タイにおける著作権侵害対策ハンドブック(平成24年3月、文化庁)

タイにおける
著作権侵害対策
ハンドブック
平 成 24 年 3 月
文化庁
【本ハンドブックについて】
本ハンドブックは、情報提供のみを目的としております。権利執行等に関する最終決
定 は 、 ご 自 身 の 判 断 で な さ る よ う に お 願 い し ま す 。 掲 載 し た 情 報 は 、 平 成 23 年 12 月
時 点 で 把 握 し て い る も の で あ り 、そ の 後 の 法 律 改 正 等 に よ っ て 変 わ る 場 合 が あ り ま す 。
また、一般的な情報・解釈がこの通りであることを保証するものではありません。
第Ⅲ章
インターネット上の著作権侵害に関するインターネットサービスプロ
バイダ等に対する権利行使
本 章 で は 、タ イ に お け る イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に つ い て 、侵 害 の 現 状 、
侵 害 に 対 す る 対 処 方 法 、侵 害 抑 止 に 向 け て 現 在 検 討 さ れ て い る 法 律 改 正 等 の 取 組
み に つ い て 紹 介 し ま す 。な か で も 、実 務 上 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ
に 対 し て 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 を 要 請 す る こ と が 一 般 的 で あ る こ と か ら 、こ の
点を中心に解説させて頂きます。
1.
タイにおけるインターネット上の著作権侵害の現状
タイにおけるインターネット利用状況とインターネット上の著作権侵害の現状、
また、タイ国民の著作権に対する意識について教えてください。
イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 者 人 口 の 増 大 は 世 界 的 な 現 象 で す が 、タ イ も そ の 例 外 で は
な く 、2009 年 末 時 点 に お い て 、人 口 の 約 30% に 当 た る 1830 万 人 も の 人 々 が イ ン
タ ー ネ ッ ト を 利 用 し て い ま す 1 0 。同 国 に は 、20 以 上 の イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ
ロ バ イ ダ が 存 在 し て い ま す 。イ ン タ ー ネ ッ ト の ユ ー ザ ー は 、4 つ の チ ャ ネ ル( ダ
イ ヤ ル ア ッ プ・ハ イ ス ピ ー ド / ブ ロ ー ド バ ン ド・ADSL・3G)を 通 し て イ ン タ ー ネ
ットに接続しています。インターネットを利用した市場は急速に拡大しており、
例 え ば ゲ ー ム 市 場 全 体 の 80% 以 上 を オ ン ラ イ ン ゲ ー ム が 占 め る に 至 っ て い る ほ
どです。
以 上 の よ う な イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 の 急 速 な 拡 大 に 応 じ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 に
お け る 著 作 権 侵 害 行 為 が 急 増 し て い ま す 。イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で 利 用 で き る 音 楽 コ
ン テ ン ツ の 約 90% は 違 法 で あ る と い う 統 計 も あ り ま す 1 1 。タ イ の 多 く の 消 費 者 は 、
ハ ー ド コ ピ ー と し て の 著 作 物 の 購 入 を 行 う こ と な く 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で コ ン テ
ン ツ を 違 法 に ダ ウ ン ロ ー ド し て 利 用 し て い ま す 。こ の よ う な 状 況 の 中 、米 国 通 商
代 表 部 は 、タ イ を「 優 先 監 視 国 」に 位 置 付 け て 監 視 を 強 め て お り 、国 際 知 的 財 産
権連盟も、タイ政府に対して、適切な対策をとるよう要求してきています。
10
タ イ 国 立 電 子 コ ン ピ ュ ー タ 技 術 セ ン タ ー ( NECTEC) の 統 計 よ り
