コンピュータグラフィックを用いた分子構造の構築 060417 文責: はしもと

コンピュータグラフィックを用いた分子構造の構築
060417 文責: はしもと
はじめに
X線結晶構造解析では、電子密度とよばれる電子の分布図をもとにタンパク分子の構造を決定する。電
子密度は電子の存在位置をしめしたものであり、そこには原子が存在すると考えれば、電子密度に沿って
各原子を並べていくことで、巨大なタンパク質分子の構造を決定することができる。しかし、タンパク質はアミ
ノ酸がペプチド結合でつながったものであるから、実際には原子ではなくアミノ酸を並べていく。通常は初期
電子密度からポリアラニンモデルを作成する。
電子密度と分解能
分解能(resolution, 解像度)によって電子密度の見え方は全く異なる。
3.0Å 分解能程度の電子密度を得ることができれば、分子構造を解析することができる。
実習の概要
今回の実習では、グラフィックソフト Coot を使用し、電子密度をもとに部分構造(初期モデル)からリゾチ
ーム分子を構築することを目指す。
リゾチーム分子は 129 アミノ酸から構成されている。しかし、与えられた初期モデルは 86 残基のポリアラ
ニンからなる部分構造であり、6 つのフラグメントに分かれている。電子密度とアミノ酸配列を見ながら、アラ
ニンから実際のアミノ酸に置き換え、フラグメントがリゾチーム分子のどこの部分に相当するかを考える。さ
らに時間があれば 6 つのフラグメントをつなぎ合わせ、リゾチームの全体構造を構築する。
プログラム Coot は Paul Emsley 氏によって開発されたモデル構築ソフトである。Coot の入手法や設定
方法は以下のサイトを参照。Windows 版もある。
http://www.ysbl.york.ac.uk/~emsley/coot/
準備
Linux でログインする。
Coot の環境ファイルを読み込む。
% source /home/xray/share/Linux-bubbles/setup/coot.csh
% source /home/xray/share/ccp4-5.0.2/include/ccp4.setup
ホームディレクトリに作業ディレクトリをつくる。
% cd
% mkdir modelling
作業ディレクトリに実習に必要な座標(PDB)と電子密度(MAP)ファイルをコピーする。
% cd modelling
% cp /home/share/xray/2006/start.pdb .
% cp /home/share/xray/2006/model.map .
初期モデル(ポリアラニン)と電子密度の表示
% coot
Main ウインドウが表示される。
Main ウインドウの File, Open Coordinates…をクリックすると、選択ウインドウが開くので、start.pdb を
選ぶとリゾチーム分子の初期モデルが表示される。
Main ウインドウの File, Open Map…をクリックすると選択ウインドウが開くので、model.map を選ぶと
電子密度が表示される。
表示されている分子は、炭素原子が黄色、窒素原子が青色、酸素原子が赤色で表現されている。
前述のように、これは 86 残基のポリアラニンモデルで、6 つのフラグメントに分かれている。ちなみに、残基
番号は実際の残基番号には全く対応していない。つまり、この時点ではリゾチームのアミノ酸配列のどの部
分かはわからない。
フラグメント 1
1114~1129
16 残基
フラグメント 2
1144~1158
15 残基
フラグメント 3
1300~1314
15 残基
フラグメント 4
1422~1432
11 残基
フラグメント 5
1501~1513
13 残基
フラグメント 6
1623~1638
16 残基
リゾチームのアミノ酸配列
> Lysozyme
KVFGRCELAA
TDYGILQINS
DGNGMNAWVA
- chicken egg white - 129 aa, Molecular Weight 14 kDa
AMKRHGLDNY RGYSLGNWVC AAKFESNFNT QATNRNTDGS
RWWCNDGRTP GSRNLCNIPC SALLSSDITA SVNCAKKIVS
WRNRCKGTDV QAWIRGCRL
Coot で分子を見る方法(マウスの操作法)
左クリックしながらマウスを動かすと分子が回転する。
中クリックした原子が画面の中心になる。
右クリックしながらマウスを動かすと分子が拡大・縮小される。
Ctrl を押しながら左クリックしながらマウスを動かすと分子が並進する。
Ctrl を押しながら右クリックしながらマウスを動かすと画面の奥行きが変わる。
目的の残基に移動する
・中クリックした原子が画面の中心になる。
・Space キーで次ぎの残基が中心になる。
・Shift+Space で一つ前の残基が中心になる。
・あるいは、、、
メニューから、Draw > Go To Atom…を選び、Go To Atom…ウインドウを
表示、移動したい残基を選択する。
Apply をクリックすれば、その残基の Cα原子が画面の中心になる。
アミノ酸の置換・側鎖の電子密度へのフィッティング
F5 を押し、Model/Fit/Refine ウインドウを開く。
Mutate & Auto Fit….をクリック
