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実務者のための液状化予測と地盤の地震応答解析入門

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実務者のための液状化予測と地盤の地震応答解析入門
1.液状化現象
資料 13)
液状化とは、地盤が地震動の揺れのような繰り返しの力を受けたときに、文字通り液体
になったように振る舞う現象である。液状化は、地下水面より下のゆる詰めの砂地盤で起
きやすい。このような砂地盤が地震を受けて揺すられると、砂粒同士の接点は離れ、ばら
ばらになって水の中に浮いたような状態になる。この状態では砂粒同士が力を伝達するこ
とが出来なくなってしまう。これが液状化状態である。この状態がしばらく続き、その後
砂粒は少しずつ沈降して、液状化を起こす前よりも密な状態となり、地表面は沈下する。
2.液状化による被害 資料 13)
液状化が発生すると、地盤が液体状になってしまうため、地盤の堅さや強さがほとんど
失われ、構造物を支える能力を失ってしまう。
① 建物が大きく沈下、傾斜、転倒
② 地上にあるタンクが沈下して、火災や内容物の流出などの大きな被害
③ 盛土した道路や河川堤防が側方に変位、沈下
④ 地中構造物の浮き上がり
⑤ 埋設管の破損
⑥ 側方流動による大きな水平変位や沈下(杭基礎の被害など)
建物の沈下・傾斜
マンホールの浮上り
建物の転倒
側方流動による杭の被害(資料①)
1
護岸の側方変位(資料②)
埋設管の被害(資料①)
3.液状化予測方法の種類と特徴
資料 13)
液状化の予測手法は、大きく2つに分類される。一つ目は概略予測法と呼ばれ、広い地
域内において液状化を予測する場合に用いられる。この方法は、微地形分類などの地理・
地形情報や液状化の履歴図に基づいて地盤の液状化の可能性を定性的に把握するものであ
る。特徴としては、広範囲な予測が安いコストで簡単に行えるが、予測精度が良くないこ
と、地震動の大きさによる液状化範囲の違いが予測しにくいことが挙げられる。
二つ目の予測法は、個々の場所において液状化の発生を予測する場合に用いられる。こ
の方法は、地盤特性と地震動特性から液状化の発生を定量的に把握するもので、簡易予測
法と詳細予測法に区分される。
簡易予測法には、原位置試験から得られる N 値や粒度から液状化の発生を直接判定する
「限界 N 値による簡易予測法」と、簡易式による地盤の強度と経験式による地震動特性を
用いて判定する「FL 値による簡易予測法」がある。特徴としては、ボーリング資料や土質
試験の結果があれば簡単な計算により精度の良い予測が行えるが、特に大きな地震動に対
しては、適用上の限界に留意する必要がある。
詳細予測法も FL 値を用いるが、実際の地盤から試料を採取して、液状化試験と地震応答
解析を行なって判定するものである。特徴としては、予測精度が高く、任意の地震動や地
盤形状が考慮できるが、詳細な調査や解析が必要なことからコストが高く、広範囲な予測
には適さない。
3.1 概略予測法
概略予測法は、微地形分類など地理地形情報や液状化履歴図に基づいて、地盤の液状化
のしやすさを定性的に把握するものである。1964 年の新潟地震で発生した液状化の記録を
微地形で分類すると、沖積低地の埋立地や盛土、新旧河道、砂丘間低地などでは液状化が
顕著に見られるが、台地や丘陵地では液状化が全くみられない。このように微地形によっ
て液状化が起きる可能性が異なるため、微地形区分から液状化の予測ができることになる。
また最近では、地震動の大きさに応じた、地形から見た液状化判定基準も作成されている。
2
(1) 地形から見た液状化判定(小規模建築物)
微地形区分による概略判定は、微地形区分から地盤表層の液状化可能性を大中小の 3 段
階で評価することができる。
微地形区分:地形図の等高線では判別しにくい土地の微起伏によって分類したもので、
このように微地形によって地域を区分すると、地域の地盤としての特徴や
性格がより明確になることから、最近では液状化だけでなく、地震動予測
を行う際にも利用されている。崖、斜面に隣接した盛土地、低湿地、干拓
地・谷底平野の上の盛土地を指す。これ以外の盛土地は、盛土前の地形区
分と同等に扱う。
微地形から見た液状化可能性(小規模建築物基礎設計指針, 日本建築学会, 2008.3)
微地形から見た液状化の可能性
3
(2)土質と地下水位による簡易判定法(小規模建築物)
微地形区分やハザードマップから液状化の可能性が高いと判定された場合は、土質と地
下水位の確認を行い、液状化によって発生する地表面の変状の程度を推定する。小規模建
築物のように軽量な構造物の液状化による被害は、過去の中地震時の場合でみると、おお
むね地表面から 5m 程度の深さまでの層の液状化に起因している。これらのことから、液状
化の可能性の検討は、地表面から 5m 程度までの地下水で飽和した砂層について行えばよい。
下図は、小規模建築物を対象として、地表面から深さ 5m までの範囲の表層の非液状化層の
厚さ H1 とその下部の液状化層(地下水で飽和された砂層)の厚さ H2 との関係によって,
地表面に被害がおよぶ程度を示したものである。ここで非液状化層の厚さとは、地下水位
より浅い砂層、または、粘性土(細粒分含有率 Fc> 35%の粒度の土層)であり、液状化層とは、
非液状化層下面から地表面下 5m までの砂層をいう。小規模建築物の場合、液状化による地
表面の変状が建築物の被害に大きな影響をおよぼすことなどを考えれば、この判定法は、
簡易判定法として推奨できる。
液状化の影響が地表面におよぶ程度の判定(地表面水平加速度値 200cm/s2 相当)
(小規模建築物基礎設計指針, 日本建築学会, 2008.3)
4
3.2 詳細予測法
詳細予測法は、室内土質試験から得られる液状化強度と地震応答解析から得られる動的せ
ん断応力との比較により、液状化抵抗率を算定する方法である。原位置から採取した乱さ
ない試料を用いて、繰返し三軸試験や中空ねじりせん断試験による液状化試験を行い、液
状化強度 R を算定する。一方、地盤モデルを用いた地震応答解析を行い、動的せん断応力 L
を算定する。この液状化強度 R と動的せん断応力 L を比較することにより、液状化抵抗率
(安全率)FL 値を求める。FL 値が 1 以下であれば液状化発生の可能性が大きく、逆に 1 を
超えれば液状化発生の可能性は小さいと判定する。FL 値による詳細予測法は予測精度が高
く、任意の地震動や地盤形状でのモデル化が可能であることから、詳細な液状化検討に使
用される。
3.3 地震応答解析
詳細予測法では、地震が発生した時の地盤の各土層における加速度や動的せん断応力を
算定するため、地震応答解析を用いる。地震応答解析は、地層構成が複雑な地盤中を伝播
する間の、地震動の変化を算定するもので、地層の性状によって応答が複雑に変化するこ
とになる。解析では、まず地層構成と地層の土質特性を反映した地盤のモデル化を行う。
地盤モデルの作成にあたっては、原位置における土質調査、原位置試験および室内土質試
験の結果を用いる。次に入力地震動を設定して、硬い岩盤などから成る工学的基盤面に適
用する。入力地震動は、国土交通省が定めた模擬地震波などを用いる。地震応答解析を用
いて地盤内の応答性を計算し、加速度、せん断応力、変位などの時刻歴波形を算定する。
最後に、地盤内のせん断応力時刻歴波形の最大値を、原位置で受けていた有効上載圧で割
った値を、動的せん断応力比(L)として算定する。
5
3.4FL値による簡易予測法
詳細予測法は、予測精度は高いが多くの費用と時間を要することになる。したがって、
多くの地点について予測を行うには合理的ではない。そこで、簡易式、経験式を用いた比
較的簡易に行える予測法として「FL 値による簡易予測法」が広く利用されている。まず、N
値や粒度などから簡易式を用いて液状化強度を算定する。一方、過去の地震記録を基に設
定された地表最大加速度や液状化判定用震度を用いて経験式により動的せん断応力を算定
する。そこで、液状化強度 R と動的せん断応力 L を比較することにより、液状化抵抗率(安
全率)FL 値が求められる。この手法の特長は、既にある調査資料や土質試験結果を基に、
簡単な計算手法を用いて精度の良い予測が行えることである。また、地震動の大きさも考
慮できることから、各種指針・基準の液状化判定法に広く用いられている。
6
(1)道路橋示方書の液状化判定(道路橋示方書・同解説Ⅴ耐震設計編平成 14 年 3 月)
7
8
(2)建築学会の液状化判定(建築基礎構造設計指針:日本建築学会)
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10
11
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3.5 粒度・N値による簡易予測法
さらに簡易な手法として N 値や粒度のみから予測する方法としては、標準貫入試験とよ
ばれる原位置試験から得られる N 値や粒度を用いて、直接液状化の可能性を判断するもの
で、「粒度・N値法による簡易予測法」と呼ばれている。標準貫入試験では、質量 63.5kg
のドライブハンマーを 76cm 自動落下させてノッキングブロックを打撃し、サンプラーを地
盤に 30cm 打ち込み、このとき要する打撃回数を N 値と呼ぶ。一般に打撃回数、すなわち N