http://internet.nectec.or.th/webstats/internetuser.iir?Sec=internetuser
11
国 際 知 的 財 産 権 連 盟 ( IIPA)『 2011 年 版 ス ペ シ ャ ル 301 条 報 告 書 』 116 頁 。 2011 年 11 月 30 日 に 、 タ
イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 ( TECA)を 訪 問 し 、そ こ で 彼 ら が 独 自 に 作 成 し た 資 料 に も
その旨の記載あり。
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(1)
インターネット上の著作権侵害によって影響を受ける産業
タ イ に お け る イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 は 、現 在 、様 々 な 産 業 分 野 に お い
て 、あ ら ゆ る タ イ プ の コ ン テ ン ツ に つ い て 起 こ っ て い る た め 、影 響 を 受 け な い 産
業 は 存 在 し な い と い っ て も 過 言 で は あ り ま せ ん 。例 え ば 、音 楽 や 映 画 と い っ た 著
作 権 侵 害 が 日 々 発 生 す る 典 型 的 分 野 だ け で な く 、着 メ ロ・ゲ ー ム の 分 野 で の 著 作
権 侵 害 や 、ス キ ャ ン を 用 い て の 書 籍 分 野 に お い て も 著 作 権 侵 害 が 発 生 し て い ま す 。
ち な み に 、 音 楽 の 分 野 で は 、 オ ン ラ イ ン 上 で の 著 作 権 侵 害 が 市 場 の 90% を 構 成
し て お り 、違 法 な 音 楽 の ダ ウ ン ロ ー ド サ ー ビ ス を 専 ら 提 供 し て い る ウ ェ ブ サ イ ト
が タ イ 国 内 で 4000 以 上 存 在 す る と い わ れ て い ま す 1 2 。
(2)
インターネット上の著作権侵害の態様
現 在 、タ イ に お い て は 、以 下 の 各 手 段 を 利 用 し た 侵 害 事 案 が 多 く 発 生 し て い ま
す。
・ P2P
・ディープリンクサイト
これらは、いずれも映画をインターネット上で広く配信する手段として
利用されています。
・ビットトレントサイト/トラッカーサイト
これらは、いずれも映画やテレビ番組等のコンテンツの配信を促進する
た め に 利 用 さ れ て い ま す 。タ イ に は 、100 以 上 の ビ ッ ト ト レ ン ト サ イ ト が あ
り 、ビ ュ ー ワ ー ユ ー ザ ー と メ ン バ ー ユ ー ザ ー( 200~ 3,000THB の メ ン バ ー シ
ッ プ 料 金 を 支 払 っ て 多 く の コ ン テ ン ツ を ダ ウ ン ロ ー ド で き る ユ ー ザ ー )の 2
種類のユーザーが存在します。
・電子掲示板
著作権侵害物のアップロード・配信に利用されております。広告によっ
て支援を受けている電子掲示板も存在します。
・フリーソーシャルネットワーキングサイト
・ブログ
・サイバー・ロッカー
12
国 際 知 的 財 産 権 連 盟 ( IIPA)『 2011 年 版 ス ペ シ ャ ル 301 条 報 告 書 』 116 頁 。 同 『 2010 年 版 ス ペ シ ャ ル
301 条 報 告 書 』 324 頁 。
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・ラ イ セ ン ス を 受 け て い な い ゲ ー ム ル ー ム や カ フ ェ を 利 用 し た 著 作 権 侵 害 ゲ ー
ムソフトウェアの配信
(3)
著作権制度へのタイ国民の意識
タ イ の 消 費 者 の 多 く は 、著 作 権 制 度 が 公 衆 一 般 に 関 係 す る と の 認 識 を 未 だ 十 分
に 持 っ て い ま せ ん 。そ の た め 、タ イ に お い て は 、こ れ ま で に 以 下 に 示 す 公 私 の 団
体による教育・啓発活動が行われています。
(教育・啓発活動を行ってきた団体の例)
・商務省
・ 知 的 財 産 庁 ( DIP)
・ タ イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 ( TECA)
・バンコク大学
・王立タイ警察
・ 米 国 映 画 協 会 ( MPAA)
・バンコクファッション協会
2.
