No. 25 編集・発行/レンタルのニッケン 安全・技術部 発行日/2004年 1月 5日 ヒヤリ・ハット情報の活用 安全を先取りして、事故・災害を積極的に回避して、かけがえのない人生をよ り豊なものとするために、ケガにはならないが、 「ヒヤリとした」、 「ハットした」 といった体験をもとに、それを情報として活用して、安全を確保することをね らいと致します。 1 死亡または重傷災害 29 軽傷災害 300 ヒヤリ・ハット(ケガのない事故) ハインリッヒの法則 平成14年度の全国安全週間のスローガンは 「めざすゴールは危険ゼロ・進めよう職場の安全管理」、 平成15年度のスローガンは「危険をみつけて進める改善・高めよう職場の安全管理」でした。危険を 先にみつけ、安全を先取りして、危険ゼロを目指し、災害をゼロにしようとするには、ハインリッヒが 経験則から導き出したとされる、ハインリッヒの法則をベースとすることが良いと、考えられており ます。 「ヒヤリとした」、 「ハットした」ということは、人が体験したことであり、この中には危険や失敗が 潜んでいることであり、それを共有することによって、危険を早く見つけて、危険ゼロを目指したい ものです。 身の回りで起こる ヒヤリ・ハット 人が体験した「ヒヤリ」、 「ハット」はとても身近なものです。いつ自分自身がそれと同種の体験を し、29件の軽傷災害となるか、 1つの死亡災害となるか、 その可能性の中にあります。 「長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった…」川端康成の「雪国」のようですが… 情報提供と活用 長いトンネルでの走行で、外の積雪の意識・感覚を失 い、走行スピードが上がった。その状態でトンネルを抜 け出た時、雪の積もった路面の変化に対応が出来なか った。情報は早く身近な範囲に伝達して、安全の先取り をする。身近な仕事の仲間で行なう朝礼などでも提供 して、同類の「ヒヤリ・ハット」を回避する。 冬季に舗装された長いトンネルを、高スピードで抜ける時、急に雪の路面 に出て、 前を走る自動車を意識してブレーキをかけ、 スリップして 「ヒヤリ」 とした。 坂道で見通しのきかないカーブで 情報提供と活用 カーブの多い、見通しの悪い登り坂を走行する場合、 先行する大型車の走行特性を意識せず、その減速に気 づかずに運転して「ヒヤリ・ハット」した。 走行中に排気ガスの変化があるディーゼル車の後に 続く、1台目、2台目の車は、車間距離を十分にとること。 坂道での加減速時、排気ガスが多くなること等を意識 して、車間距離をとること。身近な仲間、同じ企業内で、 その道路を通過することが多い場合、その事例を早く 提供・共有し、安全の領域を広げる。 登り坂のカーブに、採石を積んだ大型のダンプカーがさしかかった。自分が運 転する車の前には、ダンプカーの後ろを走る乗用車があった。ダンプカーはア クセルをふかし、排ガスを多くはいてカーブを曲がったため、スピ−ドが落ち た。すぐ後を走る車は、排ガスを避けるためスピードをおとした。自分が運転 する車は、その減速に気づかずにカーブを曲がり、前の車に追突寸前となった。 平成14年の建設業における、自動車等による死亡災害は79人で、全体の13%を占めております。上記 の2例のみをみても、季節・時間・道路の傾斜・カーブ・広さ・複数の車・複数の運転者・車種・積載状態等があ り、機械的に情報を文書にして蓄積し、 展開するとしたら、効率の悪い膨大なデータとなります。 79人の死亡災害の裏側にあるヒヤリ・ハットを、ハインリッヒの法則にのっとって数えると、なんと 23700回ということになります。 記録は、 図・イラスト化して共有できるものが明快です。 交通事故原因の80%以上が、人が原因で起こっていると言われています。体の健康だけでなく、心の健康 が安全の大前提となり、平素の心身の自己管理が、安全先取りのベースとなると言われます。 パ ワ ー シ ョ ベ ル 、ロ ー ラ 平成14年における、パワーショベル等によ る死亡災害は38人である。建設機械等の合計は 92人で、約41.3%を占めているが、この機種は 毎年最上位を示している。 幅広く、多方面で使用される機種だけに、ただ 近道本能が原因の全てではないが、身近なとこ ろで、早く「ヒヤリ・ハット」体験を伝達して、ハ インリッヒの法則にあてはめて考えられる、去 年の11400回のヒヤリ・ハットを減少させなけ 急いでおり、稼働中のパワーショベルの後ろを通ろうとして、挟まれ そうになった。 ればならない。 平成14年の土木工事の中で、道路工事での死 亡災害は、68人(26%)で最大である。建設機械 等の中で、ローラ等によるものは12人で、パワ ーショベルに次いで2位(13%)である。道路と いう限られたスペースと、限られた時間におけ る施工で、機械・人が複合的にかかわって行わ れる工事において、発生する事故災害を防ぐた めに、 「ヒヤリ」 「ハット」のホット情報を体験者 マカダムローラの近くで、バイブロプレ−トを使って転圧作業中、マ カダムローラに接触しそうになった。 が早く周囲に提供して、安全を先取りしたいも のです。 