Focus W 情報提供資料 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 http://www.kokusai-am.co.jp 3月上旬まではギリシャ危機に要注意だが、市場のリスク志向が長期化する可能性も 今週の主要経済指標と政治スケジュール 月 2/27 (米) 1月 中古住宅仮契約指数(前月比) 12月:▲3.5% 1月:(予)+1.0% (独) ドイツ議会 ギリシャ向け第2次支援策承認予定 火 28 (日) 1月 商業販売額(小売業、前年比) 12月:+2.5%1月:(予)+0.4% (米) 12月 S&P/ケース・シラー住宅価格指数 (20大都市圏、前月比) 11月:▲0.7%、12月:(予)▲0.5% (米) 2月 消費者信頼感指数 (カンファレンス・ボード) 1月:61.1、2月:(予)63.0 (欧) フィンランド議会 ギリシャ向け第2次支援策承認予定 水 木 29 3/1 (日) 1月 鉱工業生産(速報、前月比) 12月:+3.8% 1月:(予)+1.8% (米) ベージュブック (地区連銀経済報告) (米) バーナンキFRB議長 半期金融政策報告 (下院金融サービス委員会) (日) 10-12月期 法人企業統計 (全産業、設備投資、前年比) 7-9月期:▲9.8% 10-12月期:(予)▲6.5% (欧) ECB 3年物無制限資金供給 (欧) EU首脳会議(1∼2日) 他方、ユーロ圏財務相会合によるギリシャ第二次支援合意をうけ、3月20日の ギリシャ国債145億ユーロの償還に道が開けたものの、依然、3月上旬まではギリ シャ問題が足元のリスクオン市場に水を注す恐れがあり要注意です。とりわけ、 ①ギリシャ第二次支援の各国議会承認の可否(ドイツ27日、フィンランド28日、 オランダ28日以降の予定)、②PSI(民間金融機関によるギリシャ債務再編)の 応募結果とCAC(集団行動条項)発動の可能性が、目先の市場の懸念材料です。 額面53.5%の債務減免に応じる民間債権者が、全体の過半に達すると債務交換 を実施、うち3分の2以上の賛成でCACが発動される可能性があります。強制的デ フォルトの場合、一部民間債権者がギリシャ政府に訴訟を起こす恐れもあります。 2 (日) 1月 完全失業率 12月:4.6%、1月:(予)4.5% (日) 1月 有効求人倍率 12月:0.71倍、1月:(予)0.72倍 (日) 1月 消費者物価指数 (除く生鮮、前年比) 全国 12月:▲0.1%、1月:(予)▲0.2% 東京 1月:▲0.4%、2月:(予)+0.4% 出所)Bloomberg等、各種資料より当社経済調査部作成 注)経済指標、政治スケジュールの日程及び内容が変更になる可能性があります。 年初来のリスクオン市場(株式などリスク資産が積極的に購入される市場)が、 今週も続く見通しです。為替は、「新興国通貨・資源国通貨・ユーロ」が上昇し、 「ドルと円」が相対的に下落しやすい環境にあります。金融市場のリスクオンを 促す3つの要因があるため、昨年とは異なり相場の腰が入ってきました:①世界 経済の底堅い拡大(先進国では米国・日本・ドイツ・豪州が良好で、新興国では 金融緩和により失速回避の見通し)、②主要国の活発な流動性供給(今週29日も 欧州中銀が無制限資金供給を予定)、③テールリスク顕在化は差し迫っていない こと(ユーロ崩壊、日本国債暴落、米国緊縮財政による2013年景気失速、中国経 済ハードランディング、北朝鮮の体制瓦解、イラン情勢緊張による原油高騰等)。 (米) 2月 米供給管理協会(ISM) 製造業景気指数 1月:54.1、2月:(予)54.5 金 ギリシャの経済規模は世界の0.4%(2010年)に過ぎないですが、グローバル化 に伴うカネと情報の瞬間伝達により、ギリシャ危機は欧州を越えて広がりました。 その意味ではギリシャ問題を軽視できないものの、①他の欧州周辺国は緊縮財政 を本格化させていること、②危機対応策が整い始めたこと(流動性供給・財政悪 化国への支援・周辺国国債の購入・銀行への資本注入策等)、③ユーロ構造改革 (財政規律強化・財政統合・ユーロ共同債)の道筋が見えてきたことから、欧州 危機の最悪期は過ぎつつあるようです。ギリシャがユーロを離脱しても、ユーロ 崩壊どころか逆に、強い国で構成されるユーロ再生への幕開けとも考えられます。 ①ユーロ圏: 27-28日のギリシャ支援の各国議会承認の行方は懸念材料ですが、 29日のECB資金供給が前回の4890億ユーロと同規模になるとみられ、市場の下支 えが期待されます。3月1-2日のEU首脳会議は、ESMの融資上限を当初予定の5000 億ユーロから7500億ユーロに引き上げ、EFSFの残りの融資上限2500億ユーロと合 わせ、1兆ユーロとする案などが検討される予定です。 ②米国:27-28日の住宅関連指標、3月1日のISM製造業では、緩やかな景気拡大が 確認されましょう。29日のバーナンキFRB議長議会証言では、足元の景気拡大を 評価しながらも、QE3(MBS買い上げ等)発動の余地には含みを残す見通しです。 ③日本:29日の鉱工業生産は、1月の輸出減で生産予測+2.5%を下回りながらも、 エコカー補助金復活やタイ洪水の復興で、底堅い生産が見込まれます。 (荒武) 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 1 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 金融市場の動向 直近1週間の株式・長期金利・為替・商品価格 日本株 日経平均 日経ジャス TOPIX 株価 ダック平均 (ポイント) (円) (ポイント) 先々週末 2 月1 7日 先週末 2 月2 4日 差 (日経平均、円) (NYダウ、ドル) 22,000 欧州株 米国株 S&P500 ナスダック ドイツ 英国 種指数 指数 DAX® FT100 (ポイント) (ポイント) (ポイント) (ポイント) NY ダウ (ドル) 810.45 1,270.99 12,949.87 1,361.23 2,951.78 6,848.03 5,905.07 18,000 9,647.38 834.29 1,303.70 12,982.95 1,365.74 2,963.75 6,864.43 5,935.13 16,000 +263.21 +23.84 +32.71 +33.08 +4.51 +11.97 +16.40 +30.06 14,000 為替相場 ユーロドル 商品市況:先物価格 12,000 ドル円 ユーロ円 WTI原油 金 ( ドル / バレル ) ( ドル / オンス) 10,000 日本 米国 ドイツ 0.945 2.003 1.925 79.55 1.3140 104.54 103.24 1,724.50 8,000 0.970 1.977 1.884 81.20 1.3448 109.18 109.77 1,775.10 6,000 +0.025 -0.026 -0.041 +1.65 +0.0308 +4.64 +6.53 +50.60 4,000 先々週末 2 月1 7日 先週末 2 月2 4日 ( 円/ ドル) ( ドル/ユーロ) ( 円/ ユーロ) 【金利】 金融緩和と低インフレで、景気回復でも長期金利は低位安定へ 02/10/9 7,286 02/4/1 5.425% 02/5/17 5.258% 5.0 07/7/9 4.669% 03/6/13 3.114% 2.0 ド ル高 ユーロ高 円安 1 .9 7 7 1 .8 8 4 07/6/13 1.960% 08/12/30 2.055% 03/6/12 0.435% ド ル安 ユーロ安 円高 03 04 注)使用しているデータの値は、引値ベースによる。 05 06 07 08 09/3/10 7,054 09 10 3,000 09/3/9 6,547 2,000 05 06 07 08 09 10 11 12 出所)Bloomberg、Deutsche Boerse AG 主要為替相場 07/7/13 168.95 140 (ドル/ユーロ) 1.8 08/7/23 169.96 08/7/15 1.6038 11 1.6 1.34 48 出所)Bloomberg ユーロ高 ド ル安 1.3 1 09 .1 8 110 100 ユ ー ロ ト ゙ル相場 (右軸) ユーロ安 ド ル高 1.0 ト ゙ル円相場 (左軸) 02/1/31 0.8593 1.2 1.1 07/6/22 124.14 81 .20 0.9 0.8 0.7 03 04 05 06 07 注)使用しているデータは引値、値表示はザラバベースによる。 