インターネット上の著作権侵害に対応するための法制度
インターネット上の著作権侵害に関するタイの現行法制度はどのようなもので
す か 。ま た 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 す る 法 規 制 の 現 状 を 教 え て
ください。
(1)
インターネット上の著作権侵害に対する法規制の現状
タ イ で は 、現 時 点 に お い て 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に 対 処 す る た め の
特 別 法 は 制 定 さ れ て い ま せ ん 。タ イ に お い て は 、日 本 に お け る「 特 定 電 気 通 信 役
務 提 供 者 の 損 害 賠 償 責 任 の 制 限 及 び 発 信 者 情 報 の 開 示 に 関 す る 法 律 」( プ ロ バ イ
ダ 責 任 制 限 法 )に 対 応 す る 法 律 が あ り ま せ ん 。し た が っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の
著 作 物 利 用 及 び 著 作 権 侵 害 に 対 し て は 、通 常 の 著 作 物 と 同 様 に 、著 作 権 法 に よ る
規 制 が 適 用 さ れ ま す 。具 体 的 に は 、著 作 財 産 権 に よ る 規 制( 複 製 権・上 映 権・演
奏 権 ・ 公 衆 送 信 権 ・ 送 信 可 能 化 権 ・ 展 示 権 ・ 翻 案 権 等 )、 著 作 者 人 格 権 に よ る 規
制(公表権・氏名表示権・同一性保持権等)がなされます。
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(2)
インターネットサービスプロバイダに対する法規制の現状
著作権侵害物がインターネットサービスプロバイダの管理するサーバー上に
複 製・ア ッ プ ロ ー ド さ れ た 場 合 に は 、当 該 複 製・ア ッ プ ロ ー ド を 行 っ た 個 人 が 著
作 権 侵 害 の 主 体 と な り ま す 。他 方 で 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、法
的 責 任 を 負 う も の と は さ れ て お ら ず 、著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 や 発 信 者 情 報 の 開
示 を 義 務 付 け ら れ る こ と も あ り ま せ ん 。こ の こ と は 、P2P の よ う な フ ァ イ ル 交 換
ソ フ ト の 場 合 で あ っ て も 、ク ラ ウ ド コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ の 場 合 で あ っ て も 異 な る
ところはありません。
(3)
現状の法制度への評価
現 状 の 法 制 度 は 、本 章「 1 .タ イ に お け る イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 の 現
状 」で み た よ う な イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に 関 す る タ イ の 現 状 に 鑑 み る と
十 分 な も の で あ る と は い え ま せ ん 。こ の よ う に 、法 律 が 未 整 備 な た め に 、タ イ に
おけるインターネット上の著作権侵害対策は必ずしも十分なものとはいえませ
ん が 、全 く 手 立 て が な い わ け で は な く 、業 界 団 体 に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ ト 削 除 の
働きかけや、著作権法に基づく警察による強制捜査が行われることもあります。
詳細は、本章「3.著作権侵害に対する対処方法」にて述べます。
(4)
著作権関連条約への加入状況
タ イ は 、 WIPO 著 作 権 条 約 ( WCT) 及 び WIPO 実 演 ・ レ コ ー ド 条 約 ( WPPT) の い ず
れ に も 加 入 し て い ま せ ん 。し か し な が ら 、現 在 、両 条 約 へ の 加 盟 に 向 け た 法 改 正
が検討されています。
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3.
著作権侵害に対する対処方法
タ イ に お い て 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 の 被 害 を 受 け た 場 合 、同 国 の 現 行
法制度下において、どのような対処を行うことができますか。
イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 の 被 害 を 受 け た 場 合 、タ イ に お い て は 、必 ず し
