Grade3,
ものが4件あった。
【考察】副作用対策における処方変更率の高さから、副作
用マネジメントに対する薬剤師の処方介入の重要性が明ら
かとなった。また、検査値に対する薬剤師の介入は、投与
量の適正化や中止基準該当患者への投与阻止に繋がった。
3段階の事前処方介入により、安全で質の高い化学療法の
実施に貢献していることが示された。
220 進行・再発大腸癌患者に対するベバシズマブによ
る一過性の高血圧についての検討
1
株式会社 日立製作所 ひたちなか総合病院 薬
務局、
2
株式会社 日立製作所 ひたちなか総合病院 看
護局
○平井 利幸1、海老澤 美幸1、澤畑 ひろみ2、
山本 美和2、大山 成子2、佐藤 和人1、
関 利一1
薬剤部
理恵子
【目的】非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対して2次
治 療 や 高 齢 者・PS=2−3の 患 者 で は ペ メ ト レ キ セ ド
(PEM)
、ドセタキセル(DTX)の単剤治療が推奨され
ている。今回、当院での症例を基に2剤の有効性と安全性
を比較検討した。
【方法】当院にて2009年5月∼2012年3月の期間に PEM
または DTX の単剤治療を行った患者を対象に電子カルテ
の記録を基にレトロスペクティブに調査を行った。評価項
目は無増悪生存期間(PFS)
、副作用の発現状況とした。
副作用は PEM の第3相試験で5%以上の頻度のもの を
4.
0で評価した。
CTCAE Ver.
【結果】患者数のべ79名。患者背景は PEM 群(48名)で
、男 女 比(28:21)
、組 織 型
年 齢 中 央 値71歳(54−81)
Large:1,
non­small:6)
、DTX 群(31名)
(Adeno:41,
、男 女 比(21:10)
、組 織 型
で 年 齢 中 央 値71歳(54−81)
non­small:5)で あ り、PFS は PEM が
(Adeno:26,
114.
5日、DTX が82.
2日であった。Grade3以上の副作用
6%,DTX:87.
1%)
、白血球減
は好中球減少(PEM:39.
6%,DTX:58.
1%)の2項 目 で PEM の
少(PEM:14.
05)
。
方が有意に少なかった(p<0.
【考察】今回の調査では PFS において2剤に有意差はな
かった。しかし安全性については PEM では Grade3以上
の副作用が DTX より少なく、PEM は比較的 QOL を維持
しながら使用できるレジメンの一つと考えられた。
薬剤部
【目的】大腸癌におけるベバシズマブ(以下、BV)の高
血圧は14.
6%とされているが、一過性と持続性で明確に分
類されていない。血圧は測定時に患者も認識できるため一
時的な上昇に対しても気に掛けられる。そこで、BV によ
る一過性の高血圧の発現頻度と血圧の影響について調査し
た。
【方法】調査対象は、2006年9月から2010年12月までに、
進行・再発大腸癌に対して、1次治療および2次治療で
mFOLFOX6療法もしくは FOLFIRI 療法を開始した患者
のうち、BV を併用した患者(併用群)と併用しなかった
患者(併用なし群)とし、血圧を retrospective に調査し
た。また 血 圧 は Grade3の160/100mmHg を 基 準 と し、
一過性を開始時基準値未満で bolus5−FU 終了時基準値
以上かつ針去時基準値未満と定義した。
【結果】併用群と併用なし群は25人の511クールと18人の
281クールであった。各群それぞれの血圧(収縮期/拡張
期)について、治療開始前から基準値以上であったのは
0.
0/0.
0%と5.
6/5.
6%であり、一過性の高血圧は64.
0/
44.
0%と16.
7/16.
7%であった。
【考察】BV 併用患者の血圧は高値であり、一過性の高血
圧の頻度も高率であった。そのため、頻回のモニタリング
が重要と考えられる。しかし、診察室にいる医師は経時的
にその値を把握することは困難である。化学療法室に常駐
する薬剤師や看護師が、患者の血圧を把握し医師へフィー
ドバックすることにより、適正な副作用マネジメントが可
能になると考えられる。
−234−
221 微量薬剤の輸液フィルターへの吸着についての検討
∼小児投与量での吸着試験の有用性について∼
富山大学附属病院 薬剤部
○山之内 恒昭、三村 泰彦、加藤
足立 伊佐雄
222 入院がん化学療法施行患者の退院前後における悪
心嘔吐(CINV)に関する研究
1
北里大学 薬学部 薬学科、
北里大学東病院 薬剤部、
3
北里大学 医学部
○仲 恭平1、川野 千尋1,2、平山
小泉 和三郎3、黒山 政一1,2
2
敦、
【目的】今回我々は,輸液フィルターへの吸着が不明な微
量薬剤について,小児投与量での輸液フィルター吸着試験
の有用性について検討した。
【方法】薬剤はノギテカン,アクチノマイシン D,ラモセ
トロンを用いた。小児投与量は過酷条件を考慮し,小児1
4m2,小児1歳の平均体重10kg 又は成人
歳の体表面積0.
投与量の1/4量の何れかで算出した。それぞれの試験溶
液を調製し,輸液ポンプ又はシリンジポンプを使用し,
ポール輸液フィルター ELD96を通過させ,通過後の回収
率を求めた。さらに,各薬剤の小児投与量の回収率から他
の投与量における回収率の理論値を算出し,実測値と比較
した。薬剤の定量は吸光光度法を用いた。
【結果・考察】小児投与量における輸液フィルター通過後
0%,ア ク チ ノ マ イ シ ン D
の 回 収 率 は ノ ギ テ カ ン98.
69.
4%,ラモセトロン91.
0%であった。また,小児投与量
の回収率から算出した他の投与量における回収率の理論値
と実測値がほぼ一致したことから,小児投与量一点で吸着
試験を行い,吸着がなければ小児投与量以上で吸着の問題
はなく,吸着が認められた場合は小児投与量の回収率から
他の投与量の回収率を算出できることが確認され,小児投
与量での輸液フィルター吸着試験の有用性が示された。ま
た,アクチノマイシン D,ラモセトロンのように臨床で使
用される投与量の範囲内で回収率が変化する薬剤が存在す
るが,吸着試験と理論値により適切な投与量の決定が可能
である。
223 抗がん剤治療の副作用管理に役立った訪問看護ス
テーションとの副作用情報共有シート
【目的】がん化学療法に誘発される悪心嘔吐(CINV:Chemotherapy­Induced Nausea and Vomiting)は患者の活
動時間が長いと制吐薬による CINV 抑制率が低下する報
告があり、入院がん化学療法施行患者の退院後における
QOL 低下が危惧される。そこで、入院がん化学療法施行
患者の退院前後における CINV の状況について、プロス
ペクティブに調査した。
【方法】入院がん化学療法施行患者を対象に投与前、投与
後24h、48h、72h、96h の各24時間における CINV につい
て、客観的評価(嘔吐なしかつ救済治療なし=CR:Complete Response)および主観的評価(患者評価による FLIE
調査票にて QOL 影響なし=NIDL:No Impact on Daily
Life)を行い、24時間毎に入院群と退院群(評価時点の24
時間以上前に退院)に分類して各達成率を比較検討した。
なお、本研究は北里大学医学部倫理委員会の承認のもと実
施した。
【結果】対象となった143症例における投与後48h・72h・
96h の各24時間の CR 率は、入院群が93.
8・89.
5・89.
2、
退院群が92.
3・87.
7・91.
0、NIDL 率はそれぞれ、85.
4・
87.
2・80.
0、92.
3・80.
7・79.
5であり、いずれも両群間に
おいて有意差は認められなかった。また、催吐リスクで分
類し、検討した結果においても CR 率および NIDL 率に有
意差は認められなかった。
【考察】患者の活動時間の差から入院中と退院後で分類し
調査したが、退院による CINV への影響は認められない
ことが示唆された。今後は活動時間の調査を含め検討した
い。
224 肺癌患者における CDDP の腎障害について
茨城県立中央病院 薬剤局 薬剤科
○谷中 敦美、大神 正宏、日向 沙織、
島田 匡彦
1
医療法人 友愛会 盛岡友愛病院 薬剤部、
2
医療法人 友愛会 盛岡友愛病院 訪問看護ス
テーション、
3
医療法人 友愛会 盛岡友愛病院 呼吸器外科、
4
緩和ケアチーム
○山屋 千恵子1,4、藤村 ゆかり2、
藤井 祐次3,4
【背景・目的】がん医療は入院中心から外来・在宅へと変
化しており、多くのがん患者は抗がん剤治療後も自宅で過
ごす。
今回、当院訪問看護ステーションの依頼を受け、訪問日
設定の資料として、入院抗がん剤治療時の副作用発現状況
を記入した「副作用情報共有シート」の作成を試みたので
報告する。
【方法】「レジメンと特徴」
、副作用の「一般的発現時期」
と「当該患者でおこった日」
を1枚のシートに図表化した。
【倫理】尚、この研究は倫理的に配慮している。
【結果・考察】1枚で簡潔な副作用情報が得られるシート
は
1.
訪問看護師がタイミング良く介入する参考資料になる
2.
観察・セルフケア指導のポイントが把握できる
3.
次回 の 抗 が ん 剤 治 療 の ス ケ ジ ュ ー ル・用 量 設 定 等 に
フィードバックしやすい。
訪問看護ステーションとの連携は抗がん剤治療継続、在
宅緩和ケアへのスムーズな移行に重要である。
今後は運用面も含めた検討を加え、利用価値の高い「副
作用情報共有シート」にしていきたい。
武司1,2、
【目的】シスプラチン(CDDP)は化学療法の主要薬物と
して位置付けられているが,腎障害により使用が制限され
る。当院呼吸器内科においても,腎障害により治療中止と
なる例が存在し,Mg を追加した。そこで,今回,肺癌患
者における CDDP の腎障害を調査した。
【方法】 2011年4月から2012年3月まで の 間 に 当 院 で
CDDP を含む化学療法を受けた肺癌患者を対象とした。
後方視的に,1コース目及び全コース中の血清 CRE 値増
加と eGFR のグレードを評価した。また,Mg 投与群と非
投与群の eGFR 減少率の比較を行った。
【結果】 23名(男性18名,女性5名)の患者に行われた
83コースを調査対象とした。血清 CRE 増加については,
7mg/dL,1コ ー ス 目 の G
治 療 前 血 清 CRE 中 央 値 は0.
0/1/2/3は0/17/6/0例,全コース中の G0/
1/2/3は,0/11/11/1例であった。eGFR は,1
コース目の G0/1/2/3は1/12/10/0例,全コー
ス中の G0/1/2/3は,0/9/12/2例であった。
G2以上の血清 CRE 増加や eGFR が1コース目から出現
する患者は,それぞれ50%,71%であった。各コースの
eGFR は,1コース目で有意に減少した。各コースの Mg
投与群と非投与群の eGFR 減少率は,有意な差は見られ
なかった。
【考察】 1コース目において,G2以上の血清 CRE 値
増加や eGFR が出現しており,腎障害対策は1コース目
から積極的に行う必要があると考えられた。2コース目以
降に Mg を追加しても腎機能の改善は見られないため,1
コース目から Mg の追加を行う必要性が示唆された。
−235−
ポスター演題
225 カルボプラチン(CBDCA)至適投与量算出時に
おける24時間実測クレアチニンクリアランス(24
時間実測 Ccr)の必要性の検討
熊本赤十字病院
○鷲尾 知美、合澤
上津 沙織、馬場
福永 栄子
啓二、岩田
貴子、陣上
一史、
祥子、
226 頭頸部癌患者におけるシスプラチンを用いた化学
療法による腎障害について
茨城県立中央病院 薬剤局 薬剤科
○日向 沙織、大神 正宏、谷中 敦美、
島田 匡彦
【目的】熊本赤十字病院(以下当院)婦人科病棟では、化
学療法を行う患者に対し24時間の蓄尿を行い内因性クレア
チニンクリアランス(Ccr)を測定している。Ccr は腎臓
における糸球体濾過値(GFR)を評価する指標となるが、
24時間実測 Ccr は測定操作が煩雑であるため、通常予測
式により代用されることも多い。そこで今回、1)GFR
推測における Cockcroft­Gault の 予 測 式(C­G 法)な ら
びに日本人における推算 GFR(eGFR)の有用性、2)24
時間実測 Ccr が与える抗悪性腫瘍薬の初回投与量設定へ
の影響を調査した。
【方法】平成22年11月から平成23年10月までの間に当院婦
人科に入院し CBDCA を投与した症例を対象とした。24
時間実測 Ccr と C­G 法より算出した Ccr および eGFR を
それぞれ比較した。加えて24時間実測 Ccr から得られた
CBDCA の算出量と CBDCA 初回投与量を比較した。
【結果】24時間実測 Ccr と C­G 法より算出した Ccr ある
いは eGFR の間に強い相関関係は認められなかった。ま
た、CBDCA の算出量と CBDCA 初回投与量は大きく乖離
し、算出量より減量して投与された症例が散見された。。
【考察】24時間実測 Ccr は抗悪性腫瘍薬の初回投与量設
定へほとんど影響を及ぼしておらず、それぞれの予測式の
特徴を把握したうえで使用 す る の で あ れ ば、C­G 法 や
eGFR は、24時間実測 Ccr に十分代用可能であると思われ
る。
【目的】シスプラチン(CDDP)は、頭頸部癌において優
れた抗悪性腫瘍作用を示す。しかし、副作用である腎障害
が治療の制限因子となっている。今回、頭頸部癌における
CDDP の腎障害について調査したので報告する。
【方法】2010年4月から2012年3月の間に頭頸部癌に対し
て CDDP(60mg/m2以上)を含む化学療法を実施した患
者を対象とした。1コース目および全コース中の血清クレ
アチニン値(Scr)
、24時間蓄尿によるクレアチニンクリア
ランス(実測 Ccr)
、Cockcroft&Gault 式によるク レ ア チ
ニンクリアランス(推定 Ccr)の最悪値を診療録より後方
視的に調査した。実測および推定 Ccr は30%以上減少し
た場合を悪化とした。
【結果】35人(男性32人、女性3人、年齢中央値61歳)が
対象となり、CDDP 投与回数は延べ67回、施行コース数
の中央値は2コース(1−5)であった。Scr 上昇の G0/
1/2は1コ ー ス 目 で6/24/5人、全 コ ー ス 中 で5/
24/6人であった。実測 Ccr 悪化は、1コース目で8人、
全コース中で10人、推定 Ccr 悪化は、1コース目および
全コース中でともに6人で あ っ た。ま た、Ccr が60mL/
min 以下に低下し投与量が減量または治療が変更となった
症例は4例であった。
【考察】CDDP の投与により腎機能は1コース目から悪
化する症例が多かったが、2コース目以降に悪化する症例
もあった。しかし、実測 Ccr の悪化はみられたが、推定
Ccr の悪化はみられない症例もあったため、Ccr で腎機能
を評価する際は注意が必要である。
227 抗がん剤調製時の曝露防止策の段階的導入と環境
拭取り試験によるその包括的評価
228 薬剤師による適切な環境下での全抗がん剤調製業
務の実施に向けた取り組み
神戸市立医療センター中央市民病院
○光武 瑞穂、濱 宏仁、平畠 正樹、橋田
済生会新潟第二病院
○上村 賢介、須佐
内坪 誉歳、田村
亨
【目的】当院では,抗がん剤調製時に様々な曝露対策を段
階的に導入してきた.シクロホスファミド(CP)を指標
とした拭取り試験により調製環境の汚染状況を調査し,そ
れら対策の有用性を包括的に評価した.
【方法】1)2008年8月,2)同年11月,3)2009年9月,
4)同年10月,5)2010年8月,6)2012年1月,7)同
年3月に薬剤部調製室の安全キャビネット(BSC)内作業
面,エアフォイル,BSC 下床面の各箇所を0.
03M NaOH
含 有 紙 で 拭 取 り,1−4)の 検 体 は GC­MSMS 法(ND
<17ng),5−7)は LC­MSMS 法(ND<10ng)で CP
の分析を行った.
【結果】分析値は1)
0.
01−0.
04,
2)
0.
01−0.
72,
4)ND−
0.
01,
5)ND−0.
07,
3)6)7)は全て ND(各 ng/cm2
であった.曝露対策は,PhaSeal(R)・納品直後のバイアル
洗浄を順次導入し,また2011年7月の新病院移転に伴い,
BSC は30%室外排気型から100%排気型へ,床清掃の消毒
剤は NaClO から Quat 系薬剤へ変更した.さらに6)以
降にはケモセーフ(R)を用いた薬剤部でのプライミングを
開始した.
【考察】CP の分析値は,2)は他より高値を示したが,
バイアル洗浄を導入した3)以降は減少したため,バイア
ル表面汚染が原因と推測された.清掃時の消毒剤変更も
6−7)の結果より問題ないと思われた.また3)以降の
値は,Exposure Control 提唱の「CP の環境汚染による発
がんリスク基準」で安全域(<0.
1ng/cm2)を継続して
示し,導入した曝露防止策は有用であると考えられた.定
期的な本調査により上記が明らかになり,曝露モニタリン
グの継続が望ましいと思われた.
薬剤部
充、小竹 泰子、
晶子、安藤 嘉範
【目的】抗がん剤は細胞毒性を有するものが多く、曝露に
よる健康リスクが示されている。医療従事者は抗がん剤に
よる職業性曝露防止のため、その調製は適切な環境下で安
全に行うことが不可欠となる。済生会新潟第二病院(以下、
当院)では、夜間・休日に使用される抗がん剤を医師又は
看護師が病棟で調製していたが、適切な環境下での安全な
調製を目的とし、薬剤師による全抗がん剤調製業務の実施
に向けた取り組みを2011年5月14日より開始したので報告
する。
【方法】夜間・休日のがん化学療法については、処方を平
日の日勤業務時間内に受け付けた場合は薬剤師が調製を行
い、規定時間外の処方については薬剤師が調製しないこと
として運用を開始した。夜間実施分については調製後の安
定性を確認した上で日勤業務時間内に調製を行い、休日実
施分については日直者の他に抗がん剤調製担当者が出勤し
て調製を行った。
【結果・考察】平成23年度の当院における薬剤師による抗
がん剤調製件数は、外来化学療法3046件、入院化学療法
1495件であり、そのうち休日実施分は125件であった。取
り組み開始後は、例外を除いたほぼ全ての抗がん剤調製を
薬剤師が適切な環境下で実施したため、病棟の作業環境汚
染と職業性曝露の防止に貢献できたと思われる。しかし、
用事調製が必要な薬剤や規定時間外の処方についての対応
が十分でないため、今後の課題として検討していきたい。
−236−
229 アプレピタント併用時のデキサメタゾン投与量の
調査
230 がん性疼痛に対するアセトアミノフェン高用量投
与の症例検討
1
済生会新潟第二病院 薬剤部
○須佐 充、上村 賢介、小竹 泰子、
村田 温子、横山 裕貴、田村 晶子、
安藤 嘉範
阿久根市民病院 薬剤科、
阿久根市民病院 消化器病センター
○岩下 佳敬1、長谷川 直美1、中尾 承司1、
岩崎 公美1、鳴海 由希子1、中山 佳苗1、
薗田 晃弘1、宝来 麻衣1、桑鶴 麻代1、
石田 和久1、坂元 昭彦2、今村 博2
2
【目的】済生会新潟第二病院(以下,当院)では ASCO
制吐剤使用ガイドライン等を参考に作成した院内制吐剤使
用基準(以下,使用基準)に基づき,レジメン毎に注射剤
及び内服薬のセットオーダを作成し,制吐剤使用の適正化
に努めてきた。しかし,中等度催吐性リスクでアプレピタ
ント(以下,Apr)使用可能レジメンは,セットオーダの
コメント欄にデキサメタゾン(以下,DEX)減量の注意
文を記載するのみで,Apr 併用時には医師が DEX 量を減
量する必要がある。内服薬は処方箋上に2剤が併記される
ため,減量忘れの確認が可能だが,注射用 DEX は処方箋
上で確認できないため,減量されずオーダされる危険性が
ある。そこで今回,当院における Apr 投与患者の注射用
DEX 使用量について調査したので報告する。
【方法】調査期間は平成23年9月1日から平成24年2月29
日とし,Apr 投与患者の化学療法名,DEX 使用量につい
て調査した。
【結果】Apr 投与患者は73名,のべ化学療法件数は232件
であった。適正な DEX 量で化学療法が行なわれた割合は
高 度 催 吐 性 レ ジ メ ン で79.
6%,中 等 度 催 吐 性 レ ジ メ ン
44.
6%であった。また,Apr 使用非推奨レジメンで Apr
が使用された割合は19.
0%であった。
【考察】当院では使用基準を作成し,制吐剤使用の適正化
に努めてきたが,DEX の不適切量や非推奨レジメンへの
使用が認められた。今後は適正使用推進のため,セット
オーダの改善やがん化学療法への薬剤師の積極的な関与が
必要であると考えられた。
231 骨髄異形成症候群治療におけるアザシチジンの使
用実態調査
【目的】2011年1月に、がん性疼痛等に対するアセトアミ
ノフェン(以下 AA と略す)の1日最大使用量が1500mg
から4000mg に増量された。当院においても、AA を以前
の1日上限1500mg を超えて使用する患者が増えてきたた
め、その有効性と従来から懸念されていた肝機能障害への
影響を検討したので報告する。
【方法】AA を1日1500mg 以上使用している患者を抽出
、AST、ALT の
し(調 査 期 間2011年1月∼2012年3月)
推移を調査した。緩和ケア病棟入院中の患者さんにおける
高用量 AA 投与前後での NRS の変動とレスキュー使用頻
度を調査 し た。統 計 学 的 処 理 は Wilcoxon signed­rank
test を用いた。
0±946.
8mg であった。NRS
【結果】AA の投与量は3140.
37であったのに対し、開始後では
は AA 投与開始前が4.
2.
80と減少していた(p<0.
05)
。レスキュー使用頻度は
94回/日であったが、開始後は3.
83回/日と減少
開始前5.
05)
。AA 投与開始前後3日間ではベース
していた(p<0.
のオピオイドの変動は無かった。肝機能が最終的に異常値
を示したのは10名中2名で あ り、そ の う ち Grade1が1
名、Grade2が1名であった。
【考察】AA の高用量はがん性疼痛に有効であることが確
認されたが、肝機能異常の患者も認められた。今回肝機能
異常が認められた患者は、2名とも多発肝転移の状態であ
り、病状進行による可能性も高い。AA 投与時は肝機能を
適切にモニターしながら使用することが重要であると考え
られる。
232 レナリドミド療法における副作用発現頻度の調査
1
岐阜市民病院 薬剤部、
岐阜市民病院 血液腫瘍センター
○大澤 友裕1、安田 昌宏1、梅田 道1、
長屋 雄大1、甲田 明英1、青山 智1、
水井 貴詞1、高橋 健2、後藤 千寿1
1
神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部、
2
神戸市立医療センター中央市民病院 免疫血液内
科
○森長 宏美1、北田 徳昭1、平畠 正樹1、
奥貞 佳奈子1、登 佳寿子1、山本 健児1、
石川 隆之2、橋田 亨1
【目的】アザシチジンは骨髄異形成症候群(MDS)に用
いられる薬剤である。本剤は4∼6コース以上の治療継続
が推奨されているが、当院では4コース未満で中止せざる
を得ない症例もみられる。今回アザシチジン治療の継続に
影響を及ぼす因子を把握することを目的とた調査を実施し
た。
【方法】2011年3月から同年12月までにアザシチジン単剤
を投与された22名について、診療録、看護記録および薬剤
管理指導記録より、投与量、施行コースおよび有害事象を
レトロスペクティブに調査した。副作用は施行コース中の
0により評価した。
最も grade の高いものを CTCAE ver4.
【結果】
アザシチジンの初回投与は75または50mg/m2で、
施行コース数の中央値は2コースであった。調査時点での
治療継続者は5名、感染症による治療中断6名、死亡2名
であった。一方発現頻度が50%以上の副作用は好中球減
少、赤血球減少、血小板減少、便秘、発熱、注射部位反応
であった。発熱は22例中11例(50%)で、薬剤投与期間に
多く発現していた。
【考察】今回の結果から、治療継続を妨げる要因として感
染症があげられた。また、発熱の多くは原因不明であっ
た。したがって、感染予防についての患者指導が重要であ
るとともにことから、薬剤投与期間における発熱には特に
注意しながらモニタリングするべきと考えられた。
2
【緒言】レナリドミドは好中球減少などの重篤な副作用が
報告されている。当院では原則、初回サイクルの4週間を
入院加療とし、その後は外来で治療を行うこととしてい
る。今回、長期間服用でのレナリドミドの適正使用と副作
用軽減の一助とするため、入院および外来治療における副
作用発現状況について調査した。
【方法】2010年9月から2011年4月までの期間に当院で多
発性骨髄腫に対してレナリドミドが処方された患者を6サ
イクル調査した。副作用発現状況は、診療録や検査データ
0−
等から収集し、重篤度をサイクルごとで CTCAE v4.
JCOG を用いて分類した。
【結果】対象患者は13名で、全例に副作用が発現した。主
9%)
、白血球減少:8
な副作用は好中球減少:10名(76.
5%)
、血小板減少、CRP 上昇、肝機能障害:各7
名(61.
8%)等であった。骨髄抑制をはじめ Grade3以
名(各53.
上の副作用の発現がみられ、とくに3サイクル目までに多
く発現した。中止に至ったのは1名のみであり、減量およ
び休薬によりほとんどの症例で治療継続可能であった。
【考察】レナリドミドの副作用は早期に高頻度で発現する
ことが明らかとなった。レナリドミドの導入は入院で行わ
れることから、早期に経時的な副作用情報を患者に提供
し、患者と情報を共有することで副作用の早期発見や長期
間の服用継続に貢献していきたい。
−237−
ポスター演題
233 がん化学療法レジメン情報の共有化と実態調査
234 がん性疼痛を有する血液透析患者の GDC 療法に
おいて副作用低減に寄与出来た一症例
広島赤十字・原爆病院 薬剤部
○高山 智行、宅江 良隼、今田 雅子、
上野 千奈美、土井 憲吾、坂本 健一、
樫本 考司、酒井 洋子、谷口 雅敏
1
仙台社会保険病院 薬剤部、
東北薬科大学
○千葉 貴志1、櫻井 雪子2、阿部
2
清彦1
【目的】当院では、がん化学療法レジメン(以下、レジメ
ン)情報の院内共有を目指し、簡略化したレジメン集を全
職員が閲覧できる体制を構築している。2008年11月の院内
3%(285/287)と
公開開始から約4年経過し、公開率99.
なったので、実態調査および内容の評価を行った。
【方法】投与スケジュール、投与量、点滴スケジュール、
注意事項の4項目構成のレジメン集を PDF 形式で院内
037名を対
Web 上に公開。2012年3月の2週間、全職員1,
象に、レジメン集の使用頻度、目的、内容についてのアン
ケート調査を実施。
7%、医師、看護師、薬剤師が
【結果】回収率は全体で69.
40.
7%,64.
9%,100%(以下同様)
。レジメン集の利用割
8%,49.
1%,100%、そのうち治療把握に利用
合は、22.
2%,87.
8%,77.
3%。リスクマネジメント
した割合は69.
9%,67.
6%,90.
9%。役
に貢献すると回答した割合は76.
4%,100%で、回答
に立ったと回答した割合は100%,88.
率 が 高 か っ た 上 位2項 目 は、医 師、薬 剤 師 は 投 与 ス ケ
ジュールと投与量で、看護師は点滴スケジュールと注意事
項であった。
【考察】使用した職員は、役に立つ、リスクマネジメント
に貢献すると感じているが、レジメン集の認知度が低く、
十分に活用されていないということが明らかとなった。ま
た職種間でレジメン把握における視点の違いがみられた。
今後、がん化学療法におけるチーム医療の促進と安全性の
確保を目指し、レジメン集の改良と啓蒙を行いたい。
【はじめに】がん化学療法はレジメンに基づき画一的に行
われている.そのため血液透析などのハイリスク症例では
副作用が過度に出る場合もあり得る.患者の治療経過に基
づいた副作用対策を策定すること及び患者と副作用に対す
る認識を共有することにより,がん化学療法における副作
用低減に寄与できた症例を経験したので報告する.
【症例】70歳男性,右腎盂癌.透析歴7年.疼痛管理にオ
キシコドン服用中.多発性転移疑われることから GDC 療
法目的にて入院した.
【経過・結果】1クール目 Day1施行2日後より嘔吐が
出現し,食事及び内服薬の摂取が困難となった.この一因
として透析という病態を考慮した水分制限下でのレジメン
では Day2以降の制吐剤がレジメンに組まれておらず十
分な制吐作用が得られなかったと考えられたため,2クー
ル目以降は制吐剤の予防的投与の提案を行った.またオピ
オイドに加えセベラマーを服用しており薬剤性の便秘が更
に嘔気を増幅していたと考えられた.病態,薬剤とその副
作用との関連性を患者に伝え排便コントロールの重要性を
理解してもらった上で積極的な下剤の服用を促し嘔吐を未
然に防ごうと試みた.結果クールを追う毎に嘔気症状軽減
し食事摂取量低下もみられなくなった.
【考察】ハイリスク症例におけるがん化学療法において,
治療経過に基づいたオーダーメイドであり且つ,患者と治
療方針を共有するコンコーダンスに根ざした服薬指導が有
用であると考えられた
235 腎機能低下時における Gemcitabine 投与による
骨髄抑制に関する検討
236 当院におけるエリブリンメシル酸塩の使用経験
1
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 薬剤部、
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 胸部一般外科
○山中 崇史1,2、平手 大輔1、山崎 将英1、
矢萩 秀人1、本郷 文教1、石井 生2、
加藤 弘明2、成田 吉明2
1
2
春日井市民病院 薬剤部、
2
春日井市民病院 外科
○鈴木 敦詞1、鈴木 大吾1、前田 剛司1、
坂田 洋1、松原 弘幸1、古田 美保2
【目的】膵臓がんをはじめ、プラチナ抵抗性再発卵巣がん
に対する Gemcitabine(GEM)療法は、サルベージ療 法
として有用性が示めされ、卵巣癌治療の新たな選択肢とし
ても考えられている。GEM の DLT である骨髄抑制のた
め、投与延期や減量されるケースも散見される。海外にお
いて腎障害時の GEM 投与量に関する臨床試験の報告があ
るが確立された減量規定はない。今回、腎機能と骨髄抑制
の関連性について調査したので報告する。
【方法】2011年9月∼2012年3月において膵臓がん、再発
卵 巣 が ん に 対 す る GEM 投 与 患 者 を 対 象 に、Cockroft­
Gault 式を用いて腎クレアチニンクリアランスを算出し、
CLcr≦50、CLcr>50の2群に分けた。血液毒性の程度分
0に準じ分類)および減量、延期の有無に
類(CTCAE v4.
関し、レトロスペクティブに調査・解析した。
【結果・考察】当院で GEM 療法を施行した患者34例の年
齢 中 央 値66(37−83)歳、CLcr≦50群(7例)で は 全 例
7%)に お い て 減
に、CLcr>50群(27例)で は18例(66.
1%)
、
量・休 薬 措 置 が 行 わ れ た。CLcr≦50群4例(57.
3%)で Grade3−4の 血 液 毒 性 が
CLcr>50群9例(33.