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 1.5 1.4 130 02 12 1.7 12年2月24日 70 0.0 02 04 4,000 02/1/31 135.20 80 0 .9 7 0 10/10/6 0.840% 9,6 47 ユ ー ロ 円相場 (左軸) 90 08/12/30 1.165% 09/3/9 3,692 120 日本 1.0 12,9 82 03/3/12 2,202 160 ドイツ 07/10/9 14,164 DA X® ( 右軸) 170 米国 150 3.0 5,000 N Yダウ ( 左軸) (円/ドル、円/ユーロ) 180 12年2月24日 7,000 【為替】 リスク志向が復活し、強い順に「ユーロ>ドル>円」の展開に 06/6/28 07/6/12 5.245% 5.295% 4.0 6,86 4 6,000 03/4/28 7,607 03 8,000 12年2月24日 日経平均株価 ( 左軸) 注)使用しているデータの値は、引値ベースによる。値表記は小数点以下切捨て。 主要国金利: 日米独の10 年国債利回り (%) 6.0 (DAX®、ポイント) 9,000 07/7/16 8,105 07/7/9 18,261 02 出所)Bloomberg、Deutsche Boerse AG 主要国株式: 日経平均株価、NYダウ、DAX® 20,000 9,384.17 長期金利:10年国債利回り(%) 差 【株式】 ギリシャPSIとCACへの警戒から、徐々に上値が重くなる見通し 08 09 10 11 12 出所)Bloomberg KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 2 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 日本 当面は復興需要や底堅い海外景気を背景に、製造業は増産基調を維持する見通し 【図1】 国内製造業の生産拡大基調は堅持される見通し 【図2】 国会空転が続けば国債の追加格下げは時間の問題に 日本 鉱工業生産指数および見通し (2011年1月=100) 130 12,000 2012年1・2月 製造工業生産予測指数 に基づく推計 120 (円) 日経平均株価と日本10年国債利回り 日経平均株価(左軸) 11,000 110 輸送機械 100 全体 (%) 10,000 9,000 90 電子部品 ・デバイス 80 8,000 70 7,000 60 6,000 50 2007 日本10年国債利回り(右軸) 2008 2009 2010 2011 2012 5,000 (年) 注)2011年12月までが実績値。2012年1・2月値は製造工業生産予測指数(前月比)を用いて延伸。 ここでは2011年1月値を100として当社経済調査部が指数化している。 2009 2010 2011 2012 (年) 2.0 1.9 1.8 1.7 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 0.9 0.8 注)直近値は2012年2月24日。 出所) 経済産業省、当社経済調査部 出所)Bloomberg 先週22日、日経平均株価(終値)が9,600円台を回復するなど、国内株式の堅調 が続いています。先週の株価上昇率を業種別(TOPIX33業種)に見ると、製造業 が非製造業を若干上回る状況(単純平均値に基づく)となっています。日銀の追 加金融緩和決定(14日)後、円が1ドル81円台、1ユーロ109円台に乗せるなど、円 安が進んだことも、輸出企業中心に製造業の業績回復期待につながった模様です。 上値追いの勢いを増す株式市場とは対照的に、債券市場では日本の10年国債利 回りが0.9%台で推移するなど、落ち着いた状態が続いています(図2)。日銀が なお追加緩和実施へ含みを持たせるなど、金融緩和長期化の見通しが強まってい ることに加え、欧州債務問題の先行きに対する不透明感から、米国を中心に海外 先進国の長期金利が低水準で安定していることなどが背景にあると思われます。 国内製造業の生産回復基調が続いていることも、株式市場には好材料といえま しょう。29日には鉱工業生産指数(2012年1月値)が公表されます。