キューバ共和国 法律第 118 号 外国投資法 2014 年 3 月 29 日人民権力全国議会採択 キューバ共和国官報、2014 年 4 月 16 日特別号第 20 号掲載 日本キューバ経済懇話会発行 1 キューバ共和国 法律第 118 号 目 外国投資法 次 前文……………………………………………………………………………………………1 第1章 目的および内容について:第 1 条………………………………..……..……1 第2章 用語について:第 2 条……………………………………………….……...….2 第3章 投資家への保証について:第 3 条~第 10 条…………………….……...….3 第4章 外国投資の対象部門と投資機会一覧簿:第 11 条………………….……….4 第5章 外国投資について 第1節 外国投資の形態について:第 12 条~第 13 条…………………………….5 第2節 合弁企業について:第 14 条………………………………………………..5 第3節 国際経済提携契約について:第 15 条……………………………………..5 第4節 全額外国資本企業について:第 16 条……………………………………..6 第6章 不動産における投資について:第 17 条……………………………………..7 第7章 出資とその査定について:第 18 条…………………………………………...7 第8章 外国投資の交渉と許可について:第 19 条~第 24 条……………………...8 第9章 銀行制度について:第 25 条…………………………………………………...9 第 10 章 輸出および輸入制度について:第 26 条………………………………….…9 第 11 章 労働制度について:第 27 条~第 33 条………………………………….…10 第 12 章 特別租税制度について:第 34 条~第 47 条…………………………….…11 第 13 章 留保金と保険について:第 48 条~第 50 条……………………………....12 第 14 章 登記と財政報告について:第 51 条~第 53 条…………………………….13 第 15 章 科学、技術、環境およびイノベーション:第 54 条~第 58 条…………13 第 16 章 監視行為について:第 59 条………………………………………………….14 第 17 章 紛争解決の制度について:第 60 条~第 61 条…………………………….14 特別規定…………………………………….………………………………………………..15 暫定規定……………………………………………………………………………..……….15 最終規定………………………………………………………………………………………15 キューバ共和国官報、2014 年 4 月 16 日特別号第 20 号掲載 日本キューバ経済懇話会 2014 年 5 月 9 日発行 住所 〒107-0052 東京都港区赤坂 2-3-6 コマツビル 電話 03-3585-1258 本書の全部または一部の複写複製(コピー)・転載を禁じます。 2 キューバ共和国 法律第 118 号 外国投資法 全国人民権力議会 フアン・エステバン・ラソ・ヘルナンデス、キューバ共和国人民権力全国議会議長は、 以下のことを布告する:キューバ共和国人民権力全国議会は、2014 年 3 月 29 日の第 8 期第一回特別議会において、下記のことを承認した: 一.わが国は、持続可能な発展を達成するという諸課題を前にして、外国投資によって、 国外の金融、技術、新たな市場を取得し、またキューバの生産物とサービスを国際的な価 値に関連づけて組み込み、国内産業に新たな積極的な効果を生み出すことができ、さらに そのことによって国の成長を実現できる。 一.国内経済において、「党と革命の経済・社会政策路線」 1 によって規定されているキ ューバの経済モデルの刷新の結果として諸変化が生じており、1995 年 9 月 5 日付の法律 第 77 号「外国投資法」が定めている外国投資の法的枠組みを検討し、修正することが必要 となっている。そのことは、人的および天然資源の保護ならびに合理的利用、ならびに民 族主権および民族の独立を基礎として、外国投資に大きな刺激を与え、外国資本の誘致が 国の持続的経済発展の目標と国民経済の回復に、効果的に寄与できるようにするためであ る。 一.キューバ共和国憲法は、多様な所有形態の中で、合弁企業、会社および経済提携所 有等を定めており 2 、また国家所有に関しては、もしそのことが国にとって有用かつ必要 である場合には、例外的性格として国の経済発展を目的として経済的対象物の全面的また は部分的移転を予見している 3 。 一.人民権力全国議会は、共和国憲法第 75 条 b 項に定められている権限 4 を行使して、 以下の法律を公布する。 法律第 118 号 外国投資法 第1章 目的および内容について 第1条 1.この法律は、わが国の領域における外国投資の法的枠組みを制定するもの であり、その基礎は、法律の尊重、民族の主権と独立、互恵であり、繁栄した持続可能な 社会主義社会のためにふさわしく、われわれの経済発展を実現することである。 2.この法律およびこの法律の補完的規則は、投資家への便宜、保証、法的安全の制度 を定め、外国資本に魅力を提供し、その活用を図るものである。 3.わが国における外国投資は、輸出市場の多様化と拡大、先進的技術の取得、輸入の 代替、とりわけ食料の代替を目的としている。同様に、国外の金融の取得、新たな雇用源 3 の創出、経営方式の習得、経営を生産の連鎖の発展に結び付けること、また循環型エネル ギー源の利用を通じた国の主要エネルギーの転換を目的としている。 4.この法律が含む諸規定は、投資家への保証、外国投資の対象部門、外国投資が採用 できる諸形態、不動産への投資、出資とその査定、ならびに投資の交渉と承認の方法に及 んでいる。同様に、銀行制度、輸出入制度、労働制度、租税制度、留保金と保険制度、登 記と財政報告制度、さらに、環境保護に関する規範、天然資源の合理的な利用、科学的イ ノベーションおよび技術の保護を制定し、外国投資の監視行為および紛争の解決方法を規 定している。 第2章 用語について 第 2条 この法律とその規則 5 において、次の用語が、それぞれの場合に指摘されてい る語義で使用される: a) 国際経済提携:国内の領域において内国投資家と外国人投資家が、財の生産とサービ スの提供、または両方のために営利目的で行う提携で、合弁企業および国際経済提携 契約を含む。 b) 許可証:閣僚評議会またはこの法律で考えられている形態の外国投資を実現するため に委任されている中央国家行政機構の長によって発行される、権限を示す文書。 c) 外国資本:外国に由来する資本、また、この法律にしたがって再投資される外国人投 資家に帰属する配当または収益部分。 