積載形トラッククレーン 情報提供と活用 積載形トラッククレーンで、型枠材料を吊り上げ作業中、アウトリガを最大に張 り出し、荷台の荷を機体の横の2階床面に降ろすため、旋回して図のように降ろ そうとしたら、アウトリガが陥没した。地盤が弱い場所であった。 積載形トラッククレーンによって、建築現場 に材料の運搬を行なっていた。荷おろしにあた って、アウトリガを最大に張り出し、荷を2階 床面に降ろそうとして、ジブを伸ばし、ジブを 倒している時、突然、アウトリガが陥没して、機 体が傾き、たまたま、つり荷の底面と床面との 間隔が少なく、転倒には至らず、災害には繋が らなかったが、ヒヤリとした。 平成14年にクレーン等による死亡災害は114人でした。積載形トラッククレーンによるものは24 人(21.1%)で、機種別では、天井クレーンの29人に次いでおります。荷を荷台に積んで走る、荷の積み 下ろしが出来るクレーンが搭載されているといった有効性は、幅広い利用がなされるところとなり、 普及台数も多く、災害の数も多いという一般的な理解が出来ます。しかし、つり上げ荷重が3t未満の機 種については、その殆どに過負荷防止装置が装備されていないといった状況も考えられます。 それらもふまえて、いろいろな場面で使われる機種として、ぜひあなたの「ヒヤリ・ハット」事例を、 より早く、先ず身近な周辺に供給して、 災害に至るルートを断ち切りたいものです。 ヒヤリ・ハットの減少に向って 40.1 40 平成12年・厚生労働省調べ(複数解答) 29.7 30 する時など、順序・段取りを考えています。復数の作業 が進行する建設作業場には、複数の機械類があります。 その中で、安全、効率などを考慮した上で、シンプル化 などが図られ、 衛生にも関係する基本の4S (整理、 整頓、 20 24.1 15.5 12.5 11.9 10 0 清掃、清潔)の励行があり、安全で快適な職場づくりを 目指しております。 25 ヒヤリ・ハット事例での状況別割合 50 人は家庭で、料理を作る時、また食器類を洗い・収納 No. 厚生労働省で作られたデータによると、ヒヤリ・ハ ット事例で最も多いのは、物の置き方等であり、関係 者の感性、意欲などが大きく影響することがうかがえ ます。 ヒヤリ・ハットは身近で体験できますが、そこで同じ 仕事に携わる仲間は同じ条件の中にあり、 同じヒヤリ・ ハット体験の予備軍と考えてさしつかえなく、いや、 それを通り越して怪我をするかも知れません。体験は 身近な仲間に早く、要領よく伝えなければなりません。 物 自 体 の 欠 陥 安防 全護 装装 置置 の︑ 欠 陥 作物 業の 場置 所き の方 欠︑ 陥 服保 装護 等具 の︑ 欠 陥 20.5 18.5 14.1 作 業 環 境 の 欠 陥 不第 安三 全者 な︵ 状物 態︶ に よ る 不自 安然 全的 な 状 態 作 業 方 法 の 欠 陥 そ の 他 ●ヒヤリ・ハット体験は、身近な小集団に、早く、要領よく伝達する。 ●ヒヤリ・ハット体験のイラスト化(誰もが短時間で内容を理解できる)による水平展開による共有化。 安 全 自動停止装置の中で、 意識せずにも働くもの 装置 特許出願は昭和60年12月24日でした。 昭和60年は8月12日に群馬県の御巣鷹山にジャンボ機が墜ちて、500人以上亡くな ったという大きな事故がありました。 タッチセンサ あとがき 新年を迎えました。死亡災害が減少する中にあって、今年も更 なる減少を願い、それに向って、危険ゼロ、安全の先取りをすす める中で、底辺にある「ヒヤリ・ハット」を扱いました。事故災害を体系化、知識化して 伝達することの前に、同じ作業場所・同じ時間帯で作業にあたる小集団に、早く、要領 よく、その体験を伝達して積極的に災害事故を回避すること、これがヒヤリ・ハットの 特性に素直に対応することの一つと考えました。 今年の皆様のご健勝をご祈念申し上げ、変わらぬご指導をお願い申し上げます。 ご意見ご要望はeメールをご活用下さい。 ●e-mail:[email protected] 発行日/2004年 1月 5日 ブ ー ム リ フ ト 9.9m タッチセンサが 助けてくれた! 安全・技術部 昭和60年以降、高所作業車が係わった死亡災害のなかで、挟まれによる ものが多くみられました。機械のみを貸し出すことを業とするレンタル 業者として、レンタルのニッケンは、その再発を防止するための非常停止 装置を、 他に先駆けて独自で開発致しました。その特性は、 挟まれについて、 危険・ 「ヒヤリ・ハット」を感じてから操作する、といった非常停止装置で なく、人が意識しなくとも、機械がそれを感知して作動して、挟まれ災害 を防ぐものです。 編集・発行/レンタルのニッケン ヒヤリ・ハットの特性からして、ヒヤリ・ハットを体験して、先ず行なうべきことは、自分自身の安全先取りに役立てることと、 上記の二つであると考えます。 ホームページでも最新情報を お届けしています。是非ご覧下さい。 http://www.rental.co.jp M
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