アジア中心に IT分野が在庫調整局面にあり力強さに欠ける電子部品・デバイス工業、一方、エ コカー補助金復活を追い風に好調な輸送機械(自動車)工業など、業種別の業況 に温度差は残るでしょう(図1)。ただし、全体で見れば、震災からの復興需要に 加え、昨年秋口のタイ洪水被害を乗り越え、供給網が回復に向かっていることや 底堅い米国・中国景気などを背景に、製造業の増産基調は維持される見込みです。 波乱材料があるとすれば空転する国会情勢でしょう。2012年度予算案の年度内 自然成立には3月2日までの衆院通過が条件ですが、野党が審議拒否の姿勢を維持、 年度内成立が危ぶまれています。予算審議停滞は、赤字国債発行に必要な特例公 債法案の成立、消費増税関連法案の提出(3月下旬予定)にも悪影響を及ぼしか ねません。20日に米格付け会社S&Pが日本国債の格付け見通しをネガティブ(格 下げの可能性)に据え置いたように、ただでさえ政府の増税案が不十分と評価さ れるなか、財政運営を巡る国会の混乱は格下げを招く懸念があります。(瀧澤) 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 3 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 各 国 経 済 ・ 金 融 市 場 の 視 点 米国 景気回復が住宅市場にも波及、今後は住宅在庫の「予備軍」の解消に期待 【図1】住宅価格は低迷続くが、住宅販売は回復基調 (万件) 800 米国 中古住宅販売件数と S&P/ケース・シラー住宅価格指数 【図2】上昇リスクがある原油・ガソリン価格 (2000年1月=100) 220 S&P/ケース・シラー 住宅価格指数 (20大都市圏、右軸) 700 200 180 115 500 140 90 2006 3.5 85 120 2003 3.0 WTI 原油先物価格 (左軸) 80 100 2009 注)直近値は中古住宅販売件数が2012年1月、住宅価格指数が2011年11月。 75 80 2012 (年) 70 10/1 出所)Bloomberg、NAR 先週は住宅市場が回復基調にあることを示唆する経済指標が発表されました。 今年1月の中古住宅販売件数は、457万件と約1年半ぶりの水準に回復しました(図 1)。住宅販売が回復している背景には、住宅価格と住宅ローン金利が低水準で住 宅を購入しやすい状況が続く中、雇用が着実に回復していることがあります。 住宅価格が依然として低迷している背景には、中古住宅販売に占める、差し押 さえ物件(通常物件より割安で取引されやすい)の比率が高いことがあります。 差し押さえは、ロボサイン問題(金融機関が十分な審査を経ず、機械的に住宅差 し押さえを進めた問題)を受け、2010年秋頃から滞っていました。しかし同問題 に関して、政府と金融機関は2月上旬に和解し、差し押さえの要件が明確になりま した。このため今まで控えられてきた差し押さえが再開され、差し押さえ物件が 今後増加する可能性もあります。差し押さえ物件の中古住宅市場への流入は続き、 住宅価格の低下は目先続く見込みです。 4.0 ガソリン価格 (右軸) 100 95 中古住宅販売件数 (左軸) (ドル/ガロン) 105 160 300 2000 米国 WTI原油先物価格とガソリン価格 110 600 400 (ドル/バレル) 2.5 10/7 11/1 11/7 12/1 注)直近値はガソリン価格が2012年2月17日、原油価格が同年2月24日(週次)。 出所)Bloomberg 住宅価格の低下は、引き続き個人消費の重石となる見込みです。しかし、今ま で滞っていた差し押さえの適切な実施は、いづれ中古住宅在庫となる「在庫予備 軍」が早期に市場に放出され、解消へ向かうことを意味します。これにより、住 宅価格の底打ちが早まることが期待できます。住宅価格の底打ちは、家計資産と 家計心理を好転させ、個人消費を押し上げましょう。このため差し押さえの適切 な実施は、長期的には、個人消費と米国経済にとって好材料と考えられます。 先週末、米国の原油価格は9ヵ月ぶりの水準にまで上昇しました。背景として イラン情勢の緊迫化や、世界的な流動性供給期待が挙げられます。原油価格の上 昇に伴い、ガソリン価格も上昇しています(図2)。