d) 上級幹部職:合弁企業および全額外国資本企業の指導機関および管理機関の人員の役 職、ならびに国際経済提携契約の当事者双方の代表者の役職。 e) 行政的権限の付与:閣僚評議会が、一時的な性格で公共のサービス活動、公共事業の f) 実施、または規定される期限と条件でのもとで公共財産の利用のために付与する権限。 国際経済提携契約:国際経済提携に固有の行為を実行するため、わが国の単独または 複数の投資家と、単独または複数の外国人投資家の間で、双方とは別個の法人を設立 することなく締結した合意。 g) 全額外国資本企業:わが国のいかなる投資家または個人も、外国資本をもって参加し ない、外国資本による商業機関。 h) 合弁企業:記名株式による株式会社の形態をとるキューバの商業会社であり、それに は、株主として、単独または複数の内国投資家および単独または複数の外国人投資家 が参加する。 i) 雇用機関:合弁企業または全額外国資本企業と契約を締結する権限を与えられた、法 人格をもつキューバの機関で、この契約を通じで、企業の要請に応えて必要な労働者 を提供する。これらの労働者は、この機関と労働契約を結ぶ。 j) 収入:キューバ人労働者および外国人労働者が取得する賃金、所得およびその他の報 酬、ならびに賃金増加分、補填またはその他の追加的支払。ただし、経済的報奨金が 存在する場合、その基金から得る収入は除く。 k) 外国投資:この法律で定められているすべての形態において、外国人投資家によって 4 行われる出資。その中には、認可されるまでの期限内における交渉のリスクの負担金、 収益を取得する見通し、国の発展への税金も含まれる。 l) 外国人投資家:外国に住所を有し、外国資本を所有する自然人または法人で、合弁企 業の株主として参加する、もしくは全額外国資本企業に参加する、または国際経済提 携契約の当事者となるもの。 m) 内国投資家:キューバ領域内に住所を有し、合弁企業に株主として参加する、または 国際経済提携契約の当事者となる、キューバ国籍の法人 6 。 n) 開発特区:特別な制度と政策が制定されている地域で、その目的は、外国資本の誘致 を通じた持続可能な経済発展、技術革新、産業の集中、また国内経済の不断の調整に よる輸出の拡大、輸入の効果的な代替、あらたな雇用源の創出を推進することである。 第3章 投資家への保証について 第 3条 キューバ国家は、外国人投資家およびその投資に付与された便宜 7 が、付与さ れた全期間維持されることを保証する。 第4条 1.外国投資は、わが国の領域内で完全な法的保護と保証を享受し、これを収 容することはできない。ただし、公共の用途もしくは社会的利益を理由として閣僚評議会 により事前に宣告されて実行される場合を除く。収容の場合、投資と現行法規に関して共 和国憲法の規定 8 、キューバ共和国が署名した諸国際条約 9 に合致し、相互の合意で確定し た商業価格に相当する自由交換可能通貨 10 での支払をもって、しかるべき補償 11 を行わな ければならない。 2.もし商業価格について合意に至らない場合には、価格の設定は、財政価格省により 承認され、また収容の過程に関わる当事者双方の合意によって契約された商業査定におい て国際的に権威ある組織によって行われる。前述の組織の選定に関し双方が合意に至らな い場合には、その選定に当たり組織を決定するために抽選を行うか、または法的手段に持 ち込まれる。 第5条 外国投資は、わが国において、第三者による法律に基づいて行われるクレーム に対して、または、ある国の法律のその国の領域外への適用 12 によるクレームに対して、 キューバの法律およびキューバの裁判所が裁定するところに従って、保護される。 第6条 1.合弁企業、国際経済提携契約の当事者双方、または全額外国資本企業の業 務の発展のために付与された許可の期限は、それを付与した当該機関によって延長されう る。ただし、設定された期限の満了前に関係当事者によって申請されなければならない。 2.期限の満了に当たり期限が延長されない場合、合弁企業、国際経済提携契約、また は全額外国資本企業は、設立文書の合意にしたがって、また現行法規の規定にしたがって 清算される。外国人投資家に所属する部分は、自由交換可能通貨で支払われる。ただし、 契約で反対のことが記されている場合は、その限りではない。 第7条 1.国際経済提携の一方の当事者の外国人投資家は、当事者双方の事前の合意 にしたがって、自らの権利部分を、キューバ国、第三者または提携の当事者に、事前の全 面的もしくは部分的な許可を得て、売却するか、またはなんらかの別の形態に移転するこ 5 とができる。その場合、自由交換可能通貨で相当価格を受け取る。ただし、契約で反対の ことが記されている場合は、その限りではない。 2.全額外国資本企業の外国人投資家は、自らの権利部分を、キューバ国または第三者 に、事前の全面的もしくは部分的な許可を得て、売却、またはいかなる別の形でも移転す ることができる。その場合、自由交換可能通貨で相当価格を受け取る。ただし、契約で反 対のことが記されている場合は、その限りではない。 第8条 この法律の第 6 条および第 7 条に関する事案において、外国人投資家がしかる べく受け取る金額は、交渉のなんらかの時期に当事者双方の合意によって決定される。も し金額を確定するために第三者に訴える必要がある場合は、財政価格省によって許可され た商業査定における国際的に権威ある組織が選定される。 第9条 1.国は、外国人投資家に、税金または送金に関する以下の別の課税を支払う ことなく、自由交換可能通貨で国外に自由に送金することを保証する 13 : a) 投資開発により取得する配当金もしくは収益;また b) この法律の第 4 条、第 6 条、第 7 条で述べられている場合に受け取ることになる金額。 2.外国人自然人で、合弁企業、あらゆる形態の国際経済提携の当事者または全額外国 資本企業に役務を提供する者は、キューバ共和国における居住者 14 でない限り、キューバ 中央銀行により決められた金額の範囲内で、また公布されたその他の規定に従って、受け 取る収入を国外に送金する権利を有する。 第 10 条 合弁企業ならびに国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人 投資家は、許可された期限の満了まで、この法律が規定する特別な租税制度に従うものと する。 第4章 外国投資の対象部門と投資機会一覧簿 第 11 条 1.外国投資は、これをすべての部門で許可することができる。ただし、国民 への医療および教育サービスならびに企業制度以外の国防機関 15 は除く。 2.閣僚評議会は、推進すべき外国投資の機会を、また外国投資のための全般的かつ部 門別の政策を承認する。それらは、貿易外国投資省により外国投資機会一覧簿で公開され る 16 。 