値が少ないほどゆるい地盤、N 値が大きいほど固い地盤であるといえる。N 値は原則として
深度 1m 毎に計測する。標準貫入試験の結果は、深度方向に土層区分と N 値を記述し、土質
柱状図として表示する。N 値は土の構造や硬さを定量的に把握することができ、しかも、過
去の液状化被害調査により、液状化強度との間に良い相関が認められていることから、各
種指針・基準の液状化判定法に広く用いられている。つづいて、標準貫入試験で採取され
る試料を用いて、粒度試験を行う。そして粒度試験により得られる粒度分布から液状化の
可能性を推定する。下図は、液状化の可能性がある粒径範囲を示したものである。
3.6 限界N値による簡易予測法
N 値を用いた最も簡易な液状化の発生予測法であり、
限界 N 値法を用いて液状化の発生を予測する。限界
N 値とは、新潟地震による被害事例に基づいて設定さ
れた液状化が生じるか否かの境となる N 値を表す。
右図に示すように、標準貫入試験から得られた N 値
を限界 N 値と深度方向に比較してみると、深さが 3m か
ら 6m、10m から 14m および 16m から 18m の範囲で N 値
が限界 N 値線を下回っており、この範囲の地盤は液状
化する可能性があると判断できる。この手法の特長は、
原位置試験による N 値のみを用いて、液状化の発生が
簡単に予測できるということである。
13
3.7PL法による液状化判定
深度1m毎に液状化抵抗率(FL 値)を計算し、液状化の可能性を定量的に評価する。こ
の方法では、深さ毎の液状化の可能性は評価できるが、その地点全体での評価には不便な
面がある。FL法により求められた深度毎の FL 値を加え合わせて、1地点の最終判定とす
る方法を「PL法」と呼ぶ。
液状化予測のフロー
液状化指数 PL 値の求め方
PL値による液状化危険度判定区分(岩崎ら:1980)
PL値による液状化危険度判定区分(大阪府:1997)
14
4.地震応答解析法 資料 7)
4.1 全応力解析と有効応力解析
土の応力-ひずみ関係は、ひずみや拘束圧に強く依存しており、粒状体特有の性質であ
るダイレイタンシーは顕著である。液状化の発生を考慮しない粘性土層の地震応答解析で
は、ダイレイタンシーを無視した構成モデルが用いられる場合もあり「全応力解析」と呼
ばれる。一方、非排水条件下でのダイレイタンシーによる有効応力の減少を扱う解析は「有
効応力解析」と呼ばれる。有効応力解析では構成モデルは有効応力で記述され、土骨格だ
けでなく間隙水の運動方程式も扱う。
4.2 一次元解析と多次元解析
一次元解析は地盤のみを対象とした地震応答解析に適用される。この場合、鉛直方向に
伝播するSH波のみを考え、振動方向として水平方向の1成分、間隙水の浸透方向として
鉛直成分の合計2自由度を扱う。この時の応力成分はせん断応力・鉛直応力、ひずみの成
分はせん断ひずみ・鉛直ひずみである。このような問題を一次元問題と呼び、用いる構成
モデルを一次元構成モデルと呼ぶ。
一方、地盤と構造物の地震応答解析では、二次元・三次元の初期値・境界問題を扱う。
この場合、連続体力学に基づいた構成モデルを用いることになり、応力・ひずみの成分は
それぞれ6つとなる。このような問題を多次元問題と呼び、用いる構成モデルを多次元構
成モデルと呼ぶ。
4.3 土の構成モデル
土の動的性質は、構成モデル(構成則、構成式)の形で地震応答解析に組み込まれる。
例えば微小なひずみ振幅(10-5 程度)を対象とした波動伝播の解析では弾性モデル、中ひず
み振幅(10-4 程度)を対象とした等価線形解析では粘弾性モデル、液状化のような大ひずみ
(10-2 程度)を対象とした有効応力解析では弾塑性モデルなどが用いられる。
(1)弾性モデル
微小ひずみ領域のみ対象とした全応力解析では、土を線形弾性体として扱うことが多い。
弾性体の応力-ひずみ関係は次式で表される。
飽和土の体積弾性係数Ku については、間隙水の圧縮性を考慮する必要がある。非排水条
件下での土-間隙水に対する質量保存則および有効応力の式より、飽和土の非排水状態に
おける体積弾性係数Ku は近似的に次式で表される。
Kw は水の体積弾性係数、nw は間隙率、Kは土骨格の体積弾性係数
飽和土のポアソン比νu は次式で算定できる。
15
飽和土のポアソン比は土骨格のせん断弾性係数が小さいほど、また、水の圧縮性が小さ
いほど 0.5 に近くなる傾向を示す。
(2)一次元線形粘弾性モデル
繰返し載荷時の土のヒステリシスを
モデル化する方法のうち、最も簡単なの
が線形粘弾性モデルであり、複素剛性モ
デル、Voigt(フォークト)モデル、
Maxwell(マックスウエル)モデルなど
粘弾性モデルの物理モデル
がある。なお、一次元線形粘弾性モデルではせん断変形のみを対象とする。
バネとダッシュポットを縦につないだのがマックスウェル模型である。これをグ
イッと押し縮めた状態で固定してみる(右図)
。ダッシュポットは瞬間的な動きに
は追い付かないから、初めに縮むのはバネだけである。この縮んだ状態を維持し
ておくと、縮んだバネがダッシュポットを押し続けるので、次第にダッシュポッ
トが押し込まれ、バネは逆に伸びて行く。それに伴って、バネが伸びる分だけ、
変形を維持するのに必要な力は小さくなって行く。そして最終的には縮んだ分は
すべてダッシュポットに移り、バネは完全に元に戻って、力を加えなくても変形
したままになる。これが応力緩和と呼ばれる現象である。
もう一つのパターンとして、一定の力を加えつづける場合を考える。この場合
はダッシュポットがどんどん押し込まれるので、変形は一方的に大きくなって行
く。バネの方にはいつも同じ力がかかっているので、バネ部分の変形も常に一定
で、バネがあってもなくても大勢に影響はない。つまり、粘弾性体ではなく、単
なる粘性体の振舞いになってしまう。ところが実際の粘弾性体では、一定の力に
対する変化はクリープと呼ばれ、普通は変形する速度も変化するから、模型が示
す挙動とは違っている。ということで、一定の力を加えつづける場合の粘弾性体
の振舞いは、マックスウェル模型では表現できない。そこで、クリープを表すに
は別の模型を使う。その模型は並列型のもので、フォークト模型と呼ばれる。
フォークト模型に一定の力を加えると、初めは大きな抵抗に遭う。ダッシュポットが頑張っているからである。
しかし、時間の経過と共にダッシュポットもずるずると押し込まれ、次第に変形が大きくなっていく。ところが、
先ほどのマックスウェル模型と違うのは、反対側にバネがあることである。ダッシュポットは動き始めるとずる
ずる動こうとするが、バネが突っ張るので、次第に変形速度は遅くなり、最後にはバネが全ての力を支えて止ま
る。これは、実際の粘弾性体のクリープ現象をよく表している。フォークト模型には瞬間的に変形を加えること
はできない。ダッシュポットが動いてくれないからである。したがって、応力緩和の現象は、フォークト模型で
は表現できない。このようにして、マックスウェル模型とフォークト模型をうまく使い分ければ、粘弾性の特徴
を示すことが可能である。大雑把に言って、応力緩和をうまく表現できるマックスウェル模型は液状の粘弾性体
を、クリープをうまく表現できるフォークト模型は固体状の粘弾性体を表現するのに適していると言える。
16
(3)一次元非線形全応力モデル
一次元の非線形モデルでは、全せん断ひずみと全せん
断応力の関係を非線形関数でモデル化する。この関係を
骨格曲線と呼ぶ。さらに、ヒステリシスを表現するため
に、骨格曲線に履歴法則を適用して、履歴曲線をモデル
化する。履歴曲線のモデル化に用いる履歴法則としてよ
く用いられるのは Masing(メイシング)則である。ただ
し、Masing 則は履歴法則の単なる記述法であり、実際の
非線形モデル
土の挙動を表現するものではない。
骨格曲線上のせん断応力はせん断ひずみの関数として
ずみをせん断応力の関数として
および
して双曲線モデル、
、また逆にせん断ひ
と表現する場合もある。
の具体的な関数形としてよく用いられるのは、
の関数形と
の関数形として Ramberg-Osgood(ランベルグ-オズグッド、R-O)
モデルがある。
Masing 則とは、骨格曲線上の点Aで除荷されると、その後の履歴は、骨
格曲線を相似比λ倍に拡大した履歴を辿るというものである。このλを変化
させると、どのように履歴曲線が変化するかを右図に示す。一般のτ~γ関
係では、原点に関して相対的な点Bで逆方向の骨格曲線に滑らかに接続され
る必要性から、λ=2 が用いられる。その結果、履歴形状は紡錘型を示す。し
かし、対称点に戻るためには、B点においてλが2でありさえすれば良い。
特に、A点から除荷されB点に至るまでに、相似比を右図の下の図の線のよ
うに変化させると、履歴曲線がスリップ形状を示す。よって、繰返し載荷試
験から得られたh~γ関係を満足させるように、せん断ひずみγに応じて相
似比λを変化させることにより、室内試験から得られた実際の土の非線形特
性を精度良く追跡することが可能となる。
資料 14)
①双曲線モデル
双曲線モデルの骨格曲線は次式で表現される。
G0 は初期せん断弾性係数、γr は規準ひずみで
τf はせん断強度
せん断ひずみ振幅γa における割線弾性係数Gおよび接線弾性係数Gt は次式で得られる。