認められた。腎障害患者を対象とした第1相試験の結果で
は、薬物動態に大差はなく、GEM のクリアランスと腎機
能の間には有意な相関はないとされているが、使用成績調
査の結果では、腎障害患者において副作用発現頻度が有意
に高いことから、初回投与時には、減量も考慮し、安全な
投与設計支援を行うことも薬剤師の責務である。
【目的】
当院では新規抗癌剤エリブリンを2012年4月現在、
再発乳癌8例に使用している。今回、これらの症例で経験
した有害反応の発現状況から本剤の外来化学療法における
安全性を検討したので報告する。
【方法】入院導入5例と外来導入3例の全8例のカルテか
ら、エリブリン導入前の治療歴、投与量、治療期間、有害
反応の発現状況について後ろ向きに調査した。
【結果】エリブリン導入前治療で施行されたレジメン数は
4、初回投与量は平均1.
18mg/m2、病勢進行のため
平均6.
無効と判断され投与終了した症例は5例であり、その平均
8日であった。有害反応は国内臨床試験結果
治療期間は77.
と同様の頻度で見られたが、味覚障害5例、掻痒感4例が
みられた。入院導入したうち2例で grade4の好中球減少
が見られたが、G­CSF 製剤使用により速やかに回復し、
次クールへの影響は見られなかった。その他の有害反応も
軽度であったため、その後の本剤の導入は外来で行なわれ
た。外来導入3例についても発熱性好中球減少症(FN)
等の重篤な有害反応はみられなかった。
【考察】本剤による好中球減少は遷延せず、FN の発症も
見られなかったことから、比較的安全に外来での化学療法
の実施が可能と考えられた。また、発現頻度の高い味覚障
害や掻痒感に対しては、他の抗癌剤施行時に使用される薬
剤や処置が有効であった。今後は、本剤使用時の有害反応
に対する支持療法を統一し、レジメンへ反映させていきた
い。
−238−
237 抗がん剤曝露対策の患者教育用説明書の有効性
238 肺がんカルボプラチン併用療法におけるアプレピ
タントの有用性
1
関西電力病院 薬剤部、
関西電力病院 化学療法室、
3
関西電力病院 外科
○倉橋 基尚1、眞継 賢一1、中尾 祐子1、
松本 里佳2、井上 直也2,3、濱口 良彦1
2
1
鹿児島厚生連病院薬剤科、
鹿児島厚生連病院看護部、
3
鹿児島厚生連病院呼吸器外科
○新川 純平1、末廣 淑子1、上原 友美1、
菱川 真衣1、山路 智凡1、池増 鮎美1、
神門 孝典1、佐多 照正1、田中 和子1、
圓山 香代子2、横枕 直哉3、西島 浩雄3
2
【目的】抗癌剤投与後の患者の尿や分泌物の取り扱いにつ
いて、十分な対策がとられていないのが現状である。関西
電力病院では患者向け抗がん剤曝露説明書を作成し、抗が
ん剤投与患者とその家族に対し曝露対策の説明を開始した
のでその有用性を検討した
【方法】抗がん剤曝露説明書の評価のため,2011年8月か
ら11月の期間に当院で初回化学療法が施行された患者を対
象に抗がん剤曝露の説明に対する意識調査と内容に関して
アンケート調査を行った。
【結果】アンケートは43名に対して配布し,31名から回答
1%であった。アンケー
を得た。アンケートの回収率は72.
ト結果は、曝露対策は「本人・家族ともに知っておくべき
7%)と多かった。抗がん剤曝露の
だと思う」が30名(96.
「対策を取ろうと思うか」という設問では「実際に対策を
7%)と最も多く,「1部取ろ
取ろうと思う」が30名(96.
3%)であった。
うと思う」が1名(3.
【考察】説明書に対する患者アンケートの結果,患者は曝
露対策に関心が高く,対策内容も家庭で実施可能であるこ
とが確認された。抗がん剤曝露説明書を作成し,医療者側
が統一した内容で患者に曝露対策の説明を行う事で,安全
な抗がん剤治療に貢献できたと考えられた。
239 消化器がん化学療法におけるアプレピタントの有
用性と薬剤科の取り組み
【目的】肺がん化学療法においてカルボプラチンは汎用さ
れる薬剤であるが、治療の継続を困難とする悪心・嘔吐が
問題となる。その対策として期待されるアプレピタントを
用いた制吐療法は服用方法が煩雑であり、当院薬剤科では
必ず投与毎に服薬指導をおこなっている。今回アプレピタ
ント服用遵守率を確認しアプレピタントの使用が治療の継
続に影響を与えるのか比較検討した。
2011年3月から2012年3月までの当院カルボプ
【方法】1.
ラチンを併用する呼吸器がん化学療法施行患者を調査し、
アプレピタント服用遵守状況を電子カルテより抽出し確認
アプレピタント服用の有用性が治療継続に及ぼす
した。2.
影響の効果を調査した。
カルボプラチン併用療法におけるアプレ
【結果・考察】1.
ピタントの使用率は約45%であり、その服用は遵守されて
治療継続期間はアプレピタントを使用した症例で
いた。2.
平均約147日、アプレピタントを使用しなかった症例で平
均約100日であった。さらにアプレピ タ ン ト 使 用 後、悪
心・嘔吐により減量、中止した症例はなかった。このこと
よりアプレピタントを用いる制吐療法は治療継続に有用で
あり、薬剤師がアプレピタントの正確な服用を指導するこ
との必要性が示唆された。
240 長崎大学病院における制吐剤を含む外来患者レジ
メンチェックシステムの構築と評価
1
鹿児島厚生連病院薬剤科、
鹿児島厚生連病院看護部、
3
鹿児島厚生連病院外科
○上原 友美1、末廣 淑子1、新川
菱川 真衣1、山路 智凡1、池増
神門 孝典1、佐多 照正1、田中
圓山 香代子2、田辺 寛3、小倉
長崎大学病院 薬剤部
○山口 健太郎、神田 紘介、中川 博雄、
樋口 則英、中村 忠博、北原 隆志、
佐々木 均
2
純平1、
鮎美1、
和子1、
芳人3
【目的】 抗がん剤投与に伴う悪心・嘔吐(Chemotherapy
Induced Nausea and Vomiting: CINV)対策として、当院
消化器科では症状に応じてアプレピタントを用いた制吐療
法を併用することになり、薬剤科では処方確認と服薬毎の
指導を行うこととした。今回、その取り組みの効果とアプ
レピタントの使用状況について報告する。
【方法】1.
アプレピタント・デキサメタゾン併用における
処方漏れ及び服薬過誤を防ぐために薬剤師が必ず確認・指
導を行う体制を構築した。2.
高度或いは中程度 CINV リ
スクのある抗がん剤使用患者におけるアプレピタントの服
用状 況 に つ い て 調 べ た。3.
アプレピタント使用患者の
CINV の現状について調べた。
【結果・考察】1.
化療施行毎に薬剤師が確認するように
セットパス使用をマニュアル化した結果、処方漏れは生じ
ず、服薬は厳守されていることが確認できた。2.
アプレピ
タント使用率は、大腸癌レジメンで FOLFOX 療法施行例
が最も高く(73.
3%)
、胃癌レジメンで S−1+シスプラ
チン療法施行例が最も高かった(83.
3%)
。3.
施行レジメ
ンに関わらず CINV は制御され、37例中15例で減量が生
じたが、CINV が原因と考えられるものはなかった。 以
上の結果により、アプレピタントは CINV に有用であり、
薬剤師が積極的に服薬厳守に介入することも重要であると
考えられた。
【目的】がん化学療法において、抗がん剤の過量投与など
を未然に防ぐレジメンチェックは、がん化学療法を安全に
遂行するという点から非常に重要な薬剤師の役割である。
また適切な制吐療法の選択に薬剤師が寄与することは、患
者の QOL を守り意義が大きい。その一方で制吐剤を含む
レジメン内容をチェックすることは時間と労力を要する作
業である。そこで我々は多くの患者の制吐剤を含むがん化
学療法を効率的にチェックするための 簡 便 な レ ジ メ ン
チェックシステムを構築し評価を行ったので報告する。
【システム概要】レジメンチェックシステムには、当院電
子カルテのレジメンオーダから薬剤部門システム
(TOSHO 社製)に伝達される注射オーダのデータを利用
し、レジメンチェック用のチェックシートを出力させた。
チェックシートにはレジメン名称、当該患者の当日分と過
去分の抗がん剤、制吐剤の投与量、休薬期間などレジメン
チェックに必要な項目が自動的に印字されるようにした。
【結果と考察】従来の Excel にレジメン内容を記録する方
法に比べ、今回構築したレジメンチェックシステムによっ
て本システムの初心者でも短時間で抗がん剤および制吐療
法のレジメンチェックを行う事が出来た。本システムの導
入は、抗がん剤調製件数が増加する状況では有用と考えら
れた。本システムの改善点および新たに発生した問題点を
整理し、今後の本システムの改善が必要な点についても報
告する。
−239−
ポスター演題
241 北里大学東病院におけるオピオイドローテーショ
ンの実施状況および投与量換算比に関する研究
242 Gefitinib 治療歴を有する患者に対する erlotinib
の有用性に関する検討
1
北里大学 薬学部、
北里大学東病院
○小林 舞1、川野 千尋1,2、飛田
平山 武司1,2、黒山 政一1,2
1
独立行政法人国立病院機構 長良医療センター
薬剤科、
2
岐阜薬科大学 実践社会薬学研究室、
3
独立行政法人国立病院機構 長良医療センター
呼吸器内科
○中島 誠1,2、野村 美枝1、後藤 拓也1、
森 理恵1、三島 信行1、加藤 達雄3、
杉山 正2
2
夕紀1,2、
【目的】がん疼痛治療法においてオピオイドローテーショ
ン(以下、OR)が繁用されている。そこで、当院におけ
る OR の実施状況および投与量換算比をレトロスペクティ
ブに調査した。
【方法】2003年10月∼2008年10月に入院で OR が実施され
た患者を抽出し、その内訳および投与量換算比を検討し
た。なお、本研究は北里大学医学部倫理委員会の承認のも
と実施した。
【結果】対象期間に OR が実施された症例は全932症例で
あり、使用薬剤上位3剤は、OR 前がオキシコドン徐 放
錠:375例(40.
2%)
、モルヒネ持続静注:180例(19.
3%)
、
フェンタニル貼付剤:143例(15.
3%)
、OR 後はモルヒネ
持続静注:420例(45.
1%)
、フェンタニル貼付剤:297例
(31.
9%)
、オキシコドン徐放錠:93例(10.
0%)であっ
た。実施された OR は、オキシコドン徐放錠からモルヒネ
持続静注205例(22.
0%)
、オキシコドン徐放錠からフェン
タニル貼付剤127例(13.
6%)
、フェンタニル貼付剤からモ
ルヒネ持続静注102例(10.
9%)
、モルヒネ持続静注から
フェンタニル貼付剤89例(9.
6%)
、モルヒネ持続静注から
オキシコドン徐放錠55例(5.
9%)であった。
【考察】当院における OR はオキシコドン徐放錠、モルヒ
ネ持続静注、フェンタニル貼付剤の3剤間によるものが全
体の70%を占めることが明らかとなった。薬剤師としてこ
れら3製剤における薬物動態的特徴や切り替え方法、換算
比などを熟知している必要がある。現在、それぞれの投与
換算比を解析中である。
243 EC 療法に対する選択的 NK1受容体拮抗薬の効果
1
岐阜県立多治見病院 薬剤部、
2
岐阜県立多治見病院 化学療法室、
3
岐阜県立多治見病院 乳腺内分泌外科
○松由 幸司1,2,3、森畑 和代1、上田 志穂1、
佐藤 和也1、櫻井 由美子2、渡辺 智恵2、
渡辺 順子2、岡本 淳子2、山田 麻予2、
塚原 民夫1、宇佐見 文隆1、柏 毅彦1、
大野 元嗣3
【目的】Gefitinib(GEF)と erlotinib(ERL)は共に非小
細胞肺癌の適応を有し、EGFR に作用する薬剤である。長
良医療センターにおいて、がん病変の増悪または副作用に
より GEF 治療が終了した患者に対し、ERL を投与した症
例を数例経験した。そこで、GEF による治療歴を有する
患者に対する ERL の有用性について検討した。
【方法】2008年3月∼2012年2月に長良医療センターにて
ERL が投与され、かつ GEF による治療歴がある患者を対
象とし、ERL の治療効果、治療成功期間(TTF)等を診
療録より後方視的に調査した。
【結果】11例が対象となり、患者属性は男/女:4/7、
、組織型;全例 腺 癌、EGFR
年齢中央値;67歳(44−79)
遺伝子変異;有/無/不明:8/0/3であった。がん病
変の増悪にて GEF を終了した8例の ERL の治療効果は、
奏効が2例、がん病変の増悪抑制が2例、無効が4例であ
)であった。副作用に
り、TTF は95±80日(mean S.D.
て GEF を終了した3例の ERL の治療効果は、奏効が1
例、がん病変の増悪抑制が2例であり、治療継続中の1例
を除いた2例の TTF は193±15日であっ た。な お、GEF
の副作用はいずれも間質性肺炎ではなかった。
【考察】GEF による治療歴がある患者に対しても、ERL
は治療選択肢の一つとなり得ると考えられた。特に、副作
用により GEF を早期に終了した患者に対しては、ERL は
有用である可能性が考えられた。
244 ソラフェニブ薬疹患者への減感作療法導入におけ
る薬剤師の処方支援
1
兵庫県立加古川医療センター薬剤部、
加古川医療センター消化器内科、
3
加古川医療センター皮膚科
○大村 真砂美1,2,3、藤原 康浩1、
三輪 祐太朗1、馬場 奈津美1、
山田 よう子1、大谷 美奈子1、大野 真孝1、
高橋 知孝1、合田 泰志1、垣尾 尚美1、
兵頭 純子1、松本 敏明1、尹 聖哲2、
足立 厚子3
2
【目的】乳癌治療において、内分泌反応性が不完全か非反
応性である場合や、ホルモン療法が無効となった場合は化
学療法が行われることが多い。第一選択の1つであるエピ
ルビシン+エンドキサン療法(以下、EC 療法)は脱毛に
よる精神的苦痛を与え、さらに骨髄抑制や消化器症状が治
療継続不能となることがある。最近になり選択的 NK1受
容体拮抗制吐薬の内服薬(アプレピタント:以下、AP)
と 注 射 薬(ホ ス ホ ア プ レ ピ タ ン ト メ グ ル ミ ン:以 下、
FAM)が発売され、強い制吐作用が期待されている。そ
こで、EC 療法におけるこれらの効果を比較検討したので
報告する。
【方法】2010年1月より2012年3月の期間に、乳癌の術後
化学療法として EC 療法が選択され、かつ演者が投与開始
前に直接面談を行った患者を調査対象とした。調査は診療
記録より後ろ向きに行った。
【結果】症例数はそれぞれ AP 群:13例、FAM 群:14例
であった。制吐作用に優位な差はなく、どちらの群も G3
以上の嘔気はみ ら れ な か っ た。重 篤 な 副 作 用 と し て は
FAM 群に静脈炎が1例みられた。
【考察】今回の調査では制吐作用に有意な差はみられな
かった。FAM 群でみられた静脈炎はファルモルビシンの
影響であると思われるが、FAM 投与中から血管痛を訴え
ていたことを考えると FAM の副作用も否定できない。血
管痛のことを考えると AP の内服が無難な選択であるとは
思うが、患者の状態や生活環境を考えて剤形を選択すれば
いいと思われる。
【目的】当院では多型紅斑型薬疹発現のためソラフェニブ
の投与が中止された患者に対して減感作療法を導入し、こ
れまで3例の肝細胞癌患者に実施した。導入にあたり薬剤
師は、医療スタッフ間の患者情報の共有化と治療の安全性
を確保するため、様々な処方支援を実施したので報告す
る。
【方法】処方支援については以下の方法で行った。
(1)
減感作療法(Day1∼8)に使用する8種類のソラフェニ
ブ希釈溶液のオーダーについて電子カルテにセット処方を
作成した。
(2)ソラフェニブ希釈溶液の院内製剤調製法
を作成した。
(3)ソラフェニブ減感作療法の運用手順と
投与プロトコールを作成し、投与スケジュール変更への対
応や、各医療スタッフが治療経過等を記入できるよう Excel 形式で電子カルテに掲載した。
(4)ソラフェニブ希釈
溶液取り扱い時の被曝に対する安全対策について情報提供
を行った。
【結果】薬剤師が実施した上記の支援策により、3症例に
ついて円滑に投与スケジュールを完遂し、最終的にはソラ
フェニブ標準投与量の内服が可能となった。
【考察】ソラフェニブ減感作療法は40ng/mL∼60mg/mL
に濃度調製した希釈溶液を使用し、投与スケジュールも非
常に煩雑な治療法である。投与プロトコール作成等の治療
の標準化により、医療スタッフの役割分担を明確にし、患
者情報の共有化により相互の連携を図ることで煩雑な治療
法においても薬物治療の安全性の確保に貢献できたと考え
る。
−240−
245 尿路上皮癌に対するアプレピタントの性別による
制吐効果の比較
246 肺がん化学療法におけるベバシズマブ誘発性高血
圧に対する降圧剤の検討
1
1
2
2
がん研有明病院 薬剤部、
がん研有明病院 泌尿器科
○杉崎 崇人1、戸谷 渡1、鈴木
青山 剛1、川上 和宜1、湯浅
米瀬 淳二2、濱 敏弘1
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部、
静岡県立静岡がんセンター 循環器内科、
3
静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科
○石川 寛1、大西 智久1、鈴木 賢一1、
篠 道弘1、村岡 直穂2、山本 信之3
亘1、
健2、
【目的】抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心・嘔吐は、患者に
とって苦痛を生じる副作用の一つである。それに対して、
NK−1受容体拮抗薬であるアプレピタントは、2009年12
月より本邦でも使用されるようになった。しかし、悪心・
嘔吐について性別を考慮した検討は少なく、尿路上皮癌に
対するアプレピタントの制吐効果を性別の違いにより比較
検討した。
【方法】2008年12月から2011年8月の間にシスプラチンと
ゲムシタビンを併用するレジメンを導入した尿路上皮がん
患者において、コントロール群(アプレピタント非併用)
とアプレピタント併用群の2群に分け、性別によるアプレ
ピタントの有効性の検討を行った。電子カルテを用いて後
方視的に調査した。主要評価項目は嘔吐制御率とした。
【結果】男性における嘔吐制御率は、コントロール群では
15/18名(83.
4%)
、アプレピタント併用群では26/27名
3%)であった。女性における嘔吐制御率は、コント
(96.
5%)
、アプレピタント併用群
ロール群では5/11名(45.
0%)であった。
では10/13名(77.
【考察】性別で嘔吐制御率を比較すると、コントロール群
及びアプレピタント併用群の両群において、男性より女性
のほうが低く、既存の報告と同様であることが確認でき
た。しかし、アプレピタントを使用しても、女性の方が男
性より嘔吐制御率は低いことから、女性に対しては、十分
な指導及び対策が必要である。
【目的】ベバシズマブ(以下、BV)の主な有害事象とし
て高血圧がある。直腸・結腸がんの報告では、BV の 減
量・中止の要因として高血圧とタンパク尿が最も多い。し
かし、BV 誘発性高血圧に関連する高血圧管理について、
確立されたガイドラインはない。そこで、薬剤師主導で
BV 誘発性高血圧に対する降圧剤の選択や使用方法に関し
て検討を行った。
【方法】BV 誘発性高血圧に対する降圧剤を、降圧効果と
タンパク尿のコントロールに重点をおいて選択した。その
後、循環器内科医師と降圧剤の選択や使用方法、循環器内
科への紹介基準の検討を行い、治療指針を作成した。その
治療指針を呼吸器内科医師へ提案した。
【結果】当院呼吸器内科における BV 誘発性高血圧に対す
る降圧剤の治療指針を決定した。・第一選択 ARB:3
剤のうちいずれかで開始テルミサルタン 20mg/日バル
サルタン40mg/日カンデサルタン 4mg/日・第二選択
上記を増量しても降圧目標に達しない場合、上記より変更
オルメサルタン 40mg/日 ・第三選択 上記でも降圧
目標に達しない場合、以下のいずれかを追加 Ca 拮抗剤:
アゼルニジピン、アムロジピン
【考察】今回、薬剤師から降圧剤の選択や使用方法、循環
器内科への紹介基準に関して、提案型の業務を展開するこ
とができた。今後は、BV 誘発性高血圧に対して具体的に
選択された降圧剤とその降圧効果、タンパク尿のコントー
ルについて調査を行い、本治療指針の評価を行いたい。
247 グリオーマ細胞の浸潤・転移における Contactin associated protein(Caspr)1の役割
248 Gemcitabine 耐性膵癌細胞での CNT1と RRM
1の関わり
1
1
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 薬物動態
制御学、
2
鹿児島大学病院 薬剤部、
3
長崎国際大学 薬学部 薬学科 臨床薬理学
○益田 将吾1、二川 俊隆1,2、山口 沙織1、
池田 龍二2、山田 勝士3、武田 泰生1,2
【目的】Contactin associated protein(Caspr)は一回膜
貫通型の細胞接着分子群であり、そのひとつである Caspr
1は主に神経軸索に発現しており、ミエリンの形成や維持
に関与することが知られている。近年、Caspr 分子群が神
経膠腫(グリオーマ)をはじめ数種の癌細胞において発現
しており、悪性化に関与する可能性が示唆されている。し
かしながら、その発現の意義や機能の詳細は明らかにされ
ていない。本研究では、Caspr 分子群のグリオーマ細胞で
の発現を検討するとともに、神経系において特に解析が進
んでいる Caspr1に着目し、グリオーマにおける悪性度
(浸潤・転移)との関係を調べることを目的とし検討を
行った。
【方法・結果】3種のグリオーマ細胞株において Caspr1
の 発 現 が 認 め ら れ た(RT­PCR、Western­blot 法)
。次
に、癌細胞の浸潤・移動を調べたところ、Caspr1の強制
発現により浸潤・移動が低下し、Caspr1のノックダウン
により亢進した(Matrigel invasion assay、scratch assay)
。さらに、浸潤や血管新生に関係する遺伝子の発現を
調 べ た と こ ろ、Caspr1の 強 制 発 現 に よ り MMP−2、
VEGF­A の mRNA 発現が減少し、Caspr1のノックダウ
ンによ り MMP−1、MMP−2、VEGF­A、VEGF­C、
VEGF­D の mRNA 発現が増加した(Real­time PCR)
。
【結 論】Caspr1が マ ト リ ッ ク ス 分 解 酵 素 MMP フ ァ ミ
リー分子や血管内皮増殖因子 VEGF ファミリー分子を介
してグリオーマ細胞の浸潤・転移を制御する可能性が示唆
された。
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 薬物動態
制御学、
2
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 分子腫瘍学、
3
徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス 腫瘍
内科学、
4
長崎国際大学 薬学部 臨床薬理学、
5
鹿児島大学 水産学部 食品資源利用学
○南 謙太朗1,2、山本 雅達2、河原 康一2、
小松 正治5、池田 龍二1、田畑 祥3、
秋山 伸一3、山田 勝士4、武田 泰生1、
古川 龍彦2
【目的】ゲムシタビンは膵癌の治療に中心的に用いられて
いる抗癌剤であるが、耐性の出現が問題となっている。そ
こで、膵癌細胞株 MIAPaCa−2細胞からゲムシタビン耐
性株 MGEM6細胞と MGEM8細胞を樹立して耐性機構の
解析を行った。
【結果】両耐性株はゲムシタビンに対して親株より MGEM
6:60倍、MGEM8:30倍耐性があった。両耐性株はゲム
シタビンの取り込みが減少し、細胞内の蓄積が30%以下に
低下していた。ゲムシタビンの取り込みには核酸輸送体で
ある CNT1、ENT1、ENT2が関与すると考えられてお
り、各輸送体の阻害条件下でゲムシタビンの蓄積を比べる
と CNT1と ENT2による取り込みが減少していた。さら
に CNT1の発現低下が確認できた。MGEM6細胞に CNT
1を強制発現させた MGEM6/CNT1−17細胞では、ゲ
ムシタビンの蓄積は親株と同等まで回復し、感受性は約3
倍増加した。しか し、MGEM6/CNT1−17細 胞 は な お
耐性であった。また、MGEM6細胞や MGEM8細胞では
リボヌクレオチドレダクターゼの構成成分で、すでに、耐
性の原因として報告のある RRM1の発現が親株より上昇
していたため、MGEM6細胞で RRM1をノックダウンす
るとゲムシタビンへの感受性を親株と同等までに高めるこ
とができた。
【結語】MGEM6細胞と MGEM8細胞では CNT1の発現
低下と RRM1の発現増加がゲムシタビン耐性機構に重要
であることが示唆された。
−241−
ポスター演題
249 5−aza−2−deoxycytidine(5−Aza)によ
る5−fluorouracil(5−FU)の抗腫瘍効果増強
作用の機序解明
250 当院におけるペメトレキセド併用プラチナベース
レジメン投与時の有害事象についての考察
広島市立安佐市民病院 薬剤部
○古谷 智裕、北本 真一、白木
柳田 祐子、藤井 静香、長崎
1
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 薬物動態
制御学分野、
2
鹿児島大学病院 薬剤部、
3
徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス 腫瘍
内科、
4
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 分子腫瘍
学分野、
5
長崎国際大学 薬学部 薬学科 臨床薬理学
○西澤 由紀彦1、池田 龍二2、田畑 祥3、
田實 裕介1,2、牛山 美奈2、山本 雅達4、
山田 勝士5、古川 龍彦4、武田 泰生1,2
政博、
信浩
【目 的】5−fluorouracil(5−FU)は、ピ リ ミ ジ ン 代 謝
拮抗薬であり、他の抗がん剤と併用で広範な腫瘍に対して
用いられる。近年の研究により、5−FU に5−aza−2−
deoxycytidine(5−Aza)を 併 用 さ せ る こ と で、5−FU
の細胞増殖抑制効果が増強することが明らかになっている
が、その詳細な機序については不明である。本研究では、
5−FU の活性代謝酵素の1つである thymidine phosphorylase(TP)に着目し、5−Aza による5−FU の細胞増
殖抑制効果増強の機序解明を目的とし、検討を行った。
【方法】5−FU の感受性を MTT assay 法により、タン
パク質発現を Werstern blotting 法により、mRNA は RT­
PCR 法により評価した。
【結果】ヒト咽頭がん細胞(KB−3−1)に、5−FU・
5−Aza を併用することにより、5−FU の感受性が亢進
した。また、その効果は TP 阻害剤を細胞に添加すること
によって抑制された。さらに、KB−3−1細胞に5−Aza
を処理すると TP 発現が亢進し、一方、Sp−1siRNA の処
理により、TP 発現は抑制された。
【考察】5−Aza による5−FU の細胞増殖抑制効果の増
強作用は TP プロモーターの脱メチル化により TP の発現
の亢進に起因し、その TP の発現亢進には Sp−1が重要で
あることが示唆された。今回得られた知見は、5−Aza に
よる5−FU の抗腫瘍効果増強の機序を明らかにし、新た
ながん化学療法として5−FU・5−Aza 併用の有用性を
示すものである。
【目的】進行非扁平上皮がんの非小細胞肺がん患者におい
てペメトレキセド(PEM)とシスプラチン(CDDP)や
カルボプラチン(CBDCA)のプラチナ系抗がん剤の併用
療法が推奨されている。今回我々は入院で PEM を含むレ
ジメンを施行された患者の有害事象を調査し報告する。
【方法】2011年1月から2011年12月までに、当院呼吸器内
科で PEM を含むレジメンが開始となり入院で治療を行っ
た患者を選出した。調査項目は、皮膚症状の有無、白血
球、好中球、血色素量、血小板、血清クレアチニン値、
AST、ALT とした。
1歳
【結果】対象は33名(男性23、女性10)平均年齢は67.
(45∼79歳)であった。レジメン内訳 は CDDP+PEM が
29コース、CBDCA+PEM が49コースであった。主な有害
事象は皮膚症状、好中球減少、血小板減少であり全コース
97%)であっ
を通じて皮膚症状を発症した症例は7件(8.
た。Grade3以 上 の 好 中 球 減 少 が 生 じ た 症 例 は23件
49%)
、その内20件(86.
96%)が CBDCA 併用レジ
(29.
メンであった。また grade3以上の血小板減少が生じた症
82%)
、そ の 内10件(100%)が CBDCA 併
例 は10件(12.
用レジメンであった。
【考察】CDDP 併用から治療を開始し、腎機能低下等の
要因により CBDCA 併用の治療に切り替えた場合は特に
好中球減少や血小板減少に注意が必要である。皮膚症状に
おいては入院加療中には問題なかったが、外来フォローか
ら発症した症例もあった。患者への情報提供にはこれら有
害事象について重要視すべきと思われる。
251 アカシア樹皮ポリフェノールの各種 CYP 分子種
の代謝活性に及ぼす影響
252 メントールは肝臓の Cytochrome P450の発現を
誘導し、ワルファリンの作用を減弱させる
星薬科大学 薬動学教室
○小川 壮介、五十嵐 信智、一澤
今堀 由賀里、木村 真希、伊藤
落合 和、杉山 清
1
星薬科大学 薬動学教室、
星薬科大学 実務教育研究部門
○星野 心広1、五十嵐 信智1、津久井 誠1、
内藤 梨奈1、黒川 朝子1、鈴木 緑1、
北澤 悦子1、落合 和1、町田 昌明2、
杉山 清1,2
2
砂央里、
清美、
【目的】近年、健康食品素材が薬物代謝酵素 Cytochrome
P450(CYP)の活性に対して影響を及ぼすとの報告が多
くなされている。我々はこれまでに、アカシアの樹皮から
得られる新規ポリフェノール(アカシア樹皮ポリフェノー
ル)が強力な抗肥満作用、抗糖尿病作用および抗アレル
ギー作用を示すことを明らかにしてきた。本研究では、主
要な CYP 分子種に対するアカシア樹皮ポリフェノールの
阻害活性について、in vitro 試験により評価した。また、
アカシア樹皮ポリフェノールの阻害作用の相対的強度を知
る目的で、緑茶ポリフェノールの阻害活性を合わせて検討
した。
【方法】High throughput inhibitor screening kits(BD Gentest)を用いて、CYP3A4、1A2、2C9、2C19、2
D6および2E1の活性に及ぼすアカシア樹 皮 ポ リ フ ェ
ノール(0−500µg/mL)および緑茶ポリフェノー
ル(0−500µg/mL)の影響を調べた。
【結果・考察】CYP3A4に対するアカシア樹皮ポリフェ
1µg/mL、CYP1A2に 対 す
ノ ー ル の IC50値 は9.
1µg/mL、CYP2C9に 対 す る IC50
る IC50値 は9.
値 は6.
4µg/mL、CYP2C19に 対 す る IC50値 は5.
2
µg/mL、CYP2D6に対する IC50値は6.
8µ
5µg/mL
g/mL、CYP2E1に 対 す る IC50値 は13.
であった。一方、緑茶ポリフェノールの CYP 阻害活性の
IC50値は、アカシア樹 皮 ポ リ フ ェ ノ ー ル と ほ ぼ 同 じ で
あった。以上のことから、適量のアカシア樹皮ポリフェ
ノールの摂取は、CYP に対して大きな影響を及ぼさない
ものと考えられる。
【目的】抗凝血薬であるワルファリンは作用発現に個人差
が大きいため、INR を指標として投与量が厳密にコント
ロールされている。最近、臨床において、メントールがワ
ルファリンの抗凝血作用を減弱する可能性が報告された。
本研究では、メントールによるワルファリンの作用減弱に
ついて、ワルファリンの肝臓での代謝過程に着目し、検討
を行った。
【方法】実験1:マウスにワルファリン単独、あるいはワ
ルファリンとメントールを同時に2日間経口投与し、INR
を測定した。実験2:マウスにメントールを3日間経口投
与し、肝臓の Cyp2c29および Cyp3a11の mRNA 発現量
を測定した。また、肝臓ミクロソーム画分を調製し、Cyp
2c および Cyp3a のタンパク質発現量を検出した。
【結果および考察】実験1:ワルファリン投与前の INR
9であったのに対し、ワルファリンを2日間投与した
は0.