3.国の中央行政機関である諸組織および国内の外国投資の実行諸機関は、承認された 政策にしたがって、貿易外国投資省に外国投資の商談を明確にして紹介する義務を有する。 4.貿易外国投資省は、閣僚評議会に、国の中央行政機関である諸組織および国内の外 国投資の実行諸機関によって作成された外国投資機会一覧簿の作成および更新状態につい て毎年報告する。 第5章 外国投資について 第一節 外国投資の形態について 6 第 12 条 この法律で規定された外国投資は、次の形態をとる: a) 直接投資、これは、外国人投資家が合弁企業もしくは全額外国資本企業に株主として参 加する、または国際経済提携契約への出資でもって業務の管理に実効的な形で参加す る形態で、業務の管理が効果的に行なわれる参加形態である:また、 b) 公的または私的な形であれ、株または別の有価証券への投資で、直接投資の要件を満た さないもの。 第 13 条 1.外国投資は、次のように分類される: a) 合弁企業; b) 国際経済提携契約;または c) 全額外国資本企業 2.国際経済提携契約としては、非循環型天然資源探査リスク契約、ならびに建設、農 業生産、ホテルの経営管理、生産およびサービス管理のための契約、ならびに専門サービ スの提供契約等に分類される。 第2節 合弁企業について 第 14 条 1.合弁企業は、両当事者とは異なる法人の設立を意味し、記名株式による 株式会社の形態を採用し、この分野の現行の法規が合弁企業に適用される。 2.内国投資家および外国人投資家が出資しなければならない出資比率は、出資者によ って合意され、許可証の中に定められる。 3.合弁についての協定は、出資者の間で署名された合意であり、発展を希望する業務 の運営についての基本的な協定を含むものである。 4.合弁企業の設立には、その有効性のための必須の条件として、公的な証書の形態が 要求され、合弁企業の定款が含まれ、許可証および合弁についての協定が添付されること。 5.合弁企業の定款は、会社の組織および業務に関する規定を含む。 6.合弁企業は、商業登記簿に記載されたときに、法的性格を取得する。 7.設立された合弁企業は、株主の間の合意によって株主を変更することができる。た だし、許可証を付与した当局の事前の承認を必要とする。 8.合弁企業は、事務所、出張所、支店、支社をキューバ国内にも国外にも設置でき、 また外国の事業機関に参加することもできる。 9.合弁企業の解散および清算は、合弁企業定款の規定に、また現行法規にしたがって 行われる。 第3節 国際経済提携契約について 第 15 条 1.国際経済提携契約は、次の性格等を有している: a) 当事者双方の法人以外の法人の設立を意味しない; b) 許可証に含まれるすべての活動の実行を目標とすることができる; 7 c) 当事者双方は、当事者に利益になると理解されるあらゆる協定および条項を制定する 自由がある。その場合、許可された目的、許可証の要件もしくは現行の法規に違反して はならない;また d) それぞれの契約当事者は、別々の出資を行い、出資を積み立てる。その累積出資は、あ らゆる時期に資産となり、会社資本金となるにはいたらないまでも、共同の資金とする ことができる。ただし、その場合、当事者のそれぞれの資産の比率を決定しなければな らない。 2.国際経済提携においては、その目的がホテルの経営、生産管理、もしくはサービス の管理、または専門的サービスの提供である場合は、出資金は積み立てられず、共同の基 金も作られず、本状の第 3 項および第 4 項に記載されている性格を有する。 3.ホテルの経営、生産管理、またはサービスの管理のための国際経済提携契約は、顧 客へのサービスの改善もしくはより良い品質の生産を、また国際的に知られた商標の使用 および宣伝によって利益を得ること、外国人投資家の貿易の拡大および国際的進出を目的 としている。この契約は、次の性格等を有している: a) 外国人投資家は、署名された管理契約に関して内国投資家の名前で、また代表して、活 動する; b) 収益を分配しない;また c) 外国人投資家への支払いは、活動の成果に従う。 4.専門的サービスの提供のための国際経済提携契約は、次の性格等を有している: a) 国際的に著名な権威ある外国のコンサルタント会社と契約する;また b) 会計監査、経理の助言、会社の査定および金融のサービス、組織上の改善、マーケティ ングおよび商談業務、ならびに保険の仲介という一連のサービス全体の提供を目的として いる。 5.国際経済提携契約を有効なものとするためには、公的文書の様式が要求され、商業 登記簿に記載されたときに効力を発する。 6.国際経済提携契約が承認されたのちは、両当事者を変更することはできない。ただ し、当事者双方の合意により、また許可証を付与した当局の承認があればその限りではな い。 7.国際経済提携契約の終了は、同契約に定められたところに、また現行法規にしたが う。 第4節 全額外国資本企業について 第 16 条 1.全額外国資本企業においては、外国人投資家は、同企業の経営を行い、す べての権限を享受し、許可証に記載されたすべての義務を遂行する。 2.全額外国資本企業の外国人投資家は、事前に商業登記簿に記載され、キューバ領域 内に定住できる: a) 自然人として独立して行動する; b) 法人として、株式所有者の外国機関のキューバ支社として設立され、公式文書を通じて、 8 記名式株式による株式会社の形態をとる;あるいは、 c) 法人として外国機関の支店として設立される。 3.支社として設立された全額外国資本企業は、事務所、出張所、支店、支社をキュー バ領域内にも外国にも設立することができるし、また国外の機関に参加することもできる。 4.キューバ支社の形態をとっている全額外国資本企業の解散および清算は、その会社 の定款の定めるところに、また現行法規の規定にしたがって行われる。 5.自然人および外国企業の支店に許可された活動の終了は、許可証において、また、 そのために現行法規の規定にしたがって行われる。 第6章 不動産における投資について 第 17 条 1.この法律に定められた投資の形態にしたがって、不動産への投資を実行 し、その所有権またはその他の物権を取得することができる。 2.前項で述べている不動産投資は、次のものに向けられる: a) 個人の住宅または観光目的の住宅および建物; b) 外国法人の住宅または事務所;あるいは c) 観光発展の目的をもつ不動産の開発。 第7章 出資とその査定について 第 18 条 1.この法律の目的に照らして、次のことが出資とみなされる: a) 通貨による出資は、外国人投資家の場合には自由交換可能通貨とする。 b) 機械、設備またはその他の有体財産; c) 知的所有権およびその他の無体財産についての権利; d) 動産および不動産についての所有権、ならびにこれらについての使用権および地上権 を含むその他の物権。 