小澤洋介 & 三戸素子 プロデュース クライネス・コンツェルトハウス Op.24 Yosuke Ozawa & Motoko Mito Produce kleines konzerthaus ∼ 弦楽四重奏・弦楽五重奏の響き ∼ 超弩級の名作 シューベルト & ベートーヴェン 2008 年2月3日 2PM 東京文化会館 小ホール (株)ハラヤミュージックエンタープライズ Program ■ L.v. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 作品 59-1 「ラズモフスキー弦楽四重奏曲第1番」 Ludwig van Beethoven : Streichquartett F-Dur op.59-1 “Rasumowsky Nr.1” I. Allegro アレグロ II. Allegretto vivace e sempre scherzando テンポ ディ メヌエット マ モルト エ グラツィオーゾ III. Adagio molto e mesto アダージォ モルト エ メスト IV. Theme russe Allegro ロシア主題 アレグロ — 休 憩 intermission — ■ F. シューベルト : 弦楽五重奏曲 ハ長調 D956 作品163 遺作 Franz Schubert : Quintett in C D956 op.post163 I. II. III. IV. Allegro ma non troppo アレグロ マ ノン トロッポ Adagio アダージォ Scherzo Presto スケルツォ プレスト Allegretto アレグレット ̶プログラムの構成上、アンコールはございません。̶ special thanks 犬塚秀博様、神谷まさ子様 クライネス・コンツェルトハウス、コンサート継続の為に 多額のご支援をいただき、ここに心より御礼申し上げます。 プログラムノート ◆ ベートーヴェン (1770-1827) : ラズモフスキー弦楽四重奏曲 第1番 作品 59-1 「シューベルトの弦楽五重奏曲」という大作に組み合わせる曲として選ん だのがこの一曲。ベートーヴェン35才、「英雄」「運命」「クロイツェルソ ナタ」「熱情ソナタ」...とてつもない円熟期のさなかの作品である。 「ピアノからの脱却」という課題を自らに課し、先人の作品を研究し尽く して弦楽四重奏曲を六曲書き上げたのが20代。その5年後、選りすぐりの私 的な弦楽四重奏団を作ろうとしていたラズモフスキー公爵に応えて、書き上 げた三曲の弦楽四重奏曲の第1番に位置するこの曲は、それまでの常識を覆 す斬新なものだった。構成も響きも多様性も「親密な室内楽曲」からはじけ きって、しかもみずみずしい。だが当時このスケールの大きさは理解されず 「頭のおかしくなった人間の出来の悪い冗談、気違い音楽」と批評された。 この曲の第2楽章にたいする「これは音楽として作ったのではないでしょう ね。」との人々の問いに、「これは皆さんのためにではなく、次の時代の音 楽のために作ったのです。」と答えたという逸話も残っている。 この全三曲の「ラズモフスキー弦楽四重奏曲」は三曲で巨大な一曲のよう な構成をしており、この第1番は第1楽章、いわば起承転結の起の部分のよう な性格を持つ。まずヘ長調という調性でさわやかな広々とした音空間が確保 され、いよいよ音楽の旅に出る私達の素晴らしい門出となる。軽快な八分音 符にのってトロットで走り出す馬車のような第1楽章の冒頭、世界は次々に 広がって行く。くだんの第2楽章は、チェロではじまる呼び声にひもとかれ 展開してゆく、短いモティーフで構成されたほとんど20世紀的音楽。第3楽 章は実際に出している音の響きが外の倍音同士でも融合し合い、旅は私達を 宇宙にまで連れて行く。フィナーレはロシア民謡の祭りのような人間賛歌。 ナポレオン軍の侵攻も近づいてくる19世紀初頭の不穏なヨーロッパ、そんな 激動の時代に何と力強く健全な精神に満ちた音楽であろう。 ◆ シューベルト (1797-1828) : 弦楽五重奏曲 ハ長調 シューベルト...この作曲家は特殊だ。ハイドン・モーツァルト・ベートー ヴェン等が活躍し豊かに華ひらいていた音楽都市ウィーン。彼ら先輩音楽家 たちが民族交じり合う田舎都市やザルツブルクやドイツのボンで生まれ、修 業時代を経てウィーンに落ち着いたのに対し、シューベルトはウィーンで生 まれ育った生粋のウィーンっ子であった。ウィーンの音楽が初めから彼の 母国語だった。ウィーンの最先端の音楽を、即興とピアノの名手であった彼 は、いくらでも紡ぎだすことができたのである。友人たちに囲まれ、求めら れるままに次々とあっという間に魅力あふれた曲を作った。そんな人物が驚 くほど内気で素朴で、そして巨人ベートーヴェンを神のように尊敬し、精進 し続けていたらどうだろう。 彼の弦楽四重奏曲は第13番「ロザムンデ」第14番「死と乙女」名曲第15 番までに到達していた。ベートーヴェンはあの不滅の後期作品5曲を残して 亡くなった。そうした中で作曲されたのがこの弦楽五重奏曲である。 モーツァルトはヴィオラという内声楽器を足して独自の五重奏曲の世界を 作り出したが、シューベルトは低弦楽器チェロを足すということでベートー ヴェンの意志を継ぐ交響的な響きを作り出した。それも「ラズモフスキー 第3番」と同じ王者のような調性ハ長調で。チェロが一本増えるということ は、バス声部の役割が複数になり、複数のグループが同時進行で展開するこ とが可能になったということを意味する。