8まで上昇した。ワルファリン投与により
あとの INR は1.
INR が上昇したマウスに対して、メントールとワルファ
9まで低下した。
リンを2日間併用したところ、INR は0.
実験2:メントール投与群の肝臓における Cyp2c29およ
び Cyp3a11の mRNA 発現量は、Control 群に比べて有意
に高かった。また、Cyp2c および Cyp3a のタンパク質
発現量も、Control 群と比較して有意に高かった。本研究
の結果から、メントールは肝臓の Cyp2c および Cyp3a
を誘導することにより、ワルファリンの抗凝血作用を減弱
させている可能性が示唆された。
−242−
253 麻杏甘石湯における生薬原料間相互作用の検討
254 ワルファリンのタンパク結合に及ぼすメトロニダ
ゾールの影響
富山大学 薬学部 医療薬学研究室
○北山 祥平、岡崎 史泰、藤 秀人
1
武蔵野大学 薬学部、
済生会横浜市南部病院 薬剤部
○橋本 美香1、吉牟田 文乃1、嶋田 憲人1、
工藤 敏之1、飯田 純一1,2、加賀谷 肇2、
伊藤 清美1
2
【目的】
薬物間相互作用は、種々の検討がなされてきたが、
様々な生薬原料を用いて調製される漢方薬の生薬原料間相
互作用に関する検討はほとんどなされていない。本研究で
は、麻杏甘石湯における生薬原料間相互作用への影響につ
いて検討した。
【方法】定法にしたがい煎じる麻杏甘石湯投薬群と麻杏甘
石湯から石膏を除いて煎じる去石膏投薬群に分け、それぞ
れを7週齢雄性 SD ラットに投薬し、血漿中グリチルレチ
ン酸(GA)濃度を測定した。また、石膏含有量を段階的
に変えて煎じた麻杏甘石湯の煎じ液中のグリチルリチン
(GL)濃度を測定した。さらに、ラットに GL 単剤また
は石膏の併用投薬を行い、血漿中 GA を測定した。薬物の
測定には、HPLC を用いた。
【結 果・考 察】去 石 膏 群 の GA の 血 中 濃 度 下 面 積
(AUC0−∞)は、麻杏甘石湯投薬群と比較し、約2倍高値
を示した。次に、石膏含量を変化させ麻杏甘石湯を煎じた
ところ、石膏の用量依存的に GL の抽出率は顕著に低下
01)
。
し、去石膏時と比較して最大で33%減少した(p<0.
さらに、GL 単剤投薬は、GL と石膏の併用と比較し、約
38%高い AUC0−∞を示した。以上より、麻杏甘石湯に含
まれる石膏が、本剤の有効成分の一つである GA の生物学
的利用率を約50%も低下させることが明らかとなった。今
後、効果的な漢方薬治療を実施するためには、生薬原料間
相互作用を検討することが重要であると考える。
255 ヒト肝腫瘍由来細胞株 HepaRG 細胞における薬
物代謝酵素の発現に対するメトロニダゾールの影響
【目的】メトロニダゾール(MTZ)の添付文書において、
ワルファリン(WAR)と併用すると、WAR の抗凝血作
用の増強によって、出血等が現れることがあると記載され
ている。しかし、MTZ と WAR の詳細な相互作用メカニ
ズムは解明されていない。ラットを用いた in vivo 実験に
おいて、MTZ の併用により WAR の血清中非結合型分率
が上 昇 し た と い う 知 見 が あ る こ と か ら、本 研 究 で は、
WAR のアルブミンへの結合に及ぼす MTZ の 影 響 を in
vitro 実験により検討した。
【方法】4%ウシ血清アルブミン(PBS 溶液)に WAR(10−
400µM)および MTZ(0−500µM)を添加
し、37℃で15分 間 イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン し た 後、Amicon
Ultra−4Centrifugal Filter Devices を用いて限外濾過を
行った。濾液中の WAR を LC­MS により定量し、タンパ
ク結合に関するパラメータを算出した。
【結果・考察】WAR のタンパク結合に関するパラメータ
は、既報の値とほぼ一致した。また、本研究で用いたいず
れの濃度の MTZ も、WAR のタンパク結合に影響を与え
な か っ た。MTZ1錠(250mg)1日2回、7日 間 経 口 投
与時の最大血漿中濃度は約120µM と報告されてい
ることから、臨床において MTZ は WAR の血漿中タンパ
ク結合を阻害しないことが示唆された。
256 PEG 脂質を用いた生細胞表面修飾法の開発
1
京都大学大学院 薬学研究科 薬品動態制御学分
野、
2
科学技術振興機構さきがけ、
3
京都大学物質細胞統合システム拠点
○高藤 義正1、樋口 ゆり子1,2、川上 茂1、
山下 富義1、橋田 充1,3
1
武蔵野大学 薬学部、
2
済生会横浜市南部病院 薬剤部
○秋本 いづみ1、谷津 雅美1、田口 里菜1、
工藤 敏之1、飯田 純一1,2、加賀谷 肇1,2、
伊藤 清美1
【目的】抗トリコモナス薬メトロニダゾール(MTZ)と
抗凝固薬ワルファリン(WAR)の併用により、S­WAR
の血中濃度が上昇することが報告されているが、MTZ と
WAR の詳細な相互作用メカニズムは解明されていない。
本研究では、この相互作用メカニズムを解明する目的で、
MTZ が S­WAR の主代謝酵素である CYP2C9の発現量
を減少させる可 能 性 に つ い て、ヒ ト 肝 腫 瘍 由 来 細 胞 株
HepaRG 細胞を用いて検討した。
4,
20,
100,
500
【方法】HepaRG細胞に種々の濃度のMTZ
(0,
μM)あるいは、CYP2C9を誘導することが知られてい
るフェノバルビタール(1mM)を添加し、2日間培養後、
CYP2C9の mRNA 発現量を real­time RT­PCR により
定量した。また、同条件で培養した細胞について MTT
assay を行い、細胞生存率を評価した。
【結果・考察】MTT assay の結果、いずれの MTZ 濃度
添加群においても、細胞生存率は80%以上であった。ポジ
ティブコントロールとして用いたフェノバルビタール添加
群においては、CYP2C9の mRNA 発現量の増加が認め
られた。一方、MTZ 添加群における CYP2C9の mRNA
発現量は、MTZ 濃度依存的に減少し、MTZ の臨床濃度
付近(100μM)においても、コントロール群と比較して有
意に低い値を示した。したがって、MTZ による S­WAR
の血中濃度上昇は、CYP2C9発現の減少に基づく可能性
が示唆された。今後、タンパク質レベルでの発現変化につ
いて検討する予定である。
【目的】近年、幹細胞などを用いた細胞移植治療が注目を
集めているが、移植による治療効果が十分でないケースも
認められている。より効率的な治療法確立のためには、細
胞表面への機能分子修飾による細胞機能の増強や新機能の
付与が必要である。特に PEG 脂質を用いた細胞表面修飾
法は、細胞と混和するのみで均一かつ簡便に細胞表面を修
飾できるという点で有効である。本研究ではこの修飾法に
関して、機能分子の細胞表面への修飾量を決定する因子を
整理し、修飾条件、PEG 鎖長及び添加剤が修飾量に与え
る影響を評価した。
【方法】修飾に用いる PEG 脂質には、フルオレセインを
化学導入した PEG­DSPE を用いた。PEG 脂質を培地に
加え、種々の条件下でヒト間葉系幹細胞(hMSC)を培養
することで修飾を行った。修飾後の hMSC の蛍光強度を
測定し、細胞表面の蛍光強度から PEG 脂質修飾量を評価
し、同時に修飾した細胞を顕微鏡で観察した。
【結果・考察】PEG 脂質濃度の増大、曝露時間の延長、
温度の上昇により、細胞表面の蛍光強度が増大した。一方
で、PEG 鎖の分子量の違いや細胞の接着の有無は大きな
影響を及ぼさなかった。また、メタノール、DMSO など
の溶媒やシクロデキストリンの添加により、添加剤濃度依
存的に修飾量が顕著に増大した。また、修飾された細胞に
おいて、多くの蛍光シグナルの細胞表面への局在が観察さ
れた。以上、修飾量に影響を及ぼす因子やその程度が明ら
かになった。
−243−
ポスター演題
257 ドキソルビシン封入リポプレックスによるAP−1,
NF­κB 活性化に基づく遺伝子導入効率の改善
258 マイクロキャピラリー電気泳動チップを用いたナ
ノリポソームの電気泳動度の評価
1
京都大学大学院 薬学研究科、
京都大学 薬学部、
3
京都大学 物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)
○河野 裕允1、運 敬太1、吉田 允2、
山下 富義1、川上 茂1、橋田 充1,3
東京大学 大学院工学系研究科
リング専攻
○赤木 貴則、加藤 啓、小林
2
【目的】遺伝子治療は、種々の難治性疾患に対して高い治
療効果を発揮することが期待できるが、とりわけ、リポプ
レックスなどの非ウイルスキャリアでは、遺伝子導入効率
の改善が必要である。高い遺伝子発現を得るためには、標
的組織・細胞質内への遺伝子送達効率に加え、標的細胞内
での転写活性を適切に制御することが重要である。近年、
抗癌剤ドキソルビシン(DXR)が転写因子を活性化させ
る作用を有することが報告された。そこで本研究では、
DXR と pDNA を 同 一 の キ ャ リ ア に 内 封 し た DXR 封 入
PEG 修飾カチオン性リポソーム/pDNA 複合体(DXR 封
入 PEG 修飾リポプレックス)を調製し、転写因子活性化
に基づく遺伝子導入効率の改善を試みた。
【結果・考察】PEG 修飾リポプレックスに DXR を封入す
ることで、in­vitro 及び in­vivo 両者において DXR 未封
入リポプレックスと比較して顕著に高い遺伝子発現効率が
得られた。続いて、細胞内転写因子(AP−1及び NF­κB)
の活性化について評価した結果、AP−1発現量の上昇並
びに NF­κB の核内移行量の増大が確認された。また、遺
伝子発現実験に用いた DXR は低濃度であり、この条件で
は、DXR に起因する細胞毒性は認められなかった。
【結論】DXR 封入 PEG 修飾リポプレックスは転写因子を
活性化させることで、遺伝子発現の改善が期待できる可能
性が示された。
259 ロキソニンⓇSとバファリンAの乳汁移行性の比較
摂南大学 薬学部 薬学科
○古前 竜平、山崎 裕己、三田村
高田 雅弘、小森 浩二
バイオエンジニア
雅、一木
隆範
【目的】ナノ DDS で利用されるナノリポソームのゼータ
電位は体内での挙動に影響する主要な物性値の一つであ
る。従来、ナノ粒子のゼータ電位はレーザードップラー電
気泳動法で計測される電気泳動移動度(EPM)から推定
される。しかし、粒子個々の EPM は計測できないため正
確な EPM 分布を得ることは原理的に困難だった。本研究
では高感度イメージング技術とオンチップマイクロキャピ
ラリー電気泳動法を組み合わせて単一ナノ粒子の EPM 測
定技術を開発し、
ナノリポソームの EPM 分布を評価した。
【方法】脂質(DLPC および PS)
、コレステロールとカル
セインで発蛍光リポソームを作製し、ナノ孔を有する膜
フィルタでサイズ調整した。PDMS 製マイクロキャピラ
リー電気泳動チップはソフトリソグラフィー法で作製した。
【結果・考察】異なる構成脂質のリポソームの EPM の測
定結果からリポソームの EPM は脂質膜における負電荷脂
質 PS の割合の関数であることが示された。また、異なる
粒子径のリポソームの EPM の測定結果から100nm 以下で
は EPM の分散が増大することが示された。100nm 以下で
は脂質膜の PS 分子が数百個レベルと極端に少なくなる。
ランダムなゆらぎを仮定してリポソームの組成ゆらぎの大
きさを計算してみると計算値と実験値はよく一致した。
従って EPM 分散のサイズ効果は脂質膜の組成ゆらぎに起
因すると考えられる。
【謝辞】本研究は最先端研究開発支援プログラム及び科研
費(若手 B)の助成を受けたものです。
260 低出生体重児におけるドキサプラムの母集団動態
解析および有効血清中濃度の検討
1
熊本大学 薬学部、
熊本大学 大学院生命科学研究部・薬学教育部、
3
第一薬科大学、4藤田保健衛生大学 医学部、
5
熊本大学 薬学部附属育薬フロンティアセンター
○小川 由貴1、入倉 充2、小原 優佳1、
河内山 佳英2、湯川 榮二3、山崎 俊夫4、
石塚 洋一2、入江 徹美2,5
しのぶ、
2
【目的】一般用医薬品(OTC 薬)に含まれる主薬成分の
乳汁移行性は医療用医薬品では検討されているが、OTC
薬では検討されていないのが現状である。今回、医療用医
薬品のロキソニンⓇ錠は汎用性が高いにも関わらず乳汁移
行性の報告が不十分であることに注目し、スイッチ OTC
薬として昨年発売されたロキソニンⓇS を用いて乳汁移行
性を検討した。
【方法】実験動物は ddY 系マウスを使用した。医薬品は
ロキソプロフェンとしてロキソニンⓇS を用い、比較対照
として乳汁中に移行することが報告されているアスピリン
(バファリン A)を用いた。アスピリンを約132mg/kg、
ロキソプロフェンを約24mg/kg 経口投与後、血液及び乳
汁を採取した。試料100μL にエタノールを添加し除タンパ
クした後、遠心分離(12000g x15min)した。上清を限外
ろ過(MWCO:3000)し、ろ液を HPLC で分析した。た
だし、アスピリンは体内でただちに代謝されサリチル酸と
なるため、サリチル酸を検出し分析した。
【結果・考察】サリチル酸はアスピリン投与後60分で血中
22μg/mL、乳汁中濃度が0.
65μg/mL であり、M/
濃度が2.
29となった。ロキソプロフェンは投与後15分で血
P 比は0.
94μg/mL、乳汁中濃度が1.
47μg/mL であり、
中濃度が1.
75と な っ た。以 上 の 結 果 よ り、ロ キ ソ プ ロ
M/P 比 は0.
フェンはアスピリンに比べ、乳汁移行性が高いことが示唆
され、現在投与後2時間以上で検討中である。
【目的】早産・低出生体重児への呼吸促進薬ドキサプラム
(Dox)の使用は禁忌であるが、メチルキサンチン類に不
応な新生児無呼吸発作に対して Dox が多くの医療施設で使
用されている。Dox の体内動態は未だ明らかでなく、用法
用量は未確立である。本研究では、低出生体重児における
Dox の体内動態を解析し、有効血清中濃度を明らかにする
ことを目的とした。
【対象と方法】
無呼吸発作を起こした低出生体重児の中で、
アミノフィリン(A)に不応で、Dox が追加投与された患
児34名(平均在胎週数:29.
4週、平均出生体重:1198g)
を対象として、血清中濃度測定および効果判定を行った。
【結果と考察】Dox の母集団薬物動態解析の結果、次式が
得られた。
CL(L/kg/hr)=採血時体重/採血時受胎後週数・0.
0319・
血清 AST 値−0.270
Vd(L/kg)=2.
64(在胎週数28週より大きい場合)
2.
64・2.
15(在胎週数28週以下の場合)
ドキサプラムの平均血中濃度(範囲)は、投与量0.
2mg/kg/
hr で0.
371μg/mL(0.
047∼0.
931μg/mL)
、投 与 量0.
4mg/
∼
kg/hr で0.
729μg/mL(0.
429 1.
549μg/mL)となり、同一
投与量でも血中濃度に大きなバラツキがみられた。アミノ
フィリンに不応な無呼吸発作に対して Dox が抑制効果を示
した患児における Dox の血清中濃度を解析した結果、Dox
の有効血清中濃度は、従来の報告(1.
5μg/mL 以上)より
も低濃度であることが示唆された。
−244−
261 新規超高分子多糖体サクランおよび抗炎症薬併用
による協力的な抗炎症効果
1
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分
野、
2
グリーンサイエンス・マテリアル株式会社、
3
熊本大学 大学院生命科学研究部 薬剤情報分析
学
○藤澤 和也1、畑 杏奈1、渡邊 啓1、
本山 敬一1、東 大志1、金子 慎一郎2、
福元 裕介3、石塚 洋一3、入倉 充3、
入江 徹美3、有馬 英俊1
【目的】サクランは、分子量1600万の新規高分子多糖体で
あり、高い保水力、ゲルおよび被膜形成性を有することか
ら、経皮適用製剤素材としての応用が期待されている。一
方、サクランはアトピー性皮膚炎モデルマウスに対して、
優れた抗炎症作用を有することが報告されている。そこで
本研究では、薬剤誘発性皮膚炎症モデルに対するサクラン
および抗炎症薬併用時の抗炎症効果について検討した。
【方法】抗炎症薬にはプレドニゾロン(PD)およびビフェ
ニル酢酸(BPAA)を用いた。サクランハイドロゲルから
放出された薬物の定量は、吸光度法により行った。テトラ
デカノイルホルボールエステル(TPA)塗布後のマウス
の耳介の厚さは、dialthickness gauge を用いて測定した。
カラゲニンを皮下投与後のラット足蹠の体積は、plethysmometer を用いて測定した。
【結果と考察】サクランハイドロゲルは PD および BPAA
を高効率に封入可能であり、両薬物を徐放出することが示
唆された。サクラン単独の水溶液およびハイドロゲルは、
TPA 誘発性耳介皮膚炎およびカラゲニン誘発性足蹠浮腫
を有意に抑制した。さらに、両炎症モデルに対してサクラ
ンと PD および BPAA を併用投与したところ、単独投与
群と比較して、有意に高い抗炎症効果を示した。これらの
結果より、薬剤誘発性皮膚炎モデルに対して、サクランと
PD および BPAA の併用は、協力的な抗炎症効果を有す
ることが示唆された。
263 血中滞留性 お よ び 腫 瘍 選 択 性 に 優 れ る siRNA
キャリアとしての PEG 化葉酸修飾デンドリマー
(G4)/α−シクロデキストリン結合体の構築
熊本大学大学院 生命科学研究部 製剤設計学分野
○大山 歩務、東 大志、本山 敬一、有馬 英俊
【目的】 血中滞留性および腫瘍選択性に優れる siRNA
キャリアの構築を企図して、α−シクロデキストリンとポ
リアミドアミンデンドリマー(G4)との結合体中のデン
ドリマー分子にポリエチレングリコール(PEG,平均分子
000)を介して葉酸を導入した Fol­PαC(G4)を調
量2,
製し、siRNA キャリアとしての有用性評価を行った。
【方法】 Fol­PαC(G4)/siRNA 複合体の細胞会合は、
KB 細胞に複合体を添加後1時間における蛍光ラベル化
siRNA の蛍光強度をフローサイトメトリーで測定するこ
とにより評価した。複合体の RNAi 効果は、複合体を KB
細胞に添加し、24時間後のルシフェラーゼ活性を指標に評
価した。
【結果と考察】各葉酸置換度(DSF)の Fol­PαCs(G4)
の調製を行い、siRNA と混合したところ、DSF2および
4の Fol­PαC(G4)はチ ャ ー ジ 比(carrier/siRNA)10
以下で複合体を形成した。各 DSF の Fol­PαCs(G4)と
siRNA との複合体の細胞会合は、DSF2で最も高く、ま
た、その RNAi 効果は、チャージ比10において最も高かっ
た。血清中において、Fol­PαC(G4)/siRNA 複合体中
の siRNA は、Fol­PαC(G3)の系 に 比 べ、高 い 安 定 性
を示した。Fol­PαC(G4)/siRNA 複合体のがん細胞選
択性や血中滞留性の評価についても結果を示す予定であ
る。
262 インスリンの製剤特性の改善を企図したグルクロ
ニルグルコシル−β−シクロデキストリン結合体
の調製
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野
○東 大志、弘津 辰徳、本山 敬一、有馬 英俊
【目的】インスリンを製剤化する際、安定性の改善、容器
吸着の軽減、血中滞留性の改善などが望まれる。我々はこ
れまで、シクロデキストリン(CyD)を添加することによ
り、インスリンの凝集や容器吸着を抑制可能なこと、また
その効果は、分岐−β­CyD において顕著であることを報
告した。本研究では、インスリンの製剤特性の改善を企図
して、分岐−β­CyD の一つであるグルクロニルグルコシ
ル−β­CyD(GUG­β­CyD)とインスリンの結合体を調
製し、その容器吸着性や熱に対する安定性を評価した。
【方法】活性化した GUG­β­CyD とインスリンを DMF/
水の混液中で縮合することにより結合体を調製した。熱安
定性試験は、試料溶液を50°C で7日間インキュベート
後、残存したインスリンを分光光度計により定量すること
で行った。また、各試料をガラスもしくはポリプロピレン
容器に添加し、2時間静置後、溶液中に残存したインスリ
ン量を定量することにより、容器吸着性を評価した。
【結果と考察】MALDI­TOF­MS において、結合体の分
子量付近にピークが観察されたことから、その調製が確認
された。また、結合体の CD スペクトルの結果から、結合
体中のインスリンの構造は保持されていることが示唆され
た。結合体は、インスリン単独と比較して、熱安定性が高
く、また、容器への吸着も少ないことが示唆された。以上
の結果から、GUG­β­CyD を修飾することにより、イン
スリンの製剤特性を改善可能なことが示唆された。
264 クッパー細胞選択的 NF­κB デコイデリバリーを
企図したフコシルオキシプロピルチオプロピオニ
ル化デンドリマー/α−シクロデキストリン結合
体の有用性評価
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野
○赤尾 千穂、小野寺 理沙子、田中 貴弘、
光安 亮輔、本山 敬一、東 大志、有馬 英俊
【目的】クッパー細胞表面に高発現するフコースレセプ
ター(Fuc­R)選択的に認識される NF­κB デコイキャリ
アの構築を企図して、ポリアミドアミンデンドリマー(G
2)と α−シクロデキストリンとの結合体にフコシルオキ
シプロピルチオプロピオニル基(Fuc­S)を導入した Fuc­
S­α­CDE(G2)を調製し、その有用性を評価した。
【方法】リポポリサッカライド(LPS)刺激後のラットマ
)か
クロファージ(Mφ)由来 NR8383細胞(Fuc­R(+)
ら産生された亜硝酸塩は Griess 法により定量した。本複
合体の細胞障害性は WST−1法により検討した。劇症肝
炎モデルマウスは、LPS および D−ガラクトサミンを腹
腔内投与することにより作成した。
【結果と考察】Fuc­S­α­CDE/NF­κB デコイ複 合 体 の
4mV
粒子径および ζ−電位はそれぞれ約280nm および0.
であり、Mφ 内に取込み可能な物性を有することが示唆さ
れた。本複合体は、LPS 刺激後の NR8383細胞からの一酸
化窒素産生を有意に抑制した。本複合体はチャージ比100
まで細胞障害性を示さず、安全性に優れることが示唆され
た。本複合体を劇症肝炎モデルマウスに静脈内投与後のマ
ウス生存率は著しく改善され、血中 AST および ALT の
上昇は有意に抑制された。以上の結果より、Fuc­S­α­
CDE は NF­κB デコイキャリアとして有用であることが
示唆された。
−245−
ポスター演題
265 腫瘍特異的新規抗がん剤としての葉酸修飾メチル
化シクロデキストリンの細胞死誘導機構
266 葉酸修飾 β−シクロデキストリン包接によるドキ
ソルビシンの抗腫瘍活性増強作用
1
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野
○有馬 英俊、小野寺 理沙子、岡松 文香、
本山 敬一、東 大志
【目的】本研究では、腫瘍細胞選択的新規抗がん剤の構築
を企図して、メチル化 β−シクロデ キ ス ト リ ン(M­β­
CyD)にがん細胞標的リガンドである葉酸(FA)を修飾
した FA­M­β­CyD を調製し、その有用性を評価した。
【方法】ヒト口腔がん細胞由来 KB 細胞 (葉酸レセプター
(FR)高発現)およびヒト肺がん細胞由来 A549細胞(FR
低発現)における FA­M­β­CyD の抗腫瘍活性を WST−
1法により検討した。FA­M­β­CyD の細胞内取り込み
は、蛍光分光光度法により検討した。細胞内 DNA 含量お
よびミトコンドリア膜電位は、フローサイトメトリーを用
いて検討した。オートファジーの誘導は、Cyto­IDTM を
用いて検討した。FA­M­β­CyD を担がんマウスの静脈
内に単回投与後、腫瘍の体積およびマウスの生存率を経時
的に測定した。
【結果と考察】FA­M­β­CyD は、FR を介して KB 細胞
に取り込まれ、優れた抗腫瘍活性を示した。FA­M­β­
CyD は KB 細胞に対して、細胞内 DNA 含量およびミトコ
ンドリア膜電位を低下させなかった。一方、FA­M­β­
CyD はオートファゴソームの形成を誘導することが示唆
された。担がんマウスに FA­M­β­CyD を静脈内投与後
の腫瘍の成長は有意に抑制され、マウスの生存率も著しく
改善された。これらの結果より、FA­M­β­CyD は腫瘍
細胞選択的新規抗がん剤として有用であり、その抗腫瘍効
果に FR を介したがん細胞選択的な取り込みおよびオート
ファジーの関与が示唆された。
267 シクロデキストリン擬ロタキサンハイドロゲルを
用いたリゾチーム徐放化システムの構築
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野
○田島 杏奈、東 大志、本山 敬一、有馬 英俊
【目的】α−シクロデキストリン(α­CyD)および γ­CyD
000)
は高分子量のポリエチレングリコール (PEG,MW20,
とポリシュードロタキサン(PPRX)ハイドロゲルを形成
する。本研究では、PPRX ハイドロゲルを利用したタンパ
ク質徐放化システムの構築を企図して、モデルタンパク質
であるリゾチームを封入した PPRX ハイドロゲルを調製
し、その物理化学的性質および in vitro 放出性を検討した。
【方法】
PPRX ハイドロゲルの調製の確認は、肉眼的観察、
熱分析、粉末 X 線回折および1H­NMR により行った。
PPRX ハイドロゲルの粘度は回転粘度計により測定した。
リゾチームの in vitro 放出性は、放出されたリゾチームを
UV 法により定量して検討した。放出されたリゾチームの
酵素活性は、M.lysodeikticus cell に対する溶菌活性をもと
に評価した。
【結果と考察】α−および γ­CyD は、それぞれ PEG 鎖1
本および2本を包接し PPRX ハイドロゲルを形成した。
両 PPRX ハイドロゲルの粘度は測定時間の経過とともに
低下したが、静置することで粘度が回復したことから、チ
キソトロピー性を有することが示唆された。PPRX ハイド
ロゲルからのリゾチーム放出は、少なくとも12時間まで持
続し、その放出パターンは、Higuchi モデルに従った。さ
らに、PPRX ハイドロゲルから放出されたリゾチームは、
ほぼ100%の酵素活性を保持していた。これらの結果より、
PPRX ハイドロゲルはタンパク質の徐放化システムとして
有用であることが示唆された。
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分
野、
2
東京工芸大学 工学部、
3
ナノデックス(株)
○岡松 文香1、小野寺 理沙子1、腰越 崇裕2、
島田 悌孝3、服部 憲治郎3、竹内 知子2、
本山 敬一1、東 大志1、有馬 英俊1
【目的】腫瘍特異的抗がん剤キャリアの構築を企図して、
がん標的リガンドである葉酸とシクロデキストリン
(CyD)
との間にスペーサーとしてカプロン酸を1個または2個導
入した葉酸修飾 CyDs( per ­Fol­cap1−β­CyD, per ­
Fol­cap2−β­CyD)を調製し、その有用性を評価した。
【方法】葉酸修飾 CyDs とドキソルビシン(DOX)との
相互作用を蛍光スペクトル法により検討した。DOX の抗
腫瘍活性に及ぼす葉酸修飾 CyDs の影響を WST−1法に
より検討した。葉酸修飾 CyDs の細胞内取り込み量を、フ
ローサイトメト リ ー に よ り 測 定 し た。担 が ん マ ウ ス に
DOX/葉酸修飾 CyDs 複合体を静脈内投与し、その後約
1ヶ月間、腫瘍体積および体重を測定した。
【結果と考察】葉酸修飾 CyDs と DOX はモル比1:1の
包接複合体を形成し、その安定度定数は約106M−1であっ
た。葉酸修飾 CyDs は、葉酸レセプター(FR)高発現細
胞 選 択 的 に DOX の 抗 腫 瘍 活 性 を 増 強 さ せ た。ま た、
per ­Fol­cap1−β­CyD の 前 処 理 に よ り、DOX の 抗 腫
瘍活性が増強した。葉酸修飾 CyDs は FR 高発現細胞選択
的に取り込まれ、 per ­Fol­cap2−β­CyD の細胞内取り
込 み 量 は per ­Fol­cap1−β­CyD よ り も 有 意 に 高 か っ
た。DOX/葉酸修飾 CyDs 複合体は、DOX 単独と比較し
て、体重低下を示すことなく、担がんマウスの腫瘍の成長
を有意に抑制した。以上の結果から、葉酸修飾 CyDs は腫
瘍特異的抗がん剤キャリアとして有用であることが示唆さ
れた。
268 マンノシルオキシプロピルチオプロピオニル化デ
ンドリマー/α−シクロデキストリン結合体によ
る抗原提示細胞選択的 siRNA デリバリー
熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野
○光安 亮輔、田中 貴弘、小野寺 理沙子、
本山 敬一、東 大志、有馬 英俊
【目的】抗原提示細胞(APC)に高発現するマンノース
レセプター(MR)選択的に認識される siRNA キャリア
の構築を企図して、ポリアミドアミンデンドリマー(G3)
と α−シクロデキストリンとの結合体にマンノシルオキシ
プロピルチオプロピオニル基(Man­S)を導入した Man­
S­α­CDE(G3)を調製し、その有用性を評価した。
【方法】ラット肺胞マクロファージ由来 NR8383細胞(MR
(+)
)およびマウス結腸がん細胞由来 Colon−26細胞(MR
(−)
)
におけるキャリア/siRNA 複合体の RNAi 効果は、
ルシフェラーゼ活性を指標に評価した。複合体の細胞障害
性は WST−1法により評価した。
【結 果 と 考 察】Man­S 置 換 度(DSM)の 異 な る3種 の
DSM4,
12,
16)を新規に調製した。
Man­S­α­CDEs(G3,
DSM4,
12,
16)は チ ャ ー ジ 比20以
Man­S­α­CDEs(G3,
上で siRNA と複合体を形成し、その粒子径は約400∼1000
nm、ζ−電位は弱い正電荷であった。Man­S­α­CDEs(G
3,
DSM4,
12,
16)/siRNA 複合体は NR8383細胞(MR(+)
)
において RNAi 効果を誘導したが、Colon−26細胞(MR
(−)
)では効果を示さなかった。Man­S­α­CDE(G3,
DSM4)/siRNA 複合体はチャージ比100まで細胞障害性
を示さず、安全性に優れることが示唆された。これらの結
DSM4)は APC 選 択 的
果 よ り、Man­S­α­CDE(G3,
siRNA キャリアとして有用である可能性が示唆された。
−246−
269 グレープフルーツジュースによる有機アニオント
ランスポーター阻害作用の持続
270 シプロフロキサシンと金属カチオン製剤の相互作
用の要因としての物理的吸着の意義
1
1
2
2
静岡県立大学 薬学部 実践薬学分野、
浜松医科大学 医学部 臨床薬理学講座
○田中 紫茉子1、内田 信也1、竹内 和彦2、
深井 幸恵1、宮川 幸子2、乾 直輝2、
渡邉 裕司2、並木 徳之1
慶應義塾大学 薬学部 臨床薬学講座、
東邦大学医療センター佐倉病院 薬剤部
○服部 道子1、今岡 鮎子1,2、秋好 健志1、
大谷 壽一1
【目的】グレープフルーツジュース(GFJ)は、小腸の有
機 ア ニ オ ン ト ラ ン ス ポ ー タ ー(OATP)を 阻 害 し、β­
blocker の血漿中濃度を低下させることが知られている。
CYP3A4阻害作用は GFJ 服用後54時間まで持続すると
いう報告があるが、OATP に関しては明らかではない。
本研究では GFJ の OATP 阻害作用の持続時間を明らかに
することを目的とした。
【方法】健常成人男性(7名)を対象に、GFJ 摂取前に
セリプロロール(Cel,100mg)及びミダゾラム(Mdz,15
μg/kg)を経口投与し、両薬物の血漿中濃度を測定した
(control)
。さ ら に、GFJ(200mL)を1日3回、3日 間
摂取させ、4日目に GFJ と同時に Cel と Mdz を投与した
(day1)
。GFJ 摂取後3及び7日目(day3,
7)に同様の
試験を行った。試験は静岡県立大学及び浜松医科大学の倫
理委員会の承認を得た。
【結果】GFJ を3日間摂取後、GFJ を同時投与した day1
に お い て、OATP 基 質 で あ る Cel の AUC は、control の
25%へと有意に低下した。また day3と day7の AUC は
それぞれ87%及び86%となり、control レベルに回復した。
一 方、CYP3A4基 質 で あ る Mdz の AUC は day1及 び
day3で増加し、day7に お い て control レ ベ ル に 回 復 し
た。両薬物とも消失半減期はいずれの試験日においても有
意 な 変 動 は 認 め ら れ な か っ た。以 上 よ り、GFJ に よ る
OATP 阻害作用は CYP3A4阻害作用と比較して速やか
に回復することが明らかとなった。
271 小腸上皮細胞におけるシプロフロキサシンの透過
に対するマグネシウムイオンの影響
【目的】シプロフロキサシン(CPFX)は、金属含有制酸
剤と難吸収性キレートを形成し、消化管吸収が低下すると
考えられてきた。しかし我々は、CPFX の in vitro にお
3mM Al3+の存在下でも完全には抑制
ける細胞膜透過は0.
