日本シノプシス合同会社

Success STORIES
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日本シノプシス合同会社
日本シノプシス合同会社
マルチコアARMを搭載した大規模 SoCを
EDAソリューションの活用によって
短期間・高効率に開発
OA 機器や光学機器製造メーカーの大手であるリコーは、次世代 MFP(Multi-function Printer:複合機)などに搭載される SoC の開発
を図られることが多い。最新のインターフェイ
戻りの発生要因を初期につぶすことが可能とな
ス技術には、それらの機能をあらかじめブロッ
り、結果として、5 ~ 6 ヶ月もの工期短縮を実
ク化しておくことで迅速に対応している。
現できたとのことだ(図 2)。その後の「RTL 検
証」までの自動化は今後の課題だという。
木村氏の部署では、ソフトウェア開発部門と
にシノプシスのソリューションを活用し、大きな成果をあげている。ここでは、近年の MFP のトレンドをはじめ、大規模・複雑化
ハードウェア開発部門の間に立って、システム
新しいプラットフォームを活用して開発し
が著しいSoC開発環境へ向けた新たなプラットフォームの構築、それに伴う各種ツール群の導入、さらにはEDAコンサルティング・サー
全体の開発プラットフォームを構築している。
ているのは、複数の ARM コアを搭載した次世
今回は、次世代の MFP に向けた SoC 開発の
代の MFP に向けた SoC である。「プリンタやス
ビスのメリットや効果などを聞いた。
キャナ、ユーザインタフェース、ネットワーク
ためのプラットフォームを構築した(図 1)。
や I/O などの複数の機能を複数の ARM コアで処
①アーキテクチャ検討、②ソフトウェアの早
期開発、③ RTL 検証サイクルを上手く回す、こ
株式会社リコー
れらハードウェアとソフトウェアの開発効率を
ワーク・ソリューション開発本部
第六開発室
室長
向上させることを目的とするものだ。
「アーキテクチャ検討、ソフトウェア早期開発、
木村 貞弘 氏
RTL検証は、それぞれ部門が分かれているうえ、
システムの仕様を紙ベースでやり取りをしている
コンへのニーズと同じである。モードの方式に
ことから解釈の違いなどがありました。新しいプ
もよるが、現状 7 ~ 8 秒程度で動作できるよう
ラットフォームは、実際に実行可能なシステムの
になるものが多い。
形で仕様を部門間で共有できるため、こうした壁
がかなり低くなったと思います」
(守田氏)
。
システム全体の
実際には、「アーキテクチャ検討」と「ソフ
開発プラットフォームを構築
トウェア早期開発」の間で期待した成果があっ
株式会社リコー
た。試作機の完成を待ってからソフトウェアの
マルチタスクでの
ネットワーク経由で送られてくるパソコンから
MFP は、事業所の規模によってニーズが異な
高度で高速な制御が必要に
の出力を印刷やストックするなど、マルチタス
る。規模が大きいと、すでに設置してある社内
クでの高度で高速な制御が必要となっている。
ネットワークのひとつのノードとして導入され
一昔前まで、オフィスにはコピー機やファク
「MFP のトレンドは、高速ネットワークや無
ることがあり、それらの提案も求められる。一
シミリ、プリンタなど複数のシステムが混在し
線 LAN、USB3.0 への対応などパソコンの進化の
方、中小規模の事業所だと、スタンドアローン
ていた。それが、近年はMFP(複合機)がそれら
トレンドに合致しています」とリコー木村氏は
やネットワークにつなぐにしても比較的規模の
に置き換わりつつある。MFP とは、コピー、ファ
語る。
小さなものとなることが多い。「ネットワーク
クシミリ、プリンタ、スキャナなどの機能を
さらに、ユーザインタフェースや保守性の高
1台で実現するシステムだ。給紙などの高度なメ
さもポイントだ。「スマートフォンのような操
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もあります」
(リコー守田氏)という。
作スタイルへの要望も高く、またトナー切れな
省エネ性能の必要性も高いが、木村氏は「省
り、最近ではネットワークにも対応したり、ハー
どを事前に予測してサービスマンを呼ぶような
エネのためのスタンバイ・モードからの復帰時
ARM PARTNERS SUCCESS
機能もあります」
(リコー小澤氏)とのことだ。
検証を行うという従来からの開発手法と比べ
境は、プラットフォーム化することで効率向上
て、ソフトウェア開発の早期開始と致命的な手
1 アーキテクチャ検討
Virtualizer
API
間がポイントとなります」という。これもパソ
GPU
? Driver
ESLツール
(Virtualizer)
VCS
小澤 賢一 氏
テストアプリ
ARM
SDK上でのテスト
OS
Memory IP
論理シミュレータ
( VCS)
3 RTL 検証
Virtualizer
ARM
Timer
Memory
Controller
PHY
論理エミュレータ
( ZeBu)
2 ソフトウェア早期開発
DMAC
環境の構築も含めてご提案させていただくこと
カニカル制御が必要なメカトロニクス装置であ
ドディスクを搭載しスキャンした画像の保存や、
MFP に搭載されるような大規模 SoC の開発環
ワーク・ソリューション開発本部
第六開発室 開発一グループ
GPU
ZeBu
DDR Memory
VCS
Virtualizer
Virtualizer
ARM
Virtualizer 解析機能の活用
?
