耳鼻咽喉科領域における内視鏡の洗浄・消毒を考える 慶應義塾大学

耳鼻咽喉科領域における内視鏡の洗浄・消毒を考える
慶應義塾大学医学部
耳鼻咽喉科
齋藤康一郎
耳鼻咽喉科の日常臨床において、軟性鏡を中心に、内視鏡は極めて汎用されている機器で
ある。近年の技術革新で画質は鮮明となり、特殊光観察の有効性も認知されてその診断精
度の向上に関心が集まっている。一方で、内視鏡は、患者の粘膜・体液に触れ、被験者間
または被験者から医療従事者への感染を媒介し得るという一面を持つことを忘れてはなら
ない。しかしながら、外来診療中、次々に内視鏡を使用する必要に迫られる実状もあり、
耳鼻咽喉科領域では内視鏡の危機管理・医療安全面での方針の統一が困難な現状にある。
対照的に、消化器内視鏡、気管支鏡、尿路内視鏡領域では、消化器内視鏡を介した感染の
報告を契機に、取り扱いの指針となるガイドライン・手引きが公開されて内視鏡の安全な
使用に関する啓蒙が進められている。厚生労働省の、院内感染防止に関する通知(平成 17
年)の中でも、内視鏡の洗浄・消毒に関して明記されており、耳鼻咽喉科領域でも指針の
呈示が待たれる。ただ、現状では、とくに外来で使用する軟性内視鏡に関してはその取り
扱いについて各医療機関で独自の判断をせざるを得ないことから、関係者が内視鏡に関わ
る標準的な安全対策について知識を共有して診療にあたることが肝要である。具体的には、
標準予防策に留意し、粘膜に接触する内視鏡は高水準消毒が必要であることを念頭におき、
内視鏡使用直後の洗浄から流し台での洗浄・ブラッシング、引き続き行う消毒、乾燥、保
管の流れと各処置の要点を理解する必要がある。なお、洗浄後の消毒に関しては、均一な
消毒の質の保障や医療従事者への暴露被害などを勘案し、各領域の内視鏡取扱い指針で自
動洗浄・消毒機の使用が推奨されている。本セミナーでは、これらの知識を整理して概説
し、新しい自動洗浄機にも触れていただく。この機会が、内視鏡を扱う医療従事者として
の医療安全に対する意識を高める一助となればと考えている。