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双曲線モデルによるせん断ひずみ(振幅 5.0×10-3)とせん断応力比(せん断応力をせん断強
度で除した値)の関係、せん断剛性比および減衰定数とせん断ひずみの関係を下図に示す。
双曲線モデルの応力-ひずみ関係
双曲線モデルのせん断剛性と減衰定数のひずみ依存性
骨格曲線に双曲線モデルを用い、Maisng 則により履歴曲線を作成したモデルを修正
Hardin-Drnevich(H-D)モデルと呼ぶ。
②R-Oモデル
オリジナルのR-Oモデルの骨格曲線は次式で表現される。
α、γ、γy、τy はパラメータで、
αは正の実数、γは1以上の整数で奇数
このモデルを基本をとして、様々な修正R-Oモデルが提案されており、最近はγに実
数が用いられる。τy=τf、γy=γr として、γを実数とした修正R-Oモデルを以下に
示す。
せん断応力振幅τa における割線弾性係数G、接線弾性係数Gt は次式で得られる。
減衰定数は次式で得られる。
または
R-Oモデルの応力-ひずみ関係
18
R-Oモデルのせん断剛性と減衰定数のひずみ依存性
(4)一次元非線形有効応力モデル
微小ひずみでのせん断弾性係数G0 とせん断強度τf が平均有効応力(有効拘束圧)σm’
の関数となることを仮定し、それぞれ
とすると、双曲線モデル
に基づき次式が得られる。
すなわち、せん断応力はせん断ひずみと平均有効応力の関数となる。これにより、有効
応力解析では有効応力の変化に伴うせん断変形特性の変化を考慮する。せん断応力増分は
次式で表される。
この関係を模式的に示すと右図のようになる。
ある平均有効応力で応力-ひずみ関係が曲線
aで表され、現在の応力状態をA点とする。
この状態で平均有効応力が変化せず、せん断
ひずみが変化すればB点に至る。一方、平均
有効応力が変化すれば、応力-ひずみ関係も
曲線bのように変化するので、せん断ひずみ
が変化しないとすればC点に至る。したがっ
て、せん断ひずみと平均有効応力の両方が変
化した場合はD点に至ることになる。
一次元有効応力モデルの拘束圧依存性
(5)ダイレイタンシーモデル
①体積変形モデル
体積変形モデルではダイレイタンシーおよび有効応力に依存した体積変形を扱う。平均
有効応力と体積ひずみの関係は増分形で次式のように表される。
dεv は体積ひずみ増分、
dεd はダイレイタンシーによる体積ひずみ増分
K は体積弾性係数
室内試験結果に基づき、dεd をせん断ひずみ振幅の関数としてモデル化したものを体積
ひずみモデルと呼ぶ。このモデルでは体積ひずみが発生するような排水条件下でも使用で
きる。一方、非排水条件を仮定して、平均有効応力の減少量を直接与えるモデルは過剰間
隙水圧モデルと呼ばれる。実際の過剰間隙水圧は全応力と平均有効応力の差として求めら
れる。地震荷重のように作用時間が短く、砂質地盤の透水性であれば、土要素の非排水条
件は近似的に成り立ち、このモデルでも適用可能となる。
②体積ひずみモデル
このモデルは、乾燥状態で繰返し単純せん断応力を作用させた際、ダイレイタンシーの
19
ために生じる体積ひずみをせん断ひずみ振幅の関数として表現した実験式である。代表的
なものとして、Martin・Finn・Seed(マーティン・フィン・シード)モデルがある。この
モデルでは、一定ひずみ振幅1サイクルごとのダイレイタンシーによる体積減少量を次式
で表す。
γa はせん断ひずみ振幅、C1~C4 はパラメータ
このモデルは主に過剰間隙水圧の上昇過程のみを対象としたものであり、平均有効応力
ゼロ付近の挙動(例えば、サイクリックモビリティ)での体積ひずみ変化まではモデル化
されていない。
飽和砂地盤の地震時挙動には、地盤の液状化をはじめとして特徴的な挙動がある。サイクリックモビ
リティもそのひとつで、密な砂地盤が繰返しせん断を受け、過剰間隙水圧の増加に伴って、せん断ひず
み振幅が徐々に増大する現象である。
ゆるい砂とは異なり、密な砂では、せん断ひずみの発生に応じて、体積が膨張しようとする傾向がよ
り顕著である。このため、非排水条件の下では、せん断ひずみが大きくなると間隙水圧が減少し、有効
応力が回復する。その結果、過剰間隙水圧比が 100%に達した後でも、繰返しせん断に対してかなりの
剛性を保持する。したがって、密な砂では、ゆるい砂でみられるようなひずみの急増はみられず、変形
が限定される傾向が著しい。この点で、サイクリックモビリティ現象を示す密な砂地盤は、構造設計に
おける「ねばり」の効果と同等の工学的特性を有するものと評価される。
資料 15)
ゆるい砂
密な砂
多次元の応力場に対応した体積ひずみモデルとして、Densification モデルやおわんモデ
ルがある。Densification モデルでは、体積ひずみ増分の算定式中のせん断ひずみの成分と
して偏差ひずみの第二次不変量を用いている。
おわんモデルは水平面内の2方向せん断に適用可能なモデルである。このモデルでは、
種々のせん断過程を対象とした排水繰返し単純せん断試験をもとに、体積ひずみとせん断
ひずみ(水平2方向)を座標軸とするひずみ空間に「おわん」のような回転体の斜面を仮
定して、体積ひずみを算定する。
20
右図に示すように、ひずみ空間においてΓの指数関数で表
されるおわん状の斜面を想定する。このとき、おわんの接平
面のなす立体角は単純せん断面における平均的な粒子接点角
に対応し、原点からの距離がせん断ひずみと体積ひずみに対
応することになる。繰返しせん断時には、平均的な土粒子の
動きとしては、このおわん上を上り下りしながら動くことに
なるが、おわん自体もG*と共にひずみ空間中を下方へ(圧
縮側へ)移動する。この「おわんの下方への移動」は物理的
には負のダイレイタンシーの累積を意味する。よって、ダイレイタンシー
り下りする成分
とおわん自体が圧縮する成分
を、土粒子がこのおわんを上
の和として次式のように表される。
資料 16)
③過剰間隙水圧モデル
室内試験結果に基づくモデルであり、過剰間隙水圧を実験式で与えるモデルや有効応力
経路を指定するモデルがある。
非排水条件下での繰返し試験結果に基づき、過剰間隙水圧を予測するモデルは数多く提
案されている。初期のものには Seed らのモデルがあり、過剰間隙水圧
が次式で
表される。
は液状化に至るまでの繰返し回数比、αはパラメータ
応力経路モデルは、非排水条件下で有効
鉛直応力とせん断応力の平面状の応力経
路を指定するモデルである。YUSAYUSA の
モデルとして多くの実績を有しており、
一次元有効応力解析としては最もポピュ
ラーなものといえる。
このモデルは非排水条件下での有効応力
経路に基づいているが、運動方程式と透水
方程式を時刻歴で交互に解くことで、消散
した過剰間隙水圧に応じて有効応力経路を
一次元の過剰間隙水圧モデル
補正することができる。
非排水条件下の有効応力経路においては、破壊包絡線より少し手前において過剰間隙水圧の急激な減少が見られ
る。せん断応力が増加すると有効拘束圧は単調に減少していくが、応力経路が破壊線に近づくと有効拘束圧が大き
くなる現象が見られる。有効拘束圧が増えるということは、これまで負のダイレイタンシーをしていた土が正のダ
イレイタンタシーを始めたことを意味する。このようなダイレイタンシーの特性が変わる状況を変相するという。
応力経路の変相点を結ぶと直線となるが、これを変相線といい、横軸との角度を変相角という。
21
多次元の応力場に対応した過剰間隙水圧
モデルとしては、井合らのモデルがある。
このモデルでは、非排水せん断試験の結果
から得られた過剰間隙水圧の発生量と塑性
仕事の関係式を満足するような有効応力経
路をモデル化している。
(6)多次元構成モデル(一次元モデルの拡張)
多次元の過剰間隙水圧モデル
一次元モデルを多次元に拡張する最も簡単な方法は、弾性体の構成モデルをベースとす
るものであり、非線形性を考慮して増分形で表現する。弾性体の応力-ひずみ関係を用い
る限り、弾塑性モデルとは異なり、応力増分と同じ方向にひずみ増分が発生する。
一次元の構成モデルをそのまま多次元解析に用いるには工夫が必要となる。その一つは、
多次元応力状態でのせん断応力の表現方法である。そこで、以下の方法により多次元化が
行われている。
・3方向独立の単純せん断を考慮する方法
・繰返し載荷を表現できる不変量を用いる方法
・マルチメカニズムの重ね合わせに基づく方法
①3方向独立の単純せん断を考慮する方法
一次元の応力-ひずみ関係をそのまま三次元応力場での3方向の単純せん断変形に適用
する方法である。最もシンプルな方法であるが、座標軸の設定には注意が必要である。
②繰返し載荷を表現できる不変量を用いる方法
増分形の応力-ひずみ関係における接線せん断剛性を不変量で表現する方法に基づき、
繰返し載荷を表現可能な不変量を用いることで繰返し載荷に対応する方法である。
体積変形を考慮すれば、有効応力増分は次式で表される。
繰返し載荷に対しては、次式で表現される相対相当応力(応力空間において除荷時から
現在の状態までの距離に対応する)を用いることにより、両振り載荷に対応することが可
能となる。
③マルチメカニズムの重ね合わせに基づく方法
一次元あるいは二次元のせん断変形モードの重ね合わせで三次元のせん断変形を表現す
る方法であり、マルチメカニズムモデルと呼ばれ、これまで多くのモデルが提案されてい
る。このモデルでは弾性体の応力-ひずみ関係ではなく、独自の応力-ひずみ関係を用い
る。