e) その他の財産および権利。 自由交換可能通貨によらない出資金は、自由交換可能通貨に換算して評価される。 2.国家所有財産についての所有権またはその他の物権のキューバ人投資家への移転は、 キューバ人投資家による出資とするためには、共和国憲法に規定されている諸原則のもと に行われ、財政価格省の事前の許可が必要である。同省は、該当する機関、組織または企 業の見解を聞き、閣僚評議会またはその執行委員会の承認を適宜に取得しなければならな い。 知的財産権および無体財産についてのその他の権利についての出資に関しては、この分 野を規定する法規に従う。 3.自由交換可能通貨による通貨での出資は、国際市場においてその価値が査定され、 キューバ・ペソへの換算の実施には、キューバ中央銀行の為替レートが適用される。外国 投資の出資となる自由交換可能通貨は、キューバの領域内業務が許可されている銀行機関 を通じて、わが国に送金され、この分野の現行規定にしたがってこの銀行機関に預金され 9 る。 4.通貨によらない外国当事者の出資金で、合弁企業、全額外国資本企業の会社資本に 向けられる、または国際経済提携契約の出資金となる場合は、投資家が自由に合意する方 法によって査定される。ただし、その場合、一般に国際査定基準によって承認され、財政 価格省の許可証を所有している機関によって交付される、しかるべき専門鑑定書による査 定で証明され、付与される公的文書で登記されなければならない。 第8章 外国投資の交渉と許可について 第 19 条 1.国際経済提携の設立のためには、内国投資家は、投資のそれぞれの要素 を外国人投資家と交渉しなければならない。その要素には経済的採算性、それぞれに相当 する出資額、その提携がもつ経営陣および管理の形態、ならびにその公式化のための法的 文書を含む。 2.全額外国資本企業の場合は、貿易外国投資省は、投資家が投資を行いたいと考える 基幹部門、その下位部門または経済活動に責任あるキューバ機関を投資家に紹介する。全 額外国資本企業は、その提案を検討し、該当する書面の承認を取得しなければならない。 第 20 条 キューバ国家は、外国投資を許可するが、国防および国家安全保障、国家遺産 ならびに環境に影響してはならない。 第 21 条 1.キューバ領域内で外国投資を行うための承認は、外国投資の分野、形態、 性格を考慮して、次の国家機関によって付与される: a) 国家評議会; b) 閣僚評議会;および c) 本件を許可されている中央国家行政組織の長 2.国家評議会は、外国投資を、次の場合はいかなる形態であれ承認する: a) 非循環型の天然資源を探査または開発する場合。ただし、国際経済提携リスク契約に守 られている場合は除く。リスク契約の場合は、本条第 3 項 d)号にしたがって承認され、 許可される;また b) 運輸、通信、上水道、電気のような公共サービスの活動、公共事業の実施または公共財 の開発の場合。 外国投資が国家評議会によって事前に規定された事案において承認された場合、閣僚評 議会によって許可証が発行される。 3.閣僚評議会は、次の問題に関する場合、外国投資の許可を承認し、許可証を発行す る: a) 不動産開発 b) 全額外国資本企業 c) 国有財産またはその他の国有財産についての物権の移転 d) 非循環型天然資源の開発および生産のための国際経済提携リスク契約 e) 公共資本が参加する外国企業の関与 f) 循環型エネルギー源の使用 10 g) 医療、教育分野および国防機関の企業制度 h) 国家評議会の承認を必要としないその他の外国投資 4.閣僚評議会は、国家中央行政機関の長に、その権限の範囲で、投資の形態と投資分 野を考慮して、外国投資を承認し許可する権限を委譲できる。 第 22 条 1.合弁企業もしくは全額外国資本企業の設立、または国際経済提携契約の 締結のためには、貿易外国投資省にこの法律の規則にしたがって申請を提出しなければな らない 17 。 2.もし承認された投資の目的が、公共サービス活動、公共事業の実施または公共財の 開発である場合、閣僚評議会は、国家評議会により承認されたのちに、現行の法規の規定 にしたがって条件を確定して、該当する管理権の移転を付与する。 3.該当機関による外国投資の拒否または承認の決定は、申請提出日から数えて 60 日 自然日期限内に決定され、申請者に通知されなければならない。 国家中央行政機関の長の承認に付された外国投資の形態の場合には、決定は、承認され た日から数えて 45 日自然日期限内に行われる。 第 23 条 許可証に定められた条件の変更は、この法律の第 21 条の規定にしたがって該 当機関の承認を必要とする。 第 24 条 許可証に定められた条件は、貿易外国投資省によって、投資家の要請によっ て明らかにすることができる。 第9章 銀行制度について 第 25 条 1.合弁企業、内国投資家および国際経済提携契約の当事者である外国人投 資家ならびに全額外国資本企業は、キューバ国内の銀行制度のすべての銀行において口座 を開設し、現行通貨制度にしたがってその口座を通じて、営業にともなう集金および支払 を行うことができる。同様に、わが国に設立されている金融機関が提供するサービスを利 用できる。 2.合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資家は、キューバ中央銀行 の事前の承認を得て、また現行法規にしたがって、外国に所在する銀行に自由交換可能通 貨で口座を開設し、運用できる。同様に、この問題に関する現行法規にしたがって外国金 融機関と融資契約を締結することができる。 第 10 章 輸出および輸入制度について 第 26 条 1.合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投 資家ならびに全額外国資本企業は、これらの目的のために定められた規定にしたがって、 その目的のために必要な物を直接輸出し、輸入する権利を有する。 2.合弁企業、国際経済提携契約の当事者双方および全額外国資本企業は、品質、価格、 納期が国際市場の条件と同じ条件で供給される場合、キューバ国内市場において財とサー ビスを優先的に取得する 18 。 11 第 11 章 労働制度について 第 27 条 外国投資の業務においては、キューバ共和国における現行の労働法規および 社会保障法規 る 19 が、この法律およびその規則に述べられていることを準用して、遵守され 20 。 第 28 条 1.外国投資に相応する業務において役務を提供する労働者は、一般的には キューバ人またはキューバ共和国に居住する外国人とする。 2.しかしながら、合弁企業もしくは全額外国資本企業または国際経済提携契約の当事 者双方の指導機関および管理機関は、特定の上級幹部職または技術的性格をもつなんらか の労働の職制を、わが国の非居住者が担当することを決定できる。