魚見桜の蘊蓄⑧ 朝市シリーズ(2016-8) 魚見桜の蘊蓄 ⑧ 儚いタコの生涯 マダコが日出の海で獲れ始めて久しい。そのタコの寿命は僅か 2 年余。生後 1 年で成人に達し、 恋の季節を迎える。よき伴侶が見つかると、お互いの手足を絡めて交接が始まる。 雌タコは、雄タコからのプレゼント(精莢)を体内に大切に保管し、卵が成熟するのを待って、一 生一度の産卵を行う。卵の孵化日数は、およそ 4~5 週間。この間、母タコは、不眠不休で新鮮 な海水を送り、汚れを取り、自身は餌も摂らず、稚仔が孵化するまで献身的な努力をおこなう。 そして稚仔が無事に孵化すると寿命を全うする。 現在、日本国内に出回っているタコの 90%は、北大西洋アフリカのモ-リタリアやモロッコからの輸入 ものである。地タコは今や貴重品。乱獲は、必ず絶滅を招く。今のうちに保護対策を講ずるよう 魚見桜の憂いは尽きない。 8月の朝市調査は、27 日の処暑に行った。こ の日は、10 号台風がUタウンして、再び北上を始 めたため底曳船などが一部出漁を見合わせた ために、セリへの出荷量が少なくなった。 水揚げされた魚介類は、全部で 49 種。そのう ち魚類が 37 種で、甲殻類が 6 種そして軟体類 が 6 種であった。出荷函数は、魚類が 186 函で 最も多く、次いで軟体類が 55 函、甲殻類 34 函の順であった。そのため函数比率では、魚類 が 67.6%と先月と大差がないが、甲殻類(小型エビ)が少なくなり、軟体類(イカ・タコ)の比率がアッ プした。 表 1 水揚げ魚のランキング(ベスト 10) 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 種名 マルアシ マダコ ガザミ マエソ マアジ ハモ マダイ イボダイ ボラ シログチ 函数 57 45 18 18 15 12 12 11 7 7 首位のマルアシは大躍進だが、先月首位のマアジは第 5 位に後退。第2位のマダコは先月と同じ。 マダコは出荷量も横ばいでよく健闘している。第 3 位のガザミは、大幅増加したが、タイワンガザミと の混合が多い。第 8 位のイボダイは初漁。まだ型が小さく、9 月以降が本番となる。 シログチは、旬入りだが、やや漁が少ない。ベスト 10 入りは、魚類8:甲殻類1:軟体類1の比 率。 今月のトピックスは、タイワンガザミ。セリにはガザミと一緒に出されており、区別されていない。 本種は、ガザミ類には珍しく、甲羅表面の模様が雌雄で異なる。雄の方が鋏脚が長く、大型で、 1 魚見桜の蘊蓄⑧ 朝市シリーズ(2016-8) 甲羅に白い模様が散らばっている。一方、雌は、殻が硬いが、身は締まっており、甘みが強 い。ミソ・内子は非常に濃厚な旨みがある。 タイワンガザミ(オス) タイワンガザミ(メス) 旬のイカ 見分け方: ケンサキイカとアオリイカ ケンサキイカ(ヤリイカ科):鰭は胴長の 50~70% 程度。ヤリイカと似ているが胴が太く、丸い。 (写真上) アオリイカ(ジンドイイカ科):鰭は大きく、丸く胴の 全体にある。胴の中に甲はない。 (写真下) 旬のお魚料理 アジの冷や汁(日向名物) 宮崎平野に伝わる伝統郷土料理 料理(作り方) 大きめのマルアジを焼き、身だけ取ってほぐす。すり鉢でゴマを擂り、マルアジの身と味噌を加えて よくすり混ぜる。頭と中骨を焼き、出汁を作り、延ばすと完成。 冷や汁にぶっかけ氷を浮かべ、これを熱いご飯にかけて食べる。上に薄切りキュウリと刻み青 ジソを置き、ご飯に乗せる。ジネンジョとろろと遜色ない。一気に夏バテも吹き飛ぶことでしょう。 以上は、池波正太郎著「食道楽の作法」より マルアジの姿 アジの冷や汁(日向名物) 2 魚見桜の蘊蓄⑧ 朝市シリーズ(2016-8) 夏バテや アジの冷や汁 日に三度 8月のお魚 シマフグ(マフグ科) オオニベ(ニベ科) イトヨリダイ(イトヨリダイ科) フエダイ(フエダイ科) 鰭がすべて黄色で、背や 頭が小さく、胸鰭が短い。尾 識別ポイントは、尾びれ上葉が 暖海性魚 腹に小棘が密生。 鰭後端は真っすぐで、中央 糸状に長い。体側に6本の黄 すべての鰭は黄色 卵巣・肝臓に強毒。肉・皮 がやや出ている。 色縦線が走る。 眼の下の頬部に一本の青 白味で美味しい。照り焼き、 色線。側線上方に目立つ 味噌漬けにする 白色斑。 は無毒。 ガザミ(ガザミ科) クエ(ハタ科) ハモ(ハモ科) メジナ(メジナ科) カニ漁は8~12月が漁期(夏 俗称:アラ 体長は1mに達す 2000年代漁獲量が大幅に 俗称:クロ に脱皮する) る。暗色横帯は斜め走る。クエ 増加した代表。 黒潮海域に多い。尾鰭上 寿命は満2年。秋、交尾後のカ 鍋は鍋界の最高峰。非常に高 現在、県下では杵築市・日出 下葉先端が長い ニが美味しい。 価だが博多の「あら料理」の店 町が主産地。 料理:皮をつけたまま表面 岬ガニ(香々地)で有名 が多い。 京都・大阪で人気 を焼き、皮下の脂は旨い。 2016年8月27日 県漁協日出支店の魚市場朝市の魚介類 調査:日出町役場 上城 義信 写真撮影:同 松澤 京子 3
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