O-30 院内検査ガイドライン及び炭酸リチウムの血液検査オーダプロトコル策定後の経過報告 ○田中将太 開田郁代 横田哲子 鹿島孝子 (兵庫県立光風病院・薬剤部) 【目的】当院では、2015年9月に院内検査ガイドラ イン(以下、ガイドライン)及び炭酸リチウムの血液検 査オーダプロトコル(以下、プロトコル)を策定し、現 在まで運用している。そこで、今回はこれらガイドライ ン等の運用が、適正な検査値モニタリングや精神科薬物 療法に寄与しているのかについて、①薬剤師による検査 オーダ提案件数、②炭酸リチウム服用患者に対する血中 濃度測定頻度の2点に着目して、検証を行ったので報告 する。 抗精神病薬の副作用には、アカシジアなどの錐体外路 症状や心電図異常など比較的短期間に身体に現れるもの と、肥満や糖・脂質代謝異常など長期にわたる経過の中 で現れるものがある。前者は従来から注目されており、 評価尺度によるモニタリングや対処法は比較的確立して いるが、後者のような長期にわたる経過の中で現れる副 作用については臨床現場での認知度、注目度は低い。そ こで当院では、使用頻度の高い薬剤であるオランザピン やリスペリドン等の抗精神病薬や、バルプロ酸ナトリウ ムやカルバマゼピン等の気分安定薬等の副作用に重点を 置いて、ガイドラインを策定した(図1)。また、炭酸リ チウムは服用開始後、維持量決定までは1週間毎の血液 検査が必要であり、維持量決定後は2か月に1回の血液 検査が必要となっており、それに基づくプロトコルにな っている。 2か月に1回以上、B群:2か月に1回未満、C群:実 施なしに分類した。 【結果】項目①は、ガイドライン導入前は1か月当たり 平均0.9件だったが、ガイドライン導入後は、1か月 当たり平均5.4件と提案件数に増加がみられた(図2)。 図2 ガイドライン導入前後の薬剤師による血液検査提 案件数 項目②は、プロトコル策定前後で大きな差はみられな かった(図3) 。 図3 図1 当院の院内検査ガイドライン 【方法】項目①は、対象期間(ガイドライン導入前:2 015年1月から8月、ガイドライン導入後:2015 年10月から2016年5月)で、ファーマロードⅡ(薬 剤管理指導業務病棟薬剤業務支援システム)にて各薬剤 師から報告を受けた提案件数を月別に集計を行い、1か 月当たりの平均提案件数を算出した。項目②は、対象期 間(プロトコル導入前:2014年10月から2015 年5月、プロトコル導入後:2015年10月から20 16年5月)の中で、2か月間以上の炭酸リチウム服用 期間を有する患者について調査し、測定頻度別に、A群: プロトコル導入前後の血中リチウム濃度測定頻度 【考察】今回の調査で、ガイドライン及びプロトコル策 定後、薬剤師による検査オーダ提案件数は増加傾向にあ り、ガイドライン等が薬剤師による血液検査モニタリン グを意識づけるものとして有用であったと考えられた。 血中リチウム濃度測定については、プロトコル策定前 後で検査頻度に差はみられなかったが、これはプロトコ ル策定以前からPMDAからのリチウム濃度測定に関す る通知を薬剤師から医師へ情報提供しており、医師のリ チウム検査に対する意識の高まりがあったのではないか と考える。また、薬剤師による定期的な検査値モニタリ ングや検査オーダの提案は継続して実施されており、プ ロトコルの策定が炭酸リチウムの副作用モニタリングに 寄与していることが考えられた。 今後も、適正な精神科薬物療法へ向けて検査値モニタ リング等を実施していきたい。
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