されず、 in vivo で観測された AUC の低下はキレート形
成のみでは説明できないことを報告した。本研究では、本
相互作用に制酸剤への CPFX の物理的吸着が関与するか
を明らかにするために、生理的 pH 条件下における CPFX
のアルミゲルに対する吸着量を定量的に評価した。
2)または小腸内(pH6.
8)を模した
【方法】胃内(pH1.
2mmol とアルミゲル(Al)0∼
緩衝液100mL に CPFX0.
3mmol を 混 和 し、こ れ を 遠 心 分 離 し た 後 の 上 清 中 の
CPFX 濃度を HPLC­UV 法で定量し、CPFX の Al への吸
着量を算出した。
【結果・考察】Al はいずれの pH でも大部分が不溶性で
2で は Al 添 加 量 に 関 わ ら ず、
あ っ た。CPFX は、pH1.
90∼110%程度が溶解しており、Al への物理的吸着は見ら
8の溶液中では CPFX は Al 非存
れなかった。一方、pH6.
在下においても一部しか溶解しなかった。また、CPFX の
溶解度は Al の添加量依存的に上昇し、Al への物理的吸着
を示唆する結果は得られなかった。したがって、両剤の相
互作用における CPFX の物理的吸着の寄与は低いと考え
られる。
272 後発医薬品(バルプロ酸ナトリウム錠)の薬物動
態学的同等性に関する検討
1
1
2
2
東邦大学医療センター佐倉病院、
慶應義塾大学 薬学部
○今岡 鮎子1,2、秋好 健志2、大谷
九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野、
福岡記念病院薬剤部、
3
天理よろづ相談所病院薬剤部
○若松 菜摘1、兼重 晋2、梶田 貴司3、
松永 直哉1、小柳 悟1、大戸 茂弘1
壽一2
【目的】ニューキノロン系抗菌薬は、Al3+や Mg2+など
の金属カチオンを含有する制酸剤と同時に服用すると、両
剤が難吸収性のキレートを形成することにより、消化管吸
収が低下すると考えられてきた。しかし、我々はこれまで
に in vitro において、ヒト大腸がん由来培養上皮細胞
(Caco−2細 胞)単 層 膜 に お け る シ プ ロ フ ロ キ サ シ ン
(CPFX)の細胞膜透過は、1mM の Al3+存在下におい
ても、単独時の30%が維持されることを明らかにした(日
。そこで本研究においては、CPFX の
本薬学会第132年会)
細胞膜透過に及ぼす Mg2+の影響を定量的に評価すること
を目的とした。
【方法】Caco−2細胞を TranswellⓇ上に単層に培養し、
2mM の Mg2+と0.
3mM CPFX を apical 側に添加
0∼1.
後、basal 側から15分おきに120分後まで経時的にサンプリ
ングした。Basal 側の CPFX 濃度を HPLC­UV 法にて定
量し、みかけの膜透過係数(Papp)を算出した。
【結果・考察】CPFX の Papp は Mg2+濃度依存的に低下し
2mM Mg2+存在下においても、CPFX 単独時の
たが、1.
60%程度の Papp が維持されていた。これは、上述の Al3+
併用下と同様の結果であった。しかし、 in vivo において
は、CPFX の吸収はマグネシウム製剤の併用により20%程
度まで低下するという報告もあることから、この低下は、
キレート形成による膜透過の低下以外の要因も関与してい
ると考えられる。
【目的】後発医薬品の使用頻度が活発化し、TDM 対象薬
物についても採 用 実 績 が 増 加 し つ つ あ る。本 研 究 で は
TDM 対象薬物のひとつであるバルプロ酸ナトリウム錠に
ついて、先発品および後発品製剤の薬物動態学的同等性の
検討を行った。
【方法】天理よろづ相談所病院および福岡記念病院にてバ
ルプロ酸ナトリウム錠の先発品(デパケン錠:協和発酵キ
リン)または後発品(バレリン錠:大日本住友製薬)を2
週間以上服用し、血中濃度が定常状態に達した患者を対象
に解析を行った。患者背景、血中濃度、併用薬の有無につ
いて電子カルテ記載記録を基に調査し、薬物動態パラメー
タの算出および影響因子の抽出は、拡張最少二乗法プログ
ラム(NONMEM)を用いて行った。
【結果・考察】先発品服用群として34名(男性21名、女性
13名)
、後発品服用群として32名(男性21名、女性11名)
の患者情報が得られたが、年齢、体重、投与量(mg/kg/
day)および生化学検査値等に各製剤の服用患者群間で有
意な差異は認められなかった。一方、バルプロ酸以外の抗
てんかん薬を併用している患者数は、先発品服用患者群で
多い傾向を示し、みかけのクリアランス(CL/F)は、先
発品服用患者群で有意に高値を示した。CL/F にはバルプ
ロ酸ナトリウムの代謝速度以外にも消化管からの吸収率
(F)が影響を及ぼす。現在、両製剤の溶出挙動について
解析を進めている。
−247−
ポスター演題
273 CYP3A4発現量に及ぼす健常者血清と末期腎不
全患者血清との相違性
274 野菜飲料が CYP3A4および MDR1機能に及ぼ
す影響
1
京都薬科大学 臨床薬学分野、
仁真会白鷺病院 薬剤科、
3
仁真会白鷺病院 診療部
○新本 唯一1、 本 雅之1、白石 明日香1、
永野 唯1、細田 さとみ1、島田 奈央美1、
筒井 孝治1、新田 彩佳1、古久保 拓2、
和泉 智2、山川 智之3、峯垣 哲也1、
西口 工司1
京都薬科大学 臨床薬学分野
○阿河 千恵、 本 雅之、山根 崇義、
山本 紗緒里、小酒井 啓之、内田 友絵、
上田 真弥、福田 智哉、寺尾 彩、
北山 陽菜、峯垣 哲也、西口 工司
2
【目的】末期腎不全患者では、CYP3A4基質であるエリ
スロマイシンの腎外クリアランスが低下すること、また、
慢性腎不全ラットでは、肝 Cyp3a2発現量が低下するこ
とが報告されており、末期腎不全患者において CYP3A
4発現低下の可能性が考えられる。そこで本研究では、
CYP3A4の発現量及び機能に及ぼす健常者血清(NS)
及び末期腎不全患者血清(US)の影響について in vitro
実験系により比較した。
【方法】実験には、プレグナン X 受容体(PXR)及びビ
タミン D 受容体(VDR)を発現するヒト結腸癌由来 LS180
細胞を用いた。NS はミリポア社より購入し、US は血液
透析施行直前の末期腎不全患者より得たプール血清を用い
た。除蛋白処理した血清を24時間処置した細胞において、
mRNA 発現量はリアルタイム RT­PCR 法により、CYP
3A 機能は P450−GloTM assay により測定した。
【結 果・考 察】NS 処 置 に よ り 認 め ら れ た CYP3A4
mRNA 量及び CYP3A 機能の亢進は、US 処置時には抑
制された。また、PXR のターゲット遺伝子である MDR1
の mRNA 量は、両血清処置時に有意な相違は認められな
かったが、VDR のターゲット遺伝子である CYP24A1の
mRNA 量は、US 処置時において顕著に低値を示した。
よって、CYP3A4mRNA 発現抑制には、PXR ではなく
VDR の機能低下が関与している可能性が示唆された。
275 抗体に代わる次世代マイクロ抗体の動態学的評価
1
熊本大学 大学院薬学教育部、
2
熊本大学 薬学部附属育薬フロンティアセン
ター、
3
大阪府立大学 大学院理学系研究科
○中島 正貴1、門脇 大介1,2、大浦 華代子1、
藤井 郁雄3、今井 輝子1
【目的】
抗体医薬は分子標的医薬として期待されているが,
分子サイズ,ヒト化の必要性,生産コスト,特許の制限な
ど,多くの問題点がある。藤井らは,ヘリックス・ルー
プ・ヘリックス構造に抗体様作用があることを見出し,マ
イクロ抗体と命名した。本研究では,顆粒球コロニー刺激
因子(G­CSF)受容体に対するマイクロ抗体について動
9
態学的な検討を行った。このマイクロ抗体の分子量は3.
kDa であり,ヘリックス内側の疎水相互作用および静電
的相互作用により安定な構造を形成し,外側に標的ペプチ
ドに対する認識部位が存在する。さらに,このマイクロ抗
体はヘリックスの末端同士がチオエーテル結合することで
安定性および薬理活性が顕著に向上することを見出している。
【方法】マイクロ抗体の蛋白結合率は限外ろ過法により
行った。また,ラット血漿中の安定性は37℃におけるマイ
クロ抗体の残存量から求めた。定量は ODS カラムを用い
た HPLC 法により,波長205nm で測定した。
【結果・考察】マイクロ抗体の蛋白結合率はヒト,ラット
において30−40%であった。また,血漿中において半減期
10時間以上を示し,優れた安定性を有していることが確認
された。この結果は,マイクロ抗体の体内動態解析に向け
ての基礎情報の一端を担うものである。
【背景】医薬品の消化管吸収に大きな個体差があることは
良く知られている。その一因として、食習慣の相違が薬物
代謝酵素や薬物輸送担体の機能変動を生じさせることが挙
げられる。そこで今回、日本人が常時摂取する野菜に着目
し、複数の野菜飲料が CYP3A4および MDR1機能に及
ぼす影響について検討した。
【方法】野菜飲料は、含有する野菜及び果物の異なる市販
品5種を選択した。MDR1機能は、ヒ ト 消 化 管 由 来 LS
180細胞において、野菜飲料同時処置および48時間前処置
時の MDR1基質であるローダミン123(Rho123)の細胞
内蓄積量により評価した。CYP3A4機能は、野菜飲料存
在下におけるリコンビナント CYP3A4によるテストス
テロン6β 水酸化反応を指標とした。
【結果および考察】Rho123の細胞内蓄積は、一部の野菜
飲料前処置により有意に減少し、それは MDR1阻害剤シ
クロスポリン A の存在により完全に回復した。なお、野
菜飲料同時処置により顕著な差異は認められなかった。一
方、一部の野菜飲料は、テストステロン6β 水酸化能を野
菜飲料濃度依存的かつ競合的に阻害した。したがって、野
菜飲料の摂取は MDR1機能を亢進する一方で、CYP3A
4機能を阻害することが示唆された。
276 ヒトおよびサル小腸の加水分解活性に関与するカ
ルボキシルエステラーゼ分子種の同定
1
熊本大学 薬学部 薬学科、
新日本科学薬物代謝分析センター
○藤原 斉也1、田坂 克己1、大浦 華代子1、
上原 正太郎2、宇野 泰広2、今井 輝子1
2
【目的】我々はこれまでに、非臨床試験に利用されるサル
の小腸加水分解特性について、基質認識性およびカルボキ
シルエステラーゼ(CES)の発現がヒトと異なることを報
告した。ヒト小腸には主に CES2酵素(hCE2)が発現
するが、サルでは CES2酵素(MK2)に加え、CES2類
似酵素および CES1酵素が存在する。本研究では、hCE
2および MK2の発現系を作製し、その加水分解特性を小
腸の加水分解特性と比較した。
【方法】hCE2および MK2を HEK293細胞に発現させ、
加水分解活性をアスピリン、CPT−11およびアシル側鎖
の異なる6種類のプロプラノロール(PL)誘導体をモデ
ル基質として評価した。
【結果・考察】1)ヒト小腸におけるモデル基質の加水分
解は、hCE2活性でほぼ説明できた。2)モデル基質の加
水分解活性から、MK2は hCE2にくらべて幅広い認識能
を有するものと思われた。3)PL 誘導体の加水分解につ
い て、MK2は R 体 優 先 的 で あ る の に 対 し、hCE2は R
体、S 体を同じ速度で加水分解した。一方、hCE2および
MK2のいずれも、アシル基の3位にメチル基を有する
PL 誘導体を加水分解し難く、類似のアシル基側鎖要求性
を示した。4)サル小腸加水分解活性の大半は MK2活性
によって説明でき、hCE2と MK2の基質認識性の相違
が、ヒトとサル小腸加水分解活性における相違の原因の1
つであることが明らかになった。
−248−
277 膝関節症への応用を目的としたステロイド系アン
テドラッグの加水分解酵素の同定
熊本大学大学院 薬学教育部
○鹿毛 文乃、大浦 華代子、今井
1
熊本大学 薬学部、
第一薬科大学 薬学部
○黒川 敬介1、迫 沙央理1、井本
大浦 華代子1、今井 輝子1
2
輝子
【目的】ステロイド薬はその全身副作用のために、アンテ
ドラッグとして開発されたものが多い。しかしながら、ア
ンテドラッグの不活性化に関与する加水分解酵素について
は、ほとんど検討されていない。また、膝関節液に存在す
る酵素について検討された例はない。そこで、本研究では
複数のステロイドアンテドラッグを選択し、ヒト各組織に
おける加水分解活性を測定した。また、関節液に存在する
加水分解酵素の同定を行った。
【実験】ロテプレドノールエタボネート(LE)
、エチプレ
ドノ―ルジクロアセテート(ED)及び吉草酸ベサメサゾン
を基質として、ヒト各組織における加水分解活性を HPLC
法により測定した。また、ヒト膝関節液を電気泳動し、加
水分解活性に基づいて染色した。
【結果】ヒト膝関節液には HDL の構成成分であるパラオ
キソナーゼ、ブチリルコリンエステラーゼなど血漿と同様
の加水分解酵素が存在した。吉草酸ベタメサゾンはカルボ
キシルエステラーゼ(CES)で加水分解され、特に CES
2ファミリ ー の hCE2に 認 識 さ れ た。一 方、LE お よ び
ED は CES に認識されず、血漿において加水分解された。
ステロイドアンテドラッグは同じ基本構造で、エステル結
合部位および置換基の構造が若干異なるだけであるが、そ
の加水分解に係る酵素は異なっており、臨床応用に向けて
詳細な検討が必要と考えられた。
279 小腸エステラーゼとプロドラッグの小腸初回代謝
熊本大学 大学院 薬学教育部
○田中 啓一郎、副島 寿満、野澤
今井 輝子
278 プロドラッグの小腸吸収予測を可能にするクロー
ン化 Caco−2細胞の作成とその有用性評価
【目的】経口吸収改善を目的としたプロドラッグの多くは
小腸で安定に吸収され、肝臓のカルボキシルエステラーゼ
1(CES1)により代謝活性化される。一方、小腸吸収予
測に繁用される Caco−2細胞には CES1が高発現し、プ
ロドラッグとして吸収の予測が困難である。そこで本研究
で は、限 界 希 釈 法 に よ り 作 成 し た CES1発 現 が 低 い
Caco−2クローン細胞の加水分解特性と輸送活性を検討
し、その有用性を評価した。
000g 上清画分における加水分解
【方法】ホモジネート9,
活性は、p­nitrophenyl(PNP)誘導体、Butyryl­propranolol(B­PL)
、Temocapril を用いて測定した。各トラン
スポーター基質および Temocapril を用いて細胞膜透過特
性および透過中の加水分解を測定した。
【結果・考察】CES 基質である B­PL および Temocapril
のクローン細胞における加水分解は1/15∼1/261に抑
制された。一方、種々のエステラーゼの基質である PNP
誘導体は親細胞の1/2の活性を維持した。また Temocapril は親細胞を用いた透過実験において、透過総量の
90%以上が加水分解されたが、クローン細胞では約2%で
あった。細胞間隙透過、受動拡散、並びに種々のトランス
ポーターを介した輸送活性は親細胞と同等であった。ク
ローン細胞は親細胞と同等の透過性を有しながら CES に
依存した加水分解をほぼ完全に抑制し、プロドラッグの吸
収予測に有用性の高い細胞と考えられた。
280 ヒトおよびウサギ滑膜細胞におけるエステラーゼ
の同定
熊本大学 薬学部
○岩本 大祐、Bahar Fatma Goksin、
大浦 華代子、今井 輝子
孝章、
【目的】小腸粘膜には種々のエステラーゼが存在し、エス
テルプロドラッグの小腸初回代謝に関わっている。本研究
では小腸初回代謝を in vitro から予測することを目的と
して、 in situ 灌流実験および in vitro 加水分解実験から
求めた加水分解活性の相関性を調べた。
【方法】 in vitro 実験はラット小腸粘膜ホモジネート9000
g 上 清(S9)を 用 い て、加 水 分 解 固 有 ク リ ア ラ ン ス
(CLdeg,int)を算出した。 in situ 灌流実験は、ラット空腸
10cm にモデルエステル化合物を灌流し、定常状態での膜
、加水分解クリアランス(CLdeg)
、プロド
透過係数(Peff)
ラッグ自身の吸収クリアランス(CLabs)を算出した。
【結果・考察】1,in vitro 実験において、各モデルエステ
02∼2128µ
ル化合物の CLdeg,int は幅広い値を示し(0.
L/min/mg protein)
、数種の B−エステラーゼの関与が認
められた。2,in situ 灌流実験において、すべてのモデル
2cm/min 以上であり、100%の吸
プロドラッグの Peff は1.
収が予測された。また CLdeg および CLabs より求めたプロ
)は、
ドラッグの粘膜内加水分解率(CLdeg/(CLdeg+CLabs)
in vitro 加水分解固有クリアランスの対数値とシグモイド
型の相関を示した。
真澄2、
【目的】関節は滑膜組織で囲まれた小空間であり,滑膜細
胞からの分泌液と血漿濾液によって満たされている。変形
性関節症や関節リウマチなどの炎症時には,滑膜細胞の異
常増殖と分泌液の増加および血管透過性亢進による血漿成
分の増加によって関節液が貯留する。関節の炎症が亢進す
ると,抗炎症を目的としてステロイド剤などの医薬品が関
節内に投与される。血漿酵素に関してはよく知られている
が,滑膜細胞が生成する酵素についての情報がなく,関節
内の薬物動態を予測することはできない。本研究では,代
謝酵素の中でもエステラーゼに注目し,ヒトおよび関節炎
モデル動物として利用されるウサギの培養滑膜細胞に存在
するエスエラーゼの同定を行った。
【方法】ヒトとウサギの滑膜細胞ホモジネートを Native­
PAGE で分離し, 1 − naphthol , 2 − naphthol , 4 −
methylumbelliferone の acetyl 誘導体を基質に用いて加水
分解活性を有するバンドを染色した。
【結果・考察】ヒト滑膜細胞では,アルブミンのバンドの
上下に加水分解活性の強いバンドと活性の弱いバンドが検
出された。一方,ウサギ滑膜細胞では,アルブミンの近く
に活性の強いバンドがあり,さらに速い移動度に若干強度
の弱いバンドが検出された。いずれのバンドもパラオキソ
ンによる阻害からセリン活性中心持つ酵素と確認された。
また,非常に遅い移動度に活性の弱いバンドが検出され,
ウサギとヒトでは発現酵素が大きく異なるものと考えられ
た。
−249−
ポスター演題
281 カルボキシルエステラーゼ2の活性中心の構造解
析を目的とした変異体の作成とその機能解析
熊本大学大学院 薬学教育部
○田之上 聡、藤原 斉也、田中
大浦 華代子、今井 輝子
282 食道癌患者におけるがん化学療法施行時の一過性
の血清シスタチン C 濃度の上昇
1
神戸大学医学部附属病院 薬剤部、
京都薬科大学 代謝分析学分野、
神戸大学医学部附属病院 検査部、
4
神戸大学大学院 医学研究科 外科学講座 食道
胃腸外科学分野、
5
姫路獨協大学 薬学部 薬剤学研究室
○久米 学1、安井 裕之2、吉川 豊2、
東口 佳苗3、小林 曜子3、黒田 大介4、
槇本 博雄1、平野 剛1、平井 みどり1、
中村 任5
2
康介、
3
【目的】異物加水分解の中心的酵素はカルボキシルエステ
ラ ー ゼ で あ り、ヒ ト で は hCE1と hCE2が 関 与 す る。
hCE2と hCE1の基質認識性は大きく異なるが、酵素の
基本構造は同じであり、大きな相違点は、hCE2における
活性中心近傍のアミノ酸15残基から成るループの欠損であ
る。そこで、この15残基を挿入した hCE2変異 体(hCE
2+15)をバキュロウィルス−昆虫細胞発現系を用いて作
成し、活性に及ぼすループの役割を検討した。
【方法】欠損アミノ酸残基は Inverse­PCR 法により導入
し、C 末 に His­tag を 付 加 し た。hCE2及 び hCE2+15
+His を昆虫細胞 Sf9に発現させ、Ni カラムを用いて精
製した。また、hCE2および hCE2+His を HEK293に発
現させた。
【結果・考察】1)HEK293細胞に発現した hCE2と hCE
2+His の加水分解活性から、His­tag 付加の影響はない
と考えられた。2)HEK293と Sf9で発現させた hCE2+
His の加水分解活性は同程度であり、Sf9細胞での発現の
妥当性が示された。3)Sf9細胞による hCE2+15+His
5MOI(多重
大量発現の条件検討の結果、ウィルス力価2.
感染度)
で感染後、60時間培養により最大の発現を示した。
hCE2+15変異体には加水分解活性が認められ、現在、ア
ミノ酸15残基の影響について詳細に検討している。
283 金属含有製剤と併用可能なエノキサシンプロド
ラッグのラットの体内動態の検討
【目的】シスタチン C(Cys C)は腎機能マーカーとして
の利用に加え、薬物の体内動態予測に向けた検討も行われ
ている。本 研 究 で は、5−FU/CDDP 療 法(FP 療 法)施
行患者における血漿中プラチナ(Pt)濃度推移と血清 Cys
C 濃度との相関性について検討した。
【方法】FP 療法を施行した食道癌患者6症例を対象とし
た。FP 療法は、5−FU(800mg/m2)/CDDP(80mg/m2)
2サイクルを1コースとして行った。血漿中総 Pt 濃度は
ICP­MS 法により定量した。本研究は、神戸大学大学院医
学研究科等医学倫理委員会の承認を取得後、対象患者から
文書による同意を得て行った。
【結果】全被験者において1サイクル目に CDDP 投与後7
日 以 内 に 一 過 性 の 血 清 Cys C 濃 度 の 上 昇(122.
6%∼
143.
0%)が認められ、10日程度でベースライン値へ回復
した。2サイクル目においても全患者で同様の上昇が認め
られた。一方、血清クレアチニン(Cre)では上昇は認め
られなかった。血漿中 Pt 濃度(投与2日後)と血清 Cys
C 濃度、血清 Cre との間に相関は認められなかった。一次
消失を仮定した血漿中 Pt の半減期について、1サイクル
目と2サイクル目で差は認められなかった。
【考察】血清 Cys C 濃度の変動と血漿中 Pt の消失の間に
相関が認められなかったことから、血清 Cys C は腎機能以
外でも変動する可能性が示唆された。CDDP 投与中の食道
癌患者において、血清 Cys C 濃度から腎機能を推定する場
合は、腎機能を過小評価する可能性があるため注意が必要
である。
284 悪性リンパ腫患者におけるドキソルビシン体内動
態の検討
1
1
2
2
近畿大学 薬学部 医療薬学科、
浅香山病院薬剤部
○瀬川 雅彦1、岡本 佳世1、今仲 洸2、
川瀬 篤史1、大鳥 徹1、岩城 正宏1、
松山 賢治1
福井大学 医学部 附属病院 薬剤部、
福井大学 医学部 血液・腫瘍内科
○五十嵐 敏明1、岸 慎治2、片山 千尋1、
矢野 良一1、中村 敏明1、細野 奈穂子2、
山内 高弘2、上田 孝典2、政田 幹夫1
【目的】ニューキノロン系抗菌薬は多価金属製剤との併用
により、消化管腔内でキレートを形成し、血中濃度が大き
く低下する。そこで本研究では、薬物間相互作用回避のた
めエノキサシンの3位のカルボキシ基(ピリドンカルボン
酸部位)を塞ぐことで両者が併用されても不溶性キレート
の形成を起こさないプロドラッグ(エノキサシンピボキシ
ル体、メチルエステル体、グリセリンエステル体:以降プ
ロドラッグ群と略)を合成したので、ラットを用いて腸管
反転法ならびに薬物動態パラメータを用いてプロドラッグ
の評価を行うこととした。
【方法】SD 系雄性ラット(8週齢)に合成した各種エノ
キサシンプロドラッグ群を単独あるいは多価金属含有製剤
と併用して腸管での薬物吸収量を測定し、また経口投与時
の血中濃度を経時的に測定して評価を行った。
【結果・考察】ピリドンカルボン酸部位にエステル基を導
入した各エノキサシンプロドラッグは全てキレート形成を
起こさなかった。またピボキシルを除くプロドラッグ群は
エステラーゼで加水分解されないことがわかった。体内で
親化合物であるエノキサシンに加水分解したプロドラッグ
はダブルエステルのエノキサシンピボキシルのみであっ
た。このことからエノキサシンプロドラッグとして優れて
いるのはモノエステルタイプよりダブルエステルタイプで
あることが判明した。今後エノキサシンへの変換率の高い
トリエステルタイプのプロドラッグを検討していく。
【目的】ドキソルビシン塩酸塩は広く使用されているアン
トラサイクリン系抗悪性腫瘍剤である。総投与量と心毒性
との関連性が指摘されているものの、その体内動態と効
果、副作用との関連性は不明な点が多い。そこで CHOP
療法を施行した悪性リンパ腫患者において、ドキソルビシ
ンの血中濃度を測定し体内動態と効果、副作用との関連性
を検討したので報告する。
【方法】2010年12月から2012年4月まで、当院にて CHOP
療法を施行した患者のうち、同意が得られた方(6名)の
ドキソルビシンの血中濃度を高速液体クロマトグラフィで
測定した。個々の患者において血中濃度から体内動態パラ
メータを求め、治療効果や副作用との関連性を検討した。
4
【結果】得られた体内動態パラメータは、分布容積が37.
±15.
7L/kg、消 失 半 減 期 が32.
5±18.
6h、AUC が1.
58±
0.
50mg·h/L であり、個体差が大きかった。Grade4の好
中球減少が見られた患者では半減期が長い傾向が認められ
た。その他の副作用や治療効果と体内動態パラメータとの
関連性は認めなかった。
【考察】今回の検討では規模が小さく、体内動態と効果、
副作用との関連性を一部示唆するにとどまった。今後症例
数を増やし、関連性を明らかにすることで、TDM、テー
ラーメイド医療の実現に貢献できるものと考える。
−250−
285 悪性腫瘍患者におけるミカファンギンによる治療
効果の PK/PD 解析
286 痩せ型患者におけるテイコプラニン初回投与設計
での血清クレアチニン値補正の有用性
1
1
2
2
福山大学 薬学部、
産業医大病院 薬剤部、
3
産業医大病院 化学療法センター 血液科
○江藤 精二1、藤谷 真規1、嶋津 幸之助1、
山本 貴恵1、有本 早織1、五郎丸 剛1、
篠原 義剛2、實松 絵美子2、高橋 浩二郎2、
森本 浩章3、塚田 順一3
【目的】ミカファンギン(MCFG)の場合、PK/PD パラ
メータとして AUC/MIC 及び Cmax/MIC の有用性が報告
されているが、臨床的には十分に検証されていない。今
回、真菌症予防あるいは治療目的で MCFG を投与された
悪性腫瘍患者において MCFG 血中濃度を測定し、副作用
の観点から臨床検査値との関連性を検討するとともに、予
防あるいは治療効果について PK/PD による検討を行っ
た。
【方法】悪性腫瘍の治療の目的で入院加療中に、深在性真
菌症の予防あるいは治療の目的で MCFG を投与された患
者(27例)を対象とした。MCFG 投与開始4日目以降の
MCFG 投与直前及び投与後1時間までの MCFG 血中濃度
を HPLC により定量した。治療効果は MCFG 治療開始前
後の細菌検査、CRP、脈拍数及び体温変化などの臨床症状
を参考に評価した。本研究は病院の倫理委員会の承認を受
け、研究目的及び血中濃度測定のための採血については、
主治医より患者に説明を行い患者の同意を得た。
【結果・考察】悪性腫瘍患者において、MCFG の予防あ
るいは治療の効果を AUC/MIC を用いて評価した。その
結果、真菌症として臨床診断された患者及び真菌症疑いの
患者で効果ありと判定された患者では、AUC/MIC(平均
値)としてそれぞれ9,
768及び6,
737が得られた。一方、効
果なしの患者では3,
000以下であった。この結果はこれま
での報告とほぼ同様であり、AUC/MIC が MCFG の治療
効果の指標として有用であることが示唆された。
287 テイコプラニン積極的初期負荷投与の有用性
岡山大学 薬学部、
岡山大学病院
○沖野 真季1、佐藤
千堂 年昭2
智昭2、河崎
陽一2、
【目的】痩せ型患者では筋肉量の低下で血清クレアチニン
値(Scr)が低値となり、腎機能が過大評価される懸念が
ある。バンコマイシンでは痩せ型患者に Scr 補正を行うこ
とで予測精度が向上したとの報告があるが、テイコプラニ
ン(TEIC)での詳細な検討は行われていない。そこで今
回、解析ソフトを用いた痩せ型患者における初回投与設計
での Scr 補正の有用性を検討した。
【方 法】対 象 は20歳 以 上 の 痩 せ 型(BMI<18.