この場合、これらの労 働者に適用される労働制度を、また労働者の権利および義務を制定できる。 3.契約されるわが国の非居住者は、キューバにおける現行の出入国法規および外国人 についての法規に従う。 第 29 条 1.合弁企業、国際経済提携契約の当事者双方および全額外国資本企業は、 貿易外国投資省の許可を受け、外国投資に相応する業務において役務を提供するキューバ 人労働者およびキューバ共和国の外国人居住者のために、経済的報奨金基金 21 を創設でき る。経済的報奨金基金への出資は、取得された収益を使用する。 2.前項で述べた報奨金基金の創設は、ホテル経営、生産管理またはサービス管理契約 および専門サービス提供契約は除外される。 第 30 条 1.合弁企業に役務を提供するキューバ人、キューバ共和国外国人居住者は、 指導機関および管理機関の人員を除いて、貿易外国投資省の提案により、また労働社会保 障省によって承認されて、雇用機関 22 によって契約される。 合弁企業の指導機関および管理機関の人員は、株主総会で任命され、該当する業務にお いて労働法上は合弁企業に所属する。 その例外として、許可証が付与されるとき、合弁企業で役務を提供する全員と、合弁企 業は、直接契約することができる。ただし、労働契約面での現行の法規の規定に従わなけ ればならない。 2.国際経済提携契約の当事者双方に役務を提供するキューバ人労働者またはキューバ 共和国の外国人居住者は、キューバ側当事者が契約する。労働契約面では、現行の法規を 準用する。 3.全額外国資本企業においては、キューバ人またはキューバ共和国の外国人居住者の 役務は、上級指導機関および管理機関の人員を除いて、貿易外国投資省により提案され、 労働社会保障省により承認された雇用機関と同企業が締結する契約を通じて提供される。 全額外国資本企業の指導機関および管理機関の人員は、該当する業務において同企業に より任命され、労働法上は同企業に所属する。 4.キューバ人およびキューバ共和国の外国人居住者への支払いは、キューバ・ペソで 行われる。 第 31 条 1.前条で述べた雇用機関は、キューバ人労働者およびキューバ共和国の外国 12 人居住者と個別に契約し、これらの労働者は、この分野での現行法規の規定にしたがって 労働法上は、この雇用機関に所属する。 2.合弁企業または全額外国資本企業は、特定の労働者が労働において企業の要求を満 たしていないと判断するときは、雇用機関に他人と交代するように要請できる。すべての 労働上のクレームは、特別の法規に定められた規定にしたがって雇用機関において解決さ れる。 第 32 条 本章のいくつかの前条の規定にもかかわらず、外国投資を承認する許可証に おいて、例外として、特別の労働法規を制定することができる。 第 33 条 経済的、社会的または環境面での収益に貢献する、イノベーションとなる技 術的成果または組織的成果の取得に参加したキューバ人労働者の権利は、現行法規の規定 にしたがって認められる。 第 12 章 特別租税制度について 第 34 条 合弁企業、国際経済提携契約の内国投資家および外国人投資家は、税制面で の義務および権利は、以下の数条の規定を準用してこの分野での現行法規の規定に従う。 第 35 条 合弁企業の出資者または国際経済提携契約の当事者の出資者である外国人投 資家は、事業の配当または収益として取得された収入については、個人所得税の支払 23 は、 免除される。 第 36 条 1.収益税は、合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家およ び外国人投資家により支払われ、課税対象となる純益に対して 15%の税率が適用される 24 。 2.合弁企業および国際経済提携契約の当事者双方には、それらの設立から 8 年間、収 益税の支払いは免除される。閣僚評議会は、承認された免税期間を延期することができる。 3.純益またはその他の収益で、許可を受けて再投資された分に対しては、収益税は免 除される。その場合、これらのわが国における再投資が当該機関により承認されなければ ならない。 4.天然資源の開発が行われる場合、循環型か非循環型かを問わず、閣僚評議会の決定 により収益税の税率を増大することができる。この場合、税率を 50%増加できるものとす る。 第 37 条 1.合弁企業および国際経済提携契約当事者である内国投資家および外国人 投資家は、卸売販売に対して適用される税率の 50%を減額して売上税 25 を支払う。 2.売上税の支払いを、合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資家お よび外国人投資家は、投資した営業の最初の1年間は免除される。 第 38 条 1.合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国 人投資家は、サービス税 26 を、適用される税率を 50%減額して支払う。 2.サービス税の支払いを、合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資 家および外国人投資家は、投資した営業の最初の1年間は免除される。 第 39 条 合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投 資家は、労働力使用税 27 の支払いを免除される。 13 第 40 条 合弁企業および国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投 資家は、海岸の使用または開発についての税金 の税金 28 、河川流域における排水の承認について 29 、湾の使用および開発についての税金、森林資源および野生の動物の利用と開発 についての税金 30 、ならびに地表水の使用の権利についての税金 31 を、投資の回復期間の 間 50%減額して支払う。 第 41 条 合弁企業ならびに国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人 投資家は、投資過程の期間中、設備、機械およびその他の資材の輸入については、財政価 格省に関して定められた施行令にしたがって、関税の支払いを免除される。 第 42 条 合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家 ならびに全額外国資本企業は、地域開発のための地域税 32 の支払い義務を負う。 合弁企業ならびに国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家は、 投資の回収期間、地域開発のための地域税の支払いを免除される。 第 43 条 1.