9-1 1 下剤の基礎知識 介護の知識 - 日本のケアをよくしよう!全国高齢

9-1 下剤の基礎知識
わたしたちのやりたいケア 介護の知識 50
介護の知識
下剤の基礎知識
第 8 回「便秘の知識」の冒頭で特別養護老人ホームの入居者の中には、
4〜5日排泄がない人もたくさんみえ、その多くが下剤を常用しないと排
泄ができない下剤依存症と言われる状態になっていますとご紹介しまし
た。
下剤の問題点は、便を出すという作用以外に便意をなくさせてしまった
り、腹部の痛み、不快感で、認知症の周辺症状が悪化させてしまう可能性
があることです。
1)下剤の基礎知識
下剤の知識は、以前ブログで紹介されました美瑛慈光園の阿部 義生
看護師の『下剤の基礎知識』を基本にさせていただきました。
Ⅰ 下剤とは
下剤とは、便秘に対して用いられる薬剤です。
便そのものをやわらかくするように作用し、肛門からの排泄を容易にす
るものを『緩下剤』、腸管や腸壁を刺激し、腸の蠕動(せんどう)を促
すものを『刺激性下剤』として大別します。
その他の分類については、他の下剤に比べて大量の薬液や水分を加え
ることによる腸管への物理的刺激や、便を融解させる作用により、排便
を促す種類の下剤が含まれます。
Ⅱ 代表的な下剤の種類
種類
薬剤名
商品名
カマ カマG マグラックス
酸化マグネシウム
重質酸化マグネシウム
水酸化マグネシウム
ミルマグ
硫酸マグネシウム
硫酸マグネシウム
クエン酸マグネシウム
マグコロール
膨張性下剤
カルメロースナトリウム
バルコーゼ顆粒
小腸刺激性下剤
ヒマシ油
ヒマシ油(各社よりあり)
ビサコジル
テレミンソフト(座剤)
ピコスルファートナトリウム
ラキソベロン ラキソセリン
センナエキス
アローゼン
塩類下剤
緩下剤
刺激性
下剤
その他
大腸刺激性下剤
センノシド
プルゼニド
センノサイド
合剤(複数の薬剤)
新レシカルボン(座剤)
合剤(薬剤+多量の水)
ニフレック(洗腸に用いる)
グリセリン
グリセリン浣腸
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Ⅲ 各下剤の特徴(施設でよく使われる 2 種類)
A)塩類下剤(緩下剤)
緩下剤とは、慢性便秘に対する長期的治療薬に適した下剤です。
頻繁な投与量の変更の必要がなく、最も投与量対効果が安定している
薬剤である反面、急激な効果を得られにくく、排便に対する精神的依
存が強い場合(認知症高齢者に多い)は、使いづらいことがあります。
通常の投与量では電解質異常は生じにくいですが、腎疾患や心疾患
の方への長期投与は高マグネシウム血症の恐れがあります。
B)膨張性下剤(緩下剤)
高繊維食による自然な排便促進作用を薬理的に行うような薬剤です。
安全性が高く、軽度の慢性便秘に対しては理想的な薬剤といえます
が、散剤が多量で飲みづらいこと、苦労して内服した割に十分な効果が
得られないことが多く、近年ではあまり用いられていません。
高齢者ケア施設では、この種の下剤に代わり、栄養士との連携のもと、
日常の食事を高繊維食へシフトしていくことで、人間本来の排泄パター
ンを取り戻す取り組みがみられるようになってきています。
C)大腸刺激性下剤(刺激性下剤)
散剤、錠剤ともコンパクトで服用しやすいのが特徴です。
便秘の程度を問わず、効果が速やかに出現することから、多くの便秘
患者に好まれ、また医師からもよく処方される下剤です。
しかし、下剤の中では最も強い習慣性を有し、薬剤耐性(薬剤をいつ
もと同じ分量投与しても、効果を得られにくくなり、常用量が増加する
こと)を生じやすく、濫用されやすい傾向にあります。
過剰投与による腸管への刺激により、便からの水分再吸収に異常が生
じ、下痢を引き起こすことで、電解質異常や脱水などの副作用が生じや
すくなります。
高齢者では、先述の副作用による腸内の水分の過不足による便の腸内
滞在時間の異常から、正常腸内細菌業(乳酸菌のような善玉菌と考えて
ください)のバランスが狂い、便が悪臭を伴ったり、強い刺激臭を発す
ることもあります。
作用が急激で副作用もみられますが、適切な用量と用法を厳守して使
用すれば、その有用性は極めて高い薬剤です。
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