も 法 的 基 礎 が あ る わ け で は あ り ま せ ん が 、① 公 的 団 体( 王 立 タ イ 警 察 の テ ク ノ ロ
ジ ー 犯 罪 取 締 部 ( TCSD) 及 び 経 済 犯 罪 取 締 部 ( ECD) を 通 じ た 刑 事 責 任 追 及 、 ②
私 的 団 体 ( 例 と し て タ イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 ( TECA)) を
介してのインターネットサービスプロバイダに対する著作権侵害サイト削除の
要 求( ① ② に つ い て は 本 項「 3 .著 作 権 侵 害 に 対 す る 対 処 方 法 」及 び「 4 .イ ン
タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ ト 削 除 」 参 照 )、 ③ 著 作 権
者自らによるインターネットサービスプロバイダに対する著作権侵害サイト削
除 の 要 求( ③ に つ い て は「 5 .イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 す る 削 除
要 求 の 手 続 の 流 れ 」参 照 )を 行 う こ と が 対 処 方 法 と し て 考 え ら れ ま す 。こ れ ら の
対 処 方 法 は 択 一 的 で は な く 、著 作 権 者 と し て は 、被 害 を 受 け た 場 合 、上 記 ① ~ ③
の各方法を併せて活用することによって著作権侵害の阻止を行うべきといえま
す ( 次 の 図 は 、 対 処 フ ロ ー で す )。
【対処フロー】
公的団体を通じた取締
・テクノロジー犯罪取締部(TCSD)
・経済犯罪取締部(ECD)
による強制捜査
インターネット上の
著作権侵害の発生
私的団体を介しての取締
インターネットサービスプロバイダへのサイト削除要求
著作権者自らによる取締
インターネットサービスプロバイダへの削除要求
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(1)
民事責任の追及
現 行 法 制 度 下 に お い て は 、著 作 権 侵 害 者 自 身 に 対 す る 民 事 責 任 追 及 が 可 能 で す 。
つ ま り 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害( 複 製 及 び ア ッ プ ロ ー ド )を 行 っ た 者 や
ウ ェ ブ マ ス タ ー( ウ ェ ブ サ イ ト 製 作 等 の 統 括 責 任 者 )を 特 定 す る こ と が で き 、か
つ 、こ れ ら の 者 が タ イ 国 内 に 所 在 す る 場 合 に は 、著 作 権 者 は 、第 Ⅱ 章 で 説 明 さ れ
た 著 作 権 侵 害 訴 訟 等 の 対 応 策 を 講 じ る こ と に よ り 、こ れ ら の 者 に 対 し て 責 任 追 求
をすることができます。
知 的 財 産・国 際 貿 易 裁 判 所( IPIT)に 対 す る 民 事 訴 訟 を 提 起 す る 場 合 の 管 轄 及
び準拠法に関する考え方を以下に示しておきます。
ま ず 、タ イ を 本 拠 と す る 企 業 に よ っ て 管 理 運 営 さ れ て い る ウ ェ ブ サ イ ト が タ イ
に お い て 閲 覧 可 能 な 状 態 に あ る と き に は 、著 作 物 は 、タ イ に お い て 発 行 さ れ た も
の と 考 え ら れ ま す 。こ の と き は 、知 的 財 産・国 際 貿 易 裁 判 所( IPIT)は 、著 作 権
侵 害 に 対 し て 責 任 の あ る タ イ 企 業 に 対 し 、タ イ 著 作 権 法 を 適 用 す る こ と に な り ま
す。
次 に 、タ イ を 本 拠 と す る 企 業 に よ っ て 管 理 運 営 さ れ て い る ウ ェ ブ サ イ ト が 何 ら
か の 事 情 で タ イ に お い て は 閲 覧 で き な い 場 合 で も 、当 該 ウ ェ ブ サ イ ト が タ イ を 本
拠 と す る イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ り 設 営 さ れ て い る 場 合 に は 、当
該 著 作 権 侵 害 訴 訟 に お い て 知 的 財 産・国 際 貿 易 裁 判 所( IPIT)は 裁 判 管 轄 権 を 肯
定するとともに、タイ著作権法を適用することになると思われます。
ま た 、タ イ を 本 拠 と す る 企 業 に よ っ て 管 理 運 営 さ れ て い る ウ ェ ブ サ イ ト が タ イ
に お い て 閲 覧 で き ず 、か つ 、当 該 ウ ェ ブ サ イ ト が タ イ を 本 拠 と す る イ ン タ ー ネ ッ
トサービスプロバイダによって運営されているわけでもない場合には、知的財