車社会の米国ではガソリン は必需品と言え(小売売上高の約1割を占める)、ガソリン価格の上昇は可処分 所得を圧迫し、家計心理を悪化させます。イラン情勢次第で、原油・ガソリン価 格は今後も上昇する恐れがあり、景気への悪影響が懸念されます。(中木) 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 4 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 欧州 各 国 経 済 ・ 金 融 市 場 の 視 点 29日の3年物無制限資金供給(3年物LTRO)では、5,000億ユーロ前後が供給される見通し 【図1】短めの金利を中心に低下するユーロ圏の銀行間金利 2.4 ユーロ圏銀行間金利(EURIBOR) (%) (%ポイント) EURIBOR12ヵ月物 (①、左軸) 2.2 2.0 1.8 1.30 1.20 600 1.10 500 1.00 1.4 1.2 銀行のCDSプレミアム (ベーシスポイント) 700 ①−②(右軸) 1.6 【図2】銀行の信用リスクは正常化にはほど遠い 対象銀行は、ドイツがドイツ銀行とコメルツバンク、 フランスがBNPパリバとソシエテ・ジェネラル、 スペインがサンタンデール銀行とBBVA、 イタリアがウニクレディトとインテサ・サンパオロ。 それぞれ2行の単純平均値を使用。 信用リスク 高い 400 イタリア 0.90 300 1.0 0.8 0.6 0.70 EURIBOR1ヵ月物 (②、左軸) 0.4 0.2 0.0 10/1 10/7 11/1 11/7 スペイン 信用リスク 低い 0.80 フランス 200 0.60 100 0.50 0 12/1 ドイツ 08 09 10 11 12 注)直近値は、2012年2月23日。 注)直近値は、2012年2月23日 出所)Bloomberg 今週は、29日に昨年12月以来となるECBの3年物無制限資金供給(LTRO2)が銀 行に対して行われます。昨年12月のLTRO1では、約5,000億ユーロの資金が供給さ れ、LTRO2でもほぼ同額の5,000億ユーロの供給が見込まれています。LTRO1では、 銀行が大量の資金を手にしたことが好感され、銀行の短期の資金調達環境が改善 し(①)、一部大手銀行が起債に成功する等、市場の落ち着きに重要な役割を果 たしました。LTRO2で更に資金が供給されれば、そうした動きは一層強まるため、 市場のリスク許容度回復に繋がると予想されます。 ただし、資金供給はあくまでも一時的な政策であり、銀行の信用リスクが正常 化した訳ではないことには注意を要します。イタリアの銀行の信用リスクは最悪 期を過ぎたとはいえまだ高い状態です(図2)。図1が示すように、銀行間金利も 短めの金利は低下していますが、長めの金利はそれ程低下していません。こうし た市場の緊張が解けるには、債務危機の解決に目処が立つことが必要でしょう。 出所)Bloomberg 21日に閉幕したユーロ圏財務相会合では、ギリシャ向け2次支援が大枠で確定し、 今週は、ドイツ、フィンランドで2次支援の議会承認が予定されています。ドイツ とフィンランドは共に、議会でギリシャ向け支援を可決し、波乱はないと見込まれ ます。また、ギリシャは2次支援の一環として、同国の国債を保有する民間投資家 向けに国債の元本削減を行うことが決定しました。この債務再編への応募が今週か ら開始され、3月上旬に実施される予定となっています。EU全体では、3月1・2日 の EU 首 脳 会 議 で 、 債 務 危 機 の 安 全 網 拡 大 が 議 論 さ れ 、 欧 州 安 定 メ カ ニ ズ ム (ESM)の規模拡大がテーマとなります(現在は上限5,000億ユーロ)。 先週発表されたドイツの2月ifo景況感指数は、市場予想以上に改善し、ドイツ景 気が昨年10-12月期のマイナス成長から脱しつつあることが確認されました。内訳 を見ると、製造業だけでなく内需産業の景況感も改善しており、景気回復が今後も 続くことを示唆する内容となりました。