5kg/m2)
患者とし、初回血中濃度測定を投与開始から3−7日目に
行い、実測トラフ値が10−25μg/mL であった13名(男性
11名、女性2名)とした。Scr の補正方法は Scr を+0.
2、
+0.
5mg/dL と加算、0.
6、0.
8未満は0.
6、0.
8とする4手
法とした。腎機能推定は CG 式と eGFR 式で行い「TEIC
TDM 解析支援ソフトウェア Ver.
2.
1」により予測し、実
測値との偏り(ME)と正確さ(MAE)を算出し予測精
度の指標とした。
【結果・考察】予測値が実測値よりも低くなる傾向となっ
たが、全ての補正方法で予測精度は向上した。ME では
CG 式で補正なし (−4.
39) に対し、+0.
5補正 (−2.
46)
のみ95%C.I.が0を含み、偏りが有意に改善された。一
方、MAE で は+0.
5補 正 の eGFR 式(4.
00)が 最 も 正 確
さにおいて良好であったが、CG 式(4.
19)との有意な差
はなかった。以上、痩せ型患者において初回投与設計での
Scr 補正は有用であり、Scr を一定に補正するより個々の
患者の Scr に0.
5mg/dL を加算した補正を行った方が最も
有用であることが明らかになった。
288 バンコマイシン塩酸塩の初回トラフ濃度と血清ク
レアチニン値との関連性の評価
1
名古屋大学 医学部附属病院 薬剤部、
2
救急・集中治療医学分野
○宮崎 雅之1、竹内 典子1、宮川 泰宏1、
加藤 善章1、山本 雅人1、松田 直之2、
永井 拓1、山田 清文1
広島市立広島市民病院 薬剤部
○村上 礼隆、菅原 隆文、植竹 宣江、
松本 俊治、和田 博、宮森 伸一、開
【目的】テイコプラニン(TEIC)は分布容積が非常に大
きく、添付文書上の投与方法ではトラフ血中濃度が有効治
療濃度に到達するには5日程度要する。名古屋大学医学部
附属病院では、ICU 入院中の重症感染症の疑い患者に対
し、速やかに有効血中濃度を得ることを目的として TEIC
の積極的な負荷投与を実施している。本研究では当院にお
ける TEIC 積極的負荷投与患者での血中濃度推移を解析
し、本投与法の有用性について評価した。
【方法】2011年4月∼2012年3月に、当院 ICU にて TEIC
を1回8∼11mg/kg を8時間毎に4回負荷投与し、その
後24時間毎に投与した成人患者46名、一般病棟にて通常の
1回6∼10mg/kg を12時間毎に2回負荷投与し、その後
24時間毎に投与した成人患者15名を対象とした。いずれも
TEIC 負荷投与後にトラフ血中濃度を測定した。血中濃度
測定は蛍光偏光免疫測定法により測定した。観察項目はク
レアチニンクリアランス(CCr)と TEIC 血中濃度とした。
【結果】初回血中濃度測定時のトラフ値は積極的負荷投与
群:18.
57μg/mL、通常負荷投与群:14.
11μg/mL であり、
積極的負荷投与は有意に高値を示した(p<0.
05)
。有効
血中濃度(トラフ値:15μg/mL 以上)達成率は積極的負
荷投与群が通常負荷投与群よりも有意に高かった(p<
0.
05)
。また、トラフ濃度は CCr との間に相関はみられな
かった。
【結論】TEIC の積極的負荷投与は腎機能に関わらず早期
に有効血中濃度へ到達することから本投与方法の有用性が
示された。
浩一
【目的】近年メチシリン耐性黄色ブドウ球菌でのバンコマ
イシン塩酸塩(VCM)の最小発育阻止濃度の上昇が問題
となっており、有効性を保つには VCM の血中濃度を高く
保つ必要がある。しかし、トラフ濃度(以下トラフ)が20
μg/mL を超えた症例で腎機能の低下が生じるといわれて
いるが、投与初期のトラフ(初回トラフ)と腎機能障害の
関連性の報告は少ない。今回我々は初回トラフと腎機能低
下の関連性について検討を行った。
【方法】平成21年4月から平成22年3月までに VCM が投
与された患者174例を後方視的に調査した。初回トラフを
15μg/mL 未 満(A 群)
、15∼20μg/mL(B 群)
、20μg/mL
以上(C 群)の群に分け、VCM 投与前後の血清クレアチ
ニン値(Cr)の変化を評価した。
5%)と A+B 群57/140例
【結 果】C 群26/34例(76.
7%)にそれぞれ Cr の上昇がみられたが、C 群で有
(40.
意に Cr の上昇が見られた。VCM 投与前と比較し Cr 値が
25%以 上 悪 化 し た 症 例 は25/174例、C 群 は14/34例
2%)
、A+B 群は11/140例(7.
9%)であった。
(41.
【考察】C 群では他の群に比べ Cr の上昇がみられた。以
上より初回トラフが高い場合は、早期から腎機能低下が起
こることを念頭に、投与設計及び患者モニタリングを行っ
ていく必要があると考察する。
−251−
ポスター演題
289 TDM 実施に伴うバンコマイシン血中薬物濃度解
析支援ソフトの比較
290 造血幹細胞移植患者におけるシクロスポリン A と
アゾール系抗真菌剤との相互作用の評価
1
社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会中津病
院
○三木 芳晃、濱田 裕輝、畑仲 希良々、
橋間 伸行、高柳 和代、奥村 裕英、
桑井 幸雄
天理よろづ相談所病院 薬剤部、
天理よろづ相談所病院 血液内科
○黒松 誠1、梶田 貴司1、樽野 麻依1、
西川 豊1、雪矢 良輔1、飯岡 大2、
前迫 善智2、中村 文彦2、大野 仁嗣2、
上田 睦明1、中塚 英太郎1
2
【目的】バンコマイシン(以下,VCM)は、その有効性
を確保し耐性菌の発現や副作用を回避する為に血中濃度を
測定しながら投与を行うことが重要である。今回、TDM
導入を検討するに当たり VCM 実測値と TDM 解析支援ソ
フト算出の予測値から相関性及び予測精度を検証した。
【方法】2011年4月から2012年4月の間に点滴静注用バン
5「MEEK」が投与され、血中濃度測定を行っ
コマイシン0.
た51例を対象とし、初回投与設計における予測トラフと実
測トラフを用いた。TDM 解析支援ソフトは、塩野義製薬
2009(以下、S ソフト)
、
配布 VCM­TDM S­edition Ver.
MeiJiSeiKa ファルマ配布「MEEK」TDM 解析ソフト Ver
2.
0(以下、M ソフト)を使用した。なお、血清クレアチ
ニ ン 値 が0.
6mg/dL 以 下 の 場 合、0.
6mg/dL に 補 正 を 行
い、透析患者は除外した。
、年齢は46∼
【結果】対象患者51例(男性29名、女性22名)
97歳 で あ っ た。両 ソ フ ト の 予 測 精 度 は、Ccr<50、50<
Ccr<85で S ソフトが、Ccr>85で M ソフトが近い値を示
した。性別、年齢、体重で差は出なかった。また、全体と
して S ソフトに比べ M ソフトはトラフが高めに推定され
ていることが多かった。
【考察】今回の両ソフト間における予測性の検討は、Ccr
<85で S ソフトが、Ccr>85で M ソフトが近い値を示し、
患者の腎機能に応じてソフトを使い分ける必要が示唆され
た。VCM 投与開始後早期に血中濃度を測定し、患者背景
にあった投与量の補正をしていくことが重要であると考え
る。
【目的】シクロスポリン A(CyA)は、アゾール系抗真
菌剤との併用により、薬物動態に変動を生じる可能性が高
く、添付文書上でも併用注意となっている。また、本邦に
おいて、種々の薬剤・剤形のアゾール系抗真菌剤が上市さ
れており、これらの抗真菌剤と CyA の薬物間相互作用に
ついて同一背景患者を対象とした検討は少ない。そこで各
種薬剤・剤形のアゾール系抗真菌剤が CyA 血中濃度に及
ぼす影響について、造血幹細胞移植(BMT)患者を対象
に検討した。
【方法】2003年から10年に BMT が施行された患者を対象
(CyA 経口投与;40例、静脈内投与;57例)とし、CyA
血中濃度に影響を及ぼす薬剤との併用がない対照群と各ア
ゾール系抗真菌剤併用群との間で血中濃度を比較した。
【結果・考察】CyA 経口投与群および静脈内投与群の相
互作用の強度は、それぞれイトラコナゾール(ITCZ)内
用液(P<0.
001)>ボ リ コ ナ ゾ ー ル(VRCZ)錠>ITCZ
カプセル>フルコナゾール(FLCZ)カプセル、ITCZ 注
(P<0.
001)
・VRCZ 錠(P<0.
05)>ITCZ 内 用 液(P<
0.
05)>FLCZ カプセル>ホスフルコナゾール注・ITCZ
カプセルとなった。以上の結果、CyA 投与経路、抗真菌
剤の種類や剤形により薬物間相互作用の発現の程度が異な
ることが明らかとなり、本結果に基づき CyA での治療を
行うことで安全かつ有効な治療を患者に提供することがで
きると考えられる。
291 BMI 値の変動にともなうシクロスポリン及びタク
ロリムスの血中濃度変化
292 当院における TDM 対象薬剤投与患者の TDM 実
施割合
金沢大学附属病院 薬剤部
○澤本 一樹、杉本 奈津美、Tran Huong、
崔 吉道、宮本 謙一
社会医療法人財団互恵会 大船中央病院 薬剤部
○根岸 大輔、三浦 美樹、天野 しのぶ、
舟越 亮寛
【目的】肥満による生理状態の変化が CYP3A4、P−糖
タンパク質(P­gp)などのトランスポーターや薬物代謝
酵素発現に影響を与えることが示唆されている。しかし臨
床において肥満が薬物動態変動に与える影響に関しては報
告が少ない。そこで本研究では、CYP3A4及び P­gp の
基質となり Therapeutic Drug Monitoring(TDM)対象
薬 物 で も あ る シ ク ロ ス ポ リ ン(CyA)
、タ ク ロ リ ム ス
(TACR) に焦点を当て、Body Mass Index 値 (BMI 値)
の変動にともなう血中濃度変化を明らかにすることを目的
とした。
【方法】2005年4月から2011年3月までに金沢大学附属病
院で CyA あるいは TACR が投与され TDM が行われた患
者を対象に、後方視的調査を行った。対象患者を BMI 値
を基準に低体重群(18.
5未満)
、標準体重群(18.
5以上25
未満)
、過体重群(25以上)の3群に分け、血中トラフ濃
度を投与量で標準化したトラフ血中濃度/投与量比(C/D
比)と BMI 値の関係について解析した。本研究は金沢大
学医学倫理審査委員会(受付番号1135)の承認を得て行っ
た。
【結果・考察】CyA を投与された男性患者では BMI 値と
C/D 比に正相関を認めたが、女性患者では相関を認めな
かった。一方、TACR を投与された患者では、低体重群
及び標準体重群に比べ過体重群で C/D 比が有意に上昇し
た。また、男性患者では BMI 値と C/D 比に正相関を認め
た。本研究より、特に男性患者では BMI 値の上昇による
CyA、TACR の血中濃度上昇には注意を要することが示
唆された。
【目的】TDM とは治療域の狭い薬物の血中の濃度を測定
し、患 者 に 個 別 化 し た 薬 物 療 法 を 行 う こ と で あ る。抗
MRSA 薬などの腎排泄型薬剤などで代表され、当院では
シミュレーションを行い、腎機能に応じた初回投与設計を
行っている。しかし、外来において TDM は医師の裁量で
それぞれ実施されており、その TDM の実施率は明らかで
はない。そのため、本研究では、当院における TDM 実施
の実態調査を行った。
【方法】電子カルテの後ろ向き調査を行った。調査対象期
間は平成23年1月∼平成23年12月の1年とした。1年間の
間に TDM 対象薬剤の処方された患者数と TDM 実施した
患者数を比較した。
【結果】TDM 実施患者数/処方患者数はアミノ配糖体約
30%、グ リ コ ペ プ チ ド 系 抗 菌 薬 約75%、強 心 配 糖 体 約
55%、抗不整脈薬約25%、免疫抑制剤100%、テオフィリ
ン 製 剤 約10%、リ チ ウ ム 塩100%、抗 て ん か ん 薬30%で
あった。
【考察】アミノ配糖体、グリコペプチド系抗真菌薬は注射
薬として入院中に使用される。当院においては全病棟に常
駐の薬剤師を配置しているため、TDM やシミュレーショ
ン値の算出などに寄与し、高い算定率に繋がっているもの
と考えられた。不整脈薬、テオフィリン製剤、抗てんかん
薬等の内服薬の算定率が低い値を示した。外来処方におい
ても薬剤師の関与が処方支援に関与することで薬剤の適正
使用に繋がるのではないかと考えられた。
−252−
293 薬物除去評価系としての血液透析モデルラットの
確立
294 当院におけるボリコナゾールの TDM の実施状況
とその効果
1
熊本大学 薬学部、
九州保健福祉大学 保健科学部
○萩原 里実1、門脇 大介1、成田
竹澤 真吾2、平田 純生1
大分大学医学部附属病院
○吉原 奈津子、鈴木 陽介、川崎
佐藤 雄己、伊東 弘樹
2
勇樹1、
【目的】薬物の透析による除去率は,血液透析患者に対す
る薬物投与設計の際に重要となる。しかしながら,臨床的
に除去率を評価することは困難であり,一方, in vitro に
おける検討では生体側因子による影響を評価できない。そ
こで,薬物除去率評価のための血液透析モデルラットの検
討を行った。
【方法】Wistar ラットの両側腎動脈を結紮して腎排泄を
0ml/min,透析液流量
消失させ,18時間後より,血流量1.
5.
0ml/min で,2時間の血液透析を施行した。モデルの
妥当性検証のため,非透析時および透析時の Ht,Hb,電解
,血 液 ガ ス(pCO2,tCO2)
,pH,
質(Na+,K+,Cl­,HCO−
3)
BUN,Base Excess(BE),Anion Gap(AG)の変動と,
透 析 効 率(Kt/V,BUN お よ び Cr ク リ ア ラ ン ス(CLBUN,
)を評価した。また,透析で除去されやすく,臨床
CLCr)
での透析除去率が既知であるアミカシンを対象薬物とし
て,本モデルでの透析除去率を求めた。
【結果】両側腎動脈を結紮したラットでは,腎機能悪化,
代謝性アシド−シス,低 Na 血症,高 K 血症などが惹起さ
れたが,血液透析を施行することによって,これらの変化
15
が是正される傾向が確認された。透析効率は,Kt/V0.
±0.
14,
CLBUN0.
98±0.
29ml/min,CLCr0.
68±0.
16ml/min で
27±0.
03であ
あった。また,アミカシンの透析除去率は0.
り,4時間透析による臨床値の1/2となった。
【結論】本モデルは,透析による薬物除去率の評価系とし
て有用であることが示唆された。
295 血液透析患者のゲンタマイシンの体内動態の検討
1
国立病院機構熊本医療センター薬剤科、
2
佐世保中央病院薬剤部、
3
福岡大学筑紫病院薬剤部、
4
福岡大学薬学部創剤学
○丸田 基史1、木村 修徳1、牛島 知実1、
井上 紗緒理1、岩下 卓1、平木 洋一1、
泰弘2、神村 英利3、
真鍋 健一1、
加留部 善晴4
佳奈子、
【目的】ボリコナゾール(VRCZ)は主な副作用として羞
明や肝機能障害があり、その目標血中トラフ濃度域は2−
4μg/mL とされている。大分大学医学部附属病院(以下、
当院)では、2010年8月より薬剤部による VRCZ の TDM
を 行 っ て い る。今 回 そ の 実 施 状 況 を 調 査 し、VRCZ の
TDM の有用性を評価した。
【方法】2010年8月から2012年2月までの間に、当院にお
いて VRCZ が4日間以上投与された患者について、TDM
実施の有無、疾患名、検査データ、VRCZ の投与履歴およ
び血漿中トラフ濃度をレトロスペクティブに収集した。
【結果】期間中に VRCZ が投与された患者は17名であり、
3%であった。TDM を行うことにより
TDM 実施率は82.
64.
2%の患者について投与量の再設計が行われていた。ま
た肝障害非発現群・発現群の間で、VRCZ の投与量に有意
6±0.
8vs7.
0±1.
2mg/kg/day,
な差は見られなかったが(6.
47)
、トラフ値については有意差が認められた(2.
8
p=0.
±1.
0vs5.
6±1.
8μg/mL, p=0.
0039)
。
【考察・結論】VRCZ の TDM が行われた患者の約6割に
おいて投与量の再設計が行われており、トラフ値が目標域
を超えると肝障害が発現しやすい傾向があることが分かっ
た。以上より TDM の実施によって VRCZ の適正使用が
推進され、特に肝障害予防の点で有用であることが示唆さ
れた。
296 薬剤師による抗菌薬血中濃度測定オーダ適正化へ
の試み
日本医科大学多摩永山病院 薬剤部
○菅谷 量俊、田杭 直哉、近藤 匡慶、
村田 和也
【目的】腎末期障害患者で HD を受けている患者で、HD
前後の GM の体内動態を検討の検討を行った。
【方法】当院に入院し、MRSA 感染性心内膜炎の診断が
された末期腎不全患者で、VCM+GM の併用療法が行われ
た1症例を対象とした。GM の Cmax は、投与直後の濃度
から、投与直前の GM 濃度を引いた値を Cmax とした。
また、みかけの分布容積(V1)は体重あたりの投与量を
Cmax で除して求めた。β 相の消失半減期は、投与後2時
間後の血漿濃度が β 相にあると見なし、次回 HD 直前の
血中濃度との間で1次速度式により算出した。
【結果】GM の体重当たりの投与量と、血中濃度から得ら
れ た Cmax の 相 関 は、y=0.
33x±0.
057(r2=0.
984)で
あり、体重当たりの投与量と Cmax は良好な相関が認め
られた。また、Cmax より推定した V1は0.
35±0.
02L/kg
であった。投与終了後2時間値と HD 直前の血中濃度値か
ら 算 出 し た Kel は0.
0048/hr で あ り、t1/2は143.
6hr と
推定された。
【考察】透析患者における GM の体内動態について検討
した結果、投与量と Cmax の直線回帰得、目標 Cmax と
Kel による計算で、GM の血中濃度のコントロールが可能
になると思われた。このことは、有効域を逸脱した副作用
を防止するとともに、PAE および AUC を高めることが
可能となり有効性も期待できると思われた。
【目的】抗菌薬を有効かつ安全に使用するために、薬物治
療モニタリング(以下、TDM)を行うことは感染治療を
行う上で不可欠である。しかし、TDM を適切かつ効率よ
く運用されるためには、医師・看護師などとの連携が重要
であり、特に感染症治療を行うため迅速に測定結果を把握
し、得られたデータより投与設計を行うことが求められて
いる。そこで、当院では TDM を適切に行うために、薬剤
部を中心として、積極的に TDM 実施率向上のために業務
変更した現状を報告する。
【方法】感染症治療専門薬剤師を中心として入院患者に対
し て TDM 実 施 可 能 な 薬 剤 を 対 象 に、用 法 用 量 お よ び
TDM 採血オーダの確認を行い、採血オーダがない場合に
は医師へ確認後、薬剤部(注射調剤担当)より採血オーダ
入力をする。また、測定結果に対して薬剤部において確認
後、投与量変更が必要な場合にはその都度直接処方提案す
ることとした。TDM 実施率について、平成11年1月∼3
月(実施前)および平成11年11月∼平成12年1月(実施後)
について調査した。
1%に対し、実
【結果・考察】TDM 実施率は、実施前31.
施後77%であった。感染管理部門での薬剤師業務として、
TDM 業務へ参画している施設は多い。感染治療専門薬剤
師を中心としたセントラル業務として携わることで24時間
体制で支援が可能となり実施率が向上し、より適正使用が
可能となった。今後、さらに病棟との連携を諮り、感染治
療に寄与できる体制を構築していきたいと考える。
−253−
ポスター演題
297 腎機能低下患者におけるメロペネムの体内動態
298 ラモトリギンの母乳移行性・乳児への影響に関す
る症例検討
1
新潟薬科大学 薬学部、
下越病院薬剤課
○木村 和也1、庭山 桂大1、福本 恭子1、
三星 知2、山田 仁志2、長井 一彦2、
上野 和行1
2
1
旭川医科大学病院 薬剤部、
旭川医科大学周産母子センター、
3
京都大学医学部附属病院薬剤部
○森 美奈子1、森田 真樹子1、田崎 嘉一1、
山本 久仁子1、長屋 健2、千石 一雄2、
松原 和夫1,3
2
【目的】メロペネムは各種細菌を起因とする様々な感染症
に対して優れた効能・効果を有するカルバペネム系抗生物
質で、広い抗菌スペクトルと優れた抗菌活性を有すること
が知られている。一般にカルバペネム系抗生物質の薬力学
的効果は血中濃度が起炎菌の発育を阻 止 す る 最 小 濃 度
(MIC)を超える時間(Time above MIC)に依存するこ
とが知られている。またその PK/PD 理論に基づく適正な
投与量の設定が求められている。一方 PK/PD 理論に基づ
いた十分な投与量として、重症・難治性感染症に対して1
日最大量が3g の投与が承認されている。しかしメロペネ
ムは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患者においてはより
慎重な投与量の設定が望まれている。本研究においてはメ
ロペネム投与患者を対象として体内動態を解析し、腎機能
低下患者における適正な投与量の検討を行った。
【方法】メロペネム投与患者12例(平均年齢73歳、平均体
重50kg)を対象として、血清中メロペネム濃度を測定し、
体内動態パラメータを解析した。また臨床検査値などを経
時的にモニタリングした。
【結果・考察】血液浄化実施患者においては1日量500mg
で十分な T>MIC が維持できることが認められた。腎機能
正常患者では1日最大投与量3g まで投与した結果、十分
な T>MIC が得られたが、副作用として肝機能が低下した
症例もあった。現在症例数を増やして、より詳細に検討中
である。
299 リネゾリド投与症例における骨髄抑制と舌炎が関
連したと思われる2症例
【目的】情報の少ないラモトリギン(LTG)の母乳中お
よび血中濃度を測定し、乳児に対する安全性を検討する。
【方法】母親が LTG 服用中で、乳児が無呼吸症を起こし
た症例報告を参考に、母体については、産後4日および90
日目の母乳中および血中濃度、乳児については、生後5日
および90日齢の血中濃度を HPLC により測定し、RID お
よび M/P 比を算出した。また、データを文献値等と比較
した。
【結果】産後4日目の母体血中 LTG 濃度は、トラフ値が
10.
8μg/mL、ピーク値が12.
6μg/mL、生後5日目の乳 児
67μg/mL、母 乳 中 LTG 濃 度 が11.
5&
血 中 LTG 濃 度 が6.
91、RID=9.
6%であっ
μg/mL(ピーク時)で M/P 比が0.
4および12.
9&
た。産後90日目の母乳中 LTG 濃度は、13.
μg/mL(内服後45分および1時間35分後)で あ っ た。生
31μg/mL、RID が
後90日 目 の 乳 児 血 中 LTG 濃 度 は3.
22.
3%であった。乳児は文献にあるような無呼吸症等の異
常はなく経過した。
【考察】今回の乳児の血中濃度や母乳移行性は、文献値と
比較した場合、産後4日目の RID を除いて同程度であっ
たと考えられるが、乳児の様態に90日齢まで異常はなかっ
た。乳児の血中濃度の減少は、LTG 肝代謝発達によると
考えられる。血中 LTG 濃度と無呼吸症との相関関係は不
明であり、今後もデータを蓄積していく必要がある。
300 ダプトマイシン投与後に好酸球増加症が出現した
一症例
1
金沢循環器病院薬剤部、
金沢循環器病院心臓血管外科
○安達 尚哉1、永吉 靖弘2
琉球大学医学部附属病院薬剤部
○座間味 丈人、潮平 英郎、外間
宇野 司
2
【諸言】リネゾリド(以下 LZD)は組織以移行性が良い
オキサゾリジノン系の抗 MRSA 薬である。LZD の副作用
として骨髄抑制が報告されており、「血液検査を週1回を
目処に実施すること」と注意喚起されている。今回 LZD
投与後、骨髄抑制の発現と舌炎の発現が関連したと思われ
る症例を経験したので報告する。
【症例結果】症例1:AVR 後で入院中の80歳男性。術後
縦隔炎発症し他剤無効にて LZD 投与、投与6日目より舌
5→投 与9日 目12.
0と
炎 出 現、PLT(万/μL)投 与 日20.
6で あ っ
減少し投与10日 で 中 止。中 止 後3日 後 の PLT6.
た。症例2:OPCAB 後で入院中の70歳男性。術後縦隔炎
発症し他剤無効にて LZD 投与、PLT(万/μg)投与前日
35→投与17日目19.
4と減少、投与20日で中止。中止後2日
目に舌炎確認。確認前より舌が痛いと食欲低下あり。
2共に骨髄抑制発現にて LZD が投与中止
【考察】症例1,
となった。他の抗生剤投与では舌炎が発現していないが
LZD 投与では舌炎が発現しており、舌炎の発現と骨髄抑
制の発現は関係する可能性があると考えられる。舌炎が発
現した場合に採血を行うことで早期に骨髄抑制を発見でき
る可能性がある。
惟夫、
【背 景】ダ プ ト マ イ シ ン(以 下,DAP)は,2011年7月
に MRSA による敗血症,感染性心内膜炎,深在性皮膚感
染症の治療薬として承認され,新たな抗 MRSA 治療の選
択肢の一つとして期待されている。しかし,投与期間中の
CPK 等のモニタリングが望ましいとされている。また,
頻度こそ低いが,海外では投与後に発熱,低酸素血症性呼
吸困難,びまん性肺浸潤を伴う好酸球性肺炎が報告されて
おり,添付文章に重大な副作用として記載されている。今
回,DAP 投与後にみられた好酸球増加症に対してモニタ
リングを行った症例を報告する。
【症例】59歳女性。冠動脈大動脈バイパス移植術後に,発
熱と胸水,創部,ドレーン排液から MRSA が検出され,
さらに胸部 CT 所見等から皮下深部感染,術後骨髄炎,縦
隔炎疑いにて DAP が開始となる。DAP 投与後,血中好
酸球増加,倦怠感,CRP の上昇がみられたが,発熱,呼
吸困難等の症状はみられず,途中リネゾリド(以下,LZD)
内服投与への切り替え等を含めて71日間で投与終了とな
り,外来での経過観察となった。
【考察】今回の症例では原因薬剤の特定には至らなかった
が,好酸球上昇は DAP から LZD へ変更後に改善傾向を
示した。さらに LZD 投与後,副作用が発現し,DAP へ再
変更後,好酸球が再上昇したため,DAP の関与が疑われ
た。他の抗 MRSA 薬と比較して安全性が高いと言われて
いる DAP だが,日本における使用報告も少なく,注意深
く副作用をモニタリングする必要があると考えられる。
−254−
301 感染性心内膜炎が抗菌薬の短期間注射治療と内服
治療で奏功した2症例
302 ICT 薬剤師によるバンコマイシンの適正使用に向
けた取り組み
1
1
2
3
伊那中央病院 薬剤科、2伊那中央病院 看護部、
伊那中央病院 診療部
○坂井 孝行1、伊藤 新司1、六波羅 孝1、
唐澤 頼勝1、平澤 はるみ2、竹内 信道3
医療法人財団 荻窪病院 薬剤科、
医療法人財団 荻窪病院 心臓血管外科
○沖中 美奈子1、二石 直子1、松島 菜々1、
澤 重治2、藤井 奨2、相馬 裕介2
【目的】
感染性心内膜炎(IE)とは適切な治療が奏功しなければ
多くの合併症を引き起こし、ついには死に至る重篤な疾患
である。治療については感染性心内膜炎の予防と治療に関
するガイドラインにて抗菌薬の投与期間が決まっており、
ガイドラインに沿って治療が行われていく。今回、抗菌薬
注射の投与期間がガイドラインよりも短期間で、更には内
服治療にて奏功した症例を2症例経験したので報告する。
【症例】
(A) 76歳 男性 2か月間熱発し、心エコー検査にて
大動脈弁閉鎖不全、弁疣贅が判明し手術目的にて入院。手
術後、疣贅にグラム陽性球菌を疑い IE 治療を行った。
(B) 63歳 女性 6か月間日内変動的に熱発を繰り返
し、症状の改善が認められないため内科を受診した。心雑
音を認めたため精査したところ疣贅を認め大動脈弁再建術
目的にて入院。手術後 IE 治療を開始し、疣贅の培養では
γ-Streptococcus が検出された。
【結果・考察】
2症例とも21日程度の ABPC 点滴治療を行い、(A)は5
週間 AMPC 内服投与にて、(B)は21日間の AMPC 内服
投与にて奏功した。(A)は計8週間投与であり、(B)は
計6週間投与であったが、ABPC の短期間投与、更には
AMPC 内服にて奏功したことは Antimicrobial stewardship や感染制御において重要であり、新たな治療選択と
して検討していくに値すると考える。
【背景】当院において塩酸バンコマイシン注(以下 VCM)
の血中濃度測定が外部委託であった実情もあり、TDM の
実施が不十分な状態にあった。病棟活動の中で、VCM の
TDM が適切に行われず、聴覚障害が発現した透析患者を
経験したのを契機に院内測定の必要性を強く感じ、ICT
会議にて提案した。その結果、2010年11月より VCM の血
中濃度測定が外部委託から院内へ移行となり、薬剤師によ
る TDM への関与も強化した。
【目的・方法】院内測定導入前1年間(2009年11月1日∼
2010年10月31日)と、院内測定導入後1年間(2010年11月
1日∼2011年10月31日)の VCM 全投与例において、TDM
実施(薬剤師介入)
数、介入方法等について比較・分析し、
効果を検証すると共に今後の更なる適正使用に向けた課題
を考察した。
【結 果】TDM 実 施 数 は 院 内 測 定 導 入 前 全60例 中7例
(12%)か ら 導 入 後 全55例 中31例(56%)へ 増 加(P<
0.