産・国 際 貿 易 裁 判 所( IPIT)は 裁 判 管 轄 権 を 肯 定 す る と 思 わ れ ま す が 、適 用 法 に
ついては著作物が発行された国又はインターネットサービスプロバイダが存在
する国の法律を適用することになると思われます。
な お 、現 在 の と こ ろ 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に つ い て の 準 拠 法 や 裁 判
管轄権について定めた特別法はなく、判例もありません。
以 上 が 民 事 責 任 の 追 及 に 関 す る 考 え 方 で す が 、現 実 に は 侵 害 者 の 特 定 は 困 難 で
あ る こ と が 多 い こ と か ら 、上 記 対 応 策 を 実 効 的 に 講 じ る こ と は 必 ず し も 容 易 で は
ありません。
(2)
刑事責任の追及-公的団体への強制捜査の要請
タイには、インターネット上での著作権侵害への対処に関連する組織として、
- 43 -
王 立 タ イ 警 察 の テ ク ノ ロ ジ ー 犯 罪 取 締 部( TCSD)及 び 経 済 犯 罪 取 締 部 (ECD)が あ
り ま す 。こ の 点 に つ き 、著 作 権 侵 害 に 対 す る 強 制 捜 査 を テ ク ノ ロ ジ ー 犯 罪 取 締 部
( TCSD) や 経 済 犯 罪 取 締 部 (ECD)に 要 請 す る こ と が 考 え ら れ ま す 。
著 作 権 侵 害 行 為 に 対 す る 強 制 捜 査 は 、こ れ ま で の と こ ろ 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の
著 作 権 侵 害 に 対 し て は 実 行 さ れ る こ と は 多 く は あ り ま せ ん が 、ウ ェ ブ サ イ ト の 管
理運営がなされている物理的な場所を突き止めることが可能である場合には、
当 該 場 所 に 対 し て 強 制 捜 査 を 行 う こ と が で き 、ウ ェ ブ サ イ ト の 管 理 運 営 に 使 用 さ
れ た パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ 及 び 関 連 機 器 を 差 し 押 さ え る こ と が 可 能 で す 。特 に 、
イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ の サ ー バ ー が 、海 賊 版 の 投 稿 に 関 わ る ホ ス ト
ウ ェ ブ サ イ ト と し て 使 用 さ れ て い た よ う な 場 合 に は 、サ ー バ ー が テ ク ノ ロ ジ ー 犯
罪 取 締 部( TCSD)や 経 済 犯 罪 取 締 部 (ECD)に よ っ て 証 拠 と し て 差 し 押 さ え ら れ て
い ま す 。 2011 年 に も 、 サ ー バ ー に 対 す る 差 し 押 さ え が 実 際 に 何 件 か 行 わ れ て い
ま す 13。
も っ と も 、こ れ ら の 組 織 も 、現 在 の と こ ろ 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に
対処をするための十分な体制を備えているとはいい難い状況にあります。
(3)
インターネット著作権侵害に対する自主的取組み
タ イ に は 、イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 防 止 に 取 り 組 む 私 的 団 体( 業 界 団 体 )
と し て は 、 タ イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 (TECA)、 ビ ジ ネ ス ・
ソ フ ト ウ ェ ア・ア ラ イ ア ン ス( BSA)、タ イ 映 画 協 会 等 が あ り ま す 。タ イ に お い て
イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 の 被 害 を 受 け た 場 合 、著 作 権 を 有 す る 日 本 企 業 は 、
著 作 権 侵 害 の 防 止 に 関 わ る こ の よ う な 私 的 団 体 に 相 談 す る こ と が 考 え ら れ 、そ の
結 果 、以 下 の よ う な 保 護 を 受 け る こ と が で き る 可 能 性 が あ り ま す( 下 記 ① の イ ン
タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 に つ い て は 、本 章
「 4 .イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ ト 削 除 」を ご 参
照下さい。
①インターネットサービスプロバイダに対する著作権侵害サイト削除の働きか
け
著 作 権 侵 害 サ イ ト 削 除 の 働 き か け は 、公 私 団 体 に よ っ て 行 わ れ て い ま す 。こ れ