国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家は、ホ テル経営、生産管理またはサービス管理ならびに専門サービスの提供を目的としている場 合、租税制度法および同法を補完する施行令の規定を準用して納税するので、前数条の規 定から除外される。 2.前項で述べている国際経済提携契約の当事者である外国人投資家は、売上税および サービス税を免除される。 第 44 条 全額外国資本企業は、有効期限内は諸税の支払の義務があるが、現行法規を 準用する。その場合、常に国に利益があるようにするために財政価格省により定められた 財政的性格の便宜を損なわないようにしなければならない。 第 45 条 この法律の目的に照らして、共和国税関は、本章で述べられている自然人お よび法人に対し、現行法規の規定にしたがって、正規の手続きおよび関税制度に関して、 特別措置を許可することができる。 第 46 条 税の支払いおよびその他の税関における納税者への還付可能な関税の支払い は、この問題における現行法規にしたがって行われる。ただし、閣僚評議会が投資の形態 を許可する場合に規定する事案は除く。 第 47 条 財政価格省は、貿易外国投資省の意見を聞き、投資の利益および金額、資本の 回収、閣僚評議会が優先的経済部門のために定めた指標 33 、また国内経済にもたらす利益 を考慮して、この法律で承認されたすべての外国投資の形態に対しても、全額もしくは一 部の、一時的もしくは恒常的な免税を認めることができるし、あるいは現行の租税法の規 定にしたがって、その他の財政的便宜を授与することができる。 第 13 章 留保金と保険について 第 48 条 1.合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投 資家ならびに全額外国資本企業は、それらの収益の損金として、また義務的な性格でもっ て、その経営において生じるかもしれない不測の事態に備えるために、留保金を設定する。 2.前項で規定された留保金の設定、利用および清算の措置は、財政価格省により制定 14 される。 第 49 条 前条で述べられている留保金とは別に、合弁企業、国際経済提携契約の当事 者である内国投資家および外国人投資家ならびに全額外国資本企業は、自らの意志で財政 価格省の規定にしたがって、留保金を設定することができる。 第 50 条 1.合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投 資家ならびに全額外国資本企業は、あらゆる種類の財および責任について保険を契約する ことが義務づけられる。キューバの保険機関は、国際水準の競争的条件のもとで優先的に 選択される権利を有する。 2.国営企業もしくはキューバの機関から借用されている工業、観光もしくはその他の 種類の施設または土地は、前項で述べられた条件で借用者が貸与者を受取人として付保す る。 第 14 章 登記と財政報告について 第 51 条 合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家 ならびに全額外国資本企業は、その業務を開始する前、許可証の通知期日後 30 日自然日 までに、公証役場の必要な公的文書の交付を受け、その文書の交付後 30 日以内に商業登 記簿に掲載される。 第 52 条 合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家 ならびに全額外国資本企業は、財政価格省により定められた、キューバ財政報告基準を遵 守しなければならない。 第 53 条 1.前条に述べられた報告は、年次業務活動報告、またこの法律の規定にし たがって要求されるすべての報告であり、貿易外国投資省に提出される。 2.前項に規定された年次報告は、財政価格省、当該税務事務所、全国統計情報局への 報告義務、また全国経済計画の方法上の規範および管理によって要求されている報告とは 別に、提出されるものとする。 第 15 章 科学、技術、環境およびイノベーション 第 54 条 外国投資は、奨励され、承認され、また国の持続的発展の文脈の中で運営され る。このことは、そのすべての段階において技術の導入、環境の保全および天然資源の合 理的利用が、注意深く行われることを意味する。 第 55 条 貿易外国投資省は、受け取った投資についての提案を科学技術環境省の検討 に委ねる。科学技術環境省は、環境上の観点からその妥当性を審査し、環境上の影響の査 定を行う必要があるかどうか、また現行法規の規定にしたがって特別な環境許可証の交付 の根拠ならびに管理および検査体制の妥当性があるかどうかを決定する。 第 56 条 1.科学技術環境省は、環境への損害、危害または危険が生じる状況に対し て、また天然資源の合理的な利用に対して適切な解決手段を規定する。 2.損害もしくは損失に責任ある自然人または法人は、以前の環境状況の復元に、また 15 場合によっては、しかるべき修復または補償の責任を有する。 第 57 条 貿易外国投資省は、受け取った投資についての提案を科学技術環境省の検討 に委ねる。科学技術環境省は、技術的な可能性、ならびに国の技術主権を保障するために 必要な知的財産権の保護および行使のための措置を検討する。 第 58 条 いかなる形態の外国投資の枠内で達成された成果についての権利も、知的財 産権を通じて保護されうるものであり、設立文書で合意されていることに従い、この分野 における現行の法規に従う。 第 16 章 監視行為について 第 59 条 1.さまざまな形態の外国投資は、現行法規に定められた監視行為に従い、 管理は、貿易外国投資省、また国家中央行政機関およびその組織、または、この分野の活 動を統括的する国内の諸機関によって実行される。 2.監視行為は、次のこと等を遵守しているかを査定する目的をもっている: a) 現行の法的規定;また、 b) それぞれの業務の立案及び実行のために承認された諸条件。 第 17 章 紛争解決の制度について 第 60 条 1.合弁企業の出資者間の、もしくは国際経済提携契約の当事者である内国 投資家および外国人投資家間の、または記名株主による株式会社の形態をとっている全額 外国資本企業の出資者間の紛争は、設立文書の合意にしたがって解決される。ただし、本 章で規定される事案は除く。 2.単独またはそれ以上の出資者と合弁企業との間で、また単独またはそれ以上の出資 者と所属する全額外国資本企業との間で紛争が生じた場合、同様な措置が適用される。 3.この法律に定められた外国投資の形態について、またこれらの解散または廃業およ び清算について、政府機関が機能しない理由から紛争が生じた場合、すべての案件は該当 する県人民裁判所経済法廷で解決される。 4.