不動産市場動向 - 谷澤総合鑑定所

不動産市場動向
RealEstate Market Status
2013 Spring
1
■ 225不動産天気予報 ①
◆概況
2013年上期、2013年下期ともに「くもり」模様が続き、天気の回復にはもうしばらく時間がかかる見通し。
◆オフィス
最近までは都心部での大型供給や解約・縮小の動きが多かったことを受けてオフィスの空室率は高止まりの状態にあったが、経済成長の期待が増
すなか、前向きな移転や増床ニーズの増加が見られ、2012年12月末時点の平均稼働率は半年前よりも改善している。これまで下落傾向を続けて
きた新規賃料も、ようやく下げ止まりの兆しが見られるに至った。一方で、継続賃料はテナント入替や賃料減額等によって緩やかに下落しているも
のの、依然として新規賃料を上回る水準にある物件が多く、賃料ギャップの解消にはもうしばらく時間を要するため、NOIはやや弱含みで推移する
と見られる。
◆レジデンス
レジデンスの2012年12月末時点における継続賃料は、概ね横這いで安定的に推移しており、新規賃料とのギャップもほとんど無い。
稼働率についても、2012年12月末時点の平均稼働率は96%を超え、依然として高い水準を維持している。2013年下期以降は稼働率の改善がひ
と段落する可能性が高いものの、賃料水準も横這いで推移すると見られることから、NOIは概ね安定的に推移すると予想する。
◆商業施設
出店意欲の高まりが本格化しつつある東京都心部の都市型商業施設や首都圏所在の大型店等では、賃料収入は安定的に推移しており、稼働率
も改善傾向にあるため、引き続き安定的な賃料収入が見込まれる。一方で、地方都市に所在する郊外型商業施設においては、売上高が継続的に
減少している店舗が多く、賃料収入が半年前から減少した物件が目立った。全国的に大規模小売店の新設に一服感があるものの、今しばらくは売
上高の減少基調が続くと見られ、当面はテナントの賃料負担力の回復は見込みづらく、NOIの緩やかな減少が続くと予想される。
(出典) ㈱ティーマックス
©2013 The Tanizawa Sogo Appraisal Co.,Ltd. All Rights Reserved.
2
■ 225不動産天気予報 ②
調査概要
「ティーマックス225不動産天気予報」 は、①J-REITが保有する225基準不動産を抽出、②基準不動産について2012年12月末時点を起点に、2013年上期(1月~6
月)の6ヵ月間の予測NOI、2013年下期(7月~12月)の6ヵ月間の予測NOIを査定し、それぞれ前期とのNOI変化率を求め、③指定セグメントに応じたNOI変化率を天
気に見立てることで天気予報図として表し、④これを6ヶ月ごとに更新するものである。
①基準不動産の用途は、オフィス、レジデンス、商業施設で合計225物件
選定基準は主要エリアに配慮し、
・ オフィスは、S・Aクラスを中心とし、主にマルチテナントビル
・ レジデンスは、ワンルームとファミリータイプからそれぞれ抽出、高級賃貸物件もカバー
・ 商業施設は、NOI、賃料等の開示情報がある物件
②現在を起点とし1~6ヵ月後、7~12ヵ月後の予測NOIを査定
予測NOI(Net Operating Income)は賃貸事業収益から賃貸事業費用(減価償却費、Capex等は含まない)を控除した純収益を指す。予測NOIは投資法人が発表
している決算短信等で公表された実績値を参考に、市場賃料・空室率の査定値、テナント入退去の最新ニュース、独自調査したテナント需給動向等を反映し、現在
を起点にした6ヶ月間ごとの予測NOIを査定する。
③天気予報図の表示ルール
天気予報図は、基準不動産ごとに直近の実績NOI(±0)と1~6ヶ月後の予測NOI(+6)、1~6ヶ月後の予測NOI(+6)と7~12ヶ月後の予測NOI(+7~12)との変化
率を指定セグメント別に集計する。
(出典) ㈱ティーマックス
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3
■【オフィス】都心部オフィスゾーンにおける
平均募集賃料と空室率との関係
丸ノ内・大手町・有楽町
賃料 UP
空室率 UP
賃 料
高
空室率 UP
賃料 DOWN
左記グラフは、平均募集賃料と空室率の関係を示したグラフである。
空室率が高くなると、賃料は低くなり、空室率が改善し始めると、徐々に
賃料が回復していることが確認できる。
空室率
高
空室率
低
空室率 DOWN
賃料 UP
賃 料
低
賃料 DOWN
空室率 DOWN
主要5区
賃料 UP
空室率 UP
賃 料
高
空室率
高
空室率
低
空室率 DOWN
賃料 UP
空室率 UP
賃料 DOWN
賃 料
低
賃料 DOWN
空室率 DOWN
◆丸の内・大手町・有楽町エリア
賃料は若干の改善がみられ、底打ち感が認められる状況にある。
近時における景気回復期待等の影響により、本格的な賃料上昇
局面に移行することが期待される。
◆主要5区
賃料調整が一巡した結果、賃料下落局面は終局を迎えつつある。
賃料上昇局面への移行については、未だ材料に乏しい状況にあ
るが、本格的な賃料上昇に至るには、もう暫く時間を要するものと