001)
。TDM へ の 薬 剤 師 介 入 も5例(8%)か ら17例
(30%)へ増加した。また透析患者の全例(4例)に対し
ても迅速な TDM が行われた。
【考察】VCM の適正使用には TDM が不可欠であり、外
部委託時に問題であった血中濃度結果報告のタイムラグが
解消したことにより迅速な TDM の実施が可能となった。
TDM 実施率が向上したことから、VCM の適正使用が向
上したと考えるが、依然として初回投与への関わりは不十
分である。今後は病棟スタッフの一員として投与開始前の
薬物療法への関わりを強化していく必要がある。
303 抗菌薬の適正使用を推進するための細菌分離状況
の調査
304 エンピリック治療支援のための抗菌薬の薬剤感受
性調査
1
1
2
2
九州保健福祉大学 薬学部 薬学科、
社会医療法人泉和会千代田病院
○井手上 真弓1、徳永 仁1、甲斐 晃弘2、
金子 藍里1、切通 博己2、緒方 賢次1、
瀬戸口 奈央1、黒木 教彰2、興梠 靖幸2、
小川 衣里2、田中 恵美2、岩瀬 祥枝2、
千代反田 晋2、高村 徳人1
九州保健福祉大学 薬学部 薬学科、
社会医療法人泉和会千代田病院
○金子 藍里1、徳永 仁1、甲斐 晃弘2、
井手上 真弓1、切通 博己2、緒方 賢次1、
瀬戸口 奈央1、黒木 教彰2、興梠 靖幸2、
小川 衣里2、田中 恵美2、岩瀬 祥枝2、
千代反田 晋2、高村 徳人1
【目的】薬剤師はエンピリック治療を支援するために、院
内感染に関するサーベイランスを定期的に行う必要があ
る。そこで、社会医療法人泉和会千代田病院入院患者にお
ける細菌分離状況のサーベイランスを行った。
【方法】調査期間は2010年1月∼12月、検体数は564例で
ある。まず、上位検出菌とその割合について調査した。ま
た、検出率の高かった4種の菌(ストレプトコッカス属と
真菌を除く)と3種の薬剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブ
ドウ球菌[MRSA]、基質特異性拡張型 β ラクタマーゼ産生
大腸菌(ESBL 産生大腸菌)
、メチシリン耐性表皮ブドウ
球菌[MRSE])の検査材料毎の推移について調べた。
【結果】ストレプトコッカス属、大腸菌、カンジダアルビ
カンス、MRSA、肺炎桿菌、糞便連鎖球菌、MSSA、緑膿
菌の順に検出された。検査材料では、喀痰、糞便、胆汁、
膿、静脈血、腹水、カテーテル尿の順に多かった。検査材
料における検出菌は、すでに報告されている主な起因菌と
一致した。
【考察】検出率の高かった上位8種の菌は、厚生労働省院
内感染対策サーベイランス JANIS の結果と比較して多少
の順位の変動はみられたが、同様の菌が検出されていた。
今後、千代田病院における細菌の分離状況や薬剤感受性試
験結果などの院内サーベイランス結果を経時的に解析し公
開を行い、その活用を促進していくことで、より抗菌薬選
択の精度をあげることができると考える。
【目的】薬剤師は抗菌薬の適正使用を推進するために、院
内感染に関するサーベイランスを定期的に行い、エンピ
リック治療を支援する必要がある。そこで、社会医療法人
泉和会千代田病院の入院患者から検出された細菌とそれら
に対し処方された採用抗菌薬の薬剤感受性(R,I,S)を調査
し、評価を行った。
【方法】2010年1月∼12月の期間において、千代田病院で
最も検出が多かった4種の細菌(ストレプトコッカス属と
真菌を除くメシチリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)
,
緑膿菌,大腸菌,クレブシェラ菌)と2種の薬剤耐性菌(メ
チシリン耐性黄色ブドウ球菌[MRSA],メチシリン耐性表
皮ブドウ球菌[MRSE])の6種の細菌に着目し、5つの期
間(1検体採取日より1週間前,2採取日,3採取日から
検査結果日,4検査結果日,5検査結果日から1週間以
内)における抗菌薬の薬剤感受性の調査を行った。
【結果】MSSA、大腸菌およびクレブシェラ菌の薬剤感受
性は1、の期間から70%以上が S と判定されたのに対し、
緑膿菌や薬剤耐性菌はそれぞれ31%と10%前後であった。
しかし、1から5になるに従って薬剤感受性は増加した。
【考察】緑膿菌や薬剤耐性菌の感染症治療における抗菌薬
選択の難しさがあらためて浮き彫りとなった。細菌の分離
状況や薬剤感受性試験結果などの院内サーベイランス結果
を定期的に公開して、抗菌薬の適正使用を推進していく必
要がある。
−255−
ポスター演題
305 抗菌薬併用療法における腎障害関連因子の検討
306 ペースメーカー埋込み術後の黄色ブドウ球菌によ
る感染性心内膜炎(IE)に対する抗菌薬併用療法
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 薬剤部
○鈴木 慎一郎、松崎 貴志、水野 泰子、
斎藤 秋雄
1
【目的】重症感染症に対して行われる抗菌薬の併用療法に
おいて、腎障害の程度や抗菌薬投与期間などを把握するこ
とは抗菌薬の適正使用の観点から重要と考える。本研究
は、抗菌薬適正使用の推進を目的として、アミノグリコシ
ド系のゲンタマイシン(GM)と他抗菌薬との併用状況を
調査し、腎障害に対する関連因子の検討を行った。
【方法】2010年1月 か ら2012年1月 の 間 で GM と 他 抗 菌
薬を併用した症例を対象とした。除外基準は18歳以下およ
び透析施行症例とした。調査項目は GM の投与量と投与
期間、抗菌薬の使用目的、患者背景や施行前後の臨床検査
値等とし、入院診療録より収集した。腎障害の関連因子を
0の「急性腎不全」における
検討するため、CTCAE v4.
Grade1以上の発現有無を目的変数とした単変量解析を
05とした。
行った。有意水準は p<0.
【結果】GM と他薬剤を併用した症例は22例であった。使
用目的は、感染性心内膜炎(IE)が16例で最も多かった。
Grade1以上の腎障害発現群において、GM の総投与量が
001)
。
有意に多いことが認められた(p<0.
【考察】IE の国内ガイドライン(GL)における推奨投与
期間より投与期間が長くなった例は16例中11例であった。
GM の長期投与は腎障害の増悪が示唆されるため、IE へ
の使用例においては国内 GL に則り、対象菌種に応じた投
与期間の提示を行うべきと考えられた。
307 レボフロキサシン投与法変更による効果
1
鹿児島厚生連病院薬剤科、2同 ICT
○佐多
末廣
神門
川口
宇部興産中央病院 薬剤部、
宇部興産中央病院薬剤部、
3
宇部興産中央病院循環器内科
○空田 洋祐1、平野 雄二2、原田
2
雅彦3
【はじめに】当院で MSSA による IE に対し保存的治療で
軽快した症例を報告する
【症例】84才女性。労作時息切れを認め救急受診、完全房
室ブロックによる心不全にて入院。入院時より37度台の微
熱や軽度の CRP 上昇を認め MEPM 投与、炎症所見改善
後 DDD ペースメーカー埋込み術を施行しその後退院。退
院 後4日 目 に38度 台 の 発 熱、呼 吸 困 難 を 訴 え WBC=
23400、CRP=9.
6の炎症所見を認めたため再入院となり血
液培養にて黄色ブドウ球菌が検出、心エコーにて三尖弁に
疣贅を認め IE と診断。再入院時に歯周病の治療中であっ
たことが判明。PCG に耐性であったため主治医と協議し
た結果 CEZ8g/日の投与を開始し、約6週間投 与 後 に
CRP の改善や経食道心エコーにおける疣贅の消失を確認
し CEZ4g/日に減量したところ、発熱や炎症所見が再燃
し心エコーにて三尖弁の疣贅の再発を認めた。そこで Dr
から相談を受け RFP+CLDM+ST 合剤を選択。薬剤管理
指導中に ST 合剤の副作用低 Na、高 K 血症のため MINO
へ変更後 CRP の陰性化・三尖弁の疣贅の消失確認し軽快
退院となる
【結果・考察】歯周病に伴う MSSA による IE の患者で完
全房室ブロックにてペースメーカー埋め込み術を施行した
リスクの高い患者であったが最終的にガイドラインとは異
な る 薬 剤 の 感 受 性・組 織 移 行 性・透 過 性 を 考 慮 し て
CLDM+MINO+RFP の薬剤の使用にて投与開始28日後に
軽快退院となった。今後も薬剤の選択肢となりうるのでは
ないだろうかと考えられる
308 1%クロルヘキシジングルコン酸塩含有エタノー
ル製剤の消毒効果
照正1,2、池増 鮎美1,2、上原 友美1、
淑子1、新川 順平1、山路 智凡1、
孝典1、田中 和子1、柿川 奈々2、
久美1、宮原 広典1
1
医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 薬剤部、
医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 感染対策室
○山崎 晃憲1、佐藤 由美子2、本郷 文教1、
熊谷 章2
2
【目的】外来、入院で頻用されているレボフロキサシン(以
下、LVFX)を、2009年10月 よ り100mg 製 剤 か ら500mg
製剤に変更し、投与方法も原則300mg 分3から500mg 分
1となったため、薬剤科と ICT が連携して服薬の遵守等
指導を行ってきた。
製剤変更による効果について検討した。
【方法】以下の内容について LVFX500mg 製剤導入前後
1年間で比較した。
1.
LVFX の平均投与期間と関連する患者・スタッフが原
因の服薬過誤件数
2.
LVFX の各種病原菌に対する抗菌活性
3.
注射抗菌薬使用の推移と MRSA の検出頻度
LVFX 処方患者は導入後、平均投与期間は6.
1
【結果】1.
日から5.
1日に減少した(p<0.
05)
。また、LVFX に関連
する、
患者・スタッフが原因の服薬過誤は報告されていない。
2.
LVFX に対する感性率は MSSA・緑膿菌・肺炎桿菌・
大腸菌・腸球菌で上昇し、
低下した菌種は見られなかった。
3.
注射抗菌薬全体の使用本数は前後で14.
6%減少し、特に
4世代セフェム系抗菌薬使用量は36.
3%減少した。ま
第3,
た、MRSA の 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 に 占 め る 検 出 頻 度 は、
57.
7%から48.
8%に減少した。
【考察】LVFX500mg 製剤への変更は、平均使用日数の短
縮と、各病原菌に対する感受性改善をもたらした。また、
注射抗菌薬使用状況や MRSA 検出頻度にも影響を与えた。
【目的】手術時の手指消毒における1%クロルヘキシジン
グルコン酸塩含有エタノール製剤(以下 CHGAL)の有用
性を評価する目的で細菌数、効果持続時間、SSI 発生率等
を検証した。
【方法】2010年11月∼12月、2011年2月∼3月の計4ヶ月
間手術室の医師、看護師50名を対象にグローブジュース法
を用いて手指菌数を測定しベースライン(以下 BL)及び
0.
2%CHGAL、1%CHGAL の 消 毒 直 後 さ ら に1%
CHGAL の手術時間別(3時間未満、3∼4時間、4∼5
時間、5時間以上)菌数を log 値で評価した。また、1%
CHGAL 導入前後12ヶ月間の消化器外科における SSI 発生
率を比較した。
56、0.
2%
【結 果】消 毒 直 後 の 手 指 菌 数 中 央 値 は BL4.
62、1%CHGAL2.
08であり、BL に比べ両群で
CHGAL2.
2%CHGAL に 対
有 意 に 低 下 し た。ま た1%CHGAL は0.
しても有意な菌数低下を認めた。1%CHGAL による手術
時間別菌数は全群において BL より低値を維持し FDA の
消毒効果暫定基準(−1log 以内)を満たしていた。SSI
76、導入後9.
8と有意に低
発生率は1%CHGAL 導入前13.
下した。
2%CHGAL
【考 察】1%CHGAL は 消 毒 直 後 に お い て0.
よりも高い消毒効果が得られ、さらに長時間を要する手術
に対しても効果が持続し SSI の低下につながった。1%
CHGAL は手術時手指消毒に有用であると考えられる。
−256−
309 市内4施設における抗菌薬使用動向と薬剤感受性
1
八戸市立市民病院 薬局、
青森労災病院 薬剤部、
3
八戸赤十字病院 薬剤部、
4
メディカルコート 八戸西病院
○平賀 元1、田村 健悦1、中居
中村 一成2、小林 薫3、桜井
若林 順子4
310 ICT 教育グループにおけるフィッシュ哲学の活用
【第二報】
2
1
国立病院機構 西埼玉中央病院 薬剤科、
国立病院機構 西埼玉中央病院 ICT
○井戸 彩恵子1,2、坂木 晴世2、武田 由美2、
太田和 秀一2、鈴木 雅明2、井ノ川 勝一2
2
肇2、
良平3、
【目的】地域医療連携を行う場面で感染管理は重要な課題
となっている.八戸地区では10年ほど前から,病院薬剤師
の主導で協議会を立ち上げ地域全体で取り組む感染管理を
行ってきた.市内の基幹病院の抗生剤使用量,細菌の薬剤
感受性のデータ,地元の医師会検査センターのデータも共
有し,統一フォーマットのアンチバイオグラムを作成し市
内の開業医にも配布し診療に役立ててもらっている.
【方法】各施設の抗生剤使用量を AUD のデータとして集
計し比較検討.院内感染の原因菌として,また耐性が懸念
される緑膿菌に対しては特に監視体制を強め,細菌の薬剤
感受性との関連について相互カンファレンスを行ってい
る.地元医師会の主催する医学会でも成果を発表し,抗生
剤を安易に長期に使用しないことを訴えてきた.
【結果】協議会に後から参加した施設では,これまで他の
施設との比較をしたことがなかったが,明らかに抗生剤使
用量が減少し監視効果が現れた.データを共有することで
可視化が進んだ結果とみられる.また活動の中で医師会の
若手も独自の勉強会を立ち上げた.
【考察】抗菌薬の耐性菌対策をすすめるためには,サーベ
イランスにより状況を可視化することが重要で,医師,薬
剤師,検査技師等の他職種で連携し,抗菌薬の適正使用の
推進をしていくことが重要である.
311 薬剤部からの情報発信が塩酸バンコマイシン散の
使用量及び使用金額に及ぼす影響
【目的】我々は平成22年度における感染対策部会主催の職
員対象研修会開催においてフィッシュ哲学の活用を導入
し、参加率への貢献が示唆された。しかし、部署別の参加
率および研修内容の理解度への影響は明らかでなかった。
そ こ で、平 成23年 度 に お け る 研 修 会 に お い て 引 き 続 き
フィッシュ哲学の活用を継続し、参加者の理解度および参
加率への影響について調査を行ったので報告する。
【方法】平成23年度西埼玉中央病院における ICT 主催研
修会において、研修内容の関心度及び理解度についてアン
ケート調査を行った。また、併せて部署別参加率の調査を
実施した。
【結果】研修への関心度は、「大変興味深かった・興味深
6%)であった。研
かった」との回答が175名中169名(96.
修内容の理解度については、「十分できた・おおよそでき
0%)であった。部署別
た」との回答が175名中168名(96.
の 参 加 率 は 検 査 科100%で あ っ た の に 対 し、放 射 線 科
11.
2%と部署により差が見られた。
【考察】研修会の開催において、フィッシュ哲学の活用は
参加者への関心度、理解度に貢献する事が示唆された。し
かし、部署別の参加率にばらつきが生じており、今後は職
種別のニーズに応える等、研修会における課題も明らかと
なった。
312 緑膿菌に対する各種キノロン系抗菌薬の感受性評価
1
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 薬物動態
制御学分野、
2
鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 薬剤部、
3
鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 検査部
○梅崎 靖弘1、松元 一明2、横山 雄太1、
渡辺 英里香1、郡山 豊泰3、武田 泰生1,2
1
鹿児島赤十字病院 薬剤部、
2
鹿児島赤十字病院 ICT
○岩下 健一1,2、若松 健太郎1、宮園 孝子2、
高田 久子2、永瀬 ゆり子1、新井 裕1、
内村 仁美1、松田 剛正1
【目的】 Clostridium difficile による偽膜性大腸炎に対し
て塩酸バンコマイシン散(VCM 散)を用いる場合の添付
5g∼2g/日であるが、0.
5g/日と2
文書上の用量は、0.
g/日の投与の間で治療効果に差がないという報告があ
5g/日の投与が推奨されて
り、各種ガイドラインでも0.
いる。当院における2010年の VCM 散投与量を調査したと
5g/日の処方は全体のわずか3.
8%であった。そ
ころ、0.
こで、薬剤部からの情報発信が、VCM 散の使用量及び使
用金額に及ぼす影響を調べることを目的として様々な解析
を行った。
【方法】対象患者は、2010年1月∼2011年12月までの間に
偽膜性大腸炎に対して VCM 散が投与された患者50例とし
5
た。情報発信の方法は、文献やガイドラインを 基 に0.
g/日投与の有用性を示した DI NEWS の作成及び医師へ
の配布とした。DI NEWS 配布の前後における VCM 散の
使用量及び使用金額を解析した。
5g/
【結果】DI NEWS 配布前と比較して配布後では、0.
8%から46.
2%へと大幅に上昇し、使用金
日の処方が、3.
額は、約354万円から約123万円へと大幅に減少した。な
お、VCM 散の1日投与量と治療期間の間に有意な差は見
られなかった。
【考察】薬剤部からの情報発信は、医師の処方内容に影響
を与え、大幅な医療費抑制につながることが明らかになっ
た。今後は、薬物療法の有効性・安全性の確保に加えて、
医療経済の観点からも薬剤部が積極的に薬物療法に介入す
ることが重要であると考える。
【目的】緑膿菌は院内肺炎の原因菌として黄色ブドウ球菌
に次いで多く、さらに、緑膿菌は耐性化しやすいことが知
られている。また、抗緑膿菌活性を有する薬剤は少ない。
そのため、臨床の現場では治療に難渋することがある。抗
緑膿菌薬の一つにキノロン系薬があるが、どのキノロン系
薬が緑膿菌に対し、最も抗菌活性があるか評価された報告
はない。そこで本研究では、当院で検出された緑膿菌に対
する各種キノロン系薬の感受性試験を行ったので報告する。
【方法】2003∼2011年の間に血液培養にて分離された緑膿
菌69株に対して微量希釈液体法を用いて各種キノロン系薬
の最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。
【結果・考察】緑膿菌に対する抗菌活性はシタフロキサシ
ン で 最 も 高 か っ た(MIC50:0.
25μg/mL、MIC90:2μg/
mL)
。次いで、シプロフロキサシン(MIC50:0.
5μg/mL、
MIC90:8μg/mL)
、パ ズ フ ロ キ サ シ ン(MIC50:0.
5μg/
mL、MIC90:16μg/mL)で高く、症例によっては有用で
あることが示された。レボフロキサシン(MIC50:2μg/
mL、MIC90:32μg/mL)
、モキ シ フ ロ キ サ シ ン(MIC50:
4μg/mL、MIC90:32μg/mL)
、ガレノキサシン(MIC50:
4μg/mL、MIC90:32μg/mL)の抗菌活性は低かった。
本研究より、キノロン系薬は種類によって抗菌活性が異な
ることが示唆され、緑膿菌に対する治療薬としてキノロン
系薬を使用する際は、感受性を評価してから選択するべき
だと考えられた。
−257−
ポスター演題
313 MRSA 感染の高度肥満2型糖尿病患者に血糖管
理とリネゾリドが著効した一例
314 感染制御地域支援ネットワークを活用した感染対
策手順の適正化
1
1
2
2
佐世保中央病院 薬剤部、
熊本医療センター 薬剤科、
3
同志社女子大 薬学部、
4
第一薬科大学、5福岡大学 薬学部
泰弘1、平木 洋一2、
○溝口 晶子1、
松元 加奈3、森田 邦彦3、湯川 栄二4、
神村 英利5、加留部 善晴5
鳥取県済生会境港総合病院 薬剤科、
鳥取県済生会境港総合病院 看護部、
3
鳥取大学医学部 附属病院 薬剤部、
4
鳥取県感染制御地域支援ネットワーク、
5
浜松医科大学 医学部 感染症学講座
○森田 俊博1、山本 博子2、高根 浩3,4、
堀井 俊伸4,5
【目的】重症感染症患者にとって血糖管理は重要である。
オキサゾリジノン系の抗 MRSA 治療薬リネゾリド(LZD)
は、1製剤(300mL)中に約15g のブドウ糖を含有するた
め、基礎疾患に糖尿病を持つ患者は特に注意を要するが、
LZD 投与中の血糖管理を行った報告はない。当院では、
LZD 投与全症例に対して血糖管理に薬剤師が介入し、医
師と連携をとっている。今回、LZD 投与中の肥満患者に
対して、血糖管理に介入することで LZD が有効であった
症例を経験したので報告する。
【症 例】30代 男 性、体 重116kg、BMI37kg/m2、HbA1c
12.
8%、未治療の2型糖尿病。急性硬膜下血腫および外傷
性脳内血腫にて開頭血腫除去術を施行。術後、MRSA が
検出され、バンコマイシンの投与を開始した。投与2日
後、炎症所見が悪化したため、LZD1200mg/day へ変更し
た。LZD 開始直後の血糖値は200mg/dL 以上の高値がし
ばらく続いたが、インスリン強化療法により徐々に血糖値
に改善がみられた。LZD 投与後は徐々に炎症所見も改善
し、6日目に MRSA の消失が認められ、9日目に LZD の
投与を中止した。LZD 投与期間 中 の ト ラ フ 血 中 濃 度 は
0.
4∼1.
5μg/mL で、MIC 値(2μg/mL)を下回っていた。
【考察】肥満患者では LZD 血中濃度が上昇せず、MIC を
下回っていたにも関わらず LZD が有効であったのは、適
正な血糖管理と LZD の組織移行性が高いことに起因する
と考えられた。肥満患者への LZD 投与時の血糖管理は有
用であることが示唆された。
【目的】当院では,院内感染対策チーム(ICT)が常に薬
剤耐性菌検出状況を監視しており,検出数の増加を認めた
際にはアラートを発して標準予防策の強化や抗菌薬適正使
用 の 呼 び か け を 行 い,感 染 制 御 に 努 め て い る。と こ ろ
が,1年ほど前より,複数の長期臥床患者の尿から無症候
性に多剤耐性緑膿菌が検出され,ICT ラウンドによる点
検では問題点が特定出来ず,対策に難渋していた。そこで
今回,鳥取県で既に構築されている感染制御地域支援ネッ
トワークを活用することにより,多剤耐性緑膿菌対策を中
心とした当院の感染対策手順の適正化をはかったので報告
する。
【方法】事前調査:2009年11月から2011年12月の期間に多
剤耐性緑膿菌が検出された全患者の尿道留置カテーテルな
どデバイスの使用歴,検査・処置歴,抗菌薬使用歴,抗菌
薬感受性パターン,病室移動(病棟平面図)のデータを院
内視察予定日の2週間前に提出した。専門家チームによる
院内視察:感染制御医師,感染管理認定看護師が当院の予
防策実施状況,器具の管理・取り扱い状況を確認した。
【結果】菌の伝播経路・拡大要因が検証され,a)標準予
防策・器具消毒の不徹底,b)尿道留置カテーテルの留置
期間が長いこと,c)
抗菌薬で膀胱洗浄を行っていること,
d)カルバペネム系薬の使用期間が長いこと,など具体的
な指摘と改善方法の助言を受けることが出来,カテーテル
留置の適用,尿回収の手順,膀胱洗浄の方法などを適正化
するに至った。
315 神奈川県下4施設における抗菌薬使用量と薬剤感
受性の検討∼続報
316 閉鎖系薬剤移送器具 PhaSealⓇによる細菌学的コ
ンタミネーション防止効果
1
横浜市立市民病院 薬剤部、
日本医科大学武蔵小杉病院 薬剤部、
3
横浜市立脳血管医療センター 薬剤科、
4
厚木市立病院 薬剤管理指導室
○五十嵐 文1、佐藤 歩1、野口 周作2、
吉田 奈央2、原 弘士3、臼田 誠3、
永井 徹3、牧野 淳子4、岩崎 弥生4、
五十嵐 俊1
横浜市立市民病院 薬剤部
○五十嵐 俊、望月 優佑、高尾
2
【目的】抗菌薬適正使用の推進は、感染症治療のみならず
耐性菌発現を防止するなど、院内感染対策の観点からも大
変重要である。適正使用を評価する指標として抗菌薬使用
量や薬剤感受性が挙げられる。これまで我々は、神奈川県
下6施設の抗菌薬使用量及び薬剤感受性率の調査を実施し
報告した。今回4施設で調査を継続し、前回調査と比較を
行い今後の抗菌薬適正使用への参考とすることを目的とし
た。
【方法】抗菌薬使用量として AUD を WHO の ATC/DDD
システムを用いて算出した。薬剤感受性は CLSI の基準を
用いて S,I,R の判定を行い、S の割合を感受性率とした。
2010年4月1日∼2012年3月31日の2年間における各施設
の AUD および緑膿菌の薬剤感受性率を比較した。また前
回調査データとの比較も実施した。
【結果】2011年10月1日∼2012年3月31日の半年間におけ
る各施設(A D)のカルバペネム系抗菌薬の AUD(DDD/
100bed days)は A:1.
01、B:1.
46、C:1.
03、D:1.
70
であった。また緑膿菌の MEPM 感受性率(%)は A:89、
B:81、C:81、D:89であった。
【考察】カルバペネム系抗菌薬の AUD は施設間でばらつ
きが認められた。これは施設規模や診療機能による影響だ
と考えられる。また、緑膿菌の MEPM 感受性率はカルバ
ペネム系抗菌薬の AUD の影響を見かけ上受けなかった。
前回調査データと比較して緑膿菌の MEPM 感受性率に変
化が認められた施設があったことから、今後経時的な変化
について検討していきたい。
良洋
【目的】閉鎖系薬剤移送器具である PhaSealR は抗がん剤
の混合調製時や薬剤搬送時及び患者への投与時に薬剤の飛
散を防止し、調製者の抗がん剤暴露の軽減や抗がん剤によ
る環境汚染防止の観点から多くの施設で導入され、診療報
酬にも反映されるようになった。PhaSealR の特性から細
菌学的コンタミネーションを防止できる可能性を示唆する
研究結果が報告されている。しかしこれまでの報告は調製
後の薬剤残液の検討や試験対照を設定していないもので
あった。今回、我々は PhaSealR を使用した混合調整と通
常の無菌操作による混合調製を比較し、PhaSealR の細菌
学的コンタミネーション防止効果について検討した。
【方法】PhaSealR システムを用いて SCD 液体培地100mL
を充填したバイアルから5mL を抜き取り、SCD 液体培地
100mL を充填した別のバイアルに注入し、試験溶液とし
た。この操作を1日1回、連続8日間実施し、試験溶液8
本と調製後の残液を培養し、細菌学的なコンタミネーショ
ンを評価した。培養による菌の増殖は当院で細菌検査を担
当する臨床検査技師により実施し、菌の増殖が認められた
場合には菌の同定を行う事とした。同様に PhaSealR を用
いず通常の無菌操作により調製した試験溶液を対照とし
て、PhaSealR による細菌学的なコンタミネーションの防
止効果について検討した。
【結果】要旨登録日現在、培養検査を実施中である。
−258−
317 神奈川県下4施設の抗菌薬適正使用への取り組み
1
横浜市立脳血管医療センター 薬剤科、
横浜市立市民病院 薬剤部、
3
日本医科大学武蔵小杉病院 薬剤部、
4
厚木市立病院 薬剤管理指導室
○永井 徹1、原 弘士1、臼田 誠1、
五十嵐 文2、佐藤 歩2、野口 周作3、
吉田 奈央3、牧野 淳子4、岩崎 弥生4、
五十嵐 俊1
2
318 抗 菌 薬 の 適 正 使 用 に お け る 薬 剤 部 の 役 割∼抗
MRSA 薬・カ ル バ ペ ネ ム 系 抗 菌 薬 投 与 期 間
チェックの取り組みについて∼
山口県立総合医療センター 薬剤部
○岩本 尚子、渡邊 太朗、有間 幹人、
白野 陽正、山田 克弘
【目的】抗菌薬の適正使用の推進は、感染症治療のみなら
ず耐性菌発現を防止するなど、院内感染対策の観点からも
大変重要である。薬剤師は専門性を発揮し抗菌薬適正使用
への積極的な取り組みが求められている。このような感染
対策は一病院だけではなく、地域の病院が連携しながら取
り組む必要があると言われており、今年度の診療報酬改訂
で感染防止対策加算が新設された。今回我々は、薬剤師が
関与している感染対策のうち特に抗菌薬適正使用について
病院間の比較を行い、今後の感染対策に役立てることとし
た。
【方法】神奈川県下の4施設に対し2011年12月末時点の施
設状況や、これまでに薬剤師の関与により実施した抗菌薬
適正使用の取り組み内容とその効果、実施する際の障害な
ど、抗菌薬適正使用の取り組みに関する調査票を送付し
た。回答内容に関する不明点などは担当者への聞き取りを
行い確認した。
【結果・考察】すべての施設で抗菌薬の使用届け出制や使
用許可制を実施していた。また ICT ラウンドへの参加や、
抗菌薬の TDM もすべての施設で取り組んでいた。しかし
実施内容や方法は施設毎に異なり、施設事情に応じた運用
を行っていた。これらの取り組みに関して評価し抗菌薬適
正使用推進への薬剤師による合理的な介入について検討し
ていきたい。
【目的】
当施設では、抗菌薬の適正使用推進の一環として、
抗 MRSA 薬・カルバペネム系抗菌薬(注射薬)について、
届出制を実施している。今回、新たな取り組みとして、H
22年10月より抗 MRSA 薬・カルバペネム系抗菌薬の投与
期間チェックを開始した。取り組みの手法について紹介す
るとともに、その実績、影響について報告する。
【方法】週1回、抗 MRSA 薬・カルバペネム系抗菌薬が
処方された患者をリストアップし、オーダリングシステム
を用いて投与期間を確認した。14日間を超えてオーダされ
ている場合、医師に注意喚起を行った。H22年10月から H
24年3月における投与期間チェックの件数、および14日間
を超えるオーダの件数を集計した。また、抗 MRSA 薬・
カルバペネム系抗菌薬に関する疑義照会件数について、取
り組み開始前後6か月間で比較した。
【結果】投与期間チェックの件数は合計1039件、14日間を
06%)であった。うち5件は
超えるオーダ件数は11件(1.
薬剤師の照会により投与中止となった。疑義照会件数は、
取り組み開始前の6カ月間では9件、開始後の6カ月間で
は22件であった。
【考察】取り組みについてはスムーズに実施できた。投与
期間はおおむね14日間以内を遵守されていたが、薬剤師の
問い合わせにより中止となった症例もあった。また、取り
組み導入後、抗 MRSA 薬・カルバペネム系抗菌薬に関す
る疑義照会は増加していた。適正使用の一環として、今後
もこの取り組みを継続していく必要がある。
319 久留米大学病院における抗菌薬使用量とグラム陰
性桿菌の薬剤耐性率についての検討
320 感染制御ネットワークに向けた試み1(地方にお
ける現状と課題)
1
1
2
2
久留米大学病院薬剤部、
久留米大学病院臨床検査部、
3
久留米大学病院感染制御部
○内藤 哲哉1、酒井 義朗1、中垣 春美1、
有馬 千代子1、矢野 知美2、棚町 千代子2、
橋本 好司2、三浦 美穂3、渡邊 浩3、
鶴田 美恵子1
【目的】現在、グラム陰性桿菌の薬剤耐性化が問題となっ
ている。抗菌薬使用量の増加は耐性菌発生のリスクの可能
性がある。当院では2003年に指定抗菌薬使用届出制度の導
入、2010年からは感染症カンファランスを導入し、抗菌薬
適正使用に取り組んでいる。今回は抗菌薬使用量とグラム
陰性菌の薬剤耐性率を把握することを目的に調査を行っ
た。
【方法】対象期間は2001年から2011年とした。抗菌薬使用
量、薬剤耐性率は各々1年毎に集計を行った。抗菌薬使用
量は WHO の AUD を使用し、1,
000患者毎の抗菌薬使用
密度として算出して、系統別に使用量を分類し検討を行っ
た。グラム陰性桿菌は7菌種を対象とした。
【結果】抗菌薬使用量は全体で2006年までは年々減少して
いたが、2007年から増加傾向にあり、2011年の使用量が最
も多かった。増加した抗菌薬はカルバペネム薬やニューキ
ノロン薬、抗 MRSA 薬の使用量の増加が顕著であった。
薬剤耐性率では菌種、抗菌薬により様々であったが、 E.
coli·K. pneumoniae·P. aeruginosa·A. baumannii でニュー
キノロン薬の耐性率の上昇が認められた。
【考察】今回の調査で抗菌薬使用量の増加、一部のグラム
陰性桿菌において薬剤耐性率の上昇が判明した。ニューキ
ノロン薬やカルバペネム薬は治療に十分量使うことが出来
るようになり、使用量が増加したと考えられる。今後は使
用量や耐性菌の検出状況を把握し、抗菌薬の耐性化をモニ
タリングすることが必要であると考える。
市立敦賀病院 薬剤室、
国立病院機構福井病院、
3
杉田玄白記念公立小浜病院
○荒木 隆一1、高橋 秀房1、井上
本間 徳人3
仁2、
【目的】地域全体の感染を制御する上で医療機関相互の
ネットワーク構築は重要である。また本年4月の診療報酬
改定では地域連携の評価として感染防止対策加算が創設さ
れた。福井県嶺南地域のこれまでの取り組みを振り返り、
現状と課題を考察する。
【背景】福井県嶺南地域は福井県南部の若狭湾沿岸の地域
を指す。県庁所在地のある嶺北地域と比較し、医療従事者
の割合が少なく医療供給体制の再整備が行われている。現
在医療機関は300床以上の総合病院が3施設あり、それら
の施設を中心に医療連携が実施されている。
【方法】平成17年より、感染制御に関係する多職種が集ま
『嶺南感染コント
り、以下の方法を中心に取り組んだ。1.
