授業ノート 6

2004 年度非平衡物理学 授業ノート 6
2004.11.16 担当 吉森 明
§3. 線形応答理論
3-1. 時間相関関数
目標 定義と性質を理解する。何に使えるか。性質は何から導けるか。具体的には以下の
ことを分かる。
• 時間相関関数 (TCF) の定義はサンプルの平均と時間平均がある。
• 時間相関関数 (TCF) は不規則な運動を特徴付けるのに便利。
• 定常過程は時間の原点をずらしても平均量は変わらない。
• 結論は定常過程から導ける。
• 線形ランジュバン方程式が成り立つ時、時間相関関数 (TCF) は簡単に計算で
きる。
目次
(1) §3 の流れ
(2) 定義と物理的な意味
(3) 基本的な性質
(4) ランジュバン方程式からの計算
仮定
定常過程 (時間の原点をずらしても、平均量は変らない)。
結論
ψµν (t) ≡ hXµ (t)Xν (0)i として、ψµν (t) = ψνµ (−t)。特に µ = ν の時、時間相関
関数は、偶関数。
さらに、hẊµ (t)Xν (0)i = −hXµ (t)Ẋν (0)i。特に µ = ν の時、ψ̇µµ (0) = 0。
(1) §3 の流れ
3-4. 久保公式
3-2. ウィンナー-ヒンチンの定理 ¾ 3-1. 時間相関関数 ¾
6
計算できる
?
2. ブラウン運動の基礎
1
? - 3-3. 線形応答理論
簡単な関係
¡
µ
¡
¡
¡
¡
¡¡ 計算できる
¡
¡
¡
ª
(2) 定義と物理的な意味
○ 液体 A に微粒子を溶かす。V (t) = 微粒子の速度
V (t0 )
6
@
@
R B
B
V (t0 )
@
R
@
- t0
6
R
@
@
BBN @
@
R
B
B
BBN C
C
- t0
C
C
CW
2 回目 (1 回目と似ている。)
1 回目
ところが別の液体 B に微粒子を溶かして測ると、
V (t0 )
V (t0 )
6 H
*
H
j
@
H
*
H
j
@
R
@
@
R t0
6
*H
*
j
H
H
H
j 0
H
j - t
H
2 回目 (1 回目と似ている。)
1 回目
A と B はかなり違う。液体によって違う感じがする。もちろん、軌道そのものは測る度
に違うが、同じ液体ならば、似ていると感じる。しかし、違う液体は違うと感じる。2 つ
の液体は平均も分散も同じなので、他に液体 A と B を定量化する方法はないのか?
2
○ 時間相関関数の定義
°
1 サンプル平均による定義
°
2 時間平均による定義
定常過程 (後述) の時だけ使える定義
Z
1
hX(t)X(t )i ≡ lim
T →∞ T
T
0
X(t + τ )X(t0 + τ )dτ
(1)
0
1 つのサンプル X(t) について、
X(t)
6
t0 + τ
u
C
C
*H
H
j
C
C
C
C
A
C
C t+τ
C
C
A
A
?
C
C
C
A C
AU
6
C
C
u
A
U
C
C
*H
CW
CW
j
H
j
H
C C H
CW
CW
@
@
R
時間
t0 − t
時間軸にそってずらす
定常過程であっても、°
1 と°
2 が何時も同じになるとは限らない。等価な時をエルゴード
性が成り立つという。
(3) 基本的な性質
○定常過程
X(t)
6
C
C
A
A C
AU
C CW
C
u
C
C
C
C
C
C
C
u
j
H
C H
CW
u
C
C
C
C
C
u C *H
CW
j
H
C
CW
*H
H
j
A
A
AU
@
@
R
∆t
∆t
∆t が同じであれば、相関も等しい。
3
時間
○ X(t) を複数考える。{X1 (t), X2 (t), · · · } = {Xµ (t)} ここで、添え字は、サンプルを表
すのではないことに注意。
ψµν (t) ≡ hXµ (t)Xν (0)i
例
(2)
3 次元のブラウン運動 V (t) = (Vx (t), Vy (t), Vz (t))
ψ11 (t) = hVx (t)Vx (0)i
(3)
ψ12 (t) = hVx (t)Vy (0)i
(4)
ψ31 (t) = hVz (t)Vx (0)i
(5)
○ 基本的な性質
● 定常過程から (仮定)
hXµ (t)Xν (t0 )i = hXµ (t − t0 )Xν (0)i = hXµ (0)Xν (t0 − t)i
(6)
t0 = 0 にすると、
hXµ (t)Xν (0)i = hXµ (0)Xν (−t)i
(7)
ψµν (t) = ψνµ (−t)
(8)
ψµµ (t) = ψµµ (−t) : ψµµ (t) は偶関数
(9)
hẊµ (t)Xν (0)i = −hXµ (0)Ẋν (−t)i
(10)
したがって、
● 特に µ = ν の時
● (7) 式を t で微分
右辺の時間の原点を t だけずらす
hẊµ (t)Xν (0)i = −hXµ (t)Ẋν (0)i
(11)
ψ̇µµ (0) = hẊµ (0)Xµ (0)i = 0
(12)
● 特に µ = ν の時
4
宿題の訂正: 前回の授業でも説明しましたが、問題 3 はミスプリがありました。訂正が多
くて申し分けありません。
3(20 点) 誤: hX(0)2 i = D/2 −−−−−→ 正: hX(0)2 i = D/(2γ)
宿題:
23 (10 点) 時間相関関数 ψ(t) = hX(t)X(0)i に対して |ψ(t)| ≥ ψ(0) を示しなさい。
24 (30 点) 量子力学における時間相関関数の定義
ハイゼンベルグ表示を使って X̂µ (t) ≡ eiĤt/h̄ X̂e−iĤt/h̄ とする。ただし、X̂ 、Ĥ は
演算子を表す。これを使って、ψµν (t) = hX̂µ (t)X̂ν i と定義すると、不都合。なぜ
なら、これは実数ではない。そこで次の 2 つの定義が通常使われる。
(a)対称化積
対
ψµν
(t) ≡
1
1
hX̂µ (t)X̂ν + X̂ν X̂µ (t)i = Tr{ρ̂eq [X̂µ (t)X̂ν + X̂ν X̂µ (t)]} (13)
2
2
(b)カノニカル相関
Z
カノ
ψµν (t) ≡ hX̂µ (t); X̂ν i ≡
0
β
dλ
Tr{ρ̂eq eλĤ X̂µ (t)e−λĤ X̂ν }
β
(14)
ただし、ρ̂eq = e−β Ĥ / Tr[e−β Ĥ ]
それぞれについて、以下の事を示せ。
(1) 演算子がすべて可換になると、古典力学における定義と一致する事。ただし、
X̂(t) は X(t) と考える。
(2) 実数である事。
(3) 定常性を仮定して、ψµν (t) = ψνµ (−t) となる事。
5