思料される。
(出典) 各種公表データ等をもとに
(株)谷澤総合鑑定所作成
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■【オフィス】MAP’s [有効坪単価]都心主要3区S・Aクラス
MAP’s[有効坪単価]
万円/坪
(平成25年2月末時点)
1,400
1,200
千代田区
中央区
1,000
港区
平均値
◆総括
キャップレートの低下傾向及び新規
ビルの供給により、有効坪単価水準
は平均値で10万円/坪程度の上昇と
なった。
800
600
880
570
400
480
540
550
610
480
540
200
400
330
360
日
本
橋
兜
町
・
茅
場
町
・
新
川
日
本
橋
小
舟
町
人 ・
形大
町伝
ほ馬
か町
・
小
伝
馬
町
・
520
610
550
510
540
460
0
東
京
駅
周
辺
神
田
・
秋
葉
原
・
御
茶
ノ
水
周
辺
四
ツ
谷
・
市
ヶ
谷
駅
周
辺
飯
田
橋
・
水
道
橋
霞
ヶ
関
・
永
田
町
・
平
河
町
八
重
洲
・
京
橋
・
日
本
橋
銀
座
日
本
橋
本
町
・
室
町
・
本
石
町
築
地
・
新
富
・
八
丁
堀
新
橋
・
虎
ノ
門
赤
坂
六
本
木
浜
松
町
周
辺
芝
・
三
田
・
田
町
青
山
◆千代田区
「東京駅周辺」エリアは平均880万
円/坪となっており、高水準の賃料と
低いキャップレートにより、有効坪単
価水準は全エリアの中で最も高く
なっている。
◆中央区
「八重洲・京橋・日本橋」、「日本橋
本町・室町・本石町」の両エリアは大
型ビルの立地により有効坪単価水
準も高いが、その他エリアについて
は中小規模のビルが多く、有効坪単
価水準は低位に留まっている。
◆港区
「赤坂」、「六本木」両エリアは大型ビ
ルの立地により有効坪単価水準が
※オフィスエリアごとに複数のビルを抽
高い。その他のエリアについても、
*出し、有効坪単価を算出。これを集
区内の価格水準は高い。
*計してエリアの平均値と、最大値・最
*小値を査定。
※坪単価は各物件の賃料・キャップ
*レートを想定の上査定。年2回更新。
(出典) ㈱ティーマックス
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■【レジデンス】エリア別の賃料単価及び稼働率の推移
単価(円/坪)
都心5区
稼働率(%)
100
15,000
単価(円/坪)
稼働率(%)
地方・周辺首都圏
100
15,000
96.7
13,310
10,000
10,000
95
7,845
94.8
5,000
5,000
地方・周辺首都圏の賃料単価
都心5区の賃料単価
地方・周辺首都圏の稼働率
都心5区の稼働率
0
95
90
0
90
◆都心5区の稼働率は12年下期にやや低下したものの、95%程度で安定的に稼働している。賃料単価については概ね横這
いとなった。
◆地方・周辺首都圏の稼働率は、12年下期についても良好である。賃料単価については横這いから微増にて推移している。
注1) 2012年12月31日までのデータ
注2) 賃料収入、賃貸可能戸数、稼働率が判明している物件が集計対象
注3) 追加取得、一部売却された物件等については、サンプルから除外
(出典) J-REIT公表資料を基に
㈱ティーマックス作成
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6
■【レジデンス】タイプ別の賃料単価及び稼働率の推移
賃料(円/坪)
ワンルーム
稼働率(%)
15,000
100
賃料(円/坪)
稼働率(%)
高級賃貸
15,000
100
96.4
11,299
95
10,000
11,075
93.2
90
90
5,000
5,000
ワンルームの賃料単価
85
85
高級賃貸の賃料単価
ワンルームの稼働率
0
95
10,000
高級賃貸の稼働率
0
80
80
◆ワンルームは稼働率がやや低下したものの、95%を超える高稼働を維持している。賃料水準は11,000円/坪前後で概ね横這
いにて推移している。
◆高級賃貸は稼働率・賃料水準共に回復傾向が続き、稼働率についてはリーマンショック前の水準まで持ち直している。
注1) 2012年12月31日までのデータ
注2) 賃料収入、賃貸可能戸数、稼働率が判明している物件が集計対象
注3) 追加取得、一部売却された物件等については、サンプルから除外
(出典) J-REIT公表資料を基に
㈱ティーマックス作成
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■【オフィス&レジデンス】賃料単価・稼働率の比較
賃料(円/坪)
20,000
オフィス
稼働率(%)
100
15,000
15,632
10,000
94.7
賃料(円/坪)
15,000
95
10,000
5,000
稼働率(%)
100
96.0
10,510
95
5,000
オフィスの賃料単価
オフィスの稼働率
0
レジデンス
20,000
賃貸住宅の賃料単価