22
松岡は主応力空間における三つのせん断変形
メカニズムに対するひずみを重ね合わせること
で、三次元場のせん断ひずみを表現した。
また、一次元の非線形応力-ひずみの関係を右
図に示すような二次元の偏差応力空間(軸差せん
断と単純せん断)に、円周上に仮想的に配置する
ことによって多次元に拡張する方法もある。
マルチスプリングモデル
(7)多次元構成モデル(弾塑性モデル)
弾塑性理論に基づいた弾塑性モデルは、多次元の地震応答解析への適用性が高い。
①弾塑性モデル(応力ひずみ2成分)
弾塑性モデルを構成する上で降伏関数(負荷関数)
、硬化関数、塑性ポテンシャル関数の
三つが必要になる。
降伏関数とは塑性変形を生じない弾性域とその外
側の塑性変形を生じる弾塑性域を区分する応力空間
の曲面を表す関数である。砂の場合、せん断降伏と
圧密降伏に対して別々の降伏関数が用いられること
がある。液状化解析では通常σm’が減少する過程
(つまり過圧密領域)を扱い、圧密降伏は起こらな
いので、圧密降伏を扱わない構成モデルを用いるこ
ともできる。等方硬化のみを考慮した場合、せん断
に対する降伏関数fを応力比η(=τ/σm’)を用
いてf=η-hと表すモデルが多い。ここで、hは弾
性域の大きさを決める関数(硬化関数)である。
この場合、降伏面f=0は右図に示すような応力比
η一定線となり、弾性域はη<hとなる。
降伏関数を用いて、塑性変形が生じる条件は以下の
とおりである。
応力2成分の弾塑性モデル
硬化関数は、弾性域の変化を具体的に規定する関数である。砂の場合は初期弾性域を考
慮しないが、これはひずみの小さい領域から応力-ひずみ関係が非線形となり、鋼材のよ
うに降伏応力以上で塑性変形が急増する完全塑性型の応力-ひずみ関係とは異なり、非線
形モデルのようななめらかな応力-ひずみ関係となるためである。
23
塑性ポテンシャル関数は、塑性ひずみ増分ベクトルの方向を規定する応力区間の曲面を
示す関数である。塑性ポテンシャル面の外向きの法線が塑性ひずみ増分の向きとなる。降
伏関数を塑性ポテンシャル関数とした場合は、降伏関数σm’に関する編微分は常に負の値
になる。このため、塑性体積ひずみ増分は常に膨張となり、砂のダイレイタンシー特性を
表現できない。そこで、塑性ポテンシャル関数には Cam-Clay モデル型の降伏関数形を用
いているモデルが多い。
カムクレイは、土のダイレイタンシーと圧密履歴との関係、
また土の硬化、軟化および完全塑性という異なる塑性変形様
式を、限界状態線という概念を核にして実現させる興味深い
モデルである。カムクレイの降伏曲面
を式で表すと
次のようになる。
Pは平均有効応力、qはせん断強度、Mは摩擦パラメータ、Py は塑性体積ひずみ
の関数で次式で
表す。
完全に構造が喪失した「正規圧密」状態の土は、カムクレイモデルの
弾塑性挙動に従うとする。一般に構造を有する土は完全に繰り返され構
造を失った土より同じレベルの応力状態で大きな間隙比をとる。このこ
とから、上負荷面はカムクレイにとって不可能領域、つまり「ロスコー
面」の外側に存在するとして、カムクレイに相似な形をとると仮定する。
上負荷面上にある現在の応力がある土を正規圧密土と呼ぶが、正規圧密
状態にある構造を有する土の弾塑性挙動を表す場合には、この
上負荷面に流れ則を適用することになる。初期に上負荷面上に
ある構造を有する土が除荷を受けた場合は、過圧密土になり、
その過圧密土がさらに再負荷を受けると弾塑性挙動を示す。
この弾塑性挙動を表すために、上負荷面の下側に下負荷面を設
ける。下負荷面の形は上負荷面と原点を中心に相似形とする。
過圧密状態にある土の現応力は、常に下負荷面上に位置するの
で、この弾塑性挙動を得るために、この下負荷面に流れ則を適
用することになる。
(資料⑱、資料⑲)
※カムクレイのカム(Cam)は、ケンブリッジの街をゆったりと流れる小さな美しい川の名前。カム川
の底にはごつごつとした礫が堆積しているが、
「粒子間に全く付着力のない純粋に理論的な連続体で、
粘土の持っている特性をすべて説明できる」というジョークで名づけられたようだ。
24
②弾塑性モデルの拡張(液状化への対応)
前記した弾塑性モデルの基本的な枠組みをそのまま液状化解析に適用することは問題が
ある。構成モデルによっては、有効応力経路が変相線を越えた後、履歴曲線が定常となり、
液状化試験における破壊規準である両振幅ひずみ5%を再現できない。そこで、大きなひ
ずみを再現できるように構成モデルは改良された。改良法としては、繰返し履歴に応じて
変化する内部組成変数に応じて塑性係数を調整する方法がある。岡らの改良モデルでは、
応力経路が変相線に到達した後、塑性せん断ひずみ履歴に応じて硬化関数の初期勾配を次
式で示す双曲線関数で低減させている。
その他の改良法として、Pastor らのモデルでは塑性係数を塑性偏差ひずみ量の指数関数
として表現している。Cubrinovski・Ishihara のモデルでは、硬化パラメータ中の塑性せん
断剛性を塑性せん断ひずみ量に応じて低減している。
5.地盤の動的解析プログラムの種類と特徴
5.1
SHAKE(等価線形地震応答解析)
(1)SHAKE の概要
資料 8)
1次元応答解析プログラム SHAKE は、Schnabel et al が開発した「1次元重複反射応答
解析プログラム」である。
SHAKE に入力する定数は、Vs(もしくは地盤剛性率)
、単位体積重量、そして地盤の減衰
定数である。さらに、強震時には等価線形解析が必要であり、ひずみ依存曲線すなわち G/Go、
h~γ曲線が必要となる。これらの定数の中で、Vs と G/Go、h~γ曲線の選択が最も重要
である。ひずみ依存曲線は自然地盤から採取した試料をもとに、各層に適用する必要があ
る。出力結果としては、地盤各層の加速度、相対変位、せん断ひずみ、せん断応力比が得
られる。
履歴減衰
(2)SHAKE の特徴 資料 8)
SHAKEは次の特徴を持っている。
①重複反射理論による厳密解
②複素剛性法を用いることによる履歴減衰の考慮
③等価線形化手法を用いることによる非線形性の考慮
※履歴減衰は、部材内部の粒子間摩擦による
エネルギー損失により生じる。
25
SHAKE は、一次元の多層地盤を対象として波動
解析を行うものであるが、重複反射理論という理
論に基づいている。地震波は、その伝播する過程
で地層の境目など伝播媒質の性質が変化するとこ
ろにぶつかると、一部は透過し一部は反射する。
地表面では、上昇してきた波が全部反射して、そ
のまま下へ戻っていく。いま、基盤層は便宜的に
そこから下が半無限に続くものとする。すると基
盤層内を上昇していく波は、震源のほうから伝播
してくる波で、まだ表層地盤の影響を受けていな
い波と考えることができる。この上昇波が基盤面に達すると、そこで一部は反射し、一部は表層地盤の中に
透過していく。透過した波は、その上位にある地層境界でさらに透過・反射し、そこで反射して下降波とな
った波が地層下面に当るとさらに透過・反射する、という具合に変化していく。いま、右図のように上昇波
をE、下降波をFの記号で表現し、層番号を地表面から 1,2,3・・・n(基盤層)と添え字で表すことにすると、
各層の中では上昇波と下降波が合成された形となる。地盤内の地震波をこのようにとれえる考え方を重複反
射理論という。重複反射理論の運動方程式(波動方程式)は次式で与えられる。
資料 17)
地盤は、地震時に地盤内に発生するせん断ひずみγの大きさにより、地盤の運動を解く上で必要となる地
盤のせん断弾性係数Gと減衰定数hは変化する。これを地盤特性の非線形性という。一般的に、地盤物性の
非線形性をそのまま適用して地盤の動的解析をすると、膨大な計算量が必要となる。そこで、計算の簡略化
を図るうえで考え出された手法として、等価線形解析法がある。等価線形解析法とは、非線形である地盤の
剛性Gと減衰定数hを、結果として等価となる線形のGeq とheq で評価する。地震動の全時間において一
定の等価剛性Geq と等価減衰heq を使用することとし、その値は全時間中の最大せん断ひずみをもとに決
定する。実際には、計算をしてから初めて最大せん断ひずみが求まるので、最初は仮の値からスタートして、
算出されてくるGeq とheq と比較して、ある誤差以内に収まるまで収束計算する。ここで、不規則な地震
波を対象とした場合、解析で求められた全時間中の最大せん断ひずみに対するGeq とheq を全時間を通し
て用いることは、地盤剛性を過小評価し地盤減衰を過大評価することになる。そこで、求められた不規則な
せん断ひずみ時刻歴を等価な定常振動に直して評価することが行われており、一般的にはせん断ひずみの定
常振幅値として最大せん断ひずみの 65%の値を採用することが多
い。この比率は Seed により提案された係数であり、不規則な波
をパワーが等価となる等振幅の波に置き換えるための係数と解釈
できる。実施の計算では、対象とする土質に対して地盤調査結果
からG/G0~γ曲線、h~γ曲線を設定して等価線形解析を行う。
26
SHAKEによる非線形解析では応力-ひずみ関係のモデル化のためにパラメータの決
定が必要で人により差があるという問題があるが、与えられた動的特性をそのまま入力で
きるのでデータ入力が簡単である、という利点からSHAKEがよく利用されてきた。
SHAKEの欠点のひとつに、非線形挙動に伴う材料特性の経時変化を考慮できないと