トランプの四枚のカードにジョー カーが一枚加わったとたん、様々な役を作ることができるようなものだ。楽 器を重ねて作る音色、そのコンビネーションを変えて作り出す多彩なバラン スという新次元のパレットが、調性という色彩パレット使いの名手シューベ ルトに加わったのだ。シューベルトのあのまったりした私的な響きが同時に 幾層にも重なり合い、立体的になり、交響的になるのである。 C音から序奏がはじまり広がってゆく長大なソナタ形式の第1楽章。第2楽 章は三つの声部にわかれた同時進行のモノローグで、暗く激しい中間部を経 て飽和する。第3楽章スケルツォはスピードにのって力強く狩りが展開する が、一転して先の見えない当時の社会情勢を象徴するかのように彷徨い、み ずからを神にゆだねる。第4楽章フィナーレは民族的な踊りとウィーン風の 踊りが半永久的に繰り返され、ついに沸騰する。 ベートーヴェンの葬列に加わった翌年、シューベルトはこの曲の他に交響 曲「グレート」やピアノソナタ変ロ長調そして「白鳥の歌」等1年間で驚異 的な28作品を生み出し、友人たちに惜しまれつつ若干31才で他界する。この 五重奏曲の初演はその22年後、ウィーン楽友協会の定期演奏会であった。 解説:三戸素子 クライネス・コンツェルトハウス メンバープロフィール 三戸 素子(ヴァイオリン)Mito Motoko 桐朋学園大学およびザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学卒業。篠崎功子、中山朋子、A.P. シュ トゥッキ、H. ツェートマイヤー、塩川悠子他の各氏に師事。N. ミルシュタイン、G. シュルツ、M. プレ スラー、アマデウス弦楽四重奏団他のマスタークラスに参加。「国際モーツァルト週間」においてソリ ストとしてヨーロッパデビュー。ヨーロッパ各地の音楽協会や音楽祭での招待リサイタル、またソリ ストとしてオーケストラと共演。87 年∼ 90 年「ザルツブルク弦楽四重奏団」メンバー。87 年に結成 した「サンクト・フローリアン三重奏団」で NY カーネギーホールほか国際的に活躍している。ジャパ ン・シンフォニアコンサートマスター。後進の指導にもあたっている。 藤村 政芳(ヴァイオリン)Fujimura Masayoshi 1989 年東京芸術大学卒業。新日本フィルハーモニー交響曲にフォアシュピーラーとして入団。在団 中「KISA QUARTET」を結成し、ロンドンにてアマデウスクヮルテットに師事する。第二回大阪国際室 内楽コンクール入選。1996 年新日本フィルを退団。現在、東京フィルハーモニー交響曲第二ヴァイオ リン首席奏者。また、ソロ、室内楽、スタジオレコーディング等でも活躍中 二宮 隆行(ヴィオラ)Ninomiya Takayuki 福岡県生まれ。3才の時ヴァイオリンをはじめ、17 才でヴィオラに転向。坂口直美、浅妻文樹、礒良男、 ウルリッヒ・コッホの各氏に師事。武蔵野音楽大学卒業。同大学院を経て 1993 年より読売日本交響 楽団ヴィオラ奏者。室内楽やアンサンブルでも活躍している。NHK 「FM リサイタル」出演。メキシコ・ シナロア音楽祭参加。現在、読売日本交響楽団ヴィオラ奏者。 小澤 洋介(チェロ)Ozawa Yosuke 東京生まれ。トロント大学を経て、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学卒業。佐藤良雄、H. リッチャ ウワー、V. オルロフの各氏に師事。J. シュタルケル、M. プレスラー、アマデウス弦楽四重奏団他のマ スタークラスに参加。89 年より 92 年までザルツブルク室内オーケストラ首席チェリストを務め、数 多くのヨーロッパ主要都市で、また訪日公演を行う。87 年に結成した「サンクト・フローリアン三重 奏団」で NY カーネギーホールにて演奏。ソリストとしてオーケストラとの共演やリサイタル、指揮、 室内楽等で、ヨーロッパやアメリカの音楽祭に招待されるなど、多彩に国際的な活動を行っている。ジャ パン・シンフォニア及び東京室内管弦楽団首席チェロ奏者。 小川和久(チェロ)Ogawa Kazuhisa 11 歳よりチェロを始める。桐朋学園女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。フ ランス国立ボルドー音楽院へ留学。高等科、室内楽科、現代室内楽科、研究科を首席で卒業。ならび にボルドー市栄誉賞を受賞。第 4 回「若手奏者の為のコンペティション」( 名古屋国際コンクール ) ソ ロ部門にて優勝。最優秀者賞、朝日新聞社賞を受賞。国立ボルドーオペラ座、ラムルー管弦楽団等と 特別契約を結び共演。アンサンブル・インストルメンタル・ドゥ・コルス ( コルシカ ) の首席奏者を務 める。これまでにチェロを千本博愛、エチエンヌ・ペクラー各氏に師事。現在、ソロ、室内楽、オー ケストラ、Jazz、Pops と幅広い分野で活躍中。 http://kleines-k.com 次回予告! フィビヒ : 五重奏曲 / ドホナーニ : 六重奏曲 ピアノ室内楽の隠れた名品 出演:ヴァイオリン / 三戸素子、ヴィオラ / 二宮隆行、チェロ / 小澤洋介 ピアノ / ラファエル・ゲーラ、クラリネット / 山根公男、ホルン / 藤田乙比古 「クライネス・コンツェルトハウスop.25」 2008年7月25日(金) 東京文化会館(小) クライネス・コンツェルトハウス事務局 tel.04-2945-6326 fax.04-2945-6329
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