(前田) 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 5 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 各 国 経 済 ・ 金 融 市 場 の 視 点 アジア・新興国 ブラジル:為替相場は上昇も、規制への警戒から上昇ペースは鈍化へ 【図1】 貿易収支の悪化により拡大した経常赤字 経常収支(月次、季節調整前) (億ドル) 60 40 【図2】 上昇の勢いが弱まりつつあるレアルの対ドル相場 国際収支(月次、季節調整前) (億ドル) 250 1.4 ドル安・レアル高 200 20 0 -20 -40 -60 -80 150 財収支 100 サービス 収支 証券投資 (債券) 証券投資 (株式) 50 直接投資 所得収支 0 総合収支 1.8 2.0 2.2 経常収支 -50 -100 -100 -120 -150 レアル相場(対ドル、逆メモリ) 1.6 誤差脱漏 移転収支 経常 収支 ブラジル・レアル相場の推移と主な規制 (レアル/ドル) 2.4 ・2008年3月 金融取引税 (IOF)導入 (株式・債券: 1.5%) その他投資・ 金融派生商品 ・2011年1月 ・2010年10月 先物市場への為替介入 IOF税率引き上げ (レアル売り・ドル買い) (債券:2%⇒6%) (先物取引の証拠金:6%) ・2009年10月 IOF税率引き上げ (株式・債券:0%⇒2%) ・2011年7月 IOF税率引き上げ (通貨デリバティブ:1%) 2.6 09 10 11 注)直近値は両図とも2012年1月。 12 13 09 10 11 12 13 出所)ブラジル中銀、CEICより当社経済調査部作成 先週23日に公表されたブラジルの1月国際収支では、経常赤字幅が前月の▲60.4 億ドルから▲70.9億ドルに拡大。財貿易収支が+38.1億ドルから▲12.9億ドルと大 幅な赤字に転じ、サービス収支赤字(▲36億ドル⇒▲34億ドル)や所得収支赤字 (▲64.4億ドル⇒▲25.7億ドル)の縮小幅を大きく上回りました(図1左)。 もともと1月の輸出(ドル建て)は例年減少する傾向がありますが、季節調整後 でも落ち込んでいます。特に、主力輸出品である鉄鉱石などの一次産品(2011年 総輸出の約5割を占める)は、世界経済の減速を背景に数量が落ち込んだだけでな く、昨年10月頃から価格も低下が続いており、輸出全体を下押ししています。世 界経済の緩やかな回復とともに、輸出の回復も緩慢に進むとみられる一方、消費 の底堅さなどを背景に、輸入額は大きく減少しないとみられることから、財貿易 収支は大きく改善しないと考えられます。基調的なサービス・所得収支の赤字も 続くため、2012年も経常赤字はやや悪化すると予想されます。 1月 2008年 7月 注)直近値は2012年2月24日。 1月 7月 2009年 1月 7月 2010年 1月 7月 2011年 1月 2012年 出所)ブラジル中銀、ブラジル財務省、Bloombergより当社経済調査部作成 一方、資本収支は、直接投資が58.2億ドルの流入超、株式投資が42.5億ドルと、 2010年10月以来の大幅な流入超となったため、国際収支(総合収支)は小幅な黒 字となりました(図1右)。世界的にリスク選好の流れが強まったことに加え、政 府が12月に株式投資への金融取引税率を2%から0%に引き下げたことも多額の投 資資金を引き付け、レアルの対ドル相場の堅調な上昇を支えたとみられます。投 資家心理が今後も大きく悪化しなければ、これらの投資フローが経常赤字をカ バーし、国際収支の黒字基調が当面続く可能性が高いと考えられます。 レアル相場が堅調に推移するなか(図2)、中央銀行は23日に先物市場でのレア ル売り・ドル買い為替介入を実施するなど、行き過ぎた通貨上昇に警戒を示しつ つある模様です。引き続き通貨上昇が続けば、次は政府が資本取引規制の強化に 乗り出す可能性が高まるとみられます。規制への警戒から、通貨の上昇ペースは 他新興国通貨に比べ徐々に鈍くなっていくと予想されます。