いう問題があるが、なぜSHAKEを使う必要があるか、についてはきちんと認識してお
く必要がある。以下にSHAKEを使用する必要性について述べる。
①周波数に依存する挙動
波動が地盤を伝播する際に発生する大きな減衰に、履歴減衰と散乱減衰がある。履歴減
衰は応力-ひずみ関係の問題である。散乱減衰は周波数に依存した減衰である。また、地
下逸散減衰なども周波数に依存した減衰である。このような周波数に依存する挙動は逐次
積分型の非線形解析では困難である。
②逆増幅解析
地震計は地表近くに設置されていることが多いので、地表の材料特性の影響を大きく受
けている。より普遍的な地振動は、少なくともこれよりサイトの影響を受けない工学的基
盤で定義する必要がある。そのためには、地表で観測された波形から基盤の波形を求める
必要がある。逆増幅と呼ばれるこの作業は、重複反射理論を用いることで簡単に行うこと
ができる。この目的のため、一次元の等価線形解析は必ず必要な武器といえる。
③周波数特性
地盤の地震応答解析はそれ自身が最終目標ではなく、構造物への入力を求めるために行
われることも多い。この際、例えば配管機器などであれば固有周期は非常に小さい(周波
数が大きい)
。高周波数領域の解析は、逐次積分型の非線形解析では困難である。それは、
たとえば Reyleigh 減衰のような高周波数で減衰が非常に大きくなる減衰が通常使われてい
るためであるし、数値計算法そのものが高周波領域で減衰を示すこともある。等価線形解
析であれば、高周波の応答も制御可能である。
(ただしSHAKEでは無理)
このように、重複反射理論に基づく一次元解析は今後も必要であり、場合によっては多
次元の等価線形解析も必要となる。したがって、等価線形解析と非線形解析はどちらか一
方が駆使されるというものではなく、補完的に用いるべきものである。
(3)SHAKE の欠点
SHAKEの欠点として「非線形挙動に伴う材料特性の経時変化を考慮できない」とい
うこと以外に、次に示す欠点があることに注意する必要がある。
①加速度の過大評価
SHAKEでは最大ひずみから有効ひずみ
を計算する際に係数αを使用するが、この値
は1より小さく、0.65 が用いられることが多
い。右図において、実線を入力したG-γ関
入力した応力-ひずみ関係と最大応力-最大ひずみの関係
27
係より求めた応力-ひずみ関係、最大ひずみγmax に対応する点をBとする。すると、有効
ひずみは図のAとなり、等価線形解析ではOAを結ぶ直線が応力-ひずみ関係となるので、
最大ひずみに対する最大せん断応力は図のC点となる。つまり、最大せん断応力-最大せ
ん断ひずみ関係は、常に入力した応力-ひずみ関係より上になる。α=0.65 を用いれば、
その差は応力-ひずみ関係が完全塑性状態の時に最大となり、1/0.65=1.54 倍の過大評価
となる。これが加速度の過大評価に結びつく。
②加速度の過小評価
右図は東京湾埋立地での鉛直アレ-サイトに
おいて得られた地振動の増幅特性をSHAKE
による解析と比較したものである。低周波数領
域は良い対応をしているが、高周波領域ではS
HAKEが過小評価となる。地震動が大きくな
いケースでは高周波成分は最大加速にかなり影
響を与えるので、このような地振動に対しては
観測値と SHAKE による計算値の比較
加速度が過小評価される。
この欠点は、逆解析の際もっとも重要となる。
つまり、順解析で減衰が大きいということは、逆解析
では下方に行くに従って応答が大きくなる。右図は、
地表波形から逆増幅計算をした結果である。小さい地
震では SHAKE の結果は観測とよく一致している。しか
し、最大ひずみ 0.1%程度になると、下方に行くに従っ
て最大加速度が急激に大きくなり、明らかに異常な結
果となる。これ以上ひずみが大きくなると SHAKE によ
る計算では収束しなくなる。兵庫県南部地震における
強震域の記録を逆解析しようとしても発散してしまう。
下図はポートアイランドで観測された鉛直アレー記
SHAKE による基盤波の過大評価事例
録を用いて、地表の記録から GL-32m の記録を求めたものである。通常の条件では発散する
ので、30Hz 以上の高周波部分をカットして解析したものである。本震とは全く異なる初期
の高周波部分が異常に増幅していることが分かる。これが、逆増幅解析で SHAKE が失敗す
る原因である。
ポートアイランド記録の逆増幅解析結果
28
(4)SHAKE の欠点を改良したFDEL
SHAKE の2つの欠点のうち、高周波領域に対する増幅を改良する方法は、荻原や杉戸らに
よって行われた。その手法はいずれも周波数に応じて剛性や減衰を変えるものであるが、
荻原の方法は地盤モードを分解するもので、そのため、重複反射理論の枠組みから離れて
いる。杉戸の方法は、ひずみのフーリエスペクトルとその最大値を用いて、有効ひずみを
次式で表すものである。
この方法は FDEL とよばれる。彼らはα=0.65 が最適としている。この方法は、中程度の
地震に対する応答をよく改善しているが、α=0.65 がよいということは、大地震に対する
欠点はそのままであり、FDEL が SHAKE に比べて加速度を大きく評価することを考えると、
大地震に関しては SHAKE より加速度を過大評価することになる。
(5)SHAKE での解析の流れ
SHAKE での解析の全体的な流れを右図に示す。
①工学的基盤地震動、地盤定数、
密度などのデータを入力し、せ
ん断弾性係数の初期値G1 と減
衰定数の初期値h1 を設定して、
これらから有効ひずみγ(1)を
算出する。
②算出された有効ひずみγ(1)に
相当するG2、
h2 を求め、
G2、
h2 を用いて有効ひずみγ(2)
を求めることを繰り返す。
③上記②を繰り返して、Gn、hn
とこれらを用いて計算したγ
(n)に相当するGn+1、hn+1 と
の差を比較して許容範囲に収
まっていれば、収束したとみな
して計算を終了する。
SHAKE の流れ
29
5.2
ALID(2 次元 FEM 静的解析プログラム)
(1)ALID の特徴 資料 4)
ALID(Analisys for Liquefaction-Induced Deformation)は、地盤の液状化に伴って発生
する流動現象のメカニズムを、液状化層の土骨格構造破壊に起因する剛性の消失として捉
え、自重応力下の砂質土層がせん断剛性低下によって変形すると仮定した静的な地盤変形
解析手法である。液状化に伴って発生する過剰間隙水圧の消散による沈下(液状化層の圧
縮)とあわせて、地盤の残留変形量を求めることができる。
自重解析→液状化解析→圧密解析の順で地盤の変形を求める。平面ひずみ要素、非線形
梁要素、ギャップ要素に加え、平面応力要素、スプリング要素を搭載している。また、異
方性材料や剛域を取り扱えるので、地層の節理の方向を解析モデルに反映することが可能
である。
(2)ALID の使用上の注意点
資料 4)
4辺形アイソパラメトリック要素のロッキング現象
を避けるために、当初からガウス・ルジャンドルの数値積分の次数を低減しているため、
精度が少し落ちる。
(3)ALID による解析事例 資料 9)
アイソパラメトリック要素をうす板に適用すると、剛性が過大に
なり、たわみがうす板理論の値からはなれてきわめて小さい値にな
る。この現象は、面外せん断によるロッキングとよばれる。
本解析事例は、木曽三川(木曽川、長良川、
いびがわ
揖斐川が集まる下流域)下流部堤防を対象に、
東海地震および東南海地震に対する堤防の耐
震性評価手法を検討するため、静的解析手法
として ALID を動的解析手法として LIQCA
を取り上げ、代表断面での地震時変形解析を
行い、堤防基礎地盤の土質特性や大規模でか
つ継続時間の長い地震動特性を考慮した場合
の解析結果について検討を行ったものである。
検討に用いる工学的基盤面での加速度波形
は杉戸らが提案している強振動予測法 EMPR
を用いて推定した。EMPR は任意の地点に対
して算出が可能である。
ALID での液状化判定に用いる地表最大加
速度は、SHAKE と FDEL により算出した。
SHAKE では減衰が著しく過小と考えられる
加速度が得られたが、周波数特性を考慮した
FDEL では、妥当性が高いと考えられる加速
度値が得られたので、FDEL を用いることにした。
30
検討フロー
今回の解析事例の結果は以下のとおりである。
① LIQCA による解析結果を見ると、地盤条件により変形モードが大きく異なる場合
がある。
② ALID と LIQCA との比較において、沈下量に大きな差異が認められる一要因とし
て、振動継続時間の影響が大きいと考えられる。
このように、継続時間が長い東海・東南海地震に対する堤防の耐震性評価に当っては、
対象地震動の特性と地盤の土質構成を勘案して、適切な地震時変形予測手法を適用するこ
とが重要である。
今回の検討の結果から今後の解析においては以下の事項に留意する必要がある。
① LIQCA による変形解析の結果では、液状化層が 10m 前後より小さくなると変形モ
ードが「すべり型」となる可能性があり、ALID と LIQCA による沈下量の差異が
大きくなる。そのため、液状化層が 10m 以下の区間での ALID の適用は危険側の
結果を与える恐れがある。
② 液状化層が 10m を超えると、LIQCA での変形モードが「沈下型」となる可能性が