までの実績の一例としては、次のものがあります。
2009 年 に 、 タ イ 国 内 の 音 楽 や レ コ ー ド 産 業 の 協 会 が 、 ウ ェ ブ マ ス タ ー と イ ン
13
2011 年 12 月 1 日 、 経 済 犯 罪 取 締 部 ( ECD) 捜 査 官 へ の イ ン タ ビ ュ ー に よ る 。
- 44 -
タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 し て 749 の 警 告 書 を 送 付 し た と こ ろ 、 合 計
645 件 の 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 を 実 現 し ま し た( 削 除 率 86%)1 4 。同 じ く 、2008
年 に は 749 の 警 告 書 に 基 づ き 、合 計 645 件 の 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 を 実 現 し ま
し た ( 削 除 率 95%) 1 5 。
ま た 、 タ イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 ( TECA) で は 、 2011 年
の 1 月 ~ 10 月 末 ま で の 間 に 444 の 要 求 に 基 づ き 、 合 計 318 件 の 著 作 権 侵 害 サ イ
ト 削 除 を 実 現 し ま し た( 削 除 率 71.6% ) 1 6 。ビ ジ ネ ス・ソ フ ト ウ ェ ア・ア ラ イ ア
ン ス ( BSA) も 、 不 法 ビ ジ ネ ス ソ フ ト ウ ェ ア の 配 信 サ イ ト の 削 除 要 求 を 成 功 さ せ
て い ま す 17。
以 上 の よ う に 、削 除 率 は か な り 高 い も の と な っ て い ま す 。も っ と も 、こ れ ら の
削 除 は イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 自 発 的 な も の で あ り 、タ イ の 法
律によって命令されたものではありません。
②サイバー・ロッカーサイトからの同意取付け
上記公私団体の 1 つであるタイ・エンターテインメント・コンテンツ協会
( TECA)が 、い く つ か の サ イ バ ー・ロ ッ カ ー サ イ ト か ら 、著 作 権 侵 害 物 の 交 換 に
用 い ら れ る MP3 フ ァ イ ル を 受 け 入 れ な い と の 同 意 を 取 り 付 け る こ と に 成 功 し ま
し た( も っ と も 、フ ァ イ ル 名 を 簡 単 に 変 え る こ と が で き る た め 、上 記 同 意 に よ っ
て 、 MP3 フ ァ イ ル の 不 存 在 が 完 全 に 保 証 さ れ る も の で は あ り ま せ ん 。) 1 8 。
14
国 際 知 的 財 産 権 連 盟 ( IIPA)『 2010 年 版 ス ペ シ ャ ル 301 条 報 告 書 』 325 頁 。
15
同上。
16
2011 年 11 月 30 日 タ イ ・ エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト ・ コ ン テ ン ツ 協 会 ( TECA) の 取 締 役
17
国 際 知 的 財 産 権 連 盟 ( IIPA)『 2010 年 版 ス ペ シ ャ ル 301 条 報 告 書 』 325 頁
18
国 際 知 的 財 産 権 連 盟 ( IIPA)『 2010 年 版 ス ペ シ ャ ル 301 条 報 告 書 』 325 頁
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【ポイント】
● タイにおいて、インターネット上の著作権侵害被害を受けた場合、著作権者
は、インターネット上の著作権侵害の防止に取り組む公私の団体へ相談する
ことが考えられます。
● 上記の相談の結果、著作権者は、公私団体による働きかけを通じて、インタ
ーネットサービスプロバイダにより、著作権侵害サイトを自発的に削除して
もらうことができる場合があります。
● ウェブサイトの管理運がなされている物理的な場所を突き止めることが可能
な場合には、当該場所に対して著作権法に基づいて警察による強制捜査を実
施してもらうことが可能な場合もあるので、警察へ相談してみるのもよいで
しょう。
4.
インターネットサービスプロバイダによる著作権侵害サイト削除
インターネットサービスプロバイダによる著作権侵害サイト削除について教え
てください。
(1) インターネットサービスプロバイダによる著作権侵害サイト削除の性質
タ イ の 現 行 法 制 度 上 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、イ ン タ ー ネ ッ ト
上の著作権侵害について自らが法的責任を負うものではありません(本章「2.
イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に 対 応 す る た め の 法 制 度 」 を ご 参 照 く だ さ い 。)。
し た が っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除
は、著作権者に対する自発的協力として行われるものです。
(2) インターネットサービスプロバイダによる著作権侵害サイト削除に対す
る評価
著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 は 、著 作 権 侵 害 停 止 を 実 現 す る た め の 実 効 的 な 救 済 手
段です。
一 方 で 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ が 行 う 著 作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 に
つ い て は 、現 在 の と こ ろ 、削 除 要 件 や 手 続 等 に つ い て 法 的 整 備 が な さ れ な い ま ま
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行 わ れ て い ま す 。こ の た め 、対 象 サ イ ト が 真 実 著 作 権 を 侵 害 し て い る の か 否 か が
不明確な状況の下で削除が行われているといった問題があり得る事態となって
い ま す( 仮 に 著 作 権 侵 害 が な い サ イ ト を 無 断 で 削 除 し た 場 合 に は 、イ ン タ ー ネ ッ
ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、削 除 行 為 に つ い て 少 な く と も 契 約 違 反 の 責 任 を 負 う こ
と に な る と 考 え ら れ ま す 。)。そ こ で 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る
サ イ ト 削 除 に 関 す る 法 的 手 続 を 整 備 す る こ と が 望 ま れ て い ま す 。な お 、こ れ ま で
の と こ ろ 、削 除 行 為 の 適 法 性 を 巡 っ て 大 き な 紛 争 に 発 展 し た ケ ー ス は な い よ う で
あ り 1 9 、裁 判 所 が こ の 点 に つ い て 未 だ 実 質 的 判 断 を 行 っ て い な い 状 況 に あ り ま す 。
イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、著 作 権 侵 害 サ イ ト 削 除 の 他 に 、著 作 権 者
側に対して侵害者情報の開示等の協力を行っていますか。
イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、著 作 権 者 に 対 す る 協 力 行 為 と し て 、著
作 権 侵 害 サ イ ト の 削 除 以 上 の こ と は 通 常 行 っ て お ら ず 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス
プ ロ バ イ ダ か ら 著 作 権 侵 害 者 を 特 定 す る た め の IP ア ド レ ス や 名 前 を 入 手 す る こ
と は で き ま せ ん 。イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ は 、通 常 、ウ ェ ブ マ ス タ ー
の名前を明らかにすることも拒否します。
ま た 、 王 立 タ イ 警 察 に 依 頼 し て 著 作 権 侵 害 者 を 特 定 す る た め の IP ア ド レ ス や
名 前 を 入 手 す る こ と も 実 務 上 困 難 で す 。王 立 タ イ 警 察 は 、上 記 の 各 情 報 を イ ン タ
ーネットサービスプロバイダから入手するために裁判所の令状を得る手続を取
る傾向にはありません。
19
2013 年 1 月 、 調 査 協 力 先 の Price Sanond Prabhas & Wynne (Bangkok, Thailand)及 び タ イ ・ エ ン タ
ー テ イ ン メ ン ト・コ ン テ ン ツ 協 会( TECA)に 当 該 紛 争 事 例 の 有 無 に 関 し て 質 問 し た と こ ろ 、い ず れ も「 無
い」という回答であった。
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5.
インターネットサービスプロバイダに対する削除要求の手続の流れ
著 作 権 者 が 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 し て 、自 己 の 著 作 権 を 侵 害
す る サ イ ト の 削 除 要 求 を 行 う に 際 し 、実 務 上 ど の よ う な 手 続 を と れ ば よ い の か に
ついて教えてください。
(1)
手続の流れ
既 に 述 べ た と お り 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に よ る 著 作 権 侵 害 サ イ
ト 削 除 は 自 発 的 協 力 に よ る も の で す が 、実 務 上 、著 作 権 者 が 削 除 要 求 を 行 う 際 に
とるべき手続の流れは概ね以下のようなものになります。
著 作 権 者 は 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 し て 要 求 書 を 送 付 し ま す 。
要求書には、次の内容を含めることになります
・ 著作権侵害対象物について、請求者が当該対象物に係る著作権を有する根
拠の説明
・ インターネットサービスプロバイダに対して著作権侵害サイトの削除を要
求する旨の記載
(2)
請求者が正当な著作権者であることの証拠
著 作 権 侵 害 対 象 物 に つ い て 、請 求 者 が 当 該 対 象 物 に 係 る 著 作 権 を 有 す る 根 拠 を
裏付ける証拠として、次のようなものが使用できます。
① 知 的 財 産 庁 ( DIP)が 発 行 す る 著 作 権 登 録 書 の 写 し
② 著 作 権 者 が 知 的 財 産 庁( DIP)に 著 作 権 登 録 し て い な い 場 合 は 、 以 下 の 各 書
類
・他国当局によって発行された著作権登録書の写し
・請求者が著作権者であることを宣言した裁判所の決定
・背景調査、ドラフト、ラフ・スケッチ等の、著作物に係る表現を創作す
る過程で請求者が種々作成した関連書類
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知 的 財 産 庁( DIP)が 発 行 す る 著 作 権 登 録 書 と は 、ど の よ う な も の で す か 。イ ン タ
ーネットサービスプロバイダへのサイト削除の要求に際して著作権登録書の送
付は不可欠でしょうか。
知 的 財 産 庁( DIP)が 発 行 す る 著 作 権 登 録 書 は 、著 作 権 者 で あ る こ と を 推 定 す る
機 能 が あ り ま す( も っ と も 、著 作 権 登 録 に よ っ て 、著 作 権 の 存 在・帰 属 が 完 全 に
証 明 さ れ る わ け で は あ り ま せ ん 。)。
し た が っ て 、イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ に 対 す る 著 作 権 侵 害 サ イ ト 削
除要求の際、請求者が著作権者であることの証拠として用いることができます。
他 方 で 、著 作 権 登 録 書 の 証 拠 送 付 が 不 可 欠 で は あ り ま せ ん 。あ く ま で 、イ ン タ ー
ネットサービスプロバイダに対して自己が著作権者であることを説明するため
の材料としての位置付けを有するものとして理解すべきです。
な お 、著 作 権 登 録 書 は 、実 務 上 、著 作 権 侵 害 事 案 を 刑 事 事 件 と し て 警 察 当 局 に
よ っ て 立 件 し て も ら い 、或 い は 、著 作 権 者 自 ら が 民 事 訴 訟 を 提 起 す る 場 合 に は 必
要 と さ れ て い ま す 。こ の 登 録 書 の 入 手 方 法 に つ い て は 、第 Ⅳ 章「 7 .著 作 権 の 登
録制度」をご参照ください。
6.