?
ARM
GPU
GPU
ZeBu
図 1:リコーで構築した SoC 開発環境。シノプシスのソリューションを活用し、アーキテクチャ検討、
ソフトウェア早期開発、RTL 検証という 3 つのサイクルを効率良く回すことを目指している。
ZeBu
RTL検証
問題を切り分けるため、あらゆる解析手段を駆使する
図 2:ソフトウェアの早期開発を実現。従来、試作機の完成を待ってから事実上スタートしていた
ソフトウェア検証を、新しい環境ではハードウェアの完成前からスタートすることができ、
4 ~ 5 カ月もの前倒しが可能となった。
ARM PARTNERS SUCCESS
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株式会社リコー
ワーク・ソリューション開発本部
第六開発室 開発一グループ
日本シノプシス合同会社
ることで、RTL より抽象度の高いレベルの記述
ウェアの早期検証、ZeBu 単体で RTL 検証とい
ができ、より上流での設計を早期に検証する
う使い方を想定していた。VCS が加わったのは、
ことが可能になる。リコーでは、Virtualizer と
SystemC へ移行できないモデルでも RTL の資産
ZeBu を組み合わせることで、ESL と RTL の高速
を有効活用することで、VCS と Virtualizer を連
コ・エミュレーション検証を実現した。
携した高速な検証環境を実現できるからだ。
VCS は、SystemC の TLM と HDL の RTL を 同 時
今回のリコーの事例は革新的といえる。
「ツー
に実行できる論理シミュレータである。
「VCS
ルを導入されるメーカー様は、それぞれ設計の
は、業界トップクラスの論理シミュレータで
やり方が異なっており、特に立ち上げ時にさま
す。大きな特長として、SystemC と RTL のモデ
ざまな問題が発生しやすいものです。3つのツー
ルを同時にシングルカーネルで動作させること
ルを連携されたリコー様は、かなり先進的な使
ができるため、高速なシミュレーションが可能
日本シノプシス合同会社
なことです。SystemC のモデルが無くても RTL
シノプシスプロフェッショナルサービス
スタッフコンサルタント
守田 直也 氏
のモデルがあれば、RTL を変更することなく VCS
理させるものです。OS は、コアごとに異なるも
ションが実現可能になります」
(シノプシス中氏)
。
この機能の有効性はリコーでも認めており、
のを搭載しています」
(木村氏)。
株式会社リコー
日本シノプシス合同会社
い方をされています」
(シノプシス中野氏)という。
青木 賢 氏
てしまうものですが、リコー様はそこには留ま
技術本部
ベリフィケーショングループ
スタッフコーポレートアプリケーションエンジニア
らず、もう一歩先を目指されています。3 つの
松本 光寛 氏
ミュレータの ZeBu ならばはるかに短い時間で
高い評価を得ている
ツールをつなぐのは珍しいのですが、リコー様
検証可能です。もうひとつは、実際の IP を使っ
プロフェッショナル・サービス
はそれにチャレンジし成果もあげており、この
今回の事例で活用されたツールはどれも先
点は非常に進んでいるところだと感じていま
進的なものばかりだ。「若いメンバーでプロ
す」
(シノプシス松本氏)とのことだ。
ジェクトを進められました。今後も若い力で
中 勇二 氏
と Virtualizer の連携により高速なシミュレー
ワーク・ソリューション開発本部
第六開発室 開発一グループ
「多くのお客様はある程度の成果で割り切っ
守田氏は「これがないと精度や機能などすべ
て、OS やデバイスドライバなどのソフトウェア
エコシステムの充実が
てが中途半端になり満足できないものになる」、
の検証ができることです。検証の SystemC モデ
リコーでは、シノプシスが提供する EDA コン
ARMコア採用のメリット
木村氏も「マストのツール」だと言い切った。
ルには間違いがある恐れもあり、実績のある IP
サルティング・サービスである「シノプシス・
を使用することでそういったミスを防ぐことが
プロフェッショナル・サービス」も高く評価し
今後も若い力でシステム設計検証の
きたいと思います」
(守田氏)。また、ZeBu を開
高速かつコンパクトな
できます。また、SystemC モデル作成の工数を
ている。「リコー様のような新しいチャレンジ
技術を伸ばしていきたい
発・販売していた EVE 社は 2012 年 10 月にシノ
論理エミュレータ
大幅に削減できました」という。
をされるときには、ツール同士の接続が重要と
ARM コアの採用メリットとして、ツールのエ
コシステムの充実が挙げられた。特に ARM ソ
リューションに強みをもつシノプシスのツール
システムレベルの設計検証技術を伸ばしてい
プシスに買収された。そのことについて守田
「いままでは RTL でシミュレーションを行っ
なりますが、お客様だけでは見切れないところ
MFP のような大規模なシステムでは、プラッ
氏は、「今後のシステムの発展を見据え、従来
チェーンを使えば統合環境を構築しやすいとい