あり、ALID の適用性も高くなる。しかし、液状化層の平均 FL 値が 0.7 より大き
い場合は、ALID の沈下量は LIQCA の沈下量より過小となる。したがって、液状
化層の平均 FL 値が 0.7 より大きい場合は、
ALID の適用は危険側の結果を与える。
31
EMPR(Earthquake
Motion
Prediction Ⅱ
Revised
Model)
一般的に周期が数秒程度までの短周期地盤振動は、局所的な地盤の影響を強く受ける。この局所的な地盤
の影響は、震源の特性や伝播経路の特性に比べ比較的調査しやすく、地震動予測に取り入れることが比較的
容易である。そのため、工学的基盤レベルまでの強地震動を概略的に推定し、その上で局所的な地盤の影響
を詳細に考慮することが行われる。
この手法は地震動の予測手法の中でも、短周期波の表現に
優れているといわれる経験的手法のひとつであり、時系列で
の予測が可能で、さらに断層破壊速度や断層面でのモーメン
ト分布などの影響を考慮できるという特長を持っている。
資料 20)
5.3
FLIP(2 次元 FEM 動的解析プログラム)
(1)FLIP の概要 資料 3)
FLIP は飽和砂の力学モデルとして有効応力モデルを用いている。砂の変形特性を規定す
るモデルとしては東畑・石原による多重せん断機構に基づくモデル、過剰間隙水圧の上昇
を規定するモデルとして非排水条件下における有効応力経路を示すような液状化フロント
(井合モデル)を適用して砂の変形特性を規定している。
多重せん断機構に基づくモデルでは、任意方向のせん断面において仮想的な単純せん断
ばねの作用があるものとし、これらのせん断ばねの作用の結果、土全体のせん断抵抗が発
揮されるものとしている。また、せん断ばねの特性を表現するモデルとしては双曲線モデ
ルを適用している。
多重せん断ばねモデル概念図
過剰間隙水圧モデルを規定する液状化フロント
32
(2)FLIP の特徴 資料 4)
平面ひずみ要素、非線形梁要素、ギャップ要素を搭載している。ギャップ要素は要素間
の剥離状態を表現できる。これを自重解析時の土要素と構造物との接触面に設けることに
より、土層に発生する不自然な応力状態を回避することができる。減衰機構にはレイリー
減衰を用いるが、推奨している係数を用いれば初期剛性比例型の減衰となる。時間積分に
は、用意されている3種類の方法(ニューマークのβ法、ウイルソンのθ法、中心差分法)
の内、ウイルソンのθ法を推奨している。
①ニューマークのβ法、ウイルソンのθ法、中央差分法
精度よく逐次変化する非線形を考慮して解析を行うには、
時間領域を細かく細分化し、それぞれの区間で数値積分を行
う、逐次積分法によらねばならない。運動方程式は物理現象
を記述しているので、その解は一つのはずである。しかし、
我々が扱う地震応答解析の分野では、外力である地震力は離
散化された点(時刻)で与えられているので、物理的に問題が完全に定義されていないと
いう問題がある。このため非線形法では初期条件を満足したうえで、離散化された点の間
を適切に近似して、離散的に解くことになる。
近似化の程度として、最も受け入れられるのは、与えられた外力(地震入力)の離散点
の間を直線で結んで時間に関し連続した外力を作ることである。すると、一自由度の場合
には運動方程式は解析的に解くことができる。このような解法を Nigam の方法といい、不
安定な問題がないので応答スペクトルの計算などではよく用いられている。しかし、多自
由度系では解析解を求めることは困難になる。そこで、系の応答にある種の仮定を置いて
解くことになる。その方法として「中央差分法」
「線形加速度法」
「Newmark のβ法」
「Wilson
のθ法」などがある。
離散化とは、ある連続した情報を非連続の値に分割することである。連続した値を持った情報を解
析することは非常に困難であるが、離散化を行い非連続な数値に置き換えることで、近似的な計算結
果を比較的容易に算出することが可能となる。そのため、数値解析をはじめとして様々な分野におい
て離散化は用いられている。音声や電波のように元々が連続的な情報も、その周波数を離散化するこ
とにより、デジタルな数値としてコンピュータ上で処理することが可能となっている。離散化され非
連続となった(離散的な)値は、離散値と呼ばれる。離散値を用いて算出された計算結果は、元の情
報に対し、離散化誤差と呼ばれるわずかな誤差が生じる。数値解析において離散化を行う手法の代表
的な種類として、有限要素法(FEM)、有限差分法(FDM)、有限体積法(FVM)などがある
33
「中央差分法」
応力-ひずみ関係が非線形のとき、運動方程式は次式で表される。
ここで、時間の関数である変位の応答値
を用いて、速度、加速度を次のように表
す。
これは、
を通る応答を時間に関する2次式に近似し、特
定の時間の応答のみを求めたことになる。これらの式に基づき、時刻tについて書き直す
と次式が得られる。
この式は、時刻tとt-dt の変位からt+dt の変位を求める連立方程式となっている。
このように、中央差分法は運動方程式を解くのが簡単という特徴がある。ただし、非線形
の応力-ひずみ関係を用いる際にはコーディングが複雑になるなどの欠点もあり、通常は
それほど用いられない。
差分法(difference method)とは、微分方程式を解く数値解析の方法のひとつである。 関数が 2 つ
の変数値に対してとる値の間の有限な差を差分(difference)といい、この差分を変数値の差で割って
得られる商を差分商(difference quotient)という。微分を差分商で近似することにより微分方程式を
解くものである。偏微分方程式の数値解法を特に有限差分法(finite difference method)という。
最も簡単な例として、次の 1 階常微分方程式を考えると:
これを解くには、差分商
を用いて
と近似する。この方法をオイラー法という。この最後の方程式のように、微分方程式の微分を差分商に
置き換えたものを、差分方程式(difference equation)と呼ぶ。
変数軸に等間隔 h の目盛り(メッシュ)をとり、それらに対する関数 u の値で数列を作ることができ
る。例えば、...,un − 1 = u(x − h),un = u(x),un + 1 = u(x + h),...とすれば、隣接項の差が差分と
なる。差分方程式は漸化式として表され、これを解けば微分方程式の近似解が得られる。
なお、離散的な問題にも差分方程式が必要とされるが、この場合には逆に差分の近似として微分を用
いることもできる。
34
「線形加速度法」
中央差分法は、2階の微分方程式を解くために、1階の微分方程式の解法を二度使って
いる。これに対して、2階の微分方程式専用の差分式が実務では用いられる。時刻tから
t+dt の間を積分することにし、その間では剛性Kが変わらないとすると、時刻tからそ
の増分量に対して運動方程式は次のように表される。
応答値の最も単純な近似として、離散点で与えられる応答の加速度が線形で変化すると
考えると、増分開始時からの時間をτで表せば、応答を次のように補間できる。
変位と速度はこれを積分すると得られ、時刻tからt+dt 増分量として表せば次のよう
になる。
これら整理すると、変位増分 du に関する連立方程式が得られる。
この方法は、加速度応答を部分線形関数に仮定しているので、線形加速度法と呼ばれる。
中央差分法との違いは、補間式に解くべき時間の応答値を含んでいることであり、そのた
めに、必ず連立方程式を解く必要がある。線形加速度法は、数値積分に伴う誤差も小さく
優れた方法であるが、数値積分の安定性の問題から実務ではほとんど用いられていない。
35
「Newmark のβ法」と「Wilson のθ法」
線形加速度法をより一般化したものに、Newmark のβ法と Wilson のθ法がある。Newmark
のβ法は、時刻t+dt について速度および変位を次のように表す。
ここでは、パラメータβのみを用いるが、速度に対するパラメータγも用いることもあ
る。これを整理して変位増分 du に関する連立方程式が得られる。
この方法の意味は、変位の位相をβにより調整しようというものである。
ここで、β=1/6 と置くと線形加速度法となる。実務では、β=1/4 がよく用いられる。
この場合は、積分区間で加速度を一定に仮定したことに相当し、中点加速度法と呼ばれる
ことがある。
Newmark のβ法が、積分区間での関数形を変えようとしたのに対して、Wilson のθ法で
は、応答を線形であると仮定する区間をt~t+θdt まで広げる。すなわち、補間関数と
して次のように置く。
ここで、速度と変位の増分は時間増分θdt に対するものである。後は、線形加速度法と
同様に解けば、θdt に対する加速度増分が求まるので、dt に関する増分は次式で求められ
る。
これを、線形加速度の補間式に代入すればすべての応答が求まる。ただし、この方法で
は、時刻t+dt に対して運動方程式が成立しているという保証がないことに注意が必要で
ある。非線形の応答を求める場合には非線形の不釣合いとともに自動的に考慮されるが、
線形の計算で不釣合いの扱いをしない場合は問題となることがある。
不釣合力とは、各増分計算の始めの段階で仮定した剛性を用いて得られる
外力と、非線形を考慮した応力変化から求められる内力の間の差。
36
地盤の地震応答解析に与える数値積分手法の影響 資料 10)