合弁企業の出資者の間で、もしくは記名株式の株式会社の形態をとっている全額外 国資本企業の出資者の間で、または国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外 国人投資家の間の関係で紛争が生じた場合、これらが天然資源、公共サービスおよび公共 事業の施工に関連した活動を行うことが許可されているときは、該当する県人民裁判所経 済法廷により解決される。ただし、許可証で反対のことが規定されている場合は除く。 前述の規則は、紛争が、単独またはそれ以上の外国人出資者と合弁企業の間に、または 単独またはそれ以上の外国人出資者と所属する全額外国資本企業との間に生じたときに適 用される。 第 61 条 この法律で規定されたさまざまな形態の外国投資間で生じる、経済契約の履 行についての訴訟は、または、さまざまな形態の外国投資とキューバの法人もしくは自然 人との間に生じる経済契約の履行についての訴訟は、該当する県人民裁判所の経済法廷で 16 解決される。ただし、キューバの法律にしたがって、調停の場に委ねることを妨げない。 特別規定 第一 合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家なら びに全額外国資本企業は、自然災害の減少を図る問題では、現行法規で定められている規 定に従う。 第二 この法律の諸規定、この法律の規則および補足的施行令は、特別な施行令が定め られ準用されて、開発特区で定められる 34 外国投資に適用されるものである。それらの施 行令は、準用のため公布され、またどんなことがあっても開発特区の機能を妨害してはな らない。このこととは別に、本法で認められた特別規定は、これらの外国投資により利益 がある場合には、これらの外国投資に適用される。 暫定規定 第一 この法律は、国際経済提携、現存の全額外国資本企業および施行の日に存在し、 営業している企業に今後、適用される。 1982 年 2 月 15 日の政令第 50 号の規定、 「キューバ機関と国際機関との間の国際経済提 携について」で与えられた便宜、および 1995 年 9 月 5 日の法律第 77 号、「外国投資法」 で与えられた便宜は、国際経済提携の全有効期間、あるいは全額外国資本企業の全有効期 間、継続される。 第二 この法律は、この法律の施行の日に手続き中の外国投資の認可の申請にも適用す る。 第三 1995 年 9 月 5 日の法律第 77 号の規範をより良く適用し履行するために国家中央 行政諸機関によって定められた補則的諸規定は、それぞれがこの法律に矛盾しない形で、 継続して適用される。関係諸機関は、この法律の施行の日から数えて三ヶ月未満に前述の 諸規範について検討し、また貿易外国投資省の見解を聞き、この法律の規定に従ってそれ らを調整する。 第四 合弁企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家および外国人投資家なら びに全額外国資本企業は、閣僚評議会によって、キューバ・ペソで特定の集金と支払いを おこなうことを例外的に承認される。 第五 前第 30 条第 4 項に定められているキューバ・ペソによる支払いを行うためには、 事前に交換ペソで同金額のキューバ・ペソを取得しなければならない。 第六 租税の支払い、および投資家による還付可能なその他の税関における税金の支払 いは、金額がキューバ・ペソで表記されている場合でも、交換可能ペソによって行われる。 第七 前記の第四、第五、第六項で定められたことは、国で通貨の統一 35 が確定するま で有効とされる。通貨の統一が確定された以降は、この法律で義務づけられた問題は、そ のために定められる規範に従うものする。 最終規定 17 第一 閣僚評議会は、この法律の承認後 90 日以内にこの法律の規則を公布する。 第二 次の法規を廃止する:1995 年 9 月 5 日の法律第 77 号「外国投資法」;1996 年 6 月 3 日の政令第 165 号「保税地帯と工業団地について」;閣僚評議会執行委員会により採 択された 2004 年 10 月 18 日の合意第 5279 号、2004 年 11 月 11 日の合意第 5290 号、 2008 年 6 月 9 日の合意第 6365 号、ならびにこの法律の規定に矛盾するその他のすべての 法規。 第三 この法律は、承認後 90 日で発効する。 第四 この法律を、この法律の規則およびその他の補完的諸規定とともに、周知のため に共和国の官報で公刊する。 2014 年 3 月 29 日、ハバナ市議事堂における人民権力全国議会会議場にて採択。 フアン・エステバン・ラソ・エルナンデス キューバ共和国官報、2014 年 4 月 16 日特別号第 20 号に掲載 (新藤通弘訳) 【訳注】 2011 年 4 月キューバ共産党第6回大会で決定され、同年7月人民権力全国議会(国会) で承認された、 「党と革命の経済・社会政策路線」では、外国投資を国内の国営企業を補完 するものと位置づけ、外国投資の推進を提案するとともに、関係法規の改善と経済特区の 導入を提案した。 2 キューバ共和国憲法第 23 条の規定。 3 キューバ共和国憲法第 15 条の規定。 4 キューバ共和国憲法第 75 条 b 項に、人民権力全国議会の権限として、法律を制定する 権限が述べられている。 5 法律第 118 号外国投資法を補完する規則である、2014 年 4 月 9 日に閣僚評議会により 公布された法令第 325/2014 号のことを指す。 6 法人登録がされている協同組合も含まれる。 : 7 外国投資の出資金の預金口座の開設については、2014 年 4 月 16 日キューバ中央銀行の 決議第 46/2014 号が公布され、官報第 20 号に収録されている。 8 憲法第 25 条で、公共の利用または社会の利益のために、しかるべき補償の上で、財産を 収容できることが認められている。 9 キューバは、相互投資保護・推進協定を、2013 年現在 82 か国と締結している。また、 租税の二重課税を防ぐ協定は、2013 年現在 12 か国と締結している。 10 自由交換可能通貨とは、いわゆるハードカレンシーのことであるが、キューバでは、米 ドル、ユーロ、英ポンド、スイス・フラン、円など 10 種類の通貨が自由交換可能通貨とさ れている。 11 新投資法と法律第 77 号との主要な違いは、外国投資への補償の規定を「しかるべき」 補償をしなければならないと明確にしたこと、国際経済提携契約に生産管理、サービス管 理、ホテル経営、専門サービスを付け加えたこと、外国資本のキューバ国内での調達の際 1 18 に、キューバ製品の競争力があれば、キューバ製品の買い付けを優先させることこと、外 国投資の活動の監視行為の章を挿入したこと、環境保持の章を充実させたこと、二重通貨 の統一の際の外国投資との関係を明確にしたこと、外国投資の申請に対する審査を迅速化 させたこと、外国投資の納税を新租税法に適応させたこと、投資家に対し収益税、売上税、 輸入税などの税負担が軽減されたこと、などが挙げられている。 