(三木) 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 6 W 国際投信投資顧問/経済調査部 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 今週の主要経済指標と政治スケジュール 月 火 2/20 (日) 水 21 22 (米) 1月 貿易収支(通関ベース、 季調済) 12月:▲5,687億円 1月:▲6,128億円 ワシントン誕生日(祝日) (欧) EU財務相理事会(EC OFIN) (米) (米) 2年利付国債入札(350億ドル) (欧) (欧) ユーロ圏財務相会合(ユーログループ) (欧) (仏) 2月 INSEE景況感指数 1月:+92 2月:+92 (米) 先 週 木 (英) 金 23 1月 中古住宅販売(年率) 12月:438万件 1月:457万件 2月 製造業PMI(速報) 1月:48.8 2月:49.0 2月 サービス業PMI(速報) 1月:50.4 2月:49.4 5年利付国債入札(350億ドル) 24 (日) 20年利付国債入札(1兆1,000億円程度) (日) (独) 2月 ifo景況感指数 1月:108.3 2月:109.6 7年利付国債入札(290億ドル) (米) (米) (米) (独) 金融政策委員会議事録 (2月8・9日開催分) (英) 25 (他) 27 (米) 今 (独) 28 1月 中古住宅仮契約指数(前月比) 12月:▲3.5% 1月:(予)+1.0% ドイツ議会 ギリシャ向け第2次支援策承認予定 2年利付国債入札(2兆7,000億円程度) (日) (日) 1月 商業販売額(小売業、前年比) 12月:+2.5% 1月:(予)+0.4% 12月 S&P/ケース・シラー住宅価格指数 (20大都市圏、 前月比) 11月:▲0.7%、12月:(予)▲0.5% 1月 耐久財受注(前月比) 12月:+3.0% 1月:(予)▲1.0% 2月 消費者信頼感指数 (カンファレンス・ボード) 1月:61.1、2月:(予)63.0 2月 経済信頼感指数 1月:93.4 2月:(予)93.9 (米) (米) (米) 週 (米) (欧) フィンランド議会 ギリシャ向け第2次支援策承認予定 5 来 週 29 (日) (欧) 6 3/1 1月 鉱工業生産(速報、前月比) 12月:+3.8% 1月:(予)+1.8% 10-12月期 実質GDP (2次速報、前期比年率) (日) (日) (米) (米) (欧) (欧) (日) バーナンキFRB議長 半期金融政策報告 (下院金融サービス委員会) ECB 3年物無制限資金供給 1月 消費者物価 (確報、前年比) 12月:+2.7%、 1月:(予)+2.7% (米) 7 (日) 2012年度予算案 年度内自然成立のための衆院通過期限 (日) 1月 家計調査(実質消費支出、前年比) 12月:+0.5%、 1月:(予)▲0.1% 1月 完全失業率 12月:4.6%、 1月:(予)4.5% 1月 有効求人倍率 12月:0.71倍、 1月:(予)0.72倍 1月 消費者物価指数(除く生鮮、 前年比) 全国 12月:▲0.1%、1月:(予)▲0.2% 東京 1月:▲0.4%、2月:(予)+0.4% 2月 米供給管理協会(ISM) 製造業景気指数 1月:54.1、 2月:(予)54.5 2月 消費者物価 (速報、前年比) 1月:+2.7%、 2月:(予)+2.7% (日) 2月 シカゴ購買部協会景気指数 1月:60.2 2月:(予)61.8 ベージュブック (地区連銀経済報告) (米) (米) (欧) G20財務相・中銀総裁会議 (∼26日、メ キシコシティー) 2 10年利付国債入札(2兆2,000億円程度) 10-12月期 法人企業統計 (全産業、設備投資、前年比) 7-9月期:▲9.8% 10-12月期:(予)▲6.5% 7 - 9 月期: + 1 .8 %、1 0 - 1 2 月期: ( 予) + 2 .8 % (米) 1月 企業向けサービス価格指数 (前年比) 12月:+0.1%、 1月:▲0.2% 1月 新築住宅販売件数(年率) 12月:32.4万件 1月:32.1万件 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (確報) 1月:75.0、 2月:75.3 10-12月期 実質GDP(2次速報、前期比) 7-9月期:+0.6% 10-12月期:▲0.2% 10-12月期 実質GDP(2次速報、前期比) 7-9月期:+0.6% 10-12月期:▲0.2% 2月 新車登録台数 (軽自動車除く、 前年比) 1月:+40.7%、2月:(予)NA 1月 個人消費(名目、前月比) 12月:±0.0% 1月:(予)+0.4% 1月 建設支出(前月比) 12月:+1.5% 1月:(予)+1.0% 2月 