数値積分手法では、Newmark のβ法、Wilson のθ
法、中央差分法などが実用的に用いられるが、中央
差分法を除けば不釣合力が発生する。
不釣合力の扱いはいくつかある。一つは不釣合力
を無視する方法であるが、この場合は内力と外力は
釣り合わないが、地震応答解析のような正負交番の載荷では不釣合力の符号が反対になるので全体とし
ての不釣合力は大きくならない。次の方法は、不釣合力を次の次の増分計算に持ち越す方法である。こ
の場合、各増分では内力と外力は釣合わないが、全体として不釣合力は大きくならない。最も厳密な方
法はイタレーションなどを行って不釣合力を解消させる方法であるが、計算時間が多くかかるという欠
点がある。
この論文では、Newmark のβ法と Wilson のθ法に対して、不釣合力の処理方法が地震応答解析の結果
にどのように影響を与えるかを検討している。検討の種類は上表、検討結果は以下のとおりである。
①数値積分法や不釣合力の考慮の有無により計算結果は若干異なるがその差は大きくない。
②数値積分間隔を小さくすることで差を小さくすることができる。
③Wilson のθ法は、高振動数成分で大きな減衰を示す。
②レイリー減衰
運動方程式には、次式に示すように減衰項が含まれるが、減衰項がないとすれば弾性の
応答をしているので、いつまで経っても振動が収まらないことになる。
しかし、実際の問題では振動は次第に収まっていく。実際の減衰として考えられるもの
に、材料に起因した減衰と見掛け上の減衰がある。
材料に起因した減衰としては、粘性減衰がある。これは、載荷速度を変えて実験をして
みると、同じ挙動にならないということから理解できる。鋼材やコンクリートといった材
料でもこのようなひずみ依存性がある。一方、土に関しては、ひずみ速度の影響はないと
いうのが一般的な認識であるが、高速の載荷で実験されているわけではないし、間隙水は
流体であり粘性があるので、全体としてみれば粘性があることが普通である。
37
見掛け上の減衰としてよく現れるのは、地下逸散減衰と散乱減衰である。
地下逸散減衰とは、地震動が与えられる基盤が剛ではなく、基盤を超えて下方にも波動が
伝播していくときに発生する減衰である。地盤を剛とした解析でこの効果を考えるために
は減衰項が必要となる。地下逸散減衰は周波数の関数となるが、
その静的な部分のみをモデル化することも多い。最近では、境界
条件として地盤の半無限性を考慮して解析すれば地下逸散減衰は
自然に考慮されるので、改めて内部減衰の中に含ませなくてもよ
い。
散乱減衰は、地盤の不均一性に起因して発生するものである。
解析では地盤をある程度の領域は均質な材料であるとモデル化す
る。しかし、実際の地盤は決して均質な材料とはいえず、多少なり
とも不均質がある。右図のように地盤が均質であれば入射した波は
まっすぐに地表に到達する。しかし、地盤が不均質であれば波動は
まっすぐには伝播せず、伝播距離が伸びることで波動が減衰する。
散乱減衰のイメージ
減衰の取扱いとして、実務では Rayleigh 減衰という減衰が使わ
れることが多い。この減衰は、質量マトリックスと剛性マトリックスの線形結合で定義さ
れる。
ここで、右辺第1項を質量比例減衰、第2項を剛性比例減衰
と呼ぶ。質量比例減衰は振動数に逆比例し、剛性比例減衰は正
比例する。このうち、剛性比例減衰が重要であり、運動方程式
を時間領域で解いたときのパルスの発生を抑える役割がある。
Rayleigh 減衰は手軽な減衰であり、かつ、減衰マトリックス
のバンド幅も剛性マトリックスと同じなので、数値計算上は扱
いやすい。しかしその特性は、実現象として現れる減衰とは異
Rayleigh 減衰の周波数依存性
なる。
より自由に減衰マトリックスを設定する方法としてモード比例減衰がある。固有値解析
を行うことで運動方程式をモードごとに分解できる。このためには、
が成立すればよい。この関係からもとの減衰マトリックスを求めると次のようになる。
これをモード比例減衰と呼ぶ。モード比例減衰では各モードごとに減衰定数を設定でき
るのでより自由な減衰マトリックスの作成が可能である。ただし、このようにして得られ
た減衰マトリックスはフルマトリックス、すなわちすべての成分が0でない値となってい
るので、連立方程式を解くのに非常に多くの時間が必要となり数値解析として不利である。
38
資料 11)
粘性減衰のモデル化が非線形応答に与える影響
非線形応答解析において実績のある粘性減衰のモデル化の方法を対象に、粘性減衰モデルによる減
衰マトリックスの作成方法の違いが非線形応答に与える影響を、減衰機構が比較的簡明なすべり系免
震支承による構造物モデルを用いて検討する。検討の対象とした粘性減衰マトリックスを下表に示す。
検討の結果を下表に示す。減衰モデル別では、Rayleigh 型減衰で非常に高い一致が得られた。同じ
比例型減衰ということで、構造系が比較的単純であり非線形振動の規準振動が低次の少数の振動モー
ドに集約され、これと一致した可能性が高い。その他の減衰モデルについても、5%から 10%程度の範
囲でほぼ等しい値が得られている。瞬間剛性 Rayleigh 型減衰の時刻歴の乖離は、与えられた非線形復
元力モデルの影響によるもと考えられる。
39
(3)FLIP 使用上の注意点 資料 4)
①水流方向解析時の水門堰柱や、解析断面奥行方向に無限に長いとは見なせない底版や
壁体をモデル化する場合には平面応力要素を用いるべきであるが、これを搭載してい
ないので平面ひずみ要素で代用せざるを得ず、その結果、直ひずみεx、εy に対する
剛性が増大評価される(ポアソン比=0.3 の場合、1.2~1.7 倍)
。
②梁要素にもアイソパラメトリック要素を用いていることにより、その精度に注意が必
要。
アイソパラメトリック要素
有限要素法では解析したいものを有限個の三角形や四角形、立体であれば四面体や六面体などの小さ
な要素の集まりに近似して計算する。四角形8節点アイソパラメトリック要素とは四つの頂点と各辺中
央にも節点を設けて8節点とした2次要素で、三角形3節点要素等の1次要素に比べ精度が高い特徴を
持つ。またアイソパラメトリックの意味は変形が可能ということで、正方形を基本とするが台形や二つ
の辺が直線上につながった三角形になっても計算が可能である。
40
FLIP の主な基本機能
41
5.4
LIQCA(2 次元 FEM 動的解析プログラム)
(1)LIQCA の概要
資料 12)
固体力学に基づく土の骨格と間隙水圧の連成
問題の支配方程式は、固相と液相からなる飽和多
孔質体を扱った Biot の飽和多孔質体理論により
導くことができる。Biot の式には、未知数の取り
方や近似の方法によって、様々な定式化がある。
完全な定式化としては、固相の変位 u、液相の変
位 U および間隙水圧pを未知数とした u-U-p
定式化、あるいは液相の固相に対する相対変位w
を用いた u-w-p定式化がある。また、液
相の圧縮性を仮定して間隙水圧pを消去した u-
U 定式化あるいは u-w定式化がある。LIQCA で
は Oka らにより誘導された固相の変位 u と間隙水
圧pを未知数とした u-p定式化を用いる。u-p
定式化では、液相の固相に対する相対加速度は固
相の加速度に比較して小さいと仮定して液相の
変位を陽に扱わないことから、従来から地盤工学
で用いられてきた圧密問題の定式化ともなじみが
よい。また、要素の重心で間隙水圧を定義すれば、
解くべき自由度の数を減らすことができ、計算コ
ストの面で有利となる。空間離散化には一般に有
限要素法(FEM)が用いられるが、LIQCA では有限
要素法と有限差分法(FDM)を用いて、支配方程式
の空間離散化を行う。つりあい式の空間的な離散
化には有限要素法、連続式の間隙水圧の項の空間
的な離散化には直行格子に対する有限差分法を拡
張した有限体積法を用いる。ここでは、間隙水圧
は要素内で一定として重心で算定し、応力とひず
みもまた要素の重心で算定する。これにより、計
算自由度の低減と非排水条件での locking の回避
が可能となる。なお、このためアワーグラスモー
ドが発生する可能性があるが、構造物の全体的な
BIOT の式と近似式
要素剛性マトリックスを求めるには要素
の面積、体積が精度よく求められることが
前提である。この面積、体積は数値積分、
特に、有限要素法は Gauss の積分法を利用
するのだが、積分の精度を上げるには数学
的には積分点数の多い方がよいのは当たり
前のことである。現に、境界要素法(BEM)
では要素積分に多くの積分点数を使用して
いる。ところが、有限要素法ではロッキン
グが発生してしまう。 そこで、低減積分法
の適用で問題解決かと思ったら、さにあら
ず。積分点を減らした反動で今度は、厄介
な問題が出てくる。拘束節点の少ない解析
モデルではひどい場合、マトリックスのラ
ンク落ちのため方程式が特異となって解が
求められない。運良く方程式の解式に成功
しても、出力された変位図を見てギョとす
るモードになっていることがある。魚の鱗
模様の変位図が描かれたりするのである。
要素を部分的に眺めてみると、変位モード
が砂時計の格好に似ているところから、こ
れをアワーグラスモードと呼んでいる。
変形に与える影響は大きくないと考えている。一方、時間離散化には陰解法である Newmark
のβ法を用いる。解析手法の精度は、飽和した多孔質弾性体に対する過渡応答の解析解と