ロールフォーラム』の実施。(講演会およびグループワー
コアメンバーの情報交換。(インター
ク形式の勉強会)2.
ネットを活用しグループウェアによる情報共有)
【結果考察】 フォーラム終了後のアンケートからも参加
者の満足度は高く、特にグループワークでは、身近なこと
が質問でき、好評であった。近隣の医療機関が感染制御と
いう共通のテーマで定期的に議論出来る仕組みは有効で
あった。地方都市における慢性的な人材不足、地理的問題
はあるものの、従来から医療機関相互のネットワークがで
きでいたため診療報酬の対応もスムーズであった。 今後
は、介護施設や在宅サービス施設との連携も踏まえさらに
内容を充実していきたい。
−259−
ポスター演題
321 献血経験からみた血液センターにおける早期体験
学習の効果
322 薬学生(4年・6年)の専門薬剤師制度に関する
意識調査
1
近畿大学 薬学部 医療薬学科
○中村 武夫、伊藤 栄次
帝京大学 薬学部 実務薬学研究室、
帝京大学 薬学部 実務実習研究センター
○中村 英里1、渡辺 茂和1、渡部 多真紀1、
村上 勲1、下平 秀夫1、齋藤 百枝美2、
土屋 雅勇1
2
【目的】早期体験学習の一般目標は、「薬学生として学習
に対するモチベーションを高めるために、卒業生の活躍す
る現場などを体験する」であり、学生が入学後間もない時
期に体験するはじめての参加型学習である。今回、赤十字
血液センターでの早期体験学習を通して、薬剤師を目指す
1年生の今後の学習に対するモチベーション向上において
献血経験との関連について、アンケート調査より検証を試
みた。
【方法】2011年度の早期体験学習(1年次前期)において
大阪府赤十字血液センターの見学を行った際に、無記名の
自記式アンケートを実施した。アンケート項目は、献血経
験、見学施設としての適否、薬剤師業務への関心度、血液
製剤についての理解度等に関するものである。
【結果と考察】140名分のアンケート用紙が回収できた。
大学入学以前の献血経験者は6名であったが、血液セン
ター見学後、はじめて献血に協力した学生は33名であっ
た。血液センターでの薬剤師業務の関心度、血液製剤につ
いての理解度、血液センターの見学施設としての適否、見
学時の態度・積極性についての5段階評価は、献血した
(したことのある)学生において、より高い評価点であっ
た。社会の期待に応えられる医療人養成において、知識や
技能だけでなく、ヒューマニティ豊かな倫理観を有する薬
剤師養成の動機付け教育として、血液センターでの早期体
験学習の実施は有意義なものであると評価された。
323 上尾中央医科グループにおける実務実習報告∼平
成23年度活動報告∼
【目的】教育現場におけるチーム医療に関する専門教育の
充実を目的として、帝京大学薬学部4年生と6年生を対象
に専門薬剤師制度に関する意識調査を行った。
【方法】
本学薬学部4年生269名、6年生246名を対象とし、
学生が知っている薬剤師の専門認定制度および「期待度」
と「必要度」の7段階評価、さらに「チーム医療の実践の
ために何をするか(自由回答)
」の項目について調査を行っ
た。
【結果・考察】アンケートの回収率は、4年生:85.
5%、
6年生:78.
9%であった。「専門認定制度を知っているか」
の問いに、4年生:63.
5%、6年生:99.
0%が「知ってい
る」と回答した。両学年とも「認知度」の高い制度は「が
ん」(4年:82.
9%、6年:99.
0%)であり、「期待度」(最
小:1、最大:7)の平均では、「が ん」(4年:5.
4、6
年:5.
7)
、「糖尿病」(4年:5.
5、6年:5.
6)が両学年と
も上位を占めた。「必要度」の平均で は、4年:5.
9、6
年:5.
7であった。「チーム医療の実践のために何をする
か」では、両学年とも「幅広い薬剤の知識を身につける」
が一番多く認められた。6年生の「認知度」は、4年生と
比較して実務実習を経験したために飛躍的に上昇したと思
われ、「必要度」に関してはあまり変化がみられなかった。
このことは、ジェネラリストとしての知識の必要性と専門
認定制度がまだ初期段階にあることを感じたためと考えら
れる。今後、教育現場と医療現場が連携することで、専門
薬剤師の活躍の場が広がることが期待される。
324 副作用モニタリングを題材とした薬学生と医学生
のチーム医療演習の試み
1
1
2
2
愛友会 上尾中央総合病院、
愛友会 三郷中央総合病院、
3
愛友会 津田沼中央総合病院、
4
哺育会 浅草病院、5協友会 東大宮総合病院、
6
一心会 伊奈病院、
7
上尾中央医科グループ協議会
○堀越 広美1、増田 裕一1、新井 亘1、
町田 充2、伊東 美歩3、滝澤 幸三4、
矢吹 直寛5、菊池 偉孔6、矢嶋 美樹7
九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学分野、
九州大学大学院 医学研究院 医学教育学部門
○齋藤 友亮1、打越 英恵1、小林 大介1、
窪田 敏夫1、菊川 誠2、吉田 素文2、
島添 隆雄1
【目的】上尾中央医科グループ(以下 AMG)ではグルー
プ病院の特色を活かすために、実習初年度より実務実習
ワーキンググループを発足し、グループ内病院との連携を
図り実習内容の向上を目指してきた。その中で実習内容に
ついて「学生からのアンケートの実施」や「AMG 合同症
例報告会」
を行ったため、H23年度の活動内容を報告する。
【方法】A:グループ病院共通の学生への実習指導評価ア
ンケートを実施(初年度より継続)実習項目(29項目)に
沿った4段階評価と実習前後の意識変化や実習内容に対す
る記述式評価を行った。B:合同 症 例 報 告 会 3回/年
(学生・大学教員・薬剤師)
【結果】A:年間通して全体の評価平均はほぼ変わらな
かったが、病院間の差や同一病院でもクール毎の差が見ら
れたため、結果をフィードバックし見直しを行った。B:
計34名の学生発表
【考察】H22年度と同様にアンケート結果を比較すること
で各病院の問題点が明確化した。今回は病棟実習期間の調
整を行う病院が増えた。また実習担当者の経験の差が結果
に表れ、今後の受け入れ体制にも課題が残った。担当者の
育成は勿論であるが、個人の負担とならないよう薬剤部全
体の体制を見直す必要があると感じた。合同症例報告会は
大学教員と意見交換をする数少ない場であり、実習に対し
ての取り組みや、業務内容の現状を知るうえで互いに良い
成果が得られた。しかしながら参加人数が受け入れ全体の
半数であり今後の検討課題である。
【目的】これまで薬学部では副作用発見のための基本的な
医療面接や身体測定技法を学ぶ機会はなく、また、医学部
においても副作用モニタリングを体系的、実践的に学ぶ機
会はなかった。平成21年度から九州大学では、医師、薬剤
師間の連携を主題とした教育学習プログラム「チーム医療
演習『薬物治療』
」を実施している。平成23年度は副作用
モニタリングを題材とした演習を行った。本演習の有用性
についてアンケート調査により評価を行った。
【方法】4年後期に1回3コマの演習を3回(計9コマ)
実施し、薬学生、医学生共に32名受講した。副作用発見の
ための医療面接、身体診察、医薬品の情報収集方法などお
互いの専門性を意識し、提示された処方箋に対する副作用
モニタリングチェックシートを作成した。演習後、薬学生
31名、医学生26名から副作用モニタリングに対する実習前
の意識・知識、学習目標に対する修得度、実習の満足度等
に関するアンケートを回収した。
【結果・考察】実習前、両学部の9割以上の学生が薬剤師
による副作用モニタリングの重要性を認識していた。ま
た、ほとんどの医学生は、緊急安全性情報など副作用関連
情報に関して認知していなかった。実習後、学習目標の修
得度の自己評価(5段階評価)は、全項目で上昇したが、
実習の満足度には学部間で差があった。チーム医療演習は
お互いの役割を学べる貴重な機会であるが、プログラムの
内容に改善の余地が見られた。
−260−
325 九州大学における先進的実務実習確立のためのプ
ログラム開発∼薬局薬剤師・病院薬剤師・教員に
よる合同海外施設視察∼
326 新人薬剤師育成ツールの作成
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室
○田浦 早希子、浅野 貴生、布施 大樹、
森川 聖幸、首藤 誠、中野 祥子
1
九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学分野、
九州大学大学院 薬学研究院 薬物動態学分野、
3
九州大学薬学部 臨床薬学教育センター
○小林 大介1,3、窪田 敏夫1,3、島添 隆雄1,3、
家入 一郎2,3
2
【目的】病院ならびに薬局における実務実習は、実務実習
モデル・コアカリキュラムに沿って行われているが、実習
を充実した内容とするためには、大学が実習先の病院・薬
局と密接な情報交換を行い、共同作業による実習プログラ
ムの作成と運用が不可欠となる。九州大学では、より患者
指向の実践的実習プログラムの開発を目的として、大学・
県病院薬剤師会・県薬剤師会3者合同での米国の実務実習
および教育プログラムの視察を行ったので報告する。
【方法】平成24年2月2日から2月9日にかけて、九州大
学薬学部教員4名、福岡県病院薬剤師会指導薬剤師2名、
福岡県薬剤師会実務実習担当理事(薬局実習指導薬剤師)
2名でミシガン大学薬学部および附属病院、提携薬局、な
らびにデュケイン大学薬学部および提携病院と薬局を訪問
し、実務実習内容の視察および教育プログラムの説明を受
けた。視察後、今回の海外研修と今後の実務実習に関し
て、参加した指導薬剤師と議論した。
【結果・考察】合同視察により、県病院薬剤師会、県薬剤
師会と大学の3者間で共通の現状認識、課題を共有するこ
とができた。とりわけ、1年次の早い時期から倫理観やコ
ミュニケーション能力の向上とそれを維持する教育が不可
欠であり、事前学習を含めた実習プログラムを3者の協議
の上作成する必要がある。なお、今年度9月2日に視察先
大学から演者を招聘し、実務実習に関するシンポジウムを
開催する予定である。
327 長期実務実習に関する学生に対するアンケート調査
∼成果と今後の課題∼
【目的】これまでの4年制薬学教育では医薬品に関する教
育は、成分名を用いて行われており、商品名を用いた教育
は、ほとんど行われてこなかったのが実情である。しかし
ながら、6年制薬学教育へと移行した今、成分名中心で行
われた教育に加えて、商品名に関する知識も大学における
薬学教育には、求められているものと考えられる。そこ
で、我々は薬学生及び新人薬剤師を主な対象とした効率的
な教育ツールの作成を目指し、カルタを作成し、その効果
について検証した。
【方法】学習用具としての機能を有するカルタを糖尿病、
脂質異常症等の疾患の治療薬毎にデザインし、その実施に
関するルールを定めた。カルタの使用による学習効果を図
るため、カルタによる学習群(カルタ群)及び、資料によ
る学習群(資料群)に分け、テストを実施した。対象は本
学5年次生とし、その使用感、有効性に関してもアンケー
トを実施した。テストとアンケートを学習の前後及びその
一週間後に実施した。
【結果及び考察】各テストを用いて検証を行った結果、各
学習後、カルタ群は資料群に比して、約10%高い学習効果
が認められ、特に一般名と商品名に関する知識の差を埋め
るツールとして、機能しうるのではないかと我々は考えて
いる。一方、副作用及び禁忌に関して、カルタ群は資料群
に劣る結果となったことから、今後カルタの構成を含めた
内容の改善を行い、検証を進めていきたい。
328 調剤過誤防止のためのシステム導入状況の調査
1
岐阜薬科大学 実践社会薬学研究室、
岐阜薬科大学 附属薬局
○松波 さおり1、多根井 重晴2、
山下 修司1,2、伊藤 絵美2、窪田 傑文2、
中村 光浩2、堀内 正2、杉山 正1,2
2
摂南大学 薬学部 医療薬学研究室
○中野 祥子、塙 由美子、首藤 誠、
菊田 真穂、小森 浩二、宮崎 珠美、
山本 淑子
【目的】2010年度より開始された、6年生薬学教育の柱と
もいえる臨床現場における長期の実務実習が2年目を終え
た。実務実習における成果や問題点を明らかにし、実務実
習における学生へのサポート体制や実務実習事前学習のあ
り方を検討することを目的として、学生に対しアンケート
調査を実施した。
【方法】2011年度5年次生を対象に実務実習への期待や習
得できた内容、実習内容やサポート体制への満足度につい
5ヶ月の実務実習終了時に病院、薬局
て、病院、薬局各2.
に分けて調査を実施した。
【結果】今回のアンケート調査で、満足度に関する項目の
うち、実習施設・内容については病院実習で約7割、薬局
実習で約8割の学生が、また、大学教員のサポート体制に
ついては約8割の学生が満足と回答した。また、実務実習
前に自己学習等が必要と感じた項目については、病院・薬
局実習ともに学生のうち約6割が「医薬品の薬効薬理」「医
薬品の商品名」と、学生のうち3∼4割が「服薬指導」と
回答した。
【考察】今回の調査結果より、実務実習における実習内容
および指導方法や大学教員のサポート体制については、概
ねの学生が満足していることが示唆された。また、実務実
習事前学習の内容については、臨床現場とのギャップを減
らすために、より実践的な内容に修正する必要性が示唆さ
れ、改善していくことが今後の課題であると考える。
【目的】調剤過誤の防止対策として、調剤棚への警告の表
示、調剤手順の工夫、パソコン等を用いた調剤鑑査システ
ム(以下、システム)などがある。今回、システムの導入
状況およびインシデントの発生状況について調査した。
【方法】無作為に抽出した200件の薬局に対して、薬局の
規模、インシデントの内容、過誤対策、システムの導入状
況などに関するアンケート調査を実施した。
5%)であっ
【結果・考察】アンケート有効回答は81件(40.
0%、
た。システムを導入している薬局の割合は散薬が42.
6%、錠剤が14.
8%であった。錠剤システムは大
水薬が13.
規模なチェーン薬局のみに導入されていた。錠剤システム
は、調剤過誤の防止の他に、薬剤師の業務管理、後発医薬
品への変更支援、薬歴確認などの目的でも使用していた。
システム未導入の薬局は、導入しない理由として、コス
ト、機械操作の煩雑さ、必要性がない等を挙げ、過誤対策
として、棚に注意の表示をする、類似薬の棚を離すなどを
実施していた。計数調剤のインシデントは、システム未導
入の薬局では規格間違い、計数間違い、名称間違いが多
く、導入薬局では計数間違いが多く、薬品の取り違えは少
なかった。今回の調査より、調剤鑑査システムは、誤投薬
など重大事故の防止に有効であること、過誤対策以外の機
能が付加できることから、コスト、操作性の改善によって
普及させることが望ましいと考えられた。
−261−
ポスター演題
329 多数の実務実習生を受け入れる薬局での指導体制
と調剤過誤対策
330 実務実習の学習到達度に及ぼす実習施設規模の影響
1
九州保健福祉大学薬学部臨床薬学第一講座、
実務実習委員会
○川畑 綾1、時任 康栄1、本屋 敏郎1,2、
鈴木 彰人2、園田 純一郎1,2、河内 明夫1,2、
鳴海 恵子1、冨重 恵利紗1、高村 徳人2、
垣内 信子2、日高 宗明2、緒方 賢次2、
徳永 仁2、鳥取部 直子2、川原 正博2
1
2
岐阜薬科大学 附属薬局、
2
岐阜薬科大学 実践社会薬学研究室、
3
コスモスシステム株式会社
○多根井 重晴1、松波 さおり2、
山下 修司1,2、伊藤 絵美1、窪田 傑文1、
中村 光浩1、堀内 正1、櫻井 潔3、
杉山 正1,2
【目的】岐阜薬科大学附属薬局は一日約100枚の処方せん
調剤を行う保険薬局である。また、実務実習生を1期あた
り10名受け入れている教育機関でもある。今回、充実した
実務実習を安全に遂行することを目的として、指導体制を
整備し、調剤過誤防止システムを構築したので報告する。
【方法】実務実習の指導薬剤師として、本学教員5名を配
置した。学生を5名ずつ2グループに分け、各グループが
調剤実習と他の実習を交互に行う方法とした。リスクマネ
ジメントについて SGD により意識を向上させるとともに、
実習生が提案した過誤対策を反映した調剤過誤防止システ
ムを構築した。
【結果・考察】薬剤取り違えの調剤過誤をテーマに SGD
を行い、薬局が直ちに行う対策、機器を導入して行う対策
を提案させた。直ちに行う対策として、ダブルチェックを
確実に行う手順にする、患者さんと一緒に確認するなど、
機器を導入して行う対策としてバーコードによる確認、注
意薬剤の調剤時に警告するなどが提案された。これらの提
案、および他の薬局の実態調査を反映した当薬局独自の調
剤過誤防止システムを構築した。システムは、デバイスに
iPhone を用い、バーコードによる薬剤照合、ハイリスク
薬の調剤時に音と画面表示で警告、過去の薬歴の確認、処
方薬に対応する後発医薬品の表示、調剤した薬剤を撮影保
存などの機能を持たせた。今後、本システムを実務実習で
運用し評価を行う予定である。
331 臨床スキルの向上を目指した症例シナリオを用い
た新人教育の試み
【目的】6年制薬学部実務実習の学習到達度に及ぼす施設
規模の影響を検証する目的で調査を行った。
【方法】平成22年度当大学実習生110名の病院実習および
薬局実習の形成的評価表を用い、到達目標到達度の調査を
行った。病院実習については、実習施設規模を病床数200
床以下、201∼500床、501床以上および、500床以下と501
床以上の2施設グループ実習の4群に分けた。薬局実習に
つ い て は 実 習 施 設 の 処 方 箋 取 扱 患 者 数 を1000人 未 満、
1000∼2000人未満、2000人以上の3群に分けた。
【結果】病院実習において施設病床数による実習効果の差
はみられなかったが、グループ実習群ではモデル・コアカ
リキュラムの(2)医薬品を動かす・確保する、(3)情
報を正しく使う、(5)薬剤を造る・調べる、(6)医療人
としての薬剤師の各項目において一部他群との間に、実習
前後の評価値変化量に有意な差がみられた。薬局実習に関
しても施設規模による大きな到達度の差は見られなかった
が、処方箋取扱患者数が2000人以上の群において(2)情
報のアクセスと活用、(6)薬局業務を総合的に学ぶにつ
いて他群との間に同様の有意差が見られた。
【考察】病院実習においては、グループ実習の成果が支持
された。薬局実習では処方箋取扱患者数の多い施設でのよ
り良い成果が一部項目において示唆された。本成績は今後
のより良い実務実習実現に資するものと思われる。
332 病院実務実習に対する実習生の意識アンケート調査
1
北里大学 薬学部、
北里大学東病院 薬剤部
○飛田 夕紀1,2、平山 武司1,2、川野
黒山 政一1,2、矢後 和夫1
1
2
岡山大学病院 薬剤部、
2
近森病院 薬剤部
○林 瑶子1、猪田 宏美1、宮崎 俊明2、
山路 和彦1、正岡 康幸1、千堂 年昭1
【はじめに】岡山大学病院薬剤部では、新人薬剤師は1年
間調剤業務を行いながら必要な調剤技術・知識を習得して
いる。2年目以降は薬剤管理指導業務にも携わるが、これ
には基礎的な技術・知識に加え患者とのコミュニケーショ
ン能力や問題解決能力、実際の症例へ応用する力を身につ
ける必要がある。これらの能力の向上を目指して、以前よ
り薬剤部内にて講義に加え質疑応答を行う形式の勉強会を
行っていたが、知識の応用、問題解決能力の向上といった
点で不十分であり、学習効果の評価も困難であった。これ
らの改善を目指し、今回講義に加えて SGD(small group
discussion)と確認テストを組み込んだ形式の勉強会を新
たに試みたので報告する。
【方法】参加対象は主に1、2年目の薬剤師とした。内容
は9つのテーマを設定し、1テーマにつき2日間(月2回、
90分程度/回)開催した。1日目は講義と確認テスト(講
義前後の2回)を行い、2日目は1日目の講義内容を基に
した症例シナリ オ を 用 い SGD を 行 っ た。ま た、講 義 と
SGD の難易度・満足度についてアンケートを行った。
5%から
【結果・考察】テストの正答率は講義の前後で49.
80.
3%に上昇し、講義による学習効果が得られていた。ま
た、予習の有無については講義よりも SGD の方が予習さ
れており、シナリオを用いることが自己学習への意欲の向
上に有用と考えられる。しかしながら「SGD の時間が長
かった」
という意見も見られ、今後改善に努めていきたい。
千尋1,2、
【目的】北里大学東病院では、平成22∼23年度に実務実習
生を計8期、94名を受け入れた。そこで、実務実習内容の
改善を目的に、実務実習前後で実習生にアンケート調査を
行った。
【方法】実習生94名を対象に実務実習開始時と終了時にア
ンケート調査を実施した。調査内容は薬局実務実習実施の
有無、実習項目(部署)別に期間の適正度、期待度、理解
度、満足度、希望就職先、追加実習希望の有無他とし、期
待度、理解度、満足度は1∼6の6段階評価した。
【結果】
薬局実習未実施群45名、実施群43名を比較すると、
7、実施群5.
0
開始時の期待度は「病棟」が高く未実施群4.
であり、未実施群は「管理」
、実施群は「調剤」が3.
8、3.
8
と低かった。未実施群は各実習項目に対する実習期間を長
いとする者が多かったが、終了時の理解度は両群間に差は
認められなかった。希望就職先別で比較すると、病院群は
「病棟」
、薬局群、製薬企業群は「治験」を短いとする者
が多く、全実習期間を病院群は短い、薬局群、製薬企業群
は長いとする者が多かった。追加実習を希望する実習生は
8%)と多く、薬局群、製薬企業群は
病院群14/18名(77.
7%)
、4/24名(16.
7%)と少なかった。
2/35名(5.
【考察】実習生の実習期間に対する意識は、薬局実習の有
無や希望就職先により差異があったが、理解度に差は認め
られなかった。今後はさらに理解度およびモチベーション
を向上させるよう、各実習生の状況に応じた実習内容を検
討していきたい。
−262−
333 薬学生によるクリニカル・ミーティングの実践と
拡充
334 S­CART が第1回熊本城マラソン AED ボラン
ティアに参加して考えたこと
1
北里大学 薬学部 保険薬局学、
国立スポーツ科学センター スポーツクリニック
○吉山 友二1、園部 尭仁1、羽生 祥子1、
松岡 未来1、上東 悦子2
崇城大学 薬学部 薬学科
○稲付 春菜、熊井 芳絵、池永 真子、
上田 文子、植村 杏子、小早川 菜美子、
中村 有莉恵、松村 愛美、森山 彩也、
米原 万美、中野 志保、石黒 貴子、
内田 友二、松倉 誠、瀬尾 量、藤井 績
2
【目的】実務実習を経験した6年生が主体となって低学年
にクリニカル・ミーティングを開催した。今回、クリニカ
ル・ミーティング内容を拡充することに薬学生が取組むこ
との教育的有用性を明らかとした。
【方法】6年生が低学年向けに臨床で活躍する薬剤師を招
待し、トピックスを気軽に聞いてもらうクリニカル・ミー
ティングを企画した。意見交換を中心として、学生目線で
リラックスして討議する中で入学後の早い時期から薬剤師
を意識できるようにした。今回はスポーツファーマシスト
をテーマとした。実施前後に参加学生の意識変化をアン
ケート調査した。
【結果】企画立案過程において、実務実習に出向く前に学
んでおきたいことを6年生が認識し得た。拡充した企画を
通して、薬局薬剤師を身近に感じる学生が増え、薬剤師は
薬の相談がしやすいと答えた学生が47%から73%へと、参
加学生の薬剤師に対する意識は向上した。また、低学年の
教育に携わることは将来の薬剤師のリーダーとなるための
貴重な機会であると捉えた。
【考察】実務実習を経験した6年生が主体となって低学年
にクリニカル・ミーティングを開催することは、低学年が
習得したいニーズを的確に満たすことに役立つのみなら
ず、企画の拡充を6年生自身が手掛けることにより、薬剤
師教育を相互理解することに有用である。6年生がスター
トさせた新しい教育の息吹は、6年制教育の学部生にも受
け継がれたことの意義は大である。
【目的】崇城大学薬学部では4年次で多くの学生が AHA
Healthcare Provider 資格を習得する。その資格を地域社
会のために活かしたいと考えた S­CART(Sojo­Clinical
Assessment & Resuscitation Team)5年次生10名が政令
都市移行記念第1回熊本城マラソンに AED ボランティア
スタッフとして参加した。参加メンバーを対象としたアン
ケート結果を報告する。
【方法】事前に心肺停止時一次救命処置(BLS)の練習を
行い、当日の流れを確認した。当日の任務は、モバイル隊
7名、定置隊3名であった。任務終了後にアンケート調査
を実施した。
【結果】
「AED ボランティアに参加して良かったか?」に
対して“とても良かった”
(80%)
、
“良かった”
(20%)で
あった。
「事前の準備や BLS 練習は必要であったか?」に
対して“とても必要だった”
(100%)であった。さらに「薬
剤師が BLS の知識や技術を身に付けることは必要だと思
うか?」に対しては“とても必要である”
(80%)
、
“必要
である”
(20%)であった。また、
「実際に現場で活動する
ことができたこと、実践形式での練習ができたことで大変
勉強になった」
、
「BLS で学んだことの大切さと必要性を
感じることができてとても良かった」などの回答が得られ
た。
【考察】実際の医療現場の緊張感を体験し、改めて BLS
の重要性を感じることができた。また、医療人としての意
識を高めることができた。今後も適切な救命処置が実践で
きる薬剤師を目指し、S­CART の活動を続けていきたい。
335 長期実務実習においての治験分野における現状調
査とカリキュラム作成に向けて
336 県立病院−大学病院間の薬剤師の人事交流による
成果と課題
1
1
2
2
宮崎大学医学部附属病院 治験管理センター、
宮崎大学医学部附属病院 薬剤部
○谷之木 佑歌1,2、大野 梨絵1,2、奥野 孝子1、
大木 美香1、米原 真奈美1、奥村 学1,2、
有森 和彦1,2
【目的】2010年より薬学部5年生を対象とした長期実務実
習が開始された。当院は宮崎県内で唯一治験管理センター
が設置されているが、治験分野の実習は日程が短く、加え
てスタッフが少人数のため、実習がスタッフのスケジュー
ルに左右されやすい。そのため実習生によって差ができて
しまっている現状がある。そこで質が安定した標準的なカ
リキュラムの作成を検討し、実際に実習を行った学生を対
象にした現状を調査した。
【方法】2011年度実習生8名に対して、実習終了後に治験
に対する理解度、満足度、意識等についてアンケート調査
を行い、意見を聴取した。
【結果】実習後、すべての学生が治験に対するイメージが
変わったと答えた。学生の意見として、企業などの依頼者
との対応や、実際の同意説明を行う現場などを直接見た
かったという要望が多かった。また多職種間の連携につい
ても興味を持っている学生が多かった。実習を通して必要
性を感じた項目として、薬の知識や副作用の初期症状など
の薬学的な視点のものから検査内容、治験制度というよう
な治験特有の意見が挙がった。
【考察】今回のアンケート調査で、実際の現場を見たいと
いう考えを予想以上に学生が持っていることがわかった。
内容として不足していることを補充し、また学生の要望に
も応えられる新しいカリキュラムを作成したい。さらには
治験に配置される新人教育としても活用することを考えて
いる。
佐賀県立病院好生館 薬剤部、
佐賀大学医学部附属病院 薬剤部
○宮原 強1、江越 正芳2、中野 行孝2、
藤戸 博2、松永 尚1
【目的】薬剤師には医師のような卒後臨床研修制度がない
ため、病院見学や学会報告でしか他院の薬剤師活動を知る
ことができない。そこで、佐賀県立病院好生館(以下、好
生館)と佐賀大学医学部附属病院(以下、佐大病院)では、
平成23年4月より人事交流を開始し、相互の薬剤師1名ず
つが1年間出向した。今回、演者が佐賀大学病院に出向し
た経験をもとに、人事交流の活動内容と成果、及び今後の
課題について検討したので報告する。
【方法】佐大病院にて人事交流に関する発表を行い、情報
交換、検討を行った。さらに、佐大病院に勤務する薬剤師
のうち19名に人事交流に関するアンケートを実施した。
【結果】好生館と佐大病院とでは、錠剤や散剤の調剤業務
量や持参薬確認方法等の業務内容の違いだけではなく、人
員配置の方法、医療機器においても異なる点が多くあり、
相互に参考となる内容も多く、改善点を指摘することが可
5%の薬剤師
能となった。また、アンケートの結果から89.
2%が組織の活性
が人事交流を行ってもよいと回答し、84.
化を人事交流に期待していると回答した。
【考察】薬剤師の人事交流は卒後教育や組織の活性化にお
いて有用であると考えられる。その一方で、「全体の交流
会が必要」
、「出向先で自分が役立てるか不安」という記載
があり、次回以降の人事交流に今回の人事交流での経験や
知見をフィードバックする全体の情報共有の場が必要であ
ると考えられた。
−263−
ポスター演題
337 ポートフォリオを活用した薬局実務実習報告会の
有用性
338 米国における臨床薬剤師教育の実態(3)
∼カリキュラムを比較して∼
1
1
2
2
九州大学大学院 薬学研究院 臨床育薬学分野、
九州大学大学院 薬学研究院 薬物動態学分野、
3
九州大学薬学部 臨床薬学教育センター
○窪田 敏夫1,3、小林 大介1,3、島添 隆雄1,3、
家入 一郎2,3
【目的】長期実務実習に広く導入されているポートフォリ
オの活用方法として、実習の節目に日々の実習で得た成
長、成果、気付きなどを再構築し、プレゼンテーションす
ることが学生の成長に重要であると言われている。九州大
学薬学部では、薬局実務実習直後に学生がポートフォリオ
を再構築し、口頭発表を行った。この薬局報告会が学生の
成長に有用であったかについて検証を行った。
【方法】
平成23年度第1・2期の各薬局実務実習終了直後、
大学において薬局報告会を実施した。33名の学生が実習中
に自分でテーマを決め、5分間の口頭発表後、3分間の質
疑応答を行った。報告会終了後、薬局報告会の有用性に関
するアンケートを実施した。学生32名、指導薬剤師22名か
ら回答を得た。
【結果】学生は報告会自体に対して13名がやや満足、19名
が満足と回答した。他の学生の発表を聞くことは薬局実習
に必要であるかという設問に対して、5名がやや必要、27
名が必要と答えた。発表は自己の成長に有用だったかとい
う設問に対しては、17名がやや有用、15名が有用と回答し
た。指導薬剤師は、報告会自体に対して21名が満足と回答
した。また、学生が選んだ発表テーマは実習先薬局の特徴
を反映し、多岐にわたっていた。
【考察】ポートフォリオを活用した薬局報告会は学生、指
導薬剤師ともに有用性が高いと感じていることが示され
た。
339 協働・連携によるスキルミックスを前提とした次
世代型の医療チームにおける薬学6年生長期実務
実習「病気を治す」という Pharmaceutical Care
の Vision を共有する
株式会社日立製作所日立総合病院薬務局
○青山 芳文、齋藤 祥子、江幡 早苗、
小野崎 昌史、四十物 由香、渡邉 晴久、
所 雅夫
株式会社日立製作所日立総合病院では,4年実習当時から
2010年
積極的に取り組み,多数の学生を受け入れてきた.