新車販売台数(輸入車含む、年率) 1月:1413万台、2月:(予)1400万台 EU首脳会議(1∼2日) 8 (日) (日) (米) (欧) 9 (米) 1月 製造業受注 (日) 30年利付国債入札 (日) 1月 景気動向指数(速報) (日) 5年利付国債入札 (日) 2月 マネーストック (米) 2月 米供給管理協会(ISM) 非製造業景気指数 (日) 1月 現金給与総額(速報) (米) 1月 消費者信用残高 (日) 10-12月期 実質GDP(2次速報) (米) 1月 貿易収支 (欧) 10-12月期 ユーロ圏 実質GDP (2次速報) (米) 2月 ADP雇用統計 (日) 1月 国際収支 (米) 1月 卸売売上・在庫 (英) 英中銀 金融政策委員会 (∼8日) (日) 2月 貸出・資金吸収動向 (米) 2月 雇用統計 (欧) 欧州中央銀行(EC B)理事会 (日) 2月 景気ウォッチャー調査 (仏) 1月 鉱工業生産 (独) 1月 鉱工業生産 (英) 1月 鉱工業生産 (伊) 1月 鉱工業生産 注1) 赤字は日本、青字は米国、緑字はユーロ圏とEU全体、ただし(欧)はユーロ圏を指します。黒字はその他のイベントを表します。 注2)経済指標と政治スケジュールの内容及び日程は変更となる可能性があります。 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 出所)Bloomberg等、各種資料より当社経済調査部作成 KOKUSAI Asset Management Co., Ltd. 7 W 投資環境ウィークリー 2012年2月27日号 国際投信投資顧問/経済調査部 本資料に関してご留意頂きたい事項 本資料は投資環境等に関する情報提供を目的として、国際投信投資顧問が作成したものです。本資料は投資勧誘を目的とするものではありません。 なお、以下の点にもご留意ください。 ○ 本資料中のグラフ・数値等はあくまでも過去のデータであり、将来の経済、市況、その他の投資環境に係る動向等を保証するものではありません。 ○ 本資料の内容は作成基準日のものであり、将来予告なく変更されることがあります。 ○ 本資料は信頼できると判断した情報等をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性等を保証するものではありません。 ○ 本資料に示す意見等は、特に断りのない限り本資料作成日現在の国際投信投資顧問経済調査部の見解です。 また、国際投信投資顧問が設定・運用する各ファンドにおける投資判断がこれらの見解に基づくものとは限りません。 本資料で使用している指数について 「日経平均株価」に関する著作権、知的所有権、その他一切の権利は日本経済新聞社に帰属します。本件商品を日本経済新聞社および日本経済新聞デ ジタルメディアが保証するものではありません。また、日本経済新聞社および日本経済新聞デジタルメディアは日経平均株価の内容を変える権利およ び公表を停止する権利を有しています。 「日経ジャスダック平均株価」に関する著作権、知的所有権、その他一切の権利は日本経済新聞社に帰属します。本件商品を日本経済新聞社および日 本経済新聞デジタルメディアが保証するものではありません。また、日本経済新聞社は、日経ジャスダック平均株価の内容を変える権利および公表を 停止する権利を有しています。 TOPIX(東証株価指数)は株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます)の知的財産であり、当該指数の算出、数値の公表、利用などTOPIX に関する権利は東証が所有しています。 「ダウ・ジョーンズ」および「ザ・ダウ」はダウ・ジョーンズ社の登録商標です。ダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial AverageSM)に係る版権、およびこれに係る全ての知的所有権は、ダウ・ジョーンズ社に帰属します。尚、本資料では「ダウ・ジョーンズ工業株価 平均」を「NYダウ」と表記しています。 巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。 KOKUSAI 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