今後に向けての取り組み
タイでは、インターネット上の著作権侵害を取り締まる制度を改善するために、
どのような取組みがなされていますか。
こ れ ま で に み て き た と お り 、タ イ に お け る イ ン タ ー ネ ッ ト 上 の 著 作 権 侵 害 に 対
す る 法 制 度 は 必 ず し も 十 分 な も の で は あ り ま せ ん 。タ イ 政 府 に 対 し て は 、諸 外 国
か ら も 、侵 害 に 対 処 す る た め の 充 実 し た 法 制 度 改 善 が 求 め ら れ て い ま す 。例 え ば 、
インターネットサービスプロバイダの行う著作権侵害サイト削除を法制度化す
る こ と や 、 テ ク ノ ロ ジ ー 犯 罪 取 締 部 (TCSD)の 体 制 強 化 等 が 挙 げ ら れ ま す 。 こ の
ような中、現在のところ、以下のような法律案・改正案が策定されています。
(1)
著作権法改正案
改 正 法 案 は 、 WIPO 著 作 権 条 約 ( WCT)、 WIPO 実 演 ・ レ コ ー ド 条 約 ( WPPT) の 要
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求 す る 著 作 権 保 護 水 準 に 沿 う 内 容 を 盛 り 込 ん で い ま す 。す な わ ち 、イ ン タ ー ネ ッ
ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ の 責 任 を 規 定 す る 条 項 、著 作 権 者 に よ る 技 術 的 保 護 手 段 を
回 避 す る 行 為 を 規 制 す る た め の 条 項 等 が 改 正 法 案 に 盛 り 込 ま れ て い ま す 。こ の 法
案は、現在、国会への提出を待つ段階にあります。
(2)
地主/家主責任法案
こ の 法 律 案 は 、土 地 所 有 者 が 、自 己 の 所 有 す る 土 地 等 に つ い て 、違 法 か つ 著 作
権侵害品を頒布するために使用されることを知り、又は知る根拠を有しながら、
当 該 土 地 等 を 賃 貸 す る 場 合 に 刑 事 責 任 を 負 う 旨 を 規 定 す る も の で す 。こ こ で 、
「地
主 / 家 主 」( Landlord) の 定 義 の 中 に 、 イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス プ ロ バ イ ダ を も
含 め る こ と が 法 案 に 規 定 さ れ て い ま す 。す な わ ち 、オ ン ラ イ ン 上 で 著 作 権 侵 害 物
を頒布するためのバーチャル空間を著作権侵害行為者のために提供している行
為を規律するものです。
(3)
コンピュータ犯罪法改正案
こ の 改 正 法 案 は 、著 作 権 侵 害 行 為 を コ ン ピ ュ ー タ 犯 罪 法 上 の 犯 罪 と す る 旨 を 定
め て い ま す 。か か る 改 正 法 規 定 に よ れ ば 、公 務 員 が 、裁 判 所 に 対 す る 申 立 て に よ
ってウェブサイトのブロックを行うことができる手続が可能となります。
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