12 米国のヘルムズ=バートン法は、キューバ貿易を対象とした米国の国内法であるが、そ れが、キューバと取引をする第三国に適用されているとして、毎年の国連総会で圧倒的な 多数により解除が決議されている。 13 2014 年 4 月 16 日キューバ中央銀行の決議第 47/2014 号で送金について規定され、官 報第 20 号に収録されている。 14 キューバにおける外国人の居住者資格は、1976 年の 9 月の法律第 1312 号「移民法」を 2012 年 10 月に修正した政令第 302 号に定められているが、年月による資格ではなく、事 前に必要書類をキューバの在外公館に提出し、承認されて与えられる(2012 年 10 月官報 第 44 号)。 15 国防省(MINFAR)は、ガエサ(GAESA)社の傘下に、観光企業のガビオタ(GAVIOTA) 社、外貨ショップのカリブ(TRD CARIBE)社、船舶修理のセルマール(SERMAR)社、印 刷・出版のヘオクーバ(GEOCUBA)社などを抱えている。 16 投資機会一覧簿の作成方法、運用の詳細は、貿易外国投資省によって、9 章 62 条から なる法令第 325/2014 号として 2014 年 4 月 9 日に、また 4 月 16 日に決議第 129/2014 号 として交付され、いずれも 2014 年 4 月の官報第 20 号に収録されている。 17 外国投資の許可の申請が提出された後の審査手続きについては、2014 年 4 月 16 日に貿 易外国省により決議第 128/2014 号として交付され、2 官報第 20 号に収録されている。 18 この規定は、前法律の第 77 号にはなかった。 19 社会保障税は、法律第 113 号「租税法」第 3 巻第 1 遍第 1 章第 286 条において労働者 を雇用する自然人および法人が負担することが制定されている。税率は、同法第 291 条で 毎年年度末の人民権力全国議会で翌年の税率が決定されることが規定されている。一般に は賃金の 14%が定められている。 20 外国投資における労働制度規則が、決議第 16/2014 号として、2014 年 4 月 14 日に労 働社会保障省により公布され、官報第 20 号に収録されている。この決議では、労働者と雇 用機関との関係、賃金の決定方法、報奨金の決定・支給方法、雇用機関と投資企業との関 係が詳細に規定されている。 21 報奨金は、外国投資企業が、一般に賃金とは別に労働者に支払っているものであるが、 現実には、キューバ・ペソによる支払賃金額より、数倍の報奨金が支払われており、支払 いの実態について雇用機関が捕捉するのが難しいのが現実である。 22 雇用機関は、すべて国営企業である。現在主要なものとして、2007 年の決議第 33 号で 承認されている貿易事務所契約代理店(ACOREC)、一般倉庫代理店(AUSA)、税関倉庫代理 店(ZELCOM)の他に、クバルセ(CUBALSE)、パルコ(PALCO)、クバナカン(CUBANACAN)、 さらにマリエル経済特区で承認されている 12 の雇用機関がある。 23 経済改革の中で、新租税法が 2012 年 11 月、法律第 113 号として制定された。個人所 得税(第 2 巻第 1 編第 1 章)は、キューバ人および外国人居住者に適用されるが、キュー バ人の自営業者に対して、2014 年から初めて徴収が開始された。 24 収益税は、法律第 113 号第 2 巻第2編第1章で述べられている。税率は、同法 97 条で 35%から 50%までと規定されている。 25 売上税は、租税法では第 2 巻第 3 編第 1 章で述べられている。税率は、第 137 条で法 19 人卸売業の売上額の 2%、第 139 条で法人小売業売上額の 10%と定められている。 26 サービス税は、租税法では第 2 巻第 3 編第 3 章で述べられている。第 146 条、147 条 で、電話、通信、ガス、電気、貨物・旅客輸送、上下水道、飲食、宿泊、住宅の賃借、レ クレーションにサービス税が利用者に課せられ、これらのサービスを提供した自然人およ び法人が徴収し納税することになっている。税率は、自然人・法人とも,売り上げの 10% 定められている。 27 労働力使用税は、租税法の第 2 巻第 7 編第 7 章で制定されている。第 231 条で税率は、 労働者への支払額の最初の 1 年間は 20%で、その後毎年減額され、5 年以降には 5%に減 額されることになっている。 28 海岸使用税は、租税法第 2 巻第 8 編第 2 章で新たな 9 か所でのホテル、レストランな どの営業に適用され、税率は、毎年度末に翌年の予算法の制定時に定められる。 29 河川流域における排水の承認についての税は、租税法第 2 巻第 8 編第 3 章で規定され ており、汚染の度合いに応じて税率が、毎年度末に翌年の予算法の制定時に定められる。 30 森林資源および野生の動物の利用と開発についての税は、租税法第 2 巻第 8 編第 5 章 で規定されており、税率は別表 6 で定められている。 31 地表水の使用の権利についての税金は、租税法第 2 巻第 8 編第 6 章で規定されており、 使用する水量に応じて納税する。税率は、毎年度末に翌年の予算法の制定時に定められる。 32 地域税は、租税法第 3 巻第 3 編第 1 章で規定されており、売上所得に課税され、税率は 1%程度が目安となっている。現在は、マヤベケ県とアルテミサ県にのみ適用されている。 33 閣僚評議会では、優先部門として、生産部門で連鎖して影響を及ぼす投資、技術移転を もたらす投資、工業インフラを発展させる投資、エネルギー部門への投資、農業生産投資、 農産物加工部門投資、石油・鉱業開発投資、観光医療を含む観光投資を挙げている。 34 マリエル開発特区関係の法律は、政令第 313 号、第 316 号、キューバ中央銀行決議第 82/2013 号が、2013 年 9 月官報第 26 号で公布されている。 35 キューバでは、現在、キューバ・ペソ(CUP)と外貨交換ペソ(CUC)の二種類の通貨が 流通しており、交換レートも銀行や外貨交換所(CADECA)での市民生活のための交換レ ートと企業間の交換レートの二種類があり、歪んだ複雑な経済現象を引き起こしている。 そのため、経済改革の中で通貨を統一する政策が進められており、2014 年 3 月財政価格省 決議第 19/2014 号、20/2014 号、21/2014 号が官報第 12 号で公布され、通貨統一の道筋が 制定された。 20
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