マウスカーソルが+字になるので、変換したい残基の原子をクリック。
アミノ酸ウインドウが開くので、アミノ酸を選ぶと変換され、電子密度にフィットさせてくれる(ある程度)。
では例として、1505 に移動して、電子密度から正しいアミノ酸を考えて、置換してみる。
ヒント:
比較的大きな側鎖(芳香族アミノ酸など)に注目する。
20種類のアミノ酸の構造を参考にしながら、側鎖を推測する。
とにかく、特徴的な(大きな)側鎖の電子密度を持つものを、他のアミノ酸に置換してみる。明らかに間違っ
ているかどうかは、結果を見れば一目瞭然である。
水素原子は無視する。
電子密度からだけでは、グルタミン酸とグルタミン、アスパラギン酸とアスパラギンを区別することは難しい。
アミノ酸配列から判定するしかない。
手動で側鎖を電子密度にフィットさせる
Mutate & Auto Fit…を使って、側鎖構造を電子密度にフィットさせることができなかった場合は、手動で側
鎖の角度を変えて電子密度にフィットさせる。
Model/Fit/Refine ウインドウで、Edit Chi Angles をクリック。
カーソルが+字になるので、動かしたい残基中の原子をクリック。
Chi Angle のリストがでるので、回転させたい Chi Angle を選び、マウスで左クリ
ックしながらマウスを動かすと、Chi Angle を動かすことができる。
よければ Accept をクリック
残基番号を変更する
フラグメントがリゾチーム配列のどこに相当するかがわかったら、正しいアミノ酸番号に変更する。
例えば、501~513 のフラグメントを 1 から番号をふり直したい場合は、
Main ウインドウで、Calculate, Renumber Residues…をクリック。
Residue number 501 to 513
Offset -500
アミノ酸の挿入
フラグメントとフラグメントをつなぐ場合は、あらたにアミノ酸を挿入する。
これを繰り返し、6 つのフラグメントをつなぎあわせればリゾチームの全体構造を構築することができる。
Model/Fit/Refine ウインドウの Add Terminal Residue….をクリック。
カーソルが+字になるので、末端の残基の原子をクリックすると 1 残基アラニンが挿入される。C 端に挿
入すれば残基番号が 1 つ増え、N 末に挿入すれば残基番号が 1 つ小さくなる。
電子密度をもとに正しいアミノ酸に置換する。
さらに、先と同様に Mutate & Auto Fit…を使って、正しいアミノ酸への変更と側鎖のフィッティングを行う。
残基などの削除
間違えて挿入してしまったときなど、残基あるいは原子を削除したい場合
Model/Fit/Refine ウインドウで、Delete をクリック。
何を削除するかを聞かれるので、一残基削除したければ、Residue/Monomer
を選択。カーソルが+字になるので、削除したい残基の原子をクリック。
ある範囲の残基を削除したければ、Delete Zone を選んで、消したい領域の末
端 2 残基をクリックする。
構造データ(座標)の保存
モデリングした構造を PDB フォーマットのファイルに保存する。
Main ウインドウで File, Save Coordinates…をクリック。
Select Filnename…をクリックし、ファイル名とディレクトリを指
定し、保存する.。
20種類のアミノ酸の構造
(タンパク質 構造・機能・進化 G.E. Shlulz, R. H. Shirmer 著 大井龍夫 監訳 科学同人 より転載)
今回の電子密度は水素原子を反映していないので、水素原子の構造は無視する。
課題
6つのフラグメントのうち2つについて、アラニンから正しいアミノ酸残基に置換し、何番の残基がどのアミノ
酸、正しい残基番号を記入する。どの2つを選んでもよいが、短いものが簡単とは限らない。
早く終わった場合は残りのフラグメントのモデリングも行い、さらにリゾチームの全体構造を構築してみる。
フラグメント 1
1114
1115
1116
1117
1118
1119
1120
1121
1122
1123
1124
1125
1126
1127
1128
1146
1147
1148
1149
1150
1151
1152
1153
1154
1155
1156
1157
1158
1302
1303
1304
1305
1306
1307
1308
1309
1310
1311
1312
1313
1314
1424
1425
1426
1427
1428
1429
1430
1431
1432
1503
1504
1505
1506
1507
1508
1509
1510
1511
1512
1513
1625
1626
1627
1628
1629
1630
1631
1632
1633
1634
1635
1636
1637
1129
フラグメント 2
1144
1145
フラグメント 3
1300
1301
フラグメント 4
1422
1423
フラグメント 5
1501
1502
フラグメント 6
1623
1624
モデリングした構造データを指定ディレクトリに学籍番号.pdb という名前でコピーする。
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