ZeBu は、高速性とコンパクト性に特長をも
て い ま し た が、 今 回 の プ ロ ジ ェ ク ト か ら は
もあります。そこでお客様と密着して問題を解
トフォームの重要性がより明確になる。個々の
からのシノプシスのツールとの連携をより深
う。現在進めているプロジェクトで活用してい
つ論理エミュレータである。ハードウェアとソ
SystemC のモデルやすでに検証済みの RTL モデ
決したり、使い方をご提案しています。今回の
エンジニアも自分の担当だけではなく、広い視
めて欲しい」と期待を語った。
るプラットフォームでは、シノプシスの仮想プ
フトウェアに加え、さらにユーザインタフェー
ルを組み合わせて、要求仕様を満たしているか
プロジェクトでは、ほぼ常駐状態でサポートさ
野を持つべきだ。小澤氏も「システム全体から
木村氏は、
「新しいことをやっていくには、良
ロトタイプ開発/実行用 ESL ツール「Virtualizer
スまでも統合した仮想プロトタイピング環境を
を見ています」と、ハードウェアの性能検証を
せていただきました」
(中氏)。
俯瞰していくことで、さらに良い製品ができる
いパートナーとのつながりが大切となります。
構築できる。
担当しているリコー青木氏は語る。
と思います。常に挑戦していく姿勢が最も大切
今回のような成果をあげられたのは、シノプシ
だと思います」という。
スや EVE とのパートナーシップがあったおかげ
(図 3)」と論理シミュレータの「VCS」、論理エ
ミュレータ「ZeBu(図 4)」を連携させた。
V i r t u a l i z e r は、S y s t e m C ベ ー ス の T L M
(Transaction Level Model)を作成でき、作成
した TLM を用いた仮想プロトタイプの開発/
実 行 が で き る ESL ツ ー ル で あ る。TLM を 用 い
守 田 氏 は、ZeBu の 導 入 効 果 を 2 つ あ げ た。
「ひとつは、ハードウェア検証のスピードが
圧倒的に速いことです。シミュレーションで
は、用紙 1 枚分をコピーするユースケースの検
証でさえ 1 週間もかかることがありますが、エ
ZeBuは、ザイリンクス社のFPGA であるVirtex
当初リコーでは、今回のような Virtualizer、
VCS、ZeBu と い う 組 み 合 わ せ は、 考 え て い
さらに「いままでのやり方を捨て、より先進
です」という。それを受けて中野氏は、
「我々
規模に応じて、ZeBu-Server やZeBu-Blade2 など
的なツールや手法を取り入れ、チャレンジして
EDAベンダーから見るとお客様は最高のパート
がラインアップされている。リコーでは、ZeBu-
いくことで、より魅力的な製品を短期間で開発
ナーです。リコー様のような先進的な使い方を
Server の 5-slot ユニット版を導入した。
できるようになります」と青木氏は、チャレン
していただき、それをサポートすることで我々
ジの大切さを語る。
のツール自体もより洗練されていきます」とEDA
を搭載した論理エミュレータである。デザイン
な か っ た と い う。Virtualizer + ZeBu で ソ フ ト
「いま日本のメーカーが全体的に停滞している
ベンダーから見たパートナーシップを語った。
中、コアとなる技術を持つことがポイントとな
シノプシスの EDA ソリューションがリコーの
ります。そのためにはハードウェアの差別化が
次世代 SoC 開発に広く深く貢献していることが
基本となります。EDA ツールを活用してコアとな
強く感じられた。
る技術を早期に開発し、製品化していくことに
チャレンジしていただきたい。そのためのサポー
トはシノプシスにお任せください」
(中氏)という。
日本シノプシス合同会社
技術本部
システムレベルソリューションズ
FAE マネージャー
図 3:Virtualizer における Cortex-A9 バーチャルプラットフォーム。
Virtualizer ではプラットフォーム構成や解析結果を直感的に表示。
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ARM PARTNERS SUCCESS
図 4:最新版の ZeBu の外観。左から ZeBu-Blade2、ZeBu-Server(5-slot ユニット版)、
ZeBu-Server(2-slot ユニット版)。リコーでは、ZeBu-Server の 5-slot ユニット版を導入した。
中野 淳二 氏
さらに松本氏は、「お客様がすでにお持ちの
設計検証の資産やノウハウ、スキルや時間など
多くのポテンシャルを活かせるようなソリュー
お問い合わせ先
日本シノプシス合同会社
フィールド・マーケティング・グループ
TEL:03-6746-3940 FAX:03-6746-3941
http://www.synopsys.co.jp
ションを今後も提供していきます」と続けた。
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