からの薬学6年生教育の核となる長期実務実習でも期12
人,年間36人の受け入れが可能な体制で実習にあたり,認
定実務実習指導薬剤師6人のもと薬剤師全員が SBOs を理
解し,誰が指導しても均一の実習が出来るよう4年生実習
当時から体制を整えてきた.この中で SBOs に配慮しなが
らも毎日新しい体験が出来,ワクワク出来る実習を心がけ
ている.一方,厚生労働省医政局は平成22年4月30日付で
「医療スタッフの協働連携によるチーム医療の推進につい
て」を各都道府県知事宛に通知し,医療の高度化や複雑化
に伴い増大する医師業務を軽減支援するため,また安心安
全,良質な医療を求める患者ニーズに応えるために「チー
ム医療」
を推進することを求めている.薬剤師については,
チーム医療において薬剤師が主体的に薬物療法に参加する
ことの有用性を指摘するとともに,現行制度下で実施する
ことができる業務例を挙げ薬剤師を十分かつ積極的に活用
することが望まれている.前述の医政局通知を踏まえ,当
院ではスキルミックスを前提とした次世代型のチーム医療
を展開しており,学生には,薬剤師とともに他職種と協働
連携し,チームダイナミクスにより,医療の担い手として
「病気を治す」という Pharmaceutical Care のビジョンを
共有できる実習をおこなっているので報告する.
新潟薬科大学 薬学部、
愛知学院大学 薬学部、
3
マサチューセッツ薬科大学 薬学部
○福本 恭子1、浅田 真一1、酒巻 利行1、
鍋倉 智裕1,2、小宮山 忠純1、
Caroline S. Zeind3
【目的】米国では薬剤師養成教育が5または6年間になっ
てから40年以上が経過し、現在多くの病院と薬局で臨床薬
剤師が活発な活動を行っている。米国ボストン市に所在す
るマサチューセッツ薬科大学(MCPHS)は、米国で2番
目に古い私立薬科大学である。1学年が300人以上である
こと、医学部や附属病院を持たないことなど、日本の私立
薬科大学との共通点も多い。そこで米国の薬科大学におい
て臨床薬剤師がどのように 養 成 さ れ る の か に つ い て、
MCPHS におけるカリキュラムを例として調査・検討し、
学生支援についても検討を行った。
【方法】MCPHS の教員1名および本学の教員3名が相互
に大学および医療機関を訪問し、視察、討論を行った。
【結 果 お よ び 考 察】MCPHS で は2年 間 の Pre­Professional 課 程 で65単 位、4年 間 の Professional 課 程 で139単
位の計204単位を修得する。1年次では一般科目に加え、
勉学方法などを指導する First Year Seminar も開講して
いる。3∼5年次で専門科目を履修後、6年次は異なる医
療機関6施設で計36週間の実務実習 を 行 う。MCPHS は
2011年にキャリア開発センターを開設した。企業、学会お
よび2万人を超える卒業生とのネットワークを活かして就
職支援を行うとともに、低学年には進路相談なども行う。
卒業後は就職先や助言者の紹介も行っている。現在、キャ
リア支援の一つとして助言者やキャリア設計支援の整備が
求められているが、日本でも参考になる点が多いと考えら
れる。
340 点から線への介入を目指した長期実務実習への取
り組み
社会保険 宮崎江南病院 薬剤部
○伊東 健一、林 加奈恵、雀ヶ野 史織、
秋吉 史久、三原 由記、宮園 かおり、
小牧 雅典、牟田 恵理夏
【はじめに】当院では、業務体験とより高い実践力を持つ
薬剤師を養成することを目指し実習を行っている。今回
は、点から線への介入を目指した実習への取り組みについ
て報告する。
【方法】実習は「実務実習モデル・コアカリキュラム」に
準拠し作成した宮崎県病院薬剤師会薬学教育長期実務実習
プログラムシステム(M­PHATS)を基本に、当院に合
わせ策定している。学生は実習を通して1名以上の外科患
者を受け持ち、手術見学を含め術後の管理や治療方針・病
態変化などの流れに対応しながら、指導薬剤師と医療チー
ムとの連携を図りながら薬剤管理指導を行い、症例に関連
する課題をまとめ、実習最後には症例と課題について発表
時間を設ける方法を取った。
【結果及び考察】実習は、M­PHATS に基づき行った。
手術見学から関与した患者は、より患者の病態の把握がで
き、学生には好評であり、手術見学は有用な学習手段で
あった。また病態変化などの流れを把握した上で、患者の
病態から治療ガイドラインや薬の副作用などを考えさせる
ことができ、大学での知識との関連付けが可能となって
いった。また医療チームと連携を図り、患者の治療方針の
検討などに触れることで、いろんな考え方を吸収すること
ができたと考える。今後は更に他職種との体験実習を組み
入れ、薬剤師の役割を体感し、薬学的知識とフィジカルア
セスメントを結び付けながら、点から線への介入のできる
薬剤師を育成していきたい。
−264−
341 情報処理能力向上を目指した物理系実習の実施と
成果
福岡大学 薬学部
○森永 理香、川原
池田 浩人、安藝
342 コンプライアンスの向上からアドヒアランスの向上
∼自己の可能性の発見に主体を置く双方向セミナー
1
光喜、湯川
初美
宮崎大学 安全衛生保健センター、
日本ヘルスサイエンスセンター
○江藤 敏治1、青石 恵子1、石川 雄一2
2
美穂、
【目的】薬学6年制教育における卒業までの過程で、学生
は実験データ、医薬品データ、薬物動態、疾病情報など多
種多様な情報と関わり、これらの情報を迅速に正確に処理
する能力が必要不可欠である。溢れる情報から必要な情報
をふるい分け、調べ、加工し、まとめ、発表する技能の向
上を目的とした物理系実習の実施と成果について報告す
る。
【方法】2年生約240名を4グループに分け、各グループ
8日間の物理系実習を行なう。その内容は、弱酸性薬物の
分配係数、界面活性剤の臨界ミセル形成濃度を実験的に求
め、Excel を使って検量線の作成やデータ解析し、報告書
を作成すること、さらに各自に割り当てられた任意の薬物
分子についてネット検索した結果に分子描画ソフトで作成
した構造式や立体モデルを適宜に加え、PC 教室でスライ
ドショーを使って発表することである。実践成果を確認す
るため2年生と6年生を対象とした実習アンケートを実施
した。今回は PC 操作とソフト操作について尋ねた。
【結果・考察】
回答率は2年生91%、6年生75%であった。
多くの2年生が「PC を操作することが楽しくなった。実
験データを加工する手順が分かり、スキルアップしたい」
と答えた。6年生の回答からは研究報告、長期実務実習、
卒業研究ポスター発表、卒業論文作成など多くの場面にお
いて物理系実習で修得した情報処理能力を活用したことが
分かった。
【はじめに】現在の日本の産業医養成講座の多くは知識重
視型で講師から受講者への一方的な講義に終始しているこ
とが多い。我々はなぜ産業医が現在社会の中で重要な位置
づけになっているのか理解を深める目的で参加型のセミ
ナーを展開した。今回参加者の自由記載内容を分析したの
で報告する。
【対象と方法】対象は産業医学研修会に参加した受講生約
200名のうち任意に提出した179名の受講感想文から自由記
載語句を抽出し上位10特徴語の関連項目を分類、分析し
た。
【結果】感想文の全てが講習会に対し肯定的な意見であっ
た。抽出した言葉は67語句で、その中の上位10特徴語は、
「参加」65回、「江藤先生・石川先生」60回、「ありがとう」
51回、「会話」48回、「楽しい」46回、「感じる」44回、「と
ても」36回、「臨床」32回、「勉強」24回であった。高頻度
関連語句は感謝を示す心理語句、講習様式を示すもの、講
師陣、自己変革を示す言葉であった。
【考察】聴講生の多数が感謝と自己充実感に満ちた研修会
であったと答え、将来の産業医の可能性を実感し、加えて
日常診療にあらたな糧を見出していた。その要因として、
全員参加型のコミュニケーションを重視した講習会であっ
たことに加え、講師陣の情熱にあった。その結果、産業医
が地域、企業の活性化を促し、自身も新たな価値観の元社
会に存在しうると認識させる講座を展開できた。そしてこ
れはどの分野においても現在求められている内容である。
343 厚生連 DMAT 研修の報告
344 東日本大震災時の薬薬連携
JA 長野厚生連 佐久総合病院
○菊池 環、井出 敬樹、岡田
DMAT チーム
1
大崎市民病院 薬剤部、2ヨネキ薬局、
アイン薬局
○鈴木 さとみ1、佐藤 庸一1、豊田 由里絵1、
米城 久美2、市ノ渡 真史3、千葉 英雄1、
玉田 淳一1
3
邦彦、
【はじめに】厚生連 DMAT 研修は平成23年度で3回目の
開催となるが、本年度は東日本大震災が発災したことを踏
ま え て、各 施 設 に お い て の 東 日 本 大 震 災 に お い て の
DMAT 活動などを中心に研修会が行われたので、その報
告をする。
【経緯】厚生連 DMAT 研修は平成21年に JA 共済の補助
金を元に開催された。開催においての企画、運営は当院が
第1回目より担当してきた。目的は DMAT 活動における
技能維持研修及び、スキルアップなどを目的としている。
【研修内容】講師陣による座学やグループディスカッショ
ン、東日本大震災においての各施設の DMAT の対応など
の活動報告、机上シュミレーション、また、医師、看護師
はトリアージ訓練、業務調整員(ロジ)は衛星携帯、トラ
ンシーバーの使用による訓練などを行った。
【今後の課題】全国に厚生連関連病院は120施設あるが、
その中でも DMAT を保有している施設はわずかである。
この研修は DMAT を中心とした研修であるが、災害時に
おける病院としての対応を全ての施設でスキルアップして
いかなければならない。全国厚生連で災害に対する研修を
DMAT 保有施設だけでなく、この研修会を基に、全ての
施設に広げられていければと考える。
【はじめに】東日本大震災発生時から数日、大崎市民病院
(以下、当院)周辺地域もライフラインが全てにおいて切
断された。医薬品の確保が重要だが当院の在庫にも限りが
あったため、当院門前薬局と調剤業務の連携をすることに
より対応を行った。今後起こりうる災害に備え対応につい
て見直したため、被災地で行った一方策として報告する。
【方法】当院では3/14(月)より処方外来を開設し、処
方外来はすべて院外処方、当院薬剤部では診察患者の対応
を行った。当院には自家発電があるため、院外処方でも散
剤は当院システムを利用し調剤を行った。その際の連携に
ついて利点、問題点を門前薬局3店に対しアンケート調査
を行った。
【結果】利点で共通で得られた回答は、散剤を当院システ
ムで調剤したことで調剤過誤を防げたことであった。門前
薬局では震災当日、上皿天秤を使用し薬包紙での分包だっ
たため、小児科・精神科処方の調剤は計量不可能であっ
た。また処方箋なしの調剤件数が少なかったことも挙げら
れた。問題点は手書き処方箋の不備が多く疑義紹介の件数
が多い点であった。
【考察】調剤業務の連携をすることにより、困難ではあっ
たが国や県からの支援を受けることなく乗り越えることが
できた。また調剤過誤を防ぐ一方策となることがわかっ
た。手書き処方箋の不備は医師記載後に当院薬剤師が確認
できていなかったことにより発生したため、今後は改善す
べき点である。
−265−
ポスター演題
345 「被災地における後発医薬品」に関するアンケー
トの調査解析
346 東日本大震災前後の各種抗菌薬の AUD の推移と
緑膿菌の感受性
1
杏林大学医学部付属病院 薬剤部、
ふくろうメディカル、3あい調剤薬局、
4
アクア薬局、
5
国立がん研究センター東病院 臨床開発センター、
6
teamBMAT
○若林 進1,6、水 八寿裕2,6、田中 秀和3,6、
原崎 大作4,6、青柳 吉博5,6
財団法人 広南会 広南病院 薬剤部
○栗村 淳子、新沼 佑美、佐藤 このみ、
矢野 とおみ、加茂 陽子
2
【目的】東日本大震災後の被災地における後発医薬品の活
用状況を調査し、その問題点について検討を行った。
【方法】被災地にて実際に支援活動を行った薬剤師を対象
に、2011年8月12日∼31日の期間で WEB 形式と紙媒体で
のアンケートを行った。
【結果】111名の薬剤師から回答を得た。支援物資として
後発品は「届いていて調剤されていた」が最も多かった。
被災者が後発品を服用していた場合に継続された処方は
「先発医薬品に変更」が最も多く、次いで「別銘柄の後発
品」「同じ銘柄の後発品」の順であった。被災者が先発品
を服用していて、その先発品の在庫がなかったときに継続
された処方は、「同効薬の先発品に変更」が最も多く、次
いで「対応する後発品を調剤」「銘柄や規格を変更」が多
かった。被災地での後発品についての問題点は「後発−先
発の変換が大変」「一般名でない後発品は判別ができない」
などが多く挙げられた。被災地で後発品が活用されるため
には、「後発品の製品名はすべて一般名に」
「薬剤師が活用
する」「日頃からの啓蒙活動」などが多く挙げられた。
【考察】多くの薬剤師が、被災地で後発品は調剤されてい
たと答えていたが、一方で、被災者が服用していた後発品
を先発品に変更して継続したとの声も多かった。また避難
所では、後発−先発を対応させるような情報が不足してい
たため、災害医療チームに薬剤師がいないと後発品を活用
することが困難であったことが示唆された。
347 祝祭日における外来化学療法への取り組み
砂川市立病院 薬剤部
○上野 英文、河合 祐輔、田中
小嶋 希望、宮本 康史、新崎
高野 陽平
【目的】当院は、脳疾患に特化した施設であることから東
日本大震災後、くも膜下出血の患者を積極的に受け入れて
いくことになった。しかし、細菌検査は震災の影響で2週
間程度できない状況であり、広域な抗菌薬を使用せざるを
えない状況になった。そこで、震災の抗菌薬使用に対する
影響と緑膿菌に対する感受性を検証するため東日本大震災
を挟む過去3年間の各種抗菌薬の AUD の推移について集
計した。また、同時期の抗緑膿菌活性を有する抗菌薬の
AUD の推移と感受性の推移について検討した。
【方法】2009年4月から2012年3月までの各種抗菌 薬 の
AUD(WHO の ATC/DDD システムを用いて算出)推移
を集計した。また、同期間の抗緑膿菌活性を有する抗菌薬
の AUD の推移と喀痰由来の緑膿菌株を CLSI の基準を用
いて感受性を判定した。
【結果・考察】 震災後、CTRX の AUD が また、抗緑
膿菌活性を有する抗菌薬では MEPM·CAZ·TAZ/PIPC の
AUD が増加した。MEPM は2011年3月から8月の間に
著しく AUD が増加していた。2011年3月は震災の影響も
あり細菌検査もできない状況であったため 広域の抗菌薬
が使われ特に MEPM は多くの髄膜炎の Empirical Therapy としても使用された。2011年度の緑膿菌に対する感
受性は前年度と比較して MEPM·PIPC で低下が見られた。
348 がん領域における医療薬学研究の実態調査
国立がんセンター 中央病院 薬剤部
○木原 千恵子、小井土 啓一、牧野
横手 信昭、山本 弘史
喜倫、
祐馬、
【目的】外来化学療法の実施日は担当医師の外来診療日に
行うことがほとんどで、外来診療が祝祭日の場合は次回外
来日まで治療を延期して行っている。治療が予定どおりで
きないことや、翌週に件数が増加するなどの理由から、医
師より祝祭日の外来化学療法実施の要望があった。がん化
学療法委員会で検討した結果、平成21年11月より実施する
ことを決定した。今回、開始より2年3ヶ月経った現状確
認と問題点把握のため調査を行った。
【方法】平成21年11月より平成24年1月までの実施件数、
薬剤師の業務時間の集計、患者、医師、看護師、薬剤師か
らの聞き取りにより意見や問題点の抽出を行うこととし
た。
【結果】期間内の祝祭日(土日以外)は41日あり、その内
19日において治療が実施されていた。実施日の平均件数は
2.
6件/日、薬剤師の業務時間は132分/日であった。
【考察】聞き取り調査より治療自体は問題なく行われてい
ることが確認できた。件数的には平日と比べるとかなり少
ない状況であった。また、業務的には休日時間外での対応
となっている薬剤師・看護師への負担が大きく、今後は代
休処理の出来る体制にすることが必要と考える。 今回の
結果より実施件数は少ない状況であったが、計画どおりの
治療が行える体制を提供することは重要であり、今後も継
続して取り組んで行きたいと考える。
好倫、
【背景】専門薬剤師制度の創設などが契機となり、日本医
療薬学会の演題数が10年間で3倍に増えるなど、研究に対
する意識が高まりつつある。がん領域における論文を対象
とした総説はあるが、薬剤師が行った学会発表の内容・傾
向をまとめた報告は見当たらない。がん領域における医療
薬学研究の内容と傾向を分析し今後の研究活動にフィード
バックさせることが重要である。
【目的】薬剤師が主な会員である学会のがん領域における
研究の内容と傾向を明らかにする。
【方法】2009年、2010年、2011年開催の日本医療薬学年会
において「がん薬物療法」に分類された演題を対象に、そ
の抄録から著者の所属施設、研究目的としている対象医薬
品名・レジメン名および、研究テーマ、研究デザイン・方
法、抄録記載方法を調査した。
【結果】対象演題は、2009年294題、2010年340題、2011年
367題であった。研究テーマとして各年とも「副作用」を
取り挙げたものが最も多く、その中では「嘔気・嘔吐」を
対象にした研究が多かった。対象臓器・器官は、各年とも
「消化器」が最多であった。医薬品別では、セツキシマブ
、アプレピタント(2010年、2011年)であった。
(2009年)
【考察】各年とも「副作用」を取り扱うものが多く、日々
の業務で副作用への対応等が多いことを反映している可能
性がある。比較的新しい医薬品が取り扱われる傾向もあ
り、新薬の適正使用に関わろうとする姿勢がうかがえる。
−266−
349 褥瘡対策チームラウンドにおける薬剤師の関わり
350 病棟看護師業務研修の実施と今後の展望
1
大垣市民病院 薬剤部、
大垣市民病院 皮膚科、
3
大垣市民病院 形成外科、
4
大垣市民病院 看護部
○各務 智子1、高木 肇2、森島 容子3、
西田 かをり4、正者 美穂4、安田 忠司1
IMS(イムス)グループ 横浜旭中央総合病院 薬
剤部
○前田 拓哉、潮 幹子、松丸 剛史、竹川 七生
2
【目的】平成23年10月より褥瘡対策委員会の委員(医師、
薬剤師、看護師、理学療法士、栄養士)により褥瘡ラウン
ドが開始された。ラウンドに薬剤師が参加することによる
影響および薬剤師の役割について検討した。
【方法】平成23年10月から平成24年3月までの間に、当院
で褥瘡ラウンドを行った患者12名について、ラウンド前後
における栄養状態、創部の変化(DESIGN­R)を電子カ
ルテより後方視的に検討した。
2歳(男性6名、女性6名)
、
【結果】患者は、平均年齢72.
原疾患は、骨折4名、心不全2名、悪性腫瘍2名、その他
4名であった。褥瘡ラウンド前後において、栄養状態の改
、深さの改善は3/12
善がみられたのは6/9件(67%)
件(25%)
、浸出液の改善は3/10件(30%)
、大きさの改
、炎症の改善は2/4件(50%)
、肉
善は5/12件(42%)
、壊死組織の改善は3/
芽組織の改善は2/12件(22%)
12件(33%)であった。また、薬剤師が処方提案(軟膏剤
の変更、処方の追加)を行った事例は7件あり、そのうち
提案通りに処方されたのは4件であった。処方提案を行っ
た事例では、栄養状態、深さ、大きさ、浸出液、炎症の改
善がみられた。
【考察】薬剤師が、軟膏剤、輸液等について情報提供し、
必要であれば処方提案してくことが褥瘡の改善に繋がると
考えられた。ラウンドにより連携を深め、各職種が専門性
を生かすことが重要である。
351 緩和ケア病棟における薬剤カンファレンスについて
【目的】チーム医療の推進において各部署間の連携が重要
であることは言うまでもないが、一方で他部署に対する理
解度(相互理解)といった点では、現状において不十分さ
を実感する場面も少なくない。そこで、今後さらに相互理
解を深めて連携を強化するために薬剤師の病棟看護師業務
研修を実施し有効な手段となりえるか否かについて検討し
た。
【方法】8及び10年目の薬剤師3名に対し、1名につき1
日1病棟で計3病棟(急性期2病棟、慢性期1病棟)
、看
護師の日常業務を中心に研修を実施。その後3名の薬剤師
及び各病棟にて指導に当たった看護師に対しアンケートを
行い、今回の取り組みに対する検討を行った。
【結果】研修を受けた薬剤師(この内2名は病棟担当薬剤
師)からは、今後も同様の研修実施について「継続の必要
性あり」と全員が回答。また、指導に当たった看護師から
は、一部研修内容について不明確な点や研修受け入れに伴
う業務への支障などの改善すべき点なども挙げられたが、
全員が他部署に看護師業務を理解してもらえる良いきっか
けになるとの回答を得た。
【考察】
今回当院においては初めての取り組みであったが、
今後も継続していく必要性、有効性に加え、検討すべき課
題認識ができた。目的であるチーム医療の更なる充実を目
指して、今後もより充実した研修の実施並びに、看護部研
修のみならず他部署も含め多くの部署間で行っていくこと
を視野に入れた働きかけを進めていきたい。
352 手術部における薬剤師の取り組みと経済効果
1
医療法人社団清風会 廿日市記念病院 臨床薬剤
科、
2
廿日市記念病院 看護部、
3
廿日市記念病院 診療部
○秋本 伸1、山岡 彩1、松尾 圭子1、
手島 洋子2、番匠谷 孝廣3、狹田 純3
【はじめに】廿日市記念病院・緩和ケア病棟では、薬剤の
検討・調整を行うため薬剤師が中心となって、全ての入院
患者を対象に薬剤カンファレンス(以下カンファレンス)
を行っている。今回、カンファレンスの今後の改善を目的
とし、これまでの実績について検討した。
【方法】2010年2月∼2012年1月において、カンファレン
スでの処方変更内容を検討した。また、緩和ケア病棟看護
師14名に対して、アンケート調査をおこなった。
【結果】期間中カンファレンスは97回実施しており、処方
変更は2114件、そのうちカンファレンスによるものが715
件(33.
82%)であった。薬剤別に比較した場合、カンファ
レンスでの処方変更割合が高かったものは、鎮痛補助薬
20/43件(46.
51%)
、ス テ ロ イ ド 薬36/81件(44.
44%)
など。一方、処方変更割合が低かったものとしては、抗菌
(11.
88%)
、抗アレルギー薬11/45件
(24.
44%)
薬19/160件
などであった。看護師へのアンケート調査については、13
名(92.
88%)が薬剤カンファレンスは必要だと回答した。
また、薬剤師の参加は疼痛コントロールに役立っていると
全ての看護師が回答しており、副作用対策についても13名
88%)が役立つと回答した。
(92.
【考察】早急に対応が必要な処方変更以外では、カンファ
レンスでの変更割合が高い傾向がみられた。また、アン
ケートからもカンファレンスは有用であり、薬剤師のチー
ム医療への関与が必要とされていることが示唆された。
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院
○有馬 純子、齋藤 史織、下堂薗
池田 龍二、武田 泰生
薬剤部
権洋、
【目的】薬剤師の業務が拡大される中、多くの施設で手術
部業務への参画について検討がなされている。当院の手術
部への関わりは、1998年の手術部配置薬剤の把握に始ま
り、2002年の薬剤交付方法の検討、麻酔科医使用薬剤の
セット交換カート制導入へと変遷してきたが、定期訪問に
よる業務内容は薬剤の安定供給にその役割が置かれてい
た。しかし、2010年の手術部新棟建設に合わせた薬剤部分
5日配置され、薬
室の設置により11月から薬剤師1名が0.
剤交付だけでなく、手術内容を考慮した薬剤使用状況の把
握に積極的に関わるようになった。さらに麻酔科医や医務
課との連携により新たな問題点の抽出が可能となった。そ
こで今回、薬剤師の業務拡大により明らかとなった経済効
果への関わりを検討する。
【方法】
薬剤部分室稼働前後の薬剤師の業務内容を比較し、
さらに薬剤使用量と麻酔記録(日本光電:Prime Gaia)と
の比較から薬剤費に関わるデータを検討した。
【結果・考察】手術部での薬剤師業務が週1回の訪問から
毎日へと変更になったことで、定数配置薬の種類や運用に
ついて大幅な見直しが可能となった。薬剤使用量と麻酔記
録の不一致率は2010年3月以降減少を認め、半年間で約
50%となった。また薬剤師の介入開始後1年間の薬剤に関
する経費削減効果は、約200万円程度 で あ っ た。現 在 も
データ解析を継続中である。
−267−
ポスター演題
353 iPad アプリを用いた聴力検査の有用性の評価
1
九州保健福祉大学 薬学部 薬学科、
2
社会医療法人泉和会千代田病院
○徳永
甲斐
黒木
田中
緒方
354 プロペリシアジンと茶系飲料中ポリフェノールと
の相互作用
1
福岡大学 薬学部、
近畿大学 生物理工学部、
3
第一薬科大学 薬学部
○佐野 由希子1、池田 浩人1、川原 光喜1、
湯川 美穂1、藤澤 雅夫2、湯川 栄二3、
安藝 初美1
仁1、井手上 真弓1、金子 藍里1、
晃弘2、矢野 広樹2、切通 博己2、
教彰2、興梠 靖幸2、小川 衣里2、
恵美2、岩瀬 祥枝2、千代反田 晋2、
賢次1、瀬戸口 奈央1、高村 徳人1
2
【目的】薬剤師は薬物療法を受けている患者に対し、副作
用の状況の把握を行わなければならない。近年 IT 技術の
発達により、iPad を使用して患者アセスメントを可能に
したアプリが開発されている。本研究では、聴力検査のア
プリに注目し、その有用性を検証した。
【方法】iPad2(Apple 社)とノイズキャンセリング機能
を有したヘッドホン(Panasonic 社)を使用し、アプリは
Audiometry、Senses および uHear(Apple store にて購
入)を使用した。被験者は同意を得た健常人20名である。
まず、それぞれのアプリの性能の比較を行い、標準純音聴
RION 社)との比
力検査装置(オージオメータ AA−78,
較を行った。
【結果】Audiometry は約2分で検査が可能で、左右の聴
取可能領域は Hz で表示され、結果は簡易図で表示され
る。Senses は約2分で検査が可能で、左右の聴取可能領
域は Hz·dB で表示され、結果は表で表示される。uHear
は約6分を要し、左右の聴取可能領域が Hz・大まかな dB
で表示され、結果は折れ線グラフで表示される。標準純音
聴力検査装置と比較して、
Sensesは同様の傾向がみられた。
【考察】Senses は短時間で簡単に試験が可能なことから、
臨床現場でも活用できると考える。それぞれの特徴に応じ
たアプリを選択することで、より患者に最適な患者アセス
メントが可能になると考える。
【目的】統合失調症は日本において高頻度で発症する慢性
疾患である。その症状の改善や再発の防止を図るために
は、患者が薬物を正しく服用することが重要である。統合
失調症治療薬であるプロペリシアジン(PCZ)内服液は、
水、ジュース等で希釈し服用する。しかし PCZ 内服液を
茶系飲料で希釈すると、溶液中の PCZ 含量が低下した。
この PCZ 含量低下の要因を明らかにするため、PCZ と茶
系飲料中ポリフェノールとの相互作用について検討した。
【方法】1)PCZ 内服液を各種茶系飲料(緑茶、烏龍茶、
紅茶、その他の茶系飲料)で希釈後の溶液について PCZ
残存率、pH および色調の経時変化を測定した。2)PCZ
内服液を緑茶ポリフェノールである(−)−epigallocatechin gallate(EGCg)または(−)−epigallocatechin(EGC)
溶液で希釈した溶液中の PCZ 残存率を測定した。
【結果】1)殆どの茶系飲料において、希釈溶液中の PCZ
残存率は50%前後に低下し、24時間後まで一定であった。
8)を茶系飲料で希釈直後の pH はおよ
PCZ 内服液(pH3.
そ5であり、溶液は白濁した。溶液 pH は24時間後まで変
化せず、時間経過とともに不溶性物質が沈殿した。2)
EGCg 溶液の濃度に依存して PCZ 残存率は低下したが、
EGC 溶液で希釈しても PCZ 残存率は低下しなかった。
【考察】PCZ 内服液を茶系飲料で希釈したときに生ずる
PCZ 残存率低下は、茶系飲料中の EGCg のような galloyl
基を有するポリフェノールによるものと考えられる。
355 エコバッグを利用した「薬のまとめ袋」の利用価
値の検討
沼津市立病院 薬剤部
○松村 香奈、木下 優子、高田 正弘、
長山 晃、金谷 有美、加藤 有希、
鈴木 光明、川上 典子、野毛 一郎
【はじめに】医療施設では安全性や利便性、質の担保がな
ければエコロジー(以下エコ)は実施できない。沼津市立
病院薬剤部では現在薬袋が2つ以上の患者に、処分しやす
い形状で作製した「薬のまとめ袋」と称するビニール袋を
使用し投薬時に毎回提供している。今回、エコバッグをこ
の「薬のまとめ袋」として患者に無償提供し、再利用する
ことでの使い勝手や費用対利用効果を検証した。方法院外
処方発行率約90%の中、院内処方にて定期受診の多い神経
内科を中心とした患者より無作為に24名を抽出した。患者
からは口頭にて同意を得て、エコバッグに処方薬をいれ受
診時毎に持参してもらい、「薬のまとめ袋」として再利用
した。その間に利用状況のアンケート調査を行った。
【結果】30∼80歳代の患者24名(男性18名、女性6名)の
利用状況から、大きさや色合い、材質、持ち運びは75%以
上の方が問題なく使用できると回答した。また今後利用し
たいという人も70%以上の回答があり利用価値の高いこと
が確認できた。
【考察】多くの患者から利用価値の高い回答を得た。しか
し、作製は枚数にもよるが、市場価格調査から現在の「薬
のまとめ袋」より50∼100倍のコストが発生する。また、
長期の利用でエコ化の促進は可能であると思われるが、長
期の定期受診に限定されるものと考える。今後、コストを
下げながらも見合った利用方法や広域での利用促進、災害
時にも利用できる形態などを考慮したエコバックが理想と
考える。
−268−