「第5回アフリカ開発会議の課題」

平成25年 5月27日号
「第5回アフリカ開発会議の課題」
外務省中東アフリカ局
アフリカ部長 岡村 善文 氏
(平成 25 年 5 月 10 日 於日本記者クラブ)
まず、アフリカ開発会議(TICAD)の話をする 均成長率は 5.8%で、その同じ時期の世界の経済の停
前にアフリカの話をしてみたいと思います。
滞を思い浮かべると、非常に立派な数字を上げていま
アフリカというと、いわゆるブラックアフリカ、飢 す。GDPも着実に今大きくなりつつあって、2001 年
餓で苦しむ子どもたちの姿や大変な病気が流行る。エ から 2011 年の間に 3.2 倍になっています。
イズとかで苦しむ人々の姿、あるいは紛争、民族対立
大体アフリカ全体の経済規模を横並べで見ますと、
や紛争があるなど問題に苦しむ姿を見ます。
ところが、 今や大体インド1国、ロシア1国と肩を並べるぐらい
現実のアフリカとは大分違います。これは私がコート まで成長してきています。
ジボワールの大使として現場でアフリカをずっと見て
では、どうしてそういう経済成長が最近見られるよ
歩いた経験からそう申し上げます。現実は経済的に大 うになったのか。1960 年代にどんどん旧植民地から
きな存在感を示しつつある国々という話でございます。 独立したアフリカ諸国も、その開発計画が挫折し、ま
た独裁などの混乱から 80 年代には多大な債務をかか
10 年間に目覚ましい発展
えて苦しんだ時期がありました。
国連全加盟国は今 193 に増えています。その中でア
90 年に入り南アフリカのアパルトヘイトが終結し、
フリカの国の数は 54 ヵ国、
4分の1強はアフリカとい 桎梏が取れて、アフリカの南部地域、東地域が非常に
う訳です。人口は合計しますと今 10 億 2,000 万人、こ 大きく発展し始めました。21 世紀に入り、そうしたも
れは全世界の約 15%の人口です。面積は約 3,000 万k のがいい方向に発展し、21 世紀の最初の 10 年を越え
㎡、ロシアと中国を足してもまだそこまでいかない。 て、アフリカ全体をみれば、昔に比べれば本当に紛争
ただGDPで計算しますと、まだまだ小さくて、全世 が少なくなり、
選挙を通じて民主主義が定着しました。
界の約3%に満たない。1人当たりのGNI(総所得)
は非常に低い状況にあります。
指導者は欧米で学んだ英才
ところが、これが貧しい大陸かと思いきや、この 10
今、このアフリカの国々の国家運営、社会運営に携
年間に目覚しい経済成長を見せ、世界の成長センター わる人たちは、第一世代の子どもたちの世代です。70
に育つと期待されています。北アフリカを除いたアフ 年代、80 年代に欧米で教育を受けていますから、我々
リカだけを見ますと、何と世界でも平均GDP成長率 と同じ、あるいは我々よりも進んだ教育を受けて帰国
が段トツに高い。
し、国家運営をやっています。そうしたいろんな意味
でいい材料が積み重なって今のアフリカができ上がっ
地域の発展率は 5.8%
ていると思います。
特に2002 年から2011 年の10 年間のこの地域の年平
アフリカの貿易と対アフリカ投資の伸びは、貿易は
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