の比較により検証されている。固相(土骨格)の変位 u と間隙水圧pを未知数とした定式
42
化においては以下を仮定する。
①ひずみは微小ひずみである。
②間隙率、液相(間隙水)の密度、透水係数の空間に対する勾配は十分小さい。
③液相の固相に対する相対加速度は、固相の加速度に比較して小さい。
④土粒子は非圧縮性である。
⑤温度変化は無視する。
(2)LIQCA での土の構成式 繰返し弾塑性モデル 資料 12)
砂の動的挙動を表現する構成式には様々なものが提案されているが、液状化に伴う地盤
の地震中の変形を再現するには、繰返し載荷中に発生するある程度のひずみレベル(せん
断ひずみ 10%程度)までを再現できるモデルが必要である。LIQCA では、この条件を満たす
砂の構成式として Oka らの繰返し弾塑性モデルを用いている。この構成式には以下の特徴
がある。
1)応力パラメータとして相対応力比を用いており、主応力の回転など多次元応力状態を
考慮できる。
2)硬化則として非線形移動硬化則を用いており、繰返し載荷時において応力反転時に硬
化パラメータを初期化する必要がないため、地震時のようなランダムな載荷条件に対
して適用性が高い。
3)境界曲面として過圧密境界面を導入し、これにより変相応力を決定することで、過圧
密に伴うダイレイタンシー量の減少などを表現できる。
4)一般化した流動則を用いることにより、種々の砂が有するストレス-ダイレイタンシ
ー関係を再現することができる。
5)塑性ひずみ量に依存したせん断係数を用いることにより、せん断ひずみ 10%程度までの
砂の挙動を再現することができる。
過圧密境界面
塑性せん断係数と塑性せん断ひずみの累積値の関係
非線形移動硬化パラメータの挙動の概念
43
(3)LIQCA での解析概要 資料 12)
LIQCA による一般的な解析の流れ、およびパラメータの一覧表を以下に示す。
液状化解析の流れ
モデルのパラメータ一覧
44
解析に必要な土質試験は以下のとおりである。
パラメータの設定手順は以下のとおりである。
土質試験とパラメータ
45
(4)LIQCA の特徴
資料 4)
砂の弾塑性モデルにより、液状化している土層の動的な振る舞いを再現でき、動的解析
に引き続いて時間領域で圧密解析を行える。地震終了から津波到来までの間に、間隙水逸
散による圧密沈下によって防波堤の沈下が懸念される場合等に、動的解析に引き続いての
圧密解析が威力を発揮する。
平面ひずみ要素、非線形梁要素、ギャップ要素を搭載している。減衰機構にはレイリー
減衰を用いるが、推奨している係数を用いれば初期剛性比例型の減衰となることは FLIP と
同様である。時間積分にはニューマークのβ法のみが用意されている。
(5)LIQCA の使用上の注意点 資料 4)
①節点数が多くなるとバンドマトリックス機能が使用できなくなる傾向がある。
②FLIP 同様、平面応力要素を搭載していない。
③粘性境界が、側方自由地盤に対してダッシュポットで接続するという通常用いられる
メカニズムではなく、側方固定境界に対してダッシュポットで接続するメカニズムで
あるので、変位が過小評価される傾向にある。
FEM では変数量の多い連立方程式を解くので、
大きな次元のマトリックスで式を準備する必要がある。
構造力学で扱う剛性マトリックスは、一般的な数値計算を扱うマトリックスとは異なる幾つかの個性的
な特徴があるので、それを考えた数値計算上の処理方法が工夫されている。まず、構造形として、注目
している節点に隣接する周りの節点ごとに関係式を立てるので、注目している節点から遠くにある節点
が無関係になる。そのため、擬似的な座標パラメータとして、節点番号の並びを近い順に選ぶと、マト
リックスの成分を対角線要素の周辺に集めることができ、大部分の非対角線要素を 0 にすることができ
る。そうすると、マトリックスの成分は、斜めに並んだ主対角線成分を挟んで、ある斜めの帯状の幅に
集まり、残りが 0 になる。このようなマトリックスをバンドマトリックスと言う。二つ目の特徴は、剛
性マトリックスを対称にできることである。これが相反作用の法則の利用である。この二つの性質を積
極的に利用して、マトリックス成分を保存するメモリー領域を節約する方法が工夫されてきた。その代
表的は方法を模式的に表すと、下図のようになる。主対角線から左にある成分は右上にもあるので、主
対角線成分を第1列に寄せる。そうすると、元のマトリックスの列数をバンド幅の約半分に圧縮しても、
成分全部を保存できることになる。
46
6.各種解析手法による解析結果の比較事例
6.1FLIP、LIQCA、ALID の解析結果の比較事例 資料 4)
プログラムの比較
入力パラメータの比較
解析モデルの境界条件
解析の結果
FLIP、LIQCA、ALID の3手法による解析結果を比較すると、以下のとおりである。
堤体肩の地震終了時の沈下量が、FLIP で 0.63m、LIQCA で 0.62m、ALID で 1.34m であった。
一般に、
「ALID は変形が大きく求まる」といわれている結果と同様の結果となった。
47
48
6.2 海溝型巨大地震による継続時間の長い長周期地振動に対する解析上の留意点
資料 5)
地震応答解析では、設計用地震力としてレベル2地震動や、検討地点に大きな影響を与
える震源断層を特定して地振動を作成するサイト波が用いられる。東海地震や東南海地震
などの地震力に対する影響を検証するには、海溝型巨大地震による継続時間が長く長周期
成分を多く含む地震波に対する検討が必要になる。液状化地盤上の土構造物に対する実験
では、地震動の継続時間が大きく影響することが示されている。有限要素法による地震応
答解析により土構造物の地震時変形解析を行った事例では、地震動の最大加速度が同じで
も、地震動の卓越周期が長周期で継続時間が長い方が大きな変形量となることが指摘され
ている。以下に LIQCA と FLIP を使用して、地震動の卓越周期が長周期で継続時間が長い
地震動の解析結果について検証する。
49
FLIP の解析結果
LIQCA の解析結果
盛土天端の応答加速度
盛土天端の応答加速度
盛土天端の鉛直変位(沈下量)
盛土天端の鉛直変位(沈下量)
過剰間隙水圧比コンターと変形図(50 秒後)
過剰間隙水圧比コンターと変形図(50 秒後)
過剰間隙水圧比コンターと変形図(100 秒後)
過剰間隙水圧比コンターと変形図(100 秒後)
LIQCA
FLIP
地震開始後約 100 秒を経過した時点で発生
100 秒以降での沈下量は一定となり、盛土天
可能沈下量(盛土高の 75%程度)を超えてお
端の沈下量は 3m 程度と小さく、LIQCA の結
り、微小変形理論に基づく本解析手法では表
果の 3 割となっている。
現できない大きな沈下となっている。大きな
入力地震動のもとでは沈下量を過大に評価す
る傾向にあることが過大な沈下量となった原
因と思われる。また、要素の変形モードもお
かしく、得られた沈下量の信頼性は低い。
50
参考資料
1) 液状化地盤の側方流動予測とライフライン被害予測システムの開発:濱田政則
2) 護岸背後の既設橋脚基礎の流動化照査(土木学会地震工学論文集 2007.08)
3) FLIP を用いた有効応力解析に基づく液状化解析(こうえいフォーラム第 9 号 2001.1)
4) 地盤耐震解析手法に関する一考察(応用技術解析事業部、今井・冨高・張)
5) 河川堤防の耐震性能評価における継続時間の長い地振動に対する有効応力解析の適用性の検討
(土木学会 200903、吉澤・酒井・渦岡)
6) 耐震設計のための地盤調査(日本物理探鑛株式会社)
7) 地盤の動的解析-基礎理論から応用まで-(地盤工学会)
8) 地盤の地震応答解析入門(東北学院大学
吉田望 2005 年5月)
9) 木曽三川下流部堤防での地震時変形解析手法(JICE
REPORT
06.03)
10) 地盤の地震応答解析に与える数値積分手法の影響(土木学会第 59 回年次学術講演会:平成 16 年 9 月)
11) 非線形動的解析に用いる粘性減衰のモデル化と非減衰振動系の復元力モデルに関する一考察
(第8回耐震設計に関するシンポジュウム)
12)
LIQCA2D11・LIQCA3D11(2011 年公開版)資料 (液状化解析手法 LIQCA 開発グループ平成 23 年 12 月 6 日)
13) 地盤の液状化と軽減技術(地盤工学会作成 Web ラーニングプラザ:科学技術振興協会 HP 掲載)
14)
GHE-S モデルによる土の動的非線形挙動の評価方法(鉄道総研報告
15) サイクリックモビリティ(地盤工学会誌
VOL25 No.9 2011)
2008 August)
16) 任意方向繰返し単純せん断における応力・ひずみ関係(土木学会論文集 1993.03)
17) 耐震設計の基本(大成建設株式会社土木本部土木設計部 山海堂)
18) カムクレイモデルの概要
19) カムクレイに学ぶ
6.カムクレイとその後の発展(土と基礎、1993 November)
20) 兵庫県南部地震の地震動解析について
21) 道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編
22) 建築基礎構造設計指針
2001 改定
平成 8 年 12 月 日本道路協会
日本建築学会
51
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