賃貸住宅の稼働率
90
90
0
◆オフィス(全国平均)は、賃料が下落傾向にある中で、稼働率は10年下期からやや上昇し12年下期では約95%となっている。
◆レジデンス(全国平均)の稼働率は09年下期をボトムに上昇し、直近も95%超の水準を保っている。賃料は横這いとなっている。
◆賃料の変動幅は、レジデンスの方がオフィスより小さいことがわかる。
◆全国的な市況については、レジデンスが回復期を終え安定的に推移する中で、オフィスは調整局面にあることが窺える。
注1) 2012年12月31日までのデータ
注2) 賃料収入、賃貸可能戸数、稼働率が判明している物件が集計対象
注3) 追加取得、一部売却された物件等については、サンプルから除外
(出典) J-REIT公表資料を基に
㈱ティーマックス作成
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8
■ 不動産流動性 ①J-REIT不動産取引件数、DI(%)の関係
250
8
3 4
200
6
8
9
10
売却件数
8
取得件数
6
DI(ポイント)
4
1
1 1
-3
-7
150
-11 -10
-12
-16
100
-3
-5
-6 -6
-5
-14
-1
-2
-4
-9 -9
-9
-11 -11
-2
-16
-16
-12
-14
-21
-21
-20 -20
-21
-25
50
-24
-32
-29
0
3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
◆REIT取引件数と貸出態度DIの推移をみると、2005~2007年は、DIが好転する状況下において取引件数が急激に増加し、物件
*取得マインドとDIがピークを迎える2007年には、物件取得競争が熾烈を極めるなか、取引件数はむしろ減少することとなった。
◆2012年はDIの回復基調が継続し、取引件数についても、同程度のDI水準である2004年頃に近い水準にまで回復している。
(出典) 取引件数 : ㈱ティーマックス
DI(%) : 日銀短観
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9
■ 不動産流動性 ②不動産流動性指数
600.0
流動性高い・拡大期
2011.3.11東日本大震災
585.6
※不動産市場の流動性を指数化したグ
ラフであり、不動産の取引動向等をも
とに、㈱ティーマックスが独自に作成
500.0
※基準時点(2003年5月)=100
※指数値が高い(低い)
⇒流動性が高い(低い)
400.0
300.0
302.4
2007年サブプライム問題
200.0
◆不動産流動性指数は2007年末~2008
*年初頭をピークに急低下、 2009年後半
*にかけて最悪期を迎えた。
100.0
39.0
0.0
出注) 2013年3月までのデータ
流動性低い・回復期
◆2011年3月11日の東日本大震災の影
*響で一時的に不動産取引が見送られ
*たことにより、不動産流動性指数は下
*落基調となっていた。
◆2012年からは本格的な上昇基調にあり、
*良好な資金調達環境を背景とした物件
*取得需要の拡大を通じ、流動性はむし
*ろ低下するに至っている。
((出典) ㈱ティーマックス
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10
■ 東証REIT指数・ICRの推移
7.5
2500
7
2000
5.5
1000
ICR
6
1500
5
4.5
500
東証REIT
オフィス指数
ICR(オフィス)
東証REIT
住宅指数
ICR(住宅)
東証REIT
商業・物流等指数
ICR(その他)
4
3.5
0
2010/2
2010/3
2010/4
2010/5
2010/6
2010/7
2010/8
2010/9
2010/10
2010/11
2010/12
2011/1
2011/2
2011/3
2011/4
2011/5
2011/6
2011/7
2011/8
2011/9
2011/10
2011/11
2011/12
2012/1
2012/2
2012/3
2012/4
2012/5
2012/6
2012/7
2012/8
2012/9
2012/10
2012/11
2012/12
2013/1
2013/2
2013/3
東証REIT指数
6.5
◆回復基調にあったREIT指数は、政策による後押しもあって、2012年末以降急上昇している。
◆ICRも低下傾向にあり、用途間のスプレッドも縮小しつつある。なお、特にオフィスの利回り低下
*が大きいが、これはオフィス賃料の底入れ感のほか、流動性に優れる大型REITへの資金流入
*も要因の一つと考えられる。
※ICR:Implied Cap Rate
※ICR=個別物件の期待NOI
÷投資法人のEV
※EV:Enterprise Value
※EV=ネット負債+投資口時価総額
(出典) 東証REIT指数 : 東京証券取引